説明

高導電性樹脂成形品およびその製造方法

【課題】成形性に優れ、低コストで製造可能な高導電性樹脂成形品およびその効率的な製造方法の提供。
【解決手段】樹脂に導電剤を添加した高導電性樹脂組成物からなる樹脂成形品の少なくとも導通させる必要のある接触表面部分に切削部を形成することにより、高導電性部分を有する部分を露出せしめてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高導電性を有する樹脂成形品およびその製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、成形性に優れ、低コストで製造可能な高導電性樹脂成形品およびその効率的な製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、高導電性を必要とする樹脂材料のニーズが大幅に増えてきている。特に、自動車部品用途においては、環境対策の一環として軽量化のために金属から樹脂への代替が進められているが、ここで使用する樹脂材料の一部には、高い導電性が要求されるようになっている。
【0003】
例えば、近年、炭酸ガス排出問題に対応するために、従来石油資源から得ていたエネルギーを、石油資源に依らない方法で供給する方法の一つとしての燃料電池があり、この燃料電池については、車両車用電源や一般家庭用電源への普及を目指しての開発が盛んに進められている。
【0004】
また、自動車分野においても、排出ガス規制などの観点から、自動車の軽量化のために、外装材を樹脂化する検討が進んでおり、従来の金属塗装と同じように、樹脂製外装材に静電塗装あるいは電着塗装を行うに際しては、塗装ムラをなくすために、樹脂成形品の表面に安定した導電性が必要とされている。
【0005】
しかるに、上記した導電性のニーズに対応するために、高導電性を有する樹脂成形品を得る方法としては、炭素繊維や金属繊維あるいは黒鉛などの導電性物質を樹脂に混合して成形する方法が従来から知られているが、この方法では、導電性物質を多量に添加しても成形性が悪くなる一方、導電性物質が絶縁性の樹脂の薄い膜で覆われることに起因して、その添加量に見合うだけの十分な導電性を有する成形品が得られないため、成形性が悪くなると共に製造コストが非常に高くなるという問題があった。
【0006】
また、自動車外装材などの大型成形品の場合には、熱可塑性樹脂に導電性物質を高充填すると成形性が著しく損なわれ、得られる成形品の外観が低下するという問題もあった。
【0007】
例えば、特開平5−70677号公報には、ポリカーボネート、アクリロニトリル/スチレン共重合体およびメタクリル酸メチル/ブタジエン/スチレン共重合体からなる樹脂組成物に対して導電性フィラーを配合した導電性樹脂組成物が提案されているが、この組成物をそのまま成形して得られる樹脂成形品は、導電性が未だ十分ではなく、さらに導電性を高めるために導電性フィラーの配合量を増加すると、導電性の向上に反して成形性および成形品の外観が著しく悪化し、しかもコストアップを招くという問題を包含していた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
【0009】
したがって、本発明の目的は、成形性に優れ、低コストで製造可能な高導電性樹脂成形品およびその効率的な製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、本発明に至った。
【0011】
すなわち、本発明の高導電性樹脂成形品は、樹脂に導電剤を添加した高導電性樹脂組成物からなる樹脂成形品であって、その少なくとも導通させる必要のある接触表面部分に切削部を形成することにより、高導電性部分を有する部分を露出せしめてなることを特徴とする。
【0012】
なお、本発明の高導電性樹脂成形品においては、下記(1)〜(5)が好ましい条件として挙げられ、これらの条件を適用した場合には、さらに優れた効果の発現を期待することができる。
【0013】
(1)前記導電剤が粉状、粒状、板状あるいは鱗片状の導電剤を含むこと。
【0014】
(2)前記切削部が、樹脂成形品の最表面層から深さ方向に5〜500μmの深さを有すること。
【0015】
(3)前記樹脂成形品の接触表面部分のJIS K6911に準じて測定した体積固有抵抗値が1×1010Ωcm以下であること。
【0016】
(4)前記切削部形成後の樹脂成形品の接触表面部分の体積固有抵抗値が、前記切削部形成前の体積固有抵抗値より50%以上低下していること。
【0017】
(5)自動車外装材として用いること。
【0018】
(6)燃料電池用セパレーターとして用いること。
【0019】
また、本発明の高導電性樹脂成形品の製造方法は、樹脂に導電剤を添加した高導電性樹脂組成物を成形した後、得られた樹脂成形品の少なくとも導通させる必要のある接触表面部分を切削することを特徴とし、前記切削を物理的な研磨方法で行うことが好ましい条件である。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の高導電性樹脂成形品およびその製造方法について詳述する。なお、本発明において「重量」とは「質量」を意味する。
【0021】
本発明の高導電性樹脂成形品は、熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂に導電剤が添加された成形用樹脂組成物からなるものである。
【0022】
本発明で用いられる熱可塑性樹脂とは、成形加工できる合成樹脂のことである。
【0023】
本発明で使用することのできる熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、非液晶性半芳香族ポリエステル、非液晶性全芳香族ポリエステルなどの非液晶性ポリエステル、ポリカーボネート、脂肪族ポリアミド、脂肪族−芳香族ポリアミド、全芳香族ポリアミドなどのポリアミド、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンスルフィド、液晶ポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンなどのオレフィン系重合体、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/非共役ジエン共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル共重合体およびエチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、ABS樹脂などのオレフィン系共重合体、ポリエステルポリエーテルエラストマー、ポリエステルポリエステルエラストマーなどのエラストマーから選ばれる1種または2種以上の混合物が挙げられる。
【0024】
上記非液晶性半芳香族ポリエステル樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートおよびポリエチレン−1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレートなどのほか、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリブチレンテレフタレート/デカンジカルボキシレートおよびポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート/イソフタレートなどの共重合ポリエステルなどが挙げられる(“/”は共重合を表す。以下同じ)。
【0025】
また、上記ポリアミドの具体例としては、例えば環状ラクタムの開環重合物、アミノカルボン酸の重縮合物、ジカルボン酸とジアミンとの重縮合物などが挙げられ、具体的にはナイロン6、ナイロン4・6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン6・12、ナイロン11、ナイロン12などの脂肪族ポリアミド、ポリ(メタキシリレンアジパミド)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリノナンメチレンテレフタルアミド、ポリ(テトラメチレンイソフタルアミド)、ポリ(メチルペンタメチレンテレフタルアミド)などの脂肪族−芳香族ポリアミド、およびこれらの共重合体や混合物として例えばナイロン6/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン66/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン6/ナイロン6・6/ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン6/ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン12/ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド)およびポリ(メチルペンタメチレンテレフタルアミド)/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)などを挙げることができる。なお、共重合の形態としてはランダム、ブロックいずれでもよいが、ランダムが好ましい。
【0026】
また、上記の液晶ポリマーとは、異方性溶融相を形成し得る樹脂であり、エステル結合を有するものが好ましい。例えば芳香族オキシカルボニル単位、芳香族ジオキシ単位、芳香族および/または脂肪族ジカルボニル単位、アルキレンジオキシ単位などから選ばれた構造単位からなり、かつ異方性溶融相を形成する液晶性ポリエステル、あるいは、上記構造単位と芳香族イミノカルボニル単位、芳香族ジイミノ単位、芳香族イミノオキシ単位などから選ばれた構造単位からなり、かつ異方性溶融相を形成する液晶性ポリエステルアミドなどが挙げられ、さらに具体的には、p−ヒドロキシ安息香酸および6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位、芳香族ジヒドロキシ化合物および/または脂肪族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸および/またはアジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、テレフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、テレフタル酸およびイソフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸および/またはアジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステルなどの液晶性ポリエステル、および芳香族オキシカルボニル単位、芳香族ジオキシ単位、芳香族および/または脂肪族ジカルボニル単位、アルキレンジオキシ単位などから選ばれた構造単位以外にさらにp−アミノフェノールから生成したp−イミノフェノキシ単位を含有した異方性溶融相を形成するポリエステルアミドなどが挙げられる。
【0027】
上記液晶性ポリエステルおよび液晶性ポリエステルアミドのうち、好ましい構造の具体例としては、下記(I)、(II)、(III) および(IV)の構造単位からなる液晶性ポリエステル、(I)、(III) および(IV)の構造単位からなる液晶性ポリエステルなどが挙げられる。
【0028】
特に好ましいのは(I)、(II)、(III)および(IV)の構造単位からなる液晶性ポリエステルである。
【0029】
【化1】

【0030】
(ただし式中のR1は
【0031】
【化2】

【0032】
から選ばれた1種以上の基を示し、R2は
【0033】
【化3】

【0034】
から選ばれた1種以上の基を示す。ただし式中Xは水素原子または塩素原子を示す。)。
【0035】
上記構造単位(I)はp−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位であり、構造単位(II)は4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルから選ばれた一種以上の芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位を、構造単位(III)はエチレングリコールから生成した構造単位を、構造単位(IV)はテレフタル酸、イソフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸および4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸から選ばれた一種以上の芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位を各々示す。これらのうちR1が
【0036】
【化4】

【0037】
であり、R2が
【0038】
【化5】

【0039】
であるものが特に好ましい。
【0040】
本発明に好ましく使用できる液晶性ポリエステルは、上記したように、構造単位(I)、(III)、(IV)からなる共重合体および上記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)からなる共重合体から選択される1種以上であり、上記構造単位(I)、(II)、(III)および(IV)の共重合量は任意である。しかし、本発明の特性を発揮させるためには次の共重合量であることが好ましい。
【0041】
すなわち、上記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)からなる共重合体の場合は、上記構造単位(I)および(II)の合計は構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して30〜95モル%が好ましく、40〜85モル%がより好ましい。また、構造単位(III)は構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して70〜5モル%が好ましく、60〜15モル%がより好ましい。また、構造単位(I)の(II)に対するモル比[(I)/(II)]は好ましくは75/25〜95/5であり、より好ましくは78/22〜93/7である。また、構造単位(IV)は構造単位(II)および(III)の合計と実質的に等モルであることが好ましい。
【0042】
一方、上記構造単位(II) を含まない場合は流動性の点から上記構造単位(I)は構造単位(I)および(III)の合計に対して40〜90モル%であることが好ましく、60〜88モル%であることが特に好ましく、構造単位(IV)は構造単位(III)と実質的に等モルであることが好ましい。
【0043】
ここで実質的に等モルとは、末端を除くポリマー主鎖を構成するユニットが等モルであるが、末端を構成するユニットとしては必ずしも等モルとは限らないことを意味する。
【0044】
また液晶性ポリエステルアミドとしては、上記構造単位(I)〜(IV)以外にp−アミノフェノールから生成したp−イミノフェノキシ単位を含有した異方性溶融相を形成するポリエステルアミドが好ましい。
【0045】
上記好ましく用いることができる液晶性ポリエステル、液晶性ポリエステルアミドは、上記構造単位(I)〜(IV)を構成する成分以外に3,3’−ジフェニルジカルボン酸、2,2’−ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの脂環式ジカルボン酸、クロルハイドロキノン、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4’−ジヒドロキシビフェニル等の芳香族ジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族、脂環式ジオールおよびm−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ヒドロキシナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸およびp−アミノ安息香酸などを液晶性を損なわない程度の範囲でさらに共重合せしめることができる。
【0046】
本発明において使用する上記液晶性ポリエステルの製造方法は、特に制限がなく、公知のポリエステルの重縮合法に準じて製造できる。例えば、上記液晶性ポリエステルの製造において、次の製造方法が好ましく挙げられる。
(1)p−アセトキシ安息香酸および4,4’−ジアセトキシビフェニル、ジアセトキシベンゼンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物のジアシル化物と2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸から脱酢酸縮重合反応によって液晶性ポリエステルを製造する方法。
(2)p−ヒドロキシ安息香酸および4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物と2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に無水酢酸を反応させて、フェノール性水酸基をアシル化した後、脱酢酸重縮合反応によって液晶性ポリエステルを製造する方法。
(3)p−ヒドロキシ安息香酸のフェニルエステルおよび4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物と2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸のジフェニルエステルから脱フェノール重縮合反応により液晶性ポリエステルを製造する方法。
(4)p−ヒドロキシ安息香酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に所定量のジフェニルカーボネートを反応させて、それぞれジフェニルエステルとした後、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物を加え、脱フェノール重縮合反応により液晶性ポリエステルを製造する方法。
(5)ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルのポリマー、オリゴマーまたはビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートなど芳香族ジカルボン酸のビス(β−ヒドロキシエチル)エステルの存在下で(1)または(2)の方法により液晶性ポリエステルを製造する方法。
【0047】
本発明に使用する液晶性ポリエステルは、フィラーを高充填した場合、例えば液晶性ポリエステルとフィラーの合計に対して、50重量%以上フィラーを配合するような場合には、得られる組成物の流動性低下を抑制するため、溶融粘度は0.5〜80Pa・sが好ましく、特に1〜50Pa・sがより好ましい。また、流動性がより優れた組成物を得ようとする場合には、溶融粘度を40Pa・s以下とすることが好ましい。
【0048】
なお、この溶融粘度は融点(Tm)+10℃の条件で、ずり速度1,000(1/秒)の条件下で高化式フローテスターによって測定した値である。ここで、融点(Tm)とは示差熱量測定において、重合を完了したポリマーを室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1 )の観測後、Tm1 +20℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却した後、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm2 )を指す。
【0049】
上述した熱可塑性樹脂のうち、機械的性質および成形性などの観点から、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートおよびポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン12、ナイロン4・6、ポリノナンメチレンテレフタルアミド、ナイロン6/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン66/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン6/ナイロン6・6/ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン6/ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン12/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン6/ナイロン6・6/ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリ(メチルペンタメチレンテレフタルアミド)/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)などのポリアミド、p−ヒドロキシ安息香酸および6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸および/またはアジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボンから生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリフェニレンオキシドおよびフェノキシ樹脂から選ばれた1種または2種以上の混合物を、好ましく用いることができる。
【0050】
なかでもナイロン6、ポリフェニレンスルフィド、p−ヒドロキシ安息香酸および6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位、テレフタル酸から生成した構造単位の液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、テレフタル酸から生成した構造単位の液晶性ポリエステルが特に好ましく用いることができる。
【0051】
また、本発明で使用することのできる熱硬化性樹脂としては、加熱するとポリマー分子間で架橋構造を形成するものであれば特に制限はないが、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノールなどのフェノール類とホルムアルデヒドとの付加縮合によって生成するフェノール樹脂、アルキド樹脂、キシレン樹脂、フェノール・フルフラール樹脂などのフラン樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、メラミンフェノール樹脂、アニリン樹脂、スルホンアミド樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アセトグアナミン樹脂などのアミノ樹脂、エポキシ系熱硬化性樹脂、不飽和ポリエステル系熱硬化性樹脂などが挙げられ、これらのなかでも、特にフェノール系樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アニリン樹脂、フラン樹脂、アルキド樹脂およびキシレン樹脂を、好ましく使用することができる。
【0052】
本発明で用いる導電剤とは、導電性フィラーおよび/または導電性ポリマーであり、特に限定されるものではない。
【0053】
上記導電性フィラーは、通常樹脂の導電化に用いられる導電性フィラーであれば特に制限はなく、その具体例としては、金属粉、金属フレーク、金属リボン、金属繊維、金属酸化物、導電性物質で被覆された無機フィラー、カーボン粉末、黒鉛、PAN系あるいはピッチ系炭素繊維、カーボンフレーク、鱗片状カーボンおよびカーボンナノチューブなどが挙げられる。
【0054】
ここで、上記金属粉、金属フレークおよび金属リボンの金属種の具体例としては、銀、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、鉄、黄銅、クロムおよび錫などを例示することができる。
【0055】
また、上記金属繊維の金属種の具体例としては、鉄、銅、ステンレス、アルミニウムおよび黄銅などを例示することができる。
【0056】
かかる金属粉、金属フレーク、金属リボンおよび金属繊維は、いずれもチタネート系、アルミ系およびシラン系などの表面処理剤で表面処理を施されていてもよい。
【0057】
上記金属酸化物の具体例としては、SnO2 (アンチモンドープ)、In2 3 (アンチモンドープ)およびZnO(アルミニウムドープ)などを例示することができ、これらはチタネート系、アルミ系およびシラン系などの表面処理剤で表面処理を施されていてもよい。
【0058】
上記導電性物質で被覆された無機フィラーにおける導電性物質の具体例としては、アルミニウム、ニッケル、銀、カーボン、SnO2 (アンチモンドープ)およびIn2 3 (アンチモンドープ)などを例示することができる。また、被覆される無機フィラーとしては、マイカ、ガラスビーズ、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカー、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、ホウ酸アルミニウムウィスカー、酸化亜鉛系ウィスカー、酸化チタン酸系ウィスカーおよび炭化珪素ウィスカーなどを例示することができる。被覆方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、無電解メッキ法および焼き付け法などが挙げられる。そして、これらの導電性物質で被覆された無機フィラーもまた、チタネート系、アルミ系およびシラン系などの表面処理剤で表面処理を施されていてもよい。
【0059】
上記カーボン粉末は、その原料および製造法から、アセチレンブラック、ガスブラック、オイルブラック、ナフタリンブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、チャンネルブラック、ロールブラックおよびディスクブラックなどに分類される。本発明で用いることのできるカーボン粉末は、その原料および製造法については特に限定されないが、なかでもアセチレンブラックおよびファーネスブラックが特に好適に用いられる。また、カーボン粉末としては、その粒子径、表面積、DBP吸油量および灰分などの特性の異なる種々のカーボン粉末が製造されている。本発明で用いることのできるカーボン粉末は、これら特性については特に制限はないが、強度および電気伝導度のバランスの点から、平均粒径が500nm以下、特に5〜100nm、さらには10〜70nmの範囲にあることが好ましい。また、表面積(BET法)が10m2 /g以上、さらには30m2 /g以上の範囲にあることが好ましい。さらに、DBP給油量が50ml/100g以上、特に100ml/100g以上の範囲にあることが好ましい。さらにまた、灰分が0.5%以下、特に0.3%以下の範囲にあることが好ましい。
【0060】
かかるカーボン粉末は、チタネート系、アルミ系およびシラン系などの表面処理剤で表面処理を施されていてもよい。また、樹脂との溶融混練作業性を向上させるために造粒されたものを用いることも可能である。
【0061】
本発明で用いられる導電性ポリマーの具体例としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリ(パラフェニレン)、ポリチオフェンおよびポリフェニレンビニレンなどを例示することができる。
【0062】
上記導電性フィラーおよび/または導電性ポリマーは、2種以上を併用して用いてもよいが、下記で説明する導通表面切削により、導電性向上効果をより一層好適に発揮するためには、高いアスペクト比を有する繊維状フィラーよりも、粉状、粒状、板状、鱗片状の導電剤を含む導電剤であることが好ましい。ここでいう粉状、粒状、板状、鱗片状の導電剤としては、黒鉛およびカーボンブラックが好適に用いられる。
【0063】
本発明で用いられる導電剤と樹脂との配合量は、導電性、成形性および機械的強度などのバランスの点から、樹脂と導電剤の合計量に対し、樹脂1〜99重量%、導電剤99〜1重量%、好ましくは、樹脂5〜98重量%、導電剤95〜2%、さらに好ましくは樹脂10〜97重量%、導電剤3〜90重量%の範囲である。
【0064】
本発明の高導電性樹脂成形品に対してさらに機械強度その他の特性を付与するために、その他の充填材を配合することが可能であり、繊維状、板状、粉末状、粒状などの充填材を使用することができる。具体的には、ガラス繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカーなどの繊維状、ウィスカー状充填材、およびマイカ、タルク、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、ワラステナイト、酸化チタン、酸化亜鉛、ポリリン酸カルシウム、グラファイトなどの粉状、粒状あるいは板状の充填材が挙げられる。上記充填材のなかでも、特にガラス繊維が好ましく使用される。ガラス繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いるものなら特に限定はなく、例えば長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランド、ミルドファイバーなどから選択して用いることができる。また、上記の充填材は2種以上を併用して使用することが可能であり、例えば、機械強度と成形品の低そり性の両立を得る目的として使用される。なお、本発明に使用する上記の充填材は、その表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤およびチタネート系カップリング剤など)や、その他の表面処理剤で処理して用いることもできる。
【0065】
また、使用するガラス繊維は、エチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆あるいは集束されていてもよい。
【0066】
上記の充填材の添加量は、樹脂100重量部に対し、通常0.5〜150重量部、好ましくは5〜100重量部、より好ましくは10〜80重量部の範囲である。
【0067】
本発明における高導電性樹脂成形品には、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分、例えば酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体など)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系およびヒンダードアミン系など)、離型剤および滑剤(モンタン酸およびその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、各種ビスアミド、ビス尿素およびポリエチレンワックスなど)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニンおよび着色用カーボンブラックなど)、染料(ニグロシンなど)、結晶核剤(タルク、シリカ、カオリンおよびクレーなど)、可塑剤(p−オキシ安息香酸オクチルおよびN−ブチルベンゼンスルホンアミドなど)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤およびベタイン系両性帯電防止剤など)、難燃剤(例えば、赤燐、燐酸エステル、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化PPO、臭素化PC、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせなど)、他の重合体などを添加することができる。
【0068】
本発明の高導電性樹脂成形品用の樹脂組成物は通常公知の方法で製造され、例えば、“ユニメルト”タイプのスクリューを備えた単軸押出機、二軸、三軸押出機およびニーダタイプの混練機などを用い、180〜350℃で溶融混練して組成物とするか、あるいは、特に熱硬化性樹脂の場合には、樹脂成分と導電剤を混合させるなどの方法を用いることができる。
【0069】
かくして得られた樹脂組成物は、通常の成形方法(射出成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形およびインジェクションプレス成形など)により、所望の形状の成形品、例えば三次元成形品、シートおよび容器・パイプ状物などに加工することができるが、射出成形あるいはインジェクションプレスおよびプレス成形などの成形方法によることが好ましい。
【0070】
本発明においては、上記の成形方法よって得られた成形品の少なくとも導通させる必要のある接触表面部分に切削部を形成することにより、高導電性部分を有する部分を露出せしめることにより、切削部を形成する前の成形品よりも高度な導電性を得ることが可能となる。
【0071】
例えば、導電剤を含有する熱可塑性樹脂組成物を上記のような方法により成形すると、得られる成形品は樹脂の含有量が多く、かつ低結晶性および樹脂流れ方向に高配向であるスキン層と、導電剤のランダム配向であるコア層とから構成されることになる。本発明においては、かかるスキン層を切削することにより、成形品の厚み方向により効率的な導電パスが得られることを見出したことを特徴としている。しかしながら、使用する樹脂の種類や成形品形状あるいは成形後の熱処理により成形品の表面状態が変化し、スキン層とコア層との境界が必ずしも明確でないことから、形成する切削部の切削深さとしては、導通が必要とされる成形品最表層面から深さ方向に5〜500μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは、10〜300μm、さらに好ましくは30〜200μmの範囲である。最も好ましくは、熱可塑性樹脂の場合には、スキン層部分の切削を行うことである。切削深さが上記の範囲の場合には、添加した導電剤の導通パスが形成しやすく、導電性向上効果が最も高くなる。
【0072】
本発明でいう高導電性とは、JIS K6911法に準じて測定した成形品の接触表面部分の体積固有抵抗値が1010Ωcm以下であることを示し、さらに好ましくは106 Ωcm以下である。成形品表面の導電および制電性を付与する目的の場合には、通常、JIS K6911法に準じて測定した成形品の接触表面部分の体積固有抵抗値が1010Ωcm以下のレベル、なかでも106Ωcm以下のレベルで好ましく用いられる。下限に制限はないが、通常、102cm以上で用いられる。また、燃料電池のセパレーターのように成形品の導通目的で用いられる部材の場合には、特に4端子法で10-2cm以下の領域で好ましく用いられる。
【0073】
本発明の好ましい態様においては、成形品表面を切削処理することにより、切削部形成後の樹脂成形品の接触表面部分の体積固有抵抗値を、前記切削部形成前の接触表面部分の体積固有抵抗値よりも50%以上低下せしめることが可能であり、より好ましい態様においては90%以上低下せしめること、さらに好ましい態様においては99%以上低下せしめることが可能である。
【0074】
本発明の高導電性成形品がその効果を効率よく発揮するためには、導通させる接触表面部分を平坦にすることが好ましい。具体的には、得られる成形品表面の凹凸は最凸部と最凹部の差が50μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましく、さらには20μm以下、最も好ましくは5μm以下であることが好ましい。
【0075】
なお、導通させる接触表面部分とは、導電性が必要とされる成形品の表面部分であり、例えば、静電塗装を行う時のその表面、成形品を重ね合わせた時の導通が必要な部分、あるいは帯電防止性が必要な成形品の表面部分のことをいう。
【0076】
本発明の高導電性成形品の表面の切削方法としては、導通させる成形品表面の全面または部分的に成形品最表面の絶縁樹脂膜を切削することができれば、通常の切削方法を使用することが可能であり、具体的には、サンドブラスト加工、サンディングペーパー(40番〜2000番)による加工、フライス盤による加工、酸・アルカリによるエッジング加工および液体ホーミング加工などを用いることができ、なかでも好ましくは、サンドブラスト加工、サンディングペーパー(40番〜2000番)による加工およびフライス盤による加工などの物理的な研磨方法、特に生産性の点からサンドブラスト加工が好ましい。
【0077】
かくして得られる本発明の高導電性樹脂成形品は、従来より導電剤の配合量が少量であっても高導電性であり、同等の導電レベルを得る上では成形性に優れ、かつ低コストであるという優れた効果を発現するものである。
【0078】
また、本発明の高導電性樹脂成形品の製造方法によれば、通常の切削手段を付加するのみで、上記の優れた特性を有する高導電性樹脂成形品を効率的に製造することができる。
【0079】
本発明の高導電性樹脂成形品は、上記の優れた特性を生かして、パソコン、液晶プロジェクター、モバイル機器、携帯電話などの筐体、フェンダー、スポイラー、ルーフレール、テールゲート、バンパーなどの自動車外装材、燃料電池のセパレーター等のエネルギー関連部材、機械・機構部品などの静電塗装をする成形品、HDD用部品、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、ICトレー、玩具およびパチンコ台部品などの娯楽用途に用いられるICカバー、高導電性が必要とされる用途、自動車部品、内燃機関用途、電動工具ハウジング類などの機械部品をはじめ、発電システム、電気・電子部品、医療機器、食品容器、家庭・事務用品、建材関係部品、家具用部品などの帯電防止あるいは電気伝導性が必要な各種用途に有効であり、特に表面あるいは成形品全体の導電性が必要とされる自動車外装材、燃料電池のセパレーター材に有用である。
【0080】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の骨子は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
[参考例1(液晶性樹脂LCPの製造]
p−ヒドロキシ安息香酸995重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル126重量部、テレフタル酸112重量部、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレ−ト216重量部および無水酢酸960重量部を、撹拌翼と留出管とを備えた反応容器に仕込み、100〜250℃で5時間、250〜320℃で1.5時間反応させた後、320℃、1.5時間で6.5×10-3Paに減圧し、さらに約0.25時間反応させ重縮合を行った結果、芳香族オキシカルボニル単位80モル当量、芳香族ジオキシ単位7.5モル当量、エチレンジオキシ単位12.5モル当量、芳香族ジカルボン酸単位20モル当量からなる融点314℃の液晶性樹脂が得られた。溶融粘度は324℃で12Pa・s(オリフィス0.5mm直径×10mm、ずり速度1,000(1/秒))であった。
[参考例2(PPS樹脂の準備)]
ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS)として、M2588(リニアタイプ、東レ社製)を準備した。
[実施例1〜4、比較例1〜5]
樹脂として参考例1の液晶性樹脂および参考例2のPPS樹脂を、導電剤として炭素繊維(CF(トレカT006):東レ社製)およびグラファイト(KS−10:ロンザジャパン社製)をそれぞれ用い、これらを表1に示した割合でドライブレンドし、PCM−30型2軸押出機(池貝鉄鋼社製)を用いて樹脂温度320℃の温度で溶融混練し、ペレットとした。
【0081】
次いで、得られた各ペレットを、M−III(75t)成形機(住友重機社製)を用い、樹脂温度320℃、金型温度80℃の温度条件、射出速度MAXで、100mm×100mm×厚さ3mmの角形成形品を成形し、この成形品についてJIS K6911法に準じて体積固有抵抗値を測定した(比較例1〜4)。
【0082】
さらに、上記各成形品の両面について、120番および1000番のサンディングペーパーを用いて、それぞれ深さ100μmを切削し、この切削部を形成した成形品についても、JIS K6911法に従い、体積固有抵抗値を測定した(実施例1〜4)。
【0083】
また、体積固有抵抗値の低減率を下式で算出した。
【0084】
抵抗値低下率(%)=(切削前体積固有抵抗値−表面切削後体積固有抵抗値)/切削前体積固有抵抗値×100
これらの結果を表1に示す。
【0085】
【表1】

【0086】
また、成形性の比較として、未処理品と表面切削品の体積固有抵抗値が同等になるようにした樹脂組成物から、それぞれ上記成形機を用いて100mm×100mm×厚さ2mmの角形成形品を成形した時の成形下限圧を測定した。
【0087】
すなわち、比較例5として、成形後表面切削しない状態で実施例3で製造した表面切削品と体積固有抵抗値が同等になるように、組成を表2に記載のとおりとした以外は実施例3と同様に調製した樹脂組成物を、上記成形機を用いて100mm×100mm×厚さ2mmの角形成形品を成形した時の成形下限圧を測定した。
【0088】
さらに、実施例3で調製した樹脂組成物を比較例5と同様に成形した場合の成形下限圧を測定した。
【0089】
結果を表2に示す。
【0090】
【表2】

【0091】
表1および表2の結果から明らかなように、本発明の高導電性樹脂成形品は、表面を切削加工して切削部を形成することにより高導電性を得ることが可能となり、また、同一の導電性を得るために導電剤量を低減することが可能となるため、低比重となり、軽量化可能でかつ成形性良好、低コストの材料を得ることが可能となる。また、導通させる必要のある接触表面部分の最表層部を除去することにより、導電性を大幅に向上することが可能であるため、導電剤の低減が図ることが可能となり熱可塑性樹脂の成形性を生かすことができ、外板材等の大型成形品への展開が可能となる。
【0092】
比較例6
参考例の液晶性樹脂100重量部にピッチ系炭素繊維ミルドファイバー(メルブロンXM60:ペトカ社製)を230重量部の割合でドライブレンドし、PCM30型2軸押出機(池貝鉄鋼社製)のダイヘッド部を外した状態で樹脂温度340℃で溶融混練し、不定形の組成物を得た。次いで油圧式プレスを用いて105mm×105mm×3mm厚の板状成形品を成形し、4端子法を用いて体積固有抵抗を測定した結果、0.05Ωcmであった。
【0093】
実施例5
比較例6の成形品の表面を120番および1000番のサンディングペーパーを用いて成形品表面を深さ100μm切削し、 4端子法を用いて体積固有抵抗値を測定したところ、0.01Ωcmであった。
【0094】
実施例5と比較例6との関係から、導通させる必要のある接触表面部分の最表層部を除去することにより、より有用な燃料電池セパレーターが得られることが明らかである。
【0095】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の高導電性樹脂成形品は、従来よりも導電剤量が少量であっても高導電性を発揮し、成形性に優れ、かつ低コストで製造可能であることから、電気・電子関連機器、精密機械関連機器、事務用機器、自動車・車両関連部品、建材、包装材、家具、日用雑貨などの各種用途に展開可能であり、特に導電性を必要とされる自動車外装材等に適している。
【0096】
また、本発明の高導電性樹脂成形品の製造方法によれば、通常の切削手段を付加するのみで、上記の優れた特性を有する高導電性樹脂成形品を効率的に製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂に導電剤を添加した高導電性樹脂組成物からなる樹脂成形品であって、その少なくとも導通させる必要のある接触表面部分に切削部を形成することにより、高導電性部分を有する部分を露出せしめてなることを特徴とする高導電性樹脂成形品。
【請求項2】
前記導電剤が粉状、粒状、板状あるいは鱗片状の導電剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の高導電性樹脂成形品。
【請求項3】
前記切削部が、樹脂成形品の最表面層から深さ方向に5〜500μmの深さを有することを特徴とする請求項1または2に記載の高導電性樹脂成形品。
【請求項4】
前記樹脂成形品の接触表面部分のJIS K6911に準じて測定した体積固有抵抗値が1×1010Ωcm以下であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の高導電性樹脂成形品。
【請求項5】
前記切削部形成後の樹脂成形品の接触表面部分の体積固有抵抗値が、前記切削部形成前の体積固有抵抗値より50%以上低下していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高導電性樹脂成形品。
【請求項6】
自動車外装材として用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の高導電性樹脂成形品。
【請求項7】
燃料電池用セパレーターとして用いることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の高導電性樹脂成形品。
【請求項8】
樹脂に導電剤を添加した高導電性樹脂組成物を成形した後、得られた樹脂成形品の少なくとも導通させる必要のある接触表面部分を切削することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の高導電性樹脂成形品の製造方法。
【請求項9】
前記切削を物理的な研磨方法で行うことを特徴とする請求項8に記載の高導電性樹脂成形品の製造方法。

【公開番号】特開2006−286202(P2006−286202A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−181004(P2001−181004)
【出願日】平成13年6月15日(2001.6.15)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】