説明

面発光型半導体レーザー

本発明は、半導体チップ(1)と該半導体チップの外部に配置された外部共振器鏡(9)とが設けられており、前記半導体チップが、基板(2)と、該基板上に被着されたDBR鏡(3)と、該DBR鏡上に被着された、光形成用の活性層(5)を含むエピタキシ層列(4)とを備えている、面発光型半導体レーザーに関する。本発明によれば、前記DBR鏡および前記基板は前記活性層から放出される光に対して部分的に透過性を有しており、前記基板のうち前記活性層から遠い側の後面(14)は前記活性層から放出される光に対して反射性を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1の上位概念記載の面発光型半導体レーザーに関する。本願は独国出願第102008006993.0号に関連し、その優先権を主張するものである。
【0002】
外部共振器を備えた面発光型半導体レーザーは、ディスクレーザーまたはVECSEL(Vertical External Cavity Surface Emitting Laser)とも称され、高い出力および高いビーム品質を特長としている。
【0003】
こうした面発光型半導体レーザーでは、特に、放出される光の周波数変換を行う手段をレーザー共振器へ組み込むことができる。このようにすれば、赤外スペクトル領域の光を放出する半導体材料を用いて、周波数2倍化により、可視光、特に緑色スペクトル領域の光を形成することができる。ここで、周波数変換はふつう非線形の光学結晶によって行われる。効率的な周波数変換を達成するには、半導体レーザーは狭帯域の放出スペクトルとレーザー共振器内での高い光出力とを有さなければならない。特に、半導体レーザーは唯一の縦モードの光のみを放出することが望ましい。
【0004】
シングルモード動作を達成するために、外部共振器において、エタロンの形態の2つの帯域通過フィルタがしばしば用いられる。ここで、ふつう、大きな自由スペクトル領域を有する第1の帯域通過フィルタが用いられ、活性材料の増幅曲線とのスペクトル重畳分がレーザー動作において透過率最大値のモードのみを振動させる。フィルタの種々の透過率最大値のあいだでのレーザーモードの跳躍的変化は回避される。ただし、大きな自由スペクトル領域を有するエタロンの形態の帯域通過フィルタは透過率最大値の大きな半値幅を有しており、レーザー共振器の複数の縦モードが透過率最大値の内部で振動することになる。このため、第2の帯域通過フィルタによって、レーザー共振器の第1の帯域通過フィルタの透過率最大値に相当する複数の縦モードから個々の縦モードが選択される。
【0005】
しかし、2つのフィルタを用いる場合、これらを正確に位置調整しなければならず、レーザー共振器において望ましくない光損失が生じることがある。
【0006】
したがって、本発明の基礎とする課題は、縦モードの周波数選択を容易に行うことができ、しかもエタロンの形態の第2の帯域通過フィルタを省略できる面発光型半導体レーザーを提供することである。
【0007】
この課題は、請求項1に記載された特徴を有する面発光型半導体レーザーによって解決される。有利な実施形態および実施態様は従属請求項の対象となっている。
【0008】
すなわち、本発明では、半導体チップと半導体チップの外部に配置された外部共振器鏡とが設けられており、前記半導体チップが、基板と、基板上に被着されたDBR鏡と、DBR鏡上に被着された、光形成用(発光用)の活性層を含むエピタキシ層列とを備えている、面発光型半導体レーザーにおいて、前記DBR鏡および前記基板は前記活性層から放出される光に対して部分的に透過性を有しており、前記基板のうち前記活性層から遠い側の後面は前記活性層から放出される光に対して反射性を有している。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の面発光型半導体レーザーの第1の実施例の断面図である。
【図2】本発明の面発光型半導体レーザーの第2の実施例の断面図である。
【図3】スペクトルフィルタリングを行わない場合のレーザー共振器における縦モードのグラフである。
【図4】帯域通過フィルタの透過曲線のグラフである。
【図5】基板反射のある場合とない場合とを比べたDBR鏡での反射率のグラフである。
【図6】基板反射のある場合とない場合とを比べた面発光型半導体レーザーの放出スペクトルのグラフである。
【図7】本発明の第1の実施例の面発光型半導体レーザーで測定された放出スペクトルのグラフである。
【図8】本発明の第2の実施例の面発光型半導体レーザーで測定された放出スペクトルのグラフである。
【図9】基板上のDBR鏡の反射率Rをシミュレートしたグラフである。
【0010】
DBR鏡および基板が活性層から放出される光に対して部分的に透過性を有することにより、活性層から放出された光の一部が基板へ進入してこれを通過し、基板とDBR鏡との界面で反射されて活性層のほうへ戻る。DBR鏡は、活性層から放出される光に対して小さい部分透過性を有すればよい。例えばDBR鏡の透過率は1%よりはるかに小さくて良く、特に有利には0.1%より大きければ足りる。
【0011】
このように、DBR鏡と基板の反射性後面とのあいだにキャビティが形成され、その共振波長は基板の厚さによって定まる。キャビティの共振波長のもとでは、部分透過性のDBR鏡から基板の後面の方向へ進行する光成分がキャビティ内で多重に反射され、基板内で高い吸収損失が発生する。
【0012】
部分透過性のDBR鏡と基板およびその反射性後面によって形成されるキャビティは波長選択フィルタとして使用される。これは、光損失がキャビティでの吸収によって過大となるために、キャビティの共振波長に対応する縦モードが振動にいたらないからである。
【0013】
DBR鏡と基板およびその反射性後面によって形成されるキャビティは、レーザー共振器に配置されていたエタロンに置き換わるものであり、有利には、面発光型半導体レーザーの製造コストおよび位置調整コストが低減される。
【0014】
有利な実施形態では、DBR鏡と基板の反射性後面とによって形成されるキャビティは、活性層から放出される光の波長λにおいて、反共振性を有する。この場合、
n*d=(m+1/2)*λ/2
が成り立つ。ここで、nは基板の屈折率、dは基板の厚さ、mは整数、λは波長である。
【0015】
この場合、DBR鏡、基板およびその反射性後面によって形成されるキャビティでは、活性層から放出される光の吸収損失が最小となり、反射率が最大となる。隣接する縦モードの波長はレーザー波長とは異なり、高い吸収損失を有し、有利には抑圧される。
【0016】
活性層から遠い側の基板の後面には、有利には高反射性層が設けられる。高反射性層は特には金属または金属合金から成る層である。例えば高反射性層として金ゲルマニウムAuGeの層が挙げられる。
【0017】
有利には、活性層から放出され、基板と高反射性層との界面で反射される光の反射率は30%より多い。
【0018】
活性層から放出される光の一部を基板の後面へ反射させることにより、DBR鏡の周期数が従来の半導体レーザーのDBR鏡に比べて低減されるため、有利である。層対の数も低減されるので、DBR鏡の全厚さも低減される。これにより、活性層で生じる熱の熱放散も改善される。
【0019】
少数の層対によって低減されたDBR鏡の反射率は、基板の後面での光反射によって、有利には少なくとも部分的に補償される。これにより、レーザー動作に取って有利な高度の全反射が達成される。
【0020】
有利には、DBR鏡と基板の反射性後面とを組み合わせて形成されるキャビティでの全反射の反射率は99.9%以上である。このように高い反射率は、DBR鏡の透過率が0.1%より大きい場合にも達成される。有利には、こうした高い反射率の全反射を達成するために、基板の後面に30%より大きい反射率を有する高反射性層を塗布する。
【0021】
キャビティでの波長選択により、面発光型半導体レーザーの外部共振器内に付加的な帯域通過フィルタとして唯一のエタロンを設ければ充分となるという利点が得られる。なお、外部共振器内の唯一のエタロンは、有利には、唯一の均質な材料から成りかつコーティングを有さないエタロンであって、低コストに製造可能である。例えば、当該のエタロンはコーティングを有さないガラスプレートである。
【0022】
活性層で生じた熱を放出させるために、面発光型半導体レーザーを例えばヒートシンク上に実装することができる。ヒートシンクは特に基板の後面に実装される。この場合、周期の数の小さいDBR鏡によって、活性層とヒートシンクとのあいだの熱抵抗が低減される。
【0023】
本発明の或る実施形態によれば、面発光型半導体レーザーの基板はGaAs基板である。GaAs基板は赤外スペクトル領域、例えば波長約1060nmの発光波長に対して透過性を有する(つまり当該の発光波長に対してきわめて小さい吸光度を有する)。面発光型半導体レーザーの発光波長に応じて、当該の発光波長に対して少なくとも部分的に透過性を有する他の基板、例えばInP基板、サファイア基板またはSiC基板などを用いることもできる。
【0024】
面発光型半導体レーザーは、有利には、光ポンピング半導体レーザーである。特に、面発光型半導体レーザーはエピタキシ層列の外部に配置されたポンピング光源を有する。ポンピング光源は、例えば、発光波長よりも短いポンピング波長を有するポンピング光を活性層へ入力し、活性層を励起してレーザー光を放出させるダイオードレーザーである。
【0025】
活性層は特に単一量子井戸構造または多重量子井戸構造を有する。量子井戸構造とは、電荷担体が閉じ込め("コンファインメント")によってエネルギ状態を量子化させる構造を意味する。量子井戸構造という表現は量子化の規模を表すものではないので、ここには、量子ウェル、量子ワイヤ、量子ドットおよびこれらの組み合わせも含まれる。
【0026】
活性層は有利にはIII族‐V族化合物半導体、特にヒ化物半導体をベースとしている。"ヒ化物半導体をベースとしている"とは、エピタキシ活性層列またはそのうちの少なくとも1つの活性層がヒ化物半導体材料、有利にはAlGaIn1−n−mAs[0≦n≦1,0≦m≦1,n+m≦1]を含むことを意味する。ここで、こうした材料は必ずしも数学的に厳密に上述した式の組成を有さなくてよく、AlGaIn1−n−mAs材料の物理特性が大きく変化しないかぎり、1つまたは複数のドープ物質または添加物質を含んでいてよい。ただし、わかりやすくするために、上述の式では、部分的に少量の他の物質によって置換可能であるとしても、結晶格子の主たる要素Al,Ga,In,Asのみを示すことにする。
【0027】
本発明の有利な別の実施形態によれば、面発光型半導体レーザーはエピタキシ層列にモノリシックに組み込まれたポンピング光源を有する。面発光型半導体レーザーのエピタキシ層列にモノリシックにポンピング光源を組み込むこと自体は、国際公開第01/93386号公報から公知であるので、ここでこれ以上は立ち入らない。
【0028】
面発光型半導体レーザーは、有利には、活性層から放出される光の周波数を変換する周波数変換素子を含む。
【0029】
周波数変換は周波数逓倍化を意味し、特には周波数を2倍にすることである。例えば、面発光型半導体レーザーが赤外光を放出する活性層を有する場合、その赤外光が周波数変換素子によって可視光、有利には緑色光または青色光へ変換される。周波数変換素子は特には非線形の光学結晶である。周波数変換のために、有利には、DBR鏡および基板の反射性後面から形成されるキャビティによって波長選択が行われる。なぜなら、非線形の光学結晶による周波数変換は、シングルモード動作においては、光のスペクトル帯域幅が小さい場合に特に効率が良いからである。
【0030】
本発明の実施例を以下に図1〜図9を参照しながら説明する。図中、同一の要素または同じ機能を有する要素には同じ参照番号を付してある。また、図は縮尺通りには描かれておらず、説明をわかりやすくするために意図的に拡大して示されていることがある点に注意されたい。
【0031】
図1には、基板2を含む半導体チップ1を備えた面発光型半導体レーザーが示されている。基板2は、有利には、赤外スペクトル領域の波長に対して部分的に透過性を有するGaAs基板である。
【0032】
基板2にはDBR鏡3が被着されており、このDBR鏡3は、材料組成および屈折率の相互に異なる2つの半導体層から成る層対を複数個含んでいる。交互に異なる材料および屈折率を有する層から成るDBR鏡3の積層体は、有利には、基板2の上にエピタキシャルに成長される。
【0033】
半導体チップ1の成長方向において見ると、DBR鏡3に続いてエピタキシ層列4が堆積されている。エピタキシ層列4は、光6、特に紫外スペクトル領域、可視スペクトル領域または赤外スペクトル領域の光を形成するのに適した活性層5を有する。活性層5は複数の半導体層、特に量子井戸構造を含む活性層列であってもよい。
【0034】
活性層5は有利には赤外光を放出するのに適した層である。特に、活性層5はヒ化物半導体材料をベースとしている。"ヒ化物半導体をベースとしている"とは、エピタキシ活性層列またはそのうちの少なくとも1つの活性層がヒ化物半導体材料、有利にはAlGaIn1−n−mAs[0≦n≦1,0≦m≦1,n+m≦1]を含むことを意味する。ここで、こうした材料は必ずしも数学的に厳密に上述した式の組成を有さなくてよく、AlGaIn1−n−mAs材料の物理特性が大きく変化しないかぎり、1つまたは複数のドープ物質または添加物質を含んでいてもよい。ただし、わかりやすくするために、上述の式では、部分的に少量の他の物質によって置換可能であるとしても、結晶格子の主たる要素Al,Ga,In,Asのみを示すことにする。
【0035】
本発明の面発光型半導体レーザーは、半導体チップ1の外部に配置されたポンピング光源10によって半導体チップ1の活性層5へポンピング光11が入力されてこの活性層5の励起によりレーザー光6が放出される光ポンピング式の半導体レーザーである。
【0036】
本発明の面発光型半導体レーザーはDBR鏡3と半導体チップ1の外部に配置された外部共振器鏡9とによって形成されるレーザー共振器を有する。面発光型半導体レーザーのレーザー光6は外部共振器鏡9を通して出力される。
【0037】
ここで、面発光型半導体レーザーのレーザー共振器には周波数変換素子12が含まれている。周波数変換素子12により、活性層5から放出される光がより大きな周波数すなわちより短い波長の光へ変換される。周波数変換とは特に周波数を2倍にすることであり、面発光型半導体レーザーは活性層5から放出された光の1/2の波長のレーザー光を放出する。特に活性層5は赤外光を放出し、周波数変換素子12がこの赤外光を可視光、特に緑色光または青色光へ変換される。
【0038】
さらに、レーザー共振器は、特にエタロンの形態の帯域通過フィルタ13を含む。帯域通過フィルタ13は有利には大きな自由スペクトル領域を特徴としており、活性層5の広い増幅領域からレーザー発光用の狭い波長領域を選択する。エタロンの形態の帯域通過フィルタ13は大きな自由スペクトル領域と広く分散した透過率最大値とを有しており、複数の縦モードが透過領域内に位置するように透過率最大値が選択される。狭帯域のレーザー発光、特にシングルモード動作が所望される場合、従来の半導体レーザーではふつう、第1のエタロンの透過率最大値から少数のまたは唯一のレーザー縦モードを選択するために小さな半値幅の透過率最大値を有する第2のエタロンが使用される。
【0039】
本発明の面発光型半導体レーザーでは、DBR鏡3および基板2が放出される光6に対して部分透過性を有しており、かつ、基板2のうち活性層5から遠い側の後面14が反射性を有することによって、縦モードの選択が行われる。つまり、活性層5から放出される光6はDBR鏡3では部分的に反射されるのみであり、当該の光6のうち所定の成分がDBR鏡3および基板2を少なくとも部分的に透過する。有利には、DBR鏡3は0.1%より大きい透過率を有する。その後、基板2の反射性後面14で光6が反射されて、DBR鏡3および活性層5の方向へ戻る。
【0040】
基板2の後面14には有利には高反射性層7が設けられており、この高反射性層7は特には金属層または金属合金層である。特に有利には、高反射性層7はAuGe層である。
【0041】
有利には、基板2と高反射性層7との界面での反射の反射率は30%より大きい。基板2の後面14での反射の反射率が30%より大きいことにより、レーザー動作にとって有利な反射率99.9%を超える全反射がDBR鏡3と基板2の後面14とを組み合わせた機能部によって達成される。こうした高い反射率は、DBR鏡3が0.1%より大きい透過率を有する場合にも達成される。
【0042】
半導体チップ1のうち基板2または高反射性層7の反対側には、有利には、半導体チップからの光出力を改善するために、低反射性層8が被着される。
【0043】
DBR鏡3および基板2の反射性後面14はキャビティを形成しており、このキャビティの厚さdは基板2の厚さに等しい。レーザー縦モードの波長選択は、DBR鏡3と基板2の反射性後面14とから形成されるキャビティの共振条件を満足する複数の波長がキャビティ内で多重に反射され、高い吸収損失を生じさせることによって行われる。DBR鏡3と基板の後面14とを組み合わせた機能部は当該の複数の共振波長に反射率最小値を有する。これに対して、キャビティが反共振性を有する波長には反射率最大値が存在しており、レーザーの縦モードは当該の波長において共振器内で振動する。
【0044】
このようにしてモード選択が行われるため、面発光型半導体レーザーでは、有利には、外部共振器内に唯一の帯域通過フィルタ13を設けるのみで充分である。帯域通過フィルタ13は特にはコーティングを有さないエタロンであり、例えばコーティングを有さないガラスプレートの形状を有する。これにより製造の手間と費用とが低減される。
【0045】
DBR鏡3および基板2の反射性後面14から形成されるキャビティの反射率が高いことから、DBR鏡の層対の数が小さく、特に25個より少なくなるという利点が得られる。これにより、DBR鏡3の全厚さが小さくなり、活性層5で生じた熱の放散の度合も改善される。層対が少数となるとDBR鏡3の反射率は低下するが、このことは、基板2の後面14での光6の反射によって少なくとも部分的に補償される。
【0046】
図2に示されている本発明の第2の実施例の面発光型半導体レーザーは、半導体チップ1の外部に配置されたポンピング光源に代えて、半導体チップ1内にモノリシックに組み込まれた2つのポンピングレーザー15を用いている点が図1の実施例と異なる。ここでのポンピングレーザー15は、ポンピング光11を横方向で活性層5内に入力し、活性層5を光ポンピングするために設けられている。モノリシックに組み込まれたポンピングレーザー15により活性層5の効率的な光ポンピングが達成され、半導体チップ1の外部のポンピングレーザーを省略できるので、製造コストおよび位置調整コストが低減される。
【0047】
ポンピングレーザー15は例えば半導体チップ1のうち基板2から遠い側の表面に配置された第1の電気コンタクト16を介して電気的に接続されている。第2の電気コンタクトとして、基板2の後面14の反射率を高めるために当該の後面14に設けられる金属層または金属合金層7が用いられる。それ以外の点では図2の実施例は図1の実施例に相応しており、特に部分透過性を有するDBR鏡3および基板2の反射性後面14によってキャビティを形成することに関しては図1の実施例と同様である。
【0048】
DBR鏡3および基板2の後面14によって形成されるキャビティが面発光型半導体レーザーに及ぼす作用につき、以下に図3〜図8に即して説明する。
【0049】
図3には、1つまたは複数の波長選択素子が作用しない場合の共振器内のレーザー縦モードのスペクトルが示されている。このグラフには、レーザーモードの強度Iと波長λとの関係が表されている。縦モードのスペクトルは複数の最大値および複数の最小値を有しており、その間隔はレーザー共振器の長さによって定まる。長さ約5mmのレーザー共振器では、縦モードどうしの間隔は約0.1nmである。
【0050】
図4には波長フィルタ、例えばエタロンの透過率Tが波長λに関して示されている。こうしたフィルタの帯域幅は例えば約2nmであり、複数のレーザーモードが帯域通過フィルタの通過帯域に相当する。
【0051】
そのため、少数の縦モード、特に唯一の縦モードのみを振動させるには、ふつう、第2の波長選択素子を設けなければならない。
【0052】
図5の左方には、DBR鏡の反射率最大値近傍の反射率Rが波長λに関して示されている。図5の右方には、DBR鏡が部分透過性を有し、基板の反射性後面とともにキャビティを形成する場合の反射率最大値近傍の反射率Rが示されている。後者のケースでは、反射率最大値に対してキャビティの共振に相応する複数の最小値が重畳している。最大値はDBR鏡および基板の後面から形成されるキャビティが反共振性を有する波長に相当する。
【0053】
図6には、キャビティの共振効果がどのように縦モードの選択に利用されるかが示されている。図6の左方には、図4の透過曲線を有する従来のスペクトルフィルタリングのための帯域通過フィルタおよび図5の左方の反射曲線を有する従来のDBR鏡を備えた面発光型半導体レーザーで波長選択が行われる場合の放出スペクトルが示されている。帯域通過フィルタの透過率最大値において複数の縦モードが振動する。これは、DBR鏡の反射率最大値が広いせいで波長選択に殆ど寄与しないためである。
【0054】
図6の右方には本発明の面発光型半導体レーザーの放出スペクトルが示されている。本発明では、DBR鏡が部分透過性を有しかつ基板後面とともにキャビティを形成しており、これによって波長選択が行われる。この場合、唯一の縦モードが大きな強度を有するので、面発光型半導体レーザーのシングルモード動作が達成される。このようにして選択された縦モードは、DBR鏡および基板の反射性後面を組み合わせた機能部の反射率最大値内に存在する。
【0055】
図7,図8には、本発明の面発光型半導体レーザーの2つの実施例で測定された放出スペクトルが示されている。ここでも、図6の右方に示されている実施例と同様に、基板後面での反射の影響が見られる。ここでの基板はGaAs基板である。
【0056】
図7,図8に示されている面発光型半導体レーザーの放出スペクトルの相違は、基板の厚さの違いに由来している。図7の実施例では、基板厚さは115μmであり、放出スペクトルは1.2nmの間隔を有する2つの最大値を示している。図8の実施例では、基板厚さは80μmであり、放出スペクトルは基板の光学的厚さの逆数でスケーリングされ、1.8nmの間隔を有する2つの最大値を示している。
【0057】
図9には、80μm厚さのGaAs基板上に被着されたDBR鏡につき、基板後面での反射を考慮してシミュレートされた反射スペクトルが示されている。ここでは、DBR鏡および基板を組み合わせた機能部の反射率Rが、基板後面の種々の反射度Rに対して示されている。特に、反射度R=0%に対する反射率の曲線17、反射度R=35%に対する反射率の曲線18、反射度R=59%に対する反射率の曲線19および反射度R=83%に対する反射率の曲線20が示されている。
【0058】
このシミュレーションは、基板後面での所定の反射によって反射率最小値21が形成され、これが基板後面での反射の増大につれて増幅されることを表している。反射率最小値21の波長は、DBR鏡および基板後面によって形成されるキャビティの共振波長に相当する。反射率最小値21のあいだに、キャビティが反共振性を有する波長に相当する反射率最大値22が存在する。本発明の面発光型半導体レーザーでは、キャビティが有利には反共振性を有しており、活性層から放出される光の波長に反射率最大値22が存在する。
【0059】
本発明は前述した実施例に限定されるものではない。本発明の特徴は、それが特許請求の範囲に明示的に挙げられていなくても、単独でまたは任意に組み合わせて、すべて本発明の対象となりうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップ(1)と、該半導体チップの外部に配置された外部共振器鏡(9)とが設けられており、
前記半導体チップが、基板(2)と、該基板上に被着されたDBR鏡(3)と、該DBR鏡上に被着された、光形成用の活性層(5)を含むエピタキシ層列(4)とを備えている、
面発光型半導体レーザーにおいて、
前記DBR鏡および前記基板は前記活性層から放出される光(6)に対して部分的に透過性を有しており、
前記基板のうち前記DBR鏡から遠い側の後面(14)は前記活性層から放出される光に対して反射性を有している
ことを特徴とする面発光型半導体レーザー。
【請求項2】
前記DBR鏡および前記基板の反射性後面によって形成されるキャビティは前記活性層から放出される光の波長に反共振性を有する、請求項1記載の面発光型半導体レーザー。
【請求項3】
前記基板の反射性後面に高反射性層(7)が設けられている、請求項1または2記載の面発光型半導体レーザー。
【請求項4】
前記高反射性層は金属または金属合金を含む、請求項3記載の面発光型半導体レーザー。
【請求項5】
前記高反射性層を備えた前記基板の反射性後面の反射率は30%より大きい、請求項3または4記載の面発光型半導体レーザー。
【請求項6】
前記DBR鏡は前記活性層から放出された光に対して0.1%より大きい透過率を有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の面発光型半導体レーザー。
【請求項7】
前記DBR鏡および前記基板の反射性後面によって形成される前記キャビティは99.9%より大きい反射率を有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の面発光型半導体レーザー。
【請求項8】
前記外部共振器鏡に唯一のエタロン(13)が含まれている、請求項1から7までのいずれか1項記載の面発光型半導体レーザー。
【請求項9】
前記エタロンはコーティングされていないエタロンである、請求項8記載の面発光型半導体レーザー。
【請求項10】
前記エタロンはコーティングされていないガラスプレートである、請求項9記載の面発光型半導体レーザー。
【請求項11】
前記基板はGaAs,InP,SiCまたはサファイアを含む、請求項1から10までのいずれか1項記載の面発光型半導体レーザー。
【請求項12】
当該の面発光型半導体レーザーは光ポンピング半導体レーザーである、請求項1から11までのいずれか1項記載の面発光型半導体レーザー。
【請求項13】
当該の面発光型半導体レーザーは前記半導体チップの外部に配置されたポンピング光源(10)を有する、請求項12記載の面発光型半導体レーザー。
【請求項14】
当該の面発光型半導体レーザーは前記エピタキシ層列にモノリシックに組み込まれたポンピングレーザー(15)を有する、請求項12記載の面発光型半導体レーザー。
【請求項15】
当該の面発光型半導体レーザーは前記活性層から放出された光の周波数を変換する周波数変換素子(12)を有する、請求項1から14までのいずれか1項記載の面発光型半導体レーザー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−511444(P2011−511444A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544570(P2010−544570)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際出願番号】PCT/DE2008/002128
【国際公開番号】WO2009/094967
【国際公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(599133716)オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (586)
【氏名又は名称原語表記】Osram Opto Semiconductors GmbH
【住所又は居所原語表記】Leibnizstrasse 4, D−93055 Regensburg, Germany
【Fターム(参考)】