説明

2−フェニルプロピオン酸誘導体およびそれらを含有する医薬組成物

式(I)で表される(R)−2−[4−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]プロピオンアミド誘導体(但し、変数は特許請求の範囲に定義した通り)およびこのような化合物を含有する医薬組成物は、インターロイキン−8(IL−8)とCXCR1およびCXCR2膜受容体との相互作用によって誘導される好中球(PMN白血球)の走化性活性化を阻害するのに有用である。当該化合物を、前記活性化に由来する病理の予防および治療に使用する。とりわけ、これらの代謝産物は、シクロ−オキシゲナーゼ阻害活性が無く、好中球に依存する病理、例えば、乾癬、潰瘍性大腸炎、黒色腫、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、水疱性類天疱瘡、関節リウマチ、特発性線維症、糸球体腎炎の治療、並びに虚血および再潅流によって引き起こされる損傷の予防および治療に特に有用である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の簡単な説明
本発明は、多形核細胞および単核細胞の走化性に対する阻害剤として、特に好中球に依存する病理の治療に使用する、新規な4−(トリフルオロメタンスルホニルオキシフェニル)プロピオン酸誘導体およびこれらを含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
技術水準
特定の血液細胞(マクロファージ、顆粒球、好中球、多形核球)は化学的な刺激に応答するが、ケモカインと呼ばれる物質によって刺激された場合には、走化と呼ばれる過程によって刺激物質の濃度勾配に沿って遊走することで応答する。主要な公知の刺激物質またはケモカインは、補体C5aの分解産物、細菌表面の溶解によって生成する一部のN−ホルミルペプチドや合成由来のペプチド、例えばホルミル−メチオニル−ロイシル−フェニルアラニン(f−MLP)に代表され、主にインターロイキン−8(IL−8、CXCL8ともいう)などの各種サイトカイン類に代表される。インターロイキン−8は、線維芽細胞やマクロファージといった殆どの有核細胞によって産生される内在性の走化性因子である。好中球の過剰増員を特徴とする一部の病態では、その部位での組織損傷が重篤であるほど好中球細胞の浸潤を伴う。近年、虚血後再潅流や肺高酸素症に伴う損傷の判定において、好中球の活性化が果たす役割が広く実証されている。
【0003】
IL−8の生物活性は、当該インターロイキンとCXCR1およびCXCR2膜受容体との相互作用によって仲介され、これらの膜受容体は7回膜貫通型受容体のファミリーに属し、ヒト好中球および特定のT細胞の表面に発現している(L.Xuら、J.Leukocyte Biol.、57、335、1995)。CXCR1とCXCR2とを識別することのできる選択的リガンドが知られており、GRO−αはCXCR2の選択的走化因子の一例である。
【0004】
肺疾患(肺障害、急性呼吸窮迫症候群、喘息、慢性肺炎症、嚢胞性線維症)において考えられるIL−8の病原的な役割、具体的にはCXCR2受容体経路を介したCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の病理発生における役割が広く記載されている(D.WP HayおよびH.M.Sarau.、Current Opinion in Pharmacology 2001、1:242−247)。
【0005】
急性および慢性の病態、例えば、乾癬病変のうち、極度の炎症を起こし、かつ、治療が難しい領域で特徴的な好中球の蓄積が生じる。好中球は走化性によって引き寄せられ、刺激を受けた表皮細胞より放出されるIL−8およびGro−aのケモカインの相乗作用、並びに補体活性化代替経路による活性化を介して産生されるC5a/C5a−desArg画分の相乗作用によって活性化される(T.Teruiら、Exp.Dermatol.、9、1、2000)。
【0006】
本発明者らは、近年、新規クラスの「R−2−アリールプロピオン酸のオメガ−アミノアルキルアミド類」を、多形核細胞および単核細胞の走化性に対する阻害剤として記載している(WO02/068377号)。当該新規クラスには、選択的なC5a阻害剤からC5a/IL−8の双方に対する二重阻害剤までの化合物が含まれる。
【0007】
さらにまた、当該新規クラスのR−2−アリールプロピオン酸アミド類およびN−アシルスルホンアミド類は、IL−8誘導性の好中球走化性や脱顆粒の有効な阻害剤として記載されている(WO01/58852号;WO00/24710号)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
発明の詳細な説明
本発明者らは、今回、新規クラスの2−(R)−フェニルプロピオン酸誘導体を、多形核細胞および単核細胞の走化性に対する阻害剤として見出した。特に、本発明の化合物は、薬物動態特性と薬理活性プロファイルが改善された、IL−8誘導性の好中球走化性およびC5a誘導性の好中球・単球走化性に対する強力な阻害剤である。
【0009】
本発明は従って、下記の式(I)で表される2−(R)−フェニルプロピオン酸誘導体化合物
【0010】
【化1】

【0011】
およびその薬学的に許容される塩を提供するものである:
[式中、
R’はH、OHから選択され、
R’がHである場合には、Rは
− H、C〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C−アルケニル、C〜C−アルコキシ;
− 置換および未置換のピリジン、ピリミジン、ピロール、チオフェン、フラン、インドール、チアゾール、オキサゾールから選択されるヘテロアリール基;
− 直鎖または分岐鎖状のC〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C−アルケニル、C〜C−フェニルアルキルから成り、さらにもう一つのカルボキシ(COOH)基で置換されているアミノ酸残基;
− 式−CH−CH−Z−(CH−CHO)R’で表される残基(式中、R’はHまたはC〜C−アルキルであり、nは0〜2の整数であり、Zは酸素または硫黄である);
− 式−(CH−NRaRbで表される残基(式中、nは0〜5の整数であり、RaおよびRbは同一でも異なっていてもよく、それぞれC〜C−アルキル、C〜C−アルケニルであるか、あるいはRaおよびRbは自身が結合している窒素原子と共に式(II)
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、Wは単結合、O、S、N−Rcを表し、RcはH、C〜C−アルキルまたはC〜C−アルキルフェニルであり、nは0〜3の整数である)で表される3〜7員の複素環を形成する);
− 式SORdで表される残基(式中、RdはC〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C−アルケニル、アリールおよびヘテロアリールである)から選択され、
R’がOHである場合には、Rは
H、C〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C−アルケニルから選択される]。
【0014】
本発明はさらに、医薬として使用するための式(I)で表される化合物を提供する。特に、このような医薬は多形核細胞および単核細胞の走化性に対する阻害剤である。
【0015】
式(I)で表される化合物は、一般に、WO01/58852号、WO00/24710号、WO02/068377号に既述されているIL−8阻害剤およびC5a阻害剤の一般式に含まれる。
【0016】
式(I)で表される化合物は、上記引用発明の特に好適な化合物と比較して、顕著に有利な特性を共有していることが判っている。
【0017】
本発明の化合物は、アリールトリフラートの化学的なクラスに属する。医薬品化学の研究では、トリフラート基を、フェノール性のヒドロキシルまたはメトキシ基に対する一般的な生物学的に等価の置き換えであると考えており、驚くべきことに、対応の4−ヒドロキシルおよび4−メトキシ類似体の効力が非常に低いにもかかわらず、式(I)で表される化合物はIL−8誘導性のヒトPMN走化性に対する強力な阻害剤である。また、フェニル環上のトリフラート基は、IL−8受容体であるCXCR1およびCXCR2にて高い親和性を特異的にもたらす。式(I)で表される化合物は、IL−8および/またはC5a誘導性PMN走化性に対する公知の阻害剤と比較して、驚くべきことに、GRO−α誘導性PMN走化性の阻害において非常に強力な阻害剤であることが判明しており、CXCR2介在型の経路に対する特異的な作用が明らかとなっている。
【0018】
脂肪族トリフラートの反応性とは異なり、芳香族トリフラート(アリールトリフラート)は化学的にも生物学的にも安定であることが知られている。電子求引性および親油性のため、トリフラート基はチトクロムP450イソ酵素系を介した芳香族環の酸化を抑制する。トリフラート部分は、式(I)で表される化合物の代謝安定性の亢進に寄与し、電子供与性基を有する類似体をin vivoで投与した場合に通常生じる代謝(芳香族環/置換基のヒドロキシル化とその結果生じる抱合)を遅らせる。
【0019】
この特性に関連して、当該新規クラスは上記引用発明のクラスと比較して、経口での生物学的利用能が高く、t1/2が長く、タンパク質結合が少ない。
【0020】
これらの特性により、全体として最適な薬理学的プロファイルがこれらの薬物に付与され、様々な慢性または急性病態における治療使用が可能となる。
【0021】
R’がHである場合には、好適なR基は下記の通りである:
H、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜C−カルボキシアルキル;
置換および未置換のピリジン、チアゾール、オキサゾールから選択されるヘテロアリール基;
式−(CH−NRaRbで表される残基(式中、nは2または3の整数であって、より好ましくは3であり、NRaRb基はN,N−ジメチルアミン、N,N−ジエチルアミン、1−ピペリジル、1−ピロリジニル、4−モルホリル、1−ピロリジル、1−ピペラジニル、1−(4−メチル)ピペラジニルである);
式SORdで表される残基(式中、RdはC〜C−アルキル、C〜Cシクロアルキルである)。
【0022】
R’がOHである場合には、好適なR基は
H、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキルである。
【0023】
特に好適な本発明の化合物は下記の通りである:
1 R(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−メタンスルホニルプロピオンアミド;
1a R(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−メタンスルホニルプロピオンアミドナトリウム塩;
2 R(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]プロピオンアミド;
3 R(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−メチルプロピオンアミド;
4 R(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−イソプロポキシプロピオンアミド;
5 R(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−シクロペンチルプロピオンアミド;
6 R(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−[3−(N’−ピペリジニル)プロピル]プロピオンアミド;
6a R(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−[3−(N’−ピペリジニル)プロピル]プロピオンアミド塩酸塩;
7 R(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−[2−(N’−ピロリジニル)エチル]プロピオンアミド;
7a R(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−[2−(N’−ピロリジニル)エチル]プロピオンアミド塩酸塩;
8 R(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−[3−(N’−ピロリジニル)プロピル]プロピオンアミド;
8a R(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−[3−(N’−ピロリジニル)プロピル]プロピオンアミド塩酸塩;
9 R(+)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−(2−ヒドロキシエトキシエチル)プロピオンアミド;
10 R(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−[2−(4’−トリフルオロメチル)チアゾリル]プロピオンアミド;
11 R(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−メチル−N−ヒドロキシプロピオンアミド。
【0024】
上記リスト中で最も好適な化合物は、化合物1とその関連のナトリウム塩1aである。
【0025】
本発明の化合物は、IL−8によって誘導されるヒトPMN走化性に対する強力な阻害剤である。本発明の化合物のうち、Rが式−(CH−NRaRbで表される残基であるものが、C5a誘導性およびIL−8誘導性のPMN走化性に対する二重阻害剤である。
【0026】
式(I)で表される本発明の化合物は、一般には、有機および無機の薬学的に許容される酸または塩基との付加塩の形態で単離される。
【0027】
このような酸の例としては、塩酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、フマル酸、クエン酸から選択される。
【0028】
このような塩基の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、(D,L)−リジン、L−リジン、トロメタミンが挙げられる。
【0029】
式(I)で表される化合物は、R(−)−2−(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシフェニル)プロピオン酸を出発原料としてWO01/58852号、WO00/24710号、WO02/068377号に既述の方法に従って得られる。
【0030】
例えば、式(I)で表される化合物のうち、RがSORdであり、RdがC〜C−アルキルまたはC〜Cシクロアルキルであるものは、等モル量のR(−)−2−(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシフェニル)プロピオン酸を等モル量の適切なスルホンアミドRdSONHにて、不活性溶剤中、等モル量またはわずかに過剰の縮合剤、例えば、カルボジイミド(ジシクロヘキシルカルボジイミド等)、可溶性カルボジイミド(N−(3−ジメチル−アミノ−プロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩等)または1,1’−カルボニルジイミダゾールの存在下、かつ、等モル量またはわずかに過剰のトリエチルアミン、4−(N,N−ジメチルアミノ)−ピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エンから成る群より選択される対塩基(counterbase)の存在下で処理することにより取得可能である。
【0031】
IL−8画分、GRO−α画分およびC5a画分によって誘導される多形核白血球(以下、PMNという)および単球の走化性に対する阻害能について、式(I)で表される本発明の化合物をin vitroで評価した。このため、成人健常ボランティアより採取したヘパリン添加ヒト血液からPMNを単離するために、単核球をデキストラン沈降法によって除去し(W.J.Mingら、J.Immunol.、138、1469、1987に開示された手順に準拠)、赤血球を低張液によって除去した。細胞の生存率は、トリパンブルーを用いた色素排除法により算出し、循環多形核球の比率は、Diff Quickで染色した後、細胞遠心法に基づいて推定した。
【0032】
IL−8誘導性走化性のアッセイでは、走化性実験にヒト組換えIL−8(Pepro Tech)を刺激物質として使用した。即ち、凍結乾燥タンパク質を一定量の0.2%ウシ血清アルブミン(BSA)含有HBSSに溶解し、10−5M濃度のストック溶液を得、この溶液をHBSSで10−9Mの濃度に希釈して走化性アッセイに用いた。
【0033】
GRO−α誘導性走化性の阻害は、同様のアッセイで評価した。
【0034】
C5a誘導性走化性のアッセイでは、走化性実験にhr−C5a画分およびhrC5a−desArg画分(Sigma)を刺激物質として使用し、ほぼ同一の結果を得た。凍結乾燥C5aを一定量の0.2%BSA含有HBSSに溶解し、10−5M濃度のストック溶液を得、この溶液をHBSSで10−9Mの濃度に希釈して走化性アッセイに用いた。
【0035】
走化性実験では、PMNを式(I)で表される本発明の化合物と共に15分間37℃にて5%CO含有雰囲気中でインキュベートした。
【0036】
C5aの走化活性は、HBSS中に1mL当たり1.5×10個の濃度にて再懸濁したヒト循環多形核球(PMN)に対して評価した。
【0037】
走化性アッセイ(W.Falketら、J.Immunol.Methods、33、239、1980に準拠)の際には、多孔率5μmのPVP不含フィルターと再現に適したマイクロチャンバーを使用した。
【0038】
式(I)で表される本発明の化合物は、10−6〜10−10Mの濃度で評価した。このため、化合物を同一濃度にて、マイクロチャンバーの下部および上部双方の孔に添加した。式(I)で表される本発明の化合物の、ヒト単球走化性の阻害能についての評価は、Van Damme J.ら(Eur.J.Immunol.、19、2367、1989)によって開示された方法に従って行った。
【0039】
タンパク質結合は以下のように測定した:50μg/mL濃度の各化合物のラット血漿サンプルを2つずつ用意し、37℃で20分間静かに振盪しながらインキュベートした。次いでサンプルをCentrifree(登録商標)マイクロパーティション装置によって1500gで15分間遠心分離することにより限外濾過した。限外濾液をHPLC−MS/MS定量分析にかけた(カラム:Luna C18、150×2mm、内径5μm(Phenomenex)、移動相:溶離液A)0.02M HCOONH(HCOOHでpH4.3に調整);溶離液B)CHOH)。
【0040】
特許請求の範囲に記載の化合物の薬物動態プロファイル(t1/2、経口での生物学的利用能等)を、静脈内投与および経口投与後に雄性マウスで評価した。薬物動態分析には、様々な時点での化合物の血漿濃度を用いた。Kinetica 2000TM、バージョン3.0ソフトウェアによってデータを評価した[InnaPhase Corporation、世界本部、1700 レースストリート、フィラデルフィア、ペンシルバニア州19103、米国]。
【0041】
式(I)で表される化合物は、PatrignaniらによってJ.Pharmacol.Exper.Ther.、271、1705、1994に開示された手順に従って血液全体にてex vivoで評価したところ、シクロオキシゲナーゼ(COX)酵素の阻害剤としては全く効力のないことが判明した。
【0042】
多くの場合、式(I)で表される化合物は、リポ多糖類(LPS、1μg/mL)による刺激によって誘導されるマウスマクロファージでのPGE産生を、10−5〜10−7Mの濃度では干渉しない。PGE産生の阻害は、記録されるとしても、殆どが統計学的な有意差の限界にあり、さらに基底値の15〜20%未満であることが多い。マクロファージ細胞にとってプロスタグランジン合成の阻害は、好中球の活性化やサイトカインであるインターロイキン−8の産生に対する刺激の重要なメディエーターであるTNF−αの合成(LPSまたは過酸化水素によって誘導)を増幅する刺激となるが、本発明の化合物の治療応用にとってはCO阻害における効力の低下は利点となる。
【0043】
CXCR1およびCXCR2の活性化に対する阻害剤には、上述のように、有用な応用が見出されており、特に、両IL−8受容体の活性化が疾患の発症において重大な病態生理学的役割を果たすと考えられている慢性炎症病理(例えば乾癬)の治療において有用である。
【0044】
実際に、CXCR1の活性化は、IL−8介在型のPMN走化性において不可欠であることが知られている(Hammond Mら、J Immunol、155、1428、1995)。一方、CXCR2の活性化は、乾癬患者でのIL−8介在型の表皮細胞増殖および血管新生において不可欠であると考えられている(Kulke Rら、J Invest Dermatol、110、90、1998)。
【0045】
また、CXCR2のアンタゴニストには、慢性閉塞性肺疾患(COPD)のような重要な肺疾患の処置において特に有用な治療応用が見出されている(D.WP HayおよびH.M.Sarau.、Current Opinion in Pharmacology 2001、1:242−247)。
【0046】
上述の実験的証拠、並びに好中球の活性化・浸潤を伴う過程においてインターロイキン−8(IL−8)やその類似物(congenetics)が果たす役割から見ると、本発明の化合物は乾癬等の疾患(R.J.Nicholoffら、Am.J.Pathol.、138、129、1991)、潰瘍性大腸炎等の腸の慢性炎症病理(Y.R.Mahidaら、Clin.Sci.、82、273、1992)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、水疱性類天疱瘡、関節リウマチ(M.Selzら、J.Clin.Invest.、87、463、1981)、特発性線維症(前出のE.J.MillerおよびP.C.Carreら、J.Clin.Invest.、88、1882、1991)、糸球体腎炎(T.Wadaら、J.Exp.Med.、180、1135、1994)の治療に特に有用である。
【0047】
本発明の化合物はまた、虚血および再潅流によって引き起こされる損傷の予防および治療、特に、臓器移植(とりわけ腎移植)における機能障害からの保護にも有効である。
【0048】
ラットの腎移植実験モデルでは、本発明の化合物は、虚血後再潅流後に発生する移植片での白血球浸潤を抑制する点で、同系腎移植後の虚血/再潅流傷害直後の腎機能の保存において有効であることが判明している。
【0049】
ラットの腎移植実験モデル
ラットをドナーおよび移植レシピエントとした同系腎移植モデルで研究を行った。レシピエントとドナーの腎動脈間及び腎静脈間に端々吻合にて吻合を作製した。血管鉗子を30分後に外した(温虚血)。次いで、右側の未処理腎臓を除去した。動物を個々の代謝ケージへ入れ、1日当たりの尿排泄量を腎機能の回復の指標として測定した。16および24時間後、血漿クレアチニン濃度を測定することで腎機能を評価した。腎移植24時間後に動物を屠殺した。腎移植片を取り出し、薄切にし、Dubosq−Brazil溶液に入れて従来の組織学分析を光学顕微鏡法により行った。また、別の腎断片を液体窒素中で凍結させて炎症性細胞浸潤(多形核細胞、MHCクラスII陽性細胞)の免疫組織化学分析に使用した。
【0050】
本発明の化合物は全て、5mg/Kg〜30mg/Kgの濃度にて、腎移植前に静脈内投与を受け移植2時間後に皮下投与を受けた移植ラットにおいて障害の保護を示した。
【0051】
さらにまた、本発明の化合物は黒色腫および血管新生の治療に特に有用である。
【0052】
黒色腫細胞に対するin vitroでの活性を以下のように測定した:
黒色腫細胞増殖
1ウェル当たり2〜6×10個の黒色腫細胞を含有する96ウェルプレートを、選択した本発明の化合物で前処理し、インターロイキン−8(CXCL8)で刺激して3〜4日間培養した。次いで、臭化3−(4,5−ジメチルチアゾリル−2)−2,5−ジフェニルテトラゾリウム(MTT、400μg/ml)を各ウェルへ添加し、2時間インキュベートした。培地を除去し、100μlのジメチルスルホキシドを添加して細胞を溶解した。マイクロプレートリーダーで測定した吸光度値から細胞増殖の変化を求めた。
【0053】
マトリゲルによる浸潤アッセイ
黒色腫細胞を平板培養し(6ウェルプレートに5×10細胞)、24時間接着させた。選択した本発明の化合物で処理した5日後に、トリプシン−エチレンジアミン四酢酸に短時間曝して細胞をプレートから剥し、計数して遠心分離した。バイオコートマトリゲルインベージョンチャンバーを製造業者の指示に従って準備した。血清不含培地に溶解したCXCL8を下側のウェルへ入れて化学誘引物質として作用させ、500μlの血清不含培地に懸濁した3×10細胞をマトリゲルプレートの上側のチャンバーへ入れて37℃で22時間インキュベートした。フィルターの下面上の細胞をDiff−Quickで染色し、顕微鏡に取り付けたイメージアナライザーで定量した。
【0054】
従って、本発明のさらなる目的は、乾癬、潰瘍性大腸炎、黒色腫、血管新生、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、水疱性類天疱瘡、関節リウマチ、特発性線維症、糸球体腎炎を治療するための医薬の製造、並びに虚血および再潅流によって引き起こされる損傷の予防および治療における医薬の製造において、式(I)で表される化合物の使用を提供することである。
【0055】
表Iには、代表的な本発明の化合物の生物活性を、上記引用特許文献の代表的な化合物と比較したものを示す。
【0056】
【表1】

【0057】
表IIには、式(I)で表される代表的な化合物の化学的・物理的、薬理学的および薬物動態学的特性を、上記引用特許文献の代表的な化合物と比較したものを示す。式(I)で表される化合物は、代表的な化合物と比較して、経口での生物学的利用能が高く、t1/2が長く、タンパク質結合が少ない。
【0058】
【表2】

【0059】
本発明の化合物およびその適切な担体を含む医薬組成物も本発明の範囲内である。
【0060】
本発明の化合物は、従来慣用の補助剤、担体、希釈剤または賦形剤と共に、実際には医薬組成物やその単位投与量の形態とすることができ、また、そのような形態では、錠剤もしくは充填カプセル剤等の固体、または液剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤もしくはこれらを充填したカプセル剤(全て経口使用)等の液体として使用することができ、あるいは、滅菌注射液の形態で非経口(例えば皮下)用に使用してもよい。このような医薬組成物およびその単位剤形は、成分を従来の比率で含むことができ、追加の活性化合物または成分はあってもなくてもよく、また、このような単位剤形は、採用すべき1日当たりの投与量範囲に見合った、任意の適切な有効量の有効成分を含有していればよい。
【0061】
医薬品として利用する場合、本発明の化合物は典型的には医薬組成物の形態で投与する。このような組成物は、製薬分野で周知の方法にて調製可能であり、少なくとも1種類の活性化合物を含む。通常、本発明の化合物は薬学的に有効な量で投与する。実際に投与する化合物の量は、典型的には、関連の状況、例えば治療対象の病態、選択した投与経路、実際に投与する化合物、個々の患者の年齢、体重および応答性、患者の症状の重篤度等を考慮して判断することになる。
【0062】
本発明の医薬組成物は、経口、直腸内、経皮、皮下、静脈内、筋肉内、鼻腔内といった様々な経路で投与可能である。意図する送達経路に応じて、注射用または経口用組成物のいずれかとして化合物を製剤化するのが好ましい。経口投与用の組成物は、バルク液剤もしくは懸濁剤、またはバルク散剤の形態をとることができる。しかしながら、より一般的には、当該組成物は正確な投薬を容易にするため単位剤形で提供される。「単位剤形」という用語は、ヒト被験者や他の哺乳動物に対して単位投与量として適した形状的に個別の単位をいい、各単位には、所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性物質が、適切な製剤用賦形剤と共に含有される。典型的な単位剤形としては、液体組成物の場合には予め分量が決められたプレフィルドアンプルもしくはシリンジが、固体組成物の場合には丸剤、錠剤、カプセル剤等が挙げられる。このような組成物では、酸化合物は通常少量成分であり(約0.1〜約50重量%、好ましくは約1〜約40重量%)、残りは、所望の投薬形態を形成するのに役立つ各種ビヒクルまたは担体および加工助剤である。
【0063】
経口投与に適した液体剤形としては、適切な水性または非水性ビヒクルを緩衝剤、懸濁・分配剤、着色剤、着香剤等と組み合わせたものが挙げられる。後述の注射用組成物をはじめとする液体剤形は常時遮光保存して、ヒドロペルオキシドまたはペルオキシドの形成といった光による触媒作用を回避する。固体剤形としては、例えば、以下の成分または類似の性質の化合物のいずれかを含むことができる:微結晶セルロース、トラガカントゴム、ゼラチン等の結合剤;デンプン、乳糖等の賦形剤;アルギン酸、Primogel、コーンスターチ等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤;コロイド状二酸化ケイ素等の流動促進剤;スクロース、サッカリン等の甘味剤;またはペパーミント、サリチル酸メチル、オレンジフレーバー等の着香料。
【0064】
注射用組成物は、典型的には、注射用滅菌生理食塩水もしくはリン酸緩衝生理食塩水または当該技術分野で公知の他の注射用担体を基剤とする。上述したように、このような組成物における式(I)の酸誘導体は典型的には少量成分であって、多くの場合0.05〜10重量%の範囲であり、残りは注射用担体等である。平均的な1日当たりの投与量は、疾患の重篤度や患者の状態(年齢、性別、体重)といった各種要因に依存する。式(I)の化合物の用量は、通常1日当たり1mgまたは数mg〜1500mgまでであり、必要に応じて複数回に分けて投与する。本発明の化合物は毒性が低いため、これよりも高い投与量を長期間にわたって投与することも可能である。
【0065】
上述した経口投与用または注射用組成物の成分は単なる例示である。これ以外の材料や加工技術等は、本明細書に援用される「レミントンの薬学便覧」、第18版、1990、Mack Publishing Company、イーストン、ペンシルバニア州の第8部に記載されている。
【0066】
本発明の化合物は、徐放性形態で投与することもでき、また、徐放型薬物送達システムからも投与可能である。代表的な徐放性材料の記載も、上記レミントンの便覧の配合材料の項に記載されている。
【0067】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、これら実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0068】
略語の例は以下の通り:THFはテトラヒドロフランを、DBUは1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンを示す。
【0069】
実施例に記載の化合物は全て、WO03/043625に既述の方法で調製したR(−)−2−(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシフェニル)プロピオン酸を出発原料として得られる。
【0070】
実施例1
R(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−メタンスルホニルプロピオンアミド
1,1’−カルボニルジイミダゾール(7.21g、44.5ミリモル)を、R(−)−2−(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシフェニル)プロピオン酸(13.28g、44.5ミリモル)の無水CHCl(130mL)溶液へ室温で添加する。得られた溶液を撹拌下で1時間30分放置する。次いで、メタンスルホンアミド(4.23g、44.5ミリモル)を添加し、1時間室温で放置した後、DBU(6.65mL、44.5ミリモル)を添加する。得られた混合物を撹拌しながら室温で一晩放置する。有機相を0.5M HCl(2×50mL)、5%NaHPO溶液(3×50mL)および水で洗浄して中性にする。NaSOで乾燥させ、溶剤を蒸発させた後、得られた残渣をイソプロピルエーテルで処理する。形成した析出物を濾別し、母液を減圧下で蒸発させて粗固形物を得、これを室温で2時間n−ヘキサン(50mL)中で蒸解した後、純粋なR(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−メタンスルホニルプロピオンアミド(13.2g、35.15ミリモル)を白色粉末として得る(収率79%)。
【0071】
融点98〜100℃.[α]=−49.4(c=0.5;CHOH).H−NMR(CDCl):δ7.40(d,2H,J=7Hz);7.23(d,2H,J=7Hz);3.68(q,1H,J=7Hz);3.15(s,3H);1.42(d,3H,J=7Hz).
実施例1a
R(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−メタンスルホニルプロピオンアミドナトリウム塩
R(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−メタンスルホニルプロピオンアミド(6.89g、18.35ミリモル)をエタノール(35mL)に溶解し、1M NaOH(容積基準)(18.35mL)を滴下する。溶液を撹拌しながら30分間室温で放置する。アルコールを減圧下で蒸発させ、水溶液を凍結し、一晩凍結乾燥させる。純粋なナトリウム塩を白色粉末として得る(7.29g、18.35ミリモル)。
【0072】
[α]=−27.2(c=0.5;CHOH)
実施例2
R(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]プロピオンアミド
塩化チオニル(4.8mL、67ミリモル)を、R(−)−2−(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシフェニル)プロピオン酸(10g、33.5ミリモル)の無水トルエン(10mL)溶液へ室温で添加する。溶液を撹拌下で2時間還流する。室温で冷却後、トルエンを減圧下で蒸発させ、油状の粗製残渣をCHCl(25mL)に溶解し、溶液をアンモニアで1時間バブリングする。有機溶液を水(3×15mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、減圧下で蒸発させてわずかに褐色の粗固形物を得、これを2時間n−ヘキサン(100mL)中で蒸解して精製する。純粋なR(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]プロピオンアミド(8.1g、27.2ミリモル)を真空濾過により白色粉末として単離する(収率81%)。
【0073】
融点67〜69℃.[α]=−12(c=l;CHOH).H−NMR(CDCl):δ7.69(d,2H,J=7Hz);7.22(d,2H,J=7Hz);5.37(bs,2H,CON);3.63(q,1H,J=7Hz);1.53(d,3H,J=7Hz).
実施例3
R(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−メチルプロピオンアミド
塩化チオニル(4mL)を、R(−)−2−(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシフェニル)プロピオン酸(1g、3.35ミリモル)の無水トルエン(2.5mL)溶液へ室温で添加する。溶液を撹拌下で2時間還流する。室温で冷却後、トルエンを減圧下で蒸発させ、油状の粗製残渣をCHCl(10mL)に溶解する。有機溶液を、メチルアミン(0.414mL、10.08ミリモル)のCHCl(5mL)溶液へ滴下する。混合物を撹拌しながら室温で3時間放置する。溶剤を減圧下で蒸発させて過剰のアミンを留去し、粗生成物をCHCl(10mL)で再度希釈し、NaHCOの飽和溶液(2×5mL)および水(3×15mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、減圧下で蒸発させて粗製残渣を橙黄色の油状物質として得る。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィ(溶離液:CHCl/CHOH 98:2)で精製し、純粋なR(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−メチルプロピオンアミドを透明な油状物質として得る(0.78g、2.51ミリモル)(収率75%)。
【0074】
[α]=−19(c=0.5;CHOH).H−NMR(CDCl):δ7.48(d,2H,J=7Hz);7.24(d,2H,J=7Hz);5.35(bs,1H,CON;3.55(q,1H,J=7Hz);2.72(d,3H,J=3Hz);1.55(d,3H,J=7Hz).
実施例4
R(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−イソプロポキシプロピオンアミド
N−イソプロピルヒドロキシルアミン塩酸塩(0.14g、1.67ミリモル)とNaHCO(0.19g、3.34ミリモル)との無水THF(5mL)懸濁液に、対応の酸(0.5g、1.67ミリモル)を出発原料として実施例3に記載の通りに調製した塩化R(−)−2−(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシフェニル)プロピオニルを添加し、溶液を撹拌しながら室温で3時間放置する。溶剤を蒸発後、粗生成物をCHCl(10mL)で希釈し、水(2×10mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、減圧下で蒸発させて油状の残渣を得る。粗生成物をn−ヘキサンで処理することにより精製し、形成した析出物から、濾過後、純粋なR(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−イソプロポキシプロピオンアミドを白色粉末として得る(0.45g、1.28ミリモル)(収率77%)。
【0075】
[α]=−24(c=0.5;CHOH).H−NMR(CDCl):δ8.15(bs,1H,CON);7.45(d,2H,J=7Hz);7.20(d,2H,J=7Hz);3.65(m,1H);3.50(q,1H,J=7Hz);1.55(d,3H,J=7Hz);1.2(d,6H,J=3Hz).
実施例3について記載した同様の手順に従い、市販のアミン類またはWO01/58852号、WO00/24710号、WO02/068377号に記載の手順に従って調製したアミン類を出発原料として以下のアミド類を合成した。
【0076】
実施例5
R(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−シクロペンチルプロピオンアミド
[α]=−35(c=l;CHOH).H−NMR(CDCl):δ7.52(d,2H,J=7Hz);7.28(d,2H,J=7Hz);5.55(bs,1H,CON);3.58(q,1H,J=7Hz);3.48(m,1H);2.85(m,4H);2.36(m,4H);1.58(d,3H,J=7Hz).
実施例6
R(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−[3−(N’−ピペリジニル)プロピル]プロピオンアミド
[α]=−26(c=2;CHOH).H−NMR(CDCl):δ8.11(bs,1H,CON);7.72(d,2H,J=7Hz);7.25(d,2H,J=7Hz);3.88(q,1H,J=7Hz);3.55(m,2H);3.30−2.95(m,3H);2.70(m,2H);2.48(m,2H);2.25(m,2H);2.05(m,2H);2.00−1.74(m,2H);1.54(d,3H,J=7Hz).
実施例6a
R(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−[3−(N’−ピペリジニル)プロピル]プロピオンアミド塩酸塩
R(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−[3−(N’−ピペリジニル)プロピル]プロピオンアミド(0.15g、0.35ミリモル)をCHCl(3mL)に溶解する。3N HCl(0.5mL)を添加し、室温で1時間撹拌後、溶剤を減圧下で蒸発させ、粗生成物を無水エチルエーテル(5mL)で希釈する。形成した析出物を真空濾過により単離し、純粋なR(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−[3−(N’−ピペリジニル)プロピル]プロピオンアミド塩酸塩を白色粉末として得る(0.128g、0.28ミリモル)。
【0077】
[α]=−12(c=2;CHOH).
実施例7
R(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−[2−(N’−ピロリジニル)エチル]プロピオンアミド
[α]=−34(c=l;CHOH).H−NMR(CDCl):δ8.65(bs,1H,CON);7.75(d,2H,J=7Hz);7.22(d,2H,J=7Hz);4.02(m,2H);3.85−3.74(m,3H);3.31(m,2H);3.0−2.80(m,2H);2.41−2.12(m,4H);1.65(d,3H,J=7Hz).
実施例7a
R(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−[2−(N’−ピロリジニル)エチル]プロピオンアミド塩酸塩
実施例6aに記載の手順に従って当該化合物を調製した。
【0078】
[α]=−22(c=l;CHOH).
実施例8
R(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−[3−(N’−ピロリジニル)プロピル]プロピオンアミド
[α]=−41(c=l;CHOH).H−NMR(CDCl):δ8.01(bs,1H,CON);7.62(d,2H,J=7Hz);7.15(d,2H,J=7Hz);3.80(q,1H,J=7Hz);3.52(m,2H);3.31(m,2H);2.95(m,2H);2.78(m,2H);2.15−1.90(m,6H);1.55(d,3H,J=7Hz).
実施例8a
R(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−[3−(N’−ピロリジニル)プロピル]プロピオンアミド塩酸塩
実施例6aに記載の手順に従って当該化合物を調製した。
【0079】
[α]=−17(c=l;CHOH).
実施例9
R(+)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−(2−ヒドロキシエトキシエチル)プロピオンアミド
R(−)−2−(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシフェニル)プロピオン酸(0.53g、1.79ミリモル)の塩化チオニル(1mL)溶液を撹拌下で2時間還流する。室温で冷却して減圧下で蒸発させた後、油状の粗製残渣をCHCl(2mL)に溶解し、2−ヒドロキシエトキシエチルアミン(0.36mL、3.58ミリモル)のCHCl(4mL)溶液へ滴下する。混合物を撹拌しながら室温で一晩放置する。溶液を水(3×10mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、減圧下で蒸発させて油状の粗製残渣を得る。粗生成物をイソプロピルエーテル中で処理(室温で一晩)することにより精製し、濾過後、R(+)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−(2−ヒドロキシエトキシエチル)プロピオンアミドをワックス状の固形物として得る(0.48g、1.25ミリモル)(収率70%)。
【0080】
[α]=+6(c=l;CHOH).H−NMR(CDCl):δ7.78(d,2H,J=7Hz);6.95(d,2H,J=7Hz);5.92(bs,1H,CON);3.68(m,2H);3.55−3.44(m,7H);1.52(d,3H,J=7Hz).
実施例10
R(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−[2−(4’−トリフルオロメチル)チアゾリル]プロピオンアミド
R(−)−2−(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシフェニル)プロピオン酸(1.012g、3.39ミリモル)の塩化チオニル(2mL)溶液を撹拌下で2時間還流する。室温で冷却して減圧下で蒸発させた後、油状の粗製残渣をCHCl(2mL)に溶解し、2−アミノ−4−トリフルオロメチルチアゾール(1.14g、6.78ミリモル)のCHCl(4mL)溶液へ滴下する。2−アミノ−4−トリフルオロメチルチアゾールは、Moazzam M.ら、Indian J.Chem.、27B(11)、1051〜1053頁(1988)に記載の通りに調製しておく。得られた混合物を撹拌しながら室温で一晩放置する。溶液をNaHCOの飽和溶液(2×5mL)、水(3×10mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、減圧下で蒸発させて油状の粗製残渣を得る。組生成物をイソプロピルエーテルで一晩室温にて処理し、形成した析出物を濾過した後、純粋なR(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−[2−(4’−トリフルオロメチル)チアゾリル]プロピオンアミドをわずかに褐色の固形物として単離する(0.94g、2.10ミリモル)(収率62%)。
【0081】
融点138〜141℃.[α]=−50(c=0.5;CHOH).H−NMR(CDCl):δ10.68(bs,1H,CON);7.45(d,2H,J=7Hz);7.28(d,2H,J=7Hz);7.06(s,1H);3.88(q,1H,J=7Hz);1.67(d,3H,J=7Hz).
実施例11
R(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−メチル−N−ヒドロキシプロピオンアミド
N,N−ジメチルホルムアミド(0.42mL、5.42ミリモル)のCHCl(4mL)溶液をT=−20℃で冷却し、塩化オキサリル(0.16mL、1.83ミリモル)のCHCl(5mL)溶液を滴下する。添加終了時に温度をT=0℃に上げ、30分間撹拌した後、R(−)−2−(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシフェニル)プロピオン酸(0.5g、1.67ミリモル)と4−メチルモルホリン(0.185mL、1.67ミリモル)とを添加する。T=0℃で30分間撹拌した後、N−メチルヒドロキシルアミン塩酸塩(0.27g、3.3ミリモル)と4−メチルモルホリン(0.73mL、6.6ミリモル)とを添加する。温度を室温まで上昇させ、撹拌しながら一晩放置する。形成した析出物を濾別し、母液を減圧下で蒸発させる。油状の粗製残渣をCHCl(5mL)に溶解し、1N HCl(2×5mL)、水(2×10mL)、NaHCOの飽和溶液(2×10mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、減圧下で蒸発させて油状の粗製残渣を得る。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィ(CHCl/CHOH 99:1)で精製することにより、純粋なR(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−メチル−N−ヒドロキシプロピオンアミドをわずかに黄色の油状物質として得る(0.355g、1.08ミリモル)(収率65%)。
【0082】
[α]=−23(c=1.5;CHOH).H−NMR(DMSO−d):δ10.05(bs,1H,O);7.48(s,4H);4.40(q,1H,J=7Hz);3.10(s,3H);1.40(d,3H,J=7Hz).
表IIIには、実施例1〜11の化合物の化学名および構造式を示す。
【0083】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(I)で表される2−(R)−フェニルプロピオン酸誘導体化合物
【化1】

およびその薬学的に許容される塩:
[式中、
R’基はH、OHから選択され、
R’がHである場合には、Rは
− H、C〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C−アルケニル、C〜C−アルコキシ;
− 置換および未置換のピリジン、ピリミジン、ピロール、チオフェン、フラン、インドール、チアゾール、オキサゾールから選択されるヘテロアリール基;
− 直鎖または分岐鎖状のC〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C−アルケニル、C〜C−フェニルアルキルから成り、さらにもう一つのカルボキシ(COOH)基で置換されているアミノ酸残基;
− 式−CH−CH−Z−(CH−CHO)R’で表される残基(式中、R’はHまたはC〜C−アルキルであり、nは0〜2の整数であり、Zは酸素または硫黄である);
− 式−(CH−NRaRbで表される残基(式中、nは0〜5の整数であり、RaおよびRbは同一でも異なっていてもよく、それぞれC〜C−アルキル、C〜C−アルケニルであるか、あるいはRaおよびRbは自身が結合している窒素原子と共に式(II)
【化2】

(式中、Wは単結合、O、S、N−Rcを表し、RcはH、C〜C−アルキルまたはC〜C−アルキルフェニルであり、nは0〜3の整数である)で表される3〜7員の複素環を形成する)
− 式SORdで表される残基(式中、RdはC〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C−アルケニル、アリール、ヘテロアリールである)から選択され、
R’がOHである場合には、Rは
H、C〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C−アルケニルから選択される]。
【請求項2】
R’がHである場合には、Rは
H、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜C−カルボキシアルキル;
置換および未置換のピリジン、チアゾール、オキサゾールから選択されるヘテロアリール基;
式−(CH−NRaRbで表される残基(式中、nは2または3の整数であって、より好ましくは3であり、NRaRb基はN,N−ジメチルアミン、N,N−ジエチルアミン、1−ピペリジル、1−ピロリジニル、4−モルホリル、1−ピロリジル、1−ピペラジニル、1−(4−メチル)ピペラジニルである);
式SORdで表される残基(式中、RdはC〜C−アルキル、C〜Cシクロアルキルである)から選択され、
R’がOHである場合には、Rは
H、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキルである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
下記から選択される、請求項1または2記載の化合物:
R(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−メタンスルホニルプロピオンアミド;
R(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−メタンスルホニルプロピオンアミドナトリウム塩;
R(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]プロピオンアミド;
R(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−メチルプロピオンアミド;
R(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−イソプロポキシプロピオンアミド;
R(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−シクロペンチルプロピオンアミド;
R(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−[3−(N’−ピペリジニル)プロピル]プロピオンアミド;
R(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−[3−(N’−ピペリジニル)プロピル]プロピオンアミド塩酸塩;
R(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−[2−(N’−ピロリジニル)エチル]プロピオンアミド;
R(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−[2−(N’−ピロリジニル)エチル]プロピオンアミド塩酸塩;
R(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−[3−(N’−ピロリジニル)プロピル]プロピオンアミド;
R(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−[3−(N’−ピロリジニル)プロピル]プロピオンアミド塩酸塩;
R(+)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−(2−ヒドロキシエトキシエチル)プロピオンアミド;
R(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−[2−(4’−トリフルオロメチル)チアゾリル]プロピオンアミド;
R(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−メチル−N−ヒドロキシプロピオンアミド。
【請求項4】
R(−)−2−[(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]−N−メタンスルホニルプロピオンアミドおよびそのナトリウム塩である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
医薬として使用するための、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
乾癬、潰瘍性大腸炎、黒色腫、血管新生、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、水疱性類天疱瘡、関節リウマチ、特発性線維症、糸球体腎炎を治療するため、並びに虚血および再潅流によって引き起こされる損傷を予防および治療するための医薬の製造における、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物を、その適切な担体と混合して含む医薬組成物。
【請求項8】
請求項1記載の式(I)で表される化合物のうち、R’がHであり、RがSORd(式中、RdはC〜C−アルキルまたはC〜Cシクロアルキルである)である化合物の製造方法であって、R(−)−2−(4’−トリフルオロメタンスルホニルオキシフェニル)プロピオン酸を、縮合剤の存在下、適切なスルホンアミドRdSONH(式中、RdはC〜C−アルキルまたはC〜Cシクロアルキルである)で処理することを含む、前記方法。

【公表番号】特表2007−530505(P2007−530505A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−504413(P2007−504413)
【出願日】平成17年3月21日(2005.3.21)
【国際出願番号】PCT/EP2005/051302
【国際公開番号】WO2005/090295
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(506102293)ドムペ・ファ.ル.マ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ (11)
【Fターム(参考)】