説明

D1381光ファイバのためのスーパーコーティング

本発明は、スーパーコーティングを用いて被覆された光ファイバを提供するが、ここで、そのスーパーコーティングが、少なくとも2層を含み、ここで、その第一の層が、光ファイバの外側表面と接触状態にある一次被覆であり、その第二の層が、その一次被覆の外側表面と接触状態にある、二次被覆であり、ここで、その光ファイバの上の硬化された一次被覆が、最初の硬化後と、85℃、相対湿度85%で1ヶ月間エージングさせた後には以下の性質:A)%RAU:約84%〜約99%;B)インサイチュ弾性率:約0.15MPa〜約0.60MPaの間;およびC)チューブTg:約−25℃〜約−55℃を有し、ここで、その光ファイバの上の硬化された二次被覆が、最初の硬化後と、85℃、相対湿度85%で1ヶ月間エージングさせた後には以下の性質:A)%RAU:約80%〜約98%;B)インサイチュ弾性率:約0.60GPa〜約1.90GPaの間;およびC)チューブTg:約50℃〜約80℃を有する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本特許出願は、以下の出願に対する優先権を主張するものである:同時係属中の米国仮特許出願第60/874,731号明細書、「BJ ラディエーション・キュラブル・プライマリー・コーティング・フォア・オプティカル・ファイバ(BJ Radiation Curable Primary Coating for Optical Fiber)」(出願日2006年12月14日);同時係属中の米国仮特許出願第60/874719号明細書、「CR ラディエーション・キュラブル・プライマリー・コーティング・フォア・オプティカル・ファイバ(CR Radiation Curable Primary Coating for Optical Fiber)」(出願日2006年12月14日);同時係属中の米国仮特許出願第60/874,722号明細書、「P ラディエーション・キュラブル・プライマリー・コーティング・オン・オプティカル・ファイバ(P Radiation Curable Primary Coating on Optical Fiber)」(出願日2006年12月14日);同時係属中の米国仮特許出願第60/874,721号明細書、「CA ラディエーション・キュラブル・プライマリー・コーティング・フォア・オプティカル・ファイバ(CA Radiation Curable Primary Coating for Optical Fiber)」(出願日2006年12月14日);同時係属中の米国仮特許出願第60/874,723号明細書、「D ラディエーション・キュラブル・セカンダリー・コーティング・フォア・オプティカル・ファイバ(D Radiation Curable Secondary Coating for Optical Fiber)」(出願日2006年12月14日);同時係属中の米国仮特許出願第60/874,720号明細書、「R ラディエーション・キュラブル・セカンダリー・コーティング・フォア・オプティカル・ファイバ(R Radiation Curable Secondary Coating for Optical Fiber)」(出願日2006年12月14日);同時係属中の米国仮特許出願第60/874,730号明細書、「スーパーコーティングズ・フォア・オプティカル・ファイバ(Supercoatings for Optical Fiber)」(出願日2006年12月14日)、および同時係属中の米国仮特許出願第60/974,631号明細書、「P ラディエーション・キュラブル・プライマリー・コーティング・オン・オプティカル・ファイバ(P Radiation Curable Primary Coating on Optical Fiber)」(出願日2007年12月24日);それらの出願はすべて、参照により本明細書に援用するものとする。
【0002】
[技術分野]
本発明は、光ファイバのための放射線硬化性被覆、前記被覆を用いて被覆された光ファイバ、ならびに被覆された光ファイバを調製するための方法に関する。
【0003】
[背景技術]
光ファイバは、典型的には、2層以上の放射線硬化性被覆を用いて被覆される。それらの被覆は、典型的には、光ファイバに対して液状の形態で適用され、次いで放射線に暴露させて硬化させる。被覆を硬化させるために使用可能な放射線のタイプは、そのような被覆の1種または複数の放射線硬化性成分の重合を開始させることが可能なものとするべきである。そのような被覆を硬化させるのに好適な放射線は周知であって、紫外光線(以後「「UV」)および電子ビーム(「EB」)が含まれる。被覆された光ファイバを調製するのに使用される被覆を硬化させるための好ましい放射線のタイプはUVである。
【0004】
光ファイバに直接接触する被覆は一次被覆と呼ばれ、その一次被覆を覆う被覆は二次被覆と呼ばれる。光ファイバを、放射線硬化性被覆をする当業者には、一次被覆が、二次被覆よりも軟らかであるのが有利であることは公知である。この配列をとることにより有利となるのは、マイクロベンドに対する抵抗性が向上することである。
【0005】
マイクロベンドは、数マイクロメートルの局所的な軸方向変位と数ミリメートルの空間波長を含む光ファイバにおける、シャープではあるが微視的な曲がりである。マイクロベンドは、熱応力および/または機械的な横力によってもたらされる。マイクロベンドが存在すると、その被覆された光ファイバの信号伝送性能が減衰される。減衰とは、光ファイバによって伝送される信号が低下することであって、望ましいものではない。比較的軟らかな一次被覆によって、光ファイバのマイクロベンドに対する抵抗性が得られ、それによって信号の減衰が最小化される。比較的硬い二次被覆によって、たとえば被覆されたファイバをリボン処理および/またはケーブル処理する際に加わるような取扱いの場合の力に対する抵抗性が得られる。
【0006】
論文の「UV−キュアド・ポリウレタン−アクリリック・コンポジションズ・アズ・ハード・エクスターナル・レイヤーズ・オブ・トゥー−レイヤー・プロテクティブ・コーティングズ・フォア・オプティカル・ファイバズ(UV−CURED POLYURETHANE−ACRYLIC COMPOSITIONS AS HARD EXTERNAL LAYERS OF TWO−LAYER PROTECTIVE COATINGS FOR OPTICAL FIBRRS)(著者:W.Podkoscielny)およびB.Tarasiuk)、Polim.Tworz.Wielk、第41巻、第7/8号、p.448〜55、1996(NDN−131−0123−9398−2)にはUV硬化されたウレタン−アクリルオリゴマーの合成の最適化ならびにそれらの光ファイバのためのハード保護被覆としての使用に関する検討が記載されている。ポーランド製のオリゴエーテロール、ジエチレングリコール、トルエンジイソシアネート(アイゾシン(Izocyn)T−80)およびイソホロンジイソシアネートに加えて、ヒドロキシエチルおよびヒドロキシプロピルメタクリレートを使用して合成が行われた。活性希釈剤(ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートおよび1,4−ブタンジオールアクリレート、またはそれらの混合物)および光重合開始剤としての2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンを、重合活性二重結合を有するこれらのウレタン−アクリルオリゴマーに添加した。その組成物に、酸素が存在しない雰囲気下でUV照射した。それらの組成物のIRスペクトルを記録し、いくつかの物理的および化学的および機械的性質(密度、分子量、温度の関数としての粘度、屈折率、ゲル含量、ガラス転移温度、ショアー硬度、ヤング率、引張強さ、破断時伸び、耐熱性、および水蒸気拡散係数)を、硬化前後に求めた。
【0007】
論文の「プロパティーズ・オブ・ウルトラバイオレット・キュラブル・ポリウレタン−アクリレーツ(PROPERTIES OF ULTRAVIOLET CURABLE POLYURETHANE−ACRYLATES)」(著者:M.コシバ(M.Koshiba)、K.K.S.ホワン(K.K.S.Hwang)、S.K.フォリー(S.K.Foley)、D.J.ヤルッソ(D.J.Yarusso)、およびS.L.クーパー(S.L.Cooper)、ジャーナル・オブ・マテリアル・サイエンス(J.Mat.Sci.)、17、No.5、1982年5月、p.1447〜58(NDN−131−0063−1179−2)には、イソホロンジイソシアネートおよびTDIをベースとするUV硬化されたポリウレタン−アクリレートの化学構造と物理的性質の間の関係についてなされた研究が記載されている。ソフトセグメント分子量と架橋剤を変化させて、その2種の系を調製した。動的機械試験結果から、ソフトセグメント分子量に依存して、1相または2相物質が得られるであろうことが判明した。後者が増える程、そのポリオールのTgは低温側にシフトした。N−ビニルピロリドン(NVP)またはポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)のいずれかの使用量を増やすと、ヤング率および極限引張強さが増大した。NVP架橋によって2相物質の中の靱性が向上し、高温Tgピークをより高い温度へとシフトさせたが、PEGDAではそれらの効果は認められなかった。その二つの系の引張物性は、一般的には、同等であった。
【0008】
典型的には、光ファイバ上で使用するための放射線硬化性被覆の製造においては、イソシアネートを使用してウレタンオリゴマーを製造する。多くの文献、たとえば米国特許第7,135,229号明細書「ラディエーション−キュラブル・コーティング・コンポジション(RADIATION−CURABLE COATING COMPOSITION)」(発行:2006年11月14日、出願人DSM・IP・アセッツ・B.V.(DSM IP Assets B.V.))の、第7カラム、第10〜32行には、当業者にウレタンオリゴマーの合成法を示す、以下のような教示がある:その発明の組成物の製造において使用するのに好適なポリイソシアネートは、脂肪族、脂環族または芳香族のいずれであってもよく、たとえば以下のものが挙げられる:ジイソシアネートたとえば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチルフェニレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシル)イソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアネート−エチル)フマレート、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネート、4−ジフェニルプロパンジイソシアネート、リシンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、および2,5(または6)−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン。これらのジイソシアネートの中では、2,4−トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、およびメチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)が特に好ましい。これらのジイソシアネート化合物は、個別に使用することも、2種以上の組合せで使用することもできる。
【0009】
マイクロベンドは、数マイクロメートルの局所的な軸方向変位と数ミリメートルの空間波長を含む光ファイバにおける、シャープではあるが微視的な曲がりである。マイクロベンドは、熱応力および/または機械的な横力によってもたらされる。マイクロベンドが存在すると、その被覆された光ファイバの信号伝送性能が減衰される。減衰とは、光ファイバによって伝送される信号が低下することであって、望ましいものではない。
【0010】
相対的に軟らかな内側一次被覆によって、被覆された光ファイバの信号伝送性能の減衰をもたらすために望ましくないマイクロベンドに対する抵抗性が与えられる。マイクロベンドは、数マイクロメートルの局所的な軸方向変位と数ミリメートルの空間波長を含む光ファイバにおける、シャープではあるが微視的な曲がりである。マイクロベンドは、熱応力および/または機械的な横力によってもたらされる。被覆によって、光ファイバをマイクロベンドから保護する横力に対する保護が得られるが、被覆直径が小さくなるほど、得られる保護の大きさも小さくなる。被覆とマイクロベンドをもたらす横応力からの保護との間の関係は、たとえば以下の文献において論じられている:D.グロージェ(D.Gloge)「オプティカル−ファイバ・パッケージング・アンド・イッツ・インフルエンス・オン・ファイバ・ストレイトネス・アンド・ロス(Optical−fiber packaging and its influence on fiber straightness and loss)」、ベル・システム・テクニカル・ジャーナル(Bell System Technical Journal)、第54巻、2、245(1975);W.B.ガードナー(W.B.Gardner)、「マイクロベンディング・ロス・イン・オプティカル・ファイバズ(Microbending Loss in Optical Fibers)」、ベル・システム・テクニカル・ジャーナル(Bell System Technical Journal)、第54巻、No.2、p.457(1975);T.ヤブタ(T.Yabuta)、「ストラクチュラル・アナリシス・オブ・ジャケッテッド・オプティカル・ファイバズ・アンダー・ラテラル・プレッシャー(Structural Analysis of Jacketed Optial Fibers Under Lateral Pressure)、ジャーナル・オブ・ライトウェーブ・テクノロジー(J.Lightwave Tech.)、第LT−1巻、No.4、p.529(1983);L.L.ブライラー(L.L.Blyler)、「ポリマー・コーティングズ・フォア・オプティカル・ファイバズ(Polymer Coatings for Optical Fibers)」、ケムテック(Chemtech)、p.682(1987);J.バルダウフ(J.Baldauf)、「リレーションシップ・オブ・メカニカル・キャラクタリスティックス・オブ・デュアル・コーテッド・シングル・モード・オプティカル・ファイバーズ・アンド・マイクロベンディング・ロス(Relationship of Mechanical Characteristics of Dual Coated Single Mode Optial Fibers and Microbending Loss)」、IEICE・トランスアクションズ・オン・コミュニケーション、第E76−B巻、No.4、352(1993);K.コバヤシ(K.Kobayashi)「スダディ・オブ・マイクロベンディング・ロス・イン・シン・コーテッド・ファイバズ・アンド・ファイバ・リボンズ(Study of Microbending Loss in Thin Coated Fibers and Fiber Ribbons)」、IWCS、386(1993)。より硬い外側一次被覆、すなわち二次被覆は、その被覆されたファイバをリボン化および/またはケーブル化するときに加わるような、取扱い時の力に対する抵抗性を与える。
【0011】
光ファイバ二次被覆組成物には一般に、硬化させるより前には、液状エチレン性不飽和希釈剤の中に溶解させるか分散させた1種または複数のオリゴマーからなるエチレン性不飽和化合物と光重合開始剤との混合物が含まれる。典型的には、そのコーティング組成物を液体の形状で光ファイバに適用してから、化学線照射に暴露して硬化させる。
【0012】
これらの組成物の多くにおいては、反応性の末端とポリマー骨格とを有するウレタンオリゴマーが使用されている。さらに、それらの組成物には一般的に、反応性希釈剤、その組成物にUV硬化性を与える光重合開始剤およびその他適切な添加剤が含まれる。
【0013】
国際特許公開第2205/026228A1号パンフレット(公開日、2004年9月17日)「キュラブル・リキッド・レジン・コンポジション(Curable Liquid Resin Composition)」(発明者、スギモト(Sugimoto)、カモ(Kamo)、シゲモト(Shigemoto)、コミヤ(Komiya)およびスティーマン(Steeman))には、下記のものを含む硬化性の液状樹脂組成物の記載と特許請求がある:(A)ポリオール由来の構造と、800g/mol以上かつ6000g/mol未満の数平均分子量とを有するウレタン(メタ)アクリレートおよび、(B)ポリオール由来の構造と、6000g/mol以上かつ20,000g/mol未満の数平均分子量とを有するウレタン(メタ)アクリレートを含むが、ここで、成分(A)と成分(B)の合計量が硬化性液状樹脂組成物の20〜95重量%であり、そして成分(B)の含量が、成分(A)と成分(B)との合計の0.1〜30重量%である。
【0014】
ウレタンオリゴマーのためのポリマー骨格として使用するために、多くの物質が提案されてきた。たとえば、ポリオールたとえば、炭化水素ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールおよびポリエステルポリオールが、ウレタンオリゴマーの中で使用されてきた。商業的に入手しやすいこと、酸化に対して安定であること、および主鎖を調節することによって被覆の特性の融通がつきやすいことなどのために、ポリエステルポリオールは特に魅力がある。ウレタンアクリレートオリゴマーにおける主鎖ポリマーとしてポリエステルポリオールを使用することは、たとえば、米国特許第5,146,531号明細書、米国特許第6,023,547号明細書、米国特許第6,584,263号明細書、米国特許第6,707,977号明細書、米国特許第6,775,451号明細書、米国特許第6,862,392号明細書、さらには欧州特許出願公開第539 030A号明細書に記載がある。
【0015】
ウレタン前駆体のコスト、用途および取扱い性を考慮して、コーティング組成物においてウレタン非含有オリゴマーが使用されるようになってきた。たとえば、ウレタン非含有ポリエステルアクリレートオリゴマーが、ガラス光ファイバのための放射線硬化性コーティング組成物に使用されてきた。特開昭57−092552号公報(日東電工(Nitto Electric))には、ポリエステルジ(メタ)アクリレートを含むガラス光ファイバ被覆物質が開示されているが、ここでそのポリエステル主鎖は300以上の平均分子量を有している。独国特許出願公開第04 12 68 60A1号明細書(バイエル(Bayer))には、ポリエステルアクリレートオリゴマー、反応性希釈剤としての2−(N−ブチル−カルバミル)エチルアクリレート、および光重合開始剤としての2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンからなる、3−ファイバ・リボン(three−fiber ribbon)のためのマトリックス材料が開示されている。特願平10−243227(特開2000/072821号公報)には、2個の二酸または無水物でエンドキャップされヒドロキシエチルアクリレートで末端化されたポリエーテルジオールからなる、ポリエステルアクリレートオリゴマーを含む液状硬化性樹脂組成物が開示されている。米国特許第6,714,712B2号明細書には、ポリ酸残基またはその酸無水物、場合によっては反応性希釈剤、および場合によっては光重合開始剤を含む、ポリエステルおよび/またはアルキド(メタ)アクリレートオリゴマーを含む放射線硬化性コーティング組成物が開示されている。さらに、マーク・D・ソウチェック(Mark D.Soucek)およびアーロン・H・ジョンソン(Aaron H.Johnson)は、加水分解抵抗性を与えるためにヘキサヒドロフタル酸を使用することを開示している:「ニュー・イントラモレキュラー・エフェクト・オブザーブド・フォア・ポリエステルス:アン・アノメリック・エフェクト(New Intramolecular Effect Observed for Polyesters:An Anomeric Effect)」、JCT・リサーチ(JCT Research)第1巻、No.2、p.111(2004年4月)。
【0016】
現在、多くの光ファイバ被覆が入手可能ではあるが、既存の被覆に対して、改良された製造および/または性能を与える新規な光ファイバ被覆が得られれば望ましい。
【0017】
[発明の概要]
特許請求の範囲に記載の本発明の第一の態様は、光ファイバを被覆するのに好適なスーパーコーティングであって;
ここで、そのスーパーコーティングには少なくとも2層が含まれ、ここで、その第一の層が、光ファイバの外側表面と接触状態にある一次被覆であり、その第二の層が、その一次被覆の外側表面と接触状態にある、二次被覆であり、
ここで、その光ファイバの上の硬化された一次被覆が、最初の硬化後と、85℃、相対湿度85%で1ヶ月間エージングさせた後には以下の性質:
A)%RAU:約84%〜約99%;
B)インサイチュ弾性率:約0.15MPa〜約0.60MPaの間;および
C)チューブTg:約−25℃〜約−55℃を有し、
ここで、その光ファイバの上の硬化された二次被覆が、最初の硬化後と、85℃、相対湿度85%で1ヶ月間エージングさせた後には以下の性質:
A)%RAU:約80%〜約98%;
B)インサイチュ弾性率:約0.60GPa〜約1.90GPaの間;および
C)チューブTg:約50℃〜約80℃を有する。
【0018】
特許請求の範囲に記載の本発明の第二の態様は、特許請求の範囲に記載の本発明の第一の態様のスーパーコーティングを用いて被覆された光ファイバである。
【0019】
特許請求の範囲に記載の本発明の第三の態様は、線材を被覆するのに好適なスーパーコーティングであって、ここで、そのスーパーコーティングには少なくとも2層が含まれ、ここで、その第一の層が、線材の外側表面と接触状態にある一次被覆であり、その第二の層が、その一次被覆の外側表面と接触状態にある、二次被覆であり、
ここで、その光ファイバの上の硬化された一次被覆が、最初の硬化後と、85℃、相対湿度85%で1ヶ月間エージングさせた後には以下の性質:
A)%RAU:約84%〜約99%;
B)インサイチュ弾性率:約0.15MPa〜約0.60MPaの間;および
C)チューブTg:約−25℃〜約−55℃を有し;そして
ここで、前記線材の上の前記硬化された二次被覆が、最初の硬化後と、85℃、相対湿度85%で1ヶ月間エージングさせた後には以下の性質:
A)%RAU:約80%〜約98%;
B)インサイチュ弾性率:約0.60GPa〜約1.90GPaの間;および
C)チューブTg:約50℃〜約80℃を有する。
【0020】
特許請求の範囲に記載の本発明の第四の態様は、特許請求の範囲に記載の本発明の第三の態様のスーパーコーティングを用いて被覆された線材である。
【0021】
特許請求の範囲に記載の本発明の第五の態様は、スーパーコーティングを用いて光ファイバを被覆するための方法であって、
(i)ガラス線引タワーを運転してガラス光ファイバを製造する工程と;
(ii)請求項1に記載のスーパーコーティングを用いて前記ガラス光ファイバを被覆する工程と;
(iii)前記スーパーコーティングに放射線を照射して前記スーパーコーティングを硬化させる工程と;
を含み、
ここで、前記照射は、まず一次被覆に、次いで二次被覆へと順次に照射(ウェットオンドライ照射と呼ばれている)することができ、あるいはその照射が一次被覆と二次被覆に対して同時に照射(ウェットオンウェットと呼ばれている)することができる。
【0022】
[発明の詳細な説明]
本特許出願の全体を通して、以下の略称は、次に示される意味を有する。
【0023】
【表1】

【0024】
特許請求の範囲に記載の本発明は、光ファイバを被覆するために好適なスーパーコーティングであるが、ここで、前記スーパーコーティングには少なくとも2層が含まれる。その第一の層が、光ファイバの外側表面と接触状態にある一次被覆であり、その第二の層が、その一次被覆の外側表面と接触状態にある二次被覆である。
【0025】
[一次被覆]
本発明のスーパーコーティングにおいて使用するのに好適な一次被覆には、典型的には、一次オリゴマー、1種または複数の希釈剤モノマー、1種または複数の光重合開始剤、抗酸化剤、接着促進剤、および場合によっては1種または複数の光安定剤が含まれる。一次被覆が、CR一次被覆、P一次被覆、CA一次被覆、およびBJ一次被覆からなる群から選択されるのが好ましい。
【0026】
CR一次被覆に含まれるのは、(a)CR一次オリゴマー;(b)希釈剤モノマー;(c)光重合開始剤;(d)抗酸化剤;および(e)接着促進剤である。P一次被覆に含まれるのは、(a)P一次オリゴマー;(b)第一の希釈剤モノマー;(c)第二の希釈剤モノマー;(d)光重合開始剤;(e)抗酸化剤;および(f)接着促進剤、である。CA一次被覆に含まれるのは、(a)CA一次オリゴマー;(b)希釈剤モノマー;光重合開始剤;抗酸化剤;および接着促進剤である。BJ一次被覆に含まれるのは、(a)BJ一次オリゴマー;(b)第一の希釈剤モノマー;(c)第二の希釈剤モノマー;(d)第三の希釈剤モノマー;(e)第一の光安定剤;(f)第一の光重合開始剤;(g)第二の光重合開始剤;(h)抗酸化剤;(i)第二の光安定剤;および(j)接着促進剤、である。
【0027】
[一次オリゴマー]
本発明の一次被覆を形成するために使用される一次オリゴマーは、ヒドロキシル含有(メタ)アクリレート、1種または複数のイソシアネート、およびポリエーテルポリオールを、触媒および重合防止剤の存在下に反応させることによって調製される。CR一次オリゴマーは、ヒドロキシル含有(メタ)アクリレート;第一のイソシアネート;第二のイソシアネート;ポリエーテルポリオール;触媒;および重合防止剤の反応により調製される。P一次オリゴマーは、ヒドロキシル含有(メタ)アクリレート;第一のイソシアネート;第二のイソシアネート;ポリエーテルポリオール;触媒;および重合防止剤の反応により調製される。CA一次オリゴマーは、ヒドロキシル含有(メタ)アクリレート;第一のイソシアネート;第二のイソシアネート;ポリエーテルポリオール;触媒;および重合防止剤の反応により調製される。BJ一次オリゴマーは、ヒドロキシル含有(メタ)アクリレート;イソシアネート;ポリエーテルポリオール;重合防止剤;および触媒の反応により調製される。
【0028】
一次オリゴマーを調製するために使用されるヒドロキシル含有(メタ)アクリレートは、望ましくは、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートたとえばヒドロキシエチルアクリレート(HEA)であるか、またはポリプロピレングリコールモノアクリレート(PPA6)、トリプロピレングリコールモノアクリレート(TPGMA)、カプロラクトンアクリレート、およびペンタエリスリトールトリアクリレート(たとえば、SR−444)からなる群から選択されるアクリレートである。一次被覆が、CR、P、CAまたはBJ一次被覆である場合には、そのヒドロキシル含有(メタ)アクリレートがHEAであるのが好ましい。
【0029】
イソシアネートは、たとえば、芳香族脂肪族など、好適であればいかなるタイプのものでもよいが、望ましくはジイソシアネートである。好適なジイソシアネートは当業者には公知であり、たとえば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トルエンジイソシアネート(TDI、80%の2,4−異性体と20%の2,6−異性体の混合物(BASFから入手可能)、ならびにTDS、100%2,4−異性体のトルエンジイソシアネート)が挙げられる。一次被覆がCR、PまたはCA一次被覆である場合には、その第一のイソシアネートがTDIであるのが好ましく、その第二のイソシアネートがIPDIであるのが好ましい。一次被覆がBJ一次被覆である場合には、そのイソシアネートがIPDIであるのが好ましい。
【0030】
ポリエーテルポリオールは、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールからなる群から選択される。そのポリエーテルポリオールが、約300g/mol〜約5,000g/molの数平均分子量を有するポリプロピレングリコールであるのが好ましい。一次被覆がCR、PまたはCA一次被覆である場合には、そのポリエーテルポリオールが、プルラコール(Pluracol)P2010(BASFから入手可能)であるのが好ましい。一次被覆がBJ一次被覆である場合には、そのポリエーテルポリオールが、アクレイム4200ポリプロピレングリコール(バイエルから入手可能)であるのが好ましい。
【0031】
光ファイバのための放射線硬化性被覆に使用するためのウレタンベースのオリゴマーの合成法における触媒は、当業者には公知である。その触媒は、ナフテン酸銅、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、2−メチルトリエチレンアミン、ジブチルスズジラウレート;金属カルボキシレート、非限定的に挙げれば、たとえば、オルガノビスマス触媒たとえばビスマスネオデカノエート、CAS34364−26−6;亜鉛ネオデカノエート、CAS27253−29−8;ジルコニウムネオデカノエート、CAS39049−04−2;および亜鉛2−エチルヘキサノエート、CAS136−53−8;スルホン酸、非限定的に挙げれば、たとえばドデシルベンゼンスルホン酸、CAS27176−87−0;およびメタンスルホン酸、CAS75−75−2;アミノまたは有機塩基触媒、非限定的に挙げれば、たとえば、1,2−ジメチルイミダゾール、CAS1739−84−0;およびジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、CAS280−57−9(強塩基);およびトリフェニルホスフィン;ジルコニウムおよびチタンのアルコキシド、非限定的に挙げれば、たとえばジルコニウムブトキシド,(テトラブチルジルコネート)CAS1071−76−7;およびチタンブトキシド(テトラブチルチタネート)CAS5593−70−4;ならびにイオン性液状ホスホニウム、イミダゾリウム、およびピリジニウム塩、非限定的に挙げれば、たとえば、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、CAS No.374683−44−0;1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート、CAS No.284049−75−8;およびN−ブチル−4−メチルピリジニウムクロリド、CAS No.125652−55−3;およびテトラデシル(トリヘキシル)ホスホニウムからなる群から選択される。
【0032】
これらの触媒はすべて、市販されている。
【0033】
オリゴマー合成に使用される触媒の量は、被覆組成物全体の重量を基準にして、約0.01%〜約3%である。一次被覆がCR、PまたはBJ一次被覆である場合には、その触媒がDBTDLであるのが好ましい。一次被覆がCA一次被覆である場合には、その触媒が、オルガノビスマス触媒たとえば「コスキャット83」(専有権の存在するオルガノビスマス触媒、コスケム(CosChem)から入手可能)であるのが好ましい。
【0034】
一次オリゴマーの調製は、反応の間にアクリレートが重合するのを防止するのに使用される重合防止剤の存在下に実施する。重合防止剤は、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ヒドロキノンおよびその誘導体たとえば、メチルエーテルヒドロキノンおよび2,5−ジブチルヒドロキノン;3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン;メチル−ジ−tert−ブチルフェノール;2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールなどからなる群から選択される。一次オリゴマーがCR、P、CAまたはBJ一次オリゴマーである場合には、その重合防止剤がBHTであるのが好ましい。
【0035】
[希釈剤モノマー]
希釈剤モノマーは、化学線照射に暴露させたときに重合することが可能な少なくとも1個の官能基を有する低粘度モノマーである。たとえば、希釈剤モノマーは、アクリレートまたはビニルエーテル官能基と、C〜C20アルキルまたはポリエーテル残基を有する、単独のモノマーまたは複数のモノマーの混合物とすることができる。そのような希釈剤モノマーの具体例としてはたとえば以下のようなものが挙げられる:ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、2−エトキシエトキシエチルアクリレート、ラウリルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、イソデシルアクリレート(たとえば、SR395、サートマーから入手可能)、イソオクチルアクリレート、N−ビニル−カプロラクタム、N−ビニルピロリドン、トリプロピレングリコールモノアクリレート(TPGMA)、アクリルアミド、およびアルコキシル化誘導体、たとえば、エトキシル化ラウリルアクリレート、エトキシル化イソデシルアクリレートなど。
【0036】
使用することが可能なまた別のタイプの希釈剤モノマーは、芳香族基を有する化合物である。芳香族基を有する希釈剤モノマーの具体例としては、エチレングリコールフェニルエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールフェニルエーテルアクリレート、ポリプロピレングリコールフェニルエーテルアクリレート、および上述のモノマーのアルキル置換フェニル誘導体たとえば、ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテルアクリレートなどが挙げられる。好適な希釈剤モノマーは、エトキシル化ノニルフェノールアクリレート(たとえば、フォトマー4066、コグニスから入手可能;SR504D、サートマーから入手可能)である。
【0037】
その希釈剤モノマーには、重合可能な2個以上の官能基を有する希釈剤を含んでいてもよい。そのような希釈剤の具体例としては以下のものが挙げられる:C〜C18炭化水素ジオールジアクリレート、C〜C18炭化水素ジビニルエーテル、C〜C18炭化水素トリアクリレート、およびそれらのポリエーテル類似物、たとえば、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ヘキサンジオールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA、たとえば、SR306;SR306HP(サートマーから入手可能))、およびトリス−2−ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリアクリレート(たとえば、SR−368(サートマーから入手可能))。
【0038】
一次被覆がCRまたはCA一次被覆である場合には、その希釈剤モノマーが、エトキシル化ノニルフェノールアクリレート(たとえば、フォトマー4066)であるのが好ましい。一次被覆がP一次被覆である場合には、その第一の希釈剤モノマーがエトキシル化ノニルフェノールアクリレート(フォトマー4066)であるのが好ましく、その第二の希釈剤モノマーがトリプロピレングリコールジアクリレート(SR−306)であるのが好ましい。一次被覆がBJ一次被覆である場合には、その第一の希釈剤モノマーがエトキシル化ノニルフェノールアクリレート(たとえば、SR504D)であるのが好ましく、その第二の希釈剤モノマーがエトキシル化ビスフェノールAジアクリレート(たとえば、SR−349)であり、そしてその第三の希釈剤モノマーがイソデシルアクリレート(たとえば、SR395)である。
【0039】
[光重合開始剤]
一次被覆には、単一の光重合開始剤または複数の光重合開始剤の組合せを含むことができる。好適な光重合開始剤としては、α−ヒドロキシケトタイプの光重合開始剤およびホスフィンオキシドタイプの光重合開始剤が挙げられる。
【0040】
α−ヒドロキシケト−タイプの光重合開始剤としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(たとえば、イルガキュア184、チバ・ガイギーから入手可能;チバキュア184、サイテック・ケミカルズ(Chitec Chemicals)から入手可能)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(たとえば、ダロキュア1173、チバ・ガイギーから入手可能)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2,2−ジメトキシ−2−フェニル−アセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン(たとえば、イルガキュア907、チバ・ガイギーから入手可能)、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2−ヒドロキシ−2−プロピルケトン、ジメトキシ−フェニルアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、および4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトンなどが挙げられる。
【0041】
ホスフィンオキシドのタイプの光重合開始剤としては、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキシドのタイプ(TPO;たとえば、ルシリンTPO、BASFから入手可能;ダロキュアTPO、チバ・ガイギーから入手可能)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(たとえば、イルガキュア819、チバ・ガイギーから入手可能)、またはビスアシルホスフィンオキシドのタイプ(BAPO)光重合開始剤が挙げられる。光重合開始剤の好ましい組合せは、イルガキュア184とTPOとの組合せである。
【0042】
一次被覆がCRまたはCA一次被覆である場合には、その光重合開始剤が、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(TPO)(たとえば、チバキュアTPO、サイテックから入手可能)であるのが好ましい。一次被覆がP一次被覆である場合には、その光重合開始剤が、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(たとえば、イルガキュア819)であるのが好ましい。一次被覆がBJ一次被覆である場合には、その第一の光重合開始剤が、TPO(たとえば、チバキュアTPO、サイテックから入手可能)であるのが好ましく、その第二の光重合開始剤が1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(たとえば、チバキュア184)であるのが好ましい。
【0043】
[抗酸化剤]
抗酸化剤は立体障害フェノール系化合物であって、たとえば以下のものが挙げられる:2,6−ジターシャリーブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジターシャリーブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジターシャリーブチル−4−n−ブチルフェノール、4−ヒドロキシメチル−2,6−ジターシャリーブチルフェノール、ならびに市販されている化合物のたとえば、チオジエチレンビス(3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシル)ヒドロシンナメート、オクタデシル−3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート、1,6−ヘキサメチレンビス(3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)、およびテトラキス(メチレン(3,5−ジターシャリー−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート))メタン(これらはすべてイルガノックス1035、1076、259および1010として、チバ・ガイギーから入手可能である)。本明細書で有用な、立体障害フェノール系化合物のその他の例としては、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンおよび4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジターシャリーブチルフェノール)(エチル・コーポレーション(Ethyl Corporation)からそれぞれエチル(Ethyl)330および702として入手可能)が挙げられる。一次被覆がCR、P、CAまたはBJ一次被覆である場合には、その抗酸化剤がチオジエチレンビス(3,5−ジ−ジターシャリブチル−4−ヒドロキシル)ヒドロシンナメート(たとえば、イルガノックス1035)であるのが好ましい。
【0044】
[接着促進剤]
好適な接着促進剤としては以下のものが挙げられる:ビス−(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス−(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシ−プロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(たとえば、シルクェスト(Silquest)A−189、ゼネラルエレクトリックから入手可能)、γ−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、メチルトリス(イソプロペノキシ)シラン、N−ベータ−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、(N,N−ジメチル−3−アミノプロピル)シラン、ポリジメチルシロキサン、ビニルトリエトキシシラン、トリス−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)イソシアヌレート、またはそれらの組合せ。一次被覆がCR、P、CAまたはBJ一次被覆である場合には、その接着促進剤が、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(たとえば、シルクェスト(Silquest)A−189、ゼネラルエレクトリックから入手可能)であるのが好ましい。
【0045】
[光安定剤]
好適な光安定剤は、放射線硬化性被覆関連の当業者には公知であり、市場で入手可能であるが、UVAのベンゾフェノンのタイプに属する紫外光吸収剤、たとえば2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン(たとえば、ロウィライト(Lowilite)20、グレート・レークス・ケミカル(Great Lakes Chemical)から入手可能)、およびヒンダードアミン光安定剤(HALS)、たとえばビス(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(たとえば、チヌビン123、チバ・ガイギーから入手可能)などが挙げられる。一次被覆がBJ一次被覆である場合には、その第一の光安定剤がビス(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(たとえば、チヌビン123、チバ・ガイギーから入手可能)であるのが好ましく、そしてその第二の光安定剤が2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン(たとえば、ロウィライト20)であるのが好ましい。
【0046】
CR一次オリゴマーの好ましい実施態様は下記のものであるが、記載の重量%は、そのオリゴマーを調製する際に使用した成分の重量パーセントを基準としたものである。
ヒドロキシル含有(メタ)アクリレート(たとえば、HEA):約1〜約3重量%
芳香族イソシアネート(たとえば、TDI):約1〜約2重量%
脂肪族イソシアネート(たとえば、IPDI):約4〜約6重量%
ポリエーテルポリオール(たとえば、P2010):約40〜約60重量%
触媒(たとえば、DBTDL):約0.01〜約0.05重量%
重合防止剤(たとえば、BHT):約0.05〜約0.10重量%。
【0047】
CR一次被覆の好ましい実施態様においては、約20重量%〜約80重量%のCR一次オリゴマーに加えて、硬化可能な組成物の成分には、以下のものが含まれていてよい(硬化可能な組成物の重量パーセント基準):
希釈剤モノマー(たとえば、フォトマー4066):約35〜約45重量%;
光重合開始剤(たとえば、チバキュアTPO):約1.00〜約2.00重量%;
抗酸化剤(たとえば、イルガノックス1035):約0.25〜約0.75重量%;
接着促進剤(たとえば、A−189):約0.8〜約1.0重量%
100重量%になるように調節してよい)
【0048】
CR一次被覆のより好ましい実施態様は、以下の通りである:
【0049】
【表2】

【0050】
CA一次オリゴマーの好ましい実施態様は下記のものであるが、記載の重量%は、そのオリゴマーを調製する際に使用した成分の重量パーセントを基準としたものである。
ヒドロキシル含有(メタ)アクリレート(たとえば、HEA):約1〜約3重量%
芳香族イソシアネート(たとえば、TDA):約1〜約2重量%
脂肪族イソシアネート(たとえば、IPDI):約4〜約6重量%
ポリエーテルポリオール(たとえば、P2010):約40〜約60重量%
触媒(たとえば、コスキャット83):約0.01〜約0.05重量%
重合防止剤(たとえば、BHT):約0.05〜約0.10重量%。
【0051】
CA一次被覆の好ましい実施態様は下記の通りである:約40重量%〜約70重量%のCA一次オリゴマーに加えて、その硬化可能な組成物の成分には、以下のものが含まれていてよい(硬化可能な組成物の重量パーセント基準):
希釈剤モノマー(たとえば、フォトマー4066):約35〜約45重量%;
光重合開始剤(たとえば、チバキュアTPO):約1.00〜約2.00重量%;
抗酸化剤(たとえば、イルガノックス1035):約0.25〜約0.75重量%;
接着促進剤(たとえば、A−189):約0.8〜約1.0重量%
100重量%になるように調節してよい)
【0052】
CA一次被覆のより好ましい実施態様は、以下の通りである:
【0053】
【表3】

【0054】
P一次オリゴマーおよびP一次被覆を説明するために、以下の実施例を示す。
【0055】
【表4】

【0056】
BJ一次オリゴマーの好ましい実施態様は下記の通りである:
【0057】
【表5】

【0058】
BJ一次被覆の好ましい実施態様は下記の通りである:
【0059】
【表6】

【0060】
[二次被覆]
本発明のスーパーコーティングにおいて使用するのに好適な二次被覆には、典型的には、二次被覆オリゴマーブレンド物、1種または複数の希釈剤モノマー、1種または複数の光重合開始剤、抗酸化剤、および場合によっては1種または複数のスリップ添加剤が含まれる。一次被覆が、D二次被覆およびR二次被覆からなる群から選択されるのが好ましい。
【0061】
D二次被覆には(a)D二次被覆オリゴマーブレンド物が含まれ、それが(b)第一の希釈剤モノマー;(c)第二の希釈剤モノマー;(d)第三の希釈剤モノマー;(e)抗酸化剤;(f)第一の光重合開始剤;(g)第二の光重合開始剤;および(h)場合によってはスリップ添加剤、もしくはスリップ添加剤のブレンド物と混合される。
【0062】
[D二次被覆オリゴマーブレンド物]
D二次被覆オリゴマーブレンド物には、オメガオリゴマーおよびウプシロンオリゴマーが含まれる。
【0063】
オメガオリゴマーは、重合のための抗酸化剤および触媒の存在下に、ヒドロキシル含有(メタ)アクリレート、イソシアネート、ポリエーテルポリオール、およびトリプロピレングリコールを反応させることにより調製される。
【0064】
ウプシロンオリゴマーは、エポキシジアクリレートである。ウプシロンオリゴマーが、ビスフェノールAをベースとするエポキシジアクリレートオリゴマー、たとえばCN120またはCN120Zオリゴマー(サートマーから販売)であるのが好ましい。ウプシロンオリゴマーがCN120Zであれば、より好ましい。
【0065】
本明細書において特許請求される発明のD放射線硬化性二次被覆組成物の各成分の好適な重量パーセントは以下のとおりである。
【0066】
【表7】

【0067】
R二次被覆には、(a)R二次被覆オリゴマーブレンド物が含まれ、それが(b)第一の希釈剤モノマー、(c)第二の希釈剤モノマー、(d)抗酸化剤;(e)第一の光重合開始剤;(f)第二の光重合開始剤;および(g)場合によってはスリップ添加剤、もしくはスリップ添加剤のブレンド物と混合される。R二次被覆オリゴマーブレンド物には、少なくとも1種のウレタン非含有オリゴマー、アルファオリゴマーが含まれていなければならない。R二次被覆オリゴマーブレンド物の中の第二のオリゴマー(ベータオリゴマーと呼ばれる)は、ウレタン含有であっても、あるいはウレタン非含有であってもよいが、それがどちらであるにしても、それがアルファオリゴマーと同一であってはならない。そのブレンド物には、第三の、あるいはガンマオリゴマーが存在していてもよい。ガンマオリゴマーが存在している場合には、それは典型的にはエポキシである。
【0068】
R放射線硬化性二次被覆の好ましい実施態様においては、アルファ、ベータおよびガンマオリゴマーのすべてが、そのオリゴマーブレンド物中に存在する。以下の組成が、放射線硬化性二次被覆組成物のそれぞれの成分として好ましい重量パーセントとなっていることが見出された。
【0069】
【表8】

【0070】
R被覆におけるオリゴマーブレンド物のまた別な実施態様においては、ベータオリゴマーが存在しており、それは、無水物をヒドロキシル含有アクリレートと反応させることにより得られる、ウレタンを含まないオリゴマーである。
【0071】
【表9】

【0072】
添加の順序は次の通りである:(1)BHT、(2)HHPA、次いで(3)PTHF650。反応の中間点を過ぎてから、(4)TPP、(5)DABCO、および(6)エポテック(Epotec)YD−126を添加する。
【0073】
[スーパーコーティング]
一次被覆および二次被覆を合成した後に、それらを光ファイバに適用する。当業者には、光ファイバの製造法は公知である。光ファイバに対する被覆は、典型的には、光ファイバそのものを製造するところで実施する。
【0074】
まず一次被覆を適用し、ウェットオンドライ加工の場合では、次の工程でその一次被覆を適用するべき放射線源に暴露させて、一次被覆を硬化させる。ウェットオンウェット加工の場合ならば、次の工程で二次被覆を適用する。
【0075】
いずれの場合においても、一次被覆を適用した後に、その一次被覆の上に二次被覆を適用し、放射線を照射して、その二次被覆を硬化させる。
【0076】
被覆を硬化させるために使用する放射線は、重合反応を開始させることが可能な各種の放射線である。その被覆を硬化させるのに好適な放射線に紫外線(UV)および電子ビーム(EB)照射が含まれることは公知である。光ファイバの上で使用される本発明に一次および二次被覆を硬化させるための好ましいタイプの放射線は、UV照射である。この一次被覆と二次被覆との組合せを「スーパーコーティング」と呼ぶ。
【0077】
スーパーコーティングは、約750m/分〜約2,100m/分の間の線速度で光ファイバに、満足のいくレベルで適用することができる。
【0078】
二次被覆を硬化させた後で、場合によっては、「インキ被覆」層を適用し、次いでその被覆され、インキ付着された光ファイバを、他の被覆され、インキ付着された光ファイバと「リボンアセンブリー」の中で、隣り合わせに並べ、放射線硬化性マトリックス被覆を使用して、それらの光ファイバをリボンアセンブリーの中の所望の位置に固定する。
【0079】
スーパーコーティングには、本明細書に定義されたような、CR一次被覆、P一次被覆、CA一次被覆、およびBJ一次被覆からなる群から選択される一次被覆と、D二次被覆およびR二次被覆から選択される二次被覆とが含まれているのが好ましい。
【0080】
線引タワーシミュレーターにおいて使用される光ファイバ上または線材上で、一次被覆と二次被覆両方の物理的性質のスーパーコーティング組合せが最適であることが見出された。
【0081】
[線引タワーシミュレーター実施例]
光ファイバ被覆開発の初期の頃には、新規に開発された一次および二次被覆はすべて、最初にそれらの硬化膜の物性についての試験を行ってから、ファイバ線引タワーでの評価にかけていた。線引を要求された被覆全部の中から、線引タワーで試験されたのは多くともそれらの30%であったと推測されるが、その理由は、コストがかかることと、スケジュール調整が困難であったためである。被覆が最初に配合されたときからガラスファイバに適用されるまでの時間は、典型的には約6ヶ月であり、そのために製品開発サイクルが大いに遅れることとなった。
【0082】
光ファイバのための放射線硬化させた被覆の技術においては、一次被覆または二次被覆のいずれかをガラスファイバに適用したときに、その性質が、同一の被覆の硬化膜のフラットな膜特性とは異なっていることが多いのは、よく知られていることである。ファイバ上の被覆とフラットな膜の被覆とでは、サンプルサイズ、形状、暴露UV強度、UV全受光量、加工速度、基材の温度、硬化温度、および場合によっては窒素不活性条件の面で異なっていることがその理由であろうと考えられる。
【0083】
より信頼性の高い被覆開発のルートとより速やかな展開時間とを可能とするための、ファイバを製造する際に類似の硬化条件を与える装置が開発されてきた。このタイプの代替えの塗布および硬化装置では、容易に使用できること、メンテナンスの手間がかからないこと、および再現性のある性能が得られることが必要とされた。その装置の名前が、「線引タワーシミュレーター」であり、以後においては「DTS]と略す。線引タワーシミュレーターは、自家用に設計したものであって、実際のガラスファイバ線引タワー要素を詳しく検討した上で製作されている。すべての寸法(ランプの位置、被覆ステージの間の距離、被覆ステージの間のギャップ、UVランプなど)は、ガラスファイバ線引タワーの再現となっている。このことは、ファイバ線引産業において使用されている加工条件を模倣するのに役立っている。
【0084】
一つの公知のDTSには、5個のフュージョンF600ランプ(2個は、上側被覆ステージ用、3個は下側用)が備えられている。それぞれのステージの第二のランプが、15〜135度の間の任意の角度で回転することが可能となっていて、硬化プロフィールをより詳しく検討することが可能となっている。
【0085】
公知のDTSで使用されている「コア」は、130.0±1.0μmのステンレス鋼線材である。各種のサプライヤーからの、各種の設計のファイバ線引アプリケーターが、評価に利用できる。この構成によって、工業的な生産サイトに実在しているのと類似の条件で、光ファイバ被覆に適用することが可能となる。
【0086】
線引タワーシミュレーターはすでに、光ファイバ上の放射線硬化性被覆の解析を拡張するために使用されている。2003年には、被覆の強さ、硬化度、および各種環境下におけるファイバの性能を表すのに利用することができる、一次被覆のインサイチュ弾性率を測定するための方法が、P.A.M.スティーマン(P.A.M.Steeman)、J.J.M.スロット(J.J.M.Slot)、H.G.H.ファン・メリック(H.G.H.van Melick)、A.A.F.v.d.ベン(A.A.F.v.d.Ven)、H.カオ(H.Cao)およびR.ジョンソン(R.Johnson)によって、プロシーディングズ・オブ・ザ・52nd・IWCS(Proceedings of the 52nd IWCS)、p.246(2003)に報告されている。2004年には、スティーマン(Steeman)らが、より早い線引速度での被覆の加工性を予測するために、レオロジー的高剪断プロファイルをいかに使用することができるかについて報告している(P.A.M.スティーマン(P.A.M.Steeman)、W.ゾエテリエフ(W.Zoetelief)、H.カオ(H.Cao)、およびM.ブルタース(M.Bulters)、ザ・プロシーディングズ・オブ・ザ・53rd・IWCS(Proceedings of the 53rd IWCS)、p.532(2004))。線引タワーシミュレーターを使用して、光ファイバ上の一次および二次被覆の性質をさらに検討することができる。
【0087】
[試験方法]
[一次被覆におけるアクリレート不飽和反応%(%RAU一次試験方法と省略)]
光ファイバまたは金属線材の上の内側の一次被覆の上での硬化度を、ダイヤモンドATR付属品を使用したFTIRによって測定する。FTIR装置パラメータは次の通りである:コアッデッドスキャン100、解像度4cm−1、DTGS検出器、スペクトル範囲4000〜650cm−1、信号対ノイズ比を改良する目的でデフォルトのミラー速度を約25%抑制。二つのスペクトルが必要であって、その一つは、ファイバまたは線材の被覆に相当する未硬化の液状被覆のスペクトルであり、もう一つは、ファイバまたは線材の内側の一次被覆のスペクトルである。コンタクトセメントの薄膜を、3ミルのマイラー(Mylar)フィルムの1インチ平方の小片の中央部分に塗りつける。そのコンタクトセメントが粘着性となってから、光ファイバまたは線材の小片をその中に入れる。そのサンプルを低倍率の光学顕微鏡の下に置く。ファイバまたは線材の上の被覆を、鋭利なメスを使用してガラスまでスライスする。次いでその被覆を、ファイバまたは線材の上側で長さ方向に約1センチメートルの切り目を入れて、その切断が滑らかであること、および外側の被覆が一次被覆の中に折り込まれていないことを確認する。次いで、その被覆をコンタクトセメントの上に広げて、ガラスまたは線材に隣り合う一次被覆がフラットな膜として暴露されるようにする。ガラスファイバまたは線材を、一次被覆が暴露されている領域から取り去る。
【0088】
液状の被覆のスペクトルは、被覆を用いてダイヤモンド表面を完全に覆った後で得られる。その液状物は、可能であるならば、ファイバまたは線材を被覆するために用いたのと同一のバッチとするべきであるが、最低限の条件としても、同一の配合物でなければならない。スペクトルの最終的なフォーマットは、吸光度とするべきである。マイラーフィルムの上に暴露された一次被覆を、ファイバまたは線材の軸が赤外線光束の方向と平行になるようにして、ダイヤモンドの中心部の上に載せる。サンプルの後ろから圧力をかけて、結晶に良好な密着性が得られるようにするべきである。得られるスペクトルに、コンタクトセメントからのいかなる吸光度も含まれないようにするべきである。コンタクトセメントのピークが観察された場合には、フレッシュなサンプルを調製するべきである。複数のサンプルを調製し、全部のサンプルの調製が完全に済んでからスペクトルを測定するよりは、サンプルを調製した直後にスペクトルを測定することが重要である。スペクトルの最終的なフォーマットは、吸光度とするべきである。
【0089】
液状物および硬化させた被覆のいずれの場合においても、アクリレートの二重結合ピーク(810cm−1)と参照ピーク(750〜780cm−1領域)の両方のピーク面積を測定する。ピーク面積はベースライン法を用いて測定するが、それには、ピークの両側の吸収極小に対して接線となるようにベースラインを選ぶ。次いで、ピークより下でベースラインより上の面積を求める。液状物と硬化させたサンプルではその積分限界が同一ではないが、(特に参照ピークでは)似たようなものである。
【0090】
液状物と硬化させたサンプルの両方について、アクリレートのピーク面積の参照ピーク面積に対する比を求める。反応したアクリレート不飽和パーセント(%RAU)として表される硬化度は、次式に従って計算する:
【数1】


式中、Rは、液状サンプルの面積比であり、Rは硬化させた一次の面積比である。
【0091】
[%RAU二次試験方法]
光ファイバ上の外側被覆の硬化度は、ダイヤモンドATRアクセサリーを使用したFTIRによって求める。FTIR装置パラメータは次の通りである:コアッデッドスキャン100、解像度4cm−1、DTGS検出器、スペクトル範囲4000〜650cm−1、信号対ノイズ比を改良する目的でデフォルトのミラー速度を約25%抑制。ファイバ上の被覆に相当する未硬化の液状被覆のスペクトルと、ファイバ上の外側被覆のスペクトルの、2種のスペクトルが必要である。液状の被覆のスペクトルは、被覆を用いてダイヤモンド表面を完全に覆った後で得られる。その液状物は、可能であるならば、ファイバを被覆するために用いたのと同一のバッチとするべきであるが、最低限の条件としても、同一の配合物でなければならない。スペクトルの最終的なフォーマットは、吸光度とするべきである。
【0092】
ファイバをダイヤモンドの上に載せ、そのファイバに充分な圧力を加えて、定量分析に適したスペクトルが得られるようにする。スペクトル強度を最大とするためには、ファイバを、ダイヤモンドの中心部分に、赤外光線の方向と平行になるように置くべきである。単一のファイバでは充分な強度が得られないような場合には、2〜3本のファイバを相互に平行に、できるだけ接近させて、ダイヤモンドの上に載せてもよい。スペクトルの最終的なフォーマットは、吸光度とするべきである。
【0093】
液状物および硬化させた被覆のいずれの場合においても、アクリレートの二重結合ピーク(810cm−1)と参照ピーク(750〜780cm−1領域)の両方のピーク面積を測定する。ピーク面積はベースライン法を用いて測定するが、それには、ピークの両側の吸収極小に対して接線となるようにベースラインを選ぶ。次いで、ピークより下でベースラインより上の面積を求める。液状物と硬化させたサンプルではその積分限界が同一ではないが、(特に参照ピークでは)似たようなものである。
【0094】
液状物と硬化させたサンプルの両方について、アクリレートのピーク面積の参照ピーク面積に対する比を求める。反応したアクリレート不飽和パーセント(%RAU)として表される硬化度は、次式に従って計算する:
【数2】


式中、Rは、液状サンプルの面積比であり、Rは硬化させた外側被覆の面積比である。
【0095】
[一次被覆のインサイチュ弾性率試験方法]
二重被覆された(ソフトな一次被覆およびハードな二次被覆)ガラスファイバまたは金属線材ファイバ上の一次被覆のインサイチュ弾性率をこの試験方法によって測定する。この試験についての詳細な検討は、スティーマン(Steeman)P.A.M.;スロット(Slot)J.J.M.;メリック(Melick)N.G.H.van;ベン(Ven)A.A.F.van de;カオ(Cao)H.およびジョンソン(Johnson)R.(2003)、「メカニカル・アナリシス・オブ・ザ・インサイチュ・プライマリー・コーティング・モジュラス・テスト・フォア・オプティカル・ファイバーズ(Mechanical analysis of the in−situ Primary Coating modulus test for optical fibers)」、プロシーディングズ・52nd・インターナショナル・ワイヤー・アンド・ケーブル・シンポジウム(Proceedings 52nd International Wire and Cable Symposium)」(IWCS、フィラデルフィア(Philadelphia)、USA、2003年11月10〜13日))p.41に見出すことができる。サンプルを調製するためには、ファイバの末端から約2cmの位置で、剥離工具を用いて短い長さ(約2mm)の被覆層を剥がす。剥離された被覆の端からファイバ末端までが正しく8mmになるようにそのファイバを切断して、そのもう一つの端部を形成させる。次いで、その8mmの被覆されたファイバの部分を、論文[1]の図6に模式的に示されているような金属サンプル固定具(metal sample fixture)の中に挿入する。その被覆されたファイバを固定具中のマイクロチューブの中に埋め込むが、そのマイクロチューブは、二つの半円筒状の溝から構成されていて、その直径は標準的なファイバの外径(約245μm)とほぼ同じになるように作られている。ねじを締めて、ファイバをしっかりと保持するが、その二次被覆の表面にかかる保持力は均質であって、被覆層に何の顕著な変形も起きない。次いで、ファイバを組み入れた固定具を、DMA(動的機械分析)装置のレオメトリックス・ソリッズ・アナライザー(Rheometrics Solids Analyzer)(RSA−II)に載せる。その金属固定具を底部のグリップにくわえさせる。上側のグリップを締めていって、被覆されたファイバの上側部分に圧力をかけて、それが被覆層を押しつぶすようにする。固定具とファイバは、垂直方向にまっすぐになっていなければならない。埋め込まれていないファイバの部分は、それぞれのサンプルで一定の長さ(本発明者らの試験では6mm)となるように調節するべきである。歪みオフセットを調節して、軸のプリテンションがほとんどゼロになるように設定する(−1g〜1g)。
【0096】
一次被覆の剪断弾性率Gを測定するための剪断サンドイッチ形状設定を選択する。剪断サンドイッチ試験のサンプルの幅Wは、次式に従って計算して0.24mmであると入力する。
【数3】


式中、RとRは、それぞれ、むき出しのファイバと一次被覆の外半径である。標準的なファイバの形状としては、R=62.5μm、R=92.5μmを用いて計算する。サンプル長さ8mm(埋め込み長さ)および厚み0.03mm(一次被覆厚み)を、剪断サンドイッチ形状に入力する。試験は室温(約23℃)で実施する。使用する試験周波数は、1.0ラジアン/秒である。剪断歪みεは、0.05に設定する。動的時間掃引を行って、断貯蔵弾性率Gを求めるための四つのデータポイントを得る。報告しているGは、全部のデータポイントの平均値である。
【0097】
こうして測定した剪断弾性率Gを、論文[1]に記載されている補正法に従って補正する。その補正法には、埋め込まれた部分および埋め込まれていない部分のガラスの伸びを配慮することが含まれている。その補正手順の中では、むき出しのファイバの引張弾性率(E)を入力する必要がある。ガラスファイバの場合には、E=70GPaである。線材ファイバの場合で、ステンレス鋼S314線材を使用している場合には、E=120GPaである。そうして補正されたGを、実際のRとRの値を用いてさらに調整する。ガラスファイバの場合、RおよびRの値を含むファイバ形状は、PK2400ファイバ・ジオメトリー・システム(Fiber Geometry System)により測定する。線材ファイバの場合、直径130μmのステンレス鋼S314線材を使用したときにはRは65μmであり、Rは顕微鏡下で測定する。最後に、ファイバ上の一次被覆についてのインサイチュ弾性率E(引張貯蔵弾性率)を、E=3Gに従って計算する。報告しているEは、三つの試験サンプルの平均値である。
【0098】
[二次被覆のインサイチュ弾性率試験方法]
二重被覆された(ソフトな一次被覆およびハードな二次被覆)ガラスファイバまたは金属線材ファイバ上の二次被覆のインサイチュ弾性率をこの試験方法によって測定する。サンプルを調製するためには、ファイバから完全な被覆チューブとして長さ約2cmの被覆層を被覆されたファイバの一端から剥離させるために、まず被覆されたファイバの一端を剥離用工具と共に液体Nの中に少なくとも10秒間浸漬させ、次いで、その被覆層がまだ硬いうちに素早く被覆チューブを剥離させる。DMA(動的機械分析)装置:レオメトリックス・ソリッズ・アナライザー(RSA−II)を用いて二次被覆の弾性率を測定する。二重被覆されたファイバでは、二次被覆の方が一次被覆よりもはるかに高い弾性率を有しているので、被覆チューブで得られた動的引張試験結果における一次被覆からの寄与は無視することが可能である。RSA−IIでは、二つのグリップの間の距離の調節に限界があるので、その被覆チューブサンプルは、二つのグリップの間の距離よりも短くてもよい。ねじによって開口端に折り曲げて固定された金属プレートで作られた単純なサンプル支持具を使用して、被覆チューブサンプルを下端からしっかりと保持する。その固定物を下側グリップの中央までスライドさせ、グリップを固定する。ピンセットを使用して、その被覆チューブを上側グリップを通して直立位置にまでまっすぐにする。上側グリップを閉じて固定する。プリテンションが約10gになるまで、歪みオフセットを調節する。
【0099】
試験は室温(約23℃)で実施する。DMAの動的引張試験モード下においては、その試験周波数を1.0ラジアン/秒に設定し、歪みは5E−4である。形状のタイプは円筒を選択する。サンプル長さは、金属固定物の上端と下側グリップのとの間の被覆チューブの長さであって、本願発明者らの試験においては11mmである。次式に従って、その直径(D)は0.16mmと入力する:
【数4】


式中、RとRはそれぞれ、二次被覆と一次被覆の外半径である。標準的なファイバの形状としては、R=122.5μm、R=92.5μmを用いて計算する。動的時間スイープを行わせ、引張貯蔵弾性率Eについて5点のデータポイントを記録させる。報告しているEは、全部のデータポイントの平均値である。次いで、このようにして測定された弾性率Eに実際のファイバ形状で使用される補正係数をかけて補正する。補正係数は次式で表される。
【数5】


ガラスファイバの場合、RおよびRの値を含む実際のファイバ形状は、PK2400ファイバ・ジオメトリー・システム(Fiber Geometry System)により測定する。線材のファイバの場合には、RおよびRは顕微鏡下で測定する。報告しているEは、三つの試験サンプルの平均値である。
【0100】
[一次および二次被覆のインサイチュT測定の試験方法]
二重被覆されたガラスファイバ上、または金属線材ファイバ上の一次および二次被覆のガラス転移温度(T)は、この方法により測定する。それらのガラス転移温度は、「チューブTg」と呼ばれる。
【0101】
サンプルを調製するためには、ファイバから完全な被覆チューブとして長さ約2cmの被覆層を被覆されたファイバの一端から剥離させるために、まず被覆されたファイバの一端を剥離用工具と共に液体Nの中に少なくとも10秒間浸漬させ、次いで、その被覆層がまだ硬いうちに素早く被覆チューブを剥離させる。
【0102】
DMA(動的機械分析)装置:レオメトリックス・ソリッズ・アナライザー(RSA−II)を使用。RSA−IIの場合、RSAIIの二つのグリップの間のギャップは最大で1mmまで拡張することができる。そのギャップは、歪みオフセットを調節することによって、まず最小レベルに調節する。ねじによって開口端に折り曲げて固定された金属プレートで作られた単純なサンプル支持具を使用して、被覆チューブサンプルを下端からしっかりと保持する。その固定物を下側グリップの中央までスライドさせ、グリップを固定する。ピンセットを使用して、その被覆チューブを、上側グリップを通して直立位置にまでまっすぐにする。上側グリップを閉じて固定する。オーブンを閉じ、温度調節媒体としての液体窒素を用いて、二次被覆のためのTよりも高い値かまたは100℃にオーブン温度に設定する。オーブン温度がその温度に到達したら、歪みオフセットを調節して、プリテンションが0g〜0.3gになるようにする。
【0103】
DMAの動的温度ステップ試験では、試験周波数を1.0ラジアン/秒に設定し、歪みが5E−3であり、温度の増分が2℃であり、保持時間(soak time)が10秒である。形状のタイプは円筒を選択する。形状の設定は、二次インサイチュ弾性率試験で使用したものと同じであった。サンプル長さは、金属固定物の上端と下側グリップのとの間の被覆チューブの長さであって、本願発明者らの試験においては11mmである。次式に従って、その直径(D)は0.16mmと入力する:
【数6】


式中、RとRはそれぞれ、二次被覆と一次被覆の外半径である。標準的なファイバの形状としては、R=122.5μm、R=92.5μmを用いて計算する。
【0104】
動的温度ステップは、出発温度(今回の試験では100℃)から一次被覆のTまたは−80℃より低い温度までの間で実施する。実験の後で、tanδ曲線からのピークを、一次被覆のT(低い方の温度に相当)および二次被覆のT(高い方の温度に相当)として報告する。注意すべきは、測定されたガラス転移温度、特に一次ガラス転移温度は、ファイバ上の被覆層のガラス転移温度の相対的な値と考えるべきであるということであるが、その理由は、被覆チューブの複雑な構造からのtanδのシフトがあるからである。
【0105】
[実施例1〜3]
P一次被覆の3種の異なった実施例を、次式の配合に従って作成する。
【0106】
【表10】

【0107】
R二次被覆を次式の配合に従って作成する。
【0108】
【表11】

【0109】
[線引タワーシミュレーター実施例]
先に定義されたような、P一次被覆およびR二次被覆の各種の組成物を、線引タワーシミュレーターを使用して、線材に適用する。線材は、5種類の速度、750メートル/分、1200メートル/分、1500メートル/分、1800メートル/分、および2100メートル/分で走らせる。ウェットオンドライ法で線引を実施するが、これは、液状の一次被覆をウェットで適用し、その液状の一次被覆を硬化させてその線材の上の固体層とすることを意味している。一次被覆を硬化させた後に、二次被覆を適用し、次いで同様にして硬化させる。
【0110】
一次被覆および二次被覆の性質は、以下の試験法に基づいて測定し、報告する:%RAU、初期、および非調節光線下85℃/RH85で1ヶ月の経過後。一次被覆を硬化させてから、二次被覆を適用する。
【0111】
[線引タワーシミュレーター例1]
P一次被覆およびR二次被覆を用いて複数のランを実施する。線材の上で硬化されたP一次被覆および硬化されたR二次被覆について、初期%RAU、初期インサイチュ弾性率および初期チューブTgの試験をする。次いで被覆された線材を、85℃、相対湿度85%で1ヶ月間エージングさせる。線材の上で硬化されたP一次被覆および線材の上で硬化されたR二次被覆について、次いで1ヶ月のエージングを行い、%RAU、インサイチュ弾性率およびエージング後チューブTgの試験をする。
線引タワーシミュレーターの設定条件:
・ツァイデル(Zeidl)ダイを使用する。1度用にはS99、2度用にはS105。
・750、1000、1200、1500、1800、および2100m/分の速度とする。
・ウェットオンドライプロセスでは5個のランプを使用、ウェットオンウェットプロセスでは3個のランプを使用する。
(2)1度被覆では、600W/inのDフュージョンUVランプを100%で使用する。
(3)2度被覆では、600W/inのDフュージョンUVランプを100%で使用する。
・2回の被覆のための温度は30℃である。ダイもまた30℃に設定する。
・二酸化炭素レベルは、それぞれのダイで7リットル/分である。
・窒素レベルは、それぞれのランプで20リットル/分である。
・1度被覆のための圧力は、25m/分で1バールであるが、1000m/分では3バールまで上げる。
・2度被覆のための圧力は、25m/分で1バールであるが、1000m/分では4バールまで上げる。
【0112】
線材の上で硬化された放射線硬化性一次被覆および硬化された二次被覆は、以下の性質を有していることが判った。
【0113】
【表12】

【0114】
この情報を用いることにより、第一および第二の層を用いて被覆された線材を記述し特許請求することが可能となるが、ここで、その第一の層が、線材の外側表面と接触状態にある、特許請求の範囲に記載の本発明の、硬化された放射線硬化性一次被覆であり、その第二の層が、その線材の外側表面と接触状態にある、特許請求の範囲に記載の本発明の、硬化された放射線硬化性二次被覆であり、
ここで、その線材の上の硬化された一次被覆が、最初の硬化後と、85℃、相対湿度85%で1ヶ月間エージングさせた後には以下の性質:
A)%RAU:約84%〜約99%;
B)インサイチュ弾性率:約0.15MPa〜約0.60MPaの間;および
C)チューブTg:約−25℃〜約−55℃を有し;そして
ここで、その線材の上の硬化された二次被覆が、最初の硬化後と、85℃、相対湿度85%で1ヶ月間エージングさせた後には以下の性質:
A)%RAU:約80%〜約98%;
B)インサイチュ弾性率:約0.60GPa〜約1.90GPaの間;および
C)チューブTg:約50℃〜約80℃を有する。
【0115】
この情報を用いることにより、第一および第二の層を用いて被覆された光ファイバを記述し特許請求することも可能となるが、ここで、その第一の層が、光ファイバの外側表面と接触状態にある、特許請求の範囲に記載の本発明の、硬化された放射線硬化性一次被覆であり、その第二の層が、その一次被覆の外側表面と接触状態にある、特許請求の範囲に記載の本発明の、硬化された放射線硬化性二次被覆であり、
ここで、その光ファイバの上の硬化された一次被覆が、最初の硬化後と、85℃、相対湿度85%で1ヶ月間エージングさせた後には以下の性質:
A)%RAU:約84%〜約99%;
B)インサイチュ弾性率:約0.15MPa〜約0.60MPaの間;および
C)チューブTg:約−25℃〜約−55℃を有し、
ここで、その光ファイバの上の硬化された二次被覆が、最初の硬化後と、85℃、相対湿度85%で1ヶ月間エージングさせた後には以下の性質:
A)%RAU:約80%〜約98%;
B)インサイチュ弾性率:約0.60GPa〜約1.90GPaの間;および
C)チューブTg:約50℃〜約80℃を有する。
【0116】
[線引タワーシミュレーター例2]
P一次被覆のバッチの一つと、R二次被覆のバッチの一つとを、線引タワーシミュレーターを用いて、線材に適用する。線引は、ウェットオンドライ・モードまたはウェットオンウェット・モードのいずれかを用いて実施する。ウェットオンドライ・モードとは、液状の一次被覆をウェットで適用し、次いでその液状の一次被覆を硬化させて線材上の固体層とすることを意味している。一次被覆を硬化させた後に、二次被覆を適用し、次いで同様にして硬化させる。ウェットオンウェット・モードとは、液状の一次被覆をウェットで適用し、次いで二次被覆をウェットで適用し、次いで一次被覆と二次被覆の両方を硬化させる。
【0117】
線材を5種の異なった線速度で走らせ、その一次被覆および二次被覆の性質を、以下の試験で測定し、報告する:%RAU一次、%RAU二次、インサイチュ弾性率一次、インサイチュ弾性率二次、ならびに一次チューブTgおよび二次チューブTg。次いでその線材を、85℃/85%RHで、光の調節無しでエージングさせる。この1ヶ月のエージングの後に、上述した試験を実施する。
線引タワーシミュレーターの設定条件:
・ツァイデル(Zeidl)ダイを使用する。1度用にはS99、2度用にはS105。
・750、1000、1200、1500、1800、および2100m/分の速度とする。
・ウェットオンドライプロセスでは5個のランプを使用、ウェットオンウェットプロセスでは3個のランプを使用する。
(2)1度被覆では、600W/inのDフュージョンUVランプを100%で使用する。
(3)2度被覆では、600W/inのDフュージョンUVランプを100%で使用する。
・2回の被覆のための温度は30℃である。ダイもまた30℃に設定する。
・二酸化炭素レベルは、それぞれのダイで7リットル/分である。
・窒素レベルは、それぞれのランプで20リットル/分である。
・1度被覆のための圧力は、25m/分で1バールであるが、1000m/分では3バールまで上げる。
・2度被覆のための圧力は、25m/分で1バールであるが、1000m/分では4バールまで上げる。
【0118】
線材の上に放射線硬化性P一次被覆および放射線硬化性R二次被覆を有する、硬化させたスーパーコーティングは、以下のような性質を有していることが見出される。
【0119】
【表13】

【0120】
本明細書に引用された、公刊物、特許出願、および特許を含めたすべての参考文献は、それぞれの文献が個別にかつ具体的に参照することにより本明細書に組み入れられ、その内容全てに言及されているのと同じ程度に、参照により本明細書に援用されたものとする。
【0121】
本発明を記述する文脈においては(特に添付の特許請求の範囲の文脈においては)、不定冠詞の「a」および「an」ならびに定冠詞の「the]ならびに類似の指示語は、本明細書において特に断らない限り、あるいは文脈において明白に矛盾することがない限り、単数と複数の両方を包含するものと受け取るべきである。「comprising」、「having」、「including」、および「containing」という用語は、特に断らない限り、オープンエンド用語(すなわち、「含むが、それらに限定される訳ではない」ことを意味する)と受け取るべきである。本明細書において数値の範囲を示す場合には、本明細書において特に断らない限り、その範囲内に入るそれぞれ個別の数値を引用することの単に簡便法として使用しているものであって、それぞれの個別の数値が、本明細書において独立して引用されたかのごとくに組み入れられているものとする。本明細書に記載されたすべての方法は、本明細書において特に断らない限り、あるいは文脈において明白に矛盾することがない限り、各種適切な順序で実施することが可能である。本明細書で提供されたいずれかおよび全部の例、または例示語(たとえば、「たとえば」)の使用は、本発明をより明瞭に説明することを単に意図したものであり、特に断らない限り、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書中のいずれの文言も、本発明の実施に対して不可欠である、特許請求されていない要素を示しているものと受け取ってはならない。
【0122】
本発明の好ましい実施態様を本明細書に記載したが、それらは、本発明を実施するための、本発明者らが知りうる最良の形態を含んでいる。これまでの記述を読めば、それらの好ましい実施態様の変更は当業者にとっては明らかであろう。本発明者らは、そのような変更例を当業者が適切に採用することを期待し、また本発明者らは、本明細書に具体的に記載されたのとは別な方法で本発明を実施できると考えている。したがって、本発明には、適用法によって許されることとして、本明細書に添付の特許請求の範囲に記載の主題のすべての変更と等価物が含まれている。さらには、すべての可能な変更において、本明細書において特に断らない限り、あるいは文脈において明白に矛盾することがない限り、詳述の構成要素のいかなる組合せ物も本発明に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバを被覆するために好適なスーパーコーティングであって:
前記スーパーコーティングが、少なくとも2層を含み、前記第一の層が、前記光ファイバの外側表面と接触状態にある一次被覆であり、前記第二の層が、前記一次被覆の外側表面と接触状態にある、二次被覆であり、
前記光ファイバの上の前記硬化された一次被覆が、最初の硬化後と、85℃、相対湿度85%で1ヶ月間エージングさせた後には以下の性質:
A)%RAU:約84%〜約99%;
B)インサイチュ弾性率:約0.15MPa〜約0.60MPaの間;および
C)チューブTg:約−25℃〜約−55℃を有し、
前記光ファイバの上の前記硬化された二次被覆が、最初の硬化後と、85℃、相対湿度85%で1ヶ月間エージングさせた後には以下の性質:
A)%RAU:約80%〜約98%;
B)インサイチュ弾性率:約0.60GPa〜約1.90GPaの間;および
C)チューブTg:約50℃〜約80℃を有する、スーパーコーティング。
【請求項2】
請求項1に記載のスーパーコーティングを用いて被覆された光ファイバ。
【請求項3】
前記光ファイバが、シングルモード光ファイバである、請求項2に記載の光ファイバ。
【請求項4】
前記光ファイバが、マルチモード光ファイバである、請求項2に記載の光ファイバ。
【請求項5】
線材を被覆するのに好適なスーパーコーティングであって:
前記スーパーコーティングが、少なくとも2層を含み、前記第一の層が、前記線材の外側表面と接触状態にある一次被覆であり、前記第二の層が、前記一次被覆の外側表面と接触状態にある、二次被覆であり、
前記線材の上の前記硬化された一次被覆が、最初の硬化後と、85℃、相対湿度85%で1ヶ月間エージングさせた後には以下の性質:
A)%RAU:約84%〜約99%;
B)インサイチュ弾性率:約0.15MPa〜約0.60MPaの間;および
C)チューブTg:約−25℃〜約−55℃を有し;そして
前記線材の上の前記硬化された二次被覆が、最初の硬化後と、85℃、相対湿度85%で1ヶ月間エージングさせた後には以下の性質:
A)%RAU:約80%〜約98%;
B)インサイチュ弾性率:約0.60GPa〜約1.90GPaの間;および
C)チューブTg:約50℃〜約80℃を有する、スーパーコーティング。
【請求項6】
請求項5に記載のスーパーコーティングを用いて被覆された線材。
【請求項7】
スーパーコーティングを用いて、光ファイバを被覆するための方法であって、
(i)ガラス線引タワーを運転してガラス光ファイバを製造する工程と;
(ii)請求項1に記載のスーパーコーティングを用いて前記ガラス光ファイバを被覆する工程と;
(iii)前記スーパーコーティングに放射線を照射して前記スーパーコーティングを硬化させる工程と;
を含み、
前記照射が、まず一次被覆に、次いで二次被覆へと順次に照射(ウェットオンドライ照射と呼ばれている)することができ、あるいは前記照射が一次被覆と二次被覆に対して同時に照射(ウェットオンウェットと呼ばれている)することができる、方法。
【請求項8】
前記ガラス線引タワーが、約750m/分〜約2,100m/分の間の線速度で運転される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記一次被覆が触媒を含み、前記触媒が、ジブチルスズジラウレート;金属カルボキシレート、非限定的に挙げれば、たとえば、オルガノビスマス触媒たとえばビスマスネオデカノエート、CAS34364−26−6;亜鉛ネオデカノエート、CAS27253−29−8;ジルコニウムネオデカノエート、CAS39049−04−2;および亜鉛2−エチルヘキサノエート、CAS136−53−8;スルホン酸、非限定的に挙げれば、たとえばドデシルベンゼンスルホン酸、CAS27176−87−0;およびメタンスルホン酸、CAS75−75−2;アミノまたは有機塩基触媒、非限定的に挙げれば、たとえば、1,2−ジメチルイミダゾール、CAS1739−84−0;およびジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、CAS280−57−9(強塩基);およびトリフェニルホスフィン;ジルコニウムおよびチタンのアルコキシド、非限定的に挙げれば、たとえばジルコニウムブトキシド,(テトラブチルジルコネート)CAS1071−76−7;およびチタンブトキシド(テトラブチルチタネート)CAS5593−70−4;ならびにイオン性液状ホスホニウム、イミダゾリウム、およびピリジニウム塩、非限定的に挙げれば、たとえば、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、CAS No.374683−44−0;1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート、CAS No.284049−75−8;およびN−ブチル−4−メチルピリジニウムクロリド、CAS No.125652−55−3;およびテトラデシル(トリヘキシル)ホスホニウムからなる群から選択される、請求項1に記載のスーパーコーティング。
【請求項10】
前記二次被覆が少なくとも1種のウレタンオリゴマーを含み;
前記ウレタンオリゴマーが触媒を用いて合成され、前記触媒が、ナフテン酸銅、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、2−メチルトリエチレンアミン、ジブチルスズジラウレート;金属カルボキシレート、非限定的に挙げれば、たとえば、オルガノビスマス触媒たとえばビスマスネオデカノエート、CAS34364−26−6;亜鉛ネオデカノエート、CAS27253−29−8;ジルコニウムネオデカノエート、CAS39049−04−2;および亜鉛2−エチルヘキサノエート、CAS136−53−8;スルホン酸、非限定的に挙げれば、たとえばドデシルベンゼンスルホン酸、CAS27176−87−0;およびメタンスルホン酸、CAS75−75−2;アミノまたは有機塩基触媒、非限定的に挙げれば、たとえば、1,2−ジメチルイミダゾール、CAS1739−84−0;およびジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、CAS280−57−9(強塩基);およびトリフェニルホスフィン;ジルコニウムおよびチタンのアルコキシド、非限定的に挙げれば、たとえばジルコニウムブトキシド,(テトラブチルジルコネート)CAS1071−76−7;およびチタンブトキシド(テトラブチルチタネート)CAS5593−70−4;ならびにイオン性液状ホスホニウム、イミダゾリウム、およびピリジニウム塩、非限定的に挙げれば、たとえば、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、CAS No.374683−44−0;1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート、CAS No.284049−75−8;およびN−ブチル−4−メチルピリジニウムクロリド、CAS No.125652−55−3;およびテトラデシル(トリヘキシル)ホスホニウムからなる群から選択される、請求項1に記載のスーパーコーティング。

【公表番号】特表2010−509173(P2010−509173A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−536356(P2009−536356)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/025480
【国際公開番号】WO2008/076298
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】