説明

2ストロークエンジンおよび4ストロークエンジン

【課題】排気再循環により窒素酸化物の排出量を低減するとともに、EGRガスを環流させる際に必要となる冷却を容易に行う。
【解決手段】2ストロークエンジン1の燃焼室20から排出された排気は、過給機5のタービン51に送り込まれる。タービン51通過後の排気の一部は、排気再循環部83によりEGRガスとして取り出される。EGRガスは、アンモニア噴出部86から噴出される液状アンモニアの気化熱により冷却された後、吸気路82内の吸気へと環流され、コンプレッサ52により加圧されて燃焼室20に掃気として供給される。このように、排気再循環が行われることにより、2ストロークエンジン1から外気への窒素酸化物の排出量を低減することができる。また、再循環用流路84内のEGRガスに向けて液状アンモニアを噴出することにより、EGRガスを吸気に環流させる際に必要となるEGRガスの冷却を容易に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気再循環部を有するエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車用の4ストロークエンジンにおいて、排気系に排出された排気の一部(以下、「EGRガス」という。)を吸気系に環流させることにより、排気中の窒素酸化物(NO)の量を低減させる排気再循環(EGR:Exhaust Gas Recirculation)装置が利用されている。排気再循環装置を有するエンジンでは、EGRガスに含まれる硫黄(S)成分が、吸気系において水蒸気と反応することにより、吸気が酸性となって吸気系の金属部品が腐食するおそれがある。特許文献1では、排気系に設けられた触媒装置を通過した後の排気の一部が、EGRガスとして吸気系に環流される。EGRガスには、触媒装置にて窒素酸化物が還元されることにより生成されたアンモニア(NH)ガスが含まれるため、酸性の吸気を中和して吸気系における金属部品の腐食が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−85011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の装置では、EGRガスを吸気系へと環流させるために、高温のEGRガスを冷却する必要がある。そこで、吸気管と排気管とを連結してEGRガスを吸気系へと再循環させる排気ガス環流通路に、EGRガスを冷却するEGRクーラを設けられる。しかしながら、エンジンルームにはエンジンの構成品を含む様々な機器が配置されるため、EGRクーラは小型化されることが望ましい。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、排気再循環により窒素酸化物の排出量を低減するとともに、EGRガスを環流させる際に必要となる冷却を容易に行うことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、2ストロークエンジンであって、シリンダと、前記シリンダ内に設けられるピストンと、吸気を加圧して掃気を生成する過給機と、前記シリンダに形成され、前記シリンダおよび前記ピストンの上面にて囲まれる空間である燃焼室内に前記過給機からの前記掃気を供給する掃気ポートと、前記シリンダに形成され、前記燃焼室内のガスを前記燃焼室外に排出する排気ポートと、前記燃焼室から排出された排気の一部をEGRガスとして取り出して前記吸気または前記掃気に環流させる排気再循環部と、前記排気再循環部内の前記EGRガスに向けて液状アンモニアを噴出する噴出部とを備える。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の2ストロークエンジンであって、前記過給機が、前記燃焼室から排出された排気により回転するタービンと、前記タービンの回転を動力として前記吸気を加圧するコンプレッサとを備え、前記排気再循環部が、前記タービンを通過した後の排気の一部を前記EGRガスとして取り出す。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の2ストロークエンジンであって、前記EGRガスが、冷媒による冷却なしで前記吸気または前記掃気に環流される。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の2ストロークエンジンであって、前記燃焼室に燃料を供給する燃料供給部をさらに備え、前記燃料が、液状アンモニアを含む。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の2ストロークエンジンであって、船舶用のエンジンであり、前記燃焼室から排出された排気が、スクラバによる硫黄分除去なしで外気へと環流される。
【0011】
請求項6に記載の発明は、4ストロークエンジンであって、シリンダと、前記シリンダ内に設けられるピストンと、吸気を加圧して給気を生成する過給機と、前記シリンダに形成され、吸入行程において、前記シリンダおよび前記ピストンの上面にて囲まれる空間である燃焼室内に前記過給機からの前記給気を供給する給気ポートと、前記シリンダに形成され、前記燃焼室内のガスが燃焼する爆発行程後の排気行程において、前記燃焼室内のガスを前記燃焼室外に排出する排気ポートと、前記燃焼室から排出された排気の一部をEGRガスとして取り出して前記吸気または前記給気に環流させる排気再循環部と、前記排気再循環部内の前記EGRガスに向けて液状アンモニアを噴出する噴出部とを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、排気再循環により窒素酸化物の排出量を低減するとともに、EGRガスを環流させる際に必要となる冷却を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施の形態に係る2ストロークエンジンの構成を示す図である。
【図2】2ストロークエンジンの他の例の構成を示す図である。
【図3】第2の実施の形態に係る4ストロークエンジンの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る2ストロークエンジン1の構成を示す図である。2ストロークエンジン1は、船舶用の内燃機関であり、アンモニア(NH)を燃料とする。2ストロークエンジン1は、シリンダ2、および、シリンダ2内に設けられるピストン3を備え、ピストン3は、図1中の上下方向に移動可能である。なお、図1の上下方向は重力方向であるとは限らない。
【0015】
シリンダ2は、円筒状のシリンダライナ21、および、シリンダライナ21の上部に取り付けられるシリンダカバー22を有する。ピストン3は、シリンダライナ21に挿入された厚い円板状のピストンクラウン31、および、一端がピストンクラウン31の下面に接続されるピストンロッド32を有する。ピストンロッド32の他端は、図示省略のクランク機構に接続される。
【0016】
2ストロークエンジン1では、シリンダライナ21、シリンダカバー22、排気弁25(後述)、および、ピストンクラウン31の上面(すなわち、ピストン3の上面)にて囲まれる空間が、アンモニアガスおよび空気を燃焼するための燃焼室20である。シリンダカバー22には、燃焼室20に燃料を供給する燃料供給部61が設けられる。本実施の形態では、燃料として液状アンモニアが使用される。液状アンモニアは、液状アンモニアタンク62から燃料供給部61へと供給され、燃料供給部61により燃焼室20内へと噴出される。
【0017】
シリンダライナ21の下端部近傍には、多数の貫通孔が周状に配列して形成され、これらの貫通孔の集合が、燃焼室20内に後述の掃気を供給する掃気ポート23である。掃気ポート23の周囲には、掃気室231が設けられており、掃気ポート23は掃気室231を介して掃気管41に連通する。
【0018】
シリンダカバー22には、燃焼室20内のガスを燃焼室20外に排出する排気ポート24が形成され、排気ポート24には、排気ポート24を開閉する排気弁25が設けられる。排気ポート24を介して燃焼室20から排出されたガス(以下、「排気」という。)は、第1排気路241を介して排気管42へと導かれる。実際の2ストロークエンジン1では、複数のシリンダ2が併設されており、複数のシリンダ2が1つの掃気管41および1つの排気管42に接続される。
【0019】
2ストロークエンジン1は、ターボチャージャである過給機5、および、海水等の冷媒により過給機5からの空気の冷却を行う空気冷却器43をさらに備える。過給機5は、タービン51およびコンプレッサ52を備え、タービン51は、第2排気路811を介して排気管42から送り込まれた排気により回転する。コンプレッサ52は、タービン51にて発生する回転力を利用して(すなわち、タービン51の回転を動力として)、2ストロークエンジン1の外部から吸気路82を介して取り込んだ吸気(空気)を加圧して圧縮する。加圧された空気(以下、「掃気」という。)は、空気冷却器43にて冷却された後、掃気管41内に供給される。このように、過給機5では、排気を利用して吸気を加圧し、掃気が生成される。
【0020】
タービン51の回転に利用された排気は、第3排気路812を通過し、窒素酸化物(NO)を還元するための還元触媒7を介して2ストロークエンジン1の外部に排出される。上述のように、2ストロークエンジン1の燃料はアンモニアであり、硫黄分は燃料に含まれていない。このため、排気は、スクラバによる硫黄分除去なしで外気へと環流される(すなわち、排出される)。これにより、2ストロークエンジン1を備える船舶の構造を簡素化することができる。
【0021】
2ストロークエンジン1は、燃焼室20から排出された排気の一部をEGRガス(すなわち、再循環用排気)として取り出す排気再循環部83をさらに備える。排気再循環部83は、タービン51と還元触媒7との間にて第3排気路812から分岐して吸気路82に接続される再循環用流路84、および、再循環用流路84に設けられる再循環弁85を備える。再循環用流路84により、タービン51を通過した後の排気の一部がEGRガスとして取り出され、吸気路82内の吸気へと環流される。また、再循環弁85が制御されることにより、再循環用流路84から吸気路82内の吸気へと環流されるEGRガスの量が調整される。
【0022】
2ストロークエンジン1は、再循環用流路84内のEGRガスに向けて液状アンモニアを噴出する噴出部86(以下、「アンモニア噴出部86」という。)を備え、アンモニア噴出部86は、液状アンモニアタンク62に接続される。再循環用流路84内に噴出された液状アンモニアは直ぐに気化し、液状アンモニアの気化熱(蒸発潜熱)により再循環用流路84内の高温のEGRガスが冷却される。これにより、EGRガスの吸気に対する環流が容易に行われる。コンプレッサ52では、EGRガスおよび冷却用のアンモニアを含む吸気が加圧されて掃気が生成される。掃気は、上述のように、空気冷却器43にて冷却された後、掃気管41、掃気室231および掃気ポート23を介して燃焼室20に供給される。
【0023】
次に、2ストロークエンジン1の動作について説明する。2ストロークエンジン1では、図1中において二点鎖線にて示すピストン3の位置が上死点であり、実線にて示すピストン3の位置が下死点である。ピストン3が上死点近傍に位置する際には、図1中において二点鎖線にて示すように排気弁25が上昇して排気ポート24が閉じられており、燃焼室20内の掃気が圧縮される。
【0024】
そして、燃料供給部61から燃焼室20内に液状アンモニアが噴出され、気化したアンモニアが自着火して、燃焼室20内のガス(すなわち、アンモニアガスおよび掃気)の燃焼(爆発)が生じる。これにより、ピストン3が押し下げられ、下死点に向かって移動する。なお、燃焼室20内のガスは、必ずしも自着火する必要はなく、点火プラグ等を用いて燃焼室20内のガスの着火が行われてもよい。
【0025】
燃焼室20内のガスの燃焼後、ピストン3が下死点に到達する前に、排気弁25が下降して排気ポート24が開かれる。これにより、燃焼室20内の燃焼済みガスの排出が開始される。燃焼室20から排出されたガス(すなわち、排気)は、既述のように、第1排気路241、排気管42および第2排気路811を介して過給機5のタービン51に送り込まれる。タービン51通過後の排気の一部は、排気再循環部83によりEGRガスとして取り出され、アンモニア噴出部86から噴出される液状アンモニアにより冷却された後、吸気路82内の吸気へと環流される。また、EGRガスが取り出された後の排気は、還元触媒7を通過して2ストロークエンジン1の外部に排出される。なお、2ストロークエンジン1では、クランク機構のクランクシャフトに接続されたカム機構により、排気弁25の上昇および下降(排気ポート24の開閉)が行われる。
【0026】
ピストン3が下死点近傍まで移動し、ピストンクラウン31の上面が掃気ポート23の下方に位置すると、燃焼室20と掃気室231とが連通し(すなわち、掃気ポート23が開かれ)、掃気室231内の掃気の燃焼室20内への供給が開始される。ピストン3は下死点を通過した後、上昇に転じ、ピストンクラウン31の上面が掃気ポート23の上方に到達することにより、掃気ポート23が閉じられ、燃焼室20内への掃気の供給が停止される。続いて、排気ポート24が排気弁25により閉じられ、燃焼室20が密閉される。
【0027】
ピストン3はさらに上昇して、燃焼室20内の掃気が圧縮され、ピストン3が上死点近傍に到達すると、燃料供給部61から燃焼室20内に液状アンモニアが噴出され、燃焼室20内にて燃焼が生じる。2ストロークエンジン1では、上記動作が繰り返される。
【0028】
2ストロークエンジン1では、上述のように、燃焼室20内の掃気には、EGRガスとして吸気に環流された排気の一部が含まれている。このように、排気再循環が行われることにより、燃焼室20内における燃焼温度が低下し、窒素酸化物の生成が抑制される。その結果、2ストロークエンジン1から外気への窒素酸化物の排出量を低減することができる。
【0029】
また、再循環用流路84内のEGRガスに向けてアンモニア噴出部86から液状アンモニアを噴出することにより、EGRガスを吸気に環流させる際に必要となるEGRガスの冷却を容易に行うことができる。これにより、再循環用流路84に、EGRガスを冷却するためのEGRクーラを設けることなく、EGRガスの吸気に対する環流を行うことができる。換言すれば、EGRガスを冷媒(すなわち、EGRガスの温度を下げるための熱媒体)による冷却なしで吸気に環流させることができる。その結果、2ストロークエンジン1の排気再循環に係る構造を簡素化することができ、エンジンルームにおける機器の配置の自由度を向上することができる。
【0030】
2ストロークエンジン1では、排気再循環部83が、タービン51を通過した後の排気の一部をEGRガスとして取り出すことにより、タービン51通過前の排気の一部をEGRガスとして取り出す場合に比べて、燃焼室20からの排気の温度および圧力をタービン51の回転に効率良く利用することができる。また、EGRガスの冷却が、燃料と同じ液状アンモニアにより行われるため、排気再循環および燃料供給に係る配管や貯溜タンク等の構造の一部を共通化することができる。その結果、2ストロークエンジン1の構造を簡素化することができる。さらに、EGRガスの冷却に利用されたアンモニアは、掃気の一部として燃焼室20に供給される。このため、燃料供給部61から燃焼室20への液状アンモニアの供給量を低減することもできる。
【0031】
図2は、2ストロークエンジンの他の例の構成を示す図である。図2の2ストロークエンジン1aは、排気再循環部83aがEGRガスを掃気に環流させる点を除き、図1に示す2ストロークエンジン1と同様であり、同様の構成に同符号を付す。
【0032】
排気再循環部83aでは、再循環用流路84が、タービン51と還元触媒7との間にて第3排気路812から分岐して掃気管41に接続される。2ストロークエンジン1aでは、図1に示す2ストロークエンジン1と同様に、液状アンモニアタンク62からアンモニア噴出部86に供給された液状アンモニアが、再循環用流路84内のEGRガスに向けて噴出されて気化する。これにより、高温のEGRガスを容易に冷却することができ、EGRガスを掃気管41内の掃気に容易に環流することができる。そして、当該掃気が燃焼室20に供給されることにより、燃焼室20内における燃焼温度が低下し、窒素酸化物の生成が抑制される。その結果、2ストロークエンジン1aから外気への窒素酸化物の排出量を低減することができる。
【0033】
2ストロークエンジン1aでは、EGRガスの掃気への環流をより容易とするために、再循環用流路84にEGRガスを加圧するコンプレッサ等の機構が設けられてもよい。また、再循環用流路84は、掃気管41ではなく、コンプレッサ52と空気冷却器43とを接続する第1掃気路87、または、空気冷却器43と掃気管41とを接続する第2掃気路88に接続されてもよい。この場合、EGRガスは、第1掃気路87または第2掃気路88内の掃気に環流される。
【0034】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る4ストロークエンジンについて説明する。図3は、第2の実施の形態に係る4ストロークエンジン1bの構成を示す図である。4ストロークエンジン1bは、シリンダ2b、シリンダ2b内に設けられるピストン3b、シリンダ2bに形成される給気ポート23bおよび排気ポート24b、吸気を加圧して給気を生成する過給機5b、シリンダ2b内に燃料を供給する燃料供給部61b、EGRガスを吸気に環流させる排気再循環部83b、および、排気再循環部83b内のEGRガスに向けて液状アンモニアを噴出するアンモニア噴出部86bを備える。燃料供給部61bは、液状アンモニアタンク62bに接続され、燃料である液状アンモニアを、シリンダ2bおよびピストン3bの上面にて囲まれる空間である燃焼室20b内に向けて噴出する。アンモニア噴出部86bも、液状アンモニアタンク62bに接続される。
【0035】
4ストロークエンジン1bでは、ピストン3bが上死点から下死点へと移動する吸入行程において、給気ポート23bに設けられる弁を開くことにより、燃焼室20b内に過給機5bからの給気が供給される。続いて、給気ポート23bを閉じた状態にて、ピストン3bが下死点から上死点へと移動することにより、燃焼室20b内の給気を圧縮する圧縮行程が行われる。
【0036】
そして、ピストン3bが上死点近傍に位置する際に、燃料供給部61bから燃焼室20b内に液状アンモニアが噴出され、燃焼室20b内のガスの燃焼(爆発)が行われる。燃焼室20b内のガスの燃焼によりピストン3bが上死点から下死点へと移動する爆発行程の後、ピストン3bが下死点から上死点へと移動する排気行程が行われる。排気行程では、排気ポート24bに設けられる弁を開くことにより、燃焼室20b内のガスが燃焼室20b外に排出される。
【0037】
燃焼室20bから排出された排気は、過給機5bのタービン51bに送り込まれる。タービン51bを通過した後の排気の一部は、排気再循環部83bによりEGRガスとして取り出され、再循環用流路84b内においてアンモニア噴出部86bから噴出される液状アンモニアにより冷却された後、吸気路82b内の吸気へと環流される。また、EGRガスが取り出された後の排気は、還元触媒7bを通過して4ストロークエンジン1bの外部に排出される。
【0038】
4ストロークエンジン1bでは、EGRガスが環流された吸気が、過給機5bのコンプレッサ52bにより加圧されることにより給気が生成され、当該給気が上述の吸入工程において燃焼室20bに供給される。このように、排気再循環が行われることにより、燃焼室20b内における燃焼温度が低下し、窒素酸化物の生成が抑制される。その結果、4ストロークエンジン1bから外気への窒素酸化物の排出量を低減することができる。
【0039】
また、再循環用流路84b内のEGRガスに向けてアンモニア噴出部86bから液状アンモニアを噴出することにより、EGRガスを吸気に環流させる際に必要となるEGRガスの冷却を容易に行うことができる。これにより、EGRガスを冷媒による冷却なしで吸気に環流させることができる。その結果、4ストロークエンジン1bの排気再循環に係る構造を簡素化することができ、エンジンルームにおける機器の配置の自由度を向上することができる。
【0040】
4ストロークエンジン1bでは、排気再循環部83bが、タービン51bを通過した後の排気の一部をEGRガスとして取り出すことにより、タービン51b通過前の排気の一部をEGRガスとして取り出す場合に比べて、燃焼室20bからの排気の温度および圧力をタービン51bの回転に効率良く利用することができる。また、EGRガスの冷却が、燃料と同じ液状アンモニアにより行われるため、排気再循環および燃料供給に係る配管や貯溜タンク等の構造の一部を共通化することができる。その結果、4ストロークエンジン1bの構造を簡素化することができる。さらに、EGRガスの冷却に利用されたアンモニアは、給気の一部として燃焼室20bに供給される。このため、燃料供給部61bから燃焼室20bへの液状アンモニアの供給量を低減することもできる。
【0041】
4ストロークエンジン1bでは、排気再循環部83bが、コンプレッサ52bと燃焼室20bとを接続する給気路87bに接続されることにより、EGRガスが給気に環流されてもよい。この場合も、上記と同様に、排気再循環により窒素酸化物の排出量を低減することができるとともに、アンモニア噴出部86bにより、EGRガスの冷却を容易に行うことができる。
【0042】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0043】
例えば、2ストロークエンジン1では、燃料供給部61から液状アンモニアのみが供給されるのではなく、液状アンモニアに石油燃料等が混合されたものが燃料として供給されてもよい。この場合も、燃料供給部61から供給される燃料に含まれる液状アンモニアを利用してEGRガスの冷却が行われることにより、排気再循環および燃料供給に係る配管や貯溜タンク等の構造の一部を共通化することができる。その結果、2ストロークエンジン1の構造を簡素化することができる。また、EGRガスの冷却に利用されたアンモニアは、掃気の一部として燃焼室20に供給されるため、燃焼室20への燃料の供給量を低減することもできる。2ストロークエンジン1aおよび4ストロークエンジン1bにおいても同様である。また、上記実施の形態に係るエンジンでは、アンモニアを含まない燃料(例えば、水素ガスや軽油)が、燃料供給部から燃焼室に供給されてもよい。
【0044】
2ストロークエンジン1,1aでは、再循環用流路84内のEGRガスの更なる冷却が必要な場合は、冷媒によりEGRガスを冷却するEGRクーラが再循環用流路84に設けられてもよい。当該EGRクーラは、アンモニア噴出部86からの液状アンモニアによるEGRガスの冷却が行われない場合に比べて小型化される。4ストロークエンジン1bにおいても同様である。
【0045】
上記実施の形態に係るエンジンでは、還元触媒を通過した後の排気の一部が、EGRガスとして取り出されてもよい。また、過給機のタービンを通過する前の排気の一部が、EGRガスとして取り出されてもよく、タービン通過前の排気、および、タービン通過後の排気の双方の一部が、EGRガスとして取り出されてもよい。過給機は、燃焼室からの排気を利用して吸気を加圧するもの以外に、クランクシャフトから得られる動力により、吸気を加圧するもの等であってもよい。
【0046】
上記実施の形態における2ストロークエンジンおよび4ストロークエンジンは、船舶以外に、自動車や発電用の原動機等、様々な用途に用いられてよい。
【0047】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせられてよい。
【符号の説明】
【0048】
1,1a 2ストロークエンジン
1b 4ストロークエンジン
2,2b シリンダ
3,3b ピストン
5,5b 過給機
20,20b 燃焼室
23 掃気ポート
23b 給気ポート
24,24b 排気ポート
51,51b タービン
52,52b コンプレッサ
61,61b 燃料供給部
83,83a,83b 排気再循環部
86,86b アンモニア噴出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2ストロークエンジンであって、
シリンダと、
前記シリンダ内に設けられるピストンと、
吸気を加圧して掃気を生成する過給機と、
前記シリンダに形成され、前記シリンダおよび前記ピストンの上面にて囲まれる空間である燃焼室内に前記過給機からの前記掃気を供給する掃気ポートと、
前記シリンダに形成され、前記燃焼室内のガスを前記燃焼室外に排出する排気ポートと、
前記燃焼室から排出された排気の一部をEGRガスとして取り出して前記吸気または前記掃気に環流させる排気再循環部と、
前記排気再循環部内の前記EGRガスに向けて液状アンモニアを噴出する噴出部と、
を備えることを特徴とする2ストロークエンジン。
【請求項2】
請求項1に記載の2ストロークエンジンであって、
前記過給機が、
前記燃焼室から排出された排気により回転するタービンと、
前記タービンの回転を動力として前記吸気を加圧するコンプレッサと、
を備え、
前記排気再循環部が、前記タービンを通過した後の排気の一部を前記EGRガスとして取り出すことを特徴とする2ストロークエンジン。
【請求項3】
請求項1または2に記載の2ストロークエンジンであって、
前記EGRガスが、冷媒による冷却なしで前記吸気または前記掃気に環流されることを特徴とする2ストロークエンジン。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の2ストロークエンジンであって、
前記燃焼室に燃料を供給する燃料供給部をさらに備え、
前記燃料が、液状アンモニアを含むことを特徴とする2ストロークエンジン。
【請求項5】
請求項4に記載の2ストロークエンジンであって、
船舶用のエンジンであり、前記燃焼室から排出された排気が、スクラバによる硫黄分除去なしで外気へと環流されることを特徴とする2ストロークエンジン。
【請求項6】
4ストロークエンジンであって、
シリンダと、
前記シリンダ内に設けられるピストンと、
吸気を加圧して給気を生成する過給機と、
前記シリンダに形成され、吸入行程において、前記シリンダおよび前記ピストンの上面にて囲まれる空間である燃焼室内に前記過給機からの前記給気を供給する給気ポートと、
前記シリンダに形成され、前記燃焼室内のガスが燃焼する爆発行程後の排気行程において、前記燃焼室内のガスを前記燃焼室外に排出する排気ポートと、
前記燃焼室から排出された排気の一部をEGRガスとして取り出して前記吸気または前記給気に環流させる排気再循環部と、
前記排気再循環部内の前記EGRガスに向けて液状アンモニアを噴出する噴出部と、
を備えることを特徴とする4ストロークエンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−145007(P2012−145007A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2824(P2011−2824)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】