説明

CHO細胞由来の糖タンパク質産物におけるガラクトース−α−1,3−ガラクトース含有N−グリカン

本発明は、哺乳類細胞発現系から発現されたタンパク質において特定のグリカン構造を検出するための方法および材料に関する。本発明は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞集団を、前記細胞によって産生される末端ガラクトース−α−1,3−ガラクトース残基を含有するグリカンを測定することで、評価するための方法であって、CHO細胞が、α−ガラクトシルトランスフェラーゼコード配列を発現するよう遺伝子操作されたものではない、方法を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳類細胞発現系から発現されたタンパク質において特定のグリカン構造を検出するための方法および材料に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの治療用組換え生物医薬品が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞といった哺乳類の細胞培養物で生成されている。ヒトが一般に認識して許容するグリコシル化パターンを持つ糖タンパク質が哺乳類の細胞培養物によって産生されることが主な理由で、組換え糖タンパク質の生成には主に酵母や原核生物系などの他の発現系より哺乳類の細胞培養物のほうが好ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
末端α−結合型ガラクトース(gal−α−1,3−gal)結合の潜在的な有害作用が周知である Chung et al., N Engl J Med, 358:11 (2008)。このような末端α−gal結合は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞によって産生される組換え糖タンパク質には存在しないことがすでに報告されている。たとえば、NSOすなわちマウス骨髄腫細胞系で産生される抗−CDw52抗体であるCampathは、正常なヒトIgGと一致する3つの糖型に主に含まれるCHO細胞から産生される非還元末端α−結合型ガラクトース残基Campathを有する潜在的に免疫原性の糖型を含む。Sheeley et al., Analytical Biochemistry 247:102〜110 (1997)。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、ひとつには、組換えCHO細胞から産生される糖タンパク質が、当該糖タンパク質の治療目的での使用に悪影響をおよぼし得る末端ガラクトース−α−1,3−ガラクトース結合を有するグリカン構造を含むという発見に立脚するものである。たとえば、末端α−gal結合を有する糖タンパク質を治療目的でヒトに投与すると、以後の投与の効果が落ちたり、患者に有害な過敏性反応が引き起こされたりすることすらある形で、患者で組換え糖タンパク質に対するモノクローナル抗体が形成される場合がある。
【0005】
こうした過去の教示内容に反して、本出願人らは、驚くべきことに、CHO細胞培養物で産生される組換え糖タンパク質の重要な画分が、末端gal−α−1,3−gal結合の存在を呈することがあり、患者に投与されるタンパク質およびペプチジル産物に対する有害反応の可能性を示していることを見出した。
【0006】
本発明は、CHO細胞からの組換え糖タンパク質および当該糖タンパク質を含有する組成物の生成および分析に有用な化合物および方法であって、糖タンパク質が、調節された(低減されるか、場合によっては増加するなど)レベルの末端gal−α−1,3−gal結合を含む、化合物および方法を提供するものである。
【0007】
よって、第1の態様では、本発明は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞集団を評価するための方法を含む。特定の実施形態では、この試験方法は、
(a)上記の集団から1つ以上のCHO細胞を提供し、
(b)前記細胞によって産生される末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトース残基を含有するグリカンを測定することを含み、CHO細胞は、α−ガラクトシルトランスフェラーゼコード配列を発現するよう遺伝子操作されたものではない。
【0008】
測定するステップが、以下のいずれかを含むものであってもよい。(a)細胞によって産生される糖タンパク質を単離し、この糖タンパク質上で末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトース残基を含有するグリカンを測定する、(b)細胞によって産生される特定の糖タンパク質組成物を単離し、単離された糖タンパク質組成物上で末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトース残基を含有するグリカンを測定する、(c)細胞によって産生される糖タンパク質からグリカンを単離し、単離されたグリカンにて末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトース残基を含有するグリカンを測定する、(d)糖タンパク質または1つ以上のCHO細胞上に存在するグリカンから単糖を切断し、切断された単糖から末端放出α−ガラクトース残基を検出する、(e)細胞によって産生される糖タンパク質から少なくとも1つのペプチドを提供し、この少なくとも1つのペプチド上で末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトース残基を含有するグリカンを測定する、(f)1つ以上のCHO細胞の細胞表面上のグリカンを測定することによって、糖タンパク質上で末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトース残基を含有するグリカンの相対レベルを測定する。末端gal−α−1,3−gal結合の測定に用いる技術は、以下の方法およびこれらの方法の任意の組み合わせのうち1つ以上を含み得る:クロマトグラフによる方法、質量分析(MS)法、電気泳動法(細管式電気泳動など)、核磁気共鳴(NMR)法、単糖分析、蛍光法、UV−VIS吸光度、酵素による方法、検出分子(抗体またはレクチンなど)の使用。
【0009】
ステップ2での測定用のグリカンの起源は、CHO細胞の集団;CHO細胞の表面で発現される糖タンパク質またはグリカン;CHO細胞の集団の細胞表面に存在するタンパク質の切断由来のペプチド;CHO細胞の集団の表面に存在するグリカン;CHO細胞の集団によって分泌または発現される糖タンパク質、CHO細胞またはCHO細胞の集団から発現される単離された糖タンパク質発現産物;CHO細胞またはCHO細胞の集団から発現される単離されたタンパク質発現産物由来のペプチド;またはCHO細胞またはCHO細胞の集団から直接的に発現される単離されたタンパク質発現産物由来のグリカンからなる群から選択されるものであってもよい。いくつかの実施形態では、この方法が、グリカンまたは糖ペプチドの起源を、α−ガラクトシダーゼ酵素を含む1種類以上のエキソグリコシダーゼで処理した後、グリカン集団を分析することを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、使用する方法が、末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトース残基を含有するグリカンの定量的な方策を提供するものである。いくつかの実施形態では、使用する方法が、定性的な方策を提供するものである。
【0011】
いくつかの実施形態では、この方法は、CHO細胞の培養物から糖タンパク質調製物を調製し、1つ以上のグリカンを糖タンパク質調製物(α−1,3−ガラクトシダーゼ;α−1,4−ガラクトシダーゼ;またはα−1,6−ガラクトシダーゼなどの1つ以上のグリコシダーゼを有するなど)から切断し、末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトース残基を含有するグリカンを測定することも含む。
【0012】
特定の実施形態では、生成ラインのCHO細胞培養物から試料を得ることで、上記の方法を治療用糖タンパク質の生成実施時に実施して、たとえば生成時にグリカン構造を監視する。特定の実施形態では、CHO細胞の培養時間のあいだに、測定するステップを少なくとも1回、2回、3回またはそれより多く繰り返すなど、測定するステップを時間の経過とともに少なくとも1回繰り返す。他の実施形態では、たとえば糖タンパク質産物の品質または放出試験の一部として、CHO細胞から産生される糖タンパク質産物で上記の方法を実施する。
【0013】
いくつかの実施形態では、測定するステップが、CHO細胞の第1の集団から産生される第1の糖タンパク質調製物における末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトース残基を含有するグリカンのレベルを、CHO細胞の第2の集団から産生される第2の糖タンパク質調製物における末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトース残基を含有するグリカンのレベルと比較することを含む。このようないくつかの実施形態では、異なる培養条件下で培養されたCHO細胞の集団からの糖タンパク質調製物のグリカンを判断し、比較する。
【0014】
いくつかの実施形態では、この方法が、末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトース残基を含有するグリカンのレベルを、基準レベル(対照レベルまたは製品仕様における範囲または値など)と比較するステップをさらに含むものであってもよい。
【0015】
この方法の特定の実施形態では、測定するステップが、末端α−ガラクトシル残基の有無を検出できる検出分子の使用を含む。特定の実施形態では、検出分子が、末端α−ガラクトシルエピトープに結合できる抗体を含む。本発明の他の実施形態では、検出分子がレクチンを含む。いくつかの実施形態では、検出分子が、蛍光部分または放射性同位元素部分を含むものであってもよい。
【0016】
CHO細胞集団は、クローン細胞集団を含むものであってもよい。CHO細胞集団は、治療用糖タンパク質を製造するためのバイオリアクタ内で、培養物中など、あるいは細胞培養物由来の試料中にあってもよい。特定の実施形態では、CHO細胞集団が、治療用糖タンパク質をコードする少なくとも1つのベクターで形質転換されることになる。治療用糖タンパク質は、ヒト由来のものであってもよいし、非ヒト由来または合成由来のものであってもよい。治療用糖タンパク質は、ヒトの治療用であってもよいし、獣医学的適応症の治療用であってもよい。
【0017】
いくつかの実施形態では、この方法は、動物モデルなどにおいて、in vitroまたはin vivoなどで、糖タンパク質の免疫原性潜在力の存在またはレベルを評価するなど、細胞によって生成される糖タンパク質の生物活性を評価するステップをさらに含む。
【0018】
第2の態様では、本発明は、糖タンパク質上にて末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトース残基を含有するグリカンを産生する機能について、1つ以上のチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞をスクリーニングするための方法であって、
(a)複数のCHO細胞集団であって、複数のうちいずれもグリカン上で末端α−ガラクトシル残基を発現するよう遺伝子操作されていない(α−ガラクトシルトランスフェラーゼコード配列を発現するよう遺伝子操作されていないなど)細胞集団を提供し、
(b)複数のCHO細胞の各々を、糖タンパク質発現産物の発現に適した条件下で培養し、
(c)複数のCHO細胞各々によって産生される末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトース残基を含有するグリカンを測定し、
(d)選択されたCHO細胞調製物によって産生される末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトース残基の標的レベルの存在に基づいて、複数のCHO細胞調製物のうちの1つ以上を選択することを含む、方法を含む。
【0019】
末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトース残基を含有するグリカンを、CHO細胞調製物によって産生された糖タンパク質から、CHO細胞調製物の単離された糖タンパク質発現産物から、CHO細胞調製物の糖タンパク質発現産物から得られるペプチドから、CHO細胞調製物の細胞表面グリカンから、あるいはCHO細胞調製物またはその糖タンパク質発現産物から得られるグリカン調製物から得て、測定することができる。特定の実施形態では、スクリーニング方法が、糖タンパク質発現産物を細胞培養物から単離し、ステップ(c)で細胞によって産生される糖タンパク質の末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトース残基を測定するステップをさらに含む。特定の実施形態では、細胞スクリーニング方法が、糖タンパク質発現産物上に存在するα−ガラクトシル残基の量を定量化するステップをさらに含む。特定の実施形態では、細胞スクリーニング方法のステップ(b)を、バイオリアクタ内で実施する。
【0020】
複数のCHO細胞集団は各々、治療用糖タンパク質の製造トレインにおける細胞培養物からの異なるCHO株集団、異なるクローン細胞集団または異なる試料(経時的に得られた試料など)を含むものであってもよい。特定の実施形態では、CHO細胞集団が、ヒト治療用糖タンパク質などの治療用糖タンパク質をコードする少なくとも1種のベクターで形質転換されることになる。細胞スクリーニング方法の特定の実施形態では、糖タンパク質発現産物が、CHO細胞から発現される分泌糖タンパク質である。
【0021】
スクリーニング方法の測定するステップは、糖タンパク質上の末端α−ガラクトシル残基を同定および/または定量化するために本明細書に開示のどの技術を含むものであってもよい。
【0022】
第3の態様では、本発明は、CHO細胞宿主で産生される糖タンパク質組成物を評価するための方法を含む。この方法は、糖タンパク質組成物中に存在する末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトースの量を測定することを含み、この糖タンパク質組成物は、CHO宿主細胞で産生されたものであり、CHO宿主細胞は、α−ガラクトシルトランスフェラーゼコード配列を発現するよう遺伝子操作されたものではなかった。
【0023】
いくつかの実施形態では、この方法は、糖タンパク質組成物中に存在する末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトースのレベルを、印刷またはコンピュータ読み取り可能な媒体に記録することを含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、この方法は、糖タンパク質組成物中に存在する末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトースの測定レベルを、対照または基準規格などの基準レベルと比較することも含む。基準レベルは、規格(FDAラベルまたは医師による添付物など)であってもよいし、糖タンパク質組成物を含有する製剤調製物の品質基準であっても構わない。
【0025】
いくつかの実施形態では、基準レベルまたは品質基準は、4.5%、4%、3.5%、3%、2.5%、2%、1.5%、1%、0.5%、0.25%、0.2%、0.1%またはそれ未満など、糖タンパク質組成物中に存在する末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトースが5%以下である。糖タンパク質組成物中に存在するガラクトース−α−1−3−ガラクトースのレベルは、糖タンパク質調製物などの試料中のグリカンの総量に対する、ガラクトース−α−1−3−ガラクトースを含有するグリカンのレベルとして測定可能である。
【0026】
一実施形態では、末端gal−α−1,3−gal結合の測定に用いられる技術が、クロマトグラフによる方法を含む。
【0027】
一実施形態では、末端gal−α−1,3−gal結合の測定に用いられる技術が、質量分析(MS)法を含む。
【0028】
一実施形態では、末端gal−α−1,3−gal結合の測定に用いられる技術が、電気泳動法(細管式電気泳動など)を含む。
【0029】
一実施形態では、末端gal−α−1,3−gal結合の測定に用いられる技術が、核磁気共鳴(NMR)法を含む。
【0030】
一実施形態では、末端gal−α−1,3−gal結合の測定に用いられる技術が、単糖分析を含む。
【0031】
一実施形態では、末端gal−α−1,3−gal結合の測定に用いられる技術が、蛍光法を含む。
【0032】
一実施形態では、末端gal−α−1,3−gal結合の測定に用いられる技術が、UV−VIS吸光度を含む。
【0033】
一実施形態では、末端gal−α−1,3−gal結合の測定に用いられる技術が、酵素による方法を含む。
【0034】
一実施形態では、末端gal−α−1,3−gal結合の測定に用いられる技術が、および検出分子(抗体またはレクチンなど)の使用を含む。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】N−グリカン構造に共通するコア五糖の図である。
【図2】末端gal−α−1,3−gal結合を有する非還元末端N−グリカン構造の図である。
【図3】ガラクトース−α−1−3結合型ガラクトース含有構造に対応し得る組成HexNAcHexFucのグリカン種の検出を示している、Abatacept由来のグリカンの画分の蛍光クロマトグラムである。
【図4】組成HexNAcHexFucのAbatacept由来のグリカン種のMSスペクトルを示す。このスペクトルは、非還元末端ガラクトース−α1−3−ガラクトースを含有するグリカン構造と相関している。
【図5】α−ガラクトシダーゼでの処理前後のAbataceptおよび対照タンパク質(同じく組成HexNAcHexFucのグリカンを含有する)由来のグリカン画分の蛍光クロマトグラムである。
【図6】Abatecept由来のグリカン画分をαガラクトシダーゼで処理して生成した組成HexNAcHexFucの種のMSスペクトルである。
【図7】異なるエキソグリコシダーゼで処理したAbatacept由来のグリカン画分のMALDI−MSスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
定義
以下に明示的に定義しないかぎり、本明細書で使用する用語はいずれも、当業者であれば理解できるであろう通常の意味で用いられる。
【0037】
およそ、約、だいたい:本明細書で使用する場合、1以上の目的の値に適用される「およそ」、「約」または「だいたい」という表現は、明記された参照値に近い値を示す。特定の実施形態では、「およそ」、「約」または「だいたい」という表現は、明記された参照値の25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%またはそれ未満以内に入る値の範囲を示す。
【0038】
検出、検出する:本明細書で使用する場合、「検出する」、「検出」、「検出手段」という表現は、末端α−1,3−ガラクトシル残基などの特定の化学部分が、化合物、組成物、細胞または細胞集団内またはその表面に存在するか否かの判断を示すものとして同義に用いられる。検出手段は、選択可能なマーカーあるいは、蛍光または放射性部分などの同定可能な特徴を伴うものであってもよく、試薬、化合物、細胞または細胞集団の標識を伴うものであってもよい。検出は、質量分析または関連の方法、電気泳動法、核磁気共鳴、クロマトグラフによる方法あるいは上記の組み合わせなどの技術を使用して、化合物、組成物、細胞または細胞集団を分析し、化合物、組成物、細胞または細胞集団内またはその表面に化学部分が存在するか否かを判断することも示し得る。また、検出は、検出対象となる化学部分の絶対レベルまたは関連レベルの定量化を伴うものであってもよい。
【0039】
グリカン:当該技術分野において周知のように、かつ本明細書で使用する場合、「グリカン」とは糖である。グリカンは、糖残基のモノマーまたはポリマーであってもよいが、一般に少なくとも3つの糖を含み得るものであり、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。グリカンには、天然の糖残基(ブドウ糖、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルノイラミン酸、ガラクトース、マンノース、フコース、ヘキソース、アラビノース、リボース、キシロースなど)および/または修飾糖(2’−フルオロリボース、2’−デオキシリボース、ホスホマンノース、6’スルホN−アセチルグルコサミンなど)を含むこともある。「グリカン」という用語は、糖残基のホモポリマーおよびヘテロポリマーを含む。「グリカン」という用語はまた、(糖タンパク質、糖脂質、プロテオグリカンなどの)糖タンパク質のグリカン成分も包含する。この用語はまた、糖タンパク質から切断されたか、そうでなければ放出されたグリカンをはじめとする、遊離グリカンも包含する。
【0040】
グリカン調製物:「グリカン調製物」という用語は、本明細書で使用する場合、特定の製造方法で得られる一組のグリカンを示す。いくつかの実施形態では、グリカン調製物は、糖タンパク質調製物(下記の糖タンパク質調製物の定義を参照のこと)から得られる一組のグリカンを示す。いくつかの実施形態では、グリカン調製物が糖タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、グリカン調製物が放出されたグリカンを含む。
【0041】
糖タンパク質:本明細書で使用する場合、「糖タンパク質」という用語は、1つ以上の糖部分(すなわちグリカン)に共有結合されたペプチド骨格を有するタンパク質(本明細書で定義されるもの)を示す。当業者であれば理解できるように、ペプチド骨格は一般に、アミノ酸残基の直鎖を含む。糖部分は、単糖、二糖、オリゴ糖および/または多糖の形であってもよい。糖部分は、糖残基の単一の非分岐鎖を含むものであってもよいし、1つ以上の分岐鎖を含むものであってもよい。特定の実施形態では、糖部分は、硫酸基および/またはリン酸基を含むものであってもよい。上記の他にまたは上記に加えて、糖部分は、アセチル、グリコリル、プロピルまたは他のアルキル修飾を含むものであってもよい。特定の実施形態では、糖タンパク質がO−結合型糖部分を有する。特定の実施形態では、糖タンパク質がN−結合型糖部分を有する。
【0042】
糖タンパク質調製物:「糖タンパク質調製物」とは、この用語を本明細書で使用する場合、各々が少なくとも1つのグリコシル化部と共有結合した少なくとも1つのグリカンと特定のアミノ酸配列(このアミノ酸配列は少なくとも1つのグリコシル化部位を含む)を有するポリペプチドを含む個々の糖タンパク質分子の組を示す。糖タンパク質調製物中の特定の糖タンパク質の個々の分子は一般に、同じアミノ酸配列を有するが、少なくとも1つのグリコシル化部位の占有率および/または少なくとも1つのグリコシル化部位に結合されたグリカンのアイデンティティが異なっていてもよい。すなわち、糖タンパク質調製物は、特定の糖タンパク質の糖型を1つだけ含むものであってもよいが、より一般には複数の糖型を含む。同じ糖タンパク質の異なる調製物同士で、存在する糖型のアイデンティティが異なる(1つの調製物に存在する糖型が他の糖型には存在しなくてもよい)および/または異なる糖型の相対量が異なっていてもよい。
【0043】
グリコシダーゼ:「グリコシダーゼ」という用語は、本明細書で使用する場合、グリカンにおける連続した糖と糖との間または糖と骨格部分との間(糖タンパク質のペプチド骨格と糖との間など)の共有結合を切断する作用剤を示す。いくつかの実施形態では、グリコシダーゼが酵素である。特定の実施形態では、グリコシダーゼが、1つ以上のポリペプチド鎖を含むタンパク質(タンパク質酵素など)である。特定の実施形態では、グリコシダーゼがヒドラジンなどの化学的な切断剤である。
【0044】
N−グリカン:「N−グリカン」という用語は、本明細書で使用する場合、糖タンパク質から放出されたが、それまでは窒素結合によって糖タンパク質に結合されていた糖のポリマーを示す(下記のN−結合型グリカンの定義を参照のこと)。
【0045】
N−結合型グリカン:N−結合型グリカンとは、窒素結合によって糖タンパク質に結合されたグリカンである。種々雑多なN−結合型グリカンが存在するが、これらは一般に共通の五糖コア(Man)(GlcNAc)(GlcNAc)をベースにしている。
【0046】
O−グリカン:「O−グリカン」という用語は、本明細書で使用する場合、複合糖質から放出されたが、それまでは酸素結合によって複合糖質に結合されていた糖のポリマーを示す(下記のO−結合型グリカンの定義を参照のこと)。
【0047】
O−結合型グリカン:O−結合型グリカンとは、酸素結合によって複合糖質に結合されたグリカンである。O−結合型グリカンは一般に、L&#8212:セリン(Ser)またはL−トレオニン(Tlir)の水酸基に対するN−アセチル−D−ガラクトサミン(GalNAc)またはN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)を介して糖タンパク質に結合されている。O−結合型グリカンの中にはアセチル化および硫酸化などの修飾を有するものもある。
【0048】
調節する:「調節する」という表現は、本明細書で使用する場合、所定の制限内で、糖タンパク質組成物中に存在するα−ガラクトース残基のレベルなどのパラメータの値を制御する機能または動作主を示す。よって、いくつかの実施形態では、α−ガラクトース残基のレベルが所定の制限内におさまるようにこれを調節すればよい。いくつかの実施形態では、糖タンパク質組成物中に存在する全N−グリカンの5.0%、1.0%、0.5%、0.1%、0.05%または0.01%を超えないようにα−ガラクトース残基のレベルを調節すればよい。他の実施形態では、α−ガラクトース残基のレベルが、所定のレベルまたは所望のレベルの10.0%、5.0%、1.0%、0.5%または0.1%を超えて変わらないように、これを調節してもよい。
【0049】
プロテアーゼ:「プロテアーゼ」という用語は、本明細書で使用する場合、ポリペプチド鎖における連続したアミノ酸の間にあるペプチド結合を切断する作用剤を示す。いくつかの実施形態では、プロテアーゼが酵素(すなわちタンパク質分解酵素)である。特定の実施形態では、プロテアーゼが、1つ以上のポリペプチド鎖を含むタンパク質(タンパク質酵素など)である。特定の実施形態では、プロテアーゼが化学的な切断剤である。
【0050】
提供する:「提供する」という表現は、本明細書で使用する場合、動作主が、CHO細胞、CHO細胞調製物または糖タンパク質調製物などの対象品目を、何らかの起源から得ることを示し、動作主自身の製造または動作主が他の第三者からその品目を受け取って入手することを含むが、これに限定されるものではない。たとえば、CHO細胞調製物は、機械、人間または実体によって製造または受け取られると、提供されることになる。いくつかの実施形態では、CHO細胞調製物を機械によって受け取った上で、この機械で、糖タンパク質調製物の試験、加工または精製の1つ以上を実施してもよい。いくつかの実施形態では、CHO細胞調製物を人間が受け取ってもよい。いくつかの実施形態では、CHO細胞調製物を外部の実体から受け取ってもよい。いくつかの実施形態では、CHO細胞調製物を、別の人間または事業のために特徴付けのサービスを実施している人間または事業が受け取ってもよい。
【0051】
末端α−1,3−ガラクトース残基;末端gal−α−1,3−gal結合:「末端α−1,3−ガラクトース残基」、「末端gal−α−1,3−gal結合」および「非還元末端α−1,3結合型ガラクトース残基」という用語は、本明細書で使用する場合、図2に示すグリカン構造を同義に説明するものであり、図中、ペプチドまたはタンパク質に結合できるグリカン構造が、それぞれガラクトース分子の1および3残基で示される残基で互いに結合された2つのガラクトース残基で終端する。
【0052】
(特定の実施形態の詳細な説明)
組換え糖タンパク質の合成に用いる宿主細胞は、複雑なグリコシル化を生成するための細胞内機構を有するが、これらの細胞は糖タンパク質が天然に発現される細胞と常に同じ酵素の相補体を持つわけではない。製造条件で細胞系や変種をクローン選択することで、培養細胞で発現される糖タンパク質における異種性が生じることもある。糖タンパク質活性におけるグリコシル化の機能的な役割には、細胞系で産生される治療用産物の慎重な特徴付けが必要である。
【0053】
末端gal−α−1,3−gal結合は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞によって産生される組換え糖タンパク質には存在しないことがすでに報告されている。Chung et al., N Engl J Med, 358:11 (2008)。本開示は、少なくともある程度は、CHO細胞によって産生される糖タンパク質上に末端α−1,3−ガラクトース残基を見いだすことが可能であるという想定外の所見に基づくものであり、そのことは、CHO細胞を用いて治療用産物を生成する際に、このグリカン構造の態様を同定、監視、制御する上で重要である。
【0054】
本開示は、CHO細胞によって産生される糖タンパク質上のグリカンの組成物を分析する方法を提供するものである。本開示によれば、CHO細胞において産生される糖タンパク質調製物由来のグリカンを分析し、末端α−1,3−ガラクトース残基を含むか否か判断することが可能である。本開示は、このような修飾を検出する方法ならびに、このような修飾を含むまたは欠いている糖タンパク質を生成する方法を提供するものである。
【0055】
グリカン調製物
本開示は、CHO細胞によって産生される糖タンパク質上の末端α−ガラクトシル残基を評価するといった、CHO細胞によって産生される末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトース残基を含有するグリカンを評価することなど、グリカン調製物中の個々のグリカンの構造および/または組成を分析する方法を提供するものである。グリカン調製物は、従来技術において利用できる任意の方法で、細胞調製物から得られるものであってもよいし、糖タンパク質から得られるものであってもよい。通常、グリカン調製物を得ることは、(1)細胞または糖タンパク質調製物を得るステップと、(2)場合によって、細胞または糖タンパク質調製物からグリカンを放出するステップと、を含む。いくつかの実施形態では、グリカン調製物を得ることが、場合によって、グリカン調製物を検出可能な標識で標識することを含む。
【0056】
糖タンパク質調製物
糖タンパク質の組換え生成用の方法については説明がなされている。培養細胞によって分泌される糖タンパク質は、陰イオン交換クロマトグラフィ、逆相クロマトグラフィ、ゲル濾過、イムノアフィニティクロマトグラフィ、これらの組み合わせなどの利用可能な任意の手段で単離・精製可能なものである。
【0057】
N−結合型グリカン調製物
いくつかの実施形態では、糖タンパク質集団を提供し、集団中の糖タンパク質からN−結合型グリカンを除去することでN−グリカン調製物が得られる。
【0058】
いくつかの実施形態では、消化によってN−結合型グリカンを糖タンパク質(糖タンパク質など)から除去する。通常、本開示に基づいて用いられるグリカナーゼが、コアのGlcNAc−Asn、GlcNAc−GlcNAcまたはMan−GlcNAc残基の間を切断する。糖タンパク質からN−結合型グリカンを除去するのに使用可能な酵素の例として、N−グリカナーゼFおよび/またはN−グリカナーゼ−A、O−グリカナーゼおよび/またはEndo Hがあげられるが、これに限定されるものではない。
【0059】
いくつかの実施形態では、化学的切断によってN−結合型グリカンを糖タンパク質から除去する。いくつか例をあげると、ヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウム、および/またはトリフルオロメタンスルホン酸(TFMS)を用いてグリカンを糖タンパク質から除去することができる。
【0060】
O−結合型グリカン調製物
いくつかの実施形態では、糖タンパク質(糖タンパク質など)集団を提供し、集団においてO−結合型グリカンを糖タンパク質から除去することで、O−結合型グリカン調製物を得る。
【0061】
いくつかの実施形態では、b−脱離によってO−結合型グリカンを糖タンパク質(糖タンパク質など)から除去する。いくつかの実施形態では、還元的b−脱離によって、O−結合型グリカンを糖タンパク質(糖タンパク質など)から除去する。いくつかの実施形態では、非還元的b−脱離によって、O−グリカンを糖タンパク質(糖タンパク質など)から除去する。
【0062】
いくつかの実施形態では、テトラヒドロホウ酸アルカリを含む溶液中で調製物をインキュベートすることで、O−結合型グリカンを糖タンパク質(糖タンパク質など)調製物から除去する。いくつかの実施形態では、重水素標識を取り込んでO−結合型グリカンの検出を容易にするなど、テトラジュウテリウムホウ酸塩(tetradeuterioborate)を使用する。さまざまな例示的な方法では、糖タンパク質調製物を、0.8〜1.0MのNaBHと0.05〜0.1MのNaOHとを含有する溶液中で、42〜45℃で2〜24時間インキュベートする。O−結合型グリカンを除去するための反応を終端させるには、酸(1.0MのHClなど)を加えればよい。
【0063】
いくつかの実施形態では、NaOHを含む溶液中で調製物をインキュベートすることで、O−結合型グリカンを糖タンパク質調製物から除去する。さまざまな例示的な方法では、糖タンパク質を、50〜200mMのNaOHを含有する溶液中で、27〜45℃で2〜48時間インキュベートする。反応を終端させるには、酸を加えればよい。
【0064】
いくつかの実施形態では、NHOHを含む溶液中で調製物をインキュベートすることで、O−結合型グリカンを糖タンパク質調製物から除去する。さまざまな例示的な方法では、糖タンパク質を、25〜28%のNHOHを含有する溶液中で、45〜60℃で2〜40時間インキュベートする。反応を終端させるには、真空下でNHOHを除去すればよい。いくつかの実施形態では、溶液が、炭酸アンモニウム(飽和濃度でなど)を含む。いくつかの実施形態では、NHOH処理調製物を酸(ホウ酸など)で処理する。
【0065】
いくつかの実施形態では、エチルアミン(約70%のエチルアミンなど)またはメチルアミン(約40%のメチルアミンなど)を含む水溶液中で、約4〜24時間調製物をインキュベートすることで、O−結合型グリカンを糖タンパク質調製物から除去する。
【0066】
いくつかの実施形態では、N−結合型グリカンを除去した糖タンパク質集団から、O−結合型グリカン調製物を得る。
【0067】
グリカンの標識
いくつかの実施形態では、糖タンパク質からの放出の前または後にグリカンを標識と会合させることが可能である。N−結合型グリカンまたはO−結合型グリカン(糖タンパク質集団から除去されたN−グリカンなど)を1つ以上の検出可能な標識と会合させることが可能である。検出可能な標識は一般に、N−グリカンの還元末端に会合する。いくつかの実施形態では、検出可能な標識が蛍光部分である。本開示に基づいて使用可能なフルオロフォアの例として、2−アミノ安息香酸(2AA)、2−アミノベンズアミド(2AB)および/または2−アミノプリン(2AP)があげられるが、これに限定されるものではない。通常、本開示に基づいて用いられるフルオロフォアには、グリカンを損傷および/または破壊しない条件下でオリゴ糖および/または単糖の還元末端との反応性があるという特徴がある。いくつかの実施形態では、蛍光部分は、還元末端に直接的に結合される。たとえば、この直接結合を還元的アミノ化による直接的な共役によって達成可能である。いくつかの実施形態では、蛍光部分が還元末端に間接的に結合される。たとえば、この間接結合を反応性リンカーアームによって達成可能である。
【0068】
いくつかの実施形態では、検出可能な標識は、放射性部分または同位体標識された分子を含む。本開示に基づいて使用可能な放射性部分の例としては、トリチウム(H)、ジュウテリウム(H)および/または35Sがあげられるが、これに限定されるものではない。一般に、このような部分はフルオロフォアに対して直接的に結合または会合される。放射性フルオロフォアの一例をあげると、すべての水素が重水素化されるように2APを修飾することが可能である。
【0069】
N−結合型グリカンの消化
本開示は、糖タンパク質のグリコシル化パターンを判断する改良された方法を提供するものである。このような方法は、グリカン集団を1種類以上のエキソグリコシダーゼに曝露し、消化産物の構造および/または組成を分析することを含み得る。いくつかの実施形態では、本開示に基づいて用いられるエキソグリコシダーゼが、特定の1つのタイプのグリコシド結合だけを認識および切断する。いくつかの実施形態では、本開示に基づいて用いられるエキソグリコシダーゼが、特定の2以上のタイプのグリコシド結合を認識および切断する。エキソグリコシダーゼのうち、本発明に有用となり得るのは、表1に示すように、α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ;ヘキソサミニダーゼ、マンノシダーゼ;これらの組み合わせである。
【0070】
エキソグリコシダーゼ
エキソグリコシダーゼは、末端グリコシド結合をグリカンの非還元末端から切断する酵素である。この酵素は一般に、特定の単糖結合およびアノマ性(α/β)に対して極めて特異性が高い。いくつかの実施形態では、隣り合った分岐パターンがエキソグリコシダーゼの特異性に影響することがある。エキソグリコシダーゼ処理によって、通常は、標準的な分岐型結合が五糖コア(M3N2)(3マンノースおよび2GlcNAc残基を含む)に切断されたグリカンが得られる。しかしながら、異常修飾種(分岐型またはコアフコシル化種、高マンノースおよびハイブリッド型グリカン、ラクトサミン伸長グリカン、硫酸化グリカン、リン酸化グリカンなど)は、エキソグリコシダーゼ処理がきかないため、クロマトグラフ的に分離してM3N2五糖に対して定量化することが可能である。本開示に基づいて用いられるエキソグリコシダーゼの例としては、シアリダーゼ、ガラクトシダーゼ、ヘキソサミニダーゼ、フコシダーゼ、マンノシダーゼがあげられるが、これに限定されるものではない。エキソグリコシダーゼについては、商業的供給源をはじめとするどのような供給源から入手することも、または細胞源(細菌、酵母、植物など)からの単離および/または精製により入手することも可能である。いくつかの実施形態では、エキソグリコシダーゼ(シアリダーゼ、ガラクトシダーゼ、ヘキソサミニダーゼ、フコシダーゼおよびマンノシダーゼなど)を複数のカテゴリすなわち「サブセット」に分けることが可能である。いくつかの実施形態では、サブセットが違えば、異なるタイプの結合を切断するための機能も異なる。表1に、エキソグリコシダーゼ、その結合特異性、由来となった生物体の例をいくつかあげておく。このエキソグリコシダーゼの一覧は一例にすぎず、包括的なものではない旨、また、どのような結合特異性を持つ、どのようなエキソグリコシダーゼでも本開示に基づいて使用できる旨は、当業者であれば理解できよう。
【0071】
【表1】

【0072】
本開示によれば、どのエキソグリコシダーゼまたは一組のエキソグリコシダーゼでもN−グリカン集団を消化することが可能である。通常、エキソグリコシダーゼ反応は、酵素活性に合った条件下で実施される。たとえば、所望のエキソグリコシダーゼ活性レベルを実現するために、pH、温度、反応溶液成分間、濃度(塩、洗剤など)、反応時間の長さを最適化することができる。国際公開第2008/130926号パンフレット(その内容を参照により本明細書に援用する)などを参照のこと。
【0073】
グリカン構造と活性の分析
通常、本開示に基づく方法は、グリカン調製物を分析し、グリカンが特定タイプの修飾(末端α−1,3−ガラクトース残基など)を含むか否かを判断することを含む。いくつかの実施形態では、分析が、ある起源由来のひとつの糖タンパク質調製物におけるグリカンの構造および/または機能を、別の起源由来の少なくとも1種類の他の糖タンパク質調製物におけるグリカンの構造および/または機能と比較することを含む。いくつかの実施形態では、分析が、1つ以上の試料におけるグリカンの構造および/または機能を、基準試料のグリカンの構造および/または機能と比較することを含む。
【0074】
グリカンの構造および組成については、利用できるどのような方法で分析してもよい。いくつかの実施形態では、グリカンの構造および組成を、クロマトグラフによる方法、質量分析(MS)方法、クロマトグラフによる方法に続いてMS、電気泳動法、電気泳動法に続いてMS、核磁気共鳴(NMR)法、およびこれらの組み合わせで分析される。
【0075】
いくつかの実施形態では、グリカンの構造および組成を、液体クロマトグラフィ(LC)、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)、超高速液体クロマトグラフィ(UPLC)、薄層クロマトグラフィ(TLC)、アミドカラムクロマトグラフィ、およびこれらの組み合わせを含むがこれに限定されるものではない、クロマトグラフによる方法で分析することが可能である。
【0076】
いくつかの実施形態では、グリカンの構造および組成を、タンデムMS、LC−MS、LC−MS/MS、マトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI−MS)、フーリエ変換質量分析(FTMS)、イオン移動度質量分析(IMS−MS)、電子移動解離(ETD−MS)、およびこれらの組み合わせを含むがこれに限定されるものではない、質量分析(MS)および関連の方法で分析することが可能である。
【0077】
いくつかの実施形態では、グリカンの構造および組成を、細管式電気泳動(CE)、CE−MS、ゲル電気泳動、アガロースゲル電気泳動、アクリルアミドゲル電気泳動、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)に続いて特定のグリカン構造を認識する抗体を用いるウェスタンブロッティング、およびこれらの組み合わせを含むがこれに限定されるものではない、電気泳動法で分析することが可能である。
【0078】
いくつかの実施形態では、グリカンの構造および組成を、一次元NMR(1D−NMR)、二次元NMR(2D−NMR)、相関分光磁気角スピニングNMR(COSY−NMR)、全相関分光NMR(TOCSY−NMR)、異種核一量子コヒーレンスNMR(HSQC−NMR)、異種核多重量子コヒーレンス(HMQC−NMR)、回転系での核オーバーハウザー効果分光NMR(ROESY−NMR)、核オーバーハウザー効果分光法(NOESY−NMR)、およびこれらの組み合わせを含むがこれに限定されるものではない、核磁気共鳴(NMR)および関連の方法で分析することが可能である。
【0079】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の技術を、グリカンまたは糖タンパク質を検出、分析およびまたは単離するための1つ以上の他の技術と組み合わせてもよい。たとえば、特定の実施形態では、本開示に基づいて、1つ以上の利用可能な方法を用いてグリカンを分析する(ほんの一例をあげるには、Anumula, Anal. Biochem. 350(1):1, 2006;Klein et al., Anal. Biochem., 179:162, 1989;および/またはTownsend, R.R. Carbohydrate Analysis」 High Performance Liquid Chromatography and Capillary Electrophoresis., Ed. Z. El Rassi, pp 181〜209, 1995(各々その内容全体を参照により本明細書に援用する)を参照のこと。たとえば、いくつかの実施形態では、クロマトグラフによる方法、電気泳動法、核磁気共鳴法、これらの組み合わせのうちの1つ以上を用いて、グリカンを特徴付ける。例示的なこのような方法として、たとえば、NMR、質量分析、液体クロマトグラフィ、2次元クロマトグラフィ、SDS−PAGE、抗体染色、レクチン染色、単糖定量、細管式電気泳動、蛍光体支援炭水化物電気泳動(FACE)、ミセル動電クロマトグラフィ(MEKC)、エキソグリコシダーゼまたはエンドグリコシダーゼ処理、これらの組み合わせがあげられる。当業者であれば、本明細書に記載の方法を併用してグリカンを特徴付けるのに使用可能な他の技術がわかるであろう。
【0080】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、グリカン集団に低濃度で存在するグリカン種(末端α−ガラクトシル残基など)の検出を可能にするものである。たとえば、本方法は、グリカン集団に、10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1.5%未満、1%未満、0.75%未満、0.5%未満、0.25%未満、0.1%未満、0.075%未満、0.05%未満、0.025%未満または0.01%未満の濃度で存在するグリカン種の検出を可能にするものである。
【0081】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、グリカン集団に低濃度で存在する特定の構造(末端α−ガラクトシル残基など)の検出を可能にするものである。たとえば、本方法は、グリカン集団に、10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1.5%未満、1%未満、0.75%未満、0.5%未満、0.25%未満、0.1%未満、0.075%未満、0.05%未満、0.025%未満または0.01%未満で存在する特定の構造の検出を可能にするものである。
【0082】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、グリカン集団における個々のグリカン種の相対濃度の検出を可能にするものである。たとえば、液体クロマトグラフの各ピークの下の面積を測定し、全体に対する割合として表すことができる。このような分析をすることで、グリカン集団における各グリカン種の量の相対的な比率が分かる。他の例では、個々のグリカン種の相対レベルを、1D−NMR実験でのピークの面積から、あるいは1H−15HSQCスペクトルからのクロスピークの量から判断する(標準からの応答に基づいて補正など)、あるいは複数の試料同士を同じピークについて比較して定量化することで、判断する。
【0083】
いくつかの実施形態では、糖タンパク質調製物(糖タンパク質調製物など)の生物活性を評価する。糖タンパク質調製物の生物活性を分析するには、利用可能な任意の方法を用いればよい。いくつかの実施形態では、糖タンパク質の結合活性(受容体に対する結合など)を評価する。いくつかの実施形態では、糖タンパク質の治療活性(疾患または症状の重篤度または症候を低減あるいは、疾患または症状の症候の出現を遅らせるにあたっての糖タンパク質の活性など)を評価する。いくつかの実施形態では、糖タンパク質の薬理学的活性(バイオアベイラビリティ、薬物動態、薬物動力学など)を評価する。糖タンパク質治療薬のバイオアベイラビリティ、薬物動態、薬物動力学を分析する方法については、Weiner et al., J Pharm Biomed Anal. 15(5):571〜9, 1997;Srinivas et al., J. Pharm. Sci. 85(1):1〜4, 1996;Srinivas et al., Pharm. Res. 14(7):911〜6, 1997などを参照のこと。
【0084】
当業者であれば理解できるであろうように、試験可能な特定の生物活性または治療活性は、特定の糖タンパク質に応じて変化する。
【0085】
糖タンパク質調製物の潜在的な有害活性または毒性(高血圧症、アレルギー反応、血栓事象、てんかんまたは他の有害事象を引き起こす傾向など)を、利用できる任意の方法で分析可能である。いくつかの実施形態では、調製物が被検体で抗体応答を誘発するか否かを判断することなどで、糖タンパク質調製物の免疫原性を評価する。
【0086】
さまざまな実施形態において、末端α−ガラクトシル残基を有する糖タンパク質調製物の生物活性、治療活性などを、末端α−ガラクトシル残基のない糖タンパク質調製物と比較する。さまざまな実施形態において、末端α−ガラクトシル残基を有する糖タンパク質調製物の生物活性、治療活性などを、異なるレベルの末端α−ガラクトシル残基を有する糖タンパク質調製物と比較する。
【0087】
用途
本開示の方法を利用して、たとえば遊離グリカン、糖タンパク質(糖ペプチド、糖脂質、プロテオグリカンなど)、細胞関連グリカン(核関連グリカン、細胞質関連グリカン、細胞膜関連グリカンなど);細胞、細胞外、細胞内および/または細胞内(subcellular)成分に関連したグリカン(タンパク質など);細胞外間隙のグリカン(細胞培養液など)などを含む、多岐にわたる状態のいずれでも糖タンパク質からのグリカンを分析することが可能である。
【0088】
本開示の方法を、治療用または他の商業的に関連のある糖タンパク質製造用のプロセス開発の1つ以上の段階に使用してもよい。本開示の方法を採用可能なこのようなプロセス開発段階の非限定的な例としては、細胞選択、クローン選択、培地の最適化、培養条件、プロセス条件および/または精製手法があげられる。当業者には他のプロセス開発段階も分かるであろう。
【0089】
また、たとえば特定の所望のグリコシル化パターンを実現または特定の望ましくないグリコシル化パターンの発生を回避する目的で、本開示を利用して、特定の細胞培養物で起こっているグリコシル化の程度および/またはタイプ(細胞培養物中で産生される糖タンパク質調製物の末端α−ガラクトシル残基の程度など)を監視し、これによって培養物を調節または場合によっては終了できるようにすることも可能である。
【0090】
さらに、本開示を利用して、(たとえば、細胞または細胞系を操作して糖タンパク質を産生あるいは糖タンパク質を商業的に関連のあるレベルで産生する前であっても)特定の所望の糖タンパク質の製造で検討対象となっている細胞または細胞系(CHO細胞系など)のグリコシル化の特徴を評価することも可能である。
【0091】
たとえば、標的糖タンパク質が1つ以上の国で法令による審査があるなどの治療用糖タンパク質である場合、培養物を監視して、厳密に同一の経路で製造されるか否かを問わず、グリコシル化パターンがすでに確立された医薬製品のグリコシル化パターンにできるだけ近い産物(末端α−ガラクトシル残基の程度が医薬製品の程度に近いものなど)が生成される尤度を評価すると望ましいことが多い。本明細書で使用する場合、「近い」とは、すでに確立された医薬製品のグリコシル化パターンに対して少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%相関するグリコシル化パターンを示す。このような実施形態では、相対的なグリコシル化を評価するために、産生培養物の試料は一般に、複数の時点で採取され、確立された標準または対照培養物と比較される。
【0092】
たとえば、いくつかの実施形態では、糖タンパク質の生成を監視するための方法が、(i)糖タンパク質の生成時に、少なくとも第1および第2のグリカン含有試料を生成系から除去するステップと、(ii)第1および第2のグリカン含有試料の各々を分析し、特定の修飾(末端α−ガラクトシル残基など)が存在するか否かを判断するステップと、(iii)差を判断して、これによって糖タンパク質生成の進行具合を監視できるように第1のグリカン含有試料から得られる産物を第2のグリカン含有試料から得られる産物と比較するステップと、を含むものであってもよい。いくつかの実施形態では、糖タンパク質がアバタセプトである。いくつかの実施形態では、生成系がCHO細胞を含む。
【0093】
特定の標的タンパク質の産生を品質制御目的で監視するか否かを問わず、本開示を利用して、たとえば、特定の発達段階で、あるいは特定の成長条件下で、グリコシル化を監視することができる。
【0094】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法を使用して、治療用産物の品質を特性決定、調節および/または制御または比較することが可能である。一例をあげると、本方法論を使用して、治療用タンパク質産物を産生する細胞でのグリコシル化を評価することが可能である。特に、グリコシル化が治療用タンパク質産物の活性やバイオアベイラビリティまたは他の特徴に影響し得ることが多いとすれば、このような治療用タンパク質産物の産生時に細胞グリコシル化を評価するための方法が特に望ましい。とりわけ、本開示は、治療用タンパク質の産生系でのグリコシル化のリアルタイム分析を容易にし得るものであり、このゆえに、グリコシル化の調節を達成してもよい。
【0095】
本開示によって産生および/または品質を監視可能な代表的な治療用糖タンパク質産物としては、たとえば、多岐にわたる血液作用剤(たとえば、エリスロポエチン、血液凝固因子など)、インターフェロン、コロニー刺激因子、抗体、酵素およびホルモンがあげられる。
【0096】
代表的な市販の糖タンパク質産物としては、CHO細胞で産生されるのであれば、たとえば表2に示したものがあげられる。
【0097】
【表2】

【0098】
【表3】

【0099】
【表4】

【0100】
【表5】

【0101】
いくつかの実施形態では、開示が、異なる起源または試料由来の糖タンパク質からのグリカンを、互いに比較する方法を提供するものである。このようないくつかの例では、同じ起源に由来する(同じCHO細胞起源からなど)複数の試料を経時的に得て、グリコシル化パターン(特に細胞表面グリコシル化パターン)の変化(末端α−ガラクトシル残基の存在または度合いの変化など)を監視する。いくつかの実施形態では、試料のひとつが歴史的試料または歴史的試料の記録である。いくつかの実施形態では、試料のひとつが基準試料である。
【0102】
いくつかの実施形態では、開示が、異なる細胞起源によって発現される糖タンパク質からのグリカンを、互いに比較する方法を提供するものである。いくつかの実施形態では、比較された細胞起源の1つ以上がCHO細胞である。
【0103】
いくつかの実施形態では、1つ以上の選択されたパラメータ(細胞型、培養のタイプ[連続供給対バッチ供給など]、培養条件[培地のタイプ、特定培地の特定の成分の存在または濃度(a)、モル浸透圧濃度、pH、温度、タイミングまたは1つ以上の成分のシフトの度合い、たとえばモル浸透圧濃度、pH、温度など]、培養時間、単離ステップなど)は異なるがそれ以外は同じ条件下で調製した、異なる細胞培養試料からのグリカン同士を比較するため、選択されたパラメータがグリコシル化におよぼす影響を判断できる。特定の実施形態では、選択された単一のパラメータがグリコシル化パターン(末端α−ガラクトシル残基の有無など)におよぼす影響を判断できるように、選択された単一のパラメータが異なる条件下で調製した、異なる細胞培養試料からのグリカンを比較する。よって、その他の用途として、本明細書に記載したような技法を用いることで、特定のパラメータが細胞のグリコシル化パターンにおよぼす影響を判断しやすくできるのである。
【0104】
いくつかの実施形態では、糖タンパク質の異なるバッチからのグリカン同士を、同一の方法で調製するか異なる方法で調製するかを問わず、かつ、同時に調製するか別々に調製するかを問わず、比較する。このような実施形態では、本開示は、糖タンパク質調製物の品質制御を容易にするものである。上記の他にまたは上記に加えて、このような実施形態のいくつかは、糖タンパク質を産生する特定の培養物の進行の監視を容易にするものである(異なる時点で培養物から試料を除去し、分析して互いに比較する場合)。いくつかの例では、同一の供給源から時間をかけて複数の試料を取得し、グリコシル化パターンの変化を監視できるようにする。いくつかの実施形態では、約30秒間、約1分間、約2分間、約5分間、約10分間、約30分間、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約10時間、約12時間または約18時間の間隔、あるいはそれよりも長い間隔で、グリカン含有試料を除去する。いくつかの実施形態では、グリカン含有試料を不規則な間隔で除去する。いくつかの実施形態では、グリカン含有試料を5時間間隔で除去する。
【0105】
いくつかの実施形態では、本開示による方法を使用して、細胞が糖タンパク質を産生する過程で、そのグリコシル化パターンを監視してもよい。たとえば、糖タンパク質の産生(量産など)は、(1)糖タンパク質を産生する細胞を培養するステップと、(2)培養時に試料を一定間隔または不規則な間隔で取得するステップと、(3)取得した試料で産生された糖タンパク質のグリコシル化パターンを分析するステップと、を含む。いくつかの実施形態では、このような方法は、取得した試料で産生された糖タンパク質のグリコシル化パターンを互いに比較するステップを含むものであってもよい。いくつかの実施形態では、このような方法は、取得した試料で産生された糖タンパク質のグリコシル化パターンと参照試料のグリコシル化パターンとを比較するステップを含むものであってもよい。
【0106】
これらの実施形態のいずれにおいても、グリカン分析の特徴を、たとえば品質制御記録に記録することが可能である。上述したように、いくつかの実施形態では、比較が、糖タンパク質の事前または標準的なバッチの履歴記録および/または参照試料との間で実施されるものである。
【0107】
いくつかの実施形態では、異なるバッチの特定の糖タンパク質からのグリカンを、同一の方法で調製するか異なる方法で調製するかを問わず、かつ、同時に調製するか別々に調製するかを問わず、互いにおよび/または参照試料と比較する。いくつかの実施形態では、バッチ間比較が、(i)糖タンパク質の第1のバッチから第1のグリカン調製物を提供するステップと、(ii)糖タンパク質の第2のバッチから第2のグリカン調製物を提供するステップと、(iii)第1および第2のグリカン調製物の各々に分析手順をほどこすステップと、(iv)2つのバッチの一貫性を評価できるように、第1のグリカン調製物から得られた分析結果を第2の調製物から得られた切断産物と比較するステップと、を含むものであってもよい。いくつかの実施形態では、バッチからの少なくとも1つのグリカンを少なくとも1つの糖タンパク質から除去し、場合によって、除去したグリカンを単離することで、グリカン調製物を提供してもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載したようにしてグリカン調製物を標識してもよい(蛍光的および/または放射線的になど;たとえば、単離の前および/または後など)。
【0108】
いくつかの実施形態では、本開示は、糖タンパク質調製物の品質制御を容易にするものである。グリカン分析の特徴を、たとえば品質制御記録で記録することが可能である。上述したように、いくつかの実施形態では、比較が、糖タンパク質の事前または標準的なバッチの履歴記録との間でなされる。いくつかの実施形態では、比較が参照糖タンパク質試料との間でなされる。
【0109】
特定の実施形態では、本開示を研究に利用して、細胞のグリコシル化の特徴を修飾し、末端α−ガラクトシル残基を有するまたはこれを欠いている糖タンパク質を産生する細胞系など、たとえば1つ以上の所望のグリコシル化の特徴を有する細胞系および/または培養条件を確立してもよい。その後、必要があれば、このような細胞系および/または培養条件を、このようなグリコシル化の特徴に利益があると想定される特定の標的糖タンパク質の生成に利用する。特定の実施形態では、細胞がCHO細胞である。
【0110】
本開示によれば、本明細書に記載の技法を用いて、望ましいグリカンまたは望ましくないグリカンを検出し、たとえば糖タンパク質産物中の1種類以上の汚染物質を検出または定量化あるいは、1種類以上の活性種または所望の種の存在を検出または定量化することが可能である。
【0111】
特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、供給源(生物学的試料、グリカン調製物など)に極低濃度で存在するグリカンの検出を容易にする。このような実施形態では、グリカン集団に、約10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1.5%未満、1%未満、0.75%未満、0.5%未満、0.25%未満、0.1%未満、0.075%未満、0.05%未満、0.025%未満または0.01%未満の濃度で存在するグリカンの濃度を検出および/または任意に定量化することが可能である。いくつかの実施形態では、0.1%から5%、たとえば0.1%から2%、たとえば0.1%から1%のグリカン調製物を含むグリカンの濃度を検出および/または任意に定量化することが可能である。
【0112】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、グリカン集団に低濃度で存在する特定の結合(末端gal−α−1,3−gal結合など)の検出を可能にするものである。たとえば、本方法は、10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1.5%未満、1%未満、0.75%未満、0.5%未満、0.25%未満、0.1%未満、0.075%未満、0.05%未満、0.025%未満または0.01%未満の濃度でグリカン集団に存在する特定の結合の検出を可能にするものである。
【0113】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、グリカン集団中の個々のグリカン種の相対濃度の検出を可能にするものである。たとえば、液体クロマトグラフの各ピークの下にある面積を測定し、全体に対する割合として表すことができる。このような分析をすることで、グリカン集団における各グリカン種の量の相対的な比率が分かる。
【0114】
以下の実施例を参照し、本開示を一層具体的に示す。しかしながら、本開示はこれらの実施例に何ら限定されるものではない旨は理解されたい。
【0115】
当業者であれば、ここに提供する明細書を参照した実施例を考慮することで、本発明の範囲内でのさまざまな他の組み合わせを容易に想像できよう。
【実施例】
【0116】
実施例1:
Orencia(商標)(アバタセプト)は、ヒト免疫グロブリンG1(IgG1)の修飾されたFc(ヒンジ、CH2、CH3ドメイン)部分に結合されるヒト細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA−4)の細胞外ドメインからなる可溶性融合タンパク質である。アバタセプトは、哺乳類細胞発現系で組換えDNA技術によって生成される。アバタセプトの見かけの分子量は92キロダルトンである。アバタセプトを使用して、関節リウマチの症候を治療する、関節損傷の進行を示す、物理的機能を改善する。この生物治療薬でグリコシル化(3つのN−結合型と2つのO−結合型グリコシル化部位)がゆえに生じる大幅な複雑さがゆえに、慎重な生成と特徴付けが必要とされる。タンパク質化学組成物に対する異なる修飾(タンパク質骨格修飾、グリコシル化など)によって糖タンパク質の生物学的機能に影響する可能性があるため、製造時にこの生物治療薬の化学的および物理的特性に対する良好な制御を保証することが重要である。
【0117】
Gal−α1−3Galエピトープ(「α−gal」)は、一般にヒトタンパク質には見られず、CHO由来産物では想定されない。このエピトープは一般に、ブタおよびマウスから単離されたタンパク質で観察される。ヒトは、Galα1−3Gal末端に対する循環抗体を有するため、糖タンパク質の治療薬でこれらの種を監視し、これがプロセス開発にどのように関連するのかを理解することが重要である。本開示は、アバタセプトにおけるα−gal構造の存在を示すものである(これはCHO細胞で発現される)。
【0118】
グリカン種の分析に用いられる手順:
PNGASE−Fで処理した後、固相抽出精製によって、薬剤物質からN−グリカンを単離した。次に、グリカンを2AB標識した後、選択された画分をLC−MS−MSで分析した。エキソグリコシダーゼ、MALDI−MS、Lc−MS/MSの組み合わせによって、グリカン構造をさらに確認した。
【0119】
このデータは、アバタセプト−CTLA4糖タンパク質N−グリカンにおける末端α結合型ガラクトースの存在を示す。ヒト免疫グロブリンG1(IgG1)の修飾されたFc(ヒンジ、CH2、CH3ドメイン)部分に結合されるヒト細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA−4)からなる可溶性融合タンパク質であるOrencia(商標)(アバタセプト)のN−結合型グリカン試料を、LC−MS/MSで分析した。図3に、ガラクトース−α−1−3ガラクトース含有構造に対応し得る組成HexNAcHexFucのグリカン種の検出を示している、Abatacept由来のグリカンの画分の蛍光クロマトグラムを示す。
【0120】
組成HexNAcHexFucのOrencia(商標)由来のグリカン種からのMSスペクトルでは、非還元末端ガラクトース−α−1−3結合型ガラクトースの存在が示唆された(図4)が、ハイブリット型グリカンなどの他の潜在的な構造の可能性を排除するものではない。
【0121】
異なるエキソグリコシダーゼ処理に続いてLC−ESI−MS/MSおよびMALDI−MSの組み合わせを用いて、この構造をさらに確認した。Orencia(商標)および対照タンパク質の両方に由来するN−グリカン画分に、エキソグリコシダーゼ酵素処理を実施した。どちらの試料も、(i)α−ガラクトシダーゼおよび(ii)β−ガラクトシダーゼ、β−N−アセチルヘキソサミノダーゼ、マンノシダーゼの混合物で処理し、潜在的な非還元末端ガラクトース−α−1−3結合型ガラクトース構造を分解した。2つの反応での産物の蛍光クロマトグラムを比較したものを、図5に示す。
【0122】
α−ガラクトシダーゼ処理の前後で対照タンパク質由来のグリカンに大きな差は観察されなかった。一方、Orencia(商標)では、HexNAcHexFuc組成の種の明らかな減少に伴う種HexNAcHexFuc組成の増加が観察された。酵素処理の結果としてのアバタセプトからのHexNAcHexFuc組成の種のMSも図6に示す。
【0123】
MALDI−TOF−MSで分析した場合の異なる組のエキソグリコシダーゼ(β−ガラクトシダーゼ、ヘキソサミニダーゼ、マンノシダーゼ)を含む処理結果を、さらに確認した(図7)。
【0124】
このデータから、Orencia(商標)におけるHexNAcHexFuc組成を有する種が、主に非還元末端ガラクトース−α1−3結合型ガラクトースを含有することが示唆される。
【0125】
拡張と代用
以上、本方法を具体的な例示の実施形態を参照しつつ特に図示し、説明してきたが、本開示の主旨および範囲から逸脱することなく形態および詳細にさまざまな変更をほどこし得ることは理解されたい。したがって、本方法の範囲および主旨に包含されるすべての実施形態ならびにその等価物も、権利請求されることを意図している。本開示の方法、系、アッセイについての特許請求の範囲、説明、図面は、説明した要素の順序に限定的なものとして読まれるべきではない(その効果が明記される場合を除く)。
【0126】
特許、特許出願、記事、書籍、論文、ウェブページを含むがこれに限定されるものではない、本出願にて引用したすべての文献および類似の資料(このような文献および類似の資料の形式を問わない)は、その内容全体を明示的に援用するものである。援用した文献および類似の資料の1つ以上が、定義した用語、用語の使用法、説明した技術などを含むがこれに限定されるものではない本出願と異なるまたは相反する場合は、本出願が優先する。本明細書で使用する章の見出しは構成上の目的のものにすぎず、どのように説明されているものであっても主題を限定するものと解釈されるものではない。本方法をさまざまな実施形態および実施例に関して説明したが、この方法を当該実施形態または実施例に限定することを意図するものではない。逆に、本方法は、当業者であれば自明であろうさまざまな選択肢、改変、等価物を包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞集団を評価するための方法であって、
(a)前記集団から1つ以上のCHO細胞を提供し、
(b)前記細胞によって産生される末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトース残基を含有するグリカンを測定することを含み、
前記CHO細胞は、α−ガラクトシルトランスフェラーゼコード配列を発現するよう遺伝子操作されたものではない、方法。
【請求項2】
前記測定するステップが、
(a)前記CHO細胞から産生される糖タンパク質を単離し、末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトース残基を含有する前記グリカンを前記糖タンパク質上で測定する、
(b)前記CHO細胞から産生される特定の糖タンパク質組成物を単離し、前記単離された糖タンパク質組成物からの末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトース残基を含有する前記グリカンを測定する、
(c)前記CHO細胞から産生される糖タンパク質調製物または単離された糖タンパク質からグリカン調製物を得て、前記グリカン調製物中の末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトース残基を含有する前記グリカンを測定する、
(d)前記CHO細胞から産生される糖タンパク質上に存在するグリカンから、または前記1つ以上のCHO細胞の表面におけるグリカンから、単糖を切断し、前記切断された単糖から末端放出α−ガラクトース残基を検出する、
(e)前記CHO細胞から産生される糖タンパク質調製物から少なくとも1つのペプチドを提供し、前記少なくとも1つのペプチド上の末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトース残基を含有する前記グリカンを測定する、
(f)前記1つ以上のCHO細胞の前記細胞表面上のグリカンからの末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトース残基を含有するグリカンを測定することのいずれかを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記CHO細胞集団がクローン細胞集団である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(b)で測定したレベルと基準レベルまたは規格とを比較するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
測定することが、クロマトグラフによる方法、質量分析(MS)法、電気泳動法、核磁気共鳴(NMR)法、単糖分析、蛍光法、UV−VIS吸光度、酵素による方法、検出分子の使用、これらの組み合わせからなる群から選択される、末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトース残基を含有するグリカンを同定または定量化するための方法を使用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記CHO細胞集団が、治療用糖タンパク質を製造するためのバイオリアクタ内の細胞培養物からの試料である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記提供および測定するステップを、時間の経過とともに少なくとも1回繰り返す、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記測定するステップが、ガラクトース−α−1−3−ガラクトースエピトープに結合する検出分子を用いることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記検出分子が、ガラクトース−α−1−3−ガラクトースエピトープに結合できるレクチンを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記検出分子が、ガラクトース−α−1−3−ガラクトースエピトープに対する抗体を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記検出分子が、標識された部分を含む分子を含むか、これに結合される、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記測定するステップの結果を印刷またはコンピュータ読み取り可能な媒体に記録するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記CHO細胞が、細胞培養物に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記CHO細胞が、ヒト治療用糖タンパク質をコードするベクターで形質転換されている、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記CHO細胞上に存在する、末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトースエピトープまたは前記エピトープを含有するグリカンの量を定量化するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
測定することが、前記CHO細胞から産生される糖タンパク質を単離し、前記糖タンパク質上の末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトース残基を含有する前記グリカンを測定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
測定することが、前記CHO細胞から産生される特定の糖タンパク質組成物を単離し、前記単離された糖タンパク質組成物からの末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトース残基を含有する前記グリカンを測定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
測定することが、前記CHO細胞から産生される糖タンパク質調製物または単離された糖タンパク質からグリカン調製物を得て、前記グリカン調製物中の末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトース残基を含有する前記グリカンを測定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記測定することが、(d)前記CHO細胞から産生される糖タンパク質上に存在するグリカンから、あるいは、前記1つ以上のCHO細胞の表面のグリカンから、単糖を切断し、前記末端を検出することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
測定することが、前記CHO細胞から産生される糖タンパク質調製物から少なくとも1つのペプチドを提供し、前記少なくとも1つのペプチド上で末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトース残基を含有する前記グリカンを測定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
測定することが、前記1つ以上のCHO細胞の前記細胞表面における複合糖質上の末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトース残基を測定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記測定するステップが、クロマトグラフによる方法を実施することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記測定するステップが、質量分析(MS)法を実施することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記測定するステップが、電気泳動法を実施することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記測定するステップが、核磁気共鳴(NMR)法を実施することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
−α−1−3−ガラクトースエピトープを含有するグリカンを含む糖タンパク質を産生する機能について、1つ以上のチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞をスクリーニングするための方法であって、
(a)複数のCHO細胞集団であって、前記複数のうちいずれもグリカン上で末端α−ガラクトシル残基を産生するよう遺伝子操作されていない細胞集団を提供し、
(b)前記複数のCHO細胞集団の各々を、糖タンパク質発現産物の発現に適した条件下で培養し、
(c)前記複数のCHO細胞各々によって産生される末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトース残基を含有するグリカンを測定し、
(d)前記選択されたCHO細胞調製物によって産生される末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトース残基の標的レベルの存在に基づいて、前記複数のCHO細胞調製物のうちの1つ以上を選択することを含み、前記CHO細胞が、α−ガラクトシルトランスフェラーゼコード配列でトランスフェクトされていない、方法。
【請求項27】
前記複数のCHO細胞集団の各々が細胞培養物にある、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトース残基を含有する前記グリカンを、前記CHO細胞調製物の単離された糖タンパク質発現産物上で測定する、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトース残基を含有する前記グリカンを、前記CHO細胞調製物の糖タンパク質発現産物から得られるペプチド上で測定する、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトース残基を含有する前記グリカンを、前記CHO細胞調製物の細胞表面グリカンから測定する、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトース残基を含有する前記グリカンを、前記CHO細胞調製物またはその糖タンパク質発現産物から得られるグリカン調製物上で測定する、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
前記測定するステップが、(i)前記複数のCHO細胞集団の各々から糖タンパク質発現産物を単離するステップと、(ii)前記末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトース残基を前記糖タンパク質発現産物上で測定するステップと、を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
前記細胞培養物がバイオリアクタ内にある、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
測定することが、クロマトグラフによる方法、質量分析(MS)法、電気泳動法、核磁気共鳴(NMR)法、単糖分析、蛍光法、UV−VIS吸光度、酵素による方法、検出分子の使用、これらの組み合わせからなる群から選択される、末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトース残基を含有するグリカンを同定または定量化するための技術を使用することを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項35】
前記複数のCHO細胞集団の少なくとも1つが、ヒト治療用糖タンパク質をコードするベクターで形質転換されている、請求項26に記載の方法。
【請求項36】
複数のCHO細胞集団が、治療用糖タンパク質の製造過程トレインからの少なくとも2種類の異なるCHO株、少なくとも2種類の異なるクローン細胞集団、少なくとも2種類の異なる試料からなる群から選択される少なくとも1つの特徴を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項37】
前記選択されたCHO細胞調製物を培養して治療用糖タンパク質産物を生成するステップをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項38】
CHO細胞宿主で産生される糖タンパク質組成物を評価するための方法であって、糖タンパク質組成物中に存在する末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトースの量を測定することを含み、
前記糖タンパク質組成物は、CHO宿主細胞で産生されたものであり、前記CHO宿主細胞は、α−ガラクトシルトランスフェラーゼコード配列を発現するよう遺伝子操作されたものではない、方法。
【請求項39】
前記糖タンパク質組成物中に存在する末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトースのレベルを、印刷またはコンピュータ読み取り可能な媒体に記録することをさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記糖タンパク質組成物中に存在する末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトースの測定されたレベルを基準レベルと比較することをさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記基準レベルが、前記糖タンパク質組成物を含有する製剤調製物の規格または品質基準である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記基準レベルが、グリカン/総グリカンベースで末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトースが5%以下である、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記糖タンパク質組成物中に存在する末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトースの量を測定することが、クロマトグラフによる方法を実施することを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項44】
前記糖タンパク質組成物中に存在する末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトースの量を測定することが、質量分析(MS)法を実施することを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項45】
前記糖タンパク質組成物中に存在する末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトースの量を測定することが、核磁気共鳴(NMR)法を実施することを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項46】
前記糖タンパク質組成物中に存在する末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトースの量を測定することが、単糖分析を実施することを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項47】
前記糖タンパク質組成物中に存在する末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトースの量を測定することが、蛍光法を実施することを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項48】
前記糖タンパク質組成物中に存在する末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトースの量を測定することが、UV−VIS吸光度による方法を実施することを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項49】
前記糖タンパク質組成物中に存在する末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトースの量を測定することが、酵素による方法を実施することを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項50】
前記糖タンパク質組成物中に存在する末端ガラクトース−α−1−3−ガラクトースの量を測定することが、検出分子を使用することを含む、請求項38に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−515922(P2012−515922A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−547891(P2011−547891)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際出願番号】PCT/US2009/031678
【国際公開番号】WO2010/085251
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(504346293)モメンタ ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (13)
【Fターム(参考)】