説明

高周波出力モニタ回路装置

【課題】 高周波増幅器の出力直後でRF電力の一部を取り出してRF検波する場合に、RF出力側のRF検波回路への配線パターンの引き回しを必要十分な長さに留めることができ、基板の小型化、計測精度向上を実現する。
【解決手段】 高周波増幅器22のRF出力の一部を取り出す方向性結合器232において、結合用ライン2321の長さLをL<λ/4にずらし、これによって方向性を低下させ、RF結合出力を従来例とは反対側のRF出力側から取り出す。RF結合出力から得られたRF電力はRF検波回路233でDC電圧に変換し、RF電力の監視に使用する。一方、出力側から回り込むRF電力は、アイソレータとして機能するサーキュレータユニット24によって阻止する。このようにして従来と同等なモニタ回路の性能を確保し、誤検出を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばマイクロ波回路で使用される高周波増幅器のRF出力状態をモニタする高周波出力モニタ回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、レーダ装置の送信装置のマイクロ波回路で使用される増幅器には、RF出力の監視や故障検出のためにRF出力モニタ回路装置が使用される(例えば非特許文献1参照)。従来のRF出力モニタ回路装置は、増幅器のRF出力ラインから方向性結合器を用いてRF電力の一部を取り出し、検波ダイオードによるRF検波回路によってDC電圧を得る構造となっている。そして、このDC電圧を監視することで、RF出力電力の変動や、増幅器の故障を検出している。
【0003】
この場合、基板のスペース効率を考慮して、方向性結合器は増幅器の出力直後に配置される。しかしながら、方向性結合器のRF結合出力は増幅器側であり、RF検波回路をRF出力側に配置した場合、配線パターンの引き回しの困難さから基板が大型化してしまう問題があった。
【非特許文献1】社団法人電子情報通信学会発行、株式会社コロナ社出版、「改訂レーダ技術」第166頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上述べたように、従来の高周波出力モニタ回路装置では、基板のスペース効率を考慮して、方向性結合器を増幅器の出力直後に配置しても、方向性結合器のRF結合出力が増幅器側であるため、RF出力側に配置されるRF検波回路に結合出力を供給しようとすると、配線パターンを引き回しの困難さから基板が大型化してしまう問題があった。
【0005】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、高周波増幅器の出力直後でRF電力の一部を取り出してRF検波する場合に、RF出力側のRF検波回路への配線パターンの引き回しを必要十分な長さに留めることができ、基板の小型化、計測精度向上を実現する高周波出力モニタ回路装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明に係る高周波出力モニタ回路装置は、波長λの高周波信号を増幅する高周波増幅器の出力ラインに対してλ/4より短い長さの結合用ラインを形成し、当該結合用ラインの前記高周波増幅器側には終端抵抗を接続し、その反対側から結合された高周波信号を導出する方向性結合器と、前記方向性結合器から導出される高周波信号を検波してモニタ信号を生成する検波回路と、前記出力ラインに出力側から逆流する信号成分を前記結合用ラインとの結合部より前に阻止する逆流阻止手段とを具備することを特徴とするものである。
【0007】
このように、本発明では、高周波増幅器の高周波出力の一部を取り出す方向性結合器において、結合用ラインの長さLをL<λ/4にずらし、これによって方向性を低下させ、RF結合出力を従来例とは反対側のRF出力側から取り出し検波してモニタ信号を生成する。一方、出力側から逆流する不要信号成分は、サーキュレータ等のアイソレータによって阻止する。これにより、従来と同等なモニタ回路の性能を確保し、誤検出を防止する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高周波増幅器の出力直後でRF電力の一部を取り出してRF検波する場合に、RF出力側のRF検波回路への配線パターンの引き回しを必要十分な長さに留めることができ、基板の小型化、計測精度向上を実現する高周波出力モニタ回路装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係る実施の形態を説明するに先立ち、従来のマイクロ波増幅器とその出力モニタ回路装置の構造を図2に示して簡単に説明する。
【0010】
図2において、(a)は回路パターン図、(b)はその等価回路を示すブロック図である。図2(a)において、11はRF入力端子ユニット、12は増幅器ユニット、13はRF出力モニタユニットで、これらはベースプレート(図示せず)に並べて載置され、螺子止めにより固定される。増幅器11の出力端はRF出力モニタユニット13の出力ライン131に結合される。RF出力モニタユニット13では、出力ライン131に対し、方向性結合器132の結合用ライン1321が近接配置され、そのRF出力側端部は終端抵抗1322に接続され、RF入力側端部は折り返されてRF検波回路133の入力端に接続される。結合用ライン1321の長さLは、結合の方向性を強くするため、RF信号波長λの1/4に選定される。
【0011】
すなわち、図2(b)に示す等価回路からわかるように、方向性結合器132によってRF増幅出力の一部が取り出され、RF検波回路133によってDC電圧に変換される。このDC電圧を監視することで、RF出力電力の変動や、増幅器の故障を検出している。しかしながら、方向性結合器132のRF結合出力は増幅器ユニット12側であり、RF検波回路133がRF出力側に配置されているため、配線パターンの引き回しにある程度の面積を有する。この結果、増幅器ユニット12の幅Wに対してRF出力モニタユニット13の幅はW+αが必要となり、基板が大型化してしまう。
【0012】
以下、図1を参照して、上記の問題を解決する本発明のマイクロ波増幅器の出力モニタ回路装置の一実施形態を説明する。
【0013】
図1において、(a)は回路パターン図、(b)はその等価回路を示すブロック図である。図1(a)において、21はRF入力端子ユニット、22は増幅器ユニット、23はRF出力モニタユニット、24はサーキュレータユニット、25は終端抵抗ユニット、26はRF出力端子ユニットで、これらはベースプレート(図示せず)に並べて載置され、螺子止めにより固定される。
【0014】
増幅器ユニット22の出力端は、RF出力モニタユニット23の出力ライン231に結合される。RF出力モニタユニット23では、出力ライン231に対し、方向性結合器232の結合用ライン2321が近接配置されるが、ここではRF入力側端部が終端抵抗2322に接続され、RF出力側端部はそのままRF検波回路233の入力端に接続される。また、結合用ライン2321の長さLは、RF信号波長λの1/4より短く選定される。尚、λ/8≦L<λ/4が実用的である。
【0015】
上記RF出力モニタユニット23の出力ライン231はサーキュレータユニット24の信号入力端に接続され、このサーキュレータユニット24の信号出力端はRF出力端子ユニット26の出力ラインに接続される。また、サーキュレータユニット24のもう一つの出力端には終端抵抗ユニット25が接続される。すなわち、サーキュレータユニット24は、図1(b)の等価回路に示すようにアイソレータとして機能するもので、RF出力端子ユニット26からサーキュレータユニット24に向けて反射される不要信号成分が、サーキュレータユニット24のもう一つの出力端に接続される終端抵抗ユニット25によって接地ラインに流され、これによってRF出力モニタユニット23への逆流が抑制されるようになされている。
【0016】
すなわち、上記実施形態のRF出力モニタユニット23では、方向性結合器232において、RF結合出力を従来例とは反対側から取り出すために、結合用ライン2321の長さLをL<λ/4にずらし、これによって結合の方向性を低下させるようにしている。RF結合出力から得られたRF電力はRF検波回路233でDC電圧に変換し、RF電力の監視に使用する。一方、出力側から回り込むRF電力は、アイソレータとして機能するサーキュレータユニット24によって阻止される。このため、従来と同等なモニタ回路の性能を確保し、誤検出を防止できる。
【0017】
したがって、上記構成によるモニタ回路装置によれば、方向性結合器のRF出力端の向きを変えると共に、結合ライン長をλ/4より短くすることによって、RF出力モニタユニット23を小型にすることができ(例えば増幅器ユニット22とRF出力モニタユニット23の基板幅をWで統一可能)、しかも信号反射、回り込み等による不要信号成分の逆流がほぼ完全に抑制されるため、モニタ精度、機器の性能向上を実現することができる。
【0018】
尚、上記実施形態では、RF検波回路への逆流防止のため、モニタユニット23の出力側にサーキュレータユニット24を介在するようにしたが、レーダ装置等で使用するマイクロ波回路では、増幅段の出力部にサーキュレータ(あるいはアイソレータ)が備えられているのが一般的である。この場合には、そのサーキュレータを上記実施形態で述べたサーキュレータユニット24として利用することも可能である。
【0019】
また、上記実施形態では、各回路要素がユニット化されているものとしたが、全体もしくは部分的な組み合わせで一体化している場合でも同様に実施可能である。
【0020】
その他、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る高周波出力モニタ回路装置の一実施形態として、マイクロ波増幅器とその出力モニタ回路装置の回路パターン及び等価回路を示すパターン図及び回路図。
【図2】従来のマイクロ波増幅器とその出力モニタ回路装置の回路パターン及び等価回路を示すパターン図及び回路図。
【符号の説明】
【0022】
11…RF入力端子ユニット、12…増幅器ユニット、13…RF出力モニタユニット、131…出力ライン、132…方向性結合器、1321…結合用ライン、1322…終端抵抗、133…RF検波回路、
21…RF入力端子ユニット、22…増幅器ユニット、23…RF出力モニタユニット、231…出力ライン、232…方向性結合器、2321…結合用ライン、2322…終端抵抗、233…RF検波回路、24…サーキュレータユニット、25…終端抵抗ユニット、26…RF出力端子ユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長λの高周波信号を増幅する高周波増幅器の出力ラインに対してλ/4より短い長さの結合用ラインを形成し、当該結合用ラインの前記高周波増幅器側には終端抵抗を接続し、その反対側から結合された高周波信号を導出する方向性結合器と、
前記方向性結合器から導出される高周波信号を検波してモニタ信号を生成する検波回路と、
前記出力ラインに出力側から逆流する信号成分を前記結合用ラインとの結合部より前に阻止する逆流阻止手段とを具備することを特徴とする高周波出力モニタ回路装置。
【請求項2】
前記結合用ラインの長さLは、λ/8≦L<λ/4程度とすることを特徴とする請求項1記載の高周波出力モニタ回路装置。
【請求項3】
前記逆流阻止手段には、前記高周波増幅器から出力ラインに導出される高周波信号を出力端に導き、前記出力端から流れ込む信号成分を接地ラインに導くサーキュレータを用いることを特徴とする請求項1記載の高周波出力モニタ回路装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−173956(P2007−173956A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−365095(P2005−365095)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】