説明

音響出力装置、及び音響出力装置の制御方法

【課題】音響出力装置において、出力部の駆動開始時における回路オフセットに起因したポップ音の出力を抑制する。
【解決手段】音響出力装置は、音響を出力する出力部と、外部から受けた音響信号を増幅し、増幅した音響信号に応じた音響が前記出力部から出力されるように、前記出力部を駆動する駆動部とを備え、前記駆動部は、前記出力部を駆動し始めるときに、前記駆動部のゲインが小さな値から徐々に又は連続的に大きくなるように制御される機能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響出力装置、及び音響出力装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のDVC(ディジタル・ビデオ・カメラ)やDSC(デジタル・スチル・カメラ)等の携帯型電子機器には、動画や静止画の撮影機能の他に、撮影した画像を再生、編集、データ転送するなどのさまざまな機能が装備されている場合が多い。また、このような携帯型電子機器は、バッテリー消費量を抑制して長時間動作させるために、機能ごとに必要な部分にのみ電源を供給するといった電力制御が一般的に行われる。さらに、携帯型電子機器には、音響出力機能を装備しているものも多い。音響出力機能は、撮像と同時に録音された音響を再生して出力する以外にも、機能の切り替え時にそのことを使用者に知らせるビープ音を出力するために用いられている。
【0003】
ビープ音を出力する際には、出力直前に音響出力機能を動作状態にし、出力後に非動作状態にする。動作状態と非動作状態との切り替え時に、ポップ音と称する雑音がスピーカから出力されることがある。
【0004】
特許文献1には、本願の図9に示すようなショック音防止回路が記載されている。図9に示すように、特許文献1におけるショック音防止回路では、初期状態において、基準電圧発生回路805、第1のオペアンプ803及び第2のオペアンプ804がオフ状態である。また、この状態において、スピーカ入力端子806及び807の電圧と基準電圧VREFとはともにGNDレベルである。この状態から、スピーカ出力のオン制御に応じて、基準電圧発生回路805が起動してコンデンサC801を充電することにより、基準電圧VREFのレベルがGNDレベルからゆっくりと上がっていく。
【0005】
また、特許文献1における第1のオペアンプ803及び第2のオペアンプ804は、スピーカ出力のオン制御に応じて、ゆっくりとレベルが上がっていく基準電圧VREFがそれぞれ正極端子(+)に印加される。これにより、第1のオペアンプ803及び第2のオペアンプ804からそれぞれスピーカ入力端子806及び807へ出力される電圧も、基準電圧VREFに追従していく。このとき、端子801へ入力された音響信号に応じて、コンデンサC802の端子802側の電極を充電する電流Icが第1のオペアンプ803の出力端子から抵抗R801と抵抗R802とを流れる。このため、スピーカ808の負側入力端子806の電圧が基準電圧VREFよりもIc×R802だけ高くなり、スピーカ808の正側入力端子807の電圧が基準電圧VREFよりもIc×R802だけ低くなる。これにより発生する電位差がショック音の発生原因となってしまう。
【0006】
それに対して、特許文献1におけるスイッチ811は、基準電圧発生回路805の起動時からコンデンサC802の充電が完了するまでの時間だけオンすることにより、第1のオペアンプ803の帰還抵抗R802を短絡状態にする。これにより、特許文献1によれば、スピーカ808の負側入力端子806の電位と正側入力端子807の電位との差に起因したショック音を抑制できるとされている。
【0007】
特許文献2には、本願の図10に示すような音響機器901が記載されている。図10に示すように、特許文献2における音響機器901では、振幅変調及び周波数変調された音響信号がアンテナ903により受信され、その受信された音響信号がチューナ904により復調される。チューナ904は、その復調された音響信号をライン905経由で電力増幅手段910へ導出する。すなわち、増幅回路911は、ライン905へ導出された音響信号をライン912経由でミュート回路913へ供給する。ミュート回路913は、ミュート動作を行わない期間に、供給された音響信号をライン914経由でスピーカ915へ供給する。
【0008】
ここで、特許文献2の第4図に示すように、t1〜t2において、キー入力手段907の電源投入ボタン908が押圧操作される。時刻t3〜t5において、処理回路906は、ライン924及び端子923を介してミュート回路913へハイレベルのミュート信号を供給する。これにより、ミュート回路913は、ミュート動作を行い、供給された音響信号をライン914へ導出しない。特許文献2の第4図(5)に示される電源投入に起因したポップノイズは、時刻t5までに減衰している。そこで、時刻t5以降においてミュート回路913のミュート動作が解除される。これにより、特許文献2によれば、電源投入時におけるポップノイズの発生を確実に防止できるとされている。
【特許文献1】特開2006-042057号公報
【特許文献2】特開昭61-261905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1には、スイッチ811のオン/オフ制御を、基準電圧発生回路805の起動時からコンデンサC802の充電が完了するまでの時間をタイマーで計り、その時間が経過したらスイッチ811をオフするように制御することが記載されている。
【0010】
仮に、図9に示したショック音防止回路では、基準電圧発生回路805の起動時において、端子801へ音響信号が入力されていないとする。この場合でも、第1のオペアンプ803の負極端子(−)へ入力される信号と正極端子(+)へ入力される信号との間にオフセットが発生する。
【0011】
このとき、スイッチ811がオンしていることにより、第1のオペアンプ803のゲインが1に固定されており、スピーカ808の負側入力端子806の電位と正側入力端子807の電位との差すなわちオフセット電圧が発生する。その後、スイッチ811がオフすると、第1のオペアンプ803のゲインが1から−R802/(R801)へと急激に変化するので、スピーカ808の負側入力端子806の電位と正側入力端子807の電位との差も急激に変化する。これにより、スピーカ808は、負側入力端子806の電位と正側入力端子807の電位との差の急激な変化に起因したポップ音を出力する可能性がある。
【0012】
特に、DVCで撮影する際には、顔の近くにDVCを保持して操作するため、他の用途では気にならない程度のポップ音が問題となる。
【0013】
本発明の目的は、音響出力装置において、出力部の駆動開始時における回路オフセットに起因したポップ音の出力を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1側面に係る音響出力装置は、音響を出力する出力部と、外部から受けた音響信号を増幅し、増幅した音響信号に応じた音響が前記出力部から出力されるように、前記出力部を駆動する駆動部とを備え、前記駆動部は、前記出力部を駆動し始めるときに、前記駆動部のゲインが小さな値から徐々に又は連続的に大きくなるように制御される機能を有することを特徴とする。
【0015】
本発明の第2側面に係る撮像システムは、複数の機能のいずれかを用いて、被写体を撮像する撮像装置と、本発明の第1側面に係る音響出力装置と、前記複数の機能のうち前記撮像装置で用いられる機能を切り替える際に、切り替えることを示す音響が前記出力部から出力されるとともに、前記駆動部のゲインを徐々に又は連続的に大きくするように、前記音響出力装置を制御する制御部とを備えたことを特徴とする。
【0016】
本発明の第3側面に係る音響出力装置の制御方法は、音響を出力する出力部と、外部から受けた音響信号を増幅し、増幅した音響信号に応じた音響が前記出力部から出力されるように、前記出力部を駆動する駆動部とを有する音響出力装置の制御方法であって、前記駆動部のゲインが小さな値から徐々に又は連続的に大きくなるように前記駆動部が制御される第1のステップと、前記第1のステップの後に、前記駆動部が、外部から受けた音響信号を増幅し、増幅した音響信号に応じた音響が前記出力部から出力されるように、前記出力部を駆動する第2のステップとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、音響出力装置において、出力部の駆動開始時における回路オフセットに起因したポップ音の出力を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の第1実施形態に係る音響出力装置100を、図1を用いて説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る音響出力装置100の構成を示す図である。
【0019】
音響出力装置100は、例えば、デジタル音響信号を受けて、受けたデジタル音響信号に応じた音響を出力するデジタルオーディオシステムである。音響出力装置100は、駆動部14、及び出力部15を備える。駆動部14は、外部から受けた音響信号を増幅し、増幅した音響信号に応じた音響を出力するように、出力部15を駆動する。
【0020】
駆動部14は、生成部10及び増幅部11を含む。
【0021】
生成部10は、第1のオフセット(回路オフセット)を有している。生成部10は、外部からデジタル音響信号を受け、受けたデジタル音響信号に応じてアナログ音響信号を生成し、第1のオフセットに応じた第1のオフセット信号と生成したアナログ音響信号とを出力する。生成部10は、端子1、デジタル信号変調部2、1ビットD/A変換器3、及びアナログLPF(低域通過フィルタ)4を含む。
【0022】
端子1には、CDなどに記憶されるデジタル音響信号(PCM:Pulse Code Modulation など)が入力される。
【0023】
デジタル信号変調部2は、端子1に入力されたデジタル音響信号を受ける。デジタル信号変調部2は、受けたデジタル音響信号に対して、ΔΣ変調器やデシメーションフィルタなどを用いた所定の信号変調処理を行う。所定の信号変調処理は、例えば、可聴帯域のノイズ特性に優れ、且つ1ビットであるPDM(Pulse Density Modulation)などの1ビットデジタル制御信号への変調処理である。デジタル信号変調部2は、1ビットデジタル制御信号を1ビットD/A変換器3へ供給する。
【0024】
1ビットD/A変換器3は、1ビットデジタル制御信号をデジタル信号変調部2から受ける。1ビットD/A変換器3は、1ビットデジタル制御信号をD/A変換した結果を、アナログ音響信号を生成してアナログLPF4へ供給する。
【0025】
アナログLPF4は、可聴帯域のアナログ音響信号を選択的に通過させるフィルタ処理を行う。アナログLPF4は、1ビットD/A変換器3から受けたアナログ音響信号のうちカットオフ周波数以上の高周波成分を除去するフィルタ処理を行い、処理後のアナログ音響信号を出力する。また、アナログLPF4は、第1のオフセット(回路オフセット)を有しており、第1のオフセットに応じた第1のオフセット信号を出力する。すなわち、アナログLPF4は、第1のオフセット信号として第1の信号と第2の信号とをそれぞれ増幅部11における後述の端子12及び端子13へ出力する。また、アナログLPF4は、アナログ音響信号として第1のアナログ信号と第2のアナログ信号とをそれぞれ増幅部11における端子12及び端子13へ出力する。
【0026】
増幅部11は、第2のオフセット(回路オフセット)を有している。増幅部11は、生成部10から出力された第1のオフセット信号及びアナログ音響信号と第2のオフセットに応じた第2のオフセット信号とを増幅し、増幅した第1のオフセット信号、第2のオフセット信号、及びアナログ音響信号を出力する。増幅部11は、端子12、端子13、可変抵抗器(第3の可変抵抗器)61、可変抵抗器(第4の可変抵抗器)63、可変抵抗器(第1の可変抵抗器)62、可変抵抗器(第2の可変抵抗器)64、差増増幅器5、端子6、及び端子7を含む。
【0027】
端子12には、アナログLPF4から第1の信号が入力される。端子12には、アナログLPF4から第1のアナログ信号が入力される。
【0028】
端子13には、アナログLPF4から第2の信号が入力される。端子13には、アナログLPF4から第2のアナログ信号が入力される。
【0029】
可変抵抗器61は、端子12と差増増幅器5の負入力端子との間に接続されている。可変抵抗器61は、抵抗値R1を有する。可変抵抗器61の抵抗値R1は、外部からの制御信号に応じて可変である。
【0030】
可変抵抗器63は、端子13と差増増幅器5の正入力端子との間に接続されている。可変可変抵抗器63は、抵抗値R3を有する。可変抵抗器63の抵抗値R3は、外部からの制御信号に応じて可変である。
【0031】
可変抵抗器62は、差動増幅器5の負入力端子と正出力端子との間に接続されている。可変抵抗器62は、抵抗値R2を有する。可変抵抗器62の抵抗値R2は、外部からの制御信号に応じて可変である。
【0032】
可変抵抗器64は、差動増幅器5の正入力端子と負出力端子との間に接続されている。可変抵抗器64は、抵抗値R4を有する。可変抵抗器64の抵抗値R4は、外部からの制御信号に応じて可変である。
【0033】
差増増幅器5は、差動入力差動出力型の増幅器である。差増増幅器5は、その負入力端子に可変抵抗器61が接続され、その負入力端子と正出力端子との間に可変抵抗器62が接続されている。差増増幅器5は、その正入力端子に可変抵抗器63が接続され、その正入力端子と負出力端子との間に可変抵抗器64が接続されている。差増増幅器5は、その入力の仮想接地点に対して、反転増幅器として正負共に動作する。
【0034】
例えば、差増増幅器5は、負入力端子に入力された第1の信号を、可変抵抗器61の抵抗値R1と可変抵抗器62の抵抗値R2とに応じたゲイン(−R2/R1)に従って反転増幅する。差増増幅器5は、反転増幅した第1の信号を正出力端子から出力部15における後述の端子6へ出力する。
【0035】
例えば、差増増幅器5は、負入力端子に入力された第1のアナログ信号を、可変抵抗器61の抵抗値R1と可変抵抗器62の抵抗値R2とに応じたゲイン(−R2/R1)に従って反転増幅する。差増増幅器5は、反転増幅した第1のアナログ信号を正出力端子から出力部15における端子6へ出力する。
【0036】
例えば、差増増幅器5は、正入力端子に入力された第1の信号を、可変抵抗器63の抵抗値R3と可変抵抗器64の抵抗値R4とに応じたゲイン(−R4/R3)に従って反転増幅する。差増増幅器5は、反転増幅した第1の信号を負出力端子から出力部15における後述の端子7へ出力する。
【0037】
例えば、差増増幅器5は、正入力端子に入力された第1のアナログ信号を、可変抵抗器63の抵抗値R3と可変抵抗器64の抵抗値R4とに応じたゲイン(−R4/R3)に従って反転増幅する。差増増幅器5は、反転増幅した第1のアナログ信号を負出力端子から出力部15における端子7へ出力する。
【0038】
また、差増増幅器5は、第2のオフセットを有しており、第2のオフセットに応じた第2のオフセット信号を増幅して出力する。差増増幅器5は、第2のオフセット信号として第3の信号と第4の信号とをそれぞれ出力部15における端子6及び端子7へ出力する。
【0039】
なお、R1=R3及びR2=R4の場合、差増増幅器5はR2/R1のゲインをもった増幅器として動作する。
【0040】
出力部15は、増幅部11により増幅された第1のオフセット信号及び第2のオフセット信号を基準として、増幅部11により増幅されたアナログ音響信号に応じた音響を出力する。出力部15は、端子6、端子7、及びスピーカ8を含む。
【0041】
端子6には、差動増幅器5により増幅された第1の信号及び第3の信号が入力される。端子6には、差動増幅器5により増幅された第1のアナログ信号が入力される。
【0042】
端子7には、差動増幅器5により増幅された第2の信号及び第4の信号が入力される。端子7には、差動増幅器5により増幅された第2のアナログ信号が入力される。
【0043】
スピーカ8は、その正入力端子が端子6に接続され、その負入力端子が端子7に接続されている。スピーカ8は、端子6を介して受けた第1の信号及び第3の信号と端子7を介して受けた第2の信号及び第4の信号とに基づいて、基準とすべき第1のオフセット信号及び第2のオフセット信号を生成する。また、スピーカ8は、端子6を介して受けた第1のアナログ信号と端子7を介して受けた第2のアナログ信号とに基づいて、アナログ音響信号を生成する。これにより、スピーカ8は、増幅部11により増幅された第1のオフセット信号及び第2のオフセット信号を基準として、増幅部11により増幅されたアナログ音響信号に応じた音響を出力する。
【0044】
ここで、増幅部11は、出力部15の駆動開始時に、増幅部11のゲインが小さな値から徐々に又は連続的に大きくなるように制御されながら、第1のオフセット信号及び第2のオフセット信号を増幅する機能を有する。具体的には、可変抵抗器62及び可変抵抗器64のそれぞれの抵抗値R2,R4は、出力部15の駆動開始時に、徐々に又は連続的に大きくなるように制御される。これにより、増幅部11のゲインが小さな値から徐々に又は連続的に大きくなる。
【0045】
また、増幅部11は、出力部15の駆動終了時に、増幅部11のゲインが徐々に又は連続的に小さくなるように制御されながら、第1のオフセット信号及び第2のオフセット信号を増幅する機能を有する。具体的には、可変抵抗器62及び可変抵抗器64のそれぞれの抵抗値R2,R4は、出力部15の駆動終了時に、徐々に又は連続的に小さくなるように制御される。これにより、増幅部11のゲインが徐々に又は連続的に小さくなる。
【0046】
このように、音響出力装置の動作開始時において、第1のオフセット信号及び第2のオフセット信号を増幅部が増幅して出力部へ供給する際における増幅部のゲインが徐々に又は連続的に大きくなるように増幅部が制御される。これにより、音響出力装置の動作開始時において、増幅部により増幅され出力部へ供給されるオフセット信号のレベルの急激な変化を抑制できるので、出力部がポップ音を出力することが抑制される。これにより、音響出力装置において、出力部の駆動開始時における回路オフセットに起因したポップ音の出力を抑制することができる。
【0047】
また、音響出力装置の動作終了時において、第1のオフセット信号及び第2のオフセット信号を増幅部が増幅して出力部へ供給する際における増幅部のゲインが徐々に又は連続的に小さくなるように増幅部が制御される。これにより、音響出力装置の動作終了時において、増幅部により増幅され出力部へ供給されるオフセット信号のレベルの急激な変化を抑制できるので、出力部がポップ音を出力することが抑制される。これにより、音響出力装置において、出力部の駆動終了時における回路オフセットに起因したポップ音の出力を抑制することができる。
【0048】
次に、音響出力装置100の動作を、さらに具体的に説明する。
【0049】
図1に示す音響出力装置100の動作開始時において、生成部10の動作を開始し、増幅部11の入力をミュートレベルで安定させる。予め、増幅部11を構成するR2、R4の抵抗値は0Ωもしくは可能な範囲で小さい状態に設定しておく。このとき、R2、R4の抵抗値が0Ωの場合における増幅部11の出力側に現れる回路オフセット電圧を概算すると、
Vos2・・・数式1
となる。数式1において、Vos2は、増幅部11に用いられる差動増幅器5の入力側に現れる回路オフセット(第2のオフセット)である。
【0050】
そして、増幅部11を動作状態に設定し、増幅部11が音響再生時に必要なゲインを得られるまでR2、R4の抵抗値を徐々に大きくしていく。このとき、R2、R4の抵抗値が0Ωより大きい場合における増幅部11の出力側に現れる回路オフセット電圧を概算すると、
Vos1×R2÷R1+Vos2×(R1+R2)÷R1・・・数式2
となる。数式2において、Vos1は、アナログLPF4の出力で見られる生成部10起因の回路オフセット(第1のオフセット)を表す。R2、R4の抵抗値を徐々に大きくしていく過程においては、ポップ音が発生しないように出力電圧の変位量を抑制しながら、抵抗値を変化させる。
【0051】
なお、R1、R3の抵抗値が∞(一定の値)とした場合においても、増幅部11の出力側に現れる回路オフセット電圧は、数式1と同様である。予め、増幅部11を構成するR1、R3の抵抗値は∞もしくは可能な範囲で大きい状態(一定の値)に設定(維持)しておく。そして、増幅部11を動作状態に設定し、増幅部11が音響再生時に必要なゲインを得られるまでR2、R4の抵抗値を徐々に小さくしていく。これにより、同様の効果が得られる。
【0052】
次に、音響出力装置100の動作開始時における増幅部11の出力側に現れる電圧を、図2を用いて説明する。図2は、音響出力装置100の動作開始時における増幅部11の出力側に現れる電圧のタイミング図を示す。図2に示すタイミング図において、横軸は時刻を表し、縦軸は端子6と端子7との間の電位差を表す。
【0053】
時刻0から時刻A1の期間において、増幅部11は非動作状態である。これにより、端子6と端子7との間の電位差は発生しない。
【0054】
時刻A1において、増幅部11は、動作を開始する。このとき、可変抵抗器62の抵抗値R2と可変抵抗器64の抵抗値R4とをそれぞれ0Ωの状態にするように、増幅部11へバイアスを供給する。このときの端子6と端子7との間の電位差は数式1に従う。
【0055】
時刻A1から時刻D1の期間(第1のステップ)は、ゲイン制御期間である。時刻A1から時刻D1の期間において、駆動部14のゲインが小さな値から徐々に又は連続的に大きくなるように駆動部14が制御される。
【0056】
時刻B1において、可変抵抗器62の抵抗値R2と可変抵抗器64の抵抗値R4とを、それぞれ、0Ωと増幅部11が音響再生時に必要なゲインを得られる抵抗値との間の適当な値に設定する。このときの端子6と端子7との間の電位差は数式2に従う。
【0057】
時刻C1において、可変抵抗器62の抵抗値R2と可変抵抗器64の抵抗値R4とを、音響再生時に必要なゲインを得られる抵抗値に設定する。このときの端子6と端子7との間の電位差もまた、数式2に従う。
【0058】
時刻D1において、出力部15は、音響再生を開始する。時刻D1以降(第2のステップ)において、駆動部14は、外部から受けた音響信号を増幅し、増幅した音響信号に応じた音響が出力部15から出力されるように、出力部15を駆動する。これにより、出力部15は、音響を再生出力する。
【0059】
図2に示す例では、可変抵抗器の抵抗値を4段階で変化させている。各段階における電位差の変化量は、図9のR802の両端を短絡した状態から音響再生時に必要なゲインを得られる抵抗値まで一度に変化させたときの電位差の変化量に比べて、小さく抑えられていることが理解できる。実際には、予想される最大オフセット電圧に対し、ポップ音が問題とならないレベルになるように段階数を設定する。本発明者の実験によれば、各段階の時間t1が
200μsec<t1<5msec・・・数式3
の範囲において、よりポップ音が抑制されることが分かっている。
【0060】
次に、音響出力装置100の動作終了時における増幅部11の出力側に現れる電圧を、図3を用いて説明する。図3は、音響出力装置100の動作終了時における増幅部11の出力側に現れる電圧のタイミング図を示す。図3に示すタイミング図において、横軸は時刻を表し、縦軸は端子6と端子7との間の電位差を表す。図3に示される動作は、図2と比較すると明らかなように、図2に対してちょうど時刻を反対にトレースしたような動作になっている。
【0061】
時刻D2において、出力部15は、音響再生を終了する。
【0062】
時刻C2において、可変抵抗器62の抵抗値R2と可変抵抗器64の抵抗値R4とを、音響再生時に必要なゲインを得られる抵抗値から0Ωへ近づくように小さくする。
【0063】
時刻B2において、可変抵抗器62の抵抗値R2と可変抵抗器64の抵抗値R4とを、それぞれ、0Ωにしている。
【0064】
このようにして徐々に抵抗値を変化させ、出力に見られるオフセット電圧を徐々に小さくしていき、最後に増幅部11を非動作状態にすることで、よりポップ音を抑制する。実際の設定に関しては動作開始時と同様である。
【0065】
次に、本発明の第1実施形態における可変抵抗器62又は64の構成例を、図4を用いて説明する。図4は、本発明の第1実施形態における可変抵抗器62又は64の構成例を示す図である。
【0066】
可変抵抗器62又は64は、複数の抵抗素子R21,R22,R23、複数のスイッチS21,S22,S23、及び抵抗素子R24を含む。
【0067】
複数の抵抗素子R21,R22,R23及び抵抗素子R24は、端子21及び端子22間で直列に接続されている。
【0068】
複数のスイッチS21,S22,S23は、外部から受けた制御信号に応じて複数の抵抗素子R21,R22,R23のそれぞれにおける一端と他端とをそれぞれ短絡させる。すなわち、抵抗素子R21,R22,R23のそれぞれに対してバイパスする経路にS21,S22,S23のスイッチを設けている。これらのスイッチは個別に入力端子23、24、25に外部(後述の全体制御・演算部)から入力された制御信号に応じてオンオフが制御される。
【0069】
例えば、スイッチS21、S22、及びS23がオフであれば、可変抵抗器の抵抗値はR21+R22+R23+R24になる。
【0070】
例えば、スイッチS21がオン、スイッチS22及びS23がオフであれば、可変抵抗器の抵抗値はR22+R23+R24になる。
【0071】
このように、第1の可変抵抗器及び第2の可変抵抗器のそれぞれの抵抗値は、複数のスイッチにおけるオフしたスイッチの個数が徐々に増やされることにより、徐々に大きくなるように制御される。これにより、増幅部のゲインが小さな値から徐々に大きくなる。
【0072】
また、第1の可変抵抗器及び第2の可変抵抗器のそれぞれの抵抗値は、複数のスイッチにおけるオフしたスイッチの個数が徐々に減らされることにより、徐々に小さくなるように制御される。これにより、増幅部のゲインが徐々に小さくなる。
【0073】
次に、本発明の第1実施形態における可変抵抗器62又は64の別の構成例を、図5を用いて説明する。図5は、本発明の第1実施形態における可変抵抗器62又は64の別の構成例を示す図である。
【0074】
可変抵抗器62又は64は、抵抗素子R2、電界効果トランジスタM31、容量C31、及び充放電部37を含む。
【0075】
抵抗素子R2と、電界効果トランジスタM31のオン抵抗を用いた抵抗素子とが、端子31及び端子32の間に並列に接続されている。
【0076】
電界効果トランジスタM31のオン抵抗の抵抗値は、電界効果トランジスタM31のゲートの電圧により制御される。すなわち、電界効果トランジスタM31は、ゲートの電圧に応じてその抵抗値を変える。
【0077】
容量C31は、電界効果トランジスタM31のゲートへ電圧を供給するように、電界効果トランジスタM31のゲートに接続されている。すなわち、電界効果トランジスタM31のゲートへは、容量C31に保持された電圧が供給される。
【0078】
充放電部37は、外部から受けた制御信号に応じて容量C31を充電又は放電することにより、電界効果トランジスタM31のゲートの電圧を制御する。充放電部37は、充電電流源I31、スイッチ35、放電電流源I32、及びスイッチ36を含む。
【0079】
例えば、スイッチ35は、容量C31の充電を指示する制御信号を制御端子33経由で受けて、その制御信号に応じてオンする。これにより、充電電流源I31から容量C31へ電流が流れ込むので、容量C31が充電されることにより、容量C31に保持された電圧が増加する。
【0080】
例えば、スイッチ36は、容量C31の放電を指示する制御信号を制御端子33経由で受けて、その制御信号に応じてオンする。これにより、容量C31から放電電流源I32へ電流が流れ出すので、容量C31が放電されることにより、容量C31に保持された電圧が減少する。
【0081】
このように、第1の可変抵抗器及び第2の可変抵抗器のそれぞれは、充放電部が容量を充電して容量に保持された電圧の大きさが連続的に大きくされることにより、電界効果トランジスタの抵抗値が連続的に大きくなるように制御される。これにより、第1の可変抵抗器及び第2の可変抵抗器のそれぞれの抵抗値は、連続的に大きくなるように制御される。この結果、増幅部のゲインが小さな値から連続的に大きくなる。
【0082】
また、第1の可変抵抗器及び第2の可変抵抗器のそれぞれは、充放電部が容量を放電して容量に保持された電圧の大きさが連続的に小さくされることにより、電界効果トランジスタの抵抗値が連続的に小さくなるように制御される。これにより、第1の可変抵抗器及び第2の可変抵抗器のそれぞれの抵抗値は、連続的に小さくなるように制御される。この結果、増幅部のゲインが連続的に小さくなる。
【0083】
なお、一定の傾きでゲート電圧を変化させることによって、可変抵抗器62,64の抵抗値を連続的に変化させてもよい。
【0084】
本実施形態によれば、音響再生開始時点もしくは、終了時点の増幅部における出力の急激な変化を抑制することができるので、ポップ音による製品品質の低下を防ぐことができる。また、ゲイン制御手段としてMOSスイッチ等による抵抗値制御等によって実現できるため、ICの集積に向いており、より回路規模が抑えられるといった効果もある。
【0085】
次に、本発明の音響出力装置を適用した撮像システムの一例を図6に示す。
【0086】
撮像システム90は、図6に示すように、主として、光学系、撮像装置86及び信号処理部を備える。光学系は、主として、シャッター91、レンズ92及び絞り93を備える。信号処理部は、主として、撮像信号処理回路95、A/D変換器96、画像信号処理部97、メモリ部87、外部I/F部89、タイミング発生部98、全体制御・演算部99、記録媒体88及び記録媒体制御I/F部94を備える。なお、信号処理部は、記録媒体88を備えなくても良い。
【0087】
シャッター91は、光路上においてレンズ92の手前に設けられ、露出を制御する。
【0088】
レンズ92は、入射した光を屈折させて、撮像装置86の画素配列(撮像面)に被写体の像を形成する。
【0089】
絞り93は、光路上においてレンズ92と撮像装置86との間に設けられ、レンズ92を通過後に撮像装置86へ導かれる光の量を調節する。
【0090】
撮像装置86は、複数の機能のいずれかを用いて、被写体の撮像する。複数の機能は、動画撮影機能、静止画撮影機能、動画/静止画並行撮影機能などである。撮像装置86は、画素配列に形成された被写体の像を画像信号に変換する。撮像装置86は、その画像信号を画素配列から読み出して出力する。
【0091】
撮像信号処理回路95は、撮像装置86に接続されており、撮像装置86から出力された画像信号を処理する。
【0092】
A/D変換器96は、撮像信号処理回路95に接続されており、撮像信号処理回路95から出力された処理後の画像信号(アナログ信号)を画像信号(デジタル信号)へ変換する。
【0093】
画像信号処理部97は、A/D変換器96に接続されており、A/D変換器96から出力された画像信号(デジタル信号)に各種の補正等の演算処理を行い、画像データを生成する。この画像データは、メモリ部87、外部I/F部89、全体制御・演算部99及び記録媒体制御I/F部94などへ供給される。
【0094】
メモリ部87は、画像信号処理部97に接続されており、画像信号処理部97から出力された画像データを記憶する。
【0095】
外部I/F部89は、画像信号処理部97に接続されている。これにより、画像信号処理部97から出力された画像データを、外部I/F部89を介して外部の機器(パソコン等)へ転送する。
【0096】
タイミング発生部98は、撮像装置86、撮像信号処理回路95、A/D変換器96及び画像信号処理部97に接続されている。これにより、撮像装置86、撮像信号処理回路95、A/D変換器96及び画像信号処理部97へタイミング信号を供給する。そして、撮像装置86、撮像信号処理回路95、A/D変換器96及び画像信号処理部97がタイミング信号に同期して動作する。
【0097】
全体制御・演算部99は、タイミング発生部98、画像信号処理部97及び記録媒体制御I/F部94に接続されており、タイミング発生部98、画像信号処理部97及び記録媒体制御I/F部94を全体的に制御する。
【0098】
また、全体制御・演算部(制御部)99は、複数の機能のうち撮像装置86で用いられる機能を切り替える際に、次のような制御を行う。全体制御・演算部99は、切り替えることを示す音響が出力部15から出力されるとともに、増幅部11のゲインを徐々に又は連続的に大きくするように、音響出力装置100を制御する。例えば、全体制御・演算部99は、機能の切り替え時にそのことを使用者に知らせるビープ音を示すデジタル音響信号と、増幅部11のゲインを制御するための制御信号とを、音響出力装置100へ出力する。
【0099】
音響出力装置100は、全体制御・演算部99からデジタル音響信号と制御信号とを受けて、受けたデジタル音響信号に応じた音響を出力するとともに、制御信号に応じて増幅部11のゲインを変える。
【0100】
記録媒体88は、記録媒体制御I/F部94に取り外し可能に接続されている。これにより、画像信号処理部97から出力された画像データを、記録媒体制御I/F部94を介して記録媒体88へ記録する。
【0101】
以上の構成により、音響出力装置100において良好な音響が出力されれば、撮像システム90の使い勝手が向上する。
【0102】
次に、本発明の第2実施形態に係る音響出力装置200を、図7を用いて説明する。図7は、本発明の第2実施形態に係る音響出力装置200の構成を示す図である。以下では、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0103】
音響出力装置200は、駆動部214を備える。駆動部214は、増幅部211を含む。増幅部211は、抵抗器261、抵抗器262、抵抗器263、抵抗器264、及び電圧電流変換器213を含む。
【0104】
抵抗器261は、差動増幅器5の負入力端子と端子12との間に接続されている。抵抗器262は、所定の抵抗値R1aを有する。
【0105】
抵抗器262は、差動増幅器5の負入力端子と正出力端子との間に接続されている。抵抗器262は、所定の抵抗値R2aを有する。
【0106】
抵抗器263は、差動増幅器5の正入力端子と端子13との間に接続されている。抵抗器263は、所定の抵抗値R3aを有する。
【0107】
抵抗器264は、差動増幅器5の正入力端子と負出力端子との間に接続されている。抵抗器264は、所定の抵抗値R4aを有する。
【0108】
電圧電流変換器213は、差動増幅器5の正出力端子の電位と負出力端子の電位との差(電圧)を受ける。電圧電流変換器213は、増幅部211のゲインを決定するように、差動増幅器5の正出力端子の電位と負出力端子の電位との差(電圧)を電流に変換して差動増幅器5の正入力端子及び負入力端子へ供給する。
【0109】
具体的には、電圧電流変換器213は、出力部15の駆動開始時に、電圧電流変換率を徐々に又は連続的に小さくなるように制御されることにより、増幅部211のゲインが小さな値から徐々に又は連続的に大きくなるようにする。また、電圧電流変換器213は、出力部15の駆動終了時に、電圧電流変換率を徐々に又は連続的に大きくなるように制御されることにより、増幅部211のゲインが徐々に又は連続的に小さくなるようにする。
【0110】
電圧電流変換器213は、gm増幅器(差動増幅器)209を含む。gm増幅器209は、正入力端子に差動増幅器5の負出力端子が接続され、負入力端子に差動増幅器5の正出力端子が接続され、正出力端子に差動増幅器5の負入力端子が接続され、負出力端子に差動増幅器5の正入力端子が接続されている。
【0111】
gm増幅器209は、差動増幅器5の出力電位差を電流に変換し、差動増幅器5の入力端子(正入力端子及び負入力端子)に帰還している。この帰還は負帰還であり、gmの大きさに従って出力電位差が抑制されるように働く。このとき、増幅部211の伝達関数(Vout/Vin)を概算すると、
A÷{1+(1+A)×R1a÷R2a+gm×A×R1a}・・・数式3
となる。数式3において、Aは、増幅部211に用いられる差動増幅器5の開ループゲインである。gmは、gm増幅器209のgm値である。数式3における差動増幅器5の開ループゲインAが十分に大きいと仮定した場合、増幅部211の伝達関数(Vout/Vin)を概算すると、
1÷{ R1a×(1÷R2a+gm)}・・・数式4
となる。
【0112】
数式4に示されるように、gmが十分に大きければ、増幅部の伝達関数は0に近づき、増幅部211の出力オフセットは、gm増幅器の入力オフセットと等しくなる。また、gmを0にすれば、増幅部211の伝達関数は音響再生時に必要なゲインを得ることができる。音響再生開始時の動作、及び音響再生終了時のについては、第1実施形態で示した可変抵抗器の制御と同様に、gmを制御することによって可能である。そのため、段階的、もしくは連続的にgm値を制御することによって出力で見た回路起因のオフセット量を制御できる。
【0113】
次に、本発明の第2実施形態におけるgm増幅器209の構成例を、図8を用いて説明する。図8は、本発明の第2実施形態におけるgm増幅器209の構成例を示す図である。
【0114】
gm増幅器209では、NMOS差動対トランジスタM41、M42とPMOS能動負荷回路M43、M44とによって1段増幅器が構成されている。また、NMOS差動対トランジスタM41、M42の共通ソースには、それぞれスイッチS41,S42,S43を介して定電流源I41,I42,I43が並列接続されている。すなわち、NMOS差動対トランジスタM41、M42の共通ソースへ供給するバイアス電流の大きさを、スイッチS41,S42,S43のオン/オフ状態によって制御する構成となっている。このgm増幅器のgm値は、NMOS差動対トランジスタM41、M42のゲートサイズと、NMOS差動対トランジスタM41、M42の共通ソースに供給されるバイアス電流の大きさとによって決定される。このとき、gm増幅器のgmと回路定数との関係は、
gm ∝ √(W÷L×Ib)・・・数式5
となる。数式5において、Wは、NMOS差動対トランジスタのゲート幅であり、Lは、NMOS差動対トランジスタのゲート長である。Ibは、NMOS差動対トランジスタの共通ソースに供給されるバイアス電流の大きさである。
【0115】
数式5によれば、gmはバイアス電流の大きさの平方根に比例する。すなわち、バイアス電流の大きさを制御することによってgm値を制御できることが分かる。
【0116】
例えば、スイッチS41、S42、及びS43がオンであれば、バイアス電流の大きさは、I41+I42+I43になる。このとき、
gm ∝ √(W÷L×(I41+I42+I43))・・・数式6
となる。
【0117】
例えば、スイッチS41がオン、スイッチS42及びS43がオフであれば、バイアス電流の大きさは、I41になる。このとき、
gm ∝ √(W÷L×I41)・・・数式7
となる。
【0118】
このようにしてスイッチのオンオフを制御することによって、gm増幅器は徐々にgm値を変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明の第1実施形態に係る音響出力装置100の構成を示す図。
【図2】音響出力装置100の動作開始時における増幅部11の出力側に現れる電圧のタイミング図。
【図3】音響出力装置100の動作終了時における増幅部11の出力側に現れる電圧のタイミング図。
【図4】本発明の第1実施形態における可変抵抗器62又は64の構成例を示す図。
【図5】本発明の第1実施形態における可変抵抗器62又は64の別の構成例を示す図。
【図6】第1実施形態に係る音響出力装置を適用した撮像システムの構成図。
【図7】本発明の第2実施形態に係る音響出力装置200の構成を示す図。
【図8】本発明の第2実施形態におけるgm増幅器209の構成例を示す図。
【図9】背景技術を説明するための図。
【図10】背景技術を説明するための図。
【符号の説明】
【0120】
100、200 音響出力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響を出力する出力部と、
外部から受けた音響信号を増幅し、増幅した音響信号に応じた音響が前記出力部から出力されるように、前記出力部を駆動する駆動部と、
を備え、
前記駆動部は、前記出力部を駆動し始めるときに、前記駆動部のゲインが小さな値から徐々に又は連続的に大きくなるように制御される機能を有する
ことを特徴とする音響出力装置。
【請求項2】
前記駆動部は、
差動増幅器と、
前記駆動部のゲインを決定するように、前記差動増幅器の負入力端子と正出力端子との間に接続された第1の可変抵抗器と、
前記駆動部のゲインを決定するように、前記差動増幅器の正入力端子と負出力端子との間に接続された第2の可変抵抗器と、
前記駆動部のゲインを決定するように、前記差動増幅器の負入力端子と前記第1の可変抵抗器とに一端が接続された第3の可変抵抗器と、
前記駆動部のゲインを決定するように、前記差動増幅器の正入力端子と前記第2の可変抵抗器とに一端が接続された第4の可変抵抗器と、
を含み、
前記駆動部は、前記第3の可変抵抗器の抵抗値と前記第1の可変抵抗器の抵抗値とに応じたゲイン及び前記第4の可変抵抗器の抵抗値と前記第2の可変抵抗器の抵抗値とに応じたゲインのそれぞれが、前記出力部が駆動され始めるときに、徐々に又は連続的に大きくなるように制御され、これにより、前記駆動部のゲインが小さな値から徐々に又は連続的に大きくなるように制御される機能を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の音響出力装置。
【請求項3】
前記駆動部は、前記第3の可変抵抗器の抵抗値と前記第4の可変抵抗器の抵抗値とが、一定の値に維持されるように制御され、前記第1の可変抵抗器及び前記第2の可変抵抗器のそれぞれの抵抗値が、前記出力部が駆動され始めるときに、徐々に又は連続的に大きくなるように制御され、これにより、前記駆動部のゲインが小さな値から徐々に又は連続的に大きくなるように制御される機能を有する
ことを特徴とする請求項2に記載の音響出力装置。
【請求項4】
前記第1の可変抵抗器及び前記第2の可変抵抗器のそれぞれは、
直列に接続された複数の抵抗素子と、
外部から受けた制御信号に応じて前記複数の抵抗素子のそれぞれにおける一端と他端とをそれぞれ短絡させる複数のスイッチと、
を含み、
前記駆動部は、前記第1の可変抵抗器及び前記第2の可変抵抗器のそれぞれの抵抗値が、前記複数のスイッチにおけるオフしたスイッチの個数が徐々に増やされることにより、徐々に大きくなるように制御され、これにより、前記駆動部のゲインが小さな値から徐々に大きくなるように制御される機能を有する
ことを特徴とする請求項3に記載の音響出力装置。
【請求項5】
前記第1の可変抵抗器及び前記第2の可変抵抗器のそれぞれは、
ゲートの電圧に応じて抵抗値を変える電界効果トランジスタと、
前記電界効果トランジスタのゲートに接続された容量と、
外部から受けた制御信号に応じて前記容量を充電又は放電することにより、前記電界効果トランジスタのゲートの電圧を制御する充放電部と、
を含み、
前記駆動部は、前記第1の可変抵抗器及び前記第2の可変抵抗器において、前記充放電部が前記容量を充電して前記容量に保持された電圧の大きさが連続的に大きくされることにより、前記電界効果トランジスタの抵抗値が連続的に大きくなるように制御され、これにより、前記駆動部のゲインが小さな値から連続的に大きくなるように制御される機能を有する
ことを特徴とする請求項3に記載の音響出力装置。
【請求項6】
前記駆動部は、前記出力部を駆動し終わるときに、前記駆動部のゲインが徐々に又は連続的に小さくなるように制御される機能を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の音響出力装置。
【請求項7】
前記駆動部は、
差動増幅器と、
前記駆動部のゲインを決定するように、前記差動増幅器の負入力端子と正出力端子との間に接続された第1の可変抵抗器と、
前記駆動部のゲインを決定するように、前記差動増幅器の正入力端子と負出力端子との間に接続された第2の可変抵抗器と、
を含み、
前記駆動部は、前記第1の可変抵抗器及び前記第2の可変抵抗器のそれぞれの抵抗値が、前記出力部が駆動され終わるときに、徐々に又は連続的に小さくなるように制御され、これにより、前記駆動部のゲインが徐々に又は連続的に小さくなるように制御される機能を有する
ことを特徴とする請求項6に記載の音響出力装置。
【請求項8】
前記第1の可変抵抗器及び前記第2の可変抵抗器のそれぞれは、
直列に接続された複数の抵抗素子と、
外部から受けた制御信号に応じて前記複数の抵抗素子のそれぞれにおける一端と他端とをそれぞれ短絡させる複数のスイッチと、
を含み、
前記駆動部は、前記第1の可変抵抗器及び前記第2の可変抵抗器のそれぞれの抵抗値が、前記複数のスイッチにおけるオフしたスイッチの個数が徐々に減らされることにより、徐々に小さくなるように制御され、これにより、前記駆動部のゲインが徐々に小さくなるように制御される機能を有する
ことを特徴とする請求項7に記載の音響出力装置。
【請求項9】
前記第1の可変抵抗器及び前記第2の可変抵抗器のそれぞれは、
ゲートの電圧に応じて抵抗値を変える電界効果トランジスタと、
前記電界効果トランジスタのゲートに接続された容量と、
外部から受けた制御信号に応じて前記容量を充電又は放電することにより、前記電界効果トランジスタのゲートの電圧を制御する充放電部と、
を含み、
前記駆動部は、前記第1の可変抵抗器及び前記第2の可変抵抗器において、前記充放電部が前記容量を放電して前記容量に保持された電圧の大きさが連続的に小さくされることにより、前記電界効果トランジスタの抵抗値が連続的に小さくなるように制御され、これにより、前記駆動部のゲインが連続的に小さくなるように制御される機能を有する
ことを特徴とする請求項7に記載の音響出力装置。
【請求項10】
前記駆動部は、
差動増幅器と、
前記駆動部のゲインを決定するように、前記差動増幅器の正出力端子の電位と負出力端子の電位との差を電流に変換して前記差動増幅器の正入力端子及び負入力端子へ供給する電圧電流変換器と、
を含み、
前記駆動部は、前記電圧電流変換器が、前記出力部が駆動され始めるときに、電圧電流変換率が徐々に又は連続的に小さくなるように制御され、これにより、前記駆動部のゲインが徐々に又は連続的に大きくなるように制御される機能を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の音響出力装置。
【請求項11】
前記駆動部は、
差動増幅器と、
前記駆動部のゲインを決定するように、前記差動増幅器の正出力端子の電位と負出力端子の電位との差を電流に変換して前記差動増幅器の正入力端子及び負入力端子へ供給する電圧電流変換器と、
を含み、
前記駆動部は、前記電圧電流変換器が、前記出力部が駆動され終わるときに、電圧電流変換率が徐々に又は連続的に大きくなるように制御され、これにより、前記駆動部のゲインが徐々に又は連続的に小さくなるように制御される機能を有する
ことを特徴とする請求項6に記載の音響出力装置。
【請求項12】
前記電圧電流変換器は、
正入力端子に前記差動増幅器の負出力端子が接続され、負入力端子に前記差動増幅器の正出力端子が接続され、正出力端子に前記差動増幅器の負入力端子が接続され、負出力端子に前記差動増幅器の正入力端子が接続された差動増幅器を含む
ことを特徴とする請求項10又は11に記載の音響出力装置。
【請求項13】
複数の機能のいずれかを用いて、被写体を撮像する撮像装置と、
請求項1から12のいずれか1項に記載の音響出力装置と、
前記複数の機能のうち前記撮像装置で用いられる機能を切り替える際に、切り替えることを示す音響が前記出力部から出力されるとともに、前記駆動部のゲインを徐々に又は連続的に大きくするように、前記音響出力装置を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする撮像システム。
【請求項14】
音響を出力する出力部と、外部から受けた音響信号を増幅し、増幅した音響信号に応じた音響が前記出力部から出力されるように、前記出力部を駆動する駆動部とを有する音響出力装置の制御方法であって、
前記駆動部のゲインが小さな値から徐々に又は連続的に大きくなるように前記駆動部が制御される第1のステップと、
前記第1のステップの後に、前記駆動部が、外部から受けた音響信号を増幅し、増幅した音響信号に応じた音響が前記出力部から出力されるように、前記出力部を駆動する第2のステップと、
を備えたことを特徴とする音響出力装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−147607(P2010−147607A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320213(P2008−320213)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】