説明

CCR3受容体アンタゴニスト

本発明は、式(I)(式中、R2、R3、R4、R9、Ar、Uc、X、Y、Q、nおよびpは明細書に定義されたとおりである)の化合物に関する。この化合物は、CCR−3受容体アンタゴニストとして有用であり、したがってCCR−3により媒介される疾患の処置のために使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CCR−3受容体アンタゴニストとして有用な、一つの置換基が二環式ヘテロシクリルアルキル基である、ある種の二置換ピペリジニルおよびピペラジニル化合物、ならびにそれらを含有する医薬組成物および喘息のようなCCR−3により媒介される疾患を処置するためのそれらの使用に関するものである。
【0002】
組織での好酸球増加は、喘息、鼻炎、湿疹および寄生虫感染のような多数の病理学的状態の特質である(Bousquet, J. ら、N. Eng. J. Med. 323: 1033-1039 (1990) ならびに Kay, A. B. ら、Br. Med. Bull. 48: 51-64 (1992) 参照)。喘息において、好酸球の蓄積および活性化は、気管支上皮の損傷および収縮メディエーターに対する応答性亢進に関連している。RANTES、エオタキシンおよびMCP−3のようなケモカインは、好酸球を活性化することが既知である(Baggiolini, M. ら、Immunol. Today. 15: 127-133 (1994), Rot, A. M.ら、J. Exp. Med. 176, 1489-1495 (1992) ならびに Ponath, P. D. ら、J. Clin. Invest., Vol. 97, No. 3, pp. 604-612 (1996) 参照)。しかしながら、他の白血球細胞型の遊走も誘導するRANTESおよびMCP−3とは異なり、エオタキシンは、好酸球に対して選択的に走化性である(Griffith-Johnson, D. A. ら、Biochem. Biophy. Res. Commun. Vol. 197: 1167 (1993) および Jose, P. J. ら、Biochem. Biophy. Res. Commun. Vol. 207, 788 (1994) 参照)。皮内もしくは腹腔内投与の場合にも、またはエアロゾル吸入の場合にも、エオタキシンの投与部位には、特異的な好酸球蓄積が観察された(Griffith-Johnson, D. A. ら、Biochem. Biophy. Res. Commun. 197: 1167 (1993); Jose, P. J. ら、J. Exp. Med. 179, 881-887 (1994); Rothenberg, M. E.ら、J. Exp. Med. 181, 1211 (1995) および Ponath, P. D., J. Clin. Invest., Vol. 97, No. 3, 604-612 (1996) 参照)。
【0003】
デキサメタゾン、メチルプレドニゾロンおよびヒドロコルチゾンのようなグルココルチコイドが、気管支喘息を含む多くの好酸球関連障害を処置するために使用されている(R. P. Schleimer ら、Am. Rev. Respir. Dis., 141, 559 (1990))。グルココルチコイドは、これらの疾患におけるIL−5およびIL−3により媒介される好酸球生存を阻害すると考えられている。しかしながら、グルココルチコイドの長期使用は、緑内障、骨粗鬆症および成長遅滞のような副作用を患者にもたらす場合がある(Hanania, N. A.ら、J. Allergy and Clin. Immunol., Vol.96, 571-579 (1995) およびSaha, M. T.ら、Acta Paediatrica, Vol. 86, No. 2, 138-142 (1997) 参照)。これらの有害な副作用を招くことのない、代替的な好酸球関連疾患の処置手段を有することは望ましい。
【0004】
エオタキシン、RANTESおよびMCP−3に対する応答のために好酸球が使用している主要なケモカイン受容体として、CCR−3受容体が同定された。マウスプレベータリンパ腫系にトランスフェクトされた場合、CCR−3と結合したエオタキシン、RANTESおよびMCP−3は、エオタキシン、RANTESおよびMCP−3に対する走化応答をこれらの細胞に付与した(Ponath, P.D.ら、J. Exp. Med. 183, 2437-2448 (1996) 参照)。CCR−3受容体は、好酸球、T細胞(サブタイプTh−2)、好塩基球および肥満細胞の表面に発現しており、エオタキシンに対して高度に選択的である。研究は、抗CCR−3 mAbによる好酸球の前処理が、エオタキシン、RANTESおよびMCP−3に対する好酸球走化性を完全に阻害することを示している(Heath, H. ら、J. Clin. Invest., Vol. 99, No. 2, 178-184 (1997) 参照)。本出願人らの2001年12月19日出願の米国特許出願番号10/034,034号ならびに本出願人に発行された米国特許第6,140,344号、第6,166,015号、第6,323,223号、第6,339,087号は、それぞれ、CCR−3アンタゴニストである化合物を記載しており、1999年3月24日公開の欧州出願EP903349は、エオタキシンのようなケモカインによる好酸球動員を阻害するCCR−3アンタゴニストを開示している。
【0005】
したがって、CCR−3受容体のRANTES、MCP−3およびエオタキシンとの結合能の阻止、ならびにそれによる好酸球の動員の防止は、好酸球により媒介される炎症性疾患の処置を提供するはずである。
【0006】
本発明は、エオタキシンのCCR−3受容体との結合を阻害することができ、それにより、喘息のような好酸球により誘起される疾患に対抗する手段を提供する、CCR−3受容体アンタゴニストとして有用なピペリジニルおよびピペラジニル化合物に関する。
【0007】
第一の態様において、本発明は、式(I):
【0008】
【化12】

【0009】
〔式中:
Arは、アリールまたはヘテロアリールであり;
Qは、−C(=O)−またはC1-2アルキレンであり;
Xは、NまたはN+9a-であり;
Yは、CR9aまたはNであり;
-は、薬学的に許容されうるアニオンであり;
2は、水素またはアルキルであり;
3およびR4は、互いに独立に、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヘテロアルキル、−(アルキレン)−C(=O)−Z1または−(アルキレン)−C(O)2−Z1であり、ここで、Z1は、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、アルキルアミノ、アリール、アリールアルキル、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、ヘテロアリール、またはヘテロアリールオキシであり;
cは、(S)、(T)、(V)、および(W):
【0010】
【化13】

【0011】
(式中、T1は、O、S、またはNR5であり、ここで、R5は、水素、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、およびヘテロシクリルからなる群より選択され;V1およびW1は、場合により置換されている5〜6員のヘテロ環を表すが、ただし、Ucが(T)であって且つT1がSである場合には、R3およびR4の少なくとも一つは水素ではなく、XとYの双方がNである場合には、Ucは(T)ではない)からなる群より選択され;
9は、ピペリジニルまたはピペラジニル環の任意の結合可能な炭素原子に結合し、ヒドロキシ、低級アルコキシ、オキソ(=O)、ハロゲン、シアノ、ハロC1-4アルキル、ハロC1-4アルコキシおよびR15から独立に選択される1個または2個の置換基で場合により置換されている低級アルキルからなる群より独立に選択され;
9aおよびR9bは、水素および、R15から独立に選択される1個または2個の置換基で場合により置換されている低級アルキルからなる群より選択され;
10は、ベンゾまたはフェニル環の任意の結合可能な炭素原子に結合し、存在ごとに、アルキル、置換アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロゲン、シアノ、ハロアルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはフェニルからなる群より独立に選択され、該ヘテロシクリル、ヘテロアリール、シクロアルキルおよびフェニルは、R16から独立に選択される1〜3個の置換基で場合により置換されており;
15は、存在ごとに、ヒドロキシ、低級アルコキシ、ハロ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、アミノ、およびアルキルアミノからなる群より独立に選択され;
16は、存在ごとに、低級アルキル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、ハロ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、アミノ、およびアルキルアミノからなる群より独立に選択され;
mは、0、1、2、3、または4であり;
nは、0または1であり;
pは、0、1、2、3、または4である〕
の化合物、ならびにそのプロドラッグ、異性体、異性体の混合物、または薬学的に許容されうる塩を提供する。
【0012】
また、上で定義された化合物の中で〔それらは、以下において、(i)と称する〕、好ましいものは以下の化合物である:
【0013】
ii)Ucが、(S)、(T)、(V’)、および(W’):
【0014】
【化14】

【0015】
〔式中、R’およびR”は、存在ごとに、互いに独立に、水素、C1-8アルキル、ヒドロキシ、C1-8アルコキシ、ハロゲン、シアノ、ハロC1-8アルコキシ、アミノまたはアルキルアミノであり、aは、2または3の整数である〕
からなる群より選択される、(i)の化合物。
【0016】
(iii)Ucが、(T)であり、R4が、メチル、エチル、1−メチルエチル、イソプロピル、1−ヒドロキシエチルまたは2−ヒドロキシエチルである、(i)および(ii)のいずれか一項の化合物。
【0017】
(iv)Arが、場合により置換されているフェニルまたは場合により置換されているピリミジニルであり;
Qが、CH2であり;
2が、水素であり;
3およびR4が、互いに独立に、水素、C1-8アルキル、ヒドロキシC1-8アルキル、またはC1-8アルコキシC1-8アルキルであり;
9が、メチル、エチル、ヒドロキシ、メトキシ、オキソ(=O)、ハロ、およびシアノから選択され;
9aおよびR9bが、水素、メチルおよびエチルより選択され;
nが、1であり;
pが、0または1である、
(i)および(ii)のいずれか一項記載の化合物。
【0018】
(v)Xが、Nであり、Yが、CR9bである、(i)〜(iv)のいずれか一項記載の化合物。
【0019】
(vi)XおよびYの双方が、Nである、(i)〜(iv)のいずれか一項記載の化合物。
【0020】
(vii)Xが、N+9a-であり、Yが、CR9bである、(i)〜(iv)のいずれか一項記載の化合物。
【0021】
(viii)Ucが、(IIIa):
【0022】
【化15】

【0023】
(式中、R10は、C1-4アルキル、ハロゲン、シアノ、およびC1-4アルコキシより選択され;mは、0、1、または2である)
である、(i)および(ii)のいずれか一項記載の化合物。
【0024】
(ix)Ucが、(IIIb):
【0025】
【化16】

【0026】
(式中、R10は、C1-4アルキル、ハロゲン、シアノ、およびC1-4アルコキシより選択され;mは、0、1、または2である)
である、(i)および(ii)のいずれか一項記載の化合物。
【0027】
(x)Arが、ハロ、C1-8アルキル、ヘテロアルキル、C1-8アルコキシ、ニトロ、トリフルオロメチル、C1-8アルキルスルホニル、および場合により置換されているフェニルからなる群より選択される1個、2個または3個の置換基で場合により置換されているフェニルまたはピリミジニルであり;
Qが、CH2であり;
2が、水素であり;
3が、水素であり;
4が、メチル、エチル、1−メチルエチル、イソプロピル、1−ヒドロキシエチルまたは2−ヒドロキシエチルであり;
9が、C1-4アルキル、オキソ(=O)、ハロゲン、およびヒドロキシから選択される、(ix)に記載の化合物。
【0028】
(xi)Ucが、(IIIc):
【0029】
【化17】

【0030】
(式中、R10は、C1-4アルキル、ハロゲン、シアノ、およびC1-4アルコキシより選択され;mは、0、1、または2である)
である、(i)および(ii)のいずれか一項記載の化合物。
【0031】
(xii)R2およびR3が、水素であり;
4が、メチル、エチル、1−メチルエチル、イソプロピル、1−ヒドロキシエチルまたは2−ヒドロキシエチルである、
(xi)に記載の化合物。
【0032】
(xiii)Ucが、(IIId):
【0033】
【化18】

【0034】
(式中、R10は、C1-4アルキル、ハロゲン、シアノ、およびC1-4アルコキシより選択され;mは、0、1、または2である)
である、(i)および(ii)のいずれか一項記載の化合物。
【0035】
(xiv)Ucが、(IIIe):
【0036】
【化19】

【0037】
(式中、R10は、C1-4アルキル、ハロゲン、シアノ、およびC1-4アルコキシより選択され;mは、0、1、または2である)
である、(i)および(ii)のいずれか一項記載の化合物。
【0038】
(xv)Ucが、(IIIf):
【0039】
【化20】

【0040】
(式中、R10は、C1-4アルキル、ハロゲン、シアノ、およびC1-4アルコキシより選択され;mは、0、1、または2である)
である、(i)および(ii)のいずれか一項記載の化合物。
【0041】
(xvi)式(Ia):
【0042】
【化21】

【0043】
(式中:
Xは、NまたはN+9a-であり;Yは、CR9aまたはNであり;
Zは、薬学的に許容されうるアニオンであり;
2およびR3は、水素であり;
9aは、水素またはC1-4アルキルであり;
21、R22、およびR23は、フェニル環の任意の結合可能な炭素原子に結合しており、水素、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、ハロゲン、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C1-4アルキルスルホニル、アミノ、およびアルキルアミノより独立に選択され;
nは、1であり;
c、Q、P、R4およびR9は、請求項1または2で定義されたとおりである)
を有する、(i)および(ii)のいずれか一項記載の化合物。
【0044】
(xvii)Qが、CH2である、(xvi)に記載の化合物。
【0045】
(xviii)R21、R22、およびR23、ならびにそれらが結合しているフェニル環が、4−クロロフェニルまたは3,4−ジクロロフェニルを形成し;
4が、メチル、エチル、1−メチルエチル、イソプロピル、1−ヒドロキシエチルまたは2−ヒドロキシエチルであり;
pが、0または1である、
(xvi)および(xvii)のいずれか一項記載の化合物。
【0046】
(xix)Ucが、
【0047】
【化22】

【0048】
(式中、R10は、C1-4アルキル、ハロゲン、シアノ、およびC1-4アルコキシより選択され;mは、0、1、または2である)
からなる群より選択される、(xvi)、(xvii)および(xviii)のいずれか一項記載の化合物。
【0049】
第二の態様において、本発明は、治療有効量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容しうる塩と薬学的に許容しうる賦形剤とを含有する医薬組成物を提供する。
【0050】
第三の態様において、本発明は、式(I)の化合物を調製するための本明細書に開示された方法を提供する。
【0051】
第四の態様において、本発明は、式(I)の化合物を調製するのに有用な、本明細書に開示された新規の中間体を提供する。
【0052】
第五の態様において、本発明は、医学的な治療または診断において使用するための、特に、喘息のような呼吸器疾患を含むCCR−3により媒介される疾患の処置において使用するための、式(I)の化合物またはその薬学的に許容されうる塩を提供する。
【0053】
第六の態様において、本発明は、CCR−3受容体アンタゴニストの投与により処置可能な哺乳動物における疾患(例えば、喘息)を処置するのに有用な医薬の製造のための、式(I)の化合物またはその薬学的に許容されうる塩の使用を提供する。
【0054】
特に断りない限り、本明細書および特許請求の範囲において使用される以下の用語は、下記の意味を有する。
【0055】
「アルキル」とは、炭素原子1〜8個の直鎖飽和一価炭化水素基または炭素原子3〜8個の分岐飽和一価炭化水素基、例えば、メチル、エチル、プロピル、2−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、ペンチルを意味する。「低級アルキル」とは、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基である。
【0056】
「アルケニル」とは、二重結合を少なくとも1個含有している炭素原子2〜8個の直鎖一価炭化水素基または炭素原子3〜8個の分岐一価炭化水素基、例えば、エテニル、プロペニルを意味する。
【0057】
「アルキニル」とは、三重結合を少なくとも1個含有している炭素原子2〜8個の直鎖一価炭化水素基または炭素原子3〜8個の分岐一価炭化水素基、例えば、エチニル、プロピニルを意味する。
【0058】
「アルキレン」とは、炭素原子1〜8個の二価の直鎖状飽和炭化水素基または炭素原子3〜8個の二価の分岐鎖状飽和炭化水素基、たとえばメチレン、エチレン、2,2−ジメチルエチレン、2−メチルプロピレン、ペンチレンを意味する。「低級アルキレン」とは、1〜4個の炭素原子を有する該二価基である。
【0059】
「アルケニレン」とは、二重結合を少なくとも1個含有している炭素原子2〜8個の直鎖二価炭化水素基または炭素原子3〜8個の分岐二価炭化水素基、例えば、メテニレン、エテニレン、2,2−ジメチルエテニレン、2−メチルプロピレン、ペンチレンを意味する。「低級アルケニレン」とは、1〜4個の炭素原子を有する該二価基である。
【0060】
「置換アルキル」とは、本明細書に定義される、アシル、アシルアミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロアルコキシ、シアノ、アミノ、アルキルアミノ、ハロアルキル、ハロ、アルコキシカルボニル、アルキルスルホニル、アルキルスルフィニル、アルキルチオ、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリールおよび/またはヘテロシクリルからなる群より選択される1個、2個または3個の置換基を有するアルキル基を意味する。置換低級アルキルは、置換アルキルで挙げたものより、好ましくはヒドロキシ、ハロ、低級アルコキシ、シアノ、およびハロアルコキシより選択される1〜3個の置換基を有する1〜4個の炭素原子のアルキルである。
【0061】
用語「アルキル」が、「フェニルアルキル」または「ヒドロキシアルキル」中のように、他の用語に続く接尾語として使用される場合、これは、上記のように、他の、特定の名称が付けられた基から選択される1〜2個の置換基(好ましくは1個の置換基)で置換されているアルキル基を表すことを意図している。そこで、例えば、「フェニルアルキル」とは、1〜2個のフェニル置換基を有するアルキル基を表し、従って、ベンジル、フェニルエチル、およびビフェニルが挙げられる。「アルキルアミノアルキル」とは、1〜2個のアルキルアミノ置換基を有するアルキル基である。「ヒドロキシアルキル」としては、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、1−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピル、2−ヒドロキシブチル、2,3−ジヒドロキシブチル、2−(ヒドロキシメチル)−3−ヒドロキシプロピルが挙げられる。従って、本明細書で使用されるように、用語「ヒドロキシアルキル」は、以下で定義されるヘテロアルキル基の下位集合を定義するために使用される。
【0062】
「アシル」とは、基−C(=O)R〔ここで、Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、フェニルまたはフェニルアルキル(ここで、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキルおよびフェニルアルキルとは、本明細書において定義されたものである)である〕を意味する。代表例には、ホルミル、アセチル、シクロヘキシルカルボニル、シクロヘキシルメチルカルボニル、ベンゾイル、ベンジルカルボニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
「アシルアミノ」とは、基−NR’C(=O)R〔ここで、R’は、水素またはアルキルであり、かつRは、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、フェニルまたはフェニルアルキル(ここで、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキルおよびフェニルアルキル基とは、本明細書において定義されたものである)である〕を意味する。代表例には、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、シクロヘキシルカルボニルアミノ、シクロヘキシルメチル−カルボニルアミノ、ベンゾイルアミノ、ベンジルカルボニルアミノが挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
「アルコキシ」とは、基−OR〔ここで、Rは本明細書において定義されたアルキルである〕、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシを意味する。「低級アルコキシ」は、アルキル(R)基が1〜4個の炭素原子を有するアルコキシ基である。
【0065】
用語「オキシ」が「アリールオキシ」、「ヘテロアリールオキシ」または「アリールアルキルオキシ」中のように、他の用語に続く接尾語として使用される場合、これは、酸素原子が、他の、特定の名称が付けられた基に対する結合基として存在することを意味している。従って、例えば、「アリールオキシ」は、Rがアリールである、基−O−Rを表し;「ヘテロアリールオキシ」は、R’がヘテロアリールである、基−O−R’を表す。
【0066】
「アルコキシカルボニル」とは、基−C(=O)−R〔ここで、Rは、本明細書において定義されたアルコキシである〕を意味する。
【0067】
「アルキルアミノ」とは、基−NHRまたは−NRR〔ここで、Rは、本明細書において定義されたアルキル、シクロアルキルまたはシクロアルキルアルキル基を表す〕を意味する。代表例には、メチルアミノ、エチルアミノ、イソプロピルアミノ、シクロヘキシルアミノが挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
「アルキルスルホニル」とは、基−S(O)2R〔ここで、Rは、本明細書において定義されたアルキル基、シクロアルキル基またはシクロアルキルアルキル基である〕、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、ブチルスルホニル、シクロヘキシルスルホニルを意味する。
【0069】
「アルキルスルフィニル」とは、基−S(O)R〔ここで、Rは、本明細書において定義されたアルキル基、シクロアルキル基またはシクロアルキルアルキル基である〕、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、プロピルスルフィニル、ブチルスルフィニル、シクロヘキシルスルフィニルを意味する。
【0070】
「アルキルチオ」とは、基−SR〔ここで、Rは、上で定義されたアルキルである〕、例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオを意味する。メルカプトは、−SHである。
【0071】
「アリール」とは、アルキル、ヘテロアルキル、アシル、アシルアミノ、アミノ、アルキルアミノ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、−SO2NR’R”(ここで、R’およびR”は、独立に、水素またはアルキルである)、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルコキシカルボニル、カルバモイル、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ、シアノ、メルカプト、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、アシルアルキル、アシルアミノアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ハロアルコキシアルキル、シアノアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ハロアルキル、ハロアルキル(アルキル)、アルコキシカルボニル、アルキルスルホニルアルキル、アルキルスルフィニルアルキル、アルキルチオアルキル、または以下に定義される場合により置換されているフェニルからなる群より選択される1個、2個または3個の置換基で場合により置換されている、単環式または二環式の芳香族炭化水素基を意味する。より具体的には、アリールという用語には、フェニル、クロロフェニル、ジクロロフェニル、フルオロフェニル、メトキシフェニル、メチルフェニル、ジメチルフェニル、メチルメトキシフェニル、1−ナフチル、2−ナフチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
「カルバモイル」とは、基−C(=O)NRR’(ここで、RおよびR’は、独立に、水素、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、またはヘテロシクリルである)を意味する。
【0073】
「シクロアルキル」とは、3〜7個の環原子の飽和一価環式炭化水素基、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシルを指し、さらに、1、2、または3個の橋頭炭素原子の炭素−炭素ブリッジを有し、および/またはそれに縮合した第二の環を有し、そのような場合に結合点は、非芳香族炭素環部位であると理解される、環を包含する。従って、用語「シクロアルキル」とは、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル等の環を包含する。さらに、シクロアルキル基の1または2個の炭素原子は、例えば、環中の1または2個の原子が式−C(=O)−の基である、カルボニル酸素基を場合により含む。
【0074】
「置換シクロアルキル」とは、アリールに対して記載された置換基の群から独立に選択される1〜4個(好ましくは、1〜2個)の置換基を有する、上で定義されたシクロアルキル基である。
【0075】
「ハロ」とは、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード、好ましくはフルオロおよびクロロを意味する。
【0076】
「ハロアルキル」とは、同一のまたは異なるハロ原子1個以上で置換されているアルキル、例えば、−CHF2、−CF3、−CH2CF3、−CH2CCl3を意味する。
【0077】
「ハロアルコキシ」とは、Rが、上で定義されたようなハロアルキルである、基ORを意味する。従って、それは、−O−CHF2、−O−CF3のような基を包含する。
【0078】
「ヘテロアリール」とは、ヘテロアリール基が二環系である場合、ヘテロアリール基の結合点が少なくとも1個のヘテロ原子を含む芳香環上にあるとの理解で、N、OまたはSより選択される1、2または3個の環ヘテロ原子を含有し、残りの環原子はCである少なくとも1個の芳香環を有する、5〜12個の環原子の単環式または二環式基を意味する。ヘテロアリール環は、アルキル、ヘテロアルキル、アシル、アシルアミノ、アミノ、アルキルアミノ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、−SO2NR’R”(ここで、R’およびR”は、独立に、水素またはアルキルである)、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルコキシカルボニル、カルバモイル、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ、シアノ、メルカプト、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、アシルアルキル、アシルアミノアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ハロアルコキシアルキル、シアノアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ハロアルキル、ハロアルキル(アルキル)、アルコキシカルボニルアルキル、アルキルスルホニルアルキル、アルキルスルフィニルアルキル、およびアルキルチオアルキル、または以下に定義される場合により置換されているフェニルより独立に選択される1個、2個、3個または4個の置換基、好ましくは1または2個の置換基で場合により置換されている。より具体的には、ヘテロアリールという用語は、ピリジル、フラニル、チエニル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、イソオキサゾリル、ピロリル、ピラゾリル、ピリミジニル、5−(3,4−ジメトキシフェニル)−ピリミジン−2−イル、5−(4−メトキシフェニル)−ピリミジン−2−イル、5−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−ピリミジン−2−イル、ベンゾフラニル、テトラヒドロベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、インドリル、イソインドリル、ベンゾオキサゾリル、キノリル、テトラヒドロキノリニル、イソキノリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾイソオキサゾリルまたはベンゾチエニルおよびそれらの誘導体を包含する。
【0079】
「ヘテロアルキル」とは、ヘテロアルキル基の結合点が炭素原子を介しているとの理解で、1個、2個または3個の水素原子が、−ORa、−NRbcおよびS(O)nd(ここで、nは0〜2の整数である)〔ここで、Raは、水素、アシル、アルキル、シクロアルキルまたはシクロアルキルアルキルであり;RbおよびRcは、互いに独立に、水素、アシル、アルキル、シクロアルキルまたはシクロアルキルアルキルであり;nが0である場合、Rdは、水素、アルキル、シクロアルキルまたはシクロアルキルアルキルであり、nが1または2である場合、Rdは、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アミノ、アシルアミノ、またはアルキルアミノである〕より独立に選択される置換基に置換されている、本明細書において定義されたアルキル基を意味する。代表例としては、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシ−1−ヒドロキシメチルエチル、2,3−ジヒドロキシプロピル、1−ヒドロキシメチルエチル、3−ヒドロキシブチル、2,3−ジヒドロキシブチル、2−ヒドロキシ−1−メチルプロピル、2−アミノエチル、3−アミノプロピル、2−メチルスルホニルエチル、アミノスルホニルメチル、アミノスルホニルエチル、アミノスルホニルプロピル、メチルアミノスルホニルメチル、メチルアミノスルホニルエチル、メチルアミノスルホニルプロピルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
「ヘテロシクリル」とは、1個または2個の環原子が、O、S(O)n(式中、nは0〜2の整数である)およびNRx{ここで、各Rxは、独立に、水素、アルキル、アシル、アルキルスルホニル、アミノスルホニル、(アルキルアミノ)スルホニル、カルバモイル、(アルキルアミノ)カルボニル、(カルバモイル)アルキル、または(アルキルアミノ)カルボニルアルキルである}、より選択されたヘテロ原子であり、残りの環原子がCである、3〜8個の環原子の飽和または不飽和の非芳香族環式基を意味する。ヘテロシクリル環は、アルキル、ハロアルキル、ヘテロアルキル、ハロ、ニトロ、シアノ、シアノアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アミノ、アルキルアミノ、−(X)n−C(=O)R(ここで、XはOまたはNR’であり、nは0または1であり、Rは水素、アルキル、ハロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、またはアルキルアミノである)、−アルキレン−C(=O)R(ここで、Rは水素、アルキル、ハロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、またはアルキルアミノである)および/または−S(O)nd(ここで、nは0〜2の整数であり、Rdは水素、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アミノ、アルキルアミノまたはヒドロキシアルキルであるが、ただし、nが1または2である場合、Rdは水素ではない)より、価数が許容するように、独立に選択される1個、2個または3個の置換基で、場合により置換されている。より具体的には、ヘテロシクリルという用語には、テトラヒドロピラニル、ピペリジノ、N−メチルピペリジン−3−イル、ピペラジノ、N−メチルピロリジン−3−イル、3−ピロリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、チオモルホリノ−1−オキシド、チオモルホリノ−1,1−ジオキシド、テトラヒドロチオフェニル−S,S−ジオキシド、ピロリニル、イミダゾリニルおよびその誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
「脱離基」とは、合成有機化学において通常付随している意味を有し、即ち、求核剤により置き換え得る原子または基を意味し、ハロ(クロロ、ブロモおよびヨードなど)、アルカンスルホニルオキシ、アレーンスルホニルオキシ、アルキルカルボニルオキシ(例えば、アセトキシ)、アリールカルボニルオキシ、メシルオキシ、トシルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシ、アリールオキシ(例えば、2,4−ジニトロフェノキシ)、メトキシ、N,O−ジメチルヒドロキシルアミノを包含する。
【0082】
「場合による」または「場合により」とは、その後に記載された事象または状況が生じてもよいが、生じる必要はなく、その記載が、その事象または状況が生じる場合と、生じない場合とを含むことを意味する。例えば、「アルキル基で場合により置換されているアリール基」とは、アルキルが存在してもよいが、存在する必要はなく、その記載が、アリール基がアルキル基で一置換または二置換されている場合と、アリール基がアルキル基で置換されていない場合とを含むことを意味する。
【0083】
「場合により置換されているフェニル」とは、アルキル、ヘテロアルキル、アシル、アシルアミノ、アミノ、アルキルアミノ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、−SO2NR’R”(ここで、R’およびR”は、独立して、水素またはアルキルである)、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルコキシカルボニル、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ、シアノ、メルカプト、アシルアルキル、アシルアミノアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ハロアルコキシアルキル、シアノアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ハロアルキル、ハロアルキル(アルキル)、アルコキシカルボニルアルキル、アルキルスルホニルアルキル、アルキルスルフィニルアルキル、およびアルキルチオアルキルから選択される1個、2個または3個(好ましくは1個または2個)の置換基で場合により置換されていてもよいフェニル基を意味する。より具体的には、その用語には、フェニル、クロロフェニル、フルオロフェニル、ブロモフェニル、メチルフェニル、エチルフェニル、メトキシフェニル、シアノフェニル、4−ニトロフェニル、4−トリフルオロメチルフェニル、4−クロロフェニル、3,4−ジフルオロフェニル、2,3−ジクロロフェニル、3−メチル−4−ニトロフェニル、3−クロロ−4−メチルフェニル、3−クロロ−4−フルオロフェニルまたは3,4−ジクロロフェニルおよびその誘導体があげられるが、それに限定されない。「場合により置換されているピリミジニル」とは、場合により置換されているフェニルに対して記載されたそれらから選択される1個、2個または3個(好ましくは1個または2個)の置換基を場合により有するピリミジニル基を意味する。
【0084】
その定義が上で与えられている化学基に対する好ましい基は、実施例で具体的に例示されているものである。
【0085】
「薬学的に許容されうる賦形剤」とは、一般的に安全で、無毒であり、かつ生物学的にもその他の面においても有害ではない、医薬組成物の調製において有用な賦形剤を意味し、獣医学的使用にもヒトにおける医薬的使用にも許容されうる賦形剤を包含する。「薬学的に許容されうる賦形剤」とは、本明細書および特許請求の範囲において使用されるように、1のそのような賦形剤、および複数のそのような賦形剤の両方を含む。
【0086】
ある化合物の「薬学的に許容されうる塩」とは、一般的に安全で、無毒であり、かつ生物学的にもその他の面においても有害ではなく、かつ親化合物の所望の薬理学的活性を保有している塩を意味する。そのような塩には、(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等のような無機酸により形成された;もしくは酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタン−ジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、ショウノウスルホン酸、4−メチルビシクロ〔2.2.2〕−オクタ−2−エン−1−カルボン酸、グルコヘプトン酸、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、tert−ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸のような有機酸により形成された酸付加塩;あるいは(2)親化合物内に存在する酸性プロトンが、金属イオン、例えばアルカリ金属イオン、アルカリ土類イオンもしくはアルミニウムイオンに置換された場合;またはエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N−メチルグルカミンのような有機塩基と配位結合した場合に形成される塩が含まれる。
【0087】
本明細書中で使用される用語「薬学的に許容されうるアニオン」とは、上記の薬学的に許容されうる塩を形成するために使用される無機酸または有機酸の共役塩基、例えばCl-、I-を指す。酸がプロトンを放出すると、残りの種は、プロトンが以前に結合していた電子対を保持している。この種は、原則として、プロトンを再び獲得することができ、共役塩基と称される。
【0088】
式(I)の化合物の「プロドラッグ」とは、そのようなプロドラッグが哺乳動物対象へ投与された場合に、in vivoで式(I)に係る活性親薬物を放出する任意の化合物を意味する。式(I)の化合物のプロドラッグは、修飾がin vivoで切断されて式(I)の化合物が放出されるよう、式(I)の化合物内に存在する1以上の官能基を修飾することにより調製される。プロドラッグには、式(I)の化合物内のヒドロキシ基、アミノ基またはスルフヒドリル基が、in vivoで切断されてそれぞれ遊離のヒドロキシル基、アミノ基またはスルフヒドリル基が再生されるような任意の基と結合しているような、式(I)の化合物が含まれる。プロドラッグの例には、式(I)の化合物内のヒドロキシ官能基のエステル(例えば、酢酸、ギ酸および安息香酸の誘導体)、カーバメート(例えば、N,N−ジメチルアミノカルボニル)が挙げられるが、それに限定されない。
【0089】
「保護基」とは、分子内の反応性基に結合した場合に、その反応性を封鎖、低下または防止する原子の群を指す。保護基の例は、T. W. Green および P. G. M. Wuts, Protective Groups in Organic Chemistry(Wiley、2nd ed.、1991年)ならびに Harrison および Harrisonら、Compendium of Synthetic Organic Methods、第1〜8巻(John Wiley and Sons, 1971〜1996年)に見出すことができる。代表的なアミノ保護基には、ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル(CBZ)、tert-ブトキシカルボニル(Boc)、トリメチルシリル(TMS)、2−トリメチルシリル−エタンスルホニル(SES)、トリチル基および置換されたトリチル基、アリルオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)、ニトロ−ベラトリルオキシカルボニル(NVOC)等が含まれる。代表的なヒドロキシ保護基には、ベンジルおよびトリチルエーテル、ならびにアルキルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、トリアルキルシリルエーテルおよびアリルエーテルのような、ヒドロキシ基がアシル化またはアルキル化されるものが含まれる。
【0090】
疾患の「処置すること」または「処置」には、(1)病気を予防すること、すなわち、疾患に曝されているか、もしくはその素因を有しているかもしれないが、未だその疾患の症状を経験していないか、もしくは示していない哺乳動物において、疾患の臨床的症状を発生させないようにすること;(2)疾患を阻害すること、即ち、疾患もしくはその臨床的症状の発生を阻止するかもしくは低下させること;または(3)疾患を軽減させること、即ち、疾患もしくはその臨床的症状の寛解を引き起こすこと、が含まれる。
【0091】
「治療有効量」とは、疾病の処置のために哺乳動物に投与された場合、その疾病に対して当該処置を生じさせるのに十分である化合物の量をいう。「治療有効量」は、化合物、疾病およびその重篤度ならびに処置を受ける哺乳動物の年齢、体重などに依存して異なる。
【0092】
同一の分子式を有するが、原子の結合の性質もしくは順序、または原子の空間配置が異なる化合物は、「異性体」と呼ばれる。原子の空間配置が異なる異性体は、「立体異性体」と呼ばれる。互いに鏡像ではない立体異性体は「ジアステレオマー」と呼ばれ、重なり合わない互いの鏡像であるものは「エナンチオマー」と呼ばれる。化合物が不斉中心を有する場合、例えば、炭素原子が4個の異なる基と結合している場合、1対のエナンチオマーが可能である。エナンチオマーは、その不斉中心の絶対配置により特徴付けることができ、CahnおよびPrelogのR/S順位則により記載されるか、または分子が偏光の面を回す様式により、右旋性もしくは左旋性(すなわち、それぞれ(+)または(−)−異性体)と表記される。キラル化合物は、個々のエナンチオマーとして存在してもよいし、またはそれらの混合物として存在してもよい。等しい割合のエナンチオマーを含有している混合物は、「ラセミ混合物」と呼ばれる。
【0093】
本発明の化合物は、1個以上の不斉中心を保有するかもしれず;従って、そのような化合物は、個々の(R)−もしくは(S)−立体異性体として、またはそれらの混合物として製造することができる。特に断りない限り、本明細書および特許請求の範囲における特定の化合物の記載または命名は、個々のエナンチオマーおよびそれらの混合物(ラセミ化合物であってもよいしまたはそうでなくてもよい)の両方を含むものとする。立体化学の決定および立体異性体の分離のための方法は、当技術分野において周知である(「Advanced Organic Chemistry」、第4版、J. March, John Wiley and Sons, New York, 1992年の4章の考察を参照のこと)。
【0094】
本発明の最も広い定義は前記の通りであるが、ある種の式(I)の化合物が好ましい。例えば、好ましい化合物は、式(Ia):
【0095】
【化23】

【0096】
(式中、
Xは、NまたはN+9a-であり;
Yは、NまたはCR9bであり;
Zは、薬学的に許容されるアニオンであり;
Qが、CH2であり;
cは、(S)、(T)、(V)、および(W):
【0097】
【化24】

【0098】
(式中、T1は、O、S、またはNR5であり、ここで、R5は、水素、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、およびヘテロシクリルより選択され;V1およびW1は、場合により置換されている5〜6員のヘテロ環を表すが、ただし、Ucが(T)であって且つT1がSである場合には、R3およびR4の少なくとも一つは水素ではなく、XとYの双方がNである場合には、Ucは(T)ではない)より選択され;
2およびR3は、水素であり;
4は、水素、アルキル、ヒドロキシアルキル、またはアルコキシアルキルであり;
9は、低級アルキル、ヒドロキシ、低級アルコキシおよびオキソ(=O)から選択され;
9aは、低級アルキルであり;
9bは、水素、メチルおよびエチルより選択され;
21、R22、およびR23は、フェニル環の任意の結合可能な炭素原子に結合しており、水素、低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C1-4アルキルスルホニル、アミノ、およびアルキルアミノより選択され;
nは、1であり;
pは、0、1、または2である)
の化合物である。
【0099】
より好ましいものは、
4が、アルキル、特に、メチル、エチル、1−メチルエチル、イソプロピル、またはヒドロキシアルキル、特に、1−ヒドロキシエチルまたは2−ヒドロキシエチルであり;
9が、メチル、エチル、オキソ(=O)、およびヒドロキシから選択され;
9aが、低級アルキルであり;
9bが、水素、メチルおよびエチルより選択され;
pが、0または1である、
すぐ上で定義された、式(Ia)の化合物である。
【0100】
上記の、式(Ia)の化合物において、好ましくは、R21は水素であり、R22およびR23は、水素、ハロゲン、メチル、およびメトキシから選択される。より好ましいものは、R21、R22、およびR23、ならびにそれらが結合しているフェニル環が、モノまたはジクロロ置換フェニル、特に4−クロロフェニルまたは3,4−ジクロロフェニルを形成する化合物である。
【0101】
本発明の他の態様によれば、化合物の好ましい群は、Ucが、(T)であり、R4が、メチル、エチル、1−メチルエチル、イソプロピル、1−ヒドロキシエチルまたは2−ヒドロキシエチルである、式(I)または(Ia)のそれらの化合物である。
【0102】
本発明の他の態様によれば、化合物の好ましい群は、QがCH2である、式(I)または(Ia)のそれらの化合物である。
【0103】
本発明の他の態様によれば、化合物の好ましい群は、R2が、水素であり;
3およびR4が、互いに独立に、水素、アルキル、ヒドロキシアルキル、またはアルコキシアルキルである、式(I)または(Ia)のそれらの化合物である。
【0104】
本発明の他の態様によれば、化合物の好ましい群は、R9が、メチル、エチル、ヒドロキシ、メトキシ、オキソ(=O)、ハロ、およびシアノから選択され;R9aおよびR9bが、水素、メチルおよびエチルより選択される、式(I)または(Ia)のそれらの化合物である。
【0105】
本発明の他の態様によれば、化合物の好ましい群は、nが1である、式(I)または(Ia)のそれらの化合物である。
【0106】
本発明の他の態様によれば、化合物の好ましい群は、pが0である、式(I)または(Ia)のそれらの化合物である。
【0107】
本発明の他の態様によれば、化合物の好ましい群は、YがNである、式(I)または(Ia)のそれらの化合物である。
【0108】
本発明の他の態様によれば、化合物の好ましい群は、Ucが、(IIIa):
【0109】
【化25】

【0110】
であり、R10が、低級アルキル、ハロゲン、シアノ、および低級アルコキシより選択され;mが、0、1、または2である、式(I)または(Ia)のそれらの化合物である。
【0111】
本発明の他の態様によれば、化合物の好ましい群は、Ucが、(IIIb):
【0112】
【化26】

【0113】
であり、R10が、低級アルキル、ハロゲン、シアノ、および低級アルコキシより選択され;mが、0、1、または2である、式(I)または(Ia)のそれらの化合物である。
【0114】
本発明の他の態様によれば、化合物の好ましい群は、Ucが、(IIIc):
【0115】
【化27】

【0116】
であり、R10が、低級アルキル、ハロゲン、シアノ、および低級アルコキシより選択され;mが、0、1、または2である、式(I)または(Ia)のそれらの化合物である。
【0117】
本発明の他の態様によれば、化合物の好ましい群は、Ucが、(IIId):
【0118】
【化28】

【0119】
であり、R10が、低級アルキル、ハロゲン、シアノ、および低級アルコキシより選択され;mが、0、1、または2である、式(I)または(Ia)のそれらの化合物である。
【0120】
本発明の他の態様によれば、化合物の好ましい群は、Ucが、(IIIe):
【0121】
【化29】

【0122】
であり、R10が、低級アルキル、ハロゲン、シアノ、および低級アルコキシより選択され;mが、0、1、または2である、式(I)または(Ia)のそれらの化合物である。
【0123】
本発明の他の態様によれば、化合物の好ましい群は、Ucが、(IIIf):
【0124】
【化30】

【0125】
であり、R10が、低級アルキル、ハロゲン、シアノ、および低級アルコキシより選択され;mが、0、1、または2である、式(I)または(Ia)のそれらの化合物である。
【0126】
好ましい基および/または特に好ましい基の他の組合せは、好ましい化合物のさらなる他の群を形成することができる。例えば、同じく好ましいものは、式(Ia):
【0127】
【化31】

【0128】
(式中、
Xは、NまたはN+9a-であり;
Yは、NまたはCR9bであり;
Zは、薬学的に許容されるアニオンであり;
2およびR3は、水素であり;
4は、メチル、エチル、1−メチルエチル、イソプロピル、1−ヒドロキシエチルまたは2−ヒドロキシエチルであり;
9は、メチル、エチル、ヒドロキシ、メトキシ、オキソ(=O)、ハロ、およびシアノから選択され;
9aは、低級アルキルであり;
9bは、水素、メチルまたはエチルであり;
21、R22、およびR23は、フェニル環の任意の結合可能な炭素原子に結合しており、水素、低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C1-4アルキルスルホニル、アミノ、およびアルキルアミノより独立に選択され;
cは、
【0129】
【化32】

【0130】
(式中、R10は、低級アルキル、ハロゲン、シアノ、および低級アルコキシより選択され、mは、0、1、または2である)の一つより選択され;
nは、1であり;
pは、0または1である)
の化合物である。
【0131】
他のより好ましい実施態様は、Qが、CH2である、すぐ上で定義された化合物である。
【0132】
さらにより好ましいものは、R21、R22、およびR23、ならびにそれらが結合しているフェニル環が、4−クロロフェニルまたは3,4−ジクロロフェニルを形成する、すぐ上で定義された化合物である。
【0133】
本発明の化合物は、CCR−3受容体アンタゴニストであり、RANTES、エオタキシン、MCP−2、MCP−3およびMCP−4のようなCCR−3ケモカインによる好酸球動員を阻害する。本発明の化合物およびそれらを含有する組成物は、喘息、アレルギー性鼻炎、過敏性肺疾患、過敏性肺炎、および好酸球性肺炎(例えば、慢性好酸球性肺炎)のような呼吸器アレルギー性疾患のみならず、炎症性腸疾患(例えば、クローン病および潰瘍性大腸炎);ならびに乾癬および炎症性皮膚病(例えば、皮膚炎および湿疹)等の、炎症性またはアレルギー性の疾患を含む、好酸球により誘起される疾患の処置において有用である。
【0134】
一般に、本発明の化合物は、類似した有用性を果たす薬剤のための一般に認められている投与形式のうちのいずれかにより、治療有効量で投与され得る。本発明の化合物、すなわち活性成分の実際の量は、処置される疾患の重度、対象の年齢および相対的健康状態、使用される化合物の効力、投与の経路および形態、ならびにその他の要因のような多数の要因に依存するであろう。
【0135】
式(I)の化合物の治療有効量は、1日当たりレシピエントの体重1キログラム当たりおよそ0.01〜20mgの範囲;好ましくは、約0.1〜10mg/kg/日である。そこで、70kgのヒトへの投与の場合、投薬量範囲は、最も好ましくは、1日当たり約7mg〜0.7gであろう。
【0136】
一般に、本発明の化合物は、以下の経路のうちのいずれかによって医薬組成物として投与されるであろう:経口、経皮、吸入(例えば、鼻腔内もしくは口腔内吸入)または非経口(例えば、筋肉内、静脈内もしくは皮下)投与。好ましい投与の様式は、罹患の程度に依って調整され得る、簡便な一日投薬量計画を使用する経口である。組成物は、錠剤、丸剤、カプセル剤、半固形剤、散剤、徐放性製剤、液剤、懸濁液剤、リポソーム剤、エリキシル剤またはその他の任意の適切な組成物の形態をとることができる。本発明の化合物を投与するためのもう一つの好ましい様式は、吸入である。これは、喘息およびその他の類似したまたは関連した気道障害のような疾患の処置のため、気道に直接治療剤を送達させるための有効な手段である(例えば、米国特許第5,607,915号参照)。
【0137】
製剤の選択は、薬物投与の形式および薬物物質のバイオアベイラビリティのような様々な要因に依存する。吸入を介した送達の場合、化合物は、液状の溶液もしくは懸濁液、エアロゾル噴霧剤または乾燥粉末として製剤化され、投与のための適当なディスペンサーへロードされる。医薬的吸入装置には、ネブライザー吸入器、定量噴霧式吸入器(MDI)および乾燥粉末吸入器(DPI)という三つの型が存在する。ネブライザー装置は、患者の気道へ運搬されるミストとして、治療剤(液状の形態で製剤化)の噴霧を引き起こす高速空気流を生成する。MDIは、典型的には、圧縮ガスと共に封入された製剤を有する。その装置は、作動させることにより、計測された量の治療剤を圧縮ガスによって排出し、したがって、設定された量の薬剤を投与する信頼性のある方法を与える。DPIは、装置により呼吸の間に患者の吸気流中に分散させられ得る流動性の高い粉末(free flowing powder)の形態で治療剤を投与する。流動性の高い粉末を達成するために、治療剤は、乳糖のような賦形剤を用いて製剤化される。計測された量の治療薬が、カプセル形態で保管され、作動させるたび毎に患者に分配される。最近、表面積を増加させる(すなわち、粒子サイズを減少させる)ことにより、バイオアベイラビリティを増加させることができるという原理に基づき、特に乏しいバイオアベイラビリティを示す薬物のための医薬製剤が開発された。例えば、米国特許第4,107,288号は、活性物質が高分子の架橋されたマトリックス上に支持されている10〜1,000nmのサイズ範囲の粒子を有する医薬製剤を記載している。米国特許第5,145,684号は、著しく高いバイオアベイラビリティを示す医薬製剤を与えるために、原薬を表面修飾剤の存在下でナノ粒子(平均粒径400nm)へと粉砕し、次いで液体媒体に分散させる、医薬製剤の作製を記載している。組成物は、上記の、薬学的に許容されうる賦形剤少なくとも1種と組み合わせられた式(I)の化合物を含む。そのような賦形剤は、当業者に一般に入手可能な、固形、液状、半固形、またはエアロゾル組成物の場合にはガス状の任意の賦形剤である。
【0138】
固形の医薬賦形剤には、デンプン、セルロース、タルク、グルコース、乳糖、ショ糖、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセリン、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク等が含まれる。液状および半固形の賦形剤は、グリセリン、プロピレングリコール、水、エタノール、ならびに石油、動物、植物または合成起源のものを含む様々な油、例えば落花生油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油等より選択しうる。好ましい液状の担体には、特に注射可能溶液の場合、水、生理ブライン、水性デキストロースおよびグリコールが含まれる。
【0139】
エアロゾルの形態で本発明の化合物を分散させるためには、圧縮ガスを使用しうる。この目的に適した不活性ガスは、窒素、二酸化炭素等である。
【0140】
非経口または経口の送達のための薬物のリポソーム製剤の場合には、薬物および脂質を、適当な有機溶媒、例えばtert-ブタノール、シクロヘキサン(1%エタノール)に溶解させる。その溶液を凍結乾燥させ、脂質混合物を水性バッファーに懸濁させ、リポソームを形成させる。必要であれば、リポソーム径は、超音波処理により低下させることができる。(Frank Szoka, Jr. および Demetrios Papahadjopoulos、「Comparative Properties and Methods of Preparation of Lipid Vesicles (Liposomes)」、Ann. Rev. Biophys. Bioeng., 9: 467-508(1980)、ならびにD.D. Lasic、「Novel Applications of Liposomes」、Trends in Biotech., 16: 467-608, (1998) 参照)。
【0141】
その他の適当な医薬賦形剤およびそれらの製剤化は、Remington's Pharmaceutical Sciences, E. W. Martin 編(Mack Publishing Company、18th ed.、1990)に記載されている。
【0142】
製剤中の化合物のレベルは、当業者により使用される全範囲内で変動することができる。典型的には、製剤は、重量パーセント(wt%)に基づき、製剤全体に対して約0.01〜99.99wt%の式(I)の化合物を含有しているであろう(その残りは、1種以上の適当な医薬賦形剤である)。好ましくは、化合物は、約1〜80wt%のレベルで存在する。式(I)の化合物を含有する代表的な医薬製剤は、以下に記載される。
【0143】
本発明の化合物のCCR−3アンタゴニスト活性は、以下により詳細に記載されるようなリガンド結合アッセイおよび走化性アッセイのようなin vitroアッセイによって測定することができる。in vivo 活性は、以下に、より詳細に記載されるようなBalb/cマウスモデルにおけるオボアルブミンにより誘起される喘息においてアッセイすることができる。
【0144】
参照を容易にするために、以下の略語が下記のスキームおよび実施例で使用される:
MeOH=メタノール
EtOH=エタノール
EtOAc=酢酸エチル
HOAc=酢酸
DCE=1,2−ジクロロエタン
DCM=ジクロロメタン
DMF=ジメチルホルムアミド
EDCI=1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩
Et=エチル
Me=メチル
i−Pr=イソ−プロピル
PCC=クロロクロム酸ピリジニウム
PDC=二クロム酸ピリジニウム
TEAまたはEt3N=トリエチルアミン
THF=テトラヒドロフラン
TFA=トリフルオロ酢酸
rt.=室温
【0145】
本発明の化合物は、当業者に既知の多数の方式で製造することができる。好ましい方法には、下記の一般的な合成手順が含まれるが、これらに限定されない。
【0146】
使用される出発原料および試薬は、アルドリッチケミカル社(Aldrich Chemical Co.)(Milwaukee, Wis., USA)、バッケム(Bachem)(Torrance, Calif., USA)、エニカケミー(Enika-Chemie)もしくはシグマ(Sigma)(St.Louis, Mo., USA)、メイブリッジ(Maybridge)(Dist: Ryan Scientific, P.O. Box 6496, Columbia, S.C. 92960)等のような商業的な供給元から入手されるか、またはFieser and Fieser's Reagents for Organic Synthesis、第1〜17巻(John Wiley and Sons, 1991);Rodd's Chemistry of Carbon Compounds、第1〜5巻および増補版(Elsevier Science Publishers、1989)、Organic Reactions、第1〜40巻(John Wiley and Sons, 1991)、March's Advanced Organic Chemistry(John Wiley and Sons、1992)ならびにLarock's Comprehensive Organic Transformations(VCH Publishers Inc., 1989)のような文献に記述された手順に従い当業者に既知の方法によって調製される。これらのスキームは、単に例示するものにすぎず、様々な修飾がこれらのスキームに施されてもよく、それらは、当業者に示唆されるであろう。
【0147】
反応の出発材料および中間体は、ろ過、蒸留、結晶化、クロマトグラフィー等を含むが、これらに限定されない従来の技術を使用して、所望により、単離され精製されてもよい。そのような材料は、物理定数およびスペクトルデータを含む従来の手段を使用して特徴付けられ得る。スキームにおいて、変数X、Y、Q、Ar、R4、R21、R22、R23、p、q等は、請求項に記載されたように定義される。
【0148】
【化33】

【0149】
スキーム1は、ピペリジニル中間体(7)の一般的な製造方法を説明するものであり、その化合物は、その後、式(I)の化合物に変換することができる。4−オキソ−ピペリジン−1−カルボン酸tert-ブチルエステル(1)は、C−4置換基を導入するのに好適な出発原料である。ハロゲン化トリフェニル(場合により置換された)ベンジルホスホニウムとのウィッティヒ縮合は、C−4ケトンを(場合により置換された)フェニルアルキリデン2置換基に変換する。ウィッティヒ反応のいくつかの変形がこの分野で周知であり、各々を本発明の化合物の製造に適合させることができる(例えば、J. March Advanced Organic Chemistry 4th ed., John Wiley & Sons, New York, 1992, pp. 956-963; A. Maercker, Organic Reactions, John Wiley & Sons, New York, 1965, v. 14 p 270-490;ホスホリル安定化カルバニオン、W. S. Wadsworth Jr. Organic Reactions John Wiley & Sons, New York, v. 25, 1977, pp. 74-257;ピーターソンオレフィン化、D. Ager, Organic Reactions John Wiley & Sons, New York, v. 38, 1990, pp. 1-224参照)。ウィッティヒ反応は、一般に、−78℃〜0℃で、不活性溶媒中に溶解または懸濁されたホスホニウム塩を強塩基、例えば、n−ブチルリチウムまたはリチウムジイソプロピルアミドで処理することにより、進行する。このようにして生成するイリドを、1に加え、−78℃〜0℃の範囲の温度で反応が完結するまで攪拌し、生成物を、標準的な手法で精製する。必要なホスホニウム塩は、ハロゲン化(場合により置換された)ベンジルをトリフェニルホスフィンと接触させることにより調製される。ハロゲン化ベンジルは、フリーラジカル誘起ベンジルハロゲン化反応により、容易に入手することができる。例示されたプロセスにおいて、3,4−ジクロロトルエンは、Sigma-Aldrich(カタログ番号16,136−5)より市販されている。
【0150】
オレフィンの還元は、接触水素化を含む種々の方法により、容易に達成することができ、窒素原子からのboc保護基の除去は、標準的な手順(T. W. Greene and P. G. M. Wuts, 同上)により達成される。boc保護基は、酸感受性であり、boc基の切断手順は、典型的には、0℃〜室温の範囲の温度で、カルバーメートをトリフルオロ酢酸および塩化メチレンと接触することである。あるいは、塩酸等の他の酸もまた、boc基を容易に切断する。
【0151】
ピペリジニル窒素の置換は、アシル化および得られるアミドの還元を含む2工程手順により、容易に達成される(スキーム2をも参照)。窒素のアシル化は、ペプチド合成に対して開発されたアミンアシル化手順を利用して容易に達成され、これにより、隣接するキラル中心のラセミ化を伴うことなく、アミドが高化学収率で製造されて、6を与える。
【0152】
アミノ酸とのアシル化を行う前に、アミノ酸のアミノ基は、望ましくないアミド形成を防ぐために保護される必要がある。種々のN−保護基が開発されており、それらは種々の条件下で選択的に切断することができる。アミノ酸カップリング用の保護ストラテジーは、広範囲にわたって概説されている(例えば、M. Bodanszky, Principles of Peptide Synthesis, Springer Verlag, New York 1993; P. Lloyd-Williams and F. Albericio Chemical Methods for the Synthesis of Peptides and Proteins CRC Press, Boca Raton, FL 1997参照)。これらの参考文献は、それらの全体が本明細書に組み込まれる。本発明に有用な種々のアミノ保護基として、N−ベンジルオキシカルボニル−(cbz)、tert-ブトキシ−カルボニル(Boc)、N−ホルミル−およびN−ウレタン−N−カルボキシ無水物が挙げられ、これらは全て市販されている(SNPE Inc., Princeton, N.J., Aldrich Chemical Co., Milwaukee, Wis., and Sigma Chemical Co., St. Louis, Mo.)。N−ウレタンアミノ保護環状アミノ酸無水物は、また、文献に記載されており(William D. Fuller ら、 J. Am. Chem. Soc. 1990 112:7414-7416)、これは参照により本明細書に組み込まれる。これらの多くが本プロセスで有効に使用することができるが、好ましいウレタン保護基として、tert-ブトキシカルボニルまたはベンジルオキシカルボニルが挙げられる。
【0153】
N−保護アミノ酸の効果的なカップリングのプロトコルは、広く最適化されている(M. Bodanszky 上記;P. Lloyd-Williams and F. Albericio 上記)。少なくとも1当量の保護されたアミノ酸および少なくとも1当量の好適なカップリング剤または脱水剤、例えば、1,3-ジシクロヘキシルカルボジイミドもしくはそのようなジイミドと塩基群との塩、N−エチル−N’−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)カルボジイミド塩酸塩を開始から使用する必要がある。他の脱水剤、例えばN,N’−カルボニルジイミダゾール、無水トリフルオロ酢酸無水物、混合無水物、酸塩化物を使用してもよい。カップリング効率を改善し、α−アミノ酸のラセミ化を制限する、多くの添加剤が明らかになっており、1−ヒドロキシベンゾトリアゾールおよび3−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン(W. Koenig and R. Geiger, Chem. Ber. 1970 788:2024 and 2034)、N−ヒドロキシコハク酸イミド(E. Wunsch and F. Frees, Chem. Ber. 1966 99:110)、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(L. A. Carpino J. Am. Chem. Soc. 1993 115:4397-4398)が挙げられる。アミニウム/ウロニウムおよびホスホニウムHOBt/HOAt系カップリング試薬が開発され、例えば、その系列のペプチドカップリング試薬、例えばヘキサフルオロリン酸1−ベンソトリアゾール−1−イルオキシ−ビス(ピロリジノ)ウロニウム(J. Xu and S. Chen, Tetrahedron Lett. 1992 33:647)、ヘキサクロロアンチモン酸1−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−N,N−ジメチルメタンアミニウム(P. Li and J. Xu, Tetrahedron Lett. 1999 40:3606)、ヘキサフルオロリン酸O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルアンモニウムウロニウム(L. A. Carpino, J. Am. Chem. Soc. 1993 115:4397)、ヘキサフルオロリン酸O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−ビス−(テトラメチレン)ウロニウム(A. Erlich ら、 Tetrahedron Lett. 1993 34:4781)、テトラフルオロホウ酸2−(3,4−ジヒドロ−4−オキソ−1,2,3,4−ベンゾトリアジン−3−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム(R. Knorr ら、 Tetrahedron Lett. 1989 30:1927)、ヘキサフルオロリン酸7−アザベンゾトリアゾリルオキシ−トリス−(ピロリジノ)(F. Albericio ら、 Tetrahedron Lett. 1997 38:4853)、ヘキサフルオロリン酸1−べンゾトリアゾリルオキシ−トリス−(ジメチルアミノ)ホスホニウム(B. Castro ら、 Tetrahedron Lett. 1976 14:1219)、およびヘキサフルオロリン酸1−べンゾトリアゾロキシ−トリス−ピロリジノホスホニウム(J. Coste ら、Tetrahedron Lett. 1990. 31:205)が挙げられる。
【0154】
上記と類似の方法でboc保護基を除去すると、7が得られ、これは、本発明の化合物に変換することができる。6の還元は、典型的には、当業者に周知の方法で、THF中のジボランの溶液を用いて行われる(例えば、反応は、不活性溶媒、典型的には環状または非環状エーテルを用いて、約−20℃〜70℃で、不活性条件下に行われる)。代替の還元剤は、この分野で周知である(J. March,同上p.1212-1213;A. G. M. Barret Reduction of Carboxylic Acid Derivatives to Alcohols, Ethers, and Amines in Comprehensive Organic Synthesis vol. 8, I. Fleming (Ed) 1991 248-251)。2工程アシル化および還元手順の代替方法は、ピペリジニル窒素の直接アルキル化であり、これは、アミンおよびアルキル化剤の性質によっては有利となる(Gibson in The Chemistry of the Amino Group S. Patai (ed), John Wiley, New York, 1968 p. 45-55)。
【0155】
【化34】

【0156】
スキーム2に示される3−{1−〔4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)ピペリジン−1−イルメチル〕−2−メチル−プロピル}−3,4−ジヒドロ−1H−キナゾリン−2−オン(10)の製造は、一級アミンから環状尿素、特に4−ジヒドロ−1H−キナゾリン−2−オンへを説明している。アミン7の1−ブロモメチル−2−ニトロベンゼンでのアルキル化は、8を与える。ニトロ基の一級アミンへの還元は、接触水素化により達成され、9を生成する。ニトロ基の還元の代替方法は周知であり、本発明の化合物の製造に適合させることができる(J. March, 上記、p.1216-1217)。一級アミンと二級アミンのホスゲンまたはジイミダゾールカルボニル等のホスゲン等価体での分子内環化は、尿素10を与える(A. F. Katritzky amd A. F. Pozharskii Handbook of Heterocyclic Chemistry, 2nd Ed. Pergamon Press, Oxford 2000, p.573; A. F. Hegarty and L. J. Diennen, Functions Containing Carbonyl Groups and Two Heteroatoms other then a Halogen of a Chalcone in Comprehensive Organic Functional Group Transformations, T. L. Gilchrist (ed.) v. 6 chapter 6.16, Pergamon Press, Oxford 1995 pp. 506-507;対応する分子間プロセスについてはpp.500-501参照)。
【0157】
【化35】

【0158】
4のピペリジニル窒素を置換するためのアミンアシル化/還元またはアルキル化手順の代替は、還元的アミノ化である。スキーム3は、そのプロセスの3−フェニル−イミダゾリジン−2−オンの合成への適合である。2−フェニルアミノエタノール(11)をジ−tert-ブチル−ジカーボネートで処理してBoc保護基を導入し、続いて、二クロム酸ピリジニウムで酸化することにより13に変換して、13を得る。ピペリジン7との還元的アミノ化(R. M. Hutchings and M. K. Hutchings, Reduction of C=N to CHNH by Metal Hydrides in Comprehensive Organic Synthesis col. 8, I. Fleming (Ed) Pergamon, Oxford 1991 pp. 47-54)は、トリアミン14を与え、それをホスゲンでの分子内環化に付すと、1−{1−〔4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)ピペリジン−1−イルメチル〕−2−メチル−プロピル}−3−フェニル−イミダゾリジン−2−オン(15)を生成する。スキーム4は、二種のアミン、7および2,3−ジヒドロインドールのホスゲンで媒介される分子間カップリングで尿素16を得ることを示している。
【0159】
【化36】

【0160】
本発明のピペラジン誘導体は、市販の1−boc−ピペラジン(Fluka; カタログ番号15502)から製造することができる。非保護アミンは、アミンの直接アルキル化により、あるいは上記のアシル化/還元手順により置換させることができる(スキーム5)。例示の合成において、アミンは、3,4−ジクロロ−ブロモメチル−ベンゼンによりアルキル化される。boc保護基の酸での除去は、18bを与える。N−(2−アミノ−3−メチルブチル)置換基は、スキーム1に記載の手順と同様に、アシル化/還元により導入される。18aのBoc−NH−Val−OHとのカップリングは、アミド19を与え、それはTFA処理により脱保護され、続いて、ジボラン−THFで還元されて、1−〔4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)ピペラジン−1−イルメチル〕−2−メチル−プロピルアミン(21)を与える。一級アミンのホスゲンまたは等価体での分子内環化は、先にスキーム2および3中で例示の、N−カルバモイル、3,4−ジヒドロ−1H−キナゾリン−2−オンおよびイミダゾリジン−2−オン誘導体を与える。
【0161】
【化37】

【0162】
ヘテロ環置換アミンは、求核剤の攻撃に感受性である、場合により置換されたヘテロ環と21を接触させることにより製造された。2−クロロベンゾオキサゾール誘導体23は、求核性アミンでの攻撃と引き続く塩素イオンの脱離に感受性であり、2−アミノベンゾオキサゾール化合物を与える。21と23との反応により、ベンゾオキサゾール−2−イル−{1−〔4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−ピペラジン−1−イルメチル〕−2−メチル−プロピル}−アミン(24)が得られる。2−クロロ−ベンゾオキサゾール(スキーム6)を、エトキシジチオカルボン酸カリウムと塩化チオニルでの連続的な処理により調製して、23が得られる。ベンゾオキサゾールの製造は、概説されている(G. V. Boyd, Comprehensive Heterocyclic Chemistry, K. T. Potts (ed.) v. 6, part 4B pp. 216-227)。
【0163】
本発明のベンゾチアゾールおよびベンゾイミダゾールは、好適な前駆体から、ベンゾチアゾールおよびベンゾイミダゾールから同様に製造することができる。ベンゾチアゾールおよびベンゾイミダゾールの合成は、この分野で周知である(ベンゾチアゾール;J. Metzger, Thiazoles and their Benzo Derivatives in Comprehensive Heterocyclic Chemistry K.T. Potts (ed) v. 6, part 4B, Pergamon Press, Oxford pp. 321-326; A. Dondonni and P. Merino, Comprehensive Heterocyclic Chemistry II v. 3, I. Shinkai (ed) Pergamon Press Oxford, 1996, pp. 431-452; ベンゾイミダゾール;M. R. Grimmett, Imidazole and their Benzo Derivatives (iii) Synthesis and Applications in Comprehensive Heterocyclic Chemistry K. T. Potts (ed.) Pergamon Press, Oxford v. 5, pp. 457-496; M. R. Grimmett, Imidazole and their Benzo Derivatives (iii) Synthesis and Applications in Comprehensive Heterocyclic Chemistry II I. Shinkai (ed) v. 3, Pergamon Press, Oxford, 1996, pp. 185-213)。
【0164】
【化38】

【0165】
実施例
以下の製剤および実施例は、当業者が本発明をより明瞭に理解および実施できるようにするために、示される。しかしながら、これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものではなく、単にそれを例示し、代表するものであると考えるべきである。
【0166】
一般に、本願において使用される名称は、IUPAC系統的命名(IUPAC systematic nomenclature)の作成のためのバイルシュタインインスティテュート(Beilstein Institute)のコンピュータ化システム、AUTONOM(登録商標)V.4.0に基づく。便宜および整合性のために、酸付加塩は、プロトン化されたピペリジニル窒素で示す。これは、限定することを意図するものではなく、個々の場合において、他の窒素原子のプロトン化が生じることがあり、全てのプロトン化された種は、本発明の範囲内のものである。
【0167】
実施例1
3−{1−〔4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−ピペリジン−1−イルメチル〕−2−メチル−プロピル}−3,4−ジヒドロ−1H−キナゾリン−2−オン
【0168】
【化39】

【0169】
工程1
n−ブチルリチウム(43.2ml、ペンタン中2M、108mmol)を、アルゴン雰囲気下、乾燥THF(500ml)中の臭化3,4−ジクロロ−ベンジルトリフェニルホスホニウム(54g、108mmol)(THF中、65℃で一晩、等モル量の臭化3,4−ジクロロ−ベンジルとトリフェニルホスフィンを攪拌して調製)の氷冷懸濁液に徐々に加えた。15分後、反応混合物を室温に暖め、次いで、さらに2時間攪拌した。1−tert−ブトキシカルボニル−4−ピペリドン(21.4g、108mmol)を加え、攪拌を一晩続けた。ヘキサン(2l)を加え、反応物を攪拌し、次いで、濾過した。濾液を減圧下に濃縮し、橙色のガム41.8gを得た。シリカゲルおよびヘキサン中の70%DCM、続いて100%DCMおよび1%MeOH/DCM〜5%MeOH/DCMのグラジエントでのカラム精製により、1−(tert−ブトキシカルボニル)−4−(3,4−ジクロロ−ベンジリデン)ピペリジン(29g)が明黄褐色油状体として得られた。
【0170】
工程2
酸化白金(0.3g)を、EtOAc(500ml)中の1−(tert−ブトキシカルボニル)−3,4−ジクロロベンジリデン)ピペリジン(29g、85mmol)の溶液に加え、混合物を水素雰囲気下に一晩攪拌した。反応混合物をセライト床を通して濾過し、濾液を濃縮して、1−(tert−ブトキシカルボニル)−3,4−ジクロロベンジル)ピペリジン(30g)が油状体として得られた。
【0171】
工程3
TFA(50ml)を、DCM(150ml)中の1−(tert−ブトキシカルボニル)−3,4−ジクロロベンジル)ピペリジン(24g、70mmol)の溶液に加え、反応混合物を1時間攪拌した。溶媒を減圧下に除去し、続いて、EtOAc(200ml)を加え、得られた混合物を、1N水酸化ナトリウム水溶液で塩基性にした。有機層を分離し、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧下で除去して、4−(3,4−ジクロロベンジル)ピペリジン(17g)が淡褐色油状体として得られた。
【0172】
工程4
4−(3,4−ジクロロベンジル)ピペリジン(23g、1.3当量)の溶液に、D−BOC−バリン(20g、82mmol)、EDCI(1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド)(20.3g、1.3当量)およびHOBT(ベンゾトリアゾール−1−オール、2.2g、0.2当量)を加えた。得られた混合物を室温で一晩攪拌した。揮発物を除去し、残渣をEtOAcとNaHCO3水溶液の間で分配した。有機層を飽和ブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥した。粗生成物を、ヘキサン中の20%EtOAcを用いるシリカゲルカラムで精製して、{1−〔4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−ピペリジン−1−カルボニル〕−2−メチル−プロピル}−カルバミン酸tert−ブチルエステル(36g)が白色泡状物質として得られた。
【0173】
工程5
CH2CH2 100ml中の{1−〔4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−ピペリジン−1−カルボニル〕−2−メチル−プロピル}−カルバミン酸tert−ブチルエステル(36g、0.08mol)の溶液に、TFA(35ml、0.45mol)を加えた。混合物を室温で16時間攪拌した後、揮発物を除去し、残渣をEtOAcと水100ml中のKOH(20g)の間で分配した。有機層を分離し、水、ブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥した。濃縮により、2−アミノ−1−〔4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)ピペリジン−1−イル〕−3−メチル−ブタン−1−オン28gが得られた。
【0174】
工程6
2−アミノ−1−〔4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)ピペリジン−1−イル〕−3−メチル−ブタン−1−オン(28g、0.08mol)をTHF250ml中に溶解し、BH3−THF(1.0M)500mlと混合した。反応混合物を3時間、加熱還流し、次いで、室温に冷却し、その後、氷浴温度に冷却した。溶液を、pH<3まで、3N HClを滴下して酸性にした。揮発物を除去し、残渣をEtOH100mlと3N HCl 300ml中でもどした。得られた混合物を82℃で1.5時間加熱した後、それを室温に冷却し、次いで、NaOH(水)で塩基性にした。生成物をEtOAcで抽出し、有機層をNaCl(飽和)で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。CH2CH2中の(MeOH中の10%NH4OH)の2.5%〜5%を用いるシリカゲルでのカラム精製により、1−〔4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−ピペリジン−1−イルメチル〕−2−メチルプロピルアミン24gが得られた。
【0175】
工程7
臭化2−ニトロベンジル(69mg、1.05g)を、K2CO3(84mg、2当量)の存在下に、CH2CH2 5ml中の1−〔4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−ピペリジン−1−イルメチル〕−2−メチルプロピルアミン(100mg,0.3mmol)と混合した。混合物を室温で一晩攪拌した後、それを水でクエンチし、EtOAcで抽出した。有機層を分離し、ブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥した。ヘキサン中の25%アセトン、25%CH2CH2を用いるシリカゲル上でのカラム精製により、{1−〔4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−ピペリジン−1−イルメチル〕−2−メチルプロピル}−(2−ニトロ−ベンジル)−アミン100mgが油状体として得られた。
【0176】
工程8
{1−〔4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−ピペリジン−1−イルメチル〕−2−メチルプロピル}−(2−ニトロ−ベンジル)−アミン(90mg、0.19mmol)を、PtO2の存在下に、EtOH/EtOAc(5ml/5ml)中で1気圧のH2下に還元した。2時間攪拌した後、それをセライト床を通して濾過し、濃縮して、2−({1−〔4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−ピペリジン−1−イルメチル〕−2−メチルプロピルアミノ}−メチル)−フェニルアミン89mgを得た。
【0177】
工程9
乾燥THF10ml中の2−({1−〔4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−ピペリジン−1−イルメチル〕−2−メチルプロピルアミノ}−メチル)−フェニルアミン(80mg、0.18mmol)の溶液に、Et3N(0.094ml、3.7当量)を加え、続いて、トルエン中の20%ホスゲン(0.087ml、0.18mmol)を加えた。混合物を室温で2時間攪拌した後、揮発物を除去した。残渣を水とCH2CH2との間で分配した。有機層を、水、NaCl(飽和)で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。CH2CH2中の5%MeOHを用いるカラム精製により、所望の生成物、3−{1−〔4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−ピペリジン−1−イルメチル〕−2−メチル−プロピル}−3,4−ジヒドロ−1H−キナゾリン−2−オン70mgを得た。
【0178】
実施例2
1−{1−〔4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−ピペリジン−1−イルメチル〕−2−メチル−プロピル}−3−フェニル−イミダゾリジン−2−オン
【0179】
【化40】

【0180】
工程1
THF50ml中の2−フェニルアミノ−エタノール(5.0g、36mmol)およびジ−t−ブチル−ジカーボネート(1.9g、1.5当量)を55℃で7時間加熱した。揮発物を減圧下に除去した。粗生成物をCH2CH2とヘキサンから再結晶して、白色結晶物質((2−ヒドロキシ−エチル)−フェニル−カルバミン酸tert−ブチルエステル)8.1gを得た。
【0181】
工程2
(2−ヒドロキシ−エチル)−フェニル−カルバミン酸tert−ブチルエステル(3.0g、13mmol)をCH2CH2 50ml中のPDC(5.3g、1.1当量)と混合し、室温で16時間攪拌した。次いで、反応混合物をEt2Oで希釈し、フロリジル(florisil)を通して濾過し、無色の濾液を濃縮した。残渣をヘキサン中の15%EtOAcを用いるシリカゲルカラムで精製して、(2−オキソ−エチル)−フェニル−カルバミン酸tert−ブチルエステル1.6gを無色油状体として得た。
【0182】
工程3
MeOH30ml中の(2−オキソ−エチル)−フェニル−カルバミン酸tert−ブチルエステル(0.5g、2.13mmol)と1−〔4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−ピペリジン−1−イルメチル〕−2−メチルプロピルアミン(0.7g、1当量)の混合物を、3Åモレキュラーシーブ(10g)と0.5時間攪拌した。次いで、NaCNBH3(0.081g、0.6当量)を加え、混合物をさらに3時間攪拌した。反応物を数滴の3N HClでクエンチし、セライト床を通して濾過した。粗生成物を、CH2CH2中の3%(MeOH中の10%NH4OH)を用いてシリカゲルでのカラム精製により、N−{1−〔4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−ピペリジン−1−イルメチル〕−2−メチルプロピル}−N’−フェニル−エタン−1,2−ジアミン0.35gが得られた。
【0183】
工程4
THF25ml中のN−{1−〔4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−ピペリジン−1−イルメチル〕−2−メチルプロピル}−N’−フェニル−エタン−1,2−ジアミン(0.2g、0.45mmol)とEt3N(0.22ml、3.5当量)の溶液に、トルエン中の20%ホスゲン(0.42ml、0.85mmol)を滴下した。溶液を室温で1時間攪拌し、揮発物を除去した。残渣をEtOAcとNaHCO3(水)との間で分配した。有機層を、水、ブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥した。CH2CH2中の5%MeOH、2.5%ヘキサンを用いる分離用TLCにより、実施例2、すなわち、1−{1−〔4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−ピペリジン−1−イルメチル〕−2−メチル−プロピル}−3−フェニル−イミダゾリジン−2−オン0.12gを得、これはHCl塩に変換された。
【0184】
参考例1
ベンゾチアゾール−2−イル−{1−〔4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−ピペラジン−1−イルメチル〕−2−メチル−プロピル}−アミン
【0185】
【化41】

【0186】
工程1
臭化3,4−ジクロロベンジル(35.2g、150mmol)を、DCM(100mL)中のN−(tert−ブトキシカルボニル)ピペラジン(24.8g、130mmol)とトリエチルアミン(21mL、150mmol)の溶液に、30分かけて加えた。1時間後、反応混合物をEtOAcで希釈し、生成物を、1N塩化水素水溶液を加えて、塩酸塩として析出させた。固体生成物を濾過し、水で洗浄し、次いで、EtOAc中に再懸濁した。2当量の1N水酸化ナトリウム水溶液を加え、遊離アミンをEtOAcに抽出した。有機層を分離し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、濃縮して、1−(tert−ブトキシカルボニル)−4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)ピペラジン(45g)を得た。
【0187】
工程2
TFA(75ml、0.97mmol)を、DCM(75ml)中の1−(tert−ブトキシカルボニル)−4−(3,4−ジクロロベンジル)ピペラジン(45g、0.13mol)の溶液に加えた。混合物を1時間室温で攪拌し、次いで、水酸化ナトリウム溶液で塩基性にした。生成物をEtOAcに抽出し、有機層を重炭酸ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮して、1−(3,4−ジクロロベンジル)ピペラジン(35.8g)を固体として得た。
【0188】
工程3
1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(5.08g、26.5mmol)を、DCM中の1−(3,4−ジクロロベンジル)ピペラジン(5g、20.4mmol)と(D,L)−Boc−バリン(5.76g、26.5mmol)に加えた。2時間後、生成物をEtOAcに抽出した。有機層を重炭酸ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。ヘキサン/EtOAc(1:1)を用いるカラムクロマトグラフィーにより、1−〔4−(3,4−ジクロロベンジル)ピペラジン−1−イルカルボニル〕−N−(tert−ブトキシカルボニル)−2−メチルプロピルアミン(5.46g)が泡状体として得られた。
【0189】
工程4
エーテル性塩化水素溶液(80ml、80mmol)を、MeOH(50ml)中の1−〔4−(3,4−ジクロロベンジル)ピペラジン−1−イルカルボニル〕−N−(tert−ブトキシカルボニル)−2−メチルプロピルアミン(4.28g、9.64mmol)の溶液に加え、混合物を70℃に加熱した。2.5時間後、反応混合物を濃縮し、固体をエーテル中に懸濁し、濾過して、1−〔4−(3,4−ジクロロベンジル)ピペラジン−1−イルカルボニル〕−2−メチルプロピルアミンを塩酸塩として得た。生成物を水に溶解し、トリエチルアミン(4ml)で処理し、遊離アミンをEtOAcに抽出した。EtOAc層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、濃縮して、1−〔4−(3,4−ジクロロベンジル)ピペラジン−1−イルカルボニル〕−2−メチルプロピルアミン(3.2g)を遊離アミンとして得た。
【0190】
工程5
THF中の1.0Mジボラン溶液(65.2ml、65.2mmol)を、THF(15ml)中の1−〔4−(3,4−ジクロロベンジル)ピペラジン−1−イルカルボニル〕−2−メチルプロピルアミン(3.2g、9.3mmol)の溶液に加えた。混合物を窒素下に2時間、加熱還流し、次いで、減圧下に濃縮した。残渣をMeOHに溶解し、6N塩化水素溶液(50ml)で酸性にし、次いで、70℃に再加熱した。1時間後、反応混合物を冷却し、水酸化ナトリウム溶液で塩基性にし、生成物をEtOAcに抽出した。EtOAc層を重炭酸ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、濃縮して、1−〔4−(3,4−ジクロロベンジル)ピペラジン−1−イルメチル〕−2−メチルプロピルアミン(3.53g)を油状体として得た。
【0191】
工程6
酢酸15mLに溶解した2−メチルスルファニル−ベンゾチアゾール(1.22、6.7mmol)の溶液に、H2O17mL中の過マンガン酸カリウム(1.81g、1.7当量)を加えた。得られた混合物を30分間加熱し、室温で48時間攪拌した。反応をNaHSO3でクエンチし、溶液のpHをNH4OHで8に調整した。反応物をEtOAcで抽出し、EtOAc層をH2Oで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮して、所望の生成物、2−メタンスルホニル−ベンゾチアゾールを得た。M+:213。
【0192】
工程7
2−メタンスルホニルベンゾチアゾール(0.055g、0.25mmol)と1−〔4−(3,4−ジクロロベンジル)ピペラジン−1−イルメチル〕−2−メチルプロピルアミン(84mg、0.25mmol)をアルゴン下に130℃に加熱した。90分後、混合物を冷却した。次いで、それをまず、ヘキサン中の40%EtOAc、続いて、EtOAc中の1%I−PrNH2、10%MeOHを用いて、シリカゲルカラムで精製して、ベンゾチアゾール−2−イル−{1−〔4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−ピペラジン−1−イルメチル〕−2−メチル−プロピル}−アミン(39%)を得た。M+:462。
【0193】
参考例2
ベンゾオキサゾール−2−イル−{1−〔4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−ピペラジン−1−イルメチル〕−2−メチルプロピル}アミン
【0194】
【化42】

【0195】
THF1.5ml中の1−〔4−(3,4−ジクロロベンジル)ピペラジン−1−イルメチル〕−2−メチルプロピルアミン(0.108g、0.33mmol)とジイソプロピルエチルアミン(0.17ml、3当量)の溶液に、THF0.36ml中の2−クロロ−ベンゾオキサゾール(0.04ml、0.36mmol)を0℃で滴下した。得られた混合物を0℃で2時間攪拌し、次いで、室温まで暖め、さらに2時間攪拌した。揮発物を減圧下に除去し、残渣をEtOAcと水の間で分配した。有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。粗生成物を、まず、ヘキサン中の40%EtOAc、続いて、EtOAc中の1%i−PrNH2、10%MeOHを用いて、シリカゲルカラムで精製して、ベンゾオキサゾール−2−イル−{1−〔4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−ピペラジン−1−イルメチル〕−2−メチルプロピル}アミン(85%)を得た。M+:446。
【0196】
実施例3〜5
表1に記載の化合物を、上記の参考例1、工程1〜5および参考例2に記載の手順に従って製造したが、BOC−バリンは、所望のアミノ酸、すなわち、L−BOC−バリン(実施例3)、D−BOC−バリン(実施例4)、およびBOC−グリシン(実施例5)に置き換えた。
【0197】
【表1】

【0198】
参考例3
{1−〔4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−ピペラジン−1−イルメチル〕−2−メチル−プロピル}−(6−メトキシ−ベンゾオキサゾール−2−イル)−アミン
【0199】
【化43】

【0200】
工程1
2−アミノ−5−メトキシ−フェノール塩酸塩(0.203g、1.2mmol)およびジチオ炭酸O−エチルエステルのカリウム塩をピリジン4mlに溶解し、2時間、加熱還流した。反応混合物を室温に冷却し、(氷冷)水5mlに注いでクエンチした。混合物に、濃HCl 0.22mlを加え、30分攪拌した。固体を濾過し、水で洗浄し、減圧下に一晩乾燥した。上記の生成物に、SOCl2(0.55ml、7.6mmol)およびDMF2滴を加えた。反応物を70℃で30分加熱した後、室温に冷却した。過剰のSOCl2を減圧下に除去し、残渣を、CH2CH2中の5%MeOHを用いて、シリカゲルカラムで精製して、{1−〔4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−ピペラジン−1−イルメチル〕−2−メチル−プロピル}−(6−メトキシ−ベンゾオキサゾール−2−イル)−アミンを得た。
【0201】
参考例4
{1−〔4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−ピペラジン−1−イルメチル〕−2−メチル−プロピル}−(5−メチル−ベンゾオキサゾール−2−イル)−アミン
【0202】
【化44】

【0203】
工程1
EtOH30ml中の2−アミノ−p−クレゾール(1.81g、0.015mmol)とKOH(1.2当量、0.99g)の溶液に、メタンジチオン(18ml)を加えた。得られた混合物を、18時間、加熱還流した。冷却して、揮発物を減圧下に除去し、残渣をEtOAcと1N HCl 18mlの間で分配した。有機層を分離し、水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して、5−メチル−3H−ベンゾオキサゾール−2−チオン(1.2g、M+1:165)を得た。
【0204】
工程2
5−メチル−3H−ベンゾオキサゾール−2−チオン(0.539g、1.64mmol)および1−〔4−(3,4−ジクロロベンジル)ピペラジン−1−イルメチル〕−2−メチルプロピルアミン(0.225g、1.64mmol)をトルエン1.5mlに溶解し、2時間、加熱還流した。反応混合物を室温に冷却し、揮発物を減圧下に除去した。粗生成物を、ヘキサン中の40%EtOAc、続いて、EtOAc中の1%i−PrNH2、9%MeOHを用いて、シリカゲルカラムで精製して、{1−〔4−(3,4−ジクロロ−ベンジル)−ピペラジン−1−イルメチル〕−2−メチル−プロピル}−(5−メチル−ベンゾオキサゾール−2−イル)−アミン0.25gを得た。M.p.155.3〜156.9℃;MS:M++1:461。
【0205】
実施例6
表2に記載の化合物を、実施例1、工程1〜6および参考例1に記載の手順に従って製造したが、BOC−バリンは、所望のアミノ酸、BOC−グリシン(実施例6)に置き換えた。
【0206】
【表2】

【0207】
実施例7〜25
表3に記載の実施例7〜25を、上記の実施例1〜6および参考例1〜4に記載のものと同一または類似の手順に従って製造した。
【0208】
【表3】







【0209】
実施例26:製剤例
以下は、式(I)の化合物を含有する代表的な医薬製剤である。
【0210】
錠剤製剤
以下の成分を充分に混合し、一割線錠剤へと圧縮した。
【0211】
【表4】

【0212】
カプセル製剤
以下の成分を充分に混合し、硬ゼラチンカプセルに充填した。
【0213】
【表5】

【0214】
懸濁液製剤
以下の成分を混合して、経口投与用の懸濁液を形成した。
【0215】
【表6】

【0216】
注射可能製剤
以下の成分を混合して、注射可能製剤を形成した。
【0217】
【表7】

【0218】
リポソーム製剤
以下の成分を混合して、リポソーム製剤を形成した。
【0219】
【表8】

【0220】
実施例27
CCR−3受容体結合アッセイ−In vitro
本発明の化合物のCCR−3アンタゴニスト活性を、125IエオタキシンのCCR−3L1.2トランスフェクタント細胞との結合を阻害する能力により決定した(Ponath, P. D.ら、J. Exp. Med., Vol. 183, 2437-2448, (1996) 参照)。
【0221】
アッセイは、コスター(Costar)96穴ポリプロピレン丸底プレートで実施した。テスト化合物をDMSOに溶解させ、次いで、最終DMSO濃度が2%となるように、結合バッファー(50mM HEPES、1mM CaCl2、5mM MgCl2、0.5%ウシ血清アルブミン(BSA)、0.02%アジ化ナトリウム、pH7.24)で希釈した。テスト溶液またはDMSOを含むバッファーのみ(対照試料)25μlを各ウェルに添加し、続いて125I−エオタキシン(100pmol)(NEX314, New England Nuclear, Boston, Mass.)25μlおよびCCR−3L1.2トランスフェクト細胞1.5×105個を含む結合バッファー25μlを添加した。最終反応容量は75μlであった。
【0222】
反応混合物を室温で1時間インキュベートした後、反応混合物をポリエチレンイミンで処理されたパッカードユニフィルター(Packard Unifilter)GF/Cフィルタープレート(Packard, Chicago, Ill.)を通して濾過することにより反応を停止させた。そのフィルターを、10mm HEPESおよび0.5M 塩化ナトリウムを含有している氷冷洗浄バッファー(pH7.2)で4回洗浄し、65℃でおよそ10分間乾燥させた。25μl/ウェルのマイクロシント(Microscint)−20(登録商標)シンチレーション液(Packard)を添加し、フィルター上に保持された放射能をパッカードトップカウント(Packard TopCount)(登録商標)を使用することにより決定した。本発明の化合物が試験され、このアッセイにおいて測定可能な活性を有していた。
【0223】
【表9】

【0224】
実施例28
エオタキシンにより媒介されるCCR−3L1.2トランスフェクタント細胞の走化性の阻害−In vitroアッセイ
本発明の化合物のCCR−3アンタゴニスト活性は、Ponath, P. D.ら、J. Clin. Invest. 97: 604-612(1996)に記載された方法をわずかに改変したものを使用して、エオタキシンにより媒介されるCCR−3L1.2トランスフェクタント細胞の走化性の阻害を測定することにより決定することができる。アッセイは、24穴ケモタキシスプレート(Costar Corp., Cambridge, Mass.)において実施した。CCR−3L1.2トランスフェクタント細胞を、RPMI1640、10%ハイクローン(Hyclone)(登録商標)ウシ胎仔血清、55mM 2−メルカプトエタノールおよびジェネテシン(Geneticin)418(0.8mg/ml)を含有している培養培地中で増殖させた。アッセイの18〜24時間前に、トランスフェクト細胞を、最終濃度5mM/1×106細胞/mlのn−酪酸で処理し、単離し、等部のRPMI1640およびメディウム(Medium)199(M199)を0.5%ウシ血清アルブミンと共に含有しているアッセイ培地中に1×107個/mlで再懸濁させた。
【0225】
リン酸緩衝生理ブラインに1mg/mlで懸濁したヒトエオタキシンを、最終濃度100nmで下室に添加した。3ミクロンの孔サイズを有するトランスウェルカルチャーインサート(Costar Corp., Cambridge, Mass.)を各ウェルに挿入し、L1.2細胞(1×106個)を、最終容量100μlで上室に添加した。DMSO中のテスト化合物を、最終DMSO容量が0.5%となるよう、上室および下室の両方に添加した。アッセイは、2セットの対照に対して実施した。陽性対照は、上室にテスト化合物なしに細胞を含有し、下室にエオタキシンのみを含有していた。陰性対照は、上室にテスト化合物なしに細胞を含有し、下室にはエオタキシンもテスト化合物も含有していなかった。プレートを37℃でインキュベートした。4時間後、インサートを各室から除去し、下室から1.2mlクラスター(Cluster)チューブ(Costar)へと細胞懸濁液500μlをピペットで取り出し、それらをFACSで30秒間計数することにより、下室へ遊走した細胞を計数した。
【0226】
実施例29
エオタキシンにより媒介されるヒト好酸球の走化性の阻害−In vitroアッセイ
本発明の化合物のエオタキシンにより媒介されるヒト好酸球の走化性を阻害する能力は、Carr, M. W. ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91: 3652-3656(1994)に記載された手順をわずかに改変したものを使用して評価することができる。実験は、24穴ケモタキシスプレート(Costar Corp.,Cambridge, Mass.)を使用して実施した。PCT出願公開第WO96/22371号に記載された手順を使用して、血液から好酸球を単離した。使用した内皮細胞は、European Collection of Animal Cell Cultures(Porton Down, Salisbury, U.K.)より入手した内皮細胞系ECV304であった。内皮細胞を、3.0μMの孔サイズを有する直径6.5mmのバイオコート(Biocoat)(商標)トランスウェルティッシュカルチャーインサート(Costar Corp., Cambridge, Mass.)で培養した。ECV304細胞用の培養培地は、M199、10%ウシ胎仔血清、L−グルタミンおよび抗生物質からなる。アッセイ培地は、等部のRPMI1640およびM199と0.5%BSAとからなる。アッセイの24時間前に、ECV304細胞2×105個を24穴ケモタキシスプレートの各インサートに播き、37℃でインキュベートした。アッセイ培地で希釈された20nMエオタキシンを下室に添加した。下室内の最終容量は600μlであった。内皮でコーティングされたティッシュカルチャーインサートを各ウェルに挿入した。アッセイバッファー100μlに懸濁した好酸球細胞106個を、上室に添加した。DMSOに溶解したテスト化合物を、各ウェル内の最終DMSO容量が0.5%となるよう、上室および下室の両方に添加した。アッセイは、2セットの対照に対して実施した。陽性対照は、上室に細胞を含有し、下室にエオタキシンを含有していた。陰性対照は、上室に細胞を含有し、下室にアッセイバッファーのみを含有していた。プレートを37℃で5%CO2/95%空気中で1〜1.5時間インキュベートした。
【0227】
フローサイトメトリーを使用して、下室へ遊走した細胞を計数した。下室からチューブへと細胞懸濁液500μlを移し、設定された30秒という時間、イベントを獲得することにより、相対細胞数を得た。
【0228】
実施例30
CCR−3アンタゴニストによる、オボアルブミンにより感作されたBalb/cマウスの肺への好酸球流入の阻害--in vivoアッセイ
本発明の化合物の、肺への白血球浸潤を阻害する能力は、エアロゾルによる抗原チャレンジ後のオボアルブミン(OA)感作balb/cマウスの細気管支肺胞洗浄(BAL)液への好酸球蓄積の阻害を測定することにより決定することができる。簡単に説明すると、1日目および14日目に、体重20〜25gの雄性balb/cマウスをOA(水酸化アルミニウム溶液0.2ml中10μg)で腹腔内感作した。1週間後、マウスを10群に分割した。テスト化合物もしくは媒体のみ(対照群)または抗エオタキシン抗体(陽性対照群)を、腹腔内、皮下または経口のいずれかで投与した。1時間後、マウスをプレキシグラス(Plexiglass)ボックスに置き、PARISTAR(商標)ネブライザー(PARI, Richmond, Va.)より発生したOAエアロゾルに20分間曝した。未感作または未チャレンジのマウスを陰性対照として含めた。24時間後または72時間後、マウスを麻酔し(ウレタン、およそ1g/kg、i.p.)、気管カニューレ(PE60チューブ)を挿入し、PBS 0.3mlで4回肺を洗浄した。BAL液をプラスチックチューブに移し、氷上で維持した。BAL液のアリコート20μl中の全白血球を、コールターカウンター(Coulter Counter)(商標)(Coulter, Miami, Fla.)により決定した。種類別白血球計数を、標準的な形態学的基準を使用して、光学顕微鏡により、改変ライト(Wright's)染色(DiffQuick)(商標))により染色されたサイトスピン(Cytospin)(商標)調製物に対して行った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】


〔式中:
Arは、アリールまたはヘテロアリールであり;
Qは、−C(=O)−またはC1-2アルキレンであり;
Xは、NまたはN+9a-であり;Yは、CR9aまたはNであり;
Zは、薬学的に許容されうるアニオンであり;
2は、水素またはC1-8アルキルであり;
3およびR4は、互いに独立に、水素、C1-8アルキル、置換C1-8アルキル、C2-8アルケニル、C3-7シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヘテロアルキル、−(C1-8アルキレン)−C(=O)−Z1または−(C1-8アルキレン)−C(O)2−Z1であり、ここで、Z1は、C1-8アルキル、ハロC1-8アルキル、C1-8アルコキシ、ハロC1-8アルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、アルキルアミノ、アリール、アリールC1-8アルキル、アリールオキシ、アリールC1-8アルキルオキシ、ヘテロアリール、またはヘテロアリールオキシであり;
cは、(S)、(T)、(V)、および(W):
【化2】


(式中、T1は、O、S、またはNR5であり、ここで、R5は、水素、C1-8アルキル、置換C1-8アルキル、C3-7シクロアルキル、およびヘテロシクリルからなる群より選択され;V1およびW1は、場合により置換されている5〜6員のヘテロ環を表すが、ただし、Ucが(T)であって且つT1がSである場合には、R3およびR4の少なくとも一つは水素ではなく、XとYの双方がNである場合には、Ucは(T)ではない)からなる群より選択され;
9は、ピペリジニルまたはピペラジニル環の任意の結合可能な炭素原子に結合し、ヒドロキシ、C1-4アルコキシ、オキソ(=O)、ハロゲン、シアノ、ハロC1-4アルキル、ハロC1-4アルコキシおよびR15から独立に選択される1個または2個の置換基で場合により置換されているC1-4アルキルからなる群より選択され;
9aおよびR9bは、水素および、R15から独立に選択される1個または2個の置換基で場合により置換されているC1-8アルキルからなる群より独立に選択され;
10は、ベンゾまたはフェニル環の任意の結合可能な炭素原子に結合し、存在ごとに、C1-8アルキル、置換C1-8アルキル、ヒドロキシ、C1-8アルコキシ、ハロゲン、シアノ、ハロC1-8アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、C3-7シクロアルキルまたはフェニルからなる群より独立に選択され、該ヘテロシクリル、ヘテロアリール、C3-7シクロアルキルおよびフェニルは、R16から独立に選択される1〜3個の置換基で場合により置換されており;
15は、存在ごとに、ヒドロキシ、C1-4アルコキシ、ハロ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、アミノ、およびアルキルアミノからなる群より独立に選択され;
16は、存在ごとに、C1-4アルキル、ヒドロキシ、C1-4アルコキシ、ハロ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、アミノ、およびアルキルアミノからなる群より独立に選択され;
mは、0、1、2、3、または4であり;
nは、0または1であり;
pは、0、1、2、3、または4である〕
の化合物、あるいはそのプロドラッグ、異性体、異性体の混合物、または薬学的に許容されうる塩
〔ここで、
用語「アリール」とは、C1-8アルキル、ヘテロアルキル、アシル、アシルアミノ、アミノ、アルキルアミノ、C1-8アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、−SO2NR’R”(式中、R’およびR”は、独立に、水素またはC1-8アルキルである)、C1-8アルコキシ、ハロC1-8アルコキシ、C1-8アルコキシカルボニル、カルバモイル、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ、シアノ、メルカプト、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、アシルC1-8アルキル、アシルアミノC1-8アルキル、ヒドロキシC1-8アルキル、C1-8アルコキシC1-8アルキル、ハロC1-8アルコキシC1-8アルキル、シアノC1-8アルキル、アミノC1-8アルキル、アルキルアミノC1-8アルキル、ハロC1-8アルキル、ハロC1-8アルキル(C1-8アルキル)、C1-8アルコキシカルボニルC1-8アルキル、アルキルスルホニルC1-8アルキル、アルキルスルフィニルC1-8アルキル、C1-8アルキルチオC1-8アルキルおよび場合により置換されているフェニルからなる群より選択される1個、2個または3個の置換基で場合により置換されている単環式または二環式の芳香族炭化水素基を意味し;
用語「ヘテロアリール」とは、ヘテロアリール基が二環系である場合、ヘテロアリール基への結合点が少なくとも1個のヘテロ原子を含む芳香環にあるとの理解で、N、OまたはSより選択された1個、2個または3個の環ヘテロ原子を含有し、残りの環原子はCである芳香環を少なくとも1個有する5〜12環原子の単環式基または二環式基を意味し、ヘテロアリール基は、C1-8アルキル、ヘテロアルキル、アシル、アシルアミノ、アミノ、アルキルアミノ、C1-8アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、−SO2NR’R”(式中、R’およびR”は、独立に、水素またはC1-8アルキルである)、C1-8アルコキシ、ハロC1-8アルコキシ、C1-8アルコキシカルボニル、カルバモイル、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ、シアノ、メルカプト、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、アシルC1-8アルキル、アシルアミノC1-8アルキル、ヒドロキシC1-8アルキル、C1-8アルコキシC1-8アルキル、ハロC1-8アルコキシC1-8アルキル、シアノC1-8アルキル、アミノC1-8アルキル、アルキルアミノC1-8アルキル、ハロC1-8アルキル、ハロC1-8アルキル(C1-8アルキル)、C1-8アルコキシカルボニルC1-8アルキル、アルキルスルホニルC1-8アルキル、アルキルスルフィニルC1-8アルキル、C1-8アルキルチオC1-8アルキルおよび場合により置換されているフェニルからなる群より独立に選択される1個、2個、3個または4個の置換基で場合により置換されており;
用語「置換アルキル」とは、アシル、アシルアミノ、ヒドロキシ、C1-8アルコキシ、ハロC1-8アルコキシ、シアノ、アミノ、アルキルアミノ、ハロC1-8アルキル、ハロ、C1-8アルコキシカルボニル、アルキルスルホニル、アルキルスルフィニル、C1-8アルキルチオ、アリール、C3-7シクロアルキル、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルからなる群より選択される1個、2個または3個の置換基を有するアルキル基を意味し;
用語「ヘテロシクリル」とは、1個または2個の環原子が、O、S(O)n(式中、nは0〜2の整数である)およびNRx{ここで、各Rxは、独立に、水素、C1-8アルキル、アシル、アルキルスルホニル、アミノスルホニル、(アルキルアミノ)スルホニル、カルバモイル、(アルキルアミノ)カルボニル、(カルバモイル)C1-8アルキルまたは(アルキルアミノ)カルボニルC1-8アルキルである}より選択されたヘテロ原子であり、残りの環原子が炭素原子である、3〜8個の環原子の飽和または不飽和の非芳香族環式基を意味し、ヘテロシクリル環は、C1-8アルキル、ハロC1-8アルキル、ヘテロアルキル、ハロ、ニトロ、シアノ、シアノC1-8アルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシC1-8アルキル、アミノ、アルキルアミノ、−(X)n−C(=O)R(ここで、XはOまたはNR’であり、nは0または1であり、Rは水素、C1-8アルキル、ハロC1-8アルキル、ヒドロキシ、C1-8アルコキシ、アミノ、またはアルキルアミノである);−C1-8アルキレン−C(=O)R(ここで、Rは水素、C1-8アルキル、ハロC1-8アルキル、ヒドロキシ、C1-8アルコキシ、アミノまたはアルキルアミノである);および−S(O)nd(ここで、nは0〜2の整数であり、Rdは水素、C1-8アルキル、ハロC1-8アルキル、C3-7シクロアルキル、C3-7シクロアルキルC1-8アルキル、アミノ、アルキルアミノ、またはヒドロキシC1-8アルキルであるが、ただし、nが1または2である場合には、Rdは水素ではない)からなる群より、価数が許容するように、独立に選択される1個、2個または3個の置換基で場合により置換されており;
用語「ヘテロアルキル」とは、ヘテロアルキル基の結合点が炭素原子を介しているとの理解で、1個、2個または3個の水素原子が、−ORa、−NRbcおよびS(O)nd(ここで、nは0〜2の整数である)〔ここで、Raは、水素、アシル、C1-8アルキル、C3-7シクロアルキルまたはC3-7シクロアルキルC1-8アルキルであり;RbおよびRcは、互いに独立に、水素、アシル、C1-8アルキル、C3-7シクロアルキルまたはC3-7シクロアルキルC1-8アルキルであり;nが0である場合、Rdは、水素、C1-8アルキル、C3-7シクロアルキルまたはC3-7シクロアルキルC1-8アルキルであり、nが1または2である場合、Rdは、C1-8アルキル、C3-7シクロアルキル、C3-7シクロアルキルC1-8アルキル、アミノ、アシルアミノ、またはアルキルアミノである〕より独立に選択される置換基に置換されている、アルキル基を意味し;
用語「アルキルアミノ」とは、基−NHRまたは−NRR(ここで、Rは、C1-8アルキル、C3-7シクロアルキルまたはC3-7シクロアルキルC1-8アルキルから選択される)を意味し;
用語「アシル」とは、基−C(=O)R(ここで、Rは、水素、C1-8アルキル、C3-7シクロアルキル、C3-7シクロアルキルC1-8アルキル、フェニルまたはフェニルC1-8アルキルである)を意味し;
用語「場合により置換されているフェニル」または「場合により置換されているピリミジニル」とは、C1-8アルキル、ヘテロアルキル、アシル、アシルアミノ、アミノ、アルキルアミノ、C1-8アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、−SO2NR’R”(式中、R’およびR”は、独立に、水素またはC1-8アルキルである)、C1-8アルコキシ、ハロC1-8アルコキシ、C1-8アルコキシカルボニル、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ、シアノ、メルカプト、アシルC1-8アルキル、アシルアミノC1-8アルキル、ヒドロキシC1-8アルキル、C1-8アルコキシC1-8アルキル、ハロC1-8アルコキシC1-8アルキル、シアノC1-8アルキル、アミノC1-8アルキル、C1-8アルキルアミノC1-8アルキル、ハロC1-8アルキル、ハロC1-8アルキル(C1-8アルキル)、C1-8アルコキシカルボニルC1-8アルキル、アルキルスルホニルC1-8アルキル、アルキルスルフィニルC1-8アルキル、およびC1-8アルキルチオC1-8アルキルからなる群より選択される1個、2個または3個の置換基で場合により置換されているフェニル基またはピリミジニル基を意味し;
用語「アルキルスルホニル」とは、基−S(O)2R(ここで、Rは、C1-8アルキル、C3-7シクロアルキルまたはC3-7シクロアルキルC1-8アルキル基である)を意味し;
用語「アルキルスルフィニル」とは、基−S(O)R(ここで、Rは、C1-8アルキル、C3-7シクロアルキルまたはC3-7シクロアルキルC1-8アルキル基である)を意味し;
用語「カルバモイル」とは、基−C(=O)NRR’(ここで、RおよびR’は、水素、C1-8アルキル、置換C1-8アルキル、C3-7シクロアルキルまたはヘテロシクリルより独立に選択される)を意味する〕。
【請求項2】
cが、(S)、(T)、(V’)、および(W’):
【化3】


〔式中、R’およびR”は、存在ごとに、互いに独立に、水素、C1-8アルキル、ヒドロキシ、C1-8アルコキシ、ハロゲン、シアノ、ハロC1-8アルコキシ、アミノまたはアルキルアミノであり、aは、2または3の整数である〕
からなる群より選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
cが、(T)であり、R4が、メチル、エチル、1−メチルエチル、イソプロピル、1−ヒドロキシエチルまたは2−ヒドロキシエチルである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
Arが、場合により置換されているフェニルまたは場合により置換されているピリミジニルであり;
Qが、CH2であり;
2が、水素であり;
3およびR4が、互いに独立に、水素、C1-8アルキル、ヒドロキシC1-8アルキル、またはC1-8アルコキシC1-8アルキルであり;
9が、メチル、エチル、ヒドロキシ、メトキシ、オキソ(=O)、ハロ、およびシアノから選択され;
9aおよびR9bが、水素、メチルおよびエチルより選択され;
nが、1であり;
pが、0または1である、
請求項1および2のいずれか一項記載の化合物。
【請求項5】
Xが、Nであり、Yが、CR9bである、請求項1〜4のいずれか一項記載の化合物。
【請求項6】
XおよびYの双方が、Nである、請求項1〜4のいずれか一項記載の化合物。
【請求項7】
Xが、N+9a-であり、Yが、CR9bである、請求項1〜4のいずれか一項記載の化合物。
【請求項8】
cが、(IIIa):
【化4】


(式中、R10は、C1-4アルキル、ハロゲン、シアノ、およびC1-4アルコキシより選択され;mは、0、1、または2である)
である、請求項1および2のいずれか一項記載の化合物。
【請求項9】
cが、(IIIb):
【化5】


(式中、R10は、C1-4アルキル、ハロゲン、シアノ、およびC1-4アルコキシより選択され;mは、0、1、または2である)
である、請求項1および2のいずれか一項記載の化合物。
【請求項10】
Arが、ハロ、C1-8アルキル、ヘテロアルキル、C1-8アルコキシ、ニトロ、トリフルオロメチル、C1-8アルキルスルホニル、および場合により置換されているフェニルからなる群より選択される1個、2個または3個の置換基で場合により置換されているフェニルまたはピリミジニルであり;
Qが、CH2であり;
2が、水素であり;
3が、水素であり;
4が、メチル、エチル、1−メチルエチル、イソプロピル、1−ヒドロキシエチルまたは2−ヒドロキシエチルであり;
9が、C1-4アルキル、オキソ(=O)、ハロゲン、およびヒドロキシから選択される、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
cが、(IIIc):
【化6】


(式中、R10は、C1-4アルキル、ハロゲン、シアノ、およびC1-4アルコキシより選択され;mは、0、1、または2である)
である、請求項1および2のいずれか一項記載の化合物。
【請求項12】
2およびR3が、水素であり;
4が、メチル、エチル、1−メチルエチル、イソプロピル、1−ヒドロキシエチルまたは2−ヒドロキシエチルである、
請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
cが、(IIId):
【化7】


(式中、R10は、C1-4アルキル、ハロゲン、シアノ、およびC1-4アルコキシより選択され;mは、0、1、または2である)
である、請求項1および2のいずれか一項記載の化合物。
【請求項14】
cが、(IIIe):
【化8】


(式中、R10は、C1-4アルキル、ハロゲン、シアノ、およびC1-4アルコキシより選択され;mは、0、1、または2である)
である、請求項1および2のいずれか一項記載の化合物。
【請求項15】
cが、(IIIf):
【化9】


(式中、R10は、C1-4アルキル、ハロゲン、シアノ、およびC1-4アルコキシより選択され;mは、0、1、または2である)
である、請求項1および2のいずれか一項記載の化合物。
【請求項16】
式(Ia):
【化10】


〔式中:
Xは、NまたはN+9a-であり;Yは、CR9aまたはNであり;
Zは、薬学的に許容されうるアニオンであり;
2およびR3は、水素であり;
9aは、水素またはC1-4アルキルであり;
21、R22、およびR23は、フェニル環の任意の結合可能な炭素原子に結合しており、水素、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、ハロゲン、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C1-4アルキルスルホニル、アミノ、およびアルキルアミノより独立に選択され;
nは、1であり;
c、Q、P、R4およびR9は、請求項1または2で定義されたとおりである〕
を有する、請求項1および2のいずれか一項記載の化合物。
【請求項17】
Qが、CH2である、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
21、R22、およびR23、ならびにそれらが結合しているフェニル環が、4−クロロフェニルまたは3,4−ジクロロフェニルを形成し;
4が、メチル、エチル、1−メチルエチル、イソプロピル、1−ヒドロキシエチルまたは2−ヒドロキシエチルであり;
pが、0または1である、
請求項16および17のいずれか一項記載の化合物。
【請求項19】
cが、
【化11】


(式中、R10は、C1-4アルキル、ハロゲン、シアノ、およびC1-4アルコキシより選択され;mは、0、1、または2である)
からなる群より選択される、請求項16、17および18のいずれか一項記載の化合物。
【請求項20】
治療有効量の請求項1〜19のいずれか一項記載の化合物またはその塩と薬学的に許容しうる賦形剤とを含有する医薬組成物。
【請求項21】
医学的な治療または診断において使用するための、請求項1〜19のいずれか一項記載の化合物。
【請求項22】
CCR−3受容体アンタゴニストにより処置可能な疾患の処置のための、請求項1〜19のいずれか一項記載の化合物の1つ以上またはその塩を含む医薬の製造のための、請求項1〜19のいずれか一項記載の式(I)の化合物またはその塩の使用。
【請求項23】
疾患が喘息である、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
特に新規な化合物、中間体、医薬、使用および方法に関して明細書に記載の発明。

【公表番号】特表2007−509095(P2007−509095A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536005(P2006−536005)
【出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【国際出願番号】PCT/EP2004/011545
【国際公開番号】WO2005/040129
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】