説明

静電荷像現像用トナー、二成分現像剤、プロセスカートリッジ及び画像形成装置

【課題】流動性、定着時の紙の離型性、転写効率等に優れ、且つ転写残トナーが少なく高品位な画像が得られるトナーを提供する。
【解決手段】トナー材料として結着樹脂、着色剤及び炭化水素系離型剤(ワックス)を含む母体粒子と、外添剤とからなる静電荷像現像用トナーであって、前記ワックスの吸熱開始温度が35〜65℃であり、及び前記母体粒子はトナー材料を有機溶媒に溶解又は分散して油相を調製し、前記油相を水系媒体中で乳化又は分散させて乳化又は分散液を作成し、前記乳化又は分散液から有機溶媒を除去し、前記有機溶媒除去後に前記ワックスの吸熱開始温度以上の温度で加熱して得られ、かつFTIR−ATR法により求められる2850cm−1のピークと828cm−1のピークとの強度比(P2850/P828)が0.01〜0.20であり、及び母体粒子中の分散径1μm以上のワックスがワックス全体の2〜20質量である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等に好適に用いられる、並びに該トナーを用いた二成分現像剤、画像形成装置及びプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法による画像形成は、一般に、感光体(静電荷像担持体)上に静電荷像を形成し、該静電荷像を現像剤で現像して可視像(トナー像)とした後、該可視像を紙等の記録媒体に転写し、熱、圧力や溶剤気体等によって該記録媒体に定着することにより定着像とする一連のプロセスにより行われる(特許文献1参照)。
【0003】
前記現像剤としては、磁性トナー又は非磁性トナーを単独で用いる一成分現像剤と、トナーとキャリアとからなる二成分現像剤とが知られている。また、一成分現像方式では、現像ローラへのトナー粒子の保持に磁気力を使用するか否かにより、磁性一成分現像方式、非磁性一成分現像方式に分類される。また、トナーとしては、通常、熱可塑性樹脂を着色剤などと共に溶融混練した後、微粉砕し、更に分級する混練粉砕法により製造されるトナーが用いられている。なお、必要に応じて、流動性やクリーニング性の改善を目的として、無機微粒子や有機微粒子がトナー粒子表面に添加されることがある。
【0004】
近年、熱ロールにオイルを塗布することなく離型性を付与し、トナーの融着という問題を防ぐために、トナーにワックス等の離型剤を添加する方法が一般的に用いられている。ここで、離型性にはワックスのトナー中での分散状態が大きく影響する。ワックスがトナーにおける結着樹脂(バインダー樹脂)と相溶すると離型性が発現できず、非相溶なドメイン粒子として存在して初めて離型性を発現する。このとき、ドメイン粒子の分散径が大きすぎると、トナー粒子表面近傍に存在するワックスの割合が相対的に増加するため、凝集性を示して流動性が悪化したり、長期使用においてワックスがキャリアや感光体等に移行してフィルミングを生じ、良好な画質が得られないことがある。一方、ドメイン粒子の分散径が小さすぎると、ワックスが過度に微分散されて十分な離型性が得られないことがある。
【0005】
前記粉砕混練法では、ワックスのドメイン粒子の分散径を制御するのが困難であり、またワックスが破断面に存在しやすいため、トナー表面に露出するワックスが多くなり、流動性の悪化やフィルミングの発生という前記諸問題が生ずることがある。更に、粉砕混練法により得られるトナーは、一般に粒度分布が広く、トナーの摩擦帯電性にムラが生じ、カブリなどが発生しやすいだけでなく、生産効率の関係上、体積平均粒子径が2〜8μmの小粒径トナーが得られにくく、高画質化の要求に対応できないという問題がある。
【0006】
そこで、水相中で造粒することにより得られるトナーが注目されている。該トナーは、粒度分布が狭く、小粒径化が容易であるとともに、高画質かつ高精細な画像を得ることができ、ワックス等の離型剤の高分散による耐オフセット性、及び低温定着性にも優れる。また、帯電の均一性によって転写性に優れ、しかも流動性が良好であり、ホッパーの設計や現像ロールを回転させるためのトルクの小型化が可能になるなど、現像装置の設計上も有利である。
【0007】
前記水相中で造粒することにより得られるトナーとして、懸濁重合法や乳化重合凝集法などにより得られるトナー(以下、ケミカルトナーという)の開発が行われている。
前記懸濁重合法は、モノマー、重合開始剤、着色剤、ワックス等を、分散安定剤を含む水相中に攪拌しながら加えて油滴を形成させ、その後、昇温して重合反応を行わせることにより、トナー粒子を得る方法である。該懸濁重合法によれば、トナー粒子の小粒径化を図ることはできるものの、残存すると帯電性を低下させる分散安定剤を用いなければならず、分散安定剤を用いなければ油滴の形成時にワックスが油滴内部に入り込みやすくトナー粒子の表面に適度に存在させることが困難であるという問題がある。さらに球形の形状しか得られず、クリーニングに対して問題がある。
【0008】
前記乳化重合凝集法は、例えば、ポリエステル樹脂を結着樹脂として使用し、水相中で乳化分散した後、脱溶剤して得られた微粒子と、着色剤、ワックス(離型剤)等を水相中で分散させて形成した分散体とを凝集させ、加熱融着させることによりトナー粒子を製造する方法である(特許文献2〜3参照)。この方法は加熱融着温度、時間をコントロールすることでトナー粒子の形状をコントロールできる。これらの製造方法によれば、超微粒子の発生が無いため、乳化ロスが無く、しかも粒度分布がシャープな分級フリーのトナーの製造が可能になるものの、脱溶剤後の微粒子を凝集させる際、単に凝集させたのでは合着が不充分となり、合着後の界面での割れ等が生じる。このため、熱により粒子間の合着を進行させる加熱工程が必須である。しかし、加熱を行うと、トナー粒子内に微分散させたワックス成分のブルーム(表面析出)が生じたり、球形化が生じたり、ワックス微分散粒子間の凝集等を生じ、ワックスが充分に微分散した状態を維持することができない。特に、低融点のワックス(ワックス)を使用すると、加熱工程において溶け出し易く、離型性を確保することができず、オイルレス方式のヒートロール定着への適性に欠けるという問題がある。
【0009】
また、ワックスエマルジョンに重合性ビニル単量体と水溶性重合開始剤とを添加し重合させることによりビニル重合体が被覆又は含浸されたワックス微粒子を、トナー組成物の乳化時に添加してトナー表面に均一かつ強固に付着させる方法が提案されている(特許文献4参照)。しかし、この方法では、ワックスエマルジョンと重合性ビニル単量体とを重合させることが必須となり、また、ワックス微粒子を構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)が高いため、低温での離型性、低温定着性等に劣るという問題がある。
【0010】
また、特許文献5には、トナー表面に露出するワックスの割合をFTIR−ATR(全反射吸収赤外分光)法によって測定し、規定している。耐ホットオフセット性を向上させて定着性を良好にすると共に、耐ブロッキング性を向上させることが可能であるが、ワックスの分散径に関する記載はない。
特許文献6には、ワックスの含有量を0.1〜40質量%とし、トナー表面に露出するワックスの存在割合が表面に露出する構成化合物の1〜10質量%であるトナーが記載されている。トナー表面に露出するワックスの割合をESCA(X線光電子分光分析)によって測定し、規定しているものである。しかしながら、ESCAによる分析は、トナーの最表面から0.1μm程度の深さに限られるため、更に内側に存在し、定着工程で離型性を発揮するに相応しいワックスの分散状態を知るには及よばない。また、ワックス分散状態を変えずに紙の離型性を制御することは記載されていない。
特許文献7には、転写性改良を目的にトナーをトナーのガラス転移温度に対して−10℃以上10℃未満で加熱し表面処理をすることを特徴とするトナーの製造方法が記載されている。転写効率の向上及びそれに伴う画像品質の向上については記載されているが、紙の離型性の向上、加熱後のトナーの流動性の悪化については記載がなく、不明である。
【0011】
したがって、小粒径かつ粒度分布が狭く、しかも流動性に優れるというケミカルトナーの利点を保持しつつ、流動性に優れ、フィルミングの発生が少なく、紙の離型性に優れた高画質な画像が得られるトナーが常に安定して効率よく得られる方法が強く望まれているが、該方法は未だ提供されていないのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、高速のフルカラー画像形成方法において、流動性、定着時の紙の離型性、定着温度幅及び転写効率に優れ、且つ転写残トナーが少なく、フィルミングの発生が少なく、高品位な画像が得られるトナー、更にはトナー定着時の加熱によって揮発性有機化合物(VOC)の発生が少なく印刷用紙を汚さないトナーを提供することである。本発明の他の目的は、こうしたトナーを用いる二成分現像剤、画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、いろいろな角度から実験、検討を行ってきた結果、下記の手法によって上記課題を解決できること見出した。即ち、上記課題を解決するために、本発明に係るトナー、二成分現像剤、画像形成装置及びプロセスカートリッジは、具体的には下記(1)〜(10)に記載の技術的特徴を有する。
【0014】
(1)少なくともトナー材料として結着樹脂、着色剤及び炭化水素系離型剤を含む母体粒子と、外添剤とからなる静電荷像現像用トナーであって、前記炭化水素系離型剤には示差走査熱量計により測定されるDSC曲線の吸熱開始温度が35〜65℃であるワックスが用いられ、及び前記母体粒子はトナー材料を有機溶媒に溶解又は分散して油相を調製する工程、前記油相を水系媒体中で乳化又は分散させて乳化又は分散液を作成する工程、前記乳化又は分散液から有機溶媒を除去する工程、前記有機溶媒除去後に前記ワックスの吸熱開始温度以上の温度で加熱する工程を経て得られ、表面から0.3μmまでの深さ領域に存在する前記ワックスの量が、FTIR−ATR(全反射吸収赤外分光)法により求められる前記ワックス由来のピーク(2,850cm−1)と前記結着樹脂由来のピーク(828cm−1)との強度比(P2850/P828)で、0.01〜0.20の範囲にあり、かつレーザー回折式分布径測定装置で測定される母体粒子中の分散径1μm以上のワックスがワックス全体の2質量%以上20質量%以下であることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
(2)前記結着樹脂はポリエステル樹脂を含むことを特徴とする上記(1)に記載のトナー。
(3)前記ポリエステル樹脂は、未変性ポリエステル樹脂であることを特徴とする上記(2)に記載のトナー。
(4)前記ワックスはマイクロクリスタリンワックスであることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のトナー。
(5)前記水系媒体中に界面活性剤が含有され、前記乳化又は分散させる工程の後で該界面活性剤を除去し、その後スラリー状態で前記ワックスの吸熱開始温度以上の温度で加熱する工程を経て得られたことを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のトナー。
(6)前記母体粒子を前記結着樹脂のガラス転移温度以上+10℃以下の温度で加熱し表面処理をすることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載のトナー。
【0015】
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに記載のトナーとキャリアとからなることを特徴とする二成分現像剤。
【0016】
(8)静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に形成した静電潜像を上記(1)〜(6)のいずれかに記載のトナーを用いて現像し可視像を形成する現像手段とを少なくとも有することを特徴とするプロセスカートリッジ。
【0017】
(9)静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、該静電潜像を上記(1)〜(6)のいずれかに記載のトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、該可視像を記録媒体に転写する転写手段と、記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくとも有することを特徴とする画像形成装置。
(10)上記(1)〜(6)のいずれかに記載のトナーを収納したトナー収納容器中のトナーを粉体ポンプによって移送チューブを介して現像手段へ補給する剤移送手段と、静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、該静電潜像を該トナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、該可視像を記録媒体に転写する転写手段と、記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくとも有することを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0018】
以下の詳細かつ具体的な説明から明らかなように、本発明によれば、高速のフルカラー画像を形成するに際して、流動性に優れ、フィルミングの発生が少なく、紙の離型性に優れた高画質な画像が得られるトナー、及び前記トナーを用いた二成分現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】フローテスターによるT1/2温度、流出開始温度を説明する図である。
【図2】接触式のローラ式帯電装置の一例の概略構成図である。
【図3】接触式のブラシ式帯電装置の一例の概略構成図である。
【図4】磁気ブラシ式帯電装置の一例の概略構成図である。
【図5】現像器の一例の概略構成図である。
【図6】定着装置の一例の概略構成図である。
【図7】定着ベルトの層構成を示す図である。
【図8】本発明のプロセスカートリッジの一例の概略構成図である。
【図9】本発明の画像形成装置の一例の概略構成図である。
【図10】本発明の画像形成装置の他の例の概略構成図である。
【図11】本発明の画像形成装置の概略構成を示す図である。
【図12】図10に示す画像形成装置のプロセスカートリッジの構成を示す図である。
【図13】本発明の画像形成装置に用いる他の形態の定着装置の構成を示す概略図である。
【図14】剤移送装置の概略構成を示すブロック図である。
【図15】剤移送装置の構成を示す概略図である。
【図16】他の実施形態の剤移送装置の構成を示す概略図である。
【図17】トナー補給時の各部のON−OFFのタイミングを示すチャートの図である。
【図18】フレキシブル材料を用いたトナー収納容器を示す図である。
【図19】記録媒体の押し付け力を測定する測定装置を説明する概略図である。
【図20】吸熱開始温度を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施するための最良の形態を必要に応じて図面を参照して説明する。なお、いわゆる当業者は特許請求の範囲に記載された本発明を変更・修正をして他の実施形態をなすことは容易であり、これらの変更・修正はこの特許請求の範囲に記載された本発明に含まれるものであり、以下の説明はこの発明の好ましい実施形態における例であって、この特許請求の範囲に記載された本発明を限定するものではない。
【0021】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明においては、少なくともトナー材料として結着樹脂、着色剤及び炭化水素系離型剤を含む母体粒子と、外添剤とからなる静電荷像現像用トナーであって、前記炭化水素系離型剤には示差走査熱量計により測定されるDSC曲線の吸熱開始温度が35〜65℃であるワックスが用いられ、及び前記母体粒子はトナー材料を有機溶媒に溶解又は分散して油相を調製する工程、前記油相を水系媒体中で乳化又は分散させて乳化又は分散液を作成する工程、前記乳化又は分散液から有機溶媒を除去する工程、前記有機溶媒除去後に前記ワックスの吸熱開始温度以上の温度で加熱する工程を経て得られ、表面から0.3μmまでの深さ領域に存在する前記ワックスの量が、FTIR−ATR(全反射吸収赤外分光)法により求められる前記ワックス由来のピーク(2,850cm−1)と前記結着樹脂由来のピーク(828cm−1)との強度比(P2850/P828)で、0.01〜0.20の範囲にあり、かつレーザー回折式分布径測定装置で測定される母体粒子中の分散径1μm以上のワックスがワックス全体の2質量%以上20質量%以下であることを特徴とする。
【0022】
−トナー材料液−
トナー材料液は、トナー(厳密には「母体粒子」である)を構成する材料を油系媒体に溶解乃至分散させてなる。
前記トナーを構成する材料としては、トナーを形成可能である限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、樹脂成分、着色剤、炭化水素系離型剤(ワックス)を少なくとも含み、更に必要に応じて、ワックス分散剤、帯電制御剤などのその他の成分を含んでなる。
なお、本発明の好ましい態様のトナーの製造方法において、予めワックスを樹脂やワックス分散剤と共に液体中で溶融し冷却することでワックス分散液を作製し、前記トナー材料液の調製は、油系媒体中に、樹脂、活性水素基含有化合物、該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体、ワックス分散液、着色剤、帯電制御剤等のトナー材料を、溶解乃至分散させることにより行うことができ、前記トナーを構成する材料の中で、活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(プレポリマー)、ワックス、ワックス分散剤以外の成分は、後述する水系媒体の調製において、該水系媒体中に添加混合してもよいし、あるいは、トナー材料液を水系媒体に添加する際に、トナー材料液と共に水系媒体に添加してもよい。
【0023】
〔有機溶媒〕
前記油系媒体としては、前記トナーを構成する材料を溶解乃至分散可能な溶媒であり、該溶媒は有機溶媒を含有することが好ましい。さらに、有機溶媒はトナーの母体粒子を形成する際又はトナーの母体粒子を形成した後に除去することが好ましい。有機溶媒は除去の容易性の点で沸点が150℃未満の揮発性のものが好ましく、150℃以上の場合溶剤を除去する際にトナーの凝集が起こることがある。
【0024】
この様な溶剤としては例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、等が挙げられる。これらの中でも、トルエン、キシレン、ベンゼン、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、等が好ましく、酢酸エチルが特に好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
前記有機溶剤の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トナー材料100質量部に対し、40〜300質量部が好ましく、60〜140質量部がより好ましく、80〜120質量部が更に好ましい。
【0026】
〔ワックス分散液〕
前記ワックス分散液は、ワックスを液体中に分散する際に一旦ワックスを油相作製で使用する溶媒中で加熱融解し急速冷却し再結晶させた後、ミル等を用いて細かく粉砕することで作製することが好ましい。加熱温度は使用する溶媒で任意に設定できるが、溶媒の沸点より低い温度にしないと溶媒の蒸発が顕著になり、作製が困難になる。
【0027】
前記ワックス分散液は、ミルの分散時間を調整することによりワックスの分散径と1μm以上の粗粉量を制御することが出来る。1μm以上の粗粉量はワックス全体の2質量%以上20質量%以下が望ましい。
粗粉量が20質量%を超えるとワックスをトナーに内包できないため、離型性に乏しいトナーになり、紙の分離性や定着温度幅を確保することが出来ない。また、定着時にワックスが効率的に染み出さず紙との分離性を確保できない。
一方、2質量%より少ないとワックスがトナー表面近傍に分布してしまいトナー同士の凝集がおきやすくなるため、流動性に劣る。また、ワックスが多く染み出しすぎて、高温保管時に凝集しやすくなるという課題が発生する。
このため、ワックスの粗粉量が上記の範囲でワックスを微分散させた状態でトナーを造粒することでワックスを適度に分布させることが可能であり、かつ洗浄工程で加熱することにより、定着時の紙の分離性を十分に確保することが出来る。なお、原理は不明だが、加熱によりトナー表面近傍のワックスが微量に溶け出していると考えている。
【0028】
(ワックス)
本発明で用いられるワックスは、示差走査熱量計により測定されるDSC曲線の吸熱開始温度が35℃〜65℃のもの用いるが好ましい。前記吸熱開始温度が、35℃未満であると、ワックスが耐熱保存性に悪影響を与えることがあり、65℃を超えると、低温での定着時にコールドオフセットを起こし易いことがある。
【0029】
このようなワックスとしては、165℃における重量減少が10質量%以下であるC−H、C−C結合のみで分子鎖を形成する長鎖炭化水素を用いる。質量減少率が10質量%を超えるものを用いると、トナーを定着のため加熱したときにワックスが揮発するため、機器内がワックスで汚染されるという課題が発生する。上記の条件を満たせばワックスとしては特に制限はない。
【0030】
<165℃における質量減少の測定>
本発明における165℃における質量減少の測定は、具体的に例えば次のような手順で決定される。測定装置として島津製作所社製TA−60WS、及びDTG−60を用い、次に示す測定条件で測定する。
(測定条件)
サンプル容器:アルミニウム製サンプルパン
サンプル量:5mg
リファレンス:アルミニウム製サンプルパン(サンプルパンのみ)
雰囲気:窒素(流量50ml/min)
温度条件
開始温度:20℃
昇温速度:10℃/min
終了温度:165℃
保持時間:60分
【0031】
測定した結果は前記島津製作所製データ解析ソフト(TA−60、バージョン1.52)を用いて解析を行なう。
165℃における質量減少の解析方法は165℃0分時の質量をAとし、60分保持した後の質量Bとしたとき下記式にて算出される。
165℃における質量減少=(A−B)/A×100
【0032】
本発明で用いられるワックスの具体的としては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスのような石油ワックスや、ポリエチレンワックスのような合成炭化水素ワックスなどがある。これらのうち、定着時の揮発分が少ない点、及び低温定着性の向上の点で、低融点を有するマイクロクリスタリンワックスが好ましい。
【0033】
前記ワックスの含有量は樹脂成分100質量部に対して3質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
ワックスの含有量が3質量部未満の場合、ワックスの離型機能が十分に働かずトナーが定着ローラーや定着ベルトに接着してしまい、定着後用紙が剥離せず紙詰まりが発生する。ワックスの含有量が10質量部を超えるとトナー表面のワックス量が多くなるため、使用中感光体やキャリア表面に溶融ワックスが付着するフィルミングが発生するという不具合が生じる。
【0034】
(ワックス分散剤)
本発明ではワックス分散剤はスチレン−アクリル系樹脂組成物を用いることで、ワックスを効果的に分散できる。
スチレン−アクリル系樹脂組成物は公知の技術を用いてモノマーをラジカル重合することによって得ることができるが、アクリル酸ブチル、スチレン、アクリロニトリルをモノマーとして、ラジカル開始剤を用いてラジカル重合して得られるブチルアクリレート、アクリロニトリル、スチレン共重合体が望ましい。各モノマーの比率は特に制限されない。
また、得られたブチルアクリレート、アクリロニトリル、スチレン共重合体を得た後、ポリエチレンと反応させて得られる、ブチルアクリレート、アクリロニトリル、スチレン共重合体とポリエチレンのブロックポリマーがより好ましい。ワックスと親和性の高いポリエチレン部位とポリエステル樹脂と親和性のあるスチレンアクリル樹脂を同時に有することで、トナー中にワックスと定着助剤を効果的に分散することが可能である。
【0035】
ワックス分散剤量は、ワックスに対して30質量%以上100質量%未満である。ワックス分散剤量によりトナー中のワックス分散状態を制御できていると考えている。すなわち、30質量%未満ではワックスが分散されずトナー表面に析出してしまうため、フィルミングが起こるという不具合が発生し、100質量%以上であると加熱溶融時にワックスがトナー中に取り込まれ染み出しにくくなるため、用紙の剥離性が悪くなるという不具合が発生する。
【0036】
〔樹脂成分〕
前記樹脂成分は、紙等の記録媒体に対し接着性を示すものであり、結着樹脂(結着樹脂A)及び/又は結着樹脂前駆体を含有し、結着樹脂前駆体が活性水素基含有化合物及び該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体であることが好ましい。本発明のトナーは、結着樹脂として、活性水素基含有化合物及び該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(結着樹脂前駆体)を水系媒体中で反応させてなる接着性ポリマー(結着樹脂B)を含んでいることが好ましい。これらを含んでいることで、容易にトナー中にゲル分を添加することが可能となる。更に公知の結着樹脂から適宜選択した結着樹脂(結着樹脂A)を含んでいてもよい。
【0037】
本発明において、結着樹脂(結着樹脂A)は、目的に応じて適宜選択することができ、ポリエステル樹脂等を用いることができるが、変性されていないポリエステル樹脂(未変性ポリエステル樹脂)が好ましい。これにより、低温定着性及び光沢性を向上させることができる。前記未変性ポリエステル樹脂としては、ポリオールと多官能カルボン酸の重縮合物等が挙げられる。
【0038】
前記結着樹脂(結着樹脂A)の重量平均分子量は、3,000以上30,000以下であることが好ましく、4,000〜20,000がより好ましい。重量平均分子量が3,000未満であると、耐ホットオフセット性が低下することがある。このため、前記重量平均分子量が3,000未満である成分の含有量は、0質量%〜28質量%であることが好ましい。一方、前記重量平均分子量が30,000を超えると、低温定着性が低下することがある。
前記結着樹脂(結着樹脂A)のガラス転移温度は、30℃〜70℃が好ましく、35℃〜65℃がより好ましい。前記ガラス転移温度が、30℃未満であると、トナーの耐熱保存性が悪化することがあり、70℃を超えると、低温定着性が十分でないことがある。なお、結着樹脂として、架橋反応又は伸長反応したポリエステル樹脂を含有するトナーは、ガラス転移温度が低くても良好な保存性を有する。
【0039】
未変性ポリエステル樹脂の水酸基価は、5mgKOH/g以上であることが好ましく、10mgKOH/g〜120mgKOH/gがより好ましく、20mgKOH/g〜80mgKOH/gが更に好ましい。前記水酸基価が、5mgKOH/g未満であると、耐熱保存性と低温定着性とが両立しにくくなることがある。
前記未変性ポリエステル樹脂の酸価は、10mgKOH/g〜30mgKOH/gであることが好ましい。これにより、トナーは、負帯電しやすくなる。
【0040】
前記結着樹脂前駆体は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択されるが、活性水素基を有する化合物と反応可能な重合体(以下「プレポリマー」と称することがある)は、公知の樹脂等の中から適宜選択変性することができ、ポリオール樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂及びこれらの誘導体等が挙げられる。中でも、溶融時の高流動性、透明性の点で、ポリエステル樹脂を用いることが好ましい。これらは、単独で
使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0041】
前記プレポリマーが有する活性水素基と反応可能な官能基としては、イソシアネート基、エポキシ基、カルボンキシル基、化学構造式−COC−で示される官能基等が挙げられるが、中でも、イソシアネート基が好ましい。プレポリマーは、このような官能基の一つを有してもよいし、二種以上を有してもよい。
【0042】
プレポリマーとしては、高分子成分の分子量を調節し易く、乾式トナーにおけるオイルレス低温定着特性、特に、定着用加熱媒体への離型オイル塗布機構の無い場合でも良好な離型性及び定着性を確保できることから、ウレア結合を生成することが可能なイソシアネート基等を有するポリエステル樹脂を用いることが好ましい。
前記イソシアネート基を含有するポリエステルプレポリマーは、目的に応じて適宜選択することができる。具体的には、ポリオールと多官能カルボン酸を重縮合することにより得られる活性水素基を有するポリエステル樹脂と、多官能イソシアネートの反応生成物等が挙げられる。なお、イソシアネート基含有ポリエステル樹脂と活性水素基を有する化合物を反応させる際にアルコール類を添加することにより、ウレタン結合を形成してもよい。
【0043】
結着樹脂及び結着樹脂前駆体に用いられる前記ポリオールは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ジオール、三価以上のアルコール、ジオールと三価以上のアルコールの混合物等を用いることができるが、ジオール又はジオールと少量の三価以上のアルコールの混合物が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
ジオールの具体例としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のアルキレングリコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のオキシアルキレン基を有するジオール;1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の脂環式ジオール;脂環式ジオールに、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したもの;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール類;ビスフェノール類に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したもの等のビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物等が挙げられる。なお、アルキレングリコールの炭素数は、2〜12であることが好ましい。これらの中でも、炭素数が2〜12であるアルキレングリコール又はビスフェノール類のアルキンオキシド付加物が好ましく、ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物又はビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物と炭素数が2〜12のアルキレングリコールの混合物が特に好ましい。
【0045】
三価以上のアルコールとしては、三価以上の脂肪族アルコール、三価以上のポリフェノール類、三価以上のポリフェノール類のアルキレンオキシド付加物等を用いることができる。三価以上の脂肪族アルコールの具体例としては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。三価以上のポリフェノール類の具体例としては、トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等が挙げられる。三価以上のポリフェノール類のアルキレンオキシド付加物の具体例としては、三価以上のポリフェノール類に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したもの等が挙げられる。
【0046】
ジオールと三価以上のアルコールを混合して用いる場合、ジオールに対する三価以上のアルコールの質量比率は、0.01質量%〜10質量%であることが好ましく、0.01質量%〜1質量%がより好ましい。
【0047】
前記多官能カルボン酸は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ジカルボン酸、三価以上のカルボン酸、ジカルボン酸と三価以上のカルボン酸の混合物等を用いることができるが、ジカルボン酸又はジカルボン酸と少量の三価以上の多官能カルボン酸の混合物が好ましい。これらは、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0048】
ジカルボン酸の具体例としては、二価のアルカン酸、二価のアルケン酸、芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。二価のアルカン酸の具体例としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等が挙げられる。二価のアルケン酸の炭素数は、4〜20であることが好ましく、具体的には、マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。芳香族ジカルボン酸の炭素数は、8〜20であることが好ましく、具体的には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも、炭素数が4〜20の二価のアルケン酸又は炭素数が8〜20の芳香族ジカルボン酸が好ましい。
【0049】
三価以上のカルボン酸としては、三価以上の芳香族カルボン酸等を用いることができる。三価以上の芳香族カルボン酸の炭素数は、9〜20であることが好ましく、具体的には、トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
【0050】
多官能カルボン酸としては、ジカルボン酸、三価以上のカルボン酸、及びジカルボン酸と三価以上のカルボン酸の混合物のいずれかの酸無水物又は低級アルキルエステルを用いることもできる。低級アルキルエステルの具体例としては、メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル等が挙げられる。
ジカルボン酸と三価以上のカルボン酸を混合して用いる場合、ジカルボン酸に対する三価以上のカルボン酸の質量比率は、0.0質量1%〜10質量%であることが好ましく、0.01質量%〜1質量%がより好ましい。
【0051】
ポリオールと多官能カルボン酸を重縮合させる際の混合比は、多官能カルボン酸のカルボキシル基に対するポリオールの水酸基の当量比は、通常、1〜2であることが好ましく、1〜1.5がより好ましく、1.02〜1.3が特に好ましい。
【0052】
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー中のポリオール由来の構成単位の含有量は、0.5質量%〜40質量%であることが好ましく、1質量%〜30質量%がより好ましく、2質量%〜20質量%が特に好ましい。前記含有量が、0.5質量%未満であると、耐ホットオフセット性が低下し、トナーの耐熱保存性と低温定着性とを両立させることが困難になることがあり、40質量%を超えると、低温定着性が低下することがある。
【0053】
多官能イソシアネートは、目的に応じて適宜選択することができるが、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、イソシアヌレート類、これらをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタム等でブロックしたもの等が挙げられる。
【0054】
脂肪族ジイソシアネートの具体例としては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトカプロン酸メチル、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、テトラメチルヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環式ジイソシアネートの具体例としては、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
芳香族ジイソシアネートの具体例としては、トリレンジイソシアネート、ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトジフェニル、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメチルジフェニル、4,4’−ジイソシアナト−3−メチルジフェニルメタン、4,4’−ジイソシアナト−ジフェニルエーテル等が挙げられる。
芳香脂肪族ジイソシアネートの具体例としては、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
イソシアヌレート類の具体例としては、トリス(イソシアナトアルキル)イソシアヌレート、トリス(イソシアナトシクロアルキル)イソシアヌレート等が挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0055】
前記活性水素基を有する化合物は、活性水素基に対する反応性を有する重合体が水系媒体中で伸長反応、架橋反応等する際の伸長剤、架橋剤等として作用する。
前記活性水素基の具体例としては、水酸基(アルコール性水酸基及びフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基等が挙げられる。なお、活性水素基は、単独であってもよいし、二種以上の混合物であってもよい。
前記活性水素基を有する化合物は、目的に応じて適宜選択することができるが、活性水素基に対する反応性を有する重合体がイソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーである場合には、ポリエステルプレポリマーと伸長反応、架橋反応等により高分子量化できることから、アミン類が好適である。
【0056】
前記アミン類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、具体的には、ジアミン、三価以上のアミン、アミノアルコール、アミノメルカプタン、アミノ酸及びこれらのアミノ基をブロックしたもの等が挙げられるが、ジアミン及びジアミンと少量の三価以上のアミンの混合物が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0057】
前記ジアミンとしては、芳香族ジアミン、脂環式ジアミン、脂肪族ジアミン等が挙げられる。
芳香族ジアミンの具体例としては、フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。脂環式ジアミンの具体例としては、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン等が挙げられる。脂肪族ジアミンの具体例としては、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。三価以上のアミンの具体例としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等が挙げられる。アミノアルコールの具体例としては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリン等が挙げられる。アミノメルカプタンの具体例としては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタン等が挙げられる。アミノ酸の具体例としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸等が挙げられる。アミノ基をブロックしたものの具体例としては、アミノ基を、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類でブロックすることにより得られるケチミン化合物、オキサゾリゾン化合物等が挙げられる。
【0058】
なお、活性水素基を有する化合物と、活性水素基に対する反応性を有する重合体の伸長反応、架橋反応等を停止させるには、反応停止剤を用いることができる。反応停止剤を用いると、接着性基材の分子量等を所望の範囲に制御することができる。反応停止剤の具体例としては、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミン等のモノアミン及びこれらのアミノ基をブロックしたケチミン化合物等が挙げられる。
【0059】
アミン類のアミノ基の当量に対するポリエステルプレポリマーのイソシアネート基の当量の比は、1/3〜3であることが好ましく、1/2〜2がより好ましく、2/3〜1.5が特に好ましい。この比が、1/3未満であると、低温定着性が低下することがあり、3を超えると、ウレア変性ポリエステル系樹脂の分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が低下することがある。
【0060】
ポリエステルプレポリマーが一分子当たりに有するイソシアネート基の平均数は、1以上であることが好ましく、1.2〜5がより好ましく、1.5〜4が更に好ましい。この平均数が、1未満であると、ウレア変性ポリエステル系樹脂の分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が低下することがある。
【0061】
活性水素基に対する反応性を有する重合体の重量平均分子量は、10000〜60000が好ましく、20000〜50000がより好ましい。前記重量平均分子量が、10000未満であると、耐熱保存性が低下することがあり、60000を超えると、低温定着性が低下することがある。
【0062】
トナーが未変性ポリエステル樹脂を含有する場合、未変性ポリエステル樹脂に対するイソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーの質量比は、5/95〜25/75であることが好ましく、10/90〜25/75がより好ましい。前記質量比が、5/95未満であると、耐ホットオフセット性が低下することがあり、25/75を超えると、低温定着性や画像の光沢性が低下することがある。
【0063】
前記未変性ポリエステル樹脂、および前記プレポリマーを製造するにあたって、重合触媒を用いることができる。触媒の具体例としては、ジブチルスズラウレート、ジオクチルスズラウレート等が挙げられる。
【0064】
本発明のトナーは、上記成分以外にも、着色剤、帯電制御剤、樹脂微粒子、無機微粒子、流動性向上剤、クリーニング性向上剤、磁性材料、金属石鹸等を更に含有することができる。
【0065】
〔着色剤〕
前記着色剤としては、特に制限はなく、通常使用される樹脂を適宜選択して使用することができるが、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びこれらの混合物、などが挙げられる。
前記着色剤の含有量としては、トナーに対して1〜15質量%が好ましく、3〜10質量%がより好ましい。
【0066】
〔帯電制御剤〕
前記帯電制御剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができるが、有色材料を用いると色調が変化することがあるため、無色又は白色に近い材料を用いることが好ましい。具体的には、トリフェニルメタン系染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、フッ素変性四級アンモニウム塩を含む四級アンモニウム塩、アルキルアミド、リンの単体又はその化合物、タングステンの単体又はその化合物、フッ素系界面活性剤、サリチル酸の金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0067】
前記帯電制御剤は、市販品を使用してもよく、市販品としては、四級アンモニウム塩のボントロンP−51、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体のLR−147(日本カーリット社製)、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子等が挙げられる。
【0068】
前記帯電制御剤は、マスターバッチと共に溶融混練された後に溶解乃至分散してもよく、トナーの各成分と共に溶媒中で溶解乃至分散してもよく、トナーを製造した後にトナーの表面に固定してもよい。
トナー中の帯電制御剤の含有量は、結着樹脂の種類、添加剤の有無、分散方法等により異なり、一概に規定することができないが、結着樹脂に対して、0.1質量%〜10質量%であることが好ましく、0.2質量%〜5質量%がより好ましい。前記含有量が、0.1質量%未満であると、帯電制御性が得られないことがあり、10質量%を超えると、トナーの帯電性が大きくなりすぎ、現像ローラとの静電引力が増大し、現像剤の流動性低下や画像濃度の低下を招くことがある。
【0069】
〔樹脂微粒子〕
前記樹脂微粒子は、水系媒体中で水性分散液を形成しうる樹脂であれば特に制限はなく、公知の樹脂の中から目的に応じて適宜選択することができ、熱可塑性樹脂であってもよいし、熱硬化性樹脂であってもよい。具体的には、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。中でも、微細な球状の樹脂粒子の水性分散液が得られやすいことから、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂及びポリエステル樹脂からなる群より選択される一種以上の樹脂であることが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0070】
なお、ビニル樹脂は、ビニルモノマーを単独重合又は共重合することにより得られる樹脂であり、具体的には、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸−アクリル酸エステル重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体等が挙げられる。
【0071】
また、樹脂微粒子としては、複数の不飽和基を有するモノマーを重合することにより得られる共重合体を用いることもできる。複数の不飽和基を有するモノマーは、目的に応じて適宜選択することができ、具体的には、メタクリル酸エチレンオキシド付加物硫酸エステルのナトリウム塩エレミノールRS−30(三洋化成工業社製)、ジビニルベンゼン、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート等が挙げられる。
【0072】
前記樹脂微粒子は、公知の方法を用いて重合することにより得ることができるが、樹脂粒子の水性分散液として用いることが好ましい。樹脂微粒子の水性分散液の調製方法としては、ビニル樹脂の場合、懸濁重合法、乳化重合法、シード重合法又は分散重合法を用いてビニルモノマーを重合することにより、樹脂粒子の水性分散液を製造する方法;ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の重付加又は縮合系樹脂の場合、モノマー、オリゴマー等の前駆体又はその溶液を適当な分散剤の存在下、水性媒体中に分散させた後、加熱又は硬化剤を添加して硬化させて、樹脂微粒子の水性分散液を製造する方法、モノマー、オリゴマー等の前駆体又はその溶液中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化する方法;樹脂を機械回転式、ジェット式等の微粉砕機を用いて粉砕、分級することにより、樹脂微粒子を得た後、適当な分散剤の存在下で水中に分散させる方法、樹脂の溶液を霧状に噴霧することにより樹脂微粒子を得た後、樹脂微粒子を適当な分散剤の存在下で水中に分散させる方法、樹脂の溶液に貧溶剤を添加するか、溶剤に加熱溶解した樹脂溶液を冷却することにより、樹脂微粒子を析出させ、溶媒を除去して樹脂微粒子を得た後、樹脂微粒子を適当な分散剤の存在下で水中に分散させる方法、樹脂の溶液を適当な分散剤の存在下で水性媒体中に分散させた後、加熱、減圧等により溶剤を除去する方法、樹脂の溶液中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化する方法等が挙げられる。
【0073】
〔無機微粒子〕
前記無機微粒子は、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、具体的には、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0074】
前記無機微粒子の一次粒子径は、5nm〜2μmであることが好ましく、5nm〜500nmがより好ましい。また、無機微粒子のBET法による比表面積は、20m/g〜50m/gであることが好ましい。
トナー中の無機微粒子の含有量は、0.01質量%〜5.0質量%であることが好ましく、0.01質量%〜5.0質量%がより好ましい。
【0075】
〔流動性向上剤〕
前記流動性向上剤を用いて表面処理すると、トナー表面の疎水性が向上し、高湿度下においても流動特性や帯電特性の低下を抑制することができる。流動性向上剤の具体例としては、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル等が挙げられる。
【0076】
〔クリーニング性向上剤〕
前記クリーニング性向上剤をトナーに添加すると、感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤が除去されやすくなる。クリーニング性向上剤の具体例としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩、ポリメタクリル酸メチル粒子、ポリスチレン粒子等のソープフリー乳化重合を用いて得られる樹脂粒子等が挙げられる。樹脂粒子は、粒度分布が狭いことが好ましく、体積平均粒子径が0.01μm〜1μmであることが好ましい。
【0077】
〔磁性材料〕
前記磁性材料としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、鉄粉、マグネタイト、フェライト等が挙げられる。これらの中でも、色調の点で白色の磁性材料が好ましい。
【0078】
<トナーの製造方法>
前記トナーの製造方法としては、少なくとも樹脂成分と、ワックスと、ワックス分散剤と、着色剤とを含有する油相を水系媒体中で懸濁、造粒することが好ましい。
前記重合法によるトナーの製造方法としては、接着性基材を生成しながら、トナー母体粒子を形成する方法を以下に示す。このような方法においては、水系媒体相の調製、トナー材料を含有する液体の調製、トナー材料の乳化又は分散、接着性基材の生成、溶媒の除去、活性水素基に対する反応性を有する重合体の合成、活性水素基を有する化合物の合成等を行う。
水系媒体の調製は、樹脂粒子を水系媒体に分散させることにより行うことができる。樹脂粒子の水系媒体中の添加量は、0.5質量%〜10質量%が好ましい。
【0079】
トナー材料を含有する液体の調製は、溶媒中に、活性水素基を有する化合物、活性水素基に対する反応性を有する重合体、着色剤、ワックス、ワックス分散剤、帯電制御剤、未変性ポリエステル樹脂等のトナー材料を、溶解又は分散させることにより行うことができる。
なお、トナー材料の中で、活性水素基に対する反応性を有する重合体、ワックス、ワックス分散剤以外の成分は、樹脂粒子を水系媒体に分散させる際に水系媒体中に添加混合してもよいし、トナー材料を含有する液体を水系媒体に添加する際に、水系媒体に添加してもよい。
【0080】
トナー材料の乳化又は分散は、トナー材料を含有する液体を、水系媒体中に分散させることにより行うことができる。そして、トナー材料を乳化又は分散させる際に、活性水素基を有する化合物と活性水素基に対する反応性を有する重合体を伸長反応及び/又は架橋反応させることにより、接着性基材が生成する。
ウレア変性ポリエステル系樹脂等の接着性基材は、例えば、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー等の活性水素基に対する反応性を有する重合体を含有する液体を、アミン類等の活性水素基を含有する化合物と共に、水系媒体中で乳化又は分散させ、水系媒体中で両者を伸長反応及び/又は架橋反応させることにより生成させてもよく、トナー材料を含有する液体を、予め活性水素基を有する化合物を添加した水系媒体中で乳化又は分散させ、水系媒体中で両者を伸長反応及び/又は架橋反応させることにより生成させてもよく、トナー材料を含有する液体を水系媒体中で乳化又は分散させた後で、活性水素基を有する化合物を添加し、水系媒体中で粒子界面から両者を伸長反応及び/又は架橋反応させることにより生成させてもよい。また、反応を促進する目的で、乳化又は分散後得られたスラリーの状態で、加熱しても良い。なお、粒子界面から両者を伸長反応及び/又は架橋反応させる場合、生成するトナーの表面に優先的にウレア変性ポリエステル樹脂が形成され、トナー中にウレア変性ポリエステル樹脂の濃度勾配を設けることもできる。
【0081】
乳化又は分散後のスラリーの状態で加熱して接着性基材を生成させるための反応条件は、活性水素基に対する反応性を有する重合体と活性水素基を有する化合物の組み合わせに応じて適宜選択することができる。反応時間は、10分間〜40時間であることが好ましく、2時間〜24時間がより好ましい。反応温度は、150℃以下であることが好ましく、40℃〜98℃がより好ましい。反応させる工程は、乳化または分散直後でも、脱溶媒した後でも構わない。
【0082】
水系媒体中において、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー等の活性水素基と反応可能な重合体を含有する分散液を安定に形成する方法としては、水系媒体相中に、活性水素基に対する反応性を有する重合体、着色剤、ワックス、ワックス分散剤、帯電制御剤、未変性ポリエステル樹脂等のトナー材料を溶媒に溶解又は分散させて調製した液体(油相)を添加し、せん断力により分散させる方法等が挙げられる。
【0083】
分散は、公知の分散機等を用いて行うことができ、分散機としては、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波分散機等が挙げられるが、分散体の粒子径を2〜20μmに制御することができることから、高速せん断式分散機が好ましい。
高速せん断式分散機を用いた場合、回転数、分散時間、分散温度等の条件は、目的に応じて適宜選択することができる。回転数は、1,000〜30,000rpmであることが好ましく、5,000〜20,000rpmがより好ましい。分散時間は、バッチ方式の場合、0.1〜5分であることが好ましく、分散温度は、加圧下において、150℃以下であることが好ましく、40℃〜98℃がより好ましい。なお、分散温度は、高温である方が一般に分散が容易である。
【0084】
トナー材料を乳化又は分散させる際の、水系媒体の使用量は、トナー材料100質量部に対して、50質量部〜2000質量部であることが好ましく、100質量部〜1000質量部がより好ましい。前記使用量が、50質量部未満であると、トナー材料の分散状態が悪くなって、所定の粒子径のトナー母体粒子が得られないことがあり、2000質量部を超えると、生産コストが高くなることがある。
【0085】
トナー材料を含有する液体を乳化又は分散する工程においては、油滴等の分散体を安定化させ、所望の形状にする共に粒度分布をシャープにする観点から、水系媒体に分散剤を含有させておくのが好ましい。
前記分散剤は、目的に応じて適宜選択することができ、界面活性剤、難水溶性の無機化合物分散剤、高分子系保護コロイド等が挙げられるが、界面活性剤が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0086】
前記界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤等を用いることができる。
前記陰イオン界面活性剤としては、例えばアルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステル、フルオロアルキル基を有するものが好適に用いられる。アルキルベンゼンスルホン酸塩の例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルポリオキシエチレン硫酸ナトリウムなどがあげられる。α−オレフィンスルホン酸塩としては、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩などが上げられる。前記フルオロアルキル基を有する陰イオン界面活性剤としては、炭素数が2〜10のフルオロアルキルカルボン酸又はその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[ω−フルオロアルキル(C6〜C11)オキシ]−1−アルキル(C3〜C4)スルホン酸ナトリウム、3−[ω−フルオロアルカノイル(C6〜C8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸又はその金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7〜C13)又はその金属塩、パーフルオロアルキル(C4〜C12)スルホン酸又はその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6〜C10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C6〜C16)エチルリン酸エステル等が挙げられる。
【0087】
前記フルオロアルキル基を有する界面活性剤の市販品としては、例えばサーフロンS−111、S−112、S−113(以上、旭硝子社製)、フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129(以上、住友3M社製)、ユニダインDS−101、DS−102(以上、ダイキン工業社製)、メガファックF−110、F−120、F−113、F−191、F−812、F−833(以上、大日本インキ社製)、エクトップEF−102、103、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204(以上、トーケムプロダクツ社製)、フタージェント100、150(以上、ネオス社製)などが挙げられる。
【0088】
前記陽イオン界面活性剤としては、例えばアルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリン等のアミン塩型界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウム等の四級アンモニウム塩型界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも、フルオロアルキル基を有する脂肪族一級、二級又は三級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩等の脂肪族四級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等好ましい。
【0089】
陽イオン界面活性剤の市販品としては、例えばサーフロンS−121(旭硝子社製);フロラードFC−135(住友3M社製);ユニダインDS−202(ダイキン工業杜製)、メガファックF−150、F−824(大日本インキ社製);エクトップEF−132(ト−ケムプロダクツ社製);フタージェントF−300(ネオス社製)等を用いることが好ましい。
【0090】
前記非イオン界面活性剤としては、例えば脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体等が挙げられる。
また、前記両性界面活性剤としては、例えばアラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシン、N−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムべタイン等が挙げられる。
【0091】
前記難水溶性の無機化合物分散剤としては、例えばリン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイト等が挙げられる。
【0092】
高分子系保護コロイドとしては、例えばカルボキシル基を有するモノマー、水酸基を有する(メタ)アクリル酸アルキル、ビニルエーテル、カルボン酸ビニル、アミドモノマー、酸塩化物のモノマー、窒素原子又はその複素環を有するモノマー等を重合することにより得られるホモポリマー又はコポリマー、ポリオキシエチレン系樹脂、セルロース類等が挙げられる。なお、上記のモノマーを重合することにより得られるホモポリマー又はコポリマーは、ビニルアルコール由来の構成単位を有するものも含む。
【0093】
前記カルボキシル基を有するモノマーとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等が挙げられる。水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体としては、例えばアクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、グリセリンモノアクリレート、グリセリンモノメタクリレート等が挙げられる。ビニルエーテルの具体としては、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル等が挙げられる。カルボン酸ビニルとしては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等が挙げられる。アミドモノマーとしては、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等が挙げられる。酸塩化物のモノマーとしては、例えばアクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリド等が挙げられる。窒素原子又はその複素環を有するモノマーとしては、例えばビニルビリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミン等が挙げられる。ポリオキシエチレン系樹脂としては、例えばポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリン酸フェニル、ポリオキシエチレンペラルゴン酸フェニル等が挙げられる。セルロース類としては、例えばメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
【0094】
また、前記分散剤としては、リン酸カルシウム塩等の酸、アルカリに溶解可能なもの等も挙げられる。分散剤として、リン酸カルシウムを用いた場合は、塩酸等でカルシウム塩を溶解させて、水洗する方法、酵素で分解する方法等を用いて、リン酸カルシウム塩を除去することができる。
【0095】
乳化スラリー等の分散液から有機溶媒を除去する方法としては、反応系全体を徐々に昇温させて、油滴中の有機溶媒を蒸発させる方法、分散液を乾燥雰囲気中に噴霧して、油滴中の有機溶媒を除去する方法、減圧して溶媒を蒸発させる方法等が挙げられる。
【0096】
前記分散剤を用いた場合は、有機溶媒が除去された後に、洗浄等を行うことにより分散剤を除去することが好ましい。また、分散剤を除去した後、水を加えスラリー状態として加熱することが好ましい。加熱はスラリー温度が45℃以上65℃以下で1分以上2時間以下の任意の時間で行うことが好ましい。分散剤の洗浄工程後に新たに加熱工程を加えることでトナー母体の凹凸が滑らかになり、外添剤が均一に付着するので転写性が改善される。
加熱温度はトナーを結着樹脂のガラス転移温度(Tg)以上+10℃以下の温度で加熱することが望ましい。結着樹脂のTg以上の温度に加熱することにより、トナーの結着樹脂が変形しやすくなり、トナーの凹凸が滑らかになる。ただし、結着樹脂のTg+10℃を超える温度で加熱した場合はトナー母体同士が融着したり凝集したりするので、粒度分布が悪化し不具合である。
【0097】
分散剤を除去し、加熱工程を経た後、乾燥等を行うことによりトナー母体粒子が形成される。トナー母体粒子に対しては、更に分級等を行うことができる。分級は、液中でサイクロン、デカンター、遠心分離等により、微粒子部分を取り除いてもよいし、乾燥後に分級操作を行ってもよい。
【0098】
このようにして得られたトナー母体粒子は、前記無機粒子と混合してもよい。このとき、機械的衝撃力を印加することにより、トナー母体粒子の表面からワックス等の粒子が脱離するのを抑制することができる。
機械的衝撃力を印加する方法としては、高速で回転する羽根を用いて混合物に衝撃力を印加する方法、高速気流中に混合物を投入し、加速させて粒子同士又は粒子を適当な衝突板に衝突させる方法等が挙げられる。この方法に用いる装置としては、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して粉砕エアー圧力を下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所社製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢等が挙げられる。
【0099】
〔トナー表面近傍のワックス量、ワックス粒子の粒径分布〕
本発明におけるトナーは、その形状、大きさ等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、表面から0.3μmまでの深さ領域に存在する前記ワックスの量が、FTIR−ATR(全反射吸収赤外分光)法により求められる前記ワックス由来のピーク(2,850cm−1)と前記結着樹脂由来のピーク(828cm−1)との強度比(P2850/P828)で、0.01〜0.20の範囲にあり、かつレーザー回折式分布径測定装置で測定される母体粒子中の分散径1μm以上のワックスがワックス全体の2質量%以上20質量%以下のもののである。
【0100】
トナー表面近傍のワックス量を規定する方法としてFTIR−ATR(全反射吸収赤外分光)法により求められる、2850cm−1と828cm−1との強度比(P2850/P828)で表すことが出来、前記強度比が0.01〜0.20の時に定着特性とワックスによる他部材への汚染防止の両立が可能となった。この理由については明確ではないが、2850cm−1の吸収はワックスの吸収を含むことが推定され、また828cm−1の吸収は結着樹脂であるポリエステル樹脂に使用している芳香族に由来する吸収を含むことが考えられる。これより前記強度比(P2850/P828)が0.01〜0.20になることで、トナー表面のワックス露出がある一定量になっていると考えられる。これより、0.01未満になるとトナー表面のワックス露出が減り定着特性の悪化、0.20を超えるとトナー表面のワックス露出量が増え、他部材への汚染が起こると考えられる。
【0101】
また、トナーに含有されるワックス粒子の粒径分布は、トナーをクロロホルム等のバインダー樹脂を溶解する有機溶剤に溶解して遠心分離し、浮遊してくるワックス粒子を集め、これをレーザー回折式粒度分布測定器で測定することができる。
レーザー回折式粒度分布測定器で測定される分散径1μm以上のワックスが全体の2質量%以上20質量%以下であると、適切な紙分離性を確保しなが優れた流動性という効果がみられる。一方、母体粒子中の分散径1μm以上のワックスが全体の2%未満であると表面に微細なワックス粒子が集まりやすく、トナー同士が凝集しやすくなるうえ、ワックス粒子が小さくなる紙分離性が小さくとなって不具合であり、20%を超えるとワックスをトナー中に含有しにくくなったり、粒子の大きい粗粉トナーが増え分布が悪化する不具合が生じる。
【0102】
〔外添剤〕
トナーの流動性や保存性、現像性、転写性、耐久性を高めるために、トナー母体粒子に外添剤として、酸化物微粒子、疎水性シリカ微粉末等の無機微粒子や、高分子系の樹脂微粒子を添加混合してもよい。転写性や耐久性を低下させるワックスをこれらの外添剤で覆い隠すこととトナー表面が微粒子で覆われることによる接触面積が低下することによりこの効果が得られる。これらの無機微粒子はその表面が疎水化処理されていることが好ましく、疎水化処理されたシリカや酸化チタン、といった金属酸化物微粒子が好適に用いられる。疎水化処理されたシリカの外添量より疎水化処理された酸化チタンの外添量を多くすることにより湿度に対する帯電の安定性にも優れ、トナー転写率の改善および耐フィルミング性の良いトナーとすることができる。
【0103】
前記無機微粒子や前記樹脂微粒子の一次粒子径は、5nm〜2μmのものが好ましく用いられる。無機微粒子の使用割合は、種類にもよるが、トナー粒子に対してその0.01〜5質量%の範囲で用いられる。無機微粒子の具体例としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等を挙げることができる。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。また、高分子系の樹脂微粒子としては、例えば、ソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられる。
【0104】
前記疎水化処理剤の代表例としては以下のものが挙げられる。ジメチルジクロルシラン、トリメチルクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルジクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、p−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、クロルメチルトリクロルシラン、p−クロルフェニルトリクロルシラン、3−クロルプロピルトリクロルシラン、3−クロルプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメトキシシラン、ビニル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ジビニルジクロルシラン、ジメチルビニルクロルシラン、オクチル−トリクロルシラン、デシル−トリクロルシラン、ノニル−トリクロルシラン、(4−t−プロピルフェニル)−トリクロルシラン、(4−t−ブチルフェニル)−トリクロルシラン、ジペンチル−ジクロルシラン、ジヘキシル−ジクロルシラン、ジオクチル−ジクロルシラン、ジノニル−ジクロルシラン、ジデシル−ジクロルシラン、ジドデシル−ジクロルシラン、ジヘキサデシル−ジクロルシラン、(4−t−ブチルフェニル)−オクチル−ジクロルシラン、ジオクチル−ジクロルシラン、ジデセニル−ジクロルシラン、ジノネニル−ジクロルシラン、ジ−2−エチルヘキシル−ジクロルシラン、ジ−3,3−ジメチルペンチル−ジクロルシラン、トリヘキシル−クロルシラン、トリオクチル−クロルシラン、トリデシル−クロルシラン、ジオクチル−メチル−クロルシラン、オクチル−ジメチル−クロルシラン、(4−t−プロピルフェニル)−ジエチル−クロルシラン、オクチルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン、ジエチルテトラメチルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、ヘキサトリルジシラザン等。この他チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤も使用可能である。
【0105】
以上の外添剤の混合には、一般の粉体の混合機が用いられるが、ジャケット等を装備して内部の温度を調節できることが好ましい。例えば、V型混合機、ロッキングミキサー、レーディゲミキサー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサーなどが好ましく用いられる。
【0106】
〔トナーの物性等〕
本発明のトナーの好ましい平均円形度、平均粒子径、熱特性、ガラス転移温度(Tg)、トナーの色は次ぎのとおりである。
【0107】
(トナーの平均円形度)
本発明のトナーの平均円形度は、0.955〜0.975が好ましく、0.960〜0.970がより好ましい。なお、円形度は、試料の投影面積と等しい面積を有する円の周囲長を試料の周囲長で除した値である。トナー中の円形度が0.955未満である粒子の含有量は、15%以下であることが好ましい。平均円形度が0.955未満であると、満足できる転写性やチリのない高画質画像が得られないことがあり、0.975を超えると、ブレードクリーニング等を採用している画像形成装置では、感光体上及び転写ベルト等のクリーニング不良が発生し、画像上の汚れが発生することがある。例えば、写真画像等の画像面積率の高い画像を形成する場合、給紙不良等で未転写画像を形成したトナーが感光体上に蓄積して画像の地汚れが発生したり、感光体を接触帯電させる帯電ローラ等を汚染して、本来の帯電能力を発揮できなくしたりすることがある。
【0108】
平均円形度は、平板上の撮像部検知帯にトナーを含有する懸濁液を通過させ、CCDカメラで光学的に粒子画像を検知し、解析する光学的検知帯の手法等により計測することができ、フロー式粒子像分析装置FPIA−3000(シスメックス社製)を用いて計測することができる。
【0109】
(トナーの平均粒子径)
本発明のトナーの体積平均粒子径(Dv)は、3μm〜8μmであることが好ましく、4μm〜7μmがより好ましい。体積平均粒子径(Dv)が3μm未満であると、二成分現像剤では、現像装置における長期の撹拌においてキャリアの表面にトナーが融着し、キャリアの帯電能力を低下させることがある。また、一成分現像剤では、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するブレード等の部材へのトナー融着が発生することがある。一方、体積平均粒子径(Dv)が、8μmを超えると、高解像で高画質の画像を得ることが難しくなり、現像剤中のトナーの収支が行われた場合にトナーの粒子径の変動が大きくなることがある。
【0110】
本発明のトナーの個数平均粒子径(Dn)に対する体積平均粒子径の比(Dv/Dn)は、1.00〜1.25であることが好ましく、1.05〜1.25がより好ましい。これにより、二成分現像剤では、長期にわたるトナーの収支が行われても、現像剤中のトナー粒子径の変動が少なく、現像装置における長期の攪拌においても、良好で安定した現像性が得られる。また、一成分現像剤では、トナーの収支が行われても、トナーの粒子径の変動が少なくなると共に、現像ローラへのトナーのフィルミングやトナーを薄層化するブレード等の部材へのトナーの融着を抑制し、現像装置の長期使用(攪拌)においても、良好で安定した現像性が得られるため、高画質の画像を得ることができる。この比が1.25を超えると、高解像で高画質の画像を得ることが難しくなり、現像剤中のトナーの収支が行われた場合に、トナーの粒子径の変動が大きくなることがある。
【0111】
ここで、前記体積平均粒子径及び個数平均粒子径に対する体積平均粒子径の比は、粒度測定器マルチサイザーIII(ベックマン・コールター社製)を用いて、以下のようにして測定することができる。まず、約1質量%塩化ナトリウム水溶液等の電解質水溶液100〜150ml中に、分散剤として、アルキルベンゼンスルホン酸塩等の界面活性剤を0.1〜5ml添加する。次に、測定試料を約2〜20mg添加する。試料が懸濁した電解質水溶液に、超音波分散機を用いて約1〜3分間分散処理を行った後、100μmのアパーチャーを用いて、トナーの体積及び個数を測定し、体積分布及び個数分布を算出する。得られた分布から、トナーの体積平均粒子径及び個数平均粒子径を求めることができる。
【0112】
(トナーの熱特性)
トナーの熱特性は、フローテスター特性とも言われ、軟化点、流出開始温度、1/2法軟化点等として評価される。これらの熱特性は、適宜選択した方法により測定することができ、高架式フローテスターCFT500型(島津製作所社製)を用いて測定することができる。このフローテスターのフローカーブは図1に示されるデータになり、そこから各々の温度を読み取ることができる。図中、Tsは軟化点、Tfbは流出開始温度であり、Tendは測定終了温度である。T1/2温度はTfbからTendまでのストローク量の半分の時の温度であり、本発明ではT1/2温度を1/2法軟化点としている。
トナーの軟化点Tsは、30℃以上であることが好ましく、50℃〜90℃がより好ましい。前記軟化点Tsが、30℃未満であると、耐熱保存性が悪化することがある。
本発明のトナーの流出開始温度Tfbは、60℃以上であることが好ましく、90℃〜130℃がより好ましい。流出開始温度が、60℃未満であると、耐熱保存性及び耐オフセット性の少なくとも一方が低下することがある。
本発明のトナーの1/2法軟化点は、90℃以上であることが好ましく、100℃〜170℃がより好ましい。1/2法軟化点が、90℃未満であると、耐オフセット性が悪化することがある。
【0113】
(トナーのガラス転移温度)
本発明のトナーのガラス転移温度は、40℃〜70℃であることが好ましく、45℃〜65℃がより好ましい。前記ガラス転移温度が、40℃未満であると、トナーの耐熱保存性が悪化することがあり、70℃を超えると、低温定着性が十分でないことがある。なお、ガラス転移温度は、示差走査熱量計DSC−60(島津製作所社製)等を用いて測定する
ことができる。
【0114】
(トナーの色)
本発明のトナーの色は、目的に応じて適宜選択することができ、ブラックトナー、シア
ントナー、マゼンタトナー及びイエロートナーからなる群より選択される一種以上とする
ことができ、各色のトナーは、着色剤を適宜選択することにより得ることができる。
【0115】
<現像剤>
本発明の現像剤は、本発明のトナーを含有し、キャリア等の適宜選択されるその他の成分を更に含有してもよい。このため、転写性、帯電性等に優れ、高画質な画像を安定に形成することができる。なお、現像剤は、一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよいが、近年の情報処理速度の向上に対応した高速プリンタ等に使用する場合に
は、寿命が向上することから、二成分現像剤が好ましい。
【0116】
本発明の現像剤を一成分現像剤として用いる場合、トナーの収支が行われても、トナーの粒子径の変動が少なく、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するブレード等の部材へのトナーの融着が少なく、現像装置における長期の攪拌においても、良好で安定した現像性及び画像が得られる。
【0117】
本発明の現像剤を二成分現像剤として用いる場合、長期にわたるトナーの収支が行われても、トナーの粒子径の変動が少なく、現像装置における長期の撹拌においても、良好で安定した現像性及び画像が得られる。
【0118】
前記キャリアは、目的に応じて適宜選択することができるが、芯材と、芯材を被覆する樹脂層を有するものが好ましい。
芯材の材料は、公知のものの中から適宜選択することができ、50emu/g〜90emu/gのマンガン−ストロンチウム系材料、マンガン−マグネシウム系材料等が挙げられる。また、画像濃度を確保するためには、100emu/g以上の鉄粉、75〜120emu/gのマグネタイト等の高磁化材料を用いることが好ましい。また、穂立ち状態となっている現像剤の感光体に対する衝撃を緩和でき、高画質化に有利であることから、30〜80emu/gの銅−亜鉛系等の低磁化材料を用いることが好ましい。これらは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0119】
前記芯材の体積平均粒子径は、10μm〜150μmであることが好ましく、40μm〜100μmがより好ましい。前記体積平均粒子径が、10μm未満であると、キャリア中に微粉が多くなり、一粒子当たりの磁化が低下してキャリアの飛散が生じることがあり、150μmを超えると、比表面積が低下し、トナーの飛散が生じることがあり、ベタ部分の多いフルカラーでは、特に、ベタ部の再現が悪くなることがある。
【0120】
前記樹脂層の材料としては、特に制限はなく、公知の樹脂の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えばアミノ系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリハロゲン化オレフィン、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリトリフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンとアクリルモノマーの共重合体、フッ化ビニリデンとフッ化ビニルの共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンとフルオロ基を有さないモノマーの共重合体等のフルオロターポリマー、シリコーン樹脂等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0121】
前記アミノ系樹脂の具体例としては、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。前記ポリビニル系樹脂の具体例としては、アクリル樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等が挙げられる。前記ポリスチレン系樹脂の具体例としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル共重合体等が挙げられる。ポリハロゲン化オレフィンの具体例としては、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。前記ポリエステル系樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0122】
前記樹脂層は、必要に応じて、導電粉等を含有してもよい。前記導電粉の具体例としては、金属粉、カーボンブラック、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛等が挙げられる。導電粉の平均粒子径は、1μm以下であることが好ましい。前記平均粒子径が1μmを超えると、電気抵抗の制御が困難になることがある。
【0123】
前記樹脂層は、シリコーン樹脂等を溶媒に溶解させて塗布液を調製した後、塗布液を芯材の表面に公知の塗布方法を用いて塗布、乾燥した後、焼き付けを行うことにより形成することができる。塗布方法としては、浸漬塗工法、スプレー法、ハケ塗り法等を用いることができる。前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチルセロソルブ等が挙げられる。焼き付けは、外部加熱方式であってもよいし、内部加熱方式であってもよく、固定式電気炉、流動式電気炉、ロータリー式電気炉、バーナー炉等を用いる方法、マイクロ波を用いる方法等が挙げられる。
【0124】
キャリア中の樹脂層の含有量は、0.01質量%〜5.0質量%であることが好ましい。前記含有量が、0.01質量%未満であると、芯材の表面に均一な樹脂層を形成することができないことがあり、5.0質量%を超えると、樹脂層が厚いためにキャリア同士の融着が起こり、キャリアの均一性が低下することがある。
【0125】
二成分現像剤中のキャリアの含有量は、90質量%〜98質量%であることが好ましく、93質量%〜97質量%がより好ましい。
【0126】
本発明の現像剤は、磁性一成分現像方法、非磁性一成分現像方法、二成分現像方法等の公知の各種電子写真法による画像形成に用いることができる。
【0127】
<フルカラー画像形成方法>
本発明のトナーを用いるフルカラー画像形成方法は、電子写真感光体を帯電手段により帯電させる帯電工程と、前記帯電された電子写真感光体上に露光手段により静電潜像を形成する露光工程と、前記静電潜像を形成された電子写真感光体上にトナーを含む現像手段によりトナー像を形成する現像工程と、前記電子写真感光体上に形成されたトナー像を一次転写手段により中間転写体上に転写する一次転写工程と、前記中間転写体上に転写されたトナー像を二次転写手段により記録材上に転写する二次転写工程と、前記記録材上に転写されたトナー像を熱及び圧力定着部材を含む定着手段により記録材上に定着させる定着工程と、前記一次転写手段によりトナー像を中間転写体上に転写した電子写真感光体の表面に付着している転写残トナーをクリーニング手段によりクリーニングするクリーニング工程とを備えている。そして、現像工程において使用するトナーが、上述の本発明のトナーである。本発明のトナーを用いるフルカラー画像形成方法は、二次転写工程において、トナー像の記録材への転写の線速度は300〜1000mm/secであり、二次転写手段のニップ部での転写時間は0.5〜20msecとすることが好ましい。また、本発明のトナーを用いるフルカラー画像形成方法は、タンデム方式の電子写真画像形成プロセスを採用することが好ましい。
【0128】
〔帯電工程〕
本発明の画像形成方法において使用される帯電装置としては、例えば図2、図3及び図4に示した接触式の帯電装置を用いることができる。
【0129】
(ローラ式帯電装置)
図2に接触式帯電装置の一種であるローラ式帯電装置(500)の一例の概略構成を示した。被帯電体である像担持体としての感光体(505)は矢印の方向に所定の速度(プロセススピード)で回転駆動される。この感光体(505)に接触させた帯電部材である帯電ローラ(501)は芯金(502)とこの芯金(502)の外周に同心一体にローラ上に形成した導電ゴム層(503)を基本構成とし、芯金の両端を不図示の軸受け部材などで回転自由に保持させるとともに、不図示の加圧手段によって感光ドラムに所定の加圧力で押圧させており、本図の場合はこの帯電ローラ(501)は感光体(505)の回転駆動に従動して回転する。帯電ローラ(501)は、直径9mmの芯金上に100,000Ω・cm程度の中抵抗の導電ゴム層(503)を被膜して直径16mmに形成されている。帯電ローラ(501)の芯金(502)と図示の電源(504)とは電気的に接続されており、電源(504)により帯電ローラ(501)に対して所定のバイアスが印加される。これにより感光体(605)の周面が所定の極性、電位に一様に帯電処理される。
【0130】
(ファーブラシ式帯電装置)
本発明で使われる帯電装置の形状としてはローラ式帯電装置の他にも、磁気ブラシ式帯電装置、ファーブラシ式帯電装置など、どのような形態をとってもよく、電子写真装置の仕様や形態にあわせて選択可能である。磁気ブラシ式帯電装置を用いる場合、磁気ブラシは例えばZn−Cuフェライト等、各種フェライト粒子を帯電部材として用い、これを支持させるための非磁性の導電スリーブ、これに内包されるマグネットロールによって構成される。また、ファーブラシ式帯電装置を用いる場合、例えばファーブラシの材質としては、カーボン、硫化銅、金属、および金属酸化物により導電処理されたファーを用い、これを金属や他の導電処理された芯金に巻き付けたり張り付けたりすることで帯電装置とする。
【0131】
図3に接触式のブラシ式帯電装置(510)の一例の概略構成を示した。被帯電体としての像担持体としての感光体(515)は矢印の方向に所定の速度(プロセススピード)で回転駆動される。この感光体(515)に対して、ファーブラシによって構成されるファーブラシローラ(511)が、ブラシ部(513)の弾性に抗して所定の押圧力をもって所定のニップ幅で接触させてある。
【0132】
本例における接触式帯電装置としてのファーブラシローラ(511)は、電極を兼ねる直径6mmの金属製の芯金(512)に、ブラシ部(513)としてユニチカ(株)製の導電性レーヨン繊維REC−Bをパイル地にしたテープをスパイラル状に巻き付けて、外径14mm、長手方向長さ250mmのロールブラシとしたものである。ブラシ部(613)のブラシは300デニール/50フィラメント、1平方ミリメートル当たり155本の密度である。このロールブラシを内径が12mmのパイプ内に一方向に回転させながらさし込み、ブラシと、パイプが同心となるように設定し、高温多湿雰囲気中に放置してクセ付けで斜毛させた。
【0133】
ファーブラシローラ(511)の抵抗値は印加電圧100Vにおいて1×105Ωである。この抵抗値は、金属製の直径φ30mmのドラムにファーブラシローラをニップ幅3mmで当接させ、100Vの電圧を印加したときに流れる電流から換算した。このブラシ式帯電装置(510)の抵抗値は、被帯電体である感光体(515)上にピンホール等の低耐圧欠陥部が生じた場合にもこの部分に過大なリーク電流が流れ込んで帯電ニップ部が帯電不良になる画像不良を防止するために104Ω以上必要であり、感光体(515)表面に十分に電荷を注入させるために107Ω以下である必要がある。
【0134】
ブラシの材質としては、ユニチカ(株)製のREC−B以外にも、REC−C、REC−M1、REC−M10、さらに東レ(株)製のSA−7、日本蚕毛(株)製のサンダーロン、カネボウ(株)製のベルトロン、クラレ(株)製のクラカーボ、レーヨンにカーボンを分散したもの、三菱レーヨン(株)製のローバル等が考えられる。ブラシは一本が3〜10デニールで、10〜100フィラメント/束、80〜600本/mmの密度が好ましい。毛足は1〜10mmが好ましい。
【0135】
このファーブラシローラ(511)は感光体(515)の回転方向と逆方向(カウンター)に所定の周速度(表面の速度)をもって回転駆動され、感光体面に対して速度差を持って接触する。そしてこのブラシローラ(511)に電源(514)から所定の帯電電圧が印加されることで、回転感光体面が所定の極性・電位に一様に接触帯電処理される。
本例では該ファーブラシローラ(511)による感光体(515)の接触帯電は直接注入帯電が支配的となって行なわれ、回転感光体表面はファーブラシローラ(511)に対する印加帯電電圧とほぼ等しい電位に帯電される。
【0136】
本発明で使われる帯電部材の形状としてはファーブラシローラ(511)の他にも、帯電ローラ、ファーブラシなど、どのような形態をとってもよく、電子写真装置の仕様や形態にあわせて選択可能である。帯電ローラを用いる場合、芯金上に100000Ω・cm程度の中抵抗ゴム層を被膜して用いるのが一般的である。磁気ブラシを用いる場合、磁気ブラシは例えばZn−Cuフェライト等、各種フェライト粒子を帯電部材として用い、これを支持させるための非磁性の導電スリーブ、これに内包されるマグネットロールによって構成される。
【0137】
(磁気ブラシ式帯電装置)
図4は、磁気ブラシ式帯電装置の例の概略構成を示した図でもある。被帯電体、像担持体としての感光体(515)は矢印の方向に所定の速度(プロセススピード)で回転駆動される。この感光体(515)に対して、磁気ブラシによって構成されるブラシローラ(511)が、ブラシ部(513)の弾性に抗して所定の押圧力をもって所定のニップ幅で接触させてある。
【0138】
本例における接触帯電部材としての磁気ブラシとしては、平均粒径:25μmのZn−Cuフェライト粒子と、平均粒径10μmのZn−Cuフェライト粒子を、重量比1:0.05で混合して、それぞれの平均粒径の位置にピークを有する、平均粒径25μmのフェライト粒子を、中抵抗樹脂層でコートした磁性粒子を用いた。接触帯電部材は、上述で作成された被覆磁性粒子、および、これを支持させるための非磁性の導電スリーブ、これに内包されるマグネットロールによって構成され、上記被覆磁性粒子をスリーブ上に、厚さ1mmでコートして、感光体との間に幅約5mmの帯電ニップを形成した。また、該磁性粒子保持スリーブと感光体との間隙は、約500μmとした。さらに、マグネットロールは、スリーブ表面が、感光体表面の周速に対して、その2倍の速さで逆方向に摺擦するように、回転され、感光体と磁気ブラシとが均一に接触するようにした。
【0139】
〔帯電工程〕
本発明において感光体の潜像を現像するに際しては、交互電界を印加することが好ましい。図5に示した現像器(600)において、現像時、現像スリーブ(601)には、電源(602)により現像バイアスとして、直流電圧に交流電圧を重畳した振動バイアス電圧が印加される。背景部電位と画像部電位は、上記振動バイアス電位の最大値と最小値の間に位置している。これによって現像部(603)に向きが交互に変化する交互電界が形成される。この交互電界中で現像剤のトナーとキャリアが激しく振動し、トナー(605)が現像スリーブ(601)およびキャリアへの静電的拘束力を振り切って感光体(604)に飛翔し、感光体の潜像に対応して付着する。なお、トナー(605)は、上述の本発明のトナーである。
【0140】
振動バイアス電圧の最大値と最小値の差(ピーク間電圧)は、0.5〜5kVが好ましく、周波数は1〜10kHzが好ましい。振動バイアス電圧の波形は、矩形波、サイン波、三角波等が使用できる。振動バイアスの直流電圧成分は、上記したように背景部電位と画像部電位の間の値であるが、画像部電位よりも背景部電位に近い値である方が、背景部電位領域へのかぶりトナーの付着を防止する上で好ましい。
振動バイアス電圧の波形が矩形波の場合、デューティ比を50%以下とすることが望ましい。ここでデューティ比とは、振動バイアスの1周期中でトナーが感光体に向かおうとする時間の割合である。このようにすることにより、トナーが感光体に向かおうとするピーク値とバイアスの時間平均値との差を大きくすることができるので、トナーの運動がさらに活発化し、トナーが潜像面の電位分布に忠実に付着してざらつき感や解像力を向上させることができる。またトナーとは逆極性の電荷を有するキャリアが感光体に向かおうとするピーク値とバイアスの時間平均値との差を小さくすることができるので、キャリアの運動を沈静化し、潜像の背景部にキャリアが付着する確率を大幅に低減することができる。
【0141】
〔定着装置〕
本発明の画像形成方法において使用される定着装置としては、例えば図6に示した定着装置を用いることができる。図6に示す定着装置は、誘導加熱手段(760)の電磁誘導により加熱される加熱ローラ(710)と、加熱ローラ(710)と平行に配置された定着ローラ(720)(対向回転体)と、加熱ローラ(710)と定着ローラ(720)とに張り渡され、加熱ローラ(710)により加熱されるとともに少なくともこれらの何れかのローラの回転により矢印A方向に回転する無端帯状の定着ベルト(耐熱性ベルト、トナー加熱媒体)(730)と、定着ベルト(730)を介して定着ローラ(720)に圧接されるとともに定着ベルト(730)に対して順方向に回転する加圧ローラ(740)(加圧回転体)とから構成されている。
【0142】
加熱ローラ(710)は例えば鉄、コバルト、ニッケルまたはこれら金属の合金等の中空円筒状の磁性金属部材からなり、外径を例えば20〜40mm、肉厚を例えば0.3〜1.0mmとして、低熱容量で昇温の早い構成となっている。
定着ローラ(720)(対向回転体)は、例えばステンレススチール等の金属製の芯金(721)と、耐熱性を有するシリコーンゴムをソリッド状または発泡状にして芯金(721)を被覆した弾性部材(722)とからなる。そして、加圧ローラ(740)からの押圧力でこの加圧ローラ(740)と定着ローラ(720)との間に所定幅の接触部を形成するために外形を20〜40mm程度として加熱ローラ(710)より大きくしている。弾性部材(722)は、その肉厚を4〜6mm程度としている。この構成により、加熱ローラ(710)の熱容量は定着ローラ(720)の熱容量より小さくなるので、加熱ローラ(710)が急激に加熱されてウォームアップ時間が短縮される。
【0143】
加熱ローラ(710)と定着ローラ(720)とに張り渡された定着ベルト(730)は、誘導加熱手段(760)により加熱される加熱ローラ(710)との接触部位(W1)で加熱される。そして、加熱ローラ(710)と定着ローラ(720)の回転によって定着ベルト(730)の内面が連続的に加熱され、結果としてベルト全体に渡って加熱される。
図7に定着ベルト(730)の層構成を示す。ベルト(730)の構成は、内層から表層に向かって下記4層であり、以下のようにすることができる。
・基体(731):ポリイミド(PI)樹脂などの樹脂層
・発熱層(732):Ni,Ag,SUS等の導電材料層
・中間層(733):均一定着のための弾性層
・離型層(734):離型効果とオイルレス化のための弗素樹脂材料等の樹脂層
【0144】
離型層(734)の厚さとしては、10μmから300μm程度が望ましく、特に200μm程度が望ましい。このようにすれば、図7に示すような定着装置(700)において、記録材(770)上に形成されたトナー像(T)を定着ベルト(730)の表層部が十分に包み込むため、トナー像(T)を均一に加熱溶融することが可能になる。離型層(734)の厚さ、即ち表面離型層は経時耐磨耗性を確保するためには最低10μmは必要である。また、離型層(734)の厚さが300μmよりも大きい場合には、定着ベルト(730)の熱容量が大きくなってウォームアップにかかる時間が長くなる。さらに、トナー像定着工程において定着ベルト(730)の表面温度が低下しにくくなって、定着部出口における融解したトナーの凝集効果が得られず、定着ベルト(730)の離型性が低下してトナー像(T)のトナーが定着ベルト(730)に付着し、いわゆるホットオフセットが発生する。なお、定着ベルト(730)の基体として、上記金属からなる発熱層(732)としてもよいが、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、PEEK樹脂、PES樹脂、PPS樹脂などの耐熱性を有する樹脂層を用いてもよい。
【0145】
加圧ローラ(740)は、たとえば銅またはアルミ等の熱伝導性の高い金属製の円筒部材からなる芯金(741)と、この芯金(741)の表面に設けられた耐熱性およびトナー離型性の高い弾性部材(742)とから構成されている。芯金(741)には上記金属以外にSUSを使用しても良い。加圧ローラ(740)は定着ベルト(730)を介して定着ローラ(720)を押圧して定着ニップ部(N)を形成しているが、本実施の形態では、加圧ローラ(740)の硬度を定着ローラ(720)に比べて硬くすることによって、加圧ローラ(740)が定着ローラ(720)(及び定着ベルト(730))へ食い込む形となり、この食い込みにより、記録材(770)は加圧ローラ(740)表面の円周形状に沿うため、記録材(770)が定着ベルト(730)表面から離れやすくなる効果を持たせている。この加圧ローラ(740)の外径は定着ローラ(720)と同じ20〜40mm程度であるが、肉圧は0.5〜2.0mm程度で定着ローラ(720)より薄く構成されている。
【0146】
電磁誘導により加熱ローラ(710)を加熱する誘導加熱手段(760)は、図6に示すように、磁界発生手段である励磁コイル(761)と、この励磁コイル(761)が巻き回されたコイルガイド板(762)とを有している。コイルガイド板(762)は加熱ローラ(710)の外周面に近接配置された半円筒形状をしており、励磁コイル(761)は長い一本の励磁コイル線材をこのコイルガイド板(762)に沿って加熱ローラ(710)の軸方向に交互に巻き付けたものである。なお、励磁コイル(761)は、発振回路が周波数可変の駆動電源(図示せず)に接続されている。励磁コイル(761)の外側には、フェライト等の強磁性体よりなる半円筒形状の励磁コイルコア(763)が、励磁コイルコア支持部材(764)に固定されて励磁コイル(761)に近接配置されている。
【0147】
<プロセスカートリッジ>
本発明のプロセスカートリッジは、電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、前記帯電された電子写真感光体上に静電潜像を形成する露光手段と、前記電子写真感光体上に形成された静電潜像をトナーによりトナー像とする現像手段と、前記電子写真感光体上に形成されたトナー像を中間転写体を介して又は介さずに記録材上に転写する転写手段と、前記記録材上に転写されたトナー像を熱及び圧力定着部材により記録材上に定着させる定着手段定着工程と、前記転写手段によりトナー像を中間転写体又は記録材上に転写した後の電子写真感光体表面に付着している転写残トナーをクリーニングするクリーニング手段とを備えた画像形成装置における各手段のうち、少なくとも電子写真感光体、及び現像手段を含む上記手段を一体に支持して画像形成装置本体に着脱自在としたものである。そして、現像手段には、上述の本発明のトナーを備えている。現像手段及び帯電手段としては、上述の現像装置及び帯電装置が好適に使用できる。
【0148】
本発明のプロセスカートリッジの例を図8に示す。図8に示したプロセスカートリッジ(800)は、感光体(801)、帯電手段(802)、現像手段(803)、クリーニング手段(806)を備えている。このプロセスカートリッジ(800)の動作を説明すると、感光体(801)が所定の周速度で回転駆動される。感光体(801)は回転過程において、帯電手段(802)によりその周面に正または負の所定電位の均一帯電を受け、次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光等の不図示の像露光手段からの画像露光光を受け、こうして感光体(801)の周面に静電潜像が順次形成され、形成された静電潜像は、次いで現像手段(802)によりトナー像化され、現像されたトナー像は、給紙部から感光体(801)と不図示の転写手段との間に感光体(801)の回転と同期されて給送された記録材に、転写手段により順次転写されていく。像転写を受けた記録材は感光体面から分離されて不図示の像定着手段へ導入されて像定着され、複写物(コピー)として装置外へプリントアウトされる。像転写後の感光体(801)の表面は、クリーニング手段(806)によって転写残りトナーの除去を受けて清浄面化され、更除電された後、繰り返し画像形成に使用される。
【0149】
<フルカラー画像形成装置>
本発明のトナーを用いるフルカラー画像形成方法において使用されるフルカラー画像形成装置としては、例えば図9、図10に示したタンデム方式の画像形成装置(100)を用いることができる。図9において、画像形成装置(100)は電子写真方式によるカラー画像形成を行なうための画像書込部(120Bk,120C,120M,120Y)、画像形成部(130Bk,130C,130M,130Y)、給紙部(140)から主に構成されている。画像信号を元に、画像処理部(図示せず)で画像処理を行ない、画像形成用の黒(Bk),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)の各色信号に変換し、画像書込部(120Bk,120C,120M,120Y)に送信する。画像書込部(120Bk,120C,120M,120Y)は、例えば、レーザ光源、回転多面鏡等の偏向器、走査結像光学系及びミラー群(いずれも図示せず)からなるレーザ走査光学系であり、上記の各色信号に対応した4つの書込光路を有し、画像形成部(130Bk,130C,130M,130Y)に各色信号に応じた画像書込を行なう。
【0150】
画像形成部(130Bk,130C,130M,130Y)は、黒,シアン,マゼンタ,イエロー用の各感光体(210Bk,210C,210M,210Y)を備え、これらの各色用の感光体(210Bk,210C,210M,210Y)には通常OPC感光体が用いられる。各感光体(210Bk,210C,210M,210Y)の周囲には、帯電装置(215Bk,215C,215M,215Y)、上記画像書込部(120Bk,120C,120M,120Y)からのレーザ光の露光部、各色用の現像装置(200Bk,200C,200M,200Y)、1次転写装置(230Bk,230C,230M,230Y)、クリーニング装置(300Bk,300C,300M,300Y)、除電装置(図示せず)等が配設されている。なお、上記現像装置(200Bk,200C,200M,200Y)には、2成分磁気ブラシ現像方式を用いている。また、中間転写ベルト(220)が各感光体(210Bk,210C,210M,210Y)と1次転写装置(230Bk,230C,230M,230Y)との間に介在し、この中間転写ベルト(220)に各感光体から各色のトナー像が順次重ね合わせて転写され、各感光体上のトナー像を担持する。
【0151】
場合によっては、この中間転写ベルト(220)の外側で、最終色の1次転写位置通過後で2次転写位置通過前の位置に転写前帯電手段としてのプレ転写チャージャ(502)が配設されるのが好ましい。このプレ転写チャージャ(502)は、上記1次転写部で感光体(210)に転写された中間転写ベルト(220)上のトナー像を記録材としての転写紙に転写する前に、トナー像をトナー像と同極性に均一に帯電するものである。
【0152】
各感光体(210Bk,210C,210M,210Y)から転写された中間転写ベルト(220)上のトナー像は、ハーフトーン部及びベタ部を含んでいたりトナーの重ね合せ量が異なる部分を含んでいたりするため、帯電量がばらついている場合がある。また、中間転写ベルト移動方向における1次転写部の隣接下流側の空隙に発生する剥離放電により、1次転写後の中間転写ベルト(220)上のトナー像内に帯電量のばらつきが発生する場合もある。このような同一トナー像内の帯電量のばらつきは中間転写ベルト(220)上のトナー像を転写紙に転写する2次転写部における転写余裕度を低下させてしまう。そこで、プレ転写チャージャで転写紙へ転写する前のトナー像をトナー像と同極性に均一に帯電することにより、同一トナー像内の帯電量のばらつきを解消し、2次転写部における転写余裕度を向上させている。
【0153】
以上、この画像形成方法によれば、各感光体(210Bk,210C,210M,210Y)から転写した中間転写ベルト(220)上のトナー像をプレ転写チャージャ(502)で均一に帯電することにより、中間転写ベルト(220)上のトナー像内に帯電量のばらつきがあっても、2次転写部における転写特性を、中間転写ベルト(220)上のトナー像の各部に渡ってほぼ一定にすることができる。従って、転写紙へ転写する時の転写余裕度の低下を抑え、トナー像を安定して転写できる。
【0154】
なお、この画像形成方法において、プレ転写チャージャで帯電される帯電量は、帯電対象物である中間転写ベルト(220)の移動速度に依存して変化する。例えば、中間転写ベルト(220)の移動速度が遅ければ、中間転写ベルト(220)上のトナー像の同一部分がプレ転写チャージャによる帯電領域を通過する時間が長くなるので、帯電量が大きくなる。逆に、中間転写ベルト(220)の移動速度が速いと、中間転写ベルト(220)上のトナー像の帯電量が小さくなる。従って、中間転写ベルト(220)上のトナー像がプレ転写チャージャによる帯電位置を通過している途中に中間転写ベルト(220)の移動速度が変化するような場合には、その中間転写ベルト(220)の移動速度に応じて、トナー像に対する帯電量が途中で変化しないようにプレ転写チャージャを制御することが望ましい。
【0155】
1次転写装置(230Bk,230C,230M,230Y)の間に導電性ローラ(241),(242),(243)が設けられている。そして、転写紙は給紙部(140)から給紙された後、レジストローラ対(160)を介して転写ベルト(500)に担持され、中間転写ベルト(220)と転写ベルト(500)が接触するところで2次転写ローラ(600)により中間転写ベルト(220)上のトナー像が転写紙に転写され、カラー画像形成が行なわれる。
そして、画像形成後の転写紙は2次転写ベルト(180)で定着装置(150)に搬送され、画像が定着されてカラー画像が得られる。転写されずに残った中間転写ベルト(220)上のトナーは、中間転写ベルトクリーニング装置(260)によってベルトから除去される。
【0156】
転写紙への転写前の中間転写ベルト(220)上のトナー極性は、現像時と同じマイナス極性であるため、2次転写ローラ(170)にはプラスの転写バイアス電圧が印加され、トナーは転写紙上に転写される。この部分でのニップ圧が転写性に影響し、定着性に大きく影響する。また、転写されずに残った中間転写ベルト(220)上のトナーは、転写紙と中間転写ベルト(220)とが離れる瞬間にプラス極性側に放電帯電され、0〜プラス側に帯電される。なお、転写紙のジャム時や非画像域に形成されたトナー像は、2次転写の影響を受けないため、もちろんマイナス極性のままである。
【0157】
感光体層の厚みを30μmとし、光学系のビームスポット径を50×60μm、光量を0.47mWとしている。感光体(黒)(210Bk)の帯電(露光側)電位V0を−700V、露光後電位VLを−120Vとして現像バイアス電圧を−470Vすなわち現像ポテンシャル350Vとして現像工程が行なわれるものである。感光体(黒)(210Bk)上に形成されたトナー(黒)の顕像はその後、転写(中間転写ベルト及び転写紙)、定着工程を経て画像として完成される。転写は最初、1次転写装置(230Bk,230C,230M,230Y)から中間転写ベルト(220)へ全色転写された後、更に別の2次転写ローラ(170)へのバイアス印加により転写紙へ転写される。
【0158】
次に、感光体クリーニング装置について詳細に説明する。図9において、各現像装置(200Bk,200C,200M,200Y)と各クリーニング装置(300Bk,300C,300M,300Y)とは、各々トナー移送管(250Bk,250C,250M,250Y)で接続されている(図10中の破線)。そして、各トナー移送管(250Bk,250C,250M,250Y)の内部には、スクリュー(図示せず)が入っており、各クリーニング装置(300Bk,300C,300M,300Y)で回収されたトナーが、各現像装置(200Bk,200C,200M,200Y)へ移送されるようになっている。
【0159】
従来の4つの感光体ドラムとベルト搬送との組合せによる直接転写方式では、感光体と転写紙が当接することにより紙粉が付着しトナーを回収すると紙粉が含有しているので、画像形成時にトナー抜け等の画像劣化をきたし使用することができなかった。更に、従来の一つの感光体ドラムと中間転写とを組合せたシステムでは、中間転写体の採用で転写紙転写時の感光体への紙粉付着はなくなったが、感光体への残トナーのリサイクルを行おうした場合、混色したトナーを分離することは実用上不可能である。また、混色トナーを黒トナーとして使用する提案があるが、全色混合しても黒にならず、プリントモードにより色が変化するため1つの感光体の構成ではトナーリサイクルは不可能であった。
これに対して、このフルカラーが造形性装置では、中間転写ベルト(220)を使用するので紙粉の混入が少なく、かつ、紙転写時の中間転写ベルト(220)への紙粉の付着も防止される。各感光体(210Bk,210C,210M,210Y)が独立した色のトナーを使用するので各感光体クリーニング装置(300Bk,300C,300M,300Y)を接離する必要もなく、確実にトナーのみを回収することができる。
【0160】
上記中間転写ベルト(220)上に残ったプラス帯電されたトナーは、マイナス電圧が印加された導電性ファーブラシ(262)でクリーニングされる。導電性ファーブラシ(262)への電圧印加方法は、導電性ファーブラシ(261)と極性が異なるだけで全く同一である。転写されずに残ったトナーも2つの導電性ファーブラシ(261),(262)でほとんどクリーニングされる。ここで、導電性ファーブラシ(262)でクリーニングされずに残ったトナー、紙粉、タルク等は、導電性ファーブラシ(262)のマイナス電圧により、マイナス帯電される。次の黒色の1次転写は、プラス電圧による転写であり、マイナス帯電したトナー等は中間転写ベルト(220)側に引き寄せられるため、感光体(黒)(210Bk)側への移行は防止できる。
次に、この画像形成装置に使用される中間転写ベルト(220)について説明する。中間転写ベルトは前述のとおり、単層の樹脂層であることが好ましいが、必要に応じて、弾性層や、表層を保有しても良い。
【0161】
上記樹脂層を構成する樹脂材料としては、ポリカーボネート、フッ素系樹脂(ETFE,PVDF)、ポリスチレン、クロロポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体(スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体及びスチレン−アクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体(スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体等のスチレン系樹脂(スチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体)、メタクリル酸メチル樹脂、メタクリル酸ブチル樹脂、アクリル酸エチル樹脂、アクリル酸ブチル樹脂、変性アクリル樹脂(シリコーン変性アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂変性アクリル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂等)、塩化ビニル樹脂、スチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニリデン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂及びポリビニルブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド樹脂等からなる群より選ばれる1種類あるいは2種類以上を使用することができる。ただし、上記材料に限定されるものではないことは当然である。
【0162】
また、上記弾性層を構成する弾性材料(弾性材ゴム、エラストマー)としては、ブチルゴム、フッ素系ゴム、アクリルゴム、EPDM、NBR、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンゴム天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレンターポリマー、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴム、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン、エピクロロヒドリン系ゴム、リコーンゴム、フッ素ゴム、多硫化ゴム、ポリノルボルネンゴム、水素化ニトリルゴム、熱可塑性エラストマー(例えばポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリウレア、ポリエステル系、フッ素樹脂系)等からなる群より選ばれる1種類あるいは2種類以上を使用することができる。ただし、上記材料に限定されるものではないことは当然である。
【0163】
また、上記表層の材料は特に制限は無いが、中間転写ベルト表面へのトナーの付着力を小さくして2次転写性を高めるものが要求される。例えば、ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ樹脂等の1種類あるいは2種類以上を使用し表面エネルギーを小さくし潤滑性を高める材料、例えばフッ素樹脂、フッ素化合物、フッ化炭素、2酸化チタン、シリコンカーバイト等の粉体、粒子を1種類あるいは2種類以上または粒径を異ならしたものを分散させ使用することができる。また、フッ素系ゴム材料のように熱処理を行なうことで表面にフッ素リッチな層を形成させ表面エネルギーを小さくさせたものを使用することもできる。
【0164】
上記樹脂層や弾性層には、抵抗値調節用導電剤が添加される。この抵抗値調節用導電剤は特に制限はないが、例えば、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウムやニッケル等の金属粉末、酸化錫,酸化チタン、酸化アンチモン、酸化インジウム、チタン酸カリウム、酸化アンチモン−酸化錫複合酸化物(ATO)、酸化インジウム−酸化錫複合酸化物(ITO)等の導電性金属酸化物、導電性金属酸化物は、硫酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の絶縁性微粒子を被覆したものでもよい。上記導電剤に限定されるものではないことは当然である。
【0165】
図10は、本発明の画像形成方法において使用される画像形成装置の他の例を示すもので、タンデム型間接転写方式の電子写真式の画像形成装置を備えた複写装置(100)である。図10中、(101)は複写装置本体、(200)はそれを載せる給紙テーブル、(300)は複写装置本体(101)上に取り付けるスキャナ、(400)はさらにその上に取り付ける原稿自動搬送装置(ADF)である。複写装置本体(101)には、中央に、無端ベルト状の中間転写体(10)を設ける。
【0166】
そして、図10に示すとおり、この例では3つの支持ローラ(14)、(15)、(16)に掛け回して図中時計回りに回転搬送可能とする。この図示例では、3つのなかで第2の支持ローラ(15)の左に、画像転写後に中間転写体(10)上に残留する残留トナーを除去する中間転写体クリーニング装置(17)を設ける。また、3つのなかで第1の支持ローラ(14)と第2の支持ローラ(15)間に張り渡した中間転写体(10)上には、その搬送方向に沿って、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4つの画像形成手段(18)を横に並べて配置してタンデム画像形成装置(20)を構成する。
【0167】
このタンデム画像形成装置(20)の上には、図10に示すように、さらに露光装置(21)を設ける。一方、中間転写体(10)を挟んでタンデム画像形成装置(20)と反対の側には、2次転写装置(22)を備える。2次転写装置(22)は、図示例では、2つのローラ(23)間に、無端ベルトである2次転写ベルト(24)を掛け渡して構成し、中間転写体(10)を介して第3の支持ローラ(16)に押し当てて配置し、中間転写体(10)上の画像をシートに転写する。2次転写装置(22)の横には、シート上の転写画像を定着する定着装置(25)を設ける。定着装置(25)は、無端ベルトである定着ベルト(26)に加圧ローラ(27)を押し当てて構成する。上述した2次転写装置(22)には、画像転写後のシートをこの定着装置(25)へと搬送するシート搬送機能も備えてなる。もちろん、2次転写装置(22)として、転写ローラや非接触のチャージャを配置してもよく、そのような場合はこのシート搬送機能を併せて備えることは難しくなる。なお、図示例では、このような2次転写装置(22)および定着装置(25)の下に、上述したタンデム画像形成装置(20)と平行に、シートの両面に画像を記録すべくシートを反転するシート反転装置(28)を備える。
【0168】
さて、いまこのカラー電子写真装置を用いてコピーをとるときは、原稿自動搬送装置(400)の原稿台(30)上に原稿をセットする。または、原稿自動搬送装置(400)を開いてスキャナ(300)のコンタクトガラス(32)上に原稿をセットし、原稿自動搬送装置(400)を閉じてそれで押さえる。
そして、不図示のスタートスイッチを押すと、原稿自動搬送装置(400)に原稿をセットしたときは、原稿を搬送してコンタクトガラス(32)上へと移動して後、他方コンタクトガラス(32)上に原稿をセットしたときは、直ちにスキャナ(300)を駆動し、第1走行体(33)および第2走行体(34)を走行する。そして、第1走行体(33)で光源から光を発射するとともに原稿面からの反射光をさらに反射して第2走行体(34)に向け、第2走行体(34)のミラーで反射して結像レンズ(35)を通して読取りセンサ(36)に入れ、原稿内容を読み取る。
【0169】
また、不図示のスタートスイッチを押すと、不図示の駆動モータで支持ローラ(14)、(15)、(16)の1つを回転駆動して他の2つの支持ローラを従動回転し、中間転写体(10)を回転搬送する。同時に、個々の画像形成手段(18)でその感光体(40)を回転して各感光体(40)上にそれぞれ、ブラック・イエロー・マゼンタ・シアンの単色画像を形成する。そして、中間転写体(10)の搬送とともに、それらの単色画像を順次転写して中間転写体(10)上に合成カラー画像を形成する。
【0170】
一方、不図示のスタートスイッチを押すと、給紙テーブル(200)の給紙ローラ(42)の1つを選択回転し、ペーパーバンク(43)に多段に備える給紙カセット(44)の1つからシートを繰り出し、分離ローラ(45)で1枚ずつ分離して給紙路(46)に入れ、搬送ローラ(47)で搬送して複写機本体(100)内の給紙路(48)に導き、レジストローラ(49)に突き当てて止める。
または、給紙ローラ(50)を回転して手差しトレイ(51)上のシートを繰り出し、分離ローラ(52)で1枚ずつ分離して手差し給紙路(53)に入れ、同じくレジストローラ(49)に突き当てて止める。
【0171】
そして、中間転写体(10)上の合成カラー画像にタイミングを合わせてレジストローラ(49)を回転し、中間転写体(10)と2次転写装置(22)との間にシートを送り込み、2次転写装置(22)で転写してシート上にカラー画像を記録する。
画像転写後のシートは、2次転写装置(22)で搬送して定着装置(25)へと送り込み、定着装置(25)で熱と圧力とを加えて転写画像を定着して後、切換爪(55)で切り換えて排出ローラ(56)で排出し、排紙トレイ(57)上にスタックする。または、切換爪(55)で切り換えてシート反転装置(28)に入れ、そこで反転して再び転写位置へと導き、裏面にも画像を記録して後、排出ローラ(56)で排紙トレイ(57)上に排出する。
一方、画像転写後の中間転写体(10)は、中間転写体クリーニング装置(17)で、画像転写後に中間転写体(10)上に残留する残留トナーを除去し、タンデム画像形成装置(20)による再度の画像形成に備える。ここで、レジストローラ(49)は一般的には接地されて使用されることが多いが、シートの紙粉除去のためにバイアスを印加することも可能である。
【0172】
更に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
図11は、本発明の画像形成装置の概略構成を示す図である。図12は、図11に示す画像形成装置のプロセスカートリッジの構成を示す図である。
像担持体である感光体(1)の周囲は、帯電装置(3)、露光装置(4)、現像装置(5)、転写装置(6)、クリーニング装置(7)、定着装置(8)が配置されている。
【0173】
感光体(1)は、ベルト状又はドラム状のアルミニウム基板上に感光層を設ける。感光層には、アモルファスセレン、光導電性を有するペリレン系、フタロシアニン系有機化合物、アモルファスシリコンを用いる。特に、アモルファスシリコンが好ましい。導電性支持体を50℃〜400℃に加熱し、支持体上に真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、熱CVD法、光CVD法、プラズマCVD法等の成膜法によりa−Siからなる光導電層を有するアモルファスシリコン感光体(以下、「a−Si系感光体」と称する。)を用いることが出来る。なかでも、プラズマCVD法、すなわち、原料ガスを直流または高周波あるいはマイクロ波グロー放電によって分解し、支持体上にa−Si堆積膜を形成する方法が好適なものとして用いられている。
【0174】
図2に示すような帯電装置(3)によって帯電した感光体(1)の表面には、露光装置(4)によって露光されて各色に対応した静電潜像が形成される。この露光装置(4)は、各色に対応した画像情報に基づき、感光体(1)に対して各色に対応した静電潜像を書き込む。なお、本実施形態の露光装置(4)は、レーザ方式の露光装置であるが、LEDアレイと結像手段からなる露光装置などの他の方式の露光装置を採用することもできる。
露光装置(4)は、読取装置(20)内のスキャナーで読み取ったデータ、及び図示しないPC等外部より送られた画像信号を変換し、ポリゴンモータでレーザー光をスキャンさせ、ミラーを通して読み取られた画像信号を基に感光体(1)上に静電潜像を形成する。
【0175】
現像装置(5)は、現像剤を担持して感光体(1)に供給する現像剤担持体である現像スリーブ(5a)と、トナー供給室等を備える。感光体(1)と微小間隔をおいて配置された円筒状の現像剤担持体(5a)と、現像剤担持体(5a)上の現像剤量を規制する現像剤規制部材とを有している。現像剤担持体(5a)は、回転可能に支持された中空円筒状の現像剤担持体(5a)と、現像剤担持体(5a)の内部にこれと同軸に固設されたマグネットロールとを備えており、現像剤担持体(5a)の外周面に現像剤を磁気的に吸着して搬送するようになっている。現像剤担持体(5a)は導電性で、非磁性部材で構成されており、現像バイアスを印加するための電源が接続されている。現像剤担持体(5a)と感光体(1)との間には、電源から電圧が印加され、現像領域に電界が形成される。なお、上記は、二成分現像剤を用いる現像装置について説明したが、本発明はこれに限らず、一成分現像剤を用いる現像装置であってもよい。
【0176】
転写装置(6)は、転写ベルト(6a)と転写バイアスローラ(6b)とテンションローラ(6c)から構成されている。転写バイアスローラ(6b)は、鉄、アルミ、ステンレス等の芯金表面に弾性層を設けて構成する。転写バイアスローラ(6b)には、記録紙を感光体(1)に密着させるために、感光体(1)側に必要な圧力がかけられる。転写ベルト(6a)は、基材として耐熱性の材料を種々選択することで効果が得られ、例えばシームレスのポリイミドフィルムで構成することができる。その外側には、フッ素樹脂層を設ける構成とすることができる。又、必要に応じてポリイミドフィルムの上にシリコーンゴム層を設け、その上にフッ素樹脂層を設けても良い。転写ベルト(6a)の内側には、転写ベルト(6a)を駆動及び張架するためにテンションローラ(6c)が設けられている。
【0177】
定着装置(8)は、ハロゲンランプ等の加熱手段であるヒータを有する定着ローラ(8a)と、圧接される加圧ローラ(8b)とを備えている。定着ローラは、芯金表面にシリコーンゴム等の弾性層を100〜500μm、好ましくは400μmの厚みに設け、更にトナーの粘性による付着を防止する目的で、フッ素樹脂等の離型性の良い樹脂表層が形成されている。樹脂表層は、PFAチューブ等で構成され、その厚みは機械的劣化を考慮して10〜50μm程度の厚みが好ましい。定着ローラの外周面には、温度検知手段が設けられ、定着ローラの表面温度を約160〜200℃の範囲の中で、ほぼ一定に保つようにヒータが制御されている。加圧ローラは、芯金表面にテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなオフセット防止層が被覆されている。定着ローラと同様に、芯金表面にシリコーンゴム等の弾性層を設けても良い。
【0178】
また、図13は、本発明の画像形成装置に用いる他の形態の定着装置の構成を示す概略図である。ここで定着装置(8)は、図13に示すように、定着フィルム(81)を回転させて定着するいわゆるサーフ定着装置(80)である。定着フィルム(81)はエンドレスベルト状耐熱フィルムであり、このフィルムの支持回転体である駆動ローラ(82)と、従動ローラ(83)と、この両ローラ間の下方に設けた平面基盤(86)に保持させて固定支持させて配設した加熱体(84)とに懸回張設してある。従動ローラ(83)は定着フィルム(81)のテンションローラを兼ね、定着フィルム(81)は駆動ローラ(82)の時計回転方向の回転駆動によって、時計回転方向に向かって回転駆動される。この回転駆動速度は、加圧ローラ(88)と定着フィルム(81)が接する定着ニップ領域(Q)において転写材と定着フィルム(81)の速度が等しくなる速度に調節される。
【0179】
ここで、加圧ローラ(88)はシリコンゴム等の離型性のよいゴム弾性層を有するローラであり、反時計周りに回転しつつ、前記定着ニップ領域(Q)に対して、例えば総圧4〜10kgの当接圧をもって圧接させてある。また、定着フィルム(81)は、耐熱性、離型性、耐久性に優れたものが好ましく、総厚100μm以下が好ましく、より好ましくは40μm以下の薄肉のものを使用する。例えば、ポリイミド、ポリエーテルイミド、PES(ポリエーテルサルファイド)、PFA(4フッ化エチレンバーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂)等の耐熱樹脂の単層フィルム、あるいは複合層フィルム、例えば20ミクロンm厚フィルムの少なくとも画像当接面側にPTFE(4フッ化エチレン樹脂)、PFA等のフッ素樹脂に導電材を添加した離型性コート層を10μm厚に施したものや、フッ素ゴム、シリコンゴム等の弾性層を施したものである。
【0180】
図13では、この定着装置(80)の加熱体(84)は平面基盤(86)および定着ヒータ(87)から構成されており、平面基盤(86)は、アルミナ等の高熱伝導度且つ高電気抵抗率を有する材料からなっており、定着フィルム(81)と接触する表面には抵抗発熱体で構成した定着ヒータ(87)を長手方向に設置してある。かかる定着ヒータ(87)は、例えば、Ag/Pd、TaN等の電気抵抗材料をスクリーン印刷等により線状もしくは帯状に塗工したものである。
また、定着ヒータ(87)の両端部には、図示しない電極が形成され、この電極間に通電することで抵抗発熱体が発熱する。さらに、平面基盤(86)の定着ヒータ(87)が具備させてある面と逆の面にはサーミスタによって構成した定着温度センサ(85)が設けられている。定着温度センサ(85)によって検出された基板の温度情報は図示しない制御手段に送られ、かかる制御手段により定着ヒータ(87)に供給される電力量が制御され、加熱体(84)は所定の温度に制御される。
このサーフ定着装置(80)によって、効率が良く立ち上がり時間を短縮可能な定着装置(8)を用いた画像形成装置(100)が得られる。
【0181】
クリーニング装置(7)は、図12に示すように、転写工程後の感光体(1)表面に残存するトナーのクリーニング手段としてクリーニングブレード(7a)を有する。また、クリーニングされたトナーを回収するトナー回収羽根(7e)、及びそのトナーを搬送する回収コイル(7c)を備えている。更に、図示されないトナー回収ボックスを備える。クリーニングブレード(7a)は、金属、樹脂、ゴム等の材質からなるが、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ブチルゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ウレタンゴム等のゴムが好ましく用いられ、この中でも特にウレタンゴムが好ましい。
【0182】
本発明の画像形成装置では、さらに、この現像装置(5)にトナー収納容器(121)のトナーが粉体ポンプ(140)のポンプ力によって移送チューブ(115)を介してトナーが補給される剤移送装置(120)を備えているのが好ましい。
【0183】
図14は、剤移送装置の概略構成を示すブロック図である。
剤移送装置(120)の駆動・制御は、図示しない電源と制御回路により、粉体ポンプ(140)の駆動・制御とエアーポンプ(130)の動作・制御を行なう。剤移送装置(120)の制御は、現像装置(5)の一部に設けられたトナー濃度センサに基づくトナーとキャリアの混合比の変化を検知しトナー補給量を制御する機構を用いているが、他の機構として感光体(1)上のトナー像の反射濃度を検知しトナー補給量を制御する等の技術を転用してもよい。図示しないMPUを具備した制御装置によって剤移送装置(120)は制御される。すなわち、トナー濃度センサの検知結果がMPUに取り込まれ、検知結果に応じてMPUから粉体ポンプ駆動源または駆動伝達手段(クラッチ等)、エアーポンプ(130)に動作信号が送信されることにより、現像装置へのトナー補給動作は行なわれる。MPUは、タイマー機能を有しており、任意のタイミングで駆動モータ、エアーポンプ等を駆動制御することができる。
【0184】
図15は、剤移送装置の構成を示す概略図である。
トナー補給信号が送信されると、同時に粉体ポンプ(140)のロータ(141)およびエアーポンプ(130)が所定時間作動し、流動化されたトナーが粉体ポンプ(140)により移送チューブ(115)を経て現像装置(5)に送られる。エアーポンプ(130)は粉体ポンプ(140)のロータ(141)が停止した後、さらに所定時間の作動後に停止するようになっている。このようにすることで、移送チューブ(115)の残存トナーを空気のみによって排出することができるので、トナー移送チューブ(115)内のトナー詰まりを防止することができる。
【0185】
図15に示すように、移送チューブ(115)としては、内径が4〜10mmのチューブ状であることが望ましい。内径が4mm未満だと十分なトナー量を送るのに効率が悪くなり、10mmを超えるとトナー量の精度良いコントロールが難しくなる。移送チューブの素材は、フレキシブルでかつ耐トナー性に優れたゴム材料、例えば、ポリウレタン、ニトリル、EPDM、シリコン等を用いることが非常に有効である。現像装置(5)内での現像剤は、攪拌搬送スクリュー(56)によって搬送されるようにして循環される。この循環の間に搬送路の途中で現像スリーブ(5a)に移送された現像剤により感光体(1)上に形成された静電潜像を現像する。また、現像装置(5)の上部には空気フィルターが設けられ、移送されたトナーと空気から空気のみを現像装置(5)外へ逃がし、トナー補給時の接続部材及び現像装置(5)からのトナー飛散を防止する。トナー収納容器(121)は、袋形状でその下部中央が開口されており、その開口にポリエチレンやナイロン等
に樹脂から作られた口金部材(122)が固定されている。
【0186】
トナー収納容器としては、トナー収納容器(121)としてフレキシブルで変形可能な袋にし、この袋部(121)はポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム等のフレキシブルなシート材(80〜125μm程度の厚み)を単層または複層構成にして袋状容器形状が好ましい。なお、このトナー収納容器(121)は、この袋形状に限定されず、横型であってもよく、粉体ポンプ(140)のところまでトナーが搬送されるようになっていれば良い。
【0187】
口金部材(122)は、スリーブ状に形成され、その中空部に粉体ポンプ(140)が脱着可能に装着されている。粉体ポンプ(140)は、吐出型の一軸偏芯スクリューポンプであって、金属などの剛性をもつ材料で偏芯したスクリュー形状に作られたロータ(141)と、ゴム等の弾性体で内側に2条スクリュー形状に作られ固定されて設置されるステータ(142)とを有している。この場合、ステータ(142)は口金部材(122)に下方より嵌め込まれており、受け部材(123)によってその嵌め込まれた位置に保持されている。なお、受け部材(123)は口金部材(122)に対し、螺合、係合等によって取り外し可能に固定されるので、この受け部材(123)を外すことで、図15に示すように、ステータ(142)およびロータ(141)をトナー収納容器(121)から脱着できる。
【0188】
また、口金部材(122)には腕等を介してストッパ(124)が設けられ、このストッパ(124)は回転によってロータ(141)が容器内へ入り込むように動くことを防止することができる。なお、ストッパ(124)にはロータ(141)を回転自在に支持する軸受を設けても良い。画像形成装置本体に設けられたトナー収納容器(121)がセットされるセット部(150)には、図示していない駆動源によって回転駆動され、上下方向に延びる駆動軸(151)が設けられ、駆動軸(151)はセット部(150)の下部部材(150a)に軸受(153)を介して回転自在に支持されているとともに、その先端、すなわち上端にはロータ(141)と係合可能なジョイント(152)が固定されている。また、駆動軸(151)は上下動可能に装着され、かつスプリング(154)によって上方へ付勢されている。したがって、駆動軸(151)は固定板(154a)が軸受(153)に当接する位置で待機し、トナー収納容器(121)がセットされると、スプリング(154)の作用に抗して待機した位置より下がった位置で、ジョイント(152)がロータ(141)に係合するので、その係合はバネ力によって確実なものとなっている。
【0189】
セット部(150)には、粉体ポンプ(140)によりトナーが吐出される部分が図の左右方向に延びるパイプ状に形成されており、その一端は移送チューブ(115)を介して現像装置(5)に接続されている。また、他端にはエアー供給手段としてのエアーポンプ(130)とエアーパイプ(131)を介して接続されている。したがって、粉体ポンプ(140)によって容器から排出されたトナーはエアーポンプ(130)によるエアー流によって現像装置(5)へ移送される。
【0190】
粉体ポンプ(140)である一軸偏芯スクリューポンプは、高い固気比で粉体の連続定量移送が可能で、ロータ(141)の回転数に比例した正確なトナーの移送量が得られることが知られている。したがって、トナー補給量であるトナーの移送量の制御は粉体ポンプ(140)の回転数と駆動時間を制御すれば良い。粉体ポンプ(140)は、ロータ(141)が回転すると、下方向に吐出圧力を発生し、上方向には吸引圧力を発生する。この吐出圧力または吸引圧力の大きさは粉体ポンプ(140)のロータ(141)、ステータ(142)の形状やロータ(141)の回転数に依存する。また移送チューブ(115)の移送経路は自在で高位置や、上下左右の任意方向へ自由に移送できる。さらに、エアーの供給量は最大流量(無負荷時)1〜2リットル/分と非常に少ないものでよく、現像装置(5)などでの空気抜きも簡単に行なえトナー飛散などの発生が容易に防止できる。
【0191】
トナー収納容器(121)に設けた粉体ポンプ(140)は、停止時には完全密閉する自閉弁の役割を果たし、トナー収納容器(121)の開口部は密閉され、トナーは外部に飛散しない。よって、交換時のトナー飛散、汚染などを確実に防止することができる。さらに、粉体ポンプ(140)はトナー収納容器(121)から脱着可能であるため、ポンプ部分は再生・再利用することができる。なお、粉体ポンプ(140)はゴムからなるステータ(142)が摩耗すると寿命になるが、この場合もステータ(142)だけを交換すれば、ロータ(141)は何度でも使用することができる。トナー収納容器(121)の下部は、トナー排出孔に向かって漏斗状の形状をなしているので、容器内のトナーは重力と粉体ポンプの上流側の吸引力により容器内に残留することなく排出される。
【0192】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。図16は、他の実施形態の剤移送装置の構成を示す概略図である。図16では、画像形成装置(100)は、現像装置(5)により感光体(1)に形成された静電潜像がトナー像として現像される。このトナー補給機構は、現像装置(5)、粉体ポンプ(140)、エアーポンプ(130)および流路開閉部材を備えている。
現像装置(5)は、現像剤収納容器としてのトナーを収納したトナー収納容器(121)から吸引手段としての粉体ポンプ(140)および移送チューブ(115)を介してトナーが補給される。現像装置(5)には、感光体(1)に対向配置された現像スリーブ(5a)と、攪拌スクリュー(5b)、供給スクリュー(5d)とが備えられている。なお、符号(5c)は現像剤の層厚を均一にするドクターブレードである。
【0193】
粉体ポンプ(140)は、図16に示すように、現像装置(5)の近傍に設けられた吸い込み型の一軸偏芯スクリューポンプを用いている。この粉体ポンプ(140)の構成は、金属などの剛性をもつ材料で偏芯したスクリュー形状に作られたロータ(141)と、ゴム等の弾性体で作られ、2条スクリュー形状に形成されたステータ(142)とを有している。ロータ(141)は、ピン継ぎ手により連結された駆動軸(143)が駆動モータ(144)と駆動連結されている。
また、粉体ポンプ(140)はノズル(155)に設けられたトナー排出路(156)とトナー移送チューブ(115)によって接続されている。粉体ポンプ(140)である1軸偏芯スクリューポンプは、高い固気比で連続定量移送が可能であって、ロータ(141)の回転数に比例した正確なトナーの移送量が得られることが知られている。そこで、画像濃度検知等によりトナー補給指令が発せられると、粉体ポンプ(140)が作動し、要求された量のトナーを現像装置(5)にスムーズに補給することができる。
【0194】
トナー収納容器(121)は、図16に示すように、画像形成装置本体に設けられたセット部にセットされ、現像装置(5)と別体のユニットとして構成されている。セット部には、トナー袋の口金部材(122)内に挿入される断面が円形のノズル(155)が立設され、トナー収納容器(121)はそのトナー排出部にノズル(155)が挿入されるように上方から画像形成装置本体のセット部へセットされる。セット部に設けられたノズル(155)は、トナー供給路(156)とエアー供給路(157)とが設けられ、その内部が2重管構造になっている。トナー供給路(156)はその下端においてトナー移送チューブ(115)が接続され、また、エアー供給路(157)はトナー供給路(156)よりも上方で図の右方へ曲げられ、エアーチューブ(131)を介してエアーポンプ(130)に接続されている。
【0195】
エアーポンプ(130)は、図16に示すように、ダイアフラム型のエアーポンプであって、ダイアフラム(132)はゴムまたは柔軟なプラスチック等で形成された器状の部材で図中の下部は空気を遮断した状態で仕切り板(133)に密着し、上部をモータ(139)の回転軸に取り付けた偏芯軸(138)によって上下方向に駆動される。この動作によってダイアフラム内部には空気が吸い込まれたり吐き出したりする。仕切り板(133)には、吸入穴(133b)、排出穴(133a)の二ヶ所の穴部があり、吸入穴(133b)には吸入弁(135)、排出穴(133a)には排出弁(134)のそれぞれ可撓性の弁部材が設けられている。
【0196】
このように構成することによって、モーター(139)に通電して回転することにより吸入口(137)より空気を吸入し、排出口(136)から空気を吐き出すように作用する。そして、トナー収納容器(121)のトナーはエアーポンプ(130)が作動すると、該ポンプからエアーパイプ(131)およびエアー供給路(157)を介してトナー収納容器(121)内にエアーが噴出される。トナー袋の口金部材(122)内に噴出されたエアーは、トナー層を通過することによりトナーを拡散しながら流動化させる。
【0197】
このように構成されたトナー補給機構は、ノズル(155)のトナー供給路(排出路)(156)とエアー供給路(157)の端部が隣接しているので、粉体ポンプ(140)を作動したときに、トナーの代わりにエアーを吸引してしまい、トナーが搬送されなくなる現象が発生することがある。この現象は、ノズルが単管でそれをトナー供給路とエアー供給路として交互に使用するものにも起こり得る。
【0198】
そこで、本実施形態ではかかるこの不具合を防止するため、エアーの供給流路中に、例えば市販の電磁バルブ等からなるエア流路、すなわち、エアーポンプ(130)の吸入口(137)からエアー供給路(157)までの流路における任意の位置で、その流路を開閉する開閉機構を設けることが有効である。
また、電磁切り替え弁の代りに、図16に示すように、エアーポンプ(130)の吸入口(137)を開閉するように構成しても良い。この例では、一般的にフラッパー型ソレノイドと呼ばれる電磁マグネットを駆動源としてエア流路を開閉しており、鉄心に巻いたコイル(160)に通電することにより、アーマチュア(161)が吸引されてエアーポンプの吸入口(137)を塞ぐことができる。なお、符号(164)はアーマチュア(161)を戻すためのスプリング、(163)は磁路を形成するヨーク、(162)はエアーポンプの吸入口(137)を塞ぐために設けたゴムなどで構成された弾性体である。
【0199】
このように構成されたトナー補給機構は、現像装置(5)のトナー濃度が不足したという信号により、次のステップでトナーの補給を行う。まず、エアー流路開閉ソレノイドのコイル(160)をONして流路を開とする。次に、エアーポンプ(130)をONし、トナー収納容器(121)にエアーを注入して容器内のトナーを攪拌して流動性を高める。エアーポンプ(130)への通電をOFFにした後に、エアー流路開閉ソレノイドのコイル(160)をOFFとしてエア流路を閉じる。粉体ポンプ(140)をONしてトナー収納容器(121)内のトナーを吸引し、現像装置(5)にトナーを供給する。不足分のトナーが補給されると、粉体ポンプ(140)をOFFとする。
【0200】
図17は、上記したトナー補給時の各部のON,OFFのタイミングを示すタイムチャートである。上述のように、トナー補給信号に基づいて、まず開閉ソレノイドMがONし、次にエアーポンプLがON,エアーの注入が完了してエアーポンプをOFF、開閉ソレノイドをOFF、続いてスクリュウーポンプをON、一定量のトナーを補給してからOFF、でトナー補給の一連の動作が完了する。かかる構成により、粉体ポンプ(140)を作動したときに、エアー流路が閉じているので、トナーの代わりにエアを吸引してしまうという問題を確実に防止することができる。
【0201】
図18は、フレキシブル材料を用いたトナー収納容器(121)を示す図である。その構成は、図11と同様の口金部材(122)と柔軟なシート状の材料で出来た袋部(126)からなり、(a)は内部にトナーが入っている初期状態を示し、容器部は十分に広がった形となっている。(b)は内部のトナーを補給し終わった状態を示す図であり、袋部は吸引による減圧で収縮し、初期状態の1/5〜1/10程度の容積に減容している。ここで、トナー攪拌のためにエアーを供給しながら減容を行うためには、エアーの供給量に対して、トナー排出時にそれ以上の空気を排出することが必要であり、またこれによって十分な減容が可能であることは実験によって確認できた。
【0202】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、各種改変できるものである。例えば、現像剤収納容器はトナーに限らず、トナーとキャリアからなる現像剤でもよく、さらにトナーにおいても2成分現像用のものでも、1成分用のものでもよいことは当然である。
【実施例】
【0203】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例中、各例における「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものであり、「モル」はモル比を意味する。
まず、実施例、比較例で用いた材料及び得られたトナーについての各種物性等の測定方法について述べる。
【0204】
<樹脂の重量平均分子量の測定>
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定装置:GPC−8220GPC(東ソー社製)
カラム:TSKgel SuperHZM―H 15cm 3連(東ソー社製)
温度:40℃
溶媒:THF
流速:0.35ml/min
試料:0.15%の試料を0.4ml注入
試料の前処理:トナーをテトラヒドロフランTHF(安定剤含有、和光純薬社製)に0.15%で溶解後0.2μmフィルターで濾過し、その濾液を試料として用いる。前記THF試料溶液を100μl注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作製された検量線の対数値とカウント数との関係から算出した。
検量線作成用の標準試料としては、分子量が6×10、2.1×10、4×10、1.75×10、1.1×10、3.9×10、8.6×10、2×106及び4.48×106の単分散ポリスチレン(Pressure Chemical社製又は東洋ソーダ工業社製)を用いることができる。このとき、10種類程度の標準試料を用いることが好ましい。なお、検出器としては、屈折率検出器を用いることができる。
【0205】
<樹脂の数平均分子量の測定>
樹脂のみのTHF可溶分をGPCで測定した。
GPCによる分子量測定の条件は以下の通りである。
装置 : 東ソー社製 HLC−8120
カラム : TSK GEL GMH6 2本 (東ソー社製)
測定温度 : 25℃
試料溶液 : 0.25重量%のテトラヒドロフラン(THF)溶液
溶液注入量: 200μl
検出装置 : 屈折率検出器
なお、分子量校正曲線は標準ポリスチレンを用いて作成した。
【0206】
<トナーの平均粒子径>
トナーの体積平均粒子径(Dv)、個数平均粒子径(Dn)、Dv/Dnは、粒度測定器(「マルチサイザーIII」、ベックマンコールター社製)を用い、アパーチャー径100μmで測定し、解析ソフト(Beckman Coulter Mutlisizer3 Version3.51)にて解析を行った。具体的には、ガラス製100mlビーカーに10%界面活性剤(アルキルベンゼンスフォン酸塩ネオゲンSC−A;第一工業製薬社製)を0.5ml添加し、各トナー0.5g添加しミクロスパーテルでかき混ぜ、次いでイオン交換水80mlを添加した。得られた分散液を超音波分散器(W−113MK−II;本多電子社製)で10分間分散処理した。前記分散液を前記マルチサイザーIIIを用い、測定用溶液としてアイソトンIII(ベックマンコールター社製)を用いて測定を行った。測定は装置が示す濃度が8±2%になるように前記トナーサンプル分散液を滴下した。本測定法は粒径の測定再現性の点から前記濃度を8±2%にすることが重要である。この濃度範囲であれば粒径に誤差は生じない。
【0207】
<ガラス転移温度、吸熱開始温度の測定>
本発明におけるガラス転移温度(Tg)、吸熱開始温度とは、具体的に次のような手順で決定される。測定装置として島津製作所社製TA−60WS、及びDSC−60を用い、次に示す測定条件で測定した。
(測定条件)
サンプル容器:アルミニウム製サンプルパン(フタあり)
サンプル量:5mg
リファレンス:アルミニウム製サンプルパン(アルミナ10mg)
雰囲気:窒素(流量50ml/min)
温度条件
開始温度:20℃
昇温速度:10℃/min
終了温度:150℃
保持時間:なし
降温温度:10℃/min
終了温度:20℃
保持時間:なし
昇温速度:10℃/min
終了温度:150℃
測定した結果は前記島津製作所社製データ解析ソフト(TA−60、バージョン1.52)を用いて解析を行った。
【0208】
ガラス転移温度の解析方法は2度目の昇温のDSC微分曲線であるDrDSC曲線のもっとも低温側に最大ピークを示す点を中心として±5℃の範囲を指定し、解析ソフトのピーク解析機能を用いてピーク温度を求める。次にDSC曲線で前記ピーク温度+5℃、及び−5℃の範囲で解析ソフトのピーク解析機能をもちいてDSC曲線の最大吸熱温度を求める。ここで示された温度をTgとする。
【0209】
吸熱開始温度の解析方法は2度目の昇温のDSC曲線のもっとも低温側のピークにおいて、図20に示したように接線を2本引き交点を吸熱開始温度と定義する。図20では48℃に相当する。
【0210】
[評価]
<表面ワックス量>
先ず、試料として、トナー3gを自動ペレット成型器(Type M No.50 BRP-E;MAEKAWA TESTING MACHINE CO.製)で6tの荷重で1分間プレスして40mmφ(厚さ約2mm)ペレットを作製した。そのトナーペレット表面をFTIR−ATR法により測定した。用いた顕微FTIR装置は、PERKIN ELMER社製Spectrum OneにMultiScope FTIR ユニットを設置したもので、直径100μmのゲルマニウム(Ge)結晶のマイクロATRで測定した。赤外線の入射角41.5°、分解能4cm−1、積算20回で測定した。
得られたワックス由来のピーク(2850cm−1)とバインダー樹脂由来のピーク(828cm−1)との強度比(P2850/P828)をトナー粒子表面近傍の相対的なワックス量とした。値は測定場所を変えて4回測定した後の平均値を用いた。
【0211】
<トナー中のワックス粒径の測定>
トナー1gをクロロホルム100gに10時間浸漬し、遠心分離器(コクサン社製 H−9R、LNアングルロータ)にて5500rpmにてワックスを遠心分離した。遠心分離した上澄みにワックス粒子が存在する。レーザー回折式粒度分布測定器(LA−920、(堀場製作所社製)を用いて粒径の測定を行った。LA−920の測定の際にLA−920専用アプリケーション(Ver3.32)(堀場製作所社製)を用いて解析を行った。LA−920の測定は、具体的にはクロロホルムで光軸調整した後、バックグラウンドを測定する。その後循環を開始しワックス分散液を滴下する。透過率が安定したことを確認した後に超音波を下記条件で照射する。照射した後に透過率の値が70〜95%の範囲となる条件で分散粒子径を測定した。本測定装置は粒子径の測定再現性の点からLA−920の透過率の値が70〜95%の範囲となる条件で測定することが重要である。また、超音波照射後に透過率が前記値から外れた場合は再度測定を行う必要がある。前記透過率の値を得るために前記分散液の滴下量を調節する必要がある。
測定・解析条件は以下のように設定した。
データ取り込み回数:15回
相対屈折率:1.20
循環:5
超音波強度:7
トナーに含有されるワックス粒子の粒径分布は、LA−920専用アプリケーションを用いて粒径と頻度分布の関係で求めることが出来、1μm以上の粒径の頻度は積分値として求めることが出来る。
【0212】
<印刷用紙裏汚れ>
トナー5部とキャリア95部を混合し、ターブラーで攪拌して現像剤を作製した。
リコー社製画像形成装置(imagio Neo 450)を用いて黒ベタ画像を作成し、1万枚の画像出力後に白ベタ画像を出力し、印刷用紙の裏汚れを評価した。
○…裏汚れなし、×…明確に裏汚れがあると認められる。
【0213】
<分離性>
分離性は記録媒体の押し付け力を測定する測定装置を用いて評価する。図19は記録媒体の押し付け力を測定する測定装置を説明する概略図である。図19において、記録媒体Sは測定爪28に押し付けられる形で搬送される。この時の押し付け力を測定爪28他端に設けたロードセル27により読み取る。測定爪28は、図19に示すように、定着ニップ部直後、定着ローラ15側に設けられる。
ロードセル27により読み取られた値が記録媒体Sを定着ローラ15から剥離するのに必要な力であり、これを分離抵抗力とする。この所定の条件の基に測定された分離抵抗力の大小により定着ローラ15からの記録媒体Sの分離が可能か否かを判断する。
本評価では、定着温度160℃の分離抵抗力を該トナーの分離抵抗力とする。この評価において分離性を
○;51〜200gf、△;201〜400gf、×;401gf以上
とした。この測定時のトナー付着量は0.9g/cmとした。
分離抵抗力が50gf以下である場合、余白が0mmであっても分離可能、200gf以下であれば、余白が2mm以上あれば分離可能、400gf以下であれば余白が4mm以上あれば分離可能、401gf以上は分離不可能で紙詰まりを起こす。
【0214】
<トナーの凝集性>
30g/cmの荷重をかけながら、36℃で一定に保たれた恒温槽に7日間静置した。そのトナー1gを目開き75μmの篩を用いて、振とう幅1mmで30秒間篩がけを行った際に篩の上に残存するトナー量を計測した。
篩上のトナー量に従い、次のように判定した。
○:0.5mg未満,△:0.5mg以上1.0mg未満,×:1.0mg以上
【0215】
<キャリアの作製>
トルエン100部に、シリコーン樹脂オルガノストレートシリコーン100部、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン5部及びカーボンブラック10部を添加し、ホモミキサーで20分間分散させて、樹脂層塗布液を調製した。流動床型コーティング装置を用いて、平均粒径50μmの球状マグネタイト1,000部の表面に樹脂層塗布液を塗布して、キャリアを作製した。
【0216】
<トナー材料液1の調製工程>
(未変性ポリエステル(低分子ポリエステル)の合成)
冷却管、攪拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物229部、ビスフェノールAプロピオンオキサイド3モル付加物529部、テレフタル酸208部、アジピン酸46部、及びジブチルチンオキサイド2部を投入し、常圧下、230℃にて8時間反応させた。次いで、該反応液を10〜15mmHgの減圧下にて5時間反応させた後、反応容器中に無水トリメリット酸44部を添加し、常圧下、180℃にて2時間反応させて、未変性ポリエステルAを合成した。
得られた未変性ポリエステルAは、数平均分子量(Mn)が2,500、重量平均分子量(Mw)が6,700、ガラス転移温度(Tg)が47℃、酸価が18mgKOH/gであった。
【0217】
<マスターバッチ(MB)の調製>
水600部、着色剤としてのカーボンブラック(「Printex35」;デグサ社製、DBP吸油量=42ml/100g、pH=9.5)400部、及び前記未変性ポリエステル600部を、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)を用いて混合した。該混合物を二本ロールで150℃にて30分混練した後、圧延冷却し、パルペライザー(ホソカワミクロン社製)で粉砕して、マスターバッチを調製した。
【0218】
<ワックス分散剤の合成>−−
温度計および攪拌機の付いたオートクレーブ反応槽中に、キシレン600部、低分子量ポリエチレン(三洋化成工業社製、 サンワックスLEL−400:1/2法軟化点128℃)300部を入れ充分溶解し、窒素置換後、スチレン2310部、アクリロニトリル270部、アクリル酸ブチル150部、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート78部およびキシレン455部の混合溶液を175℃で3時間かけて滴下して重合し、さらにこの温度で30分間保持した。次いで脱溶剤を行い、ワックス分散剤を得た。
【0219】
(製造例1)
−−ワックス分散液の調製−−
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器中に、前記未変性ポリエステル378部、ワックス(マイクロクリスタリンワックス:ビースクエア200ホワイト、東洋アドレ社製、融点67℃)110部、ワックス分散剤33部、及び酢酸エチル947部を仕込み、攪拌下80℃まで昇温し、80℃のまま5時間保持した後、1時間かけて30℃まで冷却し原料溶解液を得た。DSCを用いてビースクエア200ホワイトの吸熱開始温度を測定したところ、48.0℃であった(図20)。
得られた原料溶解液を容器に移し、ビーズミル(「ウルトラビスコミル」;アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/秒、及び0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填した条件で1パスして、前記ワックスの分散を行いワックス分散液Aを得た。LAで分散径を測定したところ、分散径が0.65μm、1μm以上の粗大ワックス量が33%であった。
上記の原料溶解液を上記と同様な条件で、2パス分散させてワックス分散液Bを得た。LAで分散径を測定したところ、分散径が0.58μm、1μm以上の粗大ワックス量が16%であった。
上記の原料溶解液を上記と同様な条件で、ビーズミルで3パス分散させてワックス分散液Cを得た。LAで分散径を測定したところ、分散径が0.54μm、1μm以上の粗大ワックス量が12%であった。
上記の原料溶解液を上記と同様な条件で、ビーズミルで6パス分散させてワックス分散液Dを得た。LAで分散径を測定したところ、分散径が0.50μm、1μm以上の粗大ワックス量が6%であった。
更に、上記の原料溶解液を上記と同様な条件で、ビーズミルで10パス分散させてワックス分散液Eを得た。LAで分散径を測定したところ、分散径が0.47μm、1μm以上の粗大ワックス量が0%であった。
【0220】
〔実施例1〕
−有機溶剤相の調製−
前記ワックス分散液Cを2493部に、前記マスターバッチ500部、及び酢酸エチル1012部を仕込み、1時間混合して原料溶解液を得た。
得られた原料溶解液1324部を反応容器に移し、ビーズミル(「ウルトラビスコミル」;アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/秒、及び0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填した条件で3パスして、前記カーボンブラック及び前記ワックスの分散を行った。次いで、該分散液に前記未変性ポリエステルの65質量%酢酸エチル溶液1324部を添加した。上記同様の条件のビーズミルで1パスし、分散させ、有機溶剤相を調製した。
得られた有機溶剤相の固形分濃度(測定条件:130℃、30分の加熱による)は、50質量%であった。
【0221】
−−プレポリマーの合成−−
冷却管、撹拌機及び窒索導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物682部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物81部、テレフタル酸283部、無水トリメリット酸22部及びジブチルチンオキサイド2部を入れ、常圧下230℃で7時間反応し、さらに10〜15mmHgの減圧で5時間反応して[中間体ポリエステル1]を得た。[中間体ポリエステル1]は、数平均分子量2200、重量平均分子量9700、ピーク分子量3000、Tg54℃、酸価0.5mgKOH/g、水酸基価52mgKOH/gであった。
次に、冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、[中間体ポリエステル1]410部、イソホロンジイソシアネート89部、酢酸エチル500部を入れ100℃で5時間反応し、[プレポリマー1]を得た。重量平均分子量は36500であった。[プレポリマー1]の遊離イソシアネート質量%は1.53質量%、固形分が49.1質量%であった。
【0222】
−−ケチミン(活性水素基含有化合物)の合成−−
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器中に、イソホロンジアミン170部及びメチルエチルケトン75部を仕込み、50℃にて5時間反応を行い、ケチミン化合物(活性水素基含有化合物)を合成した。得られたケチミン化合物(活性水素機含有化合物)のアミン価は418mgKOH/gであった。
【0223】
−−トナー材料液の調製−−
反応容器中に、前記有機溶剤相749部、前記[プレポリマー1]115部、及び前記ケチミン化合物2.9部、第3級アミン化合物(U−CAT660M、三洋化成工業社製)0.4部を仕込み、TK式ホモミキサー(特殊機化工業製)を用いて7.5m/sにて1分間混合してトナー材料液を調製した。
【0224】
−有機樹脂微粒子分散液の調製−
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器中に、水683部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(「エレミノールRS−30」;三洋化成工業社製)20部、スチレン78部、メタクリル酸78部、アクリル酸ブチル120部、及び過硫酸アンモニウム1部を仕込み、400回転/分で15分間撹拌し、白色の乳濁液を得た。該乳濁液を加熱して、系内温度75℃まで昇温して5時間反応させた。次いで、1質量%過硫酸アンモニウム水溶液30部を添加し、75℃にて5時間熟成して、ビニル樹脂粒子(スチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液(有機樹脂微粒子分散液)を調製した。
得られた有機樹脂微粒子分散液に含まれる有機樹脂微粒子の体積平均粒子径(Dv)を、粒度分布測定装置(「nanotrac UPA−150EX」;日機装社製)により測定したところ、55nmであった。また、該有機樹脂微粒子分散液の一部を乾燥して樹脂分を単離し、該樹脂分のガラス転移温度(Tg)を測定したところ、48℃であり、重量平均分子量(Mw)を測定したところ450,000であった。
【0225】
−水系媒体相の調製−
水990部、界面活性剤としてドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5質量%水溶液(「エレミノールMON−7」;三洋化成工業社製)37部、前記有機樹脂微粒子分散液15部、及び酢酸エチル90部を、混合撹拌し、乳白色の液体(水系媒体相)を得た。
【0226】
<トナー造粒工程>
−乳化乃至分散−
前記水系媒体相1200部に前記トナー材料液を添加し、TK式ホモミキサー(特殊機化工業社製)で、周速15m/sにて20分間混合し、水中油滴型分散液(乳化スラリー)を調製した。その後、羽根をセットしたスリーワンモーターを用いて分散液を300rpmで30分攪拌し乳化粒子を収斂させ、「マルチサイザーIII」を用いて粒径を測定したところ、Dvが5μm、Dv/Dnが1.15の大きさの粒子を得た。
【0227】
−有機溶剤の除去と熟成工程−
得られたスラリーをナスフラスコに移し、エバポレーターを用いて室温で溶媒を除去した後、攪拌機及び温度計をセットした反応容器中にスラリーを仕込み、45℃にて4時間熟成を行った。
【0228】
−洗浄による界面活性剤の除去−
前記熟成後のスラリー100部を遠心濾過した後、濾過ケーキにイオン交換水100部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数10.0m/sにて10分間)した後濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水100部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数10.0m/sにて10分間)した後遠心濾過した。得られた濾過ケーキに10質量%水酸化ナトリウム水溶液100質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数10.0m/sにて10分間)した後遠心濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数10.0m/sにて10分間)した後遠心濾過する操作を2回行った。得られた濾過ケーキにイオン交換水300部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数10.0m/sにて10分間)した後、10質量%塩酸溶液にてpH4に調整後1時間撹拌し遠心濾過を行った。得られた濾過ケーキにイオン交換水300部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数10.0m/sにて10分間)した後、遠心濾過する操作を2回行い最終濾過ケーキを得た。
【0229】
−界面活性剤除去後の加熱−
得られた最終濾過ケーキにイオン交換水300部を添加しスラリー状態とし、攪拌しながらスラリー温度55度で30分加熱した後、減圧濾過した。
【0230】
−乾燥−
得られた濾過ケーキを循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmのメッシュで篩い、実施例1のトナー母体粒子(体積平均粒径5.4μm、BET比表面積2.0m/g)を得た。
【0231】
−外添剤処理−
得られた実施例1のトナー母体粒子100部に対し、外添剤としてのBET比表面積値が40m/gの疎水性シリカ1.5部と、疎水化酸化チタン0.5部をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)を用いて混合処理し、目開き35μmのメッシュで篩い、実施例1のトナーを製造した。得られたトナーをクロロホルムに溶解し、LAを用いてトナー中のワックス分散状態を測定したところ、1μm以上の粗大ワックス量は10%であった。また、表面ワックス量〔強度比(P2850/P828)〕は0.18であった。
【0232】
〔実施例2〕
有機溶剤相の調製でワックス分散液Dを用いたこと以外は実施例1と同様にして、トナーを作成した。得られたトナーをクロロホルムに溶解し、LAを用いてトナー中のワックス分散状態を測定したところ、1μm以上の粗大ワックス量は5%であった。また、表面ワックス量〔強度比(P2850/P828)〕は0.19であった。
【0233】
〔実施例3〕
有機溶剤相の調製工程において原料溶解液を仕込む際に、ワックス分散剤を36部加える工程を増やしたこと以外は実施例1と同様にして、トナーを作成した。得られたトナーをクロロホルムに溶解し、LAを用いてトナー中のワックス分散状態を測定したところ、1μm以上の粗大ワックス量は10%だった。また、表面ワックス量〔強度比(P2850/P828)〕は0.09であった。
【0234】
〔実施例4〕
有機溶剤相の調製工程において原料溶解液を仕込む際に、ワックス分散剤を182部加える工程を増やしたこと以外は実施例2と同様にして、トナーを作成した。得られたトナーをクロロホルムに溶解し、LAを用いてトナー中のワックス分散状態を測定したところ、1μm以上の粗大ワックス量は5%であった。また、表面ワックス量〔強度比(P2850/P828)〕は0.03であった。
【0235】
〔実施例5〕
有機溶剤相の調製でワックス分散液Bを用いたこと以外は実施例1と同様にして、トナーを作成した。得られたトナーをクロロホルムに溶解し、LAを用いてトナー中のワックス分散状態を測定したところ、1μm以上の粗大ワックス量は18%であった。また、表面ワックス量〔強度比(P2850/P828)〕は0.17であった。
【0236】
〔実施例6〕
有機溶剤相の調製でワックス分散液Bを用いたこと以外は実施例4と同様にして、トナーを作成した。得られたトナーをクロロホルムに溶解し、LAを用いてトナー中のワックス分散状態を測定したところ、1μm以上の粗大ワックス量は17%であった。また、表面ワックス量〔強度比(P2850/P828)〕は0.03であった。
【0237】
〔比較例1〕
有機溶剤相の調製でワックス分散液Eを用いたこと以外は実施例1と同様にして、トナーを作成した。得られたトナーをクロロホルムに溶解し、LAを用いてトナー中のワックス分散状態を測定したところ、1μm以上の粗大ワックス量は0%であった。また、表面ワックス量〔強度比(P2850/P828)〕は0.24であった。
【0238】
〔比較例2〕
有機溶剤相の調製でワックス分散液Aを用いたこと以外は実施例1と同様にして、トナーを作成した。得られたトナーをクロロホルムに溶解し、LAを用いてトナー中のワックス分散状態を測定したところ、1μm以上の粗大ワックス量は30%であった。また、表面ワックス量〔強度比(P2850/P828)〕は0.21であった。
【0239】
〔比較例3〕
界面活性剤除去後の加熱工程を除いたこと以外は実施例4と同様にして、トナーを作成した。得られたトナーをクロロホルムに溶解し、LAを用いてトナー中のワックス分散状態を測定したところ、1μm以上の粗大ワックス量は5%であった。また、表面ワックス量〔強度比(P2850/P828)〕は0.04であった。
【0240】
〔比較例4〕
ワックス分散液の調製において、ビースクエア200ホワイトをHNP−10(パラフィンワックス 日本精蝋社製、吸熱開始温度68℃)に変えた以外は実施例1と同様にして、トナーを作製した。得られたトナーをクロロホルムに溶解し、LAを用いてトナー中のワックス分散状態を測定したところ、1μm以上の粗大ワックス量は5%であった。また、表面ワックス量〔強度比(P2850/P828)〕は0.17であった。
【0241】
実施例及び比較例のトナーの評価結果を表1に示す。
【0242】
【表1】

【0243】
表1に示されるように、本発明のトナーの使用によれば、流動性、定着時の紙の離型性等に優れているため、高速のフルカラー画像形成方法においても高品位な画像を得ることができる。
【符号の説明】
【0244】
(図2〜7の符号)
500 ローラ式帯電装置
501 帯電ローラ
502 芯金
503 導電ゴム層
504 電源
505 感光体
510 ブラシ式帯電装置
511 ブラシローラ(ファーブラシローラ又は磁気ブラシローラ)
512 芯金
513 ブラシ部
514 電源
515 感光体
600 現像装置
601 現像スリーブ
602 電源
603 現像部
604 感光体
605 トナー
710 加熱ローラ
710 定着ローラ(対向回転体)
721 芯金
722 弾性部材
730 定着ベルト(耐熱性ベルト、トナー加熱媒体)
731 基体
732 発熱層
733 中間層
734 離型層
740 加圧ローラ(加圧回転体)
741 芯金
742 弾性部材
750 温度検知部材
760 誘導加熱手段
761 励磁コイル
762 コイルガイド板
763 励磁コイルコア
764 励磁コイルコア支持部材
770 記録媒体
A ベルトの回転方向
N 定着ニップ部
W1 接触部位
T トナー像
(図8の符号)
800 プロセスカートリッジ
801 感光体
802 帯電手段
803 現像手段
804 トナー
805 現像ローラ
806 クリーニング手段
(図9の符号)
100 画像形成装置
120Bk 画像書込部(黒)
120C 画像書込部(シアン)
120M 画像書込部(マゼンダ)
120Y 画像書込部(イエロー)
130Bk 画像形成部(黒)
130C 画像形成部(シアン)
130M 画像形成部(マゼンダ)
130Y 画像形成部(イエロー)
140 給紙部
150 定着装置
160 レジストローラ対
170 2次転写ローラ
180 転写ベルト
200Bk 現像装置(黒)
200C 現像装置(シアン)
200M 現像装置(マゼンダ)
200Y 現像装置(イエロー)
210Bk 感光体(黒)
210C 感光体(シアン)
210M 感光体(マゼンダ)
210Y 感光体(イエロー)
215Bk 帯電装置(黒)
215C 帯電装置(シアン)
215M 帯電装置(マゼンダ)
215Y 帯電装置(イエロー)
220 中間転写ベルト
230Bk 1次転写装置(黒)
230C 1次転写装置(シアン)
230M 1次転写装置(マゼンダ)
230Y 1次転写装置(イエロー)
241 導電性ローラ
242 導電性ローラ
243 導電性ローラ
250Bk トナー移送管(黒)
250C トナー移送管(シアン)
250M トナー移送管(マゼンダ)
250Y トナー移送管(イエロー)
260 中間転写ベルトクリーニング装置
261 導電性ファーブラシ
262 導電性ファーブラシ
300Bk クリーニング装置(黒)
300C クリーニング装置(シアン)
300M クリーニング装置(マゼンダ)
300Y クリーニング装置(イエロー)
(図10の符号)
10 中間転写体
14 第1の支持ローラ
15 第2の支持ローラ
16 第3の支持ローラ
17 中間転写体クリーニング装置
18 画像形成手段
20 タンデム画像形成装置
21 露光手段
22 2次転写手段
23 ローラ
24 2次転写ベルト
25 定着装置
26 定着ベルト
27 加圧ローラ
28 シート反転装置
30 原稿台
32 コンタクトガラス
33 第1走行体
34 第2走行体
35 結像レンズ
36 読取りセンサ
40、40Y、40C、40M 感光体
42 給紙ローラ
43 ペーパーバンク
44 給紙カセット
45 分離ローラ
46 給紙路
47 搬送ローラ
48 給紙路
49 レジストローラ
50 給紙ローラ
51 手差しトレイ
52 分離ローラ
53 給紙路
55 切換爪
56 排出ローラ
57 排紙トレイ
62 1次転写装置
100 画像形成装置
101 画像形成装置本体
200 給紙テーブル
300 スキャナ
400 原稿自動搬送装置(ADF)
(図11〜18の符号)
2 画像形成ユニット
20 読取装置
4 露光装置
5 現像装置
5a 現像ローラ(現像スリーブ)
5b 攪拌搬送スクリュー
5c ドクターブレード
5d 供給ローラ(供給スクリュー)
5e 薄層形成部材
5f 電源
6 転写装置
6a 中間転写ベルト
6b 支持ローラ(転写バイアスローラ)
6c 支持ローラ(テンションローラ)
6d 支持ローラ
6e 一次転写ローラ
6g 二次転写ローラ
7 クリーニング装置
7a クリーニングブレード
7b 支持部材
7c 回収コイル
7d 加圧スプリング
7e トナー回収羽根
8 定着装置
8a 加熱ローラ
8b 加圧ローラ
80 サーフ定着装置
81 定着フィルム
82 駆動ローラ
83 従動ローラ
84 加熱体
85 定着温度センサ
86 平面基盤
87 定着ヒータ
88 加圧ローラ
100 画像形成装置
109 給紙ユニット
110 ピックアップローラ
111 レジストローラ
112 排紙ローラ
114 トナー貯蔵部
115 移送チューブ
120 剤移送装置
121 トナー収納容器
122 口金部材
123 受け部材
124 ストッパ
126 袋部
130 エアーポンプ
131 エアーパイプ
132 ダイアフラム
133 仕切り板
133a 排出穴a
133b 吸入穴b
134 排出弁
135 吸入弁
136 排出口
137 吸入口
138 偏心軸
139 モーター
140 粉体ポンプ
141 ロータ
142 ステータ
143 駆動軸
144 駆動モータ
150 セット部
150a 下部部材
151 駆動軸
152 ジョイント
153 軸受
154 スプリング
154a 固定板
155 ノズル
156 トナー排出路
157 エア供給路
160 コイル
161 アーマチュア
162 弾性体
163 ヨーク
164 スプリング
L エアーポンプ
M 開閉ソレノイド
N 粉体ポンプ
P 記録材
Q 定着ニップ領域
(図19の符号)
15 定着ローラ
16 加圧ローラ
27 ロードセル
28 測定爪
【先行技術文献】
【特許文献】
【0245】
【特許文献1】米国特許第2297691号明細書
【特許文献2】特開平10−020552号公報
【特許文献3】特開平11−007156号公報
【特許文献4】特開2004−226669号公報
【特許文献5】特許第3225889号公報
【特許文献6】特開2004‐246345号公報
【特許文献7】特開2010−139912号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともトナー材料として結着樹脂、着色剤及び炭化水素系離型剤を含む母体粒子と、外添剤とからなる静電荷像現像用トナーであって、
前記炭化水素系離型剤には示差走査熱量計により測定されるDSC曲線の吸熱開始温度が35〜65℃であるワックスが用いられ、及び前記母体粒子はトナー材料を有機溶媒に溶解又は分散して油相を調製する工程、前記油相を水系媒体中で乳化又は分散させて乳化又は分散液を作成する工程、前記乳化又は分散液から有機溶媒を除去する工程、前記有機溶媒除去後に前記ワックスの吸熱開始温度以上の温度で加熱する工程を経て得られ、表面から0.3μmまでの深さ領域に存在する前記ワックスの量が、FTIR−ATR(全反射吸収赤外分光)法により求められる前記ワックス由来のピーク(2,850cm−1)と前記結着樹脂由来のピーク(828cm−1)との強度比(P2850/P828)で、0.01〜0.20の範囲にあり、かつレーザー回折式分布径測定装置で測定される母体粒子中の分散径1μm以上のワックスがワックス全体の2質量%以上20質量%以下であることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
前記結着樹脂はポリエステル樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記ポリエステル樹脂は、未変性ポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項2に記載のトナー。
【請求項4】
前記ワックスはマイクロクリスタリンワックスであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のトナー。
【請求項5】
前記水系媒体中に界面活性剤が含有され、前記乳化又は分散させる工程の後で該界面活性剤を除去し、その後スラリー状態で前記ワックスの吸熱開始温度以上の温度で加熱する工程を経て得られたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のトナー。
【請求項6】
前記母体粒子を前記結着樹脂のガラス転移温度以上+10℃以下の温度で加熱し表面処理をすることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のトナー。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のトナーとキャリアとからなることを特徴とする二成分現像剤。
【請求項8】
静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に形成した静電潜像を請求項1〜6のいずれかに記載のトナーを用いて現像し可視像を形成する現像手段とを少なくとも有することを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項9】
静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、該静電潜像を請求項1〜6のいずれかに記載のトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、該可視像を記録媒体に転写する転写手段と、記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくとも有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれかに記載のトナーを収納したトナー収納容器中のトナーを粉体ポンプによって移送チューブを介して現像手段へ補給する剤移送手段と、静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、該静電潜像を該トナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、該可視像を記録媒体に転写する転写手段と、記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくとも有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2012−163774(P2012−163774A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24139(P2011−24139)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】