説明

DLL回路及びこれを備える半導体装置、並びに、データ処理システム

【課題】クロックの周波数が高い場合であっても、パルスの消失リスクが少ないDLL回路を提供すること。
【解決手段】DLL回路100において、CKとLCLKの各立ち上がりエッジの位相を比較して判定信号R−U/Dを生成する位相判定回路111と、CKとLCLKの各立ち下がりエッジの位相を比較して判定信号F−U/Dを生成する位相判定回路112と、判定信号R−U/Dに基づいてLCLKRのアクティブエッジの位置を調整する第1の調整回路と、判定信号F−U/Dに基づいてLCLKFのアクティブエッジの位置を調整する第2の調整回路と、LCLKRとLCLKFに基づいてLCLKを生成するクロック生成回路と、LCLKRのアクティブエッジの調整方向とLCLKFのアクティブエッジの調整方向とが互いに逆方向であることに応答して、第2の調整回路による調整動作を停止させる停止回路150とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はDLL(Delay Locked loop)回路及びこれを備える半導体装置に関し、特に、周波数の高いクロックをロックさせることが可能なDLL回路及びこれを備える半導体装置に関する。また、本発明は、このような半導体装置を備えるデータ処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータなどのメインメモリとして、クロックに同期した動作を行うシンクロナスメモリが広く使用されている。中でも、DDR(Double Data Rate)型のシンクロナスメモリでは、入出力データを外部クロックに対して正確に同期させる必要があることから、外部クロックに同期した内部クロックを生成するためのDLL回路が必須である。特許文献1には、このようなDLL回路の例が開示されている。
【0003】
DLL回路は、内部クロックの立ち上がりエッジの位置を調整する機能と、内部クロックの立ち下がりエッジの位置を調整する機能を有しており、これによって外部クロックの位相と内部クロックの位相とを一致させる。内部クロックの立ち上がりエッジは、DLL回路内で生成されるRiseクロックによって規定され、内部クロックの立ち下がりエッジは、DLL回路内で生成されるFallクロックによって規定される。
【0004】
図5(a)は、DLL回路の動作を説明するためのタイミング図である。
【0005】
図5(a)に示す例では、外部クロックCKの立ち上がりエッジに対してRiseクロックのアクティブエッジ(本例では立ち上がりエッジ)が進んでいる。また、外部クロックCKの立ち下がりエッジに対してFallクロックのアクティブエッジ(本例では立ち上がりエッジ)が遅れている。このようなケースでは、Riseクロックの位相は遅らせる方向に調整され、Fallクロックの位相は進める方向に調整される。このようにして調整されたRiseクロックとFallクロックはDLL回路内で合成され、これにより内部クロックが再生される。
【0006】
しかしながら、上記の例のように、Riseクロックの位相を遅らせる方向に調整するとともに、Fallクロックの位相を進める方向に調整すると、生成される内部クロックのクロック幅が小さくなってしまう。つまり、調整前と比べて、内部クロックのクロック幅は2ピッチ分小さくなる。このような現象は、1回の調整ピッチに対してクロック周期が十分に長ければ大きな問題とはならない。しかしながら、外部クロックの周波数が高い場合、内部クロックのクロック幅が一度に2ピッチ分狭くなると、クロック幅が小さくなりすぎてショートパルスとなり、場合によってはパルスが消失する危険性が生じる。
【0007】
このような問題は、上記の例と逆のケースにおいても生じる。つまり、図5(b)に示すように、外部クロックCKの立ち上がりエッジに対してRiseクロックのアクティブエッジが遅れており、且つ、外部クロックCKの立ち下がりエッジに対してFallクロックのアクティブエッジが進んでいるケースでは、Riseクロックの位相は進める方向に調整され、Fallクロックの位相は遅らせる方向に調整される。この場合、生成される内部クロックのクロック幅は、調整前と比べて一度に2ピッチ分大きくなる。したがって、外部クロックの周波数が高い場合、内部クロックのクロック幅が大きくなりすぎ、場合によってはロー側のパルスがショートパルスとなり、消失する危険性が生じる。
【0008】
このように、従来のDLL回路においては、Riseクロックの調整方向とFallクロックの調整方向が互いに逆方向である場合、内部クロックのパルスが消失する可能性があった。このようなパルスの消失が発生すると、もはやDLL回路は動作不能となり、システムをリセットせざるを得なくなる。
【特許文献1】特開2007−243735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような問題を解決すべくなされたものであって、クロックの周波数が高い場合であっても、パルスの消失リスクが少ないDLL回路及びこれを備える半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によるDLL回路は、第1のクロックの立ち上がりエッジと第2のクロックの立ち上がりエッジの位相を比較することにより、第1の判定信号を生成する第1の位相判定回路と、第1のクロックの立ち下がりエッジと第2のクロックの立ち下がりエッジの位相を比較することにより、第2の判定信号を生成する第2の位相判定回路と、記第1の判定信号に基づいて、第3のクロックのアクティブエッジの位置を調整する第1の調整回路と、第2の判定信号に基づいて、第4のクロックのアクティブエッジの位置を調整する第2の調整回路と、第3及び第4のクロックに基づいて第2のクロックを生成するクロック生成回路と、第1の判定信号に基づく第3のクロックのアクティブエッジの調整方向と、第2の判定信号に基づく第4のクロックのアクティブエッジの調整方向とが互いに逆方向であることに応答して、第1の調整回路による調整動作及び第2の調整回路による調整動作のいずれか一方を停止させる停止回路とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、立ち上がりエッジの調整方向と立ち下がりエッジの調整方向とが互いに逆方向である場合、立ち上がりエッジの調整動作又は立ち下がりエッジの調整動作が停止されることから、クロック幅が一度に大きく変化する現象が防止される。このため、クロックの周波数が高い場合であってもパルスの消失リスクを低減することが可能となる。
【0012】
本発明において、第1の調整回路は、第1の判定信号に基づいてカウント値が更新される第1のカウンタ回路と、第1のカウンタ回路のカウント値に基づいて第3のクロックを遅延させる第1の遅延回路とを含み、第2の調整回路は、第2の判定信号に基づいてカウント値が更新される第2のカウンタ回路と、第2のカウンタ回路のカウント値に基づいて第4のクロックを遅延させる第2の遅延回路とを含むことが好ましい。この場合、第1の遅延回路は、相対的に調整幅の大きい第1の粗調回路と、相対的に調整幅の小さい第1の微調回路とを含み、記第2の遅延回路は、相対的に調整幅の大きい第2の粗調回路と、相対的に調整幅の小さい第2の微調回路とを含み、停止回路は、第1の粗調回路による調整動作及び第2の粗調回路による調整動作のいずれか一方を停止させることが好ましい。これによれば、パルスの消失リスクを伴う粗調回路による調整動作を制限することが可能となる。
【0013】
本発明において、クロック生成回路は、第3及び第4のクロックに基づいて第5のクロックを生成する再生回路と、第5のクロックを遅延させることにより第2のクロックを生成するレプリカバッファとを含むことが好ましい。この場合、第5のクロックは、データを外部に出力するための出力バッファの動作タイミングを定めるものであり、レプリカバッファは、出力バッファと実質的に同じ回路構成を有していることが好ましい。これによれば、第1のクロックに同期してデータを出力することが可能となる。したがって、第1のクロックとしては外部クロックであることが好ましい。
【0014】
また、本発明による半導体装置は、外部から供給される第1のクロックに同期してデータを出力する半導体装置であって、上記のDLL回路と、第5のクロックに同期してデータを出力する出力バッファとを備えることを特徴とする。さらに、本発明によるデータ処理システムは、上記の半導体装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
このように、本発明によれば、クロック幅が一度に大きく変化する条件が検出された場合、立ち上がりエッジの調整動作又は立ち下がりエッジの調整動作が停止することから、クロックの周波数が高い場合であってもパルスの消失が生じにくくなる。したがって、本発明によるDLL回路は、高速なクロックに同期してデータの入出力を行う半導体装置、特に、DRAMへの内蔵が特に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の好ましい実施形態によるDLL回路を備えた半導体装置のブロック図である。図1には、本実施形態によるDLL回路を、パーソナルコンピュータなどのデータ処理システムに備えられるDRAMに内蔵した例を示している。
【0018】
図1に示す半導体装置10は、メモリセルアレイ20と、メモリセルアレイ20に対するアクセス制御を行うコントローラ30と、メモリセルアレイ20から読み出されたデータを外部に出力する出力バッファ40と、外部から入力されるデータを一時記憶する入力バッファ50と、出力バッファ40によるデータの出力タイミングを外部クロックCKに同期させるDLL回路100とを備えている。
【0019】
半導体装置10には、外部端子として少なくともクロック端子11、アドレス端子12、コマンド端子13及びデータ入出力端子14が設けられている。クロック端子11は、外部クロックCKが入力される端子であり、入力された外部クロックCKはコントローラ30及びDLL回路100に供給される。アドレス端子12及びコマンド端子13は、それぞれアドレス信号ADD及びコマンド信号CMDが入力される端子であり、これらアドレス信号ADD及びコマンド信号CMDはコントローラ30に供給される。
【0020】
コントローラ30は、コマンド信号CMDがリード動作を示している場合には、メモリセルアレイ20に記憶されたデータのうち、アドレス信号ADDにより指定されるアドレスに記憶されたデータにアクセスし、これを出力バッファ40に供給する。出力バッファ40に供給されたリードデータDQは、DLL回路100による制御のもと、外部クロックCKに同期してデータ入出力端子14より出力される。一方、コマンド信号CMDがライト動作を示している場合には、データ入出力端子14に入力されたライトデータDQを入力バッファ50を介して取り込み、メモリセルアレイ20のうち、アドレス信号ADDにより指定されるアドレスに書き込む。
【0021】
コントローラ30によるこれらの動作は、外部クロックCKに基づき生成された各種内部クロック(図示せず)に同期して行われる。
【0022】
次に、DLL回路100の回路構成について説明する。
【0023】
図1に示すように、本実施形態によるDLL回路100は、外部クロックCKに基づいて内部クロックLCLKR(Riseクロック)及び同LCLKF(Fallクロック)を生成する入力レシーバ105と、外部クロックCKと内部クロックLCLKの位相を比較することにより判定信号R−U/D,F−U/Dを生成する位相判定部110と、判定信号R−U/D,F−U/Dに基づいて内部クロックLCLKR,LCLKFのアクティブエッジ(立ち上がりエッジ)の位置を調整する調整部120と、内部クロックLCLKR,LCLKFに基づいて内部クロックLCLKOEを生成する再生回路130と、内部クロックLCLKOEを遅延させることにより内部クロックLCLKを生成するレプリカバッファ140と、必要に応じて調整部120による調整動作を停止させる停止回路150とを備えている。本明細書では、再生回路130とレプリカバッファ140を纏めて「クロック生成回路」と呼ぶことがある。
【0024】
位相判定部110は、位相判定回路111,112によって構成されている。
【0025】
位相判定回路111は、外部クロックCKの立ち上がりエッジと内部クロックLCLKの立ち上がりエッジの位相を比較することにより、判定信号R−U/Dを生成する回路である。具体的には、外部クロックCKの立ち上がりエッジに対して内部クロックLCLKの立ち上がりエッジが遅れていれば判定信号R−U/Dをローレベルとし、外部クロックCKの立ち上がりエッジに対して内部クロックLCLKの立ち上がりエッジが進んでいれば判定信号R−U/Dをハイレベルとする。
【0026】
位相判定回路112は、外部クロックCKの立ち下がりエッジと内部クロックLCLKの立ち下がりエッジの位相を比較することにより、判定信号F−U/Dを生成する回路である。具体的には、外部クロックCKの立ち下がりエッジに対して内部クロックLCLKの立ち下がりエッジが遅れていれば判定信号F−U/Dをローレベルとし、外部クロックCKの立ち下がりエッジに対して内部クロックLCLKの立ち下がりエッジが進んでいれば判定信号F−U/Dをハイレベルとする。
【0027】
調整部120は、判定信号R−U/Dに基づいてカウント値が更新されるカウンタ回路121と、判定信号F−U/Dに基づいてカウント値が更新されるカウンタ回路122と、カウンタ回路121のカウント値に基づいて入力レシーバ105が生成した内部クロックLCLKRを遅延させる遅延回路123と、カウンタ回路122のカウント値に基づいて入力レシーバ105が生成した内部クロックLCLKFを遅延させる遅延回路124とを備えている。本明細書では、カウンタ回路121又は122と遅延回路123又は124を纏めて「調整回路」と呼ぶことがある。
【0028】
カウンタ回路121,122は、対応する判定信号R−U/D又はF−U/Dがローレベルであればカウントダウンを行い、ハイレベルであればカウントアップを行う。遅延回路123,124は、対応するカウンタ回路121,122のカウント値が大きいほど、対応する内部クロックLCLKR,LCLKFの遅延量を増大させる。本実施形態においては、遅延回路123は、相対的に調整幅の大きい粗調回路123aと、相対的に調整幅の小さい微調回路123bとを含んでいる。また、遅延回路124は、相対的に調整幅の大きい粗調回路124aと、相対的に調整幅の小さい微調回路124bとを含んでいる。
【0029】
粗調回路123a,124aは、半導体装置10への電源投入直後など、DLL回路100がロックしていない期間において大まかな調整を行うために用いられる。その後、微調回路123b,124bを用いた微調整が行われ、これによりDLL回路100がロックした状態となる。
【0030】
再生回路130は、調整部120による調整を受けた内部クロックLCLKR,LCLKFに基づいて、内部クロックLCLKOEを生成する。具体的には、内部クロックLCLKRの立ち上がりエッジを内部クロックLCLKOEの立ち上がりエッジとし、内部クロックLCLKFの立ち上がりエッジを内部クロックLCLKOEの立ち下がりエッジとする。再生回路130が生成した内部クロックLCLKOEは、出力バッファ40及びレプリカバッファ140に入力される。
【0031】
出力バッファ40は、メモリセルアレイ20から供給されたリードデータDQを、内部クロックLCLKOEに同期してデータ入出力端子14より出力する。これにより、リードデータDQは、外部クロックCKに同期してデータ入出力端子14より出力されることになる。換言すれば、内部クロックLCLKOEは、リードデータDQを外部に出力するための出力バッファ40の動作タイミングを定めている。
【0032】
一方、レプリカバッファ140は、出力バッファ40と実質的に同じ回路構成を有しており、内部クロックLCLKOEに出力バッファ40による動作遅延を付加して内部クロックLCLKを生成する。これにより、レプリカバッファ140により生成される内部クロックLCLKは、リードデータDQと完全に同期した信号となる。
【0033】
停止回路150は、判定信号R−U/Dに基づく内部クロックLCLKRのアクティブエッジの調整方向と、判定信号F−U/Dに基づく内部クロックLCLKFのアクティブエッジの調整方向とが互いに逆方向であることに応答して、カウンタ回路122の動作を一時的に停止させる回路である。したがって、内部クロックLCLKR,LCLKFの調整方向が互いに逆方向である場合は、カウンタ回路121のみがカウント値の更新を行い、カウンタ回路122のカウント値は固定される。これに対し、内部クロックLCLKR,LCLKFの調整方向が互いに同じ方向である場合には、カウンタ回路121,122の両方がカウント値の更新を行う。停止回路150としては、例えば排他的非論理和(XNOR)回路を用いることができる。
【0034】
以上が本実施形態による半導体装置10の構成である。次に、本実施形態による半導体装置10の動作について説明する。
【0035】
図2は、内部クロックLCLKR,LCLKFの調整方向が互いに同じ方向である場合におけるDLL回路100の動作を説明するためのタイミング図である。図2において、(1)を付した信号は調整前の内部クロックを示し、(2)を付した信号は調整後の内部クロックを示している(図3においても同様)。
【0036】
図2(a)に示す例では、調整前の内部クロックLCLKの立ち上がりエッジが、外部クロックCKの立ち上がりエッジに比べて進んでいる。したがって、判定信号R−U/Dはハイレベルとなり、内部クロックLCLKRの位相を遅らせるよう、カウンタ回路121を制御する。また、調整前の内部クロックLCLKの立ち下がりエッジも、外部クロックCKの立ち上がりエッジに比べて進んでいる。したがって、判定信号F−U/Dもハイレベルとなり、内部クロックLCLKFの位相を遅らせるよう、カウンタ回路122を制御する。このように、内部クロックLCLKR,LCLKFの調整方向は、互いに同じ方向である。
【0037】
このため、停止回路150は活性化せず、カウンタ回路121,122とも、カウント値の更新を行う。つまり、これらの判定信号を受けたカウンタ回路121,122はともにカウントアップを行い、内部クロックLCLKR及び内部クロックLCLKFの位相を1ピッチ遅らせる。その結果、クロック生成回路により生成される内部クロックLCLKの立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジは、ともに調整前に比べて遅れることになる。
【0038】
一方、図2(b)に示す例では、調整前の内部クロックLCLKの立ち上がりエッジが、外部クロックCKの立ち上がりエッジに比べて遅れている。したがって、判定信号R−U/Dはローレベルとなり、内部クロックLCLKRの位相を進めるよう、カウンタ回路121を制御する。また、調整前の内部クロックLCLKの立ち下がりエッジも、外部クロックCKの立ち上がりエッジに比べて遅れている。したがって、判定信号F−U/Dもローレベルとなり、内部クロックLCLKFの位相を進めるよう、カウンタ回路122を制御する。このように、内部クロックLCLKR,LCLKFの調整方向は、互いに同じ方向である。
【0039】
このため、停止回路150は活性化せず、カウンタ回路121,122とも、カウント値の更新を行う。つまり、これらの判定信号を受けたカウンタ回路121,122はともにカウントダウンを行い、内部クロックLCLKR及び内部クロックLCLKFの位相を1ピッチ進める。その結果、クロック生成回路により生成される内部クロックLCLKの立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジは、ともに調整前に比べて進むことになる。
【0040】
このように、内部クロックLCLKR,LCLKFの調整方向が互いに同じ方向である場合には、カウンタ回路121,122ともカウント値の更新を行う。
【0041】
図3は、内部クロックLCLKR,LCLKFの調整方向が互いに逆方向である場合におけるDLL回路100の動作を説明するためのタイミング図である。
【0042】
図3(a)に示す例では、調整前の内部クロックLCLKの立ち上がりエッジが、外部クロックCKの立ち上がりエッジに比べて進んでいる。したがって、判定信号R−U/Dはハイレベルとなり、内部クロックLCLKRの位相を遅らせるよう、カウンタ回路121を制御する。これに対し、調整前の内部クロックLCLKの立ち下がりエッジは、外部クロックCKの立ち上がりエッジに比べて遅れている。したがって、判定信号F−U/Dはローレベルとなり、内部クロックLCLKFの位相を進めるよう、カウンタ回路122を制御する。このように、内部クロックLCLKR,LCLKFの調整方向は、互いに逆方向である。
【0043】
このため、停止回路150は活性化し、カウンタ回路122の動作を一時的に停止させる。結果として、カウンタ回路121のカウントアップのみが行われ、内部クロックLCLKRの位相が1ピッチ遅延される一方、内部クロックLCLKFの遅延量は固定される。したがって、内部クロックLCLKのクロック幅は、調整前に比べて1ピッチ分だけ小さくなり、図5(a)に示した背景技術のようにクロック幅が小さくなりすぎるおそれが少ない。
【0044】
一方、図3(b)に示す例では、調整前の内部クロックLCLKの立ち上がりエッジが、外部クロックCKの立ち上がりエッジに比べて遅れている。したがって、判定信号R−U/Dはローレベルとなり、内部クロックLCLKRの位相を進めるよう、カウンタ回路121を制御する。これに対し、調整前の内部クロックLCLKの立ち下がりエッジは、外部クロックCKの立ち上がりエッジに比べて進んでいる。したがって、判定信号F−U/Dはハイレベルとなり、内部クロックLCLKFの位相を遅らせるよう、カウンタ回路122を制御する。このように、内部クロックLCLKR,LCLKFの調整方向は、互いに逆方向である。
【0045】
このため、停止回路150は活性化し、カウンタ回路122の動作を一時的に停止させる。結果として、カウンタ回路121のカウントダウンのみが行われ、内部クロックLCLKRの位相が1ピッチ進められる一方、内部クロックLCLKFの遅延量は固定される。したがって、内部クロックLCLKのクロック幅は、調整前に比べて1ピッチ分だけ大きくなり、図5(b)に示した背景技術のようにクロック幅が大きくなりすぎるおそれが少ない。
【0046】
停止回路150による停止動作は、各調整回路が粗調回路を用いて調整動作を行っている場合のみ行えばよい。微調回路による調整では調整ピッチが小さいことから、内部クロックLCLKR,LCLKFの調整方向が互いに逆方向であっても、ショートパルスが発生することがほとんどないからである。ただし、微調回路を用いて調整動作を行っている場合においても停止動作を行っても構わない。
【0047】
以上説明したように、半導体装置10によれば、内部クロックLCLKのクロック幅が大きくなりすぎたり小さくなりすぎたりすることを防止できるので、背景技術に比べ、クロックの周波数が高い場合であっても、パルスの消失リスクが少なくなっている。
【0048】
図4は、本発明の好ましい実施形態による半導体装置を用いたデータ処理システム1000の構成を示すブロック図であり、本実施形態による半導体装置がDRAMである場合を示している。
【0049】
図4に示すデータ処理システム1000は、データプロセッサ1200と、本実施形態による半導体装置(DRAM)10が、システムバス1100を介して相互に接続された構成を有している。データプロセッサ1200としては、例えば、マイクロプロセッサ(MPU)、ディジタルシグナルプロセッサ(DSP)などを含まれるが、これらに限定されない。図4においては簡単のため、システムバス1100を介してデータプロセッサ1200とDRAM1300とが接続されているが、システムバス1100を介さずにローカルなバスによってこれらが接続されていても構わない。
【0050】
また、図4には、簡単のためシステムバス1100が1組しか描かれていないが、必要に応じ、コネクタなどを介しシリアルないしパラレルに設けられていても構わない。また、図4に示すメモリシステムデータ処理システムでは、ストレージデバイス1400、I/Oデバイス1500、ROM1600がシステムバス1100に接続されているが、これらは必ずしも必須の構成要素ではない。
【0051】
ストレージデバイス1400としては、ハードディスクドライブ、光学ディスクドライブ、フラッシュメモリなどが挙げられる。また、I/Oデバイス1500としては、液晶ディスプレイなどのディスプレイデバイスや、キーボード、マウスなどの入力デバイスなどが挙げられる。また、I/Oデバイス1500は、入力デバイス及び出力デバイスのいずれか一方のみであっても構わない。さらに、図4に示す各構成要素は、簡単のため1つずつ描かれているが、これに限定されるものではなく、1又は2以上の構成要素が複数個設けられていても構わない。
【0052】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0053】
例えば、上記実施形態では、内部クロックLCLKR,LCLKFの調整方向が互いに逆方向である場合、停止回路150によってカウンタ回路122の動作を停止させているが、カウンタ回路122の代わりにカウンタ回路121の動作を停止させても構わない。但し、内部クロックLCLKの立ち下がりエッジを検出する位相判定回路112としては、DCC回路(Duty correction circuit)が用いられることがある。DCC回路は、内部クロックLCLKの立ち上がりエッジを利用するため、カウンタ回路121の動作が停止すると、DCC回路の動作にもずれが生じてしまう。このような点を考慮すれば、上記実施形態のように、停止回路150によってカウンタ回路122の動作を停止させる方が好ましい。
【0054】
また、停止回路150による停止動作の実行可否を外部から入力されるコマンドにより設定可能としてもよい。これによれば、外部クロックCKの周波数が低い場合など、停止回路150を機能させる必要のないケースにおいて、DLL回路100のロック時間を短縮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の好ましい実施形態によるDLL回路を備えた半導体装置のブロック図である。
【図2】内部クロックLCLKR,LCLKFの調整方向が互いに同じ方向である場合におけるDLL回路100の動作を説明するためのタイミング図である。
【図3】内部クロックLCLKR,LCLKFの調整方向が互いに逆方向である場合におけるDLL回路100の動作を説明するためのタイミング図である。
【図4】本発明の好ましい実施形態による半導体装置を用いたデータ処理システムの構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の背景技術にかかるDLL回路の動作を説明するためのタイミング図である。
【符号の説明】
【0056】
10 半導体装置
11 クロック端子
12 アドレス端子
13 コマンド端子
14 データ入出力端子
20 メモリセルアレイ
30 コントローラ
40 出力バッファ
50 入力バッファ
100 DLL回路
105 入力レシーバ
110 位相判定部
111,112 位相判定回路
120 調整部
121,122 カウンタ回路
123,124 遅延回路
123a,124a 粗調回路
123b,124b 微調回路
130 再生回路
140 レプリカバッファ
150 停止回路
1000 データ処理システム
1100 システムバス
1200 データプロセッサ
1400 ストレージデバイス
1500 I/Oデバイス
1600 ROM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のクロックの立ち上がりエッジと第2のクロックの立ち上がりエッジの位相を比較することにより、第1の判定信号を生成する第1の位相判定回路と、
前記第1のクロックの立ち下がりエッジと前記第2のクロックの立ち下がりエッジの位相を比較することにより、第2の判定信号を生成する第2の位相判定回路と、
前記第1の判定信号に基づいて、第3のクロックのアクティブエッジの位置を調整する第1の調整回路と、
前記第2の判定信号に基づいて、第4のクロックのアクティブエッジの位置を調整する第2の調整回路と、
前記第3及び第4のクロックに基づいて前記第2のクロックを生成するクロック生成回路と、
前記第1の判定信号に基づく前記第3のクロックのアクティブエッジの調整方向と、前記第2の判定信号に基づく前記第4のクロックのアクティブエッジの調整方向とが互いに逆方向であることに応答して、前記第1の調整回路による調整動作及び前記第2の調整回路による調整動作のいずれか一方を停止させる停止回路とを備えることを特徴とするDLL回路。
【請求項2】
前記第1の調整回路は、前記第1の判定信号に基づいてカウント値が更新される第1のカウンタ回路と、前記第1のカウンタ回路のカウント値に基づいて前記第3のクロックを遅延させる第1の遅延回路とを含み、
前記第2の調整回路は、前記第2の判定信号に基づいてカウント値が更新される第2のカウンタ回路と、前記第2のカウンタ回路のカウント値に基づいて前記第4のクロックを遅延させる第2の遅延回路とを含むことを特徴とする請求項1に記載のDLL回路。
【請求項3】
前記第1の遅延回路は、相対的に調整幅の大きい第1の粗調回路と、相対的に調整幅の小さい第1の微調回路とを含み、
前記第2の遅延回路は、相対的に調整幅の大きい第2の粗調回路と、相対的に調整幅の小さい第2の微調回路とを含み、
前記停止回路は、前記第1の粗調回路による調整動作及び前記第2の粗調回路による調整動作のいずれか一方を停止させることを特徴とする請求項2に記載のDLL回路。
【請求項4】
前記クロック生成回路は、前記第3及び第4のクロックに基づいて第5のクロックを生成する再生回路と、前記第5のクロックを遅延させることにより前記第2のクロックを生成するレプリカバッファとを含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のDLL回路。
【請求項5】
前記第5のクロックは、データを外部に出力するための出力バッファの動作タイミングを定めるものであり、前記レプリカバッファは、前記出力バッファと実質的に同じ回路構成を有していることを特徴とする請求項4に記載のDLL回路。
【請求項6】
前記第1のクロックが外部クロックであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のDLL回路。
【請求項7】
外部から供給される前記第1のクロックに同期してデータを出力する半導体装置であって、請求項5に記載のDLL回路と、前記第5のクロックに同期してデータを出力する出力バッファとを備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体装置を備えるデータ処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−105657(P2009−105657A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−275470(P2007−275470)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(500174247)エルピーダメモリ株式会社 (2,599)
【Fターム(参考)】