説明

DPFの再生制御装置、再生制御方法、および再生支援システム

【課題】簡単な方法によって精度よくアッシュ堆積量を推定できるとともに、アッシュの洗浄要求を作業者に正確に報知して、アッシュ洗浄をサービス工場で効率的に行うことができるDPFの再生制御装置、再生制御方法および再生支援システムを提供すること。
【解決手段】DPF7の前後差圧を検出する差圧センサ39と、スート分とアッシュ分との合計の堆積量によって生じるDPF差圧が予め試験または計算によって設定され、アッシュ堆積量が洗浄を必要とする堆積量に対するDPF差圧を洗浄要求閾値として設定し、洗浄要求閾値より多く堆積し出力低下を必要とするDPF差圧を出力低下閾値として設定するDPF差圧設定手段51と、DPF差圧が洗浄要求閾値に達したかどうかを判定して洗浄要求を出力する洗浄要求報知手段53と、出力低下閾値に達したかどうかを判定して出力低下を警報する出力低下警報手段55と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンの排ガス中に含まれるパティキュレートマター(排気微粒子、以下PMと略す)を捕集するためのディーゼルパティキュレートフィルター(以下DPFと略す)の再生制御装置、再生制御方法、および再生支援システムに関し、特に、DPFに堆積されたアッシュ(灰)の堆積量を推定してアッシュ洗浄を行う再生制御装置、再生制御方法、および再生支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンから排出されるPMの低減に有効な技術として、DPFが知られている。
DPFは、フィルターを用いたPM捕集装置であり、このDPFにはエンジンから排出されるスート(すす)成分と、アッシュ(灰)成分が堆積する。スート成分は強制再生により焼ききることが出来るが、アッシュは強制再生を行っても焼ききることが出来ずDPFに堆積していく。このアッシュが堆積するとDPFの目詰まりがおき、排圧上昇につながるため、アッシュの堆積量を予測して定期的にアッシュ洗浄を行うことが必要である。
【0003】
このアッシュはエンジンオイルがシリンダとピストンとの隙間から燃焼室に入って、燃焼することによって発生するため、アッシュ堆積量はエンジンオイルの消費量と相関があることが知られている。
【0004】
アッシュ堆積量の推定手法に関する技術として種々知られている。例えば、特開2003−83036号公報(特許文献1)には、DPFの再生完了直後にDPF差圧からアッシュ堆積量を求める技術が示され、特許第4032849号公報(特許文献2)には、走行距離を積算してアッシュ堆積量を求める技術が示され、特許第3951618号公報(特許文献3)には、エンジン回転数と燃料消費量のマップからアッシュ排出量を求め、それを積算して堆積量を求める技術が示され、特開2006−29326号公報(特許文献4)には、オイルセンサによりオイルレベルを検知してそれを積算しアッシュ堆積量を算出する技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−83036号公報
【特許文献2】特許第4032849号公報
【特許文献3】特許第3951618号公報
【特許文献4】特開2006−29326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示される、DPFの再生完了直後にDPF差圧からアッシュ堆積量を求める技術では、アッシュ堆積量が増えてもDPF差圧は比例して増大するとは限らず、またスートが堆積していない状態では、アッシュが堆積してもDPF差圧はほとんど上昇しないので、DPF差圧からアッシュ堆積量だけを精度よく予測することには問題がある。
【0007】
また、アッシュが堆積したDPFにスートが堆積すると、アッシュが堆積していない時に比べてDPF差圧が高くなるが、スートの堆積量との切り分けが出来ないため、アッシュ堆積量を定量的に正確に推定することは困難である。
【0008】
さらに、特許文献2の走行距離を積算してアッシュ堆積量を求める技術の場合には、手法としては簡単な方法であるが、エンジン負荷などの条件を考慮出来ないため推定精度に問題がある。
特許文献3のエンジン回転数と燃料消費量のマップからアッシュ排出量を求め、それを積算して堆積量を求める技術では、マップを作成するのに多くの試験点数が必要で時間がかかるうえ、マップ全体の精度を確保するのが困難である。
さらに、特許文献4のオイルセンサによりオイルレベルを検知してそれを積算しアッシュ堆積量を算出する技術では、オイルセンサを装備することが必要となりコスト増大につながる問題がある。
【0009】
このようにアッシュの堆積量の推定方法には種々の方法があるが、また同時に問題も有している。従って、コスト増大にならず、簡単な方法によって精度よくアッシュ堆積量を推定できる方法が必要とされている。
さらに、アッシュは、スートのように炭素を主成分とするものではなく、主としてエンジンオイル中の金属系添加剤に起因する成分を含むため燃焼によっては焼却できず、圧縮空気等によって吹き飛ばして洗浄する必要があるので、洗浄に際して設備がある専用のサービス工場での作業が必要となる。
このため、アッシュの洗浄要求を作業者に正確に報知して、アッシュ洗浄をサービス工場で効率的に行うことができるようにするDPFの再生支援システムも必要になる。
【0010】
そこで、本発明は、これら問題に鑑みてなされたもので、簡単な方法によって精度よくアッシュ堆積量を推定できるとともに、アッシュの洗浄要求を作業者に正確に報知して、アッシュ洗浄をサービス工場で効率的に行うことができるDPFの再生制御装置、再生制御方法および再生支援システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、第1発明のDPFの再生制御装置にかかる発明は、排気通路に排気微粒子(PM)を捕集するディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)を備え、該DPFに捕集されたPMを強制再生する強制再生手段を備えたDPFの再生制御装置において、DPFの前後差圧を検出する差圧検出手段と、スート分とアッシュ分との合計の堆積量によって生じるDPF差圧が予め試験または計算によって設定され、アッシュ堆積量が洗浄を必要とする堆積量に対するDPF差圧を洗浄要求閾値として設定し、前記アッシュ堆積量が前記洗浄を要求する堆積量より多く堆積し出力低下を必要とする堆積量に対するDPF差圧を出力低下閾値として設定するDPF差圧設定手段と、前記DPF差圧が前記洗浄要求閾値に達したかどうかを判定し達している場合には洗浄要求を出力する洗浄要求報知手段と、前記DPF差圧が前記洗浄要求閾値より大きい前記出力低下閾値に達したかどうかを判定し達している場合には出力低下を警報する出力低下警報手段と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、第2発明のDPFの再生制御方法にかかる発明は、排気通路に排気微粒子(PM)を捕集するディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)を備え、該DPFに捕集されたPMを強制再生する強制再生手段を備えたDPFの再生制御方法において、スート分とアッシュ分との合計の堆積量によって生じるDPF差圧が予め試験または計算によって設定し、アッシュ堆積量が洗浄を必要とする堆積量に対するDPF差圧を洗浄要求閾値として設定し、前記アッシュ堆積量が前記洗浄を要求する堆積量より多く堆積し出力低下を必要とする堆積量に対するDPF差圧を出力低下閾値として設定し、前記DPF差圧が前記洗浄要求閾値に達したかどうかを判定し、達している場合には洗浄要求を出力する洗浄要求報知ステップと、前記DPF差圧が前記洗浄要求閾値より大きい出力低下閾値に達したかどうかを判定し、達している場合には出力低下を警報する出力低下警報ステップと、を有したことを特徴とする。
【0013】
かかる第1発明、第2発明によれば、DPFの前後の差圧よりアッシュ堆積量を推定演算するため、DPFの強制再生制御用の既存の差圧センサらの信号を用いることで新たにセンサを設置する必要がなく、従来技術にあるオイルセンサを装備してオイルレベルを検知してそれを積算しアッシュ堆積量を算出する技術に比べて、コスト増大を抑えられる。
【0014】
また、DPF差圧からアッシュ堆積量を求める技術は、アッシュ堆積量が増えてもDPF差圧は比例して増大するとは限らず、またスートが堆積していない状態では、アッシュが堆積してもDPF差圧はほとんど上昇しないので、DPF差圧からアッシュ堆積量だけを精度よく予測することには問題があったが、かかる発明では、予め設定されたスート堆積量とアッシュ堆積量との合計堆積に基づくDPF差圧特性(図3参照)に基づいて、アッシュの洗浄時期を推定して報知するものであるため、アッシュ堆積量だけでは精度よく検出できないDPF差圧を、スート堆積量とアッシュ堆積量との合計堆積量を用いることで、そこに含まれるアッシュ堆積量の変化を精度よく検出して洗浄時期を判定できるようになる。
【0015】
また、第1発明において好ましくは、前記洗浄要求閾値に達したときに、アッシュ洗浄要求を報知する前にDPFの手動強制再生を促す手動再生報知手段を設けるとよい。
このように、洗浄要求を報知する前に、DPFの手動強制再生を促す手動強制再生報知手段を設けるので、DPFを手動によって強制再生させてスート分を燃焼除去することで、一時的にDPF差圧を低下させ、改めてDPF差圧が洗浄要求閾値に達したとき報知するようにできる。
従って、DPFの洗浄要求報知の信頼性を高めることができる。また、手動強制再生によってサービス工場に運んでのDPF洗浄作業のタイミングを調整できる。
【0016】
しかし、手動強制再生を何度も実行するに従って、手動強制再生完了から洗浄要求を促す報知の間隔が狭まってくる。この場合、手動強制再生が完了した後に再度前記洗浄要求閾値に達したときに、手動強制再生の完了から所定時間以内の場合には手動強制再生は実行せずに洗浄要求の報知を行うとよい。
所定時間以内に狭まる場合には、真にアッシュ洗浄が必要になったため、手動強制再生は実行せずに、洗浄要求を報知して、洗浄要求の報知の信頼性を高めることができる。
さらに、頻繁に強制再生を実行すると強制再生の実行に際して使用される燃料によってエンジンオイルが希釈される所謂オイルダイリューションを生じるため、それを防止することができる。
【0017】
また、第1発明において好ましくは、エンジンオイルの消費量と相関関係を有する指標によってDPFのアッシュ堆積量を推定するアッシュ堆積量推定手段をさらに備え、該アッシュ堆積量推定手段によって算出された堆積量の推定値が洗浄を必要とする堆積量に達していない場合であっても、前記DPF差圧が前記洗浄要求閾値に達したときに洗浄要求を出力するとよい。
【0018】
このように、エンジンオイルの消費量と相関関係を有する指標によってDPFのアッシュ堆積量を推定するアッシュ堆積量推定手段をさらに備えて併用することで、アッシュ堆積量の推定精度を高めることができる。
この併用の際に、アッシュは主としてエンジンオイル中の金属系添加剤に起因する成分を含むため使用するエンジンオイルの種類が変わるとエンジンオイルの消費量から推定する手法では、精度良いアッシュ堆積量の推定が困難になるおそれがあるが、DPF差圧から推定した洗浄要求閾値の判定を優先して出力することで、エンジンオイルの変更時においてもアッシュ洗浄要求の報知精度を維持できる。
【0019】
また、第1発明において好ましくは、前記差圧検出手段よって検出された差圧を一定の運転状態の差圧に補正するDPF差圧補正手段を備え、前記DPF差圧が前記DPF差圧補正手段によって補正された補正差圧を用いるとよい。
このように、補正差圧を用いることで、堆積量推定精度を高めることができる。すなわち、同一堆積量であっても、差圧は排ガス体積流量により変化するため、計測時の排ガス体積流量を基準状態の基準ガス流量に補正して、その基準ガス流量における差圧を補正差圧として算出する。
【0020】
次に、第3発明は、前記第1発明のDPFの再生制御装置を備えたDPFの再生支援システムにかかる発明であり、前記再生制御装置はアッシュ管理サーバと通信可能な車載端末器に接続され、前記アッシュ管理サーバにはサービス工場の所在地、各サービス工場の作業可能なカレンダー情報を格納したデータベースを有し、前記再生制御装置の洗浄要求報知手段によって洗浄要求が報知されたときに、前記車載端末器は前記アッシュ管理サーバからアッシュ洗浄可能な最寄りのサービス工場及び作業可能カレンダー情報を入手して車載端末器に表示することを特徴とする。
【0021】
また、第3発明において好ましくは、前記再生制御装置には、前記洗浄要求閾値に達したときに、アッシュ洗浄要求を報知する前にDPFの手動強制再生を促す手動再生報知手段が設けられ、該手動再生報知手段の報知後に手動再生が実行されたとき、その後再度洗浄要求閾値に達する時期を予測して、前記作業可能カレンダー情報を更新して表示するとよい。
【0022】
さらに、第3発明において好ましくは、前記車載端末器に表示されたサービス工場及び作業可能カレンダー情報を基に、該車載端末器にサービス工場の指定、および作業依頼日時を入力可能にし、該車載端末器から前記アッシュ管理サーバへ作業依頼情報が送信されるとよい。
【0023】
アッシュは、スートのように炭素を主成分とするものではなく、主としてエンジンオイル中の金属系添加剤に起因する成分を含むため燃焼によっては焼却できず、圧縮空気等によって洗浄する必要があるので、洗浄に際して設備がある専用のサービス工場又は、運搬可能な洗浄機での作業を要する。
かかる第3発明によれば、アッシュ管理サーバからの情報に基づいて、最寄りのサービス工場、およびサービス作業が可能なカレンダー情報を入手し、さらに車載端末器からアッシュ管理サーバへサービス工場および作業依頼の日時を送信可能にするので、アッシュ洗浄をサービス工場で効率的に行うことができる。
【0024】
次に、第4発明は、前記第1発明のDPFの再生制御装置を備えたDPFの再生支援システムにかかる発明であり、前記再生制御装置はアッシュ管理サーバと通信可能な車載端末器に接続され、前記アッシュ管理サーバにはアッシュ洗浄時に洗浄したアッシュ量、洗浄時までの累積運転時間、累積燃料消費量、および累積エンジン回転数のデータを蓄積するメンテナンスデータベースを有し、洗浄時のアッシュ量および再生制御装置から読み取った前記累積運転時間、累積燃料消費量、および累積エンジン回転数のデータを、前記車載端末器から前記アッシュ管理サーバのメンテナンスデータベースに送信して蓄積し、該蓄積した最新のデータを基に、前記アッシュ堆積量推定手段に設定される関係式を更新する学習手段を有し、該更新された新たな関係式が前記車載端末器を介して前記アッシュ堆積量推定手段に設定されることを特徴とする。
【0025】
かかる第4発明によれば、洗浄処理が実行された際に、アッシュ洗浄時に洗浄したアッシュ量、洗浄時までの累積運転時間、累積燃料消費量、および累積エンジン回転数のデータを、アッシュ管理サーバに蓄積して、学習手段によって最新のデータに基づいてアッシュ堆積量推定手段に設定される関係式を更新するので、次回メンテナンス時期の予測精度を向上できる。また、アッシュ管理サーバから更新された新たな関係式が車載端末器を介して車両側のアッシュ堆積量推定手段に送信されて設定されるので、DPFの再生制御装置を大型化することなく簡単な制御ロジックで関係式を更新できる。
【発明の効果】
【0026】
第1発明、第2発明によれば、DPFの前後の差圧よりアッシュ堆積量を推定演算するため、DPFの強制再生制御用の既存の差圧センサらの信号を用いることで新たにセンサを設置する必要がなく、従来技術にあるオイルセンサを装備してオイルレベルを検知してそれを積算しアッシュ堆積量を算出する技術に比べて、コスト増大を抑えたアッシュ堆積量の推定ができるようになる。
【0027】
また、予め設定されたスート堆積量とアッシュ堆積量との合計堆積に基づくDPF差圧特性(図3参照)に基づいて、アッシュの洗浄時期を推定して報知するため、アッシュ堆積量だけでは精度よく検出できないDPF差圧を、合計堆積量を用いることで、そこに含まれるアッシュ堆積量の変化を精度よく検出して洗浄時期を判定でき、簡単な方法によって精度よくアッシュ堆積量を推定できるとともに、アッシュの洗浄要求を作業者に正確に報知できる。
【0028】
また、第3発明によれば、アッシュ管理サーバからの情報に基づいて、最寄りのサービス工場、およびサービス作業が可能なカレンダー情報を入手し、さらに車載端末器からアッシュ管理サーバへサービス工場および作業依頼の日時を送信可能にするので、アッシュ洗浄をサービス工場で効率的に行うことができるようになる。
【0029】
また、第4発明によれば、アッシュ洗浄時に洗浄したアッシュ量、洗浄時までの累積運転時間、累積燃料消費量、および累積エンジン回転数のデータを、アッシュ管理サーバに蓄積して、学習手段によって最新のデータに基づいてアッシュ堆積量推定手段に設定される関係式を更新するので、次回メンテナンス時期の予測精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】DPFの再生制御装置を備えるディーゼルエンジンの全体構成図である。
【図2】(a)は第1実施形態を示すDPFの強制再生制御装置の制御フローチャート、(b)は閾値の説明図である。
【図3】排気系圧損におけるスートによる圧損とアッシュによる圧損との関係を示す説明図である。
【図4】第2実施形態を示す再生制御装置の構成図である。
【図5】第2実施形態を示す再生制御装置の制御フローチャートである。
【図6】第2実施形態の手動再生報知手段についての動作説明図である。
【図7】第3実施形態を示す再生制御装置の構成図である。
【図8】第3実施形態を示す再生制御装置の制御フローチャートである。
【図9】第3実施形態のアッシュ堆積推定手段の構成ブロック図である。
【図10】第3実施形態の閾値の説明図である。
【図11】第4実施形態の全体構成図である。
【図12】第5実施形態を示すアッシュ管理サーバの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0032】
まず、図1を参照して、DPFの再生制御装置をディーゼルエンジンに適用した全体構成について説明する。
図1に示すように、ディーゼルエンジン(以下エンジンという)1の排気通路3には、DOC(前段酸化触媒)5と該DOC5の下流側にPM(排気微粒子)を捕集するDPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)7とからなる排ガス後処理装置9が設けられている。
このDOC(前段酸化触媒)5は、排ガス中の炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)を無害化するとともに、排ガス中のNOをNOに酸化して、DPF7で捕集されたスートを燃焼除去するする機能や、DPF7に捕集されたスートを強制再生する場合に排ガス中の未燃燃料成分の酸化反応熱により排ガス温度を上昇させる機能を有する。
【0033】
エンジン1は、排気タービン11bとこれに同軸駆動されるコンプレッサ11aを有する排気ターボ過給機11を備えており、該排気ターボ過給機11のコンプレッサ11aから吐出された空気は空気管13を通って、インタークーラ15に入り給気が冷却された後、給気スロットルバルブ17で給気流量が制御され、その後、給気マニホールド18からシリンダ毎に設けられた吸気ポートを通ってエンジン1の図示しない燃焼室内に流入するようになっている。
【0034】
また、エンジン1においては、燃料の噴射時期及び噴射量を制御して燃焼室に噴射するコモンレール燃料噴射装置が設けられており、該コモンレール燃料噴射装置のコモンレールから燃料噴射弁に対して所定の燃料噴射時期に、所定の燃料量が供給されるようになっていて、該コモンレール燃料噴射装置には後述する再生制御装置19から制御信号が入力される。コモンレール燃料噴射装置への制御信号の入力位置を符号21で示す。
【0035】
また、排気通路3の途中から、EGR(排ガス再循環)管23が分岐されて、排ガスの一部(EGRガス)がEGR管23通り、EGRクーラ(不図示)で降温され、給気スロットルバルブ17の下流部位にEGRバルブ25を介して投入されるようになっている。
【0036】
エンジン1の燃焼室で燃焼された燃焼ガス即ち排ガス27は、シリンダ毎に設けられた排気ポートが集合した排気マニホールド29及び排気通路3を通って、前記排気ターボ過給機11の排気タービン11bを駆動してコンプレッサ11aの動力源となった後、排気通路3を通って排ガス後処理装置9のDOC5に入るように流れる。
【0037】
DPF7の再生制御装置19には、コンプレッサ11aへ流入する空気流量を検出する空気流量センサ31、吸気温度センサ33、DOC入口温度センサ35、およびDPF入口温度センサ37、DPFの差圧センサ39、過給後の給気温度センサ41、給気圧力センサ43からの信号が取りこまれる。
さらにエンジン回転数信号45、燃料噴射量信号47、がそれぞれ取りこまれるようになっている。
【0038】
(第1実施形態)
以上の構成において、本発明の再生制御装置19について説明する。このDPF7の再生制御装置19には、図1に示すように、DPF7の前後差圧を検出する差圧センサ39からの差圧値を、一定の運転状態の差圧に補正するDPF差圧補正手段49が設けられ、DPF差圧補正手段49によって補正差圧が算出される。
すなわち、同一堆積量であっても、差圧は排ガス体積流量により変化するため、計測時の排ガス体積流量を基準状態の基準ガス流量に補正して、その基準ガス流量における差圧を補正差圧として算出する。この補正差圧を算出して用いることで、アッシュ堆積量の推定精度を高めることができる。
【0039】
また、再生制御装置19には、図3に示すようなスート分とアッシュ分との合計の堆積量によって生じるDPF差圧と運転時間の関係が予め試験または計算によって設定され、アッシュ堆積量が洗浄を必要とする堆積量に対するDPF7の補正差圧を洗浄要求閾値として設定し、アッシュ堆積量が前記洗浄を要求する堆積量より多く堆積し出力低下を必要とする堆積量に対するDPF7の補正差圧を出力低下閾値として設定するDPF差圧設定手段51が設けられている。
【0040】
また、再生制御装置19には、補正差圧が前記洗浄要求閾値に達したかどうかを判定し、達している場合にはDPF7に堆積したアッシュを洗浄して除去することを促すために洗浄要求を報知する洗浄要求報知手段53と、補正差圧が洗浄要求閾値より大きい出力低下閾値に達したかどうかを判定し、達している場合には出力低下を警報する出力低下警報手段55とを備え、ランプやブザー等の報知警報部57を作動させる。
本発明においては、洗浄要求に対して洗浄を行わずにアッシュが許容限界値を超えてしまった場合には、排ガス温度が限界範囲を超えるため、さらに排ガス性能が悪化するため、許容補正差圧以上になると出力を低下していくフェイルセーフ機能が働く。このとき何の前触れもなくフェイルセーフ機能が働くのは望ましくないため予め警報するものである。
【0041】
以上の構成を有した、再生制御装置の制御フローを、図2(a)を参照して説明する。まず開始すると、ステップS2で、DPF補正差圧がアッシュ洗浄要求閾値P1以上かを判定する。以上でない場合にはステップS6に進んで終了し、アッシュ洗浄要求閾値P1以上の場合には、ステップS3に進んでアッシュ洗浄要求を報知する。
次に、ステップS4で、DPF補正差圧が出力低下警告閾値P2以上かを判定する。以上でない場合にはステップS6に進んで終了し、出力低下警告閾値P2以上の場合には、ステップS5に進んで出力低下を警告する。なお、図2(a)に示すフローは所定の周期で繰り返される。
また、アッシュ洗浄要求閾値P1と出力低下警告閾値P2との関係は、図2(b)のようにP1<P2の関係になっている。
【0042】
DPFの前後差圧からアッシュ堆積量を求める技術は、アッシュ堆積量が増えてもDPF差圧は比例して増大するとは限らず、またスートが堆積していない状態では、アッシュが堆積してもDPF差圧はほとんど上昇しないので、DPF差圧からアッシュ堆積量だけを精度よく予測することには問題があったが、本第1実施形態は、予め設定されたスート堆積量とアッシュ堆積量との合計堆積によるDPF差圧特性(図3参照)に基づいて、アッシュ堆積量を推定して洗浄要求や出力低下をランプやブザー等で警告するものである。
このように、アッシュ堆積量だけ検出するのではなく、合計堆積量のDPF差圧を検出することで、そこに含まれるアッシュ堆積量の増加状態を精度よく判定して報知、警告できるようになる。
従って、特別なセンサを設けることなく、簡単な方法によって精度よくアッシュ堆積量を推定できるとともに、アッシュの洗浄要求を作業者に正確に報知できる。
【0043】
図3は、A、B、Cの3種類のDPFを用いて、運転時間と排気系圧損(DPF補正差圧)との関係を示す特性曲線を表すものである。使用するDPFによってアッシュ洗浄要求閾値P1、出力低下警告閾値P2を設定する。ただし、出力低下警告閾値P2についてはエンジン性能に影響するため、どの種類のDPFを用いても出力低下警告閾値P2は一定値とし、アッシュ洗浄要求閾値P1については、DPFの容量等に応じてそれぞれ設定できるが、図6に示したP1のように同一値としてもよい。なお、図6の点線は、強制再生を繰り返している状態を示すものである。
【0044】
(第2実施形態)
次に、図4〜図6を参照して、第2実施形態の再生制御装置70について説明する。この第2実施形態は、第1実施形態に対して、図4に示すように、手動再生報知手段72および手動強制再生手段74を設けたことが特徴である。その他の構成については第1実施形態と同一である。
【0045】
アッシュ洗浄要求閾値P1に達したときに、アッシュ洗浄要求を報知する前に、DPF7の手動強制再生を促す手動再生報知手段72が設けている。そしてこの手動再生報知手段72による報知によって、作業者が強制再生を実行させるスイッチ76をON操作すると、手動強制再生手段74が作動して、DPF7の強制再生が実行される。
【0046】
強制再生の制御概要は、強制再生が開始されると、DOC5を活性化するためのDOC昇温制御が実行される。このDOC昇温制御は、給気スロットルバルブ17を絞ったり、DPF7の下流側に設けられた排気バルブを絞ったり、燃焼室内への主噴射後にアーリーポスト噴射等を実施すること等によって行われ、DOC5が十分活性した後に、燃焼に寄与しないクランク角(TDC(上死点)後約180deg)において、レイトポスト噴射を行って、活性化されたDOC5に流入されたレイトポスト噴射の燃料がDOC5において反応して発生した酸化熱によって排ガス温度をさらに上昇せしめて、DPF7内でスート(すす)が燃焼する約600℃の温度まで昇温させ、スートを燃焼除去する。
【0047】
以上の構成を有した第2実施形態の再生制御装置70の制御フローを、図5を参照して説明する。まず開始すると、ステップS12で、DPF補正差圧がアッシュ洗浄要求閾値P1以上かを判定する。以上でない場合にはステップS24に進んで終了し、アッシュ洗浄要求閾値P1以上の場合には、ステップS13に進んでアッシュ洗浄要求タイマをカウントする。ステップS14で、アッシュ洗浄要求タイマが閾値を超えたかを判定し、超えた場合にはステップS15で、アッシュ洗浄要求の報知出力をONする。このようにDPF補正差圧がアッシュ洗浄要求閾値P1以上を判定しても、誤検知を防止するためにすぐにアッシュ洗浄要求の報知出力をONすることなく、所定時間後を設定して報知の出力をする。
【0048】
次にアッシュ洗浄要求タイマが閾値を越えない場合、ステップS16に進んで、アッシュ洗浄要求閾値P1を超えたのは最初かどうかを判定し、最初であれば、ステップS19に進んで、手動再生報知手段72よって手動再生ランプ(報知警報部57)を点滅して手動再生を促す。また、ステップS16で、アッシュ洗浄要求閾値P1を超えたのが最初でないと判定した場合には、ステップS17で、アッシュ洗浄要求解除禁止タイマが、警告解除禁止閾値T1以下かどうかを判定する。このアッシュ洗浄要求解除禁止タイマは、ステップS23に示すようにDPF7の強制再生完了後にカウントが開始されるタイマである。ステップS17で警告解除禁止閾値T1以下であればステップS18で警告解除を禁止してアッシュ洗浄要求の警告を維持してONにする。ステップS17で警告解除禁止閾値T1を超える場合には、アッシュ洗浄要求の警告を解除して手動再生ランプを点滅して手動再生を促す。
【0049】
このステップS16〜S19の部分について図6を参照してさらに説明する。アッシュ洗浄要求閾値P1を最初に超えたときには、ステップS19のように作業者に手動再生を促す。また、ステップS17でNOの場合、つまりアッシュ洗浄要求閾値P1を超えた後に手動再生を行い、完了してからT1時間以上経過後に、再びアッシュ洗浄要求閾値P1を超えた場合には手動再生を促す。
しかし、警告解除禁止閾値T1以内のT2に再びアッシュ洗浄要求閾値P1を超えた場合には、強制再生の実行に際して使用される燃料によってエンジンオイルが希釈される所謂オイルダイリューションが生じるため、強制再生を禁止して、ステップS18に進んでアッシュ洗浄要求の出力をONにする。この場合、アッシュ洗浄が実行されるまでアッシュ洗浄要求解除を禁止する。
【0050】
次に、ステップS20では、ステップS19で警報した結果、作業者がスイッチ76を操作して、手動再生が実行させているかを判定する。手動再生中であると判定した場合にはステップS21でアッシュ洗浄要求解除禁止タイマをゼロにセットする。ステップS22でDPF7の強制再生が完了したかを判定し、完了していなければステップS24で終了し、完了していればステップS23でアッシュ洗浄要求解除禁止タイマカウントを開始する、そして、ステップS24で終了する。なお、図5に示すフローは所定の周期で繰り返えされる。
【0051】
第2実施形態によれば、洗浄要求を報知する前に、DPF7の手動強制再生を促す手動強制報知手段72を設けるので、DPF7を手動によって強制再生させてスート分を燃焼除去することで、一時的にDPF差圧を低下させ、改めてDPF差圧が洗浄要求閾値に達したとき報知するようにできる。
従って、DPF7の洗浄要求報知の信頼性を高めることができる。また、手動強制再生によってサービス工場に運んでのDPF洗浄作業のタイミングを調整できる。
【0052】
しかし、手動強制再生を何度も実行するに従って、手動強制再生完了から洗浄要求を促す報知の間隔が狭まってくる。この場合、手動強制再生が完了した後に再度前記洗浄要求閾値に達したときに、手動強制再生の完了から所定時間(警告解除禁止閾値T1)以内の場合には手動強制再生を促す手動再生ランプの点滅はさせずに、洗浄要求の報知を行う。
所定時間以内に狭まる場合には、真にアッシュ洗浄が必要になったため、手動強制再生は実行せずに、洗浄要求を報知して、洗浄要求の報知の信頼性を高めることができる。
さらに、頻繁に強制再生を実行すると強制再生の実行に際して使用される燃料によってエンジンオイルが希釈される所謂オイルダイリューションを生じるため、それを防止することができる。
【0053】
(第3実施形態)
次に、図7〜図10を参照して、第3実施形態の再生制御装置80について説明する。この第3実施形態は、第1実施形態に対して、図7に示すように、アッシュ堆積量推定手段84が設けられている。すなわち、第1実施形態で説明した、DPF差圧補正手段49と、DPF差圧設定手段51と、洗浄要求報知手段53と、出力低下警報手段55とからなる差圧堆積量推定手段82とともに、エンジンオイルの消費量と相関関係を有する指標によってDPFのアッシュ堆積量を推定するアッシュ堆積量推定手段84をさらに備えることを特徴とする。その他の構成については第1実施形態と同一である。
【0054】
アッシュ堆積量推定手段84は、図9に示すような全体構成からなっている。規定回転数以上のエンジン回転数の積算値を算出するエンジン回転数積算部86と、規定回転数以上のエンジン回転数における燃料消費量を積算する燃料消費量積算部88と、規定回転数以上のエンジン回転数における運転時間を積算する運転時間積算部90とを備えている。
【0055】
さらに、エンジン回転数積算部86によるエンジン回転数の積算値をパラメータとした所定の1次関数式Y=F(X)によって、オイル消費量を算出する第1オイル消費量推定部92が設けられている。
同様に、燃料消費量積算部88による燃料消費量の積算値をパラメータとした所定の1次関数式Y=F(X)によって、オイル消費量を算出する第2オイル消費量推定部94が設けられ、さらに、運転時間積算部90による運転時間の積算値をパラメータとした所定の1次関数式Y=F(X)によって、オイル消費量を算出する第3オイル消費量推定部96が設けられている。
【0056】
さらに、図9の最大値選択部98によって、それぞれのパラメータによって算出したオイル消費量のうち最大のものを選択し、オイル消費量からアッシュ堆積量を算出する算出式Y=F(X)によって、アッシュ堆積量推定値を算出するアッシュ堆積量算出部100を備えている。
【0057】
エンジン回転数は、ピストンの上下運動の回数に相関があり、燃焼室へのオイル供給量と相関がある。また、負荷が高いと燃料噴射量が多くなり、燃焼温度が上昇することで、アッシュの発生量が増加する。また、運転時間については、エンジン回転数による算出および燃料消費量による算出を補うものとして算出する。
エンジン回転数の積算値、燃料消費量の積算値、運転時間の積算値は、オイル消費量に相関するものであり、アッシュはすでに説明したように、主としてエンジンオイル中の金属系添加剤に起因する成分を含むため、エンジンオイル量に相関することから、これらパラメータによる1次関数式を用いてエンジンオイル量を推定することでアッシュ堆積量を推定する。
なお、1次関数式Y=F(X)、Y=F(X)、Y=F(X)、さらにY=F(X)については、予め試験、または計算によって関係式を算出しておく。
【0058】
図10には、アッシュ堆積量推定手段84によって算出したアッシュ堆積量を基に、アッシュ洗浄要求閾値A1と、アッシュ堆積警告閾値A2との関係について示す。アッシュ堆積量が、アッシュ洗浄要求閾値A1に達すると、アッシュ洗浄要求を行い、アッシュメンテナンス時期であることを知らせる。しかし、アッシュ洗浄要求を超えても作業者がアッシュメンテナンスを行わずに、アッシュ堆積警告閾値A2を超えた場合には、アッシュ堆積警告のフェイルセーフとなる。すなわち、出力低下が行われる。
【0059】
以上の構成を有した第3実施形態の再生制御装置80の制御フローを、図8を参照して説明する。
まず開始すると、ステップS32で、アッシュ堆積量推定手段84によって算出されたアッシュ堆積値が、アッシュ洗浄要求閾値A1以上かを判定し、以上の場合にはステップS34でアッシュ洗浄要求を報知する。ステップS32がNOの場合には、ステップS33で、DPF差圧補正手段49によって算出されたDPF補正差圧が、アッシュ洗浄要求閾値P1以上かを判定して、以上の場合にはステップS34でアッシュ洗浄要求を報知する。
【0060】
さらに、ステップS33でNOの場合には、ステップS35に進んで、アッシュ堆積量推定手段84によって算出されたアッシュ堆積値が、アッシュ堆積警告閾値A2以上かを判定し、以上の場合にはステップS36でアッシュ堆積警告を発する。ステップS35がNOの場合には、ステップS37に進んで、DPF補正差圧が、出力低下警告閾値P2以上かを判定して、以上の場合にはステップS38で出力低下警告を行う。そして、ステップS37でNOの場合には、ステップS39に進んで終了する。なお、図8に示すフローは所定の周期で繰り返される。
【0061】
第3実施形態によれば、エンジンオイルの消費量と相関関係を有する指標によってアッシュ堆積量を推定するアッシュ堆積量推定手段84と、DPFの差圧からアッシュ堆積量を推定する差圧堆積量推定手段82とを共に備えるので、アッシュ堆積量の推定精度を高めることができる。
併用の際に、アッシュは主としてエンジンオイル中の金属系添加剤に起因する成分を含むため使用するエンジンオイルの種類が変わると精度良いアッシュ堆積量の推定が困難になるおそれがあるが、差圧堆積量推定手段82による、DPF差圧から推定した洗浄要求閾値の判定を優先して出力することで、エンジンオイルの変更時においてもアッシュ洗浄要求の報知精度を維持できる。
すなわち、DPF差圧によるアッシュ堆積量の推定がアッシュ洗浄要求閾値P1に達したときの判定を優先して洗浄要求を出力するとともに、最終的にDPF差圧によるアッシュ堆積量の推定が出力低下警告閾値P2に達したときの判定を最終的な判定としていることからも分かる。
【0062】
(第4実施形態)
次に、図11を参照して、第4実施形態のDPFの再生支援システムについて説明する。この第4実施形態は、図11に示すように、第1実施形態〜第3実施形態で説明した再生制御装置19(70、80)を備え、該再生制御装置19には、アッシュ管理サーバ103と通信可能な車載端末器105が接続可能に構成されている。
【0063】
この車載端末器105を再生制御装置19に接続することで、車載端末器105から通信ネットワーク104を介してアッシュ管理サーバ103に接続される。さらに、このアッシュ管理サーバ103は、通信ネットワーク106を介して、アッシュ洗浄可能な設備が設置されている各サービス工場(F1、F2、…Fn)と接続されている。
そして、アッシュ管理サーバ103内には、各サービス工場(F1、F2、…Fn)の所在地データが格納されたサービス工場データベース107、各サービス工場の稼働日、さらにアッシュ洗浄作業可能なカレンダー情報を格納したカレンダーデータベース109を有している。
【0064】
再生制御装置19の洗浄要求報知手段53によって洗浄要求が報知されたときに、車載端末器105はアッシュ管理サーバ103からアッシュ洗浄可能な最寄りのサービス工場及び作業可能カレンダー情報を入手して車載端末器105に表示する。車載端末器105は、再生制御装置19から洗浄要求が報知されたときに、再生制御装置19に接続しても、常時再生制御装置19に接続しておいてもよい。
【0065】
また、再生制御装置19(70)には、第2実施形態で説明した洗浄要求閾値P1に達したときに、アッシュ洗浄要求を報知する前にDPF7の手動強制再生を促す手動再生報知手段72が設けられている。そして、該手動再生報知手段72の報知後に手動再生が実行されると、再度洗浄要求閾値に達する時期を予測して、作業者に報知するとともに、その再度洗浄要求閾値に達する予測結果を、アッシュ管理サーバ103に送信することで、作業可能な工場およびカレンダー情報が更新されて、車載端末器105に表示されるようになっている。
すなわち、DPF7を手動によって強制再生させてスート分を燃焼除去することで、一時的にDPF差圧を低下させ、改めてDPF差圧が洗浄要求閾値に達したときの洗浄要求報知を待って、サービス工場に搬入するようにできる。
【0066】
この再度の洗浄要求閾値に達する時期の予測は、DPF差圧設定手段51内には図3に示すようなスート分とアッシュ分との合計の堆積量によって生じるDPF差圧と運転時間の関係が予め試験または計算によって設定されているため、その特性を基に、再生制御装置19(70)の洗浄要求予測部110にて次回再度洗浄要求閾値を超える時期を演算して予測する。そして、その予測結果を、車載端末器105を介してアッシュ管理サーバ103に与えて、アッシュ管理サーバ103で、サービス工場データベース107、カレンダーデータベース109を基に、作業可能なカレンダー情報が更新される。
従って、サービス工場への搬入可能なスケジュールを、再度洗浄要求閾値に達する時期を予測して更新されたサービス工場およびカレンダー情報を基に予め調整できるようになる。
【0067】
さらに、車載端末器105に表示されたサービス工場及び作業可能カレンダー情報を基に、車載端末器105からサービス工場の指定、および作業依頼日時の指定を入力可能にし、車載端末器105からアッシュ管理サーバ103へ作業依頼情報が送信できるようになっている。
【0068】
アッシュは、スートのように炭素を主成分とするものではなく、主としてエンジンオイル中の金属系添加剤に起因する成分を含むため燃焼によっては焼却できず、圧縮空気等によって洗浄する必要があるので、洗浄に際して設備がある専用のサービス工場での作業を要する。
従って、アッシュ管理サーバ103からの情報に基づいて、最寄りのサービス工場、およびサービス作業が可能なカレンダー情報を入手し、さらに車載端末器105からアッシュ管理サーバ103へサービス工場および作業依頼の日時を送信可能にするので、アッシュ洗浄をサービス工場で効率的に行うことができる。
【0069】
(第5実施形態)
次に、図12を参照して、第5実施形態のDPFの再生支援システムについて説明する。この第5実施形態は、図12に示すように、第3実施形態で説明した再生制御装置80を備え、この再生制御装置80は、車載端末器105を介してアッシュ管理サーバ120と通信可能に構成されている。
このアッシュ管理サーバ120には、第4実施形態のカレンダーデータベース109、サービス工場データベース107、さらにメンテナンスデータベース122、学習手段124を有している。
【0070】
このメンテナンスデータベース122には、アッシュ洗浄時に洗浄したアッシュ量、洗浄時までの累積運転時間、累積燃料消費量、および累積エンジン回転数のデータをそれぞれ蓄積するようになっている。これらデータは、洗浄時に除去したアッシュ量を計測して車載端末器105から入力し、さらに、再生制御装置80から読み取った洗浄時までの累積運転時間、累積燃料消費量、および累積エンジン回転数のデータを、車載端末器105から前記アッシュ管理サーバ120へ送信してメンテナンスデータベース122に蓄積する。
【0071】
該蓄積した最新のデータを基に、アッシュ堆積量推定手段84に設定される関係式を更新する学習手段124を有し、該学習手段124によって更新された新たな関係式が、前記車載端末器105を介してアッシュ堆積量推定手段84に設定される。
学習手段124で更新される関係式は、第3実施形態で説明した第1オイル消費量推定部92におけるエンジン回転数の積算値をパラメータとした所定の1次関数式Y=F(X)、第2オイル消費量推定部94における燃料消費量の積算値をパラメータとした所定の1次関数式Y=F(X)、および第3オイル消費量推定部96における運転時間の積算値をパラメータとした所定の1次関数式Y=F(X)、およびオイル消費量からアッシュ堆積量を算出する算出式Y=F(X)が更新される。
【0072】
このように、洗浄処理が実行される際に、アッシュ洗浄時に洗浄したアッシュ量、洗浄時までの累積運転時間、累積燃料消費量、および累積エンジン回転数のデータを、アッシュ管理サーバ120に蓄積して、学習手段124によって最新のデータに基づいてアッシュ堆積量推定手段84に設定される関係式を更新するので、次回メンテナンス時期の予測精度を向上できる。また、アッシュ管理サーバ120から更新された新たな関係式が車載端末器105を介してアッシュ堆積量推定手段84に送信されて設定されるので、DPFの再生制御装置80を大型化することなく簡単な制御ロジックで関係式を更新できる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明によれば、簡単な方法によって精度よくアッシュ堆積量を推定できるとともに、アッシュの洗浄要求を作業者に正確に報知して、アッシュ洗浄をサービス工場で効率的に行うことができるので、DPFの再生制御装置、再生制御方法および再生支援システムへの利用に適している。
【符号の説明】
【0074】
1 ディーゼルエンジン
3 排気通路
5 DOC(前段酸化触媒)
7 DPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)
19、70、80 再生制御装置
39 差圧センサ(差圧検出手段)
49 DPF差圧補正手段
51 DPF差圧設定手段
53 洗浄要求報知手段
55 出力低下警報手段
57 報知警報部
72 手動再生報知手段
74 手動強制再生手段
82 差圧堆積量推定手段
84 アッシュ堆積量推定手段
103、120 アッシュ管理サーバ
105 車載端末器
107 サービス工場データベース
109 カレンダーデータベース
122 メンテナンスデータベース
124 学習手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気通路に排気微粒子(PM)を捕集するディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)を備え、該DPFに捕集されたPMを強制再生する強制再生手段を備えたDPFの再生制御装置において、
DPFの前後差圧を検出する差圧検出手段と、
スート分とアッシュ分との合計の堆積量によって生じるDPF差圧が予め試験または計算によって設定され、アッシュ堆積量が洗浄を必要とする堆積量に対するDPF差圧を洗浄要求閾値として設定し、前記アッシュ堆積量が前記洗浄を要求する堆積量より多く堆積し出力低下を必要とする堆積量に対するDPF差圧を出力低下閾値として設定するDPF差圧設定手段と、
前記DPF差圧が前記洗浄要求閾値に達したかどうかを判定し達している場合には洗浄要求を出力する洗浄要求報知手段と、
前記DPF差圧が前記洗浄要求閾値より大きい前記出力低下閾値に達したかどうかを判定し達している場合には出力低下を警報する出力低下警報手段と、
を備えたことを特徴とするDPFの再生制御装置。
【請求項2】
前記洗浄要求閾値に達したときに、アッシュ洗浄要求を報知する前にDPFの手動強制再生を促す手動再生報知手段を設けたことを特徴とする請求項1記載のDPFの再生制御装置。
【請求項3】
前記手動強制再生が完了した後に再度前記洗浄要求閾値に達したときに、手動強制再生の完了から所定時間以内の場合には手動強制再生は実行せずに洗浄要求の報知を行うことを特徴とする請求項2記載のDPFの再生制御装置。
【請求項4】
エンジンオイルの消費量と相関関係を有する指標によってDPFのアッシュ堆積量を推定するアッシュ堆積量推定手段をさらに備え、該アッシュ堆積量推定手段によって算出された堆積量の推定値が洗浄を必要とする堆積量に達していない場合であっても、前記DPF差圧が前記洗浄要求閾値に達したときに洗浄要求を出力することを特徴とする請求項1記載のDPFの再生制御装置。
【請求項5】
前記差圧検出手段よって検出された差圧を一定の運転状態の差圧に補正するDPF差圧補正手段を備え、前記DPF差圧が前記DPF差圧補正手段によって補正された補正差圧を用いることを特徴とする請求項1記載のDPFの再生制御装置。
【請求項6】
排気通路に排気微粒子(PM)を捕集するディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)を備え、該DPFに捕集されたPMを強制再生する強制再生手段を備えたDPFの再生制御方法において、
スート分とアッシュ分との合計の堆積量によって生じるDPF差圧が予め試験または計算によって設定し、
アッシュ堆積量が洗浄を必要とする堆積量に対するDPF差圧を洗浄要求閾値として設定し、
前記アッシュ堆積量が前記洗浄を要求する堆積量より多く堆積し出力低下を必要とする堆積量に対するDPF差圧を出力低下閾値として設定し、
前記DPF差圧が前記洗浄要求閾値に達したかどうかを判定し、達している場合には洗浄要求を出力する洗浄要求報知ステップと、
前記DPF差圧が前記洗浄要求閾値より大きい出力低下閾値に達したかどうかを判定し、達している場合には出力低下を警報する出力低下警報ステップと、
を有したことを特徴とするDPFの再生制御方法。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか1項記載のDPFの再生制御装置を備え、該再生制御装置はアッシュ管理サーバと通信可能な車載端末器に接続され、前記アッシュ管理サーバにはサービス工場の所在地、各サービス工場の作業可能なカレンダー情報を格納したデータベースを有し、前記再生制御装置の洗浄要求報知手段によって洗浄要求が報知されたときに、前記車載端末器は前記アッシュ管理サーバからアッシュ洗浄可能な最寄りのサービス工場及び作業可能カレンダー情報を入手して車載端末器に表示することを特徴とするDPFの再生支援システム。
【請求項8】
前記再生制御装置には、前記洗浄要求閾値に達したときに、アッシュ洗浄要求を報知する前にDPFの手動強制再生を促す手動再生報知手段が設けられ、該手動再生報知手段の報知後に手動再生が実行されたとき、その後再度洗浄要求閾値に達する時期を予測して、前記作業可能カレンダー情報を更新して表示することを特徴とする請求項7に記載のDPFの再生支援システム。
【請求項9】
前記車載端末器に表示されたサービス工場及び作業可能カレンダー情報を基に、該車載端末器にサービス工場の指定、および作業依頼日時を入力可能にし、該車載端末器から前記アッシュ管理サーバへ作業依頼情報が送信されることを特徴とする請求項7または8記載のDPFの再生支援システム。
【請求項10】
請求項4記載のDPFの再生制御装置を備え、該再生制御装置はアッシュ管理サーバと通信可能な車載端末器に接続され、前記アッシュ管理サーバにはアッシュ洗浄時に洗浄したアッシュ量、洗浄時までの累積運転時間、累積燃料消費量、および累積エンジン回転数のデータを蓄積するメンテナンスデータベースを有し、洗浄時のアッシュ量および再生制御装置から読み取った前記累積運転時間、累積燃料消費量、および累積エンジン回転数のデータを、前記車載端末器から前記アッシュ管理サーバのメンテナンスデータベースに送信して蓄積し、該蓄積した最新のデータを基に、前記アッシュ堆積量推定手段に設定される関係式を更新する学習手段を有し、該更新された新たな関係式が前記車載端末器を介して前記アッシュ堆積量推定手段に設定されることを特徴とするDPFの再生支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−202573(P2011−202573A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70121(P2010−70121)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】