説明

(メタ)アクリルシロップの製造方法

本発明は、塊状重合により(メタ)アクリルシロップを製造する方法において、
a)(メタ)アクリル系エステル単量体;及び
b)連鎖移動剤として、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンを単独またはチオール系連鎖移動剤と共に使用して、
c)初期反応温度55〜80℃で半減期が30分以下である開始剤を加えて反応し、反応系の最高温度を95℃未満に調節しながら反応系の転換率を5〜50重量%として重合させることを特徴とする(メタ)アクリルシロップの製造方法を提供する。
本発明の(メタ)アクリルシロップの製造方法を使用する場合、塊状重合時にも暴走することがなく、攪拌不良が生じないだけではなく、低い発熱下で安定的に転換率と分子量の調節が容易であり、部分重合された(メタ)アクリルシロップの製造が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリルシロップの製造方法に関するもので、さらに詳しくは、高分子量の形成が可能で、暴走することがなく、分子量の調節が容易な(メタ)アクリルシロップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(メタ)アクリルシロップは、メタクリル樹脂注型板、光伝送繊維や光導波路などの光学材料、アクリル人造大理石、床材、接着剤、粘着剤及び医療用材料などの中間原料として使用される。
【0003】
このような(メタ)アクリルシロップは、(メタ)アクリル系モノマーの良好な反応性のため、塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合及び光重合法などにより製造可能である。しかしながら、各用途による材料が高機能化することにつれて、その重合方法において、溶液重合、乳化重合及び懸濁重合では、残留物の除去にかなりのエネルギーがかかるだけではなく、高機能の発揮が難しく、且つ、環境に対する負荷が大きいため、溶媒を使わずに重合を行う塊状重合や光重合によりアクリルシロップを製造する趨勢にある。
【0004】
しかしながら、このような(メタ)アクリル系モノマーは、反応性が高いため、溶媒を使わずに施す塊状重合や光重合において、発熱の問題はかなり深刻であり、特に、回分式反応器を利用する場合、反応器温度の制御が難しく反応の暴走可能性が高く、転換率の増加による粘度の急激な上昇により、生成されたラジカルの停止反応が減少し、結局、部分的なゲル形成などのような現象が起こることにより、重合体の分子量分布が広がるなど、均一な樹脂を得ることが難しい。
【0005】
このような反応の暴走可能性の減少と粘度上昇を抑制するために、反応器の形態を半回分式や連続式、プラグフローの形式に変えて改善する形態が報告された。特開昭40−3701号、特開平11−255828号、特開2000−159816号では、このような連続重合方法を使用して、高温で重合を行っている。
【0006】
しかしながら、このような反応器における重合は、反応器自体が高価であるだけではなく、装置費が高いため、経済的に負担となり、多量少品種の生産には適合しているが、少量多品種の生産には不利な問題点を有している。
【0007】
一方、回分式反応器を利用するが、反応条件を最大限マイルドにして重合を行う方法がある。これは、反応系の温度を一定水準に維持して、反応系の転換率乃至粘度が一定水準に達した時、重合を強制的に停止する方法である。その重合停止の方法として、特開平1−11652号では、重合禁止剤の投入、特開平9−67495号では、単量体投入による急冷などの停止方法が紹介されている。
【0008】
しかしながら、このような重合方法は、反応の後半部に現れる粘度の上昇が大きく、反応重量時点により物性の差が生じて、得られたシロップの中には、重合開始剤が残存するため、貯蔵安定性が悪いというなどの短所を有しており、根本的な解決手段とはならない。
【0009】
このため、回分式反応器を利用するが、暴走することがなく、分子量の調節が容易な方案に対する様々な報告が提案されてきた。
【0010】
まず、実質的に開始剤を使用しないため、反応の暴走を生じずに塊状重合を施した例がある。
【0011】
特開2001−31709号では、分子内にチオール基と2級水酸基を有する化合物と、この化合物の触媒として、分子内に2級水酸基を有し且つチオール基を有しない化合物を使用して、また、特開2001−302705号では、チオール基とカルボキシル基とを共に有する化合物を使用して、実質的な開始剤を使わずに塊状重合を行っている。
【0012】
しかしながら、上記の場合、多量のチオール基化合物が使用されるため、シロップ内に残存するチオール化合物が多くなり、シロップを最終用途として使用時、物性に悪影響があり、残存する多量のチオール化合物により、貯蔵安定性にも問題がある。
【0013】
特開2000−313704号では、10時間半減期温度が41℃以下である重合開始剤を0.0001〜0.5重量部の範囲内の量で使用し、反応温度20〜80℃で自己発熱を利用して、反応物の最高発熱温度を100〜140℃の範囲に到達させて、10〜50%の重合率を有するアクリルシロップを合成する方法を提案している。このような方法は、低温で分解される開始剤を相対的に高い反応温度で投入、反応初期に急激に増加されたラジカルにより反応速度が大きく増加して、これにより反応系の温度が自発的に増加するようになり、この温度増加によって開始剤の半減期は急激に減少し、最終的に開始剤が失活されて自然消耗されるという技術的思想に依存している。
【0014】
しかしながら、本発明者らが鋭意検討した結果、再現性のある結果を得るためには、投入される開始剤の一定量が必要であり、このような場合、依然として最高発熱温度が非常に高いという問題があり、これは、スケールアップ時、高性能の冷却装置が必要であり、暴走反応の危険性が存在する。また、最高発熱温度が約100〜140℃であるため、エチルアクリレート(沸点99℃)、ブチルアクリレート(沸点145℃)のような低沸点単量体には適用し難く、このような高い温度では、反応系を急冷させないと、高温により自発的な熱重合が非常に速やかに起こるという問題があることが分かった。一方、100万以上の高分子量を製造時、急激な粘度上昇のため、反応系の転換率を減少させなければならないが、構造的に転換率の高い前記特開2000−313704号を利用する場合、低い転換率を得難いため、100万以上の高分子量を製造する場合は、反応系の粘度が急激に増加し、攪拌が不良になって、これによりゲルが形成されるという問題がある。
【特許文献1】特開昭40−3701号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明では、上記のような問題点を解決するために、塊状重合時にも反応が暴走することがなく、分子量調節が容易であり、高分子量の(メタ)アクリルシロップの形成が可能な(メタ)アクリルシロップの製造方法を工業的規模で提供することを目的とする。
【0016】
一般に、(メタ)アクリルシロップの製造において、分子量を調節するために、チオール系の連鎖移動剤を使用する。このようなチオール系の分子量調節剤を使用する場合、分子量調節は容易であるが、反応速度を制御することは難しい。
【0017】
したがって、本発明者らは、チオール系連鎖移動剤の代わりに、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンを単独またはチオール系連鎖移動剤と混用し、分子量調節と共に反応速度を制御して、高温領域における自発的な熱重合も効果的に抑えることができることを見出し、これを通じて、より安定的なアクリルシロップの製造方法を提供することに本発明の目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明では、塊状重合により(メタ)アクリルシロップを製造する方法において、a)(メタ)アクリル系エステル単量体;及びb)連鎖移動剤として、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンを単独またはチオール系連鎖移動剤と共に使用して、c)初期反応温度55〜80℃で半減期が30分以下である開始剤を加えて反応し、反応系の最高温度を95℃未満に調節しながら反応系の転換率を5〜50重量%として重合させることを特徴とする(メタ)アクリルシロップの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の(メタ)アクリルシロップの製造方法を使用する場合、塊状重合時にも暴走することがなく、攪拌不良が生じないだけではなく、低い発熱下で安定的に転換率と分子量の調節が容易であり、部分重合された(メタ)アクリルシロップの製造が可能である。
【0020】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0021】
本発明の製造方法に使用される前記(メタ)アクリル系エステル単量体は、特に限定されることなく、一般に使用されるものを利用することができる。
【0022】
前記a)の(メタ)アクリル系エステル単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシルのようなアクリル酸アルキルエステル;アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジルのようなアクリル酸アリールエステル;アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシエチル、アクリル酸プロポキシエチル、アクリル酸ブトキシエチル、アクリル酸エトキシプロピルのようなアクリル酸アルコキシアルキル;アクリル酸およびアクリル酸アルカリ金属塩などの塩;メタアクリル酸およびメタクリル酸アルカリ金属塩などの塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシルのようなメタアクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジルのようなメタクリル酸アリールエステル;メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸エトキシメチル、メタクリル酸プロポキシエチル、メタクリル酸ブトキシエチル、メタクリル酸エトキシプロピルのようなメタクリル酸アルコキシアルキル;エチレングリコールのジアクリル酸エステル、ジエチレングリコールのジアクリル酸エステル、トリエチレングリコールのジアクリル酸エステル、ポリエチレングリコールのジアクリル酸エステル、プロピレングリコールのジアクリル酸エスエルのような(ポリ)アルキレングリコールのジアクリル酸エステル;エチレングリコールのジメタクリル酸エステル、ジエチレングリコールのジメタクリル酸エステル、トリエチレングリコールのジメタクリル酸エステル、ポリエチレングリコールのジメタクリル酸エステル、プロピレングリコールのジメタクリル酸エステルのような(ポリ)アルキレングリコールのジメタアクリル酸エステル;トリメチルプロパントリアクリル酸エステルのような多価アクリル酸エステル;トリメチルプロパントリメタクリル酸エステルのような多価メタクリル酸エステル;アクリロニトリル;メタクリロニトリル;酢酸ビニル;塩化ビニリデン;アクリル酸−2−クロロエチル、メタクリル酸−2−クロロエチルのようなハロゲン化ビニル化合物;アクリル酸シクロヘキシルのような脂環式アルコールのアクリル酸エステル;メタクリル酸シクロヘキシルのような脂環式アルコールのメタクリル酸エステル;2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンのようなオキサゾリン基含有重合性化合物;アクリロイルアジリジン、メタクリロイルアジリジン、アクリル酸−2−アジリジニルエチル、メタクリル酸−2−アジリジニルエチルのようなアジリジン基含有重合性化合物;アリルグリシジルエーテル、アクリル酸グリシジルエーテル、メタクリル酸グリシジルエーテル、アクリル酸−2−エチルグリシジルエーテル、メタクリル酸−2−エチルグリシジルエーテルのようなエポキシ含有重合性化合物;アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−2−ヒドロキシブチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸またはメタクリル酸とポリプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールとのモノエステル、ラクトン類と(メタ)アクリル酸との付加物のようなヒドロキシル基含有ビニル化合物;フッ素置換メタクリル酸アルキルエステル、フッ素置換アクリル酸アルキルエステル等の含フッ素ビニル単量体;(メタ)アクリル酸を除く、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸のような不飽和カルボン酸、これらの塩並びにこれらのエステル化合物および酸無水物;2−クロルエチルビニルエーテル、モノクロロ酢酸ビニルのような反応性ハロゲン含有ビニル単量体;メタクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、N-メトキシエチルメタクリルアミド、N-ブトキシメチルメタクリルアミドのようなアミド基含有ビニル単量体;N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタムのようなアミン含有ビニル単量体;ビニルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルプロピルアリルアミン、2−メトキシエトキシトリメトキシシランのようなシリコン含有ビニル単量体;スチレン、及びその他、ビニル基を重合したモノマー末端にラジカル重合性ビニル基を有するマクロモノマー類等を例示することができる。
【0023】
本発明の塊状重合法において使用される(メタ)アクリル系エステル単量体において、アクリル酸アルキルエステルモノマーの含有量に特に制限はないが、本発明の製造方法では、(メタ)アクリル系エステル100重量部中に0.1〜100重量部、好適には1〜100重量部のアクリル酸アルキルエステルモノマーを使用することができる。
【0024】
前記b)の連鎖移動剤としては、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(α−メチルスチレンダイマー、AMSD)を単独またはチオール系連鎖移動剤と共に使用することが可能である。従来から知られたチオール系の連鎖移動剤を単独使用する場合、本発明の方法により重合反応時、過度なる反応性により最大反応温度が急激に上昇するようになる。
【0025】
本発明に好適なチオール系の連鎖移動剤としては、チオール基(-SH)を有する有機化合物であれば特に制限なく使用可能である。エチルメルカプタン、ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、ドデシルメルカプタンのようなアルキルメルカプタン類、フェニルメルカプタン、ベンジルメルカプタンのようなチオフェノール類、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、チオサリチル酸のようなカルボキシル基含有メルカプタン類、メルカプトエタノール(2-Mercapto ethanol)、メルカプトプロパンジオール(3-Mercapto-1,2-propanediol)のような水酸基含有メルカプタン類、またはペンタエリスリトールテトラキスメルカプトプロピオネート(Pentaerythritol tetrakis(3-mercapto)propionate)のように、上記の作用基を組み合せ的に二つ以上有するメルカプタン類を使用することが可能である。
【0026】
前記AMSD連鎖移動剤の使用量は、a)のアクリル系エステル単量体組成物100重量部に対し、0.001〜5.0重量部が要求されて、好ましくは、0.001〜1.0重量、さらに好ましくは0.001〜0.5重量部が要求される。AMSDの使用量が0.001重量部未満であると、重合時、発熱量の調節が難しく、5.0重量部以上であると、反応速度が非常に低くなり、転換率を上げることが非常に難しい。
【0027】
また、チオール系分子量調節剤をAMSD分子量調節剤と組み合せて使用することが可能であり、チオール系連鎖移動剤の使用量が0.00001重量部未満であると、重合体の分子量が極端に増加し、攪拌の不良を起こしてしまい、5重量部以上であると、重合速度が遅くなり、且つ分子量が極端に減少し、最終製品の物性が低下する。したがって、チオール系連鎖移動剤は、(メタ)アクリル系エステル単量体100重量部に対し、0.00001〜5.0重量部で使用することが好ましい。
【0028】
前記c)の開始剤としては、反応温度55〜80℃で半減期が30分以下の開始剤が挙げられる。例えば、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル(Wako社、V-70)、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル(Wako社、V-65)、2,2’−アゾビス−イソブチロニトリル(Wako社、V-60)、2,2’−アゾビス−2−メチル−ブチロニトリル(Wako社、V-59)のようなアゾ系開始剤;イソブチリルパーオキシド(NOF社、Peroyl IB)、ビスネオデカノイルパーオキシジイソプロピルベンゼン(NOF社、Percumyl BF)、クミルパーオキシネオデカノエート(NOF社、Percumyl ND)、ジプロピルパーオキシジカーボネート(NOF社、Peroyl NPP)、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート(NOF社、Peroyl IPP)、テトラメチルブチルパーオキシネオデカネート(NOF社、Perocta ND)、ビス−4−ブチルシクロヘキシルパーオキシジカーボネート(NOF社、Peroyl TCP)、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネート(NOF社、Peroyl EEP)、ジエトキシヘキシルパーオキシジカーボネート(NOF社、Peroyl OPP)、ヘキシルパーオキシジカーボネート(NOF社、Perhexyl ND)、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート(NOF社、Peroyl MBP)、ビス(3−メトキシ−3メトキシブチル)パーオキシジカーボネート(NOF社、Peroyl SOP)、ブチルパーオキシネオデカノエート(NOF社、Perbutyl ND)、ヘキシルパーオキシピバレート(NOF社、Perhexyl PV)、ブチルパーオキシピバレート(NOF社、Perbutyl)、トリメチルヘキサノイルパーオキシド(NOF社、Peroyl 355)、ジメチルヒドロキシブチルパーオキサネオデカノエート(Atofina社、Luperox 610M75)、アミルパーオキシネオデカノエート(Atofina社、Luperox 546M75)、ブチルパーオキシネオデカノエート(Atofina社、Luperox 10M75)、アミルパーオキシピバレート(Atofina社、Luperox 546M75)などを使用することが可能である。
【0029】
前記c)の開始剤の量は、a)のアクリル系エステル単量体組成物100重量部に対し、0.0001〜0.5重量部が要求されて、好ましくは、0.001〜0.3重量部、さらに好ましくは、0.001〜0.1重量部が要求される。開始剤の量が0.0001重量部以下であると、開始効率が低下するだけではなく、反応の再現が難しく、0.5重量部以上であると、重合内の温度制御が難しくなる。
【0030】
本発明において、上記のような条件で重合反応させると、重合開始後約1時間内に、開始剤の分解及び停止反応と共に95℃未満の最高発熱温度点を有して、以後反応がそれ以上進行しない。
【0031】
前記選択される開始剤を少量投入する1回の重合反応により、原料として使用したモノマーの5〜50重量%が重合された部分重合(メタ)アクリルシロップを得ることが可能である。そして、前記重合開始剤をさらに加えて、同じ工程を数回繰り返すことにより、各段階別に転換率を調節することが可能であり、最終的に約98%の転換率を得ることが可能である。
【0032】
本発明において、重合抑制剤の使用も可能である。重合抑制剤としては、ヒドロキノン、メトキシフェノールのように、生成されたラジカルを吸収しラジカル反応を停止することができれば、特に制限はない。
【0033】
本発明の製造方法において、重合反応は、攪拌下で行うことが好ましく、反応直前、窒素などの不活性ガスで予め置換した後、反応を始めることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0035】
本発明を利用して合成された(メタ)アクリルシロップの物性評価方法は、次のようである。
【0036】
固形分濃度の測定
予め計量しておいたアルミニウム皿にシロップ0.1〜0.3g程度を滴下してその質量を測った後、130℃オーブンで1時間乾燥後、質量を測る方式により固形分濃度を測定する。
【0037】
粘度の測定
ブルックフィールド粘度計を利用して測定する。
【0038】
分子量の測定
反応完了後、アクリルシロップを高温で乾燥した後、ゲル浸透クロマトグラフィを利用して、下記のような条件で重量平均分子量を求めた。
分析機器
製造社:Waters Alliance System
コラム:PL Mixed B type
分析器:Refractive index detector
(2)分析条件
流量:1ml/min
移動相溶媒:テトラヒドロフラン
コラム温度:40℃
試料濃度:1mg/ml
試料量:200μL
【0039】
(実施例1)
攪拌機と窒素ガス導入管、温度センサー、コンデンサー及び外部クーリングジャケットを備えた3リットル4口ガラス反応器で、アクリル酸2−エチルヘキシル1880gとアクリル酸120g、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン1g、n−ドデシルメルカプタン0.002gを投入して、窒素気流を利用し溶存酸素を30分間除去しながら、反応温度である78℃まで加温した。その後、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル(Wako社、V-70)0.012gを投入し、反応を開始した。反応は、約2分後に最高発熱温度である83℃まで上昇してから、3分後、開始前に予め設定した反応温度に下降した。それから反応液の粘度上昇はなく、1時間後常温に冷却させて、反応を終了した。
【0040】
このようにして得られた部分重合シロップは、固形分濃度は、6%であり、粘度は、200センチポイズ(cP)、重量平均分子量は、220,000であった。
【0041】
(実施例2)
実施例1と同様な反応器に、アクリル酸2−エチルヘキシル1880gとアクリル酸120g、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン0.4g、n−ドデシルメルカプタン0.002gを投入して、窒素気流を利用し溶存酸素を30分間除去しながら、反応温度である67℃に加温した。その後、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル(Wako社、V-70)0.04gを投入し、反応を開始した。反応は、約15分後に最高発熱温度である72℃まで上昇してから、20分後、開始前に予め設定した反応温度に下降した。その後、同じ開始剤0.04gを投入し、同じ反応を繰り返した。反応は、約15分後に最高発熱温度である77℃まで上昇し、20分後、開始前に予め設定した反応温度に下降した。その後、初期反応温度で30分間放置後、冷却水を利用して常温に冷却した後、反応を終了した。
【0042】
このようにして得られた部分重合シロップは、固形分濃度は、24.2%であり、粘度は、6,600センチポイズ(cP)、重量平均分子量は、550,000であった。
【0043】
(実施例3)
実施例1と同様な反応器に、アクリル酸2−エチルヘキシル1880gとアクリル酸120g、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン0.2g、n−ドデシルメルカプタン0.001gを投入して、窒素気流を利用し溶存酸素を30分間除去しながら、反応温度である57℃に加温した。その後、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル(Wako社、V-70)0.02gを投入し、反応を開始した。反応は、約20分後に最高発熱温度である63℃まで上昇してから、25分後、開始前に予め設定した反応温度に下降した。その後、同じ開始剤0.02gを投入し、同じ反応を繰り返した。反応は、約20分後に最高発熱温度である66℃まで上昇し、20分後、開始前に予め設定した反応温度に下降した。その後、初期反応温度で30分間放置後、冷却水を利用して常温に冷却した後、反応を終了した。
【0044】
このようにして得られた部分重合シロップは、固形分濃度は、22.6%であり、粘度は、29,000センチポイズ(cP)、重量平均分子量は、1,200,000であった。
【0045】
(実施例4)
実施例1と同様な反応器に、アクリル酸2−エチルヘキシル1880gとアクリル酸120g、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン0.34g、n−ドデシルメルカプタン0.4gを投入して、窒素気流を利用し溶存酸素を30分間除去しながら、反応温度である57℃に加温した。その後、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル(Wako社、V-70)0.18gを投入し、反応を開始した。反応は、約15分後に最高発熱温度である76℃まで上昇してから、20分後、開始前に予め設定した反応温度に下降した。その後、初期反応温度で30分間放置後、冷却水を利用して常温に冷却した後、反応を終了した。
【0046】
このようにして得られた部分重合シロップは、固形分濃度は、32.1%であり、粘度は、2,000センチポイズ(cP)、分子量は、250,000であった。
【0047】
(実施例5)
実施例1と同様な反応器に、アクリル酸2−エチルヘキシル1880gとアクリル酸120g、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン1.6g、n−ドデシルメルカプタン0.001gを投入して、反応温度82℃及び開始剤としてエチルヘキシルパーオキシジカーボネート0.06gを投入し、反応を行った。反応は、12分後に最高発熱温度である89℃まで上昇してから、開始剤投入30分後、開始前に予め設定した反応温度に下降した。さらに同じ開始剤0.06gを投入し反応を始め、反応は、10分後に最高発熱温度である88℃まで上昇してから、開始剤投入28分後、開始前に予め設定した反応温度に下降した。その後、初期反応温度で30分間放置後、冷却水を利用して常温に冷却した後、反応を終了した。
【0048】
このようにして得られた部分重合シロップは、固形分濃度は、38.0%であり、粘度は、4,500センチポイズ(cP)、重量平均分子量は、300,000であった。
【0049】
(比較例1)
2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンを使用しなかったことを除いては、実施例4と同様に反応を行った。この際、反応器に別途のステンレスクーリングコイルを設けて、反応器ジャケット及びステンレスクーリングコイルに初期反応温度と同じ冷媒を循環させ続けた。開始剤投入4分後に最高発熱温度145℃まで上昇してから、50分後に開始前に予め設定した反応温度に下降した。
【0050】
このようにして得られた部分重合シロップは、固形分濃度は、55.0%であり、粘度は、30,000センチポイズ(cP)、重量平均分子量は、390,000であった。
【0051】
(比較例2)
2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンを使用しなかったことを除いては、実施例4と同様に反応を行った。この際、反応器に別途のステンレスクーリングコイルは設けなかった。開始剤投入4分後に最高発熱温度155℃まで上昇し、この際、熱重合により反応系温度はそのまま維持された。温度下降のために、初期投入モノマーの10%を投入し、反応温度を約100℃近くまで下降させたが、反応系の温度は、90℃以上に維持された。50分後、攪拌に困難が生じ、強制的に反応を終了した。
【0052】
このようにして得られた部分重合シロップは、固形分濃度は、67.0%であり、粘度は、90,000センチポイズ(cP)、重量平均分子量は、590,000であった。
【0053】
(比較例3)
2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンの代わりにn−ドデシルメルカプタン0.001gを投入したことを除いては、実施例3と同様に反応を行った。反応は、3分後に最高発熱温度105℃まで上昇し、そのまま維持されて、20分後、攪拌に困難が生じ、強制的に反応を終了した。
【0054】
このようにして得られた部分重合シロップは、固形分濃度は、38%であり、粘度は、100,000センチポイズ(cP)、重量平均分子量は、1,000,000であった。
【0055】
以上、本発明の望ましい具現例について詳細に説明したが、当業界の通常の知識を有する者にとって、本発明の思想及び範囲から逸脱することなく、多様な変形及び修正が可能であることは明らかであり、このような変形及び修正が添付の請求の範囲に含まれることは自明なことである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塊状重合により(メタ)アクリルシロップを製造する方法において、
a)(メタ)アクリル系エステル単量体;及び
b)連鎖移動剤として、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンを単独またはチオール系連鎖移動剤と共に使用して、
c)初期反応温度55〜80℃で半減期が30分以下である開始剤を加えて反応し、反応系の最高温度を95℃未満に調節しながら反応系の転換率を5〜50重量%として重合させることを特徴とする(メタ)アクリルシロップの製造方法。
【請求項2】
(メタ)アクリル系エステル単量体100重量部に対し、アクリル酸アルキルエステル単量体を0.1〜100重量部で使用することを特徴とする請求項1に記載の(メタ)アクリルシロップの製造方法。
【請求項3】
(メタ)アクリル系エステル単量体100重量部に対し、開始剤を0.0001〜0.5重量部で使用することを特徴とする請求項1に記載の(メタ)アクリルシロップの製造方法。
【請求項4】
(メタ)アクリル系エステル単量体100重量部に対し、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンを0.001〜5.0重量部で使用することを特徴とする請求項1に記載の(メタ)アクリルシロップの製造方法。
【請求項5】
(メタ)アクリル系エステル単量体100重量部に対し、チオール系連鎖移動剤を0.00001〜5.0重量部で使用することを特徴とする請求項1に記載の(メタ)アクリルシロップの製造方法。
【請求項6】
開始剤を1回以上投与して、5〜98%の転換率を有する部分重合された(メタ)アクリルシロップを製造することを特徴とする請求項1に記載の(メタ)アクリルシロップの製造方法。

【公表番号】特表2008−511745(P2008−511745A)
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−552441(P2007−552441)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【国際出願番号】PCT/KR2005/003759
【国際公開番号】WO2006/049474
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】