A/D変換装置、D/A変換装置、信号処理装置
【課題】 A/D変換部前段の入力ゲイン切換部のゲイン誤差を補正する。
【解決手段】 測定時、制御部31は基準信号生成部25に生成させた1kHz正弦波の基準信号を入力ゲイン切換部21に入力させ、最小ゲインから最大ゲインまで6段階に切り換えたときにA/D変換部22でA/D変換後のディジタル信号レベルから最小ゲインに対する各段階のゲイン相対誤差を打ち消すための補正係数を決定し記憶させておく。通常時、入力アナログオーディオ信号を入力ゲイン切換部21を介してA/D変換部22でA/D変換されたディジタル信号レベルを監視し、小レベル状態が続いたり、過大となったときにA/D変換部22の入力レベルが最適となるようにゲインを切り換え、同時に、切り換えゲインに対応する補正係数をレベル補正部23にセットし、ゲイン誤差を補正させる。
【解決手段】 測定時、制御部31は基準信号生成部25に生成させた1kHz正弦波の基準信号を入力ゲイン切換部21に入力させ、最小ゲインから最大ゲインまで6段階に切り換えたときにA/D変換部22でA/D変換後のディジタル信号レベルから最小ゲインに対する各段階のゲイン相対誤差を打ち消すための補正係数を決定し記憶させておく。通常時、入力アナログオーディオ信号を入力ゲイン切換部21を介してA/D変換部22でA/D変換されたディジタル信号レベルを監視し、小レベル状態が続いたり、過大となったときにA/D変換部22の入力レベルが最適となるようにゲインを切り換え、同時に、切り換えゲインに対応する補正係数をレベル補正部23にセットし、ゲイン誤差を補正させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はA/D変換装置、D/A変換装置、信号処理装置に係り、とくに入力アナログ信号または出力アナログ信号に対するゲインを切り換え可能としたA/D変換装置、D/A変換装置、信号処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車載オーディオシステムではヘッドユニットはダッシュボードに設置されるが、パワーアンプやスピーカボックスはヘッドユニットから離れたトランクやドアなどに設置される場合が多い。ヘッドユニット内のチューナ部、CD再生部等のソース回路部からは一定レベルのオーディオ信号が出力されるようになっており、ヘッドユニットに設けられた音量調整部でユーザ所望の音量に調整したのち、ケーブルを介してパワーアンプ側に出力される。パワーアンプでDSP(ディジタルシグナルプロセッサ)により帯域制限等の信号処理を行いたい場合、ヘッドユニット側から入力した音量調整後のアナログオーディオ信号をA/D変換器で一旦ディジタルオーディオ信号に変換し、信号処理後、D/A変換器で元のアナログ信号に戻すようにしている。
【0003】
ところで、ユーザが音楽を聴取するときの最大の音量と最小の音量の信号レベルには大きな開きがあり、稀に聞く程度の大音量と比較すると普段の音量はそれよりも小さな音量であり、ときに普段の音量よりもさらに小さな音量で聞きたい場合もある。小音量時と大音量時の差は個人差もあるが40dB程度あるのが普通である。音量調整後のアナログオーディオ信号をA/D変換するとき、システムの最大信号レベルでクリップしないようにシステムを構成する必要がある。たとえば、16ビットA/D変換器を用いて信号レベルが最大のときにフルビットのディジタル信号に変換されるように構成したとき、小音量時は最大音量時に対して信号レベルが40dB小さいとすると、小音量時ではA/D変換器の上位側の約7ビットが使用されず、9ビットのA/D変換器を用いたのと等価となってしまい、量子化歪の影響でオーディオ信号のクオリティが非常に悪化してしまう問題がある。この点につき音量調整部をパワーアンプのDSPの後段に設け、A/D変換器の入力を一定の信号レベルとしてクオリティの悪化を回避することが考えられる。けれども、通常、音量調整操作部はヘッドユニットに設けられるので、ダッシュボードのヘッドユニットからトランクルームのパワーアンプまで音量調整信号ラインをオーディオ信号ラインと別個に配線する必要が生じ、また一般にパワーアンプには音量調整信号の入力端子が付属しないため、製品の汎用性がなくなる欠点があり現実的な解決策でない。
スピーカの付加機能として帯域制限等をDSPによる信号処理で実現しようとする場合もまったく同様で、一般にスピーカには音量調整後のアナログオーディオ信号が入力されるため、小音量時に量子化歪の影響でオーディオ信号のクオリティが非常に悪化してしまう欠点がある。
【0004】
この問題を解決するため、信号レベルが大きく可変する音量調整後のアナログオーディオ信号を対象に信号処理する場合、図1に示す如くDSP1の前後段のA/D変換器2とD/A変換器3の前後に更に入力ゲイン可変回路4と出力ゲイン可変回路5を設けるようにしている。そして、音量増大により入力アナログオーディオ信号Ainのレベルが大きくなってA/D変換器2の出力がクリップしそうなときは入力ゲイン可変回路4のゲインを下げ、A/D変換器2の入力レベルを最適化する一方、その分、出力ゲイン可変回路5のゲインを上げて全体としてユーザ所望の音量に見合った出力レベルが得られるようにし、反対に小音量化により入力アナログオーディオ信号Ainのレベルが小さくなってA/D変換器2の出力の信号歪が顕著になりそうなときは入力ゲイン可変回路4のゲインを上げ、A/D変換器2の入力レベルを最適化する一方、その分、出力ゲイン可変回路5のゲインを下げて、全体としてユーザ所望の音量に見合った出力レベルが得られるようにすることが考えられる。たとえば、実開平5−55617号には、入力アナログオーディオ信号Ainのレベルが過大となったときに、入力ゲイン可変回路(第1のVCA)でゲインを下げ、その分、出力ゲイン可変回路(第2のVCA)でゲインを上げる発明が開示されている(特許文献1)。
【0005】
けれども、アナログ回路で構成された入力ゲイン可変回路や出力ゲイン可変回路では、素子部品の回路定数の組み合わせの制約や素子部品の回路定数のバラツキのためゲインの精度が悪く、入力ゲイン可変回路と出力ゲイン可変回路で相補的にゲインを可変した時に信号が不連続となって大きなノイズが発生する欠点があった。例えば、図2は反転増幅器OP、抵抗R1乃至R9、スイッチ素子SW1乃至SW3により構成したアナログゲイン切り換え回路であり、スイッチ素子に74HC4053(例えば東芝製TC74HC4053AP)を用い、少ないスイッチ素子で比較的正確にゲインを切り換えられるようにしたものであり、図3に示す如く、3ビットの制御信号ContA、ContB、ContCの「H」「L」の組み合わせによりゲインを×1、×2、×4、×8、×16、×32の6段階の2の乗数倍の設定ゲインに切り換え可能である。図2の構成の場合、×1、×2、×4、×8、×16、×32の計算上のゲインは0.88(誤差−12.00%)、1.76(誤差−12.00%)、3.52(誤差−12.00%)、7.08(誤差−11.50%)、14.06(誤差−12.13%)、27.94(誤差−12.69%)となり、×1のゲインを基準にしたとき、×2、×4、×8、×16、×32は1.995倍(相対誤差−0.25%)、3.991倍(同−0.22%)、8.014倍(同−0.22%)、15.920倍(同−0.50%)、31.634(同−1.14%)となる(但し、抵抗値のバラツキ誤差は考慮していない)。ゲイン切り換え回路としては、かなり正確な回路であるが、上述の入力信号のレベル変化に追従してゲインを可変させる場合は、精度不足となる。例えば、計算上と抵抗値のバラツキを合わせたゲインの切り換え誤差が1%の場合、信号に対して−40dB程度のオーディオ信号としては比較的大きなパルス的なノイズが発生することになる。
【0006】
これとは別に、オーディオ信号に対する音量調整をアナログ領域において行なう電子ボリューム回路がある。この電子ボリューム回路は入力端子とグランド間に多数の抵抗素子を直列に接続した抵抗分圧回路と、入力端子及び各抵抗間の接続点と出力端子との間に介装された多数のアナログスイッチを内蔵しており、アナログスイッチを択一的に閉じて入力アナログオーディオ信号の電圧値を可変の分圧値で分圧し、信号レベルを減衰させる。この電子ボリューム回路では、例えば0dB〜−35dBまで1dB単位のステップで減衰させる場合、36個の抵抗素子と36個のアナログスイッチが必要となり、構成が複雑・大形化し、コストも高くなってしまう。一方、音量調整はディジタルタル領域においてDSPによる演算処理でも可能であるが、減衰量が大きくなると有効ビット長が小さくなって、量子化歪が大きくなってしまう。
【0007】
そこで、図4に示す如く、電子ボリューム回路6の前段に、入力アナログオーディオ信号をA/D変換するA/D変換器7、ディジタル流域で減衰演算を行なうDSP8、DSP8の出力をD/A変換するD/A変換器9を設け、電子ボリューム回路6では6dBの大きなステップ幅で減衰し、DSP8では1dBの小さなステップ幅で減衰させるようにし、制御回路10が目標音量(目標減衰量)となるように電子ボリューム回路6とDSP8を制御するようにしたハイブリッド型の音量調整回路が提案されている(特許文献2)。
けれども、アナログ回路で構成された電子ボリューム回路6はDSP8に比して直線性が悪く、例えば電子ボリューム回路6の−6dBが実際には−5dBしか無い場合がある。このとき、全体の減衰量を−5dBとするため、電子ボリューム回路6の減衰量を0dB、DSP8を−5dBに切り換えたときと、全体の減衰量を1dB落として−6dBとするため、電子ボリューム回路6の減衰量を−6dB、DSP8を0dBに切り換えたときとで、ほぼ同じ減衰量になって音量が殆んど変化しない問題があった。
【0008】
【特許文献1】実開平5−55617号公報の段落0025、図1
【特許文献2】特開2001−7670号公報の段落0026、図5
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記した従来技術の問題に鑑み、A/D変換手段の前段に設けられた入力ゲイン切り換え手段のゲイン切り換え誤差を補正可能なA/D変換装置を提供することをその目的とする。また、D/A変換手段の後段に設けられた出力ゲイン切り換え手段のゲイン切り換え誤差を補正可能なD/A変換装置を提供することをその目的とする。また、前後段に設けられた入力ゲイン切り換え手段と出力ゲイン切り換え手段のゲイン切り換え誤差を補正可能な信号処理装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のA/D変換装置の1つでは、入力アナログ信号をA/D変換するA/D変換手段と、A/D変換手段の前段に設けられて入力アナログ信号に対し複数段階の所定の設定値のゲインに切り換え可能な入力ゲイン切り換え手段と、を備えたA/D変換装置において、入力ゲイン切り換え手段のゲイン測定用の基準信号を発生する基準信号発生手段と、通常時は入力アナログ信号を選択して入力ゲイン切り換え手段に入力させ、測定時は基準信号を選択して入力ゲイン切り換え手段に入力させる選択手段と、測定時、基準信号が選択手段を介して入力ゲイン切り換え手段に印加されているときに、入力ゲイン切り換え手段のゲインを各段階に切り換えたときのA/D変換手段の出力レベルを測定するレベル測定手段と、レベル測定手段で測定したレベルに基づき、入力ゲイン切り換え手段の各段階のゲインの誤差を打ち消すための各段階別の補正係数を決定する補正係数決定手段と、通常時、選択手段を介して入力ゲイン切り換え手段に入力アナログ信号が印加されているときに、入力ゲイン切り換え手段のゲインに応じてA/D変換手段から出力されたディジタル信号に対し、補正係数決定手段で決定された補正係数に基づきレベル補正を行なう補正手段と、を備えたことを特徴としている。
本発明のA/D変換装置の他の1つでは、入力ゲイン切り換え手段の複数段階のゲイン設定値は2の乗数倍または1/2の乗数倍の値としたこと、を特徴としている。
本発明のD/A変換装置の1つでは、ディジタル信号をD/A変換して出力するD/A変換手段と、D/A変換手段の後段に設けられて出力アナログ信号に対し複数段階の所定の設定値のゲインに切り換え可能な出力ゲイン切り換え手段と、を備えたD/A変換装置において、出力ゲイン切り換え手段のゲイン測定用の基準信号を発生する基準信号発生手段と、通常時は出力アナログ信号を選択して出力ゲイン切り換え手段に入力させ、測定時は基準信号を選択して出力ゲイン切り換え手段に入力させる選択手段と、測定時、出力ゲイン切り換え手段から出力されるアナログ信号が入力されるA/D変換手段と、測定時、基準信号が選択手段を介して出力ゲイン切り換え手段に印加されているときに、出力ゲイン切り換え手段のゲインを各段階に切り換えたときのA/D変換手段の出力レベルを測定するレベル測定手段と、レベル測定手段で測定した出力レベルに基づき、出力ゲイン切り換え手段の各段階のゲインの誤差を打ち消すための各段階別の補正係数を決定する補正係数決定手段と、通常時、選択手段を介して出力ゲイン切り換え手段にD/A変換手段の出力が印加されているときに、出力ゲイン切り換え手段のゲインに応じてD/A変換手段に入力されるディジタル信号に対し、補正係数決定手段で決定された補正係数に基づきレベル補正を行なう補正手段と、を備えたことを特徴としている。
本発明のD/A変換装置の他の1つでは、出力ゲイン切り換え手段の複数段階のゲイン設定値は2の乗数倍または1/2の乗数倍の値としたこと、を特徴としている。
本発明の信号処理装置の1つでは、入力アナログ信号をA/D変換するA/D変換手段と、A/D変換手段から出力された入力ディジタル信号に対し信号処理を行なう信号処理手段と、信号処理手段の出力ディジタル信号をD/A変換して出力するD/A変換手段と、A/D変換手段の前段に設けられて入力アナログ信号に対し複数段階の所定の設定値のゲインに切り換え可能な入力ゲイン切り換え手段と、D/A変換手段の後段に設けられて出力アナログ信号に対し複数段階の所定の設定値のゲインに切り換え可能な出力ゲイン切り換え手段と、を備えた信号処理装置において、入力ゲイン切り換え手段と出力ゲイン切り換え手段のゲイン測定用の基準信号を発生する基準信号発生手段と、通常時は入力アナログ信号を選択して入力ゲイン切り換え手段に入力させ、第1の測定時は基準信号を選択して入力ゲイン切り換え手段に入力させ、第2の測定時は出力ゲイン切り換え手段の出力を選択して入力ゲイン切り換え手段に入力する第1の選択手段と、通常時は出力アナログ信号を選択して出力ゲイン切り換え手段に入力し、第2の測定時は基準信号を選択して出力ゲイン切り換え手段に入力させる第2の選択手段と、第1の測定時、基準信号が第1の選択手段を介して入力ゲイン切り換え手段に印加されているときに、入力ゲイン切り換え手段のゲインを各段階に切り換えたときのA/D変換手段の出力レベルを測定し、第2の測定時、基準信号が第2の選択手段、出力ゲイン切り換え手段、第1の選択手段を介して入力ゲイン切り換え手段に印加されているときに、出力ゲイン切り換え手段のゲインを各段階に切り換えたときのA/D変換手段の出力レベルを測定するレベル測定手段と、レベル測定手段で測定したレベルに基づき、入力ゲイン切り換え手段の各段階のゲインの誤差を打ち消すための各段階別の補正係数と出力ゲイン切り換え手段の各段階のゲインの誤差を打ち消すための各段階別の補正係数とを決定する補正係数決定手段と、通常時、第1の選択手段を介して入力ゲイン切り換え手段に入力アナログ信号が印加され、かつ第2の選択手段を介して出力ゲイン切り換え手段に出力アナログ信号が印加されているときに、入力ゲイン切り換え手段のゲインと出力ゲイン切り換え手段のゲインに応じてA/D変換手段とD/A変換手段の間でディジタル信号に対し、補正係数決定手段で決定された補正係数に基づきレベル補正を行なう補正手段と、を備えたことを特徴としている。
本発明の信号処理装置の他の1つでは、入力ゲイン切り換え手段の複数段階のゲインの設定値は2の乗数倍または1/2の乗数倍の値とし、出力ゲイン切り換え手段の複数段階のゲインの設定値は2の乗数倍または1/2の乗数倍の値としたこと、を特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明のA/D変換装置によれば、基準信号を用いて入力ゲイン切り換え手段の各段階のゲインの誤差を打ち消すための各段階別の補正係数を決定し、入力ゲイン切り換え手段にA/D変換対象の入力アナログ信号が印加されているときに、入力ゲイン切り換え手段のゲインに応じてA/D変換手段から出力されたディジタル信号に対し、レベル補正を行なうようにしたので、アナログ回路で構成される入力ゲイン切り換え手段の各段階のゲインに誤差があっても、信号に対するゲインを正確に切り換えることができる。
また、A/D変換後のディジタル信号をディジタル信号処理する場合、入力ゲイン切り換え手段のゲイン切り換えと連動してディジタル信号処理手段に保持された過去のサンプルデータのレベルを切り換える必要があるが、入力ゲイン切り換え手段の複数段階のゲイン設定値は2の乗数倍または1/2の乗数倍で切り換えるようにしておけば、過去のサンプルデータのレベルの切り換えをビットシフト動作で簡単に実行することができる。
また本発明のD/A変換装置によれば、基準信号を用いて出力ゲイン切り換え手段の各段階のゲインの誤差を打ち消すための各段階別の補正係数を決定し、D/A変換対象のディジタル信号をD/A変換した出力アナログ信号が出力ゲイン切り換え手段に印加されているときに、出力ゲイン切り換え手段のゲインに応じてD/A変換対象のディジタル信号に対し、レベル補正を行なうようにしたので、アナログ回路で構成される出力ゲイン切り換え手段の各段階のゲインに誤差があっても、信号に対するゲインを正確に切り換えることができる。
また、D/A変換手段に入力されるディジタル信号に対するゲインを出力ゲイン切り換え手段のゲインと相殺的に可変する場合に、出力ゲイン切り換え手段の複数段階のゲイン設定値は2の乗数倍または2の乗数倍で切り換えるようにしておけば、D/A変換手段に入力されるディジタル信号に対するゲインの切り換えをビットシフト動作で簡単に実行することができる。
また本発明の信号処理装置によれば、基準信号を用いて入力ゲイン切り換え手段と出力ゲイン切り換え手段の各段階のゲインの誤差を打ち消すための各段階別の補正係数を決定し、入力ゲイン切り換え手段にA/D変換対象のアナログ信号が印加され、かつD/A変換対象のディジタル信号をD/A変換した出力アナログ信号が出力ゲイン切り換え手段に印加されているときに、入力ゲイン切り換え手段と出力ゲイン切り換え手段のゲインに応じてA/D変換手段とD/A変換手段の間でディジタル信号に対し、レベル補正を行なうようにしたので、アナログ回路で構成される入力ゲイン切り換え手段と出力ゲイン切り換え手段の各段階のゲインに誤差があっても、信号に対するゲインを正確に切り換えることができる。
また、A/D変換後のディジタル信号をディジタル信号処理する場合、入力ゲイン切り換え手段のゲイン切り換えと連動してディジタル信号処理手段に保持された過去のサンプルデータのレベルを切り換える必要があるが、入力ゲイン切り換え手段の複数段階のゲイン設定値は2の乗数倍または1/2の乗数倍で切り換えるようにしておけば、過去のサンプルデータのレベルの切り換えをビットシフト動作で簡単に実行することができ、同様にして、D/A変換手段に入力されるディジタル信号に対するゲインを出力ゲイン切り換え手段のゲインとを相殺的に可変する場合に、出力ゲイン切り換え手段の複数段階のゲイン設定値は2の乗数倍または2の乗数倍で切り換えるようにしておけば、D/A変換手段に入力されるディジタル信号に対するゲインの切り換えをビットシフト動作で簡単に実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の最良の形態を実施例に基づき説明する。
【実施例1】
【0013】
図5を参照して本発明の第1実施例を説明する。図5は本発明に係る帯域制限用信号処理装置の構成を示すブロック図である。
図5において、20はスイッチ部であり、通常モード時は音量調整後の入力アナログオーディオ信号Ainを選択して出力し、測定モード時は後述するアナログ基準信号STを選択して出力する。21はスイッチ部から出力されたアナログ信号に対するゲインを切り換え可能な入力ゲイン切り換え部である。この入力ゲイン切り換え部21はここでは図2と同一に構成されており、ゲインを第1乃至第6の6段階に2の乗数倍に切り換え可能とする。第1段階は×1、第2段階は×2、第3段階は×4、第4段階は×8、第5段階は×16、第6段階は×32のゲインに設定されている。但し、素子部品の回路定数の選択の制限と回路定数のバラツキから各段階の実際のゲインは設定値と一致せず誤差がある。この誤差は後述するように、ディジタル領域で補正される。22はA/D変換部であり、入力ゲイン切り換え部21でゲイン調整後のアナログオーディオ信号をA/D変換する。23はレベル補正部であり、A/D変換後のディジタルオーディオ信号に対し、入力ゲイン切り換え部21のゲイン誤差を打ち消すようにレベル補正を行う。24はディジタル信号処理部であり、ここでは一例として図6に示す3次FIRフィルタのシグナルフローに従い、所定のカットオフ周波数以下の成分だけ通過させる低域通過フィルタとしての信号処理を実行するものとする。ディジタルオーディオ信号のサンプル周期T、離散時間nT(但し、n=1、2、3、・・)、ディジタル信号処理部24の時刻nTの入力x(nT)、出力y(nT)とすると、
y(nT)=a0・x(nT)+a1・x((n−1)T)+a2・x((n−2)T)+a3・x((n−3)T)
a0、a1、a2、a3;演算係数
である。ここで、x((n−1)T)、x((n−2)T)、x((n−3)T)は過去のサンプルデータである。
【0014】
25は入力ゲイン切り換え部21のゲイン測定用のディジタル基準信号を生成する基準信号生成部、26は通常時はディジタル信号処理部24から入力されたディジタル信号処理後のディジタルオーディオ信号を選択して出力し、測定時は基準信号生成部25から入力されたディジタル基準信号を選択して出力するスイッチ部、27はスイッチ部26から入力するディジタル信号をD/A変換するD/A変換部、28はD/A変換後のアナログ信号に対するゲインを切り換え可能な出力ゲイン切り換え部であり、この出力ゲイン切り換え部28から出力アナログ信号Aoutが出力される。出力ゲイン切り換え部28はゲインを第1乃至第6の6段階に1/2の乗数倍に切り換え可能とする。第1段階は×1/32、第2段階は×1/16、第3段階は×1/8、第4段階は×1/4、第5段階は×1/2、第6段階は×1/1のゲインに設定されている。D/A変換部27の出力はスイッチ部20の測定モード側入力端子と接続されている。29はレベル測定部であり、A/D変換部22から出力されるディジタル信号の信号レベルを測定する。ここでは信号レベルはピーク値で測定するものとするが、実効値(RMS)で測定するようにしてもよい。30は補正係数記憶部であり、入力ゲイン切り換え部21の各段階の補正係数を記憶する。
【0015】
31は制御部であり、測定時は1kHzの正弦波からなる基準信号を入力ゲイン切り換え部21に印加させ、入力ゲイン切り換え部21のゲインを第1乃至第6段階に順に切り換えながら、各段階でのレベル測定部29で測定した信号レベルを用いて入力ゲイン切り換え部21の各段階のゲインの誤差を打ち消すための各段階別の補正係数を決定し、補正係数記憶部30に記憶させる。通常時は、入力ゲイン切り換え部21を介してA/D変換部22に入力された入力アナログオーディオ信号の信号レベルを監視し、所定の第1の基準レベルを下回った小レベル状態が一定時間継続したとき、A/D変換部22の入力レベルを最適化して量子化歪が顕著にならないようにするため、入力ゲイン切り換え部21のゲインを1段階上げ、その分出力ゲイン切り換え部28のゲインを1段階下げる。この際、入力ゲイン切り換え部21のゲインに対応する補正係数をレベル補正部23にセットし、A/D変換後のディジタルオーディオ信号に補正係数を乗じて、入力ゲイン切り換え部21のゲイン誤差を補正させるとともに、ディジタル信号処理部24に対し過去のサンプルデータを算術シフト演算(1ビット左シフト)により2倍の大きさに補正させて、ゲイン切り換え前後で外部に出力される出力アナログオーディオ信号Aoutが不連続とならないようにする。
また、入力アナログオーディオ信号の信号レベルを監視しているときに、所定の第2の基準レベル(>第1の基準レベル)を越えて過大となったとき、A/D変換部22の入力レベルを最適化し、過大入力によるクリップが生じないようにするため、入力ゲイン切り換え部21のゲインを1段階下げ、その分出力ゲイン切り換え部28のゲインを1段階上げる。この際、入力ゲイン切り換え部21のゲインに対応する補正係数をレベル補正部23にセットし、A/D変換後のディジタルオーディオ信号に補正係数を乗じて、入力ゲイン切り換え部21のゲイン誤差を補正させるとともに、ディジタル信号処理部24に対し過去のサンプルデータを算術シフト演算(1ビット右シフト)により1/2倍の大きさに補正させて、ゲイン切り換え前後で外部に出力される出力アナログオーディオ信号Aoutが不連続とならないようにする。図5のA/D変換部22からD/A変換部27までがディジタル領域である。なお、ディジタル領域ではサンプルデータがnビット長で表現されるものとし、MSBが±の符号を表すものとする。但し、ディジタル信号処理部24は下位側に5ビット拡張して(n+5)ビット長で演算を行い、出力時にnビットに丸めるものとする。
【0016】
図7と図8は制御部31による測定時と通常時の制御処理を示すフローチャートであり、以下、これらの図を参照して上記した実施例の動作を説明する。
なお、ここでは、入力ゲイン切り換え部21の×1のゲインを基準とし(補正はしない)、他の段階のゲインの相対誤差を打ち消すように補正するものとする。
(1)測定時
装置の電源がオンすると、制御部31はスイッチ部20と26を測定モード側に切り換えさせ、基準信号生成部25に振幅がディジタル領域のフルスケールの半分より2割程度小さく、1kHz正弦波からなるディジタル基準信号を生成させ、更に入力ゲイン切り換え部21のゲインを第1段階の×1に切り換えさせる(図7のステップS10〜S12)。ディジタル基準信号の生成は正弦波の1周期分の波形のサンプルデータを繰り返し出力することで行なう。ディジタル基準信号はスイッチ部26を介してD/A変換部27に入力され、アナログ基準信号STに変換されたのち、スイッチ部20を介して入力ゲイン切り換え部21に入力される。ここで、ゲインが×1されたあと、A/D変換部22によりディジタル信号に変換される。そして、レベル測定部29によりピーク値が測定されて制御部31に入力される。制御部31は、入力したピーク値を基準レベルSPとして補正係数記憶部30に記憶し、かつ、第1段階のゲインの補正係数P1を1として記憶する(ステップS13〜S15)。
【0017】
次に、入力ゲイン切り換え部21のゲインを1段階上げて×2に切り換えさせるとともに、基準信号生成部25に算術シフト演算によりディジタル基準信号の1周期分の波形の各サンプルデータを1ビット右シフトして振幅をそれまでの1/2倍とする(ステップS16〜S18)。この結果、アナログの基準信号STは振幅が1/2倍となって入力ゲイン切り換え部21に入力され、ゲインが×2とされる。制御部31は、レベル測定部29から入力したピーク値で基準レベルSPを除して×2の補正係数P2を計算し、補正係数記憶部30に記憶する(ステップS19、S20)。次に、入力ゲイン切り換え部21のゲインを1段階上げて×4に切り換えさせるとともに、基準信号生成部25に算術シフト演算によりディジタル基準信号の1周期分の波形の各サンプルデータを更に1ビット右シフトして振幅を更に1/2倍とし、レベル測定部29から入力したピーク値を基準レベルSPで除して×4の補正係数P3を計算し、補正係数記憶部30に記憶する(ステップS21でNO、S22、S17〜S20)。以下、第6段階の×32まで同様の処理を繰り返す。これにより、電源がオンされる度に、入力ゲイン切り換え部21の各段階のゲインの補正係数P1〜P6が決定されて補正係数記憶部30に記憶される。
【0018】
(2)通常時
補正係数の決定が終ると、制御部31は、スイッチ部20と26を通常モード側に切り換えさせるとともに入力ゲイン切り換え部21のゲインを第1段階の×1、出力ゲイン切り換え部28のゲインを第6段階の×1/1に切り換えさせる(図7のステップS21でYES、図8のステップS30、S31)。またレベル補正部23に×1に対応する補正係数P1=1をセットする(ステップS32)。音量調整後の入力アナログオーディオ信号Ainはスイッチ部20を介して入力ゲイン切り換え部21に入力され、ゲインが×1されたあとA/D変換部22によりディジタルオーディオ信号に変換される。そして、レベル補正部23で補正係数1が乗じられたあと、ディジタル信号処理部24で3次FIRフィルタにより低域成分が抽出される。そして、スイッチ部26を介してD/A変換部27に入力され、アナログオーディオ信号に変換されたあと、出力ゲイン切り換え部28でゲインが×1/1されて後段へ出力される。制御部31は常時、レベル測定部29で測定されたディジタルオーディオ信号のレベル(ここではピーク値)を監視しており(ステップS33)、一定時間以上、第1の基準レベルを下回る小レベル状態が続いているかの判断と、所定の一定レベル(=第2の基準レベル)を越えて過大になったかの判断を繰り返している(ステップS34、S35の繰り返し)。
【0019】
若し、一定時間以上小レベル状態が続き、ステップS34でYESとなったとき、現在入力ゲイン切り換え部21がまだ第6段階でないので、入力ゲイン切り換え部21を第2段階の×2に切り換えてA/D変換部22のダイナミックレンジに対し最適化し、その分出力ゲイン切り換え部28を第5段階の×1/2に切り換える(ステップS36〜S38)。続いて、補正係数記憶部30から第2段階用の補正係数P2を読み出してレベル補正部23にセットし、入力ゲイン切り換え部21からレベル補正部23までのゲインが第1段階に対し正確に2倍となるようにし、かつ、ディジタル信号処理部24に対しFIRフィルタの過去のサンプルデータを算術シフト演算で1ビット左シフトして2倍の大きさとする(ステップS39、S40)。これにより、出力ゲイン切り換え部28から出力されるアナログオーディオ信号がゲイン切り換え前後で不連続となるのが防止される。
【0020】
その後、再び一定時間以上の小レベル状態が続いたとき、ステップS34でYESと判断し、入力ゲイン切り換え部21を第3段階の×4に切り換えてA/D変換部22のダイナミックレンジに対し最適化し、その分入力ゲイン切り換え部21を第4段階の×1/4に切り換える(ステップS36〜S38)。続いて、補正係数記憶部30から第3段階用の補正係数P3を読み出してレベル補正部23にセットし、入力ゲイン切り換え部21からレベル補正部23までのゲインが第1段階に対し正確に4倍となるようにし、かつ、ディジタル信号処理部24に対しFIRフィルタの過去のサンプルデータを算術シフト演算で1ビット左シフトして2倍の大きさとする(ステップS39、S40)。
【0021】
その後、測定レベルが所定の一定レベルを越える過大になったとき、ステップS35でYESと判断し、現在入力ゲイン切り換え部21がまだ第1段階でないので、入力ゲイン切り換え部21を第2段階の×2に戻してA/D変換部22のダイナミックレンジに対し過大入力とならないように最適化し、その分出力ゲイン切り換え部28を第5段階の×1/2に切り換える(ステップS41〜S43)。続いて、補正係数記憶部30から第2段階用の補正係数P2を読み出してレベル補正部23にセットし、入力ゲイン切り換え部21からレベル補正部23までのゲインが第1段階に対し正確に2倍となるようにし、かつ、ディジタル信号処理部24に対しFIRフィルタの過去のサンプルデータを算術シフト演算で1ビット右シフトして1/2倍の大きさとする(ステップS44、S45)。これにより、ゲイン切り換えの前後で出力ゲイン切り換え部28から出力されるアナログオーディオ信号が不連続となるのが防止される。
【0022】
この実施例によれば、A/D変換対象の入力アナログオーディオ信号のレベルに応じて入力ゲイン切り換え部21のゲインを切り換え、レベルを最適化してA/D変換部22に入力することで、A/D変換で生じる量子化歪を低減することができる。また、基準信号を用いて入力ゲイン切り換え部21の各段階のゲインの誤差を打ち消すための各段階別の補正係数を決定し、入力ゲイン切り換え部21にA/D変換対象のアナログオーディオ信号が印加されているときに、入力ゲイン切り換え部21のゲインに応じてA/D変換部22から出力されたディジタルオーディオ信号に対しレベル補正を行なうようにしたので、アナログ回路で構成される入力ゲイン切り換え部21の各段階のゲインに誤差があっても、信号に対するゲインを正確に切り換えることができる。
また、A/D変換後のディジタルオーディオ信号をディジタル信号処理する場合、入力ゲイン切り換え部21のゲイン切り換えと連動してディジタル信号処理部24に保持された過去のサンプルデータのレベルを切り換える必要があるが、入力ゲイン切り換え部21の複数段階のゲイン設定値を2の乗数倍で切り換えるようにしたので、過去のサンプルデータのレベルの切り換えを算術シフト演算(右シフトまたは左シフト)で簡単に実行することができる。
【0023】
なお、上記した実施例では、第1段階のゲインを基準にしたときの第2段階乃至第6段階のゲインの相対誤差を打ち消すように補正したが、各段階のゲインの絶対誤差を打ち消すように補正しても良い。この場合、振幅Wが既知のディジタル基準信号STをD/A変換後、第3段階のゲインに切り換えられた入力ゲイン切り換え部21に入力させた状態でレベル測定部29でピーク値wが測定されたとき、補正係数P3は、
W×4=w×P3
P3=(W/w)×4
となる。他の段階の補正係数も同様にして求めることができる。
また、上記した実施例では、通常時に、D/A変換部27から出力されたアナログ信号を出力ゲイン切り換え部28によりレベルを可変したのち外部へ出力するようにしたが、とくにレベル可変が必要でなければD/A変換部27の出力をそのまま外部へ出力するようにしても良い(符号Aout’参照)。更に、アナログ形式への変換も必要なければ、スイッチ部26から出力されたディジタル信号をそのまま外部へ出力するようにしても良い(符号Dout参照)。
【実施例2】
【0024】
図9を参照して本発明の第2実施例を説明する。図9は本発明に係る帯域制限用信号処理装置の構成を示すブロック図であり、図5と同一の構成部分には同一の符号が付してある。
図5の第1実施例では、A/D変換部の前段に、A/D変換対象の入力アナログオーディオ信号のレベルに応じてゲインを切り換え、A/D変換部の入力レベルを最適化する入力ゲイン切り換え部を設け、この入力ゲイン切り換え部のゲイン誤差を補正するようにしたのに対し、図9ではD/A変換部の前段に、D/A変換対象のディジタルオーディオ信号のレベルに応じてゲインを切り換え、D/A変換部の入力レベルを最適化するゲイン切り換え部を設けるとともに、D/A変換部の後段に前記ゲイン切り換え部のゲインを相殺するようにゲインが切り換えられる出力ゲイン切り換え部を設け、さらにD/A変換部の前段にレベル補正部を装入し、出力ゲイン切り換え部のゲイン誤差を補正するようにしたものである。
図9において、32はスイッチ部であり、通常モード時は入力アナログオーディオ信号Ainを選択して出力し、測定モード時は後述する出力ゲイン切り換え部28から出力されたアナログの基準信号ST’を選択して出力する。24Aはディジタル信号処理部であり、図6に示す3次FIRフィルタのシグナルフローに従い、所定のカットオフ周波数以下の成分だけ通過させる低域通過フィルタとしての信号処理を実行する。33はディジタル信号処理部24Aから出力された帯域制限後のディジタルオーディオ信号に対するゲインを切り換えるゲイン切り換え部であり、算術シフト演算によりゲインを第1乃至第6の6段階に2の乗数倍に切り換え可能とする。第1段階は×1、第2段階は×2、第3段階は×4、第4段階は×8、第5段階は×16、第6段階は×32のゲインに設定されている。ゲイン切り換え部33はゲインを×1とするとき、ディジタル信号処理部24Aから出力されたディジタルオーディオ信号のサンプルデータをそのまま出力させ、ゲインを×2k (但し、k=1、2、3、4、5)とするとき、サンプルデータを算術シフト演算によりkビット左シフトして信号レベルを可変する。
【0025】
28はD/A変換後のアナログオーディオ信号に対するゲインを切り換え可能な出力ゲイン切り換え部である。この出力ゲイン切り換え部28はゲインを第1乃至第6の6段階に1/2の乗数倍に切り換え可能とする。第1段階は×1/32、第2段階は×1/16、第3段階は×1/8、第4段階は×1/4、第5段階は×1/2、第6段階は×1/1のゲインに設定されている。但し、素子部品の回路定数の選択の制限と回路定数のバラツキから各段階の実際のゲインは設定値と一致せず誤差がある。この誤差は後述するように、ディジタル領域で補正される。34はレベル補正部であり、D/A変換対象のディジタルオーディオ信号に対し、出力ゲイン切り換え部28のゲイン誤差を打ち消すようにレベル補正を行う。25は出力ゲイン切り換え部28のゲイン測定用のディジタル基準信号を生成する基準信号生成部、26は通常時はレベル補正部34を介して入力されたディジタル信号処理後のディジタルオーディオ信号を選択して出力し、測定時は基準信号生成部25から入力されたディジタル基準信号を選択して出力するスイッチ部、30Aは補正係数記憶部であり、出力ゲイン切り換え部28の各段階の補正係数を記憶する。35はスイッチ部であり、通常モード時はレベル補正部34の出力を選択してレベル測定部29へ出力し、測定モード時はA/D変換部22の出力を選択して出力する。
【0026】
31Aは制御部であり、測定時は1kHzの正弦波からなる基準信号を出力ゲイン切り換え部28に印加させ、スイッチ部32、A/D変換部22、スイッチ部35を介してレベル測定部29に入力し、出力ゲイン切り換え部28のゲインを第6乃至第1段階に順に切り換えながら、各段階でのレベル測定部29で測定した信号レベルを用いて出力ゲイン切り換え部28の各段階のゲインの誤差を打ち消すための各段階別の補正係数を決定し、補正係数記憶部30Aに記憶させる。通常時は、レベル補正部34からスイッチ部26を介してD/A変換部27に入力されるディジタルオーディオ信号の信号レベルを監視し、所定の第1の基準レベルを下回った小レベル状態が一定時間継続したとき、D/A変換部27の入力レベルを最適化して量子化歪が顕著にならないようにするため、ゲイン切り換え部33のゲインを1段階増大させ、その分出力ゲイン切り換え部28のゲインを1段階下げる。この際、出力ゲイン切り換え部28のゲインに対応する補正係数をレベル補正部34にセットし、D/A変換対象のディジタルオーディオ信号に補正係数を乗じて、出力ゲイン切り換え部28のゲイン誤差を補正させて、ゲイン切り換え前後で出力アナログオーディオ信号Aoutが不連続とならないようにする。
また、D/A変換部27に入力されるディジタルオーディオ信号の信号レベルを監視しているときに、所定の第2の基準レベル(>第1の基準レベル)を越えて過大となったとき、D/A変換部27の入力レベルを最適化し、過大入力によるクリップが生じないようにするため、ゲイン切り換え部33のゲインを1段階下げ、その分出力ゲイン切り換え部28のゲインを1段階上げる。この際、出力ゲイン切り換え部28のゲインに対応する補正係数をレベル補正部34にセットし、D/A変換対象のディジタルオーディオ信号に補正係数を乗じて、出力ゲイン切り換え部28のゲイン誤差を補正させて、ゲイン切り換え前後で出力アナログオーディオ信号Aoutが不連続とならないようにする。図9のA/D変換部22からD/A変換部27までがディジタル領域である。なお、ディジタル領域ではサンプルデータがnビット長で表現されるものとし、MSBが±の符号を表すものとする。但し、ディジタル信号処理部24Aは下位側に5ビット拡張して(n+5)ビット長で演算を行い、ゲイン切り換え部33への出力も(n+5)ビット長で行い、ゲイン切り換え部33は算術シフト演算後、出力する際にnビットに丸めるものとする。
他の構成部分は図5と同様に構成されている。
【0027】
図10と図11は制御部31Aによる測定時と通常時の制御処理を示すフローチャートであり、以下、これらの図を参照して上記した第2実施例の動作を説明する。
なお、ここでは、出力ゲイン切り換え部28の×1/1のゲインを基準とし(補正はしない)、他の段階のゲインの相対誤差を打ち消すように補正するものとする。
(1)測定時
装置の電源がオンすると、制御部31Aはスイッチ部32、26、35を測定モード側に切り換えさせ、基準信号生成部25に振幅がディジタル領域のフルスケールの1/2より2割程度小さく、1kHz正弦波からなるディジタル基準信号を生成させ、更に出力ゲイン切り換え部28のゲインを第6段階の×1/1に切り換えさせる(図10のステップS50〜S52)。ディジタル基準信号の生成は正弦波の1周期分の波形のサンプルデータを繰り返し出力することで行なう。ディジタル基準信号はスイッチ部26を介してD/A変換部27に入力され、アナログ基準信号に変換されたのち、出力ゲイン切り換え部28に入力される。ここで、ゲインが×1されたあと、アナログ基準信号ST’としてスイッチ部32を介してA/D変換部22に入力され、ディジタル信号に変換される。そして、レベル測定部29によりピーク値が測定されて制御部31Aに入力される。制御部31Aは、入力したピーク値を基準レベルSQとして補正係数記憶部30Aに記憶し、かつ、第6段階のゲインの補正係数Q6を1として記憶する(ステップS53〜S55)。
【0028】
次に、出力ゲイン切り換え部28のゲインを1段階下げて×1/2に切り換えさせ(ステップS56、S57)、レベル測定部29から入力したピーク値で基準レベルSQの1/2のレベルを除して×1/2の補正係数Q5を計算し、補正係数記憶部30Aに記憶する(ステップS58、S59)。次に、出力ゲイン切り換え部28のゲインを1段階下げて×1/4に切り換えさせ、レベル測定部29から入力したピーク値を基準レベルSQの1/4のレベルで除して×1/4の補正係数Q4を計算し、補正係数記憶部30Aに記憶する(ステップS60でNO、S61、S57〜S59)。以下、第1段階の×1/32まで同様の処理を繰り返す。これにより、電源がオンされる度に、出力ゲイン切り換え部28の各段階のゲインの補正係数Q1〜Q6が決定されて補正係数記憶部30Aに記憶される。
【0029】
(2)通常時
補正係数の決定が終ると、制御部31Aは、スイッチ部32、26、35を通常モード側に切り換えさせるとともにゲイン切り換え部33のゲインを第1段階の×1、出力ゲイン切り換え部28のゲインを第6段階の×1/1に切り換えさせる(図10のステップS61でYES、図11のステップS80、S81)。またレベル補正部34に×1/1に対応する補正係数Q6=1をセットする(ステップS82)。音量調整後の入力アナログオーディオ信号Ainはスイッチ部32を介してA/D変換部22に入力され、ディジタルオーディオ信号に変換される。そして、ディジタル信号処理部24Aで3次FIRフィルタにより低域成分が抽出される。ディジタル信号処理後のディジタルオーディオ信号はゲイン切り換え部33によりゲインが×1(シフト無し)とされ、更にレベル補正部34で補正係数1が乗じられたあと、スイッチ部26を介してD/A変換部27に入力され、アナログオーディオ信号に変換されたあと、出力ゲイン切り換え部28でゲインが×1/1されて後段へ出力される。制御部31Aは常時、レベル測定部29で測定されたディジタルオーディオ信号のレベル(ここではピーク値)を監視しており(ステップS83)、一定時間以上小レベル状態が続いているかの判断と、一定レベルを越えて過大になったかの判断を繰り返している(ステップS84、S85の繰り返し)。
【0030】
若し、一定時間以上小レベル状態が続き、ステップS84でYESとなったとき、現在ゲイン切り換え部33がまだ第6段階でないので、ゲイン切り換え部21を第2段階の×2に切り換え(入力したサンプルデータに対し算術シフト演算により、1ビット左シフトさせる)、D/A変換部27のダイナミックレンジに対し最適化し、その分出力ゲイン切り換え部28を第5段階の×1/2に切り換える(ステップS86〜S88)。続いて、補正係数記憶部30Aから第5段階用の補正係数Q5を読み出してレベル補正部34にセットし、レベル補正部34から出力ゲイン切り換え部28までのゲインが第6段階に対し正確に1/2倍となるようにする(ステップS89)。これにより、ゲイン切り換え前後で出力ゲイン切り換え部28から出力されるアナログオーディオ信号Aoutが不連続となるのが防止される。
【0031】
その後、再び一定時間以上の小レベル状態が続いたとき、ステップS84でYESと判断し、ゲイン切り換え部33を第3段階の×4に切り換え(入力したサンプルデータに対し算術シフト演算により、2ビット左シフトさせる)、D/A変換部27のダイナミックレンジに対し最適化し、その分出力ゲイン切り換え部28を第4段階の×1/4に切り換える(ステップS86〜S88)。続いて、補正係数記憶部30Aから第4段階用の補正係数Q4を読み出してレベル補正部34にセットし、レベル補正部34から出力ゲイン切り換え部28までのゲインが第6段階に対し正確に1/4倍となるようにする(ステップS89)。
【0032】
その後、測定レベルが一定レベルを越える過大になったとき、ステップS85でYESと判断し、現在ゲイン切り換え部33がまだ第1段階でないので、ゲイン切り換え部33を第2段階の×2に切り換え(入力したサンプルデータに対し算術シフト演算により、1ビット左シフトさせる)、D/A変換部27のダイナミックレンジに対し過大入力とならないように最適化し、その分出力ゲイン切り換え部28を第5段階の×1/2に切り換える(ステップS90〜S92)。続いて、補正係数記憶部30Aから第5段階用の補正係数Q5を読み出してレベル補正部34にセットし、レベル補正部34から出力ゲイン切り換え部28までのゲインが第6段階に対し正確に1/2倍となるようにする(ステップS93、S94)。これにより、ゲイン切り換え前後で出力ゲイン切り換え部28Aから出力されるアナログオーディオ信号Aoutが不連続となるのが防止される。
【0033】
この実施例によれば、D/A変換対象のディジタルオーディオ信号のレベルに応じてゲイン切り換え部33のゲインを切り換え、レベルを最適化してD/A変換部27に入力することで、D/A変換で生じる量子化歪を低減することができる。また、基準信号を用いて出力ゲイン切り換え部28の各段階のゲインの誤差を打ち消すための各段階別の補正係数を決定し、出力ゲイン切り換え部28にD/A変換されたアナログオーディオ信号が印加されているときに、出力ゲイン切り換え部28のゲインに応じてD/A変換対象のディジタルオーディオ信号に対しレベル補正を行なうようにしたので、アナログ回路で構成される出力ゲイン切り換え部28の各段階のゲインに誤差があっても、信号に対するゲインを正確に切り換えることができる。
また、ゲイン切り換え部33は信号処理部24Aの出力に対するゲインを2の乗数倍で切り換えるようにしたので、ゲイン切り換えのための演算をビットシフト動作で簡単に実行することができる。
【0034】
なお、上記した第2実施例では、第6段階のゲインを基準にしたときの第2段階乃至第5段階のゲインの相対誤差を打ち消すように補正したが、各段階のゲインの絶対誤差を打ち消すように補正しても良い。この場合、例えば振幅Yが既知のディジタル基準信号をD/A変換し第3段階の×1/8のゲインに切り換えられた出力ゲイン切り換え部28に入力させた状態でレベル測定部29でピーク値yが測定されたとき、補正係数Q3は、
Y×(1/8)=y×Q3
Q3=(X/y)×(1/8)
となる。他の段階の補正係数も同様にして求めることができる。
また、上記した第2実施例では、通常時に、アナログオーディオ信号Ainをスイッチ部32を介してA/D変換部22に入力するようにしたが、前段機器がディジタル出力の場合、図12に示す如く、ディジタルオーディオ信号Dinを直接、ディジタル信号処理部24Aに入力させるようにしても良い。この場合、アナログ基準信号ST’は直接、A/D変換部22に入力すれば良い。
【実施例3】
【0035】
図13を参照して本発明の第3実施例を説明する。図13は本発明に係る音量調整装置の構成を示すブロック図であり、図9と同一の構成部分には同一の符号が付してある。この第3実施例の音量調整装置は、ディジタル領域で0〜−5dBまで1dBステップで減衰を行い、アナログ領域で0〜−30dBまで6dBステップで減衰を行い、全体で0〜−35dBの範囲を1dBステップで音量調整可能としたものである。
図13において、32はスイッチ部であり、通常モード時は音量調整対象の入力アナログオーディオ信号Ainを選択して出力し、測定モード時は後述する出力ゲイン切り換え部28Bから出力されたアナログの基準信号ST’を選択して出力する。24Bはディジタル信号処理部であり、ディジタルオーディオ信号に対し0dB〜−5dBの範囲で1dBのステップ幅でゲインを切り換えるための演算処理(0dB、−1dB、−2dB、−3dB、−4dB、−5dBに相当するゲイン係数の乗算処理)を実行する。28BはD/A変換後のアナログオーディオ信号に対するゲインを切り換え可能な出力ゲイン切り換え部である。この出力ゲイン切り換え部28Bはゲイン(ここでは0dB以下の減衰)を第1乃至第6の6段階に切り換え可能とする。第1段階は0dB、第2段階は−6dB、第3段階は−12dB、第4段階は−18dB、第5段階は−24dB、第6段階は−30dBのゲインに設定されている。但し、素子部品の回路定数の選択の制限と回路定数のバラツキから各段階の実際のゲインは設定値と一致せず誤差がある。この誤差は後述するように、ディジタル領域で補正される。34はレベル補正部であり、D/A変換対象のディジタルオーディオ信号に対し、出力ゲイン切り換え部28Bのゲイン誤差を打ち消すようにレベル補正を行う。25は出力ゲイン切り換え部28のゲイン測定用のディジタル基準信号を生成する基準信号生成部、26は通常時はレベル補正部34を介して入力されたディジタル信号処理後のディジタルオーディオ信号を選択して出力し、測定時は基準信号生成部25から入力されたディジタル基準信号を選択して出力するスイッチ部、30Bは記憶部であり、出力ゲイン切り換え部28Bの各段階の補正係数を記憶する。記憶部30Bには目標音量に対して、ディジタル信号処理部24Bと出力ゲイン切り換え部28Bにセットするゲインの組合せを表した図14の如く制御テーブルが記憶されている。29はレベル測定部であり、測定モード時にA/D変換部22から出力されるディジタル信号の信号レベルを測定する。
【0036】
31Bは制御部であり、測定時は1kHzの正弦波からなる基準信号を出力ゲイン切り換え部28Bに印加させ、スイッチ部32、A/D変換部22を介してレベル測定部29に入力し、出力ゲイン切り換え部28Bのゲインを第6乃至第1段階に順に切り換えながら、各段階でのレベル測定部29で測定した信号レベルを用いて出力ゲイン切り換え部28Bの各段階のゲインの誤差を打ち消すための各段階別の補正係数を決定し、記憶部30Bに記憶させる。通常時は、外部の図示しない音量可変操作部から入力した目標音量に基づき、記憶部30Bの制御テーブルを参照してディジタル信号処理部24Bと出力ゲイン切り換え部28Bに対するゲイン切り換え制御を行なうとともに、出力ゲイン切り換え部28Bのゲイン誤差を補正させて、目標音量の変化に対する出力信号レベルの直線性を改善する。図13のA/D変換部22からD/A変換部27までがディジタル領域、D/A変換部27から出力ゲイン切り換え部28Bまでがアナログ領域である。なお、ディジタル領域ではサンプルデータがnビット長で表現されるものとし、MSBが±の符号を表すものとする。ディジタル信号処理部24Bは下位側に5ビット拡張して(n+5)ビット長で演算を行い、出力する際にnビットに丸めるものとする。
他の構成部分は図9と同様に構成されている。
【0037】
図15と図16は制御部31Bによる測定時と通常時の制御処理を示すフローチャートであり、以下、これらの図を参照して上記した第3実施例の動作を説明する。
なお、ここでは、出力ゲイン切り換え部28Bの0dBのゲインを基準とし(補正はしない)、他の段階のゲインの相対誤差を打ち消すように補正するものとする。
(1)測定時
装置の電源がオンすると、制御部31Bはスイッチ部32、26を測定モード側に切り換えさせ、基準信号生成部25に振幅がディジタル領域のフルスケールの1/2より2割程度小さく、1kHz正弦波からなるディジタル基準信号を生成させ、更に出力ゲイン切り換え部28Bのゲインを第6段階の0dBに切り換えさせる(図15のステップS200〜S202)。ディジタル基準信号の生成は正弦波の1周期分の波形のサンプルデータを繰り返し出力することで行なう。ディジタル基準信号はスイッチ部26を介してD/A変換部27に入力され、アナログ基準信号に変換されたのち、出力ゲイン切り換え部28Bに入力される。ここで、ゲインが0dBとされたあと、アナログ基準信号ST’としてスイッチ部32を介してA/D変換部22に入力され、ディジタル信号に変換される。そして、レベル測定部29によりピーク値が測定されて制御部31Bに入力される。制御部31Bは、入力したピーク値を基準レベルSQ’として記憶部30Bに記憶し、かつ、第6段階のゲインの補正係数Q6’を1として記憶する(ステップS203〜S205)。
【0038】
次に、出力ゲイン切り換え部28Bのゲインを1段階下げて−6dBに切り換えさせ(ステップS206、S207)、レベル測定部29から入力したピーク値で基準レベルSQ’より−6dB落としたレベルを除して−6dBの補正係数Q5’を計算し、記憶部30Bに記憶する(ステップS208、S209)。次に、出力ゲイン切り換え部28Bのゲインを1段階下げて−12dBに切り換えさせ、レベル測定部29から入力したピーク値を基準レベルSQ’より−12dB落としたレベルで除して−12dBの補正係数Q4’を計算し、記憶部30Bに記憶する(ステップS2100でNO、S211、S207〜S208)。以下、第1段階の−30dBまで同様の処理を繰り返す。これにより、電源がオンされる度に、出力ゲイン切り換え部28Bの各段階のゲインの補正係数Q1’〜Q6’が決定されて記憶部30Bに記憶される。
【0039】
(2)通常時
補正係数の決定が終ると、制御部31Bは、スイッチ部32、26を通常モード側に切り換えさせる(図15のステップS210でYES、図16のステップS220)。そして、目標音量を入力し、制御テーブルを参照してディジタル信号処理部24Bのゲインと出力ゲイン切り換え部28Bのゲインを決定し、ディジタル信号処理部24Bのゲインと出力ゲイン切り換え部28Bのゲインの切り換え制御を行なう(ステップS222)。続いて、出力ゲイン切り換え部28Bのゲインに対する補正係数をレベル補正部34にセットする(ステップS223)。音量調整対象の入力アナログオーディオ信号Ainはスイッチ部32を介してA/D変換部22に入力され、ディジタルオーディオ信号に変換される。そして、ディジタル信号処理部24Bで制御部31Bにより設定されたゲイン分だけ信号レベルの可変演算を行なう。ディジタル信号処理後のディジタルオーディオ信号はレベル補正部34で補正係数が乗じられたあと、スイッチ部26を介してD/A変換部27に入力され、アナログオーディオ信号に変換されたあと、更に出力ゲイン切り換え部28Bで制御部31Bにより設定されたゲイン分だけ信号レベルが可変される。
【0040】
例えば、目標音量が−20dBであったとき、ディジタル信号処理部24Bで−2dB、出力ゲイン切り換え部28Bで−18dBに減衰されるとともに、出力ゲイン切り換え部28Bの−18dBのゲイン誤差を打ち消す補正係数Q4’がレベル補正部34にセットされるので、全体として、出力オーディオ信号Aoutの音量は正確に−20dBとなる。
制御部31Bは目標音量の変化を監視しており、変化があれば、前述と同様にして、制御テーブルを参照してディジタル信号処理部24Bのゲインと出力ゲイン切り換え部28Bのゲインを決定し、ディジタル信号処理部24Bのゲインと出力ゲイン切り換え部28Bのゲインの切り換え制御を行なう(ステップS225、S226でYES、S222、S223)。続いて、出力ゲイン切り換え部28Bのゲインに対する補正係数をレベル補正部34にセットする(ステップS224)。
【0041】
この実施例によれば、出力ゲイン切り換え部28Bのゲイン切り換えは6段階で良いので構成が簡単で済み、また、ディジタル信号処理部24Bは0〜5dBの範囲で減衰させるだけなので、小音量時でも量子化歪が大きくならない。そして、また、基準信号を用いて出力ゲイン切り換え部28Bの各段階のゲインの誤差を打ち消すための各段階別の補正係数を決定し、出力ゲイン切り換え部28にD/A変換されたアナログオーディオ信号が印加されているときに、出力ゲイン切り換え部28Bのゲインに応じてD/A変換対象のディジタルオーディオ信号に対しレベル補正を行なうようにしたので、アナログ回路で構成される出力ゲイン切り換え部28Bの各段階のゲインに誤差があっても、信号に対するゲインを正確に切り換えることができ、目標音量に対する出力信号レベルの直線性が良好となる。
【0042】
なお、上記した第3実施例では、第6段階のゲインを基準にしたときの第2段階乃至第5段階のゲインの相対誤差を打ち消すように補正したが、各段階のゲインの絶対誤差を打ち消すように補正しても良い。
また、上記した第3実施例では、通常時に、アナログオーディオ信号Ainをスイッチ部32を介してA/D変換部22に入力するようにしたが、前段機器がディシダル出力の場合、ディジタルオーディオ信号を直接、ディジタル信号処理部24Bに入力させるようにしても良い。この場合、アナログ基準信号ST’は直接、A/D変換部22に入力すれば良い。
【実施例4】
【0043】
図17を参照して本発明の第4実施例を説明する。図17は本発明に係る帯域制限用信号処理装置の構成を示すブロック図であり、図5、図9と同一の構成部分には同一の符号が付してある。
図17は図5と図9を合わせた構成を有し、A/D変換部の前段に入力ゲイン切り換え部、D/A変換部の前段にゲイン切り換え部、D/A変換部の後段に出力ゲイン切り換え部を設け、入力ゲイン切り換え部のゲイン誤差と出力ゲイン切り換え部のゲイン誤差を補正するようにしたものである。
図17において、20は通常モード時、入力アナログオーディオ信号Ainを選択し、第1測定モード時、基準信号STを選択するスイッチ部、21は入力ゲイン切り換え部であり、音量調整後の入力アナログオーディオ信号Ainに対するゲインを第1段階は×1、第2段階は×2、第3段階は×4、第4段階は×8、第5段階は×16、第6段階は×32のゲインに切り換え可能である。32は通常モード時と第1測定モード時、入力ゲイン切り換え部21の出力を選択し、第2測定モード時、基準信号ST´を選択する。23Cは入力レベル切り換え部21のゲイン誤差を打ち消すためのレベル補正を行なう第1レベル補正部、33はゲイン切り換え部であり、信号処理後のディジタルオーディオ信号に対するゲインを算術シフト演算により第1段階は×1、第2段階は×2、第3段階は×4、第4段階は×8、第5段階は×16、第6段階は×32のゲインに切り換え可能である。28は出力ゲイン切り換え部であり、D/A変換後のアナログオーディオ信号に対するゲインを第1段階は×1/32、第2段階は×1/16、第3段階は×1/8、第4段階は×1/4、第5段階は×1/2、第6段階は×1/1のゲインに切り換え可能である。34Cは第2レベル補正部であり、D/A変換対象のディジタルオーディオ信号に対し、出力ゲイン切り換え部28のゲイン誤差を打ち消すようにレベル補正を行う。
【0044】
25は入力ゲイン切り換え部21と出力ゲイン切り換え部28のゲイン測定用のディジタル基準信号を生成する基準信号生成部、29CはA/D変換部22から出力されたディジタル信号のレベルをピーク値から測定する第1レベル測定部、36はD/A変換部27に入力されるディジタル信号のレベルをピーク値から測定する第2レベル測定部、30Cは補正係数記憶部であり、入力ゲイン切り換え部21と出力ゲイン切り換え部28の各段階の補正係数を記憶する。
【0045】
31Cは制御部であり、第1測定時は1kHzの正弦波からなる基準信号をスイッチ部20を介して入力ゲイン切り換え部21に印加させ、スイッチ部32、A/D変換部22を介して第1レベル測定部29Cに入力し、入力ゲイン切り換え部21のゲインを第1乃至第6段階に順に切り換えながら、各段階での第1レベル測定部29Cで測定した信号レベルを用いて入力ゲイン切り換え部21の各段階のゲインの誤差を打ち消すための各段階別の補正係数を決定し、補正係数記憶部30Cに記憶させる。第2測定時は1kHzの正弦波からなる基準信号を出力ゲイン切り換え部28に印加させ、スイッチ部32、A/D変換部22を介して第1レベル測定部29Cに入力し、出力ゲイン切り換え部28のゲインを第6乃至第1段階に順に切り換えながら、各段階での第1レベル測定部29Cで測定した信号レベルを用いて出力ゲイン切り換え部28の各段階のゲインの誤差を打ち消すための各段階別の補正係数を決定し、補正係数記憶部30Cに記憶させる。
【0046】
通常時、制御部31Cは入力ゲイン切り換え部21を介してA/D変換部22に入力された入力アナログオーディオ信号の信号レベルを監視し、所定の第1の基準レベルを下回った小レベル状態が一定時間継続したとき、A/D変換部22の入力レベルを最適化して量子化歪が顕著にならないようにするため、入力ゲイン切り換え部21のゲインを1段階上げ、その分出力ゲイン切り換え部28のゲインを1段階下げる。また、入力アナログオーディオ信号の信号レベルを監視しているときに、所定の第2の基準レベル(>第1の基準レベル)を越えて過大となったとき、A/D変換部22の入力レベルを最適化し、過大入力によるクリップが生じないようにするため、入力ゲイン切り換え部21のゲインを1段階下げ、その分出力ゲイン切り換え部28のゲインを1段階上げる。そして、入力ゲイン切り換え部21のゲインに対応する補正係数を第1レベル補正部23Cにセットし、A/D変換部22から出力されたディジタルオーディオ信号に補正係数を乗じて、入力ゲイン切り換え部21のゲイン誤差を補正させるとともに、出力ゲイン切り換え部28のゲインに対応する補正係数を第2レベル補正部34Cにセットし、D/A変換対象のディジタルオーディオ信号に補正係数を乗じて、出力ゲイン切り換え部28のゲイン誤差を補正させる。また、ディジタル信号処理部24Aに対し過去のサンプルデータを算術シフト演算(1ビット左シフトまたは1ビット右シフト)により2倍または1/2倍の大きさに補正させて、ゲイン切り換え前後で出力アナログオーディオ信号Aoutが不連続とならないようにする。
【0047】
また通常時、制御部31Cは第2レベル補正部34Cからスイッチ部26を介してD/A変換部27に入力されるディジタルオーディオ信号の信号レベルを監視し、所定の第1の基準レベルを下回った小レベル状態が一定時間継続したとき、D/A変換部27の入力レベルを最適化して量子化歪が顕著にならないようにするため、ゲイン切り換え部33のゲインを1段階増大させ、その分出力ゲイン切り換え部28のゲインを1段階下げる。また、D/A変換部27に入力されるディジタルオーディオ信号の信号レベルを監視しているときに、所定の第2の基準レベル(>第1の基準レベル)を越えて過大となったとき、D/A変換部27の入力レベルを最適化し、過大入力によるクリップが生じないようにするため、ゲイン切り換え部33のゲインを1段階下げ、その分出力ゲイン切り換え部28のゲインを1段階上げる。そして、出力ゲイン切り換え部28のゲインに対応する補正係数を第2レベル補正部34Cにセットし、D/A変換対象のディジタルオーディオ信号に補正係数を乗じて、出力ゲイン切り換え部28のゲイン誤差を補正させて、ゲイン切り換え前後で出力アナログオーディオ信号Aoutが不連続とならないようにする。図17のA/D変換部22からD/A変換部27までがディジタル領域である。なお、ディジタル領域ではサンプルデータがnビット長で表現されるものとし、MSBが±の符号を表すものとする。但し、ディジタル信号処理部24Aは下位側に5ビット拡張して(n+5)ビット長で演算を行い、ゲイン切り換え部33への出力も(n+5)ビット長で行い、ゲイン切り換え部33は算術シフト演算後、出力する際にnビットに丸めるものとする。
他の構成部分は図5、図9と同様に構成されている。
【0048】
図18乃至図21は制御部31Cによる測定時と通常時の制御処理を示すフローチャートであり、以下、これらの図を参照して上記した第4実施例の動作を説明する。
なお、ここでは、入力ゲイン切り換え部21の×1/1のゲインを基準とし(補正はしない)、他の段階のゲインの相対誤差を打ち消すように補正するものとし、同様に、出力ゲイン切り換え部28の×1/1のゲインを基準とし(補正はしない)、他の段階のゲインの相対誤差を打ち消すように補正するものとする。
(1)第1測定時
装置の電源がオンすると、制御部31Cはスイッチ部20、32、26を第1測定モード側に切り換えさせ、基準信号生成部25に振幅Wがディジタル領域のフルスケールの1/2より2割程度小さく、1kHz正弦波からなるディジタル基準信号を生成させ、更に入力ゲイン切り換え部21のゲインを第1段階の×1に切り換えさせる(図18のステップS100〜S102)。ディジタル基準信号はスイッチ部26を介してD/A変換部27に入力され、アナログ基準信号STに変換されたのち、スイッチ部20を介して入力ゲイン切り換え部21に入力される。ここで、ゲインが×1されたあと、スイッチ部32を介してA/D変換部22によりディジタル信号に変換される。そして、第1レベル測定部29Cによりピーク値が測定されて制御部31Cに入力される。制御部31Cは、入力したピーク値を基準レベルSPとして補正係数記憶部30Cに記憶し、かつ、入力ゲイン切り換え部21の第1段階のゲインの補正係数P1を1として記憶する(ステップS103〜S105)。
【0049】
次に、入力ゲイン切り換え部21のゲインを1段階上げて×2に切り換えさせるとともに、基準信号生成部25の出力振幅をそれまでの1/2倍とする(ステップS106〜S108)。この結果、アナログの基準信号STは振幅が1/2倍となって入力ゲイン切り換え部21に入力され、ゲインが×2とされる。制御部31Cは、第1レベル測定部29Cから入力したピーク値で基準レベルSPを除して×2の補正係数P2を計算し、補正係数記憶部30Cに記憶する(ステップS109、S110)。以下、第6段階の×32まで同様の処理を繰り返す(ステップS111、S112、S107〜S110の繰り返し)。これにより、電源がオンされる度に、入力ゲイン切り換え部21の各段階のゲインの補正係数P1〜P6が決定されて補正係数記憶部30Cに記憶される。
【0050】
(2)第2測定時
入力ゲイン切り換え部21の補正係数の決定が終ると、制御部31Cはスイッチ部20、32、26を第2測定モード側に切り換えさせ、基準信号生成部25に振幅Yがディジタル領域のフルスケールの1/2より2割程度小さく、1kHz正弦波からなるディジタル基準信号を生成させ、更に出力ゲイン切り換え部28のゲインを第6段階の×1/1に切り換えさせる(図18のステップS111でYES、図19のステップS120〜S122)。ディジタル基準信号はスイッチ部26を介してD/A変換部27に入力され、アナログ基準信号に変換されたのち、出力ゲイン切り換え部28でゲインが×1されたあと、アナログ基準信号ST’としてスイッチ部32を介してA/D変換部22に入力され、ディジタル信号に変換される。そして、第1レベル測定部29Cによりピーク値が測定されて制御部31Cに入力される。制御部31Cは、入力したピーク値を基準レベルSQとして補正係数記憶部30Cに記憶し、かつ、出力ゲイン切り換え部28の第6段階のゲインの補正係数Q6を1として記憶する(ステップS123〜S125)。
【0051】
次に、出力ゲイン切り換え部28のゲインを1段階下げて×1/2とする(ステップS126、S127)。D/A変換部27から出力されたアナログの基準信号は出力ゲイン切り換え部28に入力され、ゲインが×1/2とされる。制御部31Cは、第1レベル測定部29Cから入力したピーク値で基準レベルSQの1/2を除して出力ゲイン切り換え部28の第5段階のゲインの補正係数Q5を計算し、補正係数記憶部30Cに記憶する(ステップS128、S129)。以下、第1段階の×1/32まで同様の処理を繰り返す(ステップS130、S131、S127〜S129の繰り返し)。これにより、電源がオンされる度に、出力ゲイン切り換え部28の各段階のゲインの補正係数Q1〜Q6が決定されて補正係数記憶部30Cに記憶される。
【0052】
(3)通常時
補正係数の決定が終ると、制御部31Cは、スイッチ部20、32、26を通常モード側に切り換えさせるとともに入力ゲイン切り換え部21のゲインを第1段階の×1、ゲイン切り換え部のゲインを×1、出力ゲイン切り換え部28のゲインを第6段階の×1/1に切り換えさせる(図19のステップS130でYES、図20のステップS140、S141)。また第1レベル補正部23Cに入力ゲイン切り換え部21の×1に対応する補正係数P1=1をセットし、第2レベル補正部34Cに出力ゲイン切り換え部28の×1に対応する補正係数Q6=1をセットする(ステップS142)。音量調整後の入力アナログオーディオ信号Ainはスイッチ部20を介して入力ゲイン切り換え部21に入力され、ゲインが×1されたあとスイッチ部32を介してA/D変換部22によりディジタルオーディオ信号に変換される。そして、第1レベル補正部23Cで補正係数1が乗じられたあと、ディジタル信号処理部24Aで3次FIRフィルタにより低域成分が抽出される。そして、ゲイン切り換え部33によりゲインが×1され、第2レベル補正部34Cで補正係数1が乗じられたあとスイッチ部26を介してD/A変換部27に入力され、アナログオーディオ信号に変換される。そして、出力ゲイン切り換え部28でゲインが×1/1されて後段へ出力される。制御部31Cは常時、第1レベル測定部29Cと第2レベル測定部36で測定されたディジタルオーディオ信号のレベル(ここではピーク値)を監視しており(ステップS143、図21のステップS160)、一定時間以上小レベル状態が続いているかの判断と、所定の一定レベルを越えて過大になったかの判断を繰り返している(図20のステップS144、S145、図21のステップS161、S162)。
【0053】
若し、第1レベル測定部29Cの測定の結果、一定時間以上小レベル状態が続き、ステップS144でYESとなったとき、現在入力ゲイン切り換え部21がまだ第6段階でなく、出力ゲイン切り換え部28がまだ第1段階でないので、入力ゲイン切り換え部21を第2段階の×2に切り換えてA/D変換部22のダイナミックレンジに対し最適化し、その分出力ゲイン切り換え部28を第5段階の×1/2に切り換える(ステップS146〜S148)。続いて、補正係数記憶部30Cから入力ゲイン切り換え部21の第2段階用の補正係数P2を読み出して第1レベル補正部23Cにセットし、入力ゲイン切り換え部21から第1レベル補正部23Cまでのゲインが入力ゲイン切り換え部21の第1段階に対し正確に2倍となるようにし、補正係数記憶部30Cから出力ゲイン切り換え部28の第5段階用の補正係数Q5を読み出して第2レベル補正部34Cにセットし、第2レベル補正部34Cから出力ゲイン切り換え部28までのゲインが出力ゲイン切り換え部28の第6段階に対し正確に1/2倍となるようにする。更に、ディジタル信号処理部24Aに対しFIRフィルタの過去のサンプルデータを算術シフト演算で1ビット左シフトして2倍の大きさとする(ステップS149、S150)。これにより、出力ゲイン切り換え部28から出力されるアナログオーディオ信号Aoutがゲイン切り換え前後で不連続となるのが防止される。
【0054】
その後、再び第1レベル測定部29Cで測定した信号レベルが一定時間以上の小レベル状態が続いたとき、ステップS144でYESと判断し、入力ゲイン切り換え部21を第3段階の×4に切り換えてA/D変換部22のダイナミックレンジに対し最適化し、その分出力ゲイン切り換え部28を第4段階の×1/4に切り換える(ステップS146〜S148)。続いて、補正係数記憶部30Cから入力ゲイン切り換え部21の第3段階用の補正係数P3を読み出して第1レベル補正部23Cにセットし、入力ゲイン切り換え部21から第1レベル補正部23Cまでのゲインが第1段階に対し正確に4倍となるようにし、補正係数記憶部30Cから出力ゲイン切り換え部28の第4段階用の補正係数Q4を読み出して第2レベル補正部34Cにセットし、第2レベル補正部34Cから出力ゲイン切り換え部28までのゲインが出力ゲイン切り換え部28の第6段階に対し正確に1/4倍となるようにする。そして、ディジタル信号処理部24Aに対しFIRフィルタの過去のサンプルデータを算術シフト演算で1ビット左シフトして2倍の大きさとする(ステップS149、S150)。
【0055】
その後、第1レベル測定部29Cでの測定レベルが所定の一定レベルを越える過大になったとき、ステップS145でYESと判断し、現在入力ゲイン切り換え部21がまだ第1段階でなく、出力ゲイン切り換え部28がまだ第6段階でないので、入力ゲイン切り換え部21を第2段階の×2に戻してA/D変換部22のダイナミックレンジに対し過大入力とならないように最適化し、その分出力ゲイン切り換え部28を第5段階の×1/2に切り換える(ステップS151〜S153)。続いて、補正係数記憶部30Cから入力ゲイン切り換え部21の第2段階用の補正係数P2を読み出して第1レベル補正部23Cにセットし、補正係数記憶部30Cから出力ゲイン切り換え部28の第5段階用の補正係数Q5を読み出して第2レベル補正部34Cにセットし、ディジタル信号処理部24Aに対しFIRフィルタの過去のサンプルデータを算術シフト演算で1ビット右シフトして1/2倍の大きさとする(ステップS154、S155)。これにより、ゲイン切り換えの前後で出力ゲイン切り換え部28から出力されるアナログオーディオ信号Aoutが不連続となるのが防止される。
【0056】
その後、第2レベル測定部36の測定の結果、一定時間以上小レベル状態が続き、図21のステップS161でYESとなったとき、制御部31Cは現在ゲイン切り換え部33がまだ第6段階でなく、出力ゲイン切り換え部28がまだ第1段階でないので、ゲイン切り換え部33を第2段階の×2に切り換えてD/A変換部27のダイナミックレンジに対し最適化し、その分出力ゲイン切り換え部28を1段階下げ第4段階の×1/4に切り換える(ステップS163〜S165)。続いて、補正係数記憶部30Cから出力ゲイン切り換え部28の第4段階用の補正係数Q4を読み出して第2レベル補正部34Cにセットし、第2レベル補正部34Cから出力ゲイン切り換え部28までのゲインが出力ゲイン切り換え部28の第6段階に対し正確に1/4倍となるようにする(ステップS166)。これにより、出力ゲイン切り換え部28から出力されるアナログオーディオ信号Aoutがゲイン切り換え前後で不連続となるのが防止される。
【0057】
その後、再び第2レベル測定部36で測定した信号レベルが一定時間以上の小レベル状態が続いたとき、ステップS161でYESと判断し、ゲイン切り換え部33を第3段階の×4に切り換えてD/A変換部27のダイナミックレンジに対し最適化し、その分出力ゲイン切り換え部28を1段階下げて第3段階の×1/8に切り換える(ステップS163〜S165)。続いて、補正係数記憶部30Cから出力ゲイン切り換え部28の第3段階用の補正係数Q3を読み出して第2レベル補正部34Cにセットし、第2レベル補正部34Cから出力ゲイン切り換え部28までのゲインが出力ゲイン切り換え部28の第6段階に対し正確に1/8倍となるようにする。(ステップS166)。
【0058】
その後、第2レベル測定部36での測定レベルが所定の一定レベルを越える過大になったとき、ステップS162でYESと判断し、現在ゲイン切り換え部33がまだ第1段階でなく、出力ゲイン切り換え部28がまだ第6段階でないので、ゲイン切り換え部33を第2段階の×2に戻してD/A変換部27のダイナミックレンジに対し過大入力とならないように最適化し、その分出力ゲイン切り換え部28を第4段階の×1/4に切り換える(ステップS167〜S169)。続いて、補正係数記憶部30Cから出力ゲイン切り換え部28の第3段階用の補正係数Q3を読み出して第2レベル補正部34Cにセットする(ステップS170)。これにより、ゲイン切り換えの前後で出力ゲイン切り換え部28から出力されるアナログオーディオ信号Aoutが不連続となるのが防止される。
【0059】
この実施例によれば、A/D変換対象の入力アナログオーディオ信号のレベルに応じて入力ゲイン切り換え部21のゲインを切り換え、レベルを最適化してA/D変換部22に入力することで、A/D変換で生じる量子化歪を低減することができ、D/A変換対象のディジタルオーディオ信号のレベルに応じてゲイン切り換え部33のゲインを切り換え、レベルを最適化してD/A変換部27に入力することで、D/A変換で生じる量子化歪を低減することができる。
また、基準信号を用いて入力ゲイン切り換え部21の各段階のゲインの誤差を打ち消すための各段階別の補正係数を決定し、入力ゲイン切り換え部21にA/D変換対象のアナログオーディオ信号が印加されているときに、入力ゲイン切り換え部21のゲインに応じてA/D変換部22から出力されたディジタルオーディオ信号に対しレベル補正を行なうようにしたので、アナログ回路で構成される入力ゲイン切り換え部21の各段階のゲインに誤差があっても、信号に対するゲインを正確に切り換えることができる。同様に、基準信号を用いて出力ゲイン切り換え部28の各段階のゲインの誤差を打ち消すための各段階別の補正係数を決定し、出力ゲイン切り換え部28にD/A変換されたアナログオーディオ信号が印加されているときに、出力ゲイン切り換え部28のゲインに応じてD/A変換対象のディジタルオーディオ信号に対しレベル補正を行なうようにしたので、アナログ回路で構成される出力ゲイン切り換え部28の各段階のゲインに誤差があっても、信号に対するゲインを正確に切り換えることができる。
また、A/D変換後のディジタルオーディオ信号をディジタル信号処理する場合、入力ゲイン切り換え部21のゲイン切り換えと連動してディジタル信号処理部24Aに保持された過去のサンプルデータのレベルを切り換える必要があるが、入力ゲイン切り換え部21の複数段階のゲイン設定値を2の乗数倍で切り換えるようにしたので、過去のサンプルデータのレベルの切り換えを算術シフト演算(右シフトまたは左シフト)で簡単に実行することができる。
また、ゲイン切り換え部33は信号処理部24Aの出力に対するゲインを2の乗数倍で切り換えるようにしたので、ゲイン切り換えのための演算をビットシフト動作で簡単に実行することができる。
【0060】
なお、上記した第4実施例では、入力ゲイン切り換え部は第1段階のゲインを基準にしたときの第2段階乃至第6段階のゲインの相対誤差を打ち消すように補正したが、各段階のゲインの絶対誤差を打ち消すように補正しても良い。同様に、出力ゲイン切り換え部は第6段階のゲインを基準にしたときの第2段階乃至第5段階のゲインの相対誤差を打ち消すように補正したが、各段階のゲインの絶対誤差を打ち消すように補正しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、オーディオ信号以外にも、映像信号など他の種類の信号をA/D変換またはD/A変換する場合にも同様に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】従来の信号処理システムの一例を示すブロック図である。
【図2】アナログゲイン切り換え回路の一例を示す回路図である。
【図3】図2の回路特性の説明図である。
【図4】従来の音量調整回路の一例を示すブロック図である。
【図5】本発明の第1実施例に係る帯域制限用信号処理装置のブロック図である(実施例1)。
【図6】図5中のディジタル信号処理部のシグナルフローを示す説明図である。
【図7】図5の制御部の制御処理を示すフローチャートである。
【図8】図5の制御部の制御処理を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第2実施例に係る帯域制限用信号処理装置のブロック図である(実施例2)。
【図10】図9の制御部の制御処理を示すフローチャートである。
【図11】図9の制御部の制御処理を示すフローチャートである。
【図12】図9の変形例の構成を示すブロック図である。
【図13】本発明の第3実施例に係る音量調整装置のブロック図である(実施例3)。
【図14】図13の記憶部に記憶された制御テーブルの説明図である。
【図15】図13の制御部の制御処理を示すフローチャートである。
【図16】図13の制御部の制御処理を示すフローチャートである。
【図17】本発明の第4実施例に係る帯域制限用信号処理装置のブロック図である(実施例4)。
【図18】図17の制御部の制御処理を示すフローチャートである。
【図19】図17の制御部の制御処理を示すフローチャートである。
【図20】図17の制御部の制御処理を示すフローチャートである。
【図21】図17の制御部の制御処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0063】
20、26、32、35 スイッチ部
21 入力ゲイン切り換え部
22 A/D変換部
23、34 レベル補正部
23C 第1レベル補正部
24、24A、24B ディジタル信号処理部
25 基準信号生成部
27 D/A変換部
28、28B 出力ゲイン切り換え部
29 レベル測定部
29C 第1レベル測定部
30、30A、30C 補正係数記憶部
30B 記憶部
31、31A、31B、31C 制御部
33 ゲイン切換部
34C 第2レベル補正部
36 第2レベル測定部
【技術分野】
【0001】
本発明はA/D変換装置、D/A変換装置、信号処理装置に係り、とくに入力アナログ信号または出力アナログ信号に対するゲインを切り換え可能としたA/D変換装置、D/A変換装置、信号処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車載オーディオシステムではヘッドユニットはダッシュボードに設置されるが、パワーアンプやスピーカボックスはヘッドユニットから離れたトランクやドアなどに設置される場合が多い。ヘッドユニット内のチューナ部、CD再生部等のソース回路部からは一定レベルのオーディオ信号が出力されるようになっており、ヘッドユニットに設けられた音量調整部でユーザ所望の音量に調整したのち、ケーブルを介してパワーアンプ側に出力される。パワーアンプでDSP(ディジタルシグナルプロセッサ)により帯域制限等の信号処理を行いたい場合、ヘッドユニット側から入力した音量調整後のアナログオーディオ信号をA/D変換器で一旦ディジタルオーディオ信号に変換し、信号処理後、D/A変換器で元のアナログ信号に戻すようにしている。
【0003】
ところで、ユーザが音楽を聴取するときの最大の音量と最小の音量の信号レベルには大きな開きがあり、稀に聞く程度の大音量と比較すると普段の音量はそれよりも小さな音量であり、ときに普段の音量よりもさらに小さな音量で聞きたい場合もある。小音量時と大音量時の差は個人差もあるが40dB程度あるのが普通である。音量調整後のアナログオーディオ信号をA/D変換するとき、システムの最大信号レベルでクリップしないようにシステムを構成する必要がある。たとえば、16ビットA/D変換器を用いて信号レベルが最大のときにフルビットのディジタル信号に変換されるように構成したとき、小音量時は最大音量時に対して信号レベルが40dB小さいとすると、小音量時ではA/D変換器の上位側の約7ビットが使用されず、9ビットのA/D変換器を用いたのと等価となってしまい、量子化歪の影響でオーディオ信号のクオリティが非常に悪化してしまう問題がある。この点につき音量調整部をパワーアンプのDSPの後段に設け、A/D変換器の入力を一定の信号レベルとしてクオリティの悪化を回避することが考えられる。けれども、通常、音量調整操作部はヘッドユニットに設けられるので、ダッシュボードのヘッドユニットからトランクルームのパワーアンプまで音量調整信号ラインをオーディオ信号ラインと別個に配線する必要が生じ、また一般にパワーアンプには音量調整信号の入力端子が付属しないため、製品の汎用性がなくなる欠点があり現実的な解決策でない。
スピーカの付加機能として帯域制限等をDSPによる信号処理で実現しようとする場合もまったく同様で、一般にスピーカには音量調整後のアナログオーディオ信号が入力されるため、小音量時に量子化歪の影響でオーディオ信号のクオリティが非常に悪化してしまう欠点がある。
【0004】
この問題を解決するため、信号レベルが大きく可変する音量調整後のアナログオーディオ信号を対象に信号処理する場合、図1に示す如くDSP1の前後段のA/D変換器2とD/A変換器3の前後に更に入力ゲイン可変回路4と出力ゲイン可変回路5を設けるようにしている。そして、音量増大により入力アナログオーディオ信号Ainのレベルが大きくなってA/D変換器2の出力がクリップしそうなときは入力ゲイン可変回路4のゲインを下げ、A/D変換器2の入力レベルを最適化する一方、その分、出力ゲイン可変回路5のゲインを上げて全体としてユーザ所望の音量に見合った出力レベルが得られるようにし、反対に小音量化により入力アナログオーディオ信号Ainのレベルが小さくなってA/D変換器2の出力の信号歪が顕著になりそうなときは入力ゲイン可変回路4のゲインを上げ、A/D変換器2の入力レベルを最適化する一方、その分、出力ゲイン可変回路5のゲインを下げて、全体としてユーザ所望の音量に見合った出力レベルが得られるようにすることが考えられる。たとえば、実開平5−55617号には、入力アナログオーディオ信号Ainのレベルが過大となったときに、入力ゲイン可変回路(第1のVCA)でゲインを下げ、その分、出力ゲイン可変回路(第2のVCA)でゲインを上げる発明が開示されている(特許文献1)。
【0005】
けれども、アナログ回路で構成された入力ゲイン可変回路や出力ゲイン可変回路では、素子部品の回路定数の組み合わせの制約や素子部品の回路定数のバラツキのためゲインの精度が悪く、入力ゲイン可変回路と出力ゲイン可変回路で相補的にゲインを可変した時に信号が不連続となって大きなノイズが発生する欠点があった。例えば、図2は反転増幅器OP、抵抗R1乃至R9、スイッチ素子SW1乃至SW3により構成したアナログゲイン切り換え回路であり、スイッチ素子に74HC4053(例えば東芝製TC74HC4053AP)を用い、少ないスイッチ素子で比較的正確にゲインを切り換えられるようにしたものであり、図3に示す如く、3ビットの制御信号ContA、ContB、ContCの「H」「L」の組み合わせによりゲインを×1、×2、×4、×8、×16、×32の6段階の2の乗数倍の設定ゲインに切り換え可能である。図2の構成の場合、×1、×2、×4、×8、×16、×32の計算上のゲインは0.88(誤差−12.00%)、1.76(誤差−12.00%)、3.52(誤差−12.00%)、7.08(誤差−11.50%)、14.06(誤差−12.13%)、27.94(誤差−12.69%)となり、×1のゲインを基準にしたとき、×2、×4、×8、×16、×32は1.995倍(相対誤差−0.25%)、3.991倍(同−0.22%)、8.014倍(同−0.22%)、15.920倍(同−0.50%)、31.634(同−1.14%)となる(但し、抵抗値のバラツキ誤差は考慮していない)。ゲイン切り換え回路としては、かなり正確な回路であるが、上述の入力信号のレベル変化に追従してゲインを可変させる場合は、精度不足となる。例えば、計算上と抵抗値のバラツキを合わせたゲインの切り換え誤差が1%の場合、信号に対して−40dB程度のオーディオ信号としては比較的大きなパルス的なノイズが発生することになる。
【0006】
これとは別に、オーディオ信号に対する音量調整をアナログ領域において行なう電子ボリューム回路がある。この電子ボリューム回路は入力端子とグランド間に多数の抵抗素子を直列に接続した抵抗分圧回路と、入力端子及び各抵抗間の接続点と出力端子との間に介装された多数のアナログスイッチを内蔵しており、アナログスイッチを択一的に閉じて入力アナログオーディオ信号の電圧値を可変の分圧値で分圧し、信号レベルを減衰させる。この電子ボリューム回路では、例えば0dB〜−35dBまで1dB単位のステップで減衰させる場合、36個の抵抗素子と36個のアナログスイッチが必要となり、構成が複雑・大形化し、コストも高くなってしまう。一方、音量調整はディジタルタル領域においてDSPによる演算処理でも可能であるが、減衰量が大きくなると有効ビット長が小さくなって、量子化歪が大きくなってしまう。
【0007】
そこで、図4に示す如く、電子ボリューム回路6の前段に、入力アナログオーディオ信号をA/D変換するA/D変換器7、ディジタル流域で減衰演算を行なうDSP8、DSP8の出力をD/A変換するD/A変換器9を設け、電子ボリューム回路6では6dBの大きなステップ幅で減衰し、DSP8では1dBの小さなステップ幅で減衰させるようにし、制御回路10が目標音量(目標減衰量)となるように電子ボリューム回路6とDSP8を制御するようにしたハイブリッド型の音量調整回路が提案されている(特許文献2)。
けれども、アナログ回路で構成された電子ボリューム回路6はDSP8に比して直線性が悪く、例えば電子ボリューム回路6の−6dBが実際には−5dBしか無い場合がある。このとき、全体の減衰量を−5dBとするため、電子ボリューム回路6の減衰量を0dB、DSP8を−5dBに切り換えたときと、全体の減衰量を1dB落として−6dBとするため、電子ボリューム回路6の減衰量を−6dB、DSP8を0dBに切り換えたときとで、ほぼ同じ減衰量になって音量が殆んど変化しない問題があった。
【0008】
【特許文献1】実開平5−55617号公報の段落0025、図1
【特許文献2】特開2001−7670号公報の段落0026、図5
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記した従来技術の問題に鑑み、A/D変換手段の前段に設けられた入力ゲイン切り換え手段のゲイン切り換え誤差を補正可能なA/D変換装置を提供することをその目的とする。また、D/A変換手段の後段に設けられた出力ゲイン切り換え手段のゲイン切り換え誤差を補正可能なD/A変換装置を提供することをその目的とする。また、前後段に設けられた入力ゲイン切り換え手段と出力ゲイン切り換え手段のゲイン切り換え誤差を補正可能な信号処理装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のA/D変換装置の1つでは、入力アナログ信号をA/D変換するA/D変換手段と、A/D変換手段の前段に設けられて入力アナログ信号に対し複数段階の所定の設定値のゲインに切り換え可能な入力ゲイン切り換え手段と、を備えたA/D変換装置において、入力ゲイン切り換え手段のゲイン測定用の基準信号を発生する基準信号発生手段と、通常時は入力アナログ信号を選択して入力ゲイン切り換え手段に入力させ、測定時は基準信号を選択して入力ゲイン切り換え手段に入力させる選択手段と、測定時、基準信号が選択手段を介して入力ゲイン切り換え手段に印加されているときに、入力ゲイン切り換え手段のゲインを各段階に切り換えたときのA/D変換手段の出力レベルを測定するレベル測定手段と、レベル測定手段で測定したレベルに基づき、入力ゲイン切り換え手段の各段階のゲインの誤差を打ち消すための各段階別の補正係数を決定する補正係数決定手段と、通常時、選択手段を介して入力ゲイン切り換え手段に入力アナログ信号が印加されているときに、入力ゲイン切り換え手段のゲインに応じてA/D変換手段から出力されたディジタル信号に対し、補正係数決定手段で決定された補正係数に基づきレベル補正を行なう補正手段と、を備えたことを特徴としている。
本発明のA/D変換装置の他の1つでは、入力ゲイン切り換え手段の複数段階のゲイン設定値は2の乗数倍または1/2の乗数倍の値としたこと、を特徴としている。
本発明のD/A変換装置の1つでは、ディジタル信号をD/A変換して出力するD/A変換手段と、D/A変換手段の後段に設けられて出力アナログ信号に対し複数段階の所定の設定値のゲインに切り換え可能な出力ゲイン切り換え手段と、を備えたD/A変換装置において、出力ゲイン切り換え手段のゲイン測定用の基準信号を発生する基準信号発生手段と、通常時は出力アナログ信号を選択して出力ゲイン切り換え手段に入力させ、測定時は基準信号を選択して出力ゲイン切り換え手段に入力させる選択手段と、測定時、出力ゲイン切り換え手段から出力されるアナログ信号が入力されるA/D変換手段と、測定時、基準信号が選択手段を介して出力ゲイン切り換え手段に印加されているときに、出力ゲイン切り換え手段のゲインを各段階に切り換えたときのA/D変換手段の出力レベルを測定するレベル測定手段と、レベル測定手段で測定した出力レベルに基づき、出力ゲイン切り換え手段の各段階のゲインの誤差を打ち消すための各段階別の補正係数を決定する補正係数決定手段と、通常時、選択手段を介して出力ゲイン切り換え手段にD/A変換手段の出力が印加されているときに、出力ゲイン切り換え手段のゲインに応じてD/A変換手段に入力されるディジタル信号に対し、補正係数決定手段で決定された補正係数に基づきレベル補正を行なう補正手段と、を備えたことを特徴としている。
本発明のD/A変換装置の他の1つでは、出力ゲイン切り換え手段の複数段階のゲイン設定値は2の乗数倍または1/2の乗数倍の値としたこと、を特徴としている。
本発明の信号処理装置の1つでは、入力アナログ信号をA/D変換するA/D変換手段と、A/D変換手段から出力された入力ディジタル信号に対し信号処理を行なう信号処理手段と、信号処理手段の出力ディジタル信号をD/A変換して出力するD/A変換手段と、A/D変換手段の前段に設けられて入力アナログ信号に対し複数段階の所定の設定値のゲインに切り換え可能な入力ゲイン切り換え手段と、D/A変換手段の後段に設けられて出力アナログ信号に対し複数段階の所定の設定値のゲインに切り換え可能な出力ゲイン切り換え手段と、を備えた信号処理装置において、入力ゲイン切り換え手段と出力ゲイン切り換え手段のゲイン測定用の基準信号を発生する基準信号発生手段と、通常時は入力アナログ信号を選択して入力ゲイン切り換え手段に入力させ、第1の測定時は基準信号を選択して入力ゲイン切り換え手段に入力させ、第2の測定時は出力ゲイン切り換え手段の出力を選択して入力ゲイン切り換え手段に入力する第1の選択手段と、通常時は出力アナログ信号を選択して出力ゲイン切り換え手段に入力し、第2の測定時は基準信号を選択して出力ゲイン切り換え手段に入力させる第2の選択手段と、第1の測定時、基準信号が第1の選択手段を介して入力ゲイン切り換え手段に印加されているときに、入力ゲイン切り換え手段のゲインを各段階に切り換えたときのA/D変換手段の出力レベルを測定し、第2の測定時、基準信号が第2の選択手段、出力ゲイン切り換え手段、第1の選択手段を介して入力ゲイン切り換え手段に印加されているときに、出力ゲイン切り換え手段のゲインを各段階に切り換えたときのA/D変換手段の出力レベルを測定するレベル測定手段と、レベル測定手段で測定したレベルに基づき、入力ゲイン切り換え手段の各段階のゲインの誤差を打ち消すための各段階別の補正係数と出力ゲイン切り換え手段の各段階のゲインの誤差を打ち消すための各段階別の補正係数とを決定する補正係数決定手段と、通常時、第1の選択手段を介して入力ゲイン切り換え手段に入力アナログ信号が印加され、かつ第2の選択手段を介して出力ゲイン切り換え手段に出力アナログ信号が印加されているときに、入力ゲイン切り換え手段のゲインと出力ゲイン切り換え手段のゲインに応じてA/D変換手段とD/A変換手段の間でディジタル信号に対し、補正係数決定手段で決定された補正係数に基づきレベル補正を行なう補正手段と、を備えたことを特徴としている。
本発明の信号処理装置の他の1つでは、入力ゲイン切り換え手段の複数段階のゲインの設定値は2の乗数倍または1/2の乗数倍の値とし、出力ゲイン切り換え手段の複数段階のゲインの設定値は2の乗数倍または1/2の乗数倍の値としたこと、を特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明のA/D変換装置によれば、基準信号を用いて入力ゲイン切り換え手段の各段階のゲインの誤差を打ち消すための各段階別の補正係数を決定し、入力ゲイン切り換え手段にA/D変換対象の入力アナログ信号が印加されているときに、入力ゲイン切り換え手段のゲインに応じてA/D変換手段から出力されたディジタル信号に対し、レベル補正を行なうようにしたので、アナログ回路で構成される入力ゲイン切り換え手段の各段階のゲインに誤差があっても、信号に対するゲインを正確に切り換えることができる。
また、A/D変換後のディジタル信号をディジタル信号処理する場合、入力ゲイン切り換え手段のゲイン切り換えと連動してディジタル信号処理手段に保持された過去のサンプルデータのレベルを切り換える必要があるが、入力ゲイン切り換え手段の複数段階のゲイン設定値は2の乗数倍または1/2の乗数倍で切り換えるようにしておけば、過去のサンプルデータのレベルの切り換えをビットシフト動作で簡単に実行することができる。
また本発明のD/A変換装置によれば、基準信号を用いて出力ゲイン切り換え手段の各段階のゲインの誤差を打ち消すための各段階別の補正係数を決定し、D/A変換対象のディジタル信号をD/A変換した出力アナログ信号が出力ゲイン切り換え手段に印加されているときに、出力ゲイン切り換え手段のゲインに応じてD/A変換対象のディジタル信号に対し、レベル補正を行なうようにしたので、アナログ回路で構成される出力ゲイン切り換え手段の各段階のゲインに誤差があっても、信号に対するゲインを正確に切り換えることができる。
また、D/A変換手段に入力されるディジタル信号に対するゲインを出力ゲイン切り換え手段のゲインと相殺的に可変する場合に、出力ゲイン切り換え手段の複数段階のゲイン設定値は2の乗数倍または2の乗数倍で切り換えるようにしておけば、D/A変換手段に入力されるディジタル信号に対するゲインの切り換えをビットシフト動作で簡単に実行することができる。
また本発明の信号処理装置によれば、基準信号を用いて入力ゲイン切り換え手段と出力ゲイン切り換え手段の各段階のゲインの誤差を打ち消すための各段階別の補正係数を決定し、入力ゲイン切り換え手段にA/D変換対象のアナログ信号が印加され、かつD/A変換対象のディジタル信号をD/A変換した出力アナログ信号が出力ゲイン切り換え手段に印加されているときに、入力ゲイン切り換え手段と出力ゲイン切り換え手段のゲインに応じてA/D変換手段とD/A変換手段の間でディジタル信号に対し、レベル補正を行なうようにしたので、アナログ回路で構成される入力ゲイン切り換え手段と出力ゲイン切り換え手段の各段階のゲインに誤差があっても、信号に対するゲインを正確に切り換えることができる。
また、A/D変換後のディジタル信号をディジタル信号処理する場合、入力ゲイン切り換え手段のゲイン切り換えと連動してディジタル信号処理手段に保持された過去のサンプルデータのレベルを切り換える必要があるが、入力ゲイン切り換え手段の複数段階のゲイン設定値は2の乗数倍または1/2の乗数倍で切り換えるようにしておけば、過去のサンプルデータのレベルの切り換えをビットシフト動作で簡単に実行することができ、同様にして、D/A変換手段に入力されるディジタル信号に対するゲインを出力ゲイン切り換え手段のゲインとを相殺的に可変する場合に、出力ゲイン切り換え手段の複数段階のゲイン設定値は2の乗数倍または2の乗数倍で切り換えるようにしておけば、D/A変換手段に入力されるディジタル信号に対するゲインの切り換えをビットシフト動作で簡単に実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の最良の形態を実施例に基づき説明する。
【実施例1】
【0013】
図5を参照して本発明の第1実施例を説明する。図5は本発明に係る帯域制限用信号処理装置の構成を示すブロック図である。
図5において、20はスイッチ部であり、通常モード時は音量調整後の入力アナログオーディオ信号Ainを選択して出力し、測定モード時は後述するアナログ基準信号STを選択して出力する。21はスイッチ部から出力されたアナログ信号に対するゲインを切り換え可能な入力ゲイン切り換え部である。この入力ゲイン切り換え部21はここでは図2と同一に構成されており、ゲインを第1乃至第6の6段階に2の乗数倍に切り換え可能とする。第1段階は×1、第2段階は×2、第3段階は×4、第4段階は×8、第5段階は×16、第6段階は×32のゲインに設定されている。但し、素子部品の回路定数の選択の制限と回路定数のバラツキから各段階の実際のゲインは設定値と一致せず誤差がある。この誤差は後述するように、ディジタル領域で補正される。22はA/D変換部であり、入力ゲイン切り換え部21でゲイン調整後のアナログオーディオ信号をA/D変換する。23はレベル補正部であり、A/D変換後のディジタルオーディオ信号に対し、入力ゲイン切り換え部21のゲイン誤差を打ち消すようにレベル補正を行う。24はディジタル信号処理部であり、ここでは一例として図6に示す3次FIRフィルタのシグナルフローに従い、所定のカットオフ周波数以下の成分だけ通過させる低域通過フィルタとしての信号処理を実行するものとする。ディジタルオーディオ信号のサンプル周期T、離散時間nT(但し、n=1、2、3、・・)、ディジタル信号処理部24の時刻nTの入力x(nT)、出力y(nT)とすると、
y(nT)=a0・x(nT)+a1・x((n−1)T)+a2・x((n−2)T)+a3・x((n−3)T)
a0、a1、a2、a3;演算係数
である。ここで、x((n−1)T)、x((n−2)T)、x((n−3)T)は過去のサンプルデータである。
【0014】
25は入力ゲイン切り換え部21のゲイン測定用のディジタル基準信号を生成する基準信号生成部、26は通常時はディジタル信号処理部24から入力されたディジタル信号処理後のディジタルオーディオ信号を選択して出力し、測定時は基準信号生成部25から入力されたディジタル基準信号を選択して出力するスイッチ部、27はスイッチ部26から入力するディジタル信号をD/A変換するD/A変換部、28はD/A変換後のアナログ信号に対するゲインを切り換え可能な出力ゲイン切り換え部であり、この出力ゲイン切り換え部28から出力アナログ信号Aoutが出力される。出力ゲイン切り換え部28はゲインを第1乃至第6の6段階に1/2の乗数倍に切り換え可能とする。第1段階は×1/32、第2段階は×1/16、第3段階は×1/8、第4段階は×1/4、第5段階は×1/2、第6段階は×1/1のゲインに設定されている。D/A変換部27の出力はスイッチ部20の測定モード側入力端子と接続されている。29はレベル測定部であり、A/D変換部22から出力されるディジタル信号の信号レベルを測定する。ここでは信号レベルはピーク値で測定するものとするが、実効値(RMS)で測定するようにしてもよい。30は補正係数記憶部であり、入力ゲイン切り換え部21の各段階の補正係数を記憶する。
【0015】
31は制御部であり、測定時は1kHzの正弦波からなる基準信号を入力ゲイン切り換え部21に印加させ、入力ゲイン切り換え部21のゲインを第1乃至第6段階に順に切り換えながら、各段階でのレベル測定部29で測定した信号レベルを用いて入力ゲイン切り換え部21の各段階のゲインの誤差を打ち消すための各段階別の補正係数を決定し、補正係数記憶部30に記憶させる。通常時は、入力ゲイン切り換え部21を介してA/D変換部22に入力された入力アナログオーディオ信号の信号レベルを監視し、所定の第1の基準レベルを下回った小レベル状態が一定時間継続したとき、A/D変換部22の入力レベルを最適化して量子化歪が顕著にならないようにするため、入力ゲイン切り換え部21のゲインを1段階上げ、その分出力ゲイン切り換え部28のゲインを1段階下げる。この際、入力ゲイン切り換え部21のゲインに対応する補正係数をレベル補正部23にセットし、A/D変換後のディジタルオーディオ信号に補正係数を乗じて、入力ゲイン切り換え部21のゲイン誤差を補正させるとともに、ディジタル信号処理部24に対し過去のサンプルデータを算術シフト演算(1ビット左シフト)により2倍の大きさに補正させて、ゲイン切り換え前後で外部に出力される出力アナログオーディオ信号Aoutが不連続とならないようにする。
また、入力アナログオーディオ信号の信号レベルを監視しているときに、所定の第2の基準レベル(>第1の基準レベル)を越えて過大となったとき、A/D変換部22の入力レベルを最適化し、過大入力によるクリップが生じないようにするため、入力ゲイン切り換え部21のゲインを1段階下げ、その分出力ゲイン切り換え部28のゲインを1段階上げる。この際、入力ゲイン切り換え部21のゲインに対応する補正係数をレベル補正部23にセットし、A/D変換後のディジタルオーディオ信号に補正係数を乗じて、入力ゲイン切り換え部21のゲイン誤差を補正させるとともに、ディジタル信号処理部24に対し過去のサンプルデータを算術シフト演算(1ビット右シフト)により1/2倍の大きさに補正させて、ゲイン切り換え前後で外部に出力される出力アナログオーディオ信号Aoutが不連続とならないようにする。図5のA/D変換部22からD/A変換部27までがディジタル領域である。なお、ディジタル領域ではサンプルデータがnビット長で表現されるものとし、MSBが±の符号を表すものとする。但し、ディジタル信号処理部24は下位側に5ビット拡張して(n+5)ビット長で演算を行い、出力時にnビットに丸めるものとする。
【0016】
図7と図8は制御部31による測定時と通常時の制御処理を示すフローチャートであり、以下、これらの図を参照して上記した実施例の動作を説明する。
なお、ここでは、入力ゲイン切り換え部21の×1のゲインを基準とし(補正はしない)、他の段階のゲインの相対誤差を打ち消すように補正するものとする。
(1)測定時
装置の電源がオンすると、制御部31はスイッチ部20と26を測定モード側に切り換えさせ、基準信号生成部25に振幅がディジタル領域のフルスケールの半分より2割程度小さく、1kHz正弦波からなるディジタル基準信号を生成させ、更に入力ゲイン切り換え部21のゲインを第1段階の×1に切り換えさせる(図7のステップS10〜S12)。ディジタル基準信号の生成は正弦波の1周期分の波形のサンプルデータを繰り返し出力することで行なう。ディジタル基準信号はスイッチ部26を介してD/A変換部27に入力され、アナログ基準信号STに変換されたのち、スイッチ部20を介して入力ゲイン切り換え部21に入力される。ここで、ゲインが×1されたあと、A/D変換部22によりディジタル信号に変換される。そして、レベル測定部29によりピーク値が測定されて制御部31に入力される。制御部31は、入力したピーク値を基準レベルSPとして補正係数記憶部30に記憶し、かつ、第1段階のゲインの補正係数P1を1として記憶する(ステップS13〜S15)。
【0017】
次に、入力ゲイン切り換え部21のゲインを1段階上げて×2に切り換えさせるとともに、基準信号生成部25に算術シフト演算によりディジタル基準信号の1周期分の波形の各サンプルデータを1ビット右シフトして振幅をそれまでの1/2倍とする(ステップS16〜S18)。この結果、アナログの基準信号STは振幅が1/2倍となって入力ゲイン切り換え部21に入力され、ゲインが×2とされる。制御部31は、レベル測定部29から入力したピーク値で基準レベルSPを除して×2の補正係数P2を計算し、補正係数記憶部30に記憶する(ステップS19、S20)。次に、入力ゲイン切り換え部21のゲインを1段階上げて×4に切り換えさせるとともに、基準信号生成部25に算術シフト演算によりディジタル基準信号の1周期分の波形の各サンプルデータを更に1ビット右シフトして振幅を更に1/2倍とし、レベル測定部29から入力したピーク値を基準レベルSPで除して×4の補正係数P3を計算し、補正係数記憶部30に記憶する(ステップS21でNO、S22、S17〜S20)。以下、第6段階の×32まで同様の処理を繰り返す。これにより、電源がオンされる度に、入力ゲイン切り換え部21の各段階のゲインの補正係数P1〜P6が決定されて補正係数記憶部30に記憶される。
【0018】
(2)通常時
補正係数の決定が終ると、制御部31は、スイッチ部20と26を通常モード側に切り換えさせるとともに入力ゲイン切り換え部21のゲインを第1段階の×1、出力ゲイン切り換え部28のゲインを第6段階の×1/1に切り換えさせる(図7のステップS21でYES、図8のステップS30、S31)。またレベル補正部23に×1に対応する補正係数P1=1をセットする(ステップS32)。音量調整後の入力アナログオーディオ信号Ainはスイッチ部20を介して入力ゲイン切り換え部21に入力され、ゲインが×1されたあとA/D変換部22によりディジタルオーディオ信号に変換される。そして、レベル補正部23で補正係数1が乗じられたあと、ディジタル信号処理部24で3次FIRフィルタにより低域成分が抽出される。そして、スイッチ部26を介してD/A変換部27に入力され、アナログオーディオ信号に変換されたあと、出力ゲイン切り換え部28でゲインが×1/1されて後段へ出力される。制御部31は常時、レベル測定部29で測定されたディジタルオーディオ信号のレベル(ここではピーク値)を監視しており(ステップS33)、一定時間以上、第1の基準レベルを下回る小レベル状態が続いているかの判断と、所定の一定レベル(=第2の基準レベル)を越えて過大になったかの判断を繰り返している(ステップS34、S35の繰り返し)。
【0019】
若し、一定時間以上小レベル状態が続き、ステップS34でYESとなったとき、現在入力ゲイン切り換え部21がまだ第6段階でないので、入力ゲイン切り換え部21を第2段階の×2に切り換えてA/D変換部22のダイナミックレンジに対し最適化し、その分出力ゲイン切り換え部28を第5段階の×1/2に切り換える(ステップS36〜S38)。続いて、補正係数記憶部30から第2段階用の補正係数P2を読み出してレベル補正部23にセットし、入力ゲイン切り換え部21からレベル補正部23までのゲインが第1段階に対し正確に2倍となるようにし、かつ、ディジタル信号処理部24に対しFIRフィルタの過去のサンプルデータを算術シフト演算で1ビット左シフトして2倍の大きさとする(ステップS39、S40)。これにより、出力ゲイン切り換え部28から出力されるアナログオーディオ信号がゲイン切り換え前後で不連続となるのが防止される。
【0020】
その後、再び一定時間以上の小レベル状態が続いたとき、ステップS34でYESと判断し、入力ゲイン切り換え部21を第3段階の×4に切り換えてA/D変換部22のダイナミックレンジに対し最適化し、その分入力ゲイン切り換え部21を第4段階の×1/4に切り換える(ステップS36〜S38)。続いて、補正係数記憶部30から第3段階用の補正係数P3を読み出してレベル補正部23にセットし、入力ゲイン切り換え部21からレベル補正部23までのゲインが第1段階に対し正確に4倍となるようにし、かつ、ディジタル信号処理部24に対しFIRフィルタの過去のサンプルデータを算術シフト演算で1ビット左シフトして2倍の大きさとする(ステップS39、S40)。
【0021】
その後、測定レベルが所定の一定レベルを越える過大になったとき、ステップS35でYESと判断し、現在入力ゲイン切り換え部21がまだ第1段階でないので、入力ゲイン切り換え部21を第2段階の×2に戻してA/D変換部22のダイナミックレンジに対し過大入力とならないように最適化し、その分出力ゲイン切り換え部28を第5段階の×1/2に切り換える(ステップS41〜S43)。続いて、補正係数記憶部30から第2段階用の補正係数P2を読み出してレベル補正部23にセットし、入力ゲイン切り換え部21からレベル補正部23までのゲインが第1段階に対し正確に2倍となるようにし、かつ、ディジタル信号処理部24に対しFIRフィルタの過去のサンプルデータを算術シフト演算で1ビット右シフトして1/2倍の大きさとする(ステップS44、S45)。これにより、ゲイン切り換えの前後で出力ゲイン切り換え部28から出力されるアナログオーディオ信号が不連続となるのが防止される。
【0022】
この実施例によれば、A/D変換対象の入力アナログオーディオ信号のレベルに応じて入力ゲイン切り換え部21のゲインを切り換え、レベルを最適化してA/D変換部22に入力することで、A/D変換で生じる量子化歪を低減することができる。また、基準信号を用いて入力ゲイン切り換え部21の各段階のゲインの誤差を打ち消すための各段階別の補正係数を決定し、入力ゲイン切り換え部21にA/D変換対象のアナログオーディオ信号が印加されているときに、入力ゲイン切り換え部21のゲインに応じてA/D変換部22から出力されたディジタルオーディオ信号に対しレベル補正を行なうようにしたので、アナログ回路で構成される入力ゲイン切り換え部21の各段階のゲインに誤差があっても、信号に対するゲインを正確に切り換えることができる。
また、A/D変換後のディジタルオーディオ信号をディジタル信号処理する場合、入力ゲイン切り換え部21のゲイン切り換えと連動してディジタル信号処理部24に保持された過去のサンプルデータのレベルを切り換える必要があるが、入力ゲイン切り換え部21の複数段階のゲイン設定値を2の乗数倍で切り換えるようにしたので、過去のサンプルデータのレベルの切り換えを算術シフト演算(右シフトまたは左シフト)で簡単に実行することができる。
【0023】
なお、上記した実施例では、第1段階のゲインを基準にしたときの第2段階乃至第6段階のゲインの相対誤差を打ち消すように補正したが、各段階のゲインの絶対誤差を打ち消すように補正しても良い。この場合、振幅Wが既知のディジタル基準信号STをD/A変換後、第3段階のゲインに切り換えられた入力ゲイン切り換え部21に入力させた状態でレベル測定部29でピーク値wが測定されたとき、補正係数P3は、
W×4=w×P3
P3=(W/w)×4
となる。他の段階の補正係数も同様にして求めることができる。
また、上記した実施例では、通常時に、D/A変換部27から出力されたアナログ信号を出力ゲイン切り換え部28によりレベルを可変したのち外部へ出力するようにしたが、とくにレベル可変が必要でなければD/A変換部27の出力をそのまま外部へ出力するようにしても良い(符号Aout’参照)。更に、アナログ形式への変換も必要なければ、スイッチ部26から出力されたディジタル信号をそのまま外部へ出力するようにしても良い(符号Dout参照)。
【実施例2】
【0024】
図9を参照して本発明の第2実施例を説明する。図9は本発明に係る帯域制限用信号処理装置の構成を示すブロック図であり、図5と同一の構成部分には同一の符号が付してある。
図5の第1実施例では、A/D変換部の前段に、A/D変換対象の入力アナログオーディオ信号のレベルに応じてゲインを切り換え、A/D変換部の入力レベルを最適化する入力ゲイン切り換え部を設け、この入力ゲイン切り換え部のゲイン誤差を補正するようにしたのに対し、図9ではD/A変換部の前段に、D/A変換対象のディジタルオーディオ信号のレベルに応じてゲインを切り換え、D/A変換部の入力レベルを最適化するゲイン切り換え部を設けるとともに、D/A変換部の後段に前記ゲイン切り換え部のゲインを相殺するようにゲインが切り換えられる出力ゲイン切り換え部を設け、さらにD/A変換部の前段にレベル補正部を装入し、出力ゲイン切り換え部のゲイン誤差を補正するようにしたものである。
図9において、32はスイッチ部であり、通常モード時は入力アナログオーディオ信号Ainを選択して出力し、測定モード時は後述する出力ゲイン切り換え部28から出力されたアナログの基準信号ST’を選択して出力する。24Aはディジタル信号処理部であり、図6に示す3次FIRフィルタのシグナルフローに従い、所定のカットオフ周波数以下の成分だけ通過させる低域通過フィルタとしての信号処理を実行する。33はディジタル信号処理部24Aから出力された帯域制限後のディジタルオーディオ信号に対するゲインを切り換えるゲイン切り換え部であり、算術シフト演算によりゲインを第1乃至第6の6段階に2の乗数倍に切り換え可能とする。第1段階は×1、第2段階は×2、第3段階は×4、第4段階は×8、第5段階は×16、第6段階は×32のゲインに設定されている。ゲイン切り換え部33はゲインを×1とするとき、ディジタル信号処理部24Aから出力されたディジタルオーディオ信号のサンプルデータをそのまま出力させ、ゲインを×2k (但し、k=1、2、3、4、5)とするとき、サンプルデータを算術シフト演算によりkビット左シフトして信号レベルを可変する。
【0025】
28はD/A変換後のアナログオーディオ信号に対するゲインを切り換え可能な出力ゲイン切り換え部である。この出力ゲイン切り換え部28はゲインを第1乃至第6の6段階に1/2の乗数倍に切り換え可能とする。第1段階は×1/32、第2段階は×1/16、第3段階は×1/8、第4段階は×1/4、第5段階は×1/2、第6段階は×1/1のゲインに設定されている。但し、素子部品の回路定数の選択の制限と回路定数のバラツキから各段階の実際のゲインは設定値と一致せず誤差がある。この誤差は後述するように、ディジタル領域で補正される。34はレベル補正部であり、D/A変換対象のディジタルオーディオ信号に対し、出力ゲイン切り換え部28のゲイン誤差を打ち消すようにレベル補正を行う。25は出力ゲイン切り換え部28のゲイン測定用のディジタル基準信号を生成する基準信号生成部、26は通常時はレベル補正部34を介して入力されたディジタル信号処理後のディジタルオーディオ信号を選択して出力し、測定時は基準信号生成部25から入力されたディジタル基準信号を選択して出力するスイッチ部、30Aは補正係数記憶部であり、出力ゲイン切り換え部28の各段階の補正係数を記憶する。35はスイッチ部であり、通常モード時はレベル補正部34の出力を選択してレベル測定部29へ出力し、測定モード時はA/D変換部22の出力を選択して出力する。
【0026】
31Aは制御部であり、測定時は1kHzの正弦波からなる基準信号を出力ゲイン切り換え部28に印加させ、スイッチ部32、A/D変換部22、スイッチ部35を介してレベル測定部29に入力し、出力ゲイン切り換え部28のゲインを第6乃至第1段階に順に切り換えながら、各段階でのレベル測定部29で測定した信号レベルを用いて出力ゲイン切り換え部28の各段階のゲインの誤差を打ち消すための各段階別の補正係数を決定し、補正係数記憶部30Aに記憶させる。通常時は、レベル補正部34からスイッチ部26を介してD/A変換部27に入力されるディジタルオーディオ信号の信号レベルを監視し、所定の第1の基準レベルを下回った小レベル状態が一定時間継続したとき、D/A変換部27の入力レベルを最適化して量子化歪が顕著にならないようにするため、ゲイン切り換え部33のゲインを1段階増大させ、その分出力ゲイン切り換え部28のゲインを1段階下げる。この際、出力ゲイン切り換え部28のゲインに対応する補正係数をレベル補正部34にセットし、D/A変換対象のディジタルオーディオ信号に補正係数を乗じて、出力ゲイン切り換え部28のゲイン誤差を補正させて、ゲイン切り換え前後で出力アナログオーディオ信号Aoutが不連続とならないようにする。
また、D/A変換部27に入力されるディジタルオーディオ信号の信号レベルを監視しているときに、所定の第2の基準レベル(>第1の基準レベル)を越えて過大となったとき、D/A変換部27の入力レベルを最適化し、過大入力によるクリップが生じないようにするため、ゲイン切り換え部33のゲインを1段階下げ、その分出力ゲイン切り換え部28のゲインを1段階上げる。この際、出力ゲイン切り換え部28のゲインに対応する補正係数をレベル補正部34にセットし、D/A変換対象のディジタルオーディオ信号に補正係数を乗じて、出力ゲイン切り換え部28のゲイン誤差を補正させて、ゲイン切り換え前後で出力アナログオーディオ信号Aoutが不連続とならないようにする。図9のA/D変換部22からD/A変換部27までがディジタル領域である。なお、ディジタル領域ではサンプルデータがnビット長で表現されるものとし、MSBが±の符号を表すものとする。但し、ディジタル信号処理部24Aは下位側に5ビット拡張して(n+5)ビット長で演算を行い、ゲイン切り換え部33への出力も(n+5)ビット長で行い、ゲイン切り換え部33は算術シフト演算後、出力する際にnビットに丸めるものとする。
他の構成部分は図5と同様に構成されている。
【0027】
図10と図11は制御部31Aによる測定時と通常時の制御処理を示すフローチャートであり、以下、これらの図を参照して上記した第2実施例の動作を説明する。
なお、ここでは、出力ゲイン切り換え部28の×1/1のゲインを基準とし(補正はしない)、他の段階のゲインの相対誤差を打ち消すように補正するものとする。
(1)測定時
装置の電源がオンすると、制御部31Aはスイッチ部32、26、35を測定モード側に切り換えさせ、基準信号生成部25に振幅がディジタル領域のフルスケールの1/2より2割程度小さく、1kHz正弦波からなるディジタル基準信号を生成させ、更に出力ゲイン切り換え部28のゲインを第6段階の×1/1に切り換えさせる(図10のステップS50〜S52)。ディジタル基準信号の生成は正弦波の1周期分の波形のサンプルデータを繰り返し出力することで行なう。ディジタル基準信号はスイッチ部26を介してD/A変換部27に入力され、アナログ基準信号に変換されたのち、出力ゲイン切り換え部28に入力される。ここで、ゲインが×1されたあと、アナログ基準信号ST’としてスイッチ部32を介してA/D変換部22に入力され、ディジタル信号に変換される。そして、レベル測定部29によりピーク値が測定されて制御部31Aに入力される。制御部31Aは、入力したピーク値を基準レベルSQとして補正係数記憶部30Aに記憶し、かつ、第6段階のゲインの補正係数Q6を1として記憶する(ステップS53〜S55)。
【0028】
次に、出力ゲイン切り換え部28のゲインを1段階下げて×1/2に切り換えさせ(ステップS56、S57)、レベル測定部29から入力したピーク値で基準レベルSQの1/2のレベルを除して×1/2の補正係数Q5を計算し、補正係数記憶部30Aに記憶する(ステップS58、S59)。次に、出力ゲイン切り換え部28のゲインを1段階下げて×1/4に切り換えさせ、レベル測定部29から入力したピーク値を基準レベルSQの1/4のレベルで除して×1/4の補正係数Q4を計算し、補正係数記憶部30Aに記憶する(ステップS60でNO、S61、S57〜S59)。以下、第1段階の×1/32まで同様の処理を繰り返す。これにより、電源がオンされる度に、出力ゲイン切り換え部28の各段階のゲインの補正係数Q1〜Q6が決定されて補正係数記憶部30Aに記憶される。
【0029】
(2)通常時
補正係数の決定が終ると、制御部31Aは、スイッチ部32、26、35を通常モード側に切り換えさせるとともにゲイン切り換え部33のゲインを第1段階の×1、出力ゲイン切り換え部28のゲインを第6段階の×1/1に切り換えさせる(図10のステップS61でYES、図11のステップS80、S81)。またレベル補正部34に×1/1に対応する補正係数Q6=1をセットする(ステップS82)。音量調整後の入力アナログオーディオ信号Ainはスイッチ部32を介してA/D変換部22に入力され、ディジタルオーディオ信号に変換される。そして、ディジタル信号処理部24Aで3次FIRフィルタにより低域成分が抽出される。ディジタル信号処理後のディジタルオーディオ信号はゲイン切り換え部33によりゲインが×1(シフト無し)とされ、更にレベル補正部34で補正係数1が乗じられたあと、スイッチ部26を介してD/A変換部27に入力され、アナログオーディオ信号に変換されたあと、出力ゲイン切り換え部28でゲインが×1/1されて後段へ出力される。制御部31Aは常時、レベル測定部29で測定されたディジタルオーディオ信号のレベル(ここではピーク値)を監視しており(ステップS83)、一定時間以上小レベル状態が続いているかの判断と、一定レベルを越えて過大になったかの判断を繰り返している(ステップS84、S85の繰り返し)。
【0030】
若し、一定時間以上小レベル状態が続き、ステップS84でYESとなったとき、現在ゲイン切り換え部33がまだ第6段階でないので、ゲイン切り換え部21を第2段階の×2に切り換え(入力したサンプルデータに対し算術シフト演算により、1ビット左シフトさせる)、D/A変換部27のダイナミックレンジに対し最適化し、その分出力ゲイン切り換え部28を第5段階の×1/2に切り換える(ステップS86〜S88)。続いて、補正係数記憶部30Aから第5段階用の補正係数Q5を読み出してレベル補正部34にセットし、レベル補正部34から出力ゲイン切り換え部28までのゲインが第6段階に対し正確に1/2倍となるようにする(ステップS89)。これにより、ゲイン切り換え前後で出力ゲイン切り換え部28から出力されるアナログオーディオ信号Aoutが不連続となるのが防止される。
【0031】
その後、再び一定時間以上の小レベル状態が続いたとき、ステップS84でYESと判断し、ゲイン切り換え部33を第3段階の×4に切り換え(入力したサンプルデータに対し算術シフト演算により、2ビット左シフトさせる)、D/A変換部27のダイナミックレンジに対し最適化し、その分出力ゲイン切り換え部28を第4段階の×1/4に切り換える(ステップS86〜S88)。続いて、補正係数記憶部30Aから第4段階用の補正係数Q4を読み出してレベル補正部34にセットし、レベル補正部34から出力ゲイン切り換え部28までのゲインが第6段階に対し正確に1/4倍となるようにする(ステップS89)。
【0032】
その後、測定レベルが一定レベルを越える過大になったとき、ステップS85でYESと判断し、現在ゲイン切り換え部33がまだ第1段階でないので、ゲイン切り換え部33を第2段階の×2に切り換え(入力したサンプルデータに対し算術シフト演算により、1ビット左シフトさせる)、D/A変換部27のダイナミックレンジに対し過大入力とならないように最適化し、その分出力ゲイン切り換え部28を第5段階の×1/2に切り換える(ステップS90〜S92)。続いて、補正係数記憶部30Aから第5段階用の補正係数Q5を読み出してレベル補正部34にセットし、レベル補正部34から出力ゲイン切り換え部28までのゲインが第6段階に対し正確に1/2倍となるようにする(ステップS93、S94)。これにより、ゲイン切り換え前後で出力ゲイン切り換え部28Aから出力されるアナログオーディオ信号Aoutが不連続となるのが防止される。
【0033】
この実施例によれば、D/A変換対象のディジタルオーディオ信号のレベルに応じてゲイン切り換え部33のゲインを切り換え、レベルを最適化してD/A変換部27に入力することで、D/A変換で生じる量子化歪を低減することができる。また、基準信号を用いて出力ゲイン切り換え部28の各段階のゲインの誤差を打ち消すための各段階別の補正係数を決定し、出力ゲイン切り換え部28にD/A変換されたアナログオーディオ信号が印加されているときに、出力ゲイン切り換え部28のゲインに応じてD/A変換対象のディジタルオーディオ信号に対しレベル補正を行なうようにしたので、アナログ回路で構成される出力ゲイン切り換え部28の各段階のゲインに誤差があっても、信号に対するゲインを正確に切り換えることができる。
また、ゲイン切り換え部33は信号処理部24Aの出力に対するゲインを2の乗数倍で切り換えるようにしたので、ゲイン切り換えのための演算をビットシフト動作で簡単に実行することができる。
【0034】
なお、上記した第2実施例では、第6段階のゲインを基準にしたときの第2段階乃至第5段階のゲインの相対誤差を打ち消すように補正したが、各段階のゲインの絶対誤差を打ち消すように補正しても良い。この場合、例えば振幅Yが既知のディジタル基準信号をD/A変換し第3段階の×1/8のゲインに切り換えられた出力ゲイン切り換え部28に入力させた状態でレベル測定部29でピーク値yが測定されたとき、補正係数Q3は、
Y×(1/8)=y×Q3
Q3=(X/y)×(1/8)
となる。他の段階の補正係数も同様にして求めることができる。
また、上記した第2実施例では、通常時に、アナログオーディオ信号Ainをスイッチ部32を介してA/D変換部22に入力するようにしたが、前段機器がディジタル出力の場合、図12に示す如く、ディジタルオーディオ信号Dinを直接、ディジタル信号処理部24Aに入力させるようにしても良い。この場合、アナログ基準信号ST’は直接、A/D変換部22に入力すれば良い。
【実施例3】
【0035】
図13を参照して本発明の第3実施例を説明する。図13は本発明に係る音量調整装置の構成を示すブロック図であり、図9と同一の構成部分には同一の符号が付してある。この第3実施例の音量調整装置は、ディジタル領域で0〜−5dBまで1dBステップで減衰を行い、アナログ領域で0〜−30dBまで6dBステップで減衰を行い、全体で0〜−35dBの範囲を1dBステップで音量調整可能としたものである。
図13において、32はスイッチ部であり、通常モード時は音量調整対象の入力アナログオーディオ信号Ainを選択して出力し、測定モード時は後述する出力ゲイン切り換え部28Bから出力されたアナログの基準信号ST’を選択して出力する。24Bはディジタル信号処理部であり、ディジタルオーディオ信号に対し0dB〜−5dBの範囲で1dBのステップ幅でゲインを切り換えるための演算処理(0dB、−1dB、−2dB、−3dB、−4dB、−5dBに相当するゲイン係数の乗算処理)を実行する。28BはD/A変換後のアナログオーディオ信号に対するゲインを切り換え可能な出力ゲイン切り換え部である。この出力ゲイン切り換え部28Bはゲイン(ここでは0dB以下の減衰)を第1乃至第6の6段階に切り換え可能とする。第1段階は0dB、第2段階は−6dB、第3段階は−12dB、第4段階は−18dB、第5段階は−24dB、第6段階は−30dBのゲインに設定されている。但し、素子部品の回路定数の選択の制限と回路定数のバラツキから各段階の実際のゲインは設定値と一致せず誤差がある。この誤差は後述するように、ディジタル領域で補正される。34はレベル補正部であり、D/A変換対象のディジタルオーディオ信号に対し、出力ゲイン切り換え部28Bのゲイン誤差を打ち消すようにレベル補正を行う。25は出力ゲイン切り換え部28のゲイン測定用のディジタル基準信号を生成する基準信号生成部、26は通常時はレベル補正部34を介して入力されたディジタル信号処理後のディジタルオーディオ信号を選択して出力し、測定時は基準信号生成部25から入力されたディジタル基準信号を選択して出力するスイッチ部、30Bは記憶部であり、出力ゲイン切り換え部28Bの各段階の補正係数を記憶する。記憶部30Bには目標音量に対して、ディジタル信号処理部24Bと出力ゲイン切り換え部28Bにセットするゲインの組合せを表した図14の如く制御テーブルが記憶されている。29はレベル測定部であり、測定モード時にA/D変換部22から出力されるディジタル信号の信号レベルを測定する。
【0036】
31Bは制御部であり、測定時は1kHzの正弦波からなる基準信号を出力ゲイン切り換え部28Bに印加させ、スイッチ部32、A/D変換部22を介してレベル測定部29に入力し、出力ゲイン切り換え部28Bのゲインを第6乃至第1段階に順に切り換えながら、各段階でのレベル測定部29で測定した信号レベルを用いて出力ゲイン切り換え部28Bの各段階のゲインの誤差を打ち消すための各段階別の補正係数を決定し、記憶部30Bに記憶させる。通常時は、外部の図示しない音量可変操作部から入力した目標音量に基づき、記憶部30Bの制御テーブルを参照してディジタル信号処理部24Bと出力ゲイン切り換え部28Bに対するゲイン切り換え制御を行なうとともに、出力ゲイン切り換え部28Bのゲイン誤差を補正させて、目標音量の変化に対する出力信号レベルの直線性を改善する。図13のA/D変換部22からD/A変換部27までがディジタル領域、D/A変換部27から出力ゲイン切り換え部28Bまでがアナログ領域である。なお、ディジタル領域ではサンプルデータがnビット長で表現されるものとし、MSBが±の符号を表すものとする。ディジタル信号処理部24Bは下位側に5ビット拡張して(n+5)ビット長で演算を行い、出力する際にnビットに丸めるものとする。
他の構成部分は図9と同様に構成されている。
【0037】
図15と図16は制御部31Bによる測定時と通常時の制御処理を示すフローチャートであり、以下、これらの図を参照して上記した第3実施例の動作を説明する。
なお、ここでは、出力ゲイン切り換え部28Bの0dBのゲインを基準とし(補正はしない)、他の段階のゲインの相対誤差を打ち消すように補正するものとする。
(1)測定時
装置の電源がオンすると、制御部31Bはスイッチ部32、26を測定モード側に切り換えさせ、基準信号生成部25に振幅がディジタル領域のフルスケールの1/2より2割程度小さく、1kHz正弦波からなるディジタル基準信号を生成させ、更に出力ゲイン切り換え部28Bのゲインを第6段階の0dBに切り換えさせる(図15のステップS200〜S202)。ディジタル基準信号の生成は正弦波の1周期分の波形のサンプルデータを繰り返し出力することで行なう。ディジタル基準信号はスイッチ部26を介してD/A変換部27に入力され、アナログ基準信号に変換されたのち、出力ゲイン切り換え部28Bに入力される。ここで、ゲインが0dBとされたあと、アナログ基準信号ST’としてスイッチ部32を介してA/D変換部22に入力され、ディジタル信号に変換される。そして、レベル測定部29によりピーク値が測定されて制御部31Bに入力される。制御部31Bは、入力したピーク値を基準レベルSQ’として記憶部30Bに記憶し、かつ、第6段階のゲインの補正係数Q6’を1として記憶する(ステップS203〜S205)。
【0038】
次に、出力ゲイン切り換え部28Bのゲインを1段階下げて−6dBに切り換えさせ(ステップS206、S207)、レベル測定部29から入力したピーク値で基準レベルSQ’より−6dB落としたレベルを除して−6dBの補正係数Q5’を計算し、記憶部30Bに記憶する(ステップS208、S209)。次に、出力ゲイン切り換え部28Bのゲインを1段階下げて−12dBに切り換えさせ、レベル測定部29から入力したピーク値を基準レベルSQ’より−12dB落としたレベルで除して−12dBの補正係数Q4’を計算し、記憶部30Bに記憶する(ステップS2100でNO、S211、S207〜S208)。以下、第1段階の−30dBまで同様の処理を繰り返す。これにより、電源がオンされる度に、出力ゲイン切り換え部28Bの各段階のゲインの補正係数Q1’〜Q6’が決定されて記憶部30Bに記憶される。
【0039】
(2)通常時
補正係数の決定が終ると、制御部31Bは、スイッチ部32、26を通常モード側に切り換えさせる(図15のステップS210でYES、図16のステップS220)。そして、目標音量を入力し、制御テーブルを参照してディジタル信号処理部24Bのゲインと出力ゲイン切り換え部28Bのゲインを決定し、ディジタル信号処理部24Bのゲインと出力ゲイン切り換え部28Bのゲインの切り換え制御を行なう(ステップS222)。続いて、出力ゲイン切り換え部28Bのゲインに対する補正係数をレベル補正部34にセットする(ステップS223)。音量調整対象の入力アナログオーディオ信号Ainはスイッチ部32を介してA/D変換部22に入力され、ディジタルオーディオ信号に変換される。そして、ディジタル信号処理部24Bで制御部31Bにより設定されたゲイン分だけ信号レベルの可変演算を行なう。ディジタル信号処理後のディジタルオーディオ信号はレベル補正部34で補正係数が乗じられたあと、スイッチ部26を介してD/A変換部27に入力され、アナログオーディオ信号に変換されたあと、更に出力ゲイン切り換え部28Bで制御部31Bにより設定されたゲイン分だけ信号レベルが可変される。
【0040】
例えば、目標音量が−20dBであったとき、ディジタル信号処理部24Bで−2dB、出力ゲイン切り換え部28Bで−18dBに減衰されるとともに、出力ゲイン切り換え部28Bの−18dBのゲイン誤差を打ち消す補正係数Q4’がレベル補正部34にセットされるので、全体として、出力オーディオ信号Aoutの音量は正確に−20dBとなる。
制御部31Bは目標音量の変化を監視しており、変化があれば、前述と同様にして、制御テーブルを参照してディジタル信号処理部24Bのゲインと出力ゲイン切り換え部28Bのゲインを決定し、ディジタル信号処理部24Bのゲインと出力ゲイン切り換え部28Bのゲインの切り換え制御を行なう(ステップS225、S226でYES、S222、S223)。続いて、出力ゲイン切り換え部28Bのゲインに対する補正係数をレベル補正部34にセットする(ステップS224)。
【0041】
この実施例によれば、出力ゲイン切り換え部28Bのゲイン切り換えは6段階で良いので構成が簡単で済み、また、ディジタル信号処理部24Bは0〜5dBの範囲で減衰させるだけなので、小音量時でも量子化歪が大きくならない。そして、また、基準信号を用いて出力ゲイン切り換え部28Bの各段階のゲインの誤差を打ち消すための各段階別の補正係数を決定し、出力ゲイン切り換え部28にD/A変換されたアナログオーディオ信号が印加されているときに、出力ゲイン切り換え部28Bのゲインに応じてD/A変換対象のディジタルオーディオ信号に対しレベル補正を行なうようにしたので、アナログ回路で構成される出力ゲイン切り換え部28Bの各段階のゲインに誤差があっても、信号に対するゲインを正確に切り換えることができ、目標音量に対する出力信号レベルの直線性が良好となる。
【0042】
なお、上記した第3実施例では、第6段階のゲインを基準にしたときの第2段階乃至第5段階のゲインの相対誤差を打ち消すように補正したが、各段階のゲインの絶対誤差を打ち消すように補正しても良い。
また、上記した第3実施例では、通常時に、アナログオーディオ信号Ainをスイッチ部32を介してA/D変換部22に入力するようにしたが、前段機器がディシダル出力の場合、ディジタルオーディオ信号を直接、ディジタル信号処理部24Bに入力させるようにしても良い。この場合、アナログ基準信号ST’は直接、A/D変換部22に入力すれば良い。
【実施例4】
【0043】
図17を参照して本発明の第4実施例を説明する。図17は本発明に係る帯域制限用信号処理装置の構成を示すブロック図であり、図5、図9と同一の構成部分には同一の符号が付してある。
図17は図5と図9を合わせた構成を有し、A/D変換部の前段に入力ゲイン切り換え部、D/A変換部の前段にゲイン切り換え部、D/A変換部の後段に出力ゲイン切り換え部を設け、入力ゲイン切り換え部のゲイン誤差と出力ゲイン切り換え部のゲイン誤差を補正するようにしたものである。
図17において、20は通常モード時、入力アナログオーディオ信号Ainを選択し、第1測定モード時、基準信号STを選択するスイッチ部、21は入力ゲイン切り換え部であり、音量調整後の入力アナログオーディオ信号Ainに対するゲインを第1段階は×1、第2段階は×2、第3段階は×4、第4段階は×8、第5段階は×16、第6段階は×32のゲインに切り換え可能である。32は通常モード時と第1測定モード時、入力ゲイン切り換え部21の出力を選択し、第2測定モード時、基準信号ST´を選択する。23Cは入力レベル切り換え部21のゲイン誤差を打ち消すためのレベル補正を行なう第1レベル補正部、33はゲイン切り換え部であり、信号処理後のディジタルオーディオ信号に対するゲインを算術シフト演算により第1段階は×1、第2段階は×2、第3段階は×4、第4段階は×8、第5段階は×16、第6段階は×32のゲインに切り換え可能である。28は出力ゲイン切り換え部であり、D/A変換後のアナログオーディオ信号に対するゲインを第1段階は×1/32、第2段階は×1/16、第3段階は×1/8、第4段階は×1/4、第5段階は×1/2、第6段階は×1/1のゲインに切り換え可能である。34Cは第2レベル補正部であり、D/A変換対象のディジタルオーディオ信号に対し、出力ゲイン切り換え部28のゲイン誤差を打ち消すようにレベル補正を行う。
【0044】
25は入力ゲイン切り換え部21と出力ゲイン切り換え部28のゲイン測定用のディジタル基準信号を生成する基準信号生成部、29CはA/D変換部22から出力されたディジタル信号のレベルをピーク値から測定する第1レベル測定部、36はD/A変換部27に入力されるディジタル信号のレベルをピーク値から測定する第2レベル測定部、30Cは補正係数記憶部であり、入力ゲイン切り換え部21と出力ゲイン切り換え部28の各段階の補正係数を記憶する。
【0045】
31Cは制御部であり、第1測定時は1kHzの正弦波からなる基準信号をスイッチ部20を介して入力ゲイン切り換え部21に印加させ、スイッチ部32、A/D変換部22を介して第1レベル測定部29Cに入力し、入力ゲイン切り換え部21のゲインを第1乃至第6段階に順に切り換えながら、各段階での第1レベル測定部29Cで測定した信号レベルを用いて入力ゲイン切り換え部21の各段階のゲインの誤差を打ち消すための各段階別の補正係数を決定し、補正係数記憶部30Cに記憶させる。第2測定時は1kHzの正弦波からなる基準信号を出力ゲイン切り換え部28に印加させ、スイッチ部32、A/D変換部22を介して第1レベル測定部29Cに入力し、出力ゲイン切り換え部28のゲインを第6乃至第1段階に順に切り換えながら、各段階での第1レベル測定部29Cで測定した信号レベルを用いて出力ゲイン切り換え部28の各段階のゲインの誤差を打ち消すための各段階別の補正係数を決定し、補正係数記憶部30Cに記憶させる。
【0046】
通常時、制御部31Cは入力ゲイン切り換え部21を介してA/D変換部22に入力された入力アナログオーディオ信号の信号レベルを監視し、所定の第1の基準レベルを下回った小レベル状態が一定時間継続したとき、A/D変換部22の入力レベルを最適化して量子化歪が顕著にならないようにするため、入力ゲイン切り換え部21のゲインを1段階上げ、その分出力ゲイン切り換え部28のゲインを1段階下げる。また、入力アナログオーディオ信号の信号レベルを監視しているときに、所定の第2の基準レベル(>第1の基準レベル)を越えて過大となったとき、A/D変換部22の入力レベルを最適化し、過大入力によるクリップが生じないようにするため、入力ゲイン切り換え部21のゲインを1段階下げ、その分出力ゲイン切り換え部28のゲインを1段階上げる。そして、入力ゲイン切り換え部21のゲインに対応する補正係数を第1レベル補正部23Cにセットし、A/D変換部22から出力されたディジタルオーディオ信号に補正係数を乗じて、入力ゲイン切り換え部21のゲイン誤差を補正させるとともに、出力ゲイン切り換え部28のゲインに対応する補正係数を第2レベル補正部34Cにセットし、D/A変換対象のディジタルオーディオ信号に補正係数を乗じて、出力ゲイン切り換え部28のゲイン誤差を補正させる。また、ディジタル信号処理部24Aに対し過去のサンプルデータを算術シフト演算(1ビット左シフトまたは1ビット右シフト)により2倍または1/2倍の大きさに補正させて、ゲイン切り換え前後で出力アナログオーディオ信号Aoutが不連続とならないようにする。
【0047】
また通常時、制御部31Cは第2レベル補正部34Cからスイッチ部26を介してD/A変換部27に入力されるディジタルオーディオ信号の信号レベルを監視し、所定の第1の基準レベルを下回った小レベル状態が一定時間継続したとき、D/A変換部27の入力レベルを最適化して量子化歪が顕著にならないようにするため、ゲイン切り換え部33のゲインを1段階増大させ、その分出力ゲイン切り換え部28のゲインを1段階下げる。また、D/A変換部27に入力されるディジタルオーディオ信号の信号レベルを監視しているときに、所定の第2の基準レベル(>第1の基準レベル)を越えて過大となったとき、D/A変換部27の入力レベルを最適化し、過大入力によるクリップが生じないようにするため、ゲイン切り換え部33のゲインを1段階下げ、その分出力ゲイン切り換え部28のゲインを1段階上げる。そして、出力ゲイン切り換え部28のゲインに対応する補正係数を第2レベル補正部34Cにセットし、D/A変換対象のディジタルオーディオ信号に補正係数を乗じて、出力ゲイン切り換え部28のゲイン誤差を補正させて、ゲイン切り換え前後で出力アナログオーディオ信号Aoutが不連続とならないようにする。図17のA/D変換部22からD/A変換部27までがディジタル領域である。なお、ディジタル領域ではサンプルデータがnビット長で表現されるものとし、MSBが±の符号を表すものとする。但し、ディジタル信号処理部24Aは下位側に5ビット拡張して(n+5)ビット長で演算を行い、ゲイン切り換え部33への出力も(n+5)ビット長で行い、ゲイン切り換え部33は算術シフト演算後、出力する際にnビットに丸めるものとする。
他の構成部分は図5、図9と同様に構成されている。
【0048】
図18乃至図21は制御部31Cによる測定時と通常時の制御処理を示すフローチャートであり、以下、これらの図を参照して上記した第4実施例の動作を説明する。
なお、ここでは、入力ゲイン切り換え部21の×1/1のゲインを基準とし(補正はしない)、他の段階のゲインの相対誤差を打ち消すように補正するものとし、同様に、出力ゲイン切り換え部28の×1/1のゲインを基準とし(補正はしない)、他の段階のゲインの相対誤差を打ち消すように補正するものとする。
(1)第1測定時
装置の電源がオンすると、制御部31Cはスイッチ部20、32、26を第1測定モード側に切り換えさせ、基準信号生成部25に振幅Wがディジタル領域のフルスケールの1/2より2割程度小さく、1kHz正弦波からなるディジタル基準信号を生成させ、更に入力ゲイン切り換え部21のゲインを第1段階の×1に切り換えさせる(図18のステップS100〜S102)。ディジタル基準信号はスイッチ部26を介してD/A変換部27に入力され、アナログ基準信号STに変換されたのち、スイッチ部20を介して入力ゲイン切り換え部21に入力される。ここで、ゲインが×1されたあと、スイッチ部32を介してA/D変換部22によりディジタル信号に変換される。そして、第1レベル測定部29Cによりピーク値が測定されて制御部31Cに入力される。制御部31Cは、入力したピーク値を基準レベルSPとして補正係数記憶部30Cに記憶し、かつ、入力ゲイン切り換え部21の第1段階のゲインの補正係数P1を1として記憶する(ステップS103〜S105)。
【0049】
次に、入力ゲイン切り換え部21のゲインを1段階上げて×2に切り換えさせるとともに、基準信号生成部25の出力振幅をそれまでの1/2倍とする(ステップS106〜S108)。この結果、アナログの基準信号STは振幅が1/2倍となって入力ゲイン切り換え部21に入力され、ゲインが×2とされる。制御部31Cは、第1レベル測定部29Cから入力したピーク値で基準レベルSPを除して×2の補正係数P2を計算し、補正係数記憶部30Cに記憶する(ステップS109、S110)。以下、第6段階の×32まで同様の処理を繰り返す(ステップS111、S112、S107〜S110の繰り返し)。これにより、電源がオンされる度に、入力ゲイン切り換え部21の各段階のゲインの補正係数P1〜P6が決定されて補正係数記憶部30Cに記憶される。
【0050】
(2)第2測定時
入力ゲイン切り換え部21の補正係数の決定が終ると、制御部31Cはスイッチ部20、32、26を第2測定モード側に切り換えさせ、基準信号生成部25に振幅Yがディジタル領域のフルスケールの1/2より2割程度小さく、1kHz正弦波からなるディジタル基準信号を生成させ、更に出力ゲイン切り換え部28のゲインを第6段階の×1/1に切り換えさせる(図18のステップS111でYES、図19のステップS120〜S122)。ディジタル基準信号はスイッチ部26を介してD/A変換部27に入力され、アナログ基準信号に変換されたのち、出力ゲイン切り換え部28でゲインが×1されたあと、アナログ基準信号ST’としてスイッチ部32を介してA/D変換部22に入力され、ディジタル信号に変換される。そして、第1レベル測定部29Cによりピーク値が測定されて制御部31Cに入力される。制御部31Cは、入力したピーク値を基準レベルSQとして補正係数記憶部30Cに記憶し、かつ、出力ゲイン切り換え部28の第6段階のゲインの補正係数Q6を1として記憶する(ステップS123〜S125)。
【0051】
次に、出力ゲイン切り換え部28のゲインを1段階下げて×1/2とする(ステップS126、S127)。D/A変換部27から出力されたアナログの基準信号は出力ゲイン切り換え部28に入力され、ゲインが×1/2とされる。制御部31Cは、第1レベル測定部29Cから入力したピーク値で基準レベルSQの1/2を除して出力ゲイン切り換え部28の第5段階のゲインの補正係数Q5を計算し、補正係数記憶部30Cに記憶する(ステップS128、S129)。以下、第1段階の×1/32まで同様の処理を繰り返す(ステップS130、S131、S127〜S129の繰り返し)。これにより、電源がオンされる度に、出力ゲイン切り換え部28の各段階のゲインの補正係数Q1〜Q6が決定されて補正係数記憶部30Cに記憶される。
【0052】
(3)通常時
補正係数の決定が終ると、制御部31Cは、スイッチ部20、32、26を通常モード側に切り換えさせるとともに入力ゲイン切り換え部21のゲインを第1段階の×1、ゲイン切り換え部のゲインを×1、出力ゲイン切り換え部28のゲインを第6段階の×1/1に切り換えさせる(図19のステップS130でYES、図20のステップS140、S141)。また第1レベル補正部23Cに入力ゲイン切り換え部21の×1に対応する補正係数P1=1をセットし、第2レベル補正部34Cに出力ゲイン切り換え部28の×1に対応する補正係数Q6=1をセットする(ステップS142)。音量調整後の入力アナログオーディオ信号Ainはスイッチ部20を介して入力ゲイン切り換え部21に入力され、ゲインが×1されたあとスイッチ部32を介してA/D変換部22によりディジタルオーディオ信号に変換される。そして、第1レベル補正部23Cで補正係数1が乗じられたあと、ディジタル信号処理部24Aで3次FIRフィルタにより低域成分が抽出される。そして、ゲイン切り換え部33によりゲインが×1され、第2レベル補正部34Cで補正係数1が乗じられたあとスイッチ部26を介してD/A変換部27に入力され、アナログオーディオ信号に変換される。そして、出力ゲイン切り換え部28でゲインが×1/1されて後段へ出力される。制御部31Cは常時、第1レベル測定部29Cと第2レベル測定部36で測定されたディジタルオーディオ信号のレベル(ここではピーク値)を監視しており(ステップS143、図21のステップS160)、一定時間以上小レベル状態が続いているかの判断と、所定の一定レベルを越えて過大になったかの判断を繰り返している(図20のステップS144、S145、図21のステップS161、S162)。
【0053】
若し、第1レベル測定部29Cの測定の結果、一定時間以上小レベル状態が続き、ステップS144でYESとなったとき、現在入力ゲイン切り換え部21がまだ第6段階でなく、出力ゲイン切り換え部28がまだ第1段階でないので、入力ゲイン切り換え部21を第2段階の×2に切り換えてA/D変換部22のダイナミックレンジに対し最適化し、その分出力ゲイン切り換え部28を第5段階の×1/2に切り換える(ステップS146〜S148)。続いて、補正係数記憶部30Cから入力ゲイン切り換え部21の第2段階用の補正係数P2を読み出して第1レベル補正部23Cにセットし、入力ゲイン切り換え部21から第1レベル補正部23Cまでのゲインが入力ゲイン切り換え部21の第1段階に対し正確に2倍となるようにし、補正係数記憶部30Cから出力ゲイン切り換え部28の第5段階用の補正係数Q5を読み出して第2レベル補正部34Cにセットし、第2レベル補正部34Cから出力ゲイン切り換え部28までのゲインが出力ゲイン切り換え部28の第6段階に対し正確に1/2倍となるようにする。更に、ディジタル信号処理部24Aに対しFIRフィルタの過去のサンプルデータを算術シフト演算で1ビット左シフトして2倍の大きさとする(ステップS149、S150)。これにより、出力ゲイン切り換え部28から出力されるアナログオーディオ信号Aoutがゲイン切り換え前後で不連続となるのが防止される。
【0054】
その後、再び第1レベル測定部29Cで測定した信号レベルが一定時間以上の小レベル状態が続いたとき、ステップS144でYESと判断し、入力ゲイン切り換え部21を第3段階の×4に切り換えてA/D変換部22のダイナミックレンジに対し最適化し、その分出力ゲイン切り換え部28を第4段階の×1/4に切り換える(ステップS146〜S148)。続いて、補正係数記憶部30Cから入力ゲイン切り換え部21の第3段階用の補正係数P3を読み出して第1レベル補正部23Cにセットし、入力ゲイン切り換え部21から第1レベル補正部23Cまでのゲインが第1段階に対し正確に4倍となるようにし、補正係数記憶部30Cから出力ゲイン切り換え部28の第4段階用の補正係数Q4を読み出して第2レベル補正部34Cにセットし、第2レベル補正部34Cから出力ゲイン切り換え部28までのゲインが出力ゲイン切り換え部28の第6段階に対し正確に1/4倍となるようにする。そして、ディジタル信号処理部24Aに対しFIRフィルタの過去のサンプルデータを算術シフト演算で1ビット左シフトして2倍の大きさとする(ステップS149、S150)。
【0055】
その後、第1レベル測定部29Cでの測定レベルが所定の一定レベルを越える過大になったとき、ステップS145でYESと判断し、現在入力ゲイン切り換え部21がまだ第1段階でなく、出力ゲイン切り換え部28がまだ第6段階でないので、入力ゲイン切り換え部21を第2段階の×2に戻してA/D変換部22のダイナミックレンジに対し過大入力とならないように最適化し、その分出力ゲイン切り換え部28を第5段階の×1/2に切り換える(ステップS151〜S153)。続いて、補正係数記憶部30Cから入力ゲイン切り換え部21の第2段階用の補正係数P2を読み出して第1レベル補正部23Cにセットし、補正係数記憶部30Cから出力ゲイン切り換え部28の第5段階用の補正係数Q5を読み出して第2レベル補正部34Cにセットし、ディジタル信号処理部24Aに対しFIRフィルタの過去のサンプルデータを算術シフト演算で1ビット右シフトして1/2倍の大きさとする(ステップS154、S155)。これにより、ゲイン切り換えの前後で出力ゲイン切り換え部28から出力されるアナログオーディオ信号Aoutが不連続となるのが防止される。
【0056】
その後、第2レベル測定部36の測定の結果、一定時間以上小レベル状態が続き、図21のステップS161でYESとなったとき、制御部31Cは現在ゲイン切り換え部33がまだ第6段階でなく、出力ゲイン切り換え部28がまだ第1段階でないので、ゲイン切り換え部33を第2段階の×2に切り換えてD/A変換部27のダイナミックレンジに対し最適化し、その分出力ゲイン切り換え部28を1段階下げ第4段階の×1/4に切り換える(ステップS163〜S165)。続いて、補正係数記憶部30Cから出力ゲイン切り換え部28の第4段階用の補正係数Q4を読み出して第2レベル補正部34Cにセットし、第2レベル補正部34Cから出力ゲイン切り換え部28までのゲインが出力ゲイン切り換え部28の第6段階に対し正確に1/4倍となるようにする(ステップS166)。これにより、出力ゲイン切り換え部28から出力されるアナログオーディオ信号Aoutがゲイン切り換え前後で不連続となるのが防止される。
【0057】
その後、再び第2レベル測定部36で測定した信号レベルが一定時間以上の小レベル状態が続いたとき、ステップS161でYESと判断し、ゲイン切り換え部33を第3段階の×4に切り換えてD/A変換部27のダイナミックレンジに対し最適化し、その分出力ゲイン切り換え部28を1段階下げて第3段階の×1/8に切り換える(ステップS163〜S165)。続いて、補正係数記憶部30Cから出力ゲイン切り換え部28の第3段階用の補正係数Q3を読み出して第2レベル補正部34Cにセットし、第2レベル補正部34Cから出力ゲイン切り換え部28までのゲインが出力ゲイン切り換え部28の第6段階に対し正確に1/8倍となるようにする。(ステップS166)。
【0058】
その後、第2レベル測定部36での測定レベルが所定の一定レベルを越える過大になったとき、ステップS162でYESと判断し、現在ゲイン切り換え部33がまだ第1段階でなく、出力ゲイン切り換え部28がまだ第6段階でないので、ゲイン切り換え部33を第2段階の×2に戻してD/A変換部27のダイナミックレンジに対し過大入力とならないように最適化し、その分出力ゲイン切り換え部28を第4段階の×1/4に切り換える(ステップS167〜S169)。続いて、補正係数記憶部30Cから出力ゲイン切り換え部28の第3段階用の補正係数Q3を読み出して第2レベル補正部34Cにセットする(ステップS170)。これにより、ゲイン切り換えの前後で出力ゲイン切り換え部28から出力されるアナログオーディオ信号Aoutが不連続となるのが防止される。
【0059】
この実施例によれば、A/D変換対象の入力アナログオーディオ信号のレベルに応じて入力ゲイン切り換え部21のゲインを切り換え、レベルを最適化してA/D変換部22に入力することで、A/D変換で生じる量子化歪を低減することができ、D/A変換対象のディジタルオーディオ信号のレベルに応じてゲイン切り換え部33のゲインを切り換え、レベルを最適化してD/A変換部27に入力することで、D/A変換で生じる量子化歪を低減することができる。
また、基準信号を用いて入力ゲイン切り換え部21の各段階のゲインの誤差を打ち消すための各段階別の補正係数を決定し、入力ゲイン切り換え部21にA/D変換対象のアナログオーディオ信号が印加されているときに、入力ゲイン切り換え部21のゲインに応じてA/D変換部22から出力されたディジタルオーディオ信号に対しレベル補正を行なうようにしたので、アナログ回路で構成される入力ゲイン切り換え部21の各段階のゲインに誤差があっても、信号に対するゲインを正確に切り換えることができる。同様に、基準信号を用いて出力ゲイン切り換え部28の各段階のゲインの誤差を打ち消すための各段階別の補正係数を決定し、出力ゲイン切り換え部28にD/A変換されたアナログオーディオ信号が印加されているときに、出力ゲイン切り換え部28のゲインに応じてD/A変換対象のディジタルオーディオ信号に対しレベル補正を行なうようにしたので、アナログ回路で構成される出力ゲイン切り換え部28の各段階のゲインに誤差があっても、信号に対するゲインを正確に切り換えることができる。
また、A/D変換後のディジタルオーディオ信号をディジタル信号処理する場合、入力ゲイン切り換え部21のゲイン切り換えと連動してディジタル信号処理部24Aに保持された過去のサンプルデータのレベルを切り換える必要があるが、入力ゲイン切り換え部21の複数段階のゲイン設定値を2の乗数倍で切り換えるようにしたので、過去のサンプルデータのレベルの切り換えを算術シフト演算(右シフトまたは左シフト)で簡単に実行することができる。
また、ゲイン切り換え部33は信号処理部24Aの出力に対するゲインを2の乗数倍で切り換えるようにしたので、ゲイン切り換えのための演算をビットシフト動作で簡単に実行することができる。
【0060】
なお、上記した第4実施例では、入力ゲイン切り換え部は第1段階のゲインを基準にしたときの第2段階乃至第6段階のゲインの相対誤差を打ち消すように補正したが、各段階のゲインの絶対誤差を打ち消すように補正しても良い。同様に、出力ゲイン切り換え部は第6段階のゲインを基準にしたときの第2段階乃至第5段階のゲインの相対誤差を打ち消すように補正したが、各段階のゲインの絶対誤差を打ち消すように補正しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、オーディオ信号以外にも、映像信号など他の種類の信号をA/D変換またはD/A変換する場合にも同様に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】従来の信号処理システムの一例を示すブロック図である。
【図2】アナログゲイン切り換え回路の一例を示す回路図である。
【図3】図2の回路特性の説明図である。
【図4】従来の音量調整回路の一例を示すブロック図である。
【図5】本発明の第1実施例に係る帯域制限用信号処理装置のブロック図である(実施例1)。
【図6】図5中のディジタル信号処理部のシグナルフローを示す説明図である。
【図7】図5の制御部の制御処理を示すフローチャートである。
【図8】図5の制御部の制御処理を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第2実施例に係る帯域制限用信号処理装置のブロック図である(実施例2)。
【図10】図9の制御部の制御処理を示すフローチャートである。
【図11】図9の制御部の制御処理を示すフローチャートである。
【図12】図9の変形例の構成を示すブロック図である。
【図13】本発明の第3実施例に係る音量調整装置のブロック図である(実施例3)。
【図14】図13の記憶部に記憶された制御テーブルの説明図である。
【図15】図13の制御部の制御処理を示すフローチャートである。
【図16】図13の制御部の制御処理を示すフローチャートである。
【図17】本発明の第4実施例に係る帯域制限用信号処理装置のブロック図である(実施例4)。
【図18】図17の制御部の制御処理を示すフローチャートである。
【図19】図17の制御部の制御処理を示すフローチャートである。
【図20】図17の制御部の制御処理を示すフローチャートである。
【図21】図17の制御部の制御処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0063】
20、26、32、35 スイッチ部
21 入力ゲイン切り換え部
22 A/D変換部
23、34 レベル補正部
23C 第1レベル補正部
24、24A、24B ディジタル信号処理部
25 基準信号生成部
27 D/A変換部
28、28B 出力ゲイン切り換え部
29 レベル測定部
29C 第1レベル測定部
30、30A、30C 補正係数記憶部
30B 記憶部
31、31A、31B、31C 制御部
33 ゲイン切換部
34C 第2レベル補正部
36 第2レベル測定部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力アナログ信号をA/D変換するA/D変換手段と、A/D変換手段の前段に設けられて入力アナログ信号に対し複数段階の所定の設定値のゲインに切り換え可能な入力ゲイン切り換え手段と、を備えたA/D変換装置において、
入力ゲイン切り換え手段のゲイン測定用の基準信号を発生する基準信号発生手段と、
通常時は入力アナログ信号を選択して入力ゲイン切り換え手段に入力させ、測定時は基準信号を選択して入力ゲイン切り換え手段に入力させる選択手段と、
測定時、基準信号が選択手段を介して入力ゲイン切り換え手段に印加されているときに、入力ゲイン切り換え手段のゲインを各段階に切り換えたときのA/D変換手段の出力レベルを測定するレベル測定手段と、
レベル測定手段で測定したレベルに基づき、入力ゲイン切り換え手段の各段階のゲインの誤差を打ち消すための各段階別の補正係数を決定する補正係数決定手段と、
通常時、選択手段を介して入力ゲイン切り換え手段に入力アナログ信号が印加されているときに、入力ゲイン切り換え手段のゲインに応じてA/D変換手段から出力されたディジタル信号に対し、補正係数決定手段で決定された補正係数に基づきレベル補正を行なう補正手段と、
を備えたことを特徴とするA/D変換装置。
【請求項2】
入力ゲイン切り換え手段の複数段階のゲインの設定値は2の乗数倍または1/2の乗数倍の値としたこと、
を特徴とする請求項1記載のA/D変換装置。
【請求項3】
ディジタル信号をD/A変換して出力するD/A変換手段と、D/A変換手段の後段に設けられて出力アナログ信号に対し複数段階の所定の設定値のゲインに切り換え可能な出力ゲイン切り換え手段と、を備えたD/A変換装置において、
出力ゲイン切り換え手段のゲイン測定用の基準信号を発生する基準信号発生手段と、
通常時は出力アナログ信号を選択して出力ゲイン切り換え手段に入力させ、測定時は基準信号を選択して出力ゲイン切り換え手段に入力させる選択手段と、
測定時、出力ゲイン切り換え手段から出力されるアナログ信号が入力されるA/D変換手段と、
測定時、基準信号が選択手段を介して出力ゲイン切り換え手段に印加されているときに、出力ゲイン切り換え手段のゲインを各段階に切り換えたときのA/D変換手段の出力レベルを測定するレベル測定手段と、
レベル測定手段で測定した出力レベルに基づき、出力ゲイン切り換え手段の各段階のゲインの誤差を打ち消すための各段階別の補正係数を決定する補正係数決定手段と、
通常時、選択手段を介して出力ゲイン切り換え手段にD/A変換手段の出力が印加されているときに、出力ゲイン切り換え手段のゲインに応じてD/A変換手段に入力されるディジタル信号に対し、補正係数決定手段で決定された補正係数に基づきレベル補正を行なう補正手段と、
を備えたことを特徴とするD/A変換装置。
【請求項4】
出力ゲイン切り換え手段の複数段階のゲイン設定値は2の乗数倍または1/2の乗数倍の値としたこと、
を特徴とする請求項3記載のD/A変換装置。
【請求項5】
入力アナログ信号をA/D変換するA/D変換手段と、A/D変換手段から出力された入力ディジタル信号に対し信号処理を行なう信号処理手段と、信号処理手段の出力ディジタル信号をD/A変換して出力するD/A変換手段と、A/D変換手段の前段に設けられて入力アナログ信号に対し複数段階の所定の設定値のゲインに切り換え可能な入力ゲイン切り換え手段と、D/A変換手段の後段に設けられて出力アナログ信号に対し複数段階の所定の設定値のゲインに切り換え可能な出力ゲイン切り換え手段と、を備えた信号処理装置において、
入力ゲイン切り換え手段と出力ゲイン切り換え手段のゲイン測定用の基準信号を発生する基準信号発生手段と、
通常時は入力アナログ信号を選択して入力ゲイン切り換え手段に入力させ、第1の測定時は基準信号を選択して入力ゲイン切り換え手段に入力させ、第2の測定時は出力ゲイン切り換え手段の出力を選択して入力ゲイン切り換え手段に入力する第1の選択手段と、
通常時は出力アナログ信号を選択して出力ゲイン切り換え手段に入力し、第2の測定時は基準信号を選択して出力ゲイン切り換え手段に入力させる第2の選択手段と、
第1の測定時、基準信号が第1の選択手段を介して入力ゲイン切り換え手段に印加されているときに、入力ゲイン切り換え手段のゲインを各段階に切り換えたときのA/D変換手段の出力レベルを測定し、第2の測定時、基準信号が第2の選択手段、出力ゲイン切り換え手段、第1の選択手段を介して入力ゲイン切り換え手段に印加されているときに、出力ゲイン切り換え手段のゲインを各段階に切り換えたときのA/D変換手段の出力レベルを測定するレベル測定手段と、
レベル測定手段で測定したレベルに基づき、入力ゲイン切り換え手段の各段階のゲインの誤差を打ち消すための各段階別の補正係数と出力ゲイン切り換え手段の各段階のゲインの誤差を打ち消すための各段階別の補正係数とを決定する補正係数決定手段と、
通常時、第1の選択手段を介して入力ゲイン切り換え手段に入力アナログ信号が印加され、かつ第2の選択手段を介して出力ゲイン切り換え手段に出力アナログ信号が印加されているときに、入力ゲイン切り換え手段のゲインと出力ゲイン切り換え手段のゲインに応じてA/D変換手段とD/A変換手段の間でディジタル信号に対し、補正係数決定手段で決定された補正係数に基づきレベル補正を行なう補正手段と、
を備えたことを特徴とする信号処理装置。
【請求項6】
入力ゲイン切り換え手段の複数段階のゲインの設定値は2の乗数倍または1/2の乗数倍の値とし、出力ゲイン切り換え手段の複数段階のゲインの設定値は2の乗数倍または1/2の乗数倍の値としたこと、
を特徴とする請求項5記載の信号処理装置。
【請求項1】
入力アナログ信号をA/D変換するA/D変換手段と、A/D変換手段の前段に設けられて入力アナログ信号に対し複数段階の所定の設定値のゲインに切り換え可能な入力ゲイン切り換え手段と、を備えたA/D変換装置において、
入力ゲイン切り換え手段のゲイン測定用の基準信号を発生する基準信号発生手段と、
通常時は入力アナログ信号を選択して入力ゲイン切り換え手段に入力させ、測定時は基準信号を選択して入力ゲイン切り換え手段に入力させる選択手段と、
測定時、基準信号が選択手段を介して入力ゲイン切り換え手段に印加されているときに、入力ゲイン切り換え手段のゲインを各段階に切り換えたときのA/D変換手段の出力レベルを測定するレベル測定手段と、
レベル測定手段で測定したレベルに基づき、入力ゲイン切り換え手段の各段階のゲインの誤差を打ち消すための各段階別の補正係数を決定する補正係数決定手段と、
通常時、選択手段を介して入力ゲイン切り換え手段に入力アナログ信号が印加されているときに、入力ゲイン切り換え手段のゲインに応じてA/D変換手段から出力されたディジタル信号に対し、補正係数決定手段で決定された補正係数に基づきレベル補正を行なう補正手段と、
を備えたことを特徴とするA/D変換装置。
【請求項2】
入力ゲイン切り換え手段の複数段階のゲインの設定値は2の乗数倍または1/2の乗数倍の値としたこと、
を特徴とする請求項1記載のA/D変換装置。
【請求項3】
ディジタル信号をD/A変換して出力するD/A変換手段と、D/A変換手段の後段に設けられて出力アナログ信号に対し複数段階の所定の設定値のゲインに切り換え可能な出力ゲイン切り換え手段と、を備えたD/A変換装置において、
出力ゲイン切り換え手段のゲイン測定用の基準信号を発生する基準信号発生手段と、
通常時は出力アナログ信号を選択して出力ゲイン切り換え手段に入力させ、測定時は基準信号を選択して出力ゲイン切り換え手段に入力させる選択手段と、
測定時、出力ゲイン切り換え手段から出力されるアナログ信号が入力されるA/D変換手段と、
測定時、基準信号が選択手段を介して出力ゲイン切り換え手段に印加されているときに、出力ゲイン切り換え手段のゲインを各段階に切り換えたときのA/D変換手段の出力レベルを測定するレベル測定手段と、
レベル測定手段で測定した出力レベルに基づき、出力ゲイン切り換え手段の各段階のゲインの誤差を打ち消すための各段階別の補正係数を決定する補正係数決定手段と、
通常時、選択手段を介して出力ゲイン切り換え手段にD/A変換手段の出力が印加されているときに、出力ゲイン切り換え手段のゲインに応じてD/A変換手段に入力されるディジタル信号に対し、補正係数決定手段で決定された補正係数に基づきレベル補正を行なう補正手段と、
を備えたことを特徴とするD/A変換装置。
【請求項4】
出力ゲイン切り換え手段の複数段階のゲイン設定値は2の乗数倍または1/2の乗数倍の値としたこと、
を特徴とする請求項3記載のD/A変換装置。
【請求項5】
入力アナログ信号をA/D変換するA/D変換手段と、A/D変換手段から出力された入力ディジタル信号に対し信号処理を行なう信号処理手段と、信号処理手段の出力ディジタル信号をD/A変換して出力するD/A変換手段と、A/D変換手段の前段に設けられて入力アナログ信号に対し複数段階の所定の設定値のゲインに切り換え可能な入力ゲイン切り換え手段と、D/A変換手段の後段に設けられて出力アナログ信号に対し複数段階の所定の設定値のゲインに切り換え可能な出力ゲイン切り換え手段と、を備えた信号処理装置において、
入力ゲイン切り換え手段と出力ゲイン切り換え手段のゲイン測定用の基準信号を発生する基準信号発生手段と、
通常時は入力アナログ信号を選択して入力ゲイン切り換え手段に入力させ、第1の測定時は基準信号を選択して入力ゲイン切り換え手段に入力させ、第2の測定時は出力ゲイン切り換え手段の出力を選択して入力ゲイン切り換え手段に入力する第1の選択手段と、
通常時は出力アナログ信号を選択して出力ゲイン切り換え手段に入力し、第2の測定時は基準信号を選択して出力ゲイン切り換え手段に入力させる第2の選択手段と、
第1の測定時、基準信号が第1の選択手段を介して入力ゲイン切り換え手段に印加されているときに、入力ゲイン切り換え手段のゲインを各段階に切り換えたときのA/D変換手段の出力レベルを測定し、第2の測定時、基準信号が第2の選択手段、出力ゲイン切り換え手段、第1の選択手段を介して入力ゲイン切り換え手段に印加されているときに、出力ゲイン切り換え手段のゲインを各段階に切り換えたときのA/D変換手段の出力レベルを測定するレベル測定手段と、
レベル測定手段で測定したレベルに基づき、入力ゲイン切り換え手段の各段階のゲインの誤差を打ち消すための各段階別の補正係数と出力ゲイン切り換え手段の各段階のゲインの誤差を打ち消すための各段階別の補正係数とを決定する補正係数決定手段と、
通常時、第1の選択手段を介して入力ゲイン切り換え手段に入力アナログ信号が印加され、かつ第2の選択手段を介して出力ゲイン切り換え手段に出力アナログ信号が印加されているときに、入力ゲイン切り換え手段のゲインと出力ゲイン切り換え手段のゲインに応じてA/D変換手段とD/A変換手段の間でディジタル信号に対し、補正係数決定手段で決定された補正係数に基づきレベル補正を行なう補正手段と、
を備えたことを特徴とする信号処理装置。
【請求項6】
入力ゲイン切り換え手段の複数段階のゲインの設定値は2の乗数倍または1/2の乗数倍の値とし、出力ゲイン切り換え手段の複数段階のゲインの設定値は2の乗数倍または1/2の乗数倍の値としたこと、
を特徴とする請求項5記載の信号処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2010−124250(P2010−124250A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−296180(P2008−296180)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【出願人】(595120530)株式会社ケンウッド・エンジニアリング (22)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【出願人】(595120530)株式会社ケンウッド・エンジニアリング (22)
【Fターム(参考)】
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