説明

駐車支援装置

【課題】ドライバが駐車したい場合に適切に駐車支援を行うことが可能で、駐車支援を開始する位置から駐車目標位置までの距離を短くすることが可能な駐車支援装置を提供する。
【解決手段】駐車支援装置100は、車両50を駐車する駐車目標位置を設定する駐車目標位置設定部17と、車両50が有するシフトレバーのシフト位置と車両50が有するステアリングの操舵変位量とに基づいてドライバにより駐車操作が開始されたか否かを判定するトリガ成立判定部16と、当該トリガ成立判定部16により駐車操作が開始されたと判定された場合に車両50の自車位置から駐車目標位置までの経路の演算を開始する駐車経路演算部19と、自車位置から駐車目標位置までの経路が生成できた場合に駐車目標位置へ誘導可能であることを報知する報知部21と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の駐車を支援する駐車支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両を運転するにあたり、所定の駐車スペースに当該車両を駐車させることは少なくない。このような駐車は、特に出先においては、都度、異なる駐車スペースであることが多い。一方、車両の駐車においては後退走行を要することも少なくないことから、車両を駐車させる行為に苦手意識を持っているユーザも多い。また、このような苦手意識を持っているユーザに拘らず、特に後退走行においては車両の周囲の安全確認を要することから、前進走行に比べて精神的疲労を感じることもある。このため、従来、車両を駐車させる場合に目的の駐車スペースに円滑に駐車させるようにユーザを支援する技術が利用されてきた(例えば、特許文献1及び特許文献2)。
【0003】
特許文献1に記載の駐車補助装置は、車両が備えるステアリングの舵角を基に算出された走行予想軌跡をディスプレイに表示させ、当該表示された走行予想軌跡の表示位置を基準として走行予想軌跡周辺の駐車区画白線を検出し、駐車操作状況に応じて適切な報知を行う機能を備えている。
【0004】
また、特許文献2に記載の駐車支援装置は、現在の車両位置に対して所定の位置関係にある位置を駐車目標位置として、現在の車両位置から駐車目標位置までの車両経路を車両の移動中に算出する。また、この駐車支援装置は車両経路が算出できた場合に、駐車目標位置への駐車が可能であることを知らせる通知手段を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−79860号公報
【特許文献2】特開2005−313710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ユーザがこのような特許文献1に記載の駐車補助装置や特許文献2に記載の駐車支援装置を使用する場合には、例えばこのような装置に係るシステムを起動するシステム起動スイッチの押下が必要である。また、その後、当該システムにより設定された目標駐車枠に対して自動操舵可能な場合にのみ、駐車支援を開始する支援開始スイッチが有効にされ、駐車支援を開始するにあたってユーザによる当該支援開始スイッチの押下が必要になる。特許文献1に記載の駐車補助装置や特許文献2に記載の駐車支援装置においては、このように複数のスイッチの押下によりシステムの制御が開始されるという手順が踏まれていた。
【0007】
特許文献1に記載の駐車補助装置では、駐車補助に係るシステムの使用の意図を持ってユーザがシステム起動スイッチを押下しても、目標駐車枠が検出されていなければ、ユーザは駐車補助システムを使用できないため不快感を持つ場合があった。また、特許文献2に記載の駐車支援装置では、シフトレバーをリバース位置にする前に経路計算を行うことから経路が成立しない場合があり、ユーザが駐車支援を期待して駐車可能であることを知らせる報知を待っていても駐車目標位置から離れてしまうといった問題があった。
【0008】
また、この種の装置は低コストで実現するために、自動操舵においては車両の走行時にのみ操舵角の変更が可能なモータを使わざるを得なかった。このため自動操舵において操舵角の変更を行うためには、車両を走行させながら行う必要があることから、駐車支援を開始する位置から目標駐車枠(駐車目標位置)までの距離が必要であった。そのため、駐車スペースの前方にある程度のスペースが必要であり、また、駐車スペースの近傍に障害物がある場合には適切に駐車支援を行うことが容易ではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、ユーザ(ドライバ)が駐車したい場合に適切に駐車支援を行うことが可能で、駐車支援を開始する位置から駐車目標位置までの距離を短くすることが可能な駐車支援装置を提供することにある。
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る駐車支援装置の特徴構成は、車両を駐車する駐車目標位置を設定する駐車目標位置設定部と、前記車両が有するシフトレバーのシフト位置と前記車両が有するステアリングの操舵変位量とに基づいてドライバにより駐車操作が開始されたか否かを判定するトリガ成立判定部と、前記トリガ成立判定部により前記駐車操作が開始されたと判定された場合に前記車両の自車位置から前記駐車目標位置までの経路の演算を開始する駐車経路演算部と、前記自車位置から前記駐車目標位置までの経路が生成できた場合に前記駐車目標位置へ誘導可能であることを報知する報知部と、を備えている点にある。
【0011】
このような特徴構成とすれば、通常の駐車操作の延長で駐車支援に係る処理を行うことができるので、ドライバによるスイッチ操作等を不要とすることができる。また、駐車操作に係る操作の初期段階をドライバ自らが行い、駐車支援に係る演算が終了した場合には必ず支援可能状態となったことを示す旨の報知が行われるので、適切に駐車支援に係る処理を開始することができる。すなわち、支援可能な時のみ、ドライバに報知することができる(従来は、駐車支援装置を起動させて使用しようとしても、車両と駐車目標位置との位置関係等から使用できないケースがあった)。また、駐車操作に係る操作の初期段階をドライバが自ら行うので、車両の停車時においてもステアリングの操舵角を変更することが可能(据え切り可能)である。したがって、駐車支援を開始する位置から駐車目標位置までの距離を短くすることが可能となる。また、従来は、駐車支援装置が支援可能となるように、駐車目標位置との距離を十分に取る必要があったが、本発明に係る駐車支援装置では駐車操作に係る操作の初期段階をドライバが自ら行うので、駐車目標位置の近くから駐車を開始することができる。
【0012】
また、前記トリガ成立判定部は、前記シフトレバーがリバース位置にあり、且つ、前記車両の後退走行の開始後に操舵された前記ステアリングの操舵変位量が予め設定された操舵閾値に達した場合に前記駐車操作が開始されたと判定すると好適である。
【0013】
このような構成とすれば、ドライバが駐車操作を開始したことを適切に検出することが可能となる。
【0014】
また、前記トリガ成立判定部は、前記シフトレバーがリバース位置にあり、且つ、前記シフトレバーをリバース位置に入れる直前の前記ステアリングの操舵角と前記車両の後退走行の開始直後の前記ステアリングの操舵角とにより規定される操舵変位量が予め設定された操舵閾値より大きい場合に前記駐車操作が開始されたと判定すると好適である。
【0015】
このような構成とすれば、車両を駐車させる際に行われるステアリングの据え切りが行われた場合であっても、ドライバが駐車操作を開始したことを適切に検出することが可能となる。
【0016】
また、更に、前記車両の周囲を撮像する撮像部を備え、前記駐車目標位置設定部は、前記シフト位置と前記操舵変位量とに基づいて、前記車両の周囲を撮像した撮像画像から前記駐車目標位置の規定に関与する地物の画像認識を開始すると好適である。
【0017】
このような構成とすれば、ドライバがスイッチ操作等を行うことなく、ドライバにより駐車操作が開始されたことをトリガとして、自動で駐車目標位置を設定することが可能となる。
【0018】
また、上記目的を達成するための本発明に係る駐車支援装置の他の特徴構成は、車両が有するシフトレバーのシフト位置と前記車両が有するステアリングの操舵変位量とに基づいてドライバにより駐車操作が開始されたか否かを判定するトリガ成立判定部と、前記車両の周囲を撮像する撮像部と、前記シフト位置と前記操舵変位量とに基づいて、前記車両の周囲を撮像した撮像画像から前記車両を駐車する駐車目標位置の規定に関与する地物の画像認識を開始し、前記駐車目標位置を設定する駐車目標位置設定部と、前記駐車目標位置が設定されたことを報知する報知部と、を備える点にある。
【0019】
このような特徴構成とすれば、上記一つ目の発明と同様に、通常の駐車操作の延長で駐車支援に係る処理を行うことができるので、ドライバによるスイッチ操作等を不要とすることができる。また、駐車操作に係る操作の初期段階をドライバ自らが行い、駐車目標位置の設定が終了した場合には必ず支援可能状態となったことを示す旨の報知が行われるので、適切に駐車支援に係る処理を開始することができる。
【0020】
また、前記トリガ成立判定部は、前記シフトレバーがリバース位置にあり、且つ、前記車両の後退走行の開始後に操舵された前記ステアリングの操舵変位量が予め設定された操舵閾値に達した場合に前記駐車操作が開始されたと判定すると好適である。
【0021】
このような構成とすれば、ドライバが駐車操作を開始したことを適切に検出することが可能となる。
【0022】
また、前記トリガ成立判定部は、前記シフトレバーがリバース位置にあり、且つ、前記シフトレバーをリバース位置に入れる直前の前記ステアリングの操舵角と前記車両の後退走行の開始直後の前記ステアリングの操舵角とにより規定される操舵変位量が予め設定された操舵閾値より大きい場合に前記駐車操作が開始されたと判定すると好適である。
【0023】
このような構成とすれば、車両を駐車させる際に行われるステアリングの据え切りが行われた場合であっても、ドライバが駐車操作を開始したことを適切に検出することが可能となる。
【0024】
また、前記駐車目標位置設定部は、前記ステアリングの操作に応じて前記地物の画像認識を行う前記撮像画像上の領域を設定すると好適である。
【0025】
このような構成とすれば、例えば車両の周囲に複数の駐車スペースがある場合でも、ステアリングの操作に応じて撮像画像上の領域が設定されるので、駐車目標位置の規定に関与する地物の画像認識を容易に行うことが可能となる。
【0026】
また、前記駐車目標位置設定部は、前記駐車目標位置が定められた後、ドライバによる前記ステアリングの操作に応じて駐車目標位置を変更すると好適である。
【0027】
このような構成とすれば、一旦、設定された駐車目標位置をドライバのステアリング操作に応じて、当該設定された駐車目標位置に係る駐車スペース以外の駐車スペースを駐車目標位置として設定し直すことが可能となる。したがって、ドライバは定められた駐車目標位置が好みでなければ、自らが他の駐車スペースに車両を誘導させるようにステアリングを操作することで、改めて駐車目標位置を設定し直すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】駐車支援装置の概略構成を模式的に示すブロック図である。
【図2】円弧モデルを示す図である。
【図3】直線モデルを示す図である。
【図4】二円モデルを示す図である。
【図5】車両状態と撮像画像とを示す図である。
【図6】車両状態と撮像画像とを示す図である。
【図7】車両状態と撮像画像とを示す図である。
【図8】車両状態と撮像画像とを示す図である。
【図9】車両状態と撮像画像とを示す図である。
【図10】駐車支援装置の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。図1は、本発明に係る駐車支援装置100の概略構成を模式的に示すブロック図である。本駐車支援装置100は、ドライバが車両50を後退させて所定の駐車スペースに駐車させる場合に、ドライバのスイッチ操作を要することなく、ドライバによる一連の駐車操作で当該駐車目標位置を特定すると共に、当該駐車目標位置までの経路を演算する機能を備えている。このような機能を有する駐車支援装置100は車両50に備えられ、ステアリングセンサ11、シフト位置センサ12、車輪速センサ13、操舵変位量演算部14、距離変位量演算部15、トリガ成立判定部16、駐車目標位置設定部17、撮像部18、駐車経路演算部19、自車位置演算部20、報知部21、駐車支援制御部22の各機能部を備えて構成される。このように構成される本駐車支援装置100は、CPUを中核部材として駐車支援を行う種々の処理を行うための上述の機能部をハードウェア又はソフトウェア或いはその両方で構築されている。
【0030】
ステアリングセンサ11は、車両50が有するステアリング(図示せず)の操舵角を検出する。操舵角とは、中立状態からステアリングを時計方向又は反時計方向に回転させた際の回転角に相当するものである。中立状態とは、車両50が備える操舵輪51の方向が車幅と平行となる状態、すなわち車両50が直進可能となる状態である。このようなステアリングの回転角を検出するステアリングセンサ11は、ホール素子を用いて構成することが可能である。ホール素子は電流が流れている導体に磁界を加えた場合に、導体内部の電荷が横方向に動かされるように受ける力に応じて起電力を生じるホール効果を利用して磁束を検出する素子である。
【0031】
このようなホール素子を用いる場合には、ステアリングの回転軸の周囲に永久磁石を配設し、ステアリングの回転に応じて変化する磁界をホール素子により検出すると好適である。また、ホール素子から出力される検出結果は電気信号であるので、ステアリングセンサ11は当該検出結果に基づいてステアリングの操舵角を演算する。ステアリングセンサ11により演算された操舵角は舵角情報として、後述の操舵変位量演算部14及び駐車経路演算部19に伝達される。
【0032】
シフト位置センサ12は、車両50が有するシフトレバー(図示せず)のシフト位置の検出を行う。シフトレバーは、本実施形態においては、AT(Automatic Transmission)機構が備えるギヤの切り替えを行うレバーである。このようなAT機構は変速機内部で駆動系が固定され、主に駐車時に使用する〔P〕レンジ、後退時に使用する〔R〕レンジ、変速機内部がフリー状態となり、エンジンからの動力を駆動系に伝達しないようにする〔N〕レンジ、通常走行時に使用する〔D〕レンジ、下り坂などエンジンブレーキを使用する際に使用し、シフトアップの上限を2速に固定する〔2〕レンジ、急な下り坂など強力なエンジンブレーキを使用する際に使用し、ギヤが1速に固定される〔1〕レンジを有している。AT機構は、このようなシフトレンジに対応するシフト位置毎に出力電圧が出力可能に設定され、シフト位置センサ12は当該出力電圧を検出することにより現在のシフト位置の検出が可能となる。シフト位置センサ12により検出されたシフト位置の検出結果は、後述するトリガ成立判定部16に伝達される。
【0033】
車輪速センサ13は、車両50が有する車輪(図示せず)の回転速度の検出を行う。車輪速センサ13も、上述のステアリングセンサ11と同様にホール素子を用いて車輪の回転速度を検出することが可能である。車輪速センサ13は、例えば左前輪の回転軸及び右前輪の回転軸に備えると好適である。このように左右両輪の回転軸に備えることにより、直進及び旋回の別を検出することが可能となる。即ち、左右両輪の回転速度が同じであれば直進であると判定することができ、左右両輪の回転速度が異なっていれば回転速度の遅い方に旋回をしていると判断することができる。なお、車輪速センサ13は車両50が備える前輪の回転軸及び後輪の回転軸の少なくともいずれか一方に備えていれば良い。車輪速センサ13により検出された車輪速度の検出結果は、後述する距離変位量演算部15に伝達される。
【0034】
操舵変位量演算部14は、ステアリングの操舵変位量を演算する。操舵変位量とは、ある時点のステアリングの操舵角と他の時点のステアリングの操舵角との差を示す値である。ステアリングの操舵角に関する検出結果は、上述のステアリングセンサ11から伝達される。操舵変位量演算部14は、ある時点のステアリングの操舵角を一時的に記憶し、その後伝達される他の時点のステアリングの操舵角との差を演算し、操舵変位量を演算する。例えば、ある時点とは車両50が駐車目標位置に後退して駐車させるのにシフトレバーをリバース位置に入れる直前の時点とし、他の時点とは、シフトレバーをリバース位置に入れて車両50を後退させる時点とする。係る場合には、操舵変位量演算部14は、この間に操作されたステアリングの操舵角の変位を操舵変位量として演算する。もちろん、ある時点と他の時点とを、夫々上述の例で示す時点以外の時点とすることも当然に可能である。操舵変位量演算部14により演算された操舵変位量は、後述するトリガ成立判定部16及び駐車目標位置設定部17に伝達される。
【0035】
距離変位量演算部15は、車両50の距離変位量を演算する。距離変位量とは、車両50が移動した距離を示す値である。この距離は、上述の車輪速センサ13から伝達される車輪速度の検出結果に基づいて行われる。距離変位量演算部15は、車輪速センサ13から伝達される車輪速度の検出結果に基づいて、車輪の移動距離を演算する。この移動距離の演算は、左右両輪毎に行われる。したがって、この演算結果により車両50が直進した距離であるか、旋回した距離であるかを特定することができる。操舵変位量演算部14により演算された操舵変位量は、後述するトリガ成立判定部16に伝達される。距離変位量演算部15により演算された距離変位量は、後述するトリガ成立判定部16及び自車位置演算部20に伝達される。
【0036】
トリガ成立判定部16は、車両が有するシフトレバーのシフト位置と車両50が有するステアリングの操舵変位量とに基づいて、ドライバにより駐車操作が開始されたか否かの判定を行う。車両50が有するシフトレバーのシフト位置は、上述のシフト位置センサ12から伝達されるシフト位置の検出結果により特定可能である。車両50が有するステアリングの操舵変位量は、上述の操舵変位量演算部14から伝達される。駐車操作とは、車両50を駐車させる操作である。ドライバにより駐車操作が行われたか否かの判定は、上述のシフト位置と操舵変位量とに基づいて、以下のようにして行うことが可能である。
【0037】
トリガ成立判定部16は、シフトレバーがリバース位置にあり、且つ、車両50の後退走行の開始後に操舵されたステアリングの操舵変位量が予め設定された操舵閾値に達した場合に駐車操作が開始されたと判定するように構成することができる。操舵閾値とは、予め設定される所定の判定閾値である。本実施形態では、車両50が後退走行を開始してから操舵されたステアリングの操舵変位量が90度として定められているとする。この場合には、トリガ成立判定部16は、シフトレバーがリバース位置にあり、且つ、車両50が後退走行を開始してから操舵されたステアリングの操舵変位量が90度に達した場合に駐車操作が開始されたと判定する。ここで、このようにトリガ成立判定部16により駐車操作が開始されたと判定されたことは、車両50の現在位置から車両50を駐車させる駐車目標位置までの経路の演算を開始するトリガが成立したことに相当する。このため、トリガが成立した場合には、トリガ成立判定部16は、その旨を示す結果を後述する駐車目標位置設定部17及び自車位置演算部20に伝達する。
【0038】
また、トリガ成立判定部16は、上記とは別の方法でドライバにより駐車操作が行われたか否かの判定を行うことも可能である。例えば、トリガ成立判定部16は、シフトレバーがリバース位置にあり、且つ、シフトレバーをリバース位置に入れる直前のステアリングの操舵角と車両50の後退走行の開始直後のステアリングの操舵角とにより規定される操舵変位量が予め設定された操舵閾値より大きい場合に駐車操作が開始されたと判定するように構成することも可能である。係る場合には、トリガ成立判定部16はシフト位置がリバース位置にあり、且つ、シフトレバーをリバース位置に入れる直前のステアリングの操舵角と車両50の後退走行の開始直後のステアリングの操舵角とにより規定される操舵変位量が90度より大きい場合に、駐車操作が開始されたと判定する。即ち、上述のように車両50の現在位置から車両50を駐車させる駐車目標位置までの経路の演算を開始するトリガが成立したと判定する。したがって、トリガが成立した場合には、トリガ成立判定部16は、その旨を示す結果を後述する駐車目標位置設定部17及び自車位置演算部20に伝達する。このようなステアリングの操舵変位量が90度より大きいか否かの判定は、特にドライバが据え切りを行った場合に有効である。
【0039】
更に、ドライバによっては、車両50を駐車させるための後退を開始する位置に前進で近づく段階で、ステアリングの操舵角を駐車させるのに適した位置になるように回転させ始め、更に、この状態で据え切りすることなく、車両50が後退を始めてからステアリングを回転させるように操作するドライバもいる。このような場合には、操舵変位量によってドライバが駐車操作の意図が有るか否かを判断しかねる場合がある。そこで、トリガ成立判定部16は距離変位量が予め設定される距離閾値よりも大きいか否かの判定も行う。この判定により、車両50が所定距離だけ後退すれば、ドライバが駐車操作を行う意図があると判定することができる。ここで、距離閾値は予め設定されるが、本実施形態では1mであるとして説明する。もちろん、他の値を距離閾値として設定することも可能であるし、適宜、ドライバにより変更することも可能である。
【0040】
撮像部18は、車両50の周囲を撮像する。本実施形態では車両の周囲には、少なくとも車両50の後方が含まれる。このような撮像部18は、CCDカメラ等により構成することが可能であり、係る場合にはバックカメラが相当する。撮像部18は、少なくとも車両50の後方を撮像し、取得された撮像画像を後述する駐車目標位置設定部17に伝達する。
【0041】
駐車目標位置設定部17は、車両50を駐車する駐車目標位置を設定する。本実施形態では、駐車目標位置設定部17は、シフト位置と操舵変位量とに基づいて、車両50の周囲を撮像した撮像画像から駐車目標位置の規定に関与する地物の画像認識を開始する。シフト位置は上述のシフト位置センサ12から伝達される。操舵変位量は上述の操舵変位量演算部14から伝達される。この操舵変位量には、ステアリングが時計方向の変位であったか、或いは反時計方向の変位であったかを示す情報も含まれる。また、本実施形態では、車両50の周囲を撮像した撮像画像は車両50の後方を撮像した撮像画像であり、上述の撮像部18から伝達される。駐車目標位置の規定に関与する地物とは、駐車スペースを規定するのに関係のある区画線(白線等)や縁石やパイロン等が相当する。
【0042】
ここで、シフト位置が〔R〕レンジであり、操舵変位量に時計方向の変位であったことを示す情報が含まれていた場合には、ドライバは車両50を当該車両50の右後方に位置する駐車スペースに停車させたい意図を有している場合が多い。したがって、駐車目標位置設定部17は、操舵変位量にステアリングが時計方向の変位であったことを示す情報が含まれている場合には、車両50の右後方に存在する駐車スペースを規定するのに関係のある区画線や縁石やパイロン等の地物の画像認識を開始する。
【0043】
一方、シフト位置が〔R〕レンジであり、操舵変位量に反時計方向の変位であったことを示す情報が含まれていた場合には、ドライバは車両50を当該車両50の左後方に位置する駐車スペースに停車させたい意図を有している場合が多い。したがって、駐車目標位置設定部17は、操舵変位量にステアリングが反時計方向の変位であったことを示す情報が含まれている場合には、車両50の左後方に存在する駐車スペースを規定するのに関係のある区画線や縁石やパイロン等の地物の画像認識を開始する。
【0044】
このように、駐車目標位置設定部17は、シフト位置と操舵変位量に含まれるステアリングの回転方向とに応じて、撮像部18から伝達される撮像画像から車両50の右後方或いは左後方に存在する駐車スペースを規定するのに関係のある地物の画像認識を開始する。なお、地物の画像認識に関しては、周知技術であるため説明は省略する。駐車目標位置設定部17は、画像認識により上述の地物を検出できた場合には、当該検出された地物により規定される駐車スペースを駐車目標位置として設定する。駐車目標位置設定部17により設定された駐車目標位置は、後述する駐車経路演算部19に伝達される。
【0045】
自車位置演算部20は、現在の車両50の位置を演算する。本駐車支援装置100は、上述のトリガ成立判定部16により、車両50の現在位置から車両50を駐車させる駐車目標位置までの経路の演算を開始するトリガが成立した際に駐車目標位置設定部17が駐車目標位置を設定し、後述する駐車経路演算部19が駐車経路を演算する。一方、この時点では、車両50はドライバの運転操作により、トリガが成立した時点から移動している可能性がある。係る場合には、両時点の車両50の位置には差が生じている場合があり、後述する駐車経路演算部19が駐車経路の演算を適切に行えない場合がある。
【0046】
このため、自車位置演算部20はトリガ成立判定部16からトリガが成立したことを示す結果が伝達されると、その時点から車両50の移動に応じて変化する現在位置を演算する。車両50の移動は、上述の距離変位量演算部15から伝達される距離変位量に応じて特定可能である。自車位置演算部20は、このように距離変位量を用いてトリガが成立してからの移動に応じて変化する現在位置(自車位置)を演算する。自車位置演算部20により演算された自車位置を示す自車位置情報は、後述する駐車経路演算部19に伝達される。
【0047】
駐車経路演算部19は、トリガ成立判定部16により駐車操作が開始されたと判定された場合に車両50の自車位置から駐車目標位置までの経路の演算を開始する。また、車両50の自車位置とは、トリガが成立した時の現在位置も含む。また、トリガが成立した時に停車中の場合には、その時の現在位置となる。車両50の自車位置とは、自車位置演算部20から伝達される自車位置情報により特定可能である。駐車目標位置は、駐車目標位置設定部17により設定された駐車目標位置が相当する。したがって、駐車経路演算部19は、トリガ判定部16により駐車操作が開始されたと判定された場合に、自車位置演算部20から伝達される自車位置情報に示される自車位置から駐車目標位置設定部17により設定された駐車目標位置までの経路の演算を開始する。
【0048】
自車位置から駐車目標位置までの経路の演算は、車両50の周囲を撮像した撮像画像を用いて行われる。駐車経路演算部19は、撮像画像を用いて自車位置から駐車目標位置までの距離を演算し、当該距離に対して以下に示される円弧モデル、直線モデル、二円モデル、のいずれかを当てはめて行われる。円弧モデルは図2(a)に示されるように、現在の位置からステアリングの操舵角を維持したまま(回転させた状態で)駐車目標位置に駐車するモデルである。例えば図2(a)では、ステアリングを中立状態から反時計方向に回転して後退する状態を図示している。したがって、図2(b)に示されるように車両50の駐車に係る走行軌跡は破線で示されるような時計方向の円弧を描く軌跡sとなる。
【0049】
直線モデルは、図3(a)に示されるように、現在の位置から真直ぐに後退し、その後所定の操舵角で駐車目標位置に駐車するモデルである。例えば図3(a)では、ステアリングを中立状態で維持して後退した後、反時計方向に回転させて後退する状態を図示している。したがって、図3(b)に示されるように車両50の駐車に係る走行軌跡は破線で示されるような直線を描く軌跡tと円弧を描く軌跡uとが合成された軌跡となる。
【0050】
二円モデルは、図4(a)に示されるように、中立位置を中心に現在の操舵角の逆方向の操舵角で後退し、その後、現在の操舵角で後退して駐車目標位置に駐車するモデルである。例えば図4(a)では、ステアリングを中立状態から時計方向に回転させて後退した後、反時計方向に回転させて後退する状態を図示している。したがって、図4(b)に示されるように車両50の駐車に係る走行軌跡は破線で示されるような反時計方向の円弧を描く軌跡vと時計方向の円弧を描く軌跡wとが合成された軌跡となる。
【0051】
駐車経路演算部19が行う駐車経路の演算は、上述のいずれかのモデルを用いて行われる。どのモデルを用いて経路を演算するかは、車両50の現在の位置と駐車目標位置との位置関係に依存する。即ち、車両50の現在の位置が、駐車目標位置に対して所定の位置にある場合には円弧モデルで演算される。一方、車両50の現在の位置が、車駐車目標位置に対して前記所定の位置より離れた位置にある場合には直線モデルで演算される。更に、車両50の現在の位置が、車両目標位置に対して前記所定の位置より接近している場合には二円モデルで演算される。ここで、所定の位置とは、図2に示されるようにステアリングの操舵角を一定に保持したまま駐車させることが可能な位置である。なお、現在の操舵角は、ステアリングセンサ11から舵角情報として伝達される。駐車経路演算部19により演算された現在の位置から駐車目標位置までの経路は後述する報知部21及び駐車支援制御部22に伝達される。
【0052】
報知部21は、自車位置から駐車目標位置までの経路が生成できた場合に駐車目標位置へ誘導可能であることを報知する。経路が生成できたか否かは、駐車経路演算部19が経路を生成した場合に当該駐車経路演算部19から伝達される経路により特定可能である。この報知は、車両50が備えるスピーカ(図示せず)から音声により報知しても良いし、車両50が備える表示ディスプレイ(図示せず)の表示画面に表示して報知しても良い。或いは、LED(Light Emitting Diode)等に通電して報知しても良い。
【0053】
誘導可能である場合に、駐車支援制御部22は、車両50を駐車目標位置に駐車させるように駐車支援を行う。この駐車支援は、自動操舵を行うように構成しても良いし、音声あるいは/かつ表示によりドライバの操作を支援しても良い。このような駐車支援は、上述の表示ディスプレイに駐車目標位置と演算された経路とを表示し、ドライバが表示ディスプレイに表示される駐車目標位置が適切であると判断した場合には、図示しない操作スイッチを押下することにより行うと好適である。自動操舵に係る駐車支援については、周知技術であるため説明は省略する。このように本駐車支援装置100によれば、駐車目標位置までの経路の演算を開始するためにドライバが操作スイッチを押下する必要がない。したがって、ドライバは表示ディスプレイに駐車目標位置が表示されていることを確認する必要がないので、ドライバは駐車操作に集中することができる。また、駐車操作の初期段階はドライバが行うので、車両50が停車したままでステアリングの操舵角を変更することができる。したがって、駐車支援を開始する位置から駐車目標位置までの距離を短くすることが可能となる。
【0054】
次に、駐車支援に係る車両の状況に応じた駐車目標位置の設定について図5−図9を用いて説明する。図5(a)は車両50と駐車スペースとの位置関係を示し、図5(b)はシフトレバーのシフト位置を示し、図5(c)はステアリングの状態を示し、図5(d)は表示ディスプレイに表示される表示画像を示している。ドライバは車両50を駐車させる駐車スペースを見つけると、駐車操作を開始する。図5(a)においては、左後方の駐車スペースに後退して駐車させるため車両50の前部を右に振った状態となっていることを示している。その際のシフトレバーのシフト位置は車両50が前進して図5(a)に示される位置に達したことから図5(b)に示されるように「Dレンジ」に設定されている。また、ステアリングは図5(c)に示されるように中立状態に対して時計方向に回転させた状態となっている。したがって、図5(a)に示される車両50が備える操舵輪51は、右方向を向いていることになる。また、図5(d)にはその時に表示ディスプレイに表示される表示画像を示している。例えばナビゲーションシステムの地図画像であっても良いし、DVDやテレビを視聴している画像であっても良い。図5(d)においては、地図画像を表示している場合の例を示している。
【0055】
図6には、図5に示される状態から、ドライバが車両50を駐車スペースに駐車させるべく、図6(b)に示されるようにシフトレバーを「Rレンジ(リバース位置)」に変更すると共に、図6(c)に示されるようにステアリングを反時計方向に回転させた状態を示している。ここで、車両50は図6(a)に示されるように、図5(a)に示される位置から移動していないことからステアリングは据え切りが行われたことを示している。表示ディスプレイの表示画像は、シフトレバーが「Rレンジ(リバース位置)」に変更されると、図6(d)に示されように車両50の後方の撮像画像に切り替えられる。
【0056】
図6(d)には後方予測線gが撮像画像に重畳して描画される。後方予測線gは、後退する車両50の操舵角に応じた車両50の後端の予測軌跡等を示す指標である。本実施形態では、後方予測線gは、車両50の後端の予測軌跡を示す後端予測軌跡線g1及び車両50の後方の距離目安線g2、g3、g4から構成される。距離目安線は、本例では、5m目安線g2、3m目安線g3、1m注意線g4である。後方予測線gは、基本的に黄色で描画される。但し、1m注意線g4及び、g4よりも車両30側の後端予測軌跡線g5については、ドライバに注意を喚起するために、赤色で描画される。
【0057】
また、この状態において、トリガ成立判定部16により所定の条件(シフトレバーが「Rレンジ」に変更され、ステアリングの操舵変位量が「90度」より大きい)が成立したと判定されることから、駐車スペースを規定するのに関係がある地物の画像認識が開始される。このため、撮像画像には、関心領域Rも重畳して描画される。関心領域Rとは、撮像画像上で上述の駐車目標位置設定部17が地物を認識しようとしている領域であり、一般的には橙色で描画される。駐車目標位置設定部17は、画像認識により関心領域Rに地物を認識した場合に、当該地物により規定された駐車スペースを駐車目標位置として設定する。
【0058】
図7に示される時点では、駐車目標位置設定部17は駐車目標位置を設定できていないので、車両50の駐車操作はドライバの操作により行われている。ドライバの駐車操作中に駐車目標位置設定部17が駐車目標位置を設定すると、図8(d)に示されるように駐車枠cが撮像画像に重畳して描画される。この駐車枠cは、一般的には緑色で描画される。また、関心領域Rは駐車目標位置が設定されると青色に変更して描画すると好適である。このように駐車目標位置が設定されると、駐車経路演算部19は車両50の現在位置から駐車目標位置までの経路を演算する。駐車経路が演算されると、表示ディスプレイの右下に「確定」の文字が描画され、当該「確定」の文字をドライバがタッチすることにより駐車操作を自動で行うことが可能となる。
【0059】
図8においてドライバが「確定」スイッチをタッチすると、図9に示されるように駐車目標位置に車両50が駐車するように自動操舵が開始される。この状態になると、ドライバはステアリングから手を離すことも可能であるし、アクセルペダルを踏むことも不要となる。この場合には、図9(d)に示されるように、表示画像内の右上部に「作動中」の文字が表示される。ドライバは車両50の周囲の状況を確認し、異常が発生しそうであればブレーキペダルを踏むか、或いは表示画像内の左下部に描画される「中止」の文字をタッチすることにより自動操作を中止することが可能となる。また、駐車目標位置を変更する必要が生じた場合には、駐車目標位置の変更が可能なように表示画像内の右下部に「目標変更」のスイッチが表示される。ドライバは必要に応じて当該「目標変更」の文字をタッチすることにより、駐車目標位置の変更を行うことが可能となる。
【0060】
次に、本駐車支援装置100による駐車目標位置の設定と駐車経路の演算とに関して図10に示すフローチャートを用いて説明する。シフトレバーのシフト位置がリバース位置に変更されると(ステップ#01:Yes)、操舵変位量演算部14がステアリングの操舵変位量を演算する(ステップ#02)。この操舵変位量は、ドライバが駐車目標位置に駐車させるためにステアリングの据え切りを行う前と後との変位量が相当する。操舵変位量はトリガ成立判定部16に伝達される。トリガ成立判定部16が、操舵変位量が予め設定される操舵閾値(例えば90度)よりも大きいと判定すると(ステップ#03:Yes)、駐車目標位置設定部17は駐車スペースの規定に関係する地物の画像認識を開始する(ステップ#04)。
【0061】
一方、ステップ#03においてトリガ成立判定部16が、操舵変位量が操舵閾値よりも大きくないと判定すると(ステップ#03:No)、距離変位量演算部15は距離変位量を演算する(ステップ#05)。なお、この距離変位量は、ステップ#02の操舵変位量の演算に続いて常に行う形態であっても良い。距離変位量が演算されると、トリガ成立判定部16は距離変位量が距離閾値(例えば1m)より大きいか否かの判定を行う。
【0062】
距離変位量が距離閾値よりも大きいと判定されると(ステップ#06:Yes)、駐車目標位置設定部17は駐車スペースの規定に関係する地物の画像認識を開始する(ステップ#04)。一方、距離変位量が距離閾値よりも大きくないと判定されると(ステップ#06:No)、ステップ#02に戻り、処理が継続される。
【0063】
ステップ#04において、駐車目標位置設定部17により画像認識が開始されるが、当該画像認識の結果を用いて駐車目標位置を設定できない場合には(ステップ#07:No)、ステップ#02に戻り、処理が継続される。一方、駐車目標位置設定部17により駐車目標位置が設定された場合には(ステップ#07:Yes)、駐車経路演算部19は現在のステアリングの操舵角に基づいて現在位置から駐車目標位置までの駐車経路の演算を行う(ステップ#08)。
【0064】
駐車経路演算部19は、まず円弧モデルを用いて駐車経路の生成を行う。円弧モデルにより駐車経路が生成された場合には(ステップ#09:Yes)、ドライバに駐車目標位置に駐車支援制御部22による駐車支援により誘導可能であることを報知する(ステップ#10)。駐車経路演算部19は、円弧モデルを用いた駐車経路の生成ができなかった場合には(ステップ#10:No)、中立操舵角を用いた直線モデルによる駐車経路の演算を行う(ステップ#11)。
【0065】
直線モデルにより駐車経路が生成された場合には(ステップ#12:Yes)、ドライバに駐車目標位置に駐車支援制御部22による駐車支援により誘導可能であることを報知する(ステップ#10)。駐車経路演算部19は、直線モデルを用いた駐車経路の生成ができなかった場合には(ステップ#12:No)、逆方向操舵角を用いた二円モデルによる駐車経路の演算を行う(ステップ#13)。
【0066】
二円モデルにより駐車経路が生成された場合には(ステップ#14:Yes)、ドライバに駐車目標位置に駐車支援制御部22による駐車支援により誘導可能であることを報知する(ステップ#10)。駐車経路演算部19は、二円モデルを用いた駐車経路の生成ができなかった場合には(ステップ#14:No)、操舵変位量演算部14が改めて操舵変位量の演算を行う(ステップ#15)。
【0067】
トリガ成立判定部16は、改めて演算された操舵変位量が操舵閾値よりも大きいか否かの判定を行う。操舵変位量が操舵閾値よりも大きい場合には(ステップ#16:Yes)、ステップ#08に戻り、処理が継続される。一方、操舵変位量が操舵閾値よりも大きくない場合には(ステップ#16:No)、距離変位量演算部15が改めて距離変位量の演算を行う(ステップ#17)。
【0068】
トリガ成立判定部16は、改めて演算された距離変位量が距離閾値よりも大きいか否かの判定を行う。距離変位量が距離閾値よりも大きい場合には(ステップ#18:Yes)、ステップ#08に戻り、処理が継続される。一方、距離変位量が距離閾値よりも大きくない場合には(ステップ#18:No)、ステップ#15に戻り、処理が継続される。
【0069】
このような処理で、本駐車支援装置100は駐車目標位置を設定し、当該駐車目標位置までの駐車経路の演算を行う。なお、ステップ#10において、駐車支援装置100からドライバに対して誘導可能であることを示す報知がされた場合には、ドライバは操作スイッチを押下(タッチ)することにより、駐車操作に係る操作を音声案内させたり、自動運転により駐車目標位置に走行させたりすることが可能である。
【0070】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、駐車目標位置設定部17により設定された駐車目標位置を変更する必要が生じた場合には、画面右下に表示される「目標変更」の文字をタッチすることにより、駐車目標位置の変更を行うことが可能であるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲は、これに限定されるものではない。例えば、駐車目標位置設定部17が、駐車目標位置が定められた後、ドライバによるステアリングの操作に応じて駐車目標位置を変更する構成とすることも可能である。例えば、一旦、駐車目標位置が定められた後、本駐車支援装置100による駐車支援の実行中に、ドライバが他の駐車スペースに車両50を駐車させたいという意図を持って、ドライバ自らがステアリング操作を行った場合には、駐車目標位置設定部17は、前記一旦、定められた駐車目標位置を別の駐車目標位置に変更することが可能となる。したがって、このような構成とすれば、例えば車両50の周囲に複数の駐車スペースがあり、駐車目標位置設定部17により設定された駐車目標位置が好みでない場合でも、ドライバが「目標変更」のスイッチ操作を行うことなく円滑に駐車目標位置を変更することが可能となる。
【0071】
上記実施形態では、駐車目標位置設定部17により画像認識される駐車スペースは、1つである場合の例を示した。本発明は、複数の駐車スペースを画像認識した場合でも適用可能である。このような場合には、駐車目標位置設定部17は、ステアリングの操作に応じて地物の画像認識を行う撮像画像上の領域(関心領域R)を設定するように構成することも可能である。即ち、例えば車両の周囲に複数の駐車スペースがある場合でも、ステアリングの操作に応じて関心領域Rが設定されるので、駐車目標位置の規定に関与する地物の画像認識を容易に行うことが可能となる。
【0072】
上記実施形態では、ステアリングセンサ11や車輪速センサ13はホール素子を用いて構成することが可能であるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲は、これに限定されるものではない。他の周知技術を用いてステアリングセンサ11や車輪速センサ13を構成することも当然に可能である。
【0073】
上記実施形態では、シフト位置センサ12はシフト位置により変化する出力電圧を読み取る方式により検出するとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲は、これに限定されるものではない。他の周知技術を用いてシフト位置を検出するように構成することも当然に可能である。
【0074】
上記実施形態では、撮像部18はCCDカメラ等により構成されるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲は、これに限定されるものではない。他の撮像デバイスを用いて構成することも当然に可能である。また、撮像部18は、バックカメラであるとして説明したが、サイドカメラを用いて構成することも可能であるし、他のカメラを用いて構成することも当然に可能である。
【0075】
上記実施形態では、駐車目標位置設定部17が画像認識を行い、当該画像認識の結果に基づいて駐車目標位置を設定するとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲は、これに限定されるものではない。画像認識を行わず、予め他の方法により駐車目標位置を設定することも可能である。例えば、ドライバが表示ディスプレイの中に表示される駐車スペースを所望の駐車目標位置として設定することも可能であるし、一旦、駐車目標位置として設定したい駐車スペースの前に停車する等して設定することも可能である。
【0076】
上記実施形態では、駐車目標位置の設定は、撮像部18により取得された撮像画像の画像認識により行われるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲は、これに限定されるものではない。例えば、超音波ソナーを用いて駐車スペースを検出し、当該検出された駐車スペースを駐車目標位置に設定する構成とすることも可能である。また、ドライバの運転操作により当該ドライバが所望する駐車スペースから予め設定された距離だけ離れた位置に車両50を一旦停止させ、当該一旦停止した位置に対応する前記駐車スペースを駐車目標位置に設定する構成とすることも当然に可能である。もちろん、他の公知の方法により駐車目標位置を設定するように構成することも当然に可能である。
【0077】
上記実施形態では、駐車経路演算部19は現在位置から駐車目標位置までの経路を演算するとして説明した。この演算は、駐車目標位置設定部17により駐車目標位置が設定された後、行うような構成とすることも可能である。係る場合には、駐車目標位置設定部17により設定された駐車目標位置をドライバの操作等により変更された場合には、駐車経路演算部19は改めて駐車経路を演算すると好適である。あるいは、一旦、駐車目標位置設定部17により画像認識された駐車スペース全てに対して経路を演算する構成とすることも可能である。係る場合には、演算された経路は、駐車経路演算部19が一時記憶しておき、駐車目標位置設定部17により設定された駐車目標位置をドライバの操作等により変更された場合には、当該一時記憶されている経路を読み出して利用すると好適である。
【0078】
上記実施形態では、トリガ成立判定部16は、シフトレバーがリバース位置にあり、且つ、車両50の後退走行の開始後に操舵されたステアリングの操舵変位量が予め設定された操舵閾値に達した場合に駐車操作が開始されたと判定することが可能であり、係る場合の操舵閾値は90度であるとして説明した。また、トリガ成立判定部16は、シフトレバーがリバース位置にあり、且つ、シフトレバーをリバース位置に入れる直前のステアリングの操舵角と車両50の後退走行の開始直後のステアリングの操舵角とにより規定される操舵変位量が予め設定された操舵閾値より大きい場合に駐車操作が開始されたと判定することも可能であり、係る場合の操舵閾値も90度であるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲は、これに限定されるものではない。上記操舵閾値の90度は例示であり、他の角度で設定することも当然に可能である。また、上記操舵閾値の90度を夫々別の角度で設定することも当然に可能である。
【0079】
上記実施形態では、本駐車支援装置100は、トリガ成立判定部16により駐車操作が開始されたと判定された場合に駐車経路演算部19が車両50の自車位置から駐車目標位置までの経路の演算を開始し、自車位置から駐車目標位置までの経路が生成できた場合に報知部21が駐車目標位置へ誘導可能であることを報知するとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲は、これに限定されるものではない。
【0080】
本発明に係る駐車支援装置100を、車両50が有するシフトレバーのシフト位置と車両50が有するステアリングの操舵変位量とに基づいてドライバにより駐車操作が開始されたか否かを判定するトリガ成立判定部16と、車両50の周囲を撮像する撮像部18と、シフト位置と操舵変位量とに基づいて、車両50の周囲を撮像した撮像画像から車両50を駐車する駐車目標位置の規定に関与する地物の画像認識を開始し、駐車目標位置を設定する駐車目標位置設定部17と、駐車目標位置が設定されたことを報知する報知部21と、を備えて構成することも可能である。
【0081】
このような特徴構成とすれば、通常の駐車操作の延長で駐車支援に係る処理を行うことができるので、ドライバによるスイッチ操作等を不要とすることができる。また、駐車操作に係る操作の初期段階をドライバ自らが行い、駐車目標位置の設定が終了した場合には必ず支援可能状態となったことを示す旨の報知が行われるので、適切に駐車支援に係る処理を開始することができる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、ドライバが駐車したい場合に適切に駐車支援を行うことが可能で、駐車支援を開始する位置から駐車目標位置までの距離を短くすることが可能な駐車支援装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0083】
11:ステアリングセンサ
12:シフト位置センサ
13:車輪速センサ
14:操舵変位量演算部
15:距離変位量演算部
16:トリガ成立判定部
17:駐車目標位置設定部
18:撮像部
19:駐車経路演算部
20:自車位置演算部
21:報知部
22:駐車支援制御部
50:車両
100:駐車支援装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を駐車する駐車目標位置を設定する駐車目標位置設定部と、
前記車両が有するシフトレバーのシフト位置と前記車両が有するステアリングの操舵変位量とに基づいてドライバにより駐車操作が開始されたか否かを判定するトリガ成立判定部と、
前記トリガ成立判定部により前記駐車操作が開始されたと判定された場合に前記車両の自車位置から前記駐車目標位置までの経路の演算を開始する駐車経路演算部と、
前記自車位置から前記駐車目標位置までの経路が生成できた場合に前記駐車目標位置へ誘導可能であることを報知する報知部と、
を備える駐車支援装置。
【請求項2】
前記トリガ成立判定部は、前記シフトレバーがリバース位置にあり、且つ、前記車両の後退走行の開始後に操舵された前記ステアリングの操舵変位量が予め設定された操舵閾値に達した場合に前記駐車操作が開始されたと判定する請求項1に記載の駐車支援装置。
【請求項3】
前記トリガ成立判定部は、前記シフトレバーがリバース位置にあり、且つ、前記シフトレバーをリバース位置に入れる直前の前記ステアリングの操舵角と前記車両の後退走行の開始直後の前記ステアリングの操舵角とにより規定される操舵変位量が予め設定された操舵閾値より大きい場合に前記駐車操作が開始されたと判定する請求項1に記載の駐車支援装置。
【請求項4】
更に、前記車両の周囲を撮像する撮像部を備え、
前記駐車目標位置設定部は、前記シフト位置と前記操舵変位量とに基づいて、前記車両の周囲を撮像した撮像画像から前記駐車目標位置の規定に関与する地物の画像認識を開始する請求項1から3のいずれか一項に記載の駐車支援装置。
【請求項5】
車両が有するシフトレバーのシフト位置と前記車両が有するステアリングの操舵変位量とに基づいてドライバにより駐車操作が開始されたか否かを判定するトリガ成立判定部と、
前記車両の周囲を撮像する撮像部と、
前記シフト位置と前記操舵変位量とに基づいて、前記車両の周囲を撮像した撮像画像から前記車両を駐車する駐車目標位置の規定に関与する地物の画像認識を開始し、前記駐車目標位置を設定する駐車目標位置設定部と、
前記駐車目標位置が設定されたことを報知する報知部と、
を備える駐車支援装置。
【請求項6】
前記トリガ成立判定部は、前記シフトレバーがリバース位置にあり、且つ、前記車両の後退走行の開始後に操舵された前記ステアリングの操舵変位量が予め設定された操舵閾値に達した場合に前記駐車操作が開始されたと判定する請求項5に記載の駐車支援装置。
【請求項7】
前記トリガ成立判定部は、前記シフトレバーがリバース位置にあり、且つ、前記シフトレバーをリバース位置に入れる直前の前記ステアリングの操舵角と前記車両の後退走行の開始直後の前記ステアリングの操舵角とにより規定される操舵変位量が予め設定された操舵閾値より大きい場合に前記駐車操作が開始されたと判定する請求項6に記載の駐車支援装置。
【請求項8】
前記駐車目標位置設定部は、前記ステアリングの操作に応じて前記地物の画像認識を行う前記撮像画像上の領域を設定する請求項4から7のいずれか一項に記載の駐車支援装置。
【請求項9】
前記駐車目標位置設定部は、前記駐車目標位置が定められた後、ドライバによる前記ステアリングの操作に応じて駐車目標位置を変更する請求項1から8のいずれか一項に記載の駐車支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−208545(P2010−208545A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58120(P2009−58120)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】