説明

2次元位置決め装置およびそれを用いる可動レンズユニット

【課題】光導波路や光ファイバなどへの入射光を偏向する可動レンズの調芯を行うための2次元位置決め装置において、構成を簡略化し、かつ小型化する。
【解決手段】可動レンズ11に、その2次元位置決め装置を備える可動レンズユニット1において、前記可動レンズ11を、前後の蓋およびケースで挟み込んでz軸(光軸)方向への変位を規制し、かつxy方向への変位を許容する。一方、xy平面上の直交する2方向から、厚み方向に電圧を印加することで屈曲変位する一対の第1の駆動部材31,32および第2の駆動部材33,34で挟み込み、それによる押出しおよび引込みによって前記可動レンズ11をxy方向に変位させて位置決めを行う。したがって、前後の蓋およびケースは可動レンズ11を挟み込むような構造でよく、また駆動部材も棒状や帯状であり、構成を簡略化することができるとともに、小型化、特に薄型化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動レンズユニット、特に光導波路や光ファイバに対するレンズの調芯を行うために好適に用いられる2次元位置決め装置と、その2次元位置決め装置を搭載する前記可動レンズユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光通信などの分野では、半導体レーザが出射した光を光ファイバに正確に入射させるために、それらの間に偏向レンズを設け、この偏向レンズを該偏向レンズの光軸と直交方向に移動させてレンズの調芯を行う構成が、たとえば本件発明者らによる特許文献1および特許文献2などで提案されている。
【0003】
一方、プロジェクタなどに用いられる光源において、RGBの3原色の内、半導体レーザが実用化されていない緑色光を作成するにあたって、赤外光をSHG(第二次高調波発生:Second harmonic generation)素子による光導波路に入射して半波長の前記緑色光を得るようにしたレーザモジュールが、本件出願人による特許文献3および特許文献4で提案されている。特にこのようなSHG素子を用いる場合には、該SHG素子の変換効率が前記光導波路の径が小さくなる程向上するので、前記偏向レンズによる調芯にも、数十nm程度の微少な精度が要求される。
【0004】
これらの特許文献1〜4において、前記偏向レンズの駆動には、本件出願人らが改良を続けてきたSIDM(Smooth Impact Drive Mechanism(登録商標))から成る超音波リニアアクチュエータが用いられている。その超音波リニアアクチュエータは、圧電素子の伸縮をロッド(駆動軸)に伝え、そのロッドに所定の摩擦力で係合している被駆動部材(移動体)を、前記圧電素子の伸張時と縮小時との速度差を利用して移動させるものである。たとえば、ロッドをゆっくりと伸張させることで、そのロッドに摩擦係合している被駆動部材も移動し、前記所定の摩擦力を超える程、ロッドを瞬時に縮小すると、被駆動部材が慣性のために伸張位置に取り残されるということを繰返し行うことで、前記被駆動部材を前記ロッドの軸方向に移動させるものである。そして、伸張を瞬時に、縮小をゆっくりと行うことで、前記被駆動部材の移動方向を前記とは逆転することができるようになっている。
【0005】
このような超音波リニアアクチュエータは、通常のローレンツ力型のモータなどに比べて、構成が簡単で、しかも減速機構を用いずに負荷をダイレクトに駆動することができるという優れた特徴を備えているので、前記の偏向レンズによる調芯のために用いることが好適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−26609号公報
【特許文献2】特開2008−46467号公報
【特許文献3】特開2008−233726号公報
【特許文献4】特開2008−233731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記の調芯のためには、偏向レンズをxy平面上で変位させる必要があり、該超音波リニアアクチュエータの場合、光軸z方向にずれて(相互に間隔を開けて)、2つのアクチュエータが並ぶことになる。したがって、小型のアクチュエータであっても、モジュール全体に占めるアクチュエータの容積は大きく(主に、振動子とガイド軸を兼ねた駆動軸)、特にz軸方向に厚くなるという問題がある。一方、モジュールの小型化には、導波路に位置補正を必要としない機能を追加する方法もあるが、変換効率が低くなるという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、構成をさらに簡略化することができるとともに、小型化することができる2次元位置決め装置およびそれを用いる可動レンズユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の2次元位置決め装置は、被駆動部材と、前記被駆動部材を搭載し、該被駆動部材のz軸方向への変位を規制し、かつxy方向への変位を許容する支持台と、前記被駆動部材をxy平面上の一方向から挟み込む一対の第1の駆動部材と、前記被駆動部材を前記xy平面上において前記一方向とは交差する他方向から挟み込む一対の第2の駆動部材とを備え、前記一対の第1および第2の駆動部材は、それぞれ被駆動部材を挟んで相互に離反方向に延びる長手状に形成されて、基端側が固定部材に固着され、遊端側で前記被駆動部材を挟み込み、通電によって屈曲変位することで、前記被駆動部材を前記一方向および他方向にそれぞれ変位させて前記被駆動部材の位置決めを行うことを特徴とする。
【0010】
上記の構成によれば、被駆動部材を、そのz軸方向への変位を規制し、かつxy方向への変位を行わせて調芯などを行う2次元位置決め装置において、支持台が前記被駆動部材を搭載し、前記z軸方向への変位を規制し、かつxy方向への変位を許容する一方、xy平面上の異なる2方向(たとえば直交方向)から前記被駆動部材を挟み込む一対の第1の駆動部材および一対の第2の駆動部材を設ける。そして、それら一対の第1および第2の駆動部材を、それぞれ被駆動部材を挟んで相互に離反方向に延びる長手(棒または帯)状に形成し、基端側を固定部材に固着し、遊端側で前記被駆動部材を挟み込むようにして、それらが通電によって屈曲変位することで、前記被駆動部材を前記2方向にそれぞれ押出しおよびそれによる引込みによって変位させて位置決めを行う。
【0011】
したがって、支持台は被駆動部材を搭載し、該被駆動部材のz軸方向への変位を規制し、かつxy方向への変位を許容する、すなわちたとえば被駆動部材を前後で挟み込むような構造でよく、また第1および第2の駆動部材も棒状や帯状であり、該2次元位置決め装置の構成を簡略化することができるとともに、小型化、特に薄型化することができる。
【0012】
また、本発明の2次元位置決め装置では、前記支持台は、前記被駆動部材を前記z軸方向から挟み込む基台および蓋と、前記蓋と前記被駆動部材との間に介在されて、前記被駆動部材の前記z軸方向への変位を規制する弾性部材とを備えて構成され、前記被駆動部材と前記基台および蓋との相互の対向面において、一方には環状の凸条が形成され、他方には前記凸条が緩やかに嵌り込む凹溝が形成されることで、前記被駆動部材の前記xy方向への変位が許容されることを特徴とする。
【0013】
上記の構成によれば、前記支持台を構成するにあたって、前記被駆動部材を前記z軸方向から挟み込む基台および蓋と、前記蓋と前記被駆動部材との間に介在されて、前記被駆動部材の前記z軸方向への変位を規制する(被駆動部材を基台に押圧して摩擦接触させる)弾性部材とによって、すなわち前記のように被駆動部材を前後で挟み込むような構造で構成する。さらに、被駆動部材のxy方向に対する変位の規制は、前記基台および蓋との相互の対向面において、一方には環状(部分的に途切れていてもよい)の凸条を形成し、他方にはそれが緩やかに嵌り込む(すなわち前記凸条よりも大径の)凹溝を形成することで実現し、前記凸条と凹溝との隙間の範囲で被駆動部材の前記xy方向への変位を許容する。
【0014】
したがって、前記被駆動部材のz軸方向への変位を規制し、かつxy方向へは所定の摩擦力で、所定の範囲に変位を許容する機構を、簡単かつ小型の構成で実現することができる。すなわち、従来技術における直交座標系を構成するためのガイド軸を不要にすることができる。
【0015】
さらにまた、本発明の2次元位置決め装置では、前記第1および第2の駆動部材は、厚み方向に電圧を印加することで、内部のイオンが移動して前記屈曲を生じる高分子アクチュエータであることを特徴とする。
【0016】
上記の構成によれば、前記長手(棒または帯)状に形成される第1および第2の駆動部材において、高分子アクチュエータを用いることで、簡単で小型の構成を実現することができるとともに、厚み方向の両面に形成される電極は、前記固定部材に固着される基端側から引出しを行うことができ、該電極の引出し構造を簡略化することができる。
【0017】
また、本発明の2次元位置決め装置では、前記第1および第2の駆動部材は、厚み方向に分極された2枚の圧電素子間に電極が埋込まれて成り、前記埋込まれた電極と表層の2つの電極との間に電圧を印加することで、前記屈曲を生じるバイモルフ圧電素子であることを特徴とする。
【0018】
上記の構成によれば、前記長手(棒または帯)状に形成される第1および第2の駆動部材として、バイモルフ圧電素子を用いることで、構造が単純で、製造が容易になる。また、比較的低電圧で大きな屈曲変位を得ることができるとともに、消費電力が少なく、かつ発熱や電磁的雑音の発生も無い。さらにまた、電極の引出しを前記固定部材に固着される基端側だけとすることができる。
【0019】
さらにまた、本発明の2次元位置決め装置では、第1および第2の駆動部材は、相互に熱膨張率が異なる2枚の金属板が厚み方向に積層されて成り、前記長手方向に電圧を印加することで、前記2枚の金属板の発熱による熱膨張の違いで前記屈曲を生じるバイメタルであることを特徴とする。
【0020】
上記の構成によれば、前記長手(棒または帯)状に形成される第1および第2の駆動部材として、バイメタルを用いることで、手軽な材料で実現することができる。
【0021】
また、本発明の可動レンズユニットでは、前記の2次元位置決め装置を用い、前記被駆動部材は、レンズと、前記レンズを外囲し、前記支持台に搭載支持される鏡筒とを備えて構成され、前記第1および第2の駆動部材は、前記z軸方向を光軸方向として、前記レンズの調芯を行うことを特徴とする。
【0022】
上記の構成によれば、可動レンズユニットの調芯機構を簡略化することができるとともに、該可動レンズユニットを小型化、特に薄型化することができる。
【0023】
さらにまた、本発明の可動レンズユニットでは、前記調芯は、光導波路または光ファイバに対して行われることを特徴とする。
【0024】
上記の構成によれば、光導波路または光ファイバの調芯を、簡単、かつ小型の構成で行うことができる。
【0025】
また、本発明の可動レンズユニットは、チップ部品に形成され、一端面に前記第1および第2の駆動部材のための電極パッドが形成されることを特徴とする。
【0026】
上記の構成によれば、上述のような可動レンズユニットをチップ部品に形成した場合、その一端面に前記第1および第2の駆動部材のための電極パッドを並べて形成しておくことで、前記光導波路や光ファイバならびに固定レンズなどが取付けられた基台や配線基板に、該可動レンズユニットを半田付けもしくはワイヤボンディングするだけで取付けることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の2次元位置決め装置は、以上のように、被駆動部材を、そのz軸方向への変位を規制し、かつxy方向への変位を行わせて調芯などを行う2次元位置決め装置において、支持台が前記被駆動部材を搭載し、前記z軸方向への変位を規制し、かつxy方向への変位を許容する一方、xy平面上の異なる2方向から前記被駆動部材を挟み込む一対の第1の駆動部材および一対の第2の駆動部材を設け、それら一対の第1および第2の駆動部材を、それぞれ被駆動部材を挟んで相互に離反方向に延びる棒状や帯状に形成し、基端側を固定部材に固着し、遊端側で前記被駆動部材を挟み込むようにして、それらが通電によって屈曲変位することで、前記被駆動部材を前記2方向にそれぞれ押出しおよびそれによる引込みによって変位させて位置決めを行う。
【0028】
それゆえ、支持台は被駆動部材を前後で挟み込むような構造でよく、また第1および第2の駆動部材も棒状や帯状であり、該2次元位置決め装置の構成を簡略化することができるとともに、小型化、特に薄型化することができる。
【0029】
また、本発明の可動レンズユニットは、以上のように、前記の2次元位置決め装置を用い、前記被駆動部材を、レンズとその鏡筒とによって構成し、前記第1および第2の駆動部材は、前記レンズの調芯を行う。
【0030】
それゆえ、可動レンズユニットの調芯機構を簡略化することができるとともに、該可動レンズユニットを小型化、特に薄型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の一形態に係る2次元位置決め装置を用いる可動レンズユニットの斜視図である。
【図2】図1の可動レンズユニットを用いるレーザモジュールの概略的なレイアウト図である。
【図3】前記可動レンズユニットの内部構造を示す光軸の軸直角断面図である。
【図4】図3の切断面線IV−IVから見た断面図である。
【図5】可動レンズの駆動部材としてイオン導電性高分子から成る高分子アクチュエータを用いた場合の屈曲変位のメカニズムを説明するための模式的な断面図である。
【図6】前記屈曲変位による可動レンズの移動の様子を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は本発明の実施の一形態に係る2次元位置決め装置を用いる可動レンズユニット1の斜視図であり、図2はその可動レンズユニット1を用いるレーザモジュール2の概略的なレイアウト図である。このレーザモジュール2は、たとえば前述のレーザプロジェクターにおける緑色発光のために用いられ、該レーザプロジェクターは、その緑色光と、図示しない赤および青のレーザダイオードからの光とを合わせて、フルカラーで投影を行う。このレーザプロジェクターは、たとえば携帯電話の端末装置などに実装可能なサイズであり、前記レーザモジュール2は微小部品である。
【0033】
前記レーザモジュール2は、赤外光を出射するレーザダイオード3と、その出射光を平行光とする固定レンズ4と、その平行光を集光するとともに、前記偏向レンズとしての機能を有する可動レンズユニット1と、前記可動レンズユニット1からの光が入射され、波長変換を行った緑色光を出射するSHG素子5とを備えて構成され、これらの部品が図示しない基台や配線基板に一体に実装されて成る。
【0034】
図3は前記可動レンズユニット1の内部構造を示す光軸(軸線z)の軸直角断面(xy断面)図であり、図4は図3の切断面線IV−IVから見た断面、すなわち前記光軸(軸線z)の軸線方向断面図である。この可動レンズユニット1は、光導波路結合モジュールであり、可動レンズ11に、その2次元位置決め装置を備えて構成される。被駆動部材である前記可動レンズ11は、レンズ12と、該レンズ12を外囲する鏡筒13とを備えて構成され、前記2次元位置決め装置は、後述するようにして、前記レンズ12の調芯を行う。
【0035】
前記可動レンズ11は、基台であるレンズユニットケース21に搭載支持され、該レンズユニットケース21に対向して設けられるレンズユニット蓋22との間で、前記z軸方向から挟持される。前記レンズユニット蓋22とこの可動レンズ11の鏡筒13との間には、該可動レンズ11の前記z軸方向への変位を規制する(前記鏡筒13をレンズユニットケース21に押圧して摩擦接触させる)弾性部材であるバネ23が介在されている。たとえば、前記バネ23のバネ力は100gf程度であり、この場合、図4において、丸印で囲む摩擦接触部の摩擦係数が0.2程度とすると、摩擦力は20gf程度になる。これらのレンズユニットケース21、レンズユニット蓋22およびバネ23は、可動レンズ11の支持台となる。
【0036】
注目すべきは、前記可動レンズ11とレンズユニットケース21およびレンズユニット蓋22との相互の対向面において、一方(図4の例ではレンズユニットケース21およびレンズユニット蓋22側)には環状の凸条21a,22aが形成され、他方(図4の例では可動レンズ11の鏡筒13側)にはそれが緩やかに嵌り込む、すなわち前記凸条21a,22aよりも大径の凹溝13aが形成されることである。これによって、前記可動レンズ11の前記光軸(軸線z)とは直交するxy方向への変位が許容される。なお、前記凸条21a,22aは、完全な円環状に形成されなくてもよく、部分的に途切れていたり、同じ円周上に配置される複数の突起として形成されていてもよい。その場合、前記凹溝13aも、前記変位を許容できる範囲の内径を有する凹所として形成されればよい。
【0037】
こうして、前記可動レンズ11のz軸方向への変位を規制し、かつxy方向へは所定の摩擦力で、前記凸条21a,22aと凹溝23aとの隙間の範囲で、可動レンズ11の前記xy方向への変位を許容することができる機構を、簡単かつ小型の構成で実現することができる。すなわち、従来技術における直交座標系を構成するためのガイド軸を不要にすることができる。
【0038】
上述のように構成される可動レンズユニット1において、また注目すべきは、本実施の形態では、前記可動レンズ11の前記xy方向への変位を実現するにあたって、前記可動レンズ11をxy平面上の一方向(図3の例ではx方向)から挟み込む一対の第1の駆動部材31,32と、前記可動レンズ11を前記xy平面上において前記一方向とは交差する他方向(図3の例ではy方向)から挟み込む一対の第2の駆動部材33,34とが設けられていることである。
【0039】
そして、それら一対の第1および第2の駆動部材31,32;33,34を、それぞれ可動レンズ11を挟んで相互に離反方向に延びる長手(図3および図4の例では角棒)状に形成し、基端側を固定部材である前記レンズユニットケース21の内壁面21bに固着し、遊端側で前記可動レンズ11を挟み込むようにして、それらが通電によって屈曲変位することで、前記可動レンズ11を前記x,yの2方向にそれぞれ押出しおよびそれによる引込みによって変位させて位置決めを行うようになっている。
【0040】
図5は、前記第1および第2の駆動部材31,32;33,34として、イオン導電性高分子から成る高分子アクチュエータ35を用いた場合の前記屈曲変位のメカニズムを説明するための模式的な断面図である。その高分子アクチュエータ35の場合には、前記角棒状の本体35aにおいて、前記可動レンズ11の鏡筒13の外周面と平行な表裏両面に電極35b,35cが貼付けられて成り、それらの間(これを厚み方向とする)に電圧を印加しない場合には、図5(a)で示すように、陽イオンに、その極性分子が全体に分散しており、該高分子アクチュエータ35は一直線状に伸張している。
【0041】
これに対して、図5(b)および図5(c)で示すように、前記電極35b,35c間に電圧を印加することで、前記陽イオンおよび極性分子が、イオン交換樹脂膜を超えて一方の電極側に集まり、前記x,y平面内で円弧状に屈曲する。こうして、一対の第1および第2の駆動部材31,32;33,34が、図6において、実線で示す状態を基準として、破線で示す+xおよび+y方向と、仮想線で示す−xおよび−y方向とに屈曲変位し、前記可動レンズ11をそれらの方向へ変位駆動する。その変位は、前記凸条21a,22aと凹溝23aとによって所定の範囲に規制される。
【0042】
上述の例では、第1の駆動部材31,32と第2の駆動部材33,34とは、相互に直交する方向に配置されている(第1の駆動部材31,32はy方向に延び、第2の駆動部材33,34はx方向に延びている)けれども、必ずしも直交配置されていなくてもよく、或る程度の角度を持って交差するように配置されていればよい。
【0043】
このように構成することで、前述の可動レンズ11と、レンズユニットケース21、レンズユニット蓋22およびバネ23、すなわち該可動レンズ11の支持台との構造と合わせて、該可動レンズ11を、そのz軸方向への変位を規制し、かつxy方向への変位を行わせて調芯を行う2次元位置決め装置を実現することができる。また、そのように支持台は、可動レンズ11を搭載し、該可動レンズ11のz軸方向への変位を規制し、かつxy方向への変位を許容する、すなわち可動レンズ11を前後で挟み込むような構造でよく、また第1および第2の駆動部材31,32;33,34も棒状や帯状であり、該2次元位置決め装置の構成を簡略化することができるとともに、小型化、特に薄型化することができる。
【0044】
ここで、図3における各駆動部材31,32;33,34への配線31L,32L;33L,34Lは、対を成す第1の駆動部材31,32と第2の駆動部材33,34とで、それぞれ並列に引回され、すなわち一対の端子36,37;38,39をそれぞれ共用しているけれども、個別の端子を設けて、前記押出しおよびそれによる引込み動作の内、押出し側の駆動部材に対する印加電圧を、引込み側の駆動部材に対する印加電圧より大きくすることで、前記可動レンズ11をがたつき無く挟持することができる。
【0045】
そして、前記の端子36,37;38,39は、該可動レンズユニット1が矩形のチップ部品に形成されることに対応して、一端面(図1の例では上面)に、電極パッドとして配列されている。このように構成することで、前記レーザダイオード3や固定レンズ4ならびにSHG素子5などが取付けられた基台や配線基板に、該可動レンズユニット1を半田付けするだけで取付けることができる。或いは、接着固定した後に、ボンディングによる配線を容易に行うことができる。
【0046】
また、前記第1および第2の駆動部材31,32;33,34に前記高分子アクチュエータ35を用いることで、簡単で小型の構成を実現することができるとともに、厚み方向の両面に形成される電極35b,35cは、前記固定部材であるレンズユニットケース21の内壁面21bに固着される基端側から引出しを行うことができ、該電極35b,35cの引出し構造を簡略化することができる。
【0047】
一方、前記第1および第2の駆動部材31,32;33,34に、厚み方向に分極された2枚の圧電素子間に電極が埋込まれて成り、前記埋込まれた電極と表層の2つの電極との間に電圧を印加することで、前記屈曲を生じるバイモルフ圧電素子を用いた場合、該第1および第2の駆動部材31,32;33,34の構造が単純で、製造が容易になる。また、比較的低電圧で大きな屈曲変位を得ることができるとともに、消費電力が少なく、かつ発熱や電磁的雑音も無くすことができる。さらにまた、前記高分子アクチュエータ35と同様に、電極の引出しを固定部材に固着される基端側だけとすることができる。
【0048】
また、前記第1および第2の駆動部材31,32;33,34に、相互に熱膨張率が異なる2枚の金属板が厚み方向に積層されて成り、前記長手方向に電圧を印加することで、前記2枚の金属板の発熱による熱膨張の違いで前記屈曲を生じるバイメタルを用いた場合、該第1および第2の駆動部材31,32;33,34を手軽な材料で実現することができる。ここで、前記第1および第2の駆動部材31,32;33,34が、電圧を印加し続けると、屈曲変位が増大してゆく場合は、出力されるレーザ強度を検知して、PWM駆動する駆動信号のデューティに反映させる等のフィードバックを適宜行い、可動レンズ11を所望位置に保持するようにすればよい。
【0049】
上述のように、光導波路結合モジュールである本実施の形態の可動レンズユニット1は、レンズ12の調芯を行うので、SHG素子5の変換効率を高く維持することができる。そして、その調芯の手法としては、前記レーザダイオード3からの出射光がガウシアン分布の場合、SHG素子5からの出射光を図示しないフォトディテクタで受光し、その受光レベルが可動レンズ11をx方向およびy方向にそれぞれ変位させたときにピークとなるように、前記電極36,37;38,39間への印加電圧を調整すればよい。
【0050】
また、一対の第1の駆動部材31,32と第2の駆動部材33,34とは、個別に駆動されてもよいし、同時に駆動されてもよい。個別に駆動される場合にはx方向またはy方向のみの変位となり、同時に駆動される場合にはそれらの軸に対する45°方向の変位となる。
【0051】
さらにまた、前記可動レンズ11の支持台としては、該可動レンズ11のz軸方向への変位が規制され、かつその支持台に対してxy方向への変位の際に所定の摩擦力が発生するような構造であればよく、たとえば可動レンズ11の案内面を有する基台に、該可動レンズ11が磁気吸着されているような構造であってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 可動レンズユニット
2 レーザモジュール
3 レーザダイオード
4 固定レンズ
5 SHG素子
11 可動レンズ
12 レンズ
13 鏡筒
13a 凹溝
21 レンズユニットケース
21a,22a 凸条
21b 内壁面
22 レンズユニット蓋
23 バネ
31,32 第1の駆動部材
31L,32L;33L,34L 配線
33,34 第2の駆動部材
35 高分子アクチュエータ
35a 本体
35b,35c 電極
36,37;38,39 端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被駆動部材と、
前記被駆動部材を搭載し、該被駆動部材のz軸方向への変位を規制し、かつxy方向への変位を許容する支持台と、
前記被駆動部材をxy平面上の一方向から挟み込む一対の第1の駆動部材と、
前記被駆動部材を前記xy平面上において前記一方向とは交差する他方向から挟み込む一対の第2の駆動部材とを備え、
前記一対の第1および第2の駆動部材は、それぞれ被駆動部材を挟んで相互に離反方向に延びる長手状に形成されて、基端側が固定部材に固着され、遊端側で前記被駆動部材を挟み込み、通電によって屈曲変位することで、前記被駆動部材を前記一方向および他方向にそれぞれ変位させて前記被駆動部材の位置決めを行うことを特徴とする2次元位置決め装置。
【請求項2】
前記支持台は、前記被駆動部材を前記z軸方向から挟み込む基台および蓋と、前記蓋と前記被駆動部材との間に介在されて、前記被駆動部材の前記z軸方向への変位を規制する弾性部材とを備えて構成され、
前記被駆動部材と前記基台および蓋との相互の対向面において、一方には環状の凸条が形成され、他方には前記凸条が緩やかに嵌り込む凹溝が形成されることで、前記被駆動部材の前記xy方向への変位が許容されることを特徴とする請求項1記載の2次元位置決め装置。
【請求項3】
前記第1および第2の駆動部材は、厚み方向に電圧を印加することで、内部のイオンが移動して前記屈曲を生じる高分子アクチュエータであることを特徴とする請求項1または2記載の2次元位置決め装置。
【請求項4】
前記第1および第2の駆動部材は、厚み方向に分極された2枚の圧電素子間に電極が埋込まれて成り、前記埋込まれた電極と表層の2つの電極との間に電圧を印加することで、前記屈曲を生じるバイモルフ圧電素子であることを特徴とする請求項1または2記載の2次元位置決め装置。
【請求項5】
第1および第2の駆動部材は、相互に熱膨張率が異なる2枚の金属板が厚み方向に積層されて成り、前記長手方向に電圧を印加することで、前記2枚の金属板の発熱による熱膨張の違いで前記屈曲を生じるバイメタルであることを特徴とする請求項1または2記載の2次元位置決め装置。
【請求項6】
前記請求項1〜5のいずれか1項に記載の2次元位置決め装置を用い、
前記被駆動部材は、レンズと、前記レンズを外囲し、前記支持台に搭載支持される鏡筒とを備えて構成され、
前記第1および第2の駆動部材は、前記z軸方向を光軸方向として、前記レンズの調芯を行うことを特徴とする可動レンズユニット。
【請求項7】
前記調芯は、光導波路または光ファイバに対して行われることを特徴とする請求項6記載の可動レンズユニット。
【請求項8】
チップ部品に形成され、一端面に前記第1および第2の駆動部材のための電極パッドが形成されることを特徴とする請求項6または7記載の可動レンズユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−180436(P2011−180436A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45499(P2010−45499)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】