面状ばね及びこれを用いた安全弁
【課題】極めて信頼性が高く、低圧作動が可能で、通常使用時に容器内に発生する種々のガスのうち副生ガスのみを、容器内圧が設定圧以上になったときに該容器外に瞬時に逸散させると共に、ガス逸散後に自己復帰することができ、かつ超小型から大型の電気化学素子にも応用することが可能な安全弁及び該安全弁に用いる面状ばねを提供する。
【解決手段】面状かつ枠状に形成された基部20と、該基部20の面方向内側に、複数のばね素子部26を介して弾性的に支持される荷重受け部22と、を一体的に有している。荷重受け部22に荷重が入力された際に、該荷重受け部22は基部20に対して瞬時に、かつ弾性的に変位し、荷重がなくなると元の状態に自己復帰する。
【解決手段】面状かつ枠状に形成された基部20と、該基部20の面方向内側に、複数のばね素子部26を介して弾性的に支持される荷重受け部22と、を一体的に有している。荷重受け部22に荷重が入力された際に、該荷重受け部22は基部20に対して瞬時に、かつ弾性的に変位し、荷重がなくなると元の状態に自己復帰する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面状ばね及びこれを用いた安全弁であって、リチウム二次電池、ニッケル水素二次電池のような二次電池、アルミ電解コンデンサ、電気二重層キャパシタのようなコンデンサ及び電気量記憶素子のようなセンサ等の電気化学素子に用いられるものに係り、特に、電気化学素子の通常使用時に容器内に発生する種々のガスのうち副生ガスのみを、容器内圧が設定圧以上になったときに、電解液を容器内に残しつつ該容器外に瞬時に逸散させるために用いる面状ばね及びこれを用いた自己復帰型の安全弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、防爆安全弁は、主に二次電池やコンデンサに用いられていた。特許文献7の図9に示されるように、アルミ電解コンデンサや電気二重層キャパシタの場合、代表的な防爆安全弁の構造は、アルミニウム金属ケース121の底面123に十字の段押し加工124を施し、他の部分よりもケース厚みを薄くしておくというものであり、安全限界に達すると段押し加工部分が破壊されるようになっている。
【0003】
従来の電池用防爆安全装置としては、例えばステンレス鋼板を用いるもの(特許文献1参照)、ニッケルの箔板を用いるもの(特許文献2参照)が開示されている。特許文献2に記載の大型の据え置き型密閉鉛蓄電池では、電池周辺部の酸霧による腐食を防止するため触媒栓を用いて、充放電時に発生する水素ガスと酸素ガスを、触媒を用いて水に戻し、電池内部のガス圧の上昇を防止している。
【0004】
また、フッ素樹脂(PTFE)のフイルムを延伸して製造した連続気泡を有する多孔質膜を用いた構造が開示されている(特許文献3参照)。
【0005】
更に、自己復帰型調圧機能を有する構造が開示されている(特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7)。特許文献6の図1には、ガス進入口10A(ガス逸散口)を有する弁室10B(ガス通過部)内に、球弁20と、該球弁21をガス進入口10Aに押圧付勢するバネ体21とが設けられた構造が開示されている。また、特許文献7の図8には、電池の容器の内部圧力が加熱や過電流によって異常に高くなったときにおける該電池の爆発による事故を防ぐ目的で、所定の圧力で破損してガス抜きを行う構造も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭59−79965号公報
【特許文献2】特開平10−172529号公報
【特許文献3】特開平5−159765号公報
【特許文献4】特開平8−259854号公報
【特許文献5】特開平11−145015号公報
【特許文献6】特開平11−339746号公報
【特許文献7】特開2004−221129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記したアルミ金属ケースに段押し部を設ける方法は、低コストであるが、破壊時の圧力にばらつきが大きく、信頼性が悪いと考えられる。
【0008】
特許文献1に係る金属の箔帯を用いる安全弁では、安全弁が作動すると爆発は防止されるが、電池、コンデンサのような電気化学素子は安楽死することとなり、以後使用できない。
【0009】
また、特許文献2に係る触媒栓は、安全ではあるが、高価で形状が大きく、触媒栓だけで小型電池以上に体積を要する。従って、小型の電気化学素子に応用することが不可能である。
【0010】
更に、特許文献3に係るフッ素樹脂の多孔質フイルムは、機械的強度、信頼性、歩留まりの点で課題を有し、通常使用時におけるガスの逸散時に、ガスだけでなく電解液が同時に噴出する課題を有していた。またこの構造では、多孔度の均一化が困難で液が流失したり、歩留まりが悪く、H2O不透過機能が不完全である等の実用化の上で課題が多い。
【0011】
特許文献4〜7に記載の構造では、コイルばねのアスペクト比が大きく、小型化が困難で、取付けのために比較的大きな空間が必要である。また15〜20kgf/cm2程度の高圧用のコイルばねと比較して、3〜10kgf/cm2程度の低圧用のコイルばねの場合には、ばね精度が悪く、低圧駆動が困難である。このため、小型で、2〜5kgf/cm2の低圧作動が可能で、かつ応答速度が速い自己復帰型安全弁は、電気二重層キャパシタのようなアルミ缶体用としては、実用化されていないのが現状である。
【0012】
また特許文献7に記載の安全弁は、ガス透過性安全弁であるが、ガス透過安全弁用フイルムの単位時間当たりのガス透過量が少なく、大型の電気化学素子(大型電気二重層キャパシタ)に適用するには課題が残されている。
【0013】
更に、近年は、携帯電話、パソコン及びPDA等の電子機器が小型化されるに伴い、これらの電気化学素子が超小型化されている。加えて、製造時のハンダリフロー時の耐熱特性や携帯機器の使用環境条件が厳しくなり、これらに使用される電気化学素子のガス発生問題が深刻化しつつある。
【0014】
また、HEV車(ハイブリットカー)の実用化に伴い、HEV車が寒冷地で使用されるようになり、HEV車の低温対策として、ニッケル水素電池と併用される大容量の電気二重層キャパシタが実用化されている。これらの電気化学素子に対しては、+60〜−30℃の温度サイクル試験が要請されており、ガス発生対策が急務である。
【0015】
更に、2007年度に入り、トヨタ自動車株式会社、ダイハツ工業株式会社が、Brake by wireの用途から、エンジンや触媒アシストに電気二重層キャパシタを実用化している。また、株式会社リコーが、業務用高速複写機に大型電気二重層キャパシタを実用化している。このような大型で、大電流用途には、缶体に大型のアルミ缶が使用されるため、軽量、より小型化が期待され、低圧駆動で、アスペクト比の小さい、小型で、瞬時ガス逸散可能な自己復帰型安全弁の開発が急務になっている。
【0016】
本発明は、上記事実を考慮して、極めて信頼性が高く、低圧作動が可能で、通常使用時に容器内に発生する種々のガスのうち副生ガスのみを、容器内圧が設定圧以上になったときに該容器外に瞬時に逸散させると共に、ガス逸散後に自己復帰することができ、かつ超小型から大型の電気化学素子にも応用することが可能な安全弁及び該安全弁に用いる面状ばねを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1の発明(面状ばね)は、面状かつ枠状に形成された基部と、該基部の面方向内側に、複数のばね素子部を介して弾性的に支持される荷重受け部と、を一体的に有している。
【0018】
請求項1に記載の面状ばねでは、面状かつ枠状に形成された基部と、該基部の面方向内側に、複数のばね素子部を介して弾性的に支持される荷重受け部とを一体的に有しているので、荷重受け部に荷重が入力された際に、該荷重受け部は基部に対して瞬時に、かつ弾性的に変位し、荷重がなくなると元の状態に自己復帰する。
【0019】
従って、この面状ばねを安全弁に適用することで、極めて信頼性が高く、低圧作動が可能で、通常使用時に対象容器内に発生する種々のガスのうち副生ガスのみを、容器内圧が設定圧以上になったときにガス逸散口を開いて該容器外に瞬時に逸散させると共に、ガス逸散後に自己復帰してガス逸散口を閉じることができ、かつ超小型から大型の電気化学素子にも応用することが可能な安全弁を得ることができる。
【0020】
請求項2の発明は、請求項1に記載の面状ばねにおいて、前記基部、前記ばね素子部及び前記荷重受け部の少なくとも1箇所には、該荷重受け部に所定以上の荷重が作用した際に壊裂する壊裂部が設けられている。
【0021】
請求項2に記載の面状ばねでは、荷重受け部に所定以上の荷重が作用した際に、基部、ばね素子部及び荷重受け部の少なくとも1箇所に設けられた壊裂部が壊裂する。従って、この面状ばねを安全弁に適用することで、対象容器内に過大な圧力が生じた場合に、該圧力を瞬時に逸散させることができる。
【0022】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の面状ばねにおいて、前記基部の外形寸法をXとし、前記ばね素子部の弾性変形による前記基部の厚さ方向の一方における前記荷重受け部の変位可能寸法をYとすると、アスペクト比(Y/X)が0.1〜0.5である。
【0023】
請求項3に記載の面状ばねでは、基部の外形寸法をXとし、ばね素子部の弾性変形による基部の厚さ方向の一方における荷重受け部の変位可能寸法をYとすると、アスペクト比(Y/X)が0.1〜0.5であるので、面状ばねを小型化しつつ、荷重入力時における荷重受け部の変位の応答精度を高めることができる。
【0024】
請求項4の発明は、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の面状ばねにおいて、前記面状ばねは、Niの電鋳金属、Ni系合金の電鋳合金、Cuの電鋳金属、Cu系合金の電鋳合金、又はPd−Ni合金、Pd−Co合金若しくはPd−Ni−Co三元合金であってPdが10〜90%含まれた電鋳合金で製作されている。
【0025】
請求項4に記載の面状ばねでは、面状ばねは、Niの電鋳金属、Ni系合金の電鋳合金、Cuの電鋳金属、Cu系合金の電鋳合金、又はPd−Ni合金、Pd−Co合金若しくはPd/Ni/Co三元合金であってPdが10〜90%含まれた電鋳合金で製作されているので、ばね特性、耐食性、信頼性を高めることができる。
【0026】
請求項5の発明は、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の面状ばねにおいて、前記面状ばねの厚さは、1〜100μmである。
【0027】
請求項5に記載の安全弁では、面状ばねの厚さは、1〜100μmであるので、機械的強度を確保しつつ、製作コストを抑制することができる。
【0028】
請求項6の発明(安全弁)は、請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の面状ばねと、前記面状ばねによりガス逸散孔に押圧付勢される弁体と、を有している。
【0029】
請求項6に記載の安全弁では、請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の面状ばねと、面状ばねによりガス逸散孔に押圧付勢される弁体とを有しているので、面状ばねが適宜弾性変形することによって、該安全弁が取り付けられた容器の通常使用時の調圧を行うことができる。壊裂部を有する面状ばねでは、面状ばねの荷重受け部材に所定以上の荷重が作用した際には、該壊裂部が壊裂することで、容器内の圧力を逸散させることができる。
【0030】
請求項7の発明(電気化学素子)は、請求項6に記載の安全弁を有している。
【0031】
請求項7に記載の電気化学素子では、請求項6に記載の安全弁を有しているので、通常使用時に該電気化学素子の容器内に発生する種々のガスのうち副生ガスのみを、容器内圧が設定圧以上になったときに該容器外に瞬時に逸散させることができる。安全弁に壊裂部を有する面状ばねが用いられている場合、容器内に過大な圧力が生じた際に、該壊裂部が壊裂することで、該圧力を瞬時に逸散させることができる。このため、電気化学素子の信頼性や安全性を高めることができる。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載の面状ばねによれば、極めて信頼性が高く、低圧作動が可能で、通常使用時に容器内に発生する種々のガスのうち副生ガスのみを、容器内圧が設定圧以上になったときに該容器外に瞬時に逸散させることができ、かつ超小型から大型の電気化学素子にも応用することが可能な安全弁を得ることができる、という優れた効果が得られる。
【0033】
請求項2に記載の面状ばねによれば、対象容器内に過大な圧力が生じた場合に、該圧力を瞬時に逸散させることが可能な安全弁を得ることができる、という優れた効果が得られる。
【0034】
請求項3に記載の面状ばねによれば、面状ばねを小型化しつつ、荷重入力時における荷重受け部の変位の応答精度を高めることができる、という優れた効果が得られる。
【0035】
請求項4に記載の面状ばねによれば、ばね特性、耐食性、信頼性を高めることができる、という優れた効果が得られる。
【0036】
請求項5に記載の安全弁によれば、機械的強度を確保しつつ、製作コストを抑制することができる、という優れた効果が得られる。
【0037】
請求項6に記載の安全弁によれば、安全弁が取り付けられた容器の通常使用時の調圧を行うことができる、という優れた効果が得られる。
【0038】
請求項7に記載の電気化学素子によれば、電気化学素子の耐久性や安全性を高めることができる、という優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1及び図2は、面状ばねの第1構成例に係り、図1は、面状ばねを示す正面図である。
【図2】面状ばねの外形寸法に対する荷重受け部の変位可能量を示す側面図である。
【図3】第2構成例に係る面状ばねを示す正面図である。
【図4】第3構成例に係る面状ばねを示す正面図である。
【図5】第4構成例に係る面状ばねを示す正面図である。
【図6】壊裂部の構成を示す、要部拡大図である。
【図7】第5構成例に係る面状ばねを示す正面図である。
【図8】壊裂部の構成を示す、要部拡大図である。
【図9】第6構成例に係る面状ばねを示す正面図である。
【図10】壊裂部の構成を示す、要部拡大図である。
【図11】第7構成例に係る面状ばねを示す正面図である。
【図12】第8構成例に係る面状ばねを示す正面図である。
【図13】第9構成例に係る面状ばねを示す正面図である。
【図14】第10構成例に係る面状ばねを示す正面図である。
【図15】第11構成例に係る面状ばねを示す正面図である。
【図16】面状ばねの厚さと応答作動圧力との関係を示す線図である。
【図17】第12構成例に係る面状ばねを示す正面図である。
【図18】第13構成例に係る面状ばねを示す正面図である。
【図19】第14構成例に係る面状ばねを示す正面図である。
【図20】第15構成例に係る面状ばねを示す正面図である。
【図21】第16構成例に係る面状ばねを示す正面図である。
【図22】各種電鋳金属の応力とひずみの関係を示す線図及び表である。
【図23】フォトエレクトロフォーミングにおいて、レジストにより制御したパターンと電鋳金属を示す模式図である。
【図24】電鋳で製作したばね素子部の幅寸法及び厚さ寸法を示す拡大斜視図である。
【図25】電気化学素子の缶体の弁座に取り付けられた安全弁を示す断面図である。
【図26】皿ばねを示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
[面状ばね]
(第1構成例)
図1において、第1構成例に係る面状ばね1は、基部20と、荷重受け部22とを一体的に有している。
【0041】
基部20は、面状かつ枠状に形成されており、例えば円環状かつ平面状に形成されている。なお基部20の外形形状は円形に限られるものではなく、多角形や楕円形等であってもよい。
【0042】
荷重受け部22は、基部20の面方向内側に、複数のばね素子部26を介して弾性的に支持されている。具体的には、荷重受け部22は、例えば基部20の中央部に位置している。また荷重受け部22の中央には、後述する安全弁40の弁体42(図25)が嵌合するように、貫通孔22Aが形成されている。これにより、荷重受け部22は円環状となっている。また、面状ばね1において、基部20、荷重受け部22及びばね素子部26の何れでもない領域は、孔部30とされている。
【0043】
ばね素子部26は、荷重受け部22の外周縁と基部20の内周縁とを連結するように該基部20の半径方向に延び、該基部20の周方向の6箇所に配置されている。換言すれば、各ばね素子部26は、60°間隔で均等に配置されている。各ばね素子部26は、例えば基部20の面方向、かつ該基部20の半径方向と直交する方向に振幅を有する正弦波状に形成されている。
【0044】
基部20、ばね素子部26及び荷重受け部22の少なくとも1箇所には、該荷重受け部22に所定以上の荷重が作用した際に壊裂する壊裂部28が設けられている。第1構成例では、例えば荷重受け部22に壊裂部28が設けられている。この壊裂部28は、局部的に幅狭に形成されたくびれ部として構成され、荷重受け部22の周方向の例えば2箇所に形成されている。なお、壊裂部28の構造は、後述する第2構成例から第16構成例のように、応用品(電気化学素子等)の圧力や壊裂応答速度に応じて、適宜変更される。
【0045】
図2に示されるように、面状ばね1は、基部20の外形寸法(外径)をXとし、ばね素子部26の弾性変形による基部20の厚さ方向の一方における荷重受け部22の変位可能寸法をYとすると、アスペクト比(Y/X)が0.1〜0.5となっている。ここで、アスペクト比の下限値を0.1としたのは、この値未満では、荷重受け部22時に荷重受け部22が変位する際の応答精度が劣るようになるからである。また、アスペクト比の上限値を0.5としたのは、この値を超えると、面状ばね1の形状が大きくなるからである。従って、このようにアスペクト比を設定することで、面状ばね1を小型化しつつ、荷重入力時における荷重受け部22の変位の応答精度を高めることができる。なお、図2においては、荷重受け部22の変位方向が、基部20の厚さ方向の上方となっているが、下方にも同様に変位可能である。
【0046】
また、面状ばね1の厚さZは、1〜100μmである。ここで、厚さZの下限値を1μmとしたのは、この値を下回ると、面状ばね1の機械的強度を確保することが難しくなるからである。また上限値を100μmとしたのは、この値を上回ると、面状ばね1の製作コストが高くなるからである。従って、このように面状ばね1の厚さZを設定することで、面状ばね1の機械的強度を確保しつつ、製作コストを抑制することができる。なお、この厚さZの範囲の妥当性については、後述する第11構成例で改めて説明する。
【0047】
面状ばね1は、ばね特性、耐食性及び信頼性の確保を考慮して、例えばNiの電鋳金属、Ni系合金の電鋳合金、Cuの電鋳金属、Cu系合金の電鋳合金、又はPd−Ni合金、Pd−Co合金若しくはPd/Ni/Co三元合金であってPdが10〜90%含まれた電鋳合金で製作される。これに加えて、Mo、Nb、Fe、Mn等の磁性元素を添加することも可能である。面状ばね1の製法については、後に詳述する。なお、面状ばね1の材質は、金属には限られず、ばね性を有するものであればどのような材料を用いてもよい。例えば、ばね性を有する高分子材料やセラミックスであってもよい。
【0048】
(第2構成例)
図3において、第2構成例に係る面状ばね2では、壊裂部28が、荷重受け部22の周方向の6箇所に形成されている。ばね素子部26も、基部20の周方向の6箇所に配置されており、隣り合うばね素子部26間に、壊裂部28がそれぞれ形成されている。他の部分については、第1構成例と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0049】
(第3構成例)
図4において、第3構成例に係る面状ばね3では、隣り合うばね素子部26間において、例えば荷重受け部22の外周に開口する切欠き22Bが、該荷重受け部22の周方向の6箇所に形成されている。ばね素子部26も、基部20の周方向の6箇所に配置されており、隣り合うばね素子部26間に、切欠き22Bがそれぞれ形成されている。切欠き22Bは、荷重受け部22の周方向において部分的に幅広となっており、これにより荷重受け部22に形成されるくびれ部が、壊裂部28となっている。他の部分については、第1構成例と同様である。
【0050】
(第4構成例)
図5において、第4構成例に係る面状ばね4では、荷重受け部22の中央に貫通孔22Aが設けられており、かつ荷重受け部22の外周に開口する切欠き22Bが、該荷重受け部22の周方向におけるばね素子部26の両側にそれぞれ形成されている。図6に示されるように、この切欠き22Bは、荷重受け部22の周方向におけるばね素子部26の両側に一対形成され、該荷重受け部22の中心側に向かって互いに接近するように延びて終端している。これにより荷重受け部22に形成されるくびれ部が、壊裂部28となっている。他の部分については、第1構成例と同様である。
【0051】
(第5構成例)
図7において、第5構成例に係る面状ばね5では、基部20の内周に開口する切欠き20Bが、該基部20の周方向におけるばね素子部26の両側にそれぞれ形成されている。図8に示されるように、この切欠き20Bは、基部20の周方向におけるばね素子部26の両側に一対形成され、該基部20の半径方向外側に向かって互いに接近するように延びて終端している。これにより基部20に形成されるくびれ部が、壊裂部28となっている。他の部分については、第1構成例と同様である。
【0052】
(第6構成例)
図9,図10において、第6構成例に係る面状ばね6では、壊裂部28がばね素子部26に設けられている。この壊裂部28は、正弦波状のばね素子部26における、例えば湾曲部の外周側に切欠き状にそれぞれ形成されている。他の部分については、第1構成例と同様である。
【0053】
(第7構成例)
図11において、第7構成例に係る面状ばね7では、ばね素子部26が、荷重受け部22の中心部を中心として同心円状となる周方向部26Aと、荷重受け部22、各周方向部26A及び基部20を連結するように該基部20の半径方向に延び、該基部20の周方向の8箇所に配置される径方向部26Bとを有して構成されている。各径方向部26Bは、45°間隔で均等に配置されている。他の部分については、第1構成例と同様である。
【0054】
(第8構成例)
図12に示されるように、第8構成例に係る面状ばね8は、第7構成例に係る面状ばね7において、ばね素子部26における径方向部26Bを、基部20の周方向の4箇所に配置したものである。径方向部26Bは、45°間隔で均等に配置されている。他の部分については、第7構成例と同様である。
【0055】
(第9構成例)
図13に示されるように、第9構成例に係る面状ばね9では、第8構成例に係る面状ばね8において、同心円状の孔部30の周方向の位相を、径方向において1つおきに45°ずらしたものである。これに伴い、径方向部26Bは、基部20の径方向において、断続的に配置されている。
【0056】
(第10構成例)
図14において、第10構成例に係る面状ばね10では、ばね素子部26が、径方向部26Bと周方向部26Aとを交互に形成することで構成されている。このばね素子部26は、基部20の周方向の4箇所に設けられている。このようにばね素子部26を構成することで、該ばね素子部26の長さをより多く確保して、荷重受け部22に入力される荷重に対する感度を高めると共に、基部20の厚さ方向への荷重受け部22の変位可能寸法Y(図2)をより大きく設定できるようになっている。他の部分については、第1構成例と同様である。
【0057】
(第11構成例)
図15に示されるように、第11構成例に係る面状ばね11は、第10構成例に係る面状ばね10において、ばね素子部26を、基部20の周方向の8箇所に設けたものである。
【0058】
ここで、Niが40%、Pdが60%の合金を材料に用いて、図15に示される寸法の面状ばね11を電鋳により製作し、該面状ばね11の厚さと応答作動圧力との関係について試験を行ったので、その結果について説明する。試験結果は、表1及び図16に示す通りである。この試験によれば、面状ばね11の厚さを1〜100μmの範囲に設定することで、厚さと応答作動圧力との関係が直線的になり、優れたばね特性が得られることがわかる。
【0059】
【表1】
【0060】
(第12構成例)
図17において、第12構成例に係る面状ばね12では、ばね素子部26が、径方向部26Bと周方向部26Aとを交互に形成すると共に、基部20の径方向において隣り合う周方向部26A間に、径方向部26Bに連結される環状部26Cを形成することで構成されている。このばね素子部26は、基部20の周方向の8箇所設けられている。他の部分については、第1構成例と同様である。
【0061】
(第13構成例)
図18において、第13構成例に係る面状ばね13では、各々のばね素子部26が台形の折れ線状に形成されている。このばね素子部26は、2本で1組をなし、基部20の周方向に8組設けられている。1組のばね素子部26は、基部20の半径方向を中心軸として略線対称となっている。他の部分については、第1構成例と同様である。
【0062】
(第14構成例)
図19に示されるように、第構成例に係る面状ばね14は、第13構成例に係る面状ばね13において、ばね素子部26を、基部20の周方向に10組設けたものである。
【0063】
(第15構成例)
図20において、第構成例に係る面状ばね15では、各々のばね素子部26が周方向部26Aと径方向部26Bとを有する折れ線状に形成されている。このばね素子部26は、2本で1組をなし、基部20の周方向に8組設けられている。1組のばね素子部26は、基部20の半径方向を中心軸として略線対称となっている。1組のばね素子部26の間には、略十字形の孔部30が形成されている。また隣り合う2組のばね素子部26の間には、略H形の孔部30が形成されている。他の部分については、第1構成例と同様である。
【0064】
(第16構成例)
図21に示されるように、第構成例に係る面状ばね16は、第1構成例に係る面状ばね1において、正弦波状のばね素子部26が、基部20の周方向の18箇所に設けられている。荷重受け部22に貫通孔22Aが形成されていない点を除き、他の構成は第1構成例と同様である。
【0065】
(他の構成例)
面状ばねの構成は、上記した第1構成例から第16構成例に限られるものではなく、用途や使用条件に応じて適宜構成を変更することが可能である。
【0066】
また第7構成例から第16構成例において、荷重受け部22に、第1構成例における貫通孔22Aに相当する形状を設けてもよい。また第7構成例から第16構成例に、第1構成例から第6構成例に係る壊裂部28を適宜組み合わせることも可能である。
【0067】
上記各構成例では、面状ばねの形状を平面状としたが、これに限られず、凹凸面や円弧面等を含んでいてもよい。特に、第7構成例から第16構成例のように、荷重受け部22に貫通孔22Aを設けない場合には、後述する弁体42(図25)に対応する凹面を設けてもよい。また、壊裂部28を設けない構成としてもよい。
【0068】
[面状ばねの製法]
本実施形態に係る面状ばね1〜16の製法を述べる。本実施形態では、面状ばねの製法として、面状ばねシートを金型で打ち抜くことも容易に考えられるが、微圧で正確な作動を求められる電気化学素子用には、圧延によるばね材料では精度が得られない。本実施形態では、電鋳法で生産する。
【0069】
本実施形態の最も重要な部分は面状ばねであり、この部分の要求される要素は三次元的に小型で機械的機能を充分発揮しなければならないものである。そのため具体的には機械的性質の安定性、形状寸法の高精度、耐食などの化学的安定性が要求される。従来のコイルばねを利用した15〜20kgf/cm2程度のものは、ばねの強度の安定性、コイルばねの太さの精度のばらつきなどから、特に圧力が小さく、また細かく制御するばねには不向きである。このような背景の中で、極めて微妙な圧力を感知し反応するばね、特に3〜10kgf/cm2程度の微小な圧力に対して小型で素早く正確に反応するばねが求められている。
【0070】
従来のコイルばねのような構造では、小型化ができず、また微小な強度を微妙な動作で伝えるなどの機能に劣るなど、物性的にも無理であった。この問題を解決する方法として電鋳法による面状ばねの製作が最適である。電鋳技術は、電解により金属素材を析出させる技術であり、素材の厚さを電解時間で正確に制御できる。従って、電鋳技術は、いろいろな種類の厚さを容易に、また大量に製作できる技術である。そして電鋳技術で製作された金属素材の種類は、応力の問題からクロム以外の電解できる金属ならば殆がその対象になり、合金、アモルファス金属などを含めその種類は豊富である。
【0071】
電鋳金属の特徴は一般金属材料とは異なる有益な性質も有している。それは一般金属材料では溶解、圧延の工程で製造されるため結晶粒界での不純物やガスの巻き込みがあるのが一般的である。このため圧延材で作られる素材は厳密に言えば物性的にはばらつきがあり、これ等がばね材として使われており、特に小型のばねなど微小で微妙な力を感知しようとする機能には不向きである。特に微小なコイルばね部品などで問題になっている。
【0072】
一方、電鋳による金属材料は一般的な金属素材とは異なり、金属粒子間での不純物やガスピットなど無く、必要によっては上記に述べたごとく合金やアモルファス金属も電鋳により簡単に製作できる。そして、その都度材料の物性を加味して電鋳金属の選択をし、なおかつ同一金属においても物理的、化学的性質を制御できる。
【0073】
図22にその一例を示す。このグラフは電解条件、合金の組成、電解液の有機物添加剤により機械物性を変えられることを示している。そして、この性質は安定なものであることが確認されている。以上のように、電鋳材料の信頼性は極めて高く、ばね材として最適な物性を有する材料を選択できる。特にここで掲げるパラジウムニッケル(Ni−Pd)合金、パラジウムコバルト(Pd−Co)合金、パラジウムニッケルコバルト(Pd−Ni−Co)三元合金などはマイクロばねには最も望ましい材料である。とりわけ本実施形態の面状ばねとしての素材、及び製作における小型化に対しても最適な金属材料である。
【0074】
微妙に作動するばねの形状にするには、金属素材を例えば本実施形態に係る面状ばね形状にしなくてはならない、そのためには一般的にはフォトリソグラフィーを使う。この手法は電鋳技術とフォトリソグラフィーを併せたいわゆるフォトエレクトロフォーミングとして知られている方法が使われる。図23に示されるように、電鋳方法で電着させようとする平面導体基板32に、あらかじめフォトレジスト34で電着を阻止するパターニングを写真技術で行い、その後電鋳で所望の金属36を電着し必要な厚さに到達したときに剥離することで、必要な厚さの金属材料を用いて、上記した多様な各構成例のように、要求通りの形状とばね性を有した面状ばねを得られることになる。フォトエレクトロフォーミングで作られる寸法形状は、フォトレジスト34の厚さが十分にあればサイドへの拡がりも無く、また電鋳法と比較されるエッチング手法で製作したときに生じるサイドエッチの現象もないため、極めて精度の高い寸法を保持できる。無論、本実施形態に係る面状ばねの形は、プレスなどの機械加工でもできるのであるが、その際はプレスなどによる加工応力によるばね特性や物性に影響を与えないよう配慮が必要である。
【0075】
このフォトエレクトロフォーミングの作られた面状ばねの性能は、電鋳金属の素材の選択により面状ばねの機械的物性が決定され、面状ばねの平面的な形や材質の厚さなどが実質的なばねとして働く、例えば図1におけるばね素子部26の強さに代表される性能、機能を支配する。そしてばね形状の断面積などが最終的に設計され、決定される。本実施形態の面状ばねの強さは、該面状ばねが微妙に制御されたばねである必要性から、上記の製作プロセスを容易に制御できることが重要であり、フォトエレクトロフォーミングは製造法として最適な手法である。
【0076】
図24に示されるように、ばねの強度に影響を与える実質的なばねの断面寸法、即ちばねの断面積は、ばね素子部26の幅寸法と厚さ寸法を掛けて算出されるわけであるが、幅寸法については加工技術にフォトリソグラフィー技術を用いることで正確に制御でき、厚さ寸法については、電解の時間で決定されるため極めて正確に制御でき、何れもミクロンオーダーの正確さである。そのため極めて精度の高い本実施形態の面状ばねが製作できる。その結果、微小な圧力を微妙な変動要素に変化させること可能な面状ばねをフォトエレクトロフォーミングで作ることができる。
【0077】
[安全弁]
図25において、安全弁40は、自己復帰型の安全弁であり、例えば電気化学素子44の缶体48におけるガス逸散孔46の周囲の弁座50に取り付けられている。この安全弁40は、例えば第7構成例に係る面状ばね7(図11)と、該面状ばね7によりガス逸散孔(圧力開放口)に押圧付勢される弁体42とを有している。面状ばね7は、3〜5kgf/cm2の微圧にも正確に機能するように設定されている。面状ばね7の荷重受け部22は、例えば球体である弁体42に対応して、球面状に形成されている。
【0078】
弁体42の形状は、球体に限られず、面状等であってもよいが、ガス逸散孔46との接触部に、ガスの逸散が容易となるように、凹凸の波形を表面に形成しておくことが望ましい。また弁体42は弾性体で構成されている。その材質には、これまでに実用化されているSBR(スチレンブタジエンゴム)、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、ブチルゴム、フッ素ゴム、アクリル系ゴム等の、耐薬品性のプラスチックスを使用することが可能である。
【0079】
なお、弁体42は弾性体には限られず、剛体であってもよい。その場合には、ガス逸散孔46における弁体42との当接部に、密閉性を高めるための弾性体を配置することが望ましい。また、剛体の表面に弾性体をコーティングして弁体42を構成してもよい。
【0080】
凹形状の弁座50には、内径が弁体42よりも大径のリング状のガスケット52が嵌めこまれている。弁体42は、ガス逸散孔46よりも大径に構成され、該ガス逸散孔46を塞ぐように配置されている。ガスケット52上には、面状ばね7の基部20が載置され、荷重受け部22は弁体42に被さるように配置されている。面状ばね7は、弁座50にはめ込まれる皿ばね54により固定されている。図26に示されるように、皿ばね54は、面状ばね7の荷重受け部22と干渉しないように、該面状ばね7の基部20と同等の大きさの円環状に構成されており、外周には複数の突起部56が斜め上方に折曲げ形成されている。皿ばね54は、この突起部56において、弁座50の壁部に嵌合している。
【0081】
この安全弁40では、通常使用時には、電気化学素子44の缶体48内のガス発生量に応じて、面状ばね7が弾性変形することで、弁体42が上下して、電気化学素子44の缶体48内の圧力を設定内に調圧することができる。また異常時に、缶体48内に大量のガスが発生し、該缶体48内に過大な圧力が生じた際には、面状ばね7における壊裂部(図示せず)が壊裂することでガス逸散孔46を開き、該圧力を瞬時に逸散させることができる。これにより、電気化学素子44の爆発を防止することができる。
【0082】
このように、本実施形態に係る安全弁40は、極めて信頼性が高く、低圧作動が可能で、通常使用時に容器内に発生する種々のガスのうち副生ガスのみを、容器内圧が設定圧以上になったときに該容器外に瞬時に逸散させることができ、かつ超小型から大型の電気化学素子にも応用することができる。また対象容器内に過大な圧力が生じた場合には、該圧力を瞬時に逸散させることが可能である。
【0083】
[電気化学素子]
通常、自動車や複写機、ロボットのような産業機器には、50〜1900F/缶の中〜大型の有底アルミ缶から成る電気二重層キャパシタが使用される。アルミ缶体には、一対の活性炭を主成分とする分極性電極がセパレータを介して、有機系電解液と共に収納されている。そしてこの有底アルミ缶体の開口部に、本実施形態に係る面状ばねを用いた自己復帰型の安全弁を装備した封口体を設けることで、電気二重層キャパシタが構成される。
【0084】
この構成によれば、電気二重層キャパシタの内部の圧力が予定の圧力に成れば、瞬時に面状ばねからなる自己復帰型安全弁が作動し、内部で発生したガスを外部に逸散させ、内部のガス圧を正常に戻すことが可能である。
【0085】
また本実施形態に係る安全弁は、上記したように、従来よりも低圧の内部ガス圧で作動し、その応答速度が速く、薄型化や小型化が可能である。また電鋳法により面状ばねを製作することで、高精度の面状ばねを得ることができ、かつ該面状ばねを低価格で量産することが可能である。従って、本実施形態に係る面状ばね及び安全弁は、業務用複写機、ロボットのような産業機器や自動車のような重量効率や空間効率、コストダウンの要請に貢献することが可能であり、その工業的価値は極めて大なるものである。
【0086】
(試験例)
本実施形態に係る安全弁40を電気二重層キャパシタに用いて、その特性を確認した。電気二重層キャパシタの構成としては、分極性電極として活性炭を用い、アセチレンブラック及び水系のSRB系バインダーによりスラリーを作製し、20μmのAl集電体上に、乾燥厚みで20μmになるように塗布してこれを乾燥させ、内径35mmの500mmのAl缶に収納した。電解液として、溶媒であるプロピレンカーボネート(PC)と、テトラエチルアンモンニュームテトラフルオロボレート(TEABF4)との1mol/L(リットル)濃度の溶質からなる有機系電解液を用いた。実施例1及び実施例2には、図25に示される本実施形態に係る自己復帰型の安全弁40を用い、従来例1及び従来例2には、コイル型自己復帰安全弁を用いた。
【0087】
試験としては、まずガス発生が大きく、加速寿命試験の可能な70℃で、3.0V印加で、1000時間の耐久試験を行った。また電気化学素子内でのガス発生の多い異常使用条件として、70℃で、3.3Vで、100時間の耐久試験を行った。表2に、各実施例及び各従来例に係る電気二重層キャパシタの電気化学素子の耐久特性の比較を示す。
【0088】
まず、ガス発生が大きく、加速寿命試験の可能な70℃での3.0V印加試験の結果、従来例1では容量変化率が大きく、また内部抵抗も増加し、缶体の膨れや、電解液の漏液が激しいものであった。しかし、実施例1では、特に、異常が無かった。またガス発生を着実に缶体外に逸散させていたため、缶体の膨れや電解液の漏液はなく、特性的にも異常は無く、素晴らしい特性を示した。
【0089】
一方、異常使用条件として、70℃で、3.3Vで、100時間の耐久試験の結果、従来例2では、63時間経過後に爆発し、缶体が破損した。しかし、実施例2では、着実に異常ガス発生のガスを缶体外に逸散させていたため、100時間経過後も缶体の異常は、観られず、その後の試験継続が可能であった。
【0090】
【表2】
【0091】
試験例では、有機系の電解液を使用した電気二重層キャパシタの実施例を示したが、ここでその他の電気化学素子の応用例の効果を、一般論として説明する。
【0092】
(ニッケル水素電池の場合)
ニッケル水素電池の場合は、特に、水素ガスの発生が電池のサイクル特性を劣化させたり、50℃以上の耐熱性に弱いために電池の爆発の危険がある。従来例のコイルばねは、応答圧力が8〜20kgf/cm2のものが市販されている。また、このばね圧での応答速度は、150〜800msec/回である。本実施形態に係る面状ばねでは、3〜5kgf/cm2の微圧駆動が可能であるため、応答速度は、20〜100msec/回が可能である。
【0093】
このため安全弁の開口時に、外部空気の流入が少なくなり、外気からのCO2、H2Oの影響を著しく減少させることが可能になる。
【0094】
(リチウムイオン電池の場合)
リチウムイオン電池は、電気二重層キャパシタと同様にエチルメチルカーボネート(EMC)のような有機系溶媒とLiPF6(6フッ化燐酸リチウム)塩を溶質に用いるため、安全弁の開閉動作時に外部空気中のH2Oの影響が大である。しかしながら、本実施形態に係る安全弁では、面状ばねの応答圧力が低く、応答速度が速いため、著しく短時間で弁の開閉を行うことができ、リチウムイオン電池に対しても極めて有効である。
【符号の説明】
【0095】
1 面状ばね
2 面状ばね
3 面状ばね
4 面状ばね
5 面状ばね
6 面状ばね
7 面状ばね
8 面状ばね
9 面状ばね
10 面状ばね
12 面状ばね
13 面状ばね
14 面状ばね
15 面状ばね
16 面状ばね
20 基部
22 荷重受け部
26 ばね素子部
28 壊裂部
40 安全弁
42 弁体
44 電気化学素子
46 ガス逸散孔
X 基部の外形寸法
Y 変位可能寸法
【技術分野】
【0001】
本発明は、面状ばね及びこれを用いた安全弁であって、リチウム二次電池、ニッケル水素二次電池のような二次電池、アルミ電解コンデンサ、電気二重層キャパシタのようなコンデンサ及び電気量記憶素子のようなセンサ等の電気化学素子に用いられるものに係り、特に、電気化学素子の通常使用時に容器内に発生する種々のガスのうち副生ガスのみを、容器内圧が設定圧以上になったときに、電解液を容器内に残しつつ該容器外に瞬時に逸散させるために用いる面状ばね及びこれを用いた自己復帰型の安全弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、防爆安全弁は、主に二次電池やコンデンサに用いられていた。特許文献7の図9に示されるように、アルミ電解コンデンサや電気二重層キャパシタの場合、代表的な防爆安全弁の構造は、アルミニウム金属ケース121の底面123に十字の段押し加工124を施し、他の部分よりもケース厚みを薄くしておくというものであり、安全限界に達すると段押し加工部分が破壊されるようになっている。
【0003】
従来の電池用防爆安全装置としては、例えばステンレス鋼板を用いるもの(特許文献1参照)、ニッケルの箔板を用いるもの(特許文献2参照)が開示されている。特許文献2に記載の大型の据え置き型密閉鉛蓄電池では、電池周辺部の酸霧による腐食を防止するため触媒栓を用いて、充放電時に発生する水素ガスと酸素ガスを、触媒を用いて水に戻し、電池内部のガス圧の上昇を防止している。
【0004】
また、フッ素樹脂(PTFE)のフイルムを延伸して製造した連続気泡を有する多孔質膜を用いた構造が開示されている(特許文献3参照)。
【0005】
更に、自己復帰型調圧機能を有する構造が開示されている(特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7)。特許文献6の図1には、ガス進入口10A(ガス逸散口)を有する弁室10B(ガス通過部)内に、球弁20と、該球弁21をガス進入口10Aに押圧付勢するバネ体21とが設けられた構造が開示されている。また、特許文献7の図8には、電池の容器の内部圧力が加熱や過電流によって異常に高くなったときにおける該電池の爆発による事故を防ぐ目的で、所定の圧力で破損してガス抜きを行う構造も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭59−79965号公報
【特許文献2】特開平10−172529号公報
【特許文献3】特開平5−159765号公報
【特許文献4】特開平8−259854号公報
【特許文献5】特開平11−145015号公報
【特許文献6】特開平11−339746号公報
【特許文献7】特開2004−221129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記したアルミ金属ケースに段押し部を設ける方法は、低コストであるが、破壊時の圧力にばらつきが大きく、信頼性が悪いと考えられる。
【0008】
特許文献1に係る金属の箔帯を用いる安全弁では、安全弁が作動すると爆発は防止されるが、電池、コンデンサのような電気化学素子は安楽死することとなり、以後使用できない。
【0009】
また、特許文献2に係る触媒栓は、安全ではあるが、高価で形状が大きく、触媒栓だけで小型電池以上に体積を要する。従って、小型の電気化学素子に応用することが不可能である。
【0010】
更に、特許文献3に係るフッ素樹脂の多孔質フイルムは、機械的強度、信頼性、歩留まりの点で課題を有し、通常使用時におけるガスの逸散時に、ガスだけでなく電解液が同時に噴出する課題を有していた。またこの構造では、多孔度の均一化が困難で液が流失したり、歩留まりが悪く、H2O不透過機能が不完全である等の実用化の上で課題が多い。
【0011】
特許文献4〜7に記載の構造では、コイルばねのアスペクト比が大きく、小型化が困難で、取付けのために比較的大きな空間が必要である。また15〜20kgf/cm2程度の高圧用のコイルばねと比較して、3〜10kgf/cm2程度の低圧用のコイルばねの場合には、ばね精度が悪く、低圧駆動が困難である。このため、小型で、2〜5kgf/cm2の低圧作動が可能で、かつ応答速度が速い自己復帰型安全弁は、電気二重層キャパシタのようなアルミ缶体用としては、実用化されていないのが現状である。
【0012】
また特許文献7に記載の安全弁は、ガス透過性安全弁であるが、ガス透過安全弁用フイルムの単位時間当たりのガス透過量が少なく、大型の電気化学素子(大型電気二重層キャパシタ)に適用するには課題が残されている。
【0013】
更に、近年は、携帯電話、パソコン及びPDA等の電子機器が小型化されるに伴い、これらの電気化学素子が超小型化されている。加えて、製造時のハンダリフロー時の耐熱特性や携帯機器の使用環境条件が厳しくなり、これらに使用される電気化学素子のガス発生問題が深刻化しつつある。
【0014】
また、HEV車(ハイブリットカー)の実用化に伴い、HEV車が寒冷地で使用されるようになり、HEV車の低温対策として、ニッケル水素電池と併用される大容量の電気二重層キャパシタが実用化されている。これらの電気化学素子に対しては、+60〜−30℃の温度サイクル試験が要請されており、ガス発生対策が急務である。
【0015】
更に、2007年度に入り、トヨタ自動車株式会社、ダイハツ工業株式会社が、Brake by wireの用途から、エンジンや触媒アシストに電気二重層キャパシタを実用化している。また、株式会社リコーが、業務用高速複写機に大型電気二重層キャパシタを実用化している。このような大型で、大電流用途には、缶体に大型のアルミ缶が使用されるため、軽量、より小型化が期待され、低圧駆動で、アスペクト比の小さい、小型で、瞬時ガス逸散可能な自己復帰型安全弁の開発が急務になっている。
【0016】
本発明は、上記事実を考慮して、極めて信頼性が高く、低圧作動が可能で、通常使用時に容器内に発生する種々のガスのうち副生ガスのみを、容器内圧が設定圧以上になったときに該容器外に瞬時に逸散させると共に、ガス逸散後に自己復帰することができ、かつ超小型から大型の電気化学素子にも応用することが可能な安全弁及び該安全弁に用いる面状ばねを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1の発明(面状ばね)は、面状かつ枠状に形成された基部と、該基部の面方向内側に、複数のばね素子部を介して弾性的に支持される荷重受け部と、を一体的に有している。
【0018】
請求項1に記載の面状ばねでは、面状かつ枠状に形成された基部と、該基部の面方向内側に、複数のばね素子部を介して弾性的に支持される荷重受け部とを一体的に有しているので、荷重受け部に荷重が入力された際に、該荷重受け部は基部に対して瞬時に、かつ弾性的に変位し、荷重がなくなると元の状態に自己復帰する。
【0019】
従って、この面状ばねを安全弁に適用することで、極めて信頼性が高く、低圧作動が可能で、通常使用時に対象容器内に発生する種々のガスのうち副生ガスのみを、容器内圧が設定圧以上になったときにガス逸散口を開いて該容器外に瞬時に逸散させると共に、ガス逸散後に自己復帰してガス逸散口を閉じることができ、かつ超小型から大型の電気化学素子にも応用することが可能な安全弁を得ることができる。
【0020】
請求項2の発明は、請求項1に記載の面状ばねにおいて、前記基部、前記ばね素子部及び前記荷重受け部の少なくとも1箇所には、該荷重受け部に所定以上の荷重が作用した際に壊裂する壊裂部が設けられている。
【0021】
請求項2に記載の面状ばねでは、荷重受け部に所定以上の荷重が作用した際に、基部、ばね素子部及び荷重受け部の少なくとも1箇所に設けられた壊裂部が壊裂する。従って、この面状ばねを安全弁に適用することで、対象容器内に過大な圧力が生じた場合に、該圧力を瞬時に逸散させることができる。
【0022】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の面状ばねにおいて、前記基部の外形寸法をXとし、前記ばね素子部の弾性変形による前記基部の厚さ方向の一方における前記荷重受け部の変位可能寸法をYとすると、アスペクト比(Y/X)が0.1〜0.5である。
【0023】
請求項3に記載の面状ばねでは、基部の外形寸法をXとし、ばね素子部の弾性変形による基部の厚さ方向の一方における荷重受け部の変位可能寸法をYとすると、アスペクト比(Y/X)が0.1〜0.5であるので、面状ばねを小型化しつつ、荷重入力時における荷重受け部の変位の応答精度を高めることができる。
【0024】
請求項4の発明は、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の面状ばねにおいて、前記面状ばねは、Niの電鋳金属、Ni系合金の電鋳合金、Cuの電鋳金属、Cu系合金の電鋳合金、又はPd−Ni合金、Pd−Co合金若しくはPd−Ni−Co三元合金であってPdが10〜90%含まれた電鋳合金で製作されている。
【0025】
請求項4に記載の面状ばねでは、面状ばねは、Niの電鋳金属、Ni系合金の電鋳合金、Cuの電鋳金属、Cu系合金の電鋳合金、又はPd−Ni合金、Pd−Co合金若しくはPd/Ni/Co三元合金であってPdが10〜90%含まれた電鋳合金で製作されているので、ばね特性、耐食性、信頼性を高めることができる。
【0026】
請求項5の発明は、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の面状ばねにおいて、前記面状ばねの厚さは、1〜100μmである。
【0027】
請求項5に記載の安全弁では、面状ばねの厚さは、1〜100μmであるので、機械的強度を確保しつつ、製作コストを抑制することができる。
【0028】
請求項6の発明(安全弁)は、請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の面状ばねと、前記面状ばねによりガス逸散孔に押圧付勢される弁体と、を有している。
【0029】
請求項6に記載の安全弁では、請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の面状ばねと、面状ばねによりガス逸散孔に押圧付勢される弁体とを有しているので、面状ばねが適宜弾性変形することによって、該安全弁が取り付けられた容器の通常使用時の調圧を行うことができる。壊裂部を有する面状ばねでは、面状ばねの荷重受け部材に所定以上の荷重が作用した際には、該壊裂部が壊裂することで、容器内の圧力を逸散させることができる。
【0030】
請求項7の発明(電気化学素子)は、請求項6に記載の安全弁を有している。
【0031】
請求項7に記載の電気化学素子では、請求項6に記載の安全弁を有しているので、通常使用時に該電気化学素子の容器内に発生する種々のガスのうち副生ガスのみを、容器内圧が設定圧以上になったときに該容器外に瞬時に逸散させることができる。安全弁に壊裂部を有する面状ばねが用いられている場合、容器内に過大な圧力が生じた際に、該壊裂部が壊裂することで、該圧力を瞬時に逸散させることができる。このため、電気化学素子の信頼性や安全性を高めることができる。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載の面状ばねによれば、極めて信頼性が高く、低圧作動が可能で、通常使用時に容器内に発生する種々のガスのうち副生ガスのみを、容器内圧が設定圧以上になったときに該容器外に瞬時に逸散させることができ、かつ超小型から大型の電気化学素子にも応用することが可能な安全弁を得ることができる、という優れた効果が得られる。
【0033】
請求項2に記載の面状ばねによれば、対象容器内に過大な圧力が生じた場合に、該圧力を瞬時に逸散させることが可能な安全弁を得ることができる、という優れた効果が得られる。
【0034】
請求項3に記載の面状ばねによれば、面状ばねを小型化しつつ、荷重入力時における荷重受け部の変位の応答精度を高めることができる、という優れた効果が得られる。
【0035】
請求項4に記載の面状ばねによれば、ばね特性、耐食性、信頼性を高めることができる、という優れた効果が得られる。
【0036】
請求項5に記載の安全弁によれば、機械的強度を確保しつつ、製作コストを抑制することができる、という優れた効果が得られる。
【0037】
請求項6に記載の安全弁によれば、安全弁が取り付けられた容器の通常使用時の調圧を行うことができる、という優れた効果が得られる。
【0038】
請求項7に記載の電気化学素子によれば、電気化学素子の耐久性や安全性を高めることができる、という優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1及び図2は、面状ばねの第1構成例に係り、図1は、面状ばねを示す正面図である。
【図2】面状ばねの外形寸法に対する荷重受け部の変位可能量を示す側面図である。
【図3】第2構成例に係る面状ばねを示す正面図である。
【図4】第3構成例に係る面状ばねを示す正面図である。
【図5】第4構成例に係る面状ばねを示す正面図である。
【図6】壊裂部の構成を示す、要部拡大図である。
【図7】第5構成例に係る面状ばねを示す正面図である。
【図8】壊裂部の構成を示す、要部拡大図である。
【図9】第6構成例に係る面状ばねを示す正面図である。
【図10】壊裂部の構成を示す、要部拡大図である。
【図11】第7構成例に係る面状ばねを示す正面図である。
【図12】第8構成例に係る面状ばねを示す正面図である。
【図13】第9構成例に係る面状ばねを示す正面図である。
【図14】第10構成例に係る面状ばねを示す正面図である。
【図15】第11構成例に係る面状ばねを示す正面図である。
【図16】面状ばねの厚さと応答作動圧力との関係を示す線図である。
【図17】第12構成例に係る面状ばねを示す正面図である。
【図18】第13構成例に係る面状ばねを示す正面図である。
【図19】第14構成例に係る面状ばねを示す正面図である。
【図20】第15構成例に係る面状ばねを示す正面図である。
【図21】第16構成例に係る面状ばねを示す正面図である。
【図22】各種電鋳金属の応力とひずみの関係を示す線図及び表である。
【図23】フォトエレクトロフォーミングにおいて、レジストにより制御したパターンと電鋳金属を示す模式図である。
【図24】電鋳で製作したばね素子部の幅寸法及び厚さ寸法を示す拡大斜視図である。
【図25】電気化学素子の缶体の弁座に取り付けられた安全弁を示す断面図である。
【図26】皿ばねを示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
[面状ばね]
(第1構成例)
図1において、第1構成例に係る面状ばね1は、基部20と、荷重受け部22とを一体的に有している。
【0041】
基部20は、面状かつ枠状に形成されており、例えば円環状かつ平面状に形成されている。なお基部20の外形形状は円形に限られるものではなく、多角形や楕円形等であってもよい。
【0042】
荷重受け部22は、基部20の面方向内側に、複数のばね素子部26を介して弾性的に支持されている。具体的には、荷重受け部22は、例えば基部20の中央部に位置している。また荷重受け部22の中央には、後述する安全弁40の弁体42(図25)が嵌合するように、貫通孔22Aが形成されている。これにより、荷重受け部22は円環状となっている。また、面状ばね1において、基部20、荷重受け部22及びばね素子部26の何れでもない領域は、孔部30とされている。
【0043】
ばね素子部26は、荷重受け部22の外周縁と基部20の内周縁とを連結するように該基部20の半径方向に延び、該基部20の周方向の6箇所に配置されている。換言すれば、各ばね素子部26は、60°間隔で均等に配置されている。各ばね素子部26は、例えば基部20の面方向、かつ該基部20の半径方向と直交する方向に振幅を有する正弦波状に形成されている。
【0044】
基部20、ばね素子部26及び荷重受け部22の少なくとも1箇所には、該荷重受け部22に所定以上の荷重が作用した際に壊裂する壊裂部28が設けられている。第1構成例では、例えば荷重受け部22に壊裂部28が設けられている。この壊裂部28は、局部的に幅狭に形成されたくびれ部として構成され、荷重受け部22の周方向の例えば2箇所に形成されている。なお、壊裂部28の構造は、後述する第2構成例から第16構成例のように、応用品(電気化学素子等)の圧力や壊裂応答速度に応じて、適宜変更される。
【0045】
図2に示されるように、面状ばね1は、基部20の外形寸法(外径)をXとし、ばね素子部26の弾性変形による基部20の厚さ方向の一方における荷重受け部22の変位可能寸法をYとすると、アスペクト比(Y/X)が0.1〜0.5となっている。ここで、アスペクト比の下限値を0.1としたのは、この値未満では、荷重受け部22時に荷重受け部22が変位する際の応答精度が劣るようになるからである。また、アスペクト比の上限値を0.5としたのは、この値を超えると、面状ばね1の形状が大きくなるからである。従って、このようにアスペクト比を設定することで、面状ばね1を小型化しつつ、荷重入力時における荷重受け部22の変位の応答精度を高めることができる。なお、図2においては、荷重受け部22の変位方向が、基部20の厚さ方向の上方となっているが、下方にも同様に変位可能である。
【0046】
また、面状ばね1の厚さZは、1〜100μmである。ここで、厚さZの下限値を1μmとしたのは、この値を下回ると、面状ばね1の機械的強度を確保することが難しくなるからである。また上限値を100μmとしたのは、この値を上回ると、面状ばね1の製作コストが高くなるからである。従って、このように面状ばね1の厚さZを設定することで、面状ばね1の機械的強度を確保しつつ、製作コストを抑制することができる。なお、この厚さZの範囲の妥当性については、後述する第11構成例で改めて説明する。
【0047】
面状ばね1は、ばね特性、耐食性及び信頼性の確保を考慮して、例えばNiの電鋳金属、Ni系合金の電鋳合金、Cuの電鋳金属、Cu系合金の電鋳合金、又はPd−Ni合金、Pd−Co合金若しくはPd/Ni/Co三元合金であってPdが10〜90%含まれた電鋳合金で製作される。これに加えて、Mo、Nb、Fe、Mn等の磁性元素を添加することも可能である。面状ばね1の製法については、後に詳述する。なお、面状ばね1の材質は、金属には限られず、ばね性を有するものであればどのような材料を用いてもよい。例えば、ばね性を有する高分子材料やセラミックスであってもよい。
【0048】
(第2構成例)
図3において、第2構成例に係る面状ばね2では、壊裂部28が、荷重受け部22の周方向の6箇所に形成されている。ばね素子部26も、基部20の周方向の6箇所に配置されており、隣り合うばね素子部26間に、壊裂部28がそれぞれ形成されている。他の部分については、第1構成例と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0049】
(第3構成例)
図4において、第3構成例に係る面状ばね3では、隣り合うばね素子部26間において、例えば荷重受け部22の外周に開口する切欠き22Bが、該荷重受け部22の周方向の6箇所に形成されている。ばね素子部26も、基部20の周方向の6箇所に配置されており、隣り合うばね素子部26間に、切欠き22Bがそれぞれ形成されている。切欠き22Bは、荷重受け部22の周方向において部分的に幅広となっており、これにより荷重受け部22に形成されるくびれ部が、壊裂部28となっている。他の部分については、第1構成例と同様である。
【0050】
(第4構成例)
図5において、第4構成例に係る面状ばね4では、荷重受け部22の中央に貫通孔22Aが設けられており、かつ荷重受け部22の外周に開口する切欠き22Bが、該荷重受け部22の周方向におけるばね素子部26の両側にそれぞれ形成されている。図6に示されるように、この切欠き22Bは、荷重受け部22の周方向におけるばね素子部26の両側に一対形成され、該荷重受け部22の中心側に向かって互いに接近するように延びて終端している。これにより荷重受け部22に形成されるくびれ部が、壊裂部28となっている。他の部分については、第1構成例と同様である。
【0051】
(第5構成例)
図7において、第5構成例に係る面状ばね5では、基部20の内周に開口する切欠き20Bが、該基部20の周方向におけるばね素子部26の両側にそれぞれ形成されている。図8に示されるように、この切欠き20Bは、基部20の周方向におけるばね素子部26の両側に一対形成され、該基部20の半径方向外側に向かって互いに接近するように延びて終端している。これにより基部20に形成されるくびれ部が、壊裂部28となっている。他の部分については、第1構成例と同様である。
【0052】
(第6構成例)
図9,図10において、第6構成例に係る面状ばね6では、壊裂部28がばね素子部26に設けられている。この壊裂部28は、正弦波状のばね素子部26における、例えば湾曲部の外周側に切欠き状にそれぞれ形成されている。他の部分については、第1構成例と同様である。
【0053】
(第7構成例)
図11において、第7構成例に係る面状ばね7では、ばね素子部26が、荷重受け部22の中心部を中心として同心円状となる周方向部26Aと、荷重受け部22、各周方向部26A及び基部20を連結するように該基部20の半径方向に延び、該基部20の周方向の8箇所に配置される径方向部26Bとを有して構成されている。各径方向部26Bは、45°間隔で均等に配置されている。他の部分については、第1構成例と同様である。
【0054】
(第8構成例)
図12に示されるように、第8構成例に係る面状ばね8は、第7構成例に係る面状ばね7において、ばね素子部26における径方向部26Bを、基部20の周方向の4箇所に配置したものである。径方向部26Bは、45°間隔で均等に配置されている。他の部分については、第7構成例と同様である。
【0055】
(第9構成例)
図13に示されるように、第9構成例に係る面状ばね9では、第8構成例に係る面状ばね8において、同心円状の孔部30の周方向の位相を、径方向において1つおきに45°ずらしたものである。これに伴い、径方向部26Bは、基部20の径方向において、断続的に配置されている。
【0056】
(第10構成例)
図14において、第10構成例に係る面状ばね10では、ばね素子部26が、径方向部26Bと周方向部26Aとを交互に形成することで構成されている。このばね素子部26は、基部20の周方向の4箇所に設けられている。このようにばね素子部26を構成することで、該ばね素子部26の長さをより多く確保して、荷重受け部22に入力される荷重に対する感度を高めると共に、基部20の厚さ方向への荷重受け部22の変位可能寸法Y(図2)をより大きく設定できるようになっている。他の部分については、第1構成例と同様である。
【0057】
(第11構成例)
図15に示されるように、第11構成例に係る面状ばね11は、第10構成例に係る面状ばね10において、ばね素子部26を、基部20の周方向の8箇所に設けたものである。
【0058】
ここで、Niが40%、Pdが60%の合金を材料に用いて、図15に示される寸法の面状ばね11を電鋳により製作し、該面状ばね11の厚さと応答作動圧力との関係について試験を行ったので、その結果について説明する。試験結果は、表1及び図16に示す通りである。この試験によれば、面状ばね11の厚さを1〜100μmの範囲に設定することで、厚さと応答作動圧力との関係が直線的になり、優れたばね特性が得られることがわかる。
【0059】
【表1】
【0060】
(第12構成例)
図17において、第12構成例に係る面状ばね12では、ばね素子部26が、径方向部26Bと周方向部26Aとを交互に形成すると共に、基部20の径方向において隣り合う周方向部26A間に、径方向部26Bに連結される環状部26Cを形成することで構成されている。このばね素子部26は、基部20の周方向の8箇所設けられている。他の部分については、第1構成例と同様である。
【0061】
(第13構成例)
図18において、第13構成例に係る面状ばね13では、各々のばね素子部26が台形の折れ線状に形成されている。このばね素子部26は、2本で1組をなし、基部20の周方向に8組設けられている。1組のばね素子部26は、基部20の半径方向を中心軸として略線対称となっている。他の部分については、第1構成例と同様である。
【0062】
(第14構成例)
図19に示されるように、第構成例に係る面状ばね14は、第13構成例に係る面状ばね13において、ばね素子部26を、基部20の周方向に10組設けたものである。
【0063】
(第15構成例)
図20において、第構成例に係る面状ばね15では、各々のばね素子部26が周方向部26Aと径方向部26Bとを有する折れ線状に形成されている。このばね素子部26は、2本で1組をなし、基部20の周方向に8組設けられている。1組のばね素子部26は、基部20の半径方向を中心軸として略線対称となっている。1組のばね素子部26の間には、略十字形の孔部30が形成されている。また隣り合う2組のばね素子部26の間には、略H形の孔部30が形成されている。他の部分については、第1構成例と同様である。
【0064】
(第16構成例)
図21に示されるように、第構成例に係る面状ばね16は、第1構成例に係る面状ばね1において、正弦波状のばね素子部26が、基部20の周方向の18箇所に設けられている。荷重受け部22に貫通孔22Aが形成されていない点を除き、他の構成は第1構成例と同様である。
【0065】
(他の構成例)
面状ばねの構成は、上記した第1構成例から第16構成例に限られるものではなく、用途や使用条件に応じて適宜構成を変更することが可能である。
【0066】
また第7構成例から第16構成例において、荷重受け部22に、第1構成例における貫通孔22Aに相当する形状を設けてもよい。また第7構成例から第16構成例に、第1構成例から第6構成例に係る壊裂部28を適宜組み合わせることも可能である。
【0067】
上記各構成例では、面状ばねの形状を平面状としたが、これに限られず、凹凸面や円弧面等を含んでいてもよい。特に、第7構成例から第16構成例のように、荷重受け部22に貫通孔22Aを設けない場合には、後述する弁体42(図25)に対応する凹面を設けてもよい。また、壊裂部28を設けない構成としてもよい。
【0068】
[面状ばねの製法]
本実施形態に係る面状ばね1〜16の製法を述べる。本実施形態では、面状ばねの製法として、面状ばねシートを金型で打ち抜くことも容易に考えられるが、微圧で正確な作動を求められる電気化学素子用には、圧延によるばね材料では精度が得られない。本実施形態では、電鋳法で生産する。
【0069】
本実施形態の最も重要な部分は面状ばねであり、この部分の要求される要素は三次元的に小型で機械的機能を充分発揮しなければならないものである。そのため具体的には機械的性質の安定性、形状寸法の高精度、耐食などの化学的安定性が要求される。従来のコイルばねを利用した15〜20kgf/cm2程度のものは、ばねの強度の安定性、コイルばねの太さの精度のばらつきなどから、特に圧力が小さく、また細かく制御するばねには不向きである。このような背景の中で、極めて微妙な圧力を感知し反応するばね、特に3〜10kgf/cm2程度の微小な圧力に対して小型で素早く正確に反応するばねが求められている。
【0070】
従来のコイルばねのような構造では、小型化ができず、また微小な強度を微妙な動作で伝えるなどの機能に劣るなど、物性的にも無理であった。この問題を解決する方法として電鋳法による面状ばねの製作が最適である。電鋳技術は、電解により金属素材を析出させる技術であり、素材の厚さを電解時間で正確に制御できる。従って、電鋳技術は、いろいろな種類の厚さを容易に、また大量に製作できる技術である。そして電鋳技術で製作された金属素材の種類は、応力の問題からクロム以外の電解できる金属ならば殆がその対象になり、合金、アモルファス金属などを含めその種類は豊富である。
【0071】
電鋳金属の特徴は一般金属材料とは異なる有益な性質も有している。それは一般金属材料では溶解、圧延の工程で製造されるため結晶粒界での不純物やガスの巻き込みがあるのが一般的である。このため圧延材で作られる素材は厳密に言えば物性的にはばらつきがあり、これ等がばね材として使われており、特に小型のばねなど微小で微妙な力を感知しようとする機能には不向きである。特に微小なコイルばね部品などで問題になっている。
【0072】
一方、電鋳による金属材料は一般的な金属素材とは異なり、金属粒子間での不純物やガスピットなど無く、必要によっては上記に述べたごとく合金やアモルファス金属も電鋳により簡単に製作できる。そして、その都度材料の物性を加味して電鋳金属の選択をし、なおかつ同一金属においても物理的、化学的性質を制御できる。
【0073】
図22にその一例を示す。このグラフは電解条件、合金の組成、電解液の有機物添加剤により機械物性を変えられることを示している。そして、この性質は安定なものであることが確認されている。以上のように、電鋳材料の信頼性は極めて高く、ばね材として最適な物性を有する材料を選択できる。特にここで掲げるパラジウムニッケル(Ni−Pd)合金、パラジウムコバルト(Pd−Co)合金、パラジウムニッケルコバルト(Pd−Ni−Co)三元合金などはマイクロばねには最も望ましい材料である。とりわけ本実施形態の面状ばねとしての素材、及び製作における小型化に対しても最適な金属材料である。
【0074】
微妙に作動するばねの形状にするには、金属素材を例えば本実施形態に係る面状ばね形状にしなくてはならない、そのためには一般的にはフォトリソグラフィーを使う。この手法は電鋳技術とフォトリソグラフィーを併せたいわゆるフォトエレクトロフォーミングとして知られている方法が使われる。図23に示されるように、電鋳方法で電着させようとする平面導体基板32に、あらかじめフォトレジスト34で電着を阻止するパターニングを写真技術で行い、その後電鋳で所望の金属36を電着し必要な厚さに到達したときに剥離することで、必要な厚さの金属材料を用いて、上記した多様な各構成例のように、要求通りの形状とばね性を有した面状ばねを得られることになる。フォトエレクトロフォーミングで作られる寸法形状は、フォトレジスト34の厚さが十分にあればサイドへの拡がりも無く、また電鋳法と比較されるエッチング手法で製作したときに生じるサイドエッチの現象もないため、極めて精度の高い寸法を保持できる。無論、本実施形態に係る面状ばねの形は、プレスなどの機械加工でもできるのであるが、その際はプレスなどによる加工応力によるばね特性や物性に影響を与えないよう配慮が必要である。
【0075】
このフォトエレクトロフォーミングの作られた面状ばねの性能は、電鋳金属の素材の選択により面状ばねの機械的物性が決定され、面状ばねの平面的な形や材質の厚さなどが実質的なばねとして働く、例えば図1におけるばね素子部26の強さに代表される性能、機能を支配する。そしてばね形状の断面積などが最終的に設計され、決定される。本実施形態の面状ばねの強さは、該面状ばねが微妙に制御されたばねである必要性から、上記の製作プロセスを容易に制御できることが重要であり、フォトエレクトロフォーミングは製造法として最適な手法である。
【0076】
図24に示されるように、ばねの強度に影響を与える実質的なばねの断面寸法、即ちばねの断面積は、ばね素子部26の幅寸法と厚さ寸法を掛けて算出されるわけであるが、幅寸法については加工技術にフォトリソグラフィー技術を用いることで正確に制御でき、厚さ寸法については、電解の時間で決定されるため極めて正確に制御でき、何れもミクロンオーダーの正確さである。そのため極めて精度の高い本実施形態の面状ばねが製作できる。その結果、微小な圧力を微妙な変動要素に変化させること可能な面状ばねをフォトエレクトロフォーミングで作ることができる。
【0077】
[安全弁]
図25において、安全弁40は、自己復帰型の安全弁であり、例えば電気化学素子44の缶体48におけるガス逸散孔46の周囲の弁座50に取り付けられている。この安全弁40は、例えば第7構成例に係る面状ばね7(図11)と、該面状ばね7によりガス逸散孔(圧力開放口)に押圧付勢される弁体42とを有している。面状ばね7は、3〜5kgf/cm2の微圧にも正確に機能するように設定されている。面状ばね7の荷重受け部22は、例えば球体である弁体42に対応して、球面状に形成されている。
【0078】
弁体42の形状は、球体に限られず、面状等であってもよいが、ガス逸散孔46との接触部に、ガスの逸散が容易となるように、凹凸の波形を表面に形成しておくことが望ましい。また弁体42は弾性体で構成されている。その材質には、これまでに実用化されているSBR(スチレンブタジエンゴム)、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、ブチルゴム、フッ素ゴム、アクリル系ゴム等の、耐薬品性のプラスチックスを使用することが可能である。
【0079】
なお、弁体42は弾性体には限られず、剛体であってもよい。その場合には、ガス逸散孔46における弁体42との当接部に、密閉性を高めるための弾性体を配置することが望ましい。また、剛体の表面に弾性体をコーティングして弁体42を構成してもよい。
【0080】
凹形状の弁座50には、内径が弁体42よりも大径のリング状のガスケット52が嵌めこまれている。弁体42は、ガス逸散孔46よりも大径に構成され、該ガス逸散孔46を塞ぐように配置されている。ガスケット52上には、面状ばね7の基部20が載置され、荷重受け部22は弁体42に被さるように配置されている。面状ばね7は、弁座50にはめ込まれる皿ばね54により固定されている。図26に示されるように、皿ばね54は、面状ばね7の荷重受け部22と干渉しないように、該面状ばね7の基部20と同等の大きさの円環状に構成されており、外周には複数の突起部56が斜め上方に折曲げ形成されている。皿ばね54は、この突起部56において、弁座50の壁部に嵌合している。
【0081】
この安全弁40では、通常使用時には、電気化学素子44の缶体48内のガス発生量に応じて、面状ばね7が弾性変形することで、弁体42が上下して、電気化学素子44の缶体48内の圧力を設定内に調圧することができる。また異常時に、缶体48内に大量のガスが発生し、該缶体48内に過大な圧力が生じた際には、面状ばね7における壊裂部(図示せず)が壊裂することでガス逸散孔46を開き、該圧力を瞬時に逸散させることができる。これにより、電気化学素子44の爆発を防止することができる。
【0082】
このように、本実施形態に係る安全弁40は、極めて信頼性が高く、低圧作動が可能で、通常使用時に容器内に発生する種々のガスのうち副生ガスのみを、容器内圧が設定圧以上になったときに該容器外に瞬時に逸散させることができ、かつ超小型から大型の電気化学素子にも応用することができる。また対象容器内に過大な圧力が生じた場合には、該圧力を瞬時に逸散させることが可能である。
【0083】
[電気化学素子]
通常、自動車や複写機、ロボットのような産業機器には、50〜1900F/缶の中〜大型の有底アルミ缶から成る電気二重層キャパシタが使用される。アルミ缶体には、一対の活性炭を主成分とする分極性電極がセパレータを介して、有機系電解液と共に収納されている。そしてこの有底アルミ缶体の開口部に、本実施形態に係る面状ばねを用いた自己復帰型の安全弁を装備した封口体を設けることで、電気二重層キャパシタが構成される。
【0084】
この構成によれば、電気二重層キャパシタの内部の圧力が予定の圧力に成れば、瞬時に面状ばねからなる自己復帰型安全弁が作動し、内部で発生したガスを外部に逸散させ、内部のガス圧を正常に戻すことが可能である。
【0085】
また本実施形態に係る安全弁は、上記したように、従来よりも低圧の内部ガス圧で作動し、その応答速度が速く、薄型化や小型化が可能である。また電鋳法により面状ばねを製作することで、高精度の面状ばねを得ることができ、かつ該面状ばねを低価格で量産することが可能である。従って、本実施形態に係る面状ばね及び安全弁は、業務用複写機、ロボットのような産業機器や自動車のような重量効率や空間効率、コストダウンの要請に貢献することが可能であり、その工業的価値は極めて大なるものである。
【0086】
(試験例)
本実施形態に係る安全弁40を電気二重層キャパシタに用いて、その特性を確認した。電気二重層キャパシタの構成としては、分極性電極として活性炭を用い、アセチレンブラック及び水系のSRB系バインダーによりスラリーを作製し、20μmのAl集電体上に、乾燥厚みで20μmになるように塗布してこれを乾燥させ、内径35mmの500mmのAl缶に収納した。電解液として、溶媒であるプロピレンカーボネート(PC)と、テトラエチルアンモンニュームテトラフルオロボレート(TEABF4)との1mol/L(リットル)濃度の溶質からなる有機系電解液を用いた。実施例1及び実施例2には、図25に示される本実施形態に係る自己復帰型の安全弁40を用い、従来例1及び従来例2には、コイル型自己復帰安全弁を用いた。
【0087】
試験としては、まずガス発生が大きく、加速寿命試験の可能な70℃で、3.0V印加で、1000時間の耐久試験を行った。また電気化学素子内でのガス発生の多い異常使用条件として、70℃で、3.3Vで、100時間の耐久試験を行った。表2に、各実施例及び各従来例に係る電気二重層キャパシタの電気化学素子の耐久特性の比較を示す。
【0088】
まず、ガス発生が大きく、加速寿命試験の可能な70℃での3.0V印加試験の結果、従来例1では容量変化率が大きく、また内部抵抗も増加し、缶体の膨れや、電解液の漏液が激しいものであった。しかし、実施例1では、特に、異常が無かった。またガス発生を着実に缶体外に逸散させていたため、缶体の膨れや電解液の漏液はなく、特性的にも異常は無く、素晴らしい特性を示した。
【0089】
一方、異常使用条件として、70℃で、3.3Vで、100時間の耐久試験の結果、従来例2では、63時間経過後に爆発し、缶体が破損した。しかし、実施例2では、着実に異常ガス発生のガスを缶体外に逸散させていたため、100時間経過後も缶体の異常は、観られず、その後の試験継続が可能であった。
【0090】
【表2】
【0091】
試験例では、有機系の電解液を使用した電気二重層キャパシタの実施例を示したが、ここでその他の電気化学素子の応用例の効果を、一般論として説明する。
【0092】
(ニッケル水素電池の場合)
ニッケル水素電池の場合は、特に、水素ガスの発生が電池のサイクル特性を劣化させたり、50℃以上の耐熱性に弱いために電池の爆発の危険がある。従来例のコイルばねは、応答圧力が8〜20kgf/cm2のものが市販されている。また、このばね圧での応答速度は、150〜800msec/回である。本実施形態に係る面状ばねでは、3〜5kgf/cm2の微圧駆動が可能であるため、応答速度は、20〜100msec/回が可能である。
【0093】
このため安全弁の開口時に、外部空気の流入が少なくなり、外気からのCO2、H2Oの影響を著しく減少させることが可能になる。
【0094】
(リチウムイオン電池の場合)
リチウムイオン電池は、電気二重層キャパシタと同様にエチルメチルカーボネート(EMC)のような有機系溶媒とLiPF6(6フッ化燐酸リチウム)塩を溶質に用いるため、安全弁の開閉動作時に外部空気中のH2Oの影響が大である。しかしながら、本実施形態に係る安全弁では、面状ばねの応答圧力が低く、応答速度が速いため、著しく短時間で弁の開閉を行うことができ、リチウムイオン電池に対しても極めて有効である。
【符号の説明】
【0095】
1 面状ばね
2 面状ばね
3 面状ばね
4 面状ばね
5 面状ばね
6 面状ばね
7 面状ばね
8 面状ばね
9 面状ばね
10 面状ばね
12 面状ばね
13 面状ばね
14 面状ばね
15 面状ばね
16 面状ばね
20 基部
22 荷重受け部
26 ばね素子部
28 壊裂部
40 安全弁
42 弁体
44 電気化学素子
46 ガス逸散孔
X 基部の外形寸法
Y 変位可能寸法
【特許請求の範囲】
【請求項1】
面状かつ枠状に形成された基部と、
該基部の面方向内側に、複数のばね素子部を介して弾性的に支持される荷重受け部と、
を一体的に有する面状ばね。
【請求項2】
前記基部、前記ばね素子部及び前記荷重受け部の少なくとも1箇所には、該荷重受け部に所定以上の荷重が作用した際に壊裂する壊裂部が設けられている請求項1に記載の面状ばね。
【請求項3】
前記基部の外形寸法をXとし、前記ばね素子部の弾性変形による前記基部の厚さ方向の一方における前記荷重受け部の変位可能寸法をYとすると、
アスペクト比(Y/X)が0.1〜0.5である請求項1又は請求項2に記載の面状ばね。
【請求項4】
前記面状ばねは、Niの電鋳金属、Ni系合金の電鋳合金、Cuの電鋳金属、Cu系合金の電鋳合金、又はPd−Ni合金、Pd−Co合金若しくはPd−Ni−Co三元合金であってPdが10〜90%含まれた電鋳合金で製作されている請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の面状ばね。
【請求項5】
前記面状ばねの厚さは、1〜100μmである請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の面状ばね。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の面状ばねと、
前記面状ばねによりガス逸散孔に押圧付勢される弁体と、
を有する安全弁。
【請求項7】
請求項6に記載の安全弁を有する電気化学素子。
【請求項1】
面状かつ枠状に形成された基部と、
該基部の面方向内側に、複数のばね素子部を介して弾性的に支持される荷重受け部と、
を一体的に有する面状ばね。
【請求項2】
前記基部、前記ばね素子部及び前記荷重受け部の少なくとも1箇所には、該荷重受け部に所定以上の荷重が作用した際に壊裂する壊裂部が設けられている請求項1に記載の面状ばね。
【請求項3】
前記基部の外形寸法をXとし、前記ばね素子部の弾性変形による前記基部の厚さ方向の一方における前記荷重受け部の変位可能寸法をYとすると、
アスペクト比(Y/X)が0.1〜0.5である請求項1又は請求項2に記載の面状ばね。
【請求項4】
前記面状ばねは、Niの電鋳金属、Ni系合金の電鋳合金、Cuの電鋳金属、Cu系合金の電鋳合金、又はPd−Ni合金、Pd−Co合金若しくはPd−Ni−Co三元合金であってPdが10〜90%含まれた電鋳合金で製作されている請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の面状ばね。
【請求項5】
前記面状ばねの厚さは、1〜100μmである請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の面状ばね。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の面状ばねと、
前記面状ばねによりガス逸散孔に押圧付勢される弁体と、
を有する安全弁。
【請求項7】
請求項6に記載の安全弁を有する電気化学素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2010−255757(P2010−255757A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106857(P2009−106857)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(396026710)株式会社オプトニクス精密 (34)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(396026710)株式会社オプトニクス精密 (34)
【Fターム(参考)】
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