説明

高温被処理物の筒回転式冷却装置

【課題】乾式冷却で冷却稼働の良い小型で、損傷の激しい入口部のメンテナンスを容易に短時間で行え、稼働率が上がる回転型冷却装置を提供する。
【解決手段】粒状ないし塊状の被処理物を高温で投入する筒回転式冷却装置において、筒回転する冷却ドラムに、内部に冷却空気を導入する空気噴出管と、外部に冷却水を散水してドラムを介して内部を冷却する散水装置との他に、内部に蒸発し得る程度に冷却水を噴霧する内部散水管を装備し、冷却ドラムの排ガス出口と冷却物出口とに温度センサーをそれぞれ設け、出口排ガス温度及び/又は出口冷却物温度を検出しそれに基づき内部散水管による噴霧量を調整するコンピュータによるコントロール装置を具備してなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主に産業廃棄物として排出される高温粒子ないし高温塊の冷却装置に関するものであり、特に製鉄所で発生する高温のスラグを効率的に冷却し、且つ、メンテナンスを容易に短時間で行うことができるようにした装置に係わるものである。
【背景技術】
【0002】
一般に製鉄所等で発生する高温のスラグは、硬度および比熱が極めて高い鉱物質、ガラス質の粒や塊が多く含まれている。これを高温のままで放置すると危険を招くおそれがあるため、水槽に入れて冷却或いは野積みして水をかけて直接冷却(湿式冷却)するか、又は筒回転型の冷却装置に通して外部からの散水で間接冷却(乾式冷却)している。ところが、野積みは禁止となり、湿式冷却ではハンドリング性に問題がある。一方、乾式冷却である外部散水型冷却装置では、冷却面積に比例して冷却能力が決まるため装置が大型化し、又、高温のスラグが直接あたる入口部分では損傷頻度が激しいため、メンテナンス等のため稼働率が低下するなどの問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
いずれにしても、野積みが禁止された現在、湿式冷却では問題があり、乾式冷却の必要があるが、外部散水型の筒回転型冷却装置では処理量の割りには装置が大型化し、また、高温のスラグにより入口部の損傷が激しく稼働率が悪いため、設置台数が多くなるという問題があった。そこで、本発明では、乾式冷却で冷却稼働の良い小型で、損傷の激しい入口部のメンテナンスを容易に短時間で行え、稼働率が上がる回転型冷却装置を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を解決するために、この発明は、粒状ないし塊状の被処理物を高温で投入する筒回転式冷却装置において、筒回転する冷却ドラムに、内部に冷却空気を導入する空気噴出管と、外部に冷却水を散水してドラムを介して内部を冷却する散水装置との他に、内部に蒸発し得る程度に冷却水を噴霧する内部散水管を装備し、冷却ドラムの排ガス出口と冷却物出口とに温度センサーをそれぞれ設け、出口排ガス温度及び/又は出口冷却物温度を検出しそれに基づき内部散水管による噴霧量を調整するコンピュータによるコントロール装置を具備してなることを特徴とする高温被処理物の筒回転式冷却装置を提供する。
【0005】
高温被処理物の筒回転式冷却装置を上記のように構成したから、高温被処理物の冷却は、内部の散水及び冷却空気により、外部散水による負担が軽減され、冷却面積も小さくできるため装置を小型化できる。また、内部散水は完全蒸発する量だけ噴霧することにより粒子は乾いた状態で回収できる。しかも、その散水量は、出口での冷却物温度及び排ガス温度によりコントロールできるため、外部散水量を含めた全散水量の逓減が可能となる。なお、ドラム内部への冷却水噴霧量が多すぎると未蒸発の水分が残り、原料の付着等の弊害を起こし、少ないと外部散水量が過剰に多くなり冷却水量が増え節水に反するが、これが合理的に設定されることになる。
【0006】
請求項2の発明により、例えば、冷却ドラムのメンテナンス及び部品の取り替えの際に、その妨げにならないよう振動フィーダを後退させることにより、容易にそして短時間にその作業ができる。しかも、冷却運転を止めることなく供給装置としての振動フィーダを後退させることができるので、運転効率を維持し得る。
【0007】
請求項3の発明により、損傷の激しい冷却ドラム入口部のメンテナンスおよび部品の交換の際、入口フッドがその作業の妨げにならないよう、傾動させて作業ができるため作業は容易となり短時間でできる。
【0008】
請求項4の発明については、冷却ドラムの損傷の激しいのは、入口部分なので、その入口部分の基端部筒を本体と分割構造としてフランジ面接合による取り付けとし、フランジ面での脱着が容易なクランプレバー等を設けたことにより取替え工事は短時間でできる。
【0009】
請求項5の発明により、冷却ドラム外面のフィン部分も伝熱面積として使えるため、外部散水とも相まって装置の小型化ができる。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、この発明によれば、高温の粒状ないし塊状の被処理物を乾式冷却により効率的に行い得ることはもちろん、冷却稼働の良い小型化が可能であり、また、散水量の節減に適する等の優れた効果がある。
【0011】
加えて、冷却ドラムのメンテナンス及び部品の取り替えの等の際の作業が振動フィーダの後退や入口フッドの傾動により容易となり(請求項2,請求項3)、さらに、損傷の激しい入口部分を分割可能として、その部分の取り替えによってもメンテナンスが合理的に容易となり(請求項4)、また、フィンにより一層小型化が可能となる(請求項5)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1および図2は、溶鉱炉から高温で排出されるスラグを投入して処理する高温被処理物の筒回転式冷却装置として実施した例を示したものであるが、他の高温の粒状ないし塊状物を処理する場合も同様に実施できる。被処理物は、比熱および硬度が極めて高い鉱物質、ガラス質の大小様々な粒や塊が混在している関係で、仮に自然に放置する冷却では時間がかかり、また、冷却装置を使うとそれを損傷しやすい材質であるので、この点を考慮して以下の如く開発した。
【0014】
高温被処理物の筒回転式冷却装置は、回転可能な支持ローラ1の上に環状のタイヤ2を外周に配置した鋼板製円筒横型の冷却ドラム3が載置され(図1,図2)、駆動モータ4によりチェーン、スプロケットを介してゆっくり回転するよう設定される。また、原料入口側には傾動可能な入口フッド5が、原料出口側には出口フッド6が配置され、被処理物の受入ホッパ7と入口フッド5との間には振動フィーダ8が介在し、振動フィーダ8が台車8aに搭載され、前後移動可能となっている。また、冷却ドラム3の外周にはフィン16が配列されている(図4)。
【0015】
冷却ドラム3の中心には空気噴出管11が配置され、押込ファン10により圧送された空気が被処理物としてのスラグSへ向けて下向きに噴出するように、空気噴出管11には多数のノズル15,15,・・が配設される。また、内部において空気噴出管11の下には、左右両端から内部散水管9,9が導入され、両内部散水管9,9の下にはスラグSに放水するノズル17,17,・・が配設される。さらに、冷却ドラム3の上に冷却水の散水装置12が設けられ、その水道管の下に散水ノズル19,19,・・が配設される。したがって、散水は冷却ドラム3およびフィン16を冷却する。
【0016】
冷却ドラム3は、被処理物を受け入れる側の基端部が端に狭まる円錐台形であって、入口フッド5はその端部に嵌装されるが、修理等のメンテナンス時に後退できるように、支点21によって傾動可能に支持され、この入口フッド5に振動フィーダ8が着脱可能に突っ込んでいる。支点21は、入口フッド5の下方でその後退側寄りに設けられ、支点21に枢着されるアーム23の先端に入口フッド5が取り付けられている。
【0017】
また、出口フッド6は、冷却ドラム3が開口する先端に嵌装され、下端に被処理物の排出口25を、上端に排ガスの(排気管が接続される)出口27が設けられ、その排出口25と出口27とにそれぞれ温度センサー29,31が具備され、温度センサー29,31の温度検出を基に、コンヒュータ制御により空気噴出管11からの空気噴出量と、内部散水管9、散水装置12の散水量が相互調整されるようコントロール装置(図示省略)が構成される。こうして乾式冷却の効率性、装置の小型化、節水が確保される。なお、基端部筒3b等における不意の場合の損傷には急速冷却により即修理で対応できる。
【0018】
高温被冷却物の筒回転式冷却装置は、上記の如くであって、溶鉱炉から排出された800°C〜1200°Cの高温被処理物の被処理物は、受入ホッパ7に受け入れられ、移動可能な振動フィーダ8により定量的に冷却ドラム3内に供給される。供給された高温被処理物は、冷却ドラム3の回転によりゆっくり出口フッド6側に進行し、その間に内部散水管9から噴霧される冷却水と押込ファン10により空気噴出管11から噴出される冷却空気と冷却ドラム3外部からの散水装置12による冷却水により複合で冷やされ、十分に冷えて排出される。この際、内部散水量は全て蒸発する程度の量としているため、被処理物は乾いた状態で排出され、冷却に水の蒸発潜熱を利用しているため、冷却水全体の量は外部散水のみの冷却装置に較べてかなり逓減できる。また、出口の被処理物温度、排ガス温度をコントロールすることにより、最適な冷却水量の管理が可能となる。
【0019】
扱う原料が800〜1200°Cと非常に高温の被処理物であり、製鉄所等の高温スラグのような磨耗性の強い高温の被処理物である場合、冷却ドラム3入口部分の損傷はかなりの頻度でおこるため、稼働率を考えるとメンテナンスのしやすさを考慮しておく必要がある。本実施例では、図3に示すように冷却ドラム3入口部分は、ドラム本体3aとは別の基端部筒3bとして交換部品と考え、ドラム本体と切り離してフランジ33,34面で受ける結合する脱着装置14が構成される(図4)。
【0020】
さらに、基端部筒3bの交換工事を容易にして短時間に済ませるため供給装置である振動フィーダ8を移動式になしたもので、交換時には振動フィーダ8を後退させ(図3)、入口フッド5は邪魔にならないよいう傾動により後退させて、交換工事がなされる。
【0021】
ドラム本体3aに基端部筒3bを取り付ける脱着装置14は、冷却ドラム3の本体3aのフランジ33に位置決めピン13を突設し、相手のフランジ34にその受入孔13aを設けてあって(図4の(ロ))、クランプレバー35を横に回動操作すると、両フランジ33,34を締めつけ得る構造にしてある。37と38は、ドラム本体3aと基端部筒3bと一体部材であって、クランプレバー35の操作で揺動される基端リンク39がドラム本体3aの一体部材37に軸支され、それにピン連結されるリンク先端リンク40が基端部筒3bの一体部材38にピン41で連結される。なお、このクランプ脱着装置14はこれに限らなく様々な構造となる。
【0022】
以上のことにより、高温粒状ないし塊状の被処理物の筒回転式冷却装置として、コンパクトな乾式冷却装置であって、且つ、冷却水量が逓減でき、メンテナンス性を考慮した装置を供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の一実施形態を模式的に示す高温塊状ないし粒状の筒回転式冷却装置の側面図である。
【図2】同筒回転式冷却装置を稼働状態において断面して示す側面図である。
【図3】筒回転式冷却装置のうちの損傷が激しい冷却ドラム基端部を交換要領で示す一実施形態の側面図である。
【図4】冷却ドラムのドラム本体と、基端部筒との脱着装置の一実施形態を示し、(イ)図は脱着操作部であり、(ロ)図は脱着ピン止め構造である。
【符号の説明】
【0024】
1 支持ローラ
2 タイヤ
3 冷却ドラム
3a ドラム本体
3b 基端部筒
4 駆動モータ
5 入口フッド
6 出口フッド
7 受入ホッパ
8 振動フィーダ
9 内部散水管
11 空気噴出管
12 散水装置
14 脱着装置
16 フィン
21 支点
25 排出口
27 出口
29,31 温度センサー
35 クランプレバー
S 被処理物としてのスラグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状ないし塊状の被処理物を高温で投入する筒回転式冷却装置において、筒回転する冷却ドラムに、内部に冷却空気を導入する空気噴出管と、外部に冷却水を散水してドラムを介して内部を冷却する散水装置との他に、内部に蒸発し得る程度に冷却水を噴霧する内部散水管を装備し、冷却ドラムの排ガス出口と冷却物出口とに温度センサーをそれぞれ設け、出口排ガス温度及び/又は出口冷却物温度を検出しそれに基づき内部散水管による噴霧量を調整するコンピュータによるコントロール装置を具備してなることを特徴とする高温被処理物の筒回転式冷却装置。
【請求項2】
冷却ドラムの基端に嵌装される入口フッドに突っ込まれる振動フィーダを、被処理物の供給装置として設けるとともに、後退により入口フッドから脱出し得るよう前後移動可能に構成したことを特徴とする請求項1記載の高温被処理物の筒回転式冷却装置。
【請求項3】
冷却ドラムの基端に嵌装される入口フッドを支持する支点を下方に設け、支点を中心に入口フッドを後退方向へ傾動することにより冷却ドラムから離脱できるように構成したことを特徴とする請求項1又は2記載の高温被処理物の筒回転式冷却装置。
【請求項4】
冷却ドラムは、被処理物が投入される基端部を交換可能に分割して組み立てられ、その組立てのために基端部筒とドラム本体とに相互に面接合するフランジを設けるとともに、両フランジの締め付け及びそのロック解除をクランクレバーによりなす脱着装置を具備してなることを特徴とする請求項1,2又は3記載の高温被処理物の筒回転式冷却装置。
【請求項5】
冷却ドラムの外面にフィンを突設してあることを特徴とする請求項1,2,3又は4記載の高温被処理物の筒回転式冷却装置。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−25492(P2010−25492A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−189434(P2008−189434)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(391063455)新日本海重工業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】