説明

高温高圧石焼肉料理ホルホグ(HORHOG)の新しい調理法

【課題】 古代モンゴルから伝われてきた石焼焼肉料理ホルホグ(HORHOG)は野外焚き火を使って調理する料理で、家庭やレストランで調理することは不可能であった。本発明は家庭やレストランで一般的に使われているガスコンロを使って短時間、且つ安全にホルホグ料理を調理する新しい方法を提供する。
【解決の手段】 本発明は、ガスコンロを使って短時間で石を均一に焼く「焼石筒」開発し、一般家庭やレストランで焼石筒と圧力鍋を併用して焼肉料理ホルホグ(HORHOG)を調理する最適条件を見出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
食肉は人類の食生活において動物蛋白質として欠かすことのできない重要な食材である。食肉の調理法として国、地域によって様々な方法があり、煮る、炒める、蒸す、焼くなど加熱調理法や干す、漬けるなど非加熱調理法がある。上述各種調理法がまた時代に変化に伴い進化しつつある。
【0002】
古代モンゴルでは遊牧文化や戦争多発など生活事情に基づき、移動生活や行軍する特徴生活環境から生まれた肉料理ホルホグ(HORHOG)は、焼肉の香ばしい味と高圧で生じる高温により蒸した柔らかい食感を特徴とした宮廷料理である。
【0003】
石で肉を焼く場合、石の高い比熱と低い熱伝導性により肉に接した石の表面温度は急激に下がるため肉の高温脱水反応による焦げがほとんど起こらない。また、石の高い比熱により石内部に蓄えている大量の熱エネルギーはゆっくりと石の表面に伝われ、肉を焼き続ける。鍋や鉄板など金属調理器具と異なり、石焼は焦げを起こさないで熱を肉の内部までじっくり送る。まるで羊肉を主食とするモンゴル遊牧民族の知恵の調理法である。
【0004】
更に、肉は加熱する過程で筋のような繊維組織が大きく収縮し、体積が生肉の半分になるまで縮まる。肉はこのような加熱による収縮過程で肉汁を組織の外へ搾り出し美味しいさを失い、肉質も硬くなる。但し、骨付き肉でホルホグを作る場合、肉は骨格にしっかり付いているので、加熱しても肉の収縮が起こらず、更に高圧高温で蒸し焼きすると肉汁は骨付き肉の組織内に閉じ込めたまま塾するから柔らかく美味しい肉ができる。
【0005】
本研究は、古代モンゴルの野外で調理する行宮料理ホルホグ(HORHOG)を一般家庭の台ところやレストランで再現できるようにした新しい調理法である。
【背景技術】
【0006】
ホルホグを作る調理法は、広い草原を移動しながら家畜を放牧する遊牧民族の知恵の固まりで、何もない野外で羊肉を比較的短時間で美味しく調理する方法である。しかも肉の味と栄養分を逃さず調理する方法でもある。ホルホグの従来の調理法は大きく分けて2種類ある。
【0007】
調理法1、先ず羊や山羊のような小畜の皮をまる剥きにし、内蔵を除く、骨の関節部位から羊や山羊を解体する。この場合骨を折ったり、切断したりはいけない。肉の厚い部分は熱が伝わり易いなるような大きさに切り焼く用に準備する。一方、川に流されてできた丸い石を焚き火に赤くなるまで加熱する。そしてまる剥きした皮の毛を外側にして袋にし、上述焼く用に切った肉や加熱した石と適量の食塩や他の調味料(野生の葱や韮類とハーブ類)を交互に素早く皮袋入れる。最後に極少量の水(羊一頭に対し500ml程度)を加える。皮袋の口に数本木の枝を刺し、細く切った皮で口を結ぶ。このように皮詰めした肉を炭火の上に転がしながら外から焼く。この方法で肉を焼きポイントは皮袋の口を完全に閉めないこと。完全に閉めると加熱により皮袋の内圧が上昇し破裂してしまう。逆に皮袋の口が大きく開いていると充分な内圧を得られないため温度が上がらず肉が硬くなる。皮袋の口に挟んだ数本木の枝を動かす方法により内圧を調整しながら最後まで焼く作業は豊富な経験と高等な技術を要する。また、皮袋の口から噴出す肉汁や蒸気に火傷する危険がある。
【0008】
調理法2、皮袋の替わりにアルミニウム製ミルクタンクを用い、更に高い内部圧を生じさせ、より一層高い温度で肉を短時間で蒸し上げる方法である。この場合もアルミ缶の口の閉まり具合がポイントになり、アルミ缶の蓋に布を挟んで蒸気の出口を調整する。この作業も経験を積んだ熟練者が必要とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ホルホグは今まで野外にしか調理できない調理でした。先ず野外で焚き火を熾して、その中に石を上手に焼かなければならない。初心者の場合石が焚き火の灰に埋められ、いくら焼いても熱くならないことがある。経験者で上手に石を焼く場合にしても、手間が掛かる作業で、30〜50分と言う長い時間を要する。
【0010】
ミルクタンクのようなタンクを使ってホルホグを調理する場合のポイントはタンクの口閉め加減である。閉め加減が甘いと充分な内圧が生じせず、肉が硬くなる。逆にタンクの口を閉めすぎると、加熱により内圧が上昇し爆発を起こす危険性がある。
【0011】
ホルホグを調理する条件として石の焼け加減、タンクの閉め加減ができ上がった肉の味や硬さを大きく影響する。人によって、日によって毎回一定な条件を保つことはほぼ不可能であるから、その人、その日の条件によってでき上がったホルホグの味が異なるという再現性の問題がある。よって、ホルホグはレストランでいつも一定な調理条件を再現し、いつも最も美味しいホルホグをお客に提供することは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
古代モンゴルの行宮料理ホルホグの独特な風味と特徴を留保し、しかもレストランで簡単に再現できるよう本研究は次の調理手段を開発した。
【0013】
家庭やレストランで一般的に使われているガスコンロを用いて石を短時間で均一に焼く道具「焼石筒」を開発した(図1参照)。また、羊の皮やミルクタンクのような容器に比べ圧力の制御が容易にできる圧力鍋を採用した。圧力鍋の採用により、従来法の最適調理条件のコントロールができない問題を解決した。マニュアル通に作業すれば誰でも容易に最高のホルホグを再現性よく調理することに成功した。また、従来法の容器の内圧上昇による爆発や高圧蒸気による火傷等諸安全性に関する問題を改善した。
【0014】
また、従来法ではホルホグを調理するに最短1時間掛かる。お客の注文を受けてから作り立てのホルホグができあがりまでの所用時間が長いため、レストランでの実用性がなかった。本発明の開発した焼石筒と市販の圧力鍋を用いる本法では調理時間を20分以内に短縮し、レストランでホルホグの注文受けてから調理することを可能にした。
【発明の効果】
【0015】
古代モンゴルの石焼肉料理ホルホグの独特な風味と特徴を留保し、しかもレストランで簡単に再現できるよう、一般的に使われているガスコンロを用いて石を短時間で均一に焼く道具−「焼石筒」を開発した(図1参照)。焼石筒の開発により野外で火を焚く必要がなくなり、石を焼く作業がより効率よくなった。
【0016】
また、羊の皮やミルクタンクのような容器の替わりに圧力鍋を用いることにより圧力の制御がより簡単、より精確になった。
【0017】
また、圧力鍋の採用によりホルホグを作る最適調理条件が得られた。マニュアル通に作業すれば誰でも容易に最高のホルホグを再現性よく調理することに成功した。
【0018】
また、従来法の調理中容器の内圧上昇による爆発や高圧蒸気による火傷等諸安全性問題を改善し、作業安全性を実現した。
【0019】
また、従来法の調理時間を1時間から20分に短縮したため、レストランで注文を受けてから調理することが可能になり、調理法の実用性が高まった。
【0020】
本研究の新しい調理法で作ったホルホグは焼肉の香ばしい味と香りを有し、肉汁を豊富に含んだ柔らかい食感を有する肉料理である。
【発明を実施するための最良の状態】

【実施例1】
【0021】
材料:適当な大きさ(150〜200g/1個)に切った骨付き羊肉800g(或いは牛、豚、鳥肉)、皮付きじゃがー芋2個、人参1本(2等分に切る)、玉葱1/4(細切り)水100ml、食塩小匙一つ分、クミン小匙一つ分。
【0022】
石6個(サイズは大きめの卵程度)をきれいに洗い、焼石筒に入れ、ガスコンロにより中火で焼く(10分程度)。
【0023】
内容量5Lの圧力鍋の底に肉の塊を一層敷き、その上によく加熱した石を1箇所に固まらないよう均等に入れる。更に残りの肉の塊と用意したじゃがー芋、人参や玉葱で石を覆うように素早く入れる。最後に上から食塩、クミンを含んだ100mlの水を掛けて圧力鍋の蓋を閉める。圧力鍋をガスコンロ上弱火で加熱する。圧力鍋の圧力制御弁作動開始から10分間弱火で過熱し仕上げる。
【0024】
お肉や野菜類をお皿に並べ、肉汁をお碗に入れる。お肉や野菜を肉汁に付けて召し上げるとより美味しくなる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
レストランで焼肉料理としてお客さんに届けることが可能。東京都豊島区池袋にある「モンゴル行宮料理ノタガ」で本発明の方法によりホルホグを調理販売してから2年間人気No.1の絶品メニューになっている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】 焼石筒の構造を示す概略図である。
【図2】 ガスコンロ上石を加熱する方法を示す概略図である。
【図3】 圧力鍋を用いホルホグの調理する方法を示す概略図である。
【符号の説明】
【0027】
:焼石筒の高さ(h=25cm)
:筒の底から金網までの距離(h=10cm)
φ:筒上口内径(φ=15cm)
φ:筒下口内径(φ=22cm)
1:焼き石用円錐形筒(SUS316L)
2:金網(SUS316L)
3:焔
4:石
5:ガスコンロ
6:圧力鍋の釜
7:取っ手
8:安全弁1
9:圧力鍋の蓋
10:圧力制御弁
11:安全弁2
12:ゴムパッキン
13:お肉
14:焼いた石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
家庭及びレストランで加熱した石と食肉を圧力鍋に投入し、食肉を石で焼きながら高温高圧で蒸し上げる新しい調理法
【請求項2】
一般的に使われているガスコンロを用いて石を短時間で均一に加熱できる道具「焼石筒」の提供。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−49974(P2007−49974A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−262898(P2005−262898)
【出願日】平成17年8月16日(2005.8.16)
【出願人】(505341486)
【Fターム(参考)】