説明

7−(2,5−ジヒドロ−4−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−2,5−ジオキソ−1H−ピロロ−3−イル)−9−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−(1−ピペリジニル−カルボニル)ピロロ[3,2,1−jk][1,4]ベンゾジアゼピンによる癌化学療法の相乗作用

患者の胃癌、卵巣癌、非小細胞肺癌、又は大腸癌を治療する方法、並びに該方法のために有用な7-(2,5-ジヒドロ-4-イミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル-2,5-ジオキソ-1H-ピロロ-3-イル)-9-フルオロ-1,2,3,4-テトラヒドロ-2-(1-ピペリジニル-カルボニル)ピロロ[3,2,1-jk][1,4]ベンゾジアゼピンを含む医薬組成物と該医薬組成物を調製する方法が記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
いかなる癌化学療法の有効性も、特定の治療に対する特定の癌の感受性によって制限される。癌が特定の化学療法に対して敏感であっても、化学療法に付随する急性毒性及び慢性毒性は、投与量を削減したり、治療を全く中断したりする結果を招くことがある。無反応の癌を治療する、又は投与量を制限する毒性を克服するための一つの方法は、異なる作用機構を介して作用する医薬品を併用することである。いくつかの効果的な化学療法の併用が発見されているが、特定の癌について有効性を大きく改善するか、又は患者の耐容性を改良する医薬品の併用方法を見出すことは、基本的には経験に頼っている。
【背景技術】
【0002】
グリコーゲン合成酵素キナーゼ3β(GSK3β)は、多様な細胞機能を調節することで知られる様々な信号伝達ネットワークに関与するセリン/トレオニンキナーゼである。癌治療におけるGSK3βの役割は不明である。例えば、ラパマイシンは、GSK3βの活性化による乳癌細胞においては、パクリタキセル、ビノレルビン、及びカルボプラチンの効果を劇的に強化するが、ドキソルビシン又はゲムシタビンの効果は強化しないことが報告されている。この相乗効果は、周知のGSK3β阻害剤である塩化リチウム、SB216763、及びSB415286によって阻害される(非特許文献1)。対照的に、GSK3βの阻害剤である塩化リチウム及びSB216763は、p53陽性及びp53陰性の前立腺癌細胞の両方において、毒性水準下の濃度で、腫瘍ネクローシス因子関連のアポトーシス誘導リガンド(TRAIL)の抗腫瘍有効性を劇的に強化することが示されている(非特許文献2)。同様に、塩化リチウムは、ヒト横紋筋肉腫細胞及びマウス線維肉腫細胞において腫瘍細胞を腫瘍ネクローシス因子(TNF)に対して敏感化することが示されたが、GSK3β阻害剤であるRo31−8220、バルプロ酸及びインジルビン−3’−モノキシムでは同効果の強化はなかった(非特許文献3)。最終的には、GSK3β阻害剤である塩化リチウム及びLY2119301は、p53陽性の大腸癌細胞においてアドリアマイシン、エトポシド、及び5−フルオロウラシルの効果を強化することが報告されているが、SB216763もSB415286も試験されたいずれの医薬品の効果も強化せず、全ての試験されたGSK3β阻害剤は、p53陰性の大腸癌セルラインにおいて所望の相乗効果を示さなかった(非特許文献4)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】1Dongら、Cancer Research、第65巻、第5号、1961〜1972ページ、2005年
【非特許文献2】Liaoら、Molecular Cancer Therapeutics、第2巻、1215−1222ページ、2003年
【非特許文献3】Schoetteら、The Journal of Biological Chemistry、第276号、第28巻、25939−25945ページ、2001年
【非特許文献4】Tanら、Cancer Research、第65巻、第19号、9012〜9020ページ、2005年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特定の癌を有する癌患者の治療において有効性の改善を示し、化学療法への患者の耐容性を改善する医薬品の特定の併用方法が求められている。GSK3β阻害剤である7−(2,5−ジヒドロ−4−イミダゾ[1,2−a]−ピリジン−3−イル−2,5−ジオキソ−1H−ピロール−3−イル)−9−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−(1−ピペリジニル−カルボニル)ピロロ[3,2,1−jk][1,4]ベンゾジアゼピンは、特定の癌において、ある化学療法剤の効果を強化する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、卵巣癌、非小細胞肺癌、又は大腸癌を治療する方法であって、当該治療を必要とする癌患者に対して、7−(2,5−ジヒドロ−4−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−2,5−ジオキソ−1H−ピロール−3−イル)−9−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−(1−ピペリジニルカルボニル)−ピロロ[3,2,1−jk][1,4]ベンゾジアゼピン又はその薬理学的に許容できる塩あるいは溶媒和物の有効量を併用して、CPT−11、ペメトレキセド、ゲムシタビン、エトポシド、ドキソルビシン及びプラチナ化学療法剤からなる群から選ばれる化学療法剤の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0006】
本発明は、さらに、治療を必要とする癌患者に、7−(2,5−ジヒドロ−4−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−2,5−ジオキソ−1H−ピロール−3−イル)−9−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−(1−ピペリジニルカルボニル)−ピロロ[3,2,1−jk][1,4]ベンゾジアゼピン又はその薬理学的に許容できる塩あるいは溶媒和物の有効量を併用して、5−フルオロウラシル及びプラチナ化学療法剤からなる群から選ばれる化学療法剤の有効量を投与することを含む、胃癌を治療する方法を提供する。
【0007】
本発明は、卵巣癌、非小細胞肺癌、又は大腸癌の治療のための、CPT−11、ペメトレキセド、ゲムシタビン、エトポシド、ドキソルビシン及びプラチナ化学療法剤からなる群から選ばれる化学療法剤と併用して使用する薬剤調製のための、7−(2,5−ジヒドロ−4−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−2,5−ジオキソ−1H−ピロール−3−イル)−9−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−(1−ピペリジニルカルボニル)−ピロロ[3,2,1−jk][1,4]−ベンゾジアゼピン又はその薬理学的に許容できる塩あるいは溶媒和物の使用も提供する。
【0008】
本発明は、胃癌の治療のための、5−フルオロウラシル及びプラチナ化学療法剤からなる群から選ばれる化学療法剤と併用して使用する薬剤調製のための、7−(2,5−ジヒドロ−4−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−2,5−ジオキソ−1H−ピロール−3−イル)−9−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−(1−ピペリジニルカルボニル)−ピロロ[3,2,1−jk][1,4]−ベンゾジアゼピン又はその薬理学的に許容できる塩あるいは溶媒和物の使用も提供する。
【0009】
本発明は、さらに、
a)7−(2,5−ジヒドロ−4−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−2,5−ジオキソ−1H−ピロール−3−イル)−9−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−(1−ピペリジニル−カルボニル)ピロロ[3,2,1−jk][1,4]ベンゾジアゼピン又はその薬理学的に許容できる塩あるいは溶媒和物を、少なくとも1モル当量のSBE7−β−CD及び適宜薬理学的に許容できるバッファを含有する水溶液にpH5.5未満で添加することと、
b)薬理学的に許容できる酸又は塩基を用いて生成溶液のpHを2.5から3.5の間に調節することと、
c)該生成溶液を適宜凍結乾燥することと、
を含むステップによって得られる医薬組成物を提供する。
【0010】
本発明は、1モル当量の7−(2,5−ジヒドロ−4−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−2,5−ジオキソ−1H−ピロール−3−イル)−9−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−(1−ピペリジニルカルボニル)−ピロロ[3,2,1−jk][1,4]ベンゾジアゼピン又はその薬理学的に許容できる塩あるいは溶媒和物、少なくとも1モル当量のSBE7−β−CD、及び適宜薬理学的に許容できるバッファを含む、注射又は点滴によって患者へ投与するのに適した溶液に水で再構成可能な医薬組成物も提供する。
【0011】
本発明のさらなる態様は、1モル当量の7−(2,5−ジヒドロ−4−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−2,5−ジオキソ−1H−ピロール−3−イル)−9−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−(1−ピペリジニルカルボニル)−ピロロ[3,2,1−jk][1,4]ベンゾ−ジアゼピン及び少なくとも1モル当量のSBE7−β−CDを含む医薬組成物である。
【0012】
加えて、本発明は、注射又は点滴によって患者へ投与するのに適した溶液に水で再構成可能な7−2,5−ジヒドロ−4−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−2,5−ジオキソ−1H−ピロール−3−イル)−9−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−(1−ピペリジニル−カルボニル)ピロロ−[3,2,1−jk][1,4]ベンゾジアゼピンを含む医薬組成物を調整するための方法であって、
a)7−(2,5−ジヒドロ−4−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−2,5−ジオキソ−1H−ピロール−3−イル)−9−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−(1−ピペリジニル−カルボニル)ピロロ[3,2,1−jk][1,4]ベンゾジアゼピン又はその薬理学的に許容できる塩あるいは溶媒和物を、少なくとも1モル当量のSBE7−β−CD及び適宜薬理学的に許容できるバッファを含有する水溶液にpH5.5未満で添加することと、
b)薬理学的に許容できる酸又は塩基を用いて生成溶液のpHを2.5から3.5の間に調節することと、
c)該生成溶液を凍結乾燥することと、
を含む方法を提供する。
【0013】
本発明は、治療を必要とする患者の卵巣癌、非小細胞肺癌、又は大腸癌の治療におけるCPT−11、ペメトレキセド、ゲムシタビン、エトポシド、ドキソルビシン、及びプラチナ化学療法剤の使用の改善の方法であって、該改善は、7−(2,5−ジヒドロ−4−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−2,5−ジオキソ−1H−ピロール−3−イル)−9−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−(1−ピペリジニル−カルボニル)−ピロロ[3,2,1−jk][1,4]ベンゾジアゼピン又はその薬理学的に許容できる塩あるいは溶媒和物の同時投与を含む、方法も提供する。
【0014】
本発明は、治療を必要とする癌患者の胃癌の治療において、5−フルオロウラシル又はプラチナ化学療法剤を用いる改善の方法であって、該改善は、7−(2,5−ジヒドロ−4−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−2,5−ジオキソ−1H−ピロール−3−イル)−9−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−(1−ピペリジニル−カルボニル)−ピロロ[3,2,1−jk][1,4]ベンゾジアゼピン又はその薬理学的に許容できる塩あるいは溶媒和物の同時投与を含む、方法も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
化合物CPT−11は、イリノテカンとしても知られ、カンプト(CAMPTOSAR(登録商標))という商標名で販売されている。CPT−11は、大腸及び結腸の進行した癌を有する患者の治療に用いられる化学療法の薬剤である。これは、ボーラス又は点滴によって、6週間の治療周期に120〜180mg/mの投与量で周期的に投与される。CPT−11は、通常、5−フルオロウラシル(5−FU)及びロイコボリン(LV)と併用して投与される。
【0016】
化合物ペメトレキセドは、アリムタ(ALIMTA(登録商標))という商標名で販売されている。ペメトレキセドは、以前の化学療法後に局所的に進行した又は転移性の非小細胞肺癌を有する患者の治療に用いられる化学療法の薬剤である。シスプラチンを併用したペメトレキセドは、疾患が切除不能であるか、又は根治目的の手術の候補者ではない、悪性胸膜中皮腫を有する患者の治療に適用される。通常、500mg/mのペメトレキセドが、葉酸、ビタミン及びB12及びデキサメタゾンによる前処置の後に21日ごとに10分かけて点滴により患者に投与される。
【0017】
“プラチナ化学療法剤”という用語は、プラチナを含有する癌化学療法剤を意味する。本発明の方法によって想定される特定のプラチナ化学療法剤は、シスプラチン、カルボプラチン、及びオキサリプラチンを含む。シスプラチン又はカルボプラチンの使用が、好ましい。
【0018】
化合物シスプラチンは、プラチノール(PLATINOL(登録商標))−AQという商標名で販売されている。シスプラチンは、すでに適切な外科的及び/又は放射線化学療法の処置を受けた転移性卵巣腫瘍を有する患者の治療のために投与される。単独の医薬品として、シスプラチンは、通常、4週間に1回、1周期に100mg/mを静注(IV)投与される。シスプラチンは、また、シトキサン(CYTOXAN(登録商標))と併用して投与されてもよい。
【0019】
化合物カルボプラチンは、パラプラチン(PARAPLATIN(登録商標))という商標名で販売されている。カルボプラチンは、卵巣癌を有する患者に投与される。単独の医薬品として、カルボプラチンは、通常、4週間に1回、1周期に360mg/mを静注投与される。カルボプラチンは、また、シクロホスホアミドと共に投与されてもよい。
【0020】
化合物オキサリプラチンは、エロキサチン(ELOXATIN(登録商標))という商標名で販売されている。オキサリプラチンは、大腸癌を有する患者に投与される。これは、通常、5−FU及びLVと併用して、2週間に1回、1周期に85mg/mを静注(IV)投与される。
【0021】
ドキソルビシン化合物は、アドリアマイシン(ADRIAMYCIN(登録商標))及びルベックス(RUBEX(登録商標))という商標名で販売されている。ドキソルビシンは、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄芽球性白血病、ウィルムス腫瘍、神経芽細胞腫、軟部組織及び骨の肉腫、乳癌、卵巣癌、移行細胞膀胱癌、甲状腺癌、胃癌、ホジキン病、悪性リンパ腫、及び気管支癌等の散在性新生物の症状における退行生成に成功してきた。通常は、21日間隔で60〜75mg/mの投与量で静注(IV)投与される。
【0022】
化合物エトポシドは、エトポホス(ETOPOPHOS(登録商標))、トポサール(TOPOSAR(登録商標))及びベプシド(VEPESID(登録商標))という商標名で販売されている。エトポシドは、精巣又は肺の癌を有する患者に投与される。これは、通常、5から100mg/m.の投与量で注射によって投与される。
【0023】
化合物5−フルオロウラシル(5−FU)は、アドルシル(ADRUCIL(登録商標))という商標名で販売されている。これは、結腸、直腸、胸部、胃及び膵臓の癌を有する患者に投与される。5−FUは、通常、4日間連続して1日1回、12mg/kgの投与量で静注投与される。
【0024】
ゲムシタビンは、ジェムザール(GEMZAR(登録商標))という商標名で販売されている。これは、最も一般的には、非小細胞肺癌、膵臓癌、膀胱癌、及び乳癌の治療に用いられる。これは、通常、4週間中の連続3週間の間に、毎週30分以上かけて1000mg/mの投与量で静注投与される。
【0025】
熟練者であれば、患者の治療に必要な上述のいずれの医薬品の正確な投与量及び治療サイクル数も、その疾病の段階及び重症度並びに個々の患者の特定の必要性及び反応を考慮して、医師により決定されることを理解している。
【0026】
化合物7−(2,5−ジヒドロ−4−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−2,5−ジオキソ−1H−ピロール−3−イル)−9−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−(1−ピペリジニル−カルボニル)−ピロロ[3,2,1−jk][1,4]ベンゾジアゼピンは、WO03/076442においてGSK−3βの阻害剤であることが教示され、これは、3−(9−フルオロ−6−(ピペリジン−1−イル)カルボニル)−6,7−ジヒドロ−6H−[1,4]ジアゼピノ−[6,7,1−hi]インドール−1−イル)−4−(イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−2,5−ジオキソピロールとして参照される(実施例365、113ページ)。上述の二つの命名規則は、同義であると解釈され、それぞれ次の構造を特定すると解釈される。
【化1】

【0027】
化合物Iは、塩基であり、したがって任意の数の無機酸及び有機酸と反応でき、薬理学的に許容できる酸付加塩を生成できる。好適な薬理学的に許容できる塩は、HCl、HBr、硫酸、又はメタンスルホン酸を用いて生成されるものである。
【0028】
化合物Iは、例えば、水、メタノール、及びエタノールと溶媒和を形成する。好適な溶媒和物は、エタノールで生成されるものである。
【0029】
化合物Iは、それ自体では有用な抗腫瘍活性を欠いているが、CPT−11、ペメトレキセド、ゲムシタビン、エトポシド、ドキソルビシン、又はプラチナ化学療法剤と併用して投与されるときに、CPT−11、ペメトレキセド、ゲムシタビン、エトポシド、ドキソルビシン、又はプラチナ化学療法剤を単独で用いる治療と比較して、卵巣癌、非小細胞肺癌、又は大腸癌の治療における顕著な治療上の有用性が実現される。この併用の一つの利点は、CPT−11、ペメトレキセド、ゲムシタビン、エトポシド、ドキソルビシン及びプラチナ化学療法剤の治療効果が、化合物Iとの同時投与によって強化されることである。すなわち、CPT−11、ペメトレキセド、ゲムシタビン、エトポシド、ドキソルビシン、又はプラチナ化学療法剤を通常投与よりも低い投与量で、患者に同様の治療効果を提供することになる。さらに、これらの医薬品が化合物Iと同時投与されるときに、通常投与量において、CPT−11、ペメトレキセド、ゲムシタビン、エトポシド、ドキソルビシン、又はプラチナ化学療法剤の治療効果増大が実現することになる。この治療方法は、さらに、CPT−11、ペメトレキセド、ゲムシタビン、エトポシド、ドキソルビシン、又はプラチナ化学療法剤と同一の治療スケジュールにおいて化合物Iを投与でき、患者及び医師に利便を提供する効果がある。
【0030】
本発明の併用療法は、卵巣癌、非小細胞肺癌、又は大腸癌を罹病している患者を治療する改良された方法である。患者は、哺乳動物であり、好適な哺乳動物はヒトである。
【0031】
化合物I又はその薬理学的に許容できる塩あるいは溶媒和物及び化学療法剤の上記記載の併用方法は、全て有用であるが、ある特定の併用方法が好適である。一つの好適な併用は、7−(2,5−ジヒドロ−4−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−2,5−ジオキソ−1H−ピロール−3−イル)−9−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−(1−ピペリジニル−カルボニル)−ピロロ[3,2,1−jk][1,4]ベンゾジアゼピン又はその薬理学的に許容できる塩あるいは溶媒和物を、プラチナ化学療法剤と同時投与することである。別の実施形態は、7−(2,5−ジヒドロ−4−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−2,5−ジオキソ−1H−ピロール−3−イル)−9−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−(1−ピペリジニル−カルボニル)−ピロロ[3,2,1−jk][1,4]ベンゾジアゼピン又はその薬理学的に許容できる塩あるいは溶媒和物を、シスプラチン又はカルボプラチンのいずれかと同時投与することである。本発明のさらなる実施形態は、7−(2,5−ジヒドロ−4−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−2,5−ジオキソ−1H−ピロール−3−イル)−9−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−(1−ピペリジニル−カルボニル)−ピロロ[3,2,1−jk][1,4]ベンゾジアゼピン又はその薬理学的に許容できる塩あるいは溶媒和物を、ペメトレキセド及びプラチナ化学療法剤と共に投与することである。7−(2,5−ジヒドロ−4−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−2,5−ジオキソ−1H−ピロール−3−イル)−9−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−(1−ピペリジニル−カルボニル)−ピロロ[3,2,1−jk][1,4]ベンゾジアゼピン又はその薬理学的に許容できる塩あるいは溶媒和物は、ペメトレキセド及びカルボプラチンと共に投与されることが好ましい。
【0032】
「化学療法剤の有効量」という用語は、特定の化学療法剤が化合物I又はその薬理学的に許容できる塩あるいは溶媒和物と併用して投与されるときに、標的癌細胞を破壊するか、又は患者における癌の進行を低下又は停止するために必要な該化学療法剤の投与量を意味する。
【0033】
「7−(2,5−ジヒドロ−4−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−2,5−ジオキソ−1H−ピロール−3−イル)−9−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−(1−ピペリジニルカルボニル)−ピロロ[3,2,1−jk][1,4]ベンゾジアゼピン又はその薬理学的に許容できる塩あるいは溶媒和物の有効量」という用語は、標的癌細胞を破壊するか、又は患者における癌の進行を低下又は停止する目的で、特定の化学療法剤の特定の投与量の効果を強化するのに必要な、化合物I又はその薬理学的に許容できる塩あるいは溶媒和物の投与量を意味する。化合物I又はその薬理学的に許容できる塩あるいは溶媒和物の予想される投与量は、患者あたり1日5から600mgの範囲にある。好適な投与量は、患者あたり1日50から400mgの範囲にある。最も好適な投与量は、患者あたり1日100から400mgの範囲にある。患者を治療するために要する正確な投与量は、疾病の段階及び重症度並びに個人の患者の必要性及び反応を考慮して、医師によって決定される。
【0034】
「特定の化学療法剤の特定の投与量の効果を強化する」という用語は、化合物I又はその薬理学的に許容できる塩あるいは溶媒和物と共に同時投与されるときに、通常投与されるよりも低い投与量が有効な投与量となること、又は化学療法剤の治療効果の増大が、通常投与量で患者により実現されることを意味する。
【0035】
「同時投与される」と「同時投与」、並びに「併用して」と「併用して投与される」という本願明細書に用いる用語は、化合物I又はその薬理学的に許容できる塩あるいは溶媒和物が、CPT−11、ペメトレキセド、又はプラチナ化学療法剤と同一の治療サイクル中に患者に与えられることを意味する。すなわち、化合物I又はその薬理学的に許容できる塩あるいは溶媒和物は、腫瘍の種類、疾病の段階、使用される特定の化学療法剤、及び患者の症状及び感受性を考慮し、医師の判断によって、CPT−11、ペメトレキセド、又はプラチナ化学療法剤の投与前、投与中、又は投与後に投与されてもよい。
【0036】
以下の、インビトロ及びインビボ研究は、これらの併用の効果を説明するものである。
【0037】
(インビトロ有効性の例)
アポトーシスすなわちプログラムされた細胞死は、一連の生化学反応により特徴付けられ、その一つはカスパーゼの誘導である。活性化カスパーゼは、細胞の恒常性及び修復に関与する重要酵素を無効化する、連鎖的な開裂反応に参加するプロテアーゼである。カスパーゼ3及び7は、アポトーシスにおいて重要なエフェクタの役割を演じ、蛍光生化学分析によって検出及び測定が可能である。細胞中カスパーゼ−3/7活性の増加は、アポトーシス活性に直接的に相関する(D.W.Nicholsonら、Nature、第376巻、37−43ページ、1995年)。プロメガ(Promega)社Apo−ONE(登録商標)ホモジニアスカスパーゼ−3/7アッセイキットが用いられた(カタログ番号G7791)。このアッセイバッファは、30mM HEPES(N−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン−N’−(2−エタンスルホン酸)pH7.4、150mM NaCl、50mM KCl、10mM MgCl、0.4mM EGTA(エチレングリコール四酢酸)、0.5%ノニデット(Nonidet)P40(オクチルフェノールポリ(エチレングリコールエーテル))、0.1%CHAPS(3−[(3−コラミドプロピル)ジメト−イルアンモニオ]−1−プロパンスルホナート水和物及び10%スクロースを含有し、前蛍光性ローダミン110に結合する培養細胞、カスパーゼ3/7基質、Z−DEVD(Z−Asp(OMe)−Glu(OMe)−Val−Asp(OMe))を溶解/透過処理する。バッファ−基質混合物が試験試料に添加されると、カスパーゼ3/7活性による開裂及び後続のDEDVペプチド除去により、ローダミン110脱離基の蛍光増強が生じ、これは499nmの励起により検出される。蛍光生成物の量は、試料中カスパーゼ3/7の開裂活性の量に比例する。
【0038】
試験化合物のアポトーシス効果を測定するため、腫瘍細胞は、96ウェルのプレート内にプレートあたり1×10細胞をプレーティングし、5%COと共に37℃で終夜インキュベートする。腫瘍細胞は、所望濃度の試験化合物で3回処理し、未処理/ネガティブ対照ウェルを含める。アッセイプレートは、48時間、再度インキュベートする。インキュベート期間終了時に、アッセイバッファ混合物及び基質は、それぞれの試料ウェルに添加される。それぞれのウェルの蛍光は、励起波長485±20nm及び放出波長530±25nmで測定される。カスパーゼ活性の%増加は、無治療対照群に対して算出される。
【0039】
HCT−116及びcolo−205は、結腸直腸癌であり、A2780及びSKOV3は、卵巣癌であり、A549、Calu−6、及びNCI H−460は、非小細胞肺癌であり、AGS、KATO III、及びMKN 45は胃癌である。以下の表において、「化合物I」は、7−(2,5−ジヒドロ−4−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−2,5−ジオキソ−1H−ピロール−3−イル)−9−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−(1−ピペリジニル−カルボニル)−ピロロ[3,2,1−jk][1,4]ベンゾジアゼピンを指す。
【0040】
化学療法剤は、以下の濃度で試験した。
【表1】

【0041】
表1から12のデータは、特に記載のない限り、無治療対照群に対するカスパーゼ活性の%増加として表される。
【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
【表4】

【0045】
【表5】

【0046】
【表6】

【0047】
【表7】

【0048】
【表8】

【0049】
【表9】

【0050】
【表10】

【0051】
【表11】

【0052】
【表12】

【0053】
【表13】

【0054】
表1〜12の増加率データは、化学療法薬剤単独のアポトーシス効果に対する、化合物Iの同時投与による細胞における化学療法薬剤媒介アポトーシスの相乗作用を反映する。
【0055】
(インビボ有効性の例)
培養細胞は、ベンダーからの受入後に動物施設内で1週間順応させた、メスCD−1 nu/nu系統マウスの背側の側腹部に皮下移植される。マウスは、グループあたり7から8のマウス群にランダム化し、平均の腫瘍体積が約100mmに達したときに処理を開始した。化合物Iは静注投与され、化学療法剤は腹腔注射(IP)した。医薬品が併用して与えられるときには、化学療法剤は、化合物Iの60分前に投与した。腫瘍は、電子ノギスで各週2回測定し、成長曲線をプロットする。腫瘍成長遅延は、対照群と比較して、腫瘍の体積が1000mmに達するのに要する時間の中央値の増加である。動物は、体重における変動及び生存についても監視される。
【0056】
表13:A2780ヒト卵巣癌異種移植における化合物Iを併用したシスプラチン
5mg/kgシスプラチンは、単独で、及び5mg/kgの化合物I(静注)を併用して、腹腔注射にて投与した。5mg/kgの化合物I(静注)を、対照群として単独でも投与した。動物は、シスプラチン及び化合物Iを3連続サイクル受け、各サイクルは7日の間隔を設けた。
【0057】
【表14】

【0058】
表14:HCT−116ヒト結腸直腸癌異種移植における化合物Iを併用したシスプラチン
10mg/kgシスプラチンは、単独で、及び5mg/kgの化合物I(静注)を併用して、腹腔注射にて投与した。5mg/kgの化合物I(静注)を、対照群として単独でも投与した。動物は、シスプラチン及びLY2090314を3連続サイクル受け、各サイクルは7日の間隔を設けた。
【0059】
【表15】

【0060】
表15:Colo−205ヒト結腸直腸癌異種移植における化合物Iを併用したシスプラチン
5mg/kgシスプラチンは、単独で、及び5mg/kgの化合物I(静注)を併用して、腹腔注射にて投与した。5mg/kgの化合物I(静注)を、対照群として単独でも投与した。動物は、シスプラチン及び化合物Iを3連続サイクル受け、各サイクルは7日の間隔を設けた。
【0061】
【表16】

【0062】
表16:NCI−H460ヒト非小細胞肺癌異種移植における化合物Iを併用したシスプラチン
化合物Iは、単独で、及び50mg/kgカルボプラチン腹腔注射と共に、5mg/kgで静注投与した。投与は、14日ごとに3周期行った。化合物I及びカルボプラチンの両者を受ける治療群に対して、カルボプラチンは、化合物Iの60分前に投与した。
【0063】
【表17】

【0064】
表17:NCI−H460ヒト非小細胞肺癌異種移植における化合物Iを併用したカルボプラチン及びペメトレキセド
化合物Iは、単独で、10mg/kgカルボプラチン腹腔注射と共に、300mg/kgペメトレキセド腹腔注射と共に、及び10mg/kgカルボプラチン腹腔注射と300mg/kgペメトレキセド腹腔注射と共に、5mg/kgで静注投与した。投与は、14日ごとに3周期行った。化合物I及びカルボプラチンの両者を受ける治療群に対し、カルボプラチンは、化合物Iの60分前に投与した。化合物I及びペメトレキセドの両者を受ける治療群に対し、ペメトレキセドは、化合物Iの24時間前に投与した。化合物I、カルボプラチン及びペメトレキセドを受ける治療群に対し、ペメトレキセドは、化合物Iの24時間前に投与し、カルボプラチンは、化合物Iの60分前に投与した。
【0065】
【表18】

【0066】
表13から17のデータは、化合物Iによって化学療法薬剤が誘導する腫瘍増殖遅延が強化されることは、単独の化学療法薬剤によって起こされる腫瘍増殖遅延に対して、統計学的に有意であることを示す。
【0067】
(調製1)
2−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−アセトアミド4,4−ジメトキシ−ブト−2−エン酸エチルエステル
炭酸カリウム(16.5g、120mmol)を、ジメトキシアセトアルデヒド(60重量%水溶液)(15mL、100mmol)及びトリエチルホスホノアセタート(20mL、100mmol)の210mLテトラヒドロフラン及び30mL水溶液に加えた。混合物を室温で4時間かき混ぜた。反応混合物をジエチルエーテル(200mL)に注ぎ、飽和食塩水で洗った。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮して、所望の化合物を黄色オイルとして得た(15.8g、90%)。
H−NMR(300MHz、CDCl):δ6.77(dd、J=15.9、4.0Hz、1H)、6.13(dd、J=15.9、1.4Hz、1H)、4.95(dd、J=4.0、1.4Hz、1H)、4.22(q、J=7.1Hz、2H)、3.34(s、6H)、1.30(t、J=7.1Hz、3H)。
【0068】
イミダゾ[1,2−α]ピリジン−3−イル−酢酸エチルエステル
4,4−ジメトキシ−ブト−2−エン酸エチルエステル(43.5g、250mmol)及びp−トルエンスルホン酸(4.75g、25mmol)の混合物をアセトニトリル(240mL)及び水(15mL)で加熱し、2時間還流した。反応混合物を室温まで冷却し、2−アミノピリジン(18.8g、200mmol)を加えた。混合物を16時間加熱還流し、次いで室温まで冷却した。反応混合物を酢酸エチル(1200mL)で希釈し、飽和重曹水溶液(600mL×3)及び飽和食塩水(600mL×2)で順次洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮して、所望の化合物を褐色オイルとして得た(30g、73%)。
H−NMR(300MHz、CDCl):δ8.06(d、J=6.6Hz、1H)、7.63(d、J=9.1Hz、1H)、7.56(s、1H)、7.20(dd、J=8.9、6.8Hz、1H)、6.84(t、J=6.7Hz、1H)、4.17(q、J=7.3Hz、2H)、3.93(s、2H)、1.25(t、J=7.3Hz、3H)。
【0069】
アミド形成
イミダゾ[1,2−α]ピリジン−3−イル−酢酸エチルエステル(30g、147mmol)のNH/MeOH(7N溶液、250mL)溶液を密閉チューブ内で85℃に15時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却し、減圧下で濃縮した。残渣をジクロロメタン処理し、超音波処理し、残った沈殿をろ過して、所望の生成物を黄色固体として得た(8.9g、35%)。
H−NMR(300MHz、DMSO):δ8.30(d、J=6.9Hz、1H)、7.62(br s、1H)、7.54(d、J=9.0Hz、1H)、7.42(s、1H)、7.21(dd、J=7.7、6.7Hz、1H)、7.18(br s、1H)、6.91(t、J=6.8Hz、1H)、3.81(s、2H)。
【0070】
(調製2)
9−フルオロ−7−メトキシオキザリル−3,4−ジヒドロ−1H−[1,4]ジアゼピノ[6,7,1−hi]インドール−2−カルボン酸tert−ブチルエステル
2−ジブトキシムエチル−4−フルオロ−1−ニトロ−ベンゼン
5−フルオロ−2−ニトロ−ベンズアルデヒド(10g、59.17mmol)、ブタノール(20mL、219mmol)及びp−トルエンスルホン酸(600mg、3.15mmol)のトルエン(200mL)溶液を、ディーンスタークトラップを備えたフラスコ内で2時間加熱還流した。反応混合物を室温まで冷却し、酢酸エチル(400mL)で希釈し、飽和重曹水溶液(300mL×3)及び飽和食塩水(300mL×2)で順次洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮して、所望の化合物を黄色オイルとして得た(17g、96%)。
H−NMR(300MHz、CDCl):δ7.91(dd、J=8.9、4.9Hz、1H)、7.53(dd、J=9.3、2.9Hz、1H)、7.15−7.09(m、1H)、6.04(s、1H)、3.67−3.50(m、4H)、1.63−1.54(m、4H)、1.44−1.32(m、4H)、0.92(t、J=7.3Hz、6H)。
【0071】
5−フルオロ−1H−インドール−7−カルバルデヒド
ビニルマグネシウムブロミド(1Mテトラヒドロフラン溶液、85.2mL、85.2mmol)を、2−ジブトキシメチル−4−フルオロ−1−ニトロ−ベンゼン(8.5g、28.4mmol)のテトラヒドロフラン(250mL)溶液に、−78℃で滴下して加えた。反応混合物を−45℃から−50℃に30分温め、−78℃に冷却し、ビニルマグネシウムブロミド(1Mテトラヒドロフラン溶液、85.2mL、85.2mmol)を滴下して加えた。反応混合物を−45℃から−50℃に20分温め、次いで飽和塩化アンモニウム水溶液(300mL)を加えた。混合物を室温まで温め、ジエチルエーテル(200mL×2)で抽出した。合わせた有機相を、飽和食塩水(400mL×2)で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。残渣をテトラヒドロフラン(100mL)に溶解し、0.5N HCl(10mL)を加えて20分かき混ぜた。混合物をジエチルエーテル(200mL)で希釈し、飽和重曹水溶液(200mL×3)及び飽和食塩水(200mL×2)で順次洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィにかけ、5%から10%のヘキサン中酢酸エチルで溶出して、所望の化合物を淡黄色の固体として得た(2.6g、56%)。
H−NMR(300MHz、CDCl):δ10.07(s、1H)、10.05(br s、1H)、7.62(d、J=7.6Hz、1H)、7.42−7.39(m、2H)、6.60(d、J=5.4Hz、1H)。
【0072】
2−[(5−フルオロ−1H−インドール−7−イルメチル)−アミノ]−エタノール
2−アミノエタノール(1.93mL、32.0mmol)、続いて酢酸(2.01mL、48.0mmol)を、5−フルオロ−1H−インドール−7−カルバルデヒド(2.6g、16.0mmol)の1,2−ジクロロエタン(40mL)溶液に加えた。室温で15分かき混ぜた。ナトリウムトリアセトキシボロハイドライド(4.07g、19.2mmol)を少しずつ加えた。反応溶液を室温で3時間かき混ぜた。飽和重曹水溶液(100mL)をゆっくり加えた後、1N NaOHでpH〜9とした。酢酸エチル(100mL×3)で抽出した。有機相を飽和食塩水で洗い(200mL×2)、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮して、所望の化合物を黄色固体として得た(3.2g、96%)。
H−NMR(300MHz、CDCl):δ9.71(br s、1H)、7.24(d、J=2.7Hz、1H)、7.19(dd、J=9.5、2.3Hz、1H)、6.79(dd、J=9.8、2.2Hz、1H)、6.49(dd、J=3.1、2.2Hz、1H)、4.15(s、2H)、3.77(t、J=5.2Hz、2H)、2.84(t、J=5.2Hz、2H)。
【0073】
(5−フルオロ−1H−インドール−7−イルメチル)−(2−ヒドロキシ−エチル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル
ジ−tert−ブチルジカルボナート(3.63g、16.65mmol)のテトラヒドロフラン(40mL)溶液を、2−[(5−フルオロ−1H−インドール−7−イルメチル)−アミノ]−エタノール(3.15g、15.14mmol)のテトラヒドロフラン(60mL)溶液に0℃で滴下して加えた。反応溶液を室温で2時間かき混ぜた。酢酸エチル(200mL)を加え、飽和食塩水で洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮して、所望の化合物を黄色オイルとして得た(4.9g、>100%)。
H−NMR(300MHz、CDCl):δ10.17(br s、1H)、7.27−7.23(m、2H)、6.81(dd、J=9.4、2.4Hz、1H)、6.50(dd、J=2.9、2.2Hz、1H)、4.67(s、2H)、3.72(br s、2H)、3.33(t、J=5.3Hz、2H)、1.50(s、9H)。
【0074】
メタンスルホン酸2−[tert−ブトキシカルボニル−(5−フルオロ−1H−インドール−7−イルメチル)−アミノ]−エチルエステル
トリエチルアミン(4.64mL、33.3mmol)次いでメタンスルホン酸クロリド(1.29mL、16.65mmol)を、(5−フルオロ−1H−インドール−7−イルメチル)−(2−ヒドロキシエチル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル(4.9g、推定15.14mmol)のジクロロメタン(70mL)溶液に、0℃で加えた。反応混合物を、30分間、0℃でかき混ぜた。酢酸エチル(200mL)で希釈し、飽和重曹水溶液(200mL×3)及び飽和食塩水(200mL×2)で順次洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮して、所望の化合物を褐色オイルとして得た(5.9g、>100%)。
H−NMR(300MHz、CDCl):δ10.07(br s、1H)、7.28−7.2(m、2H)、6.83(dd、J=9.3、2.3Hz、1H)、6.50(dd、J=2.9、2.2Hz、1H)、4.67(s、2H)、4.17(t、J=5.5Hz、2H)、3.51(t、J=5.6Hz、2H)、2.79(s、3H)、1.51(s、9H)。
【0075】
9−フルオロ−3,4−ジヒドロ−1H−[1,4]ジアゼピノ[6,7,1−hi]インドール−2−カルボン酸tert−ブチルエステル
ナトリウムヒドリド(60%)(666mg、16.65mmol)を、一度に、メタンスルホン酸2−[tert−ブトキシカルボニル−(5−フルオロ−1H−インドール−7−イルメチル)−アミノ]−エチルエステル(5.9g、推定15.14mmol)のジメチルホルムアミド(40mL)溶液に、0℃で加えた。反応混合物を、0℃で10分間、室温で30分間、かき混ぜた。水(200mL)をゆっくりと加えた。ろ過して乾燥し、生成した黄色沈殿を所望の化合物とした(4.14g、94%)。
H−NMR(300MHz、CDCl):δ7.15(d、J=9.1Hz、1H)、7.07(s、1H)、6.78(dd、J=14.7、8.8Hz、1H)、6.49(d、J=3.1Hz、1H)、4.81(s、1H)、4.76(s、1H)、4.25−4.23(m、2H)、3.94−3.83(m、2H)、1.49(s、9H)。
【0076】
9−フルオロ−7−メトキシオキザリル−3,4−ジヒドロ−1H−[1,4]ジアゼピノ[6,7,1−hi]インドール−2−カルボン酸tert−ブチルエステル
塩化オキザリル(1.62mL、18.56mmol)を、9−フルオロ−3,4−ジヒドロ−1H−[1,4]ジアゼピノ[6,7,1−hi]インドール−2−カルボン酸tert−ブチルエステル(4.14g、14.28mmol)のメチルtert−ブチルエーテル(100mL)溶液に、−5℃で加えた。反応混合物を1.5時間かけて室温に温め、次いで−5℃に冷却した。メタノール(11.6mL、286mmol)を加え、−5℃で30分間かき混ぜた。飽和重曹水溶液(100mL)を加え、酢酸エチル(100mL×3)で抽出した。合わせた有機相を、飽和重曹水溶液(200mL×3)及び飽和食塩水(200mL×2)で順次洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、次いで減圧下で濃縮し、表題の化合物を黄色固体として得た(5.13g、93%)。
H−NMR(300MHz、CDCl):δ8.38(s、1H)、8.04(d、J=6.8Hz、1H)、6.89(dd、J=19.7、8.6Hz、1H)、4.90(s、1H)、4.81(s、1H)、4.45−4.43(m、2H)、4.05−3.93(m、2H)、3.95(s、3H)、1.42(s、9H)。
【0077】
(調製3)
3−(9−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−[1,4]ジアゼピノ[6,7,1−hi]インドール−7−イル)−4−イミダゾ[1,2−a]−ピリジン−3−イル−ピロールe−2,5−ジオンジヒドロクロリド
カリウムtert−ブトキシド(4.58g、40.92mmol)を、一度に、9−フルオロ−7−メトキシオキザリル−3,4−ジヒドロ−1H−[1,4]ジアゼピノ[6,7,1−hi]インドール−2−カルボン酸tert−ブチルエステル(5.13g、13.64mmol)及び2−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−アセトアミド(2.39g、13.64mmol)のジメチルホルムアミド(80mL)溶液に加えた。反応溶液を、室温で3時間かき混ぜた。飽和塩化アンモニウム水溶液(200mL)を加え、酢酸エチル(200mL×3)で抽出した。合わせた有機相を、飽和食塩水(200mL×3)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。残渣をジクロロメタン(20mL)に溶解し、4N HClのジオキサン(40mL)溶液を滴下して加え、次いで室温で4時間かき混ぜた。生成した沈殿をろ過し、ジエチルエーテルで洗浄して、表題の化合物を赤色固体として得た(4.4g、68%)。
MS(APCI):m/z=402[C2216FN+H]
【0078】
(実施例1)
7−(2,5−ジヒドロ−4−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−2,5−ジオキソ−1H−ピロール−3−イル)−9−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−(1−ピペリジニル−カルボニル)−ピロロ[3,2,1−jk][1,4]ベンゾジアゼピン
ピペリジン−1−塩化カルボニル(0.5mL、4.0mmol)を、3−(9−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−[1,4]ジアゼピノ[6,7,1−hi]インドール−7−イル)−4−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−ピロールe−2,5−ジオン(1.42g、3.0mmol)及びトリエチルアミン(2.09mL、15.0mmol)のメタノール(80mL)溶液に加えた。室温で終夜かき混ぜた。トリエチルアミン(1.04mL、7.5mmol)及びピペリジン−1−塩化カルボニル(0.5mL、4.0mmol)を加えた。室温で5時間かき混ぜた。酢酸エチル(500mL)を加え、飽和重曹水溶液(300mL×3)及び飽和食塩水(200mL)で連続して洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィにかけ、0%から3%メタノールの酢酸エチル溶液で溶出して、表題の化合物を赤色固体として得た(700mg、45%)。
m.p.=188−190℃。
MS(APCI):m/z=513[C2825FN+H]
【0079】
(実施例2)
7−(2,5−ジヒドロ−4−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−2,5−ジオキソ−1H−ピロール−3−イル)−9−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−(1−ピペリジニル−カルボニル)−ピロロ[3,2,1−jk][1,4]ベンゾジアゼピンメタンスルホナート
7−(2,5−ジヒドロ−4−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−2,5−ジオキソ−1H−ピロール−3−イル)−9−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−(1−ピペリジニル−カルボニル)−ピロロ[3,2,1−jk][1,4]ベンゾジアゼピン(500mg、0.976mmol)のメタノール(2.5mL)中スラリーを、64℃に加熱した。メタンスルホン酸(64μL、0.976mmol)のメタノール(1.0mL)溶液を、5分間かけて加えた。混合物を64℃で15分間かき混ぜ、次いでイソプロパノール(5.0mL)を30分間かけて加えた。生成したスラリーを1時間かけて室温まで放冷し、次いで室温で4時間かき混ぜた。スラリーをろ過し、イソプロパノールで洗浄し、42℃で減圧乾燥して、表題の化合物をオレンジ色の固体として得た(478mg、88.5%(出発化合物中に9.9%の揮発物、及び生成物中に1.0%の揮発物として調節))。
m.p.=282.3℃(DSC)
【0080】
(実施例3)
7−(2,5−ジヒドロ−4−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−2,5−ジオキソ−1H−ピロール−3−イル)−9−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−(1−ピペリジニル−カルボニル)−ピロロ[3,2,1−jk][1,4]ベンゾジアゼピンエタノラート
7−(2,5−ジヒドロ−4−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−2,5−ジオキソ−1H−ピロール−3−イル)−9−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−(1−ピペリジニル−カルボニル)−ピロロ[3,2,1−jk][1,4]ベンゾジアゼピン(2.0g、3.9mmol)のエタノール(30mL)中のスラリーを、70℃に加熱した。5M HCl(0.73mL)の全量を一度に加えた。混合物を70℃で10分間かき混ぜ、次いで1N NaOH(3.63mL)を3分間かけて加えた。混合物を70℃で2時間かき混ぜた。生成したスラリーを1時間かけて室温まで放冷し、次いで室温で3.5時間かき混ぜた。スラリーをろ過し、エタノールで洗浄し、42℃で減圧乾燥して、表題の化合物をオレンジ色の固体として得た(1.84g、92%(出発化合物中に7.5%の揮発物、及び生成物中に7.7%の揮発物として調節))。
m.p.=179.4℃(DSC)
粉末X線第1ピーク(2θ角、強度):8.989°、100%;9.787°、48.7%;12.846°、20.0%;及び7.444°、17.5%。
【0081】
(実施例4)
7−(2,5−ジヒドロ−4−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−2,5−ジオキソ−1H−ピロール−3−イル)−9−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−(1−ピペリジニル−カルボニル)−ピロロ[3,2,1−jk][1,4]ベンゾジアゼピン水和物I
7−(2,5−ジヒドロ−4−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−2,5−ジオキソ−1H−ピロール−3−イル)−9−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−(1−ピペリジニル−カルボニル)−ピロロ[3,2,1−jk][1,4]ベンゾジアゼピンエタノラート(198.5mg)の水(10mL)中スラリーを、80℃で2.75加熱した。3.11mLの1N HClを加えた。温度が80℃に戻ったときに、すばやく3.11mLの1N NaOHを加えた。約15分間、80℃に維持し、次いで懸濁液を室温まで放冷した。ワットマン(登録商標)#1ペーパーを通じて真空ろ過により固体を集め、軽く蓋をして終夜乾燥した。
粉末X線第1ピーク(2θ角、強度):12.089°、100%;10.485°、83.6%;13.227°、56.0%;及び7.660°、8.0%。
【0082】
(実施例5)
7−(2,5−ジヒドロ−4−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−2,5−ジオキソ−1H−ピロール−3−イル)−9−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−(1−ピペリジニル−カルボニル)−ピロロ[3,2,1−jk][1,4]ベンゾジアゼピン水和物II
7−(2,5−ジヒドロ−4−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−2,5−ジオキソ−1H−ピロール−3−イル)−9−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−(1−ピペリジニル−カルボニル)−ピロロ[3,2,1−jk][1,4]ベンゾジアゼピンエタノラート(200.6mg)の(25mL)溶液中スラリーを、75℃で0.5時間加熱した。0.72mLの1N HClを加え、加熱を0.75時間続けた。すばやく0.72mLの1N NaOHを加えた。懸濁液を室温まで放冷した。ワットマン(登録商標)#1ペーパーで真空ろ過により固体を集め、20mL脱イオン水ですすぎ、軽く蓋をして2日間乾燥した。
粉末X線第1ピーク(2θ角、強度):6.878°、100%;5.732°、58.7%;11.550°、82.8%;18.426°、20.7%;及び10.856°、44.2%。
【0083】
(実施例6)
7−(2,5−ジヒドロ−4−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−2,5−ジオキソ−1H−ピロール−3−イル)−9−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−(1−ピペリジニル−カルボニル)−ピロロ[3,2,1−jk][1,4]ベンゾジアゼピン2水和物
7−(2,5−ジヒドロ−4−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−2,5−ジオキソ−1H−ピロール−3−イル)−9−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−(1−ピペリジニル−カルボニル)−ピロロ[3,2,1−jk][1,4]ベンゾジアゼピンエタノラート(200.8mg)の水(25mL)中スラリーを、75℃で0.67時間加熱した。0.72mLの1N HClを加え、加熱を1.75時間続けた。0.1N NaOHを加え、1mLずつ5分ごとに、7.2mLとなるまで添加した。最後の添加後に懸濁液を75℃で0.67時間維持させ、次いで懸濁液を室温まで放冷した。ワットマン(登録商標)#1ペーパーで真空ろ過により固体を集め、20mL脱イオン水ですすぎ、軽く蓋をして2日間乾燥した。
粉末X線第1ピーク(2θ角、強度):5.498°、100%;22.149°、100%;14.921°、32.9%;11.399°、36.7%;及び11.019°、20.5%。
【0084】
化合物Iは、好適には、患者への投与に先立って医薬組成物として処方される。有用な処方は、化合物I又はその薬理学的に許容できる塩あるいは溶媒和物及びSBE7−β−CDを含んでなる。化合物SBE7−β−CDは、米国特許第5134127号に記載の、β−シクロデキストリンのスルホブチルエーテルである。これは、キャプティソル(CAPTISOL(登録商標))という商標名で販売されている。特定の処方は、以下の処方例に記載される。
【0085】
有用な医薬組成物は、化合物I又はその薬理学的に許容できる塩あるいは溶媒和物(50mg/mL)を、2−ピロリドン(ソルフォア(SOLUPHOR(登録商標))−P)に溶解することにより調製できる。次いで、この溶液は、SBE7−β−CD(30%体積)及びポロキサマー188(ルトロール(Lutrol(登録商標))−F68)(10%体積)の水溶液で希釈する。
【0086】
(処方例1)
30.0gのSBE7−β−CDを71.25mLの水に加えて第一溶液を調製し、完全に溶解するまでかき混ぜるか又は激しく撹拌した。10.0gのポロキサマー188を加え、完全に溶解するまでかき混ぜた。次式にしたがって、化合物Iのエタノラートを2−ピロリドンに加えることにより第二溶液を調製した。2−ピロリドン(mL)=(化合物Iのエタノラートの実際の重量(mg)/50mg/mL)×0.5。第一溶液を第二溶液に加えた。生成した溶液を0.2μmスーポア(SUPOR(登録商標))(親水性ポリエタンスルホン)フィルタ(ポール・コーポレーション社)で、無塵コンテナ内にろ過した。
【0087】
さらなる医薬組成物の実施形態は、化合物I又はその薬理学的に許容できる塩あるいは溶媒和物に、薬理学的に許容できる酸の水溶液の等モル量を混合することにより調製した。次いで、この混合物は、水溶液として少なくとも1モル当量のSBE7−β−CDと混合した。好適な薬理学的に許容できる酸としては、HCl、HBr、硫酸及びメタンスルホン酸が挙げられる。HClの使用は、特に好ましい。
【0088】
(処方例2)
20.0gのSBE7−β−CDを80.00mLの水に加えて第一溶液を調製し、完全に溶解するまでかき混ぜるか又は激しく撹拌した。次式にしたがって、この溶液を化合物Iに加えた。第一溶液(mL)=(化合物Iのエタノラートの実際の重量(mg)/20mg/mL)−(化合物Iのエタノラートの実際の重量(mg)/1200mg/mL)−(化合物Iのエタノラートの実際の重量(mg)×0.00195107mLの1N HCl/化合物Iのエタノラート(mg))。次式にしたがって、1N HClを加えた。加える1N HCl(mL)=(化合物Iのエタノラートの実際の重量(mg)×0.00195107mLの1N HCl/化合物Iのエタノラート(mg))。全ての化合物が溶解するまで、かき混ぜるか又は超音波バス処理した。
【0089】
好適な医薬組成物の実施形態は、適宜薬理学的に許容できるバッファを存在させて、1モル当量の化合物I又はその薬理学的に許容できる塩あるいは溶媒和物を、pH5.5未満(最初の溶液pH)で、少なくとも1モル当量のSBE7−β−CDの水溶液に加え、化合物I又はその薬理学的に許容できる塩あるいは溶媒和物が溶解するまで混ぜることにより、調製される。次いで、pHは、薬理学的に許容できる塩基を用いて、2.5から3.5の間に調節される(最終的な溶液pH)。この生成した処方溶液は、患者に直接投与してもよく、該溶液は、好適には凍結乾燥され、水で再構成可能な固体処方としてもよい。
【0090】
SBE7−β−CDは、1モル当量から、1日に患者に13.4mg以下のSBE7−β−CDを投与するために必要な量までの範囲で、存在してもよい。好適なSBE7−β−CDの量は、1.0から4.0モル当量であり、より好適には2.0から3.0モル当量であり、化合物Iに対して2.5から2.7モル当量が特に好ましい。
【0091】
最初の溶液pHは5.5未満ならいくらでも許容できるが、最初の溶液pHは3.0未満が好ましく、最初の溶液pHは1.0から2.0がより好ましく、最初の溶液pHは1.2から1.4が最も好ましい。目標とする最初の溶液pHは、溶液のpHを5.5未満に調節できる、いかなる薬理学的な酸の添加によっても達成される。塩酸の使用が好ましい。
【0092】
処方は、適宜、薬理学的に許容できるバッファを含有してもよい。薬理学的に許容できるバッファは、特定のpH範囲において最終的な溶液のpHを安定化させるため、製剤処方の当業者によって使用される化合物である。薬理学的に許容できるバッファとしては、リン酸バッファ、並びにクエン酸、グリシン、及び酒石酸又はこれらの薬理学的に許容できる塩が挙げられる。これらの酸の薬理学的に許容できる塩としては、ナトリウム及びカリウム塩が挙げられる。薬理学的に許容できるバッファは、処方中に存在することが好ましい。酒石酸は、好適な薬理学的に許容できるバッファである。
【0093】
pHが最終的な溶液のpHに調節される前に、化合物Iが完全に溶解されることが重要である。溶解は、任意のメカニカルミキシングによって、必要又は所望であれば溶液の温度を調節することによって、補助されてもよい。室温でかき混ぜることが、好ましい。
【0094】
最終的な溶液のpHは、溶液のpHを2.5から3.5のpH範囲に調節可能な、いずれの薬理学的に許容できる塩基の添加によっても達成される。水酸化ナトリウムの使用が、好ましい。最終的な溶液のpHは、2.5から3.5の範囲でもよいが、好適には2.5から3.1の範囲である。最終的な溶液のpHは、2.7から3.1の範囲が最も好ましい。最終的な溶液のpHが達成されると、溶液は、必要又は所望に応じて、水で再構成するのに適した固体の医薬組成物を生成するため、標準的な凍結乾燥条件の下で凍結乾燥してもよい。
【0095】
(処方例3)
0.15gの酒石酸及び12g(5.55mmol)のSBE7−β−CDの、水70mL中の溶液を調製した。5mLの1.0N HClを加え、室温で攪拌した。1.1g(2.15mmol)の化合物Iのエタノラートを加え、溶解するまで室温でかき混ぜた。1N水酸化ナトリウムを加えてpHを約2.9とした。十分量の水を加え、最終的な体積を100mLとした。この溶液を凍結乾燥し、非結晶の橙赤色の固体を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
卵巣癌、非小細胞肺癌又は大腸癌を治療する方法であって、当該治療を必要とする癌患者に対して、CPT−11、ペメトレキセド、ゲムシタビン、エトポシド、ドキソルビシン及びプラチナ化学療法剤からなる群から選ばれる有効量の化学療法剤を有効量の7−(2,5−ジヒドロ−4−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−2,5−ジオキソ−1H−ピロール−3−イル)−9−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−(1−ピペリジニルカルボニル)−ピロロ[3,2,1−jk][1,4]ベンゾジアゼピン又はその薬理学的に許容できる塩もしくは溶媒和物と併用して投与することを含む方法。
【請求項2】
治療を必要とする患者の卵巣癌、非小細胞肺癌又は大腸癌の治療におけるCPT−11、ペメトレキセド、ゲムシタビン、エトポシド、ドキソルビシン又はプラチナ化学療法剤の使用を改善する方法であって、前記改善が7−(2,5−ジヒドロ−4−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−2,5−ジオキソ−1H−ピロール−3−イル)−9−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−(1−ピペリジニル−カルボニル)−ピロロ[3,2,1−jk][1,4]ベンゾジアゼピン又はその薬理学的に許容できる塩もしくは溶媒和物の同時投与を含む、方法。
【請求項3】
前記化学療法剤がプラチナ化学療法剤又はペメトレキセド及びプラチナ化学療法剤である、請求項1又は2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記プラチナ化学療法剤がシスプラチン又はカルボプラチンである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
卵巣癌、非小細胞肺癌又は大腸癌の治療のための、CPT−11、ペメトレキセド、ゲムシタビン、エトポシド、ドキソルビシン及びプラチナ化学療法剤からなる群から選ばれる化学療法剤と併用して使用する薬剤の調製のための、7−(2,5−ジヒドロ−4−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−2,5−ジオキソ−1H−ピロール−3−イル)−9−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−(1−ピペリジニルカルボニル)−ピロロ[3,2,1−jk][1,4]−ベンゾジアゼピン又はその薬理学的に許容できる塩もしくは溶媒和物の使用。
【請求項6】
前記化学療法剤がプラチナ化学療法剤又はペメトレキセド及びプラチナ化学療法剤である、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記プラチナ化学療法剤がシスプラチン又はカルボプラチンである、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
治療を必要とする癌患者に、5−フルオロウラシル及びプラチナ化学療法剤からなる群から選ばれる有効量の化学療法剤を有効量の7−(2,5−ジヒドロ−4−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−2,5−ジオキソ−1H−ピロール−3−イル)−9−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−(1−ピペリジニルカルボニル)−ピロロ[3,2,1−jk][1,4]ベンゾジアゼピン又はその薬理学的に許容できる塩もしくは溶媒和物と併用して投与することを含む、胃癌を治療する方法。
【請求項9】
治療を必要とする患者の胃癌の治療において、5−フルオロウラシル又はプラチナ化学療法剤の使用を改善する方法であって、前記改善が7−(2,5−ジヒドロ−4−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−2,5−ジオキソ−1H−ピロール−3−イル)−9−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−(1−ピペリジニル−カルボニル)−ピロロ[3,2,1−jk][1,4]ベンゾジアゼピン又はその薬理学的に許容できる塩もしくは溶媒和物の同時投与を含む、方法。
【請求項10】
胃癌の治療のための5−フルオロウラシル及びプラチナ化学療法剤からなる群から選ばれる化学療法剤と併用して使用する薬剤の調製のための、7−(2,5−ジヒドロ−4−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−2,5−ジオキソ−1H−ピロール−3−イル)−9−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−(1−ピペリジニルカルボニル)−ピロロ[3,2,1−jk][1,4]−ベンゾジアゼピン又はその薬理学的に許容できる塩もしくは溶媒和物の使用。
【請求項11】
a)7−(2,5−ジヒドロ−4−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−2,5−ジオキソ−1H−ピロール−3−イル)−9−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−(1−ピペリジニル−カルボニル)ピロロ[3,2,1−jk][1,4]ベンゾジアゼピン又はその薬理学的に許容できる塩もしくは溶媒和物を、少なくとも1モル当量のSBE7−β−CD及び適宜薬理学的に許容できるバッファを含有する水溶液にpH5.5未満にて添加すること、
b)薬理学的に許容できる酸又は塩基を用いて生成溶液のpHを2.5から3.5の間に調節すること、および
c)前記生成溶液を適宜凍結乾燥すること
を含むステップによって得られる医薬組成物。
【請求項12】
1モル当量の7−(2,5−ジヒドロ−4−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−2,5−ジオキソ−1H−ピロール−3−イル)−9−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−(1−ピペリジニルカルボニル)−ピロロ[3,2,1−jk][1,4]ベンゾジアゼピン又はその薬理学的に許容できる塩もしくは溶媒和物、少なくとも1モル当量のSBE7−β−CD、及び適宜薬理学的に許容できるバッファを含む、注射又は点滴によって患者へ投与するのに適した溶液に水を用いて再構成可能な医薬組成物。
【請求項13】
前記薬理学的に許容できるバッファが存在する、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記薬理学的に許容できるバッファが酒石酸である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
1モル当量の7−(2,5−ジヒドロ−4−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−2,5−ジオキソ−1H−ピロール−3−イル)−9−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−(1−ピペリジニルカルボニル)−ピロロ[3,2,1−jk][1,4]ベンゾ−ジアゼピン及び少なくとも1モル当量のSBE7−β−CDを含む、医薬組成物。
【請求項16】
注射又は点滴によって患者へ投与するのに適した溶液に水を用いて再構成可能な7−2,5−ジヒドロ−4−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−2,5−ジオキソ−1H−ピロール−3−イル)−9−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−(1−ピペリジニル−カルボニル)ピロロ−[3,2,1−jk][1,4]ベンゾジアゼピンを含む医薬組成物の製造方法であって、
a)7−(2,5−ジヒドロ−4−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル−2,5−ジオキソ−1H−ピロール−3−イル)−9−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−(1−ピペリジニル−カルボニル)ピロロ[3,2,1−jk][1,4]ベンゾジアゼピン又はその薬理学的に許容できる塩もしくは溶媒和物を、少なくとも1モル当量のSBE7−β−CD及び適宜薬理学的に許容できるバッファを含有する水溶液にpH5.5未満にて添加すること、
b)薬理学的に許容できる酸又は塩基を用いて生成溶液のpHを2.5から3.5の間に調節すること、および
c)前記生成溶液を凍結乾燥すること
を含む方法。

【公表番号】特表2010−532364(P2010−532364A)
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−514996(P2010−514996)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【国際出願番号】PCT/US2008/067614
【国際公開番号】WO2009/006043
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(594197872)イーライ リリー アンド カンパニー (301)
【Fターム(参考)】