説明

高圧水噴射洗浄方法及び高圧水洗浄装置

【課題】 高密度で柱状部品を整列配列しても洗浄力が高く、一つの柱状部品で洗浄目的が部分的に異なる場合でも各々の目的に合致した洗浄を同時に行う。
【解決手段】 打錠機の臼や杵と呼ばれるような柱状部品B1,B2を多数個収納する装置本体3と、装置本体3に上方から蓋をする蓋体2を備え、前記蓋体2に回転可能に取り付けられた管7に多数個のノズルN1が取り付けられ、洗浄水供給手段から供給する洗浄水Wを管7を介して回転しながらノズルN1から噴射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧水をノズルから噴射させて、打錠機の臼や杵と呼ばれるような柱状部品を洗浄する高圧水噴射洗浄方法及び高圧水噴射洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗浄液槽内に置いたワークに超高圧ジェット噴流液を噴射してワークを洗浄・バリ取りするワーク洗浄・バリ取り装置としては、特許文献1や特許文献2が先行技術として開示されている。特許文献1には、洗浄液槽内に置かれたワークに洗浄液槽内から超高圧ジェット噴流液を噴射する内容の発明であるが、その従来例では、ワークを洗浄液中に置き、洗浄液上方の空気中から超高圧ジェット噴流液をワークに噴射する方法が開示されている。特許文献2には、水中のワークに対して、高圧処理水とメディア(ショット材、研掃材)とを混合して噴射する混合噴射工程と、前記混合噴射工程後に、水中で高圧処理水のみを噴射してワークを洗浄する洗浄工程とを備える水中バリ取り方法が開示されている。
【0003】
一方、錠剤を所定形状にしたり錠剤表面に刻印を施す打錠機は、上下方向に開口する臼が多数個配置され、各臼に対応して上下一対の杵が上下方向に接離可能に配され、臼に所定量の粉体が供給され、一対の杵に、所定の加圧力が付与されて錠剤が成型される装置であり、このような打錠機の場合、例えば成型する錠剤の種類が変更される毎や一日の作業が終了する毎に打錠機の金型部品を洗浄することが行われる。このような洗浄のための装置としては、特許文献3から5が開示されている。
【0004】
特許文献3は、打錠機から取り外した杵、臼などの部品をバスケットに収納したままの状態で洗浄から防錆までの一連の処理を自動的に出来る打錠機部品の自動洗浄装置に関し、その特徴とするところは、洗浄槽にバスケットの出し入れ時に開閉する密閉蓋を備え、洗浄槽内を真空で超音波洗浄できる構成にしている。
特許文献4は、平面回転可能な架台3と、この架台3上に配置され杵aおよび臼bを複数個保持する部品保持手段4と、前記架台3を駆動してこの部品保持手段4を一定方向に平面回転させる架台駆動機構5と、前記部品保持手段4に保持されて回転し続けている杵aおよび臼bに向けてノズル63、64、65、66から温水cを噴射する給液手段6とを具備した装置である。
特許文献4は、垂直軸回りに回転する円板状の回転体14,15からなり、外周部に杵100をその先端を上向きにして取り外し可能に保持する保持部を設け、該保持部を周方向に沿って等ピッチに配した杵保持回転テーブル2を1間欠回転で複数の前記保持部に相当する角度を回転移動させると、昇降体27が降下し、蒸気ノズル21が臨む蒸気噴気室32内に収容された杵100の先端に蒸気を噴気し、同時にエアノズル22が臨むエア噴気室33内に収容された蒸気洗浄済みの杵の先端に圧縮空気を噴気して乾燥させる。この動作を複数回繰り返すことで、全ての杵の先端洗浄と乾燥処理を行う装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】第2762098号公報
【特許文献2】特開2002−219651号公報
【特許文献3】特許第3654386号公報
【特許文献4】特開平6−23598号公報
【特許文献5】特開2007−224337公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、打錠機用の杵や臼という打錠金型の洗浄の場合、杵の先端に付着する粉(薬粉)の固着が危惧され(特に杵の先端刻印部に固着する薬剤)、この汚れは容易に除去することができないという問題を有する。また、杵の側面部(特に径の太い部分)には潤滑油が付着しているが、この脱脂が要求されたり、潤滑油に付着した薬剤の粉の除去が要求されたりするが、これらを除去することが難しいという問題を有する。薬剤の残渣は、打錠不良や次ロットへのコンタミネーションの原因になる。そして、打錠機用の杵と臼の場合の洗浄するセット数は、一度に数十セットの杵臼を洗う必要が高まっており、洗浄装置は大型になる傾向にある。
しかしながら、従来の装置で、装置本体に収納した杵等を回転させる構造のものでは(特許文献3と4と5)、装置構成が大型化して高価になる。また、垂直姿勢に配した部品(杵)の上方のみならず下方からのも噴射させる構造では更に装置が大型化する(特許文献4)。
【0007】
一方、加工部品のバリ取り装置で、水中で高圧水を噴射させる方式があるが(特許文献1と2)、この従来方式では部品を高密度に収納して大量に加工することはできないのみならず、数十MPaの高圧水を噴射しなければキャビテーション等の作用が生じないとった問題を有する。
【0008】
そこで本発明の目的は、柱状部品を高密度で整列配列して収納しても洗浄力が高く、一つの柱状部品で洗浄目的が部分的に異なる場合でも各々の目的に合致した洗浄を同時に行うことが可能な高圧水噴射洗浄方法及び高圧水噴射洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の高圧水噴射洗浄方法は、高圧水をノズルから噴射させて柱状部品を洗浄する高圧水噴射洗浄方法において、前記高圧水を噴射するノズルが装置本体の上方において多数個取り付けられ、柱状部品が装置本体に垂直立設姿勢で多数個収納されるとともに、洗浄水に浸漬する浸漬状態で配列されるが、前記柱状部品の上方先端側は気体中に露出させた状態にして、前記ノズルは柱状部品の上方先端部に向けて洗浄水を噴射させて柱状部品の先端部を洗浄するとともに、前記ノズルは洗浄水の液面上から噴射された洗浄水で浸漬状態の洗浄水に気体を巻き込みながらの噴流を生じさせて柱状部品の浸漬した部分の汚れを除去することを特徴とする。ここで、柱状部品としては、打錠機の臼や杵の他、ピストン等のような柱状部品の洗浄にも適用可能である。
本発明によれば、前記ノズルから噴射される洗浄水が柱状部品の上方先端部に向けて洗浄水を噴射させるので、その衝撃により柱状部品の先端部分の洗浄を行うことができる。柱状部品には、打錠機の杵のように刻印等のある柱状部品があるので、これらの場合には特にその衝撃による洗浄効果は大きい。さらに、本発明によれば、ノズルにより気中噴射された洗浄水で浸漬状態の洗浄水に気体(空気)を巻き込みながらの噴流を生じさせることにより(この気体(空気)を巻き込みながらの噴射は「エアレーションジェット」とも呼ばれる。)、液中で激しい攪拌が生じ、これにより前記柱状部品の浸漬状態の部分の汚れを除去することができる。
【0010】
本発明の高圧水噴射洗浄方法としては、前記高圧水を噴射するノズルが装置本体の上方において回転可能に多数個取り付けられる回転式ノズルとして構成されていることが好ましい。
本発明によれば、上記回転式のノズルは、垂直立設姿勢の柱状部品の上方端側を回転しながら洗浄すると共に、回転しながらの洗浄水でエアレーションジェットを洗浄水中に生じさせ続けることで、前記柱状部品の浸漬状態の部分の汚れを除去することとなる。
【0011】
本発明の高圧水噴射洗浄装置は、高圧水をノズルから噴射させて柱状部品を洗浄する高圧水噴射洗浄装置において、柱状部品を多数個収納する装置本体と、装置本体に上方から蓋をする蓋体を備え、前記高圧水を噴射するノズルは、前記蓋体に回転可能に取り付けられた管に多数個取り付けられ、洗浄水供給手段から供給する洗浄水を管を介して回転しながらノズルから噴射することを特徴とする。
本発明によれば、蓋体を開放して、装置本体に柱状部品を多数個収納して、装置本体の上方から蓋体で蓋をして、回転式ノズルから高圧水が噴射されて、多数個の柱状部品を洗浄することができる。
【0012】
本発明の高圧水噴射洗浄装置としては、前記柱状部品を整列配置するメッシュ状のバスケットとを備え、バスケットを装置本体に収納した状態で洗浄水に浸漬するが、少なくとも前記柱状部品の上方先端側は気体中に露出させた状態にして、前記回転式ノズルより上方から柱状部品の上方先端部に向けて洗浄水を噴射させるとともに、前記回転式ノズルから噴射された洗浄水で浸漬状態の洗浄水に気体を巻き込みながらの噴流を生じさせて前記柱状部品の浸漬した部分の汚れを除去することが好ましい。前記気体としては、窒素ガス等でも良いが、装置の簡略化の点からは空気が好ましい。
本発明によれば、前記回転式ノズルより上方から柱状部品の上方先端部に向けて洗浄水を噴射させるので、その衝撃により刻印等のある柱状部品の先端部分の洗浄に効果的である。しかも、上記噴射(気中噴射)された洗浄水で浸漬状態の洗浄水に気体(空気)を巻き込みながらの噴流を生じさせるエアレーションジェットにより液中で激しい攪拌が生じ、これにより前記柱状部品の浸漬状態の部分の汚れを除去することができる。このエアレーションジェットによれば、前記柱状部品を整列配置するメッシュ状のバスケットであれば、前記柱状部品が密に整列配置されていたとしても、エアレーションジェットによる噴流作用が多数個のどの柱状部品にも及んで、油付着等の汚れを除去することができる。
【0013】
そして、本発明によれば、打錠機の臼や杵と呼ばれるような金型部品の場合では、打錠する部分(刻印部分)を上方に向けておくことにより、つまり前記装置本体又は前記バスケットに、打錠機の臼と杵とがセットで整列配列されるとともに、前記杵は、その上杵と下杵との少なくとも一方端部に錠剤の刻印となる金型とされたものがいずれも上方側に向けた状態で整列配置することにより、打錠する部分に付着した薬の粉を気中噴射により確実に除去することができる。
【0014】
本発明としては、前記多数個のノズルは、隣接して配されるノズルとの噴射の干渉が生じないように配されているか、又は、前記柱状部品に向けて噴射するノズルと、洗浄槽の洗浄水に向けて噴射するノズルとが配されていることが好ましい。
例えば、隣接して配されるノズルとの噴射の干渉が生じないように配される例としては、管に対して平射ノズルを斜めに配したり、千鳥配置したりすることで、互いの干渉による噴射力(衝撃力)を弱めないようにする。また、前記柱状部品に向けて噴射するノズルと、洗浄槽の洗浄水に向けて噴射するノズルとが配されていることにより、各々のノズルからの洗浄の役割に応じた洗浄、すなわち、打錠機の杵と呼ばれる柱状部品の圧刻印部分と、側面部の潤滑剤の脱脂や、潤滑剤に付着した粉分の洗浄という異なる目的の洗浄が一度にできるようになる。
【0015】
本発明としては、前記管の長さは、前記バスケットの長さよりも長くなるように構成され、バスケットの外周側にも前記ノズルが配され、前記バスケットは底部が洗浄槽の底部よりも上方になるように配置されていることが好ましい。
【0016】
本発明によれば、バスケットに収納される柱状部品は勿論、バスケットの外周からの噴射やバスケットの底部から入り込む噴流により、バスケットごと洗浄できるようになる。なお、バスケットごと洗浄されることで、衛生状態の良いバスケットのまま保管用として使用することもできるようになる。
【0017】
本発明としては、前記回転式ノズルは、洗浄水を供給する洗浄水供給手段と連結されると共に、圧縮エアを供給する圧縮エア供給手段とも連結されて、洗浄水と圧縮エアとを切り替えて各々噴射させることが好ましい。
【0018】
本発明によれば、前記管とノズルが圧縮エア供給手段からの圧縮エアの散布にも使用されるので、洗浄後の水切りを早め、ヒータ等の加熱手段による乾燥時間を短縮できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、装置本体に柱状部品を多数個収納して、蓋体に取り付けた回転式ノズルで洗浄したりバリ取りや切りくず等を除去するので、重量物の柱状部品でも大量に高密度に効率よく洗浄できるとともに、装置は処理量に対して小型で安価なものになる。
そして、回転式ノズルより上方から柱状部品の上方先端部に向けて洗浄水を噴射させるとともに、回転式ノズルから噴射された洗浄水で浸漬状態の洗浄水に気体を巻き込みながらの噴流を生じさせることにより(水中での空気を巻き込んだエアレーションジェットの噴流洗浄により)、例えば、杵と呼ばれる先端の刻印部に強固に固着した汚れ(粉体)を除去すると共に、杵の側面の潤滑油の除去や油に付着した粉体の除去を同時にすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施の形態の実施形態の高圧水噴射洗浄装置を示す断面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】上記実施形態の断面図である。
【図4】上記実施形態の洗浄水や圧縮エア等の回路図である。
【図5】上記実施形態の回転体に対するノズルの取り付け状態を説明する図である。
【図6】上記実施形態の回転体に対するノズルの取り付け状態を説明する図である。
【図7】上記実施形態による筒状部材である杵の洗浄例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を実施するための最良の形態を以下に説明する。
【0022】
図1は高圧水噴射洗浄装置の断面図、図2は、図1のA−A線断面図であり、図3は図1の洗浄槽部分の拡大断面図である。
【0023】
本実施の形態は、打錠機に使用される杵と臼をセットで洗浄する高圧水噴射洗浄装置1に本発明を適用したものであり、キヤスター付の装置本体3の上方に蓋体2を配置し、蓋体2に多数のノズル(第1のノズル)N1を配置する管7と、回転体6を介して管7を回転駆動させる駆動源であるモータMを配置している。装置本体3には、洗浄槽10が配置され、洗浄水Wを循環させるポンプ類や各種センサ等が配置されるとともに、これらを制御する制御機構13が配置されている。
【0024】
装置本体3は、キヤスター付の直方体形状を呈し、上方に片開き式の蓋体2が開閉自在に取り付けられ、この蓋体2を開閉することで、柱状部品B1,B2を収納するバスケット11を出し入れする。装置本体3内部には、洗浄槽10が配される空間が形成されている。洗浄槽10の側面部には、バスケット11を係止する係止手段9が上下方向にいくつか設けられ、係止手段9の位置を変更することで、洗浄槽10におけるバスケット11の高さ位置を調整可能になっている。このため、洗浄槽10の外周にのみバスケット11を所定高さに吊したような状態で保持され、これにより、上記エアレーション効果がバスケット1の下方からも及び、柱状部品B1,B2の底部側をバスケット11の底部ごと洗浄する。なお、洗浄槽10の外周にのみバスケット11を所定高さに吊したような状態で保持するレール部材を配置しても良い。また、装置本体の側面側には、洗浄水を装置に供給する戦浄水供給手段等が配された洗浄水供給ユニットU1が備えられている。
洗浄槽10には、洗浄液が所定高さ位置まで入れられ、この洗浄液Wの高さを計測する液面センサS1が配され、洗浄液面は、高液面(杵B1が半没の浸漬状態)、低液面(杵B1が気中状態)を選択可能になっている。液面センサS1は、杵B1の上方先端部が水没しないように水面を検知するセンサであっても良い。また、装置本体3の底部には、洗浄水Wを温めるヒータ12が配され、洗浄槽10の洗浄水Wを加温するとともに杵と臼の乾燥にも用いられる。
【0025】
バスケット11は、筒状部品B1,B2を整列配列させるものであり、上方が開口した直方体形状を呈し、金網で構成されるメッシュ状で構成されている。本実施の形態のバスケット11は、杵B1と臼B2を収納する部分が分離可能なものであり、これを連結させて一つにでき、杵B1の部分は、打錠機の上下一対の杵の各々の先端刻印部分を上方に向けて揃えて配列できるように構成され、臼B2は、複数段に所定間隔を置いて配置できるようになっている。また、本実施の形態のバスケット11は、杵B1を8分割したバスケットと、数段に臼B2を配した二つのバスケットが組み合わされたバスケット11を構成している。これにより、取り扱う個数が少ないときには、そのうちのいくつか(1〜3分割で組み合わせる)のみを洗浄槽10に収納すれば足りることとなり、杵B1とB1との間隔を大きくしたり、エアレーションジェットの噴流が配列状態の密集域にも届き易くなる。また、エアレーションジェットの噴流は、臼B2の筒状内部にも入り込み易いように、杵B1と揃えるように垂直姿勢でバスケット11に収納されている。
杵B1とB1との間隔(或いは杵B1と臼B2との間隔、臼B2とB2との間隔)は、所定の隙間が形成できれば足り、必ずしも十分な間隔をあける必要はない。水中での空気を巻き込んだエアレーションジェットの噴流洗浄により、密に柱状部品B1,B2が配置されていてもその隙間に噴流が入り込むからである。なお、メッシュ状のバスケット11については、エアレーションジェット噴流が入り込める隙間を有するものであれば足りる。
【0026】
蓋体2には、回転可能に取り付けられた管7と、管7と共に回転する回転体6とを備え、管7に第1のノズルN1が多数取り付けられて、回転式ノズルを構成する。蓋体2には、天板部のほか底板部2aを有し、この天板部と底板部2aとの間にモータMが配置されるとともに、回転軸6cが中央に配されて、回転軸6aにノズルN1を回転させる回転体6が取り付けられている。回転体6は、その土台5に固定され、回転体6の回転軸6cは、蓋体2の底板2aを垂直姿勢で貫通して装置本体1内まで及ぶように取り付けられている。回転軸6cの上端と、上記モータMの出力軸の上端とがベルトが掛け回されて、モータMの回転駆動力が回転軸6aに伝達されて回転体6を回転させる。
回転体6には、洗浄水供給手段D1,D2,D3から供給する洗浄水Wが供給されるとともに(図3の符号6bから洗浄水が供給される。)、圧縮エアを供給する圧縮エア供給手段E1とも連結されている(図3の符号6aから圧縮エアが供給される。)。これらはバルブBtを切り替えて、洗浄水Wと圧縮エアとを切り替えて各々噴射させる構造である(図4)。なお、図3の符号8は、操作パネル部分である。このように、本実施の形態の蓋体2には、本装置の駆動機構と洗浄水と圧縮エアの供給手段という主な構造が配されている。
【0027】
回転体6には、所定長さの管7が取り付けられ、この管7に所定間隔をおいてノズルN1が取り付けられている。回転体6は、装置本体3に蓋体2で蓋をした状態の垂直姿勢で取り付けられ、管7は、装置本体3に蓋体2で蓋をした状態の水平姿勢で取り付けられている。
本実施の形態のノズルN1は、洗浄水を幅広の偏平噴射流として噴射する平射ノズルを使用している(図5(b)参照)。平射ノズルである第1のノズルN1は、幅方向にほぼ均一な圧力分布で充分な噴射流量をもつ一定の角度に拡がった偏平な液体流を噴射する。ノズルN1としては、直射ノズル他を使用することができる。多数のセットの杵B1と臼B2に噴射するために、各ノズルからの噴射が互いに干渉し合わないようにして噴射力を維持するためには平射ノズルを所定間隔で配置することが望ましい。本実施の形態の管7には、平射ノズルN1が最大15個取り付け可能に構成されている。
前記管7の長さは、前記バスケット11の長さよりも長く構成され、バスケット11の外周側にも前記第1のノズルN1が配されている。バスケット11の外周側の前記第1のノズルN1aは、バスケット11の外周側面側の洗浄液(液面)に直接噴射させると、バスケット11の周囲からも洗浄される。バスケット11は、洗浄槽10に吊り下げられるように配されるために、上記エアレーション効果がバスケット1の下方からも及び、これによりバスケットごと洗浄可能にしている。
【0028】
管7とノズルN1の配置の関係としては、棒状の管に所定間隔を置いて配置したり(図5(a))、棒状の管7に所定間隔を置いて斜めに配置したり(図5(b))、管7に対して千鳥配置にしたりすることができる。また、管7を回転体6と共に回転させる方向に力を付与するために斜めに装着したり、回転方向においても径の広がりを考慮して、外周に向かって傾斜角度を変更するなどしても良い。一方、管7は、十字状や放射状にする組み合わせることも可能であるが、管7に多数のノズルN1を装着し、これが回転(水平回転)することから、敢えて十字状や放射状にする組み合わせる必要はなく、装置本体の洗浄槽10の直径に対して半径分だけで構成することも可能である(図5(c))。また、図6は、杵B1と臼B2をノズルN1と前記回転体6の同軸の円周上に並べた例を示す。すなわち、回転式のノズルN1に対して洗浄する杵B1と臼B2を、前記回転体6を中心に同心円上に配列させるようにしている。この場合、管7に対する第1のノズルN1の高さを交互に配して、杵B1と臼B2に向けて噴射するノズルN1aと、洗浄槽10の洗浄水Wに向けて噴射するノズルN1bとを配することとなり、各々の洗浄目的に応じたノズルN1の配置構成により、洗浄効率を高くすることが可能である。図6においては、第1のノズルN1aとN1bとが高さ位置を異ならせており、高さ位置の低い第1のノズルN1bからは、貯留される洗浄水Wに対して強力なエアレーションジェットを生じさせる。
【0029】
回転体5の外周部分には、水平方向に向けて第2のノズルN2が二つ配されている。これは洗浄槽の洗浄の目的に配されるものであり、その向きや個数は問わないが、洗浄槽10の上面及び側面を洗浄したり、或いは、第1のノズルN1を洗浄するために第1のノズルN1に向けて配されるものでも良い。
【0030】
図4は、上記実施形態の洗浄水や圧縮エア等の回路図である。洗浄槽10には、精製水D1と、温水D2と、冷水D3とが各々供給バルブBrを介して供給可能になっている。また、洗浄槽10には、洗剤E1と、防錆剤E2とが各々供給ポンプを介して供給可能になっている。したがって、これらを混合することで、洗浄水Wが洗浄槽10に貯蔵される。洗浄槽10からは循環経路を介して洗浄水Wが循環する構造である。循環経路には、図4に示すように、濾過するフィルターや圧力スイッチ等が配されている。また、洗浄水Wは、回転体6とも連結され、管7を介して第1のノズルN1からも噴射されるとともに、第2のノズルN2からも噴射される。また、回転体6には、圧縮エアを供給する圧縮エア供給手段E3とも連結されて、洗浄水と圧縮エアとを切り替えて各々噴射させる構造である。圧縮エアは、図4に示すように、エアフィルター、圧力スイッチ、圧力計、レギュレータ等で構成されるエアーコンビネーションで制御されて、回転体6に送られ、管7を介して第1のノズルN1からも噴射されるとともに、第2のノズルN2からも噴射される。
【0031】
したがって、上記構成の高圧水噴射洗浄装置1を使用して打錠機の杵B1と臼B2と呼ばれるような柱状部品を洗浄する場合には、装置本体3から蓋体2を開放して、装置本体3の洗浄槽10にバスケット11を収納して、洗浄槽10の所定高さ位置に配する。このように配置すると、多数の臼B2はすべて洗浄液Wで浸漬されるが、液面センサS1は、杵B1のほうは上方端部の圧刻印部分は洗浄水Wの液面よりも上方の気中(大気中)に位置するように、これを検出する。そして、図1に示すように、蓋体2を閉め、操作部13のスイッチをオンすると、ノズルN1を有する回転体5が回転して、多数の杵B1の上方端を洗浄液のノズル噴射で洗浄する。
【0032】
回転体6には多数のノズルN1が装着されているので、図7に示すように、多数の杵B1の上方端部(特に圧刻印部分)の各々を洗浄する。この気中噴射によれば、高圧噴射しなくとも、杵B1の上方端部に向けて十分な衝撃力を得ることができる。しかも、杵B1と杵B1の間に位置するノズルN1からは洗浄水が気体を巻き込みながら洗浄水中に噴射されて、浸漬水(洗浄水W)に噴流(エアレーションジェット)を生じさせる。この噴流は、杵B1が密接に配列されている場合でも、杵B1と杵B1の間にノズルから離れた地点でも入り込む。また、メッシュ状のバスケット11の内外にも噴流を生じさせる。噴流により液中で激しい攪拌が生じるので、この攪拌により生じる空気泡が汚れを浮かせて一気に噴流で洗い流す。図7に示すように、柱状部品B1,B2に向けて噴射するノズルN1は、柱状部品B1への気中噴射と洗浄水Wへの水中噴射にも使用され、洗浄槽の洗浄水に向けて噴射するノズルN1は,浄水Wへの水中噴射にのみ使用されるものが配されているので、エアレーションジェットの噴流洗浄効果も十分に発揮される。
洗浄に使用された洗浄液は、循環経路のフィルターで濾過されて再び洗浄水Wとして使用される。また、バスケット11の底面と洗浄槽10の間には一定の隙間が空けてあるので、噴流の反流により柱状部品の下方先端側も洗えるようになる。なお、回転体6の回転は、一方向に限らず、反転させても良い。
【0033】
ここで、杵B1の先端に薬剤が付着しているような場合は、水だけの洗浄でも上記粉体の除去が可能である。杵B1の側面部に付着する潤滑油を除去する場合は、ヒータ12で洗浄水Wを加熱させると共に、洗浄水Wを第1のノズルN1から噴射させることにより、油を除去の効率化が図られる。
また、必要に応じて、洗浄水Wに防錆剤E2を添加して洗浄しても良い。洗浄水Wに防錆剤E2を添加して洗浄すると、杵B1の側面部の洗浄と、杵B1の側面部の防錆剤の付与が同時処理
【0034】
また、乾燥が必要な場合には、洗浄槽10の洗浄水Wを排出バルブP2から排出して、バルブBtを切り替えて、上記多数のノズルN1から多数の杵B1に向けて圧縮エアを噴出し、バスケット11に密に配される杵B1のすべてに対する圧縮エア乾燥を行う。この場合も、杵の上方端側に位置するノズルN1は、その上方端側を乾燥させ、上端側に位置しない(杵B1と杵B1の間に位置する)ノズルN1は、上述したエアレーションによる噴流のように、杵B1と杵B1の隙間に入り込んで杵の側面側を乾燥させる。この圧縮エアによる乾燥が終了すると、回転体6の回転が停止し、ヒータ12により熱風を循環させて完全に乾燥させる。乾燥後は、蓋体2を開放して、杵B1と臼B2の入ったバスケット11を取り出す。
【0035】
また、洗浄槽10を洗浄する場合としては、第2のノズルN2を使用して洗浄する。洗浄槽10の側面部や上面には、油のほか油に錠剤の粉が付着するが、第2のノズルN2を使用して洗浄する。このような洗浄としては、第1のノズルN1を使用しても良い。また、第2のノズルN2の向きを第1のノズルN1に向けて、第1のノズルN1の洗浄に使用しても良い。
【0036】
(実施例1)
本実施の形態の高圧水噴射洗浄装置1を使用して実際に打錠機の杵B1と臼B2とのセットを洗浄した。バスケット11には、臼を72個と、杵用144個、これのバスケット11を、装置1の蓋体2を開け、洗浄槽10に配置させた。洗浄槽10内に小型ポンプにより洗浄液を定量供給して、供給バルブを開いて温水を供給した。すなわち、液温が60℃以下にならないようにヒータ12をONにして洗浄水Wの温度が60℃以下にならないようにした。
洗浄槽10の液面は、液面センサS1による検知で停止させた。そして、循環ポンプP1にて洗浄槽10の洗浄水Wを循環させた。
次に、第1のノズルN1をモータMで回転させながら洗浄水Wを噴射させた。第1のノズルN1からは0.7MPaの高圧水を噴射させた。そして、第1のノズルN1から気中噴射により洗浄液を噴射させた気中洗浄により垂直立設姿勢の杵B1の上方先端の付着物に向けてこれを除去した。第1のノズルN1からは、洗浄水Wに空気を巻き込むエアレーション噴流も生じさせるので、柱状部品である杵B1と臼B2の側面部の浸漬部分Wも洗浄した。
次に、冷水(例えば20℃)を洗浄槽10に供給し、液面センサS1で液面高さを検知した。次に、洗浄用ポンプと同じポンプで循環させてリンス洗浄を行った。定時間リンスの後に排水した。これを数回繰り返した。次に、バルブを切り替えてノズルN1からエアブローを供給した。次に、洗浄槽10の底部のヒータ12もONとし、ファン循環させることとし、熱風乾燥になるようにした。次に、ノズルN1からのエアブローで杵B1と臼B2を冷却した。洗浄後は、蓋体2を開ける杵B1と臼B2の入ったバスケット11を取出した。
このように洗浄された杵B1の先端(上杵と下杵のいずれの先端)の圧刻印部分に薬剤の粉は残っていなかった。また、杵B1と臼B2の側面部分にも薬剤の粉や潤滑油は残っていなかった。
【0037】
以上、上記実施の形態では、打錠機の杵と臼の洗浄を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、ピストン等のような柱状部品の洗浄にも使用することが可能である。また、上記杵B1の先端の圧刻印部分は、洗浄水Wが浸漬しない部分であるから、杵B1の先端の圧刻印部分のみの洗浄にも本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 高圧水噴射洗浄装置、
2 蓋体、
3 装置本体、
4 洗浄槽、
6 回転体、
7 管、
10 洗浄槽、
11 バスケット、
12 ヒータ、
B1,B2 柱状部品、B1 杵、B2 臼、
N1 ノズル(第1のノズル)、
N1a,N1b 高さ位置の異なる第1のノズル、
N2 第2のノズル、
W 洗浄水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧水をノズルから噴射させて柱状部品を洗浄する高圧水噴射洗浄方法において、前記高圧水を噴射するノズルが装置本体の上方において多数個取り付けられ、柱状部品が装置本体に垂直立設姿勢で多数個収納されるとともに、洗浄水に浸漬する浸漬状態で配列されるが、前記柱状部品の上方先端側は気体中に露出させた状態にして、前記ノズルは柱状部品の上方先端部に向けて洗浄水を噴射させて柱状部品の先端部を洗浄するとともに、前記ノズルは洗浄水の液面上から噴射された洗浄水で浸漬状態の洗浄水に気体を巻き込みながらの噴流を生じさせて柱状部品の浸漬した部分の汚れを除去することを特徴とする高圧水噴射洗浄方法。
【請求項2】
前記高圧水を噴射するノズルが装置本体の上方において回転可能に多数個取り付けられる回転式ノズルとして構成されていることを特徴とする請求項1記載の高圧水噴射洗浄方法。
【請求項3】
前記柱状部品が整列配列されるメッシュ状のバスケットとを備え、前記バスケットはその底部が洗浄槽の底部から離して配置されていることを特徴とする請求項1又は2記載の高圧水噴射洗浄方法。
【請求項4】
高圧水をノズルから噴射させて柱状部品を洗浄する高圧水噴射洗浄装置において、柱状部品を多数個収納する装置本体と、装置本体に上方から蓋をする蓋体を備え、前記高圧水を噴射するノズルは、前記蓋体に回転可能に取り付けられた管に多数個取り付けられ、洗浄水供給手段から供給する洗浄水を管を介して回転しながらノズルから噴射することを特徴とする高圧水噴射洗浄装置。
【請求項5】
前記柱状部品を整列配置するメッシュ状のバスケットとを備え、バスケットを装置本体に収納した状態で洗浄水に浸漬するが、少なくとも前記柱状部品の上方先端側は気体中に露出させた状態にして、前記回転式ノズルより上方から柱状部品の上方先端部に向けて洗浄水を噴射させるとともに、前記回転式ノズルから噴射された洗浄水で浸漬状態の洗浄水に気体を巻き込みながらの噴流を生じさせて前記柱状部品の浸漬した部分の汚れを除去することを特徴とする請求項4記載の高圧水噴射洗浄装置。
【請求項6】
前記多数個のノズルは、隣接して配されるノズルとの噴射の干渉が生じないように配されているか、又は、前記柱状部品に向けて噴射するノズルと、洗浄槽の洗浄水に向けて噴射するノズルとが配されていることを特徴とする請求項4又は5記載の高圧水噴射洗浄装置。
【請求項7】
前記管の長さは、前記バスケットの長さよりも長く構成され、バスケットの外周側にも前記ノズルが配され、前記バスケットはその底部が洗浄槽の底部から離して配置されていることを特徴とする請求項6記載の高圧水噴射洗浄装置。
【請求項8】
前記回転式ノズルは、洗浄水を供給する洗浄水供給手段と連結されると共に、圧縮エアを供給する圧縮エア供給手段とも連結されて、洗浄水と圧縮エアとを切り替えて各々噴射させることを特徴とする請求項4又は5記載の高圧水噴射洗浄装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−11286(P2012−11286A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148354(P2010−148354)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000132161)株式会社スギノマシン (144)
【Fターム(参考)】