説明

高分解能合成開口レーダ装置及び高分解能合成開口レーダ装置用アンテナ

本発明は高分解能合成開口レーダ装置に関するものであり、この高分解能合成開口レーダ装置10は、対象物12を走査するレーダ・ビーム16を生成するための少なくとも1つの送信アンテナTX1〜TX3と、対象物12で反射したレーダ・ビーム20、22、24を受信するための受信アンテナ14とを備え、受信アンテナ14は、高さ方向に列設された複数のサブ開口RX1〜RX17により構成されており、更に、この高分解能合成開口レーダ装置は、パルス信号18を不等間隔で送出するように構成されている。
(選択図)図1

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1に記載の高分解能合成開口レーダ装置及び請求項11記載の高分解能合成開口レーダ装置用アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
合成開口レーダ(SAR)は、例えば地表面などの対象物を、移動する短いアンテナによって走査するようにしたものであり、そのアンテナからパルス信号(単に「パルス」ともいう)を所定の時間間隔で反復して送出して、そのエコー信号(即ち、走査している対象物で反射したパルス信号)を受信する。この短いアンテナの移動方向を、アジマス方向ともいい、縦方向ともいう。そして、アンテナから電波を照射して走査を行った各々の領域ごとに、SAR処理装置がエコー信号に対して必要なデータ処理を施し、その計算処理によって、走査対象物の画像を生成する。SARシステムは、例えば、衛星から地表面の計測や撮影を行うためなどに利用されている。
【0003】
SARに関する重要なパラメータとして、アジマス分解能、走査のスワス幅、それに、距離分解能(レンジ分解能)がある。距離分解能を決定する主たる要因は、送出するパルス信号の帯域幅である。また、パルス反復周波数(PRF)によって、サンプリングレートが決定される。従来の一般的なSARシステムでは、同時に達成することのできる、アジマス分解能(軌道進行方向の分解能)の微細化限界と、スワス幅(軌道直交方向の距離)の拡大限界とが、関連性を有していた。即ち、アジマス分解能を向上させるにはPRFを高める必要があるのに対して、スワス幅を拡大するにはPRFを下げる必要があった。換言するならば、従来の一般的なSARでは、アジマス分解能を向上させるには、スワス幅を小さくせざるを得なかったのである。
【0004】
この対立関係を解消可能にしたのが、いわゆる高分解能大スワス幅SAR(HRWS−SAR)であり、その一例は、ヨーロッパ特許公開EP 1 241 487 A1号公報に記載されている。HRWS−SARは、複数の補助受信アンテナ(補助受信開口)を備えることによって、複数の(例えば3個の)アジマス開口を駆動するようにし、それによって、アジマス分解能を低下させることなくPRFを下げ得るようにしたものである。更に、HRWS−SAR機器は、バイスタティック方式で駆動するようにしたものであり、従って、送信アンテナと受信アンテナとを別々に備えている。大きなスワス幅の領域に電波を照射できるように、送信アンテナは、その高さ寸法を、即ちアジマス方向と直交する方向の寸法を小さくしてあり、それに対応して、受信アンテナは、機器の感度を適正に維持するために、その高さ寸法を大きくしてある。更に、アジマス開口の各々は複数のサブ開口に分割されており、このようにしているのは、デジタル・ビーム・フォーミング(DBF)によって、大きなスワス幅の領域を走査できるようにするためである。しかしながら、このようなHRWS−SARには、アンテナが大型になるという短所があり、そのため、特に衛星に搭載するSARの場合には、重量が大きく、ペイロードがかさむことが問題となっていた。
【特許文献1】ヨーロッパ特許公開EP 1 241 487 A1号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、HRWS−SARの場合と比べて格段に小さなアンテナ面積で、高いアジマス分解能をもって、可及的に幅の広いスワスを走査することができるようにした、高分解能合成開口レーダ装置、並びに、高分解能合成開口レーダ装置用アンテナを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、請求項1に記載した特徴を備えた高分解能合成開口レーダ装置、並びに、請求項11に記載した特徴を備えた高分解能合成開口レーダ装置用アンテナによって達成される。従属請求項は、本発明の好適な実施の形態に係る特徴を記載したものである。
【0007】
本発明に係る概念の1つは、パルス反復周波数(PRF)を従来のSARと同程度の高い周波数に維持したままで、シーケンシャルに送出する複数のレーダ・パルスによって対象物の走査を並列的に行うようにするというものである。また、必要とされるアンテナ面積を縮減するために、HRWS−SARとは異なり、2個以下のアジマス開口しか備えないようにしており、より具体的には、2個または1個のアジマス開口しか備えず、より好ましくは、ただ1個だけのアジマス開口を備えたものとするようにしている。レーダ・ビームによるパルス信号の送出を等間隔送出としている場合には、パルス信号の送出時に受信レーダ・ビームのサンプリング動作を中断せねばならないことにより発生する、対象物のサンプリング・データ中のデータ欠落部によって、最終的に生成されるSAR画像に黒筋が出現する。このようなデータ欠落部の発生を回避するために、本発明では、レーダ・ビームによるパルス信号の送出を不等間隔送出としている。これによって、サンプリング・データ中の常に同一位置にデータ欠落部が発生するということがなくなる。サンプリング・データ中の常に同一位置にデータ欠落部が発生すると、それによってアジマス信号の完全喪失が生じてしまうが、本発明ではそのようにことはなく、データ欠落部の発生位置が複数のレーダ・エコーの夫々に異なった位置に分散されるため、サンプリング・データ中には局所的な欠陥点しか発生しない。そして、この局所的な欠陥点は、リサンプリング法を用いて、欠落したサンプリング・データの再構築を行うことにより、修復することができる。
【0008】
本発明によって得られる利点は、高いアジマス分解能をもって、幅の広いスワスの撮像を行うのに、HRWS−SARと比べて、より小さなアンテナ面積でそれを行えることにある。そのため、本発明に係る高分解能合成開口レーダ装置は、HRWS−SARと比べて、装置全体をより小型で軽量に構成することができ、そのため本発明に係るSAR装置は、そのコストが、また特に、例えば宇宙空間へ輸送するための輸送コストが、低減されている。
【0009】
本発明は、その1つの実施の形態によれば、次のような高分解能合成開口レーダ装置に関するものであり、この高分解能合成開口レーダ装置は、対象物を走査するレーダ・ビームを生成するための少なくとも1つの送信アンテナと、前記対象物で反射したレーダ・ビームを受信するための受信アンテナとを備え、前記受信アンテナは、高さ方向に列設された複数のサブ開口により構成されており、該高分解能合成開口レーダ装置は、パルス信号を不等間隔で送出するように構成されている。
【0010】
尚、ここで合成開口レーダ装置(SAR装置)とは、任意のSARプラットフォームを意味しており、その具体例としては、例えばSAR衛星などを意味するものである。
【0011】
更に、HRWS−SARの場合と比べてより少ない個数のアジマス開口が前記複数のサブ開口により形成されるように、前記高分解能合成開口レーダ装置を構成するとよい。
【0012】
また、対象物を走査して得られたサンプリング・データ中のデータ欠落部にデータを補充するために、受信したレーダ・エコーにアジマス信号処理を施す際にリサンプリング法を適用するように、前記高分解能合成開口レーダ装置を構成するとよい。こうしてリサンプリング法を適用することによって、上で説明した、受信したレーダ・ビームのサンプリング・データ中の局所的な欠陥点を修復して、そこに存在していたエコー・パルス信号を再構築することができる。
【0013】
更に、送信アンテナを周波数多重方式で駆動するように、前記高分解能合成開口レーダ装置を構成するとよい。
【0014】
高いSN比を達成するためには、送信電力は大きい方がよい。また、PRFを高くするためには大きなピーク電力が必要であるが、この必要とされるピーク電力を小さく抑えるには、少なくとも2つの送信アンテナを周波数多重方式で同時的に駆動するように、前記高分解能合成開口レーダ装置を構成するとよい。それによって、所与のパルス信号持続時間(パルス持続時間)の時間内に、周波数多重方式ではない送信の場合と比べて、その多重の倍数分の送信電力を使用できるようになる。
【0015】
送信アンテナから微小な時間間隔で次々とレーダ・パルスが送出されるため、受信アンテナではそれと並行して反射レーダ・エコーを次々と受信しなければならない。そこで、互いに異なった送信パルスに由来する受信レーダ・エコーどうしが重なり合うのを回避するために、また従って、最終的に得られるSAR画像に欠陥(いわゆるレンジ・アンビギュイティ)が発生するのを回避するために、デジタル・ビーム・フォーミングによって複数のレーダ・エコーの各々に対して1つずつの受信チャネルを生成するように、前記高分解能合成開口レーダ装置を構成するとよい。
【0016】
また特に、各々の受信したレーダ・エコーをそれに隣接した他の受信したレーダ・エコーから高い分離度をもって分離するために、前記複数のサブ開口の信号に対して、デジタル・ドメインにおいて、時間依存性を有する複素重み係数を適用するように、前記高分解能合成開口レーダ装置を構成するとよい。また特に、PRFが高く、従って、パルス反復間隔が小さいために、走査を行っている対象物上のエコー・センターどうしが近接している場合には、受信アンテナの複数のサブ開口の夫々の信号にこのような重み付けを行うことが、互いに近接したレーダ・エコーを分離する上で効果的な方法であることが確認されている。
【0017】
また特に、前記時間依存性を有する複素重み係数は、アンテナ・ダイアグラムが、該当方向には「0」に維持されるように設定しておくとよい。
【0018】
1つの実施の形態として、前記複数のサブ開口の夫々の信号に対して、スペース・タイム・アダプティブ処理を施すように、前記高分解能合成開口レーダ装置を構成することも可能である。この場合、前記複数のサブ開口の夫々の信号のスペース・タイム領域に対して重み付けが行われ、それによって、対象物のレーダ・エコーどうしを、より高精度で分離することができる。
【0019】
更に、中央SAR処理装置へのデータ転送負荷をできるだけ軽減するために、受信したレーダ・エコーから得られたデータに対して圧縮処理を施した後に、当該データを地上局へ送信するように、前記高分解能合成開口レーダ装置を構成するとよい。このデータ圧縮は、例えば、余剰データを削除することなどによって行うことができ、なぜならば、受信した反射レーダ・ビームから得られるサンプリング・データは、冗長性を有するデータだからである。
【0020】
特に好ましい1つの実施の形態においては、前記高分解能合成開口レーダ装置が、アンテナ・パターンの生成及びレーダ・パルスの送出を行うための複数の送信モジュール兼フロントエンドを、前記複数の送信アンテナの各々に対して1つずつ備えている。これによって、レーダ・パルスを個別に送出することが可能となり、更にそれによって、前記高分解能合成開口レーダ装置を使用する上での大きなフレキシビリティが得られる。
【0021】
また特に、前記複数の送信モジュール兼フロントエンドを、互いにコヒーレントに且つ互いに同時的に送信チャープを送出するように構成し、更に、前記複数の送信モジュール兼フロントエンドを、その各々が互いに異なった周波数帯で送出を行うように構成するとよい。高いSN比を得るためには、PRFを高い周波数に設定する必要があるが、このように構成することで、PRFを高い周波数に設定してもなお、大きな送信電力とすることが可能となる。
【0022】
更には、互いに異なった周波数帯で送出されたレーダ・パルスどうしを分離できるようにするために、前記高分解能合成開口レーダ装置が、受信した複数のレーダ・ビームから生成された複数のデータ・ストリームを周波数に応じて互いに分離するための、デジタル周波数フィルタを備えているようにするとよい。
【0023】
本発明の別の1つの実施の形態として、次のような高分解能合成開口レーダ装置に関するものがあり、この高分解能合成開口レーダ装置は、対象物を走査するレーダ・ビームを生成するための少なくとも2つの送信アンテナを備え、前記少なくとも2つの送信アンテナを、周波数多重方式で同時的に駆動するようにしたものである。
【0024】
本発明の別の1つの実施の形態として、次のようなアンテナに関するものがあり、このアンテナは、例えば先行する請求項の何れか1項記載の高分解能合成開口レーダ装置などの、高分解能合成開口レーダ装置に用いるアンテナであって、2つ以上の送信アンテナを備え、それら送信アンテナは各々が1本ずつのマイクロ波領域のレーダ・ビームを送出するように構成されており、また更に、反射したマイクロ波領域のレーダ・ビームを受信するように構成された受信アンテナを備え、該受信アンテナは、高さ方向に列設された複数のサブ開口を備えており、それら複数のサブ開口は、2つ以下のアジマス開口を形成している。
【0025】
更に、前記アンテナは、前記2つ以上の送信アンテナが高さ方向に列設されているように構成するとよい。
【0026】
更に、前記アンテナは、前記受信アンテナが、前記2つ以上の送信アンテナに対して、高さ方向に隣接して配設されているように構成するとよい。
【0027】
前記アンテナの特に好適な1つの実施の形態においては、前記複数のサブ開口が、ただ1つだけのアジマス開口を形成している。こうすることによって、非常にコンパクトでありながら、高いアジマス分解能を可能とするアンテナが得られる。
【0028】
送信アンテナから電波が照射される領域をカバーするために、且つ、全ての必要とされるサンプリング角度(走査角度)において量子化ローブを適切に抑制するために、前記アンテナの特に好適な1つの実施の形態においては、前記複数のサブ開口の各々の高さ寸法を、前記2つ以上の送信アンテナの各々の高さ寸法より小さくしている。
【0029】
本発明の更なる利点並びに用途については、図面に示した具体的な実施の形態に即した本明細書の以下の説明の中で明らかにして行く。
【0030】
本明細書、特許請求の範囲、要約書、及び図面には、本明細書の末尾の符号の説明のリストに示した用語並びに対応する参照符号を使用している。また、以下の説明において、同等の構成要素、及び/または、機能的に同等の構成要素には同一の参照符号を付してある。また、以下に示す具体的な寸法値ないし計測値は、あくまでも具体例を提示するものであり、本発明はそれら寸法値ないし計測値を有するものに限定されない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
図1に機器(A)として示したのは従来のモノスタティック方式のSAR機器である。ここで「機器」というのは、例えばSAR衛星に搭載されているSAR装置などを意味している。図1の機器(A)の典型的な具体例を挙げるならば、以下の通りである。先ず、Xバンドで動作し、送出するパルス信号の帯域は約150〜200MHzであり、平均送信電力は750Wである。その送受信兼用アンテナ(TX−RX)は、アジマス方向の寸法が約4mであり、高さ寸法が約0.59mである。機器(A)を装備した衛星は、高度約500kmの軌道上に投入される。また、そのPRFは約4200〜5300Hzであり、PRFがこの範囲内にあると、その距離分解能は約2mになる。また、送出するパルス列のデューティ・サイクルは約20〜30%である。
【0032】
基本的にSARシステムでは、その送信アンテナの寸法によってレーダ・パルスが照射される領域の広さが決定される。またこれに関しては、送信アンテナの高さ寸法(開口高さ)が、最終的に得られる画像ストリップの幅に反比例する。従って、画像ストリップの幅を広げるためには、送信アンテナの開口高さを小さく抑える必要がある。このことは、以下に説明するHRWS−SARのアンテナにも該当することである。
【0033】
図1に機器(B)として示したのはHRWS−SARのアンテナの具体例である。このアンテナは、その基本的性能を、図1の機器(A)と同一としたものであるが、ただし、機器(A)と異なり、送信アンテナと受信アンテナとが別個に装備されており、その受信アンテナは複数の(図示例では51個の)「小」受信アンテナRX1〜RX51により構成されている。更に、この機器(B)は、その公称PRFを、機器(A)の公称PRFの3分の1に低下させるために、3枚のアジマス・パネルに対応した3つのアジマス開口を備えており、各アジマス開口は17個の「小」受信アンテナに対応した17個のサブ開口により構成されている。
【0034】
また、送信アンテナは、その開口高さを0.21mという小さな寸法としてあり、これは、あらゆる入射角においてスワス幅が80km以上になるように、開口高さを小さく抑えてあるのである。受信アンテナの合計開口高さは1.66mとしてあり、これは、送信アンテナの開口高さが小さいことを考慮して、受信アンテナのゲインが十分な大きさとなるように合計開口高さを大きくしてあるのである。「小」受信アンテナRX1〜RX51の各々は、その高さ寸法(サブ開口高さ)を、送信アンテナの開口高さより小さくして、0.098mとしてあり、これは、送信アンテナによる電波照射領域をカバーできるようにすると共に、必要とされるあらゆる走査角度において、量子化ローブが十分に抑制される(<−13dB)ようにするためである。更に、この機器(B)の動作時の平均送信電力は約750Wである。送出するパルス列のデューティ・サイクルは約30%である。アンテナの合計長さは12mであり、各々のアジマス・パネルの長さは4mであり、それによって2mのアジマス分解能を達成している。
【0035】
個々の受信アンテナRX1〜RX51を介して受信した夫々の信号は、個々の受信アンテナの夫々に対応した個別の受信チャネルへ供給される。それら受信チャネルの各々は、後段の(不図示の)デジタル信号処理装置に備えられている、それら受信チャネルの夫々に個別に対応した複数の入力部に接続されている。
【0036】
更に、図1に機器(C)として示したのは、本発明に係るアンテナであり、このアンテナは、パルスを不等間隔で送出するようにした本発明に係るSAR装置に装備して用いるのに適したアンテナである。このアンテナは、機器(A)及び(B)とは異なり、3つの個別の送信アンテナTX1〜TX3を備えている、それら3つの送信アンテナTX1〜TX3は、アジマス方向に直交する方向に列設されており、その各々の寸法が、機器(B)の送信アンテナの寸法と同一である。また、それら3つの送信アンテナTX1〜TX3は、高さ方向に走査するためのレーダ・パルスを発生する。また、受信アンテナは、機器(B)の受信アンテナとは異なり、アジマス・パネルを1枚だけしか備えておらず、このアジマス・パネルは17個の「小」受信アンテナにより構成されている。それら17個の「小」受信アンテナは、その各々が、機器(B)の小アンテナと同一寸法とされている。また、この機器(C)の距離分解能は、機器(A)及び(B)の夫々の距離分解能と同一となっている。
【0037】
図1の機器(B)のように複数のアジマス開口を用いることにより、必要とされる公称PRFを低下させることができる。そして、必要とされる公称PRFが低下すれば、送出するパルスを、より長いパルスにすることができるため、機器(A)と比べて、最大送信電力(送信用増幅器のピーク電力)を低下させることができ、及び/または、SN比を向上させることができる。これに対して、本発明において主たる目的としているのは、ただ1つのアジマス開口を用いるだけで、機器(A)と同一のSN比性能を維持しつつ、スワス幅をより大きなものとすることにある。
【0038】
先ず、図2を参照して、SAR装置10が地表面12を走査する際に、その走査をどのようにして行うかについて説明する。SAR装置10は、アンテナ14から地表面12へ向けて、レーダ・ビーム16の形でパルス信号(単に「パルス」ともいう)を送出し、より厳密に言うならば、アンテナ放射ローブ(単に「アンテナ・ローブ」ともいう)の形でパルス信号を送出する。このアンテナ放射ローブは、開口角hを有しており、この開口角hと、レーダ・ビーム16の地表面12への入射角ηとによって、スワス幅が決定される。また、送出されるパルス信号18の各々はパルス持続時間τを有しており、このパルス持続時間τによって、スラント・レンジ距離で測った、このSARのレンジ分解能Δrと、部分的スワスのスワス幅とが決定される。レンジ分解能Δrは下式で与えられる。
【0039】
【数1】

【0040】
上式においてcは光の速度である。更に入射角ηが与えられれば、上式から地表面12における部分的スワスのスワス幅が得られ、これは下式で与えられる。
【0041】
【数2】

【0042】
本発明に係るSAR装置では、高さ方向に列設された複数の開口を利用することができると共に、受信に際してデジタル・ビーム・フォーミングを利用することができるため、それらによって、各々を複数の部分的スワスの1つずつへ指向させた複数のアンテナ・ローブを形成することができる。そして、それら複数のアンテナ・ローブの各々において、メイン・ローブを十分に良好に局所化し、且つ、全てのサイド・ローブ(即ち量子化ローブ)を十分に抑制すれば、それによって、それら複数のアンテナ・ローブの各々は、図3に示したように「それ自身の」エコー信号だけを「見る」ようになる。尚、図3は、3本のアンテナ・ローブ20、22、24を夫々に異なった部分的スワスへ指向させた場合を示したものである。各々のアンテナ・ローブのエコー信号は、いわゆるレンジ・ラインとして、個別にメモリに格納される。
【0043】
図4は、本発明に係る機器であるSAR装置のレンジ・ライン・バッファを模式的に示した図である。3本のアンテナ・ローブの各々においてエコー信号として受信した3つのレンジ・ラインの各々を、図4には線図で表してある。それら線図は、時系列に従って、発生時刻順に記されている。即ち、図4では、「ファスト・タイム」は左から右へ進行しており、「スロー・タイム」は上から下へ進行している。図4には、図3に示した3本のアンテナ・ローブである「ビーム1」、「ビーム2」、及び「ビーム3」によって得られた3つのレンジ・ラインが示されている。それら3本のアンテナ・ローブは、パルス周期の時間間隔(即ち、パルス反復期間:PRI)ごとに、走査対象のスワスへ新たに入るパルスを捕捉し、それに対応したレンジ・ラインを生成している。図示例において、走査されたスワスのスラント・レンジ距離で測ったスワス幅は、下式で表される。
【0044】
【数3】

【0045】
上式において、Rは最も近いスワス境界線までのスラント・レンジ距離であり、Rは最も遠いスワス境界線までのスラント・レンジ距離である。そして、スラント・レンジ距離Rとしては、パルスが走査対象のスワスへ入った丁度そのときに、機器を受信側に切換えることができる距離が選択され、そのような距離は下式で表される。
【0046】
【数4】

【0047】
レンジ・ラインを記録する動作は、そのレンジ・ラインの記録の開始後、下式で表される持続時間が経過した時点で中断される。
【0048】
【数5】

【0049】
その時点で記録が中断されるのは、その時点で新たなパルスの送信が開始されるからである。レンジ・ラインの記録が中断される時点が、図4には、線図中のゲート(参照番号26を付した部分)で示されている。1本のレンジ・ラインの全体の記録が完了する前に、第2のゲートが発生する。
【0050】
「スロー・タイム」の方向に進行するアジマス信号処理にとって、このゲートは、データが失われたサンプリング・ポイントに該当するものである。更に、レンジ・ラインの各々を、アジマス信号処理を施す前に圧縮する必要があることから、このゲートは、その幅が、パルス幅の半分に相当する分ずつ前後へ広がっており、そのために、最終的に生成されるSAR画像に不都合な「黒筋」が出現することになる。例えば、パルス幅が50μsであるならば、これはスラント・レンジにおける少なくとも約15kmの長さに相当している。
【0051】
本発明においては、このように最終的に生成されるSAR画像に不都合な「黒筋」が出現するのを回避するために、パルス周期PRIを変化させて、レーダ・ビーム16のパルス信号18を不等間隔で送出するようにしている。これによって、複数のレンジ・ラインの夫々のゲート26の位置が、一列に揃うということがなくなり、ひいては、全てのサンプリング値が失われたアジマス・データ欠落部というものが存在しなくなる。アジマス・データ欠落部それ自体は、アジマス信号のサンプリングを不等間隔サンプリングとした場合に発生するものであるが、しかしながら、一般化サンプリング定理を適用することによって、その不等間隔サンプリング・データから、等間隔サンプリングされたアジマス信号を再構築することができる。
【0052】
このアジマス信号の再構築について、以下に、具体例に即して更に詳細に説明する。この具体例においては、パルス間隔のシーケンスとしていわゆる「モード6」を採用しており、ここで採用している「モード6」は、下式で表されるものである。
【0053】
【数6】

【0054】
上式においてτ=2τであり、即ち、τはパルス幅の2倍(2τ)の長さである。また、上式によって例示した「モード6」は、パルスを送出する際のモードとして採用可能な唯一のモードではなく、採用可能な様々なモードのうちの最善のモードでもない。この他にも採用可能な数多くのモードが存在しており、それらモードはいずれも、夫々に固有の利点を有するものである。
【0055】
図5に示したSAR装置10は、例えばSAR衛星などであり、図5には、このSAR装置が、5本のアンテナ・ローブ「ビーム1」〜「ビーム5」を持つ受信アンテナを介して、5つのレーダ・エコーを互いにコヒーレントに且つ互いに同時的に受信しているところを示した。図5においては、スラント・レンジ・アクシスが、「モード6」に合わせて分割されており、即ち、ここでは「6」が、下式で示す径方向距離を表している。
【0056】
【数7】

【0057】
PRIの開始点では常に、パルスの送出が行われる。そのパルスが、画像を作成しようとしている(即ち、サンプリングしようとしている)スワスに入ると同時に、また、より正確に言うならば、そのパルスによって発生したそのスワスの最も手前側の散乱中心からのエコーを受信すると同時に、そのパルスに続くSCOREビーム(スキャン・オン・レシーブ・ビーム)が送出されて、レンジ・ラインの記録が開始される。この後、新たなパルスが送出されるときには、そのレンジ・ラインの記録が中断される。図5に示した具体例では、既述のごとく、受信アンテナのアンテナ・ローブは5本存在しており、1本のレンジ・ラインを記録している間に、その記録が4箇所で中断される。また、アンテナ・ローブは、解放されたならば、そのアンテナ・ローブに対応したスワスに次に入るパルスに従うようになる。
【0058】
以上のようにして記録されたデータを模式的に示したのが、図6の複数のレンジ・ラインである。この図6に示したものでも、各レンジ・ラインの始点と終点とに、全てのデータが欠落した「データ完全欠落区間」が存在しており、それら区間において全てのデータが欠落しているのは、それら区間ではゲート26の位置が上下に一列に揃っているからである。また、各レンジ・ラインの「データ完全欠落区間」から「データ完全欠落区間」までの間の期間の長さは「ファスト・タイム」における「39τ」の長さであり、この「39τ」の期間に、データ欠落部を表すゲートが4個含まれている。また更に、この期間は、その各々が、記録される1本のレンジ・ラインに対応しており、従って、走査対象のスワス幅に対応している。アジマス信号処理において失われるサンプリング値は、最も多い場合であっても、アジマス・データ欠落部の1個について、5個のサンプリング値のうちの1個のサンプリング値が失われるだけである。従って、アジマス信号の持続時間である「40τ」の期間を通して、常に、少なくとも4個のサンプリング値がデータ再構築のために利用可能となっている。
【0059】
以下に、アジマス信号処理について更に詳細に説明する。不等間隔サンプリングを行っている場合でも、帯域幅が制限された信号の再構築が可能であり、これについて記載した文献としては、論文「"Unambiguous SAR Signal Reconstruction from Nonuniform Displaced Phase Center Sampling", G.Krieger, N. Gebert, A. Moreira, IEEE Geoscience and Remote Sensing Letters, Vol. 1, No. 4, Oct. 2004」がある。同論文は、次のようなサンプリングについての研究結果を記載したものであり、そのサンプリングとは、互いに位置をずらしたM個の開口を、アジマス方向に一様に移動させながら、それらM個の開口によって、帯域幅Bの信号を、M分の1に低下させた一様なサンプリング・レートでサンプリングして記録するというものである。従って、そのサンプリング・レートfは、下式で与えられる。
【0060】
【数8】

【0061】
ここで、開口どうしの離隔距離に関しては、理論的に、略々いかなる規制条件も存在しておらず、また特に、異なった開口が、異なったサンプリング時刻に、正確に同一のアジマス位置に位置している必要はない。ただし、信号のノイズ・レベルが高い場合には、再構築した信号のSN比がかなり落ちるため、同一位置で重複サンプリングが行われるという「ありそうもない」状況が発生することもある。
【0062】
上で説明した具体例では、個々のアジマス信号(図6の線図の個々のデータ欠落部の信号)を再構築する際に、少なくとも4本のアンテナ・ローブから、夫々にサンプリング値が供給される。それら4本のアンテナ・ローブは、サンプリング値の供給源であるという意味で、上述した論文に記載されている個々の開口に相当するものである。それら複数のアンテナ・ローブは、その各々が「40τ」の等間隔でサンプリング値を供給し、また、あるアンテナ・ローブがサンプリング値を供給する時刻と、その次のアンテナ・ローブがサンプリング値を供給する時刻との間隔は、最小では「6τ」、最大では「10τ」である。この間隔が「0」でない限り、ノイズを含まないアジマス信号を完全に再構築することができるはずである。ただし実際には、再構築した信号のノイズ・レベルが大きくならないようにするために、この間隔を小さ過ぎない大きさにしておく必要がある。不等間隔の程度を表す数値としては、PRIの値に対する、2つのサンプリング間隔がつながってしまったときの合計間隔の長さの可能最大値(図6の具体例では「19τ」)の比の値uが用いられ、ここでPRIとは、アジマス帯域幅Bから導出される(等間隔サンプリングとした場合の)必要とされる公称PRIである。従って、この比の値uは下式で与えられる。
【0063】
【数9】

【0064】
一方、リサンプリングを行った後の、等価的な等間隔サンプリングのPRIは、この具体例ではM=4であることから、下式で与えられる。
【0065】
【数10】

【0066】
リサンプリングを行った後のPRIは、必要とされる公称PRIより大きくてはならず、従って、下式の関係が得られる。
【0067】
【数11】

【0068】
この関係は、ここに具体例として提示している「モード6」で行う不等間隔サンプリングにおけるパルス持続時間τの最大値を定める条件である。パルス持続時間の最大値としてこの値を使用する場合には、PRI=PRIであり、従ってτ=PRI/10であるため、不等間隔の程度を表す値uは「1.9」になる。パルス持続時間をこれより短くした場合には、τ=PRI/10<PRI/10となるため、値uもそれに対応して小さな値となり、従ってオーバーサンプリングになる。
【0069】
上で言及した論文によって明らかとされた上記のシミュレーション結果からは、u<2とすれば、再構築されるアジマス信号のSN比が、十分に良好なものとなるとが分かる。また、u=1とすれば、最大サンプリング周期での不等間隔サンプリングとすることができ、この最大サンプリング周期は、等間隔サンプリングとした場合の最大PRIに相当するものである。
【0070】
いうまでもなく、「モード6」は、様々に設定し得るものである。以下に、不等間隔サンプリングの様々な具体例について、上で述べたものと同様の評価を行う。以下の評価においては、以下の具体例において夫々に達成可能なスワス幅の推定値(従って夫々に必要とされるピーク送信電力の推定値)を求める。
【0071】
不等間隔サンプリングのモードは、K次元の整数元ベクトルvによって一意に表すことができ、従って下式で表される。
【0072】
【数12】

【0073】
従って「モード6」は、例えば下式のような5次元ベクトルなどで表される。
【0074】
【数13】

【0075】
ここで、Mを(M<Kである)、アジマス信号処理を行う上で利用可能でなければならないアジマス信号のサンプリング値の最少必要個数とする(図示した「モード6」の具体例では、M=4である)。また、ここで、下式で表される値をSとする(「モード6」の場合にはS=40になる)。
【0076】
【数14】

【0077】
パルス持続時間の可能最大値は、M及びSによって表された下式の条件によって与えられる。
【0078】
【数15】

【0079】
パルス持続時間の可能最大値が上式の条件によって与えられる理由は、Sτは、サンプリングを行うM本のビームの各々のサンプリング周期であり、それらM本のビームの各々は、単一の等間隔サンプリングを行う受信チャネルのサンプリングレートの、M分の1の低速レートでサンプリングが行われるからである。また、上式からは、下式が得られる。
【0080】
【数16】

【0081】
ここで、夫々のモードの不等間隔が「u≦1.9」という条件を満たしていない場合には、τの長さを(従って、τの長さを)縮小して「u=1.9」とする。
【0082】
所与のモードにおけるスワス幅Wは下式で与えられる。
【0083】
【数17】

【0084】
ここで、必要とされるピーク送信電力及び平均送信電力の推定値を求めるために、従来の機器(A)(図1参照)を比較対象として用いる。
【0085】
比較対象の機器(A)の典型的な動作パラメータの値として、ここでは、その平均送信電力が750W、PRFが5280Hz、そして、デューティ・サイクルが25%であるものとする。この場合に、パルス持続時間は約47μsとなり、ピーク送信電力は3kWとなる。
【0086】
本発明に係るSAR機器(C)(図1参照)のSN比を比較対象の機器(A)のSN比と同じにするためには(尚、図1の機器(B)のSN比は、デューティ・サイクルが同一の場合に、機器(A)のSN比の3倍の高い値となる)、この機器(C)が送出するパルス1個あたり電力を、機器(A)のパルス1個あたりの電力と同じにする必要がある。また、この機器(C)の性能解析のためには、この機器(C)の平均サンプリング周期、平均パルス・レート、及び、平均デューティ・サイクルの値が必要であり、それらは以下の式で与えられる。
【0087】
【数18】

【0088】
機器(C)と機器(A)とでSN比を同じ値にするには、機器(C)のピーク送信電力Pを、機器(A)と機器(C)との間のパルス持続時間の比に応じた値とすればよく、その場合、機器(C)のピーク送信電力Pは下式で与えられる。
【0089】
【数19】

【0090】
従って、機器(C)の平均送信電力は下式で与えられる。
【0091】
【数20】

【0092】
下表は、様々なモードにおける不等間隔サンプリングと、比較対象の従来の機器(A)との、比較結果を示した表である。下表からは次のことが分かる。
1.モード・ベクトルの成分の数値を大きくするほどパルス持続時間は短くなる。
2.パルス持続時間が短いほどスワス幅は大きくなり、ピーク送信電力も大きくなる。
3.従来の機器(A)の場合よりも、不等間隔サンプリングの場合の方が平均送信電力が大きいが、これはアジマス信号処理において一部のパルスが失われるからである。
4.実施例3は、スワス幅とピーク送信電力との良好な兼ね合いが得られる例であると認められる。
【0093】
ピーク送信電力の値は、どの実施例でも大きな値となっているが、ただし、ピーク送信電力の値は、送信に際して、本発明に係る周波数多重方式を用いることによって、より小さな値にすることができる。
【0094】
【表1】

【0095】
本発明に係るSAR装置では、機器(B)と異なり、動作時の平均PRFが高いため、パルス持続時間τが比較的短くなる。ただし、本発明に係る機器(C)では、比較対象の機器(A)と同程度のSN比を達成するために、機器(A)と同様に、個々のパルスの電力を互いに同一にしておく必要がある。そのため、上表では、ピーク送信電力が比較的大きな値となっているのである。
【0096】
原理的には、複数の電力増幅器を並列に接続することによってこのような大きな電力を実現することができるが、ただしそうした場合には、特に宇宙空間で使用する場合などに大きなリスクをかかえることになる。即ち、数kWもの大きなパルス電力を供給する真空管増幅器には、マルチパクションなどの高エネルギ作用を発生するおそれがあり、また、トランジスタ増幅器には、1つには様々な技術的制約が付随しているということがあり、もう1つにはその増幅器の実装密度が上昇すると、即ち単位面積あたりの増幅器の個数が増大すると、その発生熱が大きな問題になるということがある。
【0097】
以上の弊害を軽減するには、複数の(以下に示す具体例では3個の)送信モジュール兼フロントエンドを使用して、それらが、互いに異なった周波数帯の送信チャープを、互いにコヒーレントに且つ互いに同時的に送出するようにするとよく、例えば、3個の送信モジュール兼フロントエンドTX1〜TX3が、以下のようにして送信チャープを送出するようにするとよい。
TX1は第1の3分の1の送信チャープを送出する:−B/2<f<−B/6
TX2は第2の3分の1の送信チャープを送出する:−B/6<f<B/6
TX3は第3の3分の1の送信チャープを送出する:B/6<f<B/2
【0098】
このように同時的に送出を行うことによって、所与のパルス持続時間τの時間内に3倍の送信エネルギを放射することができる。またこれによって、各々の送信モジュールにおいて必要とされるピーク送信電力が、公称ピーク送信電力であるそれらのピーク送信電力の合計値の3分の1になっている(上表を参照されたい)。また、信号処理に際しては、デジタル周波数フィルタを使用して、各々の送信モジュールのデータ・ストリームを互いに分離するようにすればよい。
【0099】
このように同時的に送出を行う複数のモジュールの間で信号帯域を分配する方式は、レーダの設定を様々に調節して、ローブ幅を様々に変更する必要がある場合に、特に有利なものである。即ち、ファー・レンジでは、送信開口の全体を使用して、全帯域幅の送信チャープを送出するようにする。一方、ニア・レンジでは、ファー・レンジの場合と比べてかなり幅の広いローブが必要とされるが、そのようなローブを発生させるには、より小さな開口の方が好都合である(位相制御ステアリングによるビーム幅拡大だけでは、十分な効果は得られない)。しかるに、アンテナの一部を使用しなければ、それによってアンテナ・ゲインが低下するばかりでなく、パルス電力も減少することになる。以上に説明した方法によれば、このような不都合を回避することができる。
【0100】
既述のごとく、本発明では、複数の互いに独立したアンテナ・ローブを使用して、個々のパルス(即ちパルス信号)から戻る夫々のエコーを、個別に受信してメモリに格納するようにしている。いわゆるレンジ・アンビギュイティとは、あるアンテナ・ローブとそれに隣接する別のアンテナ・ローブとの間で混信が発生するクロストークのことであるが、これは、受信しているアンテナ・ローブどうしが互いに十分に分離されていないときに発生するものである。そして、そのような事態が発生しているとき、アンテナ・ローブは、そのアンテナ・ローブそれ自体のパルスのエコーを受信している他に、それに隣接する別のアンテナ・ローブのパルスのエコーも(振幅は小さいながらも)受信している。
【0101】
従って、アンテナ・ローブの垂直方向における形状を適切に整形して、サイド・ローブが十分に小さい形状とするように意を注ぐ必要がある。図1の機器(B)及び機器(C)では、このアンテナ・ローブの整形を、デジタル・ビーム・フォーミング(DBF)によって、デジタル・ドメインで行うようにしている。このようにすることは、機器(C)にとっては特に重要であり、なぜならば、機器(C)では、PRIがより小さいことから、走査を行っている対象物上の複数のエコー・センターが、互いにより近接して位置しているからである。DBFにおいては、複数のサブ開口の夫々の信号に対して、即ち、送信アンテナTXの信号に対して、受信アンテナRX1〜RX17に、適当な複素重み係数が、また特に、時間依存性を有する複素重み係数が個別に適用される。その際に、隣接しているパルスの正確な位置が分かっていれば、複数のサブ開口によって生成されるアンテナ・パターン中の、ゼロを挿入すべき位置に、非常に的確にゼロを挿入することができるのである。
【0102】
レンジ・アンビギュイティを抑制するための更に効果的な方法として、STAP(スペース・タイム・アダプティブ処理)と呼ばれている方法がある。このSTAPについて詳細に記載した刊行物には、文献「"Space-Time Adaptive Processing" by R. Klemm, IEE Radar, Sonar, Navigation and Avionics Series 9, 1998, ISBN 0 85296 946 5」がある。STAPは、SARの生データから移動している対象物を検出するためにクラスタ抑制を行うものであるが、ただし、それによってアンテナ・パターンの適合化を行うに際して、(上で説明したように)信号の空間領域(角度領域)においてのみゼロの挿入を行うのではなく、信号の空間−時間の結合領域においてゼロの挿入を行うものである。この信号の領域は、より次元が高い領域であり、また、適当なプロセッサを使用するようにしているため、STAPを採用することによって、単なるアンテナ・パターンの適合化を行う場合と比べて、常に、少なくとも同程度に良好なフィルタ作用が得られ、場合によっては、それより更に優れたフィルタ作用が得られる。この不要信号の抑制作用(即ち、フィルタ作用)の背後にある物理的な原理は、時間と空間領域における信号の時間的特徴と空間的特徴とを組合せた複合特徴を特定することにある。またここで、空間的特徴の特定とは、信号がフロントエンドに到来する方向の角度を特定することを意味している。そのため、この方法は、HRWS−SARのように、マルチ開口型のフロントエンドが用いられていることを前提条件としている。この方法によって達成可能な分離精度は、受信アンテナの合計高さ寸法が増大するほど、また、受信アンテナのサブ開口の個数が増大するほど向上する。
【0103】
以下に、本発明に係るデータ削減法の具体例について説明する。データ削減を行わない場合には、高さ方向に列設した17個の受信開口RX1〜RX17の全ての生信号を一旦バッファ・メモリに格納する必要があり、しかる後に、それら信号をそこから中央SAR処理装置へ転送して解析させることになる。機器(B)の場合には最大で毎秒5280本のレンジ・ラインが生成されるが、この本数は、本発明に係る機器(C)にとっては、平均パルス周波数に対応する本数である。特に、DBFをオンボードで実行する場合には、即ち、例えばSAR衛星のようにアンテナを装備した機器の内部でDBFを実行する場合には、効果的なデータ削減を行うことができる。そのデータ削減法においては、先ず、パルス1個について、受信開口RX1〜RX17の各々に1本ずつが対応した合計で17本発生するレンジ・ラインを、K本の受信レーダ・ビームの各々に1本ずつが対応した合計でK本のレンジ・ラインに変換する(例えばK=5である)。
【0104】
続いて、オンボード方式のデータ削減法の第2のステップとして、受信レーダ・ビームの各々に1本ずつが対応したそれらレンジ・ラインから、1箇所のアジマス・データ欠落部においてK個のパルスに対してM個のサンプリング値が存在している部分に対して削減を行うことができる。図6においてこれに該当する部分としては、例えば、レンジ・ラインのうちのパルス幅に対応する部分はこれに該当せず、同図中の最初のパルス幅に対応する部分の後方の部分などがこれに該当する。なぜならば、その最初のアジマス・データ欠落部分(最初のパルス幅に対応する部分)に関してはバッファ・メモリの中に利用可能なアジマス信号のサンプリング値が4個存在しているのに対して、この該当部分に関してはバッファ・メモリの中に利用可能なアジマス信号のサンプリング値が5個存在しているからである。5個目のサンプリング値はアジマス信号処理を行う上で不要であるため、中央SAR処理装置へ転送する必要がない。この第2のステップは、平均PRFが高い場合に特に重要なものである。
【0105】
本発明においては、PRIを不等間隔として、HRWS−SARと同様に大きなスワス幅を得ると同時に高い分解能を達成している。ただし、それに加えて更に、本発明に係るアンテナは格段に小さく、例えば、公知のHRWS−SARのアンテナの少なくとも3分の1の大きさにすることができる。更に、アンテナが小さいため、HRWS−SARと比べてバックエンドの個数を低減することができる。ただしその替わりに、必要とされる送信電力は大きくなる。更に、本発明では、従来のモノスタティック方式のSARと同程度のSAR性能を達成することができる。PRIを不等間隔としたため、処理後に得られるSAR画像に黒筋が発生するのを回避することができる。PRIの不等間隔を様々に設定することによって、本発明に係るSARは、具体的な様々な用途に適合させることができる。
【0106】
本発明によれば、受信アンテナの合計開口高さが大きく、また、受信アンテナが複数のサブ開口により構成されていることから、以下の利点が得られる。
1.スワス幅を大きく取って、しかも、大きな受信アンテナのゲインが得られる。
2.受信アンテナのアンテナ・ローブと、その周波数スプレッドとを、動的に追跡することができる。
3.レンジ・アンビギュイティを抑制することができる。
4.高いPRFとした受信アンテナのアンテナ・ローブを複数形成することができる。
【0107】
更に、本発明に係る受信アンテナのサブ開口の個数及びサイズは、意図する用途に適合したものとすることができる。
【0108】
以上を要約すると、本発明によれば、PRFを低下させることなく、且つ、格段に小さなアンテナを用いて、HRWS−SARの本質的な機能を達成することができる。
【0109】
更に別の実施の形態として、本発明は、次のような高分解能合成開口レーダ装置を開示するものであり、この高分解能合成開口レーダ装置は、対象物を走査するレーダ・ビームを生成するための少なくとも2つの送信アンテナを備え、それら少なくとも2つの送信アンテナが、周波数多重方式で同時的に駆動されるようにしたものである。
【0110】
合成開口レーダでは、送信アンテナの送信電力を増大させることが必要、ないしは望ましいということがしばしばある。ただしその場合に、それと同時に、システム上の理由から、送信アンテナの開口は変えずにおく(即ち、開口の高さ寸法及び幅寸法を変えずにおく)ことが必要とされることがある。
【0111】
パッシブ・アンテナでは、その送信電力は供給される高周波信号のパルス電力に比例して増大し、原理的には、複数の電力増幅器を並列に接続することによってその電力の増大を実現することができる。ただしそうした場合には、特に宇宙空間で使用する場合などに大きなリスクをかかえることになる。即ち、数kWもの大きなパルス電力を供給する真空管増幅器には、マルチパクションなどの高エネルギ作用を発生するおそれがある。また、トランジスタ増幅器には、1つには様々な技術的制約が付随しているということがあり、もう1つにはその増幅器の実装密度が上昇すると、即ち単位面積あたりの増幅器の個数が増大すると、その発生熱が大きな問題になるということがある。
【0112】
アクティブ・アンテナでは、その送信電力はアンテナ面積に比例して増大し、大出力の電力増幅器を必要としないが、ただし、十分な大きさを持つ大型のアクティブ・アンテナを使用することは問題の解決につながらず、なぜならば、通常、システムアスペクトの下では、所定のアンテナ開口の大きさを超えることはできず、また従って、所定のアンテナ面積を超えることはできないからである。
【0113】
本発明においては、以上の問題を解決するために、所望の開口を有する互いに同寸法の複数の送信アンテナを、並列的に、ただし、周波数多重方式で駆動するようにしている。これは、例えば、帯域幅B及びパルス持続時間τの送信チャープを送出するようにすればよい。またその場合に、複数の送信アンテナ(以下に示す具体例では3個の送信アンテナTX1〜TX3)の各々が、互いに異なった周波数帯の送信チャープを、互いにコヒーレントに且つ互いに同時的に送出するようにし、例えば以下のようにすればよい。
TX1は第1の3分の1の送信チャープを送出する:−B/2<f<−B/6
TX2は第2の3分の1の送信チャープを送出する:−B/6<f<B/6
TX3は第3の3分の1の送信チャープを送出する:B/6<f<B/2
【0114】
以上の具体例では、このように同時的に送出を行うことによって、個々の送信アンテナの送信電力を増大させることを必要とせずに、所与のパルス持続時間τの時間内に3倍の送信エネルギを放射することができるようになっている。この場合、使用する送信アンテナは、同一構造の低電力用の送信アンテナを複数製作すればよく、それら送信アンテナに異なった信号を供給するだけでよい。また更に、必要とされる帯域幅も縮減される。
【0115】
以上に説明した本発明は、開口を変化させずにシステムの送信電力を増大させるという目的に役立つだけではない。以上に説明した方法は、一般的に、アクティブ・アンテナにおいて、その送信電力と開口寸法との間に存在していた関連性を解消することを可能にするものである。逆に言うならば、十分に大きな送信電力を提供する開口を、複数のサブ開口及びそれらに付随する複数の送信モジュールに分割することにより、開口寸法を縮小してしかも合計送信電力を十分な大きさとし得るようにするものである。このように同時的に送出を行う複数のモジュールの間で信号帯域を分配する方式は、レーダの設定を様々に調節して、同一の機器でローブ幅を様々に変更する必要がある場合に、特に有利なものである。即ち、ファー・レンジでは、送信開口の全体を使用して、全帯域幅の送信チャープを送出するようにする。一方、ニア・レンジでは、ファー・レンジの場合と比べてかなり幅の広いローブが必要とされるが、そのようなローブを発生させるには、より小さな開口の方が好都合である。位相制御ステアリングによるビーム幅拡大だけでは、十分な効果は得られない。しかるに、アンテナの一部表面への電力供給を絶ったならば、それによってパルス電力が減少することになる。以上に説明した方法によれば、このような不都合を回避することができる。
【0116】
尚、受信した複数のレーダ・エコーの夫々の信号に処理を施すに際して、以上に説明した本発明の方法を用いる場合には、それら信号を、アナログ周波数フィルタまたはデジタル周波数フィルタによって、互いに分離するようにする。
【0117】
本明細書に示した様々な動作パラメータの具体的な数値は、具体例を提示することを目的としたものであり、本発明の開示はそれら具体的な数値を有するものに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】SAR装置のアンテナの3通りの具体例を示した図であり、それら3通りの具体例は、従来のモノスタティック方式のSARのアンテナ、バイスタティック方式のHRWS−SARのアンテナ、それに、本発明に係るSAR装置のアンテナである。
【図2】SARが地表面の幅の広いスワスを走査しているところを示した図であり、SARは同時に複数のレーダ・パルスのエコーを受信している。
【図3】SARが地表面の幅の広いスワスを走査しているところを示した図であり、SARは3本のアンテナ・ローブによって同時に3つのレーダ・エコーを受信している。
【図4】図3に示した状態において、受信されてサンプリングされた3つのレーダ・エコーに対応した、メモリに格納されたレンジ・ラインを示した図である。
【図5】パルス反復間隔(PRI)を可変とし、アンテナ・ローブの合計数を5本とした、本発明に係るSAR装置の実施の形態を示した図である。
【図6】図5に示した状態において、個別のアンテナ・ローブによって受信されてサンプリングされた5つのレーダ・エコーに対応した、メモリに格納されたレンジ・ラインを示した図である。
【符号の説明】
【0119】
10 高分解能合成開口レーダ装置
12 地表面
14 高分解能合成開口レーダ装置の受信アンテナ
16 レーダ・ビーム
18 レーダ・ビームのパルス信号
20、22、24 同時的に送出されるレーダ・ビーム
26 ゲート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分解能合成開口レーダ装置(10)において、
対象物(12)を走査するレーダ・ビーム(16)を生成するための少なくとも1つの送信アンテナ(TX1〜TX3)と、
前記対象物(12)で反射したレーダ・ビーム(20、22、24)を受信するための受信アンテナ(14)とを備え、
前記受信アンテナ(14)は、高さ方向に列設された複数のサブ開口(RX1〜RX17)により構成されており、
該高分解能合成開口レーダ装置は、パルス信号(18)を不等間隔で送出するように構成されている、
ことを特徴とする高分解能合成開口レーダ装置。
【請求項2】
HRWS−SARの場合と比べてより少ない個数のアジマス開口が前記複数のサブ開口(RX1〜RX17)により形成されるように、前記高分解能合成開口レーダ装置が構成されていることを特徴とする請求項1記載の高分解能合成開口レーダ装置。
【請求項3】
受信したレーダ・エコー(20、22、24)にアジマス信号処理を施す際にリサンプリング法を適用するように、前記高分解能合成開口レーダ装置が構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の高分解能合成開口レーダ装置。
【請求項4】
少なくとも2つの送信アンテナ(TX1〜TX3)を周波数多重方式で同時的に駆動するように、前記高分解能合成開口レーダ装置が構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の高分解能合成開口レーダ装置。
【請求項5】
デジタル・ビーム・フォーミングによって複数のレーダ・エコー(20、22、24)の各々に対して1つずつの受信チャネルを生成するように、前記高分解能合成開口レーダ装置が構成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の高分解能合成開口レーダ装置。
【請求項6】
各々の受信したレーダ・エコー(20)をそれに隣接した他の受信したレーダ・エコー(22、24)から高い分離度をもって分離するために、前記複数のサブ開口(RX1〜RX17)の信号に対して、デジタル・ドメインにおいて、時間依存性を有する複素重み係数を適用するように、前記高分解能合成開口レーダ装置が構成されていることを特徴とする請求項5記載の高分解能合成開口レーダ装置。
【請求項7】
前記時間依存性を有する複素重み係数は、アンテナ・ダイアグラム(20)が(22、24)の方向には「0」に維持されるように設定されていることを特徴とする請求項5又は6記載の高分解能合成開口レーダ装置。
【請求項8】
前記複数のサブ開口(RX〜RX17)の夫々の信号に対して、スペース・タイム・アダプティブ処理を施すように、前記高分解能合成開口レーダ装置が構成されていることを特徴とする請求項5乃至7の何れか1項記載の高分解能合成開口レーダ装置。
【請求項9】
受信したレーダ・エコー(20、22、24)から得られたデータに対して圧縮処理を施した後に当該データを地上局へ送信するように、前記高分解能合成開口レーダ装置が構成されていることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項記載の高分解能合成開口レーダ装置。
【請求項10】
アンテナ・パターンの生成及びレーダ・パルスの送出を行うための複数の送信モジュール兼フロントエンドを、前記複数の送信アンテナ(TX1〜TX3)の各々に対して1つずつ備えていることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項記載の高分解能合成開口レーダ装置。
【請求項11】
前記複数の送信モジュール兼フロントエンドは、互いにコヒーレントに且つ互いに同時的に送信チャープを送出するように構成されており、更に、前記複数の送信モジュール兼フロントエンドは、その各々が互いに異なった周波数帯で送出を行うように構成されていることを特徴とする請求項10記載の高分解能合成開口レーダ装置。
【請求項12】
受信した複数のレーダ・ビーム(20、22、24)から生成された複数のデータ・ストリームを周波数に応じて互いに分離するための、デジタル周波数フィルタを備えていることを特徴とする請求項11記載の高分解能合成開口レーダ装置。
【請求項13】
高分解能合成開口レーダ装置において、
対象物を走査するレーダ・ビーム(16)を生成するための少なくとも2つの送信アンテナ(TX1〜TX3)を備え、
前記少なくとも2つの送信アンテナ(TX1〜TX3)が、周波数多重方式で同時的に駆動されるようにした、
ことを特徴とする高分解能合成開口レーダ装置。
【請求項14】
例えば請求項1乃至13の何れか1項記載の高分解能合成開口レーダ装置などの、高分解能合成開口レーダ装置に用いるアンテナにおいて、
2つ以上の送信アンテナ(TX1〜TX3)を備え、それら送信アンテナは各々が1本ずつのマイクロ波領域のレーダ・ビームを送出するように構成されており、
反射したマイクロ波領域のレーダ・ビームを受信するように構成された受信アンテナを備え、該受信アンテナは、高さ方向に列設された複数のサブ開口(RX1〜RX17)を備えており、それら複数のサブ開口は、2つ以下のアジマス開口を形成している、
ことを特徴とするアンテナ。
【請求項15】
前記2つ以上の送信アンテナ(TX1〜TX3)が高さ方向に列設されていることを特徴とする請求項14記載のアンテナ。
【請求項16】
前記受信アンテナが、前記2つ以上の送信アンテナ(TX1〜TX3)に対して、高さ方向に隣接して配設されていることを特徴とする請求項14又は15記載のアンテナ。
【請求項17】
前記複数のサブ開口(RX1〜RX17)が、ただ1つだけのアジマス開口を形成していることを特徴とする請求項14乃至16の何れか1項記載のアンテナ。
【請求項18】
前記複数のサブ開口(RX1〜RX17)の各々の高さ寸法は、前記2つ以上の送信アンテナ(TX1〜TX3)の各々の高さ寸法より小さいことを特徴とする請求項14乃至17の何れか1項記載のアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−520954(P2009−520954A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546123(P2008−546123)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【国際出願番号】PCT/DE2006/002279
【国際公開番号】WO2007/076824
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(500466717)アストリウム・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (34)
【Fターム(参考)】