説明

11−β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ1阻害剤としての、シクロヘキシルイミダゾールラクタム誘導体

本発明は11β−HSD 1型アンタゴニスト活性を有する、式Iで表される新規な化合物


(I)
、並びにかかる化合物の調製方法の提供に関する。他の実施形態では本発明は式Iの化合物を含んでなる医薬組成物、並びに、糖尿病、高血糖、肥満、高血圧、高脂血症、メタボリックシンドローム及び11b−HSDタイプ1活性と関連する他の症状の治療のための、当該化合物及び組成物の使用方法の提供に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、2006年4月21日に出願の米国仮特許出願第60/745321号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、11−β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ タイプ1(11−β−HSD1)の阻害剤としての化合物、それを含有する医薬組成物、ヒト若しくは動物の治療へのこれらの化合物及び組成物の使用、並びに当該阻害剤の調製に有用な新規な中間体の提供に関する。本発明の化合物は11−β−HSD1に対する有効かつ選択的な阻害効果を示し、それにより、11−β−HSD1の変調に応答する障害(例えば糖尿病、メタボリックシンドローム、認識障害など)の治療に有効である。
【背景技術】
【0003】
肝、脂肪組織及び筋において、活性を示す糖質コルチコイドは、グルコース、脂質及びタンパク質代謝の重要なレギュレータである。慢性的な糖質コルチコイド過剰はインスリン抵抗性、内臓の肥満症、高血圧及び異脂肪血症を伴い、またメタボリックシンドロームの古典的な特徴を示す。11−β−HSD1は、不活性コルチゾンの活性コルチゾルへの転換を触媒するため、メタボリックシンドロームの進行との関連がこれまで示唆されている。特にげっ歯類及びヒトにおける研究成果から、メタボリックシンドロームと11−β−HSD1との関連が示されている。また更なる研究成果から、2型糖尿病患者において、11−β−HSD1を特異的に阻害する薬剤が、肝臓における糖新生によって、血糖を低下させ、中心性肥満を減少させ、アテローム生成的なリポタンパク質表現型を改良し、血圧を低下させ、インスリン抵抗性を低下させることが示されている。筋肉内におけるインシュリン効果が強化され、更に小島β細胞からのインシュリン分泌も増加されうる。また、動物及びヒトにおける研究成果から、糖質コルチコイドの過剰により認知機能が損なわれることが示されている。更に最近の研究成果から、11−β−HSD1の不活性化により、ヒト及びマウスにおいて、記憶が強化されることが示されている。更に、11−β−HSD阻害化合物カルベノキソロンが健康な初老の人及び2型糖尿病患者の認知機能を改良し、また11−β−HSD1遺伝子の不活性化によりマウスの老化により誘発される障害を防止することが示されている。更に、医薬品による11−β−HSD1の選択的阻害により、マウスの記憶力が改良されることが最近示されている。
【0004】
11−β−HSD1阻害剤に関する報告が、近年幾つかなされている。例えば、11−β−HSDの阻害化合物としてアダマンチルアセトアミドを開示している特許文献1、11−β−HSDの阻害化合物としてピロリジン−2−オン及びピペリジン−2−オン誘導体を開示している特許文献2、及び11−β−HSDの阻害化合物としてアダマンチルピロリジン−2−オン誘導体を開示している特許文献3を参照されたい。11−β−HSD1が関与する疾患の治療法が多く存在するにもかかわらず、現在行われている治療法に幾つかの欠点が存在する(例えば不十分な効果、許容できない副作用及び特定の患者集団における禁忌など)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上より、11−β−HSD1を阻害し、11−β−HSD1阻害が良好な効果をもたらしうる疾患を治療するための、代替的若しくは改良された医薬品を使用することを特徴とする、新規な治療方法に対するニーズが依然存在する。本発明は、ある新規な化合物が11−β−HSD1に対する強力かつ選択的な阻害活性を示すという発見に基づくものであり、それは当該技術分野に対する貢献となる。本発明は特定の構造及びそれらの活性において、先行技術を凌駕するものである。糖尿病、メタボリックシンドローム及び認知障害を治療するための新規な方法に対するニーズが依然存在するため、これらの及びその他のニーズを満たすことが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の式Iにより表される構造を有する化合物:
【化1】


(I)
又はその薬理学的に許容できる塩の提供に関する。詳細には、式中、
は水素、ハロゲン、−O−CH(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)又は−CH(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
は水素、ハロゲン、−O−CH(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)又は−CH(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
は水素又はハロゲンであり、
は−OH、ハロゲン、シアノ、−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、−(C−C)アルコキシ(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、SCF、C(O)O(C−C)アルキル、(C−C)シクロアルキル、O−フェニル−C(O)O−(C−C)アルキル、CH−フェニル、NHSO−(C−C)アルキル、NHSO−フェニル(R21)(R21)、(C−C)アルキル−C(O)N(R10)(R11)、
【化2】


であり、式中、点線は式IのR位置への結合部位を表し、
は水素、ハロゲン、−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、−C(O)OH、−C(O)O−(C−C)アルキル、−C(O)−(C−C)アルキル、−O−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、−SO−(C−C)アルキル、−N(R)(R)、
【化3】


であり、式中、点線はR位置への結合部位を表し、
式中、mは1、2又は3であり、
式中、nは0、1又は2であり、nが0であるとき“(CH)n”は結合であり、
は水素、ハロゲン、−CN又は−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
は水素、ハロゲン又は−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
は各々独立に水素、−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、−C(O)−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、−C(O)(C−C)シクロアルキル、−S(O)−(C−C)シクロアルキル又は−S(O)−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
は水素又はハロゲンであり、
10及びR11は各々独立に水素、又は−(C−C)アルキルであるか、又はR10及びR11はそれらが結合する窒素原子と共にピペリジニル、ピペラジニル又はピロリジニル基を形成し、
20は各々独立に水素又は−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
21は各々独立に水素、ハロゲン又は−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
22は各々独立に水素又は−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
23は各々独立に水素、−(C−C)アルキル又は−C(O)O−(C−C)アルキルである。本発明は11−β−HSD1の強力かつ選択的な阻害にとり有用である、式Iの化合物の提供に関する。
【0007】
本発明は更に、式Iの化合物又はその製薬塩、並びに薬理学的に許容できる担体、希釈剤又は賦形剤を含む医薬組成物の提供に関する。本発明は更に、メタボリックシンドローム及びそれに関係する障害の治療方法であって、かかる障害に罹患する患者に有効量の式Iの化合物又はその薬理学的に許容できる塩を投与することを含んでなる方法の提供に関する。
【0008】
一実施形態では本発明は上記で説明した、式Iの化合物又はその薬理学的に許容できる塩の提供に関する。本発明に係る化合物の全てが有用であるが、その中でも幾つかの化合物が特に興味深く、好適である。以下に幾つかの好適な化合物群を示す。
【0009】
別の実施形態では、本発明は式Iaにより表される構造を有する化合物、
【化4】


(Ia)
又はその薬理学的に許容できる塩の提供に関する。詳細には、式中、

【化5】


であり、式中、点線は式IaのR位置への結合部位を表し、
はハロゲンであり、Rはハロゲンであり、Rは水素又はハロゲンであり、

【化6】


であり、式中、点線は式IaのR位置への結合部位を表し、
は、水素、ハロゲン、−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)基であり、−C(O)OH、−C(O)O−(C−C)アルキル、−C(O)−(C−C)アルキル、−O−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、−SO−(C−C)アルキル、−N(R)(R)、
【化7】


であり、式中、点線はR位置への結合部位を表し、
式中、mは1、2又は3であり、
式中、nは0、1又は2であり、nが0であるとき“(CH)n”は結合であり、
は水素、ハロゲン、−CN又は−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
は水素、ハロゲン又は−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
は各々独立に−H、−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、−C(O)−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、−C(O)(C−C)シクロアルキル、−S(O)−(C−C)シクロアルキル又は−S(O)−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
は水素又はハロゲンであり、
20は各々独立に水素又は−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
21は各々独立に水素、ハロゲン又は−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
22は各々独立に水素又は−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
23は各々独立に水素、−(C−C)アルキル又は−C(O)O−(C−C)アルキルである。
別の実施形態では、本発明は式Iaで表される構造を有する化合物、
【化8】


(Ia)
又はその薬理学的に許容できる塩の提供に関する。詳細には、式中、

【化9】


であり、式中、点線は式IaのR位置への結合部位を表し、
は塩素、フッ素又は臭素であり、Rは塩素、フッ素又は臭素であり、Rは水素又はハロゲンであり、

【化10】


であり、式中、点線は式IaのR位置への結合部位を表し、
は、水素、ハロゲン、(−C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、−C(O)OH、−C(O)O−(C−C)アルキル、−C(O)−(C−C)アルキル、−O−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、−SO−(C−C4)アルキル、−N(R)(R)、
【化11】


であり、式中、点線はR位置への結合部位を表し、式中、mは1、2又は3であり、
は水素、ハロゲン、−CN又は−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
は水素、ハロゲン又は−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
は各々独立に水素、−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、−C(O)−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、−C(O)(C−C)シクロアルキル、−S(O)−(C−C)シクロアルキル又は−S(O)−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
は水素又はハロゲンであり、
20は各々独立に水素又は−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
21は各々独立に水素、ハロゲン又は−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
22は各々独立に水素又は−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
23は各々独立に水素、−(C−C)アルキル又は−C(O)O−(C−C)アルキルである。
別の実施形態では、本発明は式Iaで表される構造を有する化合物、
【化12】


(Ia)
又はその薬理学的に許容できる塩の提供に関する。詳細には、式中、

【化13】


であり、式中、点線は式IaのR位置への結合部位を表し、
は塩素、フッ素又は臭素であり、Rは塩素、フッ素又は臭素であり、Rは水素又はハロゲンであり、

【化14】


であり、式中、破線は式IaのR位置への結合部位を表し、
は水素、ハロゲン、−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、−C(O)OH、−C(O)O−(C−C)アルキル、−C(O)−(C−C)アルキル、−O−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、−SO−(C−C)アルキル、−N(R)(R)、
【化15】


であり、式中、点線はR位置への結合部位を表し、式中、mは1、2又は3であり、
は水素、ハロゲン、−CN又は−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
は水素、ハロゲン又は−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
は各々独立に水素、−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、−C(O)−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、−C(O)(C−C)シクロアルキル、−S(O)−(C−C)シクロアルキル又は−S(O)−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
は水素又はハロゲンであり、
20は各々独立に水素又は−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
21は各々独立に水素、ハロゲン又は−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
22は各々独立に水素又は−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
23は各々独立に水素、−(C−C)アルキル又は−C(O)O−(C−C)アルキルである。
別の実施形態では、本発明は式Iaで表される構造を有する化合物、
【化16】


(Ia)
又はその薬理学的に許容できる塩の提供に関する。詳細には、式中、

【化17】


であり、式中、点線は式IaのR位置への結合部位を表し、
は塩素、フッ素又は臭素であり、Rは塩素、フッ素又は臭素であり、Rは水素又はハロゲンであり、

【化18】


であり、式中、点線は式IaのR位置への結合部位を表し、

【化19】


であり、式中、点線はR位置への結合部位を表し、
は水素、ハロゲン、−CN又は−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
は水素、ハロゲン又は−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
は各々独立に水素、−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、−C(O)−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、−C(O)(C−C)シクロアルキル、−S(O)−(C−C)シクロアルキル又は−S(O)−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
は水素又はハロゲンであり、
20は各々独立に水素又は−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
21は各々独立に水素、ハロゲン又は−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
22は各々独立に水素又は−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
23は各々独立に水素、−(C−C)アルキル又は−C(O)O−(C−C)アルキルである。
別の実施形態では、本発明は式Iaで表される構造を有する化合物、
【化20】


(Ia)
又はその薬理学的に許容できる塩の提供に関する。詳細には、式中、

【化21】


であり、式中、点線は式IaのR位置への結合部位を表し、
は塩素、フッ素又は臭素であり、Rは塩素、フッ素又は臭素であり、Rは水素又はハロゲンであり、

【化22】


であり、式中、点線は式IaのR位置への結合部位を表し、
は−SO−(C−C)アルキル、
【化23】


であり、式中、点線はR位置への結合部位を表し、式中、mは1、2又は3であり、
は、水素、ハロゲン、−CN又は−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
は、水素、ハロゲン又は−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
は各々独立に水素、−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、−C(O)−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、−C(O)(C−C)シクロアルキル、−S(O)−(C−C)シクロアルキル又は−S(O)−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)である。
【0010】
別の実施形態では、本発明は式Iaで表される構造を有する化合物、
【化24】


(Ia)
又はその薬理学的に許容できる塩の提供に関する。詳細には、式中、

【化25】


であり、式中、点線は式IaのR位置への結合部位を表し、
は塩素、フッ素又は臭素であり、Rは塩素、フッ素又は臭素であり、Rは水素又はハロゲンであり、

【化26】


であり、式中、点線は式IaのR位置への結合部位を表し、
は−N(R)(R)、
【化27】


であり、式中、点線はR位置への結合部位を表し、
は水素、ハロゲン、−CN又は−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
は水素、ハロゲン又は−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
は各々独立に水素、−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、−C(O)−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、−C(O)(C−C)シクロアルキル、−S(O)−(C−C)シクロアルキル又は−S(O)−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)である。
【0011】
本発明の別の実施形態は上記の実施形態を更に限定した形態の提供に関し、それは以下から選択される。具体的には下記の各々の形態を各々独立に、上記の実施形態の各々と組み合わせてもよく、またかかる特定の組合せを選択し、かかる選択の際に可変部分を適宜調整することにより、更に限定された他の実施形態とすることができる。
【0012】
本発明の好適な実施形態は、以下の構造式で表される。
【化28】


式中、R
【化29】


又はその立体異性体、又はそれらの薬理学的に許容できる塩である。
【0013】
好ましくはR
【化30】


である。好ましくはR
【化31】


である。好ましくはRはハロゲンである。好ましくはRは−CHである。好ましくはRは塩素、フッ素又は臭素である。好ましくはRは塩素である。好ましくはRはフッ素である。好ましくはRは臭素である。好ましくはRはハロゲンである。好ましくはRは−CHである。好ましくはRは塩素、フッ素又は臭素である。好ましくはRは塩素である。好ましくはRはフッ素である。好ましくはRは臭素である。好ましくはRは塩素であり、Rは塩素である。好ましくはRは水素である。好ましくはRはハロゲンである。
【0014】
好ましくはR
【化32】


である。好ましくはR
【化33】


である。好ましくはR
【化34】


である。好ましくはR
【化35】


であり、Rは水素である。好ましくはR
【化36】


である。好ましくはR
【化37】


であり、Rは水素である。好ましくはR
【化38】


である。好ましくはR
【化39】


である。好ましくはR
【化40】


である。好ましくはR
【化41】


である。好ましくはR
【化42】


である。好ましくはRは−N(R)(R)、
【化43】


である。好ましくはRは−SO−(C−C)アルキル、
【化44】


である。好ましくはR
【化45】


である。好ましくはR
【化46】


であり、Rは−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)である。好ましくはRはハロゲンである。好ましくはRは塩素である。好ましくはRはフッ素である。
好ましくはRは水素である。好ましくはRはハロゲンである。好ましくはRは−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)である。好ましくはRは水素である。好ましくはRはハロゲン又は(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)である。好ましくはRはハロゲンである。好ましくはRは−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)である。好ましくはRは各々独立に水素である。好ましくはRは各々独立に−(C−C)アルキルである。好ましくはRは各々独立に−CHである。好ましくはRは水素である。好ましくはRはハロゲンである。好ましくはRはフッ素であり、Rはフッ素である。
【0015】
別の実施形態では、本発明は式Iaで表される構造を有する化合物、又はその薬理学的に許容できる塩の提供に関する。詳細には、式中、

【化47】


であり、式中、点線は式IaのR位置に取付けの位置を表し、Rは塩素であり、Rは塩素であり、Rは水素であり、

【化48】


であり、式中、点線は式IaのR位置への結合部位を表し、
は水素、塩素、フッ素、−CH、−CF、−C(CH、−CH(CH、−OC(CH、−C(O)O−CH、−N(−CH)−CH
【化49】


であり、式中、点線はR位置への結合部位を表し、式中、mは1、2又は3であり、
は水素、塩素、フッ素、臭素、−CH、CFであり、
は水素、塩素、フッ素、臭素であり、
は各々独立に水素、−CH、−CH−CH、−C(CH又は−CH(CHであり、
は水素、又は塩素、フッ素、臭素であり、
20は各々独立に水素、−CHであり、
22は各々独立に水素である。
【0016】
本発明の好適な実施形態は、(R)−3−(3,5−ジクロロ−4’−モルホリン−4−イル−ビフェニル−4−イルメチル)−1−(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−ベンゾイミダゾル−5−イル)−ピロリジン−2−オン、(R)−3−[2,6−ジクロロ−4−(2−フルオロ−6−モルホリン−4−イル−ピリジン−3−イル)−ベンジル]−1−(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−ベンゾイミダゾル−5−イル)−ピロリジン−2−オン、3−[R]−[3,5−ジクロロ−4’−(4−トリフルオロメチル−ピペリジン−1−カルボニル)−ビフェニル−4−イルメチル]−1−(4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンゾイミダゾル−5−イル)−ピロリジン−2−オン又は3−(3,5−ジクロロ−4’−フルオロ−ビフェニル−4−イルメチル)−1−(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−ベンゾイミダゾル−5−イル)−ピロリジン−2−オンである化合物、又はその立体異性体、又はそれらの薬理学的に許容できる塩の提供に関する。本発明の別の実施形態は本願明細書に記載の新規な中間体であって、11−β−HSD1の阻害に有用な、本願明細書に記載の式Iの化合物及びそれに関連する諸実施形態に係る化合物の調製用の中間体の提供に関する。
【0017】
2型糖尿病患者では通常、罹患率及び早熟性の死亡率の増加につながる異常なグルコースホメオスタシス及び高血糖症の原因となる「インシュリン耐性」が進行する。異常なグルコースホメオスタシスは肥満症、高血圧、並びに脂質、リポタンパク質及びアポリポタンパク質の代謝の変調を伴う。2型糖尿病患者では心血管性の合併症(例えばアテローム性動脈硬化症、冠状心疾患、発作、末梢血管疾患、高血圧、腎症、神経病変及び網膜症)が発症する危険性が高い。したがって、グルコースホメオスタシス、脂質代謝、肥満症及び高血圧の治療的制御は糖尿病の抑制及び治療において、重要である。インスリン抵抗性を有するが2型糖尿病を示さない多くの患者は「X症候群」又は「メタボリックシンドローム」に罹患する危険性が高い。メタボリックシンドロームは腹部の肥満、高インスリン血症、高血圧症、低HDL、高VLDL、高血圧、アテローム性動脈硬化症、冠状心疾患及び慢性腎不全と共にインスリン抵抗性が示されるのが特徴である。これらの患者は顕性の糖尿病が進行しているか否かに関わらず、上記の心血管性の合併症に罹患する危険性が高い。
【0018】
本発明の化合物は11−β−HSD1を阻害することにより、11−β−HSD1の阻害が効果的である、広範囲にわたる症状及び障害の治療に有用である。これらの障害及び症状を、「糖尿病性障害」及び「メタボリックシンドローム障害」として本願明細書では定義する。当業者であれば、11−β−HSD1活性の、障害時における病態又は障害へのホメオスタシス応答との関連性から、「糖尿病性障害」及び「メタボリックシンドローム障害」を同定することが可能である。すなわち、当該化合物は例えば「糖尿病性障害」及び「メタボリックシンドローム障害」の疾患、症状、関連する症候又は後遺症の予防、治療又は軽減にとり有用である。
【0019】
「糖尿病性障害」及び「メタボリックシンドローム障害」としては、限定されないが、糖尿病、1型糖尿病、2型糖尿病、高血糖、高インシュリン血症、β細胞不全、第1段階応答の復元によるβ細胞機能の改良、食事による高血糖、アポトーシス防止、障害性の絶食時グルコースレベル(IFG)、メタボリックシンドローム、低血糖、高/低カリウム血症、標準グルカゴンレベル、改良されたLDL/HDL比率、間食の減少、摂食障害、体重減少、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、糖尿病の結果としての肥満症、成人における不顕性自己免疫性糖尿病(LADA)、インスリン症、小島移植、小児糖尿病、妊娠糖尿病、糖尿病性の遅い合併症、ミクロ/マクロアルブミン尿症、腎症、網膜症、神経病変、糖尿病性足潰瘍、グルカゴン投与による腸運動性の減少、短小腸症候群、制瀉、胃液分泌増加、血流減少、勃起障害、緑内障、手術後侵襲、虚血後の血流再潅流によって生じる器官・組織損傷の回復、虚血心障害、心臓機能不全、うっ血性心不全、発作、心筋梗塞、不整脈、早死、抗アポトーシス、癒傷、耐糖能異常(IGT)、インスリン抵抗症候群、メタボリックシンドローム、エックス症候群、高脂血症、異脂肪血症、過トリグリセリド血症、リポ蛋白過剰血症、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症などの動脈硬化、グルカゴノーマ、急性膵炎、循環器病、高血圧、心臓肥大症、胃腸障害、肥満症、肥満症の結果としての糖尿病、糖尿病性異脂肪血症などが挙げられる。すなわち、本発明はまた、「糖尿病性障害」及び「メタボリックシンドローム障害」の治療に伴う不必要な副作用の1つ以上を低減又は排除する、当該障害の治療方法の提供に関する。
【0020】
本発明は更に、11−β−HSD1活性の阻害、11−β−HSD1活性により媒介される哺乳類の細胞応答の阻害、哺乳類における糖血値の減少、過剰な11−β−HSD1活性から生じる疾患の治療、哺乳類における糖尿病及び他のメタボリックシンドローム障害の治療、並びに糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満症、高血糖、アテローム性動脈硬化症、虚血性心疾患、発作、神経病変の治療、及び損傷回復に使用するための、式Iの化合物若しくはその製薬塩、又は式Iの化合物若しくはその製薬塩並びに薬理学的に許容できる担体、希釈剤若しくは賦形剤を含有する医薬組成物の提供に関する。すなわち、本発明の方法には式Iの化合物の予防的及び治療的投与が包含される。
【0021】
本発明は更に、11−β−HSD1活性の阻害用薬剤の製造、11−β−HSD1活性により媒介される哺乳類の細胞応答の阻害用薬剤の製造、哺乳類における糖血値の抑制用薬剤の製造、過剰な11−β−HSD1活性から生じる疾患の治療用薬剤の製造、哺乳類における糖尿病及び他のメタボリックシンドローム障害の治療用薬剤の製造、並びに糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満症、高血糖、アテローム性動脈硬化症、虚血性心疾患、発作、神経病変及び不良な損傷回復の治療用薬剤の製造への、式Iの化合物若しくはその製薬塩の使用方法の提供に関する。
【0022】
本発明は更に、哺乳類における過剰な11−β−HSD1活性から生じる疾患の治療方法、哺乳類における11−β−HSD1活性の阻害方法、11−β−HSD1活性により媒介される哺乳類の細胞応答の阻害方法、哺乳類における糖血値の低減方法、哺乳類における糖尿病及び他のメタボリックシンドローム障害の治療方法、並びに糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満症、高血糖、アテローム性動脈硬化症、虚血性心疾患、発作、神経病変及び不良な損傷回復の治療方法であって、かかる治療を必要とする哺乳類に、11−β−HSD1活性の阻害に十分な量の、式Iの化合物若しくはその薬理学的に許容できる塩、又は式Iの化合物若しくはその製薬塩、並びに薬理学的に許容できる担体、希釈剤若しくは添加剤を含んでなる医薬組成物を投与することを含んでなる前記方法の提供に関する。
【0023】
本発明は更に、式Iの化合物若しくはその製薬塩、並びに薬理学的に許容できる担体、希釈剤若しくは添加剤を含んでなる医薬組成物であって、11−β−HSD1活性の阻害、11−β−HSD1活性により媒介される細胞応答の阻害、哺乳類における糖血値の減少、哺乳類における糖尿病及び他のメタボリックシンドローム障害の治療、並びに糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満症、高血糖、アテローム性動脈硬化症、虚血性心疾患、発作、神経病変及び損傷回復の予防又は治療用に調製された、前記医薬組成物の提供に関する。
【0024】
本発明の更なる態様では本発明の化合物は更なる1つ以上の活性物質と適切な比率で組み合わされて投与される。かかる更なる活性物質は例えば抗糖尿病剤、抗肥満症剤、降圧剤、糖尿病に起因若しくは関連する合併症の治療剤、並びに肥満症に起因若しくは関連する合併症及び障害の治療剤から選択されてもよい。以下のリストにおいて、かかる組合せの幾つかのグループを列挙する。以下に名称を列挙する各々の薬剤を、同様に名称を列挙する他の薬剤と混合して、更なる組合せを提供してもよいことが理解されよう。
【0025】
すなわち、本発明の別の実施形態では本発明の化合物を、1つ以上の抗糖尿病剤との組み合わせで投与してもよい。
【0026】
好適な抗糖尿病剤としては、インシュリン、インシュリンアナログ及び誘導体(欧州特許出願公開第792290号(Novo Nordisk A/S)に記載の例えばNεB29−テトラデカノイル・デス(B30)ヒトインスリン、欧州特許出願公開第214826号及び第705275号(Novo Nordisk A/S)に記載の例えばAspB28ヒトインスリン、米国特許第5504188号(イーライ・リリー)に記載の例えばLysB28ProB29ヒトインスリン、欧州特許出願公開第368187号(アベンティス)に記載の例えばLantus(登録商標))、GLP−1及びGLP−1誘導体(例えば国際公開第98/08871号(Novo Nordisk A/S)に記載のもの)、並びに経口投与において有効な血糖降下剤が挙げられる。
【0027】
経口投与で有効な血糖降下剤としては、以下のものが挙げられる:イミダゾリン、スルホニルウレア、ビグアニド、メグリチニド、オキサジアゾリジンジオン、チアゾリジンジオン、インシュリン増感剤、インシュリン分泌促進物質(例えばグリメピリド)、α−グルコシダーゼ阻害剤、及びβ−細胞のATP依存性カリウムチャネルに作用する物質(例えば国際公開第97/26265号、国際公開第99/03861号及び国際公開第00/37474号(Novo Nordisk A/S)において開示されるようなカリウムチャネル開放物質、又はミチグリニド、又はカリウムチャネルブロッカー(例えばBTS−67582)、ナテグリニド、グルカゴン拮抗剤(例えば国際公開第99/01423号及び第00/39088号(Novo Nordisk A/S及びAgouron Pharmaceuticals, Inc.)、GLP−1アンタゴニスト、DPP−IV(ジペプチジルペプチダーゼ−IV)阻害剤、PTPアーゼ(チロシンホスファターゼ)阻害剤、糖新生及び/又は糖原分解の刺激に関係する肝酵素阻害剤、グルコース取り込み調節因子、グルコキナーゼ(GK)の活性剤(例えば、国際公開第00/58293号、国際公開第01/44216号、国際公開第01/83465号、国際公開第01/83478号、国際公開第01/85706号、国際公開第01/85707号及び国際公開第02/08209号(Hoffman−La Roche社)に開示されるもの、又は国際公開第03/00262号、国際公開第03/00267号及び国際公開第03/15774号(AstraZeneca社)(本明細書に援用される)において開示されるもの)、GSK−3(グリコゲン合成酵素キナーゼ−3)阻害剤、HMG CoA阻害剤(スタチン)などの抗脂質物質などの脂質代謝調節化合物、摂食を低下させる化合物、PPAR−α、PPAR−γ及びPPAR−δサブタイプを含むPPAR(ペルオキシソーム増殖剤で活性化する受容体)リガンド及びRXR(レチノイドX受容体)アゴニスト(例えばALRT−268、LG−1268又はLG−1069)。
【0028】
もう1つの実施形態では、本発明の化合物はインスリン又はNεB29−テトラデカノイル‐デス(B30)ヒトインスリン、AspB28ヒトインスリン、LysB28 ProB29ヒトインスリン、Lantus(登録商標)などのインスリンアナログ又は誘導体、又はこれらの1つ又はそれ以上からなる混合製剤と併用して投与される。
【0029】
本発明の更なる実施形態では本発明の化合物はグリベンクラミド、グリピジド、トルブタマイド、クロロパミデム、トラザミド、グリメプリド、グリカジド及びグリブリドなどのスルホニル尿素と併用して投与される。
【0030】
本発明の他の実施形態では本発明の化合物はビグアニド例えばメトルミンと併用して投与される。
【0031】
本発明の更に他の実施形態では本発明の化合物はメグリチニド例えばレパグリニド又はナテグリニドと併用して投与される。
【0032】
本発明の更に別の実施形態では本発明の化合物はチアゾリジンジオンインスリン抵抗性改善薬例えばトログリタゾン、シグリタゾン、ピオリタゾン、ロシグリタゾン、イサグリタゾン、ダルグリタゾン、エングリタゾン、CS−011/CI−1037又はT174又は国際公開第97/41097号パンフレット、国際公開第97/41119号パンフレット、国際公開第97/41120号パンフレット、国際公開第00/41121号パンフレット及び国際公開第98/45292号パンフレット(Dr. Reddy’s Research Foundation)に開示された化合物と併用して投与される。
【0033】
本発明の更に他の実施形態では本発明の化合物は例えばGI262570、YM−440、MCC−555、JTT−501、AR水素039242、KRP−197、GW−409544、CRE−16336、AR水素049020、LY510929、LY510929、MBX−102、CLX−0940、GW−501516などのインスリン抵抗性改善薬と、又はラガグリタザール(NN 622又は(−)DRF 2725)(Dr. Reddy’s Research Foundation)などの国際公開第99/19313号パンフレット、国際公開第00/50414号パンフレット、国際公開第00/63191号パンフレット、国際公開第00/63192号パンフレット及び国際公開第00/63193号パンフレット)、及び国際公開第00/23425号パンフレット、国際公開第00/23415号パンフレット、国際公開第00/23451号パンフレット、国際公開第00/23445号パンフレット、国際公開第00/23417号パンフレット、国際公開第00/23416号パンフレット、国際公開第00/63153号パンフレット、国際公開第00/63196号パンフレット、国際公開第00/63209号パンフレット、国際公開第00/63190号パンフレット及び国際公開第00/63189号パンフレット(Novo Nordisk A/S)に開示される化合物と併用して投与してもよい。
【0034】
本発明の更なる実施形態では本発明の化合物はα−グルコシダーゼ阻害剤、例えばボグリボース、エミグリテート、ミグリトール又はアカルボースと併用して投与される。
【0035】
本発明の他の実施形態では本発明の化合物はβ−細胞のATP−依存性のカリウムチャネルに作用する薬剤、例えばトルブタマイド、グリベンクラミド、グリピジド、グリカジド、BTS−67582又はレパグリニドと併用して投与される。
【0036】
本発明の更に他の実施形態ではナテグリニドと併用して本発明の化合物を投与してもよい。
【0037】
本発明の更に他の実施形態では本発明の化合物は抗脂血薬又は抗高脂血薬、例えばコレスチラミン、コレスチポル、クロフィブレート、ゲムフィブロジル、ロバスタチン、プラバスタチン、シムバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、プロブコル、デキストロチロキシン、フェノフィブレート又はアトロバスチンと併用して投与される。
【0038】
本発明の更に他の実施形態では本発明の化合物は食物摂取を低下させる化合物と併用して投与される。
【0039】
本発明の他の実施形態では本発明の化合物は一種以上の上記化合物と併用して、例えば、メトホルミンとグリブライドなどのスルホニル尿素、スルホニル尿素とアカルボース、ナテグリニドとメトホルミン、レパグリニドとメトホルミン、アカルボースとメトホルミン、スルホニル尿素、メトホルミンとトログリタゾン、インスリンとスルホニル尿素、インスリンとメトホルミン、インスリン、メトホルミン及びスルホニル尿素、インスリンとトログリタゾン、インスリンとロバスタチン等と併用して投与される。
【0040】
本願明細書における化合物の説明に使用される用語はそれらの通常の意味を有する。
【0041】
本発明の用語「(C−C)アルキル」、「(C−C)アルキル」又は「(C−C)アルキル」は示された炭素原子数の直鎖又は分岐鎖状の飽和脂肪族基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチルなど)を指す。用語「(C−C)アルコキシ」は酸素原子を介して結合したC−Cアルキル基を指し、例えばメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ基などが包含される。「ハロゲン」という用語はフッ素、塩素、臭素及びヨウ素のことを指す。用語「(C−C)シクロアルキル」は3〜8個の炭素原子数(通常3〜7個の炭素原子数)の飽和若しくは部分的に飽和した炭素環式化合物のことを指す。(C−C)シクロアルキルの例としてはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル基などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
本明細書で用いられる「任意に置換されてもよい」又は「任意の置換基」という用語は対象となる基が、非置換でもよく、又は1つ以上の特定の置換基で置換されてもよいことを意味する。その対象となる基が複数の置換基で置換されるとき、それらの置換基は同じでもよく、異なってもよい。更に、用語「独立に」、「独立に…である」及び「独立に…から選択される」とは対象となる基が同じでもよく、あるいは異なってもよいことを意味する。本願明細書で定義される具体的な用語は構造式中で複数回用いられてもよく、また各々の用語は各々の出現の際に個別的に定義されるものとする。
【0043】
例えばモルモット、イヌ、ネコ、ネズミ、マウス、ハムスター及び霊長類(ヒトを含む)は本発明の用語「患者」の範囲内に包含されるものと理解される。好適な患者はヒトである。「患者」という用語には家畜が包含される。家畜は食糧生産のために飼育される動物である。乳牛、種牛、雌牛、去勢ウシ、ヒツジ、バッファロ、バイソン、ヤギ及びアンテロープのようないわゆる反芻動物が、家畜の例として挙げられる。家畜の他の例としてはブタ及び鳥(家禽)(例えば鶏、カモ、シチメンチョウ及びガチョウ)などが挙げられる。治療対象となる患者は好ましくは哺乳類(特にヒト)である。
【0044】
本明細書に用いられる用語「治療」、「処置する」及び「治療する」はそれらの一般的に容認される意味を包含し、即ち、特定の症状又は病気の発現及び進行のリスクを予防・低減し、本明細書に記載の病気、疾患又は病理的状態の進行又は重症化を防止、阻害、抑制、緩和、改善、緩慢化、停止、遅延又は逆転させ、検査し、及び/又は現存する症状を治療するための、患者の管理及び看護を含み、例えば症状又は合併症の緩和又は軽減、又はその病気、疾患又は病理的状態の治癒又は排除を包含する。本発明の方法は必要に応じて、医学的な治療及び/又は予防的治療の両方を含んでなる。
【0045】
本発明の用語「治療上有効量」とは本願明細書に記載の様々な病的症状の症候を緩和するのに十分な、本発明の化合物の量を意味する。本発明により投与される化合物の具体的な投与量は当然ながら、例えば投与される化合物、投与経路、患者健康状態及び治療対象の病的症状などの、個別的な症状を取り巻く具体的な状況を考慮して決定される。
【0046】
「組成物」とは医薬組成物を意味し、1つ以上の式Iの化合物を含有する1つ以上の主成分と、担体を構成する1つ以上の不活性成分を含んでなる医薬製剤が包含される。したがって、本発明の医薬組成物には本発明の化合物と、薬理学的に許容できる担体とを混ぜることにより調製されるあらゆる組成物が包含される。
【0047】
「実質的に純粋な」という用語は所望の結晶形態の化合物を約90%超、好ましくは所望の結晶形態の化合物を約95%超含有する、純粋な結晶形態の状態のことを指す。
【0048】
用語「適切な溶媒」とは反応物質を十分に溶解させ、進行中の反応に影響を与えず、所望の反応のための媒体を提供する、あらゆる溶媒又は溶媒の混合物のことを指す。
【0049】
用語「ユニットドーズの形態」とは被験者及び他の非ヒト動物に対する単位の薬用量として適切な物理的に個別の単位を意味し、各単位は適当な医薬担体との組み合わせで所望の治療効果を生じると計算された活性物質の所定量を含有する。
【0050】
本発明の化合物は1つ以上のキラル中心を有してもよく、種々の立体配座を有してもよい。本発明の化合物はこれらのキラル中心の結果として、ラセミ化合物として存在してもよく、個々の鏡像異性体若しくは鏡像異性体の混合物として存在してもよく、あるいはジアステレオマー若しくはジアステレオマー混合物として存在してもよい。全てのかかるラセミ化合物、鏡像異性体、ジアステレオマー及び混合物は純粋であっても、部分的に精製されていても、未精製の混合物であっても、本発明の範囲内に包含される。本願明細書において、提供される例において、キラル中心又は周知の立体配座中心を含有する分子を示すときはその立体化学を、化合物名と分子の構造表示を用いて示すものとする。立体化学が不明若しくは未定義である場合、その立体化学は化合物名又は分子の構造表示では示さない。本発明の実施形態には本願明細書において、提供される実施例が含有され、その実施例においては1つのキラル若しくは立体配座の形又はその塩のみが記載されているが、当然ながら、本発明の別の実施形態には他の全ての立体異性体及び/又構造異性体、並びにその薬理学的に許容できる塩が包含される。これらの実施形態にはあらゆる単離された鏡像異性体、ジアステレオマー、及び/又はこれらの構造異性体、並びに複数の形を含んでいるいかなる混合物も包含される。
【0051】
更に、分子中に、二重結合、完全若しくは部分的に飽和した環系、又は回転が制限された1以上の不斉中心又は結合が存在するとき、ジアステレオマーが形成されうる。本発明では単離された、純粋な、部分的に精製されたジアステレオマー又はそれらの混合物としてのいかなるジアステレオマーであってもよく、本発明の範囲内に包含されることに留意すべきである。
【0052】
更にまた、本発明の化合物の幾つかは異なる互変異体の形として存在してもよく、当該化合物がとることができるいかなる互変異体の形態も本発明の範囲内に包含されることに留意すべきである。
【0053】
本明細書で用いられる用語「鏡像異性体富化」は一方の鏡像異性体の量の、他方の鏡像異性体と比較しての増大を指す。達成された鏡像異性体富化を表現する簡便な方法は鏡像異性体過剰率の概念、すなわち「ee」の概念であって、以下の式を用いて表される。
ee=(E−E)/(E+E)×100
式中、Eは第1の鏡像異性体の量であり、Eは第2の鏡像異性体の量である。このようにして、二つの鏡像異性体の第一の比がラセミ体混合物に存在するように50:50であり、かつ、70:30の最終比を生じるに十分な鏡像異性体富化が達成される場合、第1の鏡像異性体に関する上記ee(鏡像異性体過剰率)は40%である。しかしながら、最終比が90:10である場合、第1の鏡像異性体に関する上記ee(鏡像異性体過剰率)は80%である。90%を超えるeeが好ましく、95%を超えるeeが最も好ましく、99%を超えるeeが特に最も好ましい。鏡像異性体富化は当業者によりキラルカラムによるガスクロマトグラフィ又は高性能液体クロマトグラフィなどの標準の技法及び方法を使用して容易に決定される。鏡像異性体対の分離実施に必要な適切なキラルカラム、溶出液及び条件の選択は当業者にとって公知である。更に、式Iの化合物の特異的な立体異性体及び鏡像異性体は当業者によって、J.Jacquesら、「Enantiomers,Racemates,and Resolutions」John Wiley and Sons, Inc.、1981、及びE.L.ElielとS.H.Wilen,「Stereochemistry of Organic Compounds」(Wiley−Interscience 1994)、並びに1998年4月29日公開の欧州特許出願公開第838448号明細書に開示されたような周知の技法及び分離法を利用して調製できる。分離の例としては再結晶技法又はキラルクロマトグラフィーが挙げられる。
【0054】
式Iの化合物は種々の手順により当該技術の当業者により調製できるが、その幾つかに関して、以下に記載の手順及び反応式において、示すこととする。式Iの化合物の生成必要な具体的な工程の順序は合成しようとする具体的な化合物、出発物質及び置換基の相対的反応性などにより変化する。試薬又は出発物質は当業者であれば容易に入手でき、市販品でない材料の場合には当業者に公知の通常用いられる標準的な工程に従い、下記の種々の工程及び反応式に沿って容易に合成できる。
【0055】
以下の反応式、調製、実施例及び手順は本発明の実施をより詳細に説明するために提供されるものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。当業者であれば、本発明の技術思想と範囲から逸脱することなく多様な改善を実施できることを認識するであろう。本明細書で言及される全ての刊行物は本発明が属する分野の当業者のレベルを示す。
【0056】
反応式、調製、実施例及び手順における最適反応時間は反応の進行を通常のクロマトグラフィによりモニターすることにより決定できる。更に、本発明の化学反応はアルゴン又は窒素などの不活性雰囲気下で実施することが好ましい。溶媒の選択はその使用する溶媒が進行中の反応に不活性で、かつ反応物質を十分に可溶化して所望の反応を実施するものである限り、通常問題とはならない。化合物はその後の反応に供する前に分離・精製することが好ましい。化合物形成反応の間に反応溶液から化合物を析出させ、濾過して回収してもよいし、あるいは反応溶媒を抽出、蒸発又は流出させて除去してもよい。中間体及び式Iの最終産物は必要に応じ、再結晶又はシリカゲル又はアルミナなどの固体支持体上のクロマトグラフィ等、通常の方法で更に精製してもよい。
【0057】
熟練した当業者は全ての置換基が全ての反応条件と適合するわけではないことを認識する。これらの化合物は合成の際、公知の方法により適切なタイミングで保護又は修飾してもよい。
【0058】
本明細書の反応式、調製、実施例及び工程に用いられる用語並びに略語は、特に指示されない限り通常の意味を有する。例えば、本願明細書では以下の用語はそれぞれ以下の意味を有する。「psi」は平方インチ当たりのポンド(圧力)を指す。「TLC」は薄層クロマトグラフィを指す。「HPLC」は高速液体クロマトグラフィを指す。「R」は保持係数を指す。「R」は滞留時間を指す。「δ」はテトラメチルシランからのppmダウンフィールドを指す。「MS」は質量分析を指す。測定された分子量は、特に明記しない限り[M+H]のことを指す。“MS(APCi)は気圧化学イオン化法のことを指す。「UV」は紫外線分光測定法を指す。「H NMR」は陽子核磁気共鳴分光測定法を指す。「LCMS」は液体クロマトグラフィ−質量分析のことを指す。「GC/MS」はガスクロマトグラフィ/質量分析のことを指す。「IR」は赤外線スペクトロメトリのことを指し、IRスペクトラムとして列挙される最大吸収は対象となる部分のみを示し、全ての最大吸収を観察したものではない。「RT」は室温のことを指す。
【0059】
「THF」はテトラヒドロフランのことを指す。「LAH」は水素化アルミニウムリチウムのことを指す。「LDA」はリチウムジイソプロピルアミドのことを指す。「DMSO」はジメチルスルホキシドのことを指す。「DMF」はジメチルホルムアミドのことを指す。「EtOAc」は酢酸エチルのことを指す。「Pd−C」はパラジウム/炭素のことを指す。「DCM」はジクロロメタンのことを指す。「DMAP」はジメチルアミノピリジンのことを指す。「LiHMDS」はリチウムヘキサメチルジシリザンのことを指す。「TFA」はトリフルオロ酢酸のことを指す。「EDAC」はN−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸のことを指す。「HOBT」は1−ヒドロキシベンゾトリアゾールのことを指す。「Bn−9−BBN」はベンジル−9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナンのことを指す。「Pd(dppf)Cl」は、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−フェロセン)ジクロロパラジウム(II)のことを指す。「EDCI」はN−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸のことを指す。「DBU」は1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7のことを指す。「TBSCl」はtert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシメチルクロリドのことを指す。「NBS」はN−ブロモスクシニミドのことを指す。「TsOH」はp−トルエンスルホン酸のことを指す。「DCE」はジクロロエタンのことを指す。「DAST」は三フッ化(ジエチルアミノ)硫黄のことを指す。「EA/H」は酢酸エチル/ヘキサン混合物のことを指す。「Pd(dba)」はビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウムのことを指す。「BINAP」は2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ−1,1’−ビナフタレンのことを指す。「NMP」はN−メチルピロリジンのことを指す。「TMSCN」はトリメチルシリルシアニドのことを指す。「TBAF」はテトラブチルアンモニウムフルオライドのことを指す。「TfO」はトリフルオロメタンスルホン酸無水物のことを指す。「TBSO」はtert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシのことを指す。「OTf」はトリフルオロメタンスルホネートのことを指す。「MeTi(Oi−Pr))」はトリイソプロポキシメチルチタンのことを指す。「BBr」は三臭化ホウ素のことを指す。「PBr」は三臭化リンのことを指す。「Pd(PPh」はテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)のことを指す。「OAc」はアセテートのことを指す。「DME」はジメチルエタンのことを指す。「EtO」はジエチルエーテルのことを指す。「(PhP)Pd」はテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)のことを指す。「DMFDMA」はN,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタールのことを指す。「EtN」はトリエチルアミンのことを指す。「tBu」はt−ブチルのことを指す。「DIPEA」はジイソプロピルエチルアミンのことを指す。「EDC」は−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸のことを指す。「HOAc」は酢酸のことを指す。「boc」はt−ブトキシカルボニルのことを指す。構造式中、「Ph」はフェニル基のことを指し、「Me」はメチル基のことを指し、「Et」はエチル基のことを指し、「Bn」はベンジル基のことを指し、「MeOH」はメタノールのことを指し、「OTf」はトリフルオロメタンスルホネートのことを指し、「TIPSO」はトリイソプロピルシラニルオキシ基のことを指し、「TBSO」はtert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシ基のことを指す。
【0060】
本明細書に記載する実施例は本発明を例示するものであり、請求項に記載された本発明の範囲を限定することを目的とするものではない。調製例及び実施例ではMDL Information Systems社製のChemDraw UltraのAutoNom 2.2又はMDL ISIS/Draw Version2.5 SP1のAutoNom 2000を使用するか、又はChemical Abstracts Servicesを利用することにより命名した。
【0061】
Varian INOVA 400MHzスペクトロメータを用い、H NMRスペクトル(溶媒中)を得た。Mass Spectrometer(Agilent MSD SL)を備えたAgilent HP1100計測器を用いてLCMSを実施した。Waters Xterra C18(2.1×50mm、3.5ミクロン)を固定相として用い、標準的な方法として、5−100%のアセトニトリル/メタノール(50:50)の勾配(0.2%のギ酸アンモニウムを含有)で3.5分間処理し、更に50℃のカラム温度で0.5分間、100%のB液で1.0mL/分の流速で処理する方法を用いた。他の標準的な方法として、5−100%のアセトニトリル/メタノール(50:50)の勾配(0.2%のギ酸アンモニウムを含有)で7分間処理し、更に50℃のカラム温度で1分間、100%のB液で1.0mL/分の流速で処理する方法を用いた。Agilent MSD(ループマシン)を経た更なるMS分析は標準的なフロー注入分析(FIA)であり、カラムを用いず、0.5ml/分の流速で、80%のMeOH(6.5mMの酢酸アンモニウムを含有)で、30秒のラン時間で処理することにより実施した。
【化50】

【0062】
反応式Aにおいて、任意に置換されてもよいフェノール(1)を(例えばTBSClで)保護して化合物2を形成し、更に化合物2をアルデヒド(3)に変換させる。化合物3を、保護基(Pg)及び脱離基(Lg)を含む化合物と反応させ、エーテル化合物4を得る。Pgは−CH又は−CH−フェニル基であり、Lgはメシラート又はハロであってもよい。好ましくは、Lg−Pg化合物はI−CH又はBrCH−フェニル基である。アルデヒドを還元してアルコール(5)を形成させ、更に化合物6に変化させる。好ましくは化合物5をPBrでハロゲン化し、2−ブロモメチル化合物を調製する。
【0063】
式Iの化合物及びその他の化合物を保護及び脱保護する方法は当業者にとり公知であり、文献にも記載されている(例えばGreen及びWuts、Protective Groups in Organic Synthesis、第3版、ジョンワイリー社、1999を参照)。
【化51】

【0064】
反応式Bにおいて、式Iaの化合物を合成するにあたり、最初に化合物6(反応式A)を化合物7と反応させ、化合物8を形成させる。更にジメトキシ化合物8をアルデヒド(9)に変化させる。化合物9をテトラヒドロ−ベンゾイミダゾル−5−イルアミン(10)と反応させてラセミ体のラクタム(11)を形成させ、更に化合物13に変換する。化合物13を脱保護してフェノール(14)を調製する。化合物14はトリフルオロメタンスルホン酸無水物と反応させて異性体(15)のペアに変換する。ホウ酸試薬(R−B(OH))及び触媒(例えばテトラキス(トリフェニルホスフェン)パラジウム(0))を使用し、15のカップリング反応を実施する。
【化52】

【0065】
反応式Cは、立体選択的な合成方法による中間体化合物18の形成を示す。市販の(R)−4−ベンジル−オキサゾリジン−2−オンを、塩化4−ペンテノイルでアシル化し、化合物16を形成する。更に任意に置換されてもよい化合物6(反応式Aを参照)でアルキル化し、化合物17を調製する。化合物17を、オゾン、及びトリフェニルホスフィン又は四酸化オスミウム、及びメタ過ヨウ素酸ナトリウムなどのオキシダントを使用して酸化し、アルデヒド中間体化合物18を形成する。
【化53】

【0066】
反応式Dにおいて、中間体(18)をラクタム化合物20に変換し、「R」立体配座とする。脱保護を実施して化合物21を調製し、更にトリフレート化し(トリフルオロメタンスルホン酸無水物)し、異性体(22)のペアを調製する。ホウ酸試薬(R−B(OH))及び触媒(例えばテトラキス(トリフェニルホスフェン)パラジウム(0)を使用し、化合物22のカップリング反応を実施する。
【化54】

【0067】
反応式Eにおいて、ニトロベンズイミダゾール(23)を水素化し、ラセミ体の4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンゾイミダゾル−5−イルアミン(24)を形成させる。更に、化合物25を、ジベンゾイル−D−酒石酸(Siegfried Schwarz and Walter Schunack;Arch.Pharm.(312),pp933−939,1979)を使用して分別結晶化により分離する。
【化55】

【0068】
反応式Fにおいて、中間体(18)を、分離された化合物25(反応式E)と反応させ、「R」立体配座のラクタム化合物26を形成させる。脱保護を行い化合物27を調製し、更にトリフレート化(トリフルオロメタンスルホン酸無水物)して異性体対(28)を形成させる。ホウ酸試薬(R−B(OH))及び触媒(例えばテトラキス(トリフェニルホスフェン)パラジウム(0)を使用して28のカップリング反応を実施する。
【0069】
調製1:
2,6−ジクロロ−4−ヒドロキシ−ベンズアルデヒド
3Lのジメチルホルムアミド(DMF)中に、3,5ジクロロフェノール(1kg、6.13mol)を溶解し、0℃に冷却した。イミダゾール(918.74g、6.75mol)、tert−ブチルジメチルシリルクロライド(1017.13g、6.75mol)を添加した。室温に混合物を加温し、15分間撹拌した。水(6L)中に注ぎ、エーテル(4L)で抽出した。水で2回、10%の塩化リチウム水溶液、更にブラインで有機層を洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。濾過し、真空下で濃縮し、油状物としてtert−ブチル−(3,5−ジクロロフェノキシ)−ジメチル−シラン(1700g)を得た。
【0070】
4Lの無水テトラヒドロフラン中にtert−ブチル−(3,5−ジクロロフェノキシ)−ジメチル−シラン(425g、1.5mol)を溶解させ、−68℃に冷却した。徐々にsec−ブチルリチウム(103.1g、1.61mol)1.1当量を−68℃(〜1.75時間)で添加した。添加終了後、反応液を−70℃で30分間撹拌した。ジメチルホルムアミド(168.5g、2.3mol)を添加し、反応液を−70℃で1時間撹拌した。1Mの塩酸水溶液(3.5L)を添加し、反応液を室温に加温した。
【0071】
反応混合物をエーテル(5L)に注入し、水、更にブラインで洗浄した。硫酸ナトリウム上で乾燥させ、橙色固体となるまで真空濃縮した。冷却したジクロロメタンでリンスして粉末状とし、濾過し、250g(80%)の淡黄色の固体を得た。
【0072】
調製2:
2,6−ジクロロ−4メトキシベンズアルデヒド
900mLのジメチルホルムアミド中で2,6−ジクロロ−4−ヒドロキシ−ベンズアルデヒド(120g、628.24mmol)及び炭酸カリウム(173.65g、1256.5mmol)を混合し、ヨウ化メチル(107g、753.9mmol)で処理した。室温で3時間反応液を撹拌した。固体を濾過して除去し、6Lの水に注いだ。固体を濾過し、水で数回洗浄し、空気乾燥し、酢酸エチル中に溶解させた。水、更にブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。濾過し、〜100mLの体積となるまで真空濃縮し、固体を析出させた。更に濾過し、濾過物を濃縮し、第2の生成物を得た。ヘキサンで洗浄し、全ての固体を混合し、真空乾燥し、112.3gのオフホワイトの固体を得た:H NMR(400MHz、CDCl)δ10.41(s、1H)6.90(s、2H)3.87(s、3H)。
【0073】
調製3:
2,6−ジクロロ−4−ベンジルオキシ−ベンズアルデヒド
2Lのジメチルホルムアミド中の、2,6−ジクロロ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド(250g、1.3mol)及び炭酸カリウム(361.8g、2.62mol)の混合物を、臭化ベンジル(268.64g、1.57mol)で処理した。室温で1時間、反応液を撹拌した。固体を濾過して除去し、12Lの水に注いだ。固体を濾過して除去し、水で数回洗浄し、空気乾燥し、酢酸エチル中に溶解させた。硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、〜1.5Lとなるまで真空濃縮した。一晩静置し、濾過した。最少量のヘキサンで固体を洗浄し、真空乾燥した。濾過物を真空下で濃縮し、ヘキサンで粉砕して第2の生成物を得、それを第1の生成物と混合し、245gの白色の結晶を得た。同様の操作を繰り返し、第3の生成物として淡い褐色の粉末80g(88%の全収率)を得た:1H NMR(400MHz、DMSO−d6)δ10.26(s、1H)7.43(m、5H)7.28(s、2H)5.25(s、2H)。
【0074】
調製4:
(2,6−ジクロロ−4−メトキシフェニル)−メタノール
1500mLのエタノール中に2,6−ジクロロ−4−メトキシ−ベンズアルデヒド(112g、546mmol)を懸濁し、氷浴中で7℃に冷却した。水素化ホウ素ナトリウム(20.67、546mmol)を徐々に添加し、溶液を調製した。氷浴を除去し、2時間撹拌した。反応混合物に慎重に飽和塩化アンモニウム溶液(〜4L)を添加し、完全に反応が停止するまで撹拌した。ジクロロメタン(3×1L)で抽出し、硫酸ナトリウム上で混合有機抽出液を乾燥させた。濾過し、真空下で濃縮し、淡い褐色の固体113gを得た:1H NMR(400MHz、CDCl)δ6.86(s、2H)4.86(s、2H)3.78(s、3H)2.07(s、1H)。
【0075】
調製5:
(2,6−ジクロロ−4−ベンジルオキシ−フェニル)−メタノール
基本的に調製4の方法に従い、標記の化合物を調製した。NMR(DMSO−d)δ7.38(m、4H)7.33(m、1H)7.12(s、2H)5.14(s、2H)5.05(t、1H)4.59(d、2H)。
【0076】
調製6:
2−ブロモメチル−1,3−ジクロロ−5メトキシベンゼン
1200mLの無水THF中に(2,6−ジクロロ−4−メトキシ−フェニル)−メタノール(113g、545.76mmol)を溶解させ、窒素雰囲気下で0℃まで冷却した。窒素雰囲気下でPBr(59.1g、218.3mmol)を加えて、30分間の0°Cで攪拌した。飽和NaHCO水溶液に注ぎ、EtOAcで抽出した。乾燥させ、真空濃縮し、オフホワイトの固体として129.4gの生成物を得た。NMR(CDCl)δ6.88(s、2H)4.73(s、2H)3.79(s、3H)。
【0077】
調製7:
2−ブロモメチル−1,3−ジクロロ−5−ベンジルオキシ−ベンゼン
基本的に調製6の方法に従い、89%の収率で標記化合物を調製した。ES MS(m/z):347(M+1)。
【0078】
調製8:
4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンゾイミダゾル−5−イルアミン 二塩酸
500mlのガラス製Parrボトルに、5%のRh/C(5.215g)を添加した。窒素でボトルをパージし、3N HCl(50ml)で5%のRh/Cをウェットな状態にした。次に6−ニトロ−1H−ベンゾイミダゾール(10.354g、0.0635mol)及び3N HCl(100ml)を、パージ後のボトルに添加した。Parrボトルを封止し、窒素(3×)、及び水素(3×)で反応容器をパージした。次に水素(60psig)で反応混合物を加圧し、容器を密閉し、必要に応じて60psigを維持するために水素を添加し、反応液を撹拌し、80℃に加熱した。反応を24時間継続させ、加熱を停止し、反応混合物を室温に冷却させた。容器から過剰な水素を排出し、窒素(3×)で容器をパージし、反応混合物を濾過し、5%のRh/C触媒を除去した。濾過液を回転蒸発装置を用いて高真空下で乾燥させ、濃縮した。20mLのメタノール中に固体残留物を溶解させ、約60℃に加熱し、メタノールを添加(〜約10mL、又は必要に応じた量)し、残留物を完全に溶解させた。室温まで溶液を冷却し、エーテル(40mL)を添加した。白色固体を分離し、濾過し、高真空下で乾燥させ、生成物(8g)を得た。H NMR(DO):δ1.80−2.11(1H)2.09−2.22(1H)2.60−2.79(4H)3.01−3.15(1H)3.61−3.75(1H)8.41(1H)。
【0079】
調製9:
2−(4−ベンジルオキシ−2,6−ジクロロ−ベンジル)−2−(2,2−ジメトキシ−エチル)−マロン酸 ジエチルエステル
50mLのTHF中の2−(2,2−ジメトキシ−エチル)−マロン酸ジエチルエステル(4.5g、16.3mmol)を−78℃に冷却し、リチウムヘキサメチルシランアミド(1M、17mL)を滴下して添加した。15分後に、10mLのTHF中の5−ベンジルオキシ−2−ブロモメチル−1,3−ジクロロ−ベンゼン(17.9mmol、6.2g)を添加した。この混合物を室温に加温し、1N HClで酸性化し、酢酸エチルで抽出した。有機層を濃縮し、順相カラムクロマトグラフィで精製し、白色固体(7.0g、80%)として標題化合物を得た。
【0080】
調製10:
2−(4−ベンジルオキシ−2,6−ジクロロ−ベンジル)−2−(2−オキソ−エチル)−マロン酸 ジエチルエステル
95mLのアセトン中の2−(4−ベンジルオキシ−2,6−ジクロロ−ベンジル)−2−(2,2−ジメトキシ−エチル)−マロン酸 ジエチルエステル(10.0g、18.5mmol)(調製9)の溶液に、10mlのギ酸を添加した。24時間後、反応液を濃縮し、黄色の油状物(6.7g、80%)として2−(4−ベンジルオキシ−2,6−ジクロロ−ベンジル)−2−(2−オキソ−エチル)−マロン酸ジエチルエステルを得た。
【0081】
調製11:
3−(4−ベンジルオキシ−2,6−ジクロロ−ベンジル)−2−オキソ−1−(4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンゾイミダゾル−5−イル)−ピロリジン−3−カルボン酸 エチルエステル
70mlのメタノール中の2−(4−ベンジルオキシ−2,6−ジクロロ−ベンジル)−2−(2−オキソ−エチル)−マロン酸 ジエチルエステル(6.7g、14.4mmol)(調製10)、及び4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンゾイミダゾル−5−イルアミン二塩酸塩(6.0g、28.7mmol)(調製1)の溶液に、ナトリウムシアノボロハイドライド(3.6g、57.4mmol)を徐々に添加した。3時間後、4mlの酢酸を添加し、60℃で16時間加熱した。大部分のメタノールを回転蒸発により除去した。飽和重炭酸塩で得られた混合物をクエンチし、酢酸エチルで抽出した。硫酸ナトリウム上で抽出物を乾燥させ、濃縮し、順相カラムクロマトグラフィ(0−10%のメタノール/酢酸エチル)で精製し、白色固体(3g)として3−(4−ベンジルオキシ−2,6−ジクロロ−ベンジル)−2−オキソ−1−(4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンゾイミダゾル−5−イル)−ピロリジン−3−カルボン酸エチルエステルを得た。
【0082】
調製12:
3−(4−ベンジルオキシ−2,6−ジクロロ−ベンジル)−1−(4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンゾイミダゾル−5−イル)−ピロリジン−2−オン
3−(4−ベンジルオキシ−2,6−ジクロロ−ベンジル)−2−オキソ−1−(4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンゾイミダゾル−5−イル)−ピロリジン−3−カルボン酸エチルエステル(3g、5.5mmol)(調製11)を、10mlのメタノールに溶解させ、次に10mlの2N NaOHを添加した。この混合物を16時間撹拌し、濃縮し、次にジオキサン及び酢酸を添加し、3−(4−ベンジルオキシ−2,6−ジクロロ−ベンジル)−2−オキソ−1−(4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンゾイミダゾル−5−イル)−ピロリジン−3−カルボン酸を得た(分離は行わなかった)。一晩混合物を還流し、水でクエンチし、酢酸エチルで抽出した。飽和重炭酸塩で抽出液を洗浄し、濃縮して3−(4−ベンジルオキシ−2,6−ジクロロ−ベンジル)−1−(4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンゾイミダゾル−5−イル)−ピロリジン−2−オン(2.6g)を得た。MS:m/z(M+1)=470。
【0083】
調製13:
3−(2,6−ジクロロ−4−ヒドロキシ−ベンジル)−1−(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−ベンゾイミダゾル−5−イル)−ピロリジン−2−オン
50mlの酢酸エチル及び15mlのメタノール中の、3−(4−ベンジルオキシ−2,6−ジクロロ−ベンジル)−1−(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−ベンゾイミダゾル−5−イル)−ピロリジン−2−オン(4.3g、9.2mmol)(調製12)溶液(窒素パージ済み)に水酸化パラジウムを添加した。窒素により約22psiで加圧し、16時間撹拌した。この混合物を濾過し、濃縮し、固体生成物(2g)として3−(2,6−ジクロロ−4−ヒドロキシ−ベンジル)−1−(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−ベンゾイミダゾル−5−イル)−ピロリジン−2−オンを得た。MS:m/z(M+1)=380。
【0084】
調製14:
トリフルオロメタン硫酸の3,5−ジクロロ−4−[2−オキソ−1−(3−トリフルオロメタンスルホニル−4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンズイミダゾール−5−イル)−ピロリジン−3−イルメチル]−フェニルエステル、及び、トリフルオロメタン硫酸の3,5−ジクロロ−4−[2−オキソ−1−(1−トリフルオロメタンスルホニル−4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンズイミダゾール−5−イル)−ピロリジン−3−イルメチル]−フェニルエステル
【化56】


DCM(2mL)及びピリジン(2mL)中に、3−(2,6−ジクロロ−4−ヒドロキシ−ベンジル)−1−(4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンズイミダゾール−5−イル)−ピロリジン−2−オン(0.5g)(調製13)を添加した。溶液を氷浴中で0℃に冷却し、撹拌しながらトリフルオロメタンスルホン酸無水物(0.5mL)を滴下して添加した。次に反応混合物を−30℃で一晩フリーザー中に保存した。反応混合物を酢酸エチル(50mL)で希釈した。1MのHCl水溶液(2×50mL)、ブライン50mLで洗浄した。酢酸エチル層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、回転蒸発装置を用いて濃縮した。残留物を高真空下で乾燥させ、黄色の泡状の固体(650mg)として、トリフルオロメタン硫酸の3,5−ジクロロ−4−[2−オキソ−1−(3−トリフルオロメタンスルホニル−4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンズイミダゾール−5−イル)−ピロリジン−3−イルメチル]−フェニルエステル、及び、トリフルオロメタン硫酸の3,5−ジクロロ−4−[2−オキソ−1−(1−トリフルオロメタンスルホニル−4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンズイミダゾール−5−イル)−ピロリジン−3−イルメチル]−フェニルエステルの混合物を得た。精製せずに次の工程に用いた。MS:m/z(M+1)=643。
【0085】
調製15:
(R)−4−ベンジル−3−ペント−4−エノイル−オキサゾリジン−2−オン
撹拌装置、内部温度プローブ/N導入口及び1Lの滴下漏斗を備えた12Lの3口丸底フラスコに、20分間窒素フラッシュし、(R)−4−ベンジル−2−オキサゾリジノン(250g、1.41mol)を添加した。テトラヒドロフラン(THF)(1.8L)で希釈し、ドライアイス/アセトン浴槽中で内部温度が−74℃となるまで冷却した。カニューレを介してn−ブチルリチウムの1.6Mのヘキサン溶液(970mL、1.552mol)を滴下漏斗へ移し、内部温度が−65℃を超えない速度でオキサゾリジノン溶液に添加した。添加終了後、反応液を30分間、冷却浴中で撹拌した。4−ペントエノイルクロリド(175mL、1.585mol)を滴下漏斗へ移し、25分間にわたりアニオン溶液に滴加した。冷却浴中で45分間反応液を撹拌した。冷却浴を除去し、18時間反応液を撹拌させ、徐々に室温に加温した。混合液を、1N塩酸水溶液(1.5lL)及びジエチルエーテル(1L)で希釈した。層分離させ、水(2×1L)、ブライン(1L)で有機相を洗浄した。混合した水洗浄層をエーテル(1L)で抽出した。無水硫酸マグネシウム上で混合有機相を乾燥させ、濾過し、淡い黄褐色の油状物390gとなるまで濃縮した。ヘキサン:酢酸エチルを使用し、シリカゲルクロマトグラフィによって、この材料を精製し、澄んだ黄色の油状物345g(94.5%)を得た。
【0086】
調製16:
(R)−4−ベンジル−3−[(S)−2−(4−ベンジルオキシ−2,6−ジクロロ−ベンジル)−ペント−4−エノイル]−オキサゾリジン−2−オン
内部温度プローブ/窒素導入口及び滴下漏斗を備える12Lの3口丸底フラスコ中で(R)−4−ベンジル−3−ペント−4−エノイル−オキサゾリジン−2−オン(345g、1.33mol)及びTHF(1.8L)の混合液を窒素雰囲気下で撹拌し、−75℃に冷却した。1M LiHMDS(1.6L)を滴下漏斗へ移し、内部温度が−60℃を超えない速度で徐々に添加した。添加終了後、−25℃で30分間反応液を撹拌し、約−60℃に冷却した。この時点で、5分間にわたり固体状の2−ブロモメチル−1,3−ジクロロ−5−ベンジルオキシ−ベンゼンを徐々に添加した。添加終了後、反応容器を−10℃アセトン浴槽に移し、10℃未満の内部反応温度となるように1時間維持した。0℃に混合物を冷却し、2Lの1N塩酸水溶液でクエンチした。混合物を22Lの分液漏斗へ移し、2.5Lの水及び2Lのエーテルで希釈した。層を分離し、エーテルで水性層を抽出した。無水硫酸マグネシウム上で混合有機相を乾燥させ、濾過し、濃縮し、濃い油状物800gを得た。ヘキサン:酢酸エチルを使用し、シリカゲルクロマトグラフィで精製し、無色油状物597g(86%)を得た。
【0087】
調製17:
(R)−4−((R)−4−ベンジル−2−オキソ−オキサゾリジン−3−イル)−3−(4−ベンジルオキシ−2,6−ジクロロ−ベンジル)−4−オキソ−ブチルアルデヒド
(R)−4−ベンジル−3−[(S)−2−(4−ベンジルオキシ−2,6−ジクロロベンジル)−ペント−4−エノイル]−オキサゾリジン−2−オン(100g、190.68mmol)及びジクロロメタン(800mL)の混合液を−74℃に冷却した。オゾン(75%の速度でA−113オゾン発生器から発生)を、5CFMの速度でキャリアーエアーと共に反応液に供給してバブリングし、溶液が青色となるまで(約3時間)反応させた。200mLジクロロメタン溶液中のトリフェニルホスフィン(60g、228.8mmol)を添加し、反応液を撹拌し、一晩かけて室温に加温した。真空下で溶液を濃縮し、20−50%酢酸エチル/ヘキサンの勾配溶出を用いてシリカゲルクロマトグラフィにより精製し、白いフォーム状物として生成物82.1g(82%)を得た:MS(m/z):526(M+)。
【0088】
(R)−4−((R)−4−ベンジル−2−オキソ−オキサゾリジン−3−イル)−3−(4−ベンジルオキシ−2,6−ジクロロベンジル)−4−オキソ−ブチルアルデヒドの代替調製方法:
【0089】
(R)−4−ベンジル−3−[(S)−2−(4−ベンジルオキシ−2,6−ジクロロ−ベンジル)−ペント−4−エノイル]−オキサゾリジン−2−オン(0.96g、1.8mmol)、THF(21mL)及び水(7mL)の混合物を、2.5%の四酸化オスミウムのt−ブタノール(46mg、0.18mmol)溶液で処理した。過ヨウ素酸ソーダ(1.17g、5.5mmol)を添加し、室温で4時間反応液を撹拌した。水で反応をクエンチし、酢酸エチルで抽出した。1Nチオ硫酸ナトリウム水溶液、更にブラインで有機相を洗浄した。硫酸マグネシウム上で有機層を乾燥させ、濾過し、真空濃縮した。ヘキサン:酢酸エチルを使用し、シリカゲルクロマトグラフィで粗生成物を精製し、純粋な生成物を溶出させた。真空下で生成物を含有するフラクションを濃縮し、所望の生成物0.46g(48%)を得た:MS(m/z):526(M+)。
【0090】
調製18:
3−[R]−(4−ベンジルオキシ−2,6−ジクロロ−ベンジル)−1−(4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンズイミダゾール−3−イル)−ピロリジン−2−オン
調製10(5.25g)を、イミダゾロシクロヘキシ−3−アミン塩酸塩(2gm)(調製8)のメタノール(30mL)中の懸濁液に添加した。室温で30分間混合物を撹拌した。ナトリウムシアノボロハイドライド(1g)を添加し、2時間混合物を撹拌した。50℃で2時間反応混合物を加熱した。反応混合物を酢酸エチル(50mL)で希釈し、水(50mL)で混合物を洗浄した。硫酸ナトリウム上で酢酸エチル層を乾燥させ、回転蒸発器を用いて濃縮し、粗生成物を得た。当該粗生成物を、シリカフラッシュクロマトグラフィで、0−5%メタノール/DCM勾配で溶出し、ジアステレオマー混合物として3−(4−ベンジルオキシ−2,6−ジクロロ−ベンジル)−1−(4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンズイミダゾール−3−イル)−ピロリジン−2−オン(4.5gm)を得た。MS:m/z=470(M+1)。
【0091】
調製19:
3−[R]−(2,6−ジクロロ−4−ヒドロキシ−ベンジル)−1−(4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンズイミダゾール−5−イル)−ピロリジン−2−オン
圧力瓶中のメタノール(50mL)及び酢酸エチル(30mL)中に、3−(4−ベンジルオキシ−2,6−ジクロロ−ベンジル)−1−(4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンズイミダゾール−3−イル)−ピロリジン−2−オン(2.5g)(調製18)を添加した。水酸化パラジウム触媒(500mg)を添加し、40℃で水素雰囲気(30psi)下で一晩反応混合物を撹拌した。セライトを用いて反応混合物を濾過した。濾過液を濃縮し、3−[R]−(2,6−ジクロロ−4−ヒドロキシ−ベンジル)−1−[R/S]−(4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンズイミダゾール−5−イル)−ピロリジン−2−オンの混合物として白色固体状の生成物(1.6g)を得た。MS:m/z=379(M+1)。
【0092】
調製20:
トリフルオロメタン硫酸の3,5−ジクロロ−4−[2−オキソ−1−(3−トリフルオロメタンスルホニル−4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンズイミダゾール−5−イル)−ピロリジン−3−[R]−イルメチル]−フェニルエステル、及び、トリフルオロメタン硫酸の3,5−ジクロロ−4−[2−オキソ−1−(1−トリフルオロメタンスルホニル−4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンズイミダゾール−5−イル)−ピロリジン−3−[R]−イルメチル]−フェニルエステル(13)
【化57】

【0093】
DCM(20mL)及びピリジン(5mL)中に、3−[R]−(2,6−ジクロロ−4−ヒドロキシ−ベンジル)−1−(4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンズイミダゾール−5−イル)−ピロリジン−2−オン(1.6g)(調製19)を添加した。溶液を−78℃に冷却し、撹拌しながら、トリフルオロスルホン酸無水物(3mL)を滴下して添加した。次に反応混合物をフリーザー中で48時間保存した。反応混合物を酢酸エチル(150mL)で希釈した。1Mの水性HCl(2×50mL)、ブライン50mLで洗浄した。硫酸ナトリウム上で酢酸エチル層を乾燥させ、回転蒸発器で濃縮した。高真空下で残留物を乾燥させ、トリフルオロメタン硫酸の3,5−ジクロロ−4−[2−オキソ−1−(3−トリフルオロメタンスルホニル−4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンズイミダゾール−5−イル)−ピロリジン−3−イルメチル]−フェニルエステル、及び、トリフルオロメタン硫酸の3,5−ジクロロ−4−[2−オキソ−1−(1−トリフルオロメタンスルホニル−4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンズイミダゾール−5−イル)−ピロリジン−3−イルメチル]−フェニルエステルの混合物として固体(2.01g)を得た。当該混合物を、更に精製せずに次の工程に用いた。MS:m/z(M+1)=643。
【0094】
調製21及び22:
3−[R]−(4−ベンジルオキシ−2,6−ジクロロ−ベンジル)−1−(4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンゾイミダゾール−3−イル)−ピロリジン−2−オンのキラル精製
Chiralpak AD−Hカラム(0.46×15cm)において、3−(4−ベンジルオキシ−2,6−ジクロロ−ベンジル)−1−(4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンゾイミダゾール−3−イル)−ピロリジン−2−オン(2g)(調製18)のジアステレオ異性体混合物を、3Aエタノール/ヘプタン/DMEA=60:40:0.2溶出(流速=0.6mL/分)により精製し、異性体1(調製21、5.4分の滞留時間、922mg)及び異性体2(調製22、7.1分の滞留時間、866mg)を得た。調製23に異性体2を使用した。
【0095】
調製23:
4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンゾイミダゾル−5−イルアミン ジベンゾイル−D−酒石酸(Siegfried Schwarz and Walter Schunack;Arch.Pharm.vol312,pp933−939,1979)
4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−ベンゾイミダゾル−5−イルアミン二塩酸塩(42g、200mmol)(調製8)を350mlのHO中に溶解させた。バブリングが終了するまで、この溶液に重炭酸ナトリウム(50g、600mmol)を徐々に添加した。必要に応じて60℃に加熱して、当該塩を完全にクエンチさせる。最終的なpHは10であった。この水性混合物を濃縮し、一晩真空ポンプで乾燥させた。加温したエタノール(400ml)を添加し、撹拌して塩固体を溶解させ、濾過した。抽出をもう一度繰り返した。必要に応じて撹拌装置を用いて一晩撹拌し、全ての固体を溶解させる。エタノール抽出液を800mlまで濃縮し、400mlのHO及びジベンジル−D−酒石酸(75g、210mmol)を添加した。10〜15分以内に固体が形成された。この混合物を一晩撹拌した。固体を濾過し、4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンゾイミダゾル−5−イルアミン ジベンゾイル−D−酒石酸塩を得、それをコニカルフラスコ中で、メタノール(350mL)に溶解させ、撹拌しながら50〜60℃に加熱し、再結晶させた。必要に応じて更にメタノールを追加し、全ての材料を溶解させる。混合物を加温しながら水(20mL)を添加した。撹拌しながら混合物を室温に冷却し、白色固体の懸濁液が得られた。固体を濾過し、乾燥させ、アミノシクロヘキシルイミダゾールジベンジル−D−酒石酸塩の濃縮物を得た。更に再結晶操作を同様に3回繰り返し、濃縮物(収量=25.4g、ee〜92%)を得た。
【0096】
調製24:
3−[R]−(4−ベンジルオキシ−2,6−ジクロロ−ベンジル)−1−(4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンズイミダゾール−3−イル)−ピロリジン−2−オン
調製17(4.87g)を、4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンゾイミダゾル−5−イルアミン ジベンゾイル−D−酒石酸(調製23)のメタノール(20mL)懸濁液に添加した。室温で30分間混合物を撹拌した。ナトリウムシアノボロハイドライド(0.75g)を添加し、混合物を2時間撹拌した。50℃で2時間、反応混合物を加熱した。反応混合物をDCM(200mL)で希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム溶液(2×100mL)、更に水(100mL)で混合物を洗浄した。硫酸ナトリウム上でDCM層を乾燥させ、回転蒸発により濃縮し、粗生成物を得た。当該粗生成物をシリカフラッシュクロマトグラフィに供し、0−5%のメタノール/DCMで勾配溶出して精製し、標題化合物(3.35gm)を得た。MS:m/z(M+1)=470。
【0097】
調製25:
3−[R]−(2,6−ジクロロ−4−ヒドロキシ−ベンジル)−1−(4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンズイミダゾール−5−イル)−ピロリジン−2−オン
圧力瓶中で、メタノール(30mL)及び酢酸エチル(20mL)中に3−[R]−(4−ベンジルオキシ−2,6−ジクロロ−ベンジル)−1−(4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンズイミダゾール−3−イル)−ピロリジン−2−オン(3.35g)(調製24)を添加した。水酸化パラジウム触媒(500mg)を添加し、水素雰囲気(30psi)下、40℃で4時間、更に室温で一晩、反応混合物を撹拌した。セライト上で反応混合物を濾過した。濾過液を濃縮し、白色固体(2.69gm)として標題化合物を得た。MS:m/z=379(M+1)。
【0098】
調製26:
トリフルオロメタン硫酸の3,5−ジクロロ−4−[2−オキソ−1−(3−トリフルオロメタンスルホニル−4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンズイミダゾール−5−イル)−ピロリジン−3−[R]−イルメチル]−フェニルエステル、及び、トリフルオロメタン硫酸の3,5−ジクロロ−4−[2−オキソ−1−(1−トリフルオロメタンスルホニル−4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンズイミダゾール−5−イル)−ピロリジン−3−[R]−イルメチル]−フェニルエステル
【化58】


DCM(10mL)及びピリジン(10mL)中に、3−[R]−(2,6−ジクロロ−4−ヒドロキシ−ベンジル)−1−(4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンズイミダゾール−5−イル)−ピロリジン−2−オン(調製25)(2.5g)を添加した。溶液を−78℃に冷却し、撹拌しながらトリフルオロスルホン酸無水物(4mL)を滴下して添加した。次に反応混合物を一晩静置した。反応混合物を酢酸エチル(150mL)で希釈した。1MのHCl(2×100mL)水溶液、ブライン100mLで洗浄した。硫酸ナトリウム上で酢酸エチル層を乾燥させ、回転蒸発器を用いて濃縮した。高真空下で残留物を乾燥させ、黄色の泡状の固体(3.4g)として標題化合物の混合物を得た。
【0099】
調製27:
エチル2−(4−ブロモ−2−クロロベンジル)−4−オキソブタノエート
エチル2−(4−ブロモ−2−クロロベンジル)ペント−4−エノエート(21g、63mmol)、2.5重量%OsO(64g、6.3mmol)のTHF(400mL)及び水(160mL)溶液に、過ヨウ素酸ナトリウム(41g、190mmol)を添加し、2時間撹拌した。酢酸エチルで反応混合物を抽出し、チオ硫酸ナトリウム溶液で有機層を洗浄した。硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。シリカゲルカラムで残留物を精製し、無色油状物として標題化合物(15.9g、75%)を得た。
【0100】
調製28:
(4R,5S)−(シス)−3−ペント−4−エノイル−4,5−ジフェニル−オキサゾリジン−2−オン
THF(100mL)中に(4R,5S)−(+)−シス−4,5−ジフェニル−2−オキサゾリジノン(2.06g、8.62mmol)を溶解させ、−78℃に冷却した。n−BuLi(ヘキサン中1.6M、5.66mL、9.05mmol)を添加し、30分間撹拌した。次にペント−4−エノイルクロライド(1.53g、12.93mmol)を添加し、溶液を1時間撹拌した。水(100mL)を添加し、酢酸エチル(3×200mL)で水性層を抽出した。有機層を混合し、NaSOによって乾燥させ、濾過し、濃縮し、フラッシュカラムクロマトグラフィ(シリカゲル、20〜40%のEtOAc−ヘキサン)で精製し、白色固体として標題化合物1.42g(51%)を得た。
【0101】
調製29:
3−ベンジル−1−シクロヘキシル−ピロリジン−2−オン
THF(30mL)中に1−シクロヘキシル−ピロリジン−2−オン(400mg、2.4mmol)を添加し、−78℃に冷却した。徐々にLDA(2.0M、2.4mL、4.8mmol)を添加し、15分間撹拌した。臭化ベンジル(1.23g、7.2mmol)を添加し、3時間撹拌した。塩化アンモニウムでクエンチし、ジクロロメタンで抽出した。硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。シリカゲル(20〜50%酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、標題化合物432mg(70%)を得た。質量スペクトル(apci)m/z=258.2(M+H)。
【0102】
調製30:
(4R,5S)−(シス)−3−[2−(S)−(2−クロロ−6−フルオロ−ベンジル)−ペント−4−エノイル]−4,5−ジフェニル−オキサゾリジン−2−オン
調製29の合成方法を使用して、2−ブロモメチル−1−クロロ−3−フルオロ−ベンゼンで(4R,5S)−(シス)−3−ペント−4−エノイル−4,5−ジフェニル−オキサゾリジン−2−オン(1.48g、6.61mmol)をアルキル化し、白色固体として標題化合物1.28g(62%)を得た。
【0103】
調製31:
(4R,5S)−(シス)−3−(2−(R)−クロロ−6−フルオロ−ベンジル)−4−オキソ−4−(2−オキソ−4,5−ジフェニル−オキサゾリジン−3−イル)−ブチルアルデヒド
ジクロロメタン(100mL)中に(4R,5S)−(シス)−3−[2−(S)−(2−クロロ−6−フルオロ−ベンジル)−ペント−4−エノイル]−4,5−ジフェニル−オキサゾリジン−2−オン(1.28g、2.75mmol)を溶解させ、0℃に冷却した。撹拌しながらオゾンで溶液をバブリングし、溶液が青色になるまで反応させた。溶液を1時間撹拌し、青色が消えるまで、混合物を窒素でバブリングした。MeS(0.85g、13.75mmol)を添加し、溶液を6時間撹拌した。減圧下で溶媒を除去し、残留物をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル、20〜40%のEtOAc−ヘキサン)で精製し、無色油状物として標題化合物0.45g(35%)を得た。
【0104】
調製32:
3−(R)−(2−クロロ−6−フルオロ−ベンジル)−1−シクロヘキシル−ピロリジン−2−オン
THF(50mL)中に(4R,5S)−(シス)−3−(2−(R)−クロロ−6−フルオロ−ベンジル)−4−オキソ−4−(2−オキソ−4,5−ジフェニル−オキサゾリジン−3−イル)−ブチルアルデヒド(0.45g、0.97mmol)を溶解させた。室温、窒素雰囲気下で、シクロヘキシルアミン(0.19g、1.94mmol)及び酢酸(0.12g、1.94mmol)を添加した。溶液を1時間撹拌し、更にナトリウムトリアセトキシボロハイドライド(0.82g、3.88mmol)を添加した。反応混合物を一晩撹拌し、水(50mL)を添加した。ジクロロメタン(3×100mL)で水性層を抽出した。有機層を混合し、NaSOによって乾燥させ、濾過し、濃縮し、フラッシュカラムクロマトグラフィ(シリカゲル、20〜50%のEtOAc−ヘキサン)で精製し、無色の油状物として標題化合物0.26g(88%)を得た。質量スペクトル(イオンスプレー):m/z=310.1、312.2、M+1。
【0105】
実施例1:
1−(4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンゾイミダゾル−5−イル)−3−(3,5,4’−トリクロロ−ビフェニル−4−イルメチル)−ピロリジン−2−オン
【化59】


2mlのジオキサン中に、トリフルオロメタン硫酸の3,5−ジクロロ−4−[2−オキソ−1−(3−トリフルオロメタンスルホニル−4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンズイミダゾール−5−イル)−ピロリジン−3−イルメチル]−フェニルエステル及びトリフルオロメタン硫酸の3,5−ジクロロ−4−[2−オキソ−1−(1−トリフルオロメタンスルホニル−4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンズイミダゾール−5−イル)−ピロリジン−3−イルメチル]−フェニルエステル(調製14)0.23mmol(0.15g)を溶解させ、この溶液に、4−クロロフェニルホウ酸(45mg、0.28mmol)及び0.5mLの2M炭酸ナトリウムを添加した。1分間混合物を窒素パージし、テトラキス(トリフェニルホスフェン)パラジウム(0)(27mg、0.02mmol)を添加した。反応液を密封し、90℃で45分間、マイクロ波加熱した。反応液をSCXカラムにアプライし、メタノール(2カラム体積)で洗浄した。2カラム体積の2N NH/メタノールで洗浄し、半精製物を得た。更にHPLC又は順相クロマトグラフィを使用して精製し、白色固体(60.0mg、44%)として1−(4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンゾイミダゾル−5−イル)−3−(3,5,4’−トリクロロ−ビフェニル−4−イルメチル)−ピロリジン−2−オンを得た。MS:m/z(M+1)=476。
【0106】
表1:4−クロロフェニルホウ酸を、カラム3に示す試薬で置き換えたことを除き、基本的に実施例1にて説明した手順に従い、表1の実施例の化合物を調製した。逆相HPLCクロマトグラフィを使用して化合物を精製し、化合物のトリフルオロ酢酸塩を得た。
【0107】
【表1】

【0108】
【表2】

【0109】
【表3】

【0110】
【表4】

【0111】
【表5】

【0112】
【表6】

実施例18:
3−[3,5−ジクロロ−4’−(4−メチル−ピペラジン−1−カルボニル)−ビフェニル−4−イルメチル]−1−(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−ベンゾイミダゾル−5−イル)−ピロリジン−2−オン
【化60】


2mlのジオキサン(0.15g、0.23mmol)中に、トリフルオロメタン硫酸の3,5−ジクロロ−4−[2−オキソ−1−(3−トリフルオロメタンスルホニル−4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンズイミダゾール−5−イル)−ピロリジン−3−イルメチル]−フェニルエステル、及びトリフルオロメタン硫酸の3,5−ジクロロ−4−[2−オキソ−1−(1−トリフルオロメタンスルホニル−4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンズイミダゾール−5−イル)−ピロリジン−3−イルメチル]−フェニルエステル(調製14)(0.15g、0.23mmol)を溶解させた。この溶液に、4−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−フェニル−メタノンホウ酸(69mg、0.28mmol)及び0.5mL 2M炭酸ナトリウムを添加した。混合物を1分間窒素パージし、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(27mg、0.02mmol)を添加した。反応液を密封し、90℃で45分間マイクロ波で加熱した。反応液をSCXカラムにアプライし、メタノール(2カラム体積)で洗浄した。2カラム体積の2N NH/メタノールで洗浄し、半精製物を得た。更にHPLC又は順相クロマトグラフィを使用して精製し、3−[3,5−ジクロロ−4’−(4−メチル−ピペラジン−1−カルボニル)−ビフェニル−4−イルメチル]−1−(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−ベンゾイミダゾル−5−イル)−ピロリジン−2−オン(110mg)を得た。MS:m/z(M+1)=566。
【0113】
表2:4−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−フェニル−メタノンホウ酸を、カラム3に示す試薬と置き換えたことを除き、基本的に実施例18にて説明した方法に従い、表2の実施例の化合物を調製した。逆相HPLCクロマトグラフィを使用して化合物を精製し、トリフルオロ酢酸塩を得た。
【0114】
【表7】

【0115】
実施例22及び23:
3−[R]−[4−(4−フルオロフェニル−2,6−ジクロロ−ベンジル)−1−(4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンゾイミダゾール−3−イル)−ピロリジン−2−オン
【化61】


バイアル中、10mLのDME中で、トリフルオロメタン硫酸の3,5−ジクロロ−4−[2−オキソ−1−(3−トリフルオロメタンスルホニル−4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンズイミダゾール−5−イル)−ピロリジン−3−イルメチル]−フェニルエステル、トリフルオロメタン硫酸の3,5−ジクロロ−4−[2−オキソ−1−(1−トリフルオロメタンスルホニル−4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンズイミダゾール−5−イル)−ピロリジン−3−イルメチル]−フェニルエステル(850mg)(調製20)、4−フルオロフェニルホウ酸(221mg)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(16mg)及び飽和重炭酸ナトリウム(1mL)の混合物を90℃に加熱した。反応液を、酢酸エチル(10mL)を用いてSCXカラム(10gm、Varion)中に通して濾過した。1Mのアンモニア/メタノールで生成物を溶出し、回転蒸発器を用いて乾燥濃縮し、粗生成物(400mg)を得た。この材料をChiralpak AD−H(4.6×150mm)カラムを用いて、3Aエタノール/ヘプタン/DMEA=60:40:0.2(流速=0.6mL/分)で溶出することによりでキラル精製し、実施例22(異性体1、MS:m/z(M+1)=458、Rt.=5.8分、ee>99%、187mg)、及び、実施例23(異性体2、MS:m/z(M+1)=458、Rt.=9.7分、ee>99%、164mg)を得た。
【0116】
実施例24及び25:
(R)−3−[3,5−ジクロロ−4’−(モルホリン−4−カルボニル)−ビフェニル−4−イルメチル]−1−(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−ベンゾイミダゾル−5−イル)−ピロリジン−2−オン塩酸塩
【化62】


4−フルオロフェニルホウ酸を、4−(モルホリン−4−カルボニル)フェニルホウ酸で置き換えたことを除き、基本的に実施例22及び23の手順に従い、実施例24及び25を調製した。キラル精製を行い、実施例24(異性体1、MS:m/z(M+1)=553、Rt.:7.3分)、及び、実施例25(異性体2、MS:m/z(M+1)=553、Rt.:16.6分)を得た。
【0117】
実施例26:
1−(4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンゾイミダゾル−5−イル)−3−[R]−[2,6−ジクロロ−4(4−N,N−ジメチルスルホニルフェニル)−フェニル−ピロリジン−2−オン
【化63】


2mlのジオキサン中に調製26(0.15g、0.23mmol)を溶解させた。この溶液に、4−N,N−ジメチルスルホニルフェニルホウ酸(45mg、0.28mmol)及び0.5mLの2M炭酸ナトリウムを添加した。混合物を1分間窒素でパージし、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(27mg、0.02mmol)を添加した。反応液を密封し、90℃で45分間マイクロ波で加熱した。反応液をSCXカラムにアプライし、メタノール(2カラム体積)で洗浄した。2カラム体積の2N NH/メタノールで洗浄し、半精製物を得た。HPLC又は順相クロマトグラフィで更に精製し、1−(4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンゾイミダゾル−5−イル)−3−[R]−2,6−ジクロロ−4(4−N,N−ジメチルスルホニルフェニル)−フェニル−ピロリジン−2−オンを白色固体(mg、44%)として得た。MS:m/z=547(M+1)。
【0118】
表3:4−N,N−ジメチルスルホニルフェニルホウ酸を、カラム3に示す試薬で置き換えたことを除き、基本的に実施例26にて説明した方法に従い、表3の実施例の化合物を調製した。
【0119】
【表8】

【0120】
【表9】

【0121】
【表10】

【0122】
【表11】

【0123】
【表12】

【0124】
実施例42:
3−[R]−[3,5−ジクロロ−4’−(4−トリフルオロメチル−ピペリジン−1−カルボニル)−ビフェニル−4−イルメチル]−1−(4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンゾイミダゾル−5−イル)−ピロリジン−2−オン
【化64】


2mlのジオキサン中に調製26(0.10g、0.16mmol)を溶解させた。この溶液に、(4−クロロカルボニルフェニル)ホウ酸無水物(52mg、0.31mmol)、4−トリフルオロメチルピペリジン塩酸塩(76mg、0.40mmol)及び0.5mLの2M炭酸ナトリウムを添加した。混合物を1分間窒素パージし、テトラキス(トリフェニルホスフェン)パラジウム(0)(23mg、0.02mmol)を添加した。反応液を密封し、110℃で30分間、マイクロ波により加熱した。反応液をSCXカラムにアプライし、メタノール(2カラム体積)で洗浄した。2カラム体積の2N NH/メタノールで洗浄し、半精製物を得た。更にHPLC又は順相クロマトグラフィを使用して精製し、3−(3,5−ジクロロ−4’−モルホリン−4−イル−ビフェニル−4−イルメチル)−1−(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−ベンゾイミダゾル−5−イル)−ピロリジン−2−オン(43mg)を得た。MS:m/z=625(M+1)。
【0125】
実施例43:
(R)−3−[3,5−ジクロロ−4’−(4,4−ジフルオロ−ピペリジン−1−カルボニル)−ビフェニル−4−イルメチル]−1−(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−ベンゾイミダゾル−5−イル)−ピロリジン−2−オン
【化65】


4−トリフルオロメチルピペリジン塩酸塩を、4,4−ジフルオロ−ピペリジンで置き換えたことを除き、基本的に実施例42にて説明した手順に従い、実施例43を調製した。MS:m/z(M+1)=587。
【0126】
実施例44:
3−(4−ブロモ−2−クロロベンジル)−1−(4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンゾ[d]イミダゾル−5−イル)ピロリジン−2−オン TFA塩
【化66】


調製32の合成手順を用い、エチル2−(4−ブロモ−2−クロロベンジル)−4−オキソブタノエート(0.95g、2.85mmol)及び4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンゾ[d]イミダゾル−5−アミン(0.49g、2.85mmol)を使用して、白色固体として標題化合物0.52g(45%)を得た。MS(APCI−posモード)m/z(rel強度)408.1(80)、410.1(100)。
【0127】
以下のセクションにおいて、酵素的及び機能的アッセイによる本発明の化合物の評価に関して記載する。
【0128】
11β−HSD 1型酵素アッセイ
ヒトの11β−HSD 1型の活性は蛍光試験法を用い、NADPH生成をアッセイすることにより測定した。固体の化合物は10mMの濃度となるようにDMSOに溶解させた。各々の20μLを96穴ポリプロピレン製ヌンクプレートのカラムへ添加し、そこで更に50倍に希釈し、その後二段階滴定し、それをTecan Genesis 200自動化システムを使用して更にDMSOを添加しながら、プレート全体にわたり、10回行った。プレートを更に、Tecan Temo 96穴ヘッド及びUltra 384プレートリーダーを装備したTecan Freedom 200システムへ取付けた。96穴ポリプロピレン製ヌンクプレートに試薬を添加し、以下のとおり、黒い96穴Molecular Devices High Efficiencyアッセイプレート(40μL/ウェル)に個々に添加した。基質(2.22mMのNADP、55.5μM Cortisol、10mMのトリス、0.25%のPrionex、0.1%のトリトンX−100):9μL/ウェル、水:3μL/ウェル(化合物用のウェル又はコントロール及びスタンダードウェル)、組換えヒト11β−HSD 1型酵素:6μL/ウェル、希釈した化合物:2μL/ウェル。最終的な阻害%の算出は最小及び最大のアッセイデータを示す一連のウェルのデータを加算して行った(667μMカルベノキソロンと共に基質を含有する1セット(バックグラウンド)、及び化合物を含まず、基質及び酵素を含有する他のセット(最大シグナル)。最終的なDMSO濃度は全ての化合物、コントロール及びスタンダードにおいて、0.5%であった。次にプレートを15秒間Tecanのロボットアームによってシェーカーに配置し、カバーをかけ、室温で3時間インキュベートした。インキュベート終了後、Tecanロボットアームによって、個々のスタッカから各プレートを取り出し、250μMカルベノキソロン溶液を5μL/ウェルで添加し、酵素反応を停止させた。プレートを更に15秒間振とうし、次にultra 384マイクロプレートリーダー(355EX/460EM)でNADPHの蛍光を検出した。
【0129】
実施例化合物の11−βHSD1アッセイのデータを以下に示す。
【0130】
【表13】

【0131】
また本発明の化合物を、11−βHSD1の場合と同様のアッセイ(代わりに11−βHSD2エンザイムを用いた)で、11−βHSD2に対する選択性を解析した。11−βHSD2エンザイムを用いたアッセイは本願明細書に記載のとおりに実施し、また公知の方法により補足できる。
【0132】
ヒトの大動脈平滑筋細胞アッセイ:
ヒトの大動脈平滑筋細胞(AoSMC)の初代細胞を、継代数6となるまで5%ウシ胎児血清を含有する培地中で培養し、次に遠心分離してペレット化し、11β−HSD1の発現を誘導するために、12ng/mLのhTNFαを含有する0.5%ウシ胎児血清入りの試験培地中に9×10細胞/mLの密度で再懸濁した。細胞を、100μL/ウェル(9×10細胞/ウェル)で96穴組織培養アッセイプレートに播き、37℃(5%CO)で48時間インキュベートした。誘導後に、細胞を37℃、5%のCOで4時間、試験化合物を含有するアッセイ用培地でインキュベートし、次にアッセイ培地中に溶解させた10μL/ウェルの10μMコーチゾン溶液で処理し、37℃、5%COで16時間インキュベートした。各ウェルの培地を、競合的蛍光共鳴時間分割イムノアッセイを使用する、コルチゾルによる次のアッセイ用のプレートへ移した。溶液中ではアロフィコシアニン(APC)−コルチゾルコンジュゲートと、遊離コルチゾル検体が、マウス抗コルチゾル抗体/ユーロピウム(Eu)−抗マウスIgG複合体との結合に関して競合する。遊離コルチゾルの濃度増加により、ユーロピウム−IgGからのAPC−コルチゾル複合体へのエネルギー移動が減少し、それによりAPC蛍光が減弱する。ユーロピウム及びAPCの蛍光輝度を、LJL Analyst ADを使用して測定した。ユーロピウム及びAPCの励起は360nmの励起により行い、各々615nm及び650nmの発光フィルターを使用して測定した。ユーロピウムの時間分割パラメータは200μsの遅延を伴う、1000μsインテグレーション時間とした。APCパラメータは50μsの遅延を伴う150μsインテグレーション時間とした。APCにおいて、測定する蛍光輝度はEu蛍光輝度で除算(APC/Eu)することにより修飾した。更にこの比率を用い、4−パラメータロジスティック方程式にフィットさせたコルチゾル標準曲線を使用して、内挿法により、未知のコルチゾル濃度を測定した。更にこれらの濃度を用い、濃度対阻害%をプロットし、4−パラメータ曲線にフィットさせ、IC50濃度をレポートすることによって、化合物の活性を測定した。
【0133】
本願明細書に開示される全ての実施例は300nM未満のIC50で、ヒト大動脈平滑筋細胞アッセイにおいて、活性を示した。ヒト大動脈平滑筋細胞アッセイにおける、実施例化合物のデータを以下に示す。
【0134】
【表14】

【0135】
急性In Vivoコルチゾン転換アッセイ:
化合物をマウスに経口投与し、そのマウスに、化合物投与後、所定の時点でコルチゾンを皮下注射し、その後各マウスの血液を採取した。次に単離した血清をLC−MS/MSを用いてコルチゾン及びコルチゾルのレベルを分析し、更に平均コルチゾルレベル及び各投与群の阻害%の算出を行った。具体的にはオスのC57BL/6マウス(25gの平均体重)を、Harlan Sprague Dawleyから入手した。正確な体重を到着時点で測定し、同様の体重を有するマウス群に無作為に分けた。化合物は25gの推定平均重量で、様々な投与量となるように1%(w−w)HEC、0.25%(w−w)ポリソルベート80、0.05%(w−w)ダウコーニング消泡剤#1510−US混合液中で調製した。化合物を経口投与(動物につき200μl)し、更に化合物投与後、1〜24時間において、30mg/kgのコルチゾンを、動物あたり200μlで皮下投与した。10分のポスト・コーチゾン・チャレンジで、各動物はCO2室の1分間安楽死する。そして、血清セパレータ管に心臓穴を経て血液採取が続く。完全に凝固させた後、チューブを2500×gで4℃で15分間遠心分離し、96穴プレート(Corning社、Costar #4410、クラスターチューブ、1.2ml、ポリプロピレン製)のウェルへ単離した血清を添加し、LC−MS/MS解析を行うまで、プレートを−20℃で凍結させた。解析時に血清サンプルを解凍し、アセトニトリルを含有するd4−コルチゾル内部スタンダードを添加してタンパク質を析出させた。サンプルをボルテックスして混合し、遠心分離した。加温した窒素流中で上澄を蒸発除去させた。抽出物をメタノール/水(1:1)中で再調製し、LC−MS/MSシステムへ注入した。コルチゾン及びコルチゾル濃度を、3重の四重極子質量分光光度計上で陽ACPIイオン化後に、選択的な反応モニタリングモードによりアッセイした。
【0136】
実施例化合物による、急性in vivoコルチゾン転換アッセイのデータを以下に示す。
【0137】
【表15】

【0138】
薬理学的に許容できる塩、及びそれらを調製するための一般方法は公知である。例えば、P.Stahlら、HANDBOOK OF PHARMACEUTICAL SALTS:PROPERTIES,SELECTION AND USE,(VCHA/Wiley−VCH,2002)、S.M.Bergeら、”Pharmaceutical Salts,”Journal of Pharmaceutical Sciences,Vol.66,No.1,January 1977を参照。本発明の化合物は好ましくは種々の経路で投与される医薬組成物として製剤化される。最も好ましくはかかる組成物は経口投与用に製剤化する。かかる医薬組成物及びその調製方法は公知技術である。例えばREMINGTON:THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY(A.Gennaroら編、第19版、Mack Publishing社、1995)を参照。
【0139】
本発明の有効量を構成するのに必要となる、式(I)の化合物又はその薬理学的に許容できる塩の具体的な量は治療しようとする症状の具体的な状況により変化する。投与量、投与経路及び投与回数等は主治医により決定されるのが最も好ましい。通常、経口投与又は非経口投与のための許容・有効量範囲は約0.1mg/kg/日〜約10mg/kg/日、ヒト患者に換算すると約6mg〜600mg、より典型的には30mg〜200mgである。本願明細書に記載されている疾患の治療においてはかかる投与は治療を必要とする患者に1〜3回/日で行うか、又は効果的である限り、必要な頻度で行う。
【0140】
製剤を調製する当業者は選択される化合物、障害又は扱われる状態、障害又は状態のステージ及び他の関連した状況の特定の特徴によって、適当な形及び投与様式を直ちに選択できる(Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition,Mack Publishing Co.(1990)を参照)。本願明細書に係る化合物は種々の経路で投与できる。本願明細書に記載されている障害に罹患する、若しくはそれが進行するリスクを有する患者を治療する際、式(I)の化合物又はその薬理学的に許容できる塩を、有効量で生物学的に利用可能となる、いかなる形態又は方法(経口及び腸管外経路など)によって、投与してもよい。例えば、有効成分を直腸内、経口、吸入、皮下、筋肉注射、経静脈、経皮、鼻腔内、眼内、局所、舌下、バッカル及び他の任意の経路で投与できる。特に、経口投与が、本願明細書に記載の障害の治療においては好ましい。経口投与が不可能で、かつ望ましくない場合には、非経口的投与(例えば経静脈、腹腔内又は筋肉内)に適する形態で当該組成物を調製できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造式で表される化合物
【化1】


(式中、
は水素、ハロゲン、−O−CH(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)又は−CH(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
は水素、ハロゲン、−O−CH(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)又は−CH(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
は水素又はハロゲンであり、
は−OH、ハロゲン、シアノ、−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、−(C−C)アルコキシ(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、SCF、C(O)O(C−C)アルキル、(C−C)シクロアルキル、O−フェニル−C(O)O−(C−C)アルキル、CH−フェニル、NHSO−(C−C)アルキル、NHSO−フェニル(R21)(R21)、(C−C)アルキル−C(O)N(R10)(R11)、
【化2】


であり、式中、点線はR位置への結合部位を表し、
は水素、ハロゲン、−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、−C(O)OH、−C(O)O−(C−C)アルキル、−C(O)−(C−C)アルキル、O(C− C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、SO(C− C)アルキル、−N(R)(R)、
【化3】


であり、式中、点線はR位置への結合部位を表し、式中、mは1、2又は3であり、式中、nは0、1又は2であり、nが0であるとき“(CH)n”は結合であり、
は水素、ハロゲン、−CN又は−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
は水素、ハロゲン又は−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
は各々独立に水素、−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、−C(O)(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、−C(O)(C−C)シクロアルキル、−S(O)−(C−C)シクロアルキル、又は−S(O)−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
は水素又はハロゲンであり、
10及びR11は各々独立に水素若しくは−(C−C)アルキルであるか、又はR10及びR11はそれらが結合する窒素原子と共にピペリジニル、ピペラジニル又はピロリジニル基を形成し、
20は各々独立に水素又は−(C−C)アルキル基(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
21は各々独立に水素、ハロゲン又は−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
22は各々独立に水素又は−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
23は各々独立に水素、−(C−C)アルキル又はC(O)O(C− C)アルキルである。)、
又はその薬理学的に許容できる塩。
【請求項2】
以下の式で表される構造を有する請求項1記載の化合物
【化4】


(式中、

【化5】

である)又はその薬理学的に許容できる塩。
【請求項3】
及びRが塩素である、請求項1又は請求項2に記載の化合物、又はその薬理学的に許容できる塩。
【請求項4】
が水素である、請求項1から3のいずれか1項記載の化合物、又はその薬理学的に許容できる塩。
【請求項5】

【化6】


である、請求項2から4のいずれか1項記載の化合物、又はその薬理学的に許容できる塩。
【請求項6】

【化7】


である、請求項2から4のいずれか1項記載の化合物、又はその薬理学的に許容できる塩。
【請求項7】

【化8】


であり、Rが水素である、請求項1から6のいずれか1項記載の化合物、又はその薬理学的に許容できる塩。
【請求項8】

【化9】


であり、Rが水素である、請求項1から6のいずれか1項記載の化合物、又はその薬理学的に許容できる塩。
【請求項9】

【化10】


であり、Rが−(C−C)アルキル基(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)である、請求項1から8のいずれか1項記載の化合物、又はその薬理学的に許容できる塩。
【請求項10】
が塩素又はフッ素である、請求項1から8のいずれか1項記載の化合物、又はその薬理学的に許容できる塩。
【請求項11】
がフッ素である、請求項1から8のいずれか1項記載の化合物、又はその薬理学的に許容できる塩。
【請求項12】
(R)−3−(3,5−ジクロロ−4’−モルホリン−4−イル−ビフェニル−4−イルメチル)−1−(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−ベンゾイミダゾル−5−イル)−ピロリジン−2−オンである化合物、又はその薬理学的に許容できる塩。
【請求項13】
3−(3,5−ジクロロ−4’−フルオロ−ビフェニル−4−イルメチル)−1−(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−ベンゾイミダゾル−5−イル)−ピロリジン−2−オンである化合物、又はその薬理学的に許容できる塩。
【請求項14】
3−[R]−[3,5−ジクロロ−4’−(4−トリフルオロメチル−ピペリジン−1−カルボニル)−ビフェニル−4−イルメチル]−1−(4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−ベンゾイミダゾル−5−イル)−ピロリジン−2−オンである化合物、又はその薬理学的に許容できる塩。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項記載の化合物又はその薬理学的に許容できる塩、並びに薬理学的に許容できる担体を含有する医薬組成物。
【請求項16】
薬剤の調製用の、請求項1から14のいずれか1項記載の化合物、又はその薬理学的に許容できる塩。
【請求項17】
患者のメタボリックシンドロームの治療方法であって、それを必要とする前記患者に、有効量の、請求項1から14のいずれか1項記載の化合物又はその薬理学的に許容できる塩を投与することを含んでなる方法。
【請求項18】
患者の2型糖尿病の治療方法であって、それを必要とする前記患者に、有効量の、請求項1から14のいずれか1項記載の化合物又はその薬理学的に許容できる塩を投与することを含んでなる方法。
【請求項19】
患者のアテローム性動脈硬化症の治療方法であって、それを必要とする前記患者に、有効量の、請求項1から14のいずれか1項記載の化合物又はその薬理学的に許容できる塩を投与することを含んでなる方法。
【請求項20】
請求項12、13又は14のいずれか1項記載の化合物の調製用の中間体であって、
【化11】


である、前記中間体。

【公表番号】特表2009−534412(P2009−534412A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−506760(P2009−506760)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/066907
【国際公開番号】WO2007/124329
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(594197872)イーライ リリー アンド カンパニー (301)
【Fターム(参考)】