2次元フォトニック結晶面発光レーザ
【課題】2次元分布帰還効果と面発光特性について独立に制御して最適化することができる2次元フォトニック結晶面発光レーザを提供すること。
【解決手段】キャリアの注入により発光する活性層の近傍に形成した媒質層に該媒質層とは屈折率が異なる媒質部を周期的に配列して2次元フォトニック結晶を形成した2次元フォトニック結晶面発光レーザであって、前記2次元フォトニック結晶は、前記活性層をコアとして伝搬する光が2次元的に分布帰還するように構成された分布帰還制御フォトニック結晶と、前記伝搬光が面発光するように構成された面発光制御フォトニック結晶とが重畳されたものであることを特徴とする。
【解決手段】キャリアの注入により発光する活性層の近傍に形成した媒質層に該媒質層とは屈折率が異なる媒質部を周期的に配列して2次元フォトニック結晶を形成した2次元フォトニック結晶面発光レーザであって、前記2次元フォトニック結晶は、前記活性層をコアとして伝搬する光が2次元的に分布帰還するように構成された分布帰還制御フォトニック結晶と、前記伝搬光が面発光するように構成された面発光制御フォトニック結晶とが重畳されたものであることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2次元フォトニック結晶が形成された面発光する2次元フォトニック結晶面発光レーザに関するものである。
【背景技術】
【0002】
フォトニック結晶は、半導体などに屈折率が該半導体とは異なる媒質を光の波長程度の周期で配列させることにより周期構造を形成したものであり、様々な光デバイスへの応用が検討されている。
【0003】
フォトニック結晶を応用した光デバイスのひとつとして、2次元フォトニック結晶を利用した面発光レーザが開示されている(特許文献1〜3)。図11は、特許文献1に開示されたものと同様の構造を有する従来の2次元フォトニック結晶面発光レーザを模式的に表した斜視分解図である。この2次元フォトニック結晶面発光レーザ100´は、基板101´上に閉じ込め層102´、下部クラッド層103´、活性層104´、上部クラッド層105´が積層されたものである。閉じ込め層102´はn型InP半導体からなり、空孔108´が2次元の所定の周期で正方格子状に配置されている。したがって、空孔108´はn型InP半導体とは屈折率が異なる空気媒質部が周期的に配列されたフォトニック結晶を形成する。活性層104´は、GaInAsP系の半導体材料を用いた多重量子井戸構造からなるものであり、キャリアを注入することにより発光する。また、下部クラッド層103´はn型InP半導体などからなる。また上部クラッド層105´はp型InP半導体からなる。そして、下部クラッド層103´及び上部クラッド層105´により活性層104´を挟んでダブルへテロ接合を形成してキャリアを閉じこめることで、発光に寄与するキャリアを活性層104´に集中させる構造としている。なお、上部クラッド層105´の上面及び基板101´の底面には金からなる電極106´、107´が形成されている。
【0004】
ここで、電極106´、107´間に電圧を印加することにより活性層104´が発光し、活性層104´からエバネセント波としてしみ出た光が閉じ込め層102´に形成された2次元フォトニック結晶に分布する。2次元フォトニック結晶は2次元的な分布帰還効果をもつため、一般的な1次元のグレーティングを用いた分布帰還型レーザと同様、レーザ発振を起こす。しかも2次元フォトニック結晶の分布帰還効果は2次元的であるから、2次元平面の大面積にわたるコヒーレント単一モード発振が起こり、単一モードレーザ光が面発光する。以下、図11の2次元フォトニック結晶面発光レーザの2次元分布帰還と面発光の原理について、2次元フォトニック結晶の波数空間を用いて説明する。
【0005】
まず、2次元正方格子フォトニック結晶で分布帰還動作が可能な光はフォトニック結晶の逆格子空間(波数空間)における対称点のうち、X点、M点、Γ点において動作する。Γ点とは、大きさが最小になるように選んだ正方格子の逆格子基本ベクトルをb1、b2とすると、波数ベクトルがk=pb1+qb2(p、qは任意の整数)と表される点である。ベクトルb1、b2は互いに直交しており、ベクトルの大きさはどちらもフォトニック結晶の格子定数をaとすると2π/aである。同様に、X点は波数ベクトルがk=(p+1/2)b1+qb2またはk=pb1+(q+1/2)b2と表される点であり、M点は波数ベクトルがk=(p+1/2)b1+(q+1/2)b2と表される点である。
【0006】
一方、2次元三角格子フォトニック結晶で分布帰還動作が可能な光はフォトニック結晶の波数空間における対称点のうち、M点、K点、Γ点において動作する。Γ点は、大きさが最小になるように選んだ三角格子の逆格子基本ベクトルをb1、b2とすると、波数ベクトルがk=pb1+qb2(p、qは任意の整数)と表される点である。上記の正方格子の場合とは異なり、ベクトルb1、b2は60度の角度をなしており、ベクトルの大きさはどちらもフォトニック結晶の格子定数をaとして4π/(√3a)である。同様に、M点は波数ベクトルがk=(p+1/2)b1+qb2またはk=pb1+(q+1/2)b2またはk=(p−1/2)b1+(q+1/2)b2と表される点であり、K点は波数ベクトルがk=(p+1/3)b1+(q+1/3)b2またはk=(p−1/3)b1+(q+2/3)b2で表される点である。
【0007】
特許文献1に開示された2次元フォトニック結晶面発光レーザは、2次元分布帰還の動作点として、正方格子または三角格子の2次元フォトニック結晶のΓ点を用いている。
【0008】
この2次元分布帰還の原理は、フォトニック結晶格子による光の回折によって説明できる。まず、結晶格子のような周期構造中における光の回折とは、波数ベクトルがkの光が、周期構造によって波数ベクトルがk´=k+p´b1+q´b2(p´、q´は任意の整数、b1、b2は逆格子基本ベクトル)の光に変化することである。これを波数ベクトルがk=pb1+qb2の光、つまりΓ点に対応する光についてみると、p´=−2p、q´=−2qとなる回折を受けるときには、回折した後の光の波数ベクトルはk´=−kとなる。すなわち、Γ点に対応する光は、この回折によって回折する前とは逆向きに進行する波と結合する。その結果、互いに逆方向に進行する光同士が結合することで分布帰還を起こす。また、p´=−p+qかつq´=−q−pとなる回折を受けるときには、回折した後の光の波数ベクトルはk´=qb1−pb2となり、回折する前の光に対する角度が正方格子についていえば90°、三角格子についていえば120°をなす方向に進行する波と結合する。一方、p´=−p−qかつq´=−q+pとなる回折を受けるときには、回折した後の光の波数ベクトルはk´=−qb1+pb2となり、回折する前の光に対する角度が正方格子についていえば−90°、三角格子についていえば−120°をなす方向に進行する波と結合する。すなわち、Γ点に対応する光は、結晶格子上の任意の位置から上記の回折を受けて上記の所定の方向に進行する波と結合しながら最初の位置に帰還する、つまり2次元的に分布帰還する。
【0009】
次に、面発光の原理についても光の回折によって説明できる。すなわち、Γ点に対応する光に対してp´=−pかつq´=−qとなる回折を受けるときには、k´=0となるところ、2次元の面内の波数ベクトルk´が0ということは光がフォトニック結晶が形成された面に垂直な方向に進行することを意味する。すなわち、Γ点に対応する光は、上記回折によってフォトニック結晶が形成された面に垂直な方向に進行するグレーティングカップルと呼ばれる効果によって面発光を起こすという性質も備えていることになる。その結果、Γ点に対応する光は2次元的に分布帰還するとともに面発光する。
【0010】
以上説明したように、特許文献1のフォトニック結晶面発光レーザは、閉じ込め層に形成されたフォトニック結晶の波数空間のΓ点に対応する光が、2次元平面の大面積にわたってコヒーレント単一モードレーザ光として面発光するものとなる。
【0011】
【特許文献1】特開2000−332351号公報
【特許文献2】特開2003−23193号公報
【特許文献3】特開2004−296538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところが従来の2次元フォトニック結晶面発光レーザでは、例えば2次元分布帰還効果を最適化して面内の光閉じ込めが強くなるようにフォトニック結晶構造を最適化すると面発光強度が弱くなる場合があり、面発光特性を最適化して強度が強くなるようにフォトニック結晶構造を最適化すると面内の光閉じ込めが弱くなる場合があった。すなわち、2次元分布帰還効果と面発光特性について独立に制御して最適化することはできなかった。
【0013】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、2次元分布帰還効果と面発光特性について独立に制御して最適化することができる2次元フォトニック結晶面発光レーザを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザは、キャリアの注入により発光する活性層の近傍に形成した媒質層に該媒質層とは屈折率が異なる媒質部を周期的に配列して2次元フォトニック結晶を形成した2次元フォトニック結晶面発光レーザであって、前記2次元フォトニック結晶は、前記活性層をコアとして伝搬する光が前記活性層の面内で2次元的に分布帰還し、かつ前記活性層に垂直な方向に放射されないように構成された分布帰還制御フォトニック結晶と、前記伝搬光が前記活性層に垂直な方向に放射されるように構成された面発光制御フォトニック結晶とが重畳されたものであることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザは、キャリアの注入により発光する活性層の近傍に形成した媒質層に該媒質層とは屈折率が異なる媒質部を周期的に配列して2次元フォトニック結晶を形成した2次元フォトニック結晶面発光レーザであって、前記2次元フォトニック結晶は、前記活性層をコアとして伝搬する伝搬光のモード波長の1/√2倍の格子定数を有する正方格子状の分布帰還制御フォトニック結晶と、前記伝搬光のモード波長と同じ値の格子定数を有しかつ前記分布帰還制御フォトニック結晶に対して結晶方位が45°の角度をなす正方格子状の面発光制御フォトニック結晶とが重畳されたものであることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザは、キャリアの注入により発光する活性層の近傍に形成した固体層に該媒質層とは屈折率が異なる媒質部を周期的に配列して2次元フォトニック結晶を形成した2次元フォトニック結晶面発光レーザであって、前記2次元フォトニック結晶は、前記活性層をコアとして伝搬する伝搬光が該伝搬光のモード波長において逆格子空間におけるM点で動作するように構成された正方格子状の分布帰還制御フォトニック結晶と、前記伝搬光が該伝搬光のモード波長において波数空間におけるΓ点で動作するように構成された直方格子状の面発光制御フォトニック結晶とが重畳されたものであることを特徴とする。ここで、M点とはフォトニック結晶格子の波数空間において大きさが最小になるように選んだ逆格子基本ベクトルb1、b2を用いて波数ベクトルが(p+1/2)b1+(q+1/2)b2(p、qは任意の整数)で表される対称点であり、Γ点とは波数ベクトルがpb1+qb2(p、qは任意の整数)で表される対称点である。
【0017】
また、本発明に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザは、キャリアの注入により発光する活性層の近傍に形成した媒質層に該媒質層とは屈折率が異なる媒質部を周期的に配列して2次元フォトニック結晶を形成した2次元フォトニック結晶面発光レーザであって、前記2次元フォトニック結晶は、前記活性層をコアとして伝搬する伝搬光のモード波長の2/3倍の格子定数を有する三角格子状の分布帰還制御フォトニック結晶と、前記伝搬光のモード波長の2√3/3倍の格子定数を有しかつ前記分布帰還制御フォトニック結晶に対して結晶方位が30°の角度をなす三角格子状の面発光制御フォトニック結晶とが重畳されたものであることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザは、キャリアの注入により発光する活性層の近傍に形成した媒質層に該媒質層とは屈折率が異なる媒質部を周期的に配列して2次元フォトニック結晶を形成した2次元フォトニック結晶面発光レーザであって、前記2次元フォトニック結晶は、前記活性層をコアとして伝搬する伝搬光が該伝搬光のモード波長において波数空間におけるK点で動作するように構成された三角格子状の分布帰還制御フォトニック結晶と、前記伝搬光が該伝搬光のモード波長において波数空間におけるΓ点で動作するように構成された三角格子状の面発光制御フォトニック結晶とが重畳されたものであることを特徴とする。ここで、K点とはフォトニック結晶格子の波数空間において大きさが最小になるように選んだ逆格子基本ベクトルb1、b2を用いて波数ベクトルが(p+1/3)b1+(p+1/3)b2または(p−1/3)b1+(p+2/3)b2で表される対称点であり、Γ点とは波数ベクトルがpb1+qb2(p、qは任意の整数)で表される対称点である。
【0019】
また、この発明に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザは、上記発明において、前記面発光制御フォトニック結晶を形成する前記媒質部は、前記面発光制御フォトニック結晶が形成された部分における位置に応じて異なる大きさを有するものであることを特徴とする。
【0020】
また、この発明に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザは、上記発明において、前記媒質部の大きさは、前記面発光制御フォトニック結晶が形成された部分の中心部から周辺部に向かって指数関数的に減少することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザによれば、活性層をコアとして伝搬する伝搬光が2次元的に分布帰還するように構成された分布帰還制御フォトニック結晶と伝搬光が面発光を起こすように構成された面発光制御フォトニック結晶とが重畳的に形成されているので、2次元分布帰還効果と面発光特性について独立に制御して最適化することができる2次元フォトニック結晶面発光レーザが実現できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、図面を参照して本発明に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザの実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0023】
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザについて説明する。本実施の形態1に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザは、異なる格子定数を有する2種類の正方格子状のフォトニック結晶が重畳されたフォトニック結晶が形成されており、真空中の波長980nmの光を面発光するものである。
【0024】
図1は、本発明の実施の形態1に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザを表面側から見た斜視図である。また、図2は、図1の2次元フォトニック結晶面発光レーザの斜視分解図である。また、図3は、図1の2次元フォトニック結晶面発光レーザを裏面側から見た場合の斜視図である。図1〜3に示すように、本実施の形態1に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザ100は、n−GaAs基板101上に厚さ4000nmのAlGaAs下部クラッド層102、厚さ100nmのGaAs下部分離閉じ込め層103、利得のピーク波長が真空中の波長で980nmである厚さ35nmのInGaAs/GaAsP多重量子井戸活性層104、厚さ70nmのGaAs上部分離閉じ込め層105が積層されており、さらにその上にフォトニック結晶を形成した厚さ130nmのGaAsフォトニック結晶層106、厚さ50nmのGaAsスペーサ層107、厚さ2000nmのAlGaAs上部クラッド層108、厚さ4000nmのGaAsコンタクト層109が積層されている。
【0025】
さらにGaAsコンタクト層109の上面には金からなる直径50μmの円形の上部電極110が形成されている。また上部電極110の周囲には絶縁膜112が形成されている。一方、n−GaAs基板101の底面には金からなる下部電極111が形成されている。下部電極111は直径100μmの円形の開口部113を有し、開口部113には誘電体からなる無反射コート膜114が形成されている。
【0026】
2次元フォトニック結晶面発光レーザ100は、以下に説明する方法で製造できる。まずn−GaAs基板101上に、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)やMBE(Molecular Beam Epitaxy)を用いてAlGaAs下部クラッド層102、GaAs下部分離閉じ込め層103、InGaAs/GaAsP多重量子井戸活性層104、GaAs上部分離閉じ込め層105を成長する。一方、p−GaAs基板上に、同様の方法でAlGaAsエッチストップ層、GaAsコンタクト層109、AlGaAs上部クラッド層108、GaAsスペーサ層107およびGaAsフォトニック結晶層106を成長する。
【0027】
次に、p−GaAs基板上に電子線描画でレジストパターンを形成し、パターンをGaAsフォトニック結晶層106にRIE(Reactive Ion Etching)によって転写することで空孔115、116を形成し、分布帰還制御フォトニック結晶と面発光制御フォトニック結晶とが重畳された2次元フォトニック結晶を形成する。次に、p−GaAs基板の表層のGaAsフォトニック結晶層106とn−GaAs基板101の表層のGaAs上部分離閉じ込め層105とをウェハ融着によって接合する。その後、p−GaAs基板を機械研磨および選択性ウェットエッチングを用いて除去し、さらにAlGaAsエッチストップ層を選択性ウェットエッチングを用いて除去する。さらにGaAsコンタクト層109の上面およびn−GaAs基板101の底面に上部電極110および下部電極111を電子線蒸着や抵抗加熱蒸着によって形成する。さらに電子線蒸着などによって絶縁膜112および無反射コート膜114を形成し、所定の大きさに切断して2次元フォトニック結晶面発光レーザ100が完成する。
【0028】
以上の方法によって製造された2次元フォトニック結晶面発光レーザ100のGaAsフォトニック結晶層106にはGaAsとは屈折率が異なる媒質部として円形の空孔115、116が周期的に配列して形成されている。その結果、GaAsフォトニック結晶層106には2次元フォトニック結晶が形成される。
【0029】
図4は、GaAsフォトニック結晶層106に配列された空孔が形成する2次元フォトニック結晶の一部を示す平面図である。空孔115は格子L1を基本格子とする分布帰還制御フォトニック結晶を形成し、空孔116は格子L2を基本格子とする面発光制御フォトニック結晶を形成する。格子L1の格子定数a1は205nmである。空孔115の半径はa1の0.24倍すなわち49.2nmである。また、InGaAs/GaAsP多重量子井戸活性層104を伝搬する光のモード屈折率は3.37である。すなわち、InGaAs/GaAsP多重量子井戸活性層104をコアとして伝搬している光の実効的な波長をモード波長とすると、真空中の波長が980nmの光のモード波長は290nmである。つまり、格子L1の格子定数a1は、真空中の波長が980nmの光のモード波長の1/√2倍に相当する値である。
【0030】
一方、格子L2は格子L1に対して結晶方位が45°の角度をなしており、格子定数a2は290nmであり、真空中の波長が980nmの光のモード波長と同じ値である。空孔116の半径はa1の0.15倍すなわち30.8nmである。また、空孔116は所定の2つの空孔115の中間に位置している。
【0031】
次に、本実施の形態1におけるフォトニック結晶の2次元分布帰還と面発光の原理について説明する。上記のように、分布帰還制御フォトニック結晶の格子L1の格子定数a1は、真空中の波長が980nmの光のモード波長の1/√2倍に相当する値である。すなわち、光のモード波長は√2a1であるからこのときの波数の大きさは2π/(√2a1)である。一方、格子L1の逆格子基本ベクトルはb1=(2π/a1、0)、b2=(0、2π/a1)である。ここで、前述のようにM点は波数ベクトルがk=(p+1/2)b1+(q+1/2)b2と表されるが、p=q=0のときはk=1/2b1+1/2b2=(π/a1、π/a1)であるから、波数ベクトルであるkの大きさは2π/(√2a1)である。すなわち、光のモード波長の波数の大きさとM点の波数ベクトルの大きさが等しいので、真空中の波長が980nmの光は、分布帰還制御フォトニック結晶との関係では、M点で動作することになる。
【0032】
M点の波数ベクトルk=1/2b1+1/2b2に対応する波数ベクトルの光が分布帰還制御フォトニック結晶の結晶格子によって回折を受けると、その波数ベクトルはk´=(p´+1/2)b1+(q´+1/2)b2(p´、q´は任意の整数)に変化する。ここで、p´=−1かつq´=−1となる回折を受けるときにはk´=−kとなるから、M点の波数ベクトルに対応する光は、回折する前の光とは逆方向に進行する波と結合する。また、p´=0かつq´=−1の場合にはk´=1/2b1−1/2b2となるから、回折する前の光に対する角度が90°をなす方向に進行する波と結合し、p´=−1かつq´=0の場合にはk´=−1/2b1+1/2b2となるから、回折する前の光に対する角度が−90°をなす方向に進行する波と結合する。よって、波数空間におけるM点に対応する波数ベクトルを有する真空中の波長980nmの光は、分布帰還制御フォトニック結晶により2次元的な分布帰還を受け、レーザ発振する。
【0033】
しかしながら、回折を受けた後の光の波数ベクトルであるk´については、どのように整数p´およびq´を選んでもk´=0となることはないため、分布帰還制御フォトニック結晶によっては面発光は起こらない。
【0034】
次に、面発光の原理について説明する。面発光制御フォトニック結晶の格子L2の結晶方位は、分布帰還制御フォトニック結晶の格子L1の結晶方位に対して45°の角度をなし、格子L2の格子定数は格子L1の格子定数の√2倍であるから、大きさが最小になるように選んだ面発光制御フォトニック結晶の逆格子単位ベクトルをb1´およびb2´とすると、b1´およびb2´は、分布帰還フォトニック結晶の逆格子単位ベクトルであるb1およびb2とは次の関係がある。すなわち、b1´=1/2b1+1/2b2およびb2´=−1/2b1+1/2b2である。このとき、分布帰還制御フォトニック結晶によって分布帰還してレーザ発振する光の代表的な波数ベクトルであるk=1/2b1+1/2b2は、b1´を用いてk=b1´と表される。これは、面発光制御フォトニック結晶の逆格子空間のΓ点の波数ベクトルを表すk=pb1´+qb2´において、p=1かつq=0とした場合に相当する。すなわち、分布帰還制御フォトニック結晶によって分布帰還してレーザ発振した光は、面発光制御フォトニック結晶との関係では、Γ点で動作することになる。
【0035】
すでに説明したように、Γ点に対応する波数ベクトルを有する光は、フォトニック結晶格子による回折によってフォトニック結晶が形成された面に垂直な方向に進行し、面発光を起こす。すなわち、分布帰還制御フォトニック結晶によって分布帰還してレーザ発振した光は、面発光制御フォトニック結晶によって面発光する。
【0036】
したがって、本実施の形態1に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザは、2次元分布帰還と面発光が異なるフォトニック結晶格子によって実現されているため、各フォトニック結晶格子の構造を独立に設計して、2次元分布帰還効果と面発光特性を独立に最適化することができる。たとえば、分布帰還制御フォトニック結晶は分布帰還効果が一層強くなるように構造が設計されるとともに、面発光制御フォトニック結晶は、空孔の大きさを調整して面発光強度が強くなるように構造が設計される。
【0037】
(実施の態様2)
次に、本発明の実施の形態2に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザについて説明する。本実施の形態2に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザは、図1に示すような実施の形態1に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザと同様の構造を有し、同様の製造方法によって製造できるが、GaAsフォトニック結晶層に形成された面発光制御フォトニック結晶の格子定数および結晶方位が異なる。
【0038】
図5は、本実施の形態2に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザのGaAsフォトニック結晶層に配列された空孔が形成する2次元フォトニック結晶の一部を示す平面図である。空孔215は格子L3を基本格子とする分布帰還制御フォトニック結晶を形成し、空孔216は格子L4を基本格子とする面発光制御フォトニック結晶を形成する。本実施の形態1における分布帰還制御フォトニック結晶と同様に、L3の格子定数a1は205nmであり、空孔215の半径はa1の0.24倍すなわち49.2nmである。
【0039】
一方、格子L4は格子L3と同一の結晶方向を有しており、格子定数a2は410nmである。空孔216の半径はa1の0.15倍すなわち30.8nmである。また、空孔216は所定の2つの空孔215の中間に位置している。
【0040】
次に、本実施の形態2に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザの2次元分布帰還と面発光の原理について説明する。まず、格子L3を基本格子とする分布帰還制御フォトニック結晶は、実施の態様1の分布帰還制御フォトニック結晶と同様に正方格子であり、同一の格子定数を有するから、真空中の波長が980nmの光は、分布帰還制御フォトニック結晶との関係では、M点で動作することになる。したがって、M点に対応する真空中の波長980nmの光は、分布帰還制御フォトニック結晶により2次元的な分布帰還を受け、レーザ発振するが、分布帰還制御フォトニック結晶によっては面発光は起こらない。
【0041】
次に、面発光の原理について説明する。面発光制御フォトニック結晶の格子L4の結晶方位は、分布帰還制御フォトニック結晶の格子L3の結晶方位と同じであり、格子L4の格子定数は格子L3の格子定数の2倍であるから、大きさが最小になるように選んだ面発光制御フォトニック結晶の逆格子単位ベクトルをb1´およびb2´とすると、b1´およびb2´は、分布帰還フォトニック結晶の逆格子単位ベクトルであるb1およびb2とは次の関係がある。すなわち、b1´=1/2b1およびb2´=1/2b1である。このとき、分布帰還制御フォトニック結晶によって分布帰還してレーザ発振した光の代表的なM点の波数ベクトルであるk=1/2b1+1/2b2はb1´、b2´を用いてk=b1´+b2´と表される。これは、面発光制御フォトニック結晶の逆格子空間のΓ点の波数ベクトルを表すk=pb1´+qb2´において、p=1かつq=1とした場合に相当する。すなわち、分布帰還制御フォトニック結晶によって分布帰還してレーザ発振した光は、面発光制御フォトニック結晶との関係では、Γ点で動作することになる。
【0042】
その結果、実施の形態1に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザと同様に、分布帰還制御フォトニック結晶によって分布帰還してレーザ発振した光は、面発光制御フォトニック結晶によって面発光する。したがって、本実施の形態2に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザは、2次元分布帰還と面発光が異なるフォトニック結晶格子によって実現されているため、各フォトニック結晶格子の構造を独立に設計して、2次元分布帰還効果と面発光特性を独立に最適化することができる。たとえば、分布帰還制御フォトニック結晶は分布帰還効果が一層強くなるように構造が設計されるとともに、面発光制御フォトニック結晶は、空孔の大きさを調整して面発光強度が強くなるように構造が設計される。
【0043】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザについて説明する。本実施の形態3に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザは、実施の形態1および2に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザと同様の構造を有し、同様の製造方法によって製造できるが、GaAsフォトニック結晶層に形成された面発光制御フォトニック結晶が直方格子であることや格子定数および結晶方位などが異なる。
【0044】
図6は、本実施の形態3に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザのGaAsフォトニック結晶層に配列された空孔が形成する2次元フォトニック結晶の一部を示す平面図である。空孔315は格子L5を基本格子とする分布帰還制御フォトニック結晶を形成し、空孔316は格子L6を基本格子とする面発光制御フォトニック結晶を形成する。本実施の形態1における分布帰還制御フォトニック結晶と同様に、L5の格子定数a1は205nmであり、空孔315の半径はa1の0.24倍すなわち49.2nmである。
【0045】
一方、格子L6は格子L5に対して結晶方位が45°の角度をなしており、2つの格子定数a2、a3は290nm、580nmである。空孔316の半径はa1の0.15倍すなわち30.8nmである。また、空孔316は所定の2つの空孔315の中間に位置している。
【0046】
次に、本実施の形態3に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザの2次元分布帰還と面発光の原理について説明する。まず、格子L5を基本格子とする分布帰還制御フォトニック結晶は、実施の態様1および2の分布帰還制御フォトニック結晶と同様に正方格子であり、同一の格子定数を有するから、真空中の波長が980nmの光は、分布帰還制御フォトニック結晶との関係では、M点で動作することになる。したがって、M点に対応する真空中の波長980nmの光は、分布帰還制御フォトニック結晶により2次元的な分布帰還を受け、レーザ発振するが、分布帰還制御フォトニック結晶によっては面発光は起こらない。
【0047】
また、面発光の原理についても実施の態様1の場合と同様に、分布帰還制御フォトニック結晶によって分布帰還してレーザ発振する光の波数ベクトルは、面発光制御フォトニック結晶の逆格子空間のΓ点の波数ベクトルで表される。すなわち、分布帰還制御フォトニック結晶によって分布帰還してレーザ発振した光は、面発光制御フォトニック結晶との関係では、Γ点で動作することになる。
【0048】
その結果、実施の形態1に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザと同様に、分布帰還制御フォトニック結晶によって分布帰還してレーザ発振した光は、面発光制御フォトニック結晶によって面発光する。したがって、本実施の形態2に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザは、2次元分布帰還と面発光が異なるフォトニック結晶格子によって実現されているため、各フォトニック結晶格子の構造を独立に設計して、2次元分布帰還効果と面発光特性を独立に最適化することができる。たとえば、分布帰還制御フォトニック結晶は分布帰還効果が一層強くなるように構造が設計されるとともに、面発光制御フォトニック結晶は、空孔の大きさを調整して面発光強度が強くなるように構造が設計される。
【0049】
なお、実施の形態3に係る2次元フォトニック結晶面発光半導体レーザにおいては、実施の形態1に係る2次元フォトニック結晶面発光半導体レーザの面発光制御フォトニック結晶を形成する正方格子状の空孔の配列において、空孔を1列ごとに間引きして直方格子状のフォトニック結晶を形成している。しかし、分布帰還制御フォトニック結晶によって分布帰還してレーザ発振する光が面発光制御フォトニック結晶との関係でΓ点で動作するものであれば、他の所定の方法で空孔の間引きを行って、直方格子状またはその他の格子状のフォトニック結晶を形成してもよい。
【0050】
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザについて説明する。本実施の形態4に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザは、実施の形態1〜3に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザと同様の構造を有し、同様の製造方法によって製造できるが、異なる格子定数を有する2種類の三角格子状のフォトニック結晶が重畳されたフォトニック結晶が形成されている点が異なる。
【0051】
図7は、本実施の形態4に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザのGaAsフォトニック結晶層に配列された空孔が形成する2次元フォトニック結晶の一部を示す平面図である。空孔415は格子L7を基本格子とする三角格子状の分布帰還制御フォトニック結晶を形成し、空孔416は格子L8を基本格子とする三角格子状の面発光制御フォトニック結晶を形成する。格子L7の格子定数a1は194nmである。空孔415の半径はa1の0.22倍すなわち42.7nmである。また、InGaAs/GaAsP多重量子井戸活性層を伝搬する光のモード屈折率は3.37である。すなわち、InGaAs/GaAsP多重量子井戸活性層をコアとして伝搬している真空中の波長が980nmの光のモード波長は290nmである。つまり、格子L7の格子定数a1は、真空中の波長が980nmの光のモード波長の2/3倍に相当する値である。
【0052】
一方、格子L8は格子L7に対して結晶方位が30°の角度をなしており、格子定数a2は336nmであり、真空中の波長が980nmの光のモード波長の2√3/3倍に相当する値である。空孔416の半径はa1の0.15倍すなわち29.1nmである。また、空孔416は所定の2つの空孔415の中間に位置しているが、中間の位置からずれていてもよい。
【0053】
次に、本実施の形態4に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザの2次元分布帰還と面発光の原理について説明する。上記のように、分布帰還制御フォトニック結晶の格子L7の格子定数a1は、真空中の波長が980nmの光のモード波長の2/3倍に相当する値である。すなわち、光のモード波長は3a1/2であるからこのときの波数の大きさは4π/(3a1)である。一方、格子L7の逆格子基本ベクトルはb1=(4π/(√3a1)、0)、b2=(2π/(√3a1)、2π/a1)である。ここで、前述のようにK点は波数ベクトルがk=(p+1/3)b1+(q+1/3)b2と表されるが、p=q=0のときはk=1/3b1+1/3b2=(2π/(√3a1)、2π/(3a1))であるから、波数ベクトルkの大きさは4π/(3a1)である。すなわち、光のモード波長の波数の大きさとK点の波数ベクトルの大きさが等しいので、真空中の波長が980nmの光は、分布帰還制御フォトニック結晶との関係では、K点で動作することになる。
【0054】
K点の波数ベクトルk=1/3b1+1/3b2に対応する波数ベクトルを有する光が分布帰還制御フォトニック結晶によって回折を受けると、その波数ベクトルはk´=(p´+1/3)b1+(q´+1/3)b2(p´、q´は任意の整数)に変化する。ここで、p´=−1かつq´=0となる回折を受けるときにはk´=−2/3b1+1/3b2となり、回折する前の光の波数ベクトルkとは120°の角度をなすから、K点の波数ベクトルに対応する光は、回折によって回折する前の光に対する角度が120°をなす方向に進行する光と結合する。また、p´=0かつq´=−1の場合にはk´=1/3b1−2/3b2となり、回折する前の光に対する角度が120°をなす方向に進行する光と結合する。よって、K点に対応する真空中の波長980nmの光は、分布帰還制御フォトニック結晶により2次元的な分布帰還を受け、レーザ発振する。
【0055】
しかしながら、回折を受けた後の光の波数ベクトルであるk´については、どのように整数p´およびq´を選んでもk´=0となることはないため、分布帰還制御フォトニック結晶によっては面発光は起こらない。
【0056】
次に、面発光の原理について考える。面発光制御フォトニック結晶の格子L8の結晶方位は、分布帰還制御フォトニック結晶の格子L7の結晶方位に対して30°の角度をなし、格子L8の格子定数は格子L7の格子定数の√3倍であるから、大きさが最小になるように選んだ面発光制御フォトニック結晶の逆格子単位ベクトルをb1´およびb2´とすると、b1´およびb2´は、分布帰還フォトニック結晶の逆格子単位ベクトルであるb1およびb2とは次の関係がある。すなわち、b1´=1/3b1+1/3b2およびb2´=1/3b1−2/3b2である。このとき、分布帰還制御フォトニック結晶によって分布帰還してレーザ発振した光の代表的な波数ベクトルであるk=1/3b1+1/3b2は、b1´を用いてk=b1´と表される。これは、面発光制御フォトニック結晶の逆格子空間のΓ点の波数ベクトルを表すk=pb1´+qb2´において、p=1かつq=0とした場合に相当する。すなわち、分布帰還制御フォトニック結晶によって分布帰還してレーザ発振した光は、面発光制御フォトニック結晶との関係では、Γ点で動作することになる。
【0057】
その結果、実施の形態1〜3に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザと同様に、分布帰還制御フォトニック結晶によって分布帰還してレーザ発振した光は、面発光制御フォトニック結晶によって面発光する。したがって、本実施の形態4に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザは、2次元分布帰還と面発光が異なるフォトニック結晶格子によって実現されているため、各フォトニック結晶格子の構造を独立に設計して、2次元分布帰還効果と面発光特性を独立に最適化することができる。たとえば、分布帰還制御フォトニック結晶は分布帰還効果が一層強くなるように構造が設計されるとともに、面発光制御フォトニック結晶は、空孔の大きさを調整して面発光強度が強くなるように構造が設計される。
【0058】
(実施の形態5)
次に、本発明の実施の形態5に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザについて説明する。本実施の形態5に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザは、実施の形態4に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザと同様の構造を有し、同様の製造方法によって製造できるが、GaAsフォトニック結晶層に形成された面発光制御フォトニック結晶の格子定数および結晶方位が異なる。
【0059】
図8は、本実施の形態5に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザのGaAsフォトニック結晶層に配列された空孔が形成する2次元フォトニック結晶の一部を示す平面図である。空孔515は格子L9を基本格子とする分布帰還制御フォトニック結晶を形成し、空孔516は格子L10を基本格子とする面発光制御フォトニック結晶を形成する。実施の形態4における分布帰還制御フォトニック結晶と同様に、L9の格子定数a1は194nmであり、空孔515の半径はa1の0.24倍すなわち49.2nmである。
【0060】
一方、格子L10は格子L9と同一の結晶方向を有しており、格子定数a2は388nmである。空孔516の半径はa1の0.15倍すなわち30.8nmである。また、空孔516は所定の空孔515の中間に位置しているが、中間の位置からずれていてもよい。
【0061】
次に、本実施の形態5に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザの2次元分布帰還と面発光の原理について説明する。まず、格子L9を基本格子とする分布帰還制御フォトニック結晶は、実施の形態4の分布帰還制御フォトニック結晶と同様に三角格子であり、同一の格子定数を有するから、真空中の波長が980nmの光は、分布帰還制御フォトニック結晶との関係では、K点で動作することになる。したがって、K点に対応する真空中の波長980nmの光は、分布帰還制御フォトニック結晶により2次元的な分布帰還を受け、レーザ発振するが、分布帰還制御フォトニック結晶によっては面発光は起こらない。
【0062】
次に、面発光の原理について説明する。面発光制御フォトニック結晶の格子L10の結晶方位は、分布帰還制御フォトニック結晶の格子L9の結晶方位と同じであり、格子L10の格子定数は格子L9の格子定数の2倍であるから、大きさが最小になるように選んだ面発光制御フォトニック結晶の逆格子単位ベクトルをb1´およびb2´とすると、b1´およびb2´は、分布帰還フォトニック結晶の逆格子単位ベクトルであるb1およびb2とは次の関係がある。すなわち、b1´=1/3b1およびb2´=1/3b2である。このとき、分布帰還制御フォトニック結晶に分布帰還してレーザ発振した光の代表的な波数ベクトルであるk=1/3b1+1/3b2はb1´とb2´を用いてk=b1´+b2´と表される。これは、面発光制御フォトニック結晶の逆格子空間のΓ点の波数ベクトルを表すk=pb1´+qb2´において、p=1かつq=1とした場合に相当する。すなわち、分布帰還制御フォトニック結晶によって分布帰還してレーザ発振した光は、面発光制御フォトニック結晶との関係では、Γ点で動作することになる。
【0063】
その結果、実施の形態4に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザと同様に、分布帰還制御フォトニック結晶によって分布帰還してレーザ発振した光は、面発光制御フォトニック結晶によって面発光する。したがって、本実施の形態5に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザは、2次元分布帰還と面発光が異なるフォトニック結晶格子によって実現されているため、各フォトニック結晶格子の構造を独立に設計して、2次元分布帰還効果と面発光特性を独立に最適化することができる。たとえば、分布帰還制御フォトニック結晶は分布帰還効果が一層強くなるように構造が設計されるとともに、面発光制御フォトニック結晶は、空孔の大きさを調整して面発光強度が強くなるように構造が設計される。
【0064】
(実施の形態6)
次に、本発明の実施の形態6に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザについて説明する。本実施の形態6に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザは、図1に示すような実施の形態1に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザと同様の構造を有し、同様の製造方法によって製造できるが、GaAsフォトニック結晶層に形成された面発光制御フォトニック結晶を形成する空孔がGaAsフォトニック結晶層の面方向の位置に応じて異なる大きさを有する点が異なる。
【0065】
図9は、本実施の形態6に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザを表面側から見た斜視分解図である。なお、GaAsフォトニック結晶層の面内中央部と周辺部について拡大して示している。本実施の形態6に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザ600は、実施の形態1に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザ100と同様の構造を有する。また、分布帰還制御フォトニック結晶を形成する空孔615については、実施の形態1に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザ100の空孔115と同様の格子定数を有する正方格子状であり、空孔615の半径は格子L1の格子定数a1すなわち205nmの0.24倍である49.2nmであり、GaAsフォトニック結晶層606の面内の位置にかかわらず一定である。
【0066】
一方、面発光制御フォトニック結晶を形成する空孔616については、実施の形態1に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザ100の空孔116と同様の格子定数と結晶方位を有する正方格子状であるが、空孔の半径はGaAsフォトニック結晶層606の面内の位置に応じて異なる。図9において符号AはGaAsフォトニック結晶層606の面内の中心部における空孔を拡大して示す図であり、符号Bは周辺部における空孔を拡大して示す図である。符号Aに示す中心部における面発光制御フォトニック結晶を形成する空孔616aの半径よりも、符号Bに示す周辺部における面発光制御フォトニック結晶を形成する空孔616bの半径の方が小さい。具体的には、空孔の半径は、中心部においては格子L1の格子定数a1すなわち205nmの0.16倍である32.8nmであるが、中心部から周辺部に向かって面内の距離にしたがって指数関数的に減少し、中央部から50μmの位置では中央部の半分である16.4nmとなる。
【0067】
面発光制御フォトニック結晶を形成する空孔の半径をフォトニック結晶層の面内の中心部では大きく、周辺部では小さくすることにより、グレーティングカップルによる面発光制御フォトニック結晶の面発光の効果を中心部では大きく、周辺部では小さくすることができる。その結果、面発光の面内での光強度分布がガウス型に近い形状を有するガウシアンビームを出力させることができる。本実施の形態6では面内での光強度分布がガウシアンビームに近い出力光を得るため空孔の半径を中心部からの距離に応じて指数関数的に変化させたが、所望の形状のビームに応じて任意に空孔の大きさを調整することができる。
【0068】
(実施の形態7)
次に、本発明の実施の形態7に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザについて説明する。本実施の形態7に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザは、実施の形態6に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザと同様にGaAsフォトニック結晶層に形成された面発光制御フォトニック結晶を形成する空孔がGaAsフォトニック結晶層の面方向の位置に応じて異なる大きさを有するが、フォトニック結晶格子が三角格子である点が異なる。
【0069】
図10は、本実施の形態7に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザを表面側から見た斜視分解図である。なお、GaAsフォトニック結晶層の面内中央部と周辺部について拡大して示している。本実施の形態7に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザ700において分布帰還制御フォトニック結晶を形成する空孔715については、実施の形態4に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザの空孔415と同様の格子定数を有する三角格子状であり、空孔715の半径は格子L7の格子定数である194nmの0.22倍である42.7nmであり、GaAsフォトニック結晶層706の面内の位置にかかわらず一定である。
【0070】
一方、面発光制御フォトニック結晶を形成する空孔716については、実施の形態4に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザの空孔416と同様の格子定数と結晶方位を有する三角格子状であるが、空孔の半径はGaAsフォトニック結晶層706の面内の位置に応じて異なる。図9と同様に、図10において符号CはGaAsフォトニック結晶層706の面内の中心部における空孔を拡大して示す図であり、符号Dは周辺部における空孔を拡大して示す図である。符号Cに示す中心部における面発光制御フォトニック結晶を形成する空孔716aの半径よりも、符号Dに示す周辺部における面発光制御フォトニック結晶を形成する空孔716bの半径の方が小さい。具体的には、空孔の半径は、中心部においては格子L7の格子定数である194nmの0.16倍である31nmであるが、中心部から周辺部に向かって面内の距離にしたがって指数関数的に減少し、中央部から50μmの位置では中央部の半分である15.5nmとなる。
【0071】
本実施の形態7では、実施の形態6と同様に、グレーティングカップルによる面発光制御フォトニック結晶の面発光の効果を中心部では大きく、周辺部では小さくすることができる。その結果、面発光の面内での光強度分布がガウス型に近い形状を有するガウシアンビームを出力させることができる。また、実施の形態6の場合と同様に、所望の形状のビームに応じて任意に空孔の大きさを調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施の形態1に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザを表面側から見た斜視図である。
【図2】図1に示した2次元フォトニック結晶面発光レーザの斜視分解図である。
【図3】図1に示した2次元フォトニック結晶面発光レーザを裏面側から見た斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態1においてGaAsフォトニック結晶層に配列された空孔が形成する2次元フォトニック結晶の一部を示す平面図である。
【図5】本発明の実施の形態2においてGaAsフォトニック結晶層に配列された空孔が形成する2次元フォトニック結晶の一部を示す平面図である。
【図6】本発明の実施の形態3に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザにおいてGaAsフォトニック結晶層に配列された空孔が形成する2次元フォトニック結晶の一部を示す平面図である。
【図7】本発明の実施の形態4に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザにおいてGaAsフォトニック結晶層に配列された空孔が形成する2次元フォトニック結晶の一部を示す平面図である。
【図8】本発明の実施の形態5に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザにおいてGaAsフォトニック結晶層に配列された空孔が形成する2次元フォトニック結晶の一部を示す平面図である。
【図9】本発明の実施の形態6に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザを表面側から見た斜視分解図である。
【図10】本発明の実施の形態7に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザを表面側から見た斜視分解図である。
【図11】従来の2次元フォトニック結晶面発光レーザを模式的に表した分解斜視図である。
【符号の説明】
【0073】
100、600、700 2次元フォトニック結晶面発光レーザ
101、601、701 n−GaAs基板
102、602、702 AlGaAs下部クラッド層
103、603、703 GaAs下部分離閉じ込め層103
104、604、704 InGaAs/GaAsP多重量子井戸活性層
105、605、705 GaAs上部分離閉じ込め層
106、606、706 GaAsフォトニック結晶層
107、607、707 GaAsスペーサ層
108、608、708 AlGaAs上部クラッド層
109、609、709 GaAsコンタクト層
110、610、710 上部電極
111 下部電極
112、612、712 絶縁膜
113 開口部
114 無反射コート膜
115〜715、116〜516、616a、616b、716a、716b 空孔
L1〜L10 格子
【技術分野】
【0001】
本発明は、2次元フォトニック結晶が形成された面発光する2次元フォトニック結晶面発光レーザに関するものである。
【背景技術】
【0002】
フォトニック結晶は、半導体などに屈折率が該半導体とは異なる媒質を光の波長程度の周期で配列させることにより周期構造を形成したものであり、様々な光デバイスへの応用が検討されている。
【0003】
フォトニック結晶を応用した光デバイスのひとつとして、2次元フォトニック結晶を利用した面発光レーザが開示されている(特許文献1〜3)。図11は、特許文献1に開示されたものと同様の構造を有する従来の2次元フォトニック結晶面発光レーザを模式的に表した斜視分解図である。この2次元フォトニック結晶面発光レーザ100´は、基板101´上に閉じ込め層102´、下部クラッド層103´、活性層104´、上部クラッド層105´が積層されたものである。閉じ込め層102´はn型InP半導体からなり、空孔108´が2次元の所定の周期で正方格子状に配置されている。したがって、空孔108´はn型InP半導体とは屈折率が異なる空気媒質部が周期的に配列されたフォトニック結晶を形成する。活性層104´は、GaInAsP系の半導体材料を用いた多重量子井戸構造からなるものであり、キャリアを注入することにより発光する。また、下部クラッド層103´はn型InP半導体などからなる。また上部クラッド層105´はp型InP半導体からなる。そして、下部クラッド層103´及び上部クラッド層105´により活性層104´を挟んでダブルへテロ接合を形成してキャリアを閉じこめることで、発光に寄与するキャリアを活性層104´に集中させる構造としている。なお、上部クラッド層105´の上面及び基板101´の底面には金からなる電極106´、107´が形成されている。
【0004】
ここで、電極106´、107´間に電圧を印加することにより活性層104´が発光し、活性層104´からエバネセント波としてしみ出た光が閉じ込め層102´に形成された2次元フォトニック結晶に分布する。2次元フォトニック結晶は2次元的な分布帰還効果をもつため、一般的な1次元のグレーティングを用いた分布帰還型レーザと同様、レーザ発振を起こす。しかも2次元フォトニック結晶の分布帰還効果は2次元的であるから、2次元平面の大面積にわたるコヒーレント単一モード発振が起こり、単一モードレーザ光が面発光する。以下、図11の2次元フォトニック結晶面発光レーザの2次元分布帰還と面発光の原理について、2次元フォトニック結晶の波数空間を用いて説明する。
【0005】
まず、2次元正方格子フォトニック結晶で分布帰還動作が可能な光はフォトニック結晶の逆格子空間(波数空間)における対称点のうち、X点、M点、Γ点において動作する。Γ点とは、大きさが最小になるように選んだ正方格子の逆格子基本ベクトルをb1、b2とすると、波数ベクトルがk=pb1+qb2(p、qは任意の整数)と表される点である。ベクトルb1、b2は互いに直交しており、ベクトルの大きさはどちらもフォトニック結晶の格子定数をaとすると2π/aである。同様に、X点は波数ベクトルがk=(p+1/2)b1+qb2またはk=pb1+(q+1/2)b2と表される点であり、M点は波数ベクトルがk=(p+1/2)b1+(q+1/2)b2と表される点である。
【0006】
一方、2次元三角格子フォトニック結晶で分布帰還動作が可能な光はフォトニック結晶の波数空間における対称点のうち、M点、K点、Γ点において動作する。Γ点は、大きさが最小になるように選んだ三角格子の逆格子基本ベクトルをb1、b2とすると、波数ベクトルがk=pb1+qb2(p、qは任意の整数)と表される点である。上記の正方格子の場合とは異なり、ベクトルb1、b2は60度の角度をなしており、ベクトルの大きさはどちらもフォトニック結晶の格子定数をaとして4π/(√3a)である。同様に、M点は波数ベクトルがk=(p+1/2)b1+qb2またはk=pb1+(q+1/2)b2またはk=(p−1/2)b1+(q+1/2)b2と表される点であり、K点は波数ベクトルがk=(p+1/3)b1+(q+1/3)b2またはk=(p−1/3)b1+(q+2/3)b2で表される点である。
【0007】
特許文献1に開示された2次元フォトニック結晶面発光レーザは、2次元分布帰還の動作点として、正方格子または三角格子の2次元フォトニック結晶のΓ点を用いている。
【0008】
この2次元分布帰還の原理は、フォトニック結晶格子による光の回折によって説明できる。まず、結晶格子のような周期構造中における光の回折とは、波数ベクトルがkの光が、周期構造によって波数ベクトルがk´=k+p´b1+q´b2(p´、q´は任意の整数、b1、b2は逆格子基本ベクトル)の光に変化することである。これを波数ベクトルがk=pb1+qb2の光、つまりΓ点に対応する光についてみると、p´=−2p、q´=−2qとなる回折を受けるときには、回折した後の光の波数ベクトルはk´=−kとなる。すなわち、Γ点に対応する光は、この回折によって回折する前とは逆向きに進行する波と結合する。その結果、互いに逆方向に進行する光同士が結合することで分布帰還を起こす。また、p´=−p+qかつq´=−q−pとなる回折を受けるときには、回折した後の光の波数ベクトルはk´=qb1−pb2となり、回折する前の光に対する角度が正方格子についていえば90°、三角格子についていえば120°をなす方向に進行する波と結合する。一方、p´=−p−qかつq´=−q+pとなる回折を受けるときには、回折した後の光の波数ベクトルはk´=−qb1+pb2となり、回折する前の光に対する角度が正方格子についていえば−90°、三角格子についていえば−120°をなす方向に進行する波と結合する。すなわち、Γ点に対応する光は、結晶格子上の任意の位置から上記の回折を受けて上記の所定の方向に進行する波と結合しながら最初の位置に帰還する、つまり2次元的に分布帰還する。
【0009】
次に、面発光の原理についても光の回折によって説明できる。すなわち、Γ点に対応する光に対してp´=−pかつq´=−qとなる回折を受けるときには、k´=0となるところ、2次元の面内の波数ベクトルk´が0ということは光がフォトニック結晶が形成された面に垂直な方向に進行することを意味する。すなわち、Γ点に対応する光は、上記回折によってフォトニック結晶が形成された面に垂直な方向に進行するグレーティングカップルと呼ばれる効果によって面発光を起こすという性質も備えていることになる。その結果、Γ点に対応する光は2次元的に分布帰還するとともに面発光する。
【0010】
以上説明したように、特許文献1のフォトニック結晶面発光レーザは、閉じ込め層に形成されたフォトニック結晶の波数空間のΓ点に対応する光が、2次元平面の大面積にわたってコヒーレント単一モードレーザ光として面発光するものとなる。
【0011】
【特許文献1】特開2000−332351号公報
【特許文献2】特開2003−23193号公報
【特許文献3】特開2004−296538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところが従来の2次元フォトニック結晶面発光レーザでは、例えば2次元分布帰還効果を最適化して面内の光閉じ込めが強くなるようにフォトニック結晶構造を最適化すると面発光強度が弱くなる場合があり、面発光特性を最適化して強度が強くなるようにフォトニック結晶構造を最適化すると面内の光閉じ込めが弱くなる場合があった。すなわち、2次元分布帰還効果と面発光特性について独立に制御して最適化することはできなかった。
【0013】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、2次元分布帰還効果と面発光特性について独立に制御して最適化することができる2次元フォトニック結晶面発光レーザを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザは、キャリアの注入により発光する活性層の近傍に形成した媒質層に該媒質層とは屈折率が異なる媒質部を周期的に配列して2次元フォトニック結晶を形成した2次元フォトニック結晶面発光レーザであって、前記2次元フォトニック結晶は、前記活性層をコアとして伝搬する光が前記活性層の面内で2次元的に分布帰還し、かつ前記活性層に垂直な方向に放射されないように構成された分布帰還制御フォトニック結晶と、前記伝搬光が前記活性層に垂直な方向に放射されるように構成された面発光制御フォトニック結晶とが重畳されたものであることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザは、キャリアの注入により発光する活性層の近傍に形成した媒質層に該媒質層とは屈折率が異なる媒質部を周期的に配列して2次元フォトニック結晶を形成した2次元フォトニック結晶面発光レーザであって、前記2次元フォトニック結晶は、前記活性層をコアとして伝搬する伝搬光のモード波長の1/√2倍の格子定数を有する正方格子状の分布帰還制御フォトニック結晶と、前記伝搬光のモード波長と同じ値の格子定数を有しかつ前記分布帰還制御フォトニック結晶に対して結晶方位が45°の角度をなす正方格子状の面発光制御フォトニック結晶とが重畳されたものであることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザは、キャリアの注入により発光する活性層の近傍に形成した固体層に該媒質層とは屈折率が異なる媒質部を周期的に配列して2次元フォトニック結晶を形成した2次元フォトニック結晶面発光レーザであって、前記2次元フォトニック結晶は、前記活性層をコアとして伝搬する伝搬光が該伝搬光のモード波長において逆格子空間におけるM点で動作するように構成された正方格子状の分布帰還制御フォトニック結晶と、前記伝搬光が該伝搬光のモード波長において波数空間におけるΓ点で動作するように構成された直方格子状の面発光制御フォトニック結晶とが重畳されたものであることを特徴とする。ここで、M点とはフォトニック結晶格子の波数空間において大きさが最小になるように選んだ逆格子基本ベクトルb1、b2を用いて波数ベクトルが(p+1/2)b1+(q+1/2)b2(p、qは任意の整数)で表される対称点であり、Γ点とは波数ベクトルがpb1+qb2(p、qは任意の整数)で表される対称点である。
【0017】
また、本発明に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザは、キャリアの注入により発光する活性層の近傍に形成した媒質層に該媒質層とは屈折率が異なる媒質部を周期的に配列して2次元フォトニック結晶を形成した2次元フォトニック結晶面発光レーザであって、前記2次元フォトニック結晶は、前記活性層をコアとして伝搬する伝搬光のモード波長の2/3倍の格子定数を有する三角格子状の分布帰還制御フォトニック結晶と、前記伝搬光のモード波長の2√3/3倍の格子定数を有しかつ前記分布帰還制御フォトニック結晶に対して結晶方位が30°の角度をなす三角格子状の面発光制御フォトニック結晶とが重畳されたものであることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザは、キャリアの注入により発光する活性層の近傍に形成した媒質層に該媒質層とは屈折率が異なる媒質部を周期的に配列して2次元フォトニック結晶を形成した2次元フォトニック結晶面発光レーザであって、前記2次元フォトニック結晶は、前記活性層をコアとして伝搬する伝搬光が該伝搬光のモード波長において波数空間におけるK点で動作するように構成された三角格子状の分布帰還制御フォトニック結晶と、前記伝搬光が該伝搬光のモード波長において波数空間におけるΓ点で動作するように構成された三角格子状の面発光制御フォトニック結晶とが重畳されたものであることを特徴とする。ここで、K点とはフォトニック結晶格子の波数空間において大きさが最小になるように選んだ逆格子基本ベクトルb1、b2を用いて波数ベクトルが(p+1/3)b1+(p+1/3)b2または(p−1/3)b1+(p+2/3)b2で表される対称点であり、Γ点とは波数ベクトルがpb1+qb2(p、qは任意の整数)で表される対称点である。
【0019】
また、この発明に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザは、上記発明において、前記面発光制御フォトニック結晶を形成する前記媒質部は、前記面発光制御フォトニック結晶が形成された部分における位置に応じて異なる大きさを有するものであることを特徴とする。
【0020】
また、この発明に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザは、上記発明において、前記媒質部の大きさは、前記面発光制御フォトニック結晶が形成された部分の中心部から周辺部に向かって指数関数的に減少することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザによれば、活性層をコアとして伝搬する伝搬光が2次元的に分布帰還するように構成された分布帰還制御フォトニック結晶と伝搬光が面発光を起こすように構成された面発光制御フォトニック結晶とが重畳的に形成されているので、2次元分布帰還効果と面発光特性について独立に制御して最適化することができる2次元フォトニック結晶面発光レーザが実現できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、図面を参照して本発明に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザの実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0023】
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザについて説明する。本実施の形態1に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザは、異なる格子定数を有する2種類の正方格子状のフォトニック結晶が重畳されたフォトニック結晶が形成されており、真空中の波長980nmの光を面発光するものである。
【0024】
図1は、本発明の実施の形態1に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザを表面側から見た斜視図である。また、図2は、図1の2次元フォトニック結晶面発光レーザの斜視分解図である。また、図3は、図1の2次元フォトニック結晶面発光レーザを裏面側から見た場合の斜視図である。図1〜3に示すように、本実施の形態1に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザ100は、n−GaAs基板101上に厚さ4000nmのAlGaAs下部クラッド層102、厚さ100nmのGaAs下部分離閉じ込め層103、利得のピーク波長が真空中の波長で980nmである厚さ35nmのInGaAs/GaAsP多重量子井戸活性層104、厚さ70nmのGaAs上部分離閉じ込め層105が積層されており、さらにその上にフォトニック結晶を形成した厚さ130nmのGaAsフォトニック結晶層106、厚さ50nmのGaAsスペーサ層107、厚さ2000nmのAlGaAs上部クラッド層108、厚さ4000nmのGaAsコンタクト層109が積層されている。
【0025】
さらにGaAsコンタクト層109の上面には金からなる直径50μmの円形の上部電極110が形成されている。また上部電極110の周囲には絶縁膜112が形成されている。一方、n−GaAs基板101の底面には金からなる下部電極111が形成されている。下部電極111は直径100μmの円形の開口部113を有し、開口部113には誘電体からなる無反射コート膜114が形成されている。
【0026】
2次元フォトニック結晶面発光レーザ100は、以下に説明する方法で製造できる。まずn−GaAs基板101上に、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)やMBE(Molecular Beam Epitaxy)を用いてAlGaAs下部クラッド層102、GaAs下部分離閉じ込め層103、InGaAs/GaAsP多重量子井戸活性層104、GaAs上部分離閉じ込め層105を成長する。一方、p−GaAs基板上に、同様の方法でAlGaAsエッチストップ層、GaAsコンタクト層109、AlGaAs上部クラッド層108、GaAsスペーサ層107およびGaAsフォトニック結晶層106を成長する。
【0027】
次に、p−GaAs基板上に電子線描画でレジストパターンを形成し、パターンをGaAsフォトニック結晶層106にRIE(Reactive Ion Etching)によって転写することで空孔115、116を形成し、分布帰還制御フォトニック結晶と面発光制御フォトニック結晶とが重畳された2次元フォトニック結晶を形成する。次に、p−GaAs基板の表層のGaAsフォトニック結晶層106とn−GaAs基板101の表層のGaAs上部分離閉じ込め層105とをウェハ融着によって接合する。その後、p−GaAs基板を機械研磨および選択性ウェットエッチングを用いて除去し、さらにAlGaAsエッチストップ層を選択性ウェットエッチングを用いて除去する。さらにGaAsコンタクト層109の上面およびn−GaAs基板101の底面に上部電極110および下部電極111を電子線蒸着や抵抗加熱蒸着によって形成する。さらに電子線蒸着などによって絶縁膜112および無反射コート膜114を形成し、所定の大きさに切断して2次元フォトニック結晶面発光レーザ100が完成する。
【0028】
以上の方法によって製造された2次元フォトニック結晶面発光レーザ100のGaAsフォトニック結晶層106にはGaAsとは屈折率が異なる媒質部として円形の空孔115、116が周期的に配列して形成されている。その結果、GaAsフォトニック結晶層106には2次元フォトニック結晶が形成される。
【0029】
図4は、GaAsフォトニック結晶層106に配列された空孔が形成する2次元フォトニック結晶の一部を示す平面図である。空孔115は格子L1を基本格子とする分布帰還制御フォトニック結晶を形成し、空孔116は格子L2を基本格子とする面発光制御フォトニック結晶を形成する。格子L1の格子定数a1は205nmである。空孔115の半径はa1の0.24倍すなわち49.2nmである。また、InGaAs/GaAsP多重量子井戸活性層104を伝搬する光のモード屈折率は3.37である。すなわち、InGaAs/GaAsP多重量子井戸活性層104をコアとして伝搬している光の実効的な波長をモード波長とすると、真空中の波長が980nmの光のモード波長は290nmである。つまり、格子L1の格子定数a1は、真空中の波長が980nmの光のモード波長の1/√2倍に相当する値である。
【0030】
一方、格子L2は格子L1に対して結晶方位が45°の角度をなしており、格子定数a2は290nmであり、真空中の波長が980nmの光のモード波長と同じ値である。空孔116の半径はa1の0.15倍すなわち30.8nmである。また、空孔116は所定の2つの空孔115の中間に位置している。
【0031】
次に、本実施の形態1におけるフォトニック結晶の2次元分布帰還と面発光の原理について説明する。上記のように、分布帰還制御フォトニック結晶の格子L1の格子定数a1は、真空中の波長が980nmの光のモード波長の1/√2倍に相当する値である。すなわち、光のモード波長は√2a1であるからこのときの波数の大きさは2π/(√2a1)である。一方、格子L1の逆格子基本ベクトルはb1=(2π/a1、0)、b2=(0、2π/a1)である。ここで、前述のようにM点は波数ベクトルがk=(p+1/2)b1+(q+1/2)b2と表されるが、p=q=0のときはk=1/2b1+1/2b2=(π/a1、π/a1)であるから、波数ベクトルであるkの大きさは2π/(√2a1)である。すなわち、光のモード波長の波数の大きさとM点の波数ベクトルの大きさが等しいので、真空中の波長が980nmの光は、分布帰還制御フォトニック結晶との関係では、M点で動作することになる。
【0032】
M点の波数ベクトルk=1/2b1+1/2b2に対応する波数ベクトルの光が分布帰還制御フォトニック結晶の結晶格子によって回折を受けると、その波数ベクトルはk´=(p´+1/2)b1+(q´+1/2)b2(p´、q´は任意の整数)に変化する。ここで、p´=−1かつq´=−1となる回折を受けるときにはk´=−kとなるから、M点の波数ベクトルに対応する光は、回折する前の光とは逆方向に進行する波と結合する。また、p´=0かつq´=−1の場合にはk´=1/2b1−1/2b2となるから、回折する前の光に対する角度が90°をなす方向に進行する波と結合し、p´=−1かつq´=0の場合にはk´=−1/2b1+1/2b2となるから、回折する前の光に対する角度が−90°をなす方向に進行する波と結合する。よって、波数空間におけるM点に対応する波数ベクトルを有する真空中の波長980nmの光は、分布帰還制御フォトニック結晶により2次元的な分布帰還を受け、レーザ発振する。
【0033】
しかしながら、回折を受けた後の光の波数ベクトルであるk´については、どのように整数p´およびq´を選んでもk´=0となることはないため、分布帰還制御フォトニック結晶によっては面発光は起こらない。
【0034】
次に、面発光の原理について説明する。面発光制御フォトニック結晶の格子L2の結晶方位は、分布帰還制御フォトニック結晶の格子L1の結晶方位に対して45°の角度をなし、格子L2の格子定数は格子L1の格子定数の√2倍であるから、大きさが最小になるように選んだ面発光制御フォトニック結晶の逆格子単位ベクトルをb1´およびb2´とすると、b1´およびb2´は、分布帰還フォトニック結晶の逆格子単位ベクトルであるb1およびb2とは次の関係がある。すなわち、b1´=1/2b1+1/2b2およびb2´=−1/2b1+1/2b2である。このとき、分布帰還制御フォトニック結晶によって分布帰還してレーザ発振する光の代表的な波数ベクトルであるk=1/2b1+1/2b2は、b1´を用いてk=b1´と表される。これは、面発光制御フォトニック結晶の逆格子空間のΓ点の波数ベクトルを表すk=pb1´+qb2´において、p=1かつq=0とした場合に相当する。すなわち、分布帰還制御フォトニック結晶によって分布帰還してレーザ発振した光は、面発光制御フォトニック結晶との関係では、Γ点で動作することになる。
【0035】
すでに説明したように、Γ点に対応する波数ベクトルを有する光は、フォトニック結晶格子による回折によってフォトニック結晶が形成された面に垂直な方向に進行し、面発光を起こす。すなわち、分布帰還制御フォトニック結晶によって分布帰還してレーザ発振した光は、面発光制御フォトニック結晶によって面発光する。
【0036】
したがって、本実施の形態1に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザは、2次元分布帰還と面発光が異なるフォトニック結晶格子によって実現されているため、各フォトニック結晶格子の構造を独立に設計して、2次元分布帰還効果と面発光特性を独立に最適化することができる。たとえば、分布帰還制御フォトニック結晶は分布帰還効果が一層強くなるように構造が設計されるとともに、面発光制御フォトニック結晶は、空孔の大きさを調整して面発光強度が強くなるように構造が設計される。
【0037】
(実施の態様2)
次に、本発明の実施の形態2に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザについて説明する。本実施の形態2に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザは、図1に示すような実施の形態1に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザと同様の構造を有し、同様の製造方法によって製造できるが、GaAsフォトニック結晶層に形成された面発光制御フォトニック結晶の格子定数および結晶方位が異なる。
【0038】
図5は、本実施の形態2に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザのGaAsフォトニック結晶層に配列された空孔が形成する2次元フォトニック結晶の一部を示す平面図である。空孔215は格子L3を基本格子とする分布帰還制御フォトニック結晶を形成し、空孔216は格子L4を基本格子とする面発光制御フォトニック結晶を形成する。本実施の形態1における分布帰還制御フォトニック結晶と同様に、L3の格子定数a1は205nmであり、空孔215の半径はa1の0.24倍すなわち49.2nmである。
【0039】
一方、格子L4は格子L3と同一の結晶方向を有しており、格子定数a2は410nmである。空孔216の半径はa1の0.15倍すなわち30.8nmである。また、空孔216は所定の2つの空孔215の中間に位置している。
【0040】
次に、本実施の形態2に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザの2次元分布帰還と面発光の原理について説明する。まず、格子L3を基本格子とする分布帰還制御フォトニック結晶は、実施の態様1の分布帰還制御フォトニック結晶と同様に正方格子であり、同一の格子定数を有するから、真空中の波長が980nmの光は、分布帰還制御フォトニック結晶との関係では、M点で動作することになる。したがって、M点に対応する真空中の波長980nmの光は、分布帰還制御フォトニック結晶により2次元的な分布帰還を受け、レーザ発振するが、分布帰還制御フォトニック結晶によっては面発光は起こらない。
【0041】
次に、面発光の原理について説明する。面発光制御フォトニック結晶の格子L4の結晶方位は、分布帰還制御フォトニック結晶の格子L3の結晶方位と同じであり、格子L4の格子定数は格子L3の格子定数の2倍であるから、大きさが最小になるように選んだ面発光制御フォトニック結晶の逆格子単位ベクトルをb1´およびb2´とすると、b1´およびb2´は、分布帰還フォトニック結晶の逆格子単位ベクトルであるb1およびb2とは次の関係がある。すなわち、b1´=1/2b1およびb2´=1/2b1である。このとき、分布帰還制御フォトニック結晶によって分布帰還してレーザ発振した光の代表的なM点の波数ベクトルであるk=1/2b1+1/2b2はb1´、b2´を用いてk=b1´+b2´と表される。これは、面発光制御フォトニック結晶の逆格子空間のΓ点の波数ベクトルを表すk=pb1´+qb2´において、p=1かつq=1とした場合に相当する。すなわち、分布帰還制御フォトニック結晶によって分布帰還してレーザ発振した光は、面発光制御フォトニック結晶との関係では、Γ点で動作することになる。
【0042】
その結果、実施の形態1に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザと同様に、分布帰還制御フォトニック結晶によって分布帰還してレーザ発振した光は、面発光制御フォトニック結晶によって面発光する。したがって、本実施の形態2に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザは、2次元分布帰還と面発光が異なるフォトニック結晶格子によって実現されているため、各フォトニック結晶格子の構造を独立に設計して、2次元分布帰還効果と面発光特性を独立に最適化することができる。たとえば、分布帰還制御フォトニック結晶は分布帰還効果が一層強くなるように構造が設計されるとともに、面発光制御フォトニック結晶は、空孔の大きさを調整して面発光強度が強くなるように構造が設計される。
【0043】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザについて説明する。本実施の形態3に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザは、実施の形態1および2に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザと同様の構造を有し、同様の製造方法によって製造できるが、GaAsフォトニック結晶層に形成された面発光制御フォトニック結晶が直方格子であることや格子定数および結晶方位などが異なる。
【0044】
図6は、本実施の形態3に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザのGaAsフォトニック結晶層に配列された空孔が形成する2次元フォトニック結晶の一部を示す平面図である。空孔315は格子L5を基本格子とする分布帰還制御フォトニック結晶を形成し、空孔316は格子L6を基本格子とする面発光制御フォトニック結晶を形成する。本実施の形態1における分布帰還制御フォトニック結晶と同様に、L5の格子定数a1は205nmであり、空孔315の半径はa1の0.24倍すなわち49.2nmである。
【0045】
一方、格子L6は格子L5に対して結晶方位が45°の角度をなしており、2つの格子定数a2、a3は290nm、580nmである。空孔316の半径はa1の0.15倍すなわち30.8nmである。また、空孔316は所定の2つの空孔315の中間に位置している。
【0046】
次に、本実施の形態3に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザの2次元分布帰還と面発光の原理について説明する。まず、格子L5を基本格子とする分布帰還制御フォトニック結晶は、実施の態様1および2の分布帰還制御フォトニック結晶と同様に正方格子であり、同一の格子定数を有するから、真空中の波長が980nmの光は、分布帰還制御フォトニック結晶との関係では、M点で動作することになる。したがって、M点に対応する真空中の波長980nmの光は、分布帰還制御フォトニック結晶により2次元的な分布帰還を受け、レーザ発振するが、分布帰還制御フォトニック結晶によっては面発光は起こらない。
【0047】
また、面発光の原理についても実施の態様1の場合と同様に、分布帰還制御フォトニック結晶によって分布帰還してレーザ発振する光の波数ベクトルは、面発光制御フォトニック結晶の逆格子空間のΓ点の波数ベクトルで表される。すなわち、分布帰還制御フォトニック結晶によって分布帰還してレーザ発振した光は、面発光制御フォトニック結晶との関係では、Γ点で動作することになる。
【0048】
その結果、実施の形態1に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザと同様に、分布帰還制御フォトニック結晶によって分布帰還してレーザ発振した光は、面発光制御フォトニック結晶によって面発光する。したがって、本実施の形態2に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザは、2次元分布帰還と面発光が異なるフォトニック結晶格子によって実現されているため、各フォトニック結晶格子の構造を独立に設計して、2次元分布帰還効果と面発光特性を独立に最適化することができる。たとえば、分布帰還制御フォトニック結晶は分布帰還効果が一層強くなるように構造が設計されるとともに、面発光制御フォトニック結晶は、空孔の大きさを調整して面発光強度が強くなるように構造が設計される。
【0049】
なお、実施の形態3に係る2次元フォトニック結晶面発光半導体レーザにおいては、実施の形態1に係る2次元フォトニック結晶面発光半導体レーザの面発光制御フォトニック結晶を形成する正方格子状の空孔の配列において、空孔を1列ごとに間引きして直方格子状のフォトニック結晶を形成している。しかし、分布帰還制御フォトニック結晶によって分布帰還してレーザ発振する光が面発光制御フォトニック結晶との関係でΓ点で動作するものであれば、他の所定の方法で空孔の間引きを行って、直方格子状またはその他の格子状のフォトニック結晶を形成してもよい。
【0050】
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザについて説明する。本実施の形態4に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザは、実施の形態1〜3に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザと同様の構造を有し、同様の製造方法によって製造できるが、異なる格子定数を有する2種類の三角格子状のフォトニック結晶が重畳されたフォトニック結晶が形成されている点が異なる。
【0051】
図7は、本実施の形態4に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザのGaAsフォトニック結晶層に配列された空孔が形成する2次元フォトニック結晶の一部を示す平面図である。空孔415は格子L7を基本格子とする三角格子状の分布帰還制御フォトニック結晶を形成し、空孔416は格子L8を基本格子とする三角格子状の面発光制御フォトニック結晶を形成する。格子L7の格子定数a1は194nmである。空孔415の半径はa1の0.22倍すなわち42.7nmである。また、InGaAs/GaAsP多重量子井戸活性層を伝搬する光のモード屈折率は3.37である。すなわち、InGaAs/GaAsP多重量子井戸活性層をコアとして伝搬している真空中の波長が980nmの光のモード波長は290nmである。つまり、格子L7の格子定数a1は、真空中の波長が980nmの光のモード波長の2/3倍に相当する値である。
【0052】
一方、格子L8は格子L7に対して結晶方位が30°の角度をなしており、格子定数a2は336nmであり、真空中の波長が980nmの光のモード波長の2√3/3倍に相当する値である。空孔416の半径はa1の0.15倍すなわち29.1nmである。また、空孔416は所定の2つの空孔415の中間に位置しているが、中間の位置からずれていてもよい。
【0053】
次に、本実施の形態4に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザの2次元分布帰還と面発光の原理について説明する。上記のように、分布帰還制御フォトニック結晶の格子L7の格子定数a1は、真空中の波長が980nmの光のモード波長の2/3倍に相当する値である。すなわち、光のモード波長は3a1/2であるからこのときの波数の大きさは4π/(3a1)である。一方、格子L7の逆格子基本ベクトルはb1=(4π/(√3a1)、0)、b2=(2π/(√3a1)、2π/a1)である。ここで、前述のようにK点は波数ベクトルがk=(p+1/3)b1+(q+1/3)b2と表されるが、p=q=0のときはk=1/3b1+1/3b2=(2π/(√3a1)、2π/(3a1))であるから、波数ベクトルkの大きさは4π/(3a1)である。すなわち、光のモード波長の波数の大きさとK点の波数ベクトルの大きさが等しいので、真空中の波長が980nmの光は、分布帰還制御フォトニック結晶との関係では、K点で動作することになる。
【0054】
K点の波数ベクトルk=1/3b1+1/3b2に対応する波数ベクトルを有する光が分布帰還制御フォトニック結晶によって回折を受けると、その波数ベクトルはk´=(p´+1/3)b1+(q´+1/3)b2(p´、q´は任意の整数)に変化する。ここで、p´=−1かつq´=0となる回折を受けるときにはk´=−2/3b1+1/3b2となり、回折する前の光の波数ベクトルkとは120°の角度をなすから、K点の波数ベクトルに対応する光は、回折によって回折する前の光に対する角度が120°をなす方向に進行する光と結合する。また、p´=0かつq´=−1の場合にはk´=1/3b1−2/3b2となり、回折する前の光に対する角度が120°をなす方向に進行する光と結合する。よって、K点に対応する真空中の波長980nmの光は、分布帰還制御フォトニック結晶により2次元的な分布帰還を受け、レーザ発振する。
【0055】
しかしながら、回折を受けた後の光の波数ベクトルであるk´については、どのように整数p´およびq´を選んでもk´=0となることはないため、分布帰還制御フォトニック結晶によっては面発光は起こらない。
【0056】
次に、面発光の原理について考える。面発光制御フォトニック結晶の格子L8の結晶方位は、分布帰還制御フォトニック結晶の格子L7の結晶方位に対して30°の角度をなし、格子L8の格子定数は格子L7の格子定数の√3倍であるから、大きさが最小になるように選んだ面発光制御フォトニック結晶の逆格子単位ベクトルをb1´およびb2´とすると、b1´およびb2´は、分布帰還フォトニック結晶の逆格子単位ベクトルであるb1およびb2とは次の関係がある。すなわち、b1´=1/3b1+1/3b2およびb2´=1/3b1−2/3b2である。このとき、分布帰還制御フォトニック結晶によって分布帰還してレーザ発振した光の代表的な波数ベクトルであるk=1/3b1+1/3b2は、b1´を用いてk=b1´と表される。これは、面発光制御フォトニック結晶の逆格子空間のΓ点の波数ベクトルを表すk=pb1´+qb2´において、p=1かつq=0とした場合に相当する。すなわち、分布帰還制御フォトニック結晶によって分布帰還してレーザ発振した光は、面発光制御フォトニック結晶との関係では、Γ点で動作することになる。
【0057】
その結果、実施の形態1〜3に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザと同様に、分布帰還制御フォトニック結晶によって分布帰還してレーザ発振した光は、面発光制御フォトニック結晶によって面発光する。したがって、本実施の形態4に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザは、2次元分布帰還と面発光が異なるフォトニック結晶格子によって実現されているため、各フォトニック結晶格子の構造を独立に設計して、2次元分布帰還効果と面発光特性を独立に最適化することができる。たとえば、分布帰還制御フォトニック結晶は分布帰還効果が一層強くなるように構造が設計されるとともに、面発光制御フォトニック結晶は、空孔の大きさを調整して面発光強度が強くなるように構造が設計される。
【0058】
(実施の形態5)
次に、本発明の実施の形態5に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザについて説明する。本実施の形態5に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザは、実施の形態4に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザと同様の構造を有し、同様の製造方法によって製造できるが、GaAsフォトニック結晶層に形成された面発光制御フォトニック結晶の格子定数および結晶方位が異なる。
【0059】
図8は、本実施の形態5に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザのGaAsフォトニック結晶層に配列された空孔が形成する2次元フォトニック結晶の一部を示す平面図である。空孔515は格子L9を基本格子とする分布帰還制御フォトニック結晶を形成し、空孔516は格子L10を基本格子とする面発光制御フォトニック結晶を形成する。実施の形態4における分布帰還制御フォトニック結晶と同様に、L9の格子定数a1は194nmであり、空孔515の半径はa1の0.24倍すなわち49.2nmである。
【0060】
一方、格子L10は格子L9と同一の結晶方向を有しており、格子定数a2は388nmである。空孔516の半径はa1の0.15倍すなわち30.8nmである。また、空孔516は所定の空孔515の中間に位置しているが、中間の位置からずれていてもよい。
【0061】
次に、本実施の形態5に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザの2次元分布帰還と面発光の原理について説明する。まず、格子L9を基本格子とする分布帰還制御フォトニック結晶は、実施の形態4の分布帰還制御フォトニック結晶と同様に三角格子であり、同一の格子定数を有するから、真空中の波長が980nmの光は、分布帰還制御フォトニック結晶との関係では、K点で動作することになる。したがって、K点に対応する真空中の波長980nmの光は、分布帰還制御フォトニック結晶により2次元的な分布帰還を受け、レーザ発振するが、分布帰還制御フォトニック結晶によっては面発光は起こらない。
【0062】
次に、面発光の原理について説明する。面発光制御フォトニック結晶の格子L10の結晶方位は、分布帰還制御フォトニック結晶の格子L9の結晶方位と同じであり、格子L10の格子定数は格子L9の格子定数の2倍であるから、大きさが最小になるように選んだ面発光制御フォトニック結晶の逆格子単位ベクトルをb1´およびb2´とすると、b1´およびb2´は、分布帰還フォトニック結晶の逆格子単位ベクトルであるb1およびb2とは次の関係がある。すなわち、b1´=1/3b1およびb2´=1/3b2である。このとき、分布帰還制御フォトニック結晶に分布帰還してレーザ発振した光の代表的な波数ベクトルであるk=1/3b1+1/3b2はb1´とb2´を用いてk=b1´+b2´と表される。これは、面発光制御フォトニック結晶の逆格子空間のΓ点の波数ベクトルを表すk=pb1´+qb2´において、p=1かつq=1とした場合に相当する。すなわち、分布帰還制御フォトニック結晶によって分布帰還してレーザ発振した光は、面発光制御フォトニック結晶との関係では、Γ点で動作することになる。
【0063】
その結果、実施の形態4に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザと同様に、分布帰還制御フォトニック結晶によって分布帰還してレーザ発振した光は、面発光制御フォトニック結晶によって面発光する。したがって、本実施の形態5に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザは、2次元分布帰還と面発光が異なるフォトニック結晶格子によって実現されているため、各フォトニック結晶格子の構造を独立に設計して、2次元分布帰還効果と面発光特性を独立に最適化することができる。たとえば、分布帰還制御フォトニック結晶は分布帰還効果が一層強くなるように構造が設計されるとともに、面発光制御フォトニック結晶は、空孔の大きさを調整して面発光強度が強くなるように構造が設計される。
【0064】
(実施の形態6)
次に、本発明の実施の形態6に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザについて説明する。本実施の形態6に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザは、図1に示すような実施の形態1に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザと同様の構造を有し、同様の製造方法によって製造できるが、GaAsフォトニック結晶層に形成された面発光制御フォトニック結晶を形成する空孔がGaAsフォトニック結晶層の面方向の位置に応じて異なる大きさを有する点が異なる。
【0065】
図9は、本実施の形態6に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザを表面側から見た斜視分解図である。なお、GaAsフォトニック結晶層の面内中央部と周辺部について拡大して示している。本実施の形態6に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザ600は、実施の形態1に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザ100と同様の構造を有する。また、分布帰還制御フォトニック結晶を形成する空孔615については、実施の形態1に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザ100の空孔115と同様の格子定数を有する正方格子状であり、空孔615の半径は格子L1の格子定数a1すなわち205nmの0.24倍である49.2nmであり、GaAsフォトニック結晶層606の面内の位置にかかわらず一定である。
【0066】
一方、面発光制御フォトニック結晶を形成する空孔616については、実施の形態1に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザ100の空孔116と同様の格子定数と結晶方位を有する正方格子状であるが、空孔の半径はGaAsフォトニック結晶層606の面内の位置に応じて異なる。図9において符号AはGaAsフォトニック結晶層606の面内の中心部における空孔を拡大して示す図であり、符号Bは周辺部における空孔を拡大して示す図である。符号Aに示す中心部における面発光制御フォトニック結晶を形成する空孔616aの半径よりも、符号Bに示す周辺部における面発光制御フォトニック結晶を形成する空孔616bの半径の方が小さい。具体的には、空孔の半径は、中心部においては格子L1の格子定数a1すなわち205nmの0.16倍である32.8nmであるが、中心部から周辺部に向かって面内の距離にしたがって指数関数的に減少し、中央部から50μmの位置では中央部の半分である16.4nmとなる。
【0067】
面発光制御フォトニック結晶を形成する空孔の半径をフォトニック結晶層の面内の中心部では大きく、周辺部では小さくすることにより、グレーティングカップルによる面発光制御フォトニック結晶の面発光の効果を中心部では大きく、周辺部では小さくすることができる。その結果、面発光の面内での光強度分布がガウス型に近い形状を有するガウシアンビームを出力させることができる。本実施の形態6では面内での光強度分布がガウシアンビームに近い出力光を得るため空孔の半径を中心部からの距離に応じて指数関数的に変化させたが、所望の形状のビームに応じて任意に空孔の大きさを調整することができる。
【0068】
(実施の形態7)
次に、本発明の実施の形態7に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザについて説明する。本実施の形態7に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザは、実施の形態6に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザと同様にGaAsフォトニック結晶層に形成された面発光制御フォトニック結晶を形成する空孔がGaAsフォトニック結晶層の面方向の位置に応じて異なる大きさを有するが、フォトニック結晶格子が三角格子である点が異なる。
【0069】
図10は、本実施の形態7に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザを表面側から見た斜視分解図である。なお、GaAsフォトニック結晶層の面内中央部と周辺部について拡大して示している。本実施の形態7に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザ700において分布帰還制御フォトニック結晶を形成する空孔715については、実施の形態4に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザの空孔415と同様の格子定数を有する三角格子状であり、空孔715の半径は格子L7の格子定数である194nmの0.22倍である42.7nmであり、GaAsフォトニック結晶層706の面内の位置にかかわらず一定である。
【0070】
一方、面発光制御フォトニック結晶を形成する空孔716については、実施の形態4に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザの空孔416と同様の格子定数と結晶方位を有する三角格子状であるが、空孔の半径はGaAsフォトニック結晶層706の面内の位置に応じて異なる。図9と同様に、図10において符号CはGaAsフォトニック結晶層706の面内の中心部における空孔を拡大して示す図であり、符号Dは周辺部における空孔を拡大して示す図である。符号Cに示す中心部における面発光制御フォトニック結晶を形成する空孔716aの半径よりも、符号Dに示す周辺部における面発光制御フォトニック結晶を形成する空孔716bの半径の方が小さい。具体的には、空孔の半径は、中心部においては格子L7の格子定数である194nmの0.16倍である31nmであるが、中心部から周辺部に向かって面内の距離にしたがって指数関数的に減少し、中央部から50μmの位置では中央部の半分である15.5nmとなる。
【0071】
本実施の形態7では、実施の形態6と同様に、グレーティングカップルによる面発光制御フォトニック結晶の面発光の効果を中心部では大きく、周辺部では小さくすることができる。その結果、面発光の面内での光強度分布がガウス型に近い形状を有するガウシアンビームを出力させることができる。また、実施の形態6の場合と同様に、所望の形状のビームに応じて任意に空孔の大きさを調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施の形態1に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザを表面側から見た斜視図である。
【図2】図1に示した2次元フォトニック結晶面発光レーザの斜視分解図である。
【図3】図1に示した2次元フォトニック結晶面発光レーザを裏面側から見た斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態1においてGaAsフォトニック結晶層に配列された空孔が形成する2次元フォトニック結晶の一部を示す平面図である。
【図5】本発明の実施の形態2においてGaAsフォトニック結晶層に配列された空孔が形成する2次元フォトニック結晶の一部を示す平面図である。
【図6】本発明の実施の形態3に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザにおいてGaAsフォトニック結晶層に配列された空孔が形成する2次元フォトニック結晶の一部を示す平面図である。
【図7】本発明の実施の形態4に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザにおいてGaAsフォトニック結晶層に配列された空孔が形成する2次元フォトニック結晶の一部を示す平面図である。
【図8】本発明の実施の形態5に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザにおいてGaAsフォトニック結晶層に配列された空孔が形成する2次元フォトニック結晶の一部を示す平面図である。
【図9】本発明の実施の形態6に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザを表面側から見た斜視分解図である。
【図10】本発明の実施の形態7に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザを表面側から見た斜視分解図である。
【図11】従来の2次元フォトニック結晶面発光レーザを模式的に表した分解斜視図である。
【符号の説明】
【0073】
100、600、700 2次元フォトニック結晶面発光レーザ
101、601、701 n−GaAs基板
102、602、702 AlGaAs下部クラッド層
103、603、703 GaAs下部分離閉じ込め層103
104、604、704 InGaAs/GaAsP多重量子井戸活性層
105、605、705 GaAs上部分離閉じ込め層
106、606、706 GaAsフォトニック結晶層
107、607、707 GaAsスペーサ層
108、608、708 AlGaAs上部クラッド層
109、609、709 GaAsコンタクト層
110、610、710 上部電極
111 下部電極
112、612、712 絶縁膜
113 開口部
114 無反射コート膜
115〜715、116〜516、616a、616b、716a、716b 空孔
L1〜L10 格子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアの注入により発光する活性層の近傍に形成した媒質層に該媒質層とは屈折率が異なる媒質部を周期的に配列して2次元フォトニック結晶を形成した2次元フォトニック結晶面発光レーザであって、
前記2次元フォトニック結晶は、前記活性層をコアとして伝搬する光が前記活性層の面内で2次元的に分布帰還し、かつ前記活性層に垂直な方向に放射されないように構成された分布帰還制御フォトニック結晶と、前記伝搬光が前記活性層に垂直な方向に放射されるように構成された面発光制御フォトニック結晶とが重畳されたものであることを特徴とする2次元フォトニック結晶面発光レーザ。
【請求項2】
キャリアの注入により発光する活性層の近傍に形成した媒質層に該媒質層とは屈折率が異なる媒質部を周期的に配列して2次元フォトニック結晶を形成した2次元フォトニック結晶面発光レーザであって、
前記2次元フォトニック結晶は、前記活性層をコアとして伝搬する伝搬光のモード波長の1/√2倍の格子定数を有する正方格子状の分布帰還制御フォトニック結晶と、前記伝搬光のモード波長と同じ値の格子定数を有しかつ前記分布帰還制御フォトニック結晶に対して結晶方位が45°の角度をなす正方格子状の面発光制御フォトニック結晶とが重畳されたものであることを特徴とする2次元フォトニック結晶面発光レーザ。
【請求項3】
キャリアの注入により発光する活性層の近傍に形成した固体層に該媒質層とは屈折率が異なる媒質部を周期的に配列して2次元フォトニック結晶を形成した2次元フォトニック結晶面発光レーザであって、
前記2次元フォトニック結晶は、前記活性層をコアとして伝搬する伝搬光が該伝搬光のモード波長において波数空間におけるM点で動作するように構成された正方格子状の分布帰還制御フォトニック結晶と、前記伝搬光が該伝搬光のモード波長において波数空間におけるΓ点で動作するように構成された直方格子状の面発光制御フォトニック結晶とが重畳されたものであることを特徴とする2次元フォトニック結晶面発光レーザ。
ここで、M点とはフォトニック結晶格子の波数空間において大きさが最小になるように選んだ逆格子基本ベクトルb1、b2を用いて波数ベクトルが(p+1/2)b1+(q+1/2)b2(p、qは任意の整数)で表される対称点であり、Γ点とは波数ベクトルがpb1+qb2(p、qは任意の整数)で表される対称点である。
【請求項4】
キャリアの注入により発光する活性層の近傍に形成した媒質層に該媒質層とは屈折率が異なる媒質部を周期的に配列して2次元フォトニック結晶を形成した2次元フォトニック結晶面発光レーザであって、
前記2次元フォトニック結晶は、前記活性層をコアとして伝搬する伝搬光のモード波長の2/3倍の格子定数を有する三角格子状の分布帰還制御フォトニック結晶と、前記伝搬光のモード波長の2√3/3倍の格子定数を有しかつ前記分布帰還制御フォトニック結晶に対して結晶方位が30°の角度をなす三角格子状の面発光制御フォトニック結晶とが重畳されたものであることを特徴とする2次元フォトニック結晶面発光レーザ。
【請求項5】
キャリアの注入により発光する活性層の近傍に形成した媒質層に該媒質層とは屈折率が異なる媒質部を周期的に配列して2次元フォトニック結晶を形成した2次元フォトニック結晶面発光レーザであって、
前記2次元フォトニック結晶は、前記活性層をコアとして伝搬する伝搬光が該伝搬光のモード波長において波数空間におけるK点で動作するように構成された三角格子状の分布帰還制御フォトニック結晶と、前記伝搬光が該伝搬光のモード波長において波数空間におけるΓ点で動作するように構成された三角格子状の面発光制御フォトニック結晶とが重畳されたものであることを特徴とする2次元フォトニック結晶面発光レーザ。
ここで、K点とはフォトニック結晶格子の波数空間において大きさが最小になるように選んだ逆格子基本ベクトルb1、b2を用いて波数ベクトルが(p+1/3)b1+(p+1/3)b2または(p−1/3)b1+(p+2/3)b2で表される対称点であり、Γ点とは波数ベクトルがpb1+qb2(p、qは任意の整数)で表される対称点である。
【請求項6】
前記面発光制御フォトニック結晶を形成する前記媒質部は、前記媒質層の面方向の位置に応じて異なる大きさを有するものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の2次元フォトニック結晶面発光レーザ。
【請求項7】
前記媒質部の大きさは、前記媒質層の面方向の中心部から周辺部に向かって指数関数的に減少することを特徴とする請求項6に記載の2次元フォトニック結晶面発光レーザ。
【請求項1】
キャリアの注入により発光する活性層の近傍に形成した媒質層に該媒質層とは屈折率が異なる媒質部を周期的に配列して2次元フォトニック結晶を形成した2次元フォトニック結晶面発光レーザであって、
前記2次元フォトニック結晶は、前記活性層をコアとして伝搬する光が前記活性層の面内で2次元的に分布帰還し、かつ前記活性層に垂直な方向に放射されないように構成された分布帰還制御フォトニック結晶と、前記伝搬光が前記活性層に垂直な方向に放射されるように構成された面発光制御フォトニック結晶とが重畳されたものであることを特徴とする2次元フォトニック結晶面発光レーザ。
【請求項2】
キャリアの注入により発光する活性層の近傍に形成した媒質層に該媒質層とは屈折率が異なる媒質部を周期的に配列して2次元フォトニック結晶を形成した2次元フォトニック結晶面発光レーザであって、
前記2次元フォトニック結晶は、前記活性層をコアとして伝搬する伝搬光のモード波長の1/√2倍の格子定数を有する正方格子状の分布帰還制御フォトニック結晶と、前記伝搬光のモード波長と同じ値の格子定数を有しかつ前記分布帰還制御フォトニック結晶に対して結晶方位が45°の角度をなす正方格子状の面発光制御フォトニック結晶とが重畳されたものであることを特徴とする2次元フォトニック結晶面発光レーザ。
【請求項3】
キャリアの注入により発光する活性層の近傍に形成した固体層に該媒質層とは屈折率が異なる媒質部を周期的に配列して2次元フォトニック結晶を形成した2次元フォトニック結晶面発光レーザであって、
前記2次元フォトニック結晶は、前記活性層をコアとして伝搬する伝搬光が該伝搬光のモード波長において波数空間におけるM点で動作するように構成された正方格子状の分布帰還制御フォトニック結晶と、前記伝搬光が該伝搬光のモード波長において波数空間におけるΓ点で動作するように構成された直方格子状の面発光制御フォトニック結晶とが重畳されたものであることを特徴とする2次元フォトニック結晶面発光レーザ。
ここで、M点とはフォトニック結晶格子の波数空間において大きさが最小になるように選んだ逆格子基本ベクトルb1、b2を用いて波数ベクトルが(p+1/2)b1+(q+1/2)b2(p、qは任意の整数)で表される対称点であり、Γ点とは波数ベクトルがpb1+qb2(p、qは任意の整数)で表される対称点である。
【請求項4】
キャリアの注入により発光する活性層の近傍に形成した媒質層に該媒質層とは屈折率が異なる媒質部を周期的に配列して2次元フォトニック結晶を形成した2次元フォトニック結晶面発光レーザであって、
前記2次元フォトニック結晶は、前記活性層をコアとして伝搬する伝搬光のモード波長の2/3倍の格子定数を有する三角格子状の分布帰還制御フォトニック結晶と、前記伝搬光のモード波長の2√3/3倍の格子定数を有しかつ前記分布帰還制御フォトニック結晶に対して結晶方位が30°の角度をなす三角格子状の面発光制御フォトニック結晶とが重畳されたものであることを特徴とする2次元フォトニック結晶面発光レーザ。
【請求項5】
キャリアの注入により発光する活性層の近傍に形成した媒質層に該媒質層とは屈折率が異なる媒質部を周期的に配列して2次元フォトニック結晶を形成した2次元フォトニック結晶面発光レーザであって、
前記2次元フォトニック結晶は、前記活性層をコアとして伝搬する伝搬光が該伝搬光のモード波長において波数空間におけるK点で動作するように構成された三角格子状の分布帰還制御フォトニック結晶と、前記伝搬光が該伝搬光のモード波長において波数空間におけるΓ点で動作するように構成された三角格子状の面発光制御フォトニック結晶とが重畳されたものであることを特徴とする2次元フォトニック結晶面発光レーザ。
ここで、K点とはフォトニック結晶格子の波数空間において大きさが最小になるように選んだ逆格子基本ベクトルb1、b2を用いて波数ベクトルが(p+1/3)b1+(p+1/3)b2または(p−1/3)b1+(p+2/3)b2で表される対称点であり、Γ点とは波数ベクトルがpb1+qb2(p、qは任意の整数)で表される対称点である。
【請求項6】
前記面発光制御フォトニック結晶を形成する前記媒質部は、前記媒質層の面方向の位置に応じて異なる大きさを有するものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の2次元フォトニック結晶面発光レーザ。
【請求項7】
前記媒質部の大きさは、前記媒質層の面方向の中心部から周辺部に向かって指数関数的に減少することを特徴とする請求項6に記載の2次元フォトニック結晶面発光レーザ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−208127(P2007−208127A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−27236(P2006−27236)
【出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]