説明

AV機器

【課題】複数のAV機器が重ねて設置され、AV機器のミリ波の送受信部が電波遮蔽物などで塞がれても通信を可能とする。
【解決手段】ミリ波通信機能を内蔵するAV機器において、ミリ波通信用の窓枠13が設けられたAV機器の筐体ケース1と、窓枠13に取り付けられ、ミリ波信号を通過する樹脂窓14と、樹脂窓14の内部に位置し、ミリ波信号を放射するアンテナ付半導体チップ4と、樹脂窓14と、アンテナ付半導体チップ4との間の筐体ケース1に設けられた誘電体導波路5又は導波路溝5Aにてなる導波路とを含む。アンテナ付半導体チップ4から放射されたミリ波信号は、導波路及び樹脂窓14を介して外部に放射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばミリ波通信機能を内蔵した音声及び映像機器(以下、AV機器という。)に関し、特にアンテナ付半導体チップを使用するミリ波通信機能を内蔵したAV機器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばHDMI(High−Definition Multimedia Interface)信号などの非圧縮の音声及び映像データ(以下、AVデータという。)の無線伝送システムや携帯機器にAVデータを高速ダウンロードするなどの要望が高まっている。このため、Gbpsオーダーの伝送が可能なミリ波通信が注目されている。一方では、CMOS技術を利用したミリ波チップが試作されている。CMOSトランジスタの設計ルールの微細化が進展して、60GHz帯などのミリ波信号処理が行えるようになり、ベースバンド回路やアンテナを送受信回路に1個の半導体ICチップに集積できる。
【0003】
図14は従来技術に係るミリ波通信機能を内蔵した通信機器の構成を示す縦断面図である。以下、図14を参照しながら、ミリ波通信機能を内蔵した通信機器の動作について説明する。図7において、当該通信機器は、筐体ケース71内に、ミリ波モジュール72と、一次放射器73と、導波孔74と、レンズアンテナ75とを備えて構成される。
【0004】
図14において、AV機器の筐体ケース71の内部にミリ波モジュール72を固定する。上記ミリ波モジュール72は、一次放射器73からミリ波信号を送受信する。上記一次放射器73により送受信されるミリ波信号は伝送路として導波孔74を伝達する。上記導波孔74は、上記筐体ケース71にレンズアンテナ75を収容する。上記レンズアンテナ75は、上記一次放射器73から放射されるミリ波信号を上記筐体ケース71の外部に送信する送信アンテナ、及び上記筐体ケース71の外部から送信されるミリ波信号を上記筐体ケース71の内部に入波する受信アンテナとしてそれぞれ動作する。
【0005】
以上説明したように構成されたミリ波通信機能を内蔵したAV機器を使用して、複数のAV機器間でAVデータの高速無線伝送を行うことができる。ミリ波通信機能を内蔵した機器については例えば以下の文献において開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−304624号公報。
【非特許文献1】大久保聡ほか,「究極の無線通信、家庭へ、CMOSでミリ波に挑む」,日経エレクトロニクス,2006年8月14日号,No.932,pp.77−99,2006年8月14日発行。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のAV機器の筐体ケース71にレンズアンテナ75を収容したミリ波通信機能を内蔵したAV機器では、AV機器が重ね置きされたりして、上記レンズアンテナ75を介して送受信されるミリ波電波が遮断された場合には通信できないといった課題を有していた。また、レンズアンテナ75を介して送受信されるミリ波の通信範囲が狭いといった課題を有していた。
【0008】
本発明の目的は以上問題点を解決し、複数のAV機器が重ねて設置され、AV機器のミリ波の送受信部が電波遮蔽物などで塞がれても通信を可能とする、ミリ波通信が広範囲なミリ波通信機能を内蔵したAV機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るAV機器は、ミリ波通信機能を内蔵するAV機器において、
ミリ波通信用の第1の窓枠が設けられたAV機器の筐体ケースと、
上記第1の窓枠に取り付けられ、ミリ波信号を通過する第1の窓と、
上記第1の窓の内部に位置し、ミリ波信号を放射するアンテナ付半導体チップと、
上記第1の窓と、上記アンテナ付半導体チップとの間の上記筐体ケースに設けられた誘電体導波路又は導波路溝にてなる導波路とを備え、
上記アンテナ付半導体チップから放射されたミリ波信号は、上記導波路及び上記第1の窓を介して外部に放射されることを特徴とする。
【0010】
上記AV機器において、上記アンテナ付半導体チップは複数のアンテナ素子にてなるアレーアンテナを備え、
上記アレーアンテナにより送受信されるミリ波ビームについてビームフォーミング処理を行うビームフォーミング回路をさらに備えたことを特徴とする。
【0011】
また、上記AV機器において、上記筐体ケースの誘電体導波路又は誘導体溝の先端部に、上記アンテナ付半導体チップのアンテナが位置するように配置されたことを特徴とする。
【0012】
さらに、上記AV機器において、
上記アンテナ付半導体チップが実装されたプリント配線基板と、
上記プリント配線基板のアンテナ付半導体チップが実装された周辺に設けられ、上記アンテナ付半導体チップからのミリ波信号を導波し、通過し又は反射する導波手段と、
上記AV機器の筐体ケースに設けられたミリ波通信用の第2の窓枠と、
上記第2の窓枠に取り付けられ、上記導波手段を通過したミリ波信号を通過させる第2の窓とをさらに備え、
上記アンテナ付半導体チップから放射されたミリ波信号は、上記導波手段及び上記第2の窓を介して外部に放射されることを特徴とする。
【0013】
ここで、上記導波手段は、上記プリント配線基板の基板貫通孔又は上記プリント配線基板の導体層が除かれた部分であって、上記ミリ波信号を透過する電波透過部であることを特徴とする。
【0014】
また、上記導波手段は、上記プリント配線基板のアンテナ付半導体チップが実装された周辺に設けられ、上記ミリ波信号を反射する反射板であることを特徴とする。
【0015】
さらに、上記導波手段は、上記プリント配線基板のアンテナ付半導体チップが実装された周辺に設けられ、上記ミリ波信号を導波して放射する別のアンテナであることを特徴とする。
【0016】
またさらに、上記導波手段は、上記プリント配線基板のアンテナ付半導体チップが実装された周辺に設けられ、上記ミリ波信号を反射する液晶層であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るAV機器によれば、ミリ波通信用の第1の窓枠が設けられたAV機器の筐体ケースと、上記第1の窓枠に取り付けられ、ミリ波信号を通過する第1の窓と、上記第1の窓の内部に位置し、ミリ波信号を放射するアンテナ付半導体チップと、上記第1の窓と、上記アンテナ付半導体チップとの間の上記筐体ケースに設けられた誘電体導波路又は導波路溝にてなる導波路とを備え、上記アンテナ付半導体チップから放射されたミリ波信号は、上記導波路及び上記第1の窓を介して外部に放射される。従って、複数のV機器が重ねて設置されたり、又はAV機器の上部に電波遮蔽物などが置かれても、AV機器の筐体ケースの導波路を介してミリ波信号を送受信することが可能で、使用環境に左右されない安定した動作が可能なミリ波通信機能を内蔵したAV機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各実施形態において、同様の構成要素については同一の符号を付している。
【0019】
第1の実施形態.
図1は、本発明の第1の実施形態に係るミリ波通信機能を内蔵したAV機器の構成を示す斜視図である。また、図2は図1の誘電体導波路5を示す縦断面図であり、図3は図1の誘電体導波路5の変形例である導波路溝5Aを示す縦断面図である。
【0020】
本実施形態によれば、図1に示すように、ミリ波通信用の窓枠2が設けられたAV機器の筐体ケース1と、筐体ケース1の窓枠2に取り付けられた樹脂窓3と、樹脂窓3の内部に位置するアンテナ付半導体ICチップ4と、樹脂窓3を起点に筐体ケース1の凹部に誘電体導波路5(図2)又は導波路溝5A(図3)を形成することにより、複数のAV機器が重ねて設置され、筐体ケース1の窓枠2が電波遮蔽物で塞がれても、AV機器の筐体ケース1の誘電体導波路5(図2)又は導波路溝5A(図3)を導波路としてミリ波電波を送受信することができることを特徴としている。
【0021】
図1において、AV機器の筐体ケース1の上面において、例えば樹脂にてなるミリ波通信用の窓枠2が設けられ、その窓枠2の枠内には樹脂窓3(樹脂カバーともいう。)がはめ込まれて形成される。樹脂窓3の内部(例えば直下)にアンテナ付半導体ICチップ4が配置されている。
【0022】
図11は本発明の各実施形態に係る半導体ICチップ4上に形成された複数のアンテナ素子6からなるアレーアンテナ6Aの構成を示す斜視図であり、図12は本発明の各実施形態に係るミリ波送受信装置の構成を示すブロック図である。図11において、半導体ICチップ4のおもて面上には複数のアンテナ素子6が形成されて、アレーアンテナ6Aを構成している。アレーアンテナ6Aは、図12に示すように、ビームフォーミング回路7に接続されている。半導体ICチップ4は、少なくともアレーアンテナ6Aと、ビームフォーミング回路7と、ミリ波送受信回路8とを備えて構成される。筐体ケース1内の映像音声再生回路9により再生された映像及び音声データ(AVストリームデータ)はミリ波送受信回路8に入力され、周波数変換、デジタル変調や電力増幅などの処理がなされた後、処理後のミリ波信号をビームフォーミング回路7に出力する。ビームフォーミング回路7は入力されたミリ波信号を所望のビーム方向で放射するようにビームフォーミング処理を実行して複数のアンテナ素子6にてなるアレーアンテナ6Aに出力して上述の樹脂窓3を介して外部に筐体ケース1の上面に概ね垂直な方向で放射する。なお、アレーアンテナ6Aにより受信されたミリ波信号は以上とは逆の処理がなされる。
【0023】
図1において、樹脂窓3を起点に筐体ケース1の凹部には、誘電体導波路5(図2)(もしくは、図3の導波路溝5Aを形成してもよい。)が形成され、半導体ICチップ4のアレーアンテナ6Aから放射されたミリ波信号は、樹脂窓3のみならず、樹脂窓3から誘電体導波路5を介して導波され、筐体ケース1の側面に概ね垂直な方向で放射される。従って、複数のAV機器が重ねて設置され、筐体ケース1の窓枠2が電波遮蔽物で塞がれても、AV機器の筐体ケース1の誘電体導波路5(又は導波路溝5A)を導波路としてミリ波電波を送受信することができる。
【0024】
以上説明したように構成されたミリ波通信機能を内蔵するAV機器の適用例の動作について、以下、図1と図9を用いて説明する。
【0025】
図9は、本発明の各実施形態に係る複数のAV機器を配置した第1の配置例を示す斜視図である。図9において、ミリ波送受信部111Wを有するテレビジョン受像機111の筐体の下側空間において、載置台121上に、ミリ波送受信部114Wを有するDVDプレーヤ114と、ミリ波送受信部115Wを有するDVDプレーヤ115とが並置され、また、載置台122上に、ミリ波送受信部113Wを有するDVDプレーヤ113が載置され、その上にミリ波送受信部112Wを有するセットトップボックス(STB)112が載置されている。なお、図9において、ミリ波送受信部111W,112W,113W,114W,115Wはその電波放射部(図1の樹脂窓3に対応する)の位置を示している。
【0026】
まず、図9のセットトップボックス112のミリ波通信の動作について説明する。図9において、セットトップボックス112のミリ波送受信部112Wは、テレビジョン受像機111のミリ波送受信部111Wに対してAVストリームデータを有するミリ波信号を無線送信する。セットトップボックス112のミリ波送受信部112Wにより送受信されるミリ波信号はテレビジョン受像機111に対して遮蔽されていない。セットトップボックス112の筐体ケース1にミリ波信号を送受信するための窓枠2を設け、窓枠2にミリ波信号が透過する樹脂窓3を取り付ける。樹脂窓3の筐体ケース1の内側にはアンテナ付半導体ICチップ4が実装される。アンテナ付半導体ICチップ4は、図12に示すように、ミリ波送受信回路8及びビームフォーミング回路7にアレーアンテナ6Aを集積した1チップの半導体デバイスであり、ミリ波信号処理を行う。また、アレーアンテナ6Aを用いてビームフォーミング祖処理を行って、ミリ波信号のビーム制御を行う。図9の適用例では、ミリ波送受信部112Wからテレビジョン受像機111のミリ波送受信部111Wの方向にビーム制御することができる。セットトップボックス112のアンテナ付半導体ICチップ4により送受信されるミリ波信号は、テレビジョン受像機111のミリ波送受信部111Wと送受信される。
【0027】
次に、図9のDVDプレーヤ113のミリ波通信の動作について説明する。DVDプレーヤ113のミリ波送受信部113Wはテレビジョン受像機111のミリ波送受信部111Wに対してAVストリームデータを含むミリ波信号を送信する。DVDプレーヤ113のミリ波送受信部113Wにより送受信されるミリ波信号は、セットトップボックス112がDVDプレーヤ113の上部に重ね置きされているため遮蔽されることになる。DVDプレーヤ113の筐体ケース1にミリ波信号を送受信するための窓枠2を設け、窓枠2にミリ波信号が透過する樹脂窓3を取り付ける。樹脂窓3の筐体ケース1の内側にはアンテナ付半導体ICチップ4が実装される。DVDプレーヤ113のミリ波送受信部113Wは、テレビジョン受像機111のミリ波送受信部111Wの方向にビーム制御することができるが、セットトップボックス112によって電波が遮断されるため、樹脂窓3を起点に筐体ケース1に誘電体導波路5又は導波路溝5Aを形成する。アンテナ付半導体ICチップ4は、誘電体導波路5又は導波路溝5Aを介してミリ波信号の電波を入出力されるようにビームを制御する。誘電体導波路5又は導波路溝5Aに入出力されるミリ波信号は導波されて筐体ケース1の外部に入出力される。そして、DVDプレーヤ113のミリ波送受信部113Wは誘電体導波路5又は導波路溝5Aを介してミリ波信号をテレビジョン受像機111のミリ波送受信部111Wと送受信する。
【0028】
以上説明したように、本実施形態によれば、ミリ波通信用の窓枠が設けられたAV機器の筐体ケースと、上記筐体ケースの窓枠に取り付けられた樹脂窓と、上記樹脂窓の内部に位置するアンテナ付半導体ICチップと、上記樹脂窓を起点に上記筐体ケースに溝枠を備えることで、AV機器が重ねて設置されても、AV機器の筐体ケースの溝枠を導波路としてミリ波電波を送受信することが可能で、使用環境に左右されない安定した動作が可能なミリ波通信機能を内蔵したAV機器を提供することができる。
【0029】
第2の実施形態.
図4は本発明の第2の実施形態に係るミリ波通信機能を内蔵したAV機器の構成を示す斜視図であり、図5は図4のAV機器の筐体ケース1内のミリ波信号の伝搬状況を示す縦断面図である。第2の実施形態に係るAV機器は、図1の第1の実施形態に係るAV機器に比較して、誘電体導波路5に代えて、以下の構成要素を備えたことを特徴としている。
(1)アンテナ付半導体ICチップ4が実装されたプリント配線基板10に、図5に示すように、プリント配線基板10を厚さ方向に貫通する基板貫通孔11、及びプリント配線基板10の導体層10mを除去することにより電波透過部12を形成したこと。
(2)筐体ケース1の各側面に窓枠13及び樹脂窓14を設けたこと。
【0030】
以上説明したように構成されたミリ波通信機能を内蔵するAV機器の適用例の動作について、以下、図4、図5及び図9を用いて説明する。
【0031】
アンテナ付半導体ICチップ4から放射されるミリ波信号は、図5に示すように、基板貫通孔11又は電波透過部12を通過し、例えば金属にてなる筐体ケース1の内面を反射した後、樹脂窓14を介して外部に放射される。従って、第1の実施形態と同様に、図9の適用例においても、第2の実施形態を適用したDVDプレーヤ113のミリ波送受信部113Wはテレビジョン受像機111のミリ波送受信部111Wとミリ波信号を用いて送受信できる。また、第2の実施形態を適用したDVDプレーヤ114又は115のミリ波送受信部114W又115Wは、DVDプレーヤ113やセットトップボックス112により遮蔽されていても、テレビジョン受像機111のミリ波送受信部111Wとミリ波信号を用いて送受信できる。
【0032】
以上説明したように本実施形態によれば、ミリ波通信用の窓枠2が設けられたAV機器の筐体ケース1と、筐体ケース1の窓枠2に取り付けられた樹脂窓3と、樹脂窓3の内部に位置するアンテナ付半導体ICチップ4と、アンテナ付半導体ICチップ4が実装されたプリント配線基板10と、プリント配線基板10のアンテナ付半導体ICチップ4が実装された周辺に設けられた基板貫通孔11又は導体層10mが除かれた電波透過部12と、基板貫通孔11又は電波透過部12を介して導波されるミリ波信号を導波可能な位置に位置する筐体ケース1に窓枠13と樹脂窓14を備えることで、複数のAV機器が重ねて設置されても、反射するミリ波信号をAV機器の筐体ケース1の窓枠14により送受信することが可能で、使用環境に左右されない安定した動作が可能なミリ波通信機能を内蔵したAV機器を提供することができる。
【0033】
第3の実施形態.
図6は本発明の第3の実施形態に係るミリ波通信機能を内蔵したAV機器の構成を示す斜視図である。第3の実施形態に係るAV機器は、図1の第1の実施形態に係るAV機器に比較して、誘電体導波路5に代えて、以下の構成要素を備えたことを特徴としている。
(1)プリント配線基板32のアンテナ付半導体ICチップ4が実装された周辺に反射板19を設けたこと。
(2)筐体ケース1の上面に窓枠13及び樹脂窓14を設けたこと。
【0034】
以下、第3の実施形態に係るAV機器の動作について、図9の適用例を用いて説明する。
【0035】
第3の実施形態に係るAV機器であるセットトップボックス115のミリ波送受信部115Wはテレビジョン受像機111のミリ波送受信部111Wに対してミリ波信号を使用してAVストリームデータを含むミリ波信号を送信する。セットトップボックス115のミリ波送受信部115Wにより送受信されるミリ波信号はセットトップボックス112やDVDプレーヤ113が近くに置かれているため遮蔽されることになる。セットトップボックス115の筐体ケース1に、図6のごとくミリ波信号を送受信するための窓枠13を設け、窓枠13にミリ波信号が透過する樹脂窓14を取り付ける。樹脂窓14の筐体ケース1内側にはアンテナ付半導体ICチップ4を実装する。アンテナ付半導体ICチップ4は第1の実施形態と同様に構成される。アンテナ付半導体チップ4は、アレーアンテナ6Aを用いてミリ波信号のビーム制御の機能を有し、テレビジョン受像機111のミリ波送受信部111Wの方向にビーム制御することができるが、セットトップボックス112やDVDプレーヤ113によって電波が遮断されるため、プリント配線基板3にアンテナ付半導体ICチップ4が実装された周辺に反射板33を設ける。アンテナ付半導体ICチップ4から放射されるミリ波信号は、反射板19及び筐体ケース1の内面により反射された後、窓枠13に取り付けられた樹脂窓14を介してセットトップボックス112やDVDプレーヤ113の各ミリ波送受信部112W,113Wに到達し、若しくはその逆の経路でミリ波信号は伝搬する。従って、アンテナ付半導体チップ4は、セットトップボックス112やDVDプレーヤ113の各ミリ波送受信部112W,113Wとミリ波信号を用いて通信を行うことになる。また、セットトップボックス115のアンテナ付半導体ICチップ4により送受信されるミリ波信号は、同様にしてテレビジョン受像機111のミリ波送受信部111Wと送受信される。
【0036】
以上説明したように本実施形態によれば、ミリ波通信用の窓枠13が設けられたAV機器の筐体ケース1と、筐体ケース1の窓枠13に取り付けられた樹脂窓14と、樹脂窓14の内部に位置するアンテナ付半導体ICチップ4と、アンテナ付半導体ICチップ4が実装されたプリント配線基板3と、プリント配線基板3のアンテナ付半導体ICチップ4が実装された周辺に設けられた反射板19と、反射板19を用いたミリ波通信用に筐体ケース1に窓枠13と樹脂窓14を設けることで、反射するミリ波信号をAV機器の筐体ケース1の樹脂窓14を介して送受信することが可能で、使用環境に左右されない安定した動作が可能なミリ波通信機能を内蔵したAV機器を提供することができる。
【0037】
第4の実施形態.
図7は本発明の第4の実施形態に係るミリ波通信機能を内蔵したAV機器の構成を示す斜視図である。第4の実施形態に係るAV機器は、第1の実施形態に比較して以下の点が相違する。
(1)筐体ケース1の上面の窓枠2及び樹脂窓3に代えて、筐体ケース1の側面に、窓枠13及び樹脂窓14を設け、その近傍にアンテナ付半導体チップ4を設けたこと。
(2)誘電体導波路5に代えて、アンテナ付半導体チップ4の近傍においてホーンアンテナ17を設け、その放射囗付近の筐体ケース1の上面に窓枠15及び樹脂窓16を設けたこと。
【0038】
以下、第4の実施形態に係るミリ波通信機能を内蔵したAV機器の動作について、図10の適用例を用いて説明する。図10は本発明の各実施形態に係る複数のAV機器を配置した第2の配置例を示す斜視図である。図10において、AVラック118の載置台131上に、ミリ波送受信部116Wを有するDVDプレーヤ116が載置され、載置台131よりも上段である載置台132上に、ミリ波送受信部117Wを有するDVDプレーヤ117が載置されている。なお、図10において、ミリ波送受信部116W,117Wはその電波放射部(図1の樹脂窓3に対応する)の位置を示している。
【0039】
第4の実施形態に係るAV機器であるDVDプレーヤ116のミリ波送受信部116Wはテレビジョン受像機111のミリ波送受信部111Wに対してAVストリームデータを含むミリ波信号を送信する。DVDプレーヤ116のミリ波送受信部116Wにより送受信されるミリ波信号はテレビジョン受像機111のミリ波送受信部111Wに到達しない。DVDプレーヤ116の筐体ケース1の側面にミリ波信号を送受信するための窓枠13を設け、窓枠13にミリ波信号が透過する樹脂窓14を取り付ける。樹脂窓14の筐体ケース1の内側にはアンテナ付半導体ICチップ4を実装する。アンテナ付半導体ICチップ4は、第1の実施形態と同様に構成される。アンテナ付半導体チップ4は、アレーアンテナ6Aを用いてミリ波信号のビーム制御の機能を有し、テレビジョン受像機111のミリ波送受信部111Wの方向にビーム制御することができるが、アンテナ方向の関係からビーム制御の範囲外であって電波が未到達のため、アンテナ付半導体ICチップ4の近傍にホーンアンテナ17を設ける。アンテナ付半導体ICチップ4はホーンアンテナ17に直接か、又は窓枠13及び樹脂窓14を介してAVラック118のDVDプレーヤ116からの反射波が入出力するようにビームを制御する。また、アンテナ付半導体チップ4からのミリ波信号はホーンアンテナ17及び筐体ケース1の窓枠15に取り付けられた樹脂窓16を介して筐体ケース1の外部と送受信される。DVDプレーヤ16のアンテナ付半導体ICチップ4により送受信されるミリ波信号は、テレビジョン受像機111のミリ波送受信部111Wと送受信される。なお、ホーンアンテナ17は、筐体ケース1において電波が入出力するように加工されたもの、レンズアンテナなどの素子であってもよい。
【0040】
以上説明したように本実施形態によれば、ミリ波通信用の窓枠13が設けられたAV機器の筐体ケース1と、筐体ケース1の窓枠13に取り付けられた樹脂窓14と、樹脂窓14の内部に位置するアンテナ付半導体ICチップ4と、アンテナ付半導体ICチップ4に近接して取り付けられたホーンアンテナ17と、ホーンアンテナ17の筐体ケース1の窓枠13と、筐体ケース1の上面の窓枠15に取り付けられた樹脂窓16を設けることで、反射するミリ波信号をAV機器の筐体ケース1の樹脂窓16を介して送受信することが可能で、使用環境に左右されない安定した動作が可能なミリ波通信機能を内蔵したAV機器を提供することができる。
【0041】
第5の実施形態.
図8は本発明の第5の実施形態に係るミリ波通信機能を内蔵したAV機器の構成を示す斜視図であり、図13は図8の液晶層18とその動作を制御する装置コントローラ19の構成を示すブロック図である。第5の実施形態に係るAV機器は、第4の実施形態と比較して、樹脂窓14の内側に、装置コントローラ19の制御によりミリ波信号の反射をオン/オフすることができる液晶層18を形成したことである。
【0042】
以下、第5の実施形態に係るミリ波通信機能を内蔵したAV機器の動作について、図8、図13及び図10を参照して説明する。
【0043】
第5の実施形態に係るAV機器であるセットトップボックス117のミリ波送受信部117Wはテレビジョン受像機111のミリ波送受信部111Wに対してミリ波信号を使用してAVストリームを伝送する。セットトップボックス117の筐体ケース1にミリ波信号を送受信するための窓枠13を設け、窓枠13にミリ波信号が透過する樹脂窓14を取り付ける。樹脂窓14の筐体ケース1の内側には液晶層18が形成される。液晶層18の内部にアンテナ付半導体ICチップ4を実装する。アンテナ付半導体ICチップ4は、第1の実施形態と同様であり、アレーアンテナ6Aを用いてミリ波信号のビーム制御の機能を有し、テレビジョン受像機111のミリ波送受信部111Wの方向にビーム制御することができるが、樹脂窓14を介して送受信されるミリ波信号はアンテナの到達範囲外にある。この場合は、装置コントローラ18により液晶層18を反射状態に制御して液晶層18によりミリ波信号を反射させる。液晶層18は、光だけでなく、電気的にミリ波などの電波でも屈折率の異方性を持っている。アンテナ付半導体ICチップ4は液晶層18で反射されたミリ波信号がホーンアンテナ17に入出力するようにビームを制御する。ホーンアンテナ17は筐体ケース1の窓枠15に取り付けられた樹脂窓16を介して筐体ケース1の外部と送受信される。従って、セットトップボックス117のアンテナ付半導体ICチップ4により送受信されるミリ波信号は、テレビジョン受像機111のミリ波送受信部111Wと送受信される。なお、ホーンアンテナ17は、筐体ケース1において電波が入出力するように加工されたもの、レンズアンテナなどの素子であってもよい。
【0044】
以上説明したように本実施形態によれば、ミリ波通信用の窓枠13が設けられたAV機器の筐体ケース1と、ミリ波通信用の窓枠13と窓枠15が設けられたAV機器の筐体ケース1と、筐体ケース1の窓枠13に取り付けられた樹脂窓14と、筐体ケース1の窓枠15に取り付けられた樹脂窓16と、樹脂窓14の内部に形成された液晶層18と、液晶層18の内部に置かれたアンテナ付半導体ICチップと、樹脂窓16に置かれたホーンアンテナ17を設けることで、AV機器が筐体ケース1の樹脂窓14から入出力されるミリ波信号が到達範囲外に設置されても、筐体ケース1の窓枠16を介して送受信することが可能で、使用環境に左右されない安定した動作が可能なミリ波通信機能を内蔵したAV機器を提供することができる。
【0045】
なお、以上の各実施形態において、筐体ケース1に設ける窓枠2,13,15の位置や大きさ、形状は図示したものに限定されるものではない。また、以上の各実施形態において、樹脂窓3,14,16はミリ波信号が透過するものであれば、樹脂に限定されず、電波透過性材料又は自由空間(樹脂窓3,14,16を形成しない。)であってもよい。さらに、以上の各実施形態において、AV機器はテレビジョン受像機、DVDプレーヤ、セットトップボックスに限定されず、その他のAV機器であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上詳述したように、本発明に係るAV機器によれば、ミリ波通信用の第1の窓枠が設けられたAV機器の筐体ケースと、上記第1の窓枠に取り付けられ、ミリ波信号を通過する第1の窓と、上記第1の窓の内部に位置し、ミリ波信号を放射するアンテナ付半導体チップと、上記第1の窓と、上記アンテナ付半導体チップとの間の上記筐体ケースに設けられた誘電体導波路又は導波路溝にてなる導波路とを備え、上記アンテナ付半導体チップから放射されたミリ波信号は、上記導波路及び上記第1の窓を介して外部に放射される。従って、複数のV機器が重ねて設置されたり、又はAV機器の上部に電波遮蔽物などが置かれても、AV機器の筐体ケースの導波路を介してミリ波信号を送受信することが可能で、使用環境に左右されない安定した動作が可能なミリ波通信機能を内蔵したAV機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るミリ波通信機能を内蔵したAV機器の構成を示す斜視図である。
【図2】図1の誘電体導波路5を示す縦断面図である。
【図3】図1の誘電体導波路5の変形例である導波路溝5Aを示す縦断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るミリ波通信機能を内蔵したAV機器の構成を示す斜視図である。
【図5】図4のAV機器の筐体ケース1内のミリ波信号の伝搬状況を示す縦断面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係るミリ波通信機能を内蔵したAV機器の構成を示す斜視図である。
【図7】本発明の第4の実施形態に係るミリ波通信機能を内蔵したAV機器の構成を示す斜視図である。
【図8】本発明の第5の実施形態に係るミリ波通信機能を内蔵したAV機器の構成を示す斜視図である。
【図9】本発明の各実施形態に係る複数のAV機器を配置した第1の配置例を示す斜視図である。
【図10】本発明の各実施形態に係る複数のAV機器を配置した第2の配置例を示す斜視図である。
【図11】本発明の各実施形態に係る半導体ICチップ4上に形成された複数のアンテナ素子6からなるアレーアンテナ6Aの構成を示す斜視図である。
【図12】本発明の各実施形態に係るミリ波送受信装置の構成を示すブロック図である。
【図13】図8の液晶層18とその動作を制御する装置コントローラ19の構成を示すブロック図である。
【図14】従来技術に係るミリ波通信機能を内蔵した通信機器の構成を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1…筐体ケース、
2…窓枠、
3…樹脂窓、
4…アンテナ付半導体ICチップ、
5…誘電体導波路、
5A…導波路溝、
6…アンテナ素子、
6A…アレーアンテナ、
7…ビームフォーミング回路、
8…ミリ波送受信回路、
9…映像音声再生回路、
10…プリント配線基板、
10m…導体層、
11…基板貫通孔、
12…電波透過部、
13,15…窓枠、
14,16…樹脂窓、
17…ホーンアンテナ、
18…液晶層、
19…反射板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミリ波通信機能を内蔵するAV機器において、
ミリ波通信用の第1の窓枠が設けられたAV機器の筐体ケースと、
上記第1の窓枠に取り付けられ、ミリ波信号を通過する第1の窓と、
上記第1の窓の内部に位置し、ミリ波信号を放射するアンテナ付半導体チップと、
上記第1の窓と、上記アンテナ付半導体チップとの間の上記筐体ケースに設けられた誘電体導波路又は導波路溝にてなる導波路とを備え、
上記アンテナ付半導体チップから放射されたミリ波信号は、上記導波路及び上記第1の窓を介して外部に放射されることを特徴とするAV機器。
【請求項2】
上記アンテナ付半導体チップは複数のアンテナ素子にてなるアレーアンテナを備え、
上記アレーアンテナにより送受信されるミリ波ビームについてビームフォーミング処理を行うビームフォーミング回路をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載のAV機器。
【請求項3】
上記筐体ケースの誘電体導波路又は誘導体溝の先端部に、上記アンテナ付半導体チップのアンテナが位置するように配置されたことを特徴とする請求項1又は2記載のAV機器。
【請求項4】
上記アンテナ付半導体チップが実装されたプリント配線基板と、
上記プリント配線基板のアンテナ付半導体チップが実装された周辺に設けられ、上記アンテナ付半導体チップからのミリ波信号を導波し、通過し又は反射する導波手段と、
上記AV機器の筐体ケースに設けられたミリ波通信用の第2の窓枠と、
上記第2の窓枠に取り付けられ、上記導波手段を通過したミリ波信号を通過させる第2の窓とをさらに備え、
上記アンテナ付半導体チップから放射されたミリ波信号は、上記導波手段及び上記第2の窓を介して外部に放射されることを特徴とする請求項1乃至3のうちのいずれか1つに記載のAV機器。
【請求項5】
上記導波手段は、上記プリント配線基板の基板貫通孔又は上記プリント配線基板の導体層が除かれた部分であって、上記ミリ波信号を透過する電波透過部であることを特徴とする請求項4記載のAV機器。
【請求項6】
上記導波手段は、上記プリント配線基板のアンテナ付半導体チップが実装された周辺に設けられ、上記ミリ波信号を反射する反射板であることを特徴とする請求項4記載のAV機器。
【請求項7】
上記導波手段は、上記プリント配線基板のアンテナ付半導体チップが実装された周辺に設けられ、上記ミリ波信号を導波して放射する別のアンテナであることを特徴とする請求項4記載のAV機器。
【請求項8】
上記導波手段は、上記プリント配線基板のアンテナ付半導体チップが実装された周辺に設けられ、上記ミリ波信号を反射する液晶層であることを特徴とする請求項4記載のAV機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2008−252566(P2008−252566A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−91706(P2007−91706)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】