説明

音楽アミューズメント装置および同装置に適用されるコンピュータプログラム

【課題】 初心者が自動的に提示される演奏方法に従って演奏する場合でも、音楽ゲームとして楽しむことができるようにする。
【解決手段】 音楽アミューズメント装置は、ユーザが演奏操作すべき演奏内容を表す演奏データおよびユーザに演奏方法を指示するための演奏方法指示データを時系列的に記憶した曲データ記憶部BL4を有する。読み出し部BL5は、曲データ記憶部BL4に記憶されている演奏データおよび演奏方法指示データを時間経過に従って読み出す。表示部BL2は、読み出された演奏方法指示データによって表された演奏方法を表示する。演奏補助部BL6は、ユーザが演奏操作部BL1を演奏操作したとき、ユーザの演奏操作を表す演奏情報を前記読み出された演奏データを用いてユーザが演奏操作すべき演奏内容と所定の関係を有するように変換して楽音発生部BL3に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、演奏操作部および表示部を備えた音楽アミューズメント装置および同装置に適用されるコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されているように、表示画面を時間経過に従ってスクロールしながら演奏操作すべき音符をキャラクタで表示し、キャラクタに対応した音符と、演奏者により入力された演奏情報とを比較して、この比較結果に応じて得点を計算して表示するようにした音楽アミューズメント装置は知られている。
【特許文献1】特許第3058051号公報
【0003】
しかし、上記従来装置においては、演奏者により入力された演奏情報に基づく楽音を発生するようにしているので、演奏者がキャラクタによって指示される演奏方法どおりに演奏しないと、発生される一連の楽音が楽曲とはかけ離れたものとなる。したがって、演奏操作に未熟な初心者の演奏によって発生される楽音は一般のゲーム機器の単なる効果音と同じようになり、初心者にとっては、この音楽アミューズメント装置を音楽ゲームとして楽しむことができないとともに、音楽的な教育効果を得ることもできない。
【発明の開示】
【0004】
本発明は、上記問題に対処するためになされたもので、その目的は、初心者が自動的に提示される演奏方法に従って演奏する場合でも、音楽ゲームとして楽しむことができるとともに、音楽的な教育効果をももたらすようにした音楽アミューズメント装置および同装置に適用されるコンピュータプログラムを提供することにある。
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、演奏操作部および表示部を備えた音楽アミューズメント装置において、ユーザが演奏操作すべき演奏内容を表す演奏データおよびユーザに演奏方法を指示するための演奏方法指示データを時系列的に記憶した曲データ記憶手段と、曲データ記憶手段に記憶されている演奏データおよび演奏方法指示データを時間経過に従って読み出す読み出し手段と、前記読み出された演奏方法指示データに基づいて表示部に演奏方法を表示する表示制御手段と、ユーザが演奏操作部を演奏操作したとき、ユーザの演奏操作を表す演奏情報を前記読み出された演奏データを用いてユーザが演奏操作すべき演奏内容と所定関係を有するように変換して、同変換された演奏情報に基づく楽音を発生させる演奏補助手段とを設けたことにある。この場合、演奏方法指示データによって表示部に指示される演奏方法は、例えば、演奏操作されるべき演奏操作子の属する音域、演奏操作されるべき演奏操作子の数、演奏操作子が演奏操作されるべきタイミングなどの演奏方法を大まかに示すものである。
【0006】
このような本発明によれば、演奏補助手段により、ユーザの演奏操作を表す演奏情報は、ユーザが演奏操作すべき演奏内容を表す演奏データを用いて、ユーザが演奏操作すべき演奏内容と所定の関係を有するように変換され、同変換された演奏情報に基づく楽音が発生される。したがって、ユーザが演奏操作に未熟な初心者であっても、発生される一連の楽音は楽曲を構成する一連の音符に対応するような音楽的なものとなり、ユーザはこの音楽アミューズメント装置を音楽ゲームとして楽しむことができるようになるとともに、音楽的教育効果をユーザにもたらすことができるようにもなる。
【0007】
また、本発明の他の特徴は、前記音楽アミューズメント装置において、さらにユーザの演奏操作を表す演奏情報と、前記読み出された演奏データとを比較してユーザによる演奏操作を評価し、同評価結果を表示部に表示する評価手段を設けたことにもある。これによれば、演奏に対する評価がユーザに知らされるので、ユーザはこの音楽アミューズメント装置をよりゲーム感覚で楽しむことができるとともに、より大きな音楽的教育効果をユーザにもたらすことができる。
【0008】
さらに、本発明は、音楽アミューズメント装置に限定されるものでなく、音楽アミューズメント装置に適用される方法発明およびコンピュータプログラムに関する発明としても実施できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明すると、図1は、同実施形態に係る音楽アミューズメント装置を概略的に示すブロック図である。この音楽アミューズメント装置は、演奏操作子群11、設定操作子群12、表示器13および楽音信号発生回路14を備えている。
【0010】
演奏操作子群11は、発生楽音の音高を指定するための複数の演奏操作子(例えば、複数の鍵)からなり、各演奏操作子の操作はバス15に接続された検出回路16によって検出される。設定操作子群12は、この音楽アミューズメント装置の操作パネルに設けられて音楽アミューズメント装置の各部の動作態様を指示するための複数の設定操作子からなり、各設定操作子の操作はバス15に接続された検出回路17によって検出される。表示器13は、液晶ディスプレイ、CRTなどで構成され、文字、数字、図形などを表示する。この表示器13の表示内容は、バス15に接続された表示制御回路18によって制御される。
【0011】
楽音信号発生回路14は、バス15に接続されていて、後述するCPU21の制御のもとに供給される演奏データおよび各種楽音制御データに基づいて楽音信号を生成してサウンドシステム19に出力する。また、楽音信号発生回路14においては、前記楽音制御データにより制御されて、生成される楽音信号に効果も付与される。サウンドシステム19は、スピーカ、アンプなどを含んでいて、前記楽音信号に対応した楽音を放音する。
【0012】
また、この音楽アミューズメント装置は、バス15にそれぞれ接続されていてマイクロコンピュータ本体部を構成するCPU21、タイマ22、ROM23およびRAM24を備えているとともに、外部記憶装置25および通信インターフェース回路26も備えている。外部記憶装置25は、この音楽アミューズメント装置に予め組み込まれているハードディスクHD、同音楽アミューズメント装置に装着可能なコンパクトディスクCD、フレキシブルディスクFDなどの種々の記録媒体と、同各記録媒体に対するドライブユニットを含むものであり、大量のデータ及びプログラムの記憶及び読み出しを可能にしている。
【0013】
特に、本実施形態においては、ハードディスクHDには、図2に示す読み出しプログラム、図3に示す演奏補助プログラムおよび図4に示す比較・評価プログラムが記憶されている。また、このハードディスクHDには、楽曲をそれぞれ表す複数の曲データも記憶されている。なお、これらのプログラムおよび曲データは、予めハードディスクHDに記憶されていたり、コンパクトディスクCD、フレキシブルディスクFDなどからハードディスクHDに供給されたり、後述する外部機器31又は通信ネットワーク32を介した外部からハードディスクHDに供給されるものである。
【0014】
各曲データは、図5に示すように、時系列で配置された複数のタイミングデータ、複数のイベントデータおよびエンドデータからなる。タイミングデータは、イベントデータの出力タイミングを決定するもので、隣り合うイベントデータ間の相対時間を表すデータであっても、各イベントデータの楽曲の開始タイミングからの絶対時間を表すデータであってもよい。各イベントデータは、本実施形態では演奏データと演奏方法指示データを含む。演奏データは、和音の根音及びタイプを表す和音名データ(例えば、Cmaj,Fmaj,Gmaj)、メロディ、伴奏、ピアノ、ギターなどの各種パートの演奏音の音高を表す音名データ(例えば、C4,E4,G4)などからなる。本実施形態では、メロディパートの演奏音の音高を表す音名データからなる。これらの演奏データは、ユーザが演奏操作子群11を用いて演奏操作すべき演奏内容を示すもので、和音、各種パートの演奏音などの発生タイミング位置に記憶されている。演奏方法指示データは、演奏操作されるべき演奏操作子の属する音域、演奏操作されるべき演奏操作子の数、演奏操作子が演奏操作されるべきタイミングなどの演奏方法を示すものである。これらの演奏データは、ユーザに演奏方法を大まかに提示するためのもので、所定タイミング(例えば、各小節の先頭タイミング)ごとに記憶されている。本実施形態では、図7に示すように、各小節ごとに、ある音域内において、ある和音(例えば、Cmaj)の構成音に対応した3つ演奏操作子を4分音符タイミングで同時操作するとともに、ある音域内で1つの演奏操作子を4分音符タイミングで「低、高、低、高」の順に演奏操作する演奏方法を示している。エンドデータは、楽曲の終了を表すデータである。
【0015】
通信インターフェース回路26は、他の音楽アミューズメント装置、他の電子楽器、パーソナルコンピュータなどの外部機器31に接続可能となっていて、この音楽アミューズメント装置が外部機器31と各種プログラム及びデータを交信可能となっている。外部機器31として例えば鍵盤のような演奏装置を採用して、演奏操作子群11による演奏に代えまたは加えて、外部機器31から演奏情報を入力するようにしてもよい。また、通信インターフェース回路26は、インターネットなどの通信ネットワーク32を介して外部との接続も可能となっていて、この音楽アミューズメント装置が各種プログラム及びデータを外部から受信し、または外部へ送信できるようになっている。
【0016】
次に、上記のように構成した実施形態の動作について説明する。この動作説明においては、図1のハード回路および図2〜4のプログラム処理によって実現される音楽アミューズメント装置の各機能を表す図6の機能ブロック図の説明も混じえながら説明する。この機能ブロック図においては、演奏操作部BL1は、図1の演奏操作子群11および検出回路16に対応する。表示部BL2は、表示器13および表示制御回路18に対応する。楽音発生部BL3は、楽音信号発生回路14およびサウンドシステム19に対応する。曲データ記憶部BL4は、外部記憶装置25およびRAM24内の曲データを記憶した記憶領域に対応する。
【0017】
まず、CPU21は、図示しないプログラムの実行により、ハードディスクHDに記憶されていて複数の曲データのいずれかをユーザに指定させて、ユーザによって指定された曲データをハードディスクHDから読み出してRAM23に記憶しておく。なお、ハードディスクHD内に所望の曲データがない場合には、外部機器31又は通信ネットワーク32を介した外部から所望の曲データを入力してRAM23に記憶する。
【0018】
この曲データの選択後、CPU21は、図2の読み出しプログラム、図3の演奏補助プログラムおよび図4の比較・評価プログラムを実行する。このCPU21による読み出しプログラム、演奏補助プログラムおよび比較・評価プログラムの実行によって実現される機能は、図6の読み出し部BL5、演奏補助部BL6および比較・評価部BL7にそれぞれ対応する。したがって、以下の説明では、読み出し部BL5、演奏補助部BL6および比較・評価部BL7が、読み出しプログラム、演奏補助プログラムおよび比較・評価プログラムをそれぞれ実行するものとして説明する。
【0019】
読み出し部BL5は、ステップS10にて読み出しプログラムの実行を開始し、ステップS11にて、前記RAM24に記憶された曲データ中のイベントデータを構成する演奏方法指示データを所定小節分(例えば、4小節分)だけ先読み出しする。そして、この先読み出しした演奏方法指示データを表示データに変換して、同変換した表示データをRAM24に設けた表示バッファ領域に書き込むとともに、表示部BL2(表示制御回路18および表示器13)に出力する。本実施形態では、この演奏法指示データは、前述のように、指定された音域内で指定された和音名の構成音に対応する3つの演奏操作子を指定されたタイミング(例えば、4分音符タイミング)で同時操作することを表すとともに、指定された音域内で1つの演奏操作子を4分音符タイミングで「低、高、低、高」の順に交互に演奏操作することを表している。表示部BL2は、図7(A)に示すように、鍵盤を表示するとともに、前記供給された表示データに基づいて鍵盤の音域に対応させて音符記号および和音名を表示する。この和音名の表示においては、「Cmaj,Fmaj,Gmaj」のような和音名の表示(図7(A)(B))でも、C調を前提として「I,IV,V」のような度数表示でもよい。また、和音名まで表示しなくてもよい。なお、和音名に代えて、音符記号を五線譜上に表示するようにしてもよい。
【0020】
前記ステップS11の処理後、読み出し部BL5は、ステップS12にてユーザによるスタートの指示を待つ。ユーザが設定操作子群12を操作することによってスタートを指示すると、読み出し部BL5はステップS13による小節タイミングの判定処理に進む。スタート直後は、通常、小節タイミングであり、ステップS13にて「Yes」と判定して、ステップS14にてこの小節タイミング直後の1小節分の演奏方法指示データをRAM24から読み出して、RAM24内の曲データの記憶領域とは独立した比較バッファ領域に書き込む。また、前記スタート後においては、小節タイミングごとに、ステップS13にて「Yes」と判定して、ステップS14の前記処理を実行する。なお、既に書き込まれている以前の演奏方法指示データが存在する場合には、同以前の演奏方法指示データは消去される。
【0021】
前記ステップS14の処理後、読み出し部BL5は、ステップS15にて、所定小節先の1小節分の演奏方法指示データ(例えば、現在の小節を1小節目とすると5小節目の演奏方法指示データ)をRAM24から先読み出しして表示データに変換し、同変換した表示データを、RAM24内の表示バッファ領域に追加して書き込む。この表示バッファ領域には、現在の小節から所定小節分(例えば、5小節分)の演奏方法を示す表示データが時間経過に従って書き込まれることになる。
【0022】
前記ステップS15の処理後またはステップS13にて「No」すなわち小節タイミングでないと判定された場合、読み出し部BL5は、後述するステップS16〜S19の処理を経て、ステップS20にて演奏方法の表示画面をスクロール制御する。このスクロール制御においては、表示部BL2(すなわち表示器13)にて表示される音符列(図7参照)が、選択された楽曲(すなわち曲データ)の演奏テンポに応じて決定される楽曲の進行に従って、下方すなわち表示されている鍵盤に向かって移動して表示されるように、RAM24内の表示バッファ領域に記憶されている表示データが時間的に順次切り換えられて、表示部BL2(すなわち表示制御回路18)に出力される。
【0023】
このスクロール制御により、前述したスタート時の図7(A)の表示内容は楽曲の進行に従って徐々に下に移動して、次の小節タイミングには図7(B)に示すような表示内容になる。この演奏方法の表示においては、現在の演奏タイミングを表すタイミング基準線が表示され、このタイミング基準線を通過し始めるタイミングからタイミング基準線を跨いで表示されている音符列に対応した演奏操作子(鍵)がユーザによって演奏操作されることが指示されることになる。具体的には、音符列の両側の表示枠に対応した音域内において、指定された和音の構成音に対応した3つの演奏操作子を4分音符タイミングで同時操作するとともに、1つの演奏操作子を4分音符タイミングで「低、高、低、高」の順に演奏操作することが促される。
【0024】
そして、ユーザが演奏操作子群(鍵盤)11を演奏操作すると、演奏操作部BL1は前記演奏操作された演奏操作子(鍵)を表す演奏情報を演奏補助部BL6および比較・評価部BL7に供給する。この場合、演奏補助部BL6には和音に関する演奏情報のみが供給され、比較・評価部BL7には全ての演奏情報が供給される。
【0025】
一方、読み出し部BL5は、ステップS16〜S19の処理により、前記選択された曲データ中の和音名データおよび音名データを楽曲の進行に従ってRAM24から読み出す。すなわち、現在の演奏タイミングに発生される和音を表す和音名データが曲データ中に存在する場合には、ステップS16にて「Yes」と判定して、ステップS17にて該当する和音名データを曲データ中から抽出して、RAM24内に曲データを記憶する領域とは独立して設けた演奏補助バッファ領域に書き込む。なお、この演奏補助バッファ領域は、演奏補助部BL6の一部を構成するもので、前記和音名データの演奏補助バッファ領域への書き込みは、同和音名データを演奏補助部BL6に供給することを意味する。
【0026】
また、現在の演奏タイミングに発生されるパートの演奏音を表す音名データが曲データ中に存在する場合には、ステップS18にて「Yes」と判定して、ステップS19にて該当する音名データを曲データ中から抽出して、楽音発生部BL3(すなわち楽音信号発生回路14)に供給する。楽音発生部BL3は、この音名データにより表された楽音信号を生成して、同楽音信号に対応した楽音を発音する。したがって、本実施形態においては、曲データによって表されたパートに関しては、ユーザによる前記演奏操作とは無関係に、曲データ中の音名データを用いて自動演奏されることになる。
【0027】
そして、前述したステップS20の処理後、ステップS21にて、曲データ中のエンドデータのタイミングにより、現在の演奏タイミングが楽曲の終了タイミングであるか否かを判定する。楽曲の終了タイミングでなければ、ステップS21にて「No」と判定して、前述したステップS13〜S20の循環処理を続ける。一方、楽曲の終了タイミングになると、ステップS21にて「Yes」と判定して、ステップS22にて読み出しプログラムの実行を終了する。
【0028】
このような読み出しプログラムの実行に並行して、演奏補助部BL6は、図3の演奏補助プログラムを所定の短時間ごとに繰り返し実行している。この演奏補助プログラムの実行はステップS30にて開始され、演奏操作部BL1から和音に関する演奏情報が入力された場合のみ、ステップS31における「Yes」との判定のもとに、ステップS32,S33の処理を実行して、ステップS34にてこの演奏補助プログラムの実行を終了する。和音に関する演奏情報が入力されなければ、ステップS31にて「No」と判定して、ステップS34にて演奏補助プログラムの実行を終了する。
【0029】
ステップS32においては、前記読み出し部BL5から供給されている和音名データを用いて、和音名データによって表された和音と所定の関係を有する音に前記入力された和音に関する演奏情報を音高変換する。そして、ステップS33にて、演奏補助部BL6は、前記音高変換された演奏情報を楽音発生部BL3(すなわち楽音信号発生回路14)に供給する。楽音発生部BL3は、この変換された演奏情報により表された楽音信号を生成して、同楽音信号に対応した楽音を発音する。この場合の楽音信号は、和音に対応した複数の楽音である。これにより、本実施形態においては、ユーザによる和音演奏のタイミングに同期して、曲データ中の和音名データと所定の関係を有するように変換された和音が発音されることになる。
【0030】
この和音演奏に関する演奏情報の音高変換の一例について説明しておくと、例えば、演奏方法指示データすなわち表示部BL2によって演奏指示された音域がB1〜A2であり、和音名データがCmajを表していたとする。この場合、ユーザによる演奏操作により演奏操作部BL1から音名C2,E2,G2を表す演奏情報が入力されると、この演奏情報は変換されずにそのまま楽音発生部BL3に供給される。また、音名C2,F2,G2を表す演奏情報が入力されると、この演奏情報は音名C2,E2,G2を表す演奏情報に変換されて楽音発生部BL3に供給される。したがって、これらの場合には、楽音発生部BL3からは、音名C2,E2,G2を構成音とする和音が発音される。
【0031】
一方、ユーザによる演奏操作により演奏操作部BL1から音名C3,E3,G3を表す演奏情報が入力されると、この演奏情報は変換されずにそのまま楽音発生部BL3に供給される。また、音名C3,F3,G3を表す演奏情報が入力されると、この演奏情報は音名C3,E3,G3を表す演奏情報に変換されて楽音発生部BL3に供給される。したがって、これらの場合には、楽音発生部BL3からは、音名C3,E3,G3を構成音とする和音が発音される。
【0032】
このように、曲データ中の和音名データと所定の関係を有するように変換する例としては、入力された演奏情報の音名が前記和音名データが示す和音の構成音ではない場合に、前記和音構成音となるように変換するものがあげられる。このとき、入力された演奏情報の音域(オクターブ)は極力変化させないようにすると、演奏者が意図した音域で楽音が発音されることになり、演奏している気分にしたれるために好ましい。
【0033】
また、曲データ中の和音名データと所定の関係を有するように変換する他の例としては、入力された演奏情報の音名を前記和音名データが示す和音の構成音のうちの一部(例えば、1度音と5度音のみ)となるように変換するものや、前記和音名データが示す和音の背景となるスケール音に変換するものなどがあげられる。また、入力された演奏情報の音域によって、変換特性を異ならせる(例えば、低音域は和音構成音の一部、中音域は和音構成音、高音域はスケール音に変換する)ようにしてもよい。あるいは、曲データの進行に応じて、同じ音域であっても変換特性が変化するようにしてもよい。
【0034】
このように、ユーザの演奏操作を表す演奏情報は、ユーザが演奏操作すべき演奏内容(すなわち和音名)を表す演奏データ(和音名データ)を用いて、ユーザが演奏操作すべき演奏内容と所定の関係を有するように変換され、同変換された演奏情報に基づく楽音が発生される。したがって、ユーザが演奏操作に未熟な初心者であっても、発生される一連の楽音は楽曲を構成する一連の音符に対応するような音楽的なものとなり、ユーザはこの音楽アミューズメント装置を音楽ゲームとして楽しむことができるようになるとともに、音楽的教育効果をユーザにもたらすことができるようにもなる。
【0035】
また、前記読み出しプログラムの実行に並行して、比較・評価部BL7は、図4の比較・評価プログラムを所定の短時間ごとに繰り返し実行している。この比較・評価プログラムの実行はステップS40にて開始され、演奏操作部BL1から演奏情報が入力された場合のみ、ステップS41における「Yes」との判定のもとに、ステップS42,S43の処理を実行して、ステップS44にてこの演奏補助プログラムの実行を終了する。演奏情報が入力されなければ、ステップS41にて「No」と判定して、ステップS44にて演奏補助プログラムの実行を終了する。
【0036】
ステップS42においては、前記読み出し部BL5から供給されている1小節分の演奏方法指示データと、前記入力された演奏情報とを比較して、それらの一致の程度に応じてユーザの演奏操作を評価する。例えば、指示された音域内で演奏入力がなされたか、指示された音符数の演奏入力がなされたか、指示されたタイミングで演奏入力がなされたか、指示された音程関係(低、高、低、高)で演奏入力がなされたかなどを評価する。そして、ステップS43にて、この評価結果を表示部BL2に出力する。表示部BL2は、この供給された評価結果を表示してユーザに知らせる。この評価結果の表示としては、「とてもよい」、「よい」、「わるい」などの文字列を表示してもよいし、これらの評価を意味するアイコンを表示してもよいし、さらには両方を表示するようにしてもよい。また、評価結果の表示は、演奏開始から現在までの演奏の評価結果を時々刻々変化させながら表示してもよいし、楽曲の終了時にのみ1楽曲分の評価結果を表示するようにしてもよい。これによれば、演奏に対する評価がユーザに知らされるので、ユーザはこの音楽アミューズメント装置をよりゲーム感覚で楽しむことができるとともに、より大きな音楽的教育効果をユーザにもたらすことができる。
【0037】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態及びその変形例に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0038】
例えば、表示部BL2にて表示される演奏方法の指示においては、上記のように音符記号を表示するのに代えて、図8に示すように、音符に対応して予め決めたキャラクタ(図示例では四角)を表示するようにしてもよい。また、図9に示すように、左端または右端に演奏操作子群(すなわち、鍵盤)を表示するとともに、音符記号またはキャラクタの表示を横方向にスクロールするようにしてもよい。
【0039】
また、上記実施形態においては、演奏補助部BL6は、ユーザの和音に関する演奏を表す演奏情報を変更するようにした。しかし、これに代えまたは加えて、メロディパートに関する演奏情報すなわち上記例では「低、高、低、高」と演奏すべき演奏指示に従ったユーザによる演奏情報を変更するようにしてもよい。この場合、読み出し部BL5が音名データを演奏補助部BL6に供給するようにするとともに、演奏操作部BL1がメロディパートに関する演奏情報も演奏補助部BL6に供給し、演奏補助部BL6にて前記供給された演奏情報を音名データにより表された音高を表す演奏情報に変換して楽音発生部BL3に供給して、同変換された演奏情報に基づく楽音を楽音発生部BL3から発生させるようにすればよい。また、このメロディに関する演奏指示においても、音符列を五線譜上に表示するようにしてもよい。
【0040】
また、ユーザが、演奏補助部BL6によって演奏補助を受ける演奏の種類、すなわちメロディパート、伴奏パート、ピアノパート、ギターパート等の中から演奏補助を受ける一つ又は複数のパートを選択できるようにしてもよい。この場合、選択したパートごとにパートに適した音高変換ルールを適用するとともに曲データ中の選択したパートの音名データを用いて、演奏操作部BL1からの演奏情報の音高を選択したパートの雰囲気を出す(そのパート独特の響きを出す)ように音高変換し、楽音発生部BL3に供給する。また、変換された演奏情報に従った楽音は、選択したパートに適した音色で発音される。また、選択したパートの演奏データによる自動演奏音は発生されないようにするとよい。
【0041】
さらに、上記実施形態では、演奏操作子として鍵を採用した音楽アミューズメント装置について説明したが、鍵に代えて、単なる押圧スイッチ、タッチスイッチなどを音高を指定する演奏操作子を採用してもよい。また、本発明は、演奏操作子群11を外付けするようにしてもよく、曲データの読出しが可能であれば、音楽アミューズメント装置以外の電子楽器、パーソナルコンピュータなどの他の電子音楽装置にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態に係る音楽アミューズメント装置の全体ブロック図である。
【図2】前記音楽アミューズメント装置にて実行される読み出しプログラムを示すフローチャートである。
【図3】前記音楽アミューズメント装置にて実行される演奏補助プログラムを示すフローチャートである。
【図4】前記音楽アミューズメント装置にて実行される比較・評価プログラムを示すフローチャートである。
【図5】曲データのフォーマットの一例を示す図である。
【図6】前記音楽アミューズメント装置の機能ブロック図である。
【図7】(A)(B)は、演奏方法指示の表示例を示す図である。
【図8】他の演奏方法指示の表示例を示す図である。
【図9】さらに、他の演奏方法指示の表示例を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
11…演奏操作子群、13…表示器、14…楽音信号発生回路、21…CPU,25…外部記憶装置、BL1…曲データ記憶部、BL2…表示部、BL3…楽音発生部、BL4…曲データ記憶部、BL5…読み出し部、BL6…演奏補助部、BL7…比較・評価部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
演奏操作部および表示部を備えた音楽アミューズメント装置において、
ユーザが演奏操作すべき演奏内容を表す演奏データおよびユーザに演奏方法を指示するための演奏方法指示データを時系列的に記憶した曲データ記憶手段と、
前記曲データ記憶手段に記憶されている演奏データおよび演奏方法指示データを時間経過に従って読み出す読み出し手段と、
前記読み出された演奏方法指示データに基づいて前記表示部に演奏方法を表示する表示制御手段と、
ユーザが前記演奏操作部を演奏操作したとき、ユーザの演奏操作を表す演奏情報を前記読み出された演奏データを用いてユーザが演奏操作すべき演奏内容と所定の関係を有するように変換して、同変換された演奏情報に基づく楽音を発生させる演奏補助手段とを設けたことを特徴とする音楽アミューズメント装置。
【請求項2】
請求項1に記載した音楽アミューズメント装置において、さらに
前記ユーザの演奏操作を表す演奏情報と、前記読み出された演奏データとを比較して前記ユーザによる演奏操作を評価し、同評価結果を前記表示部に表示する評価手段を設けたことを特徴とする音楽アミューズメント装置。
【請求項3】
演奏操作部および表示部を備えた音楽アミューズメント装置に適用されるコンピュータプログラムであって、
曲データ記憶手段に記憶されていてユーザが演奏すべき演奏を表す演奏データおよびユーザに演奏方法を指示するための演奏方法指示データを時間経過に従って読み出す読み出しステップと、
前記読み出された演奏方法指示データに基づいて前記表示部に演奏方法を表示する表示制御ステップと、
ユーザが前記演奏操作部を演奏操作したとき、ユーザの演奏操作を表す演奏情報を前記読み出された演奏データを用いてユーザが演奏操作すべき演奏内容と所定の関係を有するように変換して、同変換された演奏情報に基づく楽音を発生させる演奏補助ステップとを含むことを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−23483(P2006−23483A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−200778(P2004−200778)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】