非水電解液二次電池
【課題】出力特性向上のための電流経路の短縮と、異常状況下でのガス放出経路の確保とを両立させる構造を有する非水電解液二次電池を提供する。
【解決手段】本発明に係る非水電解液二次電池は、電極捲回群が電池容器に収容された非水電解液二次電池であって、前記電池容器は、角丸長方筒状の容器本体の両端が開裂弁を有する容器蓋によって封じられたものであり、前記電極捲回群は、板状の捲芯の周りに帯状の正極と負極とがセパレータを介して捲回されたものであり、前記捲芯の両端には、角丸長方形の集電板がフランジ状に配設され、前記集電板の一方は前記正極と正極タブを介して接合され、前記集電板の他方は前記負極と負極タブを介して接合され、前記集電板のそれぞれには、ガスを通過させる開口部が形成されていることを特徴とする。
【解決手段】本発明に係る非水電解液二次電池は、電極捲回群が電池容器に収容された非水電解液二次電池であって、前記電池容器は、角丸長方筒状の容器本体の両端が開裂弁を有する容器蓋によって封じられたものであり、前記電極捲回群は、板状の捲芯の周りに帯状の正極と負極とがセパレータを介して捲回されたものであり、前記捲芯の両端には、角丸長方形の集電板がフランジ状に配設され、前記集電板の一方は前記正極と正極タブを介して接合され、前記集電板の他方は前記負極と負極タブを介して接合され、前記集電板のそれぞれには、ガスを通過させる開口部が形成されていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液二次電池に関し、特に板状の捲芯の周りに帯状の正極と負極とがセパレータを介して捲回された電極捲回群を有する非水電解液二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、出力特性と安全性の両立が強く求められている。出力特性を向上させるには、内部抵抗を低減するため電気抵抗率の低い部材を使用し電流経路を短くすることが望ましい。例えば特許文献1には、正極板と負極板とをセパレータを介して対向させ、捲芯を軸として捲回して成り、幅方向の一方の端面に正極板の合剤層が塗布されていない芯材が露出し、幅方向の他方の端面に負極板の合剤層が塗布されていない芯材が露出している極板群と、前記極板群の一方の端面に接合された正極集電板と、前記極板群の他方の端面に接合された負極集電板と、前記捲芯に何れか一方の集電板とともに接続部材にて固定された電極端子と、極板群を収納する外装ケースと、前記外装ケースの開口を封口しかつ前記電極端子を絶縁部材を介して貫通させて固定する蓋体と、極板群内部に含浸された電解液とを備えた二次電池が開示されている。特許文献1によると、電極端子と極板群に接合した集電板を接続部材にて極板群の捲芯に固定したので、組立工数を低減できてコスト低下を図ることができるとともに量産性に優れ、また極板群がその捲芯と電極端子を介して蓋体及び外装ケース固定されるので振動や衝撃にも強く、さらに電流通路が短く、内部抵抗を小さくできて高出力の二次電池を得ることができるとされている。
【0003】
一方、過充電、短絡または加熱など、電池が異常状況下に置かれても、安全性確保の観点から電池容器の破裂を防止する必要がある。例えば特許文献2には、捲回式の正極、セパレータ、負極からなる電極群を有する密閉式非水電解液電池において、熱硬化性樹脂よりなる電極押さえ板を配置した非水電解液電池が開示されている。特許文献2によると、電解液の分解ガスの内圧による電極群の変形がおさえられ、電極群により弁孔やガス抜き孔が閉塞されないので、ガスが蓄積されることなく、ガスが安全弁を介して電池外にスムーズに散逸し、過充電時、短絡時または加熱時の電池の安全性を確保できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−190697号公報
【特許文献2】特開平6−163079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような、出力特性向上のための電流経路の短縮として電極タブ-電極端子間を直接接続したような電池構造では、電池の異常発熱によって電解液の分解ガス圧が上昇した場合、電極捲回群と電極端子との距離が短いことから、電極捲回群の変形がただちに開裂弁を閉塞してしまう可能性がある。一方、二次電池に対する大容量化・小型化(すなわち高い体積エネルギー密度化)の要求は、ますます強まっている。
【0006】
しかしながら、特許文献1の二次電池に対して特許文献2の電極押さえ板を組み合わせようとした場合、充放電に直接寄与しない容積が増大することから、体積エネルギー密度を低下させてしまう弱点がある。すなわち、体積エネルギー密度の向上(例えば、出力特性向上のための電流経路の短縮)と、異常状況下での安全性の向上(例えば、ガス放出経路の確保)とを両立する構造は難しい。
【0007】
したがって、本発明の目的は、電気自動車などの電源として好適に用いられる大電流充放電が可能な二次電池において、出力特性向上のための電流経路の短縮と、異常状況下でのガス放出経路の確保とを両立させる構造を有する非水電解液二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するため、電極捲回群が電池容器に収容された非水電解液二次電池であって、前記電池容器は、角丸長方筒状の容器本体の両端が開裂弁を有する容器蓋によって封じられたものであり、前記電極捲回群は、板状の捲芯の周りに帯状の正極と負極とがセパレータを介して捲回されたものであり、前記捲芯の両端には、角丸長方形の集電板がフランジ状に配設され、前記集電板の一方は前記正極と正極タブを介して接合され、前記集電板の他方は前記負極と負極タブを介して接合され、前記集電板のそれぞれには、ガスを通過させる開口部が形成されていることを特徴とする非水電解液二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、出力特性向上のための電流経路の短縮と、異常状況下でのガス放出経路の確保とを両立させる構造を有する非水電解液二次電池を提供することできる。本発明に係る非水電解液二次電池は、電気自動車などの電源に対して望まれる大電流充放電が可能な二次電池として、好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る非水電解液二次電池に適用される電極捲回群の構成例を示す斜視模式図である。
【図2】電極捲回群の正面模式図および側面模式図である。
【図3】本発明に係る非水電解液二次電池の構成例を示す分解斜視模式図である。
【図4】図3を組み立てた非水電解液二次電池の正面断面模式図および側面断面模式図である。
【図5】電極捲回群と集電板との接合方法、集電板と捲芯との接合方法の例を示す斜視模式図である。
【図6】実施例1に係る正極集電板の正面模式図および非水電解液二次電池の正極集電板近傍の断面模式図である。
【図7】実施例2に係る正極集電板の正面模式図および非水電解液二次電池の正極集電板近傍の断面模式図である。
【図8】実施例3に係る正極集電板の正面模式図および非水電解液二次電池の正極集電板近傍の断面模式図である。
【図9】実施例4に係る正極集電板の正面模式図および非水電解液二次電池の正極集電板近傍の断面模式図である。
【図10】実施例4に係る正極集電板の集電板凸部の形成方法を示す斜視模式図である。
【図11】実施例5に係る正極集電板の正面模式図および非水電解液二次電池の正極集電板近傍の断面模式図である。
【図12】実施例4に係る非水電解液二次電池の側面断面模式図である。
【図13】実施例6に係る正極集電板の正面模式図および非水電解液二次電池の正極集電板近傍の断面模式図である。
【図14】実施例7に係る正極集電板の正面模式図および非水電解液二次電池の正極集電板近傍の断面模式図である。
【図15】実施例8に係る正極集電板の正面模式図および非水電解液二次電池の正極集電板近傍の断面模式図である。
【図16】実施例8に係る正極集電板の開口部および集電板凸部の形成方法を示す斜視模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
前述したように、本発明に係る非水電解液二次電池は、電極捲回群が電池容器に収容された非水電解液二次電池であって、前記電池容器は、角丸長方筒状の容器本体の両端が開裂弁を有する容器蓋によって封じられたものであり、前記電極捲回群は、板状の捲芯の周りに帯状の正極と負極とがセパレータを介して捲回されたものであり、前記捲芯の両端には、角丸長方形の集電板がフランジ状に配設され、前記集電板の一方は前記正極と正極タブを介して接合され、前記集電板の他方は前記負極と負極タブを介して接合され、前記集電板のそれぞれには、ガスを通過させる開口部が形成されていることを特徴とする。
【0012】
また、上記の本発明に係る非水電解液二次電池において、以下のような改良や変更を加えることができる。
(1)前記開口部は、前記集電板における角丸長方形の直線領域に形成されている。
(2)前記開口部は、複数の開口から構成されている。
(3)前記開口部は、メッシュ構造を有している。
(4)前記集電板は、前記捲芯と嵌合固定されている。
(5)前記捲芯は、前記集電板と嵌合する面の一部に切り欠き部が形成されている。
(6)前記正極タブと前記負極タブとは、それぞれが接合される前記集電板に対して、該集電板と嵌合する前記捲芯を挟んで互いに反対側に接合されている。
(7)前記正極タブと前記負極タブとは、それぞれが接合される前記集電板に対して、該集電板の角丸長方形の長対称軸上に接合されている。
【0013】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明はここで取り上げた実施例に限定されることはなく、要旨を変更しない範囲で適宜改良や組み合わせを行ってもよい。なお、同義の部材・部位には同じ符号を付して、重複する説明を省略する。
【実施例1】
【0014】
本実施例では、大電流の充放電に適し、かつ異常状況下でも安定したガス放出が可能な本発明に係る非水電解液二次電池について説明する。
【0015】
図1は、本発明に係る非水電解液二次電池に適用される電極捲回群の構成例を示す斜視模式図である。図1に示したように、電極捲回群102は、アルミニウム箔基材の両面に正極合剤を塗布した帯状の正極401と、銅箔基材の両面に負極合剤を塗布した帯状の負極402とを2枚のセパレータ403を介して重ね合わせて、板状の捲芯404の周りに捲回して構成されている。電極捲回群102は、捲芯404の軸方向から見ると、角丸長方形(いわゆるレーストラック形状)を有している。
【0016】
捲芯404は、電気絶縁性と耐熱性とを有していれば特に限定されないが、軽量化の観点から樹脂成型によって作製されることが好ましく、例えば、ポリプロピレンやポリフェニレンスルフィド等の熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂が好ましく用いられる。
【0017】
正極401の幅方向の片側端部は正極合剤が塗布されずアルミニウム箔基材が露出しており、さらに該端部には短冊状でアルミニウム箔からなる正極タブ405が複数形成されている。一方、負極402の幅方向の片側端部も負極合剤が塗布されず銅箔基材が露出しており、該端部にも短冊状で銅箔からなる負極タブ406が複数形成されている。正極タブ405と負極タブ406とは、互いに反対側に形成されている。正極タブ405と負極タブ406のそれぞれは、幅2〜10 mm、長さ15〜50 mmが好適である。
【0018】
図2は、電極捲回群の正面模式図および側面模式図である。図2に示したように、電極捲回群102の一方の端部(図中の左側)からは正極タブ405が突出し、他方の端部(図中の右側)からは負極タブ406が突出している。非水電解液二次電池の組立作業性の観点から、電極捲回群102から突出した正極タブ405および負極タブ406の幅Aは、捲芯404の幅Bよりも少し狭くすることが好ましい(正面模式図を参照)。一方、異常状況下でのガス排出性の観点から、側面模式図に示したように、正極タブ405と負極タブ406とは、捲芯404を挟んで互いに反対側に配置されていることが好ましい。
【0019】
次に、本発明に係る非水電解液二次電池の全体構成および組立工程について図3〜5を用いて説明する。図3は、本発明に係る非水電解液二次電池の構成例を示す分解斜視模式図である。図4は、図3を組み立てた非水電解液二次電池の正面断面模式図および側面断面模式図である。図3,4に示したように、本発明に係る非水電解液二次電池100は、電池容器(角丸長方筒状の容器本体101の両端が容器蓋116,103によって封じられたもの)の内部に電極捲回群102が電解液とともに収容されたものである。電池容器(容器本体101および容器蓋116,103)の材料としては、アルミニウムやステンレス鋼が好ましく用いられる。なお、容器本体101は、その横断面形状が長方形であってもよい。
【0020】
まず、用意した電極捲回群102の各電極と集電板とを接合し、捲芯404の両端に該集電板をフランジ状に配設する。図5は、電極捲回群と集電板との接合方法、集電板と捲芯との接合方法の例を示す斜視模式図である。なお、以下では主に正極側を例として説明するが、負極側においても同様である。
【0021】
正極集電板104は、厚さ0.5〜5 mmの板状部材であり、図5に示したように角丸長方形(長方形からなる直線領域の両端に略半円形からなる曲線領域が結合した形状、いわゆるレーストラック形状)の外形を有する。正極集電板104の外形は、捲芯404の端面の外形よりも大きく、電極捲回群102の端面の外形(角丸長方形)よりも一回り小さい。正極集電板104の一方の主表面の端部には、正極端子109が溶接等で一体的に形成されている。また、正極集電板104の直線領域内には、異常状況下で発生したガスをスムーズに排出するための開口部602が設けられている。負極集電板105は、正極集電板104と同様の外形を有し、負極端子110と開口部602とが設けられている。
【0022】
正極集電板104および正極端子109は、正極基材と同じアルミニウムからなることが好ましく、負極集電板105および負極端子110は、負極基材と同じ銅からなることが好ましい。
【0023】
正極タブ405の群を正極集電板104の内側面に配したタブ接合部601に押し付け、密着した状態で溶接等により接合する。次に、正極集電板104を捲芯404の端部にフランジ状に(すなわち、正極集電板104の面方向と捲芯404の軸方向とが平行になるように)配設する。図5においては、正極集電板104の開口部602の両端外側に配設された集電板凸部603と、捲芯404の捲芯凹部407とを嵌合させることで接続固定する場合を示している。この固定方法は、部品点数を増やさない利点がある。同様にして、負極集電板105に負極タブ406の群を接合し、負極集電板105の集電板凸部603と捲芯404の捲芯凹部407とを嵌合する。
【0024】
ただし、本発明は図中の固定方法に限定されるものではなく、例えば、正極集電板104の側に嵌合用凹部や嵌合孔が形成され、捲芯404の側に嵌合用凸部が形成された組合せでもよいし、正極集電板104と捲芯404とがネジ止め固定されるものでもよい。また、図面の理解を容易にするため、正極タブ405の群を長めに描いているが、正極集電板104と捲芯404とを固定する際の作業性を妨げない範囲で、正極タブ405の長さはできるだけ短い方が好ましい。
【0025】
前述したように、正極タブ405と負極タブ406とは、電極捲回群102の両端から突出しており、捲芯404を挟んで互いに反対側に配置されていることが好ましい。図4の側面断面模式図のように電極タブ405,406が溶接されることによって、捲芯404を挟んで互いに反対側に、障害物のないガス排出経路114を確保することができる。その結果、異常状況下において、電極捲回群102内部でガス発生箇所が万が一偏在した場合であっても、ガス排出が良好に保たれるようになっている。
【0026】
次に、図3,4に示したように、正極集電板104と負極集電板105とのそれぞれに対して、樹脂成型によって作製された絶縁カバー111を被せる。絶縁カバー111には、正極端子109または負極端子110を挿通する電極端子用開口部303と、集電板の開口部602と同じ位置および同じ大きさのガス用開口部302とが形成されている。また、絶縁カバー111は、捲芯404と同様に、ポリプロピレンやポリフェニレンスルフィド等の熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂が好ましく用いられる。
【0027】
電極捲回群102と正極集電板104と負極集電板105と絶縁カバー111とが一体になったものを容器本体101内に挿入する。次に、各電極端子(正極端子109、負極端子110)と各容器蓋116,103との間の電気絶縁および気密を確保するために、樹脂製の第1ガスケット112を各電極端子に配設する。
【0028】
次に、正極側に容器蓋116を被せ、容器蓋116と容器本体101とを電子ビームやレーザ等で溶接する。また、負極側に容器蓋103を被せ、容器蓋103と容器本体101とを電子ビームやレーザ等で溶接する。容器蓋116,103には、正極端子109または負極端子110を挿通する電極端子用開口部304が形成されると共に、開裂弁108が配設されている。正極側の容器蓋116には、電解液注入用の注液口301が更に形成されている。なお、注液口301が形成される容器蓋は、負極側の容器蓋103であってもよい。
【0029】
次に、樹脂製の第2ガスケット115を各電極端子に配設し、ナット113によって各電極端子と電池容器とを固定する。第1ガスケット112および第2ガスケット115も捲芯404と同様に、ポリプロピレンやポリフェニレンスルフィド等の熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂が好ましく用いられる。最後に、低湿度環境下で注液口301から非水電解液を注入し、注液栓107で封止すると非水電解液二次電池の組立が完了する。
【0030】
以下、実施例1に係る正極集電板の構成についてより詳細に説明する。なお、実施例1に係る負極集電板も同じ構造であることから、負極集電板の説明は省略する。図6は、実施例1に係る正極集電板の正面模式図および非水電解液二次電池の正極集電板近傍の断面模式図である。
【0031】
図6に示したように、正極集電板104は角丸長方形の外形を有する。正極集電板104の外形は、捲芯404の端面の外形よりも大きく、電極捲回群102の端面の外形(角丸長方形)よりも一回り小さい。正極集電板104の一方の主表面(外側面)の端部には正極端子109が溶接等により一体的に形成されており、他方の主表面(内側面)には捲芯404の捲芯凹部407と嵌合する集電板凸部603が溶接等により一体的に形成されている。図6中に図示していない正極タブの群は、正極集電板104の内側面の直線領域内に配されたタブ接合部601で溶接等により接合されている。
【0032】
また、本発明は、異常状況下で発生したガスをスムーズに排出するための開口部602が、正極集電板104の直線領域内に設けられていることが特徴である。開口部602は、容器蓋116の開裂弁108のできるだけ近くに配置されることが好ましい。ここで、開口部602の面積は、容器蓋116の開裂弁108の面積以上であることが望ましい。これは、容器蓋116の開裂弁108の面積以上であれば、開口部602のガス通過能がガス排出の律速とならないためである。また、大きな開口部を設けることにより、正極集電板104の軽量化(すなわち、非水電解液二次電池100の軽量化)に寄与する効果もある。
【0033】
以上説明してきたように、本発明に係る非水電解液二次電池100は、正極集電板104と負極集電板105とが電極捲回群102のすぐ近くに配設されていることから、電流経路を短くすることができる。また、開口部602を有する正極集電板104と負極集電板105とが捲芯404に対してフランジ状に配設されていることから、電極捲回群102が変形したとしても開裂弁108が閉鎖されることがなく、開口部602を通じてガスを速やかに排出することができる。さらに、急激なガス発生などによって電極捲回群102の正極401や負極402が飛び出そうとしても、開口部602は電極集電板の直線領域内のみに設けられていることから(すなわち、電極集電板の曲線領域は封じられていることから)、電極401,402の移動は電極集電板の曲線領域によって塞き止められ、電極が電池容器外部へ飛び出すこともない。このように、本発明に係る非水電解液二次電池100は、体積エネルギー密度の向上と、異常状況下での安全性の向上とを両立することができる。なお、本発明に係る非水電解液二次電池100は、正極集電板104と負極集電板105が捲芯404と容器蓋116,103とで固定されているため、振動に対しても高い耐久性を有する。
【実施例2】
【0034】
実施例2に係る非水電解液二次電池について説明する。実施例2は、正負の電極集電板の構成においてのみ実施例1と異なることから、実施例2に係る正極集電板の構成について以下説明する。なお、実施例2に係る負極集電板も同じ構造であることから、負極集電板の説明は省略する。図7は、実施例2に係る正極集電板の正面模式図および非水電解液二次電池の正極集電板近傍の断面模式図である。
【0035】
正極集電板124は、厚さ0.5〜5 mmの板状部材であり、図7に示したように角丸長方形の外形を有する。正極集電板124の外形は、捲芯404の端面の外形よりも大きく、電極捲回群102の端面の外形(角丸長方形)よりも一回り小さい。正極集電板124の一方の主表面(外側面)の端部には正極端子109が溶接等により一体的に形成されており、他方の主表面(内側面)には捲芯404の捲芯凹部407と嵌合する集電板凸部603が溶接等により一体的に形成されている。図7中に図示していない正極タブの群は、正極集電板124の内側面の直線領域内に配されたタブ接合部601で溶接等により接合されている。
【0036】
実施例2に係る正極集電板124は、前述した実施例1の開口部602に代えて、複数の開口からなる開口部701が設けられている。開口部701の開口間の間隔は、1 mm以上5 mm以下が望ましい。図7では長方形の開口が3箇所形成されているが、開口形状や数に特段の限定はない。開口部701は、容器蓋116の開裂弁108のできるだけ近くに配置されることが好ましい。また、開口部701の面積は、容器蓋116の開裂弁108の面積以上であることが望ましい。
【0037】
実施例2は、実施例1と同様の効果に加えて、集電板の剛性が向上することから異常状況下での電極捲回群102の外部飛び出しをより確実に防止することが可能となる。さらに、電池全体としての耐衝撃性が向上する。
【実施例3】
【0038】
実施例3に係る非水電解液二次電池について説明する。実施例3は、正負の電極集電板の構成においてのみ実施例1と異なることから、実施例3に係る正極集電板の構成について以下説明する。なお、実施例3に係る負極集電板も同じ構造であることから、負極集電板の説明は省略する。図8は、実施例3に係る正極集電板の正面模式図および非水電解液二次電池の正極集電板近傍の断面模式図である。
【0039】
正極集電板134は、厚さ0.5〜5 mmの板状部材であり、図8に示したように角丸長方形の外形を有する。正極集電板134の外形は、捲芯404の端面の外形よりも大きく、電極捲回群102の端面の外形(角丸長方形)よりも一回り小さい。正極集電板134の一方の主表面(外側面)の端部には正極端子109が溶接等により一体的に形成されており、他方の主表面(内側面)には捲芯404の捲芯凹部407と嵌合する集電板凸部603が溶接等により一体的に形成されている。図8中に図示していない正極タブの群は、正極集電板134の内側面の直線領域内に配されたタブ接合部601で溶接等により接合されている。
【0040】
実施例3に係る正極集電板134は、前述した実施例1の開口部602に代えて、メッシュ構造を有する開口部801が設けられている。メッシュとしては、金属メッシュ(例えば、アルミニウム製、銅製、ステンレス鋼製)や耐熱性樹脂メッシュ(例えば、融点が170℃以上の樹脂製)を用いることができ、メッシュ厚さは0.2〜1 mmが好適であり、メッシュの目の中心間距離は0.5〜3.0 mmが好適である。開口部801は、容器蓋116の開裂弁108のできるだけ近くに配置されることが好ましい。また、開口部801の面積は、容器蓋116の開裂弁108の面積以上であることが望ましい。
【0041】
実施例3は、実施例1と同様の効果に加えて、開口部801がメッシュ構造を有することから異常状況下で電極捲回群102から欠け落ちた電極合剤層などの外部への飛び出しを確実に防止することが可能となる。
【実施例4】
【0042】
実施例4に係る非水電解液二次電池について説明する。実施例4は、正負の電極集電板の構成と捲芯の構成においてのみ実施例1と異なることから、それらの構成について以下説明する。なお、負極集電板側も同じ構造であることから、負極集電板側の説明は省略する。図9は、実施例4に係る正極集電板の正面模式図および非水電解液二次電池の正極集電板近傍の断面模式図である。図10は、実施例4に係る正極集電板の集電板凸部の形成方法を示す斜視模式図である。
【0043】
正極集電板144は、厚さ0.5〜5 mmの板状部材であり、図9に示したように角丸長方形の外形を有する。正極集電板144の外形は、捲芯の端面の外形よりも大きく、電極捲回群102の端面の外形(角丸長方形)よりも一回り小さい。正極集電板144の一方の主表面(外側面)の端部には正極端子109が溶接等により一体的に形成されている。また、図10に示したように、正極集電板144の一部を切欠いて他方の主表面側(内側面側)に折り曲げることで、捲芯404の捲芯凹部407と嵌合する集電板凸部902が形成されている。
【0044】
一方、捲芯においては、捲芯端部と電極集電板との間に空隙を配するための切欠き部1003が捲芯凹部407同士の間の領域に形成された部分切欠き捲芯1004を用いている。図10中に図示していない正極タブの群は、正極集電板144の内側面の直線領域内に配されたタブ接合部601で溶接等により接合されている。
【0045】
実施例4に係る正極集電板144は、前述した実施例1の開口部602に代えて、複数の開口からなる開口部901が設けられているとともに、折り曲げ加工によって集電板凸部603が形成されている。開口部901の開口間の間隔は、1 mm以上5 mm以下が望ましい。図9では長方形の開口が5箇所、集電板凸部603を形成したことによる開口が2箇所形成されているが、開口形状や数に特段の限定はない。開口部901は、容器蓋116の開裂弁108のできるだけ近くに配置されることが好ましい。また、開口部901の面積は、容器蓋116の開裂弁108の面積以上であることが望ましい。
【0046】
実施例4は、実施例2と同様の効果に加えて、集電板凸部603の形成がより簡便になることから低コスト化に寄与する効果がある。また、部分切欠き捲芯1004を用いることで、正極集電板144において捲芯の軸上(捲芯の延長線上、集電板の長対称軸上)にも開口を設けることができることからガス排出能が向上する効果がある。
【実施例5】
【0047】
実施例5に係る非水電解液二次電池について説明する。実施例5は、正負の電極集電板の構成と電極タブの接続構造においてのみ実施例4と異なることから、それらの構成について以下説明する。なお、負極集電板側も同じ構造であることから、負極集電板側の説明は省略する。図11は、実施例5に係る正極集電板の正面模式図および非水電解液二次電池の正極集電板近傍の断面模式図である。図12は、実施例4に係る非水電解液二次電池の側面断面模式図である。
【0048】
正極集電板154は、厚さ0.5〜5 mmの板状部材であり、図11に示したように角丸長方形の外形を有する。正極集電板154の外形は、部分切欠き捲芯1004の端面の外形よりも大きく、電極捲回群102の端面の外形(角丸長方形)よりも一回り小さい。正極集電板154の一方の主表面(外側面)の端部には正極端子109が溶接等により一体的に形成されており、他方の主表面(内側面)には部分切欠き捲芯1004の捲芯凹部407と嵌合する集電板凸部603が溶接等により一体的に形成されている。
【0049】
また、部分切欠き捲芯1004を用いることで、捲芯端部と電極集電板との間に空隙(切欠き部1003)が形成されており、該空隙を利用するようにして、正極タブ405の群は正極集電板154の集電板凸部603同士の間(集電板の長対称軸上)に配されたタブ接合部1002で溶接等により接合されている。なお、実施例5における正極タブ405の群の幅Aは、切欠き部1003の幅に制約されることから実施例1における正極タブ405の群の幅Aよりも狭くなる。ただし、図12に示したように、部分切欠き捲芯1004を挟んだ両側から正極タブ405を引き出すことにより、実施例1の場合と同等の電流経路長とすることができる。
【0050】
実施例5に係る正極集電板154は、前述した実施例1の開口部602に代えて、タブ接合部1002を挟んだ両側に開口を有する開口部1001が設けられている。開口部1001は、容器蓋116の開裂弁108のできるだけ近くに配置されることが好ましい。また、開口部1001の面積は、容器蓋116の開裂弁108の面積以上であることが望ましい。
【0051】
実施例5は、実施例1と同様の効果に加えて、開口部1001がタブ接合部1002を挟んだ両側に開口を有することから、捲芯を挟んだ両側にガス排出経路214を確保することができる。その結果、異常状況下において、電極捲回群102内部でガス発生箇所が万が一偏在した場合であっても、ガス排出がより良好に保たれるようになっている。
【実施例6】
【0052】
実施例6に係る非水電解液二次電池について説明する。実施例6は、正負の電極集電板の構成においてのみ実施例5と異なることから、実施例6に係る正極集電板の構成について以下説明する。なお、負極集電板側も同じ構造であることから、負極集電板側の説明は省略する。図13は、実施例6に係る正極集電板の正面模式図および非水電解液二次電池の正極集電板近傍の断面模式図である。
【0053】
正極集電板164は、厚さ0.5〜5 mmの板状部材であり、図13に示したように角丸長方形の外形を有する。正極集電板164の外形は、部分切欠き捲芯1004の端面の外形よりも大きく、電極捲回群102の端面の外形(角丸長方形)よりも一回り小さい。正極集電板164の一方の主表面(外側面)の端部には正極端子109が溶接等により一体的に形成されており、他方の主表面(内側面)には部分切欠き捲芯1004の捲芯凹部407と嵌合する集電板凸部603が溶接等により一体的に形成されている。また、部分切欠き捲芯1004を用いることで、捲芯端部と電極集電板との間に空隙(切欠き部1003)が形成されており、該空隙を利用するようにして、正極タブ405の群は正極集電板164の集電板凸部603同士の間に配されたタブ接合部1002で溶接等により接合されている。
【0054】
実施例6に係る正極集電板164は、前述した実施例5の開口部1001に代えて、各列が複数の開口からなる開口部1101が設けられている。列毎の開口部1101の開口間の間隔は、1 mm以上5 mm以下が望ましい。図13では長方形の開口が列毎に3箇所形成されているが、開口形状や数に特段の限定はない。開口部1101は、容器蓋116の開裂弁108のできるだけ近くに配置されることが好ましい。また、開口部1101の面積は、容器蓋116の開裂弁108の面積以上であることが望ましい。実施例6は、実施例5と実施例2とを合わせた効果を有する。
【実施例7】
【0055】
実施例7に係る非水電解液二次電池について説明する。実施例7は、正負の電極集電板の構成においてのみ実施例5と異なることから、実施例7に係る正極集電板の構成について以下説明する。なお、負極集電板側も同じ構造であることから、負極集電板側の説明は省略する。図14は、実施例7に係る正極集電板の正面模式図および非水電解液二次電池の正極集電板近傍の断面模式図である。
【0056】
正極集電板174は、厚さ0.5〜5 mmの板状部材であり、図14に示したように角丸長方形の外形を有する。正極集電板174の外形は、部分切欠き捲芯1004の端面の外形よりも大きく、電極捲回群102の端面の外形(角丸長方形)よりも一回り小さい。正極集電板174の一方の主表面(外側面)の端部には正極端子109が溶接等により一体的に形成されており、他方の主表面(内側面)には部分切欠き捲芯1004の捲芯凹部407と嵌合する集電板凸部603が溶接等により一体的に形成されている。また、部分切欠き捲芯1004を用いることで、捲芯端部と電極集電板との間に空隙(切欠き部1003)が形成されており、該空隙を利用するようにして、正極タブ405の群は正極集電板174の集電板凸部603同士の間に配されたタブ接合部1002で溶接等により接合されている。
【0057】
実施例7に係る正極集電板174は、前述した実施例5の開口部1001に代えて、メッシュ構造を有する開口部1201が設けられている。メッシュとしては、金属メッシュ(例えば、アルミニウム製、銅製、ステンレス鋼製)や耐熱性樹脂メッシュ(例えば、融点が170℃以上の樹脂製)を用いることができ、メッシュ厚さは0.2〜1 mmが好適であり、メッシュの目の中心間距離は0.5〜3.0 mmが好適である。開口部1201は、容器蓋116の開裂弁108のできるだけ近くに配置されることが好ましい。また、開口部1201の面積は、容器蓋116の開裂弁108の面積以上であることが望ましい。実施例7は、実施例5と実施例3とを合わせた効果を有する。
【実施例8】
【0058】
実施例8に係る非水電解液二次電池について説明する。実施例8は、正負の電極集電板の構成においてのみ実施例2と異なることから、実施例8に係る正極集電板の構成について以下説明する。なお、実施例8に係る負極集電板も同じ構造であることから、負極集電板の説明は省略する。図15は、実施例8に係る正極集電板の正面模式図および非水電解液二次電池の正極集電板近傍の断面模式図である。図16は、実施例8に係る正極集電板の開口部および集電板凸部の形成方法を示す斜視模式図である。
【0059】
正極集電板184は、厚さ0.5〜5 mmの板状部材であり、図15に示したように角丸長方形の外形を有する。正極集電板184の外形は、捲芯404の端面の外形よりも大きく、電極捲回群102の端面の外形(角丸長方形)よりも一回り小さい。正極集電板184の一方の主表面(外側面)の端部には正極端子109が溶接等により一体的に形成されている。また、図16に示したように、正極集電板184の一部を切欠いて他方の主表面側(内側面側)に折り曲げることで、捲芯404の捲芯凹部407に対して嵌合する集電板凸部1302と開口部1301とが形成されている。
【0060】
実施例8に係る正極集電板184は、前述した実施例2の開口部701に代えて、複数の開口からなる開口部1301と集電板凸部1302とが折り曲げ加工によって同時に形成されている。開口部1301の開口間の間隔は、1 mm以上5 mm以下が望ましい。図15では長方形の開口と集電板凸部1302とが2箇所形成されているが、数に特段の限定はない。開口部1301は、容器蓋116の開裂弁108のできるだけ近くに配置されることが好ましい。また、開口部1301の面積は、容器蓋116の開裂弁108の面積以上であることが望ましい。実施例8は、実施例2と同様の効果に加えて、開口部1301と集電板凸部1302の形成がより簡便になることから低コスト化に寄与する効果がある。
【符号の説明】
【0061】
100…非水電解液二次電池、101…容器本体、102…電極捲回群、103…容器蓋、
104…正極集電板、105…負極集電板、107…注液栓、108…開裂弁、
109…正極端子、110…負極端子、111…絶縁カバー、112…第1ガスケット、
113…ナット、114…ガス排出経路、115…第2ガスケット、116…容器蓋、
124,134,144,154,164,174,184…正極集電板、214…ガス排出経路、
301…注液口、302…ガス用開口部、303,304…電極端子用開口部、
401…正極、402…負極、403…セパレータ、404…捲芯、
405…正極タブ、406…負極タブ、407…捲芯凹部、
601…タブ接合部、602…開口部、603…集電板凸部、
701,801,901,1001,1101,1201,1301…開口部、
902,1302…集電板凸部、1003…切欠き部、1004…部分切欠き捲芯。
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液二次電池に関し、特に板状の捲芯の周りに帯状の正極と負極とがセパレータを介して捲回された電極捲回群を有する非水電解液二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、出力特性と安全性の両立が強く求められている。出力特性を向上させるには、内部抵抗を低減するため電気抵抗率の低い部材を使用し電流経路を短くすることが望ましい。例えば特許文献1には、正極板と負極板とをセパレータを介して対向させ、捲芯を軸として捲回して成り、幅方向の一方の端面に正極板の合剤層が塗布されていない芯材が露出し、幅方向の他方の端面に負極板の合剤層が塗布されていない芯材が露出している極板群と、前記極板群の一方の端面に接合された正極集電板と、前記極板群の他方の端面に接合された負極集電板と、前記捲芯に何れか一方の集電板とともに接続部材にて固定された電極端子と、極板群を収納する外装ケースと、前記外装ケースの開口を封口しかつ前記電極端子を絶縁部材を介して貫通させて固定する蓋体と、極板群内部に含浸された電解液とを備えた二次電池が開示されている。特許文献1によると、電極端子と極板群に接合した集電板を接続部材にて極板群の捲芯に固定したので、組立工数を低減できてコスト低下を図ることができるとともに量産性に優れ、また極板群がその捲芯と電極端子を介して蓋体及び外装ケース固定されるので振動や衝撃にも強く、さらに電流通路が短く、内部抵抗を小さくできて高出力の二次電池を得ることができるとされている。
【0003】
一方、過充電、短絡または加熱など、電池が異常状況下に置かれても、安全性確保の観点から電池容器の破裂を防止する必要がある。例えば特許文献2には、捲回式の正極、セパレータ、負極からなる電極群を有する密閉式非水電解液電池において、熱硬化性樹脂よりなる電極押さえ板を配置した非水電解液電池が開示されている。特許文献2によると、電解液の分解ガスの内圧による電極群の変形がおさえられ、電極群により弁孔やガス抜き孔が閉塞されないので、ガスが蓄積されることなく、ガスが安全弁を介して電池外にスムーズに散逸し、過充電時、短絡時または加熱時の電池の安全性を確保できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−190697号公報
【特許文献2】特開平6−163079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような、出力特性向上のための電流経路の短縮として電極タブ-電極端子間を直接接続したような電池構造では、電池の異常発熱によって電解液の分解ガス圧が上昇した場合、電極捲回群と電極端子との距離が短いことから、電極捲回群の変形がただちに開裂弁を閉塞してしまう可能性がある。一方、二次電池に対する大容量化・小型化(すなわち高い体積エネルギー密度化)の要求は、ますます強まっている。
【0006】
しかしながら、特許文献1の二次電池に対して特許文献2の電極押さえ板を組み合わせようとした場合、充放電に直接寄与しない容積が増大することから、体積エネルギー密度を低下させてしまう弱点がある。すなわち、体積エネルギー密度の向上(例えば、出力特性向上のための電流経路の短縮)と、異常状況下での安全性の向上(例えば、ガス放出経路の確保)とを両立する構造は難しい。
【0007】
したがって、本発明の目的は、電気自動車などの電源として好適に用いられる大電流充放電が可能な二次電池において、出力特性向上のための電流経路の短縮と、異常状況下でのガス放出経路の確保とを両立させる構造を有する非水電解液二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するため、電極捲回群が電池容器に収容された非水電解液二次電池であって、前記電池容器は、角丸長方筒状の容器本体の両端が開裂弁を有する容器蓋によって封じられたものであり、前記電極捲回群は、板状の捲芯の周りに帯状の正極と負極とがセパレータを介して捲回されたものであり、前記捲芯の両端には、角丸長方形の集電板がフランジ状に配設され、前記集電板の一方は前記正極と正極タブを介して接合され、前記集電板の他方は前記負極と負極タブを介して接合され、前記集電板のそれぞれには、ガスを通過させる開口部が形成されていることを特徴とする非水電解液二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、出力特性向上のための電流経路の短縮と、異常状況下でのガス放出経路の確保とを両立させる構造を有する非水電解液二次電池を提供することできる。本発明に係る非水電解液二次電池は、電気自動車などの電源に対して望まれる大電流充放電が可能な二次電池として、好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る非水電解液二次電池に適用される電極捲回群の構成例を示す斜視模式図である。
【図2】電極捲回群の正面模式図および側面模式図である。
【図3】本発明に係る非水電解液二次電池の構成例を示す分解斜視模式図である。
【図4】図3を組み立てた非水電解液二次電池の正面断面模式図および側面断面模式図である。
【図5】電極捲回群と集電板との接合方法、集電板と捲芯との接合方法の例を示す斜視模式図である。
【図6】実施例1に係る正極集電板の正面模式図および非水電解液二次電池の正極集電板近傍の断面模式図である。
【図7】実施例2に係る正極集電板の正面模式図および非水電解液二次電池の正極集電板近傍の断面模式図である。
【図8】実施例3に係る正極集電板の正面模式図および非水電解液二次電池の正極集電板近傍の断面模式図である。
【図9】実施例4に係る正極集電板の正面模式図および非水電解液二次電池の正極集電板近傍の断面模式図である。
【図10】実施例4に係る正極集電板の集電板凸部の形成方法を示す斜視模式図である。
【図11】実施例5に係る正極集電板の正面模式図および非水電解液二次電池の正極集電板近傍の断面模式図である。
【図12】実施例4に係る非水電解液二次電池の側面断面模式図である。
【図13】実施例6に係る正極集電板の正面模式図および非水電解液二次電池の正極集電板近傍の断面模式図である。
【図14】実施例7に係る正極集電板の正面模式図および非水電解液二次電池の正極集電板近傍の断面模式図である。
【図15】実施例8に係る正極集電板の正面模式図および非水電解液二次電池の正極集電板近傍の断面模式図である。
【図16】実施例8に係る正極集電板の開口部および集電板凸部の形成方法を示す斜視模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
前述したように、本発明に係る非水電解液二次電池は、電極捲回群が電池容器に収容された非水電解液二次電池であって、前記電池容器は、角丸長方筒状の容器本体の両端が開裂弁を有する容器蓋によって封じられたものであり、前記電極捲回群は、板状の捲芯の周りに帯状の正極と負極とがセパレータを介して捲回されたものであり、前記捲芯の両端には、角丸長方形の集電板がフランジ状に配設され、前記集電板の一方は前記正極と正極タブを介して接合され、前記集電板の他方は前記負極と負極タブを介して接合され、前記集電板のそれぞれには、ガスを通過させる開口部が形成されていることを特徴とする。
【0012】
また、上記の本発明に係る非水電解液二次電池において、以下のような改良や変更を加えることができる。
(1)前記開口部は、前記集電板における角丸長方形の直線領域に形成されている。
(2)前記開口部は、複数の開口から構成されている。
(3)前記開口部は、メッシュ構造を有している。
(4)前記集電板は、前記捲芯と嵌合固定されている。
(5)前記捲芯は、前記集電板と嵌合する面の一部に切り欠き部が形成されている。
(6)前記正極タブと前記負極タブとは、それぞれが接合される前記集電板に対して、該集電板と嵌合する前記捲芯を挟んで互いに反対側に接合されている。
(7)前記正極タブと前記負極タブとは、それぞれが接合される前記集電板に対して、該集電板の角丸長方形の長対称軸上に接合されている。
【0013】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明はここで取り上げた実施例に限定されることはなく、要旨を変更しない範囲で適宜改良や組み合わせを行ってもよい。なお、同義の部材・部位には同じ符号を付して、重複する説明を省略する。
【実施例1】
【0014】
本実施例では、大電流の充放電に適し、かつ異常状況下でも安定したガス放出が可能な本発明に係る非水電解液二次電池について説明する。
【0015】
図1は、本発明に係る非水電解液二次電池に適用される電極捲回群の構成例を示す斜視模式図である。図1に示したように、電極捲回群102は、アルミニウム箔基材の両面に正極合剤を塗布した帯状の正極401と、銅箔基材の両面に負極合剤を塗布した帯状の負極402とを2枚のセパレータ403を介して重ね合わせて、板状の捲芯404の周りに捲回して構成されている。電極捲回群102は、捲芯404の軸方向から見ると、角丸長方形(いわゆるレーストラック形状)を有している。
【0016】
捲芯404は、電気絶縁性と耐熱性とを有していれば特に限定されないが、軽量化の観点から樹脂成型によって作製されることが好ましく、例えば、ポリプロピレンやポリフェニレンスルフィド等の熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂が好ましく用いられる。
【0017】
正極401の幅方向の片側端部は正極合剤が塗布されずアルミニウム箔基材が露出しており、さらに該端部には短冊状でアルミニウム箔からなる正極タブ405が複数形成されている。一方、負極402の幅方向の片側端部も負極合剤が塗布されず銅箔基材が露出しており、該端部にも短冊状で銅箔からなる負極タブ406が複数形成されている。正極タブ405と負極タブ406とは、互いに反対側に形成されている。正極タブ405と負極タブ406のそれぞれは、幅2〜10 mm、長さ15〜50 mmが好適である。
【0018】
図2は、電極捲回群の正面模式図および側面模式図である。図2に示したように、電極捲回群102の一方の端部(図中の左側)からは正極タブ405が突出し、他方の端部(図中の右側)からは負極タブ406が突出している。非水電解液二次電池の組立作業性の観点から、電極捲回群102から突出した正極タブ405および負極タブ406の幅Aは、捲芯404の幅Bよりも少し狭くすることが好ましい(正面模式図を参照)。一方、異常状況下でのガス排出性の観点から、側面模式図に示したように、正極タブ405と負極タブ406とは、捲芯404を挟んで互いに反対側に配置されていることが好ましい。
【0019】
次に、本発明に係る非水電解液二次電池の全体構成および組立工程について図3〜5を用いて説明する。図3は、本発明に係る非水電解液二次電池の構成例を示す分解斜視模式図である。図4は、図3を組み立てた非水電解液二次電池の正面断面模式図および側面断面模式図である。図3,4に示したように、本発明に係る非水電解液二次電池100は、電池容器(角丸長方筒状の容器本体101の両端が容器蓋116,103によって封じられたもの)の内部に電極捲回群102が電解液とともに収容されたものである。電池容器(容器本体101および容器蓋116,103)の材料としては、アルミニウムやステンレス鋼が好ましく用いられる。なお、容器本体101は、その横断面形状が長方形であってもよい。
【0020】
まず、用意した電極捲回群102の各電極と集電板とを接合し、捲芯404の両端に該集電板をフランジ状に配設する。図5は、電極捲回群と集電板との接合方法、集電板と捲芯との接合方法の例を示す斜視模式図である。なお、以下では主に正極側を例として説明するが、負極側においても同様である。
【0021】
正極集電板104は、厚さ0.5〜5 mmの板状部材であり、図5に示したように角丸長方形(長方形からなる直線領域の両端に略半円形からなる曲線領域が結合した形状、いわゆるレーストラック形状)の外形を有する。正極集電板104の外形は、捲芯404の端面の外形よりも大きく、電極捲回群102の端面の外形(角丸長方形)よりも一回り小さい。正極集電板104の一方の主表面の端部には、正極端子109が溶接等で一体的に形成されている。また、正極集電板104の直線領域内には、異常状況下で発生したガスをスムーズに排出するための開口部602が設けられている。負極集電板105は、正極集電板104と同様の外形を有し、負極端子110と開口部602とが設けられている。
【0022】
正極集電板104および正極端子109は、正極基材と同じアルミニウムからなることが好ましく、負極集電板105および負極端子110は、負極基材と同じ銅からなることが好ましい。
【0023】
正極タブ405の群を正極集電板104の内側面に配したタブ接合部601に押し付け、密着した状態で溶接等により接合する。次に、正極集電板104を捲芯404の端部にフランジ状に(すなわち、正極集電板104の面方向と捲芯404の軸方向とが平行になるように)配設する。図5においては、正極集電板104の開口部602の両端外側に配設された集電板凸部603と、捲芯404の捲芯凹部407とを嵌合させることで接続固定する場合を示している。この固定方法は、部品点数を増やさない利点がある。同様にして、負極集電板105に負極タブ406の群を接合し、負極集電板105の集電板凸部603と捲芯404の捲芯凹部407とを嵌合する。
【0024】
ただし、本発明は図中の固定方法に限定されるものではなく、例えば、正極集電板104の側に嵌合用凹部や嵌合孔が形成され、捲芯404の側に嵌合用凸部が形成された組合せでもよいし、正極集電板104と捲芯404とがネジ止め固定されるものでもよい。また、図面の理解を容易にするため、正極タブ405の群を長めに描いているが、正極集電板104と捲芯404とを固定する際の作業性を妨げない範囲で、正極タブ405の長さはできるだけ短い方が好ましい。
【0025】
前述したように、正極タブ405と負極タブ406とは、電極捲回群102の両端から突出しており、捲芯404を挟んで互いに反対側に配置されていることが好ましい。図4の側面断面模式図のように電極タブ405,406が溶接されることによって、捲芯404を挟んで互いに反対側に、障害物のないガス排出経路114を確保することができる。その結果、異常状況下において、電極捲回群102内部でガス発生箇所が万が一偏在した場合であっても、ガス排出が良好に保たれるようになっている。
【0026】
次に、図3,4に示したように、正極集電板104と負極集電板105とのそれぞれに対して、樹脂成型によって作製された絶縁カバー111を被せる。絶縁カバー111には、正極端子109または負極端子110を挿通する電極端子用開口部303と、集電板の開口部602と同じ位置および同じ大きさのガス用開口部302とが形成されている。また、絶縁カバー111は、捲芯404と同様に、ポリプロピレンやポリフェニレンスルフィド等の熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂が好ましく用いられる。
【0027】
電極捲回群102と正極集電板104と負極集電板105と絶縁カバー111とが一体になったものを容器本体101内に挿入する。次に、各電極端子(正極端子109、負極端子110)と各容器蓋116,103との間の電気絶縁および気密を確保するために、樹脂製の第1ガスケット112を各電極端子に配設する。
【0028】
次に、正極側に容器蓋116を被せ、容器蓋116と容器本体101とを電子ビームやレーザ等で溶接する。また、負極側に容器蓋103を被せ、容器蓋103と容器本体101とを電子ビームやレーザ等で溶接する。容器蓋116,103には、正極端子109または負極端子110を挿通する電極端子用開口部304が形成されると共に、開裂弁108が配設されている。正極側の容器蓋116には、電解液注入用の注液口301が更に形成されている。なお、注液口301が形成される容器蓋は、負極側の容器蓋103であってもよい。
【0029】
次に、樹脂製の第2ガスケット115を各電極端子に配設し、ナット113によって各電極端子と電池容器とを固定する。第1ガスケット112および第2ガスケット115も捲芯404と同様に、ポリプロピレンやポリフェニレンスルフィド等の熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂が好ましく用いられる。最後に、低湿度環境下で注液口301から非水電解液を注入し、注液栓107で封止すると非水電解液二次電池の組立が完了する。
【0030】
以下、実施例1に係る正極集電板の構成についてより詳細に説明する。なお、実施例1に係る負極集電板も同じ構造であることから、負極集電板の説明は省略する。図6は、実施例1に係る正極集電板の正面模式図および非水電解液二次電池の正極集電板近傍の断面模式図である。
【0031】
図6に示したように、正極集電板104は角丸長方形の外形を有する。正極集電板104の外形は、捲芯404の端面の外形よりも大きく、電極捲回群102の端面の外形(角丸長方形)よりも一回り小さい。正極集電板104の一方の主表面(外側面)の端部には正極端子109が溶接等により一体的に形成されており、他方の主表面(内側面)には捲芯404の捲芯凹部407と嵌合する集電板凸部603が溶接等により一体的に形成されている。図6中に図示していない正極タブの群は、正極集電板104の内側面の直線領域内に配されたタブ接合部601で溶接等により接合されている。
【0032】
また、本発明は、異常状況下で発生したガスをスムーズに排出するための開口部602が、正極集電板104の直線領域内に設けられていることが特徴である。開口部602は、容器蓋116の開裂弁108のできるだけ近くに配置されることが好ましい。ここで、開口部602の面積は、容器蓋116の開裂弁108の面積以上であることが望ましい。これは、容器蓋116の開裂弁108の面積以上であれば、開口部602のガス通過能がガス排出の律速とならないためである。また、大きな開口部を設けることにより、正極集電板104の軽量化(すなわち、非水電解液二次電池100の軽量化)に寄与する効果もある。
【0033】
以上説明してきたように、本発明に係る非水電解液二次電池100は、正極集電板104と負極集電板105とが電極捲回群102のすぐ近くに配設されていることから、電流経路を短くすることができる。また、開口部602を有する正極集電板104と負極集電板105とが捲芯404に対してフランジ状に配設されていることから、電極捲回群102が変形したとしても開裂弁108が閉鎖されることがなく、開口部602を通じてガスを速やかに排出することができる。さらに、急激なガス発生などによって電極捲回群102の正極401や負極402が飛び出そうとしても、開口部602は電極集電板の直線領域内のみに設けられていることから(すなわち、電極集電板の曲線領域は封じられていることから)、電極401,402の移動は電極集電板の曲線領域によって塞き止められ、電極が電池容器外部へ飛び出すこともない。このように、本発明に係る非水電解液二次電池100は、体積エネルギー密度の向上と、異常状況下での安全性の向上とを両立することができる。なお、本発明に係る非水電解液二次電池100は、正極集電板104と負極集電板105が捲芯404と容器蓋116,103とで固定されているため、振動に対しても高い耐久性を有する。
【実施例2】
【0034】
実施例2に係る非水電解液二次電池について説明する。実施例2は、正負の電極集電板の構成においてのみ実施例1と異なることから、実施例2に係る正極集電板の構成について以下説明する。なお、実施例2に係る負極集電板も同じ構造であることから、負極集電板の説明は省略する。図7は、実施例2に係る正極集電板の正面模式図および非水電解液二次電池の正極集電板近傍の断面模式図である。
【0035】
正極集電板124は、厚さ0.5〜5 mmの板状部材であり、図7に示したように角丸長方形の外形を有する。正極集電板124の外形は、捲芯404の端面の外形よりも大きく、電極捲回群102の端面の外形(角丸長方形)よりも一回り小さい。正極集電板124の一方の主表面(外側面)の端部には正極端子109が溶接等により一体的に形成されており、他方の主表面(内側面)には捲芯404の捲芯凹部407と嵌合する集電板凸部603が溶接等により一体的に形成されている。図7中に図示していない正極タブの群は、正極集電板124の内側面の直線領域内に配されたタブ接合部601で溶接等により接合されている。
【0036】
実施例2に係る正極集電板124は、前述した実施例1の開口部602に代えて、複数の開口からなる開口部701が設けられている。開口部701の開口間の間隔は、1 mm以上5 mm以下が望ましい。図7では長方形の開口が3箇所形成されているが、開口形状や数に特段の限定はない。開口部701は、容器蓋116の開裂弁108のできるだけ近くに配置されることが好ましい。また、開口部701の面積は、容器蓋116の開裂弁108の面積以上であることが望ましい。
【0037】
実施例2は、実施例1と同様の効果に加えて、集電板の剛性が向上することから異常状況下での電極捲回群102の外部飛び出しをより確実に防止することが可能となる。さらに、電池全体としての耐衝撃性が向上する。
【実施例3】
【0038】
実施例3に係る非水電解液二次電池について説明する。実施例3は、正負の電極集電板の構成においてのみ実施例1と異なることから、実施例3に係る正極集電板の構成について以下説明する。なお、実施例3に係る負極集電板も同じ構造であることから、負極集電板の説明は省略する。図8は、実施例3に係る正極集電板の正面模式図および非水電解液二次電池の正極集電板近傍の断面模式図である。
【0039】
正極集電板134は、厚さ0.5〜5 mmの板状部材であり、図8に示したように角丸長方形の外形を有する。正極集電板134の外形は、捲芯404の端面の外形よりも大きく、電極捲回群102の端面の外形(角丸長方形)よりも一回り小さい。正極集電板134の一方の主表面(外側面)の端部には正極端子109が溶接等により一体的に形成されており、他方の主表面(内側面)には捲芯404の捲芯凹部407と嵌合する集電板凸部603が溶接等により一体的に形成されている。図8中に図示していない正極タブの群は、正極集電板134の内側面の直線領域内に配されたタブ接合部601で溶接等により接合されている。
【0040】
実施例3に係る正極集電板134は、前述した実施例1の開口部602に代えて、メッシュ構造を有する開口部801が設けられている。メッシュとしては、金属メッシュ(例えば、アルミニウム製、銅製、ステンレス鋼製)や耐熱性樹脂メッシュ(例えば、融点が170℃以上の樹脂製)を用いることができ、メッシュ厚さは0.2〜1 mmが好適であり、メッシュの目の中心間距離は0.5〜3.0 mmが好適である。開口部801は、容器蓋116の開裂弁108のできるだけ近くに配置されることが好ましい。また、開口部801の面積は、容器蓋116の開裂弁108の面積以上であることが望ましい。
【0041】
実施例3は、実施例1と同様の効果に加えて、開口部801がメッシュ構造を有することから異常状況下で電極捲回群102から欠け落ちた電極合剤層などの外部への飛び出しを確実に防止することが可能となる。
【実施例4】
【0042】
実施例4に係る非水電解液二次電池について説明する。実施例4は、正負の電極集電板の構成と捲芯の構成においてのみ実施例1と異なることから、それらの構成について以下説明する。なお、負極集電板側も同じ構造であることから、負極集電板側の説明は省略する。図9は、実施例4に係る正極集電板の正面模式図および非水電解液二次電池の正極集電板近傍の断面模式図である。図10は、実施例4に係る正極集電板の集電板凸部の形成方法を示す斜視模式図である。
【0043】
正極集電板144は、厚さ0.5〜5 mmの板状部材であり、図9に示したように角丸長方形の外形を有する。正極集電板144の外形は、捲芯の端面の外形よりも大きく、電極捲回群102の端面の外形(角丸長方形)よりも一回り小さい。正極集電板144の一方の主表面(外側面)の端部には正極端子109が溶接等により一体的に形成されている。また、図10に示したように、正極集電板144の一部を切欠いて他方の主表面側(内側面側)に折り曲げることで、捲芯404の捲芯凹部407と嵌合する集電板凸部902が形成されている。
【0044】
一方、捲芯においては、捲芯端部と電極集電板との間に空隙を配するための切欠き部1003が捲芯凹部407同士の間の領域に形成された部分切欠き捲芯1004を用いている。図10中に図示していない正極タブの群は、正極集電板144の内側面の直線領域内に配されたタブ接合部601で溶接等により接合されている。
【0045】
実施例4に係る正極集電板144は、前述した実施例1の開口部602に代えて、複数の開口からなる開口部901が設けられているとともに、折り曲げ加工によって集電板凸部603が形成されている。開口部901の開口間の間隔は、1 mm以上5 mm以下が望ましい。図9では長方形の開口が5箇所、集電板凸部603を形成したことによる開口が2箇所形成されているが、開口形状や数に特段の限定はない。開口部901は、容器蓋116の開裂弁108のできるだけ近くに配置されることが好ましい。また、開口部901の面積は、容器蓋116の開裂弁108の面積以上であることが望ましい。
【0046】
実施例4は、実施例2と同様の効果に加えて、集電板凸部603の形成がより簡便になることから低コスト化に寄与する効果がある。また、部分切欠き捲芯1004を用いることで、正極集電板144において捲芯の軸上(捲芯の延長線上、集電板の長対称軸上)にも開口を設けることができることからガス排出能が向上する効果がある。
【実施例5】
【0047】
実施例5に係る非水電解液二次電池について説明する。実施例5は、正負の電極集電板の構成と電極タブの接続構造においてのみ実施例4と異なることから、それらの構成について以下説明する。なお、負極集電板側も同じ構造であることから、負極集電板側の説明は省略する。図11は、実施例5に係る正極集電板の正面模式図および非水電解液二次電池の正極集電板近傍の断面模式図である。図12は、実施例4に係る非水電解液二次電池の側面断面模式図である。
【0048】
正極集電板154は、厚さ0.5〜5 mmの板状部材であり、図11に示したように角丸長方形の外形を有する。正極集電板154の外形は、部分切欠き捲芯1004の端面の外形よりも大きく、電極捲回群102の端面の外形(角丸長方形)よりも一回り小さい。正極集電板154の一方の主表面(外側面)の端部には正極端子109が溶接等により一体的に形成されており、他方の主表面(内側面)には部分切欠き捲芯1004の捲芯凹部407と嵌合する集電板凸部603が溶接等により一体的に形成されている。
【0049】
また、部分切欠き捲芯1004を用いることで、捲芯端部と電極集電板との間に空隙(切欠き部1003)が形成されており、該空隙を利用するようにして、正極タブ405の群は正極集電板154の集電板凸部603同士の間(集電板の長対称軸上)に配されたタブ接合部1002で溶接等により接合されている。なお、実施例5における正極タブ405の群の幅Aは、切欠き部1003の幅に制約されることから実施例1における正極タブ405の群の幅Aよりも狭くなる。ただし、図12に示したように、部分切欠き捲芯1004を挟んだ両側から正極タブ405を引き出すことにより、実施例1の場合と同等の電流経路長とすることができる。
【0050】
実施例5に係る正極集電板154は、前述した実施例1の開口部602に代えて、タブ接合部1002を挟んだ両側に開口を有する開口部1001が設けられている。開口部1001は、容器蓋116の開裂弁108のできるだけ近くに配置されることが好ましい。また、開口部1001の面積は、容器蓋116の開裂弁108の面積以上であることが望ましい。
【0051】
実施例5は、実施例1と同様の効果に加えて、開口部1001がタブ接合部1002を挟んだ両側に開口を有することから、捲芯を挟んだ両側にガス排出経路214を確保することができる。その結果、異常状況下において、電極捲回群102内部でガス発生箇所が万が一偏在した場合であっても、ガス排出がより良好に保たれるようになっている。
【実施例6】
【0052】
実施例6に係る非水電解液二次電池について説明する。実施例6は、正負の電極集電板の構成においてのみ実施例5と異なることから、実施例6に係る正極集電板の構成について以下説明する。なお、負極集電板側も同じ構造であることから、負極集電板側の説明は省略する。図13は、実施例6に係る正極集電板の正面模式図および非水電解液二次電池の正極集電板近傍の断面模式図である。
【0053】
正極集電板164は、厚さ0.5〜5 mmの板状部材であり、図13に示したように角丸長方形の外形を有する。正極集電板164の外形は、部分切欠き捲芯1004の端面の外形よりも大きく、電極捲回群102の端面の外形(角丸長方形)よりも一回り小さい。正極集電板164の一方の主表面(外側面)の端部には正極端子109が溶接等により一体的に形成されており、他方の主表面(内側面)には部分切欠き捲芯1004の捲芯凹部407と嵌合する集電板凸部603が溶接等により一体的に形成されている。また、部分切欠き捲芯1004を用いることで、捲芯端部と電極集電板との間に空隙(切欠き部1003)が形成されており、該空隙を利用するようにして、正極タブ405の群は正極集電板164の集電板凸部603同士の間に配されたタブ接合部1002で溶接等により接合されている。
【0054】
実施例6に係る正極集電板164は、前述した実施例5の開口部1001に代えて、各列が複数の開口からなる開口部1101が設けられている。列毎の開口部1101の開口間の間隔は、1 mm以上5 mm以下が望ましい。図13では長方形の開口が列毎に3箇所形成されているが、開口形状や数に特段の限定はない。開口部1101は、容器蓋116の開裂弁108のできるだけ近くに配置されることが好ましい。また、開口部1101の面積は、容器蓋116の開裂弁108の面積以上であることが望ましい。実施例6は、実施例5と実施例2とを合わせた効果を有する。
【実施例7】
【0055】
実施例7に係る非水電解液二次電池について説明する。実施例7は、正負の電極集電板の構成においてのみ実施例5と異なることから、実施例7に係る正極集電板の構成について以下説明する。なお、負極集電板側も同じ構造であることから、負極集電板側の説明は省略する。図14は、実施例7に係る正極集電板の正面模式図および非水電解液二次電池の正極集電板近傍の断面模式図である。
【0056】
正極集電板174は、厚さ0.5〜5 mmの板状部材であり、図14に示したように角丸長方形の外形を有する。正極集電板174の外形は、部分切欠き捲芯1004の端面の外形よりも大きく、電極捲回群102の端面の外形(角丸長方形)よりも一回り小さい。正極集電板174の一方の主表面(外側面)の端部には正極端子109が溶接等により一体的に形成されており、他方の主表面(内側面)には部分切欠き捲芯1004の捲芯凹部407と嵌合する集電板凸部603が溶接等により一体的に形成されている。また、部分切欠き捲芯1004を用いることで、捲芯端部と電極集電板との間に空隙(切欠き部1003)が形成されており、該空隙を利用するようにして、正極タブ405の群は正極集電板174の集電板凸部603同士の間に配されたタブ接合部1002で溶接等により接合されている。
【0057】
実施例7に係る正極集電板174は、前述した実施例5の開口部1001に代えて、メッシュ構造を有する開口部1201が設けられている。メッシュとしては、金属メッシュ(例えば、アルミニウム製、銅製、ステンレス鋼製)や耐熱性樹脂メッシュ(例えば、融点が170℃以上の樹脂製)を用いることができ、メッシュ厚さは0.2〜1 mmが好適であり、メッシュの目の中心間距離は0.5〜3.0 mmが好適である。開口部1201は、容器蓋116の開裂弁108のできるだけ近くに配置されることが好ましい。また、開口部1201の面積は、容器蓋116の開裂弁108の面積以上であることが望ましい。実施例7は、実施例5と実施例3とを合わせた効果を有する。
【実施例8】
【0058】
実施例8に係る非水電解液二次電池について説明する。実施例8は、正負の電極集電板の構成においてのみ実施例2と異なることから、実施例8に係る正極集電板の構成について以下説明する。なお、実施例8に係る負極集電板も同じ構造であることから、負極集電板の説明は省略する。図15は、実施例8に係る正極集電板の正面模式図および非水電解液二次電池の正極集電板近傍の断面模式図である。図16は、実施例8に係る正極集電板の開口部および集電板凸部の形成方法を示す斜視模式図である。
【0059】
正極集電板184は、厚さ0.5〜5 mmの板状部材であり、図15に示したように角丸長方形の外形を有する。正極集電板184の外形は、捲芯404の端面の外形よりも大きく、電極捲回群102の端面の外形(角丸長方形)よりも一回り小さい。正極集電板184の一方の主表面(外側面)の端部には正極端子109が溶接等により一体的に形成されている。また、図16に示したように、正極集電板184の一部を切欠いて他方の主表面側(内側面側)に折り曲げることで、捲芯404の捲芯凹部407に対して嵌合する集電板凸部1302と開口部1301とが形成されている。
【0060】
実施例8に係る正極集電板184は、前述した実施例2の開口部701に代えて、複数の開口からなる開口部1301と集電板凸部1302とが折り曲げ加工によって同時に形成されている。開口部1301の開口間の間隔は、1 mm以上5 mm以下が望ましい。図15では長方形の開口と集電板凸部1302とが2箇所形成されているが、数に特段の限定はない。開口部1301は、容器蓋116の開裂弁108のできるだけ近くに配置されることが好ましい。また、開口部1301の面積は、容器蓋116の開裂弁108の面積以上であることが望ましい。実施例8は、実施例2と同様の効果に加えて、開口部1301と集電板凸部1302の形成がより簡便になることから低コスト化に寄与する効果がある。
【符号の説明】
【0061】
100…非水電解液二次電池、101…容器本体、102…電極捲回群、103…容器蓋、
104…正極集電板、105…負極集電板、107…注液栓、108…開裂弁、
109…正極端子、110…負極端子、111…絶縁カバー、112…第1ガスケット、
113…ナット、114…ガス排出経路、115…第2ガスケット、116…容器蓋、
124,134,144,154,164,174,184…正極集電板、214…ガス排出経路、
301…注液口、302…ガス用開口部、303,304…電極端子用開口部、
401…正極、402…負極、403…セパレータ、404…捲芯、
405…正極タブ、406…負極タブ、407…捲芯凹部、
601…タブ接合部、602…開口部、603…集電板凸部、
701,801,901,1001,1101,1201,1301…開口部、
902,1302…集電板凸部、1003…切欠き部、1004…部分切欠き捲芯。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極捲回群が電池容器に収容された非水電解液二次電池であって、
前記電池容器は、角丸長方筒状の容器本体の両端が開裂弁を有する容器蓋によって封じられたものであり、
前記電極捲回群は、板状の捲芯の周りに帯状の正極と負極とがセパレータを介して捲回されたものであり、
前記捲芯の両端には、角丸長方形の集電板がフランジ状に配設され、
前記集電板の一方は前記正極と正極タブを介して接合され、前記集電板の他方は前記負極と負極タブを介して接合され、
前記集電板のそれぞれには、ガスを通過させる開口部が形成されていることを特徴とする非水電解液二次電池。
【請求項2】
請求項1に記載の非水電解液二次電池において、
前記開口部は、前記集電板における角丸長方形の直線領域に形成されていることを特徴とする非水電解液二次電池。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の非水電解液二次電池において、
前記開口部は、複数の開口から構成されていることを特徴とする非水電解液二次電池。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の非水電解液二次電池において、
前記開口部は、メッシュ構造を有していることを特徴とする非水電解液二次電池。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の非水電解液二次電池において、
前記集電板は、前記捲芯と嵌合固定されていることを特徴とする非水電解液二次電池。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の非水電解液二次電池において、
前記捲芯は、前記集電板と嵌合する面の一部に切り欠き部が形成されていることを特徴とする非水電解液二次電池。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の非水電解液二次電池において、
前記正極タブと前記負極タブとは、それぞれが接合される前記集電板に対して、該集電板の角丸長方形の長対称軸上に接合されていることを特徴とする非水電解液二次電池。
【請求項1】
電極捲回群が電池容器に収容された非水電解液二次電池であって、
前記電池容器は、角丸長方筒状の容器本体の両端が開裂弁を有する容器蓋によって封じられたものであり、
前記電極捲回群は、板状の捲芯の周りに帯状の正極と負極とがセパレータを介して捲回されたものであり、
前記捲芯の両端には、角丸長方形の集電板がフランジ状に配設され、
前記集電板の一方は前記正極と正極タブを介して接合され、前記集電板の他方は前記負極と負極タブを介して接合され、
前記集電板のそれぞれには、ガスを通過させる開口部が形成されていることを特徴とする非水電解液二次電池。
【請求項2】
請求項1に記載の非水電解液二次電池において、
前記開口部は、前記集電板における角丸長方形の直線領域に形成されていることを特徴とする非水電解液二次電池。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の非水電解液二次電池において、
前記開口部は、複数の開口から構成されていることを特徴とする非水電解液二次電池。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の非水電解液二次電池において、
前記開口部は、メッシュ構造を有していることを特徴とする非水電解液二次電池。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の非水電解液二次電池において、
前記集電板は、前記捲芯と嵌合固定されていることを特徴とする非水電解液二次電池。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の非水電解液二次電池において、
前記捲芯は、前記集電板と嵌合する面の一部に切り欠き部が形成されていることを特徴とする非水電解液二次電池。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の非水電解液二次電池において、
前記正極タブと前記負極タブとは、それぞれが接合される前記集電板に対して、該集電板の角丸長方形の長対称軸上に接合されていることを特徴とする非水電解液二次電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−169152(P2012−169152A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29327(P2011−29327)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 次世代自動車用高性能蓄電システム技術開発 要素技術開発 高出力可能な高エネルギー密度型リチウムイオン電池の研究開発委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(505083999)日立ビークルエナジー株式会社 (438)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 次世代自動車用高性能蓄電システム技術開発 要素技術開発 高出力可能な高エネルギー密度型リチウムイオン電池の研究開発委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(505083999)日立ビークルエナジー株式会社 (438)
【Fターム(参考)】
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