説明

食品連続加熱機及びそれに用いられる放射温度計

【課題】各加熱エリア毎に加熱温度を個別に制御することができて、全エリア均一加熱を含めた様々な温度制御を実現できるとともに、装置コストを低く抑えながら、加熱ムラ等を生じにくくできるようにされた食品連続加熱機を提供する。
【解決手段】 各誘導加熱コイル30、30、…は、その長辺が回転ドラム20の被加熱面(外周面)の進行方向Pに対して傾斜せしめられるとともに、各誘導加熱コイル30、30、…が、進行方向Pに直交する方向に所定の離隔距離Lを持って並設されてなる。隣り合う誘導加熱コイル同士30−30が、進行方向Pから見て部分的にオーバーラップするように、進行方向Pに対する誘導加熱コイル30の傾斜角度θ及び誘導加熱コイル30相互の離隔距離Lを設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品素材を移動させながら加熱するための回転ドラムやスチールベルトコンベア等の加熱伝達手段と、該加熱伝達手段を加熱するための加熱手段と、を備えた食品連続加熱機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の食品連続加熱機としては、例えば、下記特許文献1等に所載の食品連続炒め機がある。この食品連続炒め機は、通常、モータ等の駆動手段により回転せしめられている回転ドラムを加熱手段により加熱しながら、その回転ドラム内に食品素材を投入し、食品素材を回転ドラム内において攪拌混合しつつ投入口から出口に向けて、つまり、ドラムの回転軸線に沿う方向に移動させて炒めるようになっている。
【0003】
このような食品連続炒め機においては、より品質の高い食品(炒め物)を得るべく、例えば、回転ドラムの外周面(被加熱面)を、回転軸線に沿う方向に沿って幾つかの加熱エリア(帯状領域)に区分し、その加熱エリア毎に温度制御、例えば、投入口付近(上流)の加熱エリアでは高温に、出口付近(下流)の加熱エリアでは低温に、というように、温度を加熱エリア毎に個別に制御したいとの要望がある。
【0004】
また、前記加熱手段としては、従来、ガスバーナー等が用いられているが、近年においては、制御自由度が高く取り扱いやすい誘導加熱コイルを採用するケースが増えている。
【0005】
一方、各加熱エリアの温度を個別に制御するためには、そのエリア毎に、温度測定器が必要となるが、かかる温度測定器として、加熱伝達手段(回転ドラム)の被加熱面の温度をそれに触れることなく測定することができる非接触型温度測定器、特に、放射温度計を用いることが考えられている。
【0006】
一般に、放射温度計は、被測定物からの熱放射のうちの特定の波長の赤外線強度(熱放射強度)を検知し、予め調べられている放射率の値を用いて、熱放射の法則に従い温度を測定するものである。
【0007】
【特許文献1】特開2001−329号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、加熱手段として前記誘導加熱コイルを用いる場合、回転ドラムに対する誘導加熱コイルのレイアウトとして、従来より幾つか考えられている(下記)が、それぞれに問題がある。以下、これについて説明する。
【0009】
(1)図8(A)に示される如くに、回転ドラム100の外周に、一つの螺旋状に巻回された誘導加熱コイル110を配置した場合には、温度制御態様が一つだけとなり、前記した各加熱エリア毎の個別温度制御は行えない。
【0010】
(2)図8(B)に示される如くに、回転ドラム100の回転軸線Oと平行に、つまり、全加熱エリアを横断するように平面視が長方形の誘導加熱コイル120を横置き配置した場合にも、温度制御態様が一つだけとなり、各加熱エリア毎に温度を制御することはできない。
【0011】
(3)図8(C)に示される如くに、平面視(展開状態)が長方形で、回転ドラム100の外周面に沿うように半円弧状に湾曲せしめられている複数個(ここでは4個)の誘導加熱コイル130、130、…を、その長辺が回転ドラム100の被加熱面(外周面)の進行方向(回転方向)Pと平行に配在、言い換えれば、回転ドラム100の回転軸線Oに直交するように配在するとともに、各誘導加熱コイル130を前記回転軸線Oに沿う方向に所定の離隔距離Lを持って、回転ドラム100の底面側に並設した場合は、前記した各加熱エリア毎に温度を個別制御することが可能である。しかしながら、誘導加熱コイル130による加熱温度(回転ドラム100の被加熱面の温度)は、コイル130から離れるほど低くなるので、隣り合うコイル130−130の間に位置する、幅Lの帯状領域の幅方向中央部分は、コイル近傍部分(コイルの真上部分を含む)より温度が低くなる。つまり、コイル近傍部分は所望温度となっていても、隣り合うコイル間に位置する、幅Lの帯状領域の幅方向中央部分は、所望温度より相当低くなり、加熱ムラが生じる。この場合、コイル相互の離隔距離Lを短縮すれば、加熱ムラは生じにくくなるが、そうすると、誘導加熱コイルの個数を増やさなければならず、コスト的に不利である。
【0012】
(4)図8(D)に示される如くに、前記(3)の加熱されにくい帯状領域が生じないように、小さな誘導加熱コイル140を多数用意し、それらを互い違いに多段多列に配置した場合は、加熱ムラ等をさほど生じさせることなく、各加熱エリア毎に個別に温度制御を行うことができるが、誘導加熱コイル140や加熱温度制御に必要な温度測定器等が多数必要となり、制御が複雑となるため、装置コストが極めて高くなってしまう。
【0013】
一方、食品連続加熱機において、前記した如くの非接触型温度測定器、特に、放射温度計を用いる場合、次のような問題を生じるおそれがある。すなわち、放射温度計は、精密電子機器であるので熱に弱く、通常、50°C以下での使用が求められる。それに対し、放射温度計が配在される回転ドラム等の加熱伝達手段の周囲の雰囲気は高温(100°C〜300°C程度)となるので、放射温度計をそのまま用いると故障してしまう。したがって、放射温度計に何らかの防熱手段、冷却手段を講じる必要がある。また、放射温度計(温度計本体の筐体)には、通常、被測定物から放射される赤外線を集光するための集光レンズが設けられるが、放射温度計を回転ドラム等の加熱伝達手段の近くに配在すると、その集光レンズに塵埃等が付いて汚れてしまい、正確に温度測定が行えなくなる等の問題も生じる。
【0014】
本発明は、前記のような従来の問題を解消すべくなされたもので、その目的とするところは、各加熱エリア毎に加熱温度を個別に制御することができて、全エリア均一加熱を含めた様々な温度制御を実現できるとともに、装置コストを低く抑えながら、加熱ムラ等を生じにくくできるようにされた食品連続加熱機を提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的とするところは、回転ドラム等の加熱伝達手段の近くの高温雰囲気中に配在されても故障を生じることなく正確に温度を測定することのできる放射温度計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記の目的を達成すべく、本発明に係る食品連続加熱機は、食品素材を移動させながら加熱するための回転ドラムやスチールベルトコンベア等の加熱伝達手段と、該加熱伝達手段を加熱すべくその被加熱面から所定のクリアランスをあけて配置される平面視が長方形ないし楕円形の複数個の誘導加熱コイルと、を備え、前記複数個の誘導加熱コイルは、その長辺もしくは長軸が前記加熱伝達手段の被加熱面の進行方向に対して傾斜せしめられるとともに、前記進行方向に直交する方向に沿って所定の離隔距離を持って並設される。
【0017】
好ましい態様では、前記加熱伝達手段が回転ドラムとされ、前記誘導加熱コイルは、その加熱面全体が前記回転ドラムの外周面に沿うように螺旋状に湾曲せしめられる。
【0018】
他の好ましい態様では、隣り合う誘導加熱コイル同士が、前記進行方向から見て部分的にオーバーラップするように、前記進行方向に対する前記誘導加熱コイルの傾斜角度及び前記誘導加熱コイル相互の離隔距離が設定される。
【0019】
また、他の別の好ましい態様では、前記誘導加熱コイルの前記進行方向に対する傾斜角度、前記誘導加熱コイルの前記被加熱面からのクリアランス、前記誘導加熱コイル相互の離隔距離、及び、前記誘導加熱コイルの前記進行方向に直交する方向の位置、のうちの少なくとも一つが調節可能とされる。
【0020】
また、他の好ましい態様では、前記各誘導加熱コイルに対応して、加熱エリア毎に前記加熱伝達手段の被加熱面の温度を測定する非接触型温度測定器が配備され、前記誘導加熱コイル冷却用の冷却水を前記温度測定器に導いて冷却するようにされる。
【0021】
一方、本発明に係る放射温度計は、上記した食品連続加熱機に用いられるもので、検知部を有する温度計本体と、該温度計本体を収容する外箱と、を備え、被測定物とされる前記加熱伝達手段から放射される赤外線を前記検知部に入射させるべく、前記外箱に測定口が設けられるとともに、前記温度計本体の筐体に集光レンズが設けられ、かつ、前記外箱に、前記温度計本体の冷却、並びに、塵埃等の侵入防止及び外部へのパージを行うためのエアー吹き込み口が設けられていることを特徴としている。
【0022】
また、本発明に係る放射温度計は、好ましくは、前記温度計本体を冷却するための冷却水管が付設される。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る食品連続加熱機は、複数個の誘導加熱コイル(の長辺もしくは長軸)が回転ドラム等の加熱伝達手段の被加熱面の進行方向に対して傾斜せしめられているので、配備される誘導加熱コイルの仕様及び個数が同じであれば、前述した図8(C)に示される如くの、誘導加熱コイルが回転ドラムの被加熱面の進行方向と平行に配在されている場合に比して、隣り合う誘導加熱コイル相互の離隔距離が実質的に狭められる。ここで、誘導加熱コイルによる加熱温度は、コイルから離れるほど低くなるので、隣り合うコイル相互の離隔距離が実質的に狭められると、加熱温度が最も低くなりやすい、隣り合うコイルの中間点の温度が、コイル近傍部分とさほど変わらなくなる。特に、隣り合う誘導加熱コイル同士が、被加熱面の進行方向から見て部分的にオーバーラップするようにした場合には、各加熱エリア内における高温部分と低温部分との温度差がより小さくされる。
【0024】
そのため、本発明に係る食品連続加熱機では、各加熱エリア毎に加熱温度を個別に制御し得ることは勿論、各加熱エリアをそれぞれ略所望温度で維持することが可能となり、その結果、加熱ムラ等を生じにくくでき、全エリア均一加熱を含めた様々な温度制御を実現でき、しかも、誘導加熱コイルを被加熱面の進行方向に対して傾斜させるだけでよいので、誘導加熱コイルの配備個数を増やす場合に比して装置コストを低く抑えることができる。
【0025】
また、本発明に係る放射温度計では、外箱及び冷却水管が付設されるとともに、外箱にエアー吹き込み口が設けられるので、冷却水管内に冷却水を流すとともに、エアー吹き込み口から外箱内にエアーを吹き込むことにより、温度計本体が冷却水管を流れる冷却水と外箱内に吹き込まれたエアーにより効果的に冷却され、さらに、外箱内に吹き込まれたエアーにより、外箱内の圧力が外部より高くなるので、塵埃等の外箱内への侵入が阻止されるとともに、集光レンズ等に付いた塵埃等が取り除かれて、測定口から外部にパージされる。そのため、放射温度計に故障や誤作動が生じにくくなって、正確に温度測定を行うことが可能となり、これにより、加熱制御精度等が向上し、信頼性が増す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明に係る食品連続加熱機の実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1、図2、図3は、それぞれ本発明に係る食品連続加熱機の一つである回転ドラム式食品連続炒め機の一実施形態を示す正面図、側面図、部分切欠側面図である。
【0027】
図示の食品連続炒め機10は、底辺枠部11A、二階枠部11B、天井枠部11Cからなる二階建てのやぐら状に組まれた機枠11と、この機枠11の二階枠部11Bの前後左右の4カ所に設けられた支持ローラ15、15、…(図2参照)に横置きで回転自在に支持された加熱伝達手段としての回転ドラム20と、この回転ドラム20を回転駆動するためのモータ26、減速機27、動力伝達機構28等からなるドラム回転駆動機構25と、回転ドラム20を加熱すべく、該ドラム20の底面側に所定の態様(後述)で配在された複数個(ここでは4個)の誘導加熱コイル30、30、…と、を備える。
【0028】
機枠11の底辺枠部11Aの四隅には、ねじ式高さ調節具16が設けられており、この調節具16により、前記機枠11及び回転ドラム20の水平面に対する傾斜角度を調整するようになっている。
【0029】
回転ドラム20は、図2において右側が炒めるべき食品素材の投入口21とされ、左側が炒められた食品の出口22となっており、運転時(連続炒め作業時)には、ドラム回転駆動機構25により、正面から見て(図1)例えば反時計回りに回転せしめられる。なお、ドラム20内には、攪拌手段が配在されるが、本発明とは直接関係ないので、ここでは省略されている。
【0030】
前記誘導加熱コイル30、30、…は、昇降機構40により、運転時には、回転ドラム20の底面近傍位置(実線図示位置)まで上昇せしめられてその位置で保持され、休止時や保守点検時等には、図1において仮想線で示される如くに、底辺枠部11A近傍の退避位置まで降ろされる。
【0031】
前記昇降機構40は、誘導加熱コイル30、30、…が横移動可能に搭載保持される昇降架台50と、この昇降架台50を水平に保持して昇降させる、機枠11の底辺枠部11Aから垂直に立ち上がる左右一対のねじ送り機構45、45と、底辺枠部11Aに配在されたハンドル41と、このハンドル41の操作量を前記ねじ送り機構45、45に伝達する操作量伝達機構42と、を備え、前記昇降架台50は、ハンドル41の操作量に応じて昇降せしめられるようになっている。
【0032】
一方、各誘導加熱コイル30、30、…は、それぞれ、支持調節具32及び高さ位置調節具34を介して横移動台車35に支持されている。この横移動台車35は、前後左右に車輪36を有する4輪車とされ、昇降架台50に設けられた左右一対のレール52上を、同じく昇降架台50に設けられたガイドバー等からなる案内支持具37に案内されて、横方向、すなわち、回転ドラム20の回転軸線Oに沿う方向に移動可能とされている。
【0033】
前記誘導加熱コイル30、30、…は、図1〜図3に加えて、回転ドラム20の下方から見た概略図を示す図4(A)を参照すればよくわかるように、それ自体はよく知られているもので、平面視(展開状態)が長方形のパネル状とされ、当該誘導加熱コイル30、30、…の加熱面全体が回転ドラム20の外周面に沿うように螺旋状に湾曲せしめられて、回転ドラム20の被加熱面(外周面)から所定のクリアランスα(図1参照)をあけて配置されている。
【0034】
各誘導加熱コイル30、30、…は、その長辺が回転ドラム20の被加熱面(外周面)の進行方向(回転方向)Pに対して傾斜(傾斜角度θ)せしめられるとともに、進行方向Pに直交する方向(回転軸線Oに沿う方向)に所定の離隔距離Lを持って並設されている。
【0035】
この場合、隣り合う誘導加熱コイル同士30−30が、進行方向Pから見て部分的にオーバーラップ(オーバーラップ部分U)するように、進行方向Pに対する誘導加熱コイル30の傾斜角度θ及び誘導加熱コイル30相互の離隔距離Lが設定されている。なお、各コイル30の離隔距離Lや傾斜角度θは、ここでは同一とされているが異ならせるようにしてもよい。
【0036】
また、誘導加熱コイル30の進行方向Pに対する傾斜角度θ、誘導加熱コイル30の回転ドラム20の被加熱面からのクリアランスα、誘導加熱コイル相互30−30の離隔距離L、及び、誘導加熱コイル30の進行方向に直交する方向(回転軸線Oに沿う方向)の位置は、各誘導加熱コイル30、30、…に配備されている前記した支持調節具32、高さ位置調節具34、横移動台車35、及び、案内支持具37等を備えた昇降機構40を操作することにより調節できるようになっている。
【0037】
なお、機枠11の二階枠部11Bの左右及び天井枠部11Cには、それぞれ防熱パネル81、82(図1参照)、83(図1、図3参照)が配設されている。
【0038】
このような構成とされた本実施形態の食品連続炒め機10は、各誘導加熱コイル30、30、…の長辺が回転ドラム20の被加熱面の進行方向Pに対して傾斜せしめられているので、配備される誘導加熱コイルの仕様及び個数が同じであれば、図4 (B)に示される如くの、各誘導加熱コイル30、30、…が回転ドラム20の被加熱面の進行方向Pと平行(θ=0°)に配在されている場合に比して、隣り合う誘導加熱コイル30−30相互の離隔距離Lが実質的に狭められる。
【0039】
ここで、誘導加熱コイル30による加熱温度は、コイル30から離れるほど低くなるので、隣り合うコイル30−30相互の離隔距離Lが実質的に狭められると、加熱温度が最も低くなりやすい、隣り合うコイル30−30の中間点の温度が、コイル30近傍部分とさほど変わらなくなる。特に、隣り合う誘導加熱コイル同士30−30が、被加熱面の進行方向Pから見て部分的にオーバーラップするようにした場合には、各加熱エリア内における高温部分と低温部分との温度差がより小さくされる。
【0040】
かかる効果を検証すべく、実際に比較試験を行った結果を図5(C)に示す。図5(C)は、図4(A)に示される如くに誘導加熱コイル30を傾斜させて配在した場合[本発明機:図5(A)]と、図4(B)に示される如くに誘導加熱コイル30を進行方向Pと平行に配在した場合[比較機:図5(B)]とにおいて、回転ドラム20に対して回転軸線Oに沿う方向(横方向)に一定間隔で温度測定点a、b、c、…を設定し、その温度測定点a、b、c、…での温度測定結果を示したものである。なお、回転ドラム20の目標加熱温度Tは、ここでは200°Cとされ、また、各誘導加熱コイル30に対する電力供給量は同じとされている。
【0041】
図5(C)からわかるように、誘導加熱コイル30を進行方向Pと平行に配在した比較機では、各温度測定点a、b、c、…における温度のばらつきが大きく、特に、コイル30とコイル30の間の部分b、c、d、i、j、…の温度がコイル30付近より相当低下してしまう(前記目標加熱温度Tからの差ΔTBが約50°Cにも達する)が、誘導加熱コイル30を傾斜させて配在した本発明機では、各温度測定点a、b、c、…における温度のばらつきが小さくなり、均一化される(前記目標加熱温度Tからの差ΔTAは約5°C以内に抑えられる)。
【0042】
以上の説明から理解されるように、本実施形態の食品連続炒め機10では、各加熱エリア毎に加熱温度を個別に制御し得ることは勿論、各加熱エリアをそれぞれ略所望温度で維持することが可能となり、その結果、加熱ムラ等を生じにくくでき、全エリア均一加熱を含めた様々な温度制御を実現でき、しかも、誘導加熱コイルを被加熱面の進行方向に対して傾斜させるだけでよいので、誘導加熱コイルの配備個数を増やす場合に比して装置コストを低く抑えることができる。
【0043】
一方、各加熱エリアの温度を個別に制御するためには、そのエリア毎に、温度測定器が必要になるので、本実施形態では、各誘導加熱コイル30、30、…に対応して、加熱エリア毎に回転ドラム20の被加熱面の温度を測定する非接触型温度測定器としての放射温度計60が各誘導加熱コイル30、30、…の支持調節具32に取付配備されている(図1参照)。そして、放射温度計60には、回転ドラム20からの輻射熱によって過熱されるの防ぐべく、防熱手段及び冷却手段が講じられている。
【0044】
すなわち、放射温度計60は、図6(A)に示される如くに、検知部70を有する温度計本体61と、この温度計本体61を収容する、防熱手段としての角箱状の外箱62と、を備え、被測定物とされる前記回転ドラム20から放射される赤外線を前記検知部70に入射させるべく、外箱62に円筒状の測定口63が設けられるとともに、温度計本体61の筐体71における前記測定口63に対向する部位に集光レンズ72が設けられている。測定口63は、図1に示される如くに、回転ドラム20の中心軸線Oに向けられている。
【0045】
また、外箱62は、図6(A)に加えて(B)、(C)を参照すればよくわかるように、一側面が開口しており、この開口している側に温度計本体61が寄せられて配置されるとともに、前記開口を覆い、かつ、温度計本体61の一側面に密着するように銅板63が固定され、さらに、この銅板64に密着してU形冷却水管65が固着されている。このU形冷却水管65には、誘導加熱コイル冷却用の冷却水が図示されていない冷却水循環配管系を介して導入される導入口(継手)66と導出口(継手)67が設けられている。また、外箱62における測定口63及び銅板64とは反対側の下隅には,温度計本体61の冷却、並びに、塵埃等の侵入防止及び外部へのパージを行うべく、内部に冷却エアーを吹き込むためのエアー吹き込み口(継手)68が設けられている。
【0046】
このような構成を有する放射温度計60では、U形冷却水管65内に冷却水を流すとともに、エアー吹き込み口68から外箱61内にエアーを吹き込むことにより(図6(A)にエアーの流れを破線矢印で示す)、温度計本体61がU形冷却水管65を流れる冷却水と外箱61内に吹き込まれたエアーにより効果的に冷却され、さらに、外箱61内に吹き込まれたエアーにより、外箱61内の圧力が外部より高くなるので、塵埃等の外箱61内への侵入が阻止されるとともに、集光レンズ72等に付いた塵埃等が取り除かれて、測定口63から外部にパージされる。そのため、放射温度計60に故障や誤作動が生じにくくなって、正確に温度測定を行うことが可能となり、これにより、加熱制御精度等が向上し、信頼性が増す。
【0047】
なお、上記実施形態では、食品素材を移動させながら加熱するための加熱伝達手段として回転ドラム20を用いた食品連続炒め機の例を説明したが、本発明は、加熱伝達手段として回転ドラムを用いたものに限られず、例えば、ベルトコンベアや板コンベア等を用いた食品連続加熱機にも適用できるものである。
【0048】
図7に、加熱伝達手段としてスチールベルトを用いた例を示す。図7に示される食品連続炒め機200は、加熱伝達手段として、循環回転移動せしめられる無端環状のスチールベルト220を有するベルトコンベア210を備え、前記ベルト220の上側搬送部221(被加熱面)の一端側(図の左端側)に、搬送コンベア240から加熱すべき食品素材300が複数個ずつ横並びで間欠的に投入載置されるようになっている。
【0049】
前記ベルト220の上側搬送部221の下側(下側復路部222との間)には、ベルト220の上側搬送部221(被加熱面)を加熱すべく、複数個(ここでは4個)の誘導加熱コイル230、230、…が所定の態様(後述)で、搬送方向(被加熱面221の進行方向P)に沿って所定の間隔をあけて三段(1段目K1、2段目K2、3段目K3)に配置され、さらに、ベルト220の上側搬送部221(被加熱面)の温度を測定すべく、各誘導加熱コイル230、230、…に対応して、前記実施形態と同様な構成の放射温度計60が配備されている。
【0050】
各段K1、K2、K3の各誘導加熱コイル230、230、…は、前記した実施形態と基本的には同じもので、平面視が長方形のパネル状とされ、それぞれベルト220の被加熱面(上側搬送部221)から所定のクリアランスα(図7(A)参照)をあけて配置されている。
【0051】
各段K1、K2、K3の各誘導加熱コイル230、230、…は、図7(B)に示される如くに、その長辺がベルト220の上側搬送部221(被加熱面)の進行方向Pに対して傾斜(傾斜角度θ)せしめられるとともに、進行方向Pに直交する方向(ベルト220の幅方向)に所定の離隔距離Lを持って並設されている。
【0052】
この場合、隣り合う誘導加熱コイル同士230−230が、進行方向Pから見て部分的にオーバーラップ(オーバーラップ部分U)するように、進行方向Pに対する誘導加熱コイル230の傾斜角度θ及び誘導加熱コイル230相互の離隔距離Lが設定されている。なお、各コイル230の離隔距離Lや傾斜角度θは、ここでは同一とされているが異ならせるようにしてもよい。
【0053】
このような構成とされた食品連続加熱機200においても、前記実施形態と同様に、各加熱エリア毎に加熱温度を個別に制御し得ることは勿論、各加熱エリアをそれぞれ略所望温度で維持することが可能となり、その結果、加熱ムラ等を生じにくくでき、全エリア均一加熱を含めた様々な温度制御を実現でき、しかも、誘導加熱コイルを被加熱面の進行方向に対して傾斜させるだけでよいので、誘導加熱コイルの配備個数を増やす場合に比して装置コストを低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る食品連続加熱機としての食品連続炒め機の一実施形態を示す概略正面図。
【図2】図1に示される食品連続炒め機の概略側面図。
【図3】図1に示される食品連続炒め機の部分切欠側面図。
【図4】(A)は、図1に示される食品連続炒め機の回転ドラムの下方から見た誘導加熱コイルの配置態様を示す底面図、(B)は、(A)の配置態様との比較説明に供される図。
【図5】本発明の効果を検証するために行った比較試験の結果の説明に供される図。。
【図6】図1に示される食品連続炒め機に配備されている放射温度計を示す三面図。
【図7】本発明に係る食品連続加熱機の他の実施形態を示す概略正面図。
【図8】従来の食品連続加熱機における誘導加熱コイルのレイアウトの説明に供される図。
【符号の説明】
【0055】
10 食品連続炒め機(食品連続加熱機)
11 機枠
20 回転ドラム
30 誘導加熱コイル
32 支持調節具
34 高さ位置調節具
35 横移動台車
40 調整機構
50 昇降架台
60 放射温度計
200 食品連続加熱機
210 ベルトコンベア
220 スチールベルト
221 上側搬送部(被加熱面)
230 誘導加熱コイル
300 食品素材
O 回転軸線
P 進行方向
θ 傾斜角度
L 離隔距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品素材を移動させながら加熱するための回転ドラムやスチールベルトコンベア等の加熱伝達手段と、該加熱伝達手段を加熱すべくその被加熱面から所定のクリアランスをあけて配置される平面視が長方形ないし楕円形の複数個の誘導加熱コイルと、を備え、前記複数個の誘導加熱コイルは、その長辺もしくは長軸が前記加熱伝達手段の被加熱面の進行方向に対して傾斜せしめられるとともに、前記進行方向に直交する方向に沿って所定の離隔距離を持って並設されていることを特徴とする食品連続加熱機。
【請求項2】
前記加熱伝達手段が回転ドラムとされ、前記誘導加熱コイルは、その加熱面全体が前記回転ドラムの外周面に沿うように螺旋状に湾曲せしめられていることを特徴とする請求項1に記載の食品連続加熱機。
【請求項3】
隣り合う誘導加熱コイル同士が、前記進行方向から見て部分的にオーバーラップするように、前記進行方向に対する前記誘導加熱コイルの傾斜角度及び前記誘導加熱コイル相互の離隔距離が設定されていることを特徴とする請求項1に記載の食品連続加熱機。
【請求項4】
前記誘導加熱コイルの前記進行方向に対する傾斜角度、前記誘導加熱コイルの前記被加熱面からのクリアランス、前記誘導加熱コイル相互の離隔距離、及び、前記誘導加熱コイルの前記進行方向に直交する方向の位置、のうちの少なくとも一つが調節可能とされていることを特徴とする請求項1に記載の食品連続加熱機。
【請求項5】
前記各誘導加熱コイルに対応して、加熱エリア毎に前記加熱伝達手段の被加熱面の温度を測定する非接触型温度測定器が配備され、前記誘導加熱コイル冷却用の冷却水を前記温度測定器に導いて冷却するようにされていることを特徴とする請求項1に記載の食品連続加熱機。
【請求項6】
請求項1から4のいずれかに記載の食品連続加熱機に用いられる放射温度計であって、検知部を有する温度計本体と、該温度計本体を収容する外箱と、を備え、被測定物とされる前記加熱伝達手段から放射される赤外線を前記検知部に入射させるべく、前記外箱に測定口が設けられるとともに、前記温度計本体の筐体に集光レンズが設けられ、かつ、前記外箱に、前記温度計本体の冷却、並びに、塵埃等の侵入防止及び外部へのパージを行うためのエアー吹き込み口が設けられていることを特徴とする放射温度計。
【請求項7】
前記温度計本体を冷却するための冷却水管が付設されていることを特徴とする請求項6に記載の放射温度計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−271524(P2006−271524A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−92063(P2005−92063)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(505126610)株式会社ニチレイフーズ (71)
【Fターム(参考)】