説明

非接触電力伝送装置

【課題】共鳴コイル間の距離を測定するのに専用の距離センサを設けることなく、共鳴コイル間の距離が電力伝送を効率良く行うことができるか否かを判断することができる非接触電力伝送装置を提供する。
【解決手段】非接触電力伝送装置は給電側設備10と受電側設備20とを備え、給電側設備10は交流電源11と、交流電源11から交流電圧が印加される1次コイル12と、1次側共鳴コイル13と、コントローラ14と、1次コイル12の電圧を測定する電圧センサ15とを備えている。受電側設備20は2次側共鳴コイル21と、2次コイル22と、2次コイル22に接続された充電器23と、充電器23に接続された2次電池24と、充電コントローラ25とを備えている。コントローラ14は、電圧センサ15により測定された電圧から1次側共鳴コイル13と2次側共鳴コイル21との距離を演算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触電力伝送装置に係り、詳しくは共鳴型の非接触電力伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
共鳴型の非接触電力伝送装置として、例えば非特許文献1及び特許文献1に記載されたものが知られている。この非接触電力伝送装置は、図9に示すように、二つの銅線コイル51,52を離れた状態で配置し、一方の銅線コイル51から他方の銅線コイル52に電磁場の共鳴によって電力を伝送することが紹介されている。具体的には、交流電源53に接続された1次コイル54で発生した磁場を銅線コイル51,52による磁場共鳴により増強し、2次コイル55により増強された銅線コイル52付近の磁場から電磁誘導を利用して電力を取り出し、負荷56に供給する。そして、半径30cmの銅線コイル51,52を2m離して配置した場合に、負荷56としての60Wの電灯を点灯できることが確認されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】NIKKEI ELECTRONICS 2007.12.3 117頁〜128頁
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開特許WO/2007/008646 A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この共鳴型の非接触電力伝送装置において交流電源の電力を負荷に効率よく供給するには、送信側(送電側)の銅線コイル51と受信側(受電側)の銅線コイル52との共鳴周波数で送信側の銅線コイル51に1次コイル54から電力を供給することが必要になる。しかし、従来技術には非接触電力伝送装置の概要が記載されているだけで、具体的にどのようにすればそのような条件を満足できる非接触電力伝送装置を得ることができるのかに付いては記載されていない。
【0006】
また、共鳴型の非接触電力伝送装置においては交流電源の電力を負荷に効率良く供給するには、交流電源から電力を効率良く共鳴系に供給することが必要になる。そして、交流電源から一定周波数の交流電圧を出力して電力伝送を行う場合、共鳴コイル間の距離、即ち2つの銅線コイル51,52間の距離が変化すると電力伝送効率が変化する。したがって、送電側と受電側との距離が変化する状態で使用される非接触電力伝送装置、例えば、車両やロボット等の移動体に受電側が搭載されて使用される場合は、電力伝送が効率良く行われる共鳴コイル間の距離に移動体が停止した状態で電力伝送を行う必要がある。共鳴コイル間の距離を測定するのに専用の距離センサを設けると、その分、製造に手間がかかり、装置が大型化する。
【0007】
本発明は、前記従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、共鳴コイル間の距離を測定するのに専用の距離センサを設けることなく、共鳴コイル間の距離が電力伝送を効率良く行うことができるか否かを判断することができる非接触電力伝送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、交流電源と、交流電源から交流電圧が印加される1次コイルと、1次側共鳴コイルと、2次側共鳴コイルと、負荷が接続された2次コイルとを備える非接触電力伝送装置である。そして、前記1次コイルの電圧を測定する電圧測定手段と、前記電圧測定手段により測定された電圧から前記1次側共鳴コイルと前記2次側共鳴コイルとの距離を演算する距離演算手段とを備えている。
【0009】
本願発明者は、1次側共鳴コイルと2次側共鳴コイルとの距離、即ち共鳴コイル間の距離と1次コイルの電圧とに所定の関係があるということを見いだし、この知見に基づいてこの発明を完成した。ここで、「交流電源」とは、交流電圧を出力する電源を意味する。
【0010】
この発明では、1次コイル、1次側共鳴コイル、2次側共鳴コイル、2次コイル及び負荷が共鳴系を構成し、交流電源から1次コイルに共鳴系の共鳴周波数で交流電圧が印加され、印加された周波数と同じ周波数の電磁界が発生する。この電磁界の強さが1次側共鳴コイル及び2次側共鳴コイルにおける共鳴現象によって増大され、2次コイルによりエネルギーとして取り出される。電力伝送が効率良く行われるためには、共鳴コイル間の距離、即ち1次側共鳴コイルと2次側共鳴コイルとの距離が共鳴系の共鳴周波数によって決まる所定の範囲となる必要がある。この発明の非接触電力伝送装置では、電圧測定手段により測定された1次コイルの両端の電圧に基づいて1次側共鳴コイルと2次側共鳴コイルとの距離が演算されるため、共鳴コイル間の距離を測定するのに専用の距離センサを設けることなく、共鳴コイル間の距離が電力伝送を効率良く行うのに適しているか否かを判断することができる。したがって、電力伝送を効率良く行うのに適していない状態で電力伝送を行うことを回避することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記距離演算手段は、前記1次側共鳴コイルと前記2次側共鳴コイルとの軸方向の距離を演算する。したがって、この発明の非接触電力伝送装置は、例えば、交流電源、1次コイル及び1次側共鳴コイルが固定状態で設けられ、2次側共鳴コイル、2次コイル及び負荷は、1次側共鳴コイルと2次側共鳴コイルとが同軸上に位置する状態で移動可能な構成の場合に適している。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記距離演算手段は、前記1次側共鳴コイルと前記2次側共鳴コイルとが同軸上に位置する状態からの軸と垂直方向へのズレ量を演算する。したがって、この発明の非接触電力伝送装置は、例えば、交流電源、1次コイル及び1次側共鳴コイルが固定状態で設けられ、2次側共鳴コイル、2次コイル及び負荷は、2次側共鳴コイルの中心軸が1次側共鳴コイルの中心軸と平行な状態で、中心軸と直交する方向に移動可能な構成の場合に適している。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記2次側共鳴コイル、前記2次コイル及び前記負荷は移動体に搭載され、前記移動体には前記距離演算手段の演算結果に基づいて前記1次側共鳴コイルと前記2次側共鳴コイルとが適切な位置関係にあるか否かを報知する報知手段が設けられている。
【0014】
この発明では、非接触電力伝送装置は、移動体(例えば車両)に2次側共鳴コイル、2次コイル及び負荷が搭載される。そして、1次側共鳴コイルと2次側共鳴コイルとが適切な位置関係にあるか否かが報知手段により報知される。そのため、移動体が交流電源から給電される位置に停止する際、停止位置が給電に適切な位置になるように停止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、共鳴コイル間の距離を測定するのに専用の距離センサを設けることなく、共鳴コイル間の距離が電力伝送を効率良く行うことができるか否かを判断することができる非接触電力伝送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施形態における非接触電力伝送装置の構成図。
【図2】車両が充電位置に停止したときの1次側共鳴コイルと2次側共鳴コイルとの関係を示す模式側面図。
【図3】同じく模式平面図。
【図4】共鳴コイルの軸ずれ量と1次コイルの電圧との関係を示すグラフ。
【図5】共鳴コイル間の距離を一定として負荷を変えた場合における負荷と1次コイルの電圧との関係を示すグラフ。
【図6】第2の実施形態における車両が充電位置に停止したときの1次側共鳴コイルと2次側共鳴コイルとの関係を示す模式図。
【図7】共鳴コイル間の距離と1次コイルの電圧との関係を示すグラフ。
【図8】別の実施形態の1次側共鳴コイルと2次側共鳴コイルとの関係を示す模式図。
【図9】従来技術の非接触電力伝送装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施形態)
以下、本発明を移動体に搭載された2次電池に対して非接触充電を行うシステムに具体化した第1の実施形態を図1〜図5にしたがって説明する。
【0018】
図1は、非接触電力伝送装置の構成を模式的に示す。図1に示すように、非接触電力伝送装置は、給電側設備(送電側設備)10と、受電側設備20とで構成されている。給電側設備10は充電ステーションに設けられ、受電側設備20は移動体としての車両30に搭載されている。
【0019】
給電側設備10は、交流電源11と、交流電源11から交流電圧が印加される1次コイル12と、1次側共鳴コイル13と、コントローラ14とを備えている。1次コイル12と1次側共鳴コイル13とは同軸上に位置するように配設されている。1次コイル12には1次コイル12の両端の電圧を測定する電圧測定手段としての電圧センサ15が接続されている。電圧センサ15の検出信号はコントローラ14に入力される。1次側共鳴コイル13にはコンデンサCが接続されている。交流電源11は交流電圧を出力する電源である。交流電源11はコントローラ14による制御によって所定周波数(共鳴周波数)の交流電圧を出力するように構成されている。
【0020】
受電側設備20は、2次側共鳴コイル21と、2次コイル22と、2次コイル22に接続された充電器23と、充電器23に接続された2次電池24と、充電コントローラ25とを備えている。2次側共鳴コイル21にはコンデンサCが接続されている。2次側共鳴コイル21と2次コイル22とは同軸上に位置するように配設されている。2次コイル22は周囲の磁界から電磁誘導を利用して電力を取り出し、充電器23に出力する。充電器23は、2次コイル22から出力される交流を整流する整流回路(図示せず)と、整流された直流を2次電池24に充電するのに適した電圧に昇圧する昇圧回路(図示せず)とを備えている。充電コントローラ25は、充電時に充電器23の昇圧回路のスイッチング素子を制御する。充電器23及び2次電池24は負荷を構成する。
【0021】
車両30には、2次電池24の充電量を検出する充電量センサ26が設けられている。充電コントローラ25は充電量センサ26の検出信号を入力して充電状態を判断する。コントローラ14と、充電コントローラ25とは図示しない無線通信装置を介して通信可能になっている。充電量センサ26で検出された2次電池24の充電量のデータは、図示しない無線通信装置を介してコントローラ14に送られるようになっている。また、車両30には1次側共鳴コイル13と2次側共鳴コイル21とが、適切な位置関係にあるか否かを報知する報知手段27が設けられている。報知手段27としては、例えば、適切な位置関係にある状態で点灯するLEDと、適切な位置関係にない状態で点灯するLEDとが使用される。報知手段27は充電コントローラ25からの指令で点灯が制御される。
【0022】
1次コイル12、1次側共鳴コイル13、2次側共鳴コイル21、2次コイル22、充電器23及び2次電池24は共鳴系28を構成し、交流電源11から供給される電力を非接触で伝送する。1次コイル12、1次側共鳴コイル13、2次側共鳴コイル21及び2次コイル22は電線により形成されている。コイルを構成する電線には、例えば、絶縁ビニル被覆線が使用される。コイルの径や巻数は、伝送しようとする電力の大きさ等に対応して適宜設定される。この実施形態では1次コイル12、1次側共鳴コイル13、2次側共鳴コイル21及び2次コイル22は、同じ径に形成されている。1次側共鳴コイル13及び2次側共鳴コイル21は同じに形成され、各コンデンサCとして同じコンデンサが使用されている。
【0023】
コントローラ14は、CPU14a及びメモリ14bを備え、メモリ14bには1次コイル12の電圧、即ち電圧センサ15の検出電圧データから1次側共鳴コイル13と2次側共鳴コイル21との距離を演算する制御プログラムが記憶されている。コントローラ14は、電圧センサ15によって検出された電圧から1次側共鳴コイル13と2次側共鳴コイル21との距離を演算する距離演算手段を構成する。この実施形態ではコントローラ14は、1次側共鳴コイル13と2次側共鳴コイル21とが同軸上に位置する状態からの軸と垂直方向へのズレ量(以下、単に軸ズレ量と称す。)を演算する。そして、コントローラ14は、軸ズレ量から1次側共鳴コイル13と2次側共鳴コイル21とが、適切な位置関係にあるか否かを判断し、判断結果を充電コントローラ25に送信する。充電コントローラ25は、コントローラ14からの判断結果に基づいて報知手段27を点灯制御する。
【0024】
メモリ14bには、2次電池24の充電量が予め設定された値における1次コイル12の電圧と、軸ズレ量との関係を示すデータがマップとして記憶されている。この充電量の予め設定された値とは、2次電池24への充電開始時における充電量を意味し、この実施形態では、2次電池24が充電すべき状態になった時の充電量と、その値より小さくその値の状態から車両30が充電ステーションまで走行する間に2次電池24の電力が使用された後の複数の充電量とに対して前記データがそれぞれ記憶されている。これらのデータは予め試験により求められる。
【0025】
コントローラ14は、充電時には、1次側共鳴コイル13と2次側共鳴コイル21との距離に対応した適切な周波数の交流電流が供給されるように交流電源11を制御するようになっている。ここで、適切な周波数とは、1次側共鳴コイル13と2次側共鳴コイル21との距離(共鳴コイル間距離)における周波数を意味し、共鳴系28における入力インピーダンスの値と周波数との関係をグラフにした場合、入力インピーダンスの値の極大点と極小点の間の周波数を意味する。また、共鳴系28における電力伝送効率が最も良い周波数を共鳴周波数とする。
【0026】
図2に示すように、1次コイル12及び1次側共鳴コイル13は、地上に形成された穴29の中に配設され、コイルの中心軸が地上面に対して直交する方向に延びるように、かつ1次側共鳴コイル13が1次コイル12の上方に位置するように設けられている。なお、穴29の開口は車両30の移動に支障がないように図示しないカバーで覆われている。
【0027】
図2及び図3に示すように、2次側共鳴コイル21及び2次コイル22は、車両30の底部の車幅方向の略中央、かつ車両30の後寄りに、コイルの中心軸が車両30の上下方向に延びるように、かつ2次側共鳴コイル21が2次コイル22の下方に位置するように設けられている。
【0028】
次に前記のように構成された非接触電力伝送装置の作用を説明する。
2次電池24の充電量が予め設定された値まで低下すると、2次電池24の充電を行う必要がある。2次電池24に充電を行う場合には、車両30は給電側設備10の1次側共鳴コイル13が設けられた充電位置に駐車(停止)する必要がある。充電が効率良く行われるためには、1次側共鳴コイル13と2次側共鳴コイル21との軸ズレ量が予め設定された範囲内となるように車両30を駐車させる必要がある。軸ズレ量は、例えば、図3に示すように、1次側共鳴コイル13の中心と直交する直線L1と、2次側共鳴コイル21の中心と直交し、かつ直線L1と平行な直線L2との距離となる。
【0029】
共鳴系28において、1次側共鳴コイル13及び2次側共鳴コイル21の軸方向の距離が一定で、負荷が一定の場合、図4に示すように、共鳴系28の電圧、即ち1次コイル12の両端の電圧と、1次側共鳴コイル13及び2次側共鳴コイル21の軸ズレ量とは所定の関係を有し、1次コイル12の両端の電圧が分かれば軸ズレ量が分かる。このとき、交流電源11は、次のように設定される。すなわち、交流電源11に1次コイル12を接続しない状態(出力開放状態)または特定の固定負荷(例えば50Ω抵抗)を接続した状態で、出力電圧がある値(例えば10Vpp)となるように、交流電源11を設定する。その設定のまま、交流電源11を1次コイル12に接続して、電圧を測定する。交流電源11と1次コイル12を切り離して行う設定を、電圧を測定する都度行う必要はなく、例えば電圧を測定する直前に、1次コイルを接続したまま交流電源11が上記のような状態となるようにしてもよい。また、共鳴系28において、1次側共鳴コイル13及び2次側共鳴コイル21の軸方向の距離が一定の場合、図5に示すように、1次コイル12の電圧と負荷とは所定の関係を有する。この実施形態では、1次側共鳴コイル13及び2次側共鳴コイル21の軸方向の距離は一定のため、車両30が充電のために充電位置に駐車する際の負荷に対応した図4に示すような電圧と軸ズレ量との関係を示すグラフに基づいて、1次コイル12の電圧から1次側共鳴コイル13及び2次側共鳴コイル21の軸ズレ量を求めることができる。なお、図4及び図5は、1次コイル12、1次側共鳴コイル13、2次側共鳴コイル21、2次コイル22の巻径を300mm程度とした場合の一例である。
【0030】
車両30が充電位置へ移動する際、コントローラ14は、車両側から車両30が充電位置へ移動する旨の信号を受信すると、交流電源11を駆動させるとともに電圧センサ15の出力信号を入力する。そして、前記のように交流電源11を設定し、交流電源11から1次コイル12に共鳴周波数で交流電圧が印加されることにより1次コイル12に磁場が発生する。この磁場が1次側共鳴コイル13と2次側共鳴コイル21とによる磁場共鳴により増強され、増強された2次側共鳴コイル21付近の磁場から2次コイル22により電磁誘導を利用して電力が取り出されて充電器23に供給される。
【0031】
コントローラ14は、電圧センサ15により測定された1次コイル12の両端の電圧と、充電コントローラ25から受信した2次電池24の充電量データとから、1次側共鳴コイル13と2次側共鳴コイル21との距離、具体的には1次側共鳴コイル13と2次側共鳴コイル21との軸ズレ量を演算する。また、コントローラ14は、演算結果に基づいて1次側共鳴コイル13と2次側共鳴コイル21とが適切な位置関係にあるか否か、例えば軸ズレ量が予め設定された範囲内にあるか否かを判断し、判断結果のデータを充電コントローラ25に送信する。充電コントローラ25は、そのデータに基づいて報知手段27を制御する。即ち、1次側共鳴コイル13と2次側共鳴コイル21とが適切な位置関係にあればそれを報知する青色発光LEDを点灯させ、適切な位置関係になければそれを報知する赤色発光LEDを点灯させる。車両30の運転者は報知手段27の点灯状態を参考にして、車両30を適切な充電位置に停止させる。
【0032】
車両30が適切な充電位置に駐車した後、充電コントローラ25が充電器23のスイッチング素子の制御を開始し、充電が開始される。交流電源11から1次コイル12に出力された交流電圧により1次コイル12に磁場が発生する。この磁場が1次側共鳴コイル13と2次側共鳴コイル21とによる磁場共鳴により増強され、増強された2次側共鳴コイル21付近の磁場から2次コイル22により電磁誘導を利用して電力が取り出されて充電器23に供給される。充電器23に供給された交流は整流回路で整流された後、昇圧回路で2次電池24に充電するのに適した電圧に昇圧されて2次電池24に充電される。充電コントローラ25は、例えば、充電量センサ26の出力信号と、2次電池24の電圧が所定電圧になった時点からの経過時間により充電完了を判断し、充電が完了すると、コントローラ14に充電完了信号を送信する。コントローラ14は、充電完了信号を受信すると電力伝送を終了する。
【0033】
この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)非接触電力伝送装置は、交流電源11と、交流電源11から交流電圧が印加される1次コイル12と、1次側共鳴コイル13と、2次側共鳴コイル21と、負荷(充電器23及び2次電池24)が接続された2次コイル22とを備えている。また、1次コイル12の両端の電圧を測定する電圧測定手段(電圧センサ15)と、電圧測定手段により測定された電圧から1次側共鳴コイル13と2次側共鳴コイル21との距離(共鳴コイル間の距離)を演算する距離演算手段(コントローラ14)とを備えている。そのため、共鳴コイル間の距離を測定するのに専用の距離センサを設けることなく、共鳴コイル間の距離が電力伝送を効率良く行うのに適しているか否かを判断することができる。したがって、電力伝送を効率良く行うのに適していない状態で電力伝送を行うことを回避することができる。
【0034】
(2)距離演算手段(コントローラ14)は、1次側共鳴コイル13と2次側共鳴コイル21とが同軸上に位置する状態からの軸と垂直方向へのズレ量を演算する。したがって、例えば、交流電源11、1次コイル12及び1次側共鳴コイル13が固定状態で設けられ、2次側共鳴コイル21、2次コイル22及び負荷は、2次側共鳴コイル21の中心軸が1次側共鳴コイル13の中心軸と平行な状態で、中心軸と直交する方向に移動可能な構成の場合に適している。
【0035】
(3)2次側共鳴コイル21、2次コイル22及び負荷を構成する充電器23及び2次電池24は、移動体(車両30)に搭載され、移動体には距離演算手段の演算結果に基づいて1次側共鳴コイル13と2次側共鳴コイル21とが適切な位置関係にあるか否かを報知する報知手段27が設けられている。そのため、移動体が交流電源11から給電される位置に停止する際、停止位置が給電に適切な位置になるように停止することができる。
【0036】
(4)非接触電力伝送装置は、車両30に搭載された2次電池24に対して非接触充電を行うシステムに適用されている。2次側共鳴コイル21及び2次コイル22は車両30に搭載されるとともに2次コイル22は負荷を構成する充電器23を介して2次電池24に接続されており、交流電源11、1次コイル12及び1次側共鳴コイル13は2次電池24に非接触状態で充電を行う給電側設備10に装備されている。したがって、効率良く充電を行うことができる。
【0037】
(5)車両30の底部に2次側共鳴コイル21を設け、給電側設備10の1次コイル12及び1次側共鳴コイル13は地上に形成された穴29の中に設けられているため、1次コイル12及び1次側共鳴コイル13の配置スペースの確保が容易になる。また、車両30が充電位置に前進、後進のどちらからでも進入することができる。
【0038】
(6)2次コイル22から出力される交流電流を整流回路で整流しただけで2次電池24に充電するのではなく、2次電池24で充電するのに適した電圧に昇圧回路で昇圧して充電するため、2次電池24をより効率良く充電することができる。
【0039】
(7)1次側共鳴コイル13及び2次側共鳴コイル21にコンデンサCが接続されている。したがって、1次側共鳴コイル13及び2次側共鳴コイル21のコイルの巻数を増やすことなく共鳴周波数を下げることができる。また、共鳴周波数が同じであれば、1次側共鳴コイル13及び2次側共鳴コイル21を、コンデンサCを接続しない場合に比べて小型化することができる。
【0040】
(第2の実施形態)
次に第2の実施形態を図6及び図7にしたがって説明する。この実施形態では、1次コイル12、1次側共鳴コイル13、2次側共鳴コイル21及び2次コイル22の軸心の延びる方向が異なっている。また、距離演算手段(コントローラ)が、軸ズレ量を演算する代わりに1次側共鳴コイル13と2次側共鳴コイル21との軸方向の距離を演算する点が第1の実施形態と異なっている。第1の実施形態と基本的に同一部分は同一符号を付して詳しい説明を省略する。
【0041】
図6に示すように、1次コイル12及び1次側共鳴コイル13は、充電ステーションの地上に突出するように設けられた給電側設備10の収容ボックス31内に、軸心が地上面に対して水平方向に延びるように設けられている。また、2次側共鳴コイル21及び2次コイル22は、車両30の前側に軸心が車両30の前後方向に延びるように、かつ1次コイル12及び1次側共鳴コイル13の軸心と同じ高さになるように設けられている。
【0042】
コントローラ14のメモリ14bには、2次電池24の充電量が予め設定された値における1次コイル12の両端の電圧と、軸ズレ量との関係の代わりに、1次コイル12の両端の電圧と、1次側共鳴コイル13と2次側共鳴コイル21との軸方向の距離(以下、コイル間距離と称す場合もある。)との関係を示すデータがマップとして記憶されている。この実施形態では、2次電池24が充電すべき状態になった時の充電量と、その値より小さくその値の状態から車両30が充電ステーションまで走行する間に2次電池24の電力が使用された後の複数の充電量とに対して前記データが、例えば図7に示すような、電圧とコイル間距離との関係を示すグラフとしてそれぞれ記憶されている。これらのデータは予め試験により求められる。
【0043】
充電ステーションには、車両30が充電する際に、給電側設備10と対向する位置へ移動するのを案内するガイドラインが設けられており、運転者はガイドラインに沿って車両30を前進で充電位置まで移動させる。車両30が充電位置へ移動する際、コントローラ14は、車両側から車両30が充電位置へ移動する旨の信号を受信すると、交流電源11を駆動させるとともに電圧センサ15の出力信号を入力する。そして、コントローラ14は、電圧センサ15により測定された1次コイル12の両端の電圧と、充電コントローラ25から受信した2次電池24の充電量データとから、1次側共鳴コイル13と2次側共鳴コイル21との軸方向の距離を演算し、演算結果に基づいてコイル間距離が適切な値か否かを判断する。コントローラ14は判断結果のデータを充電コントローラ25に送信し、充電コントローラ25は、そのデータに基づいて報知手段27を制御する。車両30の運転者は報知手段27の点灯状態を参考にして、車両30を適切な充電位置に停止させる。
【0044】
この第2の実施形態によれば、第1の実施形態の(1),(3),(6),(7)と同様な効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(8)距離演算手段(コントローラ14)は、1次側共鳴コイル13と2次側共鳴コイル21との軸方向の距離を演算する。したがって、非接触電力伝送装置は、交流電源11、1次コイル12及び1次側共鳴コイル13が固定状態で設けられ、2次側共鳴コイル21、2次コイル22及び負荷(充電器23及び2次電池24)は、1次側共鳴コイル13と2次側共鳴コイル21とが同軸上に位置する状態で移動可能な構成の場合に適している。
【0045】
(9)車両30の前側に2次側共鳴コイル21及び2次コイル22をその軸心が車両30の前後方向に延びるように設け、給電側設備10の1次コイル12及び1次側共鳴コイル13は地上に突出形成された収容ボックス31内に設けられている。したがって、1次コイル12及び1次側共鳴コイル13を収容する穴29を地上に形成する必要がない。また、車高が異なる車両30の場合、地上面から車体の底部までの距離が異なる場合が多く、車高の異なる車両30において給電側設備10の1次側共鳴コイル13から車体の底部近くに設けられた2次側共鳴コイル21までの軸方向の距離を共通にするのが難しく、給電側設備10を車高の異なる車両30毎に設ける必要がある。しかし、この実施形態の場合は、車高が異なる車両30に適用する場合、2次側共鳴コイル21及び2次コイル22の中心軸の高さを、給電側設備10の1次コイル12及び1次側共鳴コイル13の中心軸の高さに合わせて設定することにより、車高が異なる車両30で同じ給電側設備10を使用することができる。
【0046】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ 第1の実施形態において、2次側共鳴コイル21及び2次コイル22を設ける位置は、車幅方向の略中央でかつ車両30の後側寄りに限らず、例えば、前側寄りに設けたり、車両30の前後方向の中央部に設けたり、車幅方向の中央から外れた位置に設けたりしてもよい。
【0047】
○ 第2の実施形態のように給電側設備10の収容ボックス31が地上から突設される構成において、2次側共鳴コイル21及び2次コイル22の組を車両30の後側に設けてもよい。この場合、車両30は後退で充電位置まで移動する必要がある。
【0048】
○ 2次側共鳴コイル21をコイルの軸心が水平方向に延びるように設ける場合、2次側共鳴コイル21を車両30の前側又は後側においてコイルの軸心が車両30の前後方向に延びるように設ける代わりに、図8に示すように、車両30の側部にコイルの軸心が車幅方向に延びるように設けてもよい。この場合、充電ステーションには、車両30が充電する際に給電側設備10と対向する位置へ移動するのを案内するガイドラインが設けられており、運転者はガイドラインに沿って車両30を前進で充電位置まで移動させる。
【0049】
○ コントローラ14は、電圧測定手段(電圧センサ15)により測定された1次コイル12の両端の電圧から1次側共鳴コイル13と2次側共鳴コイル21との距離を演算すればよい。即ち、第1の実施形態のように1次側共鳴コイル13と2次側共鳴コイル21の軸方向の距離が一定で、2次側共鳴コイル21が移動する場合や、第2の実施形態のように2次側共鳴コイル21が1次側共鳴コイル13と同軸状態で1次側共鳴コイル13に向かって移動する構成に限らない。例えば、2次側共鳴コイル21が1次側共鳴コイル13と同軸上にない状態で1次側共鳴コイル13との軸方向の距離が小さくなるように移動する場合に、電圧測定手段(電圧センサ15)により測定された1次コイル12の両端の電圧から1次側共鳴コイル13と2次側共鳴コイル21との距離を演算してもよい。この場合、マップあるいは計算式として、2次側共鳴コイル21が1次側共鳴コイル13と同軸状態で移動する場合のものを使用する。しかし、許容範囲を狭く設定することで支障はない。
【0050】
○ コントローラ14は、充電コントローラ25から充電完了信号を受信して電力伝送を終了する代わりに、充電時に電圧センサ15の検出信号に基づいて1次コイル12の両端の電圧から負荷の変動を演算するとともに2次電池24の充電状態を推定して、電力伝送の終了時期を決定してもよい。例えば、充電開始後、1次コイル12の両端の電圧が所定電圧になった時点からの経過時間により充電完了時期、即ち電力伝送の終了時期を判断してもよい。
【0051】
○ 移動体は運転者を必要とする車両30に限らず、例えば、無人搬送車や2次電池を備えた自走式のロボットであってもよい。
○ 移動体は2次電池を備えたものに限らず、コンベア等の移送手段により定められた作業位置に移動されるとともに、電力で駆動されるモータを備えた装置であってもよい。この場合、モータが負荷を構成し、移動体には2次側共鳴コイル21及び2次コイル22が設けられる。また、作業位置毎に交流電源11、1次コイル12、1次側共鳴コイル13及びコントローラ14が設けられる。そして、移動体が作業位置に移動された状態で、交流電源11から装置に電力が供給される。この場合、コントローラ14は、負荷(モータ)への給電時に電圧センサ15の検出信号に基づいて負荷の変動を演算するとともに、交流電源11の出力周波数を負荷に対応した適切な周波数に変更するようにしてもよい。
【0052】
○ 報知手段27を車両30側に設ける代わりに給電側設備10に設けてもよい。例えば、車両30の運転者から視認し易い箇所に、報知手段27を設け、コントローラ14からの指令で報知手段27の点灯を制御する。この場合、車両30毎に報知手段27を設けなくても運転者は報知手段27の点灯状態から車両30を適正な充電位置に駐車させることができる。
【0053】
○ 電線を巻回してコイルを形成する場合、コイルは円筒状に限らない。例えば、三角筒状、四角筒状、六角筒状等の多角筒状や楕円筒状等の単純な形状の筒状としたり、対称図形ではなく他の異形断面の筒状としたりしてもよい。
【0054】
○ 1次側共鳴コイル13及び2次側共鳴コイル21は、電線が筒状に巻回されたコイルに限らず、例えば、電線が一平面上で周回し、かつ周回部の長さが順次変化するように巻回された形状としてもよい。この場合、コイルが扁平になり、コイルを配置するスペースとしてコイルの軸方向の長さを短くできる。
【0055】
○ コイルは、電線が密巻されて隣接する巻回部が接触する構成でも、巻回部が接触しないように巻回部の間隔を空けて電線が巻回された構成であってもよい。
○ 1次コイル12、1次側共鳴コイル13、2次側共鳴コイル21及び2次コイル22が全て同じ径に形成されている必要はない。例えば、1次側共鳴コイル13及び2次側共鳴コイル21は同じ径で、1次コイル12及び2次コイル22は異なる径としてもよい。
【0056】
以下の技術的思想(発明)は前記実施形態から把握できる。
(1)請求項4に記載の発明において、前記移動体は車両であり、前記負荷として充電器及び2次電池が前記車両に搭載され、前記2次側共鳴コイル及び前記2次コイルは、コイルの軸心が前記車両の上下方向に延びるように設けられ、前記1次コイル及び前記1次側共鳴コイルは、充電位置に駐車した車両の下方に位置し、かつコイルの軸心が地上面に対して直交する方向に延びるように設けられている。
【0057】
(2)交流電源と、交流電源から交流電圧が印加される1次コイルと、1次側共鳴コイルと、2次側共鳴コイルと、負荷が接続された2次コイルとを備える非接触電力伝送装置であって、前記1次コイルの電圧を測定する電圧測定手段と、前記電圧測定手段により測定された電圧から前記負荷の状態を判断する判断手段とを備えている非接触電力伝送装置。
【符号の説明】
【0058】
11…交流電源、12…1次コイル、13…1次側共鳴コイル、14…距離演算手段としてのコントローラ、15…電圧測定手段としての電圧センサ、21…2次側共鳴コイル、22…2次コイル、23…負荷を構成する充電器、24…同じく2次電池、27…報知手段、30…移動体としての車両。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源と、交流電源から交流電圧が印加される1次コイルと、1次側共鳴コイルと、2次側共鳴コイルと、負荷が接続された2次コイルとを備える非接触電力伝送装置であって、
前記1次コイルの電圧を測定する電圧測定手段と、前記電圧測定手段により測定された電圧から前記1次側共鳴コイルと前記2次側共鳴コイルとの距離を演算する距離演算手段とを備えていることを特徴とする非接触電力伝送装置。
【請求項2】
前記距離演算手段は、前記1次側共鳴コイルと前記2次側共鳴コイルとの軸方向の距離を演算する請求項1に記載の非接触電力伝送装置。
【請求項3】
前記距離演算手段は、前記1次側共鳴コイルと前記2次側共鳴コイルとが同軸上に位置する状態からの軸と垂直方向へのズレ量を演算する請求項1に記載の非接触電力伝送装置。
【請求項4】
前記2次側共鳴コイル、前記2次コイル及び前記負荷は移動体に搭載され、前記移動体には前記距離演算手段の演算結果に基づいて前記1次側共鳴コイルと前記2次側共鳴コイルとが適切な位置関係にあるか否かを報知する報知手段が設けられている請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の非接触電力伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−183814(P2010−183814A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27676(P2009−27676)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】