説明

高線形出力のレーザシステム

傾斜歪像ファイバレンズ(28)を利用することにより光ファイバ(14)に光学的に結合された半導体利得素子(12)を有し、波長選択式前面反射器(26)を含む、レーザ装置。そのレーザ装置は、出力特性が向上しており、例えば、増幅部が高利得量を生成する際でも、レーザ発光が高い線形性で出力される。そのようなレーザ源は、ファイバ増幅器又は周波数2倍システム用の励起レーザ等の、様々な用途にも利用することができる。半導体利得素子(12)は、内部共振器端面(18)を備えた曲がった導波路と実質的に平行な傾斜ファイバレンズ先端(30)とを有し、外部共振器LDの波長及び強度の不安定性を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2010年1月8日に出願され、本明細書に参照としてそのまま組み込まれている、米国暫定特許出願第61/293,236号の便宜を主張する。
【0002】
本発明は、一般に、レーザ、特に、光エレクトロニクスに通常利用される種類の半導体レーザ装置の安定性に関する。
【背景技術】
【0003】
半導体レーザダイオードは、特に、そのようなレーザダイオードを利用して、光手段により光信号を即座に増幅することができるので、光通信技術で重要な部品になっている。これにより、全光ファイバ通信システムの設計が可能になり、伝送されるべき信号の複雑な変換が回避される。その信号変換の回避により、そのような通信システム内の速度並びに信頼性が向上する。
【0004】
1つの種類の光ファイバ通信システムでは、レーザを利用して、エルビウム添加ファイバ増幅器、所謂、レーザ分野の当業者に周知の様々な特許及び公報に記載されているEDFAを励起する。技術的にある程度重要な1つの実例は、波長が980nmのエルビウム吸収線に整合し、それにより増幅が低雑音で得られる、出力が100mW以上のレーザである。
【0005】
図1には、レーザ装置1の従来の設計が示されている。ここでは、半導体レーザ11は、導波路20、後端面16、及び前端面18を含む。半導体レーザ11は、光ファイバ14と結合され、部分的に反射する波長選択式反射器26を通じて、光を光増幅器(図示されず)に効率的に誘導する。光ファイバ14は、ファイバレンズ22とそのレンズ先端24とを含む。導波路20からの光は、ファイバレンズ22上にレンズ先端24で入射される。光ファイバ14は、僅かな割合の帰還を作り出し、レーザ装置1を、波長選択式反射器26の前述の波長に固定する。そのような設計の記述は、例えば、米国特許第7,099,361号、米国特許出願公報第2008/0123703号に見出され得る。この設計により、ファイバブラッグ回折格子(FBG)として構成される波長選択式反射器26で安定させることにより、温度による波長移動の感受性が低くなり、通常、半導体レーザ11(DBR又はDFB)内の回折格子では達成することができない、約7pm/°Kになるような、動作温度安定素子を必要としないレーザが提供される。
【0006】
レーザ前端面18の残留反射とファイバレンズ22の残留反射との間の強め合う干渉及び弱め合う干渉の影響は、以前、図1に示されるレーザ装置1について調査されたが、「高出力励起用レーザのスペクトル能への近位端残留反射の影響」(IEEE量子エレクトロニクス会誌、2004年4月、第40巻、第4号、354〜363頁)では、波長選択式反射器26がなかった。その研究で明らかにされたのは、ARコーティングが1%未満である標準レンズとレーザ端面の両方についても、それらの組み合わせ反射からの有効レーザ前面反射率が、異なる動作条件で変化する、つまり、温度とレーザ電流で変化することである。その結果、レーザスペクトルの非連続性が観測され得る。共振器長の短い、即ち、往復利得が小さく干渉性が少ない、その研究時点での従来技術のレーザでは、FBGによる波長安定性が付与された場合、これらの効果は無視できるものであった。
【0007】
しかし、本発明者によりわかっていることは、共振器がより長い(例えば、3mmを超える)半導体レーザ11を有し、利得量を高くする、図1に示されるような従来のレーザ装置1は、光経路内のいずれかの反射器の残留反射及び/又は帰還からの影響、並びに、多重反射器間に形成される追加のファブリ・ペロー(FP)共振器の影響をより受けやすいことである。図6Aに示されるように、そのような影響は、光出力対電流特性に於いて、望まれないリップル量を高くし得る。大きな影響があり得るのは、利得量を高くする、AR被膜レンズ先端24又はAR被膜前端面18から半導体レーザ11内への少量の後方反射である。レーザ出力は、光結合の僅かな変化にも極めて鋭敏になり得る。
【0008】
前端面の面に対して、例えば2°より大きな傾き角で曲がった導波路は、導波路への後方反射を抑止できることが知られている。そのような配置により、前端面18から反射された放射線は、活性導波路20自体に結合しないので、前端面18からの光帰還(即ち、後方反射)が低減される。従って、他の従来の設計では、半導体レーザ11ではなく、前端面からの帰還がない半導体利得素子12が有効に形成された、曲がった導波路20が組み込まれる。図2に示される従来のレーザ装置5では、レーザ共振器は、この場合、波長選択式反射器26である追加の帰還素子を光経路内に与えることによってのみ設定される。ここでは、半導体利得素子12は、従来のファイバレンズ22を有する光ファイバ14と結合される。従来のファイバレンズ22は、光ファイバ14の長手軸に直交するレンズ先端24を含む。ファイバレンズは、半導体利得素子22から発される光放射がレンズ先端24に直交するように(即ち、半導体利得素子22からの光放射の伝搬方向に)配置される。
【0009】
図2のレーザ装置5は、図1のレーザ装置1をある程度向上させ(図6Bを参照すること)、以前、適用され、半導体利得素子の利得を低くするのに、ある程度成功している(例えば、「全光WDMアクセスネットワークに利用される波長安定非冷却ファイバ回折格子半導体レーザ」IEEE電子レター、1996年1月18日、第32巻、第2号、119〜120頁)。しかしながら、出力対電流特性に於けるリップルを完全に抑止することはできない。即ち、図2の後端面16と前端面18との間に形成されるFP共振器は、曲がった導波路20を利用することにより無用になり、ファイバレンズ22と前端面16との間に現れる追加の共振器は、発される光放射とファイバレンズの両方を傾けることにより十分に抑制されるが、後端面16とファイバレンズ22との間に形成されるFP共振器は、そのままであり、それは、AR被膜がファイバレンズ先端24上に付与される場合でも、出力対電流特性に於ける望まれないリップルの一原因である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、レーザ共振器内の帰還源を取り除くことにより、出力特性が向上したレーザ装置を提供する。線形性の高いレーザ発光出力が得られることにより、光ファイバからの高出力でのレーザ発振操作が可能になる。レーザ装置は、利得リップルの影響を実質的に抑止する一方で、波長選択式反射器を用いて、波長安定性が得られる。加えて、ファイバレンズの構成により、半導体利得素子のすぐ近くに、ファイバレンズの位置を定めることができ、一方では、ファイバが半導体端面に接触するという潜在的な危険が克服される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によれば、レーザ装置は、利得素子を含み、且つ、半導体導波路の後端面及び前端面により範囲が定められる、半導体導波路と、光ファイバと半導体導波路の前端面との間の放射を結合させるファイバレンズを備えた光ファイバ導波路と、後端面と波長選択式反射器との間にレーザ共振器を形成するように光ファイバ内に配置され、且つ、半導体導波路の前端面の面とレーザモードの伝搬方向に直交しないように配置されるファイバレンズの面の両方を有する、波長選択式反射器とを含む。
【0012】
一実施形態によれば、半導体導波路は、湾曲部分を含み、前端面の法線に対してある角度で、後端面の法線に平行に、光放射を誘導するように設定される。
【0013】
別の実施形態によれば、ファイバレンズは、光放射の双方向伝搬を可能にするモード整合素子として設定される。
【0014】
別の実施形態によれば、ファイバレンズは、前端面の面とレンズ先端の面との間の角度(ω)が、以下の関係式により定められるように設定され、
ω=arcsin[sin(α)×n1/n2]−φ、
式中、n1及びn2は、それぞれ、光ファイバ及び周辺媒体の屈折率であり、φは、前端面の面での光放射の屈折角であり、αは、レンズ先端の面での光放射の屈折角である。
【0015】
別の実施形態によれば、φの範囲は、約4.5°〜約60°である。別の実施形態によれば、αの範囲は、約2°〜約35°である。別の実施形態によれば、ωの範囲は、約−30°〜約30°である。別の実施形態によれば、レンズは、レンズ先端から反射される光放射の一部が、角度γ=φ+2ωで反射されるように設定され、式中、γは、約2°よりも大きい。
【0016】
別の実施形態によれば、レンズ先端の面は、光入射面内の前端面の面に平行である。別の実施形態によれば、前記利得素子の前端面での光放射の屈折角の範囲は、約4.5°〜約20°である。別の実施形態によれば、レンズの面を通過する光放射の屈折角の範囲は、約3°〜約13.3°である。
【0017】
別の実施形態によれば、前端面は、反射防止膜を含む。
【0018】
別の実施形態によれば、ファイバレンズは、反射防止膜を含む。
【0019】
別の実施形態によれば、波長選択式反射器は、レーザ装置をある波長に固定する。
【0020】
別の実施形態によれば、波長選択式反射器の帯域幅は、約10pm〜約5nmである。
【0021】
別の実施形態によれば、波長選択式反射器の反射率は、約0.5%〜約20%である。
【0022】
別の実施形態によれば、導波路の非直交部分は、前端面の面の法線に対して約1.5°〜約15°の角度に配置される。
【0023】
別の実施形態によれば、光ファイバは、エルビウム添加ファイバ増幅器とラマン増幅器のうちの少なくとも1つに結合される。
【0024】
上記のこと及び本発明の他の特性は、本明細書の後で、付属の図面を参照しながら、より詳しく記載される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】従来のレーザ装置の上面概略図である。
【図2】従来のレーザ装置の上面概略図である。
【図3】本発明による模範的レーザ装置の上面概略図である。
【図4】本発明による模範的レーザ装置の光結合を示す上面概略図である。
【図5A】本発明による模範的レーザ装置の3次元斜視図である。
【図5B】本発明による模範的レーザ装置の3次元斜視図である。
【図6A】本発明による模範的レーザ装置への最適出力対電流特性の影響(6C)を、図1及び図2の従来のレーザ装置への最適ではない影響(それぞれ、6A及び6B)と比較しながら示すグラフである。
【図6B】本発明による模範的レーザ装置への最適出力対電流特性の影響(6C)を、図1及び図2の従来のレーザ装置への最適ではない影響(それぞれ、6A及び6B)と比較しながら示すグラフである。
【図6C】本発明による模範的レーザ装置への最適出力対電流特性の影響(6C)を、図1及び図2の従来のレーザ装置への最適ではない影響(それぞれ、6A及び6B)と比較しながら示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下の記述では、同じ部品には、異なる実施形態で示されていても、同じ参照番号が与えられている。本発明の実施形態を明確に且つ正確に示すためには、図面は、必ずしも縮尺合わせしなくてもよく、幾つかの特徴は、ある程度、概略の形態で示され得る。一実施形態に対して記述される及び/又は図示される特徴は、1つ以上の他の実施形態に於いて同じ方法で又は類似の方法で、並びに/若しくは、他の実施形態の特徴と組み合わせて又はそれらの特徴の代わりに利用され得る。
【0027】
ここで、図面を、最初に図3を詳しく参照して、模範的レーザ装置の概略図は、一般に、10で示される。レーザ装置10は、歪像ファイバレンズ28を含む光ファイバ14に光学的に結合する半導体利得素子12を含む。そのファイバレンズ28は、半導体利得素子12と光ファイバ14との間のモード整合素子(又は、モード変換器)として機能する傾斜レンズ先端30を含む。したがって、半導体利得素子12から発される光放射は、所望の帰還量が、波長選択式反射器26のために光ファイバ14から半導体利得素子12へ反射して戻るように、ファイバレンズ28を通り光ファイバ14に進む。この後方向の光経路が、レーザ装置の性能に不可欠であるので、この帰還は、半導体利得素子12に到達しなければならない(即ち、この帰還は、レーザ装置10を上記の波長選択式反射器26の波長に固定する)。その2方向光経路としての機能性に加えて、本発明によるファイバレンズ28により、レーザ共振器内の有意な帰還源が取り除かれる(レーザ共振器は、半導体利得素子12の後端面16と光ファイバ14に沿って形成される波長選択式反射器26との間の光経路により定められる)。ファイバレンズ28の特徴は、以下に詳細に記載される。
【0028】
半導体利得素子12は、インジウムガリウム砒素(InGaAs)から構成され得る。InGaAsは、レーザ等の光学装置がその上に容易に構成、集積され得る半導体材料であるので、本明細書では、模範的材料として利用される。例えば、歪み量子井戸InGaAsレーザは、通常、約980nmのエルビウム吸収波長でエルビウム増幅に利用される。従って、レーザ装置10は、例えば、EDFAに利用される980nm励起レーザであってもよい。そのような実施形態では、半導体利得素子12は、約974nmの中心波長を生成し得る。しかしながら、本発明は、InGaAsレーザに、又は、そのようなEDFAの吸収波長に限定されず、なぜなら、半導体利得素子12は、インジウムガリウム砒素燐、アルミニウムガリウム砒素等のような、いずれかの他の適切な基板材料から構成されてもよく、(例えば、ラマン増幅器等の他の種類の増幅器を励起するために)約1480nm、820nm等で利用され得るからである。
【0029】
半導体利得素子12は、いずれかの適切な長さであり得る。一実施形態では、半導体利得素子の長さは、高利得を確保するために3mmよりも大きい。別の実施形態では、半導体利得素子は、約3.6mmである。別の実施形態では、半導体利得素子は、4mmよりも大きい。
【0030】
半導体利得素子12は、後端面16と前端面18とを有する光導波路20を含む。導波路20は、半導体導波路とも呼ばれ得る。後端面16は、設定された波長付近で高く反射する被膜を含む。後端面16上のその被膜は、レーザ発光のための帰還を生成するのに適したいずれかの量の反射率を与え得る。一実施形態では、後端面16上の被膜の反射率は、95%よりも大きくてもよい。レーザ発振を可能にするのには、少なくとも1%の反射率が必要である。前端面18上の被膜は、いずれかの適切な量の反射率を与え得る。曲がった導波路を用いて、前端面18の有効反射率は(例えば、約1000の割合で)低減され得るが、前端面18のAR被膜は、反射率が約1%未満で塗布され得る。
【0031】
導波路20は、後端面16と前端面18との間に配置され、後端面16と前端面18との間に光放射を誘導するように、半導体利得素子12の上に配置され、その素子を含む。ゆえに、本明細書で用いられる場合、導波路は、波、この場合、光波を誘導するための構造である。導波路20は、当該分野で周知のいずれかの方法を用いて、半導体利得素子20上に形成され得る。例えば、導波路20は、エピタキシー成長及び半導体エッチングの周知の方法により作製され得る。
【0032】
導波路20は、導波路20の長手軸と前端面18の面が、少なくとも導波路の前端面18付近の部分で直交しないように、曲げられる。従来技術に関して上に考察されたように、そのような配置により、前端面18から反射される放射は、導波路20自体に結合しないので、前端面18からの光帰還(即ち、後方反射)が低減される。導波路20の曲率は、曲げ損失が最小になるように設計される。導波路20は、本明細書では、曲がった導波路と呼ばれているが、導波路20の1つ以上の直線部分があり得る。例えば、導波路20は、長手軸が後端面16の面に直交する(即ち、後端面16の法線に平行である)直線部分20aと、長手軸が前端面18の面に対して直交しない(前端面18の法線に対してある角度である)直線部分20cと、2つの直線部分を繋ぐ湾曲部分20bとを含み得る。
【0033】
図4を更に参照して、導波路20の直線部分20cは、前端面18の面の法線から、いずれかの適切な角度(σ)で配置され得る。一実施形態では、前端面18での導波路20の非直交部分は、前端面18の面の法線から約1.5°〜約15°であり得る。別の実施形態では、前端面18での導波路20の非直交部分は、前端面18の面の法線から約1.5°〜約5°であり得る。別の実施形態では、前端面18での導波路20の非直交部分は、前端面18の面の法線から約3°であり得る。
【0034】
導波路20に沿って通る光放射は、前端面18を通過し、半導体利得素子12から発される。前端面18から発される光放射は、スネルの法則に従う屈折角(φ)で屈折する。即ち、前端面の面は、導波路と光ファイバとの間を通過する光放射の伝搬方向(即ち、レーザモードのその伝搬方向;レーザモードの伝搬方向)に直交しない。例えば、前端面18での導波路20の非直交部分が、前端面18の面の法線から約3°(前端面18での入射角)である実施形態では、導波路から空気中へ発される光放射の屈折角(φ)は、前端面18の面の法線から約10°である。当然、屈折角(φ)は、入射角及び屈折率等の変数の関数である。従って、屈折角(φ)の範囲は、例えば、約4.5°〜約60°であり得ると考えられる。別の実施形態では、屈折角(φ)の範囲は、例えば、約4.5°〜約20°であり得る。
【0035】
上述のように、半導体利得素子12は、光ファイバ14に光学的に結合する。光ファイバ14は、光ファイバ導波路とも呼ばれ得る。光ファイバ14は、光放射が、半導体利得素子12と光ファイバ14との間を通過し得るように、半導体利得素子12の前端面18の近くに配置される。即ち、前端面18から発される光放射は、ファイバレンズ28を通り、いずれかの適切な極性保持(polarization maintaining(PM))ファイバ又は非PMファイバであり得る光ファイバ14に進む。光ファイバ14に沿って配置された波長選択式反射器26からの所望の帰還量は、光ファイバ14から半導体利得素子12へ反射して戻る。
【0036】
歪像ファイバレンズ28は、半導体利得素子12と光ファイバ14とを光学的に結合させるように、前端面18に隣接する光ファイバ14の末端部の上に配置される。ファイバレンズ28は、レンズ先端30を含み、そのレンズ先端は、レンズ先端30の面がファイバレンズ28で光ファイバ14の長手軸に直交しないような角度に配置される。図示されるように、ファイバレンズ28は、鑿(のみ)の形を有する場合があり、その形には、具体的に、レーザ場の楕円率が考慮されている。
【0037】
歪像ファイバレンズ28の具体的な形は、レーザ装置10の3次元斜視図である図5A及び図5Bでより良く理解することができる。図示されるように、ファイバレンズ28は、面32及び34を定めるようにファイバ末端を先細にすることにより形成される。
【0038】
一実施形態では、ファイバレンズ28は、AR被膜がなく、それにより、最大で約3.5%のフレネル反射になる。ファイバレンズ28は、導波路20への反射率が、特定の角度に対して約100の割合で削減され得る。従って、導波路への反射を低くするために、別の実施形態では、ファイバレンズ28上のAR被膜は、約1%以下の反射率に低減され得る。図3〜5に示されるように、光ファイバ14は、前端面18の面に直交せず、半導体利得素子12から発される光放射の方向に直交しないのに対し、傾斜レンズ先端30は、レンズ先端30の面が、前端面18の面に平行であり、半導体利得素子12から発される光放射の方向に直交しない(即ち、導波路と光ファイバとの間を通過する光放射の伝搬方向に直交しない)ように整えられ得る。レンズ28は、前端面18の近くの導波路20の一部に対して横方向にも(例えば、約1μm)移動される。
【0039】
続いて図4を参照して、ファイバレンズは、半導体利得素子12から発される光放射が、直交しない角度でレンズ先端30に入り、更に、同様にスネルの法則に従う屈折角(α)で屈折するように設定される。例えば、レンズ先端30に対する光放射の入射角が約10°であり、ファイバコアの屈折率が1.5であるような実施形態では、レンズ先端30の面に対する光放射の屈折角(α)は、スネルの法則に従って、約6.6°である。図示されるように、ファイバレンズ28及びファイバレンズ30での光ファイバ14の一部分は、長手方向に、屈折された光放射の方向と同じ方向又はほぼ同じ方向に延長され得る。従って、ファイバ先端上への光放射の入射角(前端面18から発される光放射の屈折角(φ)として上に与えられる)の範囲から、屈折角(α)の範囲は、例えば、約2°〜約35°であり得ると考えられる。別の実施形態では、屈折角(α)の範囲は、例えば、約3°〜約13.3°であり得る。
【0040】
レンズ先端30の面は、前端面18の面と平行であってもよいが、面レンズ先端30は、前端面18の面に対して僅かに平行でなくてもよいとも考えられる。前端面18の面に対するレンズ先端30の面の角度関係は、ω=arcsin[sin(α)×n1/n2]−φと定義され得る。式中、n1及びn2は、それぞれ、光ファイバ及び周辺媒体の屈折率であり、φは、前端面の面での光放射の屈折角である。この場合、光が、スネルの法則に従って、それぞれ、導波路20の光軸と光ファイバ14(導波路としても機能する)の光軸に沿って、前後両方向に伝搬することが確保される。従って、前端面18の法線に対する、導波路を通過する光放射の所与の屈折角(φ)では、前端面18の面に対するレンズ先端30の面の角度関係(ω)は、レンズ先端30の面での屈折角(α)を設定することにより確定され得る。当然、レンズ先端30の面での屈折角(α)は、前端面18の面に対するレンズ先端30の面の角度関係(ω)を設定することにより見出されてもよい。更に、前端面18の面の法線に対する、ファイバレンズ28での光ファイバ14の長手軸の角度は、ζ = α−ωと定義される。表1では、屈折角(φ)が約10°である場合の、半導体利得素子12の前端面18に対する光ファイバ14の様々な配置が例示されている。
【表1】

【0041】
実際の配置では、角度(ω)は、約−30°〜約30°の間で変化し得る。この場合、それぞれ、(α)に対する角度の範囲は、約2°〜約35°であり、角度(φ)の極値の範囲は、約4.5〜約60°である。
【0042】
レンズ先端30の配置により、導波路20への望まれない後方反射が最小になる。光放射は、レンズ先端30からγ=φ+2ωの角度で反射される。ゆえに、屈折角φ=10°及びω=0°の模範的実施形態では、光放射は、レンズ先端30で、10°の角度(γ)で反射する。別の実施形態では、光放射は、レンズ先端30で、2°よりも大きな角度(γ)で反射する。図4に示されるように、レンズ先端30から反射される放射は、導波路20に結合しない。
【0043】
ファイバレンズ28での光ファイバ14の長手軸は、前端面18の面の法線に対して比較的小さな角度(ζ)(例えば、6.6°)で配置されるので、アセンブリと心合わせの手順が簡略化され得る。更に、レンズ先端30の面は、前端面18の面に平行又は実質的に平行である。レンズ先端30は、半導体利得素子12の前端面18の近くに導かれてもよく、ファイバレンズ28の縁を切り取る必要はない、又は、図2の従来の設計の事例であり得るように、ファイバレンズ28の一部が半導体利得素子12に接触するように、ファイバレンズ28を付随的に置くことはない。
【0044】
前端面18の焦点面は、ファイバレンズ28の焦点面と実質的に同じであるので、光結合も最適化される。一実施形態では、ファイバレンズ28は、結合効率が、約50%よりも大きい。別の実施形態では、ファイバレンズ28は、結合効率が、約80%よりも大きい。
【0045】
FBGにより形成される波長選択式反射器26は、光ファイバ14内に配置される。FBGは、製造を簡略化するために、少なくとも約10cmの長さで、通常のレーザパッケージの外の光ファイバ14内に配置されてもよい。しかし、波長選択式反射器26は、半導体利得素子12から、いずれかの適切な長さで配置されてもよい。
【0046】
波長選択式反射器26は、いずれかの周知のプロセスを利用して、光ファイバ14に沿って形成され得る。例えば、波長選択式反射器26は、例えば、「ファイバブラッグ回折格子」(アカデミック・プレス、1999年)のラマン・カシャプにより記載されるように、光ファイバの部品に沿って強度が周期的であるUV線への露光をもとに形成されてもよい。
【0047】
ファイバ内の波長選択式反射器26は、所望の割合の帰還を作り出し、レーザ装置10をある波長に固定する。波長選択式反射器26の反射率の範囲は、約0.5%〜約20%であり得る。一実施形態では、波長選択式反射器26の反射率は、約3%である。波長選択式反射器26の帯域の範囲は、約10pm〜約5nmであり得る。一実施形態では、波長選択式反射器26の帯域の範囲は、約20pmである。波長選択式反射器26の中心波長は、波長選択式反射器26が対応し得る、いずれかの波長であり得る。一実施形態では、波長選択式反射器26の中心波長は、約974nmである。ゆえに、波長選択式反射器26は、レーザ前面反射が著しく低減し、同時に、波長選択レーザ発光が可能になる。従って、本発明で考えられる構成では、波長選択式反射器26は、高反射後方鏡としての後端面16と組み合わせて、前面鏡として利用され、レーザ装置10の動作を可能にする。
【0048】
安定化されたファイバ出力ビームは、光ファイバ14を離れ、ファイバ増幅器、例えば、エルビウム添加ファイバ増幅器(図示されず)内に供給され得る。出力は、通常、約0.6Wであり得るが、例えば、約0.1mW〜約3Wの範囲であってもよい。
【0049】
図6Cは、本発明による模範的レーザ装置10への最適出力対電流特性とその導関数の影響を示す。この図は、図1及び図2の従来のレーザ装置1及び5への非最適出力対電流特性とその導関数の影響をそれぞれ示す、図6A及び6Bと比較される。図6Cに示されるように、本発明の装置10は、線形性の高いレーザ発光を作り出す。比較として、図6Aは、図1の従来の装置1ではリップル量が高くなり、雑音レベルが高くなることを示す。図6Aは、図2の従来の装置5で、ある程度向上するが、出力対電流特性の影響が完全には抑止されていないことを示す。
【0050】
本発明は、ある実施形態(単数)又は実施形態(複数)に対して示され、記載されたが、当業者が、この明細書と付属の図面とを読み、理解した後に、等価的に変更及び修正するものであることは明らかである。特に、上記の素子(部品、アセンブリ、装置、組成物等)により実現される様々な機能に関して、そのような素子を記述するのに利用される用語(「手段」への言及を含む)は、特に指定のない限り、本明細書に示される本発明の模範的な実施形態(単数)又は実施形態(複数)に於いて機能を実現する開示構造に構造的に等価ではなくても、記載された素子の特定の機能を実現するいずれかの素子(即ち、機能的に等価なもの)に対応することを意図している。加えて、本発明の特徴は、幾つかの示された実施形態のうちの1つのみ又はそれ以上について上に記載されているが、そのような特徴は、いずれかの所与の又は特定の用途に望まれ、有利であり得るように、他の実施形態の1つ以上の他の特徴と組み合わされてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利得素子を含み、且つ、半導体導波路の後端面及び前端面により範囲が定められる、半導体導波路と、光ファイバと前記半導体導波路の前記前端面との間の放射を結合させるファイバレンズを備えた光ファイバ導波路と、前記後端面と波長選択式反射器との間にレーザ共振器を形成するように光ファイバ内に配置され、且つ、前記半導体導波路の前記前端面の面とレーザモードの伝搬方向に直交しないように配置される前記ファイバレンズの面の両方を有する、波長選択式反射器とを含む、レーザ装置。
【請求項2】
前記半導体導波路が、湾曲部分を含み、前記前端面の法線に対して一の角度で、前記後端面の法線に平行に、光放射を誘導するように設定される、請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項3】
前記ファイバレンズが、光放射の双方向伝搬を可能にするモード整合素子として設定される、請求項1及び2に記載のレーザ装置。
【請求項4】
前記前端面の面と前記レンズ先端の面との間の角度(ω)が、以下の関係式により定められるように、前記ファイバレンズが設定され、
ω=arcsin[sin(α)×n1/n2]−φ、
式中、n1及びn2は、それぞれ、前記光ファイバ及び周辺媒体の屈折率であり、φは、前記前端面の面での光放射の屈折角であり、αは、前記レンズ先端の面での光放射の屈折角である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のレーザ装置。
【請求項5】
φの範囲が、約4.5〜約60°である、請求項4に記載のレーザ装置。
【請求項6】
αの範囲が、約2°〜約35°である、請求項4及び5に記載のレーザ装置。
【請求項7】
ωの範囲が、約−30°〜約30°である、請求項4〜6のいずれか1項に記載のレーザ装置。
【請求項8】
前記レンズ先端から反射される光放射の一部が、角度γ=φ+2ωで反射されるように、前記レンズが設定され、式中、γは、約2°よりも大きい、請求項4〜7のいずれか1項に記載のレーザ装置。
【請求項9】
前記レンズ先端の面が、光入射面内の前記前端面の面に平行である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のレーザ装置。
【請求項10】
前記利得素子の前記前端面での前記光放射の屈折角の範囲が、約4.5°〜約20°である、請求項9に記載のレーザ装置。
【請求項11】
前記レンズの面での前記光放射の屈折角の範囲が、約3°〜約13.3°である、請求項9及び10のいずれか1項に記載のレーザ装置。
【請求項12】
前記前端面が、反射防止膜を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載のレーザ装置。
【請求項13】
前記ファイバレンズが、反射防止膜を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載のレーザ装置。
【請求項14】
前記波長選択式反射器が、前記レーザ装置を、一の波長に固定する、請求項1〜13のいずれか1項に記載のレーザ装置。
【請求項15】
前記波長選択式反射器の帯域が、約10pm〜約5nmである、請求項1〜14のいずれか1項に記載のレーザ装置。
【請求項16】
前記波長選択式反射器の反射率の範囲が、約0.5%〜約20%である、請求項1〜15のいずれか1項に記載のレーザ装置。
【請求項17】
前記導波路の非直交部分が、前記前端面の面の法線に対して約1.5°〜約15°の角度で配置される、請求項1〜16のいずれか1項に記載のレーザ装置。
【請求項18】
前記光ファイバが、エルビウム添加ファイバ増幅器とラマン増幅器のうちの少なくとも1つに結合される、請求項1〜17のいずれか1項に記載のレーザ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【公表番号】特表2013−516779(P2013−516779A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547555(P2012−547555)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際出願番号】PCT/IB2010/002047
【国際公開番号】WO2011/083359
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(505318606)オクラロ テクノロジー リミテッド (17)
【Fターム(参考)】