説明

非ステロイド系抗炎症薬の硫化水素誘導体

【解決手段】 本発明は、炎症、疼痛、発熱の治療に有用な、改良された抗炎症特性を有する非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)の誘導体に関連する。特に、NSAIDsは硫化水素(HS)放出部分と共に誘導体化され、副作用の少ない新たな抗炎症性化合物を産生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年5月27日付けで出願されたPCT/CA2005/000819に対して優先権を主張した2006年3月31日付けで出願されたPCT/CA2006/000484の一部継続として出願されたものである。本出願はさらに2006年7月18日付けで出願された米国特許仮出願第60/807,639号および2007年1月30日付けで出願された米国特許仮出願第60/887,188号に対して優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、炎症、疼痛、発熱の治療に有用な、改良された抗炎症特性を有する非ステロイド系抗炎症薬(non−steroidal anti−inflammatory drug:NSAIDs)の誘導体に関連する。より具体的には、NSAIDsは硫化水素(HS)放出部分によって誘導体化されており、副作用の少ない新たな抗炎症性化合物を産生するものである。
【背景技術】
【0003】
非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)は、変形性関節症、関節リウマチ、痛風、強直性脊椎炎など、疼痛、発熱、炎症に関連した様々な病態の治療に広範に用いられている。NSAIDsはさらに損傷および外科手術(歯科手術を含む)に関連した急性疼痛および頭痛の治療にも広範に用いられている。NSAIDsの有益な作用は主にシクロオキシゲナーゼ−1(cyclooxygenase−1:COX−1)およびシクロオキシゲナーゼ−(cyclooxygenase−2:COX−2)を阻害することによるプロスタグランジン合成抑制能に起因すると考えられている。
【0004】
しかし、NSAIDsの長期使用は消化管に重大な損傷を及ぼす可能性があるためにかなり制限されている(Wallace,J.L.Nonsteroidal anti−inflammatory drugs and gastroenteropathy:the second hundred years.Gastroenterology.1997;112:1000〜1016)。選択的COX−2阻害薬は消化管損傷が比較的軽度であると思われたため、従来のNSAIDsの進歩とみられていた。しかし、これらの薬剤およびおそらくは従来のNSAIDsについても、その心臓血管毒性についての懸念が生じている(Grosserら、Biological basis for the cardiovascular consequences of COX−2 inhibition:the therapeutic challengers and opportunities.J Clin Invest.2006;116:4〜15)。
【0005】
NSAIDsが白血球粘着を促進して胃粘膜血流を低下させ、これらの作用がNSAID誘発性の胃腸障害の発病に対して広範囲にわたり重要な要因であることは周知である(Wallace,1997)。非選択的N且つCOX−2選択的NSAIDsによる白血球粘着の誘導もまた、これらの薬剤による心臓血管合併症に寄与している可能性がある。
【0006】
最近、硫化水素(HS)が抗炎症作用および鎮痛作用を及ぼすことが観察された。HSは内因性物質であり、多くの組織で産生され、多くの機能に作用を及ぼす(Wang,Two‘s company,three’s a crowd:can HS be the third endogenous gaseous transmitter?FASEB J 2002;16:1792〜1798)。またHSは血管拡張剤であることも示されており、血管内皮への白血球粘着を抑制することが出来る(Wang,2002;Fiorucciら、Inhibition of hydrogen sulfide generation contributes to gastric injury caused by anti−inflammatory nonsteroidal drugs.Gastroenterology.2005;129;1210〜1224)。さらに、Fiorucciら(2005)はラットにおいて、HS供与体による前処置によりNSAID誘発性胃障害の重症度減弱が可能であることを示した。
【0007】
驚くべきことに、HS放出部分に共有結合するか或いはNSAID塩がHS放出部分と共に形成された場合に、様々なNSAIDsの抗炎症作用が有意に亢進することについて、本発明者らは本出願において示している。さらに、これらのNSAID誘導体の副作用は比較的軽度であることが示されている。特に、本発明者らは、本発明のNSAID誘導体が以下の更なる特性、すなわち、(1)従来のNSAIDsよりも胃腸障害が少ないこと、(2)既存の胃潰瘍の治癒を促進すること、および(3)収縮期血圧の上昇が従来のNSAIDsよりも有意に低いこと、の1つ以上を有することを示した。さらに、本発明のNSAID誘導体は、血管内皮への白血球粘着を低下させ、それによって胃腸および心臓血管系の副作用を低下させる可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様において、NSAIDと共有結合するか或いはNSAIDと共に塩を形成するHS放出部分を含むNSAID誘導体が提供される。驚くべきことに、本発明の化合物のは、ラットのカラギーナン誘発性足浮腫モデルにおいて、NSAID単独、HS放出成分単独、またはNSAIDとHS放出成分を別々だが併用して投与した場合と比較して、高い抗炎症作用を示した。さらに、本発明のNSAID誘導体により、血漿HS濃度は一時的にわずかに上昇する。理論に束縛されるものではないが、血漿HS濃度の一時的な上昇は、それが生理学的範囲内であっても抗炎症作用亢進の一因となる可能性がある。
【0009】
また驚くべきことに、本発明の化合物によるシクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)活性および/またはシクロオキシゲナーゼ−1(COX−1)活性に対する抑制能は、それぞれに対応する非誘導体化NSAIDよりも高い可能性がある。そのようなCOX−2および/またはCOX−1の高い抑制能も、観察された抗炎症作用亢進の一因である可能性がある。さらに、COX−1阻害亢進を有する本発明の化合物は血小板における有意なトロンボキサンB産生抑制を示しており、これが低い心臓血管毒性に寄与している可能性がある。
【0010】
また、本発明の化合物はそれぞれに対応する非誘導体対応物に比べて副作用が少ない。例えば、化合物の中には、胃プロスタグランジン合成の抑制が顕著であるにもかかわらず胃損傷の誘発はNSAID単独に比べて意外にも有意に少ないものがあった。これらのHS放出NSAID誘導体において胃の安全性が認められる一方、NSAIDおよびHS放出成分をラットに別々に併用投与した場合には認められない。理論に束縛されるものではないが、本発明の化合物は血管内皮への白血球粘着を低下させることが示されており、これが同化合物の胃安全性に寄与している可能性がある。また、血管内皮への白血球粘着の低下により、NSAIDsの長期使用で頻繁に見られる心臓血管系副作用が軽減される可能性がある。
【0011】
さらに、本発明の化合物を高血圧ラットに投与した場合、従来のNSAIDsを投与した場合に比べ、誘発された収縮期血圧の上昇は意外にも有意に小幅であった。血圧上昇傾向が少ないことから、NSAIDsの長期使用に頻繁に見られる心臓血管系副作用が軽減される可能性がある。
【0012】
本発明に従って、以下の一般式を有する化合物が提供され、
A−Y−X(化学式I)
式中、AはNSAID遊離基であり、Yは−C(O)O−、−C(O)NH−、−C(O)OC(O)−、−C(O)NHCHC(O)−、またはゼロから成る群から選択されるものであり、Xは、単独で或いはNSAIDと結合した場合に硫化水素放出可能な部分(以下HS放出部分と称する)である化合物、またはその薬学的に許容されるその塩であり、Yがゼロの場合、前記NSAID誘導体はAおよびXの塩である可能性がある。
【0013】
好ましい実施形態において、化学式IのXは以下から成る群から選択されるものである。
【0014】
【化1】

【0015】
しかしながら、単独或いはNSAIDと結合した場合のいずれにおいても、HSを放出することが可能な非毒性有効部分はいずれも、本発明に使用可能であるということは理解されることである。
【0016】
一実施形態において、本発明の化合物は以下の一般式を有するものであり、
B−C(O)O−X (化学式II)
式中、B−C(O)O−は遊離型のカルボキシル基を有するNSAIDまたはカルボキシ置換NSAIDから誘導されるものであり、XはHS放出部分である化合物、またはその薬学的に許容できる塩である。
【0017】
一実施形態において、化学式IIのB−C(O)O−は以下から成る群から選択されるものであり、
【0018】
【化2−1】

【0019】
【化2−2】

【0020】
さらに、Xは硫化水素(HS)放出部分である。
【0021】
一実施形態において、化学式IIのXは以下から成る群から選択されるものである。
【0022】
【化3】

【0023】
しかしながら、単独或いはNSAIDと結合した場合のいずれにおいても、HSを放出することが可能な非毒性有効成分はいずれも本発明に使用可能であることは理解されることである。
【0024】
本発明の化合物に組み込まれることが考慮されるNSAIDsは、アセチルサリチル酸(ASA)、ジクロフェナク、ナプロキセン、インドメタシン、フルルビプロフェン、スリンダク、イブプロフェン、アセクロフェナク、アセメタシン、ベノキサプロフェン、ベンゾフェナク、ブロムフェナク、ブクロキシン酸、ブチブフェン、カルプロフェン、セレコキシブ、シクロプロフェン、シンメタシン、クリダナク、クロピラック、ジフルシナル、エトドラック、エトリコキシブ、フェンブフェン、フェンクロフェナク、フェンクロラク、フェノプロフェン、フェンチアザク、フルノキサプロフェン、フラプロフェン、フロブフェン、フラフェナク、イブフェナク、インドプロフェン、イソキセパク、ケトプロフェン、ケトロラック、ロキソプロフェン、ロナゾラク、ルミラコキシブ、メチアジニク、メフェナム酸、メクロフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、ピロミド酸、サルサレート、ミロプロフェン、オキサプロジン、オキセピナク、パラコキシブ、フェニルブタゾン、ピルプロフェン、ピロキシカム、ピロゾラク、プロチジン酸、ロフェコキシブ、サリチル酸ナトリウム、スプロフェン、チアプロフェン酸、トルメチン、バルデコキシブ、ゾメピラク、などである。
【0025】
望ましい化合物は以下の化学式を有するものである。
【0026】
【化4−1】

【0027】
【化4−2】

【0028】
【化4−3】

【0029】
【化4−4】

【0030】
【化4−5】

【0031】
【化4−6】

【0032】
【化4−7】

【0033】
【化4−8】

【0034】
【化4−9】

【0035】
【化4−10】

【0036】
【化4−11】

【0037】
上述の前駆体NSAIDs(A)は従来技術で周知の方法に従って調製される。例えば、この参照により本願明細書に組み込まれるThe Merck Index 第13版(2001)、メルク社、ニュージャージー州Whitehouse Stationを参照。入手可能な場合は、光学異性体を含む対応する異性体を使用することが可能である。
【0038】
アルカリ金属、アルカリ土類金属、非毒性アミン、及び非毒性アミノ酸との塩など、本発明の化合物の薬学的に許容可能な塩もまた本発明の一部である。本発明の化合物の望ましい塩はアルギニン塩およびアグマチン塩である。薬学的に許容される酸付加塩もまた含まれる。
【0039】
好ましい実施形態においては、本発明のNSAIDsはHS放出部分である4−ヒドロキシチオベンズアミド(本願明細書においてTBZと称する)により誘導体化される。TBZ誘導体は5−pp−ヒドロキシフェニル−1,2−ジチオール−3−チオン(ADT−OH)誘導体に比較した場合、一貫して全体的に抗炎症作用に優れ、副作用は少なかった。意外にも、前記TBZ誘導体は前記ADT−OH誘導体よりも有意に多くのHSを生成し、そのことが抗炎症作用の亢進と副作用の低下に寄与している可能性がある。
【0040】
さらに、前記TBZ誘導体の方がADT−OH誘導体よりもCOX−1/COX−2阻害能を一貫して保持していた。現に、多くのTBZ誘導体がCOX−1阻害およびCOX−2阻害のいずれかまたは両方を実際に亢進させた。その上、化合物XX(ナプロキセン−TBZ誘導体)は前記ADT−OH同等物である化合物V(ナプロキセン−ADT−OH)よりもトロンボキサンB合成阻害において有意に優れ、化合物XIX(インドメタシン−TBZ誘導体)は前記ADT−OH同等物である化合物IV(インドメタシン−ADT−OH誘導体)よりもトロンボキサンB合成阻害において有意に優れていた。トロンボキサンB阻害の亢進は本誘導体の心臓血管系安全性に寄与している可能性がある。
【0041】
本発明の化合物は以下の2つのスキームで図示したようにに調製可能である。
【0042】
スキーム 1
4−(5−チオキソ−5H−1,2−ジチオール−3−イル)フェニル 2−(2−(2,6−ジクロロフェニルアミノ)フェニル)アセテート(化合物II)の合成を例として用いて以下にスキーム1を示す。
【0043】
【化5】

【0044】
例えばジクロフェナク(1)などの遊離型のカルボキシル基を有するNSAID(またはカルボキシ置換NSAID)を最初にジメチルホルムアミドに溶解させて、次にヒドロキシベンゾトリアゾール(hydroxybenzotriazole:HOBt)および1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(1,3−dicyclohexylcarbodiimide:DCC)を加える。4−(5−チオキソ−5H−1,2−ジチオール−3−イル)フェニル 2−(2−(2,6−ジクロロフェニルアミノ)フェニル)アセテート(3)などの発明化合物を形成するのに適した条件下、前記混合物に5−pp−ヒドロキシフェニル−1,2−ジチオール−3−チオン(ADT−OH)(2)などの硫化水素放出部分を加える。このスキームでは4−ヒドロキシフェニルイソチオシアナート(本願明細書においてHPIと称する)など他の硫化水素放出部分が使用可能であることが理解される。
【0045】
スキーム 2
NSAID誘導体[2−(2,6−ジクロロ−フェニルアミノ)−フェニル]−酢酸 4−チオカルバモイル−フェニルエステル(化合物XVII)の合成を例に用いて以下にスキーム2を示す。このスキームでは、NSAIDに共有結合した硫化水素放出部分にローソン試薬を用いて硫黄基を加える。
【0046】
【化6】

【0047】
例えばジクロフェナク(1)などの遊離型のカルボキシル基を有するNSAID(またはカルボキシ置換NSAID)を最初にジメチルホルムアミドに溶解させて、次にヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)および1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を加える。この混合液に、本発明の化合物の前駆体(4−カルバモイルフェニル 2−(2−(2,6−ジクロロフェニルアミノ)フェニル)アセテート(2)など)、硫黄が不足している前駆体の形成に適した条件下、4−ヒドロキシベンズアミドなどの硫化水素放出前駆体を加える。ローソン試薬など硫黄基を加えることが可能な適切な化合物を加え、本発明の化合物([2−(2,6−ジクロロフェニルアミノ)−フェニル]−酢酸 4−チオカルバモイル−フェニルエステル(3)など)を形成する。
【0048】
さらなる本発明の態様において、本発明の化合物の薬剤組成物および薬学的に許容できる賦形剤または担体、特に消化管の炎症病態の治療に用いられるものが提供される。
【0049】
本発明の化合物は、これらに限定されるものではないが、痛みや頭痛の治療における鎮痛剤として、もしくは発熱の治療に対する解熱剤として、患者の炎症および他の炎症関連疾患の治療に有用である。例えば、本発明の化合物は、これらに限定されるものではないが、関節リウマチ、脊椎関節症、痛風性関節炎、変形性関節症、全身性エリテマトーデス、若年性関節炎を含む関節炎の治療に有用である。このような本発明の化合物は、喘息、気管支炎、月経痙攣、腱炎、滑液包炎、皮膚関連の病態(乾癬、湿疹、熱傷、皮膚炎など)、術後炎症(白内障手術、屈折矯正手術などの眼科手術を含む)の治療において有用である。本発明の化合物は、炎症性腸疾患、クローン病、胃炎、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎などの胃腸病の治療、および結腸直腸癌などの癌の予防もしくは治療にも有用である。本発明の化合物は、血管障害、片頭痛、結節性動脈周囲炎、甲状腺炎、再生不良性貧血、ホジキン病、強皮症、リウマチ熱、1型糖尿病、神経筋接合部疾患(重症筋無力症など)、白質疾患(多発性硬化症)、サルコイドーシス、ネフローゼ症候群、ベーチェット症候群、多発性筋炎、歯肉炎、腎炎、過敏症、損傷後の腫脹、心筋虚血などの疾患における炎症の治療に有用である。前記化合物は、網膜炎、網膜症、ブドウ膜炎、眼球羞明症などの眼科疾患の治療、および眼組織への急性損傷の治療においても有用である。前記化合物はウイルス感染および嚢胞性線維症に関連するような肺炎症の治療にも有用である。前記化合物はアルツハイマー病を含む皮質認知症など特定の中枢神経系疾患の治療にも有用と考えられる。本発明の化合物は関節炎の治療などに対し抗炎症薬として有用であり、副作用が顕著に少ないという付加的利益がある。これらの化合物は、アレルギー性鼻炎、呼吸窮迫症候群、内毒素性ショック症候群、アテローム性動脈硬化症、および脳卒中、虚血、外傷による中枢神経系損傷の治療にも有用である。前記化合物は、歯痛、筋肉痛、癌性疼痛など(これらに限定されない)の治療にも有用である。これらの化合物はヒトの治療に有用であるばかりでなく、ウマ、イヌ、ネコ、ラット、マウス、ヒツジ、ブタなどの哺乳類の治療にも有用である。
【0050】
治療される具体的な病態もしくは病状に応じて、当業者が容易に判断可能であるように、本発明の化合物は、適切な治療的有効且つ安全な任意の用量で対象に投与することが可能である。これらの化合物は一日あたり約1〜2000mgの範囲内で単回投与もしくは分割投与するのが最も望ましいが、治療対象の体重、病態、および投与経路によって必然的に異なるものである。本発明の化合物の形成するために、具体的に使用されるNSAIDによって用いられる用量が影響されることが理解される。しかしながら、用量レベルは約0.1〜100mg/kgであり、より好ましくは約5〜90mg/kg、さらにより好ましくは約5〜50mg/kgの範囲である。それでもなお、治療対象の体重、病態、および前記薬剤への個々の反応次第で望ましい用量は異なり、さらに選択された剤形の種類、そのような投与を行う期間や間隔にも影響されることが理解される。ある場合においては、前述の範囲の下限より少ない用量レベルで十分である可能性があり、また別の場合にはさらに多用量であってもいかなる有害な副作用を生じることなく使用可能である。ただし、そのような多用量の場合は、最初に少量ずつに分けて投与する必要がある。
【0051】
本発明の化合物は、投与経路によって決定されるいかなる製剤処方であっても投与可能である。これらの薬剤組成物は、相性の良い薬学的に許容可能な賦形剤を用いて従来の方法で調製可能である。そのような組成物の例としては、即時溶液、注射可能調製物、直腸内、点鼻、眼内、膣内用としてカプセル、錠剤、経皮パッチ、トローチ、スプレー、シロップ、粉末、顆粒、ゲル、エリキシル、座剤などがあげられる。好ましい投与経路は経口および経直腸である。
【0052】
経口投与用として、例えば微結晶セルロース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、グリシンなど各種賦形剤に加え、でんぷん(好ましくはコーン、ジャガイモ、またはタピオカ粉)、アルギン酸、特定の複合ケイ酸塩などの各種崩壊剤および、ポリビニルピロリドン、蔗糖、ゼラチン、アカシアなどの造粒結合剤を含有する錠剤を使用することも可能である。さらに錠剤化のためにステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、タルクなどの平滑剤を使用することも可能である。ゼラチンカプセルにおいても同様の種類の固形組成物を充填剤として使用することが可能であり、この場合の好ましい材料としては、高分子量のポリエチレングリコールに加え、ラクトースまたは乳糖が含まれる。経口投与用として水性懸濁液および/またはエリキシル剤が望ましい場合、活性成分に甘味剤または香味剤、着色物質、および必要に応じ乳化剤および/または懸濁化剤に加えて、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、およびそれらの各種組合せを組み合わせることも可能である。
【0053】
即時放出、制御放出、持続放出、遅延放出、または標的遅延放出用として剤形を設計することが可能である。これらの用語の定義当業者に周知である。また、前記剤形の放出特性は、重合体の混合組成、被覆基質組成、多粒子組成、被覆多粒子組成、イオン交換樹脂ベースの組成、浸透圧ベースの組成、または生分解性重合体組成によって影響を受ける可能性がある。理論に束縛されるものではないが、放出は好ましい拡散、分解、浸食、イオン交換、浸透、またはそれらの組合せをによって影響を受ける可能性があると考えられる。
【0054】
非経口的投与用として、ごま油またはピーナッツ油のいずれか、または含水プロピレングリコールに入った活性化合物の溶液を使用することも可能である。水溶液は必要に応じ適切に中和する必要があり(8より高いpHが望ましい)、必要であれば、液体希釈剤を最初に等張にする。前記水溶液は静脈内注射に適している。無菌状態下におけるこれらの溶液の作成はいずれも当業者に周知の標準的製薬技術により容易に達成される。
【0055】
以下の実施例では、当業者が本発明を実施及び使用出来るようにさらに詳しく説明する。しかし、当然のことながら、これらの実施形態は本発明を図示するのが目的であり、請求項によって定義される本発明の範囲を限定するものとして解釈されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、賦形剤、ジクロフェナク、および本発明の2つのジクロフェナク誘導体である化合物IIと化合物XVIIを投与したラットにおいて測定した胃損傷スコアを示したものである。
【図2】図2は、賦形剤、ジクロフェナク、化合物II、化合物XVIIを投与したラットにおいて産生された胃プロスタグランジンE(PGE)の量を示したものである。
【図3】図3は、賦形剤、ナプロキセン、および本発明の2つのナプロキセン誘導体である化合物Vと化合物XXを投与したラットにおいて測定した胃損傷スコアを示したものである。
【図4】図4は、図3のラットの血液におけるトロンボキサンB合成量を示したものである。
【図5】図5は、賦形剤、ジクロフェナク、化合物IIを投与したラットにおける小腸潰瘍の全長を示したものである。
【図6】訳図6は、賦形剤、ジクロフェナク、化合物II投与前後のラットにおけるヘマトクリット(%)を示したものである。
【図7】図7は、賦形剤、ジクロフェナク、化合物II、化合物XVIIを投与したラットの皮下嚢におけるPGE浸出量をラット空気嚢アッセイを用いて測定したものである。
【図8】図8は、図7のラットにおける全血トロンボキサンB(TXB)量を示したものである。
【図9】図9は、賦形剤、ジクロフェナク、化合物IIを投与したラットにおける足容積増加抑制を示したものである。
【図10】図10は、賦形剤、ジクロフェナク、化合物XVIIを投与したラットにおける足容積増加抑制を示したものである。
【図11】図11は、賦形剤、ナプロキセン、化合物V、化合物XXを投与したラットの皮下嚢におけるPGE浸出量をラット空気嚢アッセイを用いて測定したものである。
【図12】図12は、インドメタシン、化合物IV、化合物XIXの濃度関数としてのヒト血液(生体外)によるトロンボキサン合成量(ng/mL)を示したものである。
【図13】図13は、賦形剤、ジクロフェナク、化合物XVII、ナプロキセン、化合物XXを毎日1週間投与した後のラットにおける胃潰瘍の表面積(mm)を示したものである。
【図14】図14は、賦形剤、ジクロフェナク、化合物II、ナプロキセン、化合物XXを投与したラットにおける収縮期血圧の上昇(mm Hg)を示したものである。
【図15】図15は、ラットに化合物II 50μM/kgを経口投与した際の血漿硫化水素濃度を示したものである。
【図16】図16は、緩衝液中および肝臓ホモジネート中で培養した際に化合物IIおよび化合物XVIIから生成された硫化水素の量を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0057】
化合物の作成
蛍光指示薬を加えたMacherey−Nagelシリカゲル50プレート上で薄層クロマトグラフィを行い、プレートを紫外線(254nm)で視覚化した。カラムクロマトグラフィにはKieselgel 60を用いた。合成試薬はいずれもAldrich−Sigma Chemical Companyから購入し、無精製で用いた。溶媒は分析用試薬を上回る純度であり、供給されたままの状態で使用した。真空下における溶媒除去にはBuchi R−114 Rotavaporを用いた。構造をプロトンH−NMRおよび13C−NMRにより分光的に検証した。スペクトルはVarian Mercury Plus 400計器に記録した。化学シフトはMeSiを内部基準とした。Applied Biosystem API 2000 質量分析により前記合成産物の質量スペクトルを計測した。Buchi B−540で融点を測定した。最終化合物の純度をRP−HPLCで測定した。カラムをRheodyneモデル7725インジェクタ、Waters 600 HPLC システム、Waters 486調節可能吸光度検出器(215もしくは235nmに設定)、Water 746チャート式記録計に接続した。合成された化合物の元素分析の結果は満足すべきものであった。分析は元素記号のみによって示され、結果は理論値±0.4%以内である。
【実施例1】
【0058】
[2−(2,6−ジクロロ−フェニルアミノ)−フェニル]−酢酸 4−(5−チオキソ−5H−[1,2]ジチオール−3−イル)−フェニルエステル(化合物II)の合成
【0059】
【化7】

【0060】
スキーム 1
5−pp−ヒドロキシフェニル−1,2−ジチオール−3−チオン(2;ADT−OH)の合成
【0061】
【化8】

【0062】
アネトール(31g、0.21M)および硫黄(48g、1.40M)をN,N−ジメチルホルムアミド(250mL)中で8時間加熱した。溶媒除去後、残留物はトルエン中でほぼ完全に可溶であった。前記トルエン溶液を2N水酸化ナトリウム水溶液で抽出することにより、オレンジ色の固体沈殿物を得た(8.5g;m.p.300℃以上)。この沈殿物を沸騰水中に溶解し、塩酸を加えた後、オレンジ色の沈殿物として2を得た(6.2g、収率13%;m.p.188〜189℃)。
H NMR(DMSO−d)δ6.86(d、2H)、7.68(s、1H)、7.75(d、2H)、10.51(s、−OH);MS(ESI)、m/z 225(M)。
【0063】
[2−(2,6−ジクロロ−フェニルアミノ)−フェニル]−酢酸 4−(5−チオキソ−5H−[1,2]ジチオール−3−イル)−フェニルエステル(3)の合成
N,N−ジメチルホルムアミド50mL中に1(ジクロフェナク、890mg、3.0mmol)を加えた溶液中に、ヒドロキシベンゾトリアゾール(445mg、3.3mmol)およびDCC(680mg、3.3mmol)を加え、0℃で1時間撹拌した。前記反応混合液に5−p−ヒドロキシフェニル−1,2−ジチオール−3−チオン(2;687mg、3mmol)を加え、0℃で1時間、室温で3時間撹拌した。濾過後、濾液を減圧下で蒸発させ、得られた油性残留物を酢酸エチルに溶解した。有機層を塩水で洗浄し、無水MgSOで乾燥させ、濾過し、溶媒を蒸発させた。得られた粗生成物3をシリカゲル・オープンカラムに加え、CHCl/MeOH (9/1)で溶出し、そこから[2−(2,6−ジクロロ−フェニルアミノ)−フェニル]−酢酸 4−(5−チオキソ−5H−[1,2]ジチオール−3−イル)−フェニルエステル(3)を得た(1.1g、収率74%)。
H NMR(DMSO−d):δ4.12(s、2H)、6.21(d、1H)、6.87(t、1H)、7.14(t、1H)、7.19(d、1H)、7.22(t、1H)、7.34(d、2H)、7.54(d、2H)、7.80(s、1H)、7.97(d、2H);
13C NMR(DMSO−d):δ37.4、116.1、121.0、122.3、123.5、123.7、127.0、128.7、129.3、129.8、132.0、132.2、136.4、137.7、143.8、154.2、170.3、173.3、213.2。
MS(El)、m/e 504(M);
m.p.:83〜86℃。
【実施例2】
【0064】
[2−(2,6−ジクロロ−フェニルアミノ)−フェニル]−酢酸 4−チオカルバモイル−フェニルエステル(化合物XVII)の合成
【0065】
【化9】

【0066】
スキーム 2
4−カルバモイルフェニル 2−[2−(2,6−ジクロロフェニルアミノ)−フェニル]酢酸(5)の合成
N,N−ジメチルホルムアミド50mL中に1(ジクロフェナク、890mg、3.0mmol)を加えた溶液中に、ヒドロキシベンゾトリアゾール(445mg、3.3mmol)およびDCC(680mg、3.3mmol)を加え、0℃で1時間撹拌した。前記反応混合液に4−ヒドロキシベンズアミド(4、616mg、4.5mmol)を加え、0℃で1時間、室温で3時間撹拌した。濾過後、濾液を減圧下に蒸発させ、得られた油性残留物をクロロホルムに溶解した。有機層を塩水で洗浄し、無水MgSO上で乾燥させ、濾過し、溶媒を蒸発させた。粗生成物5をシリカゲル・オープンカラムに加え、CHCl/MeOH(9/1)で溶出し、そこから4−カルバモイルフェニル 2−(2−(2,6−ジクロロフェニルアミノ)フェニル)アセテート(5)を得た(212mg、収率17%)。
【0067】
[2−(2,6−ジクロロ−フェニルアミノ)−フェニル]−酢酸 4−チオカルバモイル−フェニルエステル(6)の合成
4−カルバモイルフェニル 2−(2−(2,6−ジクロロフェニルアミノ)フェニル)アセテート(5,480mg、11.4mmol)およびローソン試薬(460mg、1.14mmol)を無水ベンゼン20mLに溶解した。反応液を50℃まで温め、6時間にわたって撹拌した。減圧下に前記溶媒を除去し、粗残留物をシリカゲル・カラム(ジクロロメタン/メチルアルコール 9.5/0.5)で精製し、当該純粋化合物 6(446mg、収率91%)を得た。
H NMR(CDCl):δ4.07(s、2H)、6.59(d、1H)、6.67(s、1H)、6.98(t、1H)、7.14(t、1H)、7.19(d、1H)、7.28(t、1H)、7.33(d、2H)、7.63(s、1H)、7.97(d、2H);
13C NMR(DMSO−d):δ38.8、118.8、121.8、122.6、123.7、124.4、128.7、129.1、131.2、137.2、137.8、142.9、153.5、170.5、193.2、201.7
MS(El)、m/e 431(M);
m.p.:170〜172℃。
【実施例3】
【0068】
[2−(2−クロロ−6−フルオロフェニルアミノ)−フェニル]−酢酸 4−(5−チオキソ−5H−[1,2]ジチオール−3−イル)−フェニルエステル(化合物III)の合成
【0069】
【化10】

【0070】
スキーム 1
4−(5−チオキソ−5H−1,2−ジチオール−3−イル)フェニル−2−(2−(2−クロロ−6−フルオロフェニルアミノ)−5−メチルフェニル)アセテート(3)の合成
ジメチルホルムアミド40mLに1(ルミラコキシブ、600mg、2.03mmol)を加えた溶液中に、ヒドロキシベンゾトリアゾール(301mg、2.23mmol)およびDCC(459mg、2.23mmol)を加え、0℃で1時間撹拌した。前記反応混合液に5−p−ヒドロキシフェニル−1,2−ジチオール−3−チオン(2;504mg、2.23mmol)を加え、0℃で1時間、室温で3時間撹拌した。濾過後、濾液を減圧下に蒸発させ溶媒を除去した。このようにして得られた油性残留物を酢酸エチルに溶解し、有機層を塩水で洗浄し、無水MgSOで乾燥させ、濾過し、溶媒を蒸発させた。得られた粗生成物3をシリカゲル・オープンカラムに加え、CHClで溶出し、そこから4−(5−チオキソ−5H−1,2−ジチオール−3−イル)フェニル−2−(2−(2−クロロ−6−フルオロフェニルアミノ)−5−メチルフェニル)アセテート(3)を採取した(299mg、収率37%)。
H NMR(DMSO):δ2.32(s、3H)、4.02(s、2H)、6.41(s、1H)、、6.71(d、1H)、6.93(t、1H)、6.95(d、2H)、7.14(d、1H)、7.19(d、2H)、7.39(s、1H)、7.66(d、2H);
C NMR(DMSO):δ20.8、38.7、115.2、119.2、122.5、123.2、124.0、126.1、127.2、129.3、130.3、131.7、132.2、133.6、136.4、140.3、153.7、154.4、156.8、170.3、171.6、215.7
MS(El)、m/e 503(M);
m.p.:131〜133℃。
【実施例4】
【0071】
4−チオカルバモイルフェニル−2−(2−(2−クロロ−6−フルオロフェニルアミノ)−5−メチルフェニル)アセテート(化合物XVIII)の合成
【0072】
【化11】

【0073】
スキーム 2
4−カルバモイルフェニル−2−(2−(2−クロロ−6−フルオロフェニルアミノ)−5−メチルフェニル)アセテート(5)の合成
ジメチルホルムアミド15mLに1(ルミラコキシブ、223mg、0.75mmol)を加えた溶液中に、ヒドロキシベンゾトリアゾール(111mg、0.825mmol)およびDCC(170mg、0.825mmol)を加え、0℃で1時間撹拌した。前記反応混合液に4−ヒドロキシベンズアミド(4、154mg、1.125mmol)を加え、0℃で1時間、室温で3時間撹拌した。濾過後、濾液を減圧下に蒸発させ溶媒を除去した。このようにして得られた油性残留物をクロロホルムに溶解し、有機層を塩水で洗浄し、無水MgSOで乾燥させ、濾過し、溶媒を蒸発させた。得られた粗生成物5をシリカゲル・オープンカラムに加え、CHCl/MeOH (9/1)で溶出し、そこから4−カルバモイルフェニル−2−(2−(2−クロロ−6−フルオロフェニルアミノ)−5−メチルフェニル)アセテート(5)を採取した(111mg、収率35%)。
【0074】
4−チオカルバモイルフェニル−2−(2−(2−クロロ−6−フルオロフェニルアミノ)−5−メチルフェニル)アセテート(6)の合成
4−カルバモイルフェニル−2−(2−(2−クロロ−6−フルオロフェニルアミノ)−5−メチルフェニル)アセテート、5(110mg、0.27mmol)、ローソン試薬(109mg、0.27mmol)を無水ベンゼン15mLに溶解した。反応液を60℃まで温め、3時間にわたって撹拌した。減圧下に前記溶媒を除去し、得られた粗残留物をシリカゲル・カラム(ジクロロメタン/メチルアルコール 9.5/0.5)で精製し、純粋化合物 6を得た(59mg、収率51%)。
H NMR(CDCl):δ2.32(s、3H)、4.01(s、2H)、6.46(s、1H)、、6.70(d、1H)、6.92(t、1H)、7.01(d、2H)、7.11(d、2H)、7.19(d、1H)、7.62(s、NH)、7.84(d、2H);
13C NMR(DMSO−d):δ20.8、30.7、115.1、119.2,122.0、122.3、124.1、124.9、126.1、128.2、129.2,132.3、134.8、138.6、140.9、153.7、154.6、156.2、170.4、201.7
MS(El)、m/e 429(M);
m.p.:120〜122℃。
【実施例5】
【0075】
4−(5−チオキソ−5H−1,2−ジチオール−3−イル)フェニル 2−アセトキシ安息香酸(化合物I)の合成
【0076】
【化12】

【0077】
スキーム 1
4−(5−チオキソ−5H−1,2−ジチオール−3−イル)フェニル 2−アセトキシ安息香酸(3)の合成
ジメチルホルムアミド40mLに1(アセチルサリチル酸、416mg、2.31mmol)を加えた溶液中に、ヒドロキシベンゾトリアゾール(343mg、2.54mmol)およびDCC(523mg、2.54mmol)を加え、0℃で1時間撹拌した。前記反応混合液に5−p−ヒドロキシフェニル−1,2−ジチオール−3−チオン(2;574mg、2.54mmol)を加え、0℃で1時間、室温で3時間撹拌した。濾過後、濾液を減圧下に蒸発させ溶媒を除去した。このようにして得られた油性残留物を酢酸エチルに溶解し、有機層を塩水で洗浄し、無水MgSOで乾燥させ、濾過し、溶媒を蒸発させた。粗生成物3をシリカゲル・オープンカラムに加え、エチルエステル/石油エーテル(1/1)で溶出し、そこから4−(5−チオキソ−5H−1,2−ジチオール−3−イル)フェニル 2−アセトキシ安息香酸(3)を得た(354mg、収率40%)。
H NMR(DMSO−d):δ2.32(s、3H)、7.20(d、1H)、7.33(d、2H)、7.40(t、1H)、7.41(t、1H)、7.67(t、1H)、7.73(d、2H)、8.21(d、1H)。
13C NMR(DMSO−d):δ21.2、122.1、123.4、124.4、126.6、128.6、129.7、132.4、135.4、136.4、151.6、153.7、162.6、169.8、171.9、215.7
MS(El)、m/e 389(M);
m.p.:120〜122℃。
【実施例6】
【0078】
2−アセトキシ−安息香酸 4−チオカルバモイル−フェニルエステル(化合物XVI)の合成
【0079】
【化13】

【0080】
スキーム 2
4−カルバモイルフェニル 2−アセトキシ安息香酸(5)の合成
ジメチルホルムアミド15mLに1(アセチルサリチル酸、500mg、2.77mmol)を加えた溶液中に、ヒドロキシベンゾトリアゾール(412mg、3.05mmol)およびDCC(628mg、3.05mmol)を加え、0℃で1時間撹拌した。前記反応混合液に4−ヒドロキシベンズアミド(4、418mg、3.05mmol)を加え、0℃で1時間、室温で3時間撹拌した。濾過後、濾液を減圧下に蒸発させ溶媒を除去した。このようにして得られた油性残留物をクロロホルムに溶解し、有機層を塩水で洗浄し、無水MgSOで乾燥させ、濾過し、溶媒を蒸発させた。粗生成物5をシリカゲル・オープンカラムに加え、CHCl/MeOH(9/1)で溶出し、そこから4−カルバモイルフェニル 2−アセトキシ安息香酸(5)を採取した(410mg、収率47%)。
【0081】
4−チオカルバモイルフェニル−2−(2−(2−クロロ−6−フルオロフェニルアミノ)−5−メチルフェニル)アセテート(6)の合成
4−カルバモイルフェニル 2−アセトキシ安息香酸、5(410mg、1.37mmol)、ローソン試薬(554mg、1.37mmol)を無水ベンゼン35mLに溶解した。反応液を60℃まで温め、3時間にわたって撹拌した。減圧下に溶媒を除去し、得られた粗残留物をシリカゲル・カラム(ジクロロメタン/メチルアルコール 9.5:0.5)で精製し、純粋化合物6 470mgを得た。得られた化合物を2溶媒システムによる分取RP−HPLCで精製した:A:0.1%TFA中に100%アセトニトリル、B:0.1%TFA(35分間に10%Aから60%Aの直線勾配、254nmでUV検出、流速30mL/分)に100%HOを加えることにより前記純粋化合物6(324mg、収率71%)が得られる。
H NMR(CDCl):δ2.30(s、3H)、7.17(d、1H)、7.21(d、2H)、7.40(t、1H)、7.66(t、1H)、7.94(d、2H)、8.2(d、1H)。
13C NMR(DMSO−d):δ21.2、121.9、122.4、124.3、126.4、128.7、132.4、135.1、137.3、151.5、153.7、162.7、169.8、201.8
MS(El)、m/e 316(M);
m.p.:154〜156℃
【実施例7】
【0082】
[1−(4−クロロ−ベンゾイル)−5−メトキシ−2−メチル−1−H−インドール−3−イル]―酢酸 4−(5−チオキソ−5−H−[1,2]ジチオール−3−イル)−フェニルエステル(化合物IV)の合成
【0083】
【化14】

【0084】
スキーム 1
4−[4−(5−チオキソ−5H−1,2−ジチオール−3−イル)]フェニル−2−[1−(4−クロロベンゾイル)−5−メトキシ−2−メチル−インドール−3−イル]−アセテート(3)の合成
ジメチルホルムアミド30mLに1(インドメタシン、720mg、2.01mmol)を加えた溶液中に、ヒドロキシベンゾトリアゾール(301mg、2.21mmol)およびDCC(456mg、2.21mmol)を加え、0℃で1時間撹拌した。前記反応混合液に5−p−ヒドロキシフェニル−1,2−ジチオール−3−チオン(2;500mg、2.21mmol)を加え、0℃で1時間、室温で2時間撹拌した。濾過後、濾液を減圧下に蒸発させ溶媒を除去した。このようにして得られた油性残留物を酢酸エチルに溶解し、有機層を塩水、NaHCO 5%、クエン酸 10%で洗浄し、無水MgSOで乾燥させ、濾過し、溶媒を蒸発させた。得られた粗生成物をシリカゲル・オープンカラムに加え、ジクロロメタン/メチルアルコール(98/2)で溶出し、そこから4−[4−(5−チオキソ−5H−1,2−ジチオール−3−イル)]フェニル−2−[1−(4−クロロベンゾイル)−5−メトキシ−2−メチル−インドール−3−イル]−アセテート(3)を得た(257mg、収率23%)。
H NMR(CDCl):δ2.47(s、3H)、3.84(s、3H、OCH)、3.93(s、2H)、6.70(d、1H)、6.88(d、1H)、7.04(s、1H)、7.21(d、2H)、7.37(s、1H)、7.48(d、2H)、7.65(d、2H)、7.67(d、2H)。
13C NMR(DMSO−d):Σ13.6、30.8、56.0、101.5、111.6、111.9、115.3、122.9、128.4、129.4、129.6、130.6、131.1、131.4、133.9、136.3、136.6、139.7、153.8、156.4、167.5、168.9、170.4、215.7。
MS(El)、m/e 567(M);
m.p.:90〜92℃。
【実施例8】
【0085】
[1−(4−クロロ−ベンゾイル)−5−メトキシ−2−メチル−1−H−インドール−3−イル]―酢酸 4−チオカルバモイル−フェニルエステル(化合物XIX)の合成
【0086】
【化15】

【0087】
スキーム 2
4−カルバモイルフェニル−2−[1−(4−クロロベンゾイル)−5−メトキシ−2−メチル−インドール−3−イル]−酢酸(5)の合成
ジメチルホルムアミド60mLに1(インドメタシン、3g、8.38mmol)を加えた溶液中に、ヒドロキシベンゾトリアゾール(1.25g、9.22mmol)およびDCC(1.9g、9.22mmol)を加え、0℃で1時間撹拌した。前記反応混合液に4−ヒドロキシベンズアミド(4、1.72g、12.6mmol)を加え、0℃で1時間、室温で2時間撹拌した。濾過後、濾液を減圧下に蒸発させ溶媒を除去した。このようにして得られた油性残留物を酢酸エチルに溶解し、有機層を塩水、NaHCO 5%、クエン酸 10%で洗浄し、無水MgSOで乾燥させ、濾過し、溶媒を蒸発させた。得られた粗生成物5をシリカゲル・オープンカラムに加え、CHCl/MeOH (9.5/0.5)で溶出し、4−カルバモイルフェニル−2−[1−(4−クロロベンゾイル)−5−メトキシー2−メチル−インドール−3−イル]−酢酸(5)を採取した(479mg、収率12%)。
【0088】
4−チオカルバモイルフェニル−2−[1−(4−クロロベンゾイル)−5−メトキシ−2−メチル−インドール−3−イル]−酢酸(6)の合成
4−カルバモイルフェニル−2−[1−(4−クロロベンゾイル)−5−メトキシ−2−メチル−インドール−3−イル]−アセテート、5(340mg、0.71mmol)、ローソン試薬(287mg、0.71mmol)を無水ベンゼン15mLに溶解した。反応液を60℃まで温め、4時間にわたって撹拌した。減圧下に溶媒を除去し、得られた粗残留物をシリカゲル・カラム(ジクロロメタン/メチルアルコール 9.5:0.5)で精製し、粗化合物6 178mgを得た。得られた化合物を2溶媒システムによる分取RP−HPLCで精製した:A:0.1%TFA中に100%アセトニトリル、B:0.1%TFA(30分間に10%Aから80%Aの直線勾配、254nmでUV検出、流速30mL/分)中に100%HOを加えることにより純粋化合物6(56mg、収率16%)が得られる。
H NMR(CDCl):δ2.45(s、3H)、3.83(s、3H、OCH)、3.91(s、2H)、6.70(d、1H)、6.88(d、1H)、7.04(s、1H)、7.11(d、2H)、7.47(d、2H)、7.67(d、2H)、7.88(d、2H)。
13C NMR(DMSO−d):δ13.6、30.8、56.0、101.5、111.9、112.0、115.3、121.7、128.6、129.4、130.8、131.2、131.4、134.0、136.8、137.1、139.7、156.2、157.9、167.6、169.8、201.8
MS(El)、m/e 493(M);
m.p.:224〜226℃。
【実施例9】
【0089】
2−(6−メトキシ−ナフタレン−2−イル)−プロピオン酸 4−(5−チオキソ−5H−[1,2]ジチオール−3−イル)−フェニルエステル (化合物V)の合成
【0090】
【化16】

【0091】
スキーム 1
4−(5−チオキソ−5H−1,2−ジチオール−3−イル)フェニル 2−(2−メトキシナフタレン−6−イル)プロパン酸(3)の合成
ジメチルホルムアミド20mLに1(ナプロキセン、595mg、2.58mmol)を加えた溶液中に、ヒドロキシベンゾトリアゾール(388mg、2.87mmol)およびDCC(593mg、2.87mmol)を加え、0℃で1時間撹拌した。前記反応混合液に5−p−ヒドロキシフェニル−1,2−ジチオール−3−チオン(2;650mg、2.87mmol)を加え、0℃で1時間、室温で2時間撹拌した。濾過後、濾液を減圧下に蒸発させ溶媒を除去した。このようにして得られた油性残留物を酢酸エチルに溶解し、有機層を塩水、NaHCO 5%、クエン酸 10%で洗浄し、無水MgSOで乾燥させ、濾過し、溶媒を蒸発させた。得られた粗生成物をシリカゲル・オープンカラムに加え、ジクロロメタンで溶出し、そこから4−(5−チオキソ−5H−1,2−ジチオール−3−イル)フェニル−2−(2−メトキシナフタレン−6−イル)プロパン酸(3)を得た(406mg、収率36%)。
H NMR(DMSO−d):δ1.59(d、3H)、3.86(s、3H、OCH)、4.24(dd、1H)、7.18(d、1H)、7.22(d、2H)、7.31(s、1H)、7.50(d、1H)、7.77(s、1H)、7.85(d、1H)、7.86(s、1H)、7.87(d、1H)、 7.91(d、2H)
13C NMR(DMSO−d):δ19.1、45.2、55.9、106.5、119.6、123.5、126.6、126.9、128.0、129.2、129.4、129.5、129.6、129.9、134.2、135.6、136.5、154.2、158.1、173.2、216.2
MS(El)、m/e 439(M);
m.p.:111〜113℃。
【実施例10】
【0092】
2−(6−メトキシ−ナフタレン−2−イル)−プロピオン酸 4−チオカルバミル−フェニルエステル(化合物XX)の合成
【0093】
【化17】

【0094】
スキーム 2
4−カルバモイルフェニル 2−(2−メトキシナフタレン−6−イル)プロパン酸(5)の合成
ジメチルホルムアミド80mLに1(ナプロキセン、4g、17.4mmol)を加えた溶液中に、ヒドロキシベンゾトリアゾール(2.59g、19.14mmol)およびDCC(2.59g、19.14mmol)を加え、0℃で1時間撹拌した。前記反応混合液に4−ヒドロキシベンズアミド(4、3.58g、26.1mmol)を加え、0℃で1時間、室温で2時間撹拌した。濾過後、濾液を減圧下に蒸発させ溶媒を除去した。このようにして得られた油性残留物を酢酸エチルに溶解し、有機層を塩水、NaHCO 5%、クエン酸 10%で洗浄し、無水MgSOで乾燥させ、濾過し、溶媒を蒸発させた。粗生成物5をシリカゲル・オープンカラムに加え、CHCl/MeOH(9.5/0.5)で溶出し、そこから4−カルバモイルフェニル 2−(2−メトキシナフタレン−6−イル)−プロパン酸(5)を採取した(1.91g、収率32%)。
【0095】
4−チオカルバモイルフェニル 2−(2−メトキシナフタレン−6−イル)プロパン酸(6)の合成
4−カルバモイルフェニル 2−(2−メトキシナフタレン−6−イル)−プロパン酸、5(1.80g、4.34mmol)およびローソン試薬(1.75g、4.34mmol)を無水ベンゼン130mLに溶解した。反応液を60℃まで温め、4時間にわたって撹拌した。減圧下に溶媒を除去し、得られた粗残留物をシリカゲル・カラム(ジクロロメタン/メチルアルコール 9.75:0.25)で精製し、純粋化合物6 2.9gを得た。得られた化合物をシリカゲル・オープンカラムで精製し、CHCl/MeOH(9.5/0.5)で溶出し、純粋化合物 6を得た(970mg、収率61%)。
H NMR(DMSO−d):δ1.59(d、3H)、3.86(s、3H、OCH)、4.24(dd、1H)、7.06(d、2H)、7.18(d、1H)、7.31(s、1H)、7.50(d、1H)、7.84(s、1H)、7.85(d、1H)、7.86(s、1H)、7.89(d、2H)、9.47 および9.84(s、2H、NH)。
13C NMR(DMSO−d):δ19.1、45.2、55.9、106.5、119.6、121.6、126.6、126.9、128.0、129.4、129.9、134.2、135.6、137.8、153.4、158.1、173.3、199.7。
MS(El)、m/e 366(M);
m.p.:196〜198℃。
【実施例11】
【0096】
4−チオカルバモイルフェニル 2−(4−イソブチルフェニル)プロパン酸(化合物XXIX)の合成
【0097】
【化18】

【0098】
ジメチルホルムアミド80mLに1(イブプロフェン、3.87g、18.8mmol)を加えた溶液中に、ヒドロキシベンゾトリアゾール(2.8g、20.7mmol)およびDCC(4.27g、20.7mmol)を加え、0℃で1時間撹拌した。前記反応混合液に4−ヒドロキシベンズアミド(2、3.9g、28mmol)を加え、0℃で1時間、室温で2時間撹拌した。濾過後、濾液を減圧下に蒸発させ溶媒を除去した。このようにして得られた油性残留物を酢酸エチルに溶解し、有機層を塩水、5%NaHCO、10%クエン酸で洗浄し、無水MgSOで乾燥させ、濾過し、溶媒を蒸発させた。粗生成物3をシリカゲル・オープンカラムに加え、CHCl/MeOH(9.5/0.5)で溶出し、そこから4−カルバモイルフェニル 2−(4−イソブチルフェニル)プロパン酸(3)を得た(2.48g、収率40%)。
【0099】
4−チオカルバモイルフェニル 2−(4−イソブチルフェニル)プロパン酸(4)の合成
4−カルバモイルフェニル 2−(4−イソブチルフェニル)プロパン酸、3(2.48g、7.62mmol)およびローソン試薬(3.1g、7.62mmol)を無水ベンゼン130mLに溶解した。反応液を60℃まで温め、4時間にわたって撹拌した。減圧下に溶媒を除去した。得られた化合物をシリカゲル・オープンカラムで精製し、CHCl/MeOH(9.5/0.5)で溶出し、純粋化合物 4を得た(1.45g、収率55%)。
H NMR(DMSO−d):δ0.84(d、6H)、1.48(d、3H)、1.79〜1.82(m、1H)、2.42(d、2H)、4.05(dd、1H)、7.05(d、2H)、7.15(d、2H)、7.28(d、2H)、7.88(d、2H)、9.49および9.87(s、2H、NH)。
13C NMR(DMSO−d):δ19.2、22.9、30.3、44.9、121.6、127.9、129.5、130.0、137.8、138.0、140.8、153.3、173.3、199.6。
MS(El)、m/e 341(M);
m.p.:121〜123℃。
【実施例12】
【0100】
4−チオカルバモイルフェニル 2−(4−オキソフェニル)−プロパン酸フェニル(化合物XXX)の合成
【0101】
【化19】

【0102】
4−カルバモイルフェニル 2−(4−オキソフェニル)−プロパン酸フェニル(3)の合成
ジメチルホルムアミド80mL中に1(ケトプロフェン、3g、11.8mmol)を加えた溶液中に、ヒドロキシベンゾトリアゾール(1.76g、19.13mmol)およびDCC(2.68g、113mmol)を加え、0℃で1時間撹拌した。前記反応混合液に4−ヒドロキシベンズアミド(2、2.43g、17.7mmol)を加え、0℃で1時間、室温で2時間撹拌した。濾過後、濾液を減圧下に蒸発させ溶媒を除去した。このようにして得られた油性残留物を酢酸エチルに溶解し、有機層を塩水、NaHCO 5%、クエン酸 10%で洗浄し、無水MgSOで乾燥させ、濾過し、溶媒を蒸発させた。粗生成物3をシリカゲル・オープンカラムに加え、CHCl/MeOH(9.5/0.5)で溶出し、そこから4−カルバモイルフェニル 2−(4−オキソフェニル)−プロパン酸フェニル(3)を得た(1.84g、収率42%)。
【0103】
4−チオカルバモイルフェニル 2−(4−オキソフェニル)−プロパン酸フェニル(4)の合成
4−カルバモイルフェニル 2−(4−オキソフェニル)−プロパン酸フェニル(3)(1.84g、4.93mmol)およびローソン試薬(2g、4.93mmol)を無水ベンゼン100mLに溶解した。反応液を60℃まで温め、4時間にわたって撹拌した。減圧下に溶媒を除去した。得られた化合物をシリカゲル・オープンカラムで精製し、CHCl/MeOH(9.5/0.5)で溶出し、純粋化合物 4を得た(0.45g、収率23%)。
H NMR(DMSO−d):δ1.53(d、3H)、4.25(dd、1H)、7.08(d、2H)、7.54〜7.73(m、9H)、7.90(d、2H)、9.51および9.88(s、2H、NH)。
13C NMR(DMSO−d):δ19.2、44.9、121.6、129.3、129.5、129.8、130.3、132.6、133.5、137.6、137.9、138.1、141.2、153.3、154.5、156.1、163.8、172.9、199.6。
MS(El)、m/e 390(M);
m.p.:114〜116℃。
【実施例13】
【0104】
4−チオカルバモイルフェニル 2−(3−フルオロ、4−フェニル)プロパン酸フェニル(化合物XXXI)の合成
【0105】
【化20】

【0106】
4−カルバモイルフェニル 2−(3−フルオロ、4−フェニル)プロパン酸フェニル(3)の合成
ジメチルホルムアミド80mL中に1(フルルビプロフェン、2g、8.2mmol)を加えた溶液中に、ヒドロキシベンゾトリアゾール(1.22g、9.02mmol)およびDCC(1.86g、9.02mmol)を加え、0℃で1時間撹拌した。前記反応混合液に4−ヒドロキシベンズアミド(2、1.7g、12.2mmol)を加え、0℃で1時間、室温で2時間撹拌した。濾過後、濾液を減圧下に蒸発させ溶媒を除去した。このようにして得られた油性残留物を酢酸エチルに溶解し、有機層を塩水、NaHCO 5%、クエン酸 10%で洗浄し、無水MgSOで乾燥させ、濾過し、溶媒を蒸発させた。粗生成物3をシリカゲル・オープンカラムに加え、CHCl/MeOH(9.5/0.5)で溶出し、そこから4−カルバモイルフェニル 2−(3−フルオロ、4−フェニル)プロパン酸フェニル(3)を採取した(1.09g、収率37%)。
【0107】
4−チオカルバモイルフェニル 2−(3−フルオロ、4−フェニル)プロパン酸フェニル(4)の合成
4−カルバモイルフェニル 2−(3−フルオロ、4−フェニル)プロパン酸フェニル、3(1.09g、3mmol)およびローソン試薬(1.21g、1.3mmol)を無水ベンゼン70mLに溶解した。反応液を60℃まで温め、4時間にわたって撹拌した。減圧下に溶媒を除去した。得られた化合物をシリカゲル・オープンカラムで精製し、CHCl/MeOH(9.5/0.5)で溶出し、純粋化合物4を得た(0.35g、収率31%)。
H NMR(DMSO−d):δ1.55(d、3H)、4.21(dd、1H)、7.32〜7.55(m、8H)、7.90(d、2H)、9.51および9.88(s、2H、NH)。
13C NMR(DMSO−d):δ19.1、44.7、115.9、116.2、121.7、124.8、128.6、129.3、129.4、129.5、131.7、135.8、137.7、142.6、153.7、158.3、163.5、173.1、199.6。
MS(El)、m/e 380(M);
m.p.:142〜144℃。
【実施例14】
【0108】
4−(イソチオシアノ)−フェニル 2−(2−メトキシナフタレン−6−イル)プロパン酸(化合物XXV)の合成
【0109】
【化21】

【0110】
ジメチルホルムアミド20mLに1(ナプロキセン、691mg、3mmol)を加えた溶液中に、ヒドロキシベンゾトリアゾール(446mg、3.3mmol)およびDCC(619mg、3.3mmol)を加え、0℃で1時間撹拌した。前記反応混合液に4−ヒドロキシフェニルイソチオシアナート(2、500mg、3.3mmol)を加え、0℃で1時間、室温で2時間撹拌した。濾過後、濾液を減圧下に蒸発させ溶媒を除去した。油性残留物をエチルアセテートに溶解し、沈殿物を除去した。溶媒を蒸発させ、粗生成物をシリカゲル・オープンカラムに加え、ジクロロメタンで溶出し、そこから4−(イソチオシアノ)−フェニル 2−(2−メトキシナフタレン−6−イル)プロパン酸(3)を採取した(230mg、収率21%)。
H NMR(DMSO−d):Σ1.57(s、3H)、3.86(s、3H、OCH)、4.20(dd、1H)、7.10(d、2H)、7.15(d、1H)、7.29(s、1H)、7.43(d、2H)、7.48(d、1H)、7.78(d、1H)、7.80(s、1H)、7.83(d、1H)。
13C NMR(DMSO−d):Σ19.1、45.2、106.5、119.6、123.8、126.6、126.9、128.0、129.2、129.9、134.2、134.6、135.7、150.2、158.1、173.2、215.1。
m.p.66〜68℃;MS(El)、m/e 364(M)。
【実施例15】
【0111】
4−イソチオシアナトフェニル 2−(2−(2,6−ジクロロフェニルアミノ)フェニル)アセテート(化合物XXII)の合成
【0112】
【化22】

【0113】
4−イソチオシアナトフェニル 2−(2−(2,6−ジクロロフェニルアミノ)フェニル)アセテート(3)
ジメチルホルムアミド60mLに1(ジクロフェナク、1717mg、5.8mmol)を加えた溶液中に、ヒドロキシベンゾトリアゾール(862mg、6.38mmol)およびDCC(1316mg、6.38mmol)を加え、0℃で1時間撹拌した。前記反応混合液に4−ヒドロキシフェニルイソチオシアナート(2、965mg、6.38mmol)を加え、0℃で1時間、室温で2時間撹拌した。濾過後、濾液を減圧下に蒸発させ溶媒を除去した。油性残留物をエチルアセテートに溶解し、沈殿物を除去した。前記溶媒を蒸発させ、粗生成物をシリカゲル・オープンカラムに加え、クロロホルム/n−へキサン(9:1)で溶出し、そこから4−イソチオシアナトフェニル 2−(2−(2,6−ジクロロフェニルアミノ)フェニル)アセテート(3)を得た(580mg、収率23%)。
H NMR(DMSO−d):Σ4.09(s、2H)、6.19(d、1H)、6.83(t、1H)、7.05(t、1H)、7.14(bs、1H、NH)、7.21(d、2H)、7.25(d、2H)、7.47〜7.54(m、3H)。
13C NMR(DMSO−d):δ37.4、116.1、121.0、122.7、124.0、127.1、127.8、128.3、128.7、129.8、132.0、132.2、137.7、144.0、150.3、170.5、215.1。
m.p.132〜134℃;MS(El)、m/e 430(M)。
【実施例16】
【0114】
4−イソチオシアナトフェニル 2−アセトキシ安息香酸(化合物XXI)の合成
【0115】
【化23】

【0116】
4−イソチオシアナトフェニル 2−アセトキシ安息香酸(3)
ジメチルホルムアミド60mLに1(アスピリン、1200mg、6.67mmol)を加えた溶液中に、ヒドロキシベンゾトリアゾール(992mg、7.34mmol)およびDCC(1520mg、7.34mmol)を加え、0℃で1時間撹拌した。前記反応混合液に4−ヒドロキシフェニルイソチオシアナート(2、1109mg、7.34mmol)を加え、0℃で1時間、室温で2時間撹拌した。濾過後、濾液を減圧下に蒸発させ溶媒を除去した。油性残留物をエチルアセテートに溶解し、沈殿物を除去した。前記溶媒を蒸発させ、粗生成物をシリカゲル・オープンカラムに加え、クロロホルム/n−へキサン(6:4)で溶出し、そこから4−イソチオシアナトフェニル 2−アセトキシ安息香酸(3)を得た(150mg、収率7%)。
H NMR(CDCl):δ2.31(s、3H)、7.17(d、1H)、7.19(d、2H)、7.29(d、2H)、7.38(t、1H)、7.66(t、1H)、8.20.2(d、1H)。
13C NMR(CDCL):δ21.3、122.9、123.3、124.4、126.6、127.2、129.4、132.4、135.2、149.3、151.5、163.0、170.0、215.1。
m.p.84〜86℃;MS(El)、m/e 272(M)。
【実施例17】
【0117】
本発明の化合物の胃腸安全性
ラットにおける胃腸安全性に関し、本発明の2つのジクロフェナク誘導体である化合物IIおよび化合物XVIIの評価を行った。特に、胃損傷、胃PGE合成、小腸潰瘍、ヘマトクリットについて評価した。
【0118】
雄性Wistar系ラット(体重175〜200g)を、1%カルボキシメチルセルロース(賦形剤;0.2mL)単独もしくは次のいずれかをこの賦形剤に溶解したものを経口投与する前18時間にわたって絶食とした。すなわち、ジクロフェナク(20mg/kg)、化合物II(32mg/kg)、ADT−OH(12mg/kg)、ジクロフェナク+ADT−OH、化合物XVII(27.3mg/kg)、4−ヒドロキシチオベンズアミド(TBZ)(7.3mg/kg)、化合物XVII+硫化水素放出部分、ジクロフェナク+TBZ、のいずれかである。化合物IIおよび化合物XVIIの用量はジクロフェナク20mg/kgと等モルである。同様に、ADT−OHおよびTBZの用量はそれぞれ化合物IIおよび化合物XVIIと等モルである。
【0119】
各群ともラット5匹で構成された。前記試験化合物の投与から3時間後にラットを安楽死させ、胃の出血性損傷の範囲を盲検的に測定した(mm単位)。胃の病変すべての長さを合計することにより「胃損傷スコア」を計算した。まず図1に関連し、「賦形剤」群、「化合物II」群、「化合物XVII」群では胃損傷は認められなかった。化合物IIおよび化合物XVIIによる胃損傷はジクロフェナクによるものよりも有意に少なかった。さらに、NSAID成分(ジクロフェナク)および化合物IIおよび化合物XVIIのHS放出部分(それぞれADT−OHおよびTBZ)を別々に(但し同時に)投与した場合、胃温存作用は認められなかった。
【0120】
これらの所見は、続いて行った盲検による組織学的評価によって確認された。以前に詳述されているように(Wallaceら、Cyclooxygenase 1 contributes to inflammatory responses in rats and mice:implications for gastrointestinal toxicity.Gastroenterology 1998;115:101〜109、「参考文献」を参照のこと)、胃組織標本(100〜200)を切り出し、プロスタグランジンE(PGE)合成について評価した。つまり、前記組織標本を30分間剪刀で刻み、それらをリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)1mL中に入れ、それを振盪する温浴(37℃)中に20分間置いた。その後直ちに標本を9,000gで1分間遠心分離にかけ、その後の特異的ELISA法を用いたPGE濃度測定のため、上澄を−80℃で直ちに冷凍した(Wallaceら、1998)。
【0121】
図2からはジクロフェナク(ADT−OHまたはTBZの併用の有無に関わらず)、化合物II、化合物XVIIのいずれもが胃PGE合成量を有意に低下させたことが伺え、COX−1および/またはCOX−2の阻害を示している。ADT−OHおよびTBZ単独では、賦形剤に比べ胃PGE合成は低下しなかった。従って、図1に示したような化合物IIまたは化合物XVIIを投与したラットにおける胃損傷の欠如は、これらの薬剤による胃プロスタグランジン合成抑制能の変化に起因するものではなかった。胃PGE合成はこれらの薬剤および同モルのジクロフェナクによりほぼ完全に抑制された。
【0122】
図3は、本発明の2つのナプロキセン誘導体(化合物VおよびXX)による損傷がナプロキセン自体によるものに比べ有意に軽度であることを示している。これらの実験は図1に示したものと全く同じ方法で行われた。ナプロキセン、化合物V、化合物XXをそれぞれ60μモル/kgで経口投与し、3時間後に胃損傷を盲検的に評価した。化合物Vおよび化合物XXを投与したラットでは胃損傷は認められなかった。各群はラット5匹で構成されていた。これらの所見は、続いて行った盲検による組織学的評価によって確認された。
【0123】
COX−1の阻害についても同じラットを用いて評価した。既述のごとく(Wallaceら、Gastroenterology 1998)、嚢から滲出液を収集後直ちに各ラットの下大静脈から血液1mLを採取し、ガラス管に入れ、45分間凝固するにまかせた。次に前記試料を9,000gで3分間遠心分離にかけ、特異的ELISA法を用いたその後のトロンボキサンB濃度の測定のため、上澄液を−80℃で冷凍した。図4に示したように、ナプロキセン、化合物V、化合物XXは、いずれも賦形剤投与群に比べCOX−1活性を有意に(p<0.05)阻害した。COX−1阻害の程度は、化合物Vではナプロキセンまたは化合物XXよりもいくぶん軽度であった。
【0124】
NSAIDも顕著な小腸損傷を引起すことがあり、ジクロフェナクの反復投与が小腸損傷誘発に及ぼす作用を化合物IIと比較した。雄性Wistar系ラット5匹から成る各群に、ジクロフェナクまたは化合物IIを50μM/kgの用量で0時間、12時間後、24時間後に投与した。もう一つのラット群には賦形剤(1%カルボキシメチルセルロース)を投与した。
【0125】
赤血球の固まりからなる血液部分であるヘマトクリット(容積百分率で表される)を、実験開始時および薬剤の最終投与から24時間後に尾静脈から採った血液で測定した。薬剤の最終投与から24時間後にラットを安楽死させ、開腹を行った。ラットが受けた治療を知らされていない研究者が、小腸における全ての出血性びらん/潰瘍の長さを測定した。各ラットにおけるそれらの病変全ての長さを合計することにより、小腸損傷スコアを算出した。
【0126】
図5に示すように、ジクロフェナクを24時間に3回投与することにより、小腸に多くのびらんおよび潰瘍が発生した。一方、化合物IIを投与したラットにおける損傷の程度はジクロフェナクを投与したラットに比べ90%以上軽かった。その上、図6に示すように、ジクロフェナク投与によりヘマトクリットは著しく(p<0.05)低下し、小腸出血のためと考えられたが、化合物IIの投与はヘマトクリットに有意な作用を及ぼさなかった。
【実施例18】
【0127】
シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)およびシクロオキシゲナーゼ−1(COX−1)の阻害
生体内におけるCOX−2の阻害を、既述モデル(Wallaceら、Limited anti−inflammatory efficacy of cyclo−oxygenase−2 inhibition in carrageenan−airpouch inflammation. Br J Pharmacol 1999:126:1200〜1204、「参考文献」参照)の修正版を用いて測定した。つまり、数日間にわたって繰り返し空気を注入することにより皮下「嚢」を作成した。作成後、1%ザイモサン1mLを注入することにより嚢の炎症を誘発できる。これにより嚢内のプロスタグランジンE(PGE)が顕著に増加し、これはほぼ例外なくCOX−2に由来することが示されている。カラギーナン注射の30分前、ラット5匹から成る各群に賦形剤(1%カルボキシメチルセルロース)、ジクロフェナク(3mg/kg)、化合物II(4.8m/kg)、化合物XVII(4.1mg/kg)のうちいずれかを投与した。ラット5匹からなるもう一つの群に賦形剤を投与したが、ザイモサンではなく0.9%滅菌生理食塩水を嚢に注入した。
【0128】
図7に見られるように、ジクロフェナク、化合物II、または化合物XVIIの前投与により、ザイモサン注入への反応として産生される嚢内のPGEの濃度が顕著に低下した。賦形剤+ザイモサン投与群に対し、p<0.05これらの結果から、3種の化合物のいずれもがCOX−2を有意に阻害したことが示される。その一方、硫化水素放出部分(ADT−OHおよびTBZ)はいずれもCOX−2活性に有意な影響を及ぼさなかった。
【0129】
さらに、図4に関し記載されたものと同じ方法により、同じラットを用いてCOX−1の阻害を評価した。図8に示したように、ジクロフェナク、化合物II、および化合物XVIIはCOX−1を通じた全血トロンボキサン合成を、それぞれ80%以上阻害した。その一方、硫化水素放出部分(ADT−OHおよびTBZ)はいずれもCOX−1活性に有意な影響を及ぼさなかった。
【実施例19】
【0130】
生体内においてNSAID誘導体が胃損傷、COX−1活性、COX−2活性に及ぼす作用
多くの化合物の抗炎症作用(COX−2およびCOX−1阻害)および胃安全性を、上記アッセイを用いて比較した。結果の概要を表1に示す。いずれの親NSAIDも顕著な胃損傷を引起した。しかし、本発明のHS放出誘導体では、前記親薬剤に比べ胃安全性は改善されていた。さらに表1から、TBZ誘導体は前記親薬剤に比べ、COX−1および/またはCOX−2阻害能を維持するか実際に上昇させたことが認められる。
【0131】
【表1】

【実施例20】
【0132】
本発明の化合物が炎症に及ぼす作用
化合物IIおよび化合物XVIIの抗炎症作用を、ジクロフェナクの抗炎症作用とともに、Wallaceらが説明したように(Gastroenterology 1998)カラギーナン後足浮腫モデルを用いて評価した。雄性Wistar系ラット(175〜200g)に、1%ラムダカラギーナン100μLを足底部に注射する30分前に前記試験化合物を経口投与した。足容積を、Ugo Basile社のhydroplethysmometerを用い、カラギーナン注射前および注射後1時間ごと5時間にわたって測定した。それぞれラット5匹からなる各群にジクロフェナク1、3、10mg/kgのいずれか、または化合物XVIIまたは化合物XVIIをジクロフェナク3mg/kgと等モルの用量で投与した。
【0133】
図9に示すように、ジクロフェナクはカラギーナンの足底注射で誘発された足の浮腫を用量依存性に軽減した。ジクロフェナク3mg/kgと等モル量の化合物IIにより、足の浮腫は大いに改善した。実際、化合物IIが足の浮腫に及ぼす作用はジクロフェナク10mg/kgの作用に匹敵した。同様に、図10に示したように、化合物XVIIをやはりジクロフェナク3mg/kgと等モルで投与したところ、ジクロフェナク10mg/kgよりも大幅に足浮腫を軽減した。
【0134】
化合物IIおよび化合物XVIIはジクロフェナクと同程度にプロスタグランジン合成を抑制することから、前記足浮腫モデルにおける本発明の新化合物の活性亢進は同化合物の別の特性に関連している可能性が高い。硫化水素供与体がラットのカラギーナン誘発による足浮腫を有意に軽減できることが以前に証明されており(Zanardoら、Hydrogen sulphide is an endogenous modulator of leukocyte−mediated inflammation.FASEB J 2006;20:2118〜2120、「参考文献」参照)、理論に束縛されるものではないが、化合物IIおよび化合物XVIIからのHS放出がジクロフェナクに比べた抗炎症作用亢進の説明になるものと思われる。
【0135】
理論に束縛されるものではないが、炎症モデルにおける本発明の化合物の付加的活性の中にはCOX−2活性の阻害亢進が原因であるものがある可能性もある。賦形剤、ナプロキセン、化合物V、化合物XXの作用をラット空気嚢モデル(図7で説明したように)比較した。各群はラット5匹で構成されていた。ナプロキセン、化合物V、化合物XXをいずれも60μモル/kgの用量で投与した。図11に示したように、3種の薬剤は賦形剤投与群に比べいずれもCOX−2活性を有意に(p<0.05、**p<0.01)抑制した。しかし、化合物XXはナプロキセンまたは化合物Vよりも有意に大幅にCOX−2活性を低下させた(p<0.05)。
【0136】
理論に束縛されるものではないが、炎症モデルにおける本発明の化合物の付加的活性の中にはCOX−1活性の阻害亢進が原因であるものがある可能性もある。生体外において、賦形剤、インドメタシン、および本発明の2つの化合物である化合物IVおよび化合物XIXがヒト全血トロンボキサンB合成に及ぼす作用を比較した。健康なボランティアの血液(0.5mL)を、メタノール単独10μL、もしくは最終濃度が0.1、0.3、1、または3μMになるように作成した前記試験薬剤を入れたガラス管に加えた。管をゆっくりと震盪する水浴(37℃)中に45分間置き、その後10分間遠心分離(1,000 xg)にかけた。図4で示した試験におけるごとく、各試料中のトロンボキサンB濃度を特異的ELISA法を用いて測定した。図12に示すように、3種薬剤のいずれもが賦形剤投与群に比べ、COX−1活性を濃度依存性に阻害した。しかし、1μMおよび3μMの濃度において、化合物XIXはインドメタシンよりもCOX−1活性を有意に(*p<0.05)大幅に阻害した。
【実施例21】
【0137】
本発明のNSAID誘導体における血管内皮への白血球粘着
血管内皮への白血球粘着は炎症反応の早期イベントであり、血栓形成に寄与する。硫化水素供与体はアスピリンまたは炎症促進性トリペプチドfMLPによって誘発された白血球粘着を低下させることが示されている(Zanardoら、FASEB J 2006;20:2118〜2120)。いくつかの本発明NSAID誘導体が白血球付着に及ぼす作用につき、Zanardoら(FASEB J2006;20:2118〜2120)が詳しく説明したように、ラットを対象に生体顕微鏡を用いて評価した。FASEB J 2006;20:2118−2120。
【0138】
つまり、麻酔されたラットにおいて後毛細血管腸間膜細静脈を光学顕微鏡で観察した。5分間の基本記録時間後、下の表2に掲げた前記試験化合物の一つを30μM/kgの用量で胃内投与した。ただし、ナプロキセンおよびナプロキセン誘導体(化合物Vおよび化合物XX)は60μM/kgの用量で投与した。試験化合物はすべて1%カルボキシメチルセルロースの賦形剤に入れて作成した。細静脈内での白血球粘着の変化を顕微鏡に取付けられたビデオカメラで録画し、録画された画像により粘着白血球の数を盲検的に数えた。各群とも5匹の雄性Wistar系ラット(体重150〜175kg)で構成された。白血球は、30秒間以上静止状態にあれば「粘着」と見なした(以下の結果は平均アSEMで示す)。実験の最後に胃を開き、解剖顕微鏡により胃損傷の有無を調べた。
【0139】
【表2】

【0140】
表2から、本発明のアスピリンTBZ誘導体、特に化合物XVIおよび化合物Iがいずれもアスピリン単独に比べ血管長100μm当たりの粘着白血球数を有意に低下させたことが認められる。また、化合物XVIおよび化合物Iのいずれもがアスピリン単独に比べ胃損傷発生率を有意に低下させた。同様に表2はさらに、本発明のジクロフェナク誘導体、特に化合物IIおよび化合物XVIIがジクロフェナク単独に比べ、血管長100μm当たり粘着白血球数および胃損傷発生率をいずれも有意に低下させたことを示している。同様に表2はさらに、本発明のナプロキセン誘導体、特に化合物Vおよび化合物XXがナプロキセン単独に比べ、血管長100μm当たり粘着白血球数および胃損傷発生率をいずれも有意に低下させたことを示している。
【0141】
興味深いことに、胃への副作用が軽い選択的COX−2阻害薬であるルミラコキシブの誘導体である化合物IIIおよび化合物XVIIIでは胃損傷の発生はやはり認められなかったが、血管長100μm当たりの粘着白血球数はルミラコキシブ単独に比べ有意に少なかった。従って、硫化水素放出部分をCOX−2選択的NSAIDに共有結合させることにより、これらCOX−2阻害薬の心臓血管系副作用も軽減される可能性がある。
【0142】
このように、本発明のNSAID誘導体は、白血球粘着を低下させることによりNSAIDの心臓血管系副作用を軽減する可能性がある。
【実施例22】
【0143】
本発明の化合物が胃潰瘍の治癒に及ぼす作用
COX−2に選択的に作用するものを含めたNSAIDsは前から存在する胃潰瘍の治癒を阻害することが多い(Stadlerら、Diclofenac delays healing of gastroduodenal mucosal lesions.Double−bling,placebo−controlled endoscopic study in healthy volunteers.Digestive Diseases and Sciences 1991;36:594〜600)。本発明の2つの化合物(化合物XVIIおよび化合物XX)が潰瘍治癒に及ぼす作用をそれぞれジクロフェナクおよびナプロキセンと比較するため、胃への潰瘍誘発後、ラットにこれらの薬剤を投与した。Elliotらが記載したように、漿膜に酢酸を塗布することによって胃潰瘍を誘発した(A nitric oxide−releasing nonsteroidal anti−inflammatory drug accelerates gastric ulcer healing in rats.Gastroenterology 1995;109:524〜530)。3日後から、それぞれラット5匹からなる各群に、賦形剤、ジクロフェナク(30μモル/kg)、化合物XVII(30μモル/kg)、ナプロキセン(60μモル/kg)、化合物XX(60μモル/kg)のいずれかを1日2回経口投与した。4日間そのような治療を行った後、ラットを安楽死させ、胃を開いて切除し、写真に撮った。ラットに施された治療内容を知らない者が潰瘍面積(mm)を測定した。胃潰瘍誘発から3日後(すなわち薬剤投与開始前)に安楽死させたラット5匹のサブグループにおいて、潰瘍の平均表面積は24±2mmであった。図13に示したように、賦形剤、ジクロフェナク、ナプロキセンを投与したラットはいずれも同程度の治癒を示した。しかし、化合物XVIIまたは化合物XXを投与したラットの治癒状況は有意に良好であった(それぞれジクロフェナクおよびナプロキセンに比べ、p<0.05)。これら2つの化合物の硫化水素放出部分(TBZ)の投与では賦形剤群に比べ胃潰瘍の治癒は有意に影響されなかった。
【実施例23】
【0144】
本発明の化合物が血圧に及ぼす作用
COX−2に選択性を示すものを含めたNSAIDsは、前から存在する高血圧を悪化させ、一部の降圧剤の有効性を妨げる可能性がある(Whelton,A.Nephrotoxicity of nonsteroidal anti−inflammatory drugs:physiologic foundations and clinical implications. Am.J.Med.1999;106(5B):13S−24S)。本発明の2つの化合物(化合物IIおよび化合物XX)が血圧に及ぼす作用をそれぞれジクロフェナクおよびナプロキセンと比較するため、最初に高血圧を誘発した上でラットにこれらの薬剤を腹腔内投与した。Ribeiroらの記述にあるように(Chronic inhibition of nitric oxide synthesis:A new model or arterial hypertension.Hypertension 1992;20:298〜303)、前記実験の7日前にNω−ニトロ−L−アルギニン・メチルエステル(400mg/L)を補った飲用水をラットに与えた。ラット(群当たり5〜8匹)をハロタンで麻酔し、血圧測定のため頸動脈にカニューレを挿入した。血圧はチャート式記録計で連続的に記録した。安定血圧を少なくとも15分間測定後、前記薬剤のうち一つ(ナプロキセン、ジクロフェナク、化合物II、または化合物XX)を腹腔内にボーラス投与した(ジクロフェナクおよび化合物IIは30μM/kg、ナプロキセンおよび化合物XXは60μM/kgの用量で投与した)。血圧の変化を投与後60分間にわたって記録した。平均基礎血圧は150±6mmHgであった。図14は、ジクロフェナクおよびナプロキセンが収縮期血圧を大幅に上昇させたことを示している。一方、化合物IIおよび化合物XXは賦形剤投与群に比べ収縮期血圧を上昇させることはなく、血圧変化はそれぞれジクロフェナクおよびナプロキセン誘発によるものに比べて有意に小幅であった。
【実施例24】
【0145】
血漿HS濃度の測定
化合物IIからのHS放出動態を調べるため、ラット5匹から成る各群に化合物IIを50μM/kgの用量で経口投与し、10、30、60、180分後に屠殺した。続いて血漿HS濃度の経時曲線を作成した。既述の方法(Ubuka、T.Assay methods and biological roles of labile sulfur in animal tissues.J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci.2002;781:227〜249およびZhao W,Zhang J,Lu Y,Wang R.The vasorelaxant effect of HS as a novel endogenous gaseous K(ATP)channel opener.EMBO J.2001;20:6008〜6016、いずれも「参考文献」参照)に変更を加えて血漿HS濃度を測定した。つまり、密閉した3つ口リアクターにおいて、氷冷した0.1N NaOH250μLに血漿250μLを加えた。吹込管により混合液中に窒素流を絶え間なく通過させるようにした。リアクターを37℃に保持し、10%トリクロロ酢酸溶液1mLを加えることによってHS抽出を開始した。窒素流が、冷却コネクターにより別のリアクター中の硫酸を送達させて、更に、2M KOH、1Mサリチル酸、0.22Mアスコルビン酸から成るpH12.8の硫化物抗酸化緩衝液(sulfide anti−oxidant buffer:SAOB)2mL中においてバブリングした。30分後にSAOB溶液を除去し、硫化物濃度を硫化物感受性の電極(モデル9616S2−/Ag電極、Orion Research、米国マサチューセッツ州Beverly)を用いてHSを測定した(Ubuka、2002;Khanら、1980)。
【0146】
化合物XVIIおよび化合物IIに誘発されたインビトロにおけるHS放出をそれぞれ化合物XVIIおよび化合物IIのHS放出部分であるTBZおよびADT−OHと比較するため、切離肝臓100〜150mgを氷冷T−PERタンパク・エキストラクター1mL中でホモジナイズした。HS放出は同じ血漿分析リアクター上で行われた。分析用反応混合液2mLをリアクター中に加えた。混合液には100mMリン酸カリウム緩衝液(pH=7.4)にPEGを加えた中に1mMの化合物II、1mMmの化合物XVII、1mM TBZ、1mM ADT−OHのいずれかが溶解されていた。培養は10%(w/v)肝臓ホモジネートおよび2mMピリドキサル5−リン酸を加えた場合とそうでない場合にわけて行った。‘混合液中を窒素がガス吹込管経由で絶え間なく通過するようにした。ガラス管を氷浴から37℃の温浴に移すことにより反応を開始させた。既述のように、窒素流がSAOB 2mLが入った2番目のリアクター中の硫酸を運んだ。37℃で90分間培養後、50%トリクロロ酢酸液1mLを混合液に加え反応を停止させた。混合液中の残留HSは、さらに30分間37℃で培養することにより、窒素流によって除去した。SAOB溶液中の塩化物濃度を既述の硫化物感受性電極によって測定した(Ubuka、2002;Khanら、1980)。
【0147】
図15に示すように、化合物IIの経口投与により血漿HS濃度が有意に(p<0.05)上昇した。化合物IIの単回投与後の180分間、血漿HS濃度のわずかではあるが一貫した上昇が認められた。図16は、緩衝液中における化合物IIまたは化合物XVIIの培養により、それぞれ等量のADT−OHまたはTBZに比べ、有意に多くのHSが放出された。同様に、肝臓ホモジネートで培養した場合、化合物IIおよび化合物XVIIの方がADT−OHまたはTBZよりも多くのHS放出が認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式を有する化合物またはその塩であって、
A−Y−X (化学式I)
式中、AはNSAID遊離基、Yは−C(O)O−、−C(O)NH−、−C(O)OC(O)−、−C(O)NHCHC(O)−、またはゼロから成る群から選択されるものであり、Xは単独またはNSAIDとの結合により硫化水素を放出することのできる部分であり、Yがゼロの場合、前記化合物はAおよびXの塩である可能性があるものである、
化合物またはその塩。
【請求項2】
下記一般式の化合物であって、
B−C(O)O−X (化学式II)
式中、B−C(O)O−は遊離カルボキシル基を有するNSAIDまたはカルボキシ置換NSAIDから誘導されるものであり、Xは、
【化24】

から成る群から選択されるものである、
化合物。
【請求項3】
請求項1または2記載の化合物において、前記NSAIDはアセチルサリチル酸(ASA)、ジクロフェナク、ナプロキセン、インドメタシン、フルルビプロフェン、スリンダク、イブプロフェン、アセクロフェナク、アセメタシン、ベノキサプロフェン、ベンゾフェナク、ブロムフェナク、ブクロキシン酸、ブチブフェン、カルプロフェン、セレコキシブ、シクロプロフェン、シンメタシン、クリダナク、クロピラック、ジフルシナル、エトドラック、エトリコキシブ、フェンブフェン、フェンクロフェナク、フェンクロラク、フェノプロフェン、フェンチアザク、フルノキサプロフェン、フラプロフェン、フロブフェン、フラフェナク、イブフェナク、インドプロフェン、イソキセパク、ケトプロフェン、ケトロラック、ロキソプロフェン、ロナゾラク、ルミラコキシブ、メチアジニク、メフェナム酸、メクロフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、ピロミド酸、サルサレート、ミロプロフェン、オキサプロジン、オキセピナク、パラコキシブ、フェニルブタゾン、ピルプロフェン、ピロキシカム、ピロゾラク、プロチジン酸、ロフェコキシブ、サリチル酸ナトリウム、スプロフェン、チアプロフェン酸、トルメチン、バルデコキシブ、およびゾメピラクから成る群から選択されるものである。
【請求項4】
請求項1または2記載の化合物において、前記NSAIDはアセチルサリチル酸、ジクロフェナク、インドメタシン、ルミラコキシブ、ナプロキセン、イブプロフェン、ケトプロフェン、およびフルルビプロフェンから成る群から選択されるものである。
【請求項5】
請求項1記載の化合物において、Xは、
【化25】

から成る群から選択されるものである。
【請求項6】
請求項1記載の化合物において、前記NSAIDはアセチルサリチル酸、ジクロフェナク、インドメタシン、ルミラコキシブ、ナプロキセン、イブプロフェン、ケトプロフェン、およびフルルビプロフェンから成る群から選択されるものであり、Yは−C(O)Oであり、Xは、
【化26】

である。
【請求項7】
請求項1記載の化合物において、前記NSAIDはアセチルサリチル酸、ジクロフェナク、インドメタシン、ルミラコキシブ、ナプロキセン、イブプロフェン、ケトプロフェン、およびフルルビプロフェンから成る群から選択されるものであり、Yは−C(O)Oであり、Xは、
【化27】

である。
【請求項8】
請求項1記載の化合物において、前記NSAIDはアセチルサリチル酸、ジクロフェナク、インドメタシン、ルミラコキシブ、ナプロキセン、イブプロフェン、ケトプロフェン、およびフルルビプロフェンから成る群から選択されるものであり、Yは−C(O)Oであり、Xは、
【化28】

である。
【請求項9】
請求項1記載の化合物において、前記化合物は以下の化合物、
【化29】

または薬学的に許容できるその塩である。
【請求項10】
請求項1記載の化合物において、前記化合物は以下の化合物、
【化30】

または薬学的に許容できるその塩である。
【請求項11】
請求項1記載の化合物において、前記化合物は以下の化合物、
【化31】

または薬学的に許容できるその塩である。
【請求項12】
請求項1記載の化合物において、前記化合物は以下の化合物、
【化32】

または薬学的に許容できるその塩である。
【請求項13】
請求項1記載の化合物において、前記化合物は以下の化合物、
【化33】

または薬学的に許容できるその塩である。
【請求項14】
請求項1記載の化合物において、前記化合物は以下の化合物、
【化34】

または薬学的に許容できるその塩である。
【請求項15】
請求項1記載の化合物において、前記化合物は以下の化合物、
【化35】

または薬学的に許容できるその塩である。
【請求項16】
請求項1記載の化合物において、前記化合物は以下の化合物、
【化36】

または薬学的に許容できるその塩である。
【請求項17】
請求項1記載の化合物において、前記化合物は以下の化合物、
【化37】

または薬学的に許容できるその塩である。
【請求項18】
請求項1記載の化合物において、前記化合物は以下の化合物、
【化38】

または薬学的に許容できるその塩である。
【請求項19】
請求項1記載の化合物において、前記化合物は以下の化合物、
【化39】

または薬学的に許容できるその塩である。
【請求項20】
請求項1記載の化合物において、前記化合物は以下の化合物、
【化40】

または薬学的に許容できるその塩である。
【請求項21】
請求項1記載の化合物において、前記化合物は以下の化合物、
【化41】

または薬学的に許容できるその塩である。
【請求項22】
請求項1記載の化合物において、前記化合物は以下の化合物、
【化42】

または薬学的に許容できるその塩である。
【請求項23】
請求項1記載の化合物において、前記化合物は以下の化合物、
【化43】

または薬学的に許容できるその塩である。
【請求項24】
請求項1記載の化合物において、前記化合物は以下の化合物、
【化44】

または薬学的に許容できるその塩である。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれかに記載の化合物と、薬学的に許容できる賦形剤または担体とを有する薬学組成物。
【請求項26】
炎症治療法であって、
そのような治療を必要とする対象において、請求項1〜24のいずれかに記載の化合物の炎症軽減量を前記対象に投与する工程
を有する方法。
【請求項27】
疼痛治療法であって、
そのような治療を必要とする対象において、請求項1〜24のいずれかに記載の化合物の炎症軽減量を前記対象に投与する工程
を有する方法。
【請求項28】
発熱治療法であって、
その治療を必要とする対象において、請求項1〜24のいずれかに記載の化合物の炎症軽減量を前記対象に投与する工程
を有する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2009−543813(P2009−543813A)
【公表日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−519769(P2009−519769)
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【国際出願番号】PCT/CA2007/001289
【国際公開番号】WO2008/009127
【国際公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(507391133)アンタイブ セラピューティクス インク. (4)
【Fターム(参考)】