説明

DLL回路

【課題】LPF出力の変化に対するロック周波数の変化量のゲイン設定のばらつきの抑制でジッタ精度をより向上できるDLL回路の提供。
【解決手段】遅延クロックを生成する遅延回路101と、遅延クロックと入力クロックの位相差信号を出力する位相比較回路10と、位相差信号対応の位相差電圧を出力するチャージポンプ回路20と、チャージポンプ回路出力の高周波成分を除去するローパスフィルタ回路30と、ローパスフィルタ回路の出力電圧を電流に変換する第1電圧−電流変換回路40及び基準電圧Vrefを電流に変換する第2電圧−電流変換回路50を含み、第1電圧−電流変換回路の出力電流から第2電圧−電流変換回路の出力電流を減算した結果を変換した電圧とオフセット電流Idを変換した電圧とを含み、位相差電圧が基準電圧より小の場合、オフセット電流を変換した電圧を制御電圧Vcontとして遅延回路に出力する遅延制御回路102と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、クロック生成回路に用いられるDLL回路(Delay Lock Loop)における遅延制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
DLL回路は、一般に、遅延回路の出力である内部クロックの外部クロックに対する位相差を検出する位相比較回路と、位相比較回路で検出した位相差に応じたレベルの電圧を出力するチャージポンプ回路と、チャージポンプから出力される電圧の高周波成分を除去するローパスフィルタと、ローパスフィルタから出力される電圧に応じた遅延制御信号を遅延回路に出力する遅延制御回路とを備えている。これにより、位相比較回路で検出される位相差がなくなるように遅延回路の遅延時間が制御され、最終的に内部クロックの位相が外部クロックの位相に一致させられる。
【0003】
ところで、このようなDLL回路では、ローパスフィルタの出力電圧の変化量に対するDLLロック周波数(遅延時間)の変化量を所望の範囲に設定しようとすると、ローパスフィルタの出力電圧の変化に対するDLLロック周波数の変化特性に起因して、チャージポンプ回路の出力電圧によるDLLロック周波数への影響が大きくなり、チャージポンプ回路やその前段の位相比較回路によって生じたジッタ成分により内部クロックのジッタ精度が悪化するといった問題があった。
【0004】
このような問題を解決するDLL回路として、特許文献1に記載されたDLL回路が知られている。
【0005】
図8は、この従来のDLL回路の遅延制御回路の構成を示す回路図である。図8に示すように、この遅延制御回路では、電源とグランドとの間に、ダイオード接続されたPMOSトランジスタ2とNMOSトランジスタ1とが直列に接続されている。そして、NMOSトランジスタ1のゲートにローパスフィルタの出力電圧Viが入力される。それ故、NMOSトランジスタ1及びPMOSトランジスタ2にはViに比例した電流(Viが電流に変換された電流)が流れる。PMOSトランジスタ2のゲートにはPMOSトランジスタ3のゲートが接続されていて、このPMOSトランジスタ3と、ダイオード接続されたNMOSトランジスタ4とが電源とグランドとの間に直列に接続されている。それ故、PMOSトランジスタ3には、PMOSトランジスタ2と同じ電流、すなわちViに比例した電流が流れる。一方、PMOSトランジスタ3とNMOSトランジスタ4との間のノードには定電流源7から定電流Idが供給される。それ故、NMOSトランジスタ4には、Vi比例した電流に定電流Idが加算された電流が流れる。NMOSトランジスタ4のゲートにはNMOSトランジスタ5のゲートが接続されていて、ダイオード接続されたPMOSトランジスタ6とこのNMOSトランジスタ5とが電源とグランドとの間に直列に接続されている。それ故、NMOSトランジスタ5及びPMOSトランジスタ6には、NMOSトランジスタ4と同じ電流、すなわちViに比例した電流に定電流Idが加算された電流が流れる。そして、NMOSトランジスタ5及びPMOSトランジスタ6のゲートから、Viに比例した電流に定電流Idが加算された電流に比例した電圧(当該電流が電圧に変換された電圧)がそれぞれ制御電圧として遅延回路に出力される。従って、このDLL回路によれば、ローパスフィルタの出力に比例した電圧を電流に変換した後に定電流Idが与えられる。その結果、ローパスフィルタの出力の変化量に対するDLLロック周波数の変化量に上限が与えられることから、チャージポンプ回路の出力による影響を低減して、ジッタ精度の良いクロックを生成できると記載されている。
【特許文献1】特開2008−236110号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の従来のDLL回路には以下のような問題があった。
【0007】
図9は上述の従来のDLL回路におけるローパスフィルタの出力電圧Viの変化に対するDLLロック周波数の変化を示す図である。
【0008】
図9に示すように、従来のDLL回路においては、ローパスフィルタの出力電圧Viを電流に変換するNMOSトランジスタ1の製造ばらつき(具体的には閾値電圧Vtのばらつき)の影響を受けて、ローパスフィルタの出力電圧Viの変化に対するDLLロック周波数の変化のゲインばらつきが大きくなる。このため、製造バラツキのワースト条件時に所望のDLLロック周波数を満たす為にはローパスフィルタの出力Viの変化量に対するDLLロック周波数の変化量のゲインをより高く設計しなければならない。その結果、ジッタ精度を悪化させることになり、 ジッタ精度の改善効果を充分に得ることができない。
【0009】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、ローパスフィルタ出力の変化量に対するDLLロック周波数の変化量のゲイン設定のばらつきを抑制することでジッタ精度をより向上することが可能なDLL回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明のDLL回路は、互いに直列に接続され、それぞれ制御電圧に応じて遅延時間が変化する複数の遅延素子を含み、該複数の遅延素子により入力クロックを順次遅延させて互いに位相が異なる複数の遅延クロックを生成する遅延回路と、前記複数の遅延クロックのいずれかである第2入力クロックの位相と前記第2入力クロックより遅延されていない前記遅延クロック又は前記入力クロックである第1入力クロックとの位相とを比較し、その比較結果に応じた位相差信号を出力する位相比較回路と、前記位相比較回路から出力される位相差信号に応じたレベルの電圧(以下、位相差電圧という)を出力するチャージポンプ回路と、前記チャージポンプ回路から出力される位相差電圧の高周波成分を除去するローパスフィルタ回路と、前記ローパスフィルタ回路から出力される位相差電圧を電流(以下、位相差電流という)に変換してこれを出力する第1電圧−電流変換回路及び前記第1電圧−電流変換回路と同じ回路に構成され、定電圧(以下、基準電圧という)を電流に変換してこれを出力する第2電圧−電流変換回路を含み、前記第1電圧−電流変換回路から出力される位相差電流から前記第2電圧−電流変換回路から出力される電流(以下、基準電流という)を減算し、この減算の結果の電流を電圧に変換した電圧と定電流(以下、オフセット電流という)を電圧に変換した電圧とを含み、かつ前記位相差電圧が前記基準電圧より小さい場合には前記オフセット電流を電圧に変換した電圧のみを含む前記制御電圧を前記遅延回路の前記複数の遅延素子に出力する遅延制御回路と、を備える。
【0011】
前記遅延制御回路は、前記第1電圧−電流変換回路と、前記第2電圧−電流変換回路と、前記第1電圧−電流変換回路から出力される位相差電流から前記第2電圧−電流変換回路から出力される基準電流を減算し、この減算の結果の電流に前記オフセット電流を加算してなる電流を出力し、かつ前記位相差電圧が前記基準電圧より小さい場合には前記オフセット電流のみを出力する電流演算回路と、前記演算回路から出力される電流を電圧に変換し、この電圧からなる前記制御電圧を前記遅延回路の前記複数の遅延素子に出力する電流−電圧変換回路と、を含んでいてもよい。
【0012】
前記遅延制御回路は、前記第1電圧−電流変換回路と、前記第2電圧−電流変換回路と、前記第1電圧−電流変換回路から出力される位相差電流から前記第2電圧−電流変換回路から出力される基準電流を減算してなる電流を、前記位相差電圧が前記基準電圧以上の場合には出力しかつ前記位相差電圧が前記基準電圧より小さい場合には出力しない演算回路と、前記演算回路から出力される電流を電圧に変換してこれを出力する第1電流−電圧変換回路と、前記オフセット電流を電圧に変換してこれを出力する第2電流−電圧変換回路とを含み、前記第1電流−電圧変換回路が出力する電圧と前記第2電流−電圧変換回路が出力する電圧とを前記制御電圧として前記遅延回路の前記複数の遅延素子に出力してもよい。
【0013】
前記DLL回路は、前記オフセット電流の定電流値を設定するオフセット電流設定回路をさらに備えていてもよい。
【0014】
前記基準電圧の定電圧を設定する基準電圧設定回路をさらに備える、請求項1乃至3のいずれかに記載のDLL回路。
【0015】
前記第1電圧−電流変換回路及び前記第2電圧−電流変換回路の少なくともいずれかは、そのゲインを変化可能に構成されていてもよい。
【0016】
前記電流−電圧変換回路は、そのゲインを変化可能に構成されていてもよい。
【0017】
前記第1電流−電圧変換回路及び前記第2電流−電圧変換回路の少なくともいずれかは、そのゲインを変化可能に構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明は以上に説明したように構成され、ローパスフィルタ出力の変化量に対するDLLロック周波数の変化量のゲイン設定のばらつきを抑制することでジッタ精度をより向上することが可能なDLL回路を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。なお、以下では、「本発明における」と修飾された要素は、上述の「課題を解決するための手段」で述べた本発明の構成要素に対応する要素であることを意味する。また、以下では、全ての図を通じて同一又は相当する要素には同じ参照符号を付してその重複する説明を省略する。
【0020】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1に係るDLL回路の構成を示すブロック図である。
【0021】
図1に示すように、実施の形態1のDLL回路は、電圧制御遅延回路101と、位相比較回路10と、チャージポンプ回路20と、ローパスフィルタ回路30と、遅延制御回路102とを備えている。
【0022】
電圧制御遅延回路101は、本発明における「遅延回路」の一例であり、周知の遅延回路で構成することができる。電圧制御遅延回路101は、例えば、互いに直列に接続されたk個(kは2以上の整数)の遅延素子DL,DL…を含んでいる。このk個の遅延素子DL,DL…により入力クロックCKinが順次遅延され、この順次遅延された分だけ互いに位相の異なるk個の遅延クロックCK(1),CK(2),…,CK(k)が、それぞれの順番の遅延素子DL,DL…から出力される。遅延素子DL,DL,…のそれぞれの遅延時間を“Tp”とすると、遅延クロックCK(1),CK(2),…,CK(k)の遅延時間は、それぞれ、“Tp×1”,“Tp×2”,…,“Tp×k”である。遅延素子DL,DL,…は、それぞれの遅延時間が制御電圧Vcontに応じて変化するように構成されている。
【0023】
位相比較回路10は、本発明における「位相回路」の一例であり、周知の位相比較回路で構成することができる。位相比較回路10は、第1入力クロックとしての入力クロックCKinの位相と第2入力クロックとしての遅延クロックCK(k)の位相とを比較し、両者の位相差に応じた位相差信号を出力する。第2入力クロックはK個の遅延クロックCK(1),CK(2),…,CK(k)のいずれかであればよく、第1入力クロックは、第2入力クロックより遅延されていない遅延クロックCK(1),CK(2),…又は入力クロックCKinであればよい。位相比較回路10は、位相差信号として、例えば、位相差が正(進み位相差)である場合には充電信号UP0を出力し、位相差が負(遅れ位相差)である場合には放電信号DN0を出力する。充電信号UP0及び放電信号DN0の大きさは位相差の絶対値に比例する。なお、位相差は、第1入力クロックと第2入力クロックとのいずれを基準としても構わないが、本実施の形態1では、例えば、第1入力クロックが基準とされる。
【0024】
チャージポンプ回路20は、本発明における「チャージポンプ回路」の一例であり、周知のチャージポンプ回路で構成することができる。チャージポンプ回路20は、位相比較回路10から出力される位相差信号に応じたレベルの電圧(以下、位相差電圧という)を出力する。例えば、チャージポンプ回路20は、出力コンデンサを含んでいて、正の位相差に対応する充電信号UP0を受けたときに、出力コンデンサを充電信号UP0の大きさに応じて充電し、負の位相差に対応する放電信号DN0を受けたときに、出力コンデンサを放電信号DN0の大きさに応じて放電する。これにより、出力コンデンサの両端電圧のレベルが位相差信号の正負の符号とその大きさとに応じて変化する。この出力コンデンサの両端電圧がローパスフィルタ回路30に出力される。つまり、チャージポンプ回路20は、正負の符号を含んだ位相差信号を、符号を含まない電圧レベル信号に変換する。
【0025】
ローパスフィルタ回路30は、本発明における「ローパスフィルタ」の一例であり、周知のローパスフィルタで構成することができる。ローパスフィルタ回路30は、チャージポンプ回路20から出力される位相差電圧を入力されてその高周波成分を除去する。以下、ローパスフィルタ回路30から出力される位相差電圧をViで表す。
【0026】
遅延制御回路102は、本発明を特徴付ける「遅延制御回路」の一例である。遅延制御回路102は、第1電圧−電流変換回路40と、第2電圧−電流変換回路50と、演算回路60と、電流−電圧変換回路70とを備えている。
【0027】
第1電圧−電流変換回路40は、本発明における「第1電圧−電流変換回路」の一例であり、ローパスフィルタ回路30から出力される位相差電圧Viを電流(以下、位相差電流という)に変換してこれを出力する。第1電圧−電流変換回路40を構成する回路は、入力される電圧を電流に変換して出力する回路であればよい。本実施の形態1では、例えば、第1電圧−電流変換回路40として、ソース又はドレインが電源又はグランドに接続され、ゲートにローパスフィルタ回路30から位相差電圧Viが入力されるよう構成されたMOSトランジスタからなる回路を用いることができる(図2参照)。
【0028】
第2電圧−電流変換回路50は、本発明における「第2電圧−電流変換回路」の一例であり、定電圧(以下、基準電圧という)Vrefを入力されてこれを電流に変換し、この変換された電流(以下、基準電流という)を出力する。第2電圧−電流変換回路50は、第1電圧−電流変換回路40と同じ回路に構成されている。換言すると、第2電圧−電流変換回路50と第1電圧−電流変換回路40とは、回路上の構成が同じであり、入力される電圧の種類が異なっている。本実施の形態1では、例えば、第2電圧−電流変換回路50として、ソース又はドレインが電源又はグランドに接続され、定電圧源(図示せず)から基準電圧Vrefが入力されるよう構成されたMOSトランジスタからなる回路を用いることができる(図2参照)。
【0029】
演算回路60は、本発明における「演算回路」の一例であり、第1電圧−電流変換回路40から出力される位相差電流から、第2電圧−電流変換回路50から出力される基準電流を減算し、この減算の結果の電流に、定電流源(図示せず)から入力される定電流(以下、オフセット電流という)Idを加算する。そして、ローパススフィルタ回路30から出力される位相差電圧Viが基準電圧Vrefより小さい場合には、オフセット電流Idを出力する。なお、オフセット電流Idと基準電圧Vrefとは、所望のDLLロック周波数範囲が得られるように決定される。本実施の形態1では、例えば、図2に示すような回路で構成される。
【0030】
電流−電圧変換回路70は、本発明における「電流―電圧変換回路」の一例であり、演算回路70から出力される電流を電圧に変換し、この電圧を、制御電圧Vcotとして電圧制御遅延回路101のk個の遅延素子DL,DL…のそれぞれに出力する。電流−電圧変換回路70を構成する回路は、電流を電圧に変換する回路であればよい。本実施の形態1では、例えば、電流−電圧変換回路70は、ダイオード接続されかつ互いにチャネル型の異なる一対のMOSトランジスタを用い、この一対のMOSトランジスタに演算回路60から出力される電流を流し、この一対のMOSトランジスタのゲート電圧を制御電圧Vcontとして出力するよう構成される(図2参照)。
【0031】
<遅延制御回路102の構成例>
図2は図1のDLL回路における遅延制御回路102の構成の一例を示す回路図である。 この遅延制御回路102を構成する全てのMOSトランジスタは実質的に同じ特性を有する。
【0032】
図2に示すように、この遅延制御回路102では、電源Vccとグランドとの間に、ダイオード接続されたPMOSトランジスタTr2とNMOSトランジスタTr1とが直列に接続されている。そして、NMOSトランジスタTr1のゲートにローパスフィルタの出力電圧Viが入力される。それ故、NMOSトランジスタTr1及びPMOSトランジスタTr2にはViに比例した電流(Viが電流に変換された電流)が流れる。
【0033】
PMOSトランジスタTr2のゲートにはPMOSトランジスタTr3のゲートが接続されていて、このPMOSトランジスタTr3と、ダイオード接続されたNMOSトランジスタTr5とが電源とグランドとの間に直列に接続されている。また、PMOSトランジスタTr3とNMOSトランジスタTr5との間のノード82とグランドとの間にNMOSトランジスタTr4が接続されていて、このNMOSトランジスタTr4のゲートには基準電圧Vrefが入力される。また、電源Vccとノード82との間には定電流源81が接続されていて、この定電流源81から当該ノード82に定電流Idが供給される。それ故、PMOSトランジスタTr3には、PMOSトランジスタTr2と同じ電流、すなわちViに比例した電流が流れる。また、NMOSトランジスタTr4には基準電圧Vrefに比例した電流(Vrefが電流に変換された電流)が流れる。その結果、NMOSトランジスタTr5には、Viに比例した電流から基準電圧Vrefに比例した電流が減算され、この減算結果の電流に定電流Idが加算された電流(以下、演算結果電流という)が流れる。NMOSトランジスタTr5のゲートにはNMOSトランジスタTr6のゲートが接続されていて、ダイオード接続されたPMOSトランジスタTr7とこのNMOSトランジスタTr6とが電源Vccとグランドとの間に直列に接続されている。それ故、NMOSトランジスタTr6及びPMOSトランジスタ7には、NMOSトランジスタTr5と同じ電流、すなわち演算結果電流が流れる。そして、NMOSトランジスタTr6及びPMOSトランジスタtr7のゲートから、演算結果電流に比例した電圧(演算結果電流が電圧に変換された電圧)Vbn1,Vbp1がそれぞれ制御電圧Vcontとして電圧制御遅延回路101に出力される。
【0034】
なお、ローパスフィルタの出力電圧Viが基準電圧Vrefより小さい場合には、PMOSトランジスタTr3を流れる電流は全てノード82からNMOSトランジスタTr4に流れてしまうので、NMOSトランジスタTr5には定電流源82からの定電流Idが演算結果電流として流れる。それ故、この場合には、演算結果電流としての定電流Idに比例した電圧Vbn1,Vbp1がそれぞれ制御電圧Vcotとして電圧制御遅延回路101に出力される。
【0035】
ここで、NMOSトランジスタTr1が第1電圧−電流変換回路40を構成している。PMOSトランジスタTr2、PMOSトランジスタTr3、及びノード82が演算回路60を構成している。NMOSトランジスタTr4が第2電圧−電流変換回路50を構成している。NMOSトランジスタTr5、NMOSトランジスタTr6、及びPMOSトランジスタTr7が電流−電圧変換回路70を構成している。
【0036】
[動作]
次に、以上のように構成されたDLL回路の動作を説明する。
【0037】
図3は図1のDLL回路における位相差電圧の変化に対するDLLロック周波数の変化を示すグラフである。図4は、ゲイン設定を変化させた場合における位相差電圧の変化に対するDLLロック周波数の変化を示すグラフである。
【0038】
本実施の形態1のDLL回路では、第1入力クロックと第2入力クロックとの間の位相差があると、位相比較回路10がこれを検出して位相差信号を出力する。すると、チャージポンプ回路20が、この位相差信号に応じたレベルの電圧を出力し、ローパスフィルタ回路30がこの電圧の高周波成分を除去して、これを位相差電圧Viとして出力する。遅延制御回路102は、このローパスフィルタ回路30から出力される位相差電圧に応じた制御電圧Vcotを電圧制御遅延回路101のk個の遅延素子DL,DL…のそれぞれに出力する。これにより、位相比較回路10で検出される位相差がなくなるように電圧制御遅延回路101のk個の遅延素子DL,DL…のそれぞれの遅延時間が制御され、最終的に第2入力クロックの位相が第1入力クロックの位相に一致させられる。これにより、DLL回路において、電圧制御遅延回路101から出力されるk個の遅延クロックCK(1),CK(2),…CK(k)が入力クロックCKinにロックされる。この時の遅延クロックCK(1),CK(2),…CK(k)の周波数がDLLロック周波数である。
【0039】
ところで、本実施の形態1では、演算回路60が、ローパスフィルタ回路30から出力される位相差電圧Viを電流に変換してなる位相差電流から、基準電圧Verfを電流に変換してなる基準電流を減算し、この減算の結果の電流に、定電流であるオフセット電流Idを加算して、この加算の結果の電流を出力する。そして、ローパスフィルタ回路30から出力される位相差電圧Viが基準電圧Vrefより小さい場合には、オフセット電流Idを出力する。そして、演算回路60から出力される電流が電圧に変換されて制御電圧Vcontとして電圧制御遅延回路101のk個の遅延素子DL,DL…に出力される。
【0040】
それ故、図3に示すように、DLLロック周波数は、位相差電圧Viに対し、位相差電圧Viが基準電圧Vrefより小さい範囲では、定電流であるオフセット電流Idに対応する一定値を取り、位相差電圧Viが基準電圧Vref以上である範囲では、位相差電圧Viに比例する(あるゲインを有する)値を取るように変化する。
【0041】
これにより、位相差電圧Viが基準電圧Vref以上である範囲では、DLLロック周波数が、位相比較回路10で検出される位相差に応じた位相差電圧Viに比例して変化するので、通常通り、ロック動作が行われる。そして、位相差電圧Viが基準電圧Vrefより小さい範囲では、DLLロック周波数が位相差電圧Viに依存しないので、チャージポンプ回路20の出力による影響を低減して、ジッタ精度を向上することができる。さらに、本実施の形態では、位相差電圧Viを位相差電流に変換する第1電圧−電流変換回路40と基準電圧Vrefを基準電流に変換する第2電圧−電流変換回路50とが同じ構成の回路で構成されており、かつ両者の出力電流が演算器60で減算されて制御電圧となるので、位相差電圧Viが基準Vrefより大きい範囲において、第1電圧−電流変換回路40を構成する電圧―電流変換素子の製造ばらつきによる影響を打消し合うことができる。
【0042】
その結果、図3に示すように、製造ばらつき(例えば閾値電圧Vtのばらつき)の影響を受けても、ローパスフィルタの出力電圧Viの変化に対するDLLロック周波数の変化のゲインばらつきが小さくなる。従って、図4に示すように、必要なDLLロック周波数範囲を得たい場合、オフセット電流Idを増加させることによって、ゲインを低く設定することができる。その結果、チャージポンプ回路20の出力電圧(ローパスフィルタ30の出力電圧Vi)の影響を低減して、ジッタ精度をより向上することができる。
【0043】
次に、本実施の形態1の変形例を説明する。
【0044】
[変形例1]
図5は本発明の実施の形態1の変形例1に係るDLL回路の構成を示すブロック図である。
【0045】
本変形例1は、図1の基本構成と比較すると、DLL回路が、本発明における「オフセット電流設定回路」の一例である定電流源91を備えていて、この定電流源91にオフセット電流の値を指示する指令が入力され、定電流源91がその指令された値のオフセット電流Idを演算回路60に出力するように構成されている。これ以外は図1の基本構成と同じである。
【0046】
本変形例1によれば、オフセット電流Idを変化させることにより、DLLロック周波数の範囲を所望の範囲に設定することができる。その結果、所望の遅延制御を行うことができる。
【0047】
[変形例2]
図6は本発明の実施の形態1の変形例2に係るDLL回路の構成を示すブロック図である。
【0048】
本変形例2は、図1の基本構成と比較すると、DLL回路が、本発明における「基準電圧設定回路」の一例である定電圧源92を備えていて、この定電圧源92に基準電圧の値を指示する指令が入力され、定電圧源92がその指令された値の基準電圧Vrefを第2電圧−電流変換回路50に出力するように構成されている。これ以外は図1の基本構成と同じである。
【0049】
本変形例2によれば、基準電圧Vrefを変化させることにより、DLLロック周波数の範囲を所望の範囲に設定することができる。その結果、所望の遅延制御を行うことができる。
【0050】
[変形例3]
本変形例3は、図1の基本構成と比較すると、第1電圧−電流変換回路40及び第2電圧−電流変換回路50の少なくともいずれかが、そのゲインを変化可能に構成されている。ゲインを変化させるには、例えば、その内蔵する電圧−電流変換素子の後段にゲインを調整可能な増幅回路を設ければよい。
【0051】
本変形例3によれば、第1電圧−電流変換回路40及び第2電圧−電流変換回路50の少なくともいずれかのゲインを変化させることにより、DLLロック周波数の範囲を所望の範囲に設定することができる。その結果、所望の遅延制御を行うことができる。
【0052】
[変形例4]
本変形例4は、図1の基本構成と比較すると、電流−電圧変換回路70が、そのゲインを変化可能に構成されている。ゲインを変化させるには、例えば、その内蔵する電流−電圧変換素子の後段にゲインを調整可能な増幅回路を設ければよい。
【0053】
本変形例4によれば、電流−電圧変換回路70のゲインを変化させることにより、DLLロック周波数の範囲を所望の範囲に設定することができる。その結果、所望の遅延制御を行うことができる。
【0054】
(実施の形態2)
図7は本発明の実施の形態2に係るDLL回路の構成を示すブロック図である。
【0055】
[構成]
図7に示すように、本実施の形態2のDLL回路は、実施の形態1のDLL回路と比較すると、電圧制御遅延回路101の電圧制御系統を2つ有する点が異なっている。これ以外の点は実施の形態1のDLL回路と同じである。
【0056】
具体的には、遅延制御回路102は、実施の形態1の演算回路60に代えて、演算回路90を備え、実施の形態1の電流―電圧変換回路70に代えて、第1電流―電圧変換回路70A第2電流−電圧変換回路70Bと、を備えている。
【0057】
演算回路90は、第1電圧−電流変換回路40から出力される位相差電流から第2電圧−電流変換回路50から出力される基準電流を減算して、この減算結果の電流を出力する。また、演算回路90は、ローパスフィルタ30の出力電圧Viが基準電圧Vrefより小さい場合、すなわち、位相差電流からの基準電流の減算結果が負になる場合には電流を出力しないように構成されている。この演算回路90は、具体的構成は実施の形態1の演算回路60と同様である(図2の回路において定電流源81を省略すればよい)ので、その例示を省略する。
【0058】
第1電流−電圧変換回路70Aは、演算回路90から入力される電流を電圧に変換し、これを一方の系統の制御電圧cont1として電圧制御遅延回路101に出力する。第2電流−電圧変換回路70Bは、オフセット電流Idを入力されてこれを電圧に変換し、この電圧を他方の系統の制御電圧cont2として電圧制御遅延回路101に出力する。
【0059】
[動作]
以上のように構成された本実施の形態2のDLL回路では、第2電流−電圧変換回路70Bは、常に、定電流であるオフセット電流Idを電圧に変換してなる制御電圧Vcont2を電圧制御遅延回路101に出力する。一方、第1電流−電圧変換回路70Aは、位相差電圧Viが基準電圧Vref以上の範囲では、位相差電流から基準電流を減算してなる電流を電圧に変換した制御電圧Vcont1を電圧制御遅延回路101に出力し、位相差電圧Viが基準電圧Vrefより小さい範囲では、制御電圧Vcont1を電圧制御遅延回路101に出力しない。
【0060】
よって、位相差電圧Viが基準電圧Vref以上の範囲では、DLLロック周波数が位相比較回路10で検出される位相差に応じた位相差電圧Viに比例して変化するので、通常通り、ロック動作が行われる。そして、位相差電圧Viが基準電圧Vrefより小さい範囲では、DLLロック周波数が位相差電圧Viに依存しないので、チャージポンプ回路20の出力による影響を低減して、ジッタ精度を向上することができる。
【0061】
従って、実施の形態1と全く同じ効果が得られる。
【0062】
なお、実施の形態2を実施の形態1の変形例1乃至変形例4と同様に変形してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のDLL回路は、製造ばらつきの影響を抑制しつつジッタを低減できるので、半導体集積回路におけるクロック生成回路等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施の形態1に係るDLL回路の構成を示すブロック図である。
【図2】図1のDLL回路における遅延制御回路の構成の一例を示す回路図である。
【図3】図1のDLL回路における位相差電圧の変化に対するDLLロック周波数の変化を示すグラフである。
【図4】ゲイン設定を変化させた場合における位相差電圧の変化に対するDLLロック周波数の変化を示すグラフである。
【図5】本発明の実施の形態1の変形例1に係るDLL回路の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施の形態1の変形例2に係るDLL回路の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係るDLL回路の構成を示すブロック図である。
【図8】従来のDLL回路の遅延制御回路の構成を示す回路図である。
【図9】従来のDLL回路におけるローパスフィルタの出力電圧の変化に対するDLLロック周波数の変化を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
1〜6 第1〜第6のトランジスタ
7 第1の定電流源
10 位相比較回路
20 チャージポンプ回路
30 ローパルフィルタ回路
40 第1電圧−電流変換回路
50 第2電圧−電流変換回路
60,90 演算回路
70 電流−電圧変換回路
70A 第1電流−電圧変換回路
70B 第2電流−電圧変換回路
81 定電流源
82 ノード
91 定電流源
92 定電圧源
101 電圧制御遅延回路
102 遅延制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直列に接続され、それぞれ制御電圧に応じて遅延時間が変化する複数の遅延素子を含み、該複数の遅延素子により入力クロックを順次遅延させて互いに位相が異なる複数の遅延クロックを生成する遅延回路と、
前記複数の遅延クロックのいずれかである第2入力クロックの位相と前記第2入力クロックより遅延されていない前記遅延クロック又は前記入力クロックである第1入力クロックとの位相とを比較し、その比較結果に応じた位相差信号を出力する位相比較回路と、
前記位相比較回路から出力される位相差信号に応じたレベルの電圧(以下、位相差電圧という)を出力するチャージポンプ回路と、
前記チャージポンプ回路から出力される位相差電圧の高周波成分を除去するローパスフィルタ回路と、
前記ローパスフィルタ回路から出力される位相差電圧を電流(以下、位相差電流という)に変換してこれを出力する第1電圧−電流変換回路及び前記第1電圧−電流変換回路と同じ回路に構成され、定電圧(以下、基準電圧という)を電流に変換してこれを出力する第2電圧−電流変換回路を含み、前記第1電圧−電流変換回路から出力される位相差電流から前記第2電圧−電流変換回路から出力される電流(以下、基準電流という)を減算し、この減算の結果の電流を電圧に変換した電圧と定電流(以下、オフセット電流という)を電圧に変換した電圧とを含み、かつ前記位相差電圧が前記基準電圧より小さい場合には前記オフセット電流を電圧に変換した電圧のみを含む前記制御電圧を前記遅延回路の前記複数の遅延素子に出力する遅延制御回路と、を備えるDLL回路。
【請求項2】
前記遅延制御回路は、前記第1電圧−電流変換回路と、前記第2電圧−電流変換回路と、前記第1電圧−電流変換回路から出力される位相差電流から前記第2電圧−電流変換回路から出力される基準電流を減算し、この減算の結果の電流に前記オフセット電流を加算してなる電流を出力し、かつ前記位相差電圧が前記基準電圧より小さい場合には前記オフセット電流のみを出力する電流演算回路と、前記演算回路から出力される電流を電圧に変換し、この電圧からなる前記制御電圧を前記遅延回路の前記複数の遅延素子に出力する電流−電圧変換回路と、を含んでいる、請求項1に記載のDLL回路。
【請求項3】
前記遅延制御回路は、前記第1電圧−電流変換回路と、前記第2電圧−電流変換回路と、前記第1電圧−電流変換回路から出力される位相差電流から前記第2電圧−電流変換回路から出力される基準電流を減算してなる電流を、前記位相差電圧が前記基準電圧以上の場合には出力しかつ前記位相差電圧が前記基準電圧より小さい場合には出力しない演算回路と、前記演算回路から出力される電流を電圧に変換してこれを出力する第1電流−電圧変換回路と、前記オフセット電流を電圧に変換してこれを出力する第2電流−電圧変換回路とを含み、前記第1電流−電圧変換回路が出力する電圧と前記第2電流−電圧変換回路が出力する電圧とを前記制御電圧として前記遅延回路の前記複数の遅延素子に出力する、請求項1に記載のDLL回路。
【請求項4】
前記オフセット電流の定電流値を設定するオフセット電流設定回路をさらに備える、請求項1乃至3のいずれかに記載のDLL回路。
【請求項5】
前記基準電圧の定電圧を設定する基準電圧設定回路をさらに備える、請求項1乃至3のいずれかに記載のDLL回路。
【請求項6】
前記第1電圧−電流変換回路及び前記第2電圧−電流変換回路の少なくともいずれかは、そのゲインを変化可能に構成されている、請求項1乃至3のいずれかに記載のDLL回路。
【請求項7】
前記電流−電圧変換回路は、そのゲインを変化可能に構成されている、請求項2に記載のDLL回路。
【請求項8】
前記第1電流−電圧変換回路及び前記第2電流−電圧変換回路の少なくともいずれかは、そのゲインを変化可能に構成されている、請求項3に記載のDLL回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−239483(P2010−239483A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86610(P2009−86610)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】