説明

BAW共振装置およびその製造方法

【課題】圧電層の結晶性を向上できるとともに共振子全体の機械的品質係数を向上でき、且つ、堅牢化が可能なBAW共振装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】支持基板1の一表面側の共振子3における圧電層32がPZTにより形成されている。支持基板1に、共振子3の下部電極31および絶縁層4における支持基板1側の表面を露出させる空洞1aが形成されるとともに、絶縁層4に、空洞1aに連通するエッチングホール5が形成されている。支持基板1が、互いに厚さが異なる上層基板11と下層基板12との積層構造を有し、支持基板1において相対的に共振子3に近い側にある上層基板11が、単結晶MgO基板からなるとともに、相対的に共振子3から遠い側にある下層基板12に比べて薄く、且つ、空洞1aが、上層基板11の厚み方向に貫設されエッチングホール5に連通した開口部により構成されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電層の厚み方向の縦振動モードを利用する共振子を備えたBAW(Bulk Acoustic Wave)共振装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、携帯電話機などの移動体通信機器の分野において、2GHz以上の高周波帯で利用する高周波フィルタに適用可能なBAW共振装置として、例えば、図8に示すように、単結晶Si基板からなる支持基板1’と、支持基板1’の一表面側に形成され下部電極31’、圧電層32’、上部電極33’の積層構造を有する共振子3’と、支持基板1’の上記一表面側に形成されて支持基板1’に支持され共振子3’を保持した支持層7’とを備え、支持基板1’の上記一表面側に、共振子3’下の支持層7’における支持基板1’側の表面を露出させ圧電層32’を物理的に振動可能とするための空洞1a’が形成されるとともに、支持層7’における共振子3’の周辺部に、空洞1a’に連通する空洞形成用の4つのスリット状のエッチングホール5’が平面視矩形状の圧電層32’の外周縁の各辺に沿って形成されてなるFBAR(Film Bulk Acoustic Resonator)型のBAW共振装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。ここにおいて、支持層7’は、支持基板1’の基礎となるSi基板にボロンを高濃度ドーピングして形成した高濃度ボロンドーピング層と、支持基板1’の上記一表面側に形成したSiO膜からなる絶縁層とで構成されている。要するに、支持層7’は、空洞1a’形成時にエッチングホール5’を通してSi基板からなる支持基板1’をエッチングするためのアルカリ系のエッチング液(例えば、エチレンジアミンピロカテコール水溶液など)に対して耐性を有する材料により形成されている。
【0003】
なお、上記特許文献1には、支持基板1’の上記一表面側に共振子3’を複数個形成してフィルタ(BAWフィルタ)を構成することも記載されている。
【0004】
上述のBAW共振装置では、圧電層32’の圧電材料としてPT、PZT、AlNなどを採用し、支持基板1’の材料としてSiなどを採用しているが、UWB(Ultra Wide Band)用フィルタに応用する場合、圧電層32’の圧電材料として、帯域幅が中心周波数に対して4〜5%しか広帯域化できないAlNに比べて中心周波数に対して10%程度の帯域幅を得ることが可能な鉛系圧電材料(例えば、PZT、PMN−PZTなど)を採用し、圧電層32’の結晶性を向上させるために支持基板1’の材料としてMgOもしくはSrTiO(:STO)を採用することが考えられる。
【特許文献1】特開平9−130199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、図8に示した構成のBAW共振装置では、共振子3’下に支持層7’が形成されているので、当該支持層7’に起因してバルク弾性波のエネルギ損失が生じ、共振子全体の機械的品質係数(Q値)が低下してしまうという問題があった。
【0006】
また、図8に示した構成のBAW共振装置では、単結晶Si基板からなる支持基板1’の上記一表面側の支持層7’上に共振子3’が形成されており、結晶性の良好な圧電層32’を得るのが難しく、圧電層32’の結晶性の改善が望まれていた。
【0007】
また、図8に示した構成のBAW共振装置において、支持基板1’として単結晶Si基板に代えて単結晶MgO基板や単結晶STO基板を用いても、共振子3’が支持層7’上に形成されているので、結晶性の良好な圧電層32’を得るのが難しい。また、図8に示した構成のBAW共振装置において、支持基板1’として単結晶Si基板に代えて単結晶MgO基板や単結晶STO基板を用いた場合、空洞1a’を形成する際の単結晶MgO基板のエッチング時間が長くなって脆弱になってしまう。
【0008】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、圧電層の結晶性を向上できるとともに共振子全体の機械的品質係数を向上でき、且つ、堅牢化が可能なBAW共振装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、支持基板と、支持基板の一表面側に形成され下部電極と上部電極との間にPZT系材料もしくはKNN系材料からなる圧電層を有する共振子と、支持基板の前記一表面側に形成されて支持基板に支持され平面視において共振子を取り囲んで共振子を保持した絶縁層とを備え、支持基板に、共振子の下部電極および絶縁層における支持基板側の表面を露出させる空洞が形成されるとともに、絶縁層に、前記空洞に連通するエッチングホールが形成されてなり、支持基板が、互いに厚さが異なる上層基板と下層基板との積層構造を有し、支持基板において相対的に共振子に近い側にある上層基板が、単結晶MgO基板もしくは単結晶STO基板からなるとともに、相対的に共振子から遠い側にある下層基板に比べて薄く、且つ、前記空洞が、上層基板の厚み方向に貫設され前記エッチングホールに連通した開口部により構成されてなることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、支持基板の一表面側に形成され下部電極と上部電極との間に圧電層を有する共振子と、支持基板の前記一表面側に形成されて支持基板に支持され平面視において共振子を取り囲んで共振子を保持した絶縁層とを備え、支持基板に、共振子の下部電極および絶縁層における支持基板側の表面を露出させる空洞が形成されるとともに、絶縁層に、前記空洞に連通するエッチングホールが形成されているので、バルク弾性波のエネルギ損失を低減できて、共振子全体の機械的品質係数を向上でき、また、圧電層がPZT系材料もしくはKNN系材料により形成されているので、AlNやZnOにより形成されている場合に比べて、電気機械結合係数を大きくすることができ、しかも、支持基板が、互いに厚さが異なる上層基板と下層基板との積層構造を有し、支持基板において相対的に共振子に近い側にある上層基板が、単結晶MgO基板もしくは単結晶STO基板からなるので、圧電層の結晶性を向上できるとともに共振子全体の機械的品質係数を向上でき、また、上層基板が、相対的に共振子から遠い側にある下層基板に比べて薄く、且つ、前記空洞が、上層基板の厚み方向に貫設され前記エッチングホールに連通した開口部により構成されているので、空洞の形成に要するエッチング時間を短くでき、堅牢化が可能となる。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1記載のBAW共振装置の製造方法であって、異種材料からなる下層基板の一表面側に接合され当該下層基板とともに支持基板を構成する単結晶MgO基板もしくは単結晶STO基板からなる上層基板の一表面側に共振子および絶縁層を形成してから、絶縁層にエッチングホールを形成し、その後、エッチングホールを通してエッチャントを導入し上層基板の厚み方向に貫通する開口部からなる前記空洞をウェットエッチングにより形成することを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、圧電層の結晶性を向上できるとともに共振子全体の機械的品質係数を向上でき、且つ、堅牢化が可能なBAW共振装置を提供することができる。
【0013】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記共振子および前記エッチングホールを形成する前に、前記上層基板を所定厚さまで薄肉化することを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、前記上層基板を薄肉化する際に前記共振子および前記絶縁層が破損するのを防止することができるとともに、前記上層基板のより一層の薄肉化が可能となり、前記開口部を形成する際のエッチング時間のより一層の短縮を図れる。
【0015】
請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記所定厚さは、前記上層基板をウェットエッチングすることで前記開口部を形成する際のサイドエッチング量よりも小さな値に設定してあることを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、前記開口部を形成する際のエッチング時間の短縮を図れる。
【0017】
請求項5の発明は、請求項2ないし請求項4の発明において、前記下層基板として、単結晶Si基板を用いることを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、前記開口部を形成する際に前記下層基板をエッチングストッパとして利用することができ、前記開口部の形状の再現性を高めることができるとともに前記開口部の形成に要するエッチング時間を短くできる。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明では、圧電層の結晶性を向上できるとともに共振子全体の機械的品質係数を向上でき、且つ、堅牢化が可能となるという効果がある。
【0020】
請求項2の発明では、圧電層の結晶性を向上できるとともに共振子全体の機械的品質係数を向上でき、且つ、堅牢化が可能なBAW共振装置を提供することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本実施形態のBAW共振装置は、図1に示すように、支持基板1と、支持基板1の一表面上に形成され下部電極31と上部電極33との間に圧電層32を有する複数個(本実施形態では、8個)の共振子3と、支持基板1の上記一表面側に形成されて支持基板1に支持され平面視において共振子3を取り囲んで共振子3を保持した絶縁層4とを備えている。また、本実施形態のBAW共振装置は、支持基板1に、各共振子3の下部電極31および絶縁層4における支持基板1側の表面を露出させる複数(本実施形態では、5つ)の断面逆台形状の空洞1aがウェットエッチング(エッチング速度の結晶方位依存性を利用した湿式の異方性エッチング)により形成されるとともに、絶縁層4に、各空洞1aそれぞれに連通する複数(本実施形態では、5つ)のエッチングホール5が貫設されている。ここにおいて、各エッチングホール5は、絶縁層4における各空洞1aそれぞれの投影領域における中心部に対応する部位に形成されている。なお、絶縁層4には、上部電極33と圧電層32との接触面積を規定するための開孔部4aが形成されている。
【0022】
また、本実施形態のBAW共振装置は、上述の複数個の共振子3が図2に示すラダー型フィルタを構成するように接続されており、2GHz以上の高周波帯においてカットオフ特性が急峻で且つ帯域幅の広いフィルタ、例えば、UWB用フィルタとして用いることができる。
【0023】
各共振子3は、支持基板1の上記一表面側に形成された下部電極31と、下部電極31における支持基板1側とは反対側に形成された圧電層32と、圧電層32における下部電極31側とは反対側に形成された上部電極33とを有しており、下部電極31と下部電極31直下の媒質との音響インピーダンス比を大きくすることにより支持基板1側へバルク弾性波のエネルギの伝搬を抑制するようにしてある。要するに、本実施形態のBAW共振装置は、支持基板1に空洞1aが形成されているFBARにより構成されている。
【0024】
図2に示した例では、下部電極31同士が電気的に接続された2個1組の共振子3の組を複数組(図示例では、4組)備えており、各組の2個の共振子3では、下部電極31と圧電層32とが連続して形成される一方で上部電極33同士が絶縁分離されるようにパターニングされている。ここにおいて、隣り合う組間では、隣接する2個の共振子3の上部電極33同士が上部電極33と連続して形成された金属配線34を介して電気的に接続されている。また、各組の2個の共振子3に跨って形成された圧電層32のうち下部電極31と上部電極33との両方と接する領域が各共振領域を構成している。
【0025】
本実施形態のBAW共振装置は、圧電層32の圧電材料として、PZTを採用しており、圧電層32は、(001)配向のPZT薄膜からなる圧電薄膜により構成されている。ここで、図1には図示していないが、下部電極31と圧電層32との間に、圧電層32の配向を制御するためのシード層としてSRO層を形成することが望ましい。また、本実施形態では、圧電層32の圧電材料として、PZTを採用しているが、PZT系材料であれば、PZTに限らず、不純物を添加したPZTやPMN−PZTなどでもよく、圧電材料がAlNやZnOである場合に比べて、電気機械結合係数を大きくすることができる。また、圧電層32の圧電材料としては、PZT系材料に限らず、例えば、鉛フリーのKNN(K0.5Na0.5NbO)や、KN(KNbO)、NN(NaNbO)、KNNに不純物(例えば、Li,Nb,Ta,Sb,Cuなど)を添加したものなどのKNN系材料を用いてもよい。
【0026】
ところで、圧電層32は、平面視における全領域が下部電極31上に形成されており、圧電層32の外周線は、下部電極31の外周線よりも内側に位置している。
【0027】
また、本実施形態のBAW共振装置では、下部電極31の金属材料としてPtを採用しているが、下部電極31の材料はPtに限定するものではなく、後述の上層基板11に空洞1aとなる開口部を形成する際のエッチング液に対して耐性を有し、圧電層32の圧電材料との格子定数差の小さな金属材料であればよい。また、上部電極33の金属材料としてAlを採用しているが、Alに限らず、例えば、Pt、Mo、W、Ir、Cr、Ruなどを採用すれば、上部電極33の金属材料が代表的な電極材料であるAuの場合に比べて、上部電極33の機械的品質係数を高めることができ、共振子3全体の機械的品質係数を高めることが可能となる。
【0028】
また、絶縁層4の材料としては、SiOを採用しているが、SiOに限らず、例えば、Siを採用してもよい。また、絶縁層4は、単層構造に限らず、多層構造でもよく、例えば、SiOからなる第1の絶縁膜とSi膜からなる第2の絶縁膜との積層膜でもよい。
【0029】
なお、本実施形態のBAW共振装置では、共振子3の共振周波数を4GHzに設定してあり、下部電極31の厚みを100nm、圧電層32の厚みを300nm、上部電極33の厚みを100nmに設定してあるが、これらの数値は一例であって特に限定するものではない。また、共振周波数を3GHz〜5GHzの範囲で設計する場合には、圧電層32の厚みは200nm〜600nmの範囲で適宜設定すればよい。
【0030】
ところで、支持基板1は、互いに厚さが異なる上層基板11と下層基板12との積層構造を有し、支持基板1において相対的に共振子3に近い側にある上層基板11が、単結晶MgO基板からなるとともに、相対的に共振子3から遠い側にある下層基板12に比べて薄くなっている。なお、本実施形態では、上層基板11の厚さを5μm、下層基板12の厚さを300μmに設定してあるが、これらの厚さは一例であり、特に限定するものではない。
【0031】
また、支持基板1は、上述の空洞1aが、上層基板11の厚み方向に貫設されたた断面逆台形状の開口部により構成されている。
【0032】
ここにおいて、上層基板11としては、下層基板12側とは反対側の一表面が(001)面の単結晶MgO基板を用いているが、上記一表面が(001)面の単結晶STO基板を用いてもよい。また、上層基板11の上記一表面の面方位は特に限定するものではなく、圧電層32の所望の面方位に応じて適宜設定すればよい。また、下層基板12としては、単結晶Si基板を用いているが、ガラス基板を用いてもよい。
【0033】
以上説明した本実施形態のBAW共振装置によれば、支持基板1の上記一表面側に形成され下部電極31と上部電極33との間に圧電層32を有する共振子3と、支持基板1の上記一表面側に形成されて支持基板1に支持され平面視において共振子3を取り囲んで共振子3を保持した絶縁層4とを備え、支持基板1に、共振子3の下部電極31および絶縁層4における支持基板1側の表面を露出させる空洞1aが形成されるとともに、絶縁層4に、空洞1aに連通するエッチングホール5が形成されているので、バルク弾性波のエネルギ損失を低減できて、共振子3全体の機械的品質係数を向上できる。しかも、本実施形態のBAW共振装置では、支持基板1が、互いに厚さが異なる上層基板11と下層基板12との積層構造を有し、支持基板1において相対的に共振子3に近い側にある上層基板11が、単結晶MgO基板もしくは単結晶STO基板からなるので、PZT系材料もしくはKNN系材料からなる圧電層32の結晶性を向上できるとともに共振子3全体の機械的品質係数を向上でき、また、上層基板11が、相対的に共振子3から遠い側にある下層基板12に比べて薄く、且つ、空洞1aが、上層基板11の厚み方向に貫設されエッチングホール5に連通した開口部により構成されているので、空洞1aの形成に要するエッチング時間を短くでき、堅牢化が可能となる。
【0034】
以下、本実施形態のBAW共振装置の製造方法について図3〜図7を参照しながら説明するが、図3〜図7それぞれにおいて左側は図1(a)のA−A’断面に対応する概略工程断面図、右側は図1(a)のB−B’に対応する概略工程断面図を示している。
【0035】
まず、単結晶MgO基板からなる上層基板11と単結晶Si基板からなる下層基板12とを接合する基板接合工程を行うことによって、図3(a)に示す構造を得る。なお、基板接合工程では、例えば、金属−金属(例えば、Au−Au)の常温接合や、AuSnを利用した共晶接合などにより上層基板11と下層基板12とを接合すればよいが、接合方法は特に限定するものではない。
【0036】
上述の基板接合工程の後、上層基板11を下層基板12側とは反対側の一表面側から所定厚さ(例えば、5μm程度)まで薄肉化する薄肉化工程を行うことによって、図3(b)に示す構造を得る。ここで、薄肉化工程では、例えば、CMP法などにより上層基板11を上記一表面側から薄肉化し、研磨によるダメージ層を除去するためのウェットエッチングを行えばよい。なお、上層基板11の所定厚さは、5μmに限定するものではなく、例えば、3〜50μm程度の範囲で適宜設定すればよい。
【0037】
上述の薄肉化工程の後、上層基板11の上記一表面側の全面に下部電極31の基礎となる第1の金属膜(例えば、Pt膜など)31aをスパッタ法やEB蒸着法やCVD法などにより形成する第1の金属膜形成工程を行うことによって、図3(c)に示す構造を得る。
【0038】
その後、支持基板1の上記一表面側の全面に圧電層32の基礎となるPZT薄膜からなる圧電材料層32aをスパッタ法やCVD法やゾルゲル法などにより形成する圧電材料層形成工程を行うことによって、図3(d)に示す構造を得る。なお、第1の金属膜形成工程と圧電材料層形成工程との間に、圧電材料層32aの配向を制御するためのシード層としてSRO層を形成するシード層形成工程を設けてもよい。
【0039】
圧電材料層形成工程の後、圧電材料層32aの一部からなる圧電層32を形成するためにパターニングされたレジスト層(以下、第1のレジスト層と称する)61をフォトリソグラフィ技術を利用して圧電材料層32a上に形成する第1のレジスト層形成工程を行うことによって、図3(e)に示す構造を得る。
【0040】
その後、第1のレジスト層61をマスクとして、圧電材料層32aをエッチングすることで圧電材料層32aの一部からなる圧電層32を形成する圧電材料層パターニング工程を行うことによって、図4(a)に示す構造を得て、続いて、第1のレジスト層61を除去することによって、図4(b)に示す構造を得る。
【0041】
その後、第1の金属膜31aの一部からなる下部電極31を形成するためにパターニングされたレジスト層(以下、第2のレジスト層と称する)62をフォトリソグラフィ技術を利用して支持基板1の上記一表面側に形成する第2のレジスト層形成工程を行うことによって、図4(c)に示す構造を得る。
【0042】
その後、第2のレジスト層62をマスクとして、第1の金属膜31aをエッチングすることで第1の金属膜31aの一部からなる下部電極31を形成する第1金属膜パターニング工程を行うことによって、図4(d)に示す構造を得て、続いて、第2のレジスト層62を除去することによって、図4(e)に示す構造を得る。
【0043】
その後、支持基板1の上記一表面側の全面に例えばSiO膜からなる絶縁層4をスパッタ法やCVD法などにより形成する絶縁層形成工程を行うことによって、図5(a)に示す構造を得る。
【0044】
その後、絶縁層4に開孔部4aを形成するためにパターニングされたレジスト層(以下、第3のレジスト層と称する)63をフォトリソグラフィ技術を利用して支持基板1の上記一表面側に形成する第3のレジスト層形成工程を行うことによって、図5(b)に示す構造を得る。
【0045】
その後、ドライエッチング技術を利用して絶縁層4に開孔部4aを形成する開孔部形成工程を行うことによって、図5(c)に示す構造を得てから、第3のレジスト層63を除去することによって、図5(d)に示す構造を得る。
【0046】
その後、支持基板1の上記一表面側の全面に上部電極33および金属配線34の基礎となる第2の金属膜(例えば、Pt膜など)33aをスパッタ法やEB蒸着法やCVD法などにより形成する第2の金属膜形成工程を行うことによって、図5(e)に示す構造を得る。
【0047】
その後、それぞれ第2の金属膜33aの一部からなる上部電極33および金属配線34を形成するためにパターニングされたレジスト層(以下、第4のレジスト層と称する)64をフォトリソグラフィ技術を利用して支持基板1の上記一表面側に形成する第4のレジスト層形成工程を行うことによって、図6(a)に示す構造を得る。
【0048】
その後、第4のレジスト層64をマスクとして、第2の金属膜33aをエッチングすることで第2の金属膜33aの一部からなる上部電極33および金属配線34を形成する第2金属膜パターニング工程を行うことによって、図6(b)に示す構造を得て、続いて、第4のレジスト層64を除去することによって、図6(c)に示す構造を得る。
【0049】
その後、支持基板1の上記一表面側に絶縁層4のエッチングホール5を形成するためにパターニングされたレジスト層(以下、第5のレジスト層と称する)65をフォトリソグラフィ技術を利用して形成する第5のレジスト層形成工程を行うことによって、図6(d)に示す構造を得る。
【0050】
その後、第5のレジスト層65をマスクとして、絶縁層4をドライエッチング技術によりエッチングすることでエッチングホール5を形成するエッチングホール形成工程を行うことによって、図7(a)に示す構造を得る。
【0051】
その後、第5のレジスト層65をマスクとして、エッチングホール5を通して所定のエッチャントを導入して支持基板1をウェットエッチングすることにより支持基板1の上層基板11に空洞1aとなる開口部を形成する空洞形成工程を行うことによって、図7(b)に示す構造を得る。なお、上層基板11として単結晶MgO基板を採用している場合には、所定のエッチャントとして燐酸系溶液(例えば、例えば、70〜90℃程度に加熱した燐酸水溶液など)を用いればよく、上層基板11として単結晶STO基板を採用している場合には、絶縁層4の材料をSiとして、空洞形成工程において、所定のエッチャントとして、例えば、液温が室温(例えば、25℃)で濃度が3wt%のフッ酸水溶液を用いればよい。
【0052】
上述の空洞形成工程の後、第5のレジスト層65を除去することによって、図7(c)に示す構造のBAW共振装置を得る。
【0053】
上述のBAW共振装置の製造にあたっては、上述の支持基板1としてウェハを用いてウェハレベルで多数のBAW共振装置を形成した後、ダイシング工程で個々のBAW共振装置に分割すればよい。ところで、本実施形態のBAW共振装置の製造にあたっては、空洞形成工程において各組の2個の共振子3ごとに支持基板1に空洞1aを形成するようにしているので、空洞1aを各共振子3ごとに1つずつ形成する場合に比べて、BAW共振装置全体の小型化を図れる。また、本実施形態のBAW共振装置は、2個の共振子3を複数組備えているが、共振子3の組は1組でもよく、また、BAW共振装置は、1個の共振子3のみを備えたものでもよい。
【0054】
以上説明した本実施形態のBAW共振装置の製造方法によれば、異種材料からなる下層基板12の一表面側に接合され当該下層基板12とともに支持基板1を構成する単結晶MgO基板もしくは単結晶STO基板からなる上層基板11の上記一表面側に共振子3および絶縁層4を形成してから、絶縁層4にエッチングホール5を形成し、その後、エッチングホール5を通してエッチャントを導入し上層基板11の厚み方向に貫通する開口部からなる空洞1aをウェットエッチングにより形成するので、単結晶MgO基板もしくは単結晶SrTiO基板からなる上層基板11の上記一表面側に下部電極31と上部電極33との間に圧電層32を有する共振子3を直接形成することができるから、図8に示した構成のように支持層7’上に共振子3’を形成する製造方法を採用する場合に比べて、圧電層32の結晶性を向上できるとともに共振子3全体の機械的品質係数を向上でき、且つ、堅牢化が可能なBAW共振装置を提供することができる。
【0055】
また、本実施形態のBAW共振装置の製造方法によれば、共振子3およびエッチングホール5を形成する前に、上層基板11を上記所定厚さまで薄肉化するようにしているので、上層基板11を薄肉化する際に共振子3および絶縁層4が破損するのを防止することができるとともに、共振子3およびエッチングホール5を形成した後で上層基板11を薄肉化する場合に比べて上層基板11のより一層の薄肉化が可能となり、空洞1aとなる上記開口部を形成する際のエッチング時間のより一層の短縮を図れる。
【0056】
また、本実施形態では、上層基板11の上記所定厚さは、上層基板11をウェットエッチングすることで空洞1aとなる上記開口部を形成する際のサイドエッチング量(このサイドエッチング量は、共振子3の中心とエッチングホール5との相対的な位置関係により設定する値であり、本実施形態では、15μmに設定してある)よりも小さな値(本実施形態では、5μm)に設定してあるので、上記開口部を形成する際のエッチング時間の短縮を図れる。なお、サイドエッチング量は、10〜100μm程度の範囲で適宜設定すればよい。
【0057】
また、本実施形態のBAW共振装置の製造方法では、下層基板12として、単結晶Si基板を用いているので、空洞1aとなる上記開口部を形成する際に下層基板12をエッチングストッパとして利用することができ、上記開口部の形状の再現性を高めることができるとともに上記開口部の形成に要するエッチング時間を短くできる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】実施形態におけるBAW共振装置を示し、(a)は概略平面図、(b)は(a)のA−A’概略断面図、(c)は(a)のB−B’概略断面図である。
【図2】同上のBAW共振装置の回路図である。
【図3】同上のBAW共振装置の製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図4】同上のBAW共振装置の製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図5】同上のBAW共振装置の製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図6】同上のBAW共振装置の製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図7】同上のBAW共振装置の製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図8】従来例のBAW共振装置を示し、(a)は概略平面図、(b)は(a)のA−A’概略断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 支持基板
1a 空洞
3 共振子
4 絶縁層
5 エッチングホール
11 上層基板
12 下層基板
31 下部電極
32 圧電層
33 上部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と、支持基板の一表面側に形成され下部電極と上部電極との間にPZT系材料もしくはKNN系材料からなる圧電層を有する共振子と、支持基板の前記一表面側に形成されて支持基板に支持され平面視において共振子を取り囲んで共振子を保持した絶縁層とを備え、支持基板に、共振子の下部電極および絶縁層における支持基板側の表面を露出させる空洞が形成されるとともに、絶縁層に、前記空洞に連通するエッチングホールが形成されてなり、支持基板が、互いに厚さが異なる上層基板と下層基板との積層構造を有し、支持基板において相対的に共振子に近い側にある上層基板が、単結晶MgO基板もしくは単結晶STO基板からなるとともに、相対的に共振子から遠い側にある下層基板に比べて薄く、且つ、前記空洞が、上層基板の厚み方向に貫設され前記エッチングホールに連通した開口部により構成されてなることを特徴とするBAW共振装置。
【請求項2】
請求項1記載のBAW共振装置の製造方法であって、異種材料からなる下層基板の一表面側に接合され当該下層基板とともに支持基板を構成する単結晶MgO基板もしくは単結晶STO基板からなる上層基板の一表面側に共振子および絶縁層を形成してから、絶縁層にエッチングホールを形成し、その後、エッチングホールを通してエッチャントを導入し上層基板の厚み方向に貫通する開口部からなる前記空洞をウェットエッチングにより形成することを特徴とするBAW共振装置の製造方法。
【請求項3】
前記共振子および前記エッチングホールを形成する前に、前記上層基板を所定厚さまで薄肉化することを特徴とする請求項2記載のBAW共振装置の製造方法。
【請求項4】
前記所定厚さは、前記上層基板をウェットエッチングすることで前記開口部を形成する際のサイドエッチング量よりも小さな値に設定してあることを特徴とする請求項3記載のBAW共振装置の製造方法。
【請求項5】
前記下層基板として、単結晶Si基板を用いることを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載のBAW共振装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−147874(P2010−147874A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323861(P2008−323861)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】