説明

高性能信号発生

【課題】高性能位相検出器は、プログラムで制御できる周波数および位相を有するデジタル基準信号を生成する局部デジタルオシレータを含む。
【解決手段】位相検出器は、デジタル基準信号とサンプリングされた入力信号の間の位相差を蓄積し、位相誤差の指標を作る。位相検出器は、周波数合成器において用いられ、低位相ノイズおよび正確な位相制御で信号を発生することができる利点がある。さらに、この種類のシンセサイザは、低ジッタのクロックおよび波形を生成するATEシステムおよび他の電子システムにおいて、ビルディングブロックのように用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,一般に、信号発生に関する。より詳しくは、高い信号完全性を有する周期信号の合成に関する。
【背景技術】
【0002】
自動試験装置((ATE)および他の高性能電子システムは、正確な周期信号を生成する能力に基づいて動作する。ATEは、コンピュータチップや、テレコミュニケーションチップや、電子組立て部品などの最先端の電子装置の試験用にこれらの信号を必要とする。これらのデバイスおよびアセンブリが、より高度になるにつれて、ATEは、高い試験規格を維持するために等しく進歩しなければならない。
【0003】
図1は、正確な周期信号を合成するために多くのATEシステムによって用いられる従来のアーキテクチャ100を示す。前記アーキテクチャ100は、DDS(デジタル信号合成器)などの周波数発生器110を備える。前記周波数発生器110は、プログラミング値FREFを受け取り、FREFに比例した周波数FINを有するアナログ信号を生成する。そして、周波数FINを有する信号が、1つ以上の位相固定ループ112−118に供給される。個々の位相固定ループ112−118は、FINに比例した周波数FOUTを有する個々の出力信号を発生させる。このように、前記アーキテクチャ100は、種々の周波数を有する多数の信号を生成する方法を提供する。しかし、それらの信号は、すべて、共通の周波数FINから派生したものである。
【0004】
図2は、図1の前記アーキテクチャ100において用いることができるような、従来の位相固定ループ200を示す。前記位相固定ループ200は、周波数FINを有する入力信号を受け取り、周波数FOUTを有する出力信号を生成する。前記位相固定ループ200は、フォワードパスおよびフィードバックパスを有するフィードバック回路である。前記フォワードパスは、位相検出器210、高利得ループフィルタ212、および電圧制御発振器(VCO) 214を備える。一般に、前記フィードバックパスは第1の周波数デバイダ218を備える。前記フィードバックパスのこのデバイダには、前記出力周波数を増加させる効果がある。前記出力周波数を分割するために、第2の周波数デバイダ216を、前記フィードバックループの外に任意に設置できる。
【0005】
前記位相検出器210は2つの入力信号を受け取る:周波数FINの入力信号、および周波数FOUT/Mのフィードバック信号である。公知のように、前記位相検出器210は、その入力信号の位相を比較し、入力信号の間の位相差に比例した出力信号を発生させるための回路を備える。適切に安定化された場合、前記フィードバックループの動作がこの位相差をゼロにする。前記ループフィルタ212は、前記位相検出器210の出力を平滑化し、一般に、安定性を有するループゲインに収れんする。前記VCO214は、FOUTを発生させるために前記ループフィルタの出力を正弦波に変換する。前記第1のデバイダ218(一般にカウンタ)は、前記フィードバック信号を発生させためにFOUTをMで分割する。前記第2のデバイダ216は、それが設置されている場合、FOUTをNで分割する。したがって、前記位相固定ループ200の全体的な閉ループ周波数ゲインはM/Nである。
【0006】
我々は周期信号を生成する前記従来のアーキテクチャ100が、ある欠陥を有することを認めた。例えば、前記位相固定ループ200はノイズを誘発し、合成された出力信号のタイミングジッタとして現れる。前記ノイズはいくつかの発生源に由来する。例えば、前記高利得ループフィルタ212はノイズを誘発する。また、それは、内部でおよび他の発生源から生成されたノイズを増幅する。前記位相固定ループ200の中の位相検出器210、VCO214、第1のデバイダ218、および第2のデバイダ216も大量のノイズを付加する。
【0007】
前記従来のアーキテクチャ100の別の問題となる側面は、前記位相固定ループ200の前記デバイダ218が、前記位相固定ループの開ループ利得を直接的に減じることである。前記デバイダ比Mが大きいことは、一般に、出力周波数全体にわたって良い制御を提供するために望ましいことである。しかしながら、Mの値が大きければ大きいほど、開ループゲインが減少する。開ループゲインが減少するのに従って、前記位相固定ループ200の精度とスピードは低下する。
【0008】
これらの欠陥を取り除くことが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明に従って、位相検出器は、デジタル的に合成された基準信号とサンプリングされた周期信号の間の位相差に対応するデジタル位相誤差を生成する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施例によると、前記位相検出器は、周波数合成器を構築するためのビルディングブロックのように用いられ、前記デジタル的に合成された基準信号は可変であり、さまざまな出力周波数を提供する。
【発明の効果】
【0011】
前記位相検出器を備える周波数合成器は、周期的な波形を生成するために、ATEなどの電子システムにおいて用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】位相固定ループを用いて種々の周波数の信号を生成する従来技術による回路のブロック図である。
【図2】図1で示される回路で用いることができる先行技術による位相固定ループのブロック図である。
【図3】本発明の説明に役立つ実施例に基づく周波数合成器のブロック図である。
【図4】図3で示された周波数合成器において用いることができる、本発明の説明に役立つ実施例に基づくデジタル位相検出器のブロック図である。
【図5】本発明の説明に役立つ別の実施例に基づくデジタル位相検出器のブロック図である。
【図6】図4および図5のデジタル位相検出器において用いることができるダウンコンバータの実施例のブロック図である。
【図7】図4および図5のデジタル位相検出器において用いることができるダウンコンバータの別の実施例のブロック図である。
【図8】デジタル化された入力信号と基準周波数の間の累積位相誤差を生成する、本発明の実施例によるプロセスを示すフローチャートである。
【図9】デジタル化された入力信号と基準周波数の間の累積位相誤差を生成する、本発明の別の実施例によるプロセスを示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施例による自動検査システムの簡略化されたブロック図であり、この中で、図3で示されるような周波数合成器を、信号の完全性を改良するために使うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図3は本発明による周波数合成器300の説明に役立つ実施例を示す。シンセサイザ300は、周波数および位相(FREF、jREF)を示す入力データを受け取る入力を有する。シンセサイザ300は、出力信号FOUTを生成する出力を有する。FOUTの周波数および位相は、前記入力データによって決定される。
【0014】
図3の説明に役立つ実施例において、シンセサイザ300は、フォワードパスおよびフィードバックパスを有するフィードバック回路である。フォワードパスは、デジタル位相検出器312、デジタルループフィルタ314、シグマデルタ変調器316、DAC(DA変換器)318、アナログフィルタ320、およびVCO(電圧制御発振器)322を備える。フィードバックパスはAD変換器(AD変換器)310を備える。
【0015】
デジタル位相検出器312は、入力データ(FREF、jREF)を受け取る第1の入力、およびデジタルフィードバック信号を受け取る第2の入力を有する。望ましくは、デジタル位相検出器312は、周波数FREFおよび位相jREFを有する基準周波数を生成する。デジタル位相検出器は、基準信号とフィードバック信号の間の累積位相差を示すデジタル出力信号を生成するために、基準信号とフィードバック信号を比較する。これは、従来の位相検出器が入力信号の間の位相差に比例する位相誤差を発生させる方法と似ている。
【0016】
望ましくは、デジタルループフィルタ314は、デジタル位相検出器からのデジタル出力信号を増幅する。望ましくは、デジタルループフィルタ314は、また、フィルタリングを行ない、フィードバックループの帯域幅を制限して、ノイズを低下させる。
【0017】
シグマデルタ変調器316は従来タイプのものである。それは、入力信号より少ないビット数を有する出力信号を生成するが、効果的に失われた分解能を取り戻すために、高いサンプリングレートで出力信号に体系的に成分を付加する。
【0018】
DAC318は、シグマデルタ変調器316の出力の信号を離散的なアナログ信号に変換し、フィルタ320は、DAC318の出力を平滑化する。これは、シグマデルタ変調器316によって付加された高周波成分の平均化を含む。望ましくは、フィルタ320はローパスフィルタである。望ましくは、フィルタは、前記フィードバックループの帯域幅よりはるかに高い帯域幅を有する。それによって、フィルタがフィードバックループの安定性に影響しないようになる。フィルタ320の出力は、FOUTを生成するVCO322の入力に供給される。
【0019】
フィードバックループを閉じるために、AD変換器310はFOUTをデジタル化し、デジタル化された信号(すなわち、フィードバック信号)をデジタル位相検出器312の第2の入力に戻す。
【0020】
周波数合成器300は多数の利点を提供する。シンセサイザ300は、周波数デバイダ(デバイダ218などの)、アナログ高利得ループフィルタ(212など)、またはアナログ位相検出器(210など)を必要としないので、これらの発生源からのノイズは回避される。さらに、シンセサイザ300は信号をデジタル方式でDAC318の入力まで管理する。
【0021】
DAC318およびADC310は、シンセサイザ300にノイズを付加する。しかしながら、正確なコンバータの使用を通して、およびフィードバックループのフィルタリング作用によって、これらの要素が付加するノイズの量を低く保つことができる。
【0022】
望ましくは、デジタルループフィルタ314は雑音成分を選択的に減衰させるようにプログラムで制御できる。例えば、AD変換器が500kHzにおいてノイズ刺激(spur)を生成することが知られている場合、デジタルループフィルタ314は、500kHzにおいてゼロ、またはほぼゼロのゲインを有するように設計され、このようにして、500kHzのノイズ刺激(spur)がシンセサイザの出力に現れるのを防ぐことが可能である。デジタルフィルタ、特にFIR(有限インパルス応答)フィルタの設計が柔軟に行えるという理由から、任意の発生源からの任意の数の雑音周波数に対して必要とされる時に、周波数「ゼロ」をデジタルループフィルタ314の伝達関数に付加できる。望ましくは、デジタルループフィルタ314の伝達関数は、どんな対象用途の特定のノイズ特性にも対応するためにフィールドプログラマブルである。
【0023】
望ましくは、シンセサイザ300は、デジタルおよびアナログの構成部品の組み合わせからなるプリント基板アセンブリ上で実行される。好ましい実施例では、デジタル位相検出器312、デジタルループフィルタ314、およびシグマデルタ変調器316は、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)またはASIC(特定用途向け集積回路)などの単一のデジタル構成部品で一緒に提供される。しかしながら、これは要求されてはいない。あるいはまた、別々に、または分散ロジックの形でそれらを提供できる。いくつかの構成部品を、個別のFPGA、ASIC、または離散的なロジックで提供し、他のものを一緒に提供できる。また、デジタル位相検出器312、デジタルループフィルタ314、およびシグマデルタ変調器316を、コンピュータプロセッサで動くソフトウェアで実行できる。
【0024】
望ましくは、ADC310は少なくとも14ビットの分解能および100MSa/sのサンプリングレートを有する。しかしながら、これは要求されてはいない。コンバータの種類(例えば、シグマデルタ、逐次近似など)は、本発明にとって重要ではない。ほんの狭い周波数範囲で動作することが要求されるシンセサイザに対して、ADC310は、帯域通過シグマデルタ変換器として実行される。望ましくは、DAC318は高分解能(例えば、16−24ビット)を有する。繰り返すが、コンバータの種類は、本発明にとって重要ではない。
【0025】
図4は、本発明の実施例のシンセサイザ300に適したデジタル位相検出器を示す。図4で示されるように、デジタル位相検出器の第1の入力はデジタルオシレータ414と結合され、デジタル位相検出器の第2の入力はダウンコンバータ410と結合される。入力データ(FREF、jREF)に基づいて、デジタルオシレータ414は、周波数FOSCおよび位相jOSCを有するデジタル基準信号を合成する。望ましくは、FOSCはFREFと等しく、望ましくは、jOSCはjREFと等しい。
【0026】
望ましくは、デジタル基準信号は直角位相基準信号であり、すなわち、90度の位相差によって分離された2つの正弦波を表す2つの構成部分からなる。慣習上、直角位相基準信号の第1の構成部分はコサインとして示され、第2の構成部分はサインとして示される。したがって、直角位相基準信号の第1の構成部分はCos(2p FOSCt + jOSC)の形を有し、第2の構成部分はSin(2p FOSCt + jOSC)の形を有する。
【0027】
直角位相基準信号はダウンコンバータ510に供給され、そこでフィードバック信号と混ぜられる。シンセサイザ300の構成からデジタル位相検出器を取り出して考えると、より一般には、フィードバック信号は、Cos(2p FIN t + jIN)の形を有するサンプリングされた周期信号と見なすことができる。
【0028】
ダウンコンバータ410は、サンプリングされた周期信号および直角位相基準信号に対応する差の信号を作り出す。望ましくは、差の信号は2つの構成部分を有する直角位相信号であり、一方の構成部分は、ほぼCos[2p (FIN − FOSC)t + jIN − jOSC]の形を有し、もう一方の構成部分は、ほぼSin[2p (FIN − FOSC)t + jIN − jOSC]の形を有する。したがって、直角位相差信号の周波数は、入力周波数とオシレータ周波数の差FIN − FOSCに等しく、直角位相差信号の位相は、入力位相とオシレータ位相の差jIN −jOSCに等しい。
【0029】
簡潔に図6および図7について説明する。図6および図7では、2つの実施例がダウンコンバータ410について示される。図6において、ヒルベルトフィルタ612は、サンプリングされた周期信号の位相を90度シフトさせたバージョンを生成する。遅延ユニット610によって、ヒルベルトフィルタ612における任意の定値伝搬遅延がなされる。遅延ユニット610の出力およびヒルベルトフィルタ612の出力は、一緒になってサンプリングされた周期信号の直角位相バージョンを形成する。復調器614は、サンプリングされた周期信号の直角位相バージョンを直角位相基準信号で復調し、直角位相差信号を生成する。
【0030】
図7は、もっと簡単なアプローチを示す。サンプリングされた周期信号は、それぞれ第1および第2のマルチプライヤ710および712に供給される。第1のマルチプライヤ710は、直角位相基準信号の第1の構成部分にサンプリングされた周期信号を乗じ、第2のマルチプライヤ712は、直角位相基準信号の第2の構成部分にサンプリングされた周期信号を乗じる。個々の乗算は和および差の成分を生成する。第1および第2のデジタルローパスフィルタ714および716は、それぞれ第1および第2のマルチプライヤ710および712の出力をフィルターにかけ、和の成分を除去し、差の成分を通過させる。これらの差の成分は直角位相差信号を形成する。
【0031】
図4に戻る。図4では、直角位相差信号が位相エクストラクタ416に供給される。位相エクストラクタ416は、直角位相差信号によって表された累積位相差を生成する。好ましい実施例では、位相エクストラクタ416はATAN2関数を実行する。公知のように、ATAN2は、2つの入力に関する商の4つの象限の逆タンジェントを生成する。ATAN2への2つの入力が同じ角度q のサインおよびコサインである場合、ATAN2 [sin(q)、cos(q)]は単に角度qである。したがって、直角位相差信号の2つの構成部分のATAN2は、[2p (FIN − FOSC)t + jIN − jOSC]に対する評価を与える。この値は、デジタルオシレータ514の出力とサンプリングされた周期信号の間の累積位相差に対応する。FIN、FOSC、jIN、および jOSCが一定である場合、累積位相差によって表現される値は、時間の経過と共に直線の形となる。
【0032】
シンセサイザ300の構成において、位相エクストラクタ416によって作り出された累積位相差はデジタル位相誤差を提供する。これは、従来技術のアナログ位相検出器210によって生成されるアナログ位相誤差と似ている。隨意に、加算器420によって、位相jADJを、累積位相差に加算しまたは累積位相差から引き算し、シンセサイザ300の他の構成部品に渡される位相誤差を調整することができる。加算器420による位相の加算または引き算は、シンセサイザの出力信号(FOUT)の位相をシフトするという効果を有する。
【0033】
図4のデジタル位相検出器が適切に働くために、デジタルオシレータ414が、精度を有する直角位相基準信号を生成できるべきである。例えば、FOSCは、FREFによって規定された周波数とほぼ等しいはずであり(名目上は、FOSCとFREFは等しい)、jOSCは、jREFによって規定された位相とほぼ等しくなければならない(名目上は、jOSCとjREFは等しい)。この要件はデジタルオシレータ414について重要な要求を行なう。すなわち、急ぎの際、および必要なサンプリングレートにおいて、直角位相基準信号の正確な値を作り出すことを要求する。
【0034】
K/FOSC=L/FS(ここで、KおよびLは両方とも整数である)などのように、FOSCおよびFSが関連している場合、比較的容易にこの要件を達成することができる、この場合、デジタルオシレータ414は直角位相基準信号を生成するために索引テーブルを使うことができる。索引テーブルは、サンプルクロックの連続したサイクルで、直角位相基準信号のあらかじめ保存された値を関連づける。このようにして、索引テーブルに保存された値を通して繰り返し循環することによって、デジタルオシレータは簡単に直角位相基準信号を生成できる。
【0035】
しかしながら、K/FOSCがL/FSと等しくない場合、状況は、より複雑になる。この状況の下では、索引テーブルを通しての1回の繰り返しに対して妥当な値が、他の繰り返しに対しては妥当ではなくなるために、簡単な索引テーブルを用いることができない。異なる解決法が要求されている。1つの解決法は、直角位相基準信号の値を大急ぎで計算するコンピューティングエンジンを有するデジタルオシレータ414を搭載することである。しかしながら、この解決法は複雑である。
【0036】
他の解決法は図5において示される。図5は、デジタル位相検出器312の代替の実施例を示している。図5のダウンコンバータ510、位相エクストラクタ516、および加算器520は、図4のダウンコンバータ410、位相エクストラクタ416、および加算器420とほぼ同じである。しかしながら、図5は、計算ユニット512、アキュムレータ518、および第2の加算器522を備える。
【0037】
計算ユニット512は、入力データ(FREF、jREF)を2つの構成部分、すなわち一次的な構成部分、および二次的な構成部分に分割する。一次的な構成部分(FOSC、jOSC)は、デジタルオシレータ514が、索引テーブルを用いるなどの方法によって容易に生成することができる基準信号(FREF、jREF)の近似値を表す。二次的な構成部分(jRES)は、残留位相値、すなわち、上の近似値における誤差を表す。望ましくは、一次的な構成部分は条件、K/FOSC = L/FS、を満たす。FOSCがFREFに等しくない場合、慣習的に、KおよびLは、FOSCがFREFよりわずかに大きいくなるように選択されることが望ましい。したがって、二次的な構成部分jRESは、FSの個々のサイクルで生じるFOSCとFREFの間の位相差を表す。
【0038】
アキュムレータ518は、FSの個々のサイクルのjRESの値を蓄積する(すなわち、それ自身の成分に付加する)。その結果、アキュムレータ518によって保持される値は、時間の経過と共に直線の形となる。
【0039】
位相エクストラクタ516の出力は、入力データの二次的な構成部分を含まない。加算器522は、位相エクストラクタ516の出力からアキュムレータ518の出力を引き算することによって、この出力を修正する。このようにして、加算器522の出力は、入力データの一1次的構成部分および二次的構成部分の両方を含み、サンプリングされた周期信号と基準値(すなわち、FREF、jREF)の間の位相誤差の正確な表現を作り出す。
【0040】
図4および図5のデジタル位相検出器の一般的な実施について、図3と関連して上で説明した。ATAN2関数およびアキュムレータ518などの特定の要素は、市販の論理定義を有する。これらの定義を購入し、ダウンロードして、最初に少し設計作業を行うだけで、FPGAまたはASICで具体化できる。
【0041】
望ましくは、基準データ(FREF、jREF)は可変である。図4または図5のデジタル位相検出器がシンセサイザにおいて用いられる時、異なった出力周波数を得るために、基準データはプログラマブルであることが望ましい。望ましくは、基準データの新しい値がプログラムされるたびに整数KおよびLの値を更新する。望ましくは、残余のサイズを最小にするために、Kを実用的な範囲の大きさにする。KおよびLを、所望の出力周波数およびサンプリングレートに基づいて人手で計算してもよく、またはソフトウェア、ファームウェア、またはハードウェアで生成してもよい。
【0042】
図4および図5のデジタル位相検出器は多くの利益をもたらす。例えば、位相誤差はサンプルクロックの1サイクルに一度などの高い頻度で更新される。さらに、位相誤差はきわめて高い分解能で提供される。位相残余jRESが、基準周波数の一次的な構成部分から切り離して管理されるので、数値精度の多くのビットをjRESに当てることができる。また、デジタルオシレータ514を実行するのに用いられる索引テーブルに保存されるFOSC (すなわち、Kの値)の繰り返し数を増加させることによって、全体的な位相誤差へのjRESの寄与をきわめて小さくすることができる。
【0043】
図8は、周期的なサンプル信号と振動性のデジタル基準信号の間の累積位相差を測定するための本発明の実施例のプロセスを示す。一例として、このプロセスを行うために、図4のデジタル位相検出器および図5のデジタル位相検出器の両方を搭載できる。
【0044】
図9は、周期的なサンプル信号と振動性のデジタル基準信号の間の累積位相差を測定するための本発明の別の実施例のプロセスを示す。一例として、このプロセスを行うために、図5のデジタル位相検出器を搭載できる。
【0045】
図10は、図3で示された種類の周波数合成器の応用例を示している。自動検査システム1012は、DUT(供試のデバイス)1040をテストするために、ホストコンピュータ1010によって制御される。自動検査システム1012は、アナログ計器1020、デジタイザ1022、および任意波形発生器(AWG)1024などの計器を備える。また、自動検査システム1012は、一般にデジタルピン1026、1028、および1030で示される複数のデジタル電子チャンネルを備えることができる。デジタル電子チャンネルは、デジタル信号を出力し、および検出するために配置される。
【0046】
特に、自動検査システム1012は、複数の周波数合成器1016a−gを備える。これらのシンセサイザは、図3で示されたものと同じ一般型のシンセサイザである。シンセサイザ1016a−g各々は、システムクロック1014からクロック信号FSを受け取る。また、それらは各々、所望出力周波数および位相について規定する各々の入力データ(FREF、jREF)を受け取る。周波数合成器1016a−g各々は、それらのクロックと各々の入力データに対応して、各々の周期的な出力信号を生成する。これらの出力信号は、計器1020、1022、および1024に供給される。それらの計器は、その正常動作のために周波数標準またはクロックを必要とする場合がある。また、前記出力信号を、デジタルピン1026、1028、および1030を制御するクロックとして用いることができる。周波数合成器を、パターン発生器1018への入力として用いることができる。パターン発生器1018は、正確に制御された瞬間に、特定の形式を有するデジタル信号をデジタルピンに出力させ、または/および検出させるために、周波数合成器と協働することができる。
【0047】
本明細書に開示された実施例は、本発明の範囲の中で変形できる。例えば、図4および図5で示されたデジタル位相検出器は、図3で示されたような周波数合成器と共に使用するために示され、説明された。しかしながら、その代わりに、入力信号と基準値の間の位相差を測定するためのどのような応用においても、これらのデジタル位相検出器を用いることができる。
【0048】
説明されたように、図3のシンセサイザはデジタルループフィルタ314を含んでいる。代わりに、フィルタ212と同様のアナログループフィルタを、DAC318の出力に挿入し、デジタルループフィルタ314を省略してもよい。
【0049】
説明されたように、シンセサイザ300はシグマデルタ変調器316を含んでいる。しかしながら、その代わりに、シグマデルタ変調器を省略してもよい。
【0050】
本明細書で用いられる「含む」、「有する」、「包含する」などの言葉、およびこれらの単語の文法的な変形は、封鎖グループの要素を示唆するものではなく、むしろ付加的な要素を含むことができる制限のないグループを示唆するものである。さらに、「結合する」という言葉およびその文法的な変形は、要素間の直接的な接続を要求せず、直接的または間接的な接続を示す。したがって、要素は、一緒に「結合される」要素と要素の間で接続できる。
【0051】
本明細書に開示された実施例は、数学の関数を実行するデジタルエレクトロニクスの使用を含む。数学の持つ柔軟性のために、等価的な方法で、本明細書で達成されたものと実質的に同じ結果を達成する目的で、異なった数学的演算または組み合わせを使用することができる。これらの変形は本発明の範囲の中にある。
【0052】
したがって、本明細書に開示された実施例を制限として理解するべきではない。
【符号の説明】
【0053】
100 アーキテクチャ
110 周波数発生器
112 位相固定ループ
200 位相固定ループ
210 アナログ位相検出器
212 高利得ループフィルタ
216 周波数デバイダ
218 周波数デバイダ
300 周波数合成器
310 変換器
312 デジタル位相検出器
314 デジタルループフィルタ
316 シグマデルタ変調器
320 アナログフィルタ
410 ダウンコンバータ
414 デジタルオシレータ
416 位相エクストラクタ
420 加算器
510 ダウンコンバータ
512 計算ユニット
514 デジタルオシレータ
516 位相エクストラクタ
518 アキュムレータ
520 加算器
522 加算器
610 遅延ユニット
612 ヒルベルトフィルタ
614 復調器
710 マルチプライヤ
712 マルチプライヤ
714 デジタルローパスフィルタ
1010 ホストコンピュータ
1012 自動検査システム
1014 システムクロック
1016a 周波数合成器
1018 パターン発生器
1020 アナログ計器
1022 デジタイザ
1026、1028、1030 デジタルピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチビット離散時間 sampled フィードバック信号を受け取る入力と、前記マルチビット離散時間 sampledフィードバック信号とデジタル振動信号の位相差を示すデジタル位相エラー信号を供給する出力を備えるデジタル位相検出器と;入力と出力を備え、前記入力が前記デジタル位相検出器の前記出力と結合されたループフィルタと;入力と出力を備え、前記入力が前記ループフィルタの前記出力と結合されたVCOと;入力と出力を備え、前記入力が前記VCOの前記出力と結合され、前記出力が、前記マルチビット離散時間 sampledフィードバック信号を供給する前記デジタル位相検出器の前記入力と結合されたADCと;を備えることを特徴とする周期的な波形を生成する回路。
【請求項2】
請求項1に記載の回路であって、前記デジタル位相検出器が、前記デジタル振動信号を受け取る第1の入力と、前記マルチビット離散時間 sampledフィードバック信号を受け取る第2の入力と、出力を有するダウンコンバータと;前記ダウンコンバータの前記出力と結合された入力と前記デジタル位相検出器の前記出力と結合された出力を有する位相エクストラクタを備えることを特徴とする回路。
【請求項3】
請求項2に記載の回路であって、前記デジタル位相検出器が、前記デジタル振動信号を生成するデジタルオシレータをさらに備えることを特徴とする回路。
【請求項4】
請求項3に記載の回路であって、前記デジタルオシレータが、前記デジタル振動信号を異なる周波数で供給するためにプログラマブルであることを特徴とする回路。
【請求項5】
請求項4に記載の回路であって、前記デジタルオシレータが、さらに、前記デジタル振動信号を異なる位相で供給するためにプログラマブルであることを特徴とする回路。
【請求項6】
請求項3に記載の回路であって、前記デジタル位相検出器が、前記位相エクストラクタの前記出力と前記デジタル位相検出器の前記出力の間に直接に結合された、前記デジタル位相エラー信号に対し所望の所定量の調整を行う加算器をさらに備えることを特徴とする回路。
【請求項7】
請求項6に記載の回路であって、前記デジタル位相エラー信号に対する前記調整がプログラマブルであることを特徴とする回路。
【請求項8】
請求項1に記載の回路であって、前記ループフィルタがデジタルループフィルタであることを特徴とする回路。
【請求項9】
請求項8に記載の回路であって、前記回路が、既知の周波数を有するノイズ成分によって影響され、前記ループフィルタが伝達関数を有し、前記ループフィルタの前記伝達関数が前記ノイズ成分の前記既知の周波数で利得を低減したことを特徴とする回路。
【請求項10】
請求項8に記載の回路であって、前記ループフィルタの前記出力と前記VCOの前記入力の間に直接に結合されたDACをさらに備えることを特徴とする回路。
【請求項11】
請求項10に記載の回路であって、ループフィルタと前記DACの間に直接に結合されたシグマデルタ変調器をさらに備えることを特徴とする回路。
【請求項12】
請求項10に記載の回路であって、前記DACと前記VCOの間に直接に結合されたアナログフィルタをさらに備えることを特徴とする回路。
【請求項13】
(A)振動デジタル信号を受け取ること;(B)マルチビット離散時間 sampledフィードバック信号を受け取ること;(C)前記振動デジタル信号と前記マルチビット離散時間 sampledフィードバック信号の間の位相差に対応してデジタル位相エラー信号を生成すること;(D)前記デジタル位相エラーをフィルタリングすること;(E)前記フィルタリングされたデジタル位相エラーを振動アナログ信号へと変換すること;(F)前記振動アナログ信号をサンプリングして、前記マルチビット離散時間 sampledフィードバック信号を発生すること;を含むことを特徴とする周期信号を生成する方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、前記デジタル位相エラー信号を生成する前記ステップが:前記振動デジタル信号と前記マルチビット離散時間 sampledフィードバック信号の間の周波数差に等しい周波数を有し、前記振動デジタル信号と前記マルチビット離散時間 sampledフィードバック信号の間の位相差に等しい位相を有する差信号を生成すること;前記差信号から累積的な位相エラーを抽出すること;を含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、前記累積的な位相エラーに加算するかまたはそこから減算することによって前記デジタル位相エラーを調整することをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項13に記載の方法であって、前記(E)フィルタリングされたデジタル位相エラーを前記振動アナログ信号へと変換するステップが:前記フィルタリングされたデジタル位相エラーをレベルを有する第1のアナログ信号へと変換することと;前記第1のアナログ信号を前記振動アナログ信号へと変換すること;を含み、前記振動アナログ信号が、前記第1のアナログ信号の前記レベルと関連して変化する周波数を有することを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項13に記載の方法であって、前記(D)フィルタリングするステップが前記デジタル位相エラーをデジタル的にフィルタリングすることを含むことを特徴とする回路。
【請求項18】
デジタル振動信号を受け取る第1の入力と、フィードバック信号を受け取る第2の入力と、デジタル差信号を供給する出力を有するダウンコンバータと;入力と出力を備え、前記入力が前記ダウンコンバータの前記出力と結合された位相エクストラクタと;入力と出力を備え、前記入力が前記位相エクストラクタの前記出力と結合されたループフィルタと;入力と出力を備え、前記入力が前記ループフィルタの前記出力と結合されたVCOと;入力と出力を備え、前記入力が前記VCOの前記出力と結合され、前記出力が前記フィードバック信号を供給する前記ダウンコンバータの前記第2の入力と結合されたADCと;を備えることを特徴とする周期的な波形を生成する回路。
【請求項19】
請求項18に記載の回路であって、前記デジタル振動信号を生成するデジタルオシレータをさらに備える回路。
【請求項20】
請求項18に記載の回路であって、前記位相エクストラクタの前記出力と前記ループフィルタの前記入力の間に結合され、所望の位相調整を加算または減算する加算器をさらに備えることを特徴とする回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−161797(P2010−161797A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57324(P2010−57324)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【分割の表示】特願2005−86535(P2005−86535)の分割
【原出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(505108638)テラダイン インク (2)
【Fターム(参考)】