説明

3パラメータ、多軸分離装置、これを用いる分離システム、およびこれを製造する方法

【課題】3パラメータ、軸方向分離装置を採用する分離システムは、分離装置の数が多く、複雑で重くなり、製造コストが高くなる。これらを解決する分離装置を提供する
【解決手段】マスとベースとの間の振動の伝達を制限するように構成される2パラメータ複数軸分離装置50の実施形態が提供される。一実施形態において、3パラメータ複数軸分離装置は50は、ベースに取り付けられるように構成される分離装置ハウジング52と、分離装置ハウジング52内にシールされて取り付けられる対向するベローズ82、84と、対向するベローズ82、84の間で分離装置ハウジング内に移動可能に吊り下げられるダンパピストンと、を有する。ダンパピストンは、マスに連結されるように構成される。対向するベローズ82、84は、3つの実質的に直交する軸106、107、108に沿ってダンパピストンの運動を逸らし、マスとベースとの間の振動の伝達を制限する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、概ね分離装置に関し、より具体的には、3パラメータ、多軸分離器の実施形態に関し、これは、システム宇宙船とペイロードとの間の振動の伝達を減少させるための分離システム内に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
[0002]衛星および他の宇宙船は、しばしば、反作用ホイール、コントロールモーメントジャイロスコープ、または宇宙船に搭載される他の振動放射装置により生成される振動力に敏感である、光学ペイロードのようなコンポーネントを保持する。振動力、特に、一般に「ジター(jitter)」と称される高周波数の振動力の、そのような宇宙船に搭載される振動に敏感なコンポーネントへの伝達を最小化するために分離システムが用いられる。分離システムの正確さは、個別の分離装置の一定の数(典型的には3から8の分離装置)の組み合わせとなり得る、6の自由度の減衰の高い忠実度を提供する。受動分離システムの場合、粘弾性分離装置(たとえば、多方向性ゴムマウント)がしばしば用いられる。粘弾性分離装置は、相対的に、単純で、低コスト、軽量の装置であり、これは典型的には3つの直交軸に沿う減衰を提供し、つまり3の自由度において減衰を提供する。しかし、粘弾性分離装置の減衰特性は非線形であり、振幅、変位、および温度の変化により優位に変わり得る。それゆえ、粘弾性分離装置を含む分離装置の減衰特性は、いくぶん制限的であり正確に予測することが困難である傾向にある。
【0003】
[0003]粘弾性分離装置は、2パラメータ装置であると考えられ、機械的に並列にダンパおよびスプリングとして機能する。有利なことに、2パラメータ分離装置のピーク伝達性は、分離装置内の減衰されない装置またはバネのそれよりも有意に小さい。しかし、ピーク周波数を過ぎた後は、2パラメータ装置の減衰プロファイルは、望ましくない低速度で利得が減少する傾向にある。結果として、2パラメータ装置は、ジターのような高周波振動の理想的な減衰よりも劣る。この制限を克服するために、3パラメータ分離装置が開発されてきており、これはさらにダンパに直列に、且つ第1バネ要素に並列に第2のバネ要素を含む。ダンパに直列な第2バネの追加により、ピーク周波数に到達した後に、周波数の増加にともなう利得のより急峻な減少が可能になる。結果として、3パラメータ分離装置は、高周波数において
優れた減衰特性を提供し、一方で、相対的に低いピーク伝達性を維持する。したがって、3パラメータ分離装置は、高周波振動力の優れた減衰を提供することができる。そのような3パラメータ分離装置の例は、D−STRUT(商標)分離装置であり、現在、ニュージャージー州のモリスタウンに本社のあるハネウェル社により開発され市販されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[0004]上述の利点を提供するが、3パラメータ分離装置は、従来から、単一の自由度の減衰に限られ、すなわち軸方向の減衰に限られてきた。6自由度(「6DOF」)の高忠実度の分離が可能な正確な分離装置を生成するには少なくとも6つの3パラメータ分離装置が必要である。比較すると、6−DOF分離システムは、たとえば3点動的マウント構成において組み合わせられる3つの多軸粘弾性マウントを用いて生成することができる。したがって、多軸粘弾性分離装置を採用する分離システムに対して、3パラメータ、軸方向分離装置を採用する分離システムは、分離装置の数が多く、それゆえ、より複雑になり、重くなり、また製造コストが高くなる傾向にある。
【0005】
[0005]複数の自由度で、特に3つの実質的に直交する軸に沿う方向で、減衰を提供する3パラメータ分離装置の実施形態を提供することが望まれる。理想的には、そのような3パラメータ、複数軸分離装置の実施形態は、相対的に広い温度範囲、動的環境、および/または付加条件にわたって、実質的に線形の減衰プロファイルを提供する。また、たとえば6自由度における高忠実度分離を提供するために、複数の3パラメータ、複数軸分離装置を統合する分離システムの実施形態を提供することが望まれる。最後に、そのような3パラメータ、複数軸分離装置を製造する方法の実施形態を提供することが望まれる。本発明の実施形態の他の望ましい特徴おおび特性は、添付図面および上述の背景とともに以下の詳細な説明および特許請求の範囲を参照することで明らかとなろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0006] マスとベースとの間の振動の伝達を制限するように構成される3パラメータ、複数軸分離装置の実施形態が提供される。一実施形態において、3パラメータ、複数軸分離装置は、ベースに搭載されるように構成される分離装置ハウジングと、分離装置ハウジング内にシールされて搭載される対向するベローズと、対向するベローズの間で分離装置ハウジング内に可動式に吊るされるダンパピストンと、を含む。ダンパピストンは、マスに連結するように構成される。対向するベローズは、複数の軸に沿ってダンパピストンの運動を逸らし、マスとベースとの間の振動の伝達を制限する。
【0007】
[0007]さらに、宇宙船と宇宙船のペイロードとの間の振動の伝達を最小化するための分離システムの実施形態が提供される。一実施形態において、分離システムは、複数の3パラメータ・複数軸分離装置と、取付ハードウェアとを含む。各3パラメータ・複数軸分離装置は、分離装置ハウジングと、分離装置ハウジング内にシールされて搭載される対向するベローズと、対向するベローズの間で分離装置ハウジング内に吊るされ、宇宙船のペイロードに連結されるように構成されるダンパピストンと、を含む。対向するベローズは、複数軸に沿って。ダンパピストンの運動を逸らし、分離装置ハウジングとダンパピストンとの間の振動性の運動の伝達を低減させる。
【0008】
[0008]さらに、3パラメータ・複数軸分離装置を製造する方法の実施形態が提供される。一実施形態において、この本方法は、分離装置ハウジングを提供するステップと、対向するベローズの間で分離ハウジング内でダンパピストンを吊るすステップと、を含み、ダンパピストンが実質的に直交する3つの軸に沿って分離装置ハウジング内で移動可能となるようにする。ダンパピストンは、対向するベローズおよび分離装置ハウジングと協働し、分離装置ハウジング内に、少なくとも部分的に複数の液圧チャンバを画定する。
【0009】
[0009]以下に、本発明の少なくとも1つの例が添付の図面とともに説明される。添付図面において、同様の要素は同様の符号で示される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の例示的な実施形態による、6自由度における高忠実度の分離を提供するための、4つの3パラメータ・複数分離装置を採用する分離システムの単純化した概略図である。
【図2】本発明の例示的な実施形態による、6自由度における高忠実度の分離を提供するための、4つの3パラメータ・複数分離装置を採用する分離システムの単純化した概略斜視図である。
【図3】例示的な3パラメータ振動分離装置の概略図である。
【図4】2パラメータ分離装置および減衰されていない装置の伝達プロファイルと比較した、3パラメータ分離装置の例示的な伝達プロファイルを示す、周波数(横軸)と利得(縦軸)の伝達性のプロットを示す図である。
【図5】本発明の例示的な実施形態による、3パラメータ・複数軸分離装置の斜視図である。
【図6】本発明の例示的な実施形態による、3パラメータ・複数軸分離装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0014]図1は、本発明の例示的な実施形態による分離システム10の単純化した図であり、ペイロード12とホスト宇宙船15との間の振動の伝達を低減するためのものである。図示の例において、分離システム10は、4つの分離装置14を含み、これらは、機械的にペイロード12に連結され、また集合的にペイロード12を支持する。分離装置14の反対側の端部は、取付ブラケット18を用いて宇宙船の取付インターフェース16に取り付けられる。以下でより詳細に説明されるように、分離装置14は、それぞれ3自由度の減衰を提供し、特に、実質的に直交する3つの軸にそって減衰を提供する。結果として、分離装置14は、4つのポイント動的取付構成(図1に示される)で過剰な束縛で組み合わせることができ、または、3つの分離装置14は、標準的に、3つの動的取付構成で組わせることができ、6自由度(「6DOF」)における減衰を提供することができる高忠実度の分離システムを提供する。比較により、単一軸または軸分離装置の場合、そのような高忠実度の6DOF分離システムを提供するためには、典型的には6またはそれ以上の分離装置が必要である。以下でより詳細に説明するように、複数軸分離装置14は、3パラメータ装置であり、従来の複数方向ラバーマウントおよび他の2パラメータ分離装置に比較して、優れた振動減衰特性を提供する。
【0012】
[0016]いくつかの実施形態において、ペイロード12は、光学ペイロードまたはセンサのような振動に敏感なコンポーネントの形態であると仮定することができ、また、分離システム10は、宇宙船15上の振動放出源から宇宙船取付インターフェースを通りペイロードへの振動の伝達を最小化するように機能する。他の実施形態において、ペイロード12は、1つ以上の振動放出装置を含むことができ、分離システム10は、ペイロード12から宇宙船15および宇宙船上の任意の振動に敏感なコンポーネントへの振動の伝達を低減するように機能し得る。後者に関して、ペイロード12は、宇宙船15の姿勢調整に用いられる、1つ以上のリアクションホイールまたはコントロールモーメントジャイロスコープのような1つ以上の回転装置を含むことができる。1つの具体例として、図2に示されるように、ペイロード12はリアクションホイールアレイ20の形態であると仮定し、これは、支持プラットフォーム24を中心に円周方向に間隔が隔てられて取り付けられる多数のリアクションホイール22を含み、支持プラットフォーム24は、分離装置14により支持される(図2では2つだけ見える)。
【0013】
[0017]前述したように、分離装置14は3パラメータ装置である。図3に概略的に示されるように、3パラメータ装置は、以下の機械的要素を含む。(i)マスM(たとえば図1に示されるペイロード12)とベースB(たとえば図1に示される衛星取付インターフェース16)との間に連結される第1バネ部材K、(ii)減衰されるマスMとベースBとの間で第1バネ部材Kと並列に連結される第2バネ部材K、(iii)減衰されるマスMとベースBとの間で第1バネ部材Kと並列に且つ第2バネ部材Kと直列に連結されるダンパCである。このような3パラメータ装置は、減衰されない装置および2パラメータ装置に比較して、与えられた周波数範囲にわたって優れた減衰特性(すなわち全体として低い伝達性)を提供するように調整することができる。伝達性は以下の式で表現することができる。
【0014】
【数1】


上式中で、T(ω)は伝達性であり、Xoutput(ω)はペイロードの出力運動であり、Xinput(ω)はベースの入力運動である。
【0015】
[0018]図4は、3パラメータ分離装置(曲線40)の減衰特性を示す、伝達性のプロットであり、2パラメータ分離装置(曲線42)および減衰されない装置(曲線44)との比較で示されている。図4の符号46に示されるように、減衰されない装置(曲線44)は、閾値周波数において相対的に高いピーク利得を与え、例示的なものとして控え目に10ヘルツより小さい。比較として、2パラメータ装置(曲線42)は、閾値周波数において有意に低いピーク利得を与え、閾値周波数を越えた後に周波数の増加とともに望ましくない利得の漸進的な減少がある(「ロールオフ」と称される)。図示の例において、2パラメータ装置(曲線42)のロールオフは、平均的に一ケタあたり20デシベル(dB/decade)である。3パラメータ装置(曲線40)は、実質的に2パラメータ装置(曲線42)で達成されるものと同等の低いピーク利得を提供し、さらに、約40dB/decadeの比較的に急峻なロールオフを提供する。3パラメータ装置(曲線40)は、曲線40および42により境界付けられる面積48により図4において定量化されるような、高周波数において有意な伝達性の低下を提供する。非限定的な例として、3パラメータ分離装置のさらなる議論は、本願の出願人に譲渡された1994年1月26日に発行された「THREE PARAMETR VISCOUS DAMPER AND ISOLATOR」との表題の米国特許第5332070号明細書、および2007年2月27日に発行された「ISOLATOR USING EXTERNALLY PRESSURIZED SEALING BELLOWS」との表題の米国特許第7182188号明細書に示されている。
【0016】
[0019]図5は、図1、2に示される分離装置14の1つまたは全てとして使用するのに好適な、複数軸・3パラメータ分離装置50の例示的な実施形態の斜視図である。例示的な分離装置50は、ベース部分54および対向する端部56を備える、全体として円筒形の分離装置ハウジング52を含む。接続ロッド60が、端部56に設けられた中心開口58を通って延びる。接続ロッド60は第1端部を備え、これは図5では隠れており、また、分離装置ハウジング52内のダンパピストンに取り付けられる(以下でより詳細に説明される)。また、接続ロッド60は第2端部62を備え、これは軸方向に分離装置ハウジング52から離れるように延びる。便宜的に参照フレームを提供するために、接続ロッド60の第1端部および第2端部は、1つの可能な取り付け構成における相対的なホスト宇宙船への近さの点から、ここではそれぞれ「内側端部」および「外側端部」と記載する。しかし、分離装置50は、3次元空間における任意の向きを想定しており、また、分離装置50は、接続ロッド60が宇宙船に取り付けられてハウジング52が宇宙船のペイロードに取り付けられるように配置されることも可能であることを理解されたい。
【0017】
[0020]分離装置50が宇宙船上に搭載される場合、接続ロッド60の外側端部62は、図1、2に示されるペイロード12のような宇宙船のペイロードに機械的に接続される。接続ロッド60は、ペイロードに直接的に固定することができ、または、その代わりに、ペイロードが取り付けられる支持構造(パレットまたはフレーム)に固定することができる。ペイロードへの取り付けを容易にするために、接続ロッド60の外側端部62は、1つまたはそれ以上の連結特徴を含むように製造することができる。たとえば、図5に示されるように、接続ロッド60の外側端部62は、取付カラー64およびネジ付きボルト部66を備えることができる。突出ロッド端部62の反対に、分離装置ハウジング52のベース部分54はホスト宇宙船に取り付けられる。分離装置ハウジング52が宇宙船に取り付けられる方法は、実施形態により様々であろう。図示の例において、ベース部分54は、複数の固定具開口部70を備える取り付けフランジ68を含むように製造され、複数のボルトまたは他の固定具(図示せず)が、取り付けフランジ68をスペーサプレート72および対応する取り付けブラケット74に接続するのに用いられる。取り付けブラケット74は、宇宙船本体上に設けられる対応するインターフェースまたは追加的な固定具のセットを用いるフレームに取り付けるための、複数の固定具開口部78を備えるフランジ部76を含むことができる。
【0018】
[0021]図6は、図5に示される複数軸・3パラメータ分離装置50の断面図である。図6から見てとれるように、ダンパピストン80、第1ベローズ82、および第2ベローズ84は、それぞれ分離装置ハウジング52内に設けられる内側キャビティ内に配置される。ダンパピストン80は、外側リム部88に境界を画定される、または囲まれる中心部86を備えるディスク形状の本体の形態を想定している。ダンパピストン80の中心部86は、接続ロッド60の内側終端部に固定的に連結される。たとえば、一形態において、ダンパピストン80および接続ロッド60は、単一の機械加工部品として一体的に形成することができる。したがって、ダンパピストン80は、分離装置50の動作中に接続ロッド60とともに移動する。ベローズ82、84は、ダンパピストン80の対向する面にシールされて連結され、それにより効率的に分離装置ハウジング52内にダンパピストン80を吊り下げる。ダンパピストン80が、図5、6に示されるような通常位置または設計位置にあるとき、第1環状クリアランスがダンパピストン80および分離装置ハウジング52の内側の外側周辺の周りに提供され、第2環状クリアランスが、接続ロッド62と中心開口部58を画定する分離装置ハウジング52の内側周辺エッジとの間に提供される。これらのクリアランスは、二重ベローズ吊り下げマウントと組み合わせて、ダンパピストンおよびそれゆえ接続ロッド60が、実質的に直交する3つの軸に沿って移動できるようにする。特に、ダンパピストン80および接続ロッド60は、分離装置ハウジング52に関して軸方向にスライドできる(図5、6において矢印106で示される)。さらに、ダンパピストン80および接続ロッド60は、実質的に直交する2つの軸に沿って分離装置ハウジング52に関して側方に移動することができ、この軸は、分離装置50の長手方向軸に実質的に直交する(図5、6において矢印107、108で示される)。分離装置50が、図1、2とともに上述されたような3ポイントまたは4ポイントマウント内に採用される場合、ダンパピストン80および接続ロッド60の、分離装置50の長手方向軸を中心とする回転は一般に防止される。
【0019】
[0022]ダンパピストン80がシールされて対向するベローズ82、84に連結される方法は、実施形態により様々である。図示の例において、ベローズ82の外側端部は、分離装置ハウジング50の端部54における中心開口58の周りに設けられた内側環状カラーにシールされて接続され、ベローズ82の内側端部は、ダンパピストン80の外側放射面の周りに設けられる環状リップにシールされて接続される。同様に、ベローズ84の外側端部は、ダンパピストン80の内側放射面の周りに設けられる環状リップ94にシールされて接続され、ベローズ84の内側端部は、分離装置50が完全に組み立てられたときに、分離装置ハウジング52のベース部分56とスペーサプレート72との間に捕獲されるベース端部キャップ98の内側部の周りに設けられる環状リップ96にシールされて接続される。ベローズ82、84が金属または合金から製造される実施形態において、ベローズ82、84は、ボンディングまたは溶接により上述のコンポーネントにシール接続することができる。しかし、ベローズおよびそれの結合コンポーネントの間に流体を通さないまたは密封のシールを形成するのに好適な任意の連結技術を用いることができる。
【0020】
[0023]分離装置50の具体的な設計に応じて、ベローズ82、84に内部的または外部的に圧力を付与することができる。図示の実施形態において、ベローズ82、84は、外部的に加圧され、すなわち、減衰流体がベローズ82、84の外側表面に作用する。分離装置50が完全に組み立てられたとき、ベローズ82、84は、ダンパピストン80の環状リム部88、ベース端部キャップ98、および分離装置ハウジング52の内側表面と協働し、分離装置ハウジング52内に2つの密封シールされた液圧チャンバ102、104を画定する。チャンバ102、104は、中間環100により流体連結され、これは、ダンパピストン80の環状リム部88により内側周縁に沿って結合され、また、分離装置ハウジング52の環状側壁により外側周縁に沿って結合される。ダンパピストン80が図5、6に示される通常位置または設計位置にあるとき、チャンバ102、104は、ダンパピストン80を通って、分離装置50の長手方向軸に実質的に直交する方向に延びる平面の対向する側部に位置する。分離装置50の動作の前に、液圧チャンバ102、104は、シリコーンベース液体のような減衰流体(図示せず)で満たされる。充填ポート105は、分離装置ハウジング52を通るように設けることができ、分離装置50の組み立て後に液圧チャンバ102、104を選択された減衰流体で満たすことができるようにする。所望であれば、Oリングまたは他のシール(図示せず)を、ベース端部キャップ98とハウジング52の内壁との間に配置することができ、減衰流体が液圧チャンバ102、104から漏れる可能性を減らす。
【0021】
[0024]図6を参照すると、ダンパピストン80の環状リム部88は、対向するベローズ82、84を越えて半径方向に突き出し、液圧チャンバ102、104の間の領域に入る。環状リム部88の半径方向(側方)および軸方向の両方の表面領域は、チャンバ102、チャンバ104、中間環100内で減衰流体にさらされる。本稿で用いられる、「有効半径方向表面積」および「有効側方表面積」との語は、ピストン80が側方(すなわち、図5、6の軸107または108に沿う方向)に移動するときに、減衰流体に直接的に接触して作用するダンパピストン80の表面積のことを言及するために用いられている。逆に、「有効軸方向表面積」との語は、ピストン80が軸方向(すなわち図5、6の軸106に沿う方向)に移動するときに減衰流体に直接的に接触して作用するダンパピストン80の表面積のことを言及するために用いられている。図示の例示的な実施形態において、ダンパピストン80の有効半径方向(側方)表面積は、環状リム部88の円周表面積と同等であり、これは、環状リム部88の軸方向高さを掛け算したダンパピストン80の外側直径の積である。ピストン80の有効軸方向表面積は、チャンバ102、104内の減衰流体にさらされるリム部88の対向する半径方向表面の面積と同等であり、ベローズ82、84の外側直径と外側環状リム部88の外側直径との差により決定される。
【0022】
[0025]好ましい実施形態において、ピストン80の有効半径(側方)表面積は、ピストン80の有効軸方向表面積と実質的に同等であり、「実質的に同等」との語は、約10%以下の差であることを意味する。さらに、ベローズ82、84は、それぞれ、実質的に同等の半径方向(側方)および軸方向の強度を備えるように寸法決めまたは他の設計がなされる。このようにして、ダンパピストン80の任意の軸106−108に沿う運動は、実質的に同等の減衰流体の容積を変位させることになる。液圧チャンバ102、104内の圧力の蓄積は、同様に実質的に同等になり、ベローズ82、84の実質的に均一な変位または膨張が生じることになる。結果として、分離装置50は、ダンパピストン80、接続ロッド60、およびロッド60に連結されるペイロードの移動する特定の方向に独立して実質的に線形の減衰プロファイルを提供することになる。さらに、分離装置50の減衰プロファイルは、分離装置50の動作環境における付加、動的環境、および変位の変化にわたって実質的に一定のままとなろう。有利には、分離装置50の軸方向および半径方向における減衰特性は、所望の用途に応じて独立に調整することができ、たとえば、流体の粘性を変更する、ベローズ82、84に対するダンパピストン80の外側直径の差を変更する等による。さらに、ベローズの剛性は減衰に独立であり、また、分離装置50の所望の性能特性に応じて独立に調整することができる。
【0023】
[0026]分離装置50は、軸方向および半径方向の両方において実質的に線形の予測可能な減衰特性を提供するが、分離装置50の軸方向における減衰プロファイルは、典型的には、流体機構における差により、側方における分離装置50の減衰プロファイルに対して異なることになる。ダンパピストン80が軸方向に移動するとき、減衰は主に、減衰流体が一方の液圧チャンバから中間環100を通って他方の液圧チャンバへ流れるときに粘性損失により提供される。比較として、ダンパピストン80が側方に移動するとき、減衰は、主に、スクィーズフィルム効果により提供され、外側リム部88がハウジング52の内側側壁へ向かって移動するときに、ピストン80の側方運動のために、減衰流体がハウジング52に対して移動する。
【0024】
[0027]宇宙船の発射の間、ダンパピストンに例外的に高負荷が伝達されることがあり、これはピストン80に過度に大きなストロークを与え、液圧チャンバ102、104内に望ましくない高い圧力の蓄積を与え、また、分離装置50からの液圧流体の漏れの可能性を生じさせ得る。したがって、宇宙船の発射時に分離装置50に高負荷条件が与えられるときに、ピストンの過度な移動を防止することが望ましい。ピストンの過度な移動を防止する1つの方法は、発射ロックすなわち、宇宙船本体と分離装置50により支持されるペイロードとの間に位置決めされる剛体構造の使用であり、これは宇宙船の発射の時にダンパピストン80のストロークを制限し、発射後に取り外されて分離装置50の動作を可能にする。代替的に、分離装置50は、二次的に、高負荷減衰モードで動作するように設計することができ、力の伝達経路は、以下でより詳細に説明するように、ベローズ82、84から効率的にそらされ、高負荷条件において少なくとも1つの相対的に剛性な分離部材を通して再方向決めされる。
【0025】
[0028]図6に示される例示的な実施形態において、分離装置50はさらに、二次的に、高負荷減衰システム112を含み、これは、高剛性緩衝部材120を含む。この例において、緩衝部材120は、相対的に剛性の内側挿入部またはレートプレートを備える環状ゴムピースの形態を想定しており、これは分離装置ハウジング52のベース部分56に対して固定される。しかし、代替実施形態において、高剛性要素120の具体的な形態および配置は変更でき、たとえば、いくつかの実施形態において、緩衝部材120は、分離装置52内に取り付けられ、ベローズ82、84内に入れ子にすることができる。軸方向延長部114は、ダンパピストン80の中心部分86に固定され(たとえば一体的に形成される)、ピストン80から軸方向に延び、ベローズ84を通り、また分離装置ハウジング52のベース部分56に設けられる開口部を通って延びる。第1および第2の衝突停止カラー116、118が延長部114の終端部の周りに設けられる。ダンパピストン80の軸方向変位が、高負荷条件において十分に大きい場合、衝突停止カラー116または118は、緩衝部材120に係合し、負荷経路は要素120を通して逸らされ、ベローズ82、84の望ましくない大きな変位を防止し、液圧チャンバ102、104内に許容できるレベルの圧力を維持する。同様に、ダンパピストン80が、横方向に十分に変位する場合、衝突停止カラー116の外側円周表面が、緩衝部材120の内側円周領域または傾斜側壁122に係合し、負荷経路は要素120を通してそらされる。したがって、図示の例において、分離装置50は、2段階またはデュアルモード装置として機能し、これは、低負荷または中程度の負荷条件において第1のモードまたは軟減衰モードで動作し、また、高負荷条件において第2のモードまたは剛性減衰モードで動作する。この例にもかかわらず、二次的な減衰システムは必要というわけではなく、分離装置50は、代替実施形態において、単一の減衰モードで動作するようにすることができる。
【0026】
[0029] 図5、6に示されるように、3パラメータ・複数軸分離装置50は、単なる例示として示されており、分離装置の具体的な構成、設計、および組み立ては、別の実施形態では当然に異なるであろう。しかし、図5、6に示される例示的な複数軸分離装置のアセンブリは、比較的に真っすぐである。組立ての間、ダンパピストン80、接続ロッド60、対向するベローズ82、84は、開いたベース端部56を通して分離装置ハウジング52のキャビティ内に最初に取り付けられ、ダンパピストン80をハウジング52内に吊り下げる。ベース端部キャップ98は、ベース端部56上に位置決めすることができ、液圧チャンバ102、104を囲う。ベース端部キャップ98は、スペーサプレート72および取付ブラケット74(図5)の取り付けによりベースフランジ68に固定される。ベース端部56の取り付けの前または後に、ベース端部キャップ98の内側環状リップ96は、たとえば溶接またはボンディングによりベローズ84にシールされて取り付けられる。最後に、分離装置50の宇宙船への取り付け前に、液圧チャンバ102、104を、充填ポート105を通して選択された減衰流体で満たすことができる。
【0027】
[0030]上記のように、3つの実質的に直交する軸に沿う減衰を提供する3パラメータ分離装置の例示的な実施形態が提供された。有利には、上述の3パラメータ・複数軸分離装置は、温度、動的環境、および/または負荷条件の変動において比較的に広い範囲にわたって、実施的に線形の減衰プロファイルを提供する。また、上記は、6自由度における高忠実度の分離を提供する、複数の3パラメータ・複数軸分離装置を含む分離システムの実施形態を提供する。複数軸に沿って減衰を提供する上述の分離装置の能力により、3つから4つの別個の分離装置を用いて6DOF分離マウントが生成され、軸方向分離装置を採用する従来の設計の6DOF分離脂システムと比較して、部品数、コスト、複雑さ、重量、エンベロープを低減させる。
【0028】
[0031]上述の例示的な実施形態は、外部加圧されるベローズを含むが、これは必ずしも必要というわけではない。さらなる実施形態において、ベローズは、内部的に圧力を付与することができ、また、ダンパピストンを通して1つ以上の流れオリフィスを設けることができ、ダンパピストンが変位するときに、流体が液圧チャンバの間を流れることができるようにする。ベローズの内部加圧により、分離装置の全体の寸法をよりコンパクトにすることができる。しかし、内部加圧ベローズに対して、外部加圧ベローズは、バックリング(buckling)に対してより抵抗力がある傾向にあり、高負荷条件において改善された性能を提供する分離装置の実施形態を可能にする。
【0029】
[0032]上記のような詳細な説明において少なくとも1つの例示的な実施形態が示されたが、多数の変形例が存在することを理解されたい。また、1つまたは複数の例示的な実施形態は単なる例であり、いかなる意味でも本発明の範囲、応用性、および構成を制限することを意図するものではないことを理解されたい。上述の詳細な説明は、当業者に本発明の例示的な実施形態を実施するための便宜的なロードマップを与えるものである。添付の特許請求の範囲に記載される本発明の範囲から逸脱することなく、上述の例示的な実施形態の機能および構成において、様々な変更が可能であることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マス(12)とベース(15)との間に配置される3パラメータ複数軸分離装置(50)であって、前記3パラメータ複数軸分離装置(50)は、
前記ベース(15)に取付可能な分離装置ハウジング(52)と、
前記分離装置ハウジング(52)内にシールされて配置される対向するベローズ(82、84)と、
前記対向するベローズ(82、84)との間で前記分離装置ハウジング(52)内に移動可能に吊り下げられるダンパピストン(80)と、を有し、前記ダンパピストン(80)は、前記マス(12)に連結されるように構成され、前記対向するベローズ(82、84)は、3つの実質的に直交する軸(106、107、108)に沿って前記ダンパピストン(80)の運動を逸らし、前記マス(12)と前記ベース(15)との間の振動の伝達を減少させる、3パラメータ複数軸分離装置。
【請求項2】
請求項1に記載の3パラメータ複数軸分離装置(50)であって、さらに、前記分離装置ハウジング(52)内に対向する液圧チャンバ(102、104)を有し、前記液圧チャンバ(102、104)は、少なくとも部分的に、前記対向するベローズ(82、84)および前記ダンパピストン(80)により画定され、
前記ダンパピストン(80)の有効側方表面積は、前記ダンパピストン(80)の有効軸方向表面積に実質的に同等である、3パラメータ複数軸分離装置。
【請求項3】
請求項1に記載の3パラメータ複数軸分離装置(50)であって、さらに、
前記ダンパピストン(80)に固定的に連結される第1端部と、前記マス(12)に連結されるように構成される第2端部とを備える接続ロッド(60)を有し、前記接続ロッド(60)は、前記対向するベローズ(82、84)の一方を通り、また、前記分離装置ハウジング(52)に設けられる中心開口(58)を通って延び、
前記3パラメータ複数軸分離装置(50)はさらに、前記接続ロッド(60)と前記分離装置ハウジングの前記中心開口(58)を画定する部分との間に設けられる環状クリアランスを有し、前記環状クリアランスは、前記接続ロッド(60)が前記ダンパピストン(80)に関連して側方に移動するのを可能にする、3パラメータ複数軸分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−229801(P2012−229801A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−94738(P2012−94738)
【出願日】平成24年4月18日(2012.4.18)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】