説明

非平常状態推定装置、方法及びプログラム

【課題】ユーザがアノテーションを効率良くかつ的確に行えるようにし、これにより作業性の向上としきい値の設定精度を高める。
【解決手段】ユーザの安静状態で生成された4種類の生理指標データからその平均値と偏差値或いは変動率の平均値及び偏差値を算出し、この算出された平均値及び偏差値に基づいて生理指標しきい値を算出する。次に、ユーザの非平常状態を誘発する状況において生成された4種類の生理指標データをそれぞれ単位時間区間ごとに分割して区間ごとの平均値又は変動率を算出し、この算出された平均値又は変動率を上記生理指標しきい値と比較して当該しきい値を超える単位時間区間を検出する。そして、この検出された単位時間区間が複数連続する時間区間を生理指標ごとに求め、これらの時間区間間で論理積又は論理和処理し、その結果をアノテーション対象区間としてユーザ端末UTに表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ユーザの状態や環境の状態をセンシングしてその状態が非平常状態であるか否かを推定するための装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ユーザが身に付けたセンサにより得られるセンサデータをもとに当該ユーザの日常的な平常/非平常の検知を行い、その結果を医療機関等に通知する技術が提案されている。例えば、ユーザの血中酸素濃度等が所定値以上のときに異常だと判断し、無線信号を発信するものがある(特許文献1を参照。)。この技術は、情報発信者が身体的に危機的状況に陥っていることを推定するものであるため、医学的な観点からしきい値を定めることが可能である。
【0003】
一方、上述のような異常状態の通知以外にも、日々の生活の中で陥る非平常な状態、例えば珍しい出来事に直面して緊張したり、驚いたりすることを検出して記憶し、この検出情報を第三者と共有することで、ユーザ間のコミュニケーションをより豊にする試みがなされている。この場合の非平常状態の検出も、特許文献1に記載された発明と同様に、収集したバイタルデータ等がしきい値を上回るか下回るかを判断することで可能となる。しかしながら、非平常時のバイタルデータは、平常状態とは異なるものの、身体が異常状態に陥る時ほど大きく変化するものではなく、しかも個人の体質や生活パターンによって大きく異なるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−258761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、過去に取得し蓄積したセンサデータ値に対し、ユーザ自身が当該センサデータ値を得た時点での平常/非平常を主観的に判断してその判断結果をアノテーションとして指定し、このアノテーションの結果を参照して、平常/非平常時データの統計分布が最も顕著に乖離する部分にしきい値を設定する方法が提案されている。このようなアノテーションを利用したしきい値を用いると、ユーザ自身の感覚により近い状態でセンシングデータ値の平常/非平常を判定することが可能となる。
【0006】
しかし、非平常状態におけるセンサデータは、そもそも低頻度で観測されるセンサデータであることから、センシング期間がきわめて長くなると共に非平常データの収集頻度がユーザ個人の生活に依存してしまう。このため、ユーザにとってはアノテーションの作業に多くの時間と手間がかかり、またアノテーションを的確に行い難くしきい値の設定精度も低くなりやすいという課題があった。
【0007】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、ユーザがアノテーションを効率良くかつ的確に行えるようにし、これにより作業性の向上としきい値の設定精度を高めた非平常状態推定装置、方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためにこの発明の一つの観点は、センサデータをもとに生成されるユーザの生理指標を表すデータに対し当該ユーザが設定した平常状態か非平常状態かを表すアノテーションデータを受け取って、このアノテーションデータと上記生理指標を表すデータをもとに推定しきい値を設定し、以後得られるユーザの生理指標を表すデータを上記推定しきい値と比較してその比較結果をもとに上記ユーザの非平常状態を推定するための装置、方法及びプログラムにあって、ユーザの生理指標を表すデータについてその平均領域とそれ以外の領域とを判別する判別しきい値を算出し、上記ユーザの生理指標を表すデータと上記算出された生理指標の判別しきい値とをもとにアノテーション対象区間として推奨する時間区間を特定して、この特定されたアノテーション対象区間を上記ユーザに提示するようにしたものである。
【0009】
したがって、アノテーション対象区間として推奨する時間区間が自動的に特定されてユーザに提示される。このため、ユーザはアノテーションに適した時間区間を自身で探す必要が無くなり、これによりアノテーションの設定に要する時間を短縮すると共に手間を大幅に軽減することが可能となる。また、アノテーション対象区間として推奨される時間区間に対しアノテーションを設定すればよいので、アノテーションの設定をより適切に行えるようになる。
【0010】
また、この発明の一つの観点は以下のような態様を備えることも特徴とする。
第1の態様は、先ず判別しきい値を算出する際には、ユーザの安静状態において生成された当該ユーザの生理指標データについてその平均領域とそれ以外の領域とを判別する判別しきい値を算出する。次に、アノテーション対象区間を特定する際には、ユーザの非平常状態を誘発する状況において生成された当該ユーザの生理指標データと上記算出された生理指標の判別しきい値とをもとに、アノテーション対象区間として推奨する時間区間を特定するものである。
【0011】
このようにすると、判別しきい値を算出する際には安静時の安定した生理指標データをもとに判別しきい値が設定される。一方、アノテーション対象区間を特定する際には、ユーザが非平常状態を誘発する状況、例えばユーザに対し適当な刺激を与えることによりユーザを意図的に非平常状態にさせた状況で得られる生理指標データをもとにアノテーション対象区間が特定される。このため、アノテーション対象区間を特定するために必要な生理指標データのデータ量を増やすことができ、これによりアノテーション対象区間の特定に要する時間を短縮することができ、またアノテーション対象区間としてより適切な時間区間をユーザに提示することができる。
【0012】
第2の態様は、判別しきい値を算出する際に、ユーザの安静状態において生成された当該ユーザの脈拍数を表す時系列データの平均値と偏差値を算出し、この算出された平均値及び偏差値に基づいて上記判別しきい値を算出して保存する。そして、アノテーション対象区間を特定する際には、上記ユーザの非平常状態を誘発する状況において生成された当該ユーザの脈拍数を表す時系列データを予め設定された単位時間区間ごとに分割して、この分割された単位時間区間ごとに当該区間における時系列データの平均値を算出する。そして、上記分割された単位時間区間ごとに、上記算出された平均値を上記保存された判別しきい値と比較して当該判別しきい値により示される範囲を超えているか否かを判定し、上記判別しきい値により示される範囲を超えていると判定された連続する複数の単位時間区間をアノテーション対象区間とするようにしたものである。
このようにすると、ユーザの安静時に得られる脈拍数の時系列データに基づいて安定度の高い判別しきい値を算出することができ、この安定度の高い判別しきい値と、ユーザの非平常時に得られる脈拍数の時系列データに基づいて、アノテーション対象区間を明確に特定することが可能となる。
【0013】
第3の態様は、先ず判別しきい値を算出する際に、ユーザの安静状態において生成された当該ユーザの脈拍数を表す時系列データの平均値と偏差値を算出し、この算出された平均値及び偏差値に基づいて上記判別しきい値を算出して保存する。またそれと共に、ユーザの安静状態において生成された当該ユーザの心拍変動の周波数成分、精神性発汗部の皮膚導電率、呼吸数のうちの少なくとも一つの時系列データについてその平均値と偏差値を算出し、この算出された平均値及び偏差値に基づいて心拍変動の周波数成分、皮膚導電率及び呼吸数のうちの少なくとも一つの時系列データに対する第2の判別しきい値を算出して保存する。
次に、アノテーション対象区間を特定する際に、上記ユーザの非平常状態を誘発する状況において生成された当該ユーザの脈拍数を表す時系列データを予め設定された単位時間区間ごとに分割し、この分割された単位時間区間ごとに当該時間区間における時系列データの平均値を算出する。そして、この算出された平均値を上記保存された第1の判別しきい値と比較して、当該第1の判別しきい値により示される範囲を超えている単位時間区間を検出し、この検出された単位時間区間が複数連続する第1の時間区間を求める。またそれと共に、上記ユーザの非平常状態を誘発する状況において生成された当該ユーザの心拍変動の周波数成分、皮膚導電率及び呼吸数のうちの少なくとも一つの時系列データを予め設定された単位時間区間ごとに分割し、この分割された単位時間区間ごとに当該時間区間における時系列データの平均値を算出する。そして、この算出された平均値を上記保存された第2の判別しきい値と比較して、当該第2の判別しきい値により示される範囲を超えている単位時間区間を検出し、この検出された単位時間区間が複数連続する第2の時間区間を求める。最後に、上記求められた第1の時間区間と第2の時間区間とを論理積処理又は論理和処理し、この論理積処理又は論理和処理された後の第3の時間区間をアノテーション対象区間とするものである。
このようにすると、脈拍数と、心拍変動の周波数成分、皮膚導電率及び呼吸数のうちの1以上の生理指標の時系列データを使用してアノテーション対象区間が特定される。すなわち、複数の生理指標データをもとにアノテーション対象区間が特定される。このため、アノテーション対象区間をより高精度に特定することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
すなわちこの発明によれば、ユーザがアノテーションを効率良く的確に行えるようにし、これにより作業性の向上としきい値の設定精度を高めた非平常状態推定装置、方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の一実施形態に係わる非平常状態推定装置を備えたシステムの概略構成図である。
【図2】図1に示したシステムの機能構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示したシステムによるアノテーション支援処理の手順と内容を示すフローチャートである。
【図4】図3に示したアノテーション支援処理において使用する、安静時に収集した各生理指標データとそのしきい値の一例を示す図である。
【図5】図3に示したアノテーション支援処理において使用する、非平常を誘発する状況時に収集した各生理指標データの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照してこの発明に係わる実施形態を説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係わる非平常状態推定装置を備えたシステムの概略構成図であり、PTが非平常状態推定装置としてのアノテーション支援端末を示している。アノテーション支援端末PTには、ユーザ端末UTと、データベースサーバDSVが通信ネットワークNWを介してそれぞれ接続可能となっている。
【0017】
ユーザ端末UTは、例えば家庭に設置されるパーソナル・コンピュータや、携帯電話機又はPDA(Personal Digital Assistant)等の携帯端末からなる。また、通信ネットワークNWは、例えばIP(Internet Protocol)網と、このIP網にアクセスするためのアクセス網とから構成される。アクセス網としては、光公衆通信網、携帯電話網、LAN(Local Area Network)、無線LAN、CATV(Cable Television)網等が用いられる。
【0018】
図2は、図1に示したシステムの機能構成を示すブロック図であり、入力部10と、処理部20と、記憶部30と、出力部40を備えている。
入力部10はユーザ端末UTに設けられ、センサデータ計測部11を有している。センサデータ計測部11は、ユーザの身体に取着された複数のセンサS1〜Snがそれぞれ送信するセンサデータを受信する。このセンサデータを伝送するための通信インタフェースとしては、例えばBluetooth(登録商標)等の近距離無線データ通信規格を適用した無線インタフェースが用いられる。
【0019】
またセンサデータ計測部11は、上記受信されたセンサデータをもとに4種類の生理指標を表す時系列データを生成し、この生成された4種類の生理指標を表す時系列データをそれぞれ符号化圧縮して記憶する。そして、この生理指標を表す時系列データが一定量蓄積されるごとに当該生理指標の時系列データを読み出し、この生理指標データをユーザ識別情報(ユーザID)と共に通信ネットワークNWを介してデータベースサーバDSVへ送信する。
【0020】
上記4種類の生理指標は、例えば脈拍数と、心拍変動の周波数成分(0.05〜0.15Hzの低周波成分LFと、0.15Hzより高い高周波成分HF)と、掌等の精神性発汗部の皮膚導電率と、呼吸数により構成される。なお、これら4種類の生理指標データを得るために用いるセンサとしては、脈波センサもしくは心電センサ、皮膚電導度センサ、脈拍センサ、呼吸数センサ等の周知のセンサを使用する。
【0021】
記憶部30はデータベースサーバDSVに設けられ、この発明に係わる記憶機能として、センサデータ記憶部31と、生理指標しきい値記憶部32と、アノテーション作成対象区間記憶部33を有している。なお、これらの記憶部31〜33による処理機能は、アプリケーション・プログラムを中央処理ユニット(CPU)に実行させることにより実現される。
【0022】
センサデータ記憶部31は、上記ユーザ端末UTから通信インタフェースNWを介して伝送された4種類の生理指標を表す時系列データを受信し、ハードディスク等の記憶媒体に蓄積する。そして、アノテーション支援端末PTからのデータ取得要求に応じて、上記記憶媒体から4種類の生理指標を表す時系列データを読み出し、要求元のアノテーション支援端末PTへ送信する。
【0023】
生理指標しきい値記憶部32は、アノテーション支援端末PTから通信ネットワークNWを介して送られる生理指標しきい値を受信してメモリに記憶する。そして、アノテーション支援端末PTからの読み出し要求に応じ、上記記憶された生理指標しきい値をメモリから読み出してアノテーション支援端末PTへ送信する。
【0024】
アノテーション作成対象区間記憶部33は、アノテーション支援端末PTから登録要求と共に送られたアノテーション作成対象区間を表す情報を受信し、メモリに記憶させる。そして、ユーザUTからの表示要求に応じ、上記記憶されたアノテーション作成対象区間を表す情報をメモリから読み出してユーザ端末UTへ送信する。
【0025】
処理部20はアノテーション支援端末PTに設けられ、この発明に係わる処理機能として、生理指標しきい値算出処理部21と、アノテーション作成対象区間算出処理部22を有している。なお、これらの処理部21,22の処理機能も、アプリケーション・プログラムをCPUに実行させることにより実現される。
【0026】
生理指標しきい値算出処理部21は、以下の処理機能を有する。
(1) 上記データベースサーバDSVのセンサデータ記憶部31に対し生理指標データの取得要求を送信し、ユーザの安静時において計測された4種類の生理指標を表す時系列データを取得する処理。
(2) 上記取得した安静時における4種類の生理指標を表す時系列データの各々について、その平均値と偏差値を算出してこの平均値と偏差値をもとに生理指標しきい値を算出する処理。
(3) 上記算出した生理指標しきい値を、通信ネットワークNWを介してデータベースサーバDSVへ送信し、生理指標しきい値記憶部32に記憶させる処理。
【0027】
アノテーション作成対象区間算出処理部22は、以下の処理機能を有する。
(1) 上記データベースサーバDSVのセンサデータ記憶部31に対しデータ取得要求を送信することにより、ユーザの非平常状態を誘発する状況下で計測された4種類の生理指標を表す時系列データを取得する。そして、この取得した4種類の生理指標を表す時系列データの各々を予め設定した単位時間区間ごとに分割し、この分割された単位時間区間ごとにその平均値を算出する処理。
(2) 次に、上記データベースサーバDSVの生理指標しきい値記憶部32から各生理指標しきい値を取得し、上記算出された生理指標ごとの平均値を上記取得された生理指標しきい値と比較して、当該生理指標しきい値により示される範囲を超えているか否かを判定する。そして、生理指標しきい値により示される範囲を超えていると判定された連続する複数の単位時間区間をアノテーション作成対象区間として特定する処理。
(3) 上記特定されたアノテーション作成対象区間を表す情報を、通信ネットワークNWを介してデータベースサーバDSVへ送信し、アノテーション作成対象区間記憶部33に記憶させる処理。
【0028】
出力部40はユーザ端末UTに設けられ、アノテーション作成対象区間表示部41を有している。アノテーション作成対象区間表示部41は、ユーザの操作に応じて上記データベースサーバDSVに対しアノテーション作成対象区間の表示要求を送信し、この要求に対しデータベースサーバDSVから送られるアノテーション作成対象区間を表す情報を受信して表示部に表示させる。なお、このアノテーション作成対象区間表示部41による処理も、アプリケーション・プログラムをCPUに実行させることにより実現される。
【0029】
次に、以上のように構成されたシステムによるアノテーション支援処理動作を説明する。図3はその処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
先ずステップS51においてユーザ端末UTが起動し、ユーザの安静時における生理指標データの収集が以下のように行われる。すなわち、ユーザ端末UTは先ずユーザの身体に取着された複数のセンサS1〜Snからセンサデータを受信する。そして、この受信されたセンサデータをもとに、4種類の生理指標データ、例えば脈拍数、心拍変動の周波数成分、皮膚導電率及び呼吸数の時系列データを生成し、この生成された4種類の生理指標データをそれぞれ符号化圧縮して記憶する。そして、この符号化された生理指標データが一定量蓄積されるごとに当該符号化された生理指標データを読み出し、この生理指標データをユーザ識別情報(ユーザID)と共にデータベースサーバDSVへ送信する。これに対しデータベースサーバDSVは、ユーザ端末UTから符号化された生理指標データを受信するごとに、この受信した生理指標データを送信元のユーザIDと対応付けて記憶媒体に順次蓄積する。
【0030】
次にステップS52において、アノテーション支援端末PTが各生理指標しきい値を算出する処理を以下のように実行する。すなわち、アノテーション支援端末PTは、先ずデータベースサーバDSVに対し安静時生理指標データの取得要求を送信する。このとき取得要求には、安静時を指定する情報と、対象ユーザのユーザIDを含める。これに対しデータベースサーバDSVは、上記取得要求に含まれる安静時を指定する情報とユーザIDに応じて、センサデータ記憶部31から該当ユーザの安静時において計測された4種類の生理指標データを読み出し、要求元のアノテーション支援端末PTへ送信する。
【0031】
次にアノテーション支援端末PTは、上記取得した安静時における4種類の生理指標データの各々について、その平均値と偏差値を算出する。そして、この算出された平均値と偏差値をもとに生理指標しきい値を算出する。図4はこの生理指標しきい値の算出処理を説明するための図である。
【0032】
すなわち、先ず皮膚電導度の時系列データについてその平均E1 と偏差σ1 を算出する。また、脈拍数の時系列データについてその平均E2 と偏差σ2 を算出し、同様に心拍変動の周波数成分(0.05〜0.15Hzの低周波成分LFと、0.15Hzより高い高周波成分HF)(以後LF/HFと称する)の時系列データについてもその平均値E3 と偏差σ3 を算出する。
【0033】
一方、呼吸数の時系列データについては、当該時系列データを特定の時間区間に区切り、この区分した時間区間ごとに呼吸数の変動率を算出する。この変動率は、例えば特定時間区間における、呼吸数のサンプルを直線近似した場合の傾き成分を最小二乗法等で算出することにより求められる。そして、この求められた各時間区間の変動率から、全時間区間の変動率の平均E4 と偏差σ4 を求める。
【0034】
続いて、上記算出された各平均値及び偏差値をもとに、皮膚電導度のしきい値E1 −C11σ1 ,E1 +C12σ1 、脈拍数のしきい値E2 −C21σ2 ,E2 +C22σ2 、LF/HFのしきい値E3 −C31σ3 ,E3 +C32σ3 、呼吸数のしきい値E4 −C41σ4 ,E4 +C42σ4 を求める。ここで、Cij(i =1,2,3,4、j =1,2,3,4)は定数である。
【0035】
最後に、上記求められた皮膚電導度のしきい値E1 −C11σ1 ,E1 +C12σ1 、脈拍数のしきい値E2 −C21σ2 ,E2 +C22σ2 、LF/HFのしきい値E3 −C31σ3 ,E3 +C32σ3 、呼吸数のしきい値E4 −C41σ4 ,E4 +C42σ4 を、通信ネットワークNWを介してデータベースサーバDSVへ送信する。データベースサーバDSVは、上記アノテーション支援端末PTから送信された上記各生理指標しきい値のデータを受信すると、この受信された各生理指標しきい値のデータを生理指標しきい値記憶部32に記憶させる。
【0036】
次に、ステップS53においてユーザ端末UTは、ユーザの非平常状態を誘発する状況下において生理指標データを収集する。非平常状態を誘発する状況とは、例えばユーザに対し適当な刺激を与えることによりユーザを意図的に非平常状態にさせた状況のことである。なお、この非平常状態を誘発する状況における生理指標データの収集処理も、先にステップS51で述べた安静時における生理指標データの収集処理と同様に行われる。
【0037】
上記非平常状態を誘発する状況下での各生理指標データの収集が終了すると、アノテーション支援端末PTはステップS54〜S57に移行し、これらのステップにおいてそれぞれ上記非平常状態を誘発する状況下で収集した各生理指標データの平均値を以下のように算出する。図5はアノテーション作成対象区間の設定処理の一例を示す図である。
【0038】
すなわち、アノテーション支援端末PTは、先ずデータベースサーバDSVに対し非平常状態を誘発する状況下における生理指標データの取得要求を送信する。このとき取得要求には、非平常状態を誘発する状況下を指定する情報と、対象ユーザのユーザIDを含める。これに対しデータベースサーバDSVは、上記取得要求に含まれる非平常状態を誘発する状況下を指定する情報とユーザIDに応じて、センサデータ記憶部31から該当ユーザの非平常状態を誘発する状況下において計測された4種類の生理指標データを読み出し、要求元のアノテーション支援端末PTへ送信する。
【0039】
次にアノテーション支援端末PTは、上記取得した非平常状態を誘発する状況下における4種類の生理指標データの各々を、予め設定した単位時間区間ごとに分割する。そして、この分割された単位時間区間ごとにその平均値を算出する。具体的には、皮膚電導度の時系列データ、脈拍数の時系列データ、LF/HFの時系列データについてはそれぞれ単位時間区間におけるデータの平均値を算出する。また、呼吸数の時系列データについては単位時間区間における変動率を算出する。この変動率は、先に述べた安静時の呼吸数データからその変動率を求める場合と同様に算出することができる。
【0040】
続いてアノテーション支援端末PTはステップS58に移行し、ここで先ずデータベースサーバDSVの生理指標しきい値記憶部32から各生理指標しきい値、つまり皮膚電導度のしきい値E1 −C11σ1 ,E1 +C12σ1 、脈拍数のしきい値E2 −C21σ2 ,E2 +C22σ2 、LF/HFのしきい値E3 −C31σ3 ,E3 +C32σ3 、呼吸数のしきい値E4 −C41σ4 ,E4 +C42σ4 を取得する。そして、上記算出された皮膚電導度、脈拍数及びLF/HFの単位時間区間ごとの平均値を、上記取得された対応する生理指標しきい値と比較して、当該生理指標しきい値により示される範囲を超えているか否かを判定する。そして、この判定結果をもとに、平均値がしきい値以上(又は以下)となり、再びしきい値以下(又は以上)となる連続する時間区間を、アノテーション作成対象区間の候補として検出する。
【0041】
また、それと共にアノテーション支援端末PTは、ステップS59において各時間区間において算出された呼吸数の変動率に対し、当該変動率がしきい値E4 −C41σ4 (又はE4 +C42σ4 )を超えた単位時間区間と、しきい値E4 +C42σ4(又はE4 −C41σ4 )を超えた単位時間区間との間に挟まれる連続する時間区間を、アノテーション作成対象区間の候補として検出する。
【0042】
続いてアノテーション支援端末PTはステップS60に移行し、ここで上記皮膚電導度、脈拍数、LF/HF及び呼吸数についてそれぞれ検出されたアノテーション作成対象区間の候補を論理積処理(AND)又は論理和(OR)処理し、その結果をアノテーション作成対象区間として決定する。図5では、論理積(AND)したときのアノテーション作成対象区間と、論理和(OR)処理したときのアノテーション作成対象区間をそれぞれ例示している。
【0043】
なお、各生理指標しきい値に用いる定数や、各生理指標について検出されたアノテーション作成対象区間候補のうちのいくつを論理積処理又は論理和処理するかは、システムが決定してもよく、またユーザ端末UTにおいてユーザ自身が指定できるようにしてもよい。このようにすると、ユーザの手間を省く方向に比重を置くか、正確なアノテーションの設定を行う方向に比重をおくかを選択することができる。
【0044】
最後に、上記特定されたアノテーション作成対象区間を表す情報は、アノテーション支援端末PTから通信ネットワークNWを介してデータベースサーバDSVに送信され、アノテーション作成対象区間記憶部33に記憶される。
ユーザ端末UTは、ステップS61においてユーザのアノテーション支援要求の操作を監視しており、この操作が行われるとデータベースサーバDSVに対しアノテーション作成対象区間情報の取得要求を送信する。これに対しデータベースサーバDSVは、ユーザ端末UTユーザUTからの要求に応じ、上記記憶されたアノテーション作成対象区間を表す情報をアノテーション作成対象区間記憶部33から読み出して、要求元のユーザ端末UTへ送信する。ユーザ端末UTは、上記取得要求に対しデータベースサーバDSVからアノテーション作成対象区間を表す情報が送られると、この受信したアノテーション作成対象区間を表す情報を表示部に表示させる。
【0045】
したがって、ユーザは、アノテーション支援端末PTから推奨されたアノテーション作成対象区間を、自身のユーザ端末UTで確認することができる。そして、ユーザは自身のユーザ端末UTにおいて、上記表示されたアノテーション作成対象区間に対し、平常状態か非平常状態かをアノテーションデータとして設定することができる。この設定されたアノテーションデータは通信ネットワークNWを介してアノテーション支援端末PTに伝送される。アノテーション支援端末PTは、上記ユーザ端末UTから送られたアノテーションデータと、データベースサーバDSVから取得した生理指標データとをもとに推定用しきい値を決定する。
【0046】
そして、以後アノテーション支援端末PTは、ユーザの最新の状態をセンサS1〜Snにより計測することにより得られた生理指標データをデータベースサーバDSVから定期的に取得し、この取得された生理指標データを上記決定された推定用しきい値と比較する。そして、この比較結果からユーザが非平常状態に陥ったか否かを判定し、その判定結果を例えば家族、医師、看護師、介護士等の携帯端末に送信し表示させる。
【0047】
以上詳述したようにこの実施形態では、アノテーション支援端末PTにおいて、ユーザの安静状態において生成された皮膚電導度、脈拍数、LF/HF及び呼吸数の時系列データからその平均値と偏差値或いは変動率の平均値及び偏差値を算出し、この算出された平均値及び偏差値に基づいて生理指標しきい値を算出する。次に、ユーザの非平常状態を誘発する状況において生成された皮膚電導度、脈拍数、LF/HF及び呼吸数の時系列データを単位時間区間ごとに分割し、この分割された単位時間区間ごとに平均値又は変動率を算出する。そして、この算出された平均値又は変動率を、先に算出された生理指標しきい値と比較して当該しきい値により示される範囲を超えている単位時間区間を検出し、この検出された単位時間区間が複数連続する時間区間を求める。そして、上記各生理指標について求められた時間区間間で論理積処理又は論理和処理し、この論理積処理又は論理和処理された後の時間区間をアノテーション対象区間として決定しユーザ端末UTに表示させるようにしている。
したがってこの実施形態によれば、アノテーション作成対象区間として推奨する時間区間がアノテーション支援端末PTにより特定されてユーザ端末UTに表示される。このため、ユーザはアノテーションに適した時間区間を自身で探す必要が無くなり、これによりアノテーションの設定に要する時間を短縮すると共に手間を大幅に軽減することが可能となる。また、アノテーション対象区間として推奨される時間区間に対しアノテーションを設定すればよいので、アノテーションの設定をより適切に行えるようになる。
【0048】
また、安静時の安定した生理指標データをもとに生理指標しきい値が設定され、一方アノテーション対象区間を特定する際には、ユーザが非平常状態を誘発する状況で得られる生理指標データをもとにアノテーション対象区間が特定される。このため、アノテーション対象区間を特定するために必要な生理指標データのデータ量を増やすことができ、これによりアノテーション対象区間の特定に要する時間を短縮することができ、またアノテーション対象区間としてより適切な時間区間をユーザに提示することができる。
【0049】
なお、この発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、前記実施形態ではユーザ端末UTから送信されたセンサデータをデータベースサーバDSVに一旦蓄積し、このデータベースサーバDSVから上記蓄積されたセンサデータをアノテーション支援端末PTに取り込んで、アノテーション対象区間を特定するための処理を行う場合について述べた。しかし、それに限らず、ユーザ端末UTから送信されたセンサデータを直接アノテーション支援端末PTに取り込んで蓄積し、アノテーション支援端末PTがこの取り込んだセンサデータをもとにアノテーション対象区間を特定するための処理を行うようにしてもよい。
【0050】
また、前記実施形態ではユーザ端末UTがセンサデータをもとに生理指標の時系列データを生成する加工処理を行い、この加工処理された生理指標の時系列データをデータベースサーバDSVへ送信するようにした。しかし、それに限らず、ユーザ端末UTはセンサデータをそのままデータベースサーバDSVへ送信し、データベースサーバDSVが受信したセンサデータをもとに生理指標の時系列データを生成する加工処理を行って蓄積するようにしてもよい。さらに、データベースサーバDSVは受信したセンサデータをそのまま蓄積し、アノテーション端末PTが上記データベースサーバDSVから取り込んだセンサデータをもとに生理指標の時系列データを生成する加工処理を行うようにしてもよい。
【0051】
さらに、アノテーション対象区間を特定する際に、必ずしも4種類の生理指標をすべて使用する必要はなく、脈拍数のみを用いてアノテーション対象区間を特定してもよく、また心拍変動の周波数成分、皮膚導電率及び呼吸数の中から1つ又は2つを選択し、この選択した生理指標と脈拍数とを使用してその判定結果を論理積又は論理和することによりアノテーション対象区間を特定するようにしてもよい。
【0052】
その他、非平常状態推定装置の構成、アノテーション対象区間を特定する処理の手順とその内容、生理指標の種類等についても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施可能である。
要するにこの発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0053】
PT…アノテーション支援端末、UT…ユーザ端末、S1〜Sn…センサ、DSV…データベースサーバ、NW…ネットワーク、10…入力部、11…センサデータ計測部、20…処理部、21…生理指標しきい値算出処理部、22…アノテーション作成対象区間算出処理部、30…記憶部、31…センサデータ記憶部、32…生理指標しきい値記憶部、33…アノテーション作成対象区間記憶部、40…出力部、41…アノテーション作成対象区間表示部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサデータをもとに生成されるユーザの生理指標を表すデータに対し当該ユーザが設定した平常状態か非平常状態かを表すアノテーションデータを受信して、このアノテーションデータと前記生理指標を表すデータをもとに推定しきい値を設定し、以後得られるユーザの生理指標を表すデータを前記推定しきい値と比較してその比較結果をもとに前記ユーザの非平常状態を推定する非平常状態推定装置であって、
前記ユーザの生理指標を表すデータについて、その平均領域とそれ以外の領域とを判別する判別しきい値を算出する手段と、
前記ユーザの生理指標を表すデータと前記算出された生理指標の判別しきい値とをもとに、アノテーション対象区間として推奨する時間区間を特定する手段と、
前記特定されたアノテーション対象区間を前記ユーザに提示する手段と
を具備することを特徴とする非平常状態推定装置。
【請求項2】
前記判別しきい値を算出する手段は、ユーザの安静状態において生成された当該ユーザの生理指標データについて、その平均領域とそれ以外の領域とを判別する判別しきい値を算出し、
前記アノテーション対象区間を特定する手段は、ユーザの非平常状態を誘発する状況において生成された当該ユーザの生理指標データと前記算出された生理指標の判別しきい値とをもとに、アノテーション対象区間として推奨する時間区間を特定することを特徴とする請求項1記載の非平常状態推定装置。
【請求項3】
前記判別しきい値を算出する手段は、
ユーザの安静状態において生成された当該ユーザの脈拍数を表す時系列データの平均値と偏差値を算出する手段と、
前記算出された平均値及び偏差値に基づいて前記判別しきい値を算出する手段と、
前記算出された判別しきい値を保存する手段と
を備え、
前記アノテーション対象区間を特定する手段は、
前記ユーザの非平常状態を誘発する状況において生成された当該ユーザの脈拍数を表す時系列データを予め設定された単位時間区間ごとに分割する手段と、
前記分割された単位時間区間ごとに、当該区間における時系列データの平均値を算出する手段と、
前記分割された単位時間区間ごとに、前記算出された平均値を前記保存された判別しきい値と比較して当該判別しきい値により示される範囲を超えているか否かを判定する手段と、
前記判別しきい値により示される範囲を超えていると判定された連続する複数の単位時間区間をアノテーション対象区間とする手段と
を備えることを特徴とする請求項2記載の非平常状態推定装置。
【請求項4】
前記判別しきい値を算出する手段は、
ユーザの安静状態において生成された当該ユーザの脈拍数を表す時系列データの平均値と偏差値を算出する第1の手段と、
ユーザの安静状態において生成された当該ユーザの心拍変動の周波数成分、精神性発汗部の皮膚導電率、呼吸数のうちの少なくとも一つの時系列データについてその平均値と偏差値を算出する第2の手段と、
前記第1の手段により算出された平均値及び偏差値に基づいて、脈拍数を表す時系列データに対する第1の判別しきい値を算出する手段と、
前記第2の手段により算出された平均値及び偏差値に基づいて、心拍変動の周波数成分、皮膚導電率及び呼吸数のうちの少なくとも一つの時系列データに対する第2の判別しきい値を算出する手段と、
前記算出された第1及び第2の判別しきい値を保存する手段と
を備え、
前記アノテーション対象区間を特定する手段は、
前記ユーザの非平常状態を誘発する状況において生成された当該ユーザの脈拍数を表す時系列データを予め設定された単位時間区間ごとに分割し、この分割された単位時間区間ごとに当該時間区間における時系列データの平均値を算出する手段と、
前記算出された平均値を前記保存された第1の判別しきい値と比較して、当該第1の判別しきい値により示される範囲を超えている単位時間区間を検出し、この検出された単位時間区間が複数連続する第1の時間区間を算出する手段と、
前記ユーザの非平常状態を誘発する状況において生成された当該ユーザの心拍変動の周波数成分、皮膚導電率及び呼吸数のうちの少なくとも一つの時系列データを予め設定された単位時間区間ごとに分割し、この分割された単位時間区間ごとに当該時間区間における時系列データの平均値を算出する手段と、
前記算出された平均値を前記保存された第2の判別しきい値と比較して、当該第2の判別しきい値により示される範囲を超えている単位時間区間を検出し、この検出された単位時間区間が複数連続する第2の時間区間を算出する手段と、
前記算出された第1の時間区間と第2の時間区間とを論理積処理又は論理和処理し、この論理積処理又は論理和処理された後の第3の時間区間をアノテーション対象区間として特定する手段と
を備えることを特徴とする請求項2記載の非平常状態推定装置。
【請求項5】
センサデータをもとに生成されるユーザの生理指標を表すデータに対し当該ユーザが設定した平常状態か非平常状態かを表すアノテーションデータを受け取って、このアノテーションデータと前記生理指標を表すデータをもとに推定しきい値を設定し、以後得られるユーザの生理指標を表すデータを前記推定しきい値と比較してその比較結果をもとに前記ユーザの非平常状態を推定する非平常状態推定方法であって、
前記ユーザの生理指標を表すデータについて、その平均領域とそれ以外の領域とを判別する判別しきい値を算出する過程と、
前記ユーザの生理指標を表すデータと前記算出された生理指標の判別しきい値とをもとに、アノテーション対象区間として推奨する時間区間を特定する過程と、
前記特定されたアノテーション対象区間を前記ユーザに提示する過程と
を具備することを特徴とする非平常状態推定方法。
【請求項6】
前記判別しきい値を算出する過程は、ユーザの安静状態において生成された当該ユーザの生理指標データについて、その平均領域とそれ以外の領域とを判別する判別しきい値を算出し、
前記アノテーション対象区間を特定する過程は、ユーザの非平常状態を誘発する状況において生成された当該ユーザの生理指標データと前記算出された生理指標の判別しきい値とをもとに、アノテーション対象区間として推奨する時間区間を特定する
ことを特徴とする請求項5記載の非平常状態推定方法。
【請求項7】
前記判別しきい値を算出する過程は、
ユーザの安静状態において生成された当該ユーザの脈拍数を表す時系列データの平均値と偏差値を算出する過程と、
前記算出された平均値及び偏差値に基づいて前記判別しきい値を算出する過程と、
前記算出された判別しきい値を保存する過程と
を備え、
前記アノテーション対象区間を特定する過程は、
前記ユーザの非平常状態を誘発する状況において生成された当該ユーザの脈拍数を表す時系列データを予め設定された単位時間区間ごとに分割する過程と、
前記分割された単位時間区間ごとに、当該区間における時系列データの平均値を算出する過程と、
前記分割された単位時間区間ごとに、前記算出された平均値を前記保存された判別しきい値と比較して当該判別しきい値により示される範囲を超えているか否かを判定する過程と、
前記判別しきい値により示される範囲を超えていると判定された連続する複数の単位時間区間をアノテーション対象区間とする過程と
を備えることを特徴とする請求項6記載の非平常状態推定方法。
【請求項8】
前記判別しきい値を算出する過程は、
ユーザの安静状態において生成された当該ユーザの脈拍数を表す時系列データの平均値と偏差値を算出する第1の過程と、
ユーザの安静状態において生成された当該ユーザの心拍変動の周波数成分、精神性発汗部の皮膚導電率、呼吸数のうちの少なくとも一つの時系列データについてその平均値と偏差値を算出する第2の過程と、
前記第1の過程により算出された平均値及び偏差値に基づいて、脈拍数を表す時系列データに対する第1の判別しきい値を算出する過程と、
前記第2の過程により算出された平均値及び偏差値に基づいて、心拍変動の周波数成分、皮膚導電率及び呼吸数のうちの少なくとも一つの時系列データに対する第2の判別しきい値を算出する過程と、
前記算出された第1及び第2の判別しきい値を保存する過程と
を備え、
前記アノテーション対象区間を特定する過程は、
前記ユーザの非平常状態を誘発する状況において生成された当該ユーザの脈拍数を表す時系列データを予め設定された単位時間区間ごとに分割し、この分割された単位時間区間ごとに当該時間区間における時系列データの平均値を算出する過程と、
前記算出された平均値を前記保存された第1の判別しきい値と比較して、当該第1の判別しきい値により示される範囲を超えている単位時間区間を検出し、この検出された単位時間区間が複数連続する第1の時間区間を求める過程と、
前記ユーザの非平常状態を誘発する状況において生成された当該ユーザの心拍変動の周波数成分、皮膚導電率及び呼吸数のうちの少なくとも一つの時系列データを予め設定された単位時間区間ごとに分割し、この分割された単位時間区間ごとに当該時間区間における時系列データの平均値を算出する過程と、
前記算出された平均値を前記保存された第2の判別しきい値と比較して、当該第2の判別しきい値により示される範囲を超えている単位時間区間を検出し、この検出された単位時間区間が複数連続する第2の時間区間を求める過程と、
前記求められた第1の時間区間と第2の時間区間とを論理積処理又は論理和処理し、この論理積処理又は論理和処理された後の第3の時間区間をアノテーション対象区間とする過程と
を備えることを特徴とする請求項6記載の非平常状態推定方法。
【請求項9】
請求項1乃至4のいずれかに記載の非平常状態推定装置において、当該装置が備える各手段に相当する処理を当該装置が備えるコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−55907(P2011−55907A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206270(P2009−206270)
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】