説明

高エネルギ電子ビームを用いて成形品を処理する装置及び方法

本発明は、高エネルギの電子ビーム(10)を用いて成形品(2)を処理する装置であって、電子ビーム(10)が、互いに向かい合っている定置の又は可動の2つの電子出射窓を通して、成形品(2)に導かれ、該両電子出射窓が、成形品(2)のための処理室(6)を画成している形式のものに関する。このような形式の装置において本発明の構成では、成形品(2)のための搬送装置が設けられていて、該搬送装置を用いて成形品(2)は、搬送方向に対して垂直にかつほぼ鉛直に配置された電子出射窓(7,8)のそばを、処理室(6)を貫いて案内可能であり、成形品(2)の供給搬送のために、処理室(6)におけるX線に対して遮蔽された通路(3,3a,3b,3c)が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1及び請求項13の上位概念部に記載された形式の装置及び方法に関するものであり、特に、立体的な成形品の表面及び縁部領域における材料特性を改質するために、高エネルギの電子ビームを用いて成形品を処理する装置及び方法に関する。
【0002】
すなわち請求項1に係る発明は、高エネルギの電子ビームを用いて成形品を処理する装置であって、電子ビームが、互いに向かい合っている定置の又は可動の2つの電子出射窓を通して、成形品に導かれ、該両電子出射窓が、成形品のための処理室を画成している形式のものに関し、請求項13に係る発明は、このような装置を用いて、高エネルギの電子ビームによって成形品を処理する方法に関する。
【0003】
WO2007/107331A1に基づいて公知の構成では、立体的な成形品が電子を用いて処理され、この場合成形品は2つの電子出射窓の間に置かれ、両電子出射窓には少なくとも1つの電子加速器が配置されている。この場合さらに複数のレフレクタが配置されており、これらのレフレクタによって、特に成形品の側部領域において、つまり場合によっては例えば影によって十分に電子が印加されない、成形品の側部領域において、電子は特に側部領域から成形品へと導かれるようになっている。
【0004】
DE4028479C2に基づいて公知の構成では、内燃機関のアルミニウム部分の表面近傍を熱処理するために、高エネルギの電子ビームが使用される。そのために表面は、全面をカバーするポイントラスタ内において電子ビームを印加され、この場合電子ビームはポイントからポイントに飛び跳ね、それぞれ所定の時間1つのポイントに熱を加えるために留まる。
【0005】
従って、電子によってエネルギを空間的及び時間的に決定して材料に入力することにより、該材料の材料特性を、表面において及び所定の範囲において、並びに体積においても変化させることが可能である。そのために必要な電子は、通常、電子加速器において生成され、成形されて加速される。そしてその後で電子は、通常の配置形式では、例えば多くの場合平らな電子出射窓を介して高真空から、成形品を備えた処理室内における高い圧力レベルへと導かれる。この場合多くは、電子出射窓の寸法全体にわたって一定の電子密度が望まれている。電子出射窓と成形品との間の間隔における気体層(例えば空気)を通過した後で、電子は処理すべき製品表面に達する。
【0006】
電子加速器としては、帯状放射体(Bandstrahler)とも呼ばれる自体公知の面ビーム生成器(Flaechenstrahlerzeuger)が使用されるか、又はアキシャルビーム生成器が使用される。アキシャルビーム生成器として形成された通常の電子加速器は付加的に、ビーム偏向系を備えた電子ビーム偏向室を有しており、ビーム偏向系を用いて、生成された電子ビームは周期的に電子出射窓の全体にわたって、かつ時間平均で、電子出射窓のすべての部分領域において、ほぼ等しい滞留時間をもって偏向される。
【0007】
例えばプラスチック、紙、金属又はセラミックのような種々様々な材料から成る、例えばパッケージ、医療用のインプラント、OP器具、人工機能補完装具等のような立体的な成形品は、種々様々な分野において、例えばパッケージ産業、製薬分野、医療技術又はプラスチック産業において使用される。特定の使用例のためには、そのために成形品の表面全体及び縁部層の特性変化、つまり例えば殺菌、表面機能化、架橋又は硬化が必要である。
【0008】
さらにDE19942142A1に基づいて、ばら荷の表面の特性に電子エネルギを用いて影響を与えることが公知であり、この場合これらのばら荷は複数回の通過及びポジション変向をされながら、電子出射窓のそばを案内される。
【0009】
成形品特性を改質することを目的として電子を生成するこのような装置は、電子出射窓全体にわたってほぼ等しい電子エネルギ密度が生成されて出力されるように、構成されている。従来の搬送系は成形品を、回転もしくは旋回なしに、常に同じポジションで、電子加速器の処理ゾーンを通して案内する。成形品表面全体に電子エネルギを印加するために、成形品は複数回の通過中にそのポジションをしばしば変化させられる。この場合の欠点としては、これによってかなりの時間がかかること及び、装置が複雑になり、装置の製作費が高くなることが挙げられる。また個々の通過動作の間における成形品のポジション変更は、ランダムに行うことができず、個々の表面領域に総和として異なった電子エネルギ密度が印加されないように、規定されねばならず、さもないと、種々異なった特性が生じてしまう。
【0010】
さらにLinac Technologies 社の刊行物(技術説明「ELECTRON BEAM SURFACE STERILISATION SYSTEM 200 KeV - The Ke VAC S)から、3次元の成形品の表面全体を1回の通過だけで改質することが公知であり、この場合複数の、つまり少なくとも2つ又は3つの電子出射窓が、成形品の横断面を取り囲むように配置され、成形品はこれらの電子出射窓の間を通過案内されることによって、3次元の表面全体に電子が印加されるようになっている。
【0011】
成形品の表面を、電子エネルギを用いて殺菌するための別の公知の装置では、電子加速器は、該電子加速器の所属の電子出射窓が正三角形の横断面を有する体積を取り囲むように配置されていて、殺菌される成形品はこの正三角形を1回通過させられる。このような装置によって確かに、他の公知の解決策、つまり成形体に複数回の通過において電子が印加される解決策に比べて、所要時間を減じることができるが、しかしながら3つの電子加速器を使用することに基づいて技術的な手間もしくはコストは極めて大きくなってしまう。
【0012】
さらに3つの電子出射窓が配置されている別の公知の構成では、電子は1つの電子加速器を用いてしか生成されず、偏向系を用いて3つの電子出射窓に分配されるようになっている。複数の電子出射窓を備えたこれらすべての公知の解決策は、複数の電子加速器が三角形に配置されていることによって相互に全く又は無視できるほどしか影響し合わないという利点、つまり1つの電子加速器の加速された電子がそれぞれ他の電子加速器に出力するエネルギ割合は大きくない、という利点を利用する。このことは、電子出射窓において吸収されるエネルギ割合、ひいてはその運転温度を臨界的でない程度に制限するために必要である。さもないと、材料使用温度の超過時に窓カバーの敏感な材料は、ビーム生成器の内部における高真空に比べて極めて高い圧力を有する、外部から作用する大気圧の機械的負荷によって、破壊されてしまう。通常、電子出射窓において使用されるチタンシートは、約400℃の最高温度を決して超えてはならない。持続運転のためには、最高200〜250°が基準である。
【0013】
向かい合って位置する2つの電子出射窓の温度を制限するための、US2741704Aに基づいて公知の構成では、例えば少なくとも部分透明なコンベヤベルトのような付加的な吸収体が、電子出射窓の間に配置されている。この構成では著しく大きなエネルギ割合が、吸収体に入射し、これによって互いに向かい合っている電子出射窓への付加的なエネルギの入射が制限される。
【0014】
2つ又はそれ以上の電子出射窓が成形体を取り囲んでいて、電子出射窓全体にわたってほぼ等しい電子エネルギ密度が出力され、成形品に1回の通過だけで電子が印加される、公知の装置では、成形品の個々の表面領域に、該成形体のジオメトリ及びそれに基づく、表面領域と電子出射窓との間の種々異なった間隔に関連して、種々異なった量の電子エネルギ(単位面積当たりのエネルギ又は単位質量当たりのエネルギ)を印加することができる。
【0015】
成形品において所定の特性を実現するためには、規定された電子エネルギ量が必要である。最小のエネルギ量が到達する表面領域において、該表面領域に到達するエネルギ量が、特性の改質に必要なエネルギ量に正確に合っているか又は少なくとも相応するように、電子生成器の出力を調節すると有利である。成形品の他のすべての表面領域には、必然的に高められたエネルギ量が印加される。この高められたエネルギ量は、過剰エネルギ量とも呼ばれる。1つの成形品の個々の領域において過剰エネルギ量が高くなればなるほど、当該領域における特性は目標パラメータからより大きく偏差することになる。過剰エネルギ量係数と呼ばれるパラメータが、所望の特性を調節するために必要なエネルギ量を何倍超えたかを示す。
【0016】
従って公知の装置では、処理される成形品のジオメトリに関連して個々の表面領域において、過剰エネルギ量係数は、多くの使用例のために表面全体にわたって十分に均一な特性を実現するためには許容できない値に達してしまう。高い生産性を得るためには、成形品の適宜に高い搬送速度が必要である。搬送速度とビーム流とは比例関係にあるため、技術的に所定された最小エネルギ量(例えば殺菌の適用範囲では例えば25kGyである)を得るためには、速度に比例させてビーム流を上昇させることが必要であるが、これによって電子出射窓の運転温度は過度に上昇してしまう。
【0017】
発明の開示
本発明は、高エネルギの電子ビームを用いて成形品を処理する装置であって、電子ビームが、互いに向かい合っている定置の又は可動の2つの電子出射窓によって、成形品に導かれ、該両電子出射窓が、成形品のための処理室を画成している形式のものに関する。このような装置において本発明の構成では、成形品のための搬送装置が設けられていて、該搬送装置を用いて成形品は、搬送方向に対して垂直にかつほぼ鉛直に配置された電子出射窓のそばを、処理室を貫いて案内可能であり、成形品の供給搬送のために、処理室におけるX線に対して遮蔽された通路が配置されている。
【0018】
本発明の特に有利な構成では、供給搬送のための通路がそれぞれ処理室の前後において、それぞれ2回折り曲げられていて、これによって生ぜしめられた、通路のラビリンス状のずれが、装置の入口及び出口に対してX線を遮蔽するようになっている。このような構成において、折り曲げられた通路区分に、各1つの装置が配置されており、該装置によって成形品は水平な供給搬送から、処理室内における搬送のための傾けられた状態、あるいは特に起立した状態に移行可能であり、次いで再び戻り可能であると、有利である。
【0019】
折り曲げられた通路区分に配置された前記装置は例えば、複数の自由度において制御可能なグリッパであり、該グリッパは有利には、膨張式及び/又は電磁式のグリップエレメントを備えて構成されている。このようなグリッパ機構と成形品の起立とによって、そのために折り曲げられた通路において自動的にずれが生じ、このずれによって、遮蔽のために必要なラビリンスが生ぜしめられる。そして処理室の処理ゾーンにおいて生ぜしめられるX線は、入口及び出口に対して遮蔽もしくは反射され、これにより、極めて頑丈な機構を備えた極めてコンパクトな構造が可能となり、さもないと必要となる複雑化された通路構造、トンネル構造又はゲート構造が不要となる。
【0020】
本発明の有利な構成では、通路に、鉛を添加されたガラス窓又はプラスチック窓が配置されており、該ガラス窓又はプラスチック窓を通して光学式センサを用いて、成形品及び該成形品の搬送の観察及び/又は制御が実施可能である。光学式センサはこの場合ライトバリア及び/又はカメラから成っており、従って有利な形式で(鉛)通路の外に位置している。
【0021】
本発明による装置の別の有利な構成では、空気流が成形品に向かってかつ成形品のところを擦過して導き可能である。処理室内における空気流を制御するために、成形品の前及び/又は後ろには、旋回可能な又はその他の形式で制御可能な絞りが設けられており、該絞りを用いて、成形品の所定の縁部領域において、流れ横断面が通路における圧力を制御するために変化可能である。
【0022】
処理室内における制御可能な絞りとして例えばいわゆるパドル(Paddels)を用いて行われる、上に述べた通路内における空気調整は、特に有利である。それというのはこの場合、処理すべき成形品はチューブもしくはホースではなく、相互に所定の間隔をおいて位置する不連続の対象物であり、つまり成形品に沿って流れる空気は隘路及び境界面において周囲に対して変動させられ、この変動は圧力変動として現れるからである。このような変動を補償するために、パドルが使用され、このパドルは、空気が隣接する領域にあまりに軽く流出して、これにより圧力が低下するおそれがあるような場合には、常に人為的に流れ横断面が減じられるように、使用される。
【0023】
本発明による装置の有利な構成では、処理室内に少なくとも1つのレフレクタが設けられており、該レフレクタは、処理室の側部を画成するための別の画成部として働き、かつ該レフレクタを用いて電子ビームが成形品の側部表面及び/又は縁部層に案内可能である。電子出射窓及び搬送装置は、水平に対して所定の角度をもって傾けられていることができる。
【0024】
本発明の別の有利な構成では、電子出射窓内に又は電子出射窓の後ろに帯状放射体が配置されており、該帯状放射体は、ほぼ鉛直に延びる互いに並んで配置されたワイヤから成っており、これらのワイヤは、電子を放射するフィラメントとして働く。しかしながらまた択一的に、帯状放射体の代わりに、点状放射体を備えたスキャン装置が配置されているような構成も可能である。
【0025】
電子ビーム生成器の鉛直なポジションによって、帯状放射体では、電子を放射するフィラメント(通常はタングステン・ワイヤ)の完全には回避不能なたるみが、放出特性のために問題にならなくなる。上から下に向かって放射するエミッタでは、両端部でしか保持されていない水平なフィラメントにおいて、運転時間にわたって下方に向かってたるみ(Durchhang)が生じる。このようなたるみは膨らみ(Bauch)と呼ばれ、この膨らみは、電子カーテンを側方に向かって曲げる傾向があり、その結果電子カーテンは電子出射窓に衝突せずに、かなりの部分が壁内に、ひいては陽極に進入する。粒子負荷のために通常は回避される、下から上に向かって放射するエミッタでは、電子カーテンの集束は仮想の焦点において行われ、これにより、処理すべき成形品の側部は僅かなエネルギ量を得ることになる。従って上に述べた両方の膨らみは、場合によっては運転時間にわたって後調整を必要とするが、このような後調整は、鉛直に配置された電子ビーム生成器として形成された本発明による帯状放射体では、不要である。それというのは、電子カーテンの特性は最適なエネルギ発生量において、運転時間にわたって変化しないからである。
【0026】
星形配置形式で3つのエミッタを備えた公知の解決策においても、それぞれ2つのエミッタは斜め下から放射するので、膨らみは電子カーテンを非対称的にシフトさせ、これにより多くの電子エネルギが、成形品の処理のためには役立たない1つの壁側に集められてしまう。
【0027】
上に述べた装置を用いて高エネルギの電子ビームによって成形品を処理する、本発明の有利な方法では、成形品を、通路を介して処理室内に案内し、該処理室内で成形品に、静止状態又は通過運動状態において、1回又は複数回の照射過程によって電子ビームを印加し、処理室がロック室(Schleuse)として働くようにした。
【0028】
本発明の方法において有利には、成形品の通過搬送をバッチ処理において行い、通過搬送における単位時間当たりの成形品の数が、一定の通過搬送速度とは無関係であり、サイクル時間及び運転形式に関連して、成形品をグリッパによって通過搬送系内に装入する。
【0029】
本発明の別の有利な構成では、処理室が数路の入口及び出口に対してそれぞれダブル隔壁ロックゲート(Doppelschottschleuse)によって切り離されていて、これらのダブル隔壁ロックゲートは、処理すべき成形品の通過のために交互に開放されることができ、処理領域の各側にはおいては常に1つの隔壁が閉鎖されていなくてはならない。本発明の有利な構成では、処理室からのX線を遮蔽するために、隔壁は鉛によって被覆されている。このような構成では、入口もしくは出口に対してX線は遮蔽されるので、ラビリンスは不要である。
【0030】
別の有利な構成では、出口領域に、鉛で被覆された隔壁によって切り離されていて少なくとも1つの成形品を収容可能な室が、設けられており、この場合収容された成形品は、別の隔壁又はドアを介して外から取り出すことができる。この室は理想的には、進出搬送用のコンベヤベルトに対して垂直に配置されており、成形品は、隔壁の開放時に並進運動を用いて進出方向に対して垂直に室内に押し込まれることができる。隔壁の閉鎖後に成形品は外側のドアを介して取り出されることができ、この際に照射運転が中断される必要はない。本発明の特に有利な構成では、外側のドアが、成形品の滅菌状態の取出しを可能にするダブルカバーゲートから成っている。
【0031】
上に述べた装置又は方法の、本発明による有利な使用では、処理が有利には、高エネルギの電子ビームによる表面処理のため、プラスチックの改質のため、製品もしくは中間製品、特に医薬品の滅菌のため、容器の殺菌及び/又は滅菌のため、被覆層の硬化のため、又は物品又は食料品の殺菌及び/又は滅菌のために行われる。
【0032】
従って本発明は、一連の技術的な問題を有利に解決し、電子ビームによる処理の際における従来技術の欠点を克服する、所定のサイクルで働く搬送装置を備えた装置と方法とを提供することができる。本発明による装置及び方法は特に、3次元の成形品の特性を僅かな時間と技術的な手間で、改質するのに適しており、この改質に際しては、成形品の表面全体又は縁部領域が十分均一に改質され、しかも電子加速器の構成全体に基づく、生産性を制限するような欠点は発生しない。
【0033】
次に図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】電子ビームを用いて成形品を処理する本発明による装置を、処理室と共に示す図である。
【0035】
発明の実施形態
図1には、成形品2の表面の滅菌を目的とした電子処理のための装置1が、通路3における搬送平面を上から見た平面図で示されている。成形品2は、入口及び出口における通路区分3aに示されているように、上から見て方形形状を有する3次元のつまり立体的な物品である。
【0036】
通路区分3bには各1つのグリッパ4が配置されており、このグリッパ4は、相応に制御されてグリップエレメント4aを用いて成形品2を、起立ポジションにもたらし、従って通路区分3cにおいては成形品2の台形の横断面が示されている。矢印5によって成形品2のための搬送方向が示され、矢印5aによって、成形品2の水平ポジションから起立ポジションへの回動もしくは旋回が象徴的に示されている。
【0037】
成形品2のための処理ゾーンとして処理室6が設けられており、この処理室6は、互いに平行に向かい合っていて図平面に対して垂直に延びている2つの電子出射窓7,8によって画成されており、両電子出射窓7,8はそれぞれ、高エネルギ電子ビーム(以下においては単に電子ビームと呼ぶ)10を発生させるための、従来技術に基づいて公知の(ゆえにここでは詳説しない)帯状放射体を備えている。
【0038】
両方の電子出射窓7,8の間において成形品2はコンベヤベルト系11において連続的に又は処理ストップを伴って、処理室を通して導かれ、この際に成形品2の全表面に電子ビーム10が印加される。
【0039】
成形品2の台形の横断面における斜めの側面においてはこの場合、電子出射窓から最も離れているポイントに、それぞれ最も僅かなエネルギ量が伝達されることになる。従って図示の実施形態では、例えば金から成るレフレクタ12,13が、処理室6の側部における画成部として配置されていて、各電子出射窓7又は8からの電子ビームが、レフレクタ12,13の傾斜した面に反射されるようになっている。さもないと使用されない、電子ビーム10の縁部ビームは、これによってレフレクタ12,13の角度をもった配置によって、電子ビーム10の、反射なしには最も少ない量の領域に、成形品2に向かって導かれる。
【0040】
通路区分3cの内部においては過圧が必要であり、しかしながら通路区分3aにおける出口及び入口には負圧の存在することが望まれているので、例えば搬送方向とは逆向きに吸込み装置に向かって空気流が生ぜしめられる。従ってこの空気流は成形品2に向かって、かつ成形品2のところを擦過して導かれる。処理室6におけるこの空気流を制御するために、成形品2の前後又は何れか一方の側に、旋回可能又はその他の形式で制御可能な絞り14,15が設けられており、これらの絞り14,15によって成形品2の所定の縁部領域において、流れ横断面が通路区分3cにおける圧力を制御するために変化可能である。
【0041】
さらに通路区分3c内には、鉛を添加された(bleidotiert)ガラスウインド又はプラスチックウインド16,17が配置されており、これらのウインド16,17によって、図示されていない市販の光学センサを用いて、成形品2自体及び該成形品2の搬送の観察及び/又は制御を実施することができる。光学センサはこの場合通路区分3cの外部に又は他の通路区分に設けられたライトバリア及び/又は特に電子カメラから成っていることができる。
【0042】
上に実施形態として記載された自動的にかつタイミング制御されて作動する、成形品2を照射する装置の、具体的な構成は以下の通りである:
- 装置1もしくは通路3の基本構造又はハウジングとして、X線透過防止体として働く鉛強化された保護カバーを備えた、高級鋼から成る溶接された鋼構造体が、使用可能であり、この場合帯状放射体7,8の電子加速器及び全駆動装置は外部に配置されていて、ひいては最適にアクセス可能である。内部に取り付けられたもしくは設けられたすべての材料は、この場合オゾン及びH22に対して耐性をもって設計されていることが望ましい。
- 水平な進入ベルトが、例えば前置されたいわゆるバッグオープナー(Bag-Opener)からの成形品2の移行又は手による装入のため、及びサイドガイドによる成形品2の確実かつ正確な案内のために、ベルトに設けられていることができる。
- 移動ステーションとして働くグリッパ4が、成形品2を通過搬送に引き渡すための、形状結合式の優しい把持、持上げ、旋回及び直線移動のために役立つ、グリップエレメント4aに膨張可能なゴムシール部材を備えた相応な取扱いユニットであり、シール部材の材料が、オゾン及びH22に対して耐性を有しており、かつ場合によっては、漏れに関してゴムシール部材を検査するための自動式の圧力監視が行われる。
- 処理室6において、成形品2を通過搬送させるために、構造的に分離されたダブルの円形ベルト系が、電子加速処理ゾーンを通して成形品を連続的に搬送するためのコンベヤベルト系11として、使用されることができ、この円形ベルト系は、処理室6における電子加速処理ゾーンに成形品2を導入するために成形品2を上下において案内する2つの高級鋼円形ベルトと、処理室6における電子加速処理ゾーンから成形品2を導出するために成形品2を上下において案内する2つの高級鋼円形ベルトとから成っている。
- 処理ゾーンにおける通過搬送平面は、通過搬送方向に関して傾斜して配置されていることができ、つまり成形品2は、90°±30°の傾斜をもって処理室における電子加速処理ゾーンを通して案内される。この場合第1の円形ベルト系と第2の円形ベルト系との間における直接的な引渡し箇所において、搬送は無接触式に行われることができ、これによって成形品2の全表面は、漸次電子ビームにさらされる。
- 成形品2の搬出は、供給と同様に成形品2が戻し回転されて行われる。
- 処理室6の内部において両電子出射窓7,8の間における成形品2の照射のためには、種々様々な択一的な可能性を使用することができる。例えば成形品2は一定の速度で処理室6を通して案内され、その間に電子ビーム10を印加されることができる。択一的に、成形品2が処理室6内に案内されて、そこで静止状態で、1回又は複数回の照射過程によって電子を印加されるようなことも可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高エネルギの電子ビーム(10)を用いて成形品(2)を処理する装置であって、電子ビーム(10)が、互いに向かい合っている定置の又は可動の2つの電子出射窓を通して、成形品(2)に導かれ、該両電子出射窓が、成形品(2)のための処理室(6)を画成している形式のものにおいて、成形品(2)のための搬送装置が設けられていて、該搬送装置を用いて成形品(2)は、搬送方向に対して垂直にかつほぼ鉛直に配置された電子出射窓(7,8)のそばを、処理室(6)を貫いて案内可能であり、成形品(2)の供給搬送のために、処理室(6)におけるX線に対して遮蔽された通路(3,3a,3b,3c)が配置されていることを特徴とする、成形品を処理する装置。
【請求項2】
供給搬送のための通路(3)がそれぞれ処理室(6)の前後において、それぞれ2回折り曲げられていて、これによって生ぜしめられた、通路(3,3a,3b,3c)のラビリンス状のずれが、装置(1)の入口及び出口に対してX線を遮蔽するようになっている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
折り曲げられた通路区分(3b)に、各1つの装置が配置されており、該装置によって成形品(2)は水平な供給搬送から、処理室(6)内における搬送のための傾けられた状態に移行可能であり、次いで再び戻り可能である、請求項2記載の装置。
【請求項4】
折り曲げられた通路区分(3b)に配置された前記装置が、複数の自由度をもって制御可能なグリッパ(4)であり、該グリッパ(4)が有利には、膨張式及び/又は電磁式のグリップエレメント(4a)を備えて構成されている、請求項3記載の装置。
【請求項5】
通路(3,3a,3b,3c)に、鉛を添加されたガラス窓又はプラスチック窓が配置されており、該ガラス窓又はプラスチック窓を通して光学式センサを用いて、成形品(2)及び該成形品(2)の搬送の観察及び/又は制御が実施可能である、請求項1から4までのいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
光学式センサがライトバリア及び/又はカメラから成っている、請求項5記載の装置。
【請求項7】
空気流が成形品(2)に向かってかつ成形品(2)のところを擦過して案内可能である、請求項1から6までのいずれか1項記載の装置。
【請求項8】
成形品の前及び/又は後ろで処理室(6)内における空気流を制御するために、旋回可能な又はその他の形式で制御可能な絞り(14,15)が設けられており、該絞り(14,15)を用いて、成形品(2)の所定の縁部領域において、流れ横断面が通路(3,3a,3b,3c)における圧力を制御するために変化可能である、請求項7記載の装置。
【請求項9】
処理室(6)内に少なくとも1つのレフレクタ(12,13)が設けられており、該レフレクタ(12,13)は、処理室(6)の側部を画成するための別の画成部として働き、かつ該レフレクタ(12,13)を用いて電子ビーム(10)が成形品(2)の側部表面及び/又は縁部層に案内可能である、請求項1から8までのいずれか1項記載の装置。
【請求項10】
電子出射窓(7,8)の後ろに帯状放射体が配置されており、該帯状放射体のほぼ鉛直に配置されたワイヤが、電子を放射するフィラメントとして働く、請求項1から9までのいずれか1項記載の装置。
【請求項11】
電子出射窓(7,8)と搬送装置とが、水平に対して所定の角度をもって傾けられている、請求項1から10までのいずれか1項記載の装置。
【請求項12】
出口領域に搬送に対して垂直に室が配置されており、該室が、隔壁によって出口通路から隔てられていて、該室の室壁に成形品を取り出すための開口を備えていて、該開口が扉又はダブルカバーゲートによって閉鎖されている、請求項1から11までのいずれか1項記載の装置。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項記載の装置を用いて、高エネルギの電子ビームによって成形品を処理する方法であって、成形品(2)を、通路(3,3a,3b)を介して処理室(6)内に案内し、該処理室(6)内で成形品(2)に、静止状態又は通過運動状態において、1回又は複数回の照射過程によって電子ビーム(10)を印加し、処理室(6)がロック室として働くことを特徴とする、高エネルギの電子ビームによって成形品を処理する方法。
【請求項14】
成形品(2)の通過搬送をバッチ処理において行い、通過搬送における単位時間当たりの成形品(2)の数が、一定の通過搬送速度とは無関係であり、サイクル時間及び運転形式に関連して、成形品(2)をグリッパ(4)によって通過搬送系内に装入する、請求項12記載の方法。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項記載の装置又は方法の使用であって、処理が有利には、高エネルギの電子ビームによる表面処理のため、プラスチックの改質のため、製品もしくは中間製品、特に医薬品の滅菌のため、容器の殺菌及び/又は滅菌のため、被覆層の硬化のため、又は物品又は食料品の殺菌及び/又は滅菌のために行われることを特徴とする、装置又は方法の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2011−510810(P2011−510810A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−545367(P2010−545367)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【国際出願番号】PCT/EP2008/066413
【国際公開番号】WO2009/097927
【国際公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】