説明

Gタンパク質共役型レセプターChemR23の天然リガンドとその使用

【課題】ChemR23及び/又はTIG2の相互作用に基づき、これらの調節不良状態をインビトロで検出する方法、検出用キット、これらの不良状態の治療用薬剤を提供する。
【解決手段】(a)組織サンプルに存在するChemR23ポリペプチドを、特定なアミノ酸配列からなる配列で示される末端切断型TIG2ポリペプチド又は該末端切断型TIG2ポリペプチドの少なくとも50%の結合活性及びシグナリング活性化レベルを保持する前記末端切断型TIG2に付加、挿入、欠失又は置換したTIG2ポリペプチドと接触させ、前記TIG2ポリペプチドの前記組織サンプルに対する結合を検出し、検出された結合を標準と比較し、当該標準に対する結合における差異があればChemR23の調節不良による疾患又は疾病が検出されたとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーファンGタンパク質共役型レセプター(GPCR)ChemR23のための天然リガンドの同定に基づく、ChemR23のシグナリング活性、TIG2活性の調節不良に関する検出等への使用、キット、薬剤の調製に関する。
【背景技術】
【0002】
Gタンパク質共役型レセプター(GPCR)は、細胞内でのシグナル伝達を担うタンパク質である。GPCRは、通常、7回膜貫通型ドメインを有している。細胞外側部位又はGPCRのフラグメントへリガンドが結合すると、細胞内でシグナルが伝達され、その結果、細胞の生物学的または生理学的性質における変化すなわち細胞の挙動となる。GPCRは、Gタンパク質及びエフェクター(細胞内酵素とGタンパク質によってモジュレートされたチャネル)と一緒に、細胞内セカンドメッセンジャーの状態を細胞外への入力伝達に接続するモジュラーシグナリングシステムの構成要素である。
【0003】
GPCR遺伝子および遺伝子産物は、様々な生理学上プロセスをモジュレートすることができ、疾病の原因物質である可能性がある。GPCRは、中枢神経系及び抹消神経系双方に大変重要らしい。
【0004】
GPCRタンパク質スーパーファミリーは、5つのファミリーで表される:ファミリーIはロドプシンやベータ2アドレナリンレセプターに代表されるレセプターや現在では200を超える独特のメンバーによって代表されるレセプター;ファミリーIIは、副甲状腺ホルモン/カルシトニン/セクレチンレセプターファミリーであり;ファミリーIIIは代謝刺激に反応するグルタミン酸塩レセプターであり;ファミリーIVはCAMPレセプターファミリーで化学走性及びD.discoideumの発育に重要であり;ファミリーVはSTE2などの菌類交配フェロモンレセプターである。
【0005】
Gタンパク質は、グアニンヌクレオチドに結合するα、β及びγサブユニットからなる3量体タンパク質のファミリーに代表される。これらのタンパク質は、通常、シグナル伝達のために細胞表面レセプター(7回膜貫通型ドメインを含むレセプター)に連結される。実際は、リガンドがGPCRに結合すると、Gタンパク質が構造変化し、これにより、αサブユニットに結合したGDP分子がGTP分子へ変換し、βγサブユニット群からαサブユニットを引き離す。
【0006】
α,β及びγサブユニット群のGTP結合形は、典型的には、エフェクターモジュレーティング部分として機能し、セカンドメッセンジャーの産生を導く。セカンドメッセンジャーとしては、cAMP(例えばアデニルシクラーゼの活性化によって)やジアシルグリセロールやイノシトールフォスフェートなどがある。
【0007】
20以上の異なるタイプのα−サブユニットが、ヒトでは、知られている。これらのαサブユニットは、βサブユニットとγサブユニットの小さなプールと結合する。哺乳類のGタンパク質としては、Gi,Go,Gq,Gs及びGtがある。Gタンパク質は、Lodishら,Molecular Cell Biology(サイエンティフィック・アメリカンブックス社,ニュヨーク州ニューヨーク,1995年;及びDownesとGautam,1999年,The G‐Protein Subunit Gene Families. Genomics 62:544-552)に広範囲に説明されており、いずれの内容も参照により本明細書に組み入れられる。
【0008】
知られているが特徴づけされていないGPCRは、現在のところ、薬剤の作用及び発達のための主たるターゲットとなる。予防薬としての可能性や治療特性を有する新規なアゴニスト及びアンタゴニストのスクリーニングに用いられることができる新しいGタンパク質共役型レセプターの同定に努力し続けている。
【0009】
300以上のGPCRが、鼻腔レセプターファミリーを除いて、クローン化され確定している。機構上、臨床上関連ある全ての薬剤の約50〜60%は、様々なGPCRの機能をモジュレートすることによって作用している(Cudermannら,J.Mol.Med.,73:51-63,1995年)。
【0010】
ChemR23は、Dezとも呼ばれ〔配列ID No:1(ヒトのポリヌクレオチド配列、図1);2(ヒトのアミノ酸配列,図2);3(マウスのポリヌクレオチド配列,図3);4(マウスのアミノ酸配列,図3);5(ラットのポリヌクレオチド配列;図4);及び6(ラットのアミノ酸配列,図4)〕は、GPR‐1(全体アミノ酸の38%アイデンティティ)に関連するオーファンGタンパク共役型レセプター、C3aレセプター(38%)、C5aアナフィラトキシンレセプター(36%)及びフォルミルMet−Leu−Pheレセプター(35%)として説明された。ChemR23は、ケモカインレセプターサブファミリーともっと遠い関係にある(Methner A,Hermey G,Schinke B,Hermans‐Borgmeyer I.(1997年)Biochem Biophys Res Commun 233:336-42;Samson M,Edinger AL,Stordeur P,Rucker J,Verhasselt V,Sharron M, Govaerts C,Mollereau C,Vassart G,Doms RW,Parmentier M.(1998年)Eur J Immunol 28:1689-700)。ChemR23転写物(トランスクリプト)は、LPSでの処理によりあるいは処理しなくても、モノサイト由来の樹枝状細胞及びマクロファージの中で多く見出される。また低発現であっても、CD4+ Tリンパ球の中で、逆転写PCRによって検出されることができる。in situハイブリダイゼーション実験は、発育の間、骨組織及び軟骨組織の発達中の目立った発現を伴って、レセプターが特異的に制御されることを示した。in situハイブリダイゼーションは、また、ホスホカリック(phosphocalic)代謝中可能な機能を示すことも副甲状腺中で検出可能である。
【0011】
ChemR23をコードする遺伝子は、ヒト12番染色体のq21.2−21.3領域、化学誘因物質レセプターのためにこれまでに同定された遺伝子クラスターの外側に、ラディエーションハイブリッドマッピングによって割り当てられた。ChemR23は、HIV−1、HIV−2及びSIVウィルス株の範囲によって、可能性あるコレセプター活性についての融合アッセイの中でテストされた。いくつかのSIV株(SIVmac316、SIVmac239、SIVmac17E−Fr及びSIVsm62A)は、プライマリーHIV−1株(92UG024−2)と同様に、コレセプターとして、ChemR23を有効に用いた。従って、このレセプターは、ケモカインレセプターに属しない免疫欠損ウィルスに対するコレセプターらしい。これはまた、化学誘因物質レセプターと推定され、ロイコサイト細胞集団の動員又は移動に重要な役割を果たすだろう。
【0012】
TIG2(Tazarotene誘導遺伝子2〔配列ID No:7(ヒトTIG2ポリヌクレオチド配列、図6);8(ヒトアミノ酸配列、図6);9(マウスポリヌクレオチド配列、図7);及び10(マウスアミノ酸配列、図7)〕は、cDNAとして同定された。このTIG2の発現は、皮膚のラフト培養の処理によって、レチノイン酸レセプター(RAR)ベータ/ガンマ−選択のアンチ−乾癬合成レチノイドであるタザロテン(tazarotene)によってアップレギュレートされる〔AGN190168/エチル6−〔2‐〔4,4ジメチルチオクロマンー6−イル〕−エチニル〕ニコチン酸塩〕(Nagpal S,Patel S,Jacobe H,DiSepio D,Ghosn C,Malhotra M,Teng M,Duvic M,Chandrantna RA.(1997年)J Invet Dermatol 109:91-5)。TIG2の発現におけるレチノイド仲介のアップレギュレートは、ノザンブロット分析によって確認された。TIG2cDNAは長さ830塩基対で、164アミノ酸からなる推定上のタンパク質産物をコードする。TIG2は、ケラチノサイトと繊維芽細胞とが組織のような3次元構造を形成するときだけ、培地内で、タザロテンによって発現され、誘導される。RAR特異的レチノイドも、TIG2のmRNAレベルを増大させることも示された。逆に、RXR特異的レチノイドも1,25−ジヒドロキシビタミンD3も、これらの細胞内ではTIG2レベルを増大させなかった。TIG2は、また非損傷乾癬肌の中では高レベルで発現されるが、乾癬損傷の場合ではより低いレベルでしか発現せず、その発現は、タザロテンの局所適用後に乾癬損傷においてアップレギュレートされる。更に、TIG2は、破骨支持ストローマ細胞内で、1,25ジヒドロキシビタミンD3とデキサメタゾンによって劇的にアップレギュレートされることが示された(Adams AE,Abu-Amer Y,Chappel J,Stueckle S,Ross FP,Teitelbaum SL,Suva LJ.(1999年)J Cell Biochem 74:587-95)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ChemR23とTIG2ポリペプチドとの関係を明らかにして、これらの利用を検討、提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、TIG2、すなわちタザロテン(Tazarotene)誘導遺伝子2のポリペプチド産物を、ChemR23 GPCR(Gタンパク質共役型レセプター:G−protein coupled receptor)の天然のリガンドとして、同定することに関する。本発明は、ChemR23レセプターの活性をモジュレートする物質のスクリーニングアッセイの基礎として、ChemR23ポリペプチドとTIG2ポリペプチドとの相互作用の使用にも拡張する。また本発明は、ChemR23/TIG2相互作用に基づく疾患又は疾病の検出への利用に拡張されるとともに、検出のための分析及びスクリーニングアッセイを実行するためのキットにも拡張する。
【0015】
本発明は、ChemR23の機能をモジュレートする物質(以下「ChemR23機能モジュレート物質」という)の同定方法に拡張する。その方法は、a)TIG2ポリペプチドがChemR23ポリペプチドへ結合するのを許す状態下で、候補モジュレーターの存在及び不在下で、ChemR23とTIG2ポリペプチドとを接触させる工程;b)ChemR23ポリペプチドのTIG2ポリペプチドへの結合を測定し、候補モジュレーターの不在下における結合に対して、候補モジュレーターの存在下における結合が減少していれば、候補モジュレーターを、ChemR23機能モジュレート物質として同定する工程を含む方法である。
【0016】
本発明は、さらに、サンプル中で、当該サンプル中のChemR23機能モジュレート物質の存在を検出する方法に拡張する。この方法は、a)TIG2ポリペプチドがChemR23ポリペプチドに結合するのを許す状態下、サンプルの存在及び不在下で、ChemR23ポリペプチドとTIG2ポリペプチドとを接触させる工程;及びb)ChemR23ポリペプチドとTIG2ポリペプチドとの結合を測定し、候補モジュレーターの不在下での結合に対して、サンプル存在下での結合が減少していれば、サンプル内にChemR23機能モジュレート物質が存在しているとする工程を含む方法である。
【0017】
上記方法のいずれかの好ましい態様では、その測定工程は、ラベル置換,表面プラズモン共鳴、蛍光共鳴エネルギートランスファー、蛍光消光、及び蛍光分極からなる群より選ばれる方法を用いて実行される。
【0018】
本発明は、さらに、ChemR23機能モジュレート物質を同定する下記方法に拡張する。その方法は、a)候補モジュレーターの存在及び不在下でChemR23ポリペプチドとTIG2ポリペプチドとを接触させる工程;及びb)ChemR23ポリペプチドのシグナリング活性を測定し、候補モジュレーターの不在下でのシグナリング活性に対して、候補モジュレーターの存在下でのシグナリング活性が変化していれば、当該候補モジュレーターをChemR23機能モジュレート物質であると同定する工程を含む。
【0019】
本発明は、さらに、ChemR23機能モジュレート物質の下記同定方法にも拡張する。その方法は、a)ChemR23ポリペプチドと候補モジュレーターとを接触させ工程;b)候補モジュレーターの存在下でChemR23ポリペプチドのシグナリング活性を測定する工程;及びc)ChemR23ポリペプチドとTIG2ポリペプチドとがそのEC50で接触しているサンプルにおいて測定された活性と、候補モジュレーターの存在下で測定された活性とを比較し、候補モジュレーターの存在下で測定された活性量がそのEC50で存在するTIG2ポリペプチドによって誘導される量の少なくとも50%であるときに、その候補モジュレーターがChemR23機能モジュレート物質であると同定する工程を含む。
【0020】
本発明は、さらにChemR23機能モジュレート物質の存在を、サンプル中で検出する下記方法に拡張する。その方法は、a)サンプルの存在及び不在下で、ChemR23ポリペプチドとTIG2ポリペプチドとを接触させる工程;b)ChemR23ポリペプチドのシグナリング活性を測定する工程;及びc)サンプルなしでChemR23とTIG2ポリペプチドを含む反応中で測定された活性量と、ChemR23,TIG2及び当該サンプルを含む反応中で測定された活性量とを比較し、当該サンプルの不在下での活性に対して、当該サンプルの存在下で活性が変化していれば、そのサンプルにおいて、ChemR23機能モジュレート物質が存在することを示しているとする工程を含む。
【0021】
本発明は、さらに、サンプル中でChemR23機能モジュレート物質の存在を検出する下記方法に拡張する。その方法は、a)サンプルとChemR23ポリペプチドとを接触させる工程;b)当該サンプルの存在下でChemR23ポリペプチドのシグナリング活性を測定する工程:及びc)当該サンプルの存在下で測定されたシグナリング活性と、ChemR23ポリペプチドがそのEC50で存在しているTIG2ポリペプチドと接触している反応中で測定されたシグナリング活性とを比較し、そのサンプルの存在下で測定された活性量がそのEC50で存在するTIG2ポリペプチドによって誘導される量の少なくとも50%であれば、ChemR23機能モジュレート物質が検出されたとする工程を含む。
【0022】
上記各方法の好ましい態様では、TIG2ポリペプチドは検出可能に標識されている。好ましくは、TIG2ポリペプチドは、ラジオアイソトープ、発蛍光団、蛍光物質の消光剤、酵素、アフィニティタグ及びエピトープタグからなる群より選ばれる部分で検出可能に標識される。
【0023】
上記いずれかの方法のある好ましい態様では、その接触工程は、ChemR23ポリペプチドを発現している細胞内又は細胞上で行われる。
【0024】
上記いずれかの方法の他の好ましい態様では、その接触工程は、合成リポソームの中又は合成リポソ−ム上で行われる(Tajibら,2000年,Nature Biotechnology 18:649-654参照、この文献は参照として本明細書に組み込まれる)。あるいは、ChemR23ポリペプチドを含むウィルス誘導された出芽している膜上でおこなわれる(WO0102551,2001年,参照として組み入れられる)。
【0025】
上記いずれかの方法の他の好ましい態様では、その方法は、ChemR23ポリペプチドを発現する細胞からの膜画分を用いて達成される。
【0026】
他の態様において、当該物質(ChemR23機能モジュレート物質)は、ペプチド,ポリペプチド,抗体,その抗体の抗原結合フラグメント,脂質,炭水化物,核酸及び有機低分子からなる群より選ばれる。
【0027】
他の態様において、ChemR23ポリペプチドのシグナリング活性を測定する工程は、セカンドメッセンジャーのレベル変化を検出する工程を含む。
【0028】
他の態様において、シグナリング活性の測定工程は、グアニンヌクレオチド結合又は変換,アデニレートシクラーゼ活性,cAMP,プロテインキナーゼC活性,フォスファチジルイノシトール(phosphatidylinosotol)分解,ジアシルグリセロール,イノシトール三燐酸,細胞内カルシウム,アラキドン酸,MAPキナーゼ活性,チロシンキナーゼ活性,又はレポータ遺伝子発現を含む。
【0029】
好ましい態様では、シグナリング活性の測定工程は、エクオリンベースアッセイの使用工程を含む。
【0030】
本発明は、更に、細胞内でのChemR23ポリペプチドの活性をモジュレートする方法に拡張する。その方法は、ChemR23の活性がモジュレートされるような、ChemR23ポリペプチド活性をモジュレートする物質を細胞に送達する工程を含む。
【0031】
さらに本発明は、ChemR23シグナリングの調節不良によって特徴づけられる疾患若しくは疾病の検出方法に拡張される。その方法は、a)ChemR23ポリペプチドに対して特異的な抗体と組織サンプルを接触させる工程;b)その組織サンプルの抗体の結合を検出する工程;及びc)標準と工程(b)で検出された結合とを比較し、その標準に対して結合に差があれば、ChemR23シグナリングの調節不良によって特徴づけられる疾患若しくは疾病の徴候であるとする工程を含む。
【0032】
さらに本発明は、ChemR23シグナリングの調節不良によって特徴づけられる疾患若しくは疾病の下記検出方法に拡張される。その方法は、a)TIG2ポリペプチドに対して特異的な抗体と組織サンプルを接触させる工程;b)その組織サンプルの抗体の結合を検出する工程;及びc)標準と工程(b)で検出された結合とを比較し、その標準に対して結合に差があれば、ChemR23シグナリングの調節不良によって特徴づけられる疾患若しくは疾病の徴候であるとする工程を含む。
【0033】
本発明は更にChemR23シグナリングの調節不良によって特徴づけられる疾患又は疾病の下記検出方法に拡張される。その方法は、a)組織サンプルと、ChemR23ポリペプチドに特異的な抗体及びTIG2ポリペプチドに特異的な抗体とを接触させる工程;b)前記抗体と前記組織サンプルとの結合を検出する工程;及びc)工程b)で検出された結合と標準とを比較し、前記標準に対して、抗体の一方又は双方との結合に差があれば、ChemR23の調節不良によって特徴づけられる疾患又は疾病の徴候であるとする工程を含む。
【0034】
さらに本発明は、ChemR23シグナリングの調節不良によって特徴づけられる病気又は疾患の下記検出方法に拡張される。その方法は、a)組織サンプルから核酸を単離する工程;b)鋳型としてその核酸を用いて、ChemR23ポリヌクレオチドを増幅する工程;及びc)工程(b)で生産されたChemR23ポリヌクレオチドの増幅量と標準とを比較し、その標準に対して、ChemR23ポリヌクレオチドの増幅量に差があれば、ChemR23の調節不良によって特徴づけられる疾患又は疾病の徴候であるとする方法を含む。好ましい態様では、増幅工程は、RT/PCRを含む。他の好ましい態様においては、増幅量の比較工程がマイクロアレイ上で行われる。
【0035】
本発明はさらに、ChemR23シグナリングの調節不良によって特徴づけられる疾病又は疾患の下記検出方法に拡張される。その方法は、a)ある組織サンプルから核酸を単離する工程;b)鋳型としてその核酸を用いてChemR23ポリヌクレオチドを増幅する工程;及びc)工程b)で生産された増幅されたChemR23ポリヌクレオチドの配列と標準とを比較し、当該標準に対してその配列に差異があれば、ChemR23の調節不良によって特徴づけられる疾病又は疾患の徴候であるとする工程を含む方法である。1つの好ましい態様においては、増幅工程には、RT/PCRを含む。他の好ましい態様では、前記標準は配列ID NO:1である。他の好ましい態様では、配列の比較工程は、ミニ配列決定(minisequensing)を含む。他の好ましい態様では、その配列比較工程は、マイクロアレイ上で行われる。
【0036】
本発明は、さらに、ChemR23シグナリングの調節不良によって特徴づけられる病気又は疾患の検出方法に拡張される。その方法は、a)ある組織サンプルから核酸を単離する工程;b)鋳型としてその核酸を用いて、TIG2ポリヌクレオチドを増幅する工程;及びc)工程(b)で生産されたTIG2ポリヌクレオチドの増幅量と標準とを比較し、標準に対してTIG2ポリペプチドの増幅量に差があれば、ChemR23の調節不良によって特徴づけられる疾病又は疾患の徴候とする工程を含む。好ましい態様では、前記増幅工程は、RT/PCRを含む。他の好ましい態様では上記増幅量の比較工程は、マイクロアレイ上で行われる。
【0037】
さらに本発明は、ChemR23シグナリングの調節不良によって特徴づけられる疾患又は疾病の下記検出方法に拡張される。この方法は、a)組織サンプルから核酸を単離する工程;b)鋳型としてその核酸を用いてTIG2ポリヌクレオチドを増幅する工程;及びc)工程b)で生産された増幅TIG2ポリヌクレオチド配列と標準とを比較し、該標準に対して、当該配列に差異があれば、ChemR23の調節不良によって特徴づけられる疾患又は疾病の徴候であるとする工程を含む。好ましい態様では、前記増幅工程は、RT/PCRを含む。他の好ましい態様では、前記標準は配列ID NO:7である。他の好ましい態様では、その比較工程は、ミニ配列決定(minisequencing)を含む。他の好ましい態様では、前記配列比較工程は、マイクロアレイ上で行われる。
【0038】
本発明は、さらに単離されたChemR23ポリペプチドと単離されたTIG2ポリペプチドを含む組成物に拡張される。
【0039】
本発明は、更に、ChemR23ポリペプチド又はTIG2ポリペプチドに特異的な抗体に拡張される。
【0040】
本発明は、さらに、ChemR23シグナリングをモジュレートする物質のスクリーニングキット、あるいはChemR23ポリペプチドの調節不良によって特徴づけられる疾患又は疾病の検出用スクリーニングキットであって、分離されたChemR23ポリペプチドとそのパッケージング材料を含むキットに拡張される。好ましい態様においては、そのキットは、さらにTIG2ポリペプチドを含む。本発明によれば診断キットは、例えば、組織サンプル又は組織サンプルから調整される抽出物がTIG2若しくはChemR23のレベル若しくは活性が上昇するかどうかを決定することを許す。そのキットは、また、ChemR23若しくはTIG2をコードする遺伝子における変異の同定及びChemR23若しくはTIG2をコードする核酸の異常レベルの検出への利用も可能である。
【0041】
本発明は、さらに、ChemR23シグナリングをモジュレートする物質のスクリーニングキット又はChemR23ポリペプチドの調節不良によって特徴づけられる疾患又は疾病の検出用スクリーニングキットであって、ChemR23ポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチド及びそのパッケージング材料を含むキットに拡張される。好ましい態様では、そのキットは、さらにTIG2ポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドを含む。
【0042】
本発明はさらに、ChemR23シグナリングをモジュレートする物質のスクリーニングキット又はChemR23ポリペプチドの調節不良によって特徴づけられる疾患又は疾病の検出用スクリーニングキットであって、ChemR23ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドで形質転換された細胞及びそのパッケージング材料を含むキットに拡張される。好ましい態様では、そのキットは、さらに、TIG2ポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチド又はTIG2ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む細胞を含む。
【0043】
本発明は、さらに、ChemR23をコードする遺伝子内でのホモ接合型ヌル突然変異(null mutation)を有する非ヒト哺乳類に拡張される。
【0044】
本発明は、さらにChemR23ポリヌクレオチドのための非ヒト哺乳類のトランスジェニックに拡張される。
【0045】
本発明は、さらに、TIG2ポリヌクレオチドのための非ヒト哺乳類のトランスジェニックに拡張される。
【0046】
ここで用いられている用語「ChemR23ポリペプチド」は、2つの本質的特性を有するポリペプチドをいう。その2つの特性とは、1)ChemR23ポリペプチドは、配列ID NO:2と、少なくとも70%のアミノ酸のアイデンティティ、好ましくは80%,90%,95%又はこれ以上、100%のアミノ酸のアイデンティティを含む、及び2)ChemR23ポリペプチドはChemR23活性を含む、すなわちポリペプチドはTIG2ポリペプチド又はその機能フラグメントに結合するという特性である。最も望ましくは、「ChemR23ポリペプチド」は、また、ここで定義されるようなChemR23シグナリング活性を有する。
【0047】
ここで用いられる用語「ChemR23ポリヌクレオチド」は、ここで定義されるChemR23ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをいう。
【0048】
ここで用いられている用語「ChemR23活性」は、ChemR23ポリペプチドとTIG2ポリペプチド又はその機能フラグメントとの特異的結合をいう。
【0049】
ここで用いられている用語「ChemR23シグナリング活性」は、ChemR23ポリペプチドによるシグナリングの開始又は増大をいう。ChemR23シグナリング活性は、以下の1又はそれ以上のものを分析することによってシグナリングカスケードにおいて検出され得る工程を測定することによってモニターされる。分析対象は、Gタンパク質上でのGTP変換のためのGDPの刺激;アデニレートシクラーゼ活性の変化;プロテインキナーゼCモジュレーション;ホスファチジルイノシトール分解(生じたセカンドメッセンジャーであるジアシルグリセロール及びイノシトール三リン酸);細胞内カルシウムフラックス;MAPキナーゼの活性;チロシンキナーゼのモジュレーション;あるいは遺伝子又はレポータ遺伝子活性のモジュレーションである。もし測定可能な活性が、後述のChemR23活性分析のいずれかに対して、TIG2ポリペプチドの実質的不在下で作られるベースラインの10%以上高く又は低く修正されるなら、シグナリングカスケードにおける検出可能な工程が、開始又は仲介と考えられる。測定可能な活性は、例えば、cAMP又はジアシルグリセロールレベルの測定において、直接測定されることができる。かわりに、その測定可能な活性は、例えばレポータ遺伝子分析において、間接的に測定されることができる。
【0050】
ここで用いられている用語「検出可能な工程」は、例えば、セカンドメッセンジャーの測定又はモディファイ(例えばリン酸化)されたタンパク質の検出によって直接的に、あるいは例えばその工程の流れに沿って効果をモニターすることによって非直接的に、いずれかで測定されることができる工程をいう。例えば、アデニレートシクラーゼ活性は結果としてcAMPを生成する。アデニレートシクラーゼ活性は、例えば、分析におけるcAMPの産生をモニターする分析によって直接的に、あるいはcAMPの活性レベルの測定によって間接的に測定されることができる。
【0051】
ここで、用いられている「単離された」という語は、違った性質の分子による汚染が50(重量)%未満であり、好ましくは40%未満であり、もっとも好ましくは2%以下である分子集団、例えばポリペプチド又はポリヌクレオチド,又は組成物をいう。用語「単離された」が、ChemR23ポリペプチドに適用されるとき、とりわけ脂質膜に結合された又は脂質膜に埋設されたChemR23ポリペプチドに拡張することを意味する。
【0052】
ここで用いられている用語「TIG2ポリペプチド」は、配列ID NO:8によって表されるポリペプチドと少なくとも31%アイデンティティ(又は45%、55%、65%、75%、85%、95%またはほぼ100%というようなアイデンティティ)を有するポリペプチドをいう。配列ID NO:8によって表されるポリペプチドは、配列ID NO:2の配列を有するChemR23ポリペプチドに特異的に結合し、ChemR23ポリペプチドのシグナリング活性を活性化する。用語「特異的結合」とは、TIG2ポリペプチドがEC50,IC50,100mM以下のKを有していることをいう。「TIG2ポリペプチド」は、また上記定義にあうポリペプチドの断片をいう。ここで、その断片は、結合活性及び配列ID NO:8の全長TIG2ポリペプチドのシグナリング活性化のレベルの少なくとも50%を保持している。最終的に得られるポリペプチドが、配列ID NO:8によって表される全長ポリペプチドの結合活性及びシグナリング活性化の少なくとも50%を保持する限りは、TIG2ポリペプチドは、配列ID NO:8に対して、付加、挿入、欠失又は置換を含むことができる。1つの態様において、「TIG2ポリペプチド」は、図17で示される配列ID NO:46の末端切断型TIG2配列にさらに拡張される(図17に示されたヌクレオチド配列は、末端切断されたTIG2ポリペプチドをコードするもので、配列ID NO:47である)。
【0053】
誘導体は、類似のポリペプチド、融合タンパク、またはその欠失物でありえる。本発明は、配列ID NO:46で表される末端切断されたポリペプチドは、ChemR23ポリペプチドに特異的に結合し、そのシグナル伝達経路を活性化することを示す。従って、本発明は、また配列ID NO:46で表される末端切断されたTIG2ポリペプチド配列;上記末端切断されたTIG2ポリペプチドまたはその誘導体をコードする配列ID NO:47で表されるヌクレオチド配列にも関する。
【0054】
配列ID NO:8又は図9(TIG2)で表されるような配列と、配列ID NO:46で与えられるような配列とを比べると、末端「KALPRS」が切断されている(テールの欠失)ことは明らかである。ラットの配列は、「PRS」−テールを喪失し、gallus配列は「RS」テール又は参照配列と考えられている配列に依存しているその「RS」テールの等価物を喪失している。これらの比較は、TIG2ポリペプチドのC末端の長さが変更し得ることの証拠になる。本発明は、更に、ChemR23ポリペプチドに関しては機能的ペプチドを結果として生じる、テールのさらなる欠失が存在しえることを提案する。従って、本発明は、さらに図18に示される配列ID NO:48乃至58のいずれかで表されるTIG2関連ポリペプチドに関する。図9に従った番号で、部位18−19,111−112,122での挿入も可能である。
【0055】
ChemR23への結合及びChemR23シグナリング活性の活性化に必要な配列に加えて、TIG2ポリペプチドは、末端切断されたTIG2ポリペプチドも含めて、例えば、TIG2融合タンパク質のような付加的配列を含むことができる。融合パートナーの制限のない例には、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、マルト−ス結合タンパク質、アルカリフォスファターゼ、チオレドキシン、緑蛍光タンパク(GFP)、ヒスチジンタグ(例えば、6Xまたはこれより大きいHis)またはエピトープタグ(例えばMycタグ,FLAGタグ)が含まれる。
【0056】
ここで用いられている用語「TIG2ポリヌクレオチド」は、ここで定義されているTIG2ポリペプチド又はその補体をコードするポリヌクレオチドをいう。「TIG2ポリヌクレオチド」は、末端切断されたTIG2ポリペプチド、例えば図17で示される末端切断型TIG2ポリペプチドまたは図18に示すようなポリペプチドのいずれかをコードするポリヌクレオチド配列をいう。配列ID NO:46によって表されるような末端切断型ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、図17で示され、配列ID NO:47で表されている。各アミノ酸が当業者によって知られたヌクレオチドの特異的トリプレット(特異的セット)によってコードされ得ることから、図18で示されるポリペプチド及び配列ID NO:48〜58のいずれかで表される。ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、当業者によって相当するアミノ酸配列から誘導され得る。
【0057】
本発明はまた、上記で説明されるような方法によって同定または検出される物質に関する。さらに、本発明は、上記物質を含む組成物に関する。
【0058】
本発明は、さらに本発明に従った物質及び組成物を用いた薬物の調製を意図する。特に、ChemR23に関連する病気又はChemR23関連症の治療薬剤の調製を意図する。ここで上記疾病又は疾患には、癌、腫瘍転移、炎症性疾患、自己免疫疾患、受け継がれた又は獲得した免疫の欠損、骨粗鬆症、骨治癒、骨組織移植、移植片拒絶反応、乾癬、湿疹、皮膚の炎症性感染及び栄養疾患、ウイルス感染、バクテリア感染、寄生虫感染、女性の不育症、卵巣癌及び子宮癌からなる群より選ばれる。あるいはTIG2関連疾患又はTIG2関連疾病の治療薬剤の調製のための物質又は組成物の使用を意図する。ここで、これらの疾患又は疾病は、骨粗鬆症、骨治癒、骨組織移植、移植片拒絶反応、乾癬、湿疹、炎症性感染及び皮膚の栄養疾患、ウイルス感染、バクテリア感染、寄生虫感染、女性の不育症、卵巣癌及び子宮癌からなる群から選ばれる。
【0059】
本発明は、さらに、配列ID NO:46によって表される末端切断型TIG2ペプチドに関する。または配列ID NO:48〜58のいずれかで表される末端切断型TIG2ペプチドに関する。上記ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列またはその誘導体に関する。本発明は、さらに配列ID NO:46で表される末端切断型TIG2ポリペプチドをコードする配列ID NO:47によって表されるヌクレオチドに関する。
【0060】
本発明は、また、末端切断型TIG2ポリペプチド又は上述のポリヌクレオチドの使用に関する。好ましくは、本発明の上記方法において末端切断型TIG2ポリペプチド又はこれをコードするヌクレオチドを用いる。全長TIG2ポリペプチド又はこの全長ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を用いてもよい。
【0061】
本発明の末端切断TIG2ポリペプチド又は全長TIG2ポリペプチドは、単離されたChemR23ポリペプチド及び単離されたTIG2ポリペプチドを含む組成物の産生にも用いられることができる。かわりに、前記末端切断TIG2ポリペプチドまたは全長TIG2ポリペプチドは、抗体の産生のために、あるいはChemR23のシグナリングをモジュレートする物質のスクリーニング試薬キットの生産のために、あるいはChemR23シグナリングの調節不良によって特徴づけられる疾患又は疾病の検出用キットの製造のために、用いられてもよい。
【0062】
本発明は、ChemR23のリガンドとして、上記末端切断されたTIG2ポリペプチド又は全長TIG2ポリペプチドの使用にも関する。
【0063】
さらに本発明は、上記末端切断されたTIG2ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、又はChemR23に対するリガンドの生成のための全長TIG2ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の使用に関する。
【0064】
本発明はまた、末端切断されたTIG2の使用、本発明者によれば、薬剤製造のための全長TIG2ポリペプチドの使用にも関する。上記薬剤は、ChemR23関連の病気、又はChemR23関連の疾病の治療にも適用されえる。ここで、上記疾病又は疾患は、好ましくは、癌、腫瘍転移、炎症性病気、自己免疫疾患、受け継がれた又は獲得した免疫の欠損、骨粗鬆症、骨治癒、骨組織移植、移植片拒絶反応、乾癬、湿疹、皮膚の炎症性感染及び栄養疾患、ウイルス感染、バクテリア感染、寄生虫感染、女性の不育症、卵巣癌及び子宮癌からなる群より選ばれる。あるいは上記薬剤は、TIG2関連疾患又はTIG2関連疾病の治療に適用されることができ、TIG2関連疾患又は疾病は、骨粗鬆症、骨治療、骨組織移植術、移植片拒絶反応、乾癬、湿疹、炎症性感染及び皮膚の栄養疾患、ウイルス感染、バクテリア感染、寄生虫感染、女性の不育症、卵巣癌及び子宮癌からなる群より選ばれる疾患又は疾病である。
【0065】
ここで用いられている用語「候補化合物」及び「候補モジュレーター」は、ChemR23ポリペプチドに結合するリガンドをモジュレートする能力又はChemR23ポリペプチドの活性をモジュレートする能力のために評価される組成物をいう。候補モジュレーターは、天然化合物又は合成化合物でありえる。例えば、低分子;動物、植物、バクテリア、又は菌類細胞の抽出物に含まれる化合物;これらの細胞からのならし培地も同様に含まれる。
【0066】
ここで用いられている用語「低分子」とは、3000ダルトン未満、好ましくは2000または1500未満、より好ましくは1000ダルトン未満、最も好ましくは600ダルトン未満の分子量を有する化合物をいう。「有機低分子」は炭素を含む低分子である。
【0067】
ここで用いられる用語「結合の変化」又は「活性の変化」及び同義の用語「結合の相違」又は「活性の相違」は、与えられた分析における結合またはシグナリング活性において少なくとも10%増加又は減少することをいう。
【0068】
ここで用いられている用語「ChemR23とTIG2との結合を許容する条件」とは、例えば、TIG2がChemR23に結合する下での温度、塩濃度、pH、及びタンパク質濃度の条件をいう。正確な結合条件は、分析の特性に依存して変化する。例えばその分析が、生細胞又は細胞膜画分だけを用いるか否かにかかわらない。しかしながら、ChemR23が細胞表面タンパク質であるから、またTIG2は細胞表面でChemR23と相互作用する分泌ポリペプチドなので、好ましい条件は、一般に生理的な塩(90mM)とpH(約7.0乃至8.0)を含むだろう。結合のための温度は15〜37℃で変化でき、好ましくは室温と30℃との間で変化する。反応系におけるTIG2及びChemR23ポリペプチドも変り、これらの濃度は、好ましくは約0.1pM(例えば放射性ラベルされたトレーサTIG2との反応において、その濃度が一般にK未満のとき)乃至1μM(例えば競争相手としてのTIG2)であろう。一例として、ChemR23発現細胞及び精製され組替えられた標識TIG2ポリペプチドを用いる結合分析では、0.1nMの標識TIG2、100nMのコールドTIG2及び25000細胞を用いて、50mMのHEPES(pH7.4),1mMのCaCl及び0.5%脂肪酸フリーBSAからなる結合バッファー250μl中、27℃で、結合が行われる。
【0069】
ここで用いられている用語「サンプル」は、ChemR23ポリペプチドへの結合又はChemR23のシグナリング活性をモジュレートする物質の存在を知るためにテストされる分子源をいう。サンプルは、環境のサンプル;動物、植物酵母若しくはバクテリア細胞若しくは組織の天然抽出物;臨床的サンプル;合成サンプル;あるいは組替え細胞又は発酵過程からのならし培地であり得る。用語「組織サンプル」は、ChemR23ポリペプチド、TIG2ポリペプチド、ChemR23若しくはTIG2をコードする核酸、又はChemR23ポリペプチドのリガンド結合若しくは活性をモディファイする物質の存在、量、定性又は活性をテストされる組織をいう。
【0070】
ここで用いられる「組織」は、生物の特定の機能を行う細胞の集合体である。ここで用いられている用語「組織」は、特定の生理学的領域からの細胞材料をいう。特定組織における細胞は、いくつかの異なる細胞タイプを含む。この制限のないサンプルは、さらに神経及びグリア細胞を含む脳組織も、毛細血管の内皮細胞及び血球、与えられた組織断片又はサンプルに含まれる全てであり得る。固体組織に加えて、用語「組織」は、血液のような非固体組織にも拡張されることを意図している。
【0071】
ここで用いられている「膜画分」は、ChemR23ポリペプチドを含む細胞脂質膜の調製物をいう。ここで用いられている用語として、「膜画分」は、膜に結合していない細胞構成成分の少なくとも一部(例えば少なくとも10%、好ましくは10%以上)が除去された細胞ホモゲネートと区別される。用語「膜に結合した」は、脂質膜の中に統合される、あるいは脂質膜の中に統合される成分と物理的に結合される細胞の構成成分に結合していることをいう。
【0072】
ここで用いられている用語「結合の減少」は、TIG2ポリペプチドの結合の少なくとも10%の減少;あるいはここで説明されている結合分析の中で測定されたChemR23ポリペプチドに対する他のアゴニストとの結合の少なくとも10%の減少をいう。
【0073】
ここで用いられている用語「セカンドメッセンジャー」は、Gタンパク質共役型レセプター(GPCR)の活性化によって濃度の変化を発生又は生じさせる分子で、GPCRからのシグナル伝達に参加する分子をいう。セカンドメッセンジャーの制限のないサンプルは、cAMP、ジアシルグリセロール、イノシトール三リン酸及び細胞内カルシウムを含む。用語「セカンドメッセンジャーのレベル変化」は、候補モジュレーターの不在下で行われる分析において検出される量に関して与えられるセカンドメッセンジャーの検出レベルの少なくとも10%の増加又は減少をいう。
【0074】
ここで用いられている「エクオリンベース分析」は、活性化されたGPCRによって誘導される細胞内カルシウムフラックスを測定するGPCR活性のための分析をいう。ここで、細胞内カルシウムフラックスは、細胞の中で発現されるエクオリンの発光によって測定される。
【0075】
ここで用いられている用語「結合」は、リガンド(例えばTIG2ポリペプチド)とレセプター(例えばChemR23)の物理的連結をいう。この用語がここで用いられているように、もし、EC50又は100nM以下のK、一般に100nM乃至10pMの領域で起これば、結合は「特異的」である。例えば、EC50又はKが100nM、50nM、10nM、1nM、950pM、900pM、850pM、800pM、750pM、700pM、650pM、600pM、550pM、500pM、450pM、400pM、350pM、300pM、250pM、200pM、150pM、100pM、75pM、50pM、25pM、10pM以下であれば、結合は特異的である。
【0076】
ここで用いられている「EC50」は、TIG2ポリペプチドの結合又は他のリガンドの結合及びChemR23ポリペプチドの機能的活性を含む与えられた活性での物質濃度が、同じ分析を用いて測定可能なChemR23活性のための最大値の50%のときをいう。換言すると、「EC50」は、もっとアゴニストを添加しても増加しない活性量で100%活性がセットされるとき、50%活性を与える物質の濃度をいう。「TIG2ポリペプチドのEC50」は、TIG2ポリペプチドの同定とともに変わることに留意すべきである。例えば、種々のTIG2ポリペプチド(すなわち挿入、欠失、置換、または上記TIG2ポリペプチドの定義を満足するこれらの変異体及びヒト以外の種からのTIG2分子を含む他のペプチドとの融合)は、野生型TIG2より高いか低いかまたは等しい値のEC50を有する。従って、TIG2の変異配列は、野生型TIG2の配列ID NO8と異なるところでは、当業者は、従来方法に従ってTIG2の変異体のEC50を決めることができる。与えられたTIG2ポリペプチドのEC50は、ChemR23応答が飽和又は最大となるまで少なくとも増大し続けるTIG2の投与量存在下でChemR23ポリペプチドの固定量の活性に対する分析を実行することによって測定され、そして、TIG2ポリペプチドの濃度に対して測定されたChemR23活性をプロットする。
【0077】
ここで用いられている用語「IC50」は、ChemR23レセプターの最大活性を50%減らすアンタゴニストまたは逆のアゴニストの濃度である。
【0078】
ここで用いられている用語「検出可能に標識された」は、たやすく検出できる機能グループ(標識)を組み入れた構造的修飾を有する分子(例えばTIG2ポリペプチド又は他のChemR23リガンド)の性質をいう。検出可能な標識には、蛍光化合物、等方性化合物、化学ルミネセンス化合物、量子ドットラベル、ビオチン、酵素、電子濃密試薬、及び抗血清又はモノクローナル抗体が有効であるためのハプテンやタンパクが含まれるが、これらに限定されない。検出の種々の手段には、スペクトル分析、光化学、放射性化学、生化学、免疫化学、または化学的手段が含まれるが、これらに限定されない。
【0079】
ここで用いられる用語「アフィニティタグ」は、対象とする分子(例えばTIG2ポリペプチドまたは他のChemR23リガンド)に付ける標識で、標識を結合する試薬によって特異的に結合される可能性を、標識した分子に与える。アフィニティタグは、抗体のためのエピト−プ(「エピトープタグ」として既知)、ビオチン、6XHis、及びGSTを含むが、これらに限定されない。アフィニティタグは検出に用いられることができ、標識された種の精製のためにも用いられることができる。
【0080】
ここで用いられている用語「結合の低下」は、既知または候補のモジュレーター不在の分析で検出される結合に対して、ChemR23の既知又は候補のモジュレーターを用いて与えられた分析で検出された結合量の少なくとも10%の減少をいう。
【0081】
ここで用いられている薬物又は薬剤に関して用いられるときの「送達(Delivering)」の語は、分析混合物に又は培地の細胞に、薬物又は薬剤を添加することを意味する。この用語は、動物に対する薬物又は薬剤の投与も意味する。このような投与は、例えば注射(例えば、滅菌生理食塩水又は滅菌水のような好適なキャリアにおける)またはインハレーション、または経口、経皮、直腸、膣又は薬物投与の他の共通のルートによってされることができる。
【0082】
ここで用いられている用語「有効量」は、ここで定義されるChemR23活性における変化(例えばChemR23活性の少なくとも10%の増加又は減少)をもたらすChemR23モジュレーティング物質又は薬の量をいう。
【0083】
ここで用いられている用語「標準」は、ChemR23又はTIG2活性の調節不良によって特徴付けられた疾患又は疾病に罹患していない個体から入手したサンプルをいう。この「標準」は、ChemR23又はTIG2ポリペプチドあるいはmRNAレベルと質の比較(すなわち突然変異型vs野性型)のための参照として、ChemR23活性の比較の参照の場合にも同様に用いられる。
【0084】
ここで用いられている、核酸配列に適用するときの用語「増幅している」は、鋳型核酸から1以上の核酸配列のコピーを生産するプロセスとみなす。好ましい「増幅」方法はPCR又は逆PCR(RT/PCR)である。
【0085】
ここで用いられている用語「実質的不在」は、ここで開示されている又は当業者に既知の与えられている分析によって測定される少なくとも10%、GPCR機能を活性化又は阻害するのに必要なレベルより低い活性レベル又は阻害因子をいう。
【0086】
ここで用いられている用語「Gタンパク質共役型レセプター(G−protein Coupled receptor)」、すなわち「GPCR」は、7回膜貫通ドメインを伴う膜関連(membrane-associated)ポリペプチドをいう。機能的なGPCRはリガンド又はアゴニストと結合し、また活性なGタンパク質とも結合してGタンパク質を活性化する。ChemR23はGPCRである。
【0087】
ここで用いられている用語「ChemR23ポリペプチド機能モジュレート物質」とは、ChemR23活性を増大又は低減する分子又は化合物であり、TIG2ポリペプチド又は他のアゴニストの結合を変化させる化合物やChemR23ダウンストリームシグナリング活性を変化させる化合物を含む。
【0088】
ここで用いられている用語「トランスジェニック動物」は、当業者によく知られたトランスジェニック技術などによって、動物の1つ以上の細胞がヒトの仲介を通って導入されたヘテロ接合型核酸を含むいずれかの動物をいい、動物としては好ましくは非ヒト哺乳類、鳥類、魚類、又は両生類をいう。この核酸は、マイクロインジェクション又は組換えウィルスを用いた感染などの意図的な遺伝的操作手段により、細胞の前駆体の中への導入によって直接または間接的に、細胞内に組み入れられる。遺伝的操作という用語は、古典的な交配やインビトロでの受精は含まず、むしろ組替え体DNA分子の導入に向けられている。この分子は、染色体内で統合されてもよく、染色体外でDNA複製していてもよい。ここで説明される典型的トランスジェニック動物は、トランス遺伝子が細胞に、被検ポリペプチドの1つの組換え形、例えばアゴニスト型又はアンタゴニスト型を発現させる。しかしながら、組換え遺伝子がサイレントになっているトランスジェニック動物は、例えば、下記で説明される構成体依存のFLP又はCREとして、意図される。さらに、「トランスジェニック動物」は、また、1以上の遺伝子の遺伝子分裂がヒトの仲介によってもたらされているこれらの組換え動物を含み、組換及びアンチセンス技術の双方を含む。
【0089】
ここで用いられている「抗体」は、従来の免疫グロブリン分子であり、また、その支配下にあるポリペプチドの一つと特異的に反応もする抗体のフラグメントでもある。抗体は、従来技術及び抗体全体に対して明細書中に後で述べるのと同様の方法で、有用性のためにスクリーンされた断片を用いて断片化されることができる。例えば、F(ab)フラグメントは、ペプシンを用いて抗体を処理することによって生産される。結果として生じるF(ab)フラグメントは、ジスルフィド架橋を減じる処理をすると、Fabフラグメントを生産することができる。本発明の抗体には、さらに、二重特異的、一本鎖抗体(single chain Fv)、キメラ抗体、抗体の少なくとも1つのCDR領域のポリペプチドに対して親和性を有するヒト化分子も含まれる。好ましい態様では、抗体に標識が結合していて、検出されることができる。前記標識としては、例えば、放射性同位体、蛍光化合物、化学発光化合物、酵素、又は酵素コファクターが挙げられる。
【0090】
ここで用いられている用語「ヌル突然変異(null mutation)」は、ポリペプチドが発現されないように、ポリペプチドをコードする染色体の配列を修飾する挿入、欠失、又は置換をいう。
【発明の効果】
【0091】
ChemR23とTIG2との特異的結合を利用して、これらの結合、ChemR23のシグナリング活性の変化を測定することで、ChemR23及び/又はTIG2の調節不良に基づく疾患又は疾病の検出に利用できる。また、これらの疾患又は疾病の治療用薬剤にも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】ヒトChemR23/Dezb/CMKRL1(AC075748)のヌクレオチド(配列ID NO:1)及びこれより導き出されたアミノ酸配列を示す。
【図2】ヒトChemR23/Dezb/CMKRL1(371アミノ酸)(配列ID NO:2)のアミノ酸配列を示す。予言された7回膜貫通型ドメインは下線部分である。N末端でNリンクされたグリコシレーション(N−X−S/T)のための一致配列はボールドされ、C末端でのPKC(S/T−X−R/K)によるリン酸化のポテンシャル部位は、イタリックで示されている。
【図3】マウスDezであるマウスChemR23(ACu79525)のオルソローグ(orthologue)のヌクレオチド(配列ID NO:3)及びこれから導き出されるアミノ酸配列(配列ID NO:4)を示している。
【図4】ラットGタンパク質共役型化学誘引物質―1であるラットのChemR23/Dezb/CMKRL1(ACNM_022218)のオルソローグ(orthologue)のヌクレオチド(配列ID NO:5)とこれから導き出されるアミノ酸配列(配列ID NO:6)を示している。
【図5】ChemR23/Dezb/CMKRL1のアミノ酸配列とAT2、C3a、c5a及びfMLPレセプターの配列とClustalXアルゴリズムを用いて達成される選択されたケモカインレセプター配列との間での構造上の類似性を示している。fMLPレセプターとも構造上の類似性を示している。その樹状図は、TreeViewアルゴリズムを用いて構成される。
【図6】ヒトTIG2(ACQ99969)のヌクレオチド(配列ID NO:7)及びこれから導き出されるアミノ酸配列(配列ID NO:8)を示している。
【図7】マウスTIG2の推定上のヌクレオチド(配列ID NO:9)及びこれから導き出されるアミノ酸配列(配列ID NO:10)を示している。
【図8】ヒトのTIG2アミノ酸配列(配列ID NO:8)とマウスのTIG2アミノ酸配列(配列ID NO:10)とを並べたものである。全く同一のアミノ酸と保存された進化部分は、ボックスで囲まれている。
【図9】ヒトのTIG2配列(≪tig2)≫配列ID NO:8)、ラットのTIG2配列(配列ID NO:31)、マウスのTIG2配列(配列ID NO:10)、susTIG2配列(sus Scrofa)(配列ID NO:32)、bosのTIG2配列(BOS taurus)(配列ID NO:33)、及びgallusのTIG2配列(Gallus gallus)(配列ID NO:34)を示す。この図は、リストに挙げたいずれの2つの種も交差するアミノ酸のアイデンティティ%を提供する。
【図10】腹水流体由来のTIG2の5番目の精製工程の部分的クロマトグラムを示している。先の工程の活性な画分(約28%CHCNで溶出)は、HO中の0.1%TFAで6倍に希釈され、HO中の5%CHCN/0.1%TFAを用いて予め平衡化したC18逆相カラム(1mm×50mm、Vydac)上に、室温で0.1ml/minの流速で、直接ロードした。0.1%TFA中で5−95%グラディエントのCHCNを、25%と45%の間で0.3%/minの傾きで適用する。その活性は、40%CHCNで溶出された(黒の水平線によって示される)。
【図11】ヒト卵巣腹水の分画化から得られるHPLC画分のスクリーニングに続くChemR23のための特異的応答の同定を示す。ヒト卵巣腹水の順流分画化で得られた異なる画分は、分析バッファ中で5倍に希釈され、ChemR23を発現する細胞系(白丸)又は関係ないレセプターを発現する細胞系(黒三角及び黒四角)についてエクオリン分析でテストされた。各画分に対して得られた応答は、各細胞系のATP応答を用いて規格化された。
【図12】TIG2で一時的にトランスフェクトされた293T細胞のならし培地によるChemR23の活性化を示す。293T細胞は、pcDNA3−TIG2又はpcDNA3だけで一時的にトランスフェクトされた(モックトランスフェクト(mock-transfented))。トランスフェクト後4日後に、集められた上澄み液の増加量が、ChemR23を発現するCHO細胞を用いたエクオリンベース分析内でのマイクロルーマットを用いて分析された。この分析は、三つ組の中で行われ、SDが示される。代表的実験が示される。
【図13】フローサイトメトリ−によってChemR23に対して向けられた抗体の特徴づけを示す。2/3がChemR23CHO細胞組替え体と1/3がHCR CHO細胞組替え体(ネガテイブコントロール)からなる組換え細胞の混合物は、抗ChemR23 5C1H2モノクローナル抗体の上澄み(太線)又は未知の抗体活性を伴う上澄み(薄線、グレー塗りつぶし)のいずれかと反応させる。FITCで標識した抗マウスIgで染色した後、これらの調製物が、フローサイトメトリーで分析された。結果は、与えられた蛍光(FL1−H軸)を発現する細胞数(イベント軸)のヒストグラムとして表される。モノクローナル5C1H2は、両タイプの細胞の相対割合によって明白にされるように、ネガティブコントロール細胞由来の細胞のChemR23組替え体の亜集団を区別するのを許した。この分析のバックグラウンド蛍光は、2番目の染色(グレー塗りつぶし)によって与えられる。
【図14】実施例11で説明されるように決められた、末端切断型hTIG2ポリペプチドによるChemR23の活性化に対するEC50を示す。
【図15】実施例10で説明されるように決められた、hTIG2のmRNAの組織分布を示す。
【図16】実施例10で説明されるように、決められたChemR23mRNAの組織分布を示す。DCはデンドライド細胞を表す。
【図17】末端切断型ヒトTIG2のポリペプチド(配列ID NO:46)とポリヌクレオチド(配列ID NO:47)を示す。
【図18】他の末端切断型ヒトTIG2ポリペプチド(配列ID NO48乃至58)のポリペプチド配列と、配列ID NO:46のTIG2及び全長TIG2(配列ID NO:8)との比較を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0093】
本発明は、TIG2ポリペプチドがオーファンChemR23 GPCRの天然リガンドであるという発見に関する。この相互作用は、ChemR23GPCRとTIG2ポリペプチドの相互作用及びそのようなChemR23の機能をモジュレートする物質のためのスクリーニング分析に有用である。既知のリガンド及び当該リガンドレセプターとの相互作用に基づいて、レセプター活性の調節不良を含む状態の検出も提供する。
【0094】
I.ChemR23の活性をモジュレートする物質の同定のための分析
レセプターのTIG2との相互作用を利用する多くの方法の中で、ChemR23の活性をモジュレートする物質(ChemR23活性モジュレーター物質)を同定することができる。例えば、インビトロでの培養細胞上又はインビボのいずれかでChemR23/TIG2結合を再構築する可能性は、その結合を分離する物質の同定のための標的を提供する。結合の分離に基づく分析は、そのような分子のライブラリー又はコレクションから、有機低分子のような物質を同定することができる。その代わりに、そのような分析は、サンプル又は天然源からの抽出物(例えば植物、菌類若しくはバクテリアの抽出物)又はヒト組織サンプル(例えば腫瘍組織)において、物質を同定することができる。ある面において、その抽出物は、種々の核酸、ペプチド、又は例えばTIG2ポリペプチド自体の変体を含むポリペプチドのライブラリーを発現する細胞から作られることができる。ChemR23/TIG2結合のモジュレーターが、そのとき、結合分析またはレセプターを通してのダウンストリームシグナリングを測定する機能的分析を用いてスクリーニングされることができる。結合分析及び機能分析の双方は、TIG2ポリペプチドを用いて実証される。
【0095】
ChemR23/TIG2相互作用を用いてChemR23機能をモジュレートする物質をもっと直接的に同定するもうひとつのアプローチは、候補物質又は候補モジュレーターによって誘導されるChemR23ダウンストリームシグナリングの変化を測定する。これらの機能的分析は、単離された細胞膜画分またはこれらの表面でレセプターを発現する細胞上で行われることができる。
【0096】
以下の説明は、ChemR23とTIG2の相互作用に基づく結合分析及び機能的分析の双方の方法を提供する。
【0097】
A.ChemR23ポリペプチド
ChemR23とTIG2の相互作用を用いる分析は、ChemR23ポリペプチド源を要求する。ヒトChemR23のポリヌクレオチド及びポリペプチド配列は、本明細書の中で、配列ID NO:1及び2として示されている。ヒトChemR23ポリヌクレオチド配列は、またジーンバンク(GenBank)承認No.Y14838で入手可能であり、Samsonら1998年、Eur.J.Immunol.28:1689-1700に報告され、この内容は本明細書に組み入れられる。ChemR23ポリペプチド配列は、またスイスプロットデータベースの中の承認No.O75748及びCAA75112で記録されている。関連配列は、CMKRL1(ジーンバンク承認No.XM_006864及びNM004072(ヌクレオチド配列)及びスイスプロット承認No.Q99788(ポリペプチド配列))、ヒトDEZb(ジーンバンク承認No.U79527(ヌクレオチド配列))、ヒトDEZa(ジーンバンク承認No.U79526(ヌクレオチド配列)、マウスDEZ((ジーンバンク承認No.U79525(ヌクレオチド配列)及びスイスプロット承認No.P97468(ポリペプチド配列))及びラットChemR23(ジーンバンク承認No.AJ002745(ヌクレオチド配列)とスイスプロット承認No.035786(ポリペプチド配列)。
【0098】
当業者は、基礎的なPCR及び既知配列からデザインされるプライマー又はプローブを用いた分子クローニング技術を通じて、タンパク質をコードするmRNAを含むサンプルからChemR23配列をたやすく増幅することができる。
【0099】
組替え体ポリペプチドの発現は、その分野でよく知られている。当業者は、真核細胞又は原核細胞における発明に従うと有用であるChemR23ポリペプチドの発現に対するベクター及び発現コントロール配列をたやすく選択できる。ChemR23は、結合またはシグナリング機能を有するために、細胞膜または合成リソゾームのような界面活性剤と連結されなければならない。細胞膜機能の調整方法は、その分野でよく知られている。例えば、Hubbard&Cohn,1975年,J.cell Biol.64:461-479によって報告された方法であり、本明細書に参照として組み入れられる。ChemR23を含む細胞膜を生産するために、あるものは、ChemR23を遺伝子外または組換え的に発現するような技術の適用だけを必要とする。代わりに、膜フリーChemR23は、ポリペプチドの界面活性剤溶液の希釈によって膜調製の中に統合される(Salamonら,1996年,Biophys.J.71;283-294参照、これは本明細書に組み入れられる)。
【0100】
B.TIG2ポリペプチド
ヒトTIG2ポリヌクレオチド及びポリペプチド配列は、それぞれ、本明細書では、配列ID NO:7及び8で与えられる。TIG2配列もジーンバンクから入手可能できる(例えばヒトポリヌクレオチド配列は承認No.XM004765,U77594,NM002889,ヒトポリペプチド配列は承認No.Q99969,BAA76499,AAB47975,NP002880及びXP004765で入手でき;Gallus gallusポリヌクレオチド配列は、承認No.BG713704,BG713614を含むポリヌクレオチドで;マウスポリヌクレオチドは、BF020273,AW113641及びbf018000に含まれ;ラットポリヌクレオチド配列はAW915104に含まれ;Sus scrofaポリヌクレオチド配列はBF078978及びBF713092に含まれる(重複している断片(ESTs)、BF713092におけるTIG2配列の最後の7アミノ酸);及びBOS taurusポリヌクレオチド配列はBG691132に含まれる)。TIG2配列のアライメントは図9に示されている。
【0101】
ChemR23とともに、TIG2ポリヌクレオチドは、増幅源であるプライマーまたはプローブとして既知配列を用いた標準PCRと分子クローニング技術を通じてクローン化されることができる。同様に、クローン化されたTIG2ポリペプチドは、当該分野で知られた原核細胞又は真核細胞で発現させることができる。制限のないサンプルとして、哺乳類TIG2発現ベクターシステムは、ヒトEF1α(Mishizuma&Nagata,1990年,Nucl.Acids.Res.18:5322)のプロモータを含む二重シストロン性(bicistromic)発現ベクター、ポリリンカー、ECMV内側リボゾームエントリー部位(IRES,Ghattasら,1991年,Mol.Cell.Biol.11:5848-5859)及びSV40ポリAシグナルに続くネオマイシン耐性遺伝子を含むことができる。酵母中での発現のためのTIG2発現構造物は、実施例4で説明されている。
【0102】
TIG2は、インビトロでの転写及び翻訳を通じてインビトロで発現させることができる。必要に応じて、与えられた分析または技術用に、本発明の有用なTIG2ポリペプチドを、融合タンパク質又は断片化タンパク質として生産してもよい。例えば、全長TIG2又はその一部分(すなわち少なくとも10アミノ酸、好ましくは20アミノ酸またはそれ以上、全長TIG2より1アミノ酸少ないものまで)のいずれかは、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、分泌されたアルカリフォスファターゼ(SEAP)、FLAGタグ、Mycタグ、又は6X−Hisペプチドに一体化させて、TIG2ポリペプチドの精製又は検出を促進する。断片化された又は融合タンパク質の生産のための方法及びベクターは、このような融合された又は断片化されたタンパク質を単離し検出する方法として、当該分野でよく知られている。
【0103】
TIG2ポリペプチド及び特に末端切断型は、また当該分野で既知の化学合成によって調製されることができる。
【0104】
TIG2ポリペプチド組替え体は、精製された形で用いることができる。あるいは、TIG2トランスフェクト細胞由来のならし培地を用いることができる。本発明によれば、与えられた結合又は機能的分析の中で必要なTIG2の量は、分析に依存して変化するが、一般に分析あたり、1pM乃至1nMの標識TIG2と10pM乃至1μMの非標識TIG2のを用いる。ChemR23のための断片化されたTIG2ポリペプチドの親和性及びEC50は、全長野生型TIG2ポリペプチドの親和性及びEC50に対して、変化しえる。そして、与えられた分析に必要な量は、野生型の値に比例して、選択することができる。もし、与えられた分析に必要であれば、TIG2は、合成の間に、培地内で放射性物質で標識したアミノ酸(例えば、35S−Met,14C−Leu又はふさわしい他のもの)を組み入れることによって、標識することができる。125Iを用いた化学的標識方法は、この分野で知られている。蛍光物質標識は、TIG2ポリペプチド又は標準的な標識付け技術を用いたほかのChemR23リガンドに付けられることもできる。
【0105】
C.ChemR23活性のモジュレーターを同定する分析
TIG2がChemR23レセプターのリガンドであるという発見は、アゴニスト、アゴニスト、及びレセプター活性の逆アゴニストを同定するスクリーニング分析をもたらす。このスクリーニング分析は、2つの一般的アプローチを有する。
【0106】
1)リガンド結合分析:この分析においては、ChemR23を発現する細胞、このような細胞からの膜抽出物、又はChemR23を含む固定された脂質膜が、標識TIG2ポリペプチド及び候補化合物に曝される。培養後、ChemR23レセプターに対する標識TIG2ポリペプチドの特異的結合の測定として、そのその反応混合物を測定する。標識TIG2ポリペプチドと干渉するあるいは置換する化合物は、アゴニスト、アンタゴニスト又はChemR23活性の逆アゴニストであってもよい。機能的分析は、陽性化合物上で行われて、これらの化合物がこれらのカテゴリーのいずれに適合するかを決めることができる。
【0107】
2)機能分析:この分析においては、ChemR23のシグナリング活性が測定される。
a)アゴニストスクリーニングのためにChemR23を発現する細胞、又はこれらの細胞から調製される膜が、候補物質とともに培養され、ChemR23のシグナリング活性が測定される。この分析は、アゴニストとしてTIG2ポリペプチドを用いることが有効であり、レセプター活性をモジュレートする化合物によって誘導される活性がTIG2によって誘導された活性と比較される。アゴニスト又は部分的アゴニストが10×M以下で存在するとき、アゴニスト又は部分的アゴニストは、野生型ヒトTIG2の最大活性の少なくとも10%に相当する最大生物活性を有する。好ましくはアゴニスト又は部分的アゴニストは、野生型ヒトTIG2の生物活性の50%、75%、100%以上、又は2倍、5倍、10倍以上を有する。
【0108】
b)アンタゴニスト又は逆アゴニストスクリーニングでは、ChemR23を発現する細胞又はこれらから単離された膜が、候補物質とともに又は候補物質を伴わずに、TIG2ポリペプチドの存在下で、シグナリング活性のために分析される。アンタゴニスト又は逆アゴニストは、アンタゴニスト又は逆アゴニストを不足している反応に対して、TIG2で刺激されたレセプター活性のレベルを少なくとも10%減少させる。
【0109】
c)逆アゴニストスクリーニングでは、構成成分であるChemR23活性を発現する細胞又はこれらから単離された膜が、候補化合物の存在又は不在下でレセプターの活性を測定する機能的分析の中で用いられる。逆アゴニストは、レセプターの構成成分の活性を少なくとも10%減じるこれらの化合物である。ChemR23の過剰発現(例えばインビボでマクロファージ中で自然に発現されるレベルに対して5倍以上のChemR23ポリペプチドを過剰発現)は、構成成分の活性化を導き得る。ChemR23は、強い構成成分プロモータ(例えばCMV早期プロモータ)の制御下でそれを配置することによって過剰発現させることができる。あるいは、保持されたGPCRアミノ酸又はアミノ酸ドメインのある突然変異が、構成成分活性を導く傾向にある。例えば、Kjelsbergら、1992年J.Biol.Chem.267:1430;McWhinneyら、2000年J.Biol.Chem.275:2087;Renら、1993年J.Biol.Chem.268:16483;Samamaら、J.Biol.Chem.268:4625;Parmaら、1993年、Nature356:649;Parmaら、1998年J.Pharmacol.Exp.Ther.286:85;及びParentら、1996年J.Biol.Chem.271:7949を参照。
【0110】
リガンド結合と置換分析
TIG2がChemR23に結合することを阻害する化合物をスクリーニングするために、TIG2ポリペプチドとともに、細胞上で発現されるChemR23ポリペプチド、又はレセプターポリペプチドを含む単離された膜を用いることができる。結合又はTIG2ポリペプチド置換だけを測定する分析において同定されたとき、化合物は、機能テストにさらされて、当該化合物がアゴニストとして作用するか、アンタゴニストとして作用するか、または逆アゴニストとして作用するかを決めなければならない。
【0111】
置換実験のために、ChemR23ポリペプチドを発現する細胞(一般に分析あたり25000細胞又は1〜100μgの膜抽出物)が、結合バッファー(例えば、50mMのHepes(pH7.4);1mMのCaCl;0.5%ウシの血清アルブミン(BSA)脂肪酸フリー;及び0.5mMのMgCl)中で1.5時間(例えば27℃で)、濃度が増大した候補モジュレーターの存在又は不在下で、標識TIG2ポリペプチドとともに培養される。その解析を有効にし、修正するために、濃度が増大する非標識TIG2ポリペプチドの増大する濃度を用いる調節競争反応が行われることができる。培養後、細胞は広範囲に洗浄され、結合され、標識TIG2が、与えられた標識にふさわしく測定される(例えば、シンチレーションカウンティング、酵素分析、蛍光など)。候補モジュレーターの存在下で結合された標識TIG2ポリペプチド量の少なくとも10%減少していると、候補モジュレーターにより結合が置換したことを示している。もし、候補モジュレーターが10μM以下の濃度(すなわちEC50は10μM以下である)で、標識TIG2の50%(飽和に近いTIG2投与量)を置換するなら、候補モジュレーターは、本明細書で説明されているこの分析又は他の分析で特異的に結合すると考えられる。
【0112】
あるいは、結合又は結合の置換は、表面プラズモン共鳴(SPR)によってモニターされることができる。表面プラズモン共鳴(SPR)分析は、その結合によってもたらされる固定されたセンサーの近くでの質量の変化によって、2分子間結合を測定する定量的方法として用いられることができる。あるいは水相から膜内に保持されたChemR23ポリペプチドまでの、センサ上での、TIG2ポリペプチドの結合ロスによって、2分子間結合を測定する定量的方法として用いられることができる。この質量変化は、TIG2ポリペプチド又は候補モジュレーターの注入又は除去後に、時間に対する共鳴ユニットとして測定され、バイアコア・バイオセンサ(BiacoreAB)を用いて測定される。ChemR23は、Salamonらによって説明される方法によれば、薄層脂質膜の中で、センサーチップ上で保持されることができる(Salamonら,1996年,Biophys J.71:283-219;Salamonら,2001年Biophys.J.80:1557-1567;Salamonら,1999年,Trends Biochem.Sci.24:213-219、これらは夫々参考として、本明細書に組み入れられる)。Sarrioらは、チップ上での脂質層の中で保持されたGPCR A(1)アデノシンレセプターに結合するリガンドを検出するのに、SPRが用いられることを立証した(Sarrioら、2000年,Mol.Cell.Biol.20:5164-5174,本明細書に参考として組み入れられる)。SPR分析で、TIG2がChemR23に結合する条件は、開始点として、Sarrioらによって報告された条件を用いて、当業者によって微調整されることができる。
【0113】
SPRは、少なくとも2つの方法で、結合のモジュレーターとして分析することができる。最初に、保持されたChemR23ポリペプチドにTIG2ポリペプチドを予め結合させ、ついで約10μl/min流速で、1nMから100μM、好ましくは約1μMの範囲の濃度で、候補モジュレーターを注入する。TIG2と置換された結合が定量されることで、モジュレーター結合の検出を可能とする。あるいは、膜に結合したChemR23ポリペプチドを、予め候補モジュレーターとともに培養し、次いでTIG2ポリペプチドを注入することでモジュレータ結合を検出してもよい。予めモジュレーターにさらされていないチップ上でのChemR23とTIG2との結合に対して、モジュレーターにさらされたChemR23とTIG2との結合に差異があれば、モジュレーター結合ととらえることができる。いずれかの分析において、候補モジュレーターの存在下でのTIG2ポリペプチド結合量が、候補モジュレーターの不在下でのTIG2ポリペプチド結合量に対して10%以上低下していれば、候補モジュレーターがChemR23とTIG2との相互作用を阻害することを示している。
【0114】
TIG2ポリペプチドのChemR23との結合の阻害を測定するもうひとつの方法は、蛍光共鳴エネルギートランスファー(FRET)を用いる。蛍光ドナー(D)の励起スペクトルが蛍光アクセプター(A)の励起スペクトルと重複するならば、FRETは、互いに近く(通常、分離の100A未満)まで近接しているときに蛍光ドナー(D)と蛍光アクセプター(A)との間で量子機構現象が起こっていると言える。テストされる分子、例えばTIG2ポリペプチド及びChemR23ポリペプチドが、ドナーとアクセプターの完全な1対の発蛍光団で標識付けされる。ChemR23:TIG2相互作用によってともに近接結合している間、ドナー発蛍光団の励起で放出される蛍光は、ポリペプチドが結合されないときの励起波長に応答して放出される波長とは異なる波長を有する各波長での放出密度の測定により結合されないポリペプチドに対する結合されたポリペプチド量を提供する。発蛍光団のドナー:アクセプター対が、ポリペプチドを標識するのに用いられることが、その分野でよく知られている。特に、シアンFP(CFP,ドナー(D))及びイエローFP(YFP,アクセプター(A))として知られているA.victoria GFPの変異体(variant)が知られている。このGFP変異体(variant)は、結合対の相対的メンバーとの融合タンパク質として作られて、タンパク−タンパク相互作用を測定するFRETスキームの中でのD−A対として役立つ。融合としてのGFP変異体(variant)の発現のためのベクターは、その分野で知られている。サンプルとしては、CFP−TIG2融合とYFP−ChemR23融合を作ることができる。標識TIG2タンパク質と標識ChemR23タンパク質との混合物へ候補モジュレーターを添加した結果、エネルギートランスファーを阻害し、このことは、例えば、候補モジュレーターなしのサンプルに対するYFP蛍光の減少によって立証される。ChemR23:TIG2相互作用の検出のためにFRETを用いる分析において、候補モジュレーターなしのサンプルに対して、候補モジュレーターを含むサンプルの中でアクセプター波長での蛍光放出密度が10%以上減少すれば、候補モジュレーターがChemR23:TIG2相互作用を阻害することを示している。
【0115】
FRETの変異体(variant)は、蛍光消光を用いて、分子相互作用をモニターする。相互作用対における一方の分子は発蛍光団で標識付けされることができ、他方の分子は相互作用対が近づいたときに発蛍光団の蛍光を消光する分子で標識付けされることができる。励起における蛍光の変化は、発蛍光団:消光剤対を用いてタグ付けされた分子の会合における変化を表す。一般に、標識ChemR23ポリペプチドの蛍光が増加すると、消光剤を運ぶTIG2ポリペプチドが置換されたことを示す。消光分析のために、候補モジュレーターを含むサンプルにおける蛍光発光の密度が、候補モジュレーターなしでのサンプルに対して10%以上増加すると、候補モジュレーターがChemR23:TIG2相互作用を阻害することを示す。
【0116】
表面プラズモン共鳴とFRST方法に加えて、蛍光分極測定が、タンパク−タンパク結合の定量に有用である。蛍光的にタグ付けされた分子に対する蛍光分極値は、回転の相関時間又は転動速度に依存する。蛍光標識されたTIG2ポリペプチドと結びつくChemR23によって形成されるようなタンパク質複合体は、複合化されていない、標識TIG2よりも高い分極値を有する。ChemR23:TIG2相互作用の候補阻害剤を含む場合、候補阻害剤がChemR23のTIG2との相互作用を崩壊又は阻害していれば、候補阻害剤なしの混合物に対して蛍光分極化が減少するようになる。蛍光分極化は、ポリペプチド又はタンパク質複合体の形成を崩壊する低分子の同定によく適している。候補モジュレーターが不足しているサンプル内での蛍光分極に対して候補モジュレーターを含むサンプルの蛍光分極が、10%以上減少していれば、候補モジュレーターがChemR23:TIG2相互作用を阻害することを示している。
【0117】
ChemR23:TIG2相互作用をモニタするもう一つの取りえる道は、バイオセンサー分析を使用することである。ICSバイオセンサーとしては、AMBRI(オーストラリアン・メンブレン・バイオテクノロジーリサーチインスティチュート;http//www.ambri.com.au/)が挙げられる。この技術では、ChemR23やTIG2のような巨大分子の結びつきは、懸濁された二重膜の中で、グラマシヂン促進されたイオンチャネルに接近して共役する。これにより、バイオセンサーのアドミッタンス(インピーダンスと同様)の変化としての測定が可能となる。このアプローチは、アドミッタンス変化の大きさの6オーダーを超える線形となり、低分子組合せライブラリーの大規模、高効率スクリーニングに、理論上適している。候補モジュレーターを不足しているサンプルのアドミッタンスに対して、候補モジュレーターを含むサンプルの中のアドミッタンスが10%以上変化(増加又は減少)していれば、候補モジュレーターがChemR23とTIG2の相互作用を阻害することを示している。
【0118】
タンパク質−タンパク質相互作用の分析において、相互作用のモジュレーターが必要とし得ることは物理的に相互作用するタンパク質のドメインと必ずしも直接的に相互作用するわけでないことに留意することが重要である。モジュレーターがタンパク質−タンパク質相互作用の部位から除去された位置で相互作用し、例えば、ChemR23ポリペプチド内での構造的変化をもたらすこともできる。この方式で作用するモジュレーター(阻害剤又はアゴニスト)は、それにもかかわらず、ChemR23の活性をモジュレートする物質として重要である。
【0119】
ここで説明されている結合分析のいずれも、ChemR23の非TIG2リガンド(例えば、アゴニスト、アンタゴニストなど)、例えばここで説明されているように同定された低分子を用いて行われることができる。実際に、低分子リガンド又は他の非TIG2リガンドを使用すると、非ポリペプチド化学物質が、TIG2のようにポリペプチドよりも一般に安価で容易く精製形で製造することができるという利益を有している。このように、アゴニスト、アンタゴニスト又は逆アゴニストの同定にとって、非TIG2リガンドは、全長TIG2よりも高効率な分析により適してる。しかしながら、このような分析は非TIG2リガンドの最初の同定に好適であるとしても、その有利性は、TIG2を用いる分析の重要性を決して損なうことはない。
【0120】
説明された結合分析のいずれも、ChemR23レセプター分子に結合するサンプル又はChemR23レセプターとTIG2の結合に影響するサンプル、例えば組織サンプル内での物質の存在を決定するのに用いられることができる。そうすると、サンプルの存在又は不在下で、ChemR23ポリペプチドがTIG2ポリペプチド又は他のリガンドと反応させられ、TIG2又は結合しているリガンドが、用いられる結合分析にふさわしいものとして測定される。TIG2又は他のリガンドの結合における10%以上の減少は、当該サンプルが、TIG2モジュレート物質又はレセプターポリペプチドに結合しているリガンドを含むことを示す。
【0121】
レセプター活性の機能分析
i.GTPase/GTP結合分析:
ChemR23のようなGPCRのレセプター活性の測定は、レセプターを含む細胞膜によるGTPの結合分析により行う。TrayerとNahorskiによって1995年,Mol.Pharmacol.47:848-854で説明されている方法(この方法は、参考としてここに組み入れられる)において、膜とGタンパク質との共役は、標識されたGTPの結合を測定することによって、
膜とGタンパク質との共役が、実質的に測定される。GTP結合分析のために、レセプターを発現する細胞から単離された膜は、20mMのHEPES(pH7.4),100mMのNaCl及び10mMのMgCl,80pMの35S−GTPγS及び3μMのGDPを含むバッファー中で培養される。この分析混合物は、GF/Bフィルター上でのろ過によって結合していない標識GTPが除去された後、30℃で60分間培養される。結合した標識GTPは、液体シンチレーションカウントによって測定される。TIG2誘導されたChemR23活性のモジュレーションを分析するために、ChemR23ポリペプチドを発現する細胞から調製された膜がTIG2ポリペプチドと混合され、GTP結合分析が、ChemR23活性の候補モジュレーターの存在及び不在下で行われる。標識GTP結合が、候補モジュレーターを含むこの種の分析におけるシンチレーションカウントによって測定されるように、モジュレーターなしの分析に対して10%以上減少すると、候補モジュレーターがChemR23活性を阻害することを示している。
【0122】
類似のGTP結合分析は、TIG2なしで行われ、アゴニストとして作用する化合物を同定する。この場合、TIG2で刺激されるGTP結合は、標準として用いられる。ある化合物が1μM以下で存在するとき、その化合物が、全長野生型TIG2によって誘導されるGTP結合のレベルの少なくとも50%を誘導するならば、好ましくはTIG2によって誘導されるよりも同等以上のGTP結合レベルを誘導するならば、その化合物はアゴニストと考えられる。
【0123】
GTPase活性は、γ32P―GTPを伴うChemR23ポリペプチドを含む膜を培養することによって測定される。活性GTPaseが、無機リン酸塩としてその標識を離し、その標識は、20mMのHPO中で活性化された木炭の5%懸濁液中の遊離無機リン酸塩の分離によって検出され、続いてシンチレーションカウントされる。コントロールは、候補化合物の生じえる非特異的効果を排除するために、ChemR23を発現しない(モックトランスフェクトされた(mock-transfected))細胞から単離された膜を用いる分析を含む。
【0124】
ChemR23調節されたGTPase活性上における候補モジュレーターの効果を分析するために、モジュレーターとともに及びモジュレーターを伴わずに、膜サンプルがTIG2ポリペプチドとともに培養され、続いてGTPase分析を行う。モジュレーターなしのサンプルに対する、GTP結合レベル又はGTPase活性レベルにおける10%以上の変化(増加又は減少)は、候補モジュレーターによるChemR23のモジュレーションを示す。
【0125】
ii.ダウンストリームパスウェイ活性化分析:
a.カルシウムフラックス−エクオリンベース分析
エクオリン分析は、GPCRの活性化によって誘導される細胞内カルシウム放出に対するミトコンドリアのエクオリン応答を利用している(Stablesら,1997年,Anal.Biochem.252:115-126;Detheuxら,2000年,J.Exp.Med.,192 1501-1508;これらはいずれも参考として本明細書に組み入れられる)。要するに、ChemR23発現クローンは、トランスフェクトされ、ミトコンドリアのアポエクオリンとGα16を共同発現する。細胞は、5μMのエレンテラジンH(モレキュラープローブス社)とともに、室温で4時間培養され、DMEM−F12培地内で洗浄され、0.5×10細胞/mlの濃度で再懸濁される。そして、細胞は、テストアゴニストペプチドと混合され、エクオリンによる光放出が30秒間ルミノメータを用いて記録される。結果は、相対光ユニット(RLU)として発現される。候補化合物の生じえる非特異的効果を排除するために、コントロールは、ChemR23を発現しない細胞(モックトランスフェクトされた(mock-transfected)細胞)から単離された膜を用いる分析を含む。
【0126】
光密度が、ChemR23ポリペプチドを発現して候補モジュレーターで処理された細胞サンプル中で、ChemR23ポリペプチドを発現するが候補モジュレーターで処理されない細胞のサンプルに対して、あるいはChemR23ポリペプチドを発現しないが(モックトランスフェクトされた(mock-transfected)候補モジュレーターで処理される細胞のサンプルに対して、光密度が10%以上増加又は減少するならば、エクオリン活性又は細胞内カルシウムが「変化」させられる。
【0127】
TIG2ポリペプチドの不在下で行われるとき、その分析は、ChemR23活性のアゴニストを同定するのに用いられることができる。その分析が、TIG2ポリペプチドの存在下で行われるとき、TIG2がアンタゴニストの分析に用いられることができる。
【0128】
b.アデニレートシクラ−ゼ分析:
アデニレートシクラ−ゼの分析は、Kenimer&Nirenberg,1981年,Mol.Pharmacol.20:585-591に説明されている(参考として本明細書に組み入れらる)。この分析は、Solomonらによって、1974年,Anal.Biochem.58:541-548(これも参考として本明細書に組み入れらる)によって教示された分析の一部変更である。要するに、100μl反応は、50mMのTris塩酸(pH7.5),5mMのMgCl,20mMのクレアチンリン酸塩(二ナトリウム塩),10ユニット(71μgのタンパク質)のクレアチンホスホキナーゼ,1mMのα‐32P−ATP(四ナトリウム塩,2μCi),0.5mMのサイクリックAMP(約10000cpm),0.5mMのRo20−1724,0.25%エタノール,及び50−200μgのタンパク質ホモゲネート(すなわちChemR23ポリペプチドを発現又は発現しない細胞由来で、候補モジュレーターと共に又は伴わずにTIG2ポリペプチドで処理され又は処理されないホモゲネート)を含んで、テストされる。反応混合物が一般に、37℃で6分間培養される。培養に続いて、反応混合物は、0.9mlの冷6%トリクロロ酢酸の添加によって脱タンパクされる。試験管は1800×gで20分間遠心分離され、各上澄み液がDowex AG50W−X4カラムに添加される。このカラムからのcAMP画分が、0.1mMイミダゾール塩酸(pH7.5)4mlで、計数薬ビンに溶出される。分析は、3回行われるべきである。コントロール反応は、ChemR23ポリペプチドを発現しない細胞由来のタンパク質ホモゲネートを用いても行われるべきである。
【0129】
本発明によれば、候補モジュレーターで処理しない細胞の同様のサンプルに対して、又はChemR23ポリペプチドを発現しない細胞(モックトランスフェクト細胞)であるが候補モジュレーターで処理した細胞に対して、ChemR23活性の候補モジュレーターで処理される細胞から取得されたサンプル内で10%以上増加又は減少していれば、アデニレートシクラーゼ活性が「変化した」とする。
【0130】
c.cAMP分析:
細胞内又は細胞外cAMPは、当該分野で広く知られている方法に従って、cAMPラジオイムノアッセイ(RIA)又はcAMP結合タンパク質を用いて測定される。例えば、Horton&Baxendale,1995年,Methods Mol.Biol.41:91-105(参考のために本明細書に組み入れられる)は、cAMP用RIAを説明している。
【0131】
たくさんのcAMPの測定キットが上市されており、LJLバイオシステムズ社とNENライフサイエンスプロダクツ社によって売り出されている「高効率蛍光分極化ベース均一アッセイ」などがある。コントロール反応は、モックトランスフェクト細胞の抽出物を用いて行われ、いくつかの候補モジュレーターの考えられる非特異的効果を排除する。
【0132】
ChemR23ポリペプチドを発現し、ChemR23活性の候補モジュレーターで処理された細胞(又はそのような細胞抽出物)内で、Horton&Baxendra,1995年のRIAベースの分析を用いて検出されるcAMPレベルが、候補モジュレーターで処理されない同様の細胞中のcAMPに対して少なくとも10%増加又は減少するならば、cAMPのレベルが「変化」したとする。
【0133】
d.リン脂質分解、DAG生産及びイノシトール三リン酸レベル:
既知のあるいは疑いあるChemR23モジュレーターの活性による変化を、リン脂質分解をモニターすることによって、リン脂質の分解を活性化するレセプターがモニタされ、その結果として、セカンドメッセンジャーDAG及び/又はイノシトール三燐酸(IP)を生産する。これらの各測定方法は、Ian M.Bird.Totowa,NJ,Humana Press,1988年によって編集された「リン脂質シグナリングプロトコル」(これは参考として本明細書に組み入れられる)で説明されている。Rudolphら,1999年,J.Biol.Chem.274:11824-11831も参照。これは、ホスファチジルイノシトール分解の分析も説明していて、参考として本明細書に組み入れられる。分析は、ChemR23を発現する細胞又は細胞抽出物を用いて、候補モジュレーターと共に又は伴わずに、TIG2ポリペプチドで処理又は処理せずに用いて行われる。コントロール反応は、いくつかの候補モジュレーターの考えられる非特異的効果を排除するために、モックトランスフェクト細胞又はその細胞抽出物を用いて行われる。
【0134】
本発明によれば、ホスファチジルイノシトール分解並びにジアシルグリセロール及び/又はイノシトール三リン酸レベルがChemR23ポリペプチドを発現し、候補モジュレーターで処理された細胞由来のサンプル中で、候補モジュレーターで処理されないChemR23ポリペプチドを発現する細胞由来のサンプル中で観察されたレベルに対して、少なくとも10%増加又は減少すれば、ホスファチジルイノシトール分解並びにジアシルグリセロール及び/又はイノシトール三リン酸レベルが「変化された」とする。
【0135】
e.PKC活性化分:
リン脂質‐及びカルシウム活性化プロテインキナーゼファミリーであるプロテインキナーゼC(PKC)の活性化を含む経路を通って、成長因子レセプターチロシンキナーゼは、シグナルを送る傾向にある。PKC活性化は、ついには、c−fos,c−myc及びc−junなどのプロトオンコジーン転写因子コード遺伝子;プロテアーゼ;コラゲナーゼ(タイプI)及びプラスミノーゲン活性化阻害剤などのプロテアーゼ阻害剤;細胞内付着分子I(ICAM I)などの付着分子のアレーの転写の中で生じる。PKCによって誘導される遺伝子産物における増加を検出するように設計された分析は、PKC活性化及びこれによるレセプター活性をモニターするのに用いられることができる。さらに、PKC経由でシグナルを送るレセプター活性は、PKC活性によって活性化されるコントロール配列によって作動されるレポータ遺伝子構成成分の使用を通じてモニターされることができる。このタイプのレポータ遺伝子に基づく分析は、さらに詳細に、以下で論じられる。
【0136】
PKC活性のさらなる直接的測定のために、Kikkawaら,1982年,J.Biol.Chem.257:13341(参考のために本明細書に組み入れられる)の方法が用いられる。この分析は、PKC基質ペプチドのリン酸化を測定する。PKC基質ペプチドは実質的にホスホセルロース紙へ結合することによって分離される。このPKC分析システムは、精製されたキナーゼの活性又は粗細胞抽出物における活性を測定するのに用いられることができる。プロテインキナーゼCサンプルは、分析に先立って、20mMのHEPES/2mMのDTTですぐに希釈されることができる。
【0137】
この分析に対する基質は、ミリストイル化(myristoylated)アラニンリッチプロテインキナーゼC基質タンパク質(MARCKS)から誘導されるペプチドAc‐FKKSFKL−NH(配列ID NO:35)である。このペプチドに対する酵素のKは約50μMである。この分野で既知のほかの基本的なプロテインキナーゼC選択的ペプチドも、この分析で要求されるこれらのKコファクターの少なくとも2−3倍の濃度で、用いられることができる。当該コファクターとしては、カルシウム、マグネシウム、ATP、ホスファチジルセリン、及びジアシルグリセロールが含まれる。このような分析により、PKC存在量(活性化条件)又は活性PCK存在量(非活性化条件)を適宜決めることができる。本発明の代表的な目的によれば、活性化されることができるPKCを測定するよりも、それが単離されるときにサンプル内で活性であるPKCが測定されるように、非活性化条件が用いられる。非活性化条件では、分析内でEGTAを支持して、カルシウムが省かれる。
【0138】
この分析は、20mMのHEPES(pH7.4),1.2mMのDTT,5mMのMgCl,100μMのATP,〜1μCiγ‐32P−ATP,100μg/mlのペプチド基質(〜100μM),140μM/3.8μMホスファチジルセリン/ジアシルグリセロールメンブレンと;100μMカルシウム(又は500μMのEGTA)を含む混合物の中で行われる。48μlのサンプルが20mMのHEPES(pH7.4)で希釈され、2mMのDDTが最終反応容積の80μlの中で用いられる。反応は、30℃、5−10分間行われ、続いて100mMのATP25μl、100mMのEDTA(pH8.0)を添加し、これにより反応を停止する。
【0139】
この反応を停止させると、各反応の一部分(85μl)が、ワッツマンP81セルロースホスフェートフィルター上にスポットされ、続いて洗浄される。0.4%リン酸中で500ml中を4回(各洗浄あたり5−10分)洗浄し、最終洗浄は、500mlの95%エタノール中で2−5分間行う。結合された放射活性が、シンチレーションカウンターによって測定される。標識ATPの特異的活性(cpm/nmol)がP81ろ紙上に反応のサンプルをスポットし、洗浄することなしにカウントすることによって決定される。PKC活性ユニットは、分あたりでトランスファーされるnmolホスフェートで定義されるように、下記で算出される。ユニット(nmol/min)における活性
【0140】
【数1】

【0141】
代わりの分析としては、パン・ベラ(PAN Vera)(Cat.#P2747)によって販売されているプロテインキナーゼC分析キットを用いて行うことができる。
【0142】
分析は、候補モジュレーターと共に又は伴わずに、TIG2ポリペプチドで処理又は処理せずに、ChemR23ポリペプチド発現細胞からの抽出物について行われる。コントロール反応が、いくつかの候補モジュレーターの考え得る非特異的効果を排除するために、モックトランスフェクト細胞又はこれらの抽出物を用いて行われるべきである。
【0143】
本発明によれば、ChemR23を発現し、候補モジュレーターで処理された細胞の抽出物中で、候補モジュレーターで処理されない細胞由来の同様のサンプル上で行われる反応に対して、上記で説明される分析によって測定されたPKCユニットが、少なくとも10%増加又は減少するとき、PKC活性が候補モジュレーターによって「変化した」とされる。
【0144】
f.キナーゼ活性
市販されているいくつかのキットのいずれか、例えばニューイングランドバイオラボス(Cat#9820)によって販売されているp38MAPキナーゼ分析キット又はパーキン−エルマー・ライフサイエンスによって販売されているFlashPlateTMMAPキナーゼ分析を用いて、分析されることができる。
【0145】
ChemR23ポリペプチドを発現し、候補モジュレーターで処理された細胞のサンプル内で、候補モジュレーターで処理されない同様の細胞からのサンプルにおけるMAPキナーゼ活性に対して、活性レベルが10%以上増加又は減少していれば、MAPキナーゼ活性が「変化した」とする。
【0146】
既知の合成チロシンキナーゼ基質又は天然チロシンキナーゼ基質及び標識づけされたホスフェートを用いるチロシンキナーゼ活性の直接的分析が、他のタイプのキナーゼ(例えばSer/Thyキナーゼ)に対する同様の分析として、よく知られている。キナーゼ活性は、ChemR23ポリペプチドを発現する細胞から調製された精製キナーゼ及び粗抽出物の双方を用いて、TIG2ポリペプチドで処理され又は処理されずに、候補モジュレーターとともに又は伴わずに、行われることができる。いくつかの候補モジュレーターの考え得る非特異的効果を排除するために、モックトランスフェクト細胞又はこれらの抽出物を用いたコントロール反応が行われる。基質は、全長タンパク質又は基質を表す合成ペプチドのいずれかであり得る。Pinna&Ruzzene(1996年,Biochem.Biophys.Acta1314:191-225,これらは参考として組み入れられる)は、キナーゼ活性測定に有用な多くのリン酸化基質部位を列挙する。多くのキナーゼ基質ペプチドが市販されている。「Src−関連ペプチド」RRLIEDAEYAARG(配列ID NO:11,シグマ社#A7433から入手)が特に有用であり、これは、たくさんのレセプター及び非レセプターチロシンキナーゼの基質である。下記に説明される分析は、ペプチド基質がフィルターに結合することを要求し、ペプチド基質は、正味陽性に荷電されていて、結合を促進する。一般に、ペプチド基質は、少なくとも2塩基残基及びフリーのアミノ末端を有しているべきである。一般に反応は、0.7−1.5mMのペプチド濃度を用いる。
【0147】
分析は、一般に、5μlの5Xキナーゼバッファー(5mg/mlのBSA,150mMのTris塩酸(pH7.5),100mMのMgCl;MgClの代わり又はMgClに添加して用いられることができるMnClについて分析された正にそのキナーゼに依存している),5μlの1.0mMのATP(最終濃度0.2mM),γ−32P−ATP(100−500cpm/pmol),3μlの10mMペプチド基質(最終濃度1.2mM),テストされるキナーゼを含む細胞抽出物(キナーゼ分析に用いられる細胞抽出物がホスファターゼ阻害剤を含むべきである(例えば0.1−1mMのオルトバナジン酸ナトリウム))及び25μlのHOを含む容量25μlの中で実行される。
【0148】
キナーゼ反応が30秒間乃至約30分間行われ、続いて、45μlの氷冷10%トリクロロ酢酸(TCA)が添加される。サンプルがマイクロ遠心分離機内で2分間回転させられ、35μlの上澄み液がワッツマンP81セルロースリン酸フィルターサークル上にスポットされる。フィルターは、500mlの冷0.5%リン酸で3回洗浄され、続いて5分間室温で200mlアセトンで1回洗浄される。フィルターが乾燥され、取り込まれた32Pがシンチレーションカウントによって測定される。キナーゼ反応(例えばcpm/pmol)のATP特異的活性が、反応の小サンプル(2−5μl)を、洗浄せずに、P81フィルターサークル上に直接スポットして、カウントすることによって決められる。キナーゼ反応(マイナスブランク)の中で得られる分あたりのカウントは、そして、特異的活性によって分割され、反応のホスフェートトランスファーのモルを決定する。
【0149】
候補モジュレーターで処理されていない同様の細胞からのサンプル中のキナーゼ活性に対して、ChemR23ポリペプチドを発現し、候補モジュレーターで処理された細胞からのサンプル内で、キナーゼ活性レベルが、10%以上増加又は減少したととき、チロシンキナーゼ活性は、「変化した」とする。
【0150】
g.ダウンストリーム経路活性化のための転写レポータ
レセプター(例えばChemR23)にアゴニストが結合することによって開始される細胞内シグナルは、細胞内イベントのカスケードモーションの中で、1以上の遺伝子の転写又は翻訳の中での迅速且つ検出可能な変化である究極的な結果をセットする。従って、レセプターの活性は、ChemR23活性に対して応答するコントロール配列によって駆動されるレポータ遺伝子の発現を測定することによって、モニターすることができる。
【0151】
ここで用いられる「プロモータ」は、遺伝子発現のレセプター仲介調節に必要な転写コントロール要素をいい、塩基的プロモータだけでなく、レセプター調節発現に必要なエンハンサー又は転写因子結合部位のいずれも含む。アゴニスト結合から生じる細胞内シグナルに応答するプロモータを選択することによって、また転写、翻訳、又は究極的活性が容易に検出可能及び測定可能であるレポータ遺伝子に、選択されたプロモータを実施可能に連結することによって、レポータ分析に基づく転写が、与えられたレセプターが活性化されるかどうかの迅速な指標を提供する。
【0152】
ルシフェラーゼ,CAT,GFP,β−ラクタマーゼ又はβ−ガラクトシダーゼのようなレポータ遺伝子が、これらの生産物の検出のための分析として、当該分野で知られている。
【0153】
レセプター活性のモニターによく適した遺伝子は、特に「すばやい(immediately early)」遺伝子であり、一般にレセプターとエフェクタータンパク又はリガンドとの間での接触から何分か後に、迅速に誘導される遺伝子である。すばやい(immediately early)遺伝子転写の誘導は、新しい調節タンパク質の合成を要求しない。リガンド結合に対する迅速な応答に加えて、レポータ構成をつくるのに有用な好ましい遺伝子の特徴には、静止細胞における低い又は検出不能な発現;一過性で新規タンパク質から独立している誘導;新規タンパク質合成を要求する転写の実質的シャットオフ;及びこれらの遺伝子から転写されたmRNAが短い半減期を有することがある。好ましくは、転写コントロール要素は、それが有用であるようにする、これらの特性の全てを有している。
【0154】
多くの異なる刺激に対して応答する遺伝子のサンプルは、c−fosがん原遺伝子である。c−fos遺伝子は、成長因子、ホルモン、分化特異剤(differentiation-specific agent)、ストレス、及び他の公知の細胞表面タンパク質の誘導剤によって、タンパク合成から独立した方式で活性化される。c−fos発現の誘導は、極端に速く、しばしばレセプター刺激から数分以内でおこる。この特徴は、レセプター活性化のレポータとしての使用にとって特に有用なc−fos調節領域をつくる。
【0155】
c−fos調節要素としては次のようなものが含まれる(Vermaら,1987年,Cell 51:513-514参照)。すなわち転写開始に必要なTATAボックス;塩基転写のための2つの上流側要素;及びエンハンサーが含まれる。エンハンサーは、2回対称軸シメトリーを伴う要素を含み、TPA,血清,EGF及びPMAによる誘導に必要である。
【0156】
20bpのc−fos転写エンハンサー要素は、c−fosのmRNAキャップ部位から上流にある−317と−298bpとの間に位置し、血清欠乏のNIH3T3細胞内での血清誘導の本質的要素である。2つの上流要素のひとつは、−63から−57までに位置し、cAMP調節に一致する配列に似ている。
【0157】
転写因子CREB(サイクリックAMP応答要素結合タンパク質)は、名前が意味するように、細胞内AMPのレベルに応答する、従って、cAMPレベルのモジュレーションを経由するシグナル伝達レセプターの活性化は、転写因子の結合又はCREB結合要素(CRE又はcAMP応答要素と称される)に連結するレポータ遺伝子の発現の何れかを測定することによって、モニタされることができる。CREのDNA配列は、TGACGTCA(配列ID NO:12)である。CREB結合活性に応答するレポータ構成成分は、米国特許5919649で説明される。
【0158】
他のプロモータ及び転写コントロール要素は、c−fos要素及びCREB応答構成成分に加えて、血管に作用する腸のペプチド(VIP)遺伝子プロモータ(cAMP応答;Finkら,1988年,Proc.Natl.Acad.Sci.85:6662-6666);ソマトスタチン遺伝子プロモータ(cAMP応答,Montimingら,1986年,Proc.Natl.Acad.Sci.8.3:6682-6686);プロエンケファリンプロモータ(cAMPに応答、ニコチンアゴニスト、及びホルボールエステル;Combら,1986年,Nature323:353-356);ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)遺伝子プロモータ(cAMP応答;Shortら,1986年,J.Biol.Chem.261:9721ー9726)が含まれる。
【0159】
GPCR活性における変化に応答する転写コントロール要素の付加的例には、AP−1転写因子に応答するものやNF−κB活性に応答するものが含まれるが、これらに限定されない。一致するAP−1結合部位は、TGA(C/G)TCAのパリンドロームである(Leeら,1987年,Nature 325:368-372;Leeら,1987年,Cell 49:741-752)。AP−1部位は、ホルボールエステル12−O−テトラデカノイルホルボール−β−アセテート(TPA)のような腫瘍プロモータによる誘導を仲介するためにも応答でき、したがって、時々、TREとして、TPA応答要素と呼ばれる。AP−1は、成長刺激に対する細胞の初期の応答に含まれるたくさんの遺伝子を活性化する。AP−1応答遺伝子の例は、Fos及びJun(これらのタンパク質はAP−1活性を自ら作り上げる)のための遺伝子に限定されず、Fos関連抗原(Fra)1及び2,IκBα,オルニチンデカルボキシラーゼ及びアネキシンスI及びIIを含む。
【0160】
NF−κB結合要素は、一致配列GGGGACTTTCC(配列ID NO:36)を有する。大量の遺伝子が、NF−κB応答として同定され、これらのコントロール要素は、レポータ遺伝子に連結されて、GPCR活性をモニタする。NF−κBに応答する遺伝子の小さなサンプルは、IL−1βをコードする遺伝子(Hiscottら,1993年,Mol.Cell.Biol. 13:6231-6240),TNF−α(Shakhovら,1990年,J.Exp.Med.171:35-47),CCR5(Liuら,1998年,AIDS Res.Hum.Retroviruses14:1509-1519),P−セレクチン(Pan&McEver,1995年,J.Biol.Chem.270:23077-23083),Fasリガンド(Matsuiら,1998年,J.Immunol. 161:3469-3473),GM−CSF(Schreck&Baeuerle,1990年,Mol.Cell.Biol.10:1281-1286)及びIκBα(Haskillら,1991年,Cell 65:1281-1289)を含む。これらの参考文献のいずれも参考として本明細書に組み入れられる。NF−κB応答レポータをコードするベクターは、当該分野でも既知で、あるいは例えば合成NF−κB要素及び最小プロモータを用いて、あるいはNF−κB調節に従うと知られている遺伝子のNF−κB応答配列を用いて当業者によって容易く作られることができる。さらにNF−κB応答レポータ構成成分は、例えばクローンテック社から市販されている。
【0161】
与えられたプロモータ構成成分は、その構成成分でトランスフェクトされたChemR23発現細胞をTIG2ポリペプチドにさらすことによって、テストされるべきである。TIG2ポリペプチドに応答するレポータの発現における少なくとも2倍増加すれば、そのレポータがChemR23活性の指標であることを示している。
【0162】
TIG2応答転写レポータ構成成分を用いてChemR23活性を分析するために、安定的にChemR23ポリペプチドを発現する細胞が、レポータ構成成分で安全にトランスフェクトされる。アゴニストをスクリーニングするために、細胞は、未処理のまま候補モジュレーターにさらされ、又はTIG2ポリペプチドにさらされたままとなり、レポータの発現が測定される。TIG2処理培地は、既知のアゴニストによって誘導される転写レベルの標準として供与される。候補モジュレーター存在下でのレポータの発現における少なくとも50%の増加は、その候補モジュレーターがChemR23活性のモジュレーターであることを示す。アゴニストは、少なくともTIG2ポリペプチドと同等、好ましくは等量以上のレポータ発現を誘導する。このアプローチは、細胞がChemR23ポリペプチドをTIG2又は他のアゴニスト不在下でのレポータの上昇された塩基活性があるようなレベルで発現するときには、逆アゴニストのスクリーニングにも用いられる。候補モジュレーターの存在下でのレポータ活性が、候補モジュレーターの不在に対して、10%以上減少すると、当該化合物は逆アゴニストであることを示す。
【0163】
アンタゴニストのスクリーニングのためには、ChemR23を発現させ、そのレポータ構成成分を運ぶ細胞を、候補モジュレーターの存在及び不在下でTIG2ポリペプチド(又は他のアゴニスト)にさらす。候補モジュレーターの存在下でのレポータ発現が、候補モジュレーターの不在下での発現に対して10%以上減少していると、この候補モジュレーターは、ChemR23活性のモジュレーターであることを示す。
【0164】
転写分析のコントロールは、ChemR23発現しないがレポータ構成成分を運ぶ細胞も、プロモータなしのレポータ構成成分を伴う細胞も含む。ChemR23調節された転写のモジュレーターとして同定される化合物は、これらの活性の特異性及びスペクトルを決めるために、これらが他の調節配列及び他のレポータによって駆動される転写に影響を与えるかどうかを決めるのに分析されるべきである。
【0165】
転写レポータ分析及びほとんどの細胞ベースの分析は、ChemR23活性をモジュレートする物質のためのタンパク質の発現ライブラリーをスクリーニングするのに好適である。例えばこのライブラリーは、天然源、例えば植物、動物、バクテリアなど由来のcDNAライブラリーであり、これらは、ランダムに発現するライブラリー又は1以上のポリペプチドが体系的に変異した変異体を発現するライブラリーであり得る。ウィルスベクターのゲノムライブラリーは、1細胞又は組織のmRNA量を発現するのに用いられることができ、ChemR23のスクリーニングのために用いられる異なるライブラリーの中でも用いられることができる。
【0166】
レセプター活性の分析はいずれも、GTP結合、GTPase、アデニレートシクラーゼ、cAMP、リン脂質分解、ジアシルグリセロール、イノシトール3リン酸、PKC、キナーゼ、及び転写レポータ分析を含み、サンプル(例えば組織サンプル)内で、ChemR23レセプター分子の活性に影響を与える物質の存在を決めるのに用いられることができる。そのようにして、ChemR23ポリペプチドは、サンプル又はサンプルの抽出物の存在及び不在下での活性のために分析される。サンプルの不在下に対する、サンプル又は抽出物の存在下でのChemR23活性の増加は、サンプルがレセプター活性のアゴニストを含むことを示している。TIG2ポリペプチド単独存在下でのレセプター活性に対して、TIG2又は他のアゴニスト及びサンプル存在下でレセプター活性が減少していれば、サンプルがChemR23活性のアンタゴニストを含んでいることを示す。望むならば、サンプルは、次いで分画され、さらにテストされてアゴニスト又はアンタゴニストを単離又は精製することができる。測定された活性において、サンプルがモジュレーターを含むといわれるのに必要な増加又は減少量は、用いられる分析タイプに依存する。一般に、サンプル不在下で行った分析に対する10%以上の変化(増加又は減少)は、サンプル内でのモジュレーターの存在を示す。ひとつの例外は、転写レポータ分析であり、この分析の中では、シグナルが少なくとも2倍の増加又は10%減少することが、サンプルがモジュレーターを含むといわれるのに必要である。アゴニストは、野生型TIG2に対して、少なくとも50%好ましくは75%又は100%以上、例えば、2倍、5倍、10倍以上のレセプター活性化を刺激することが好ましい。
【0167】
他の機能分析は、例えば、マイクロフィシオメータ又はバイオセンサ分析を含む(Hafner,2000年,Biosens.Bioelectron.15:149−158参照。これらは本明細書に参考として組み入れられる)。
【0168】
II ChemR23とTIG2の相互作用に基づく診断分析
GPCRを通じてのシグナリングは、大量の疾患及び疾病病理学に役立つ。ChemR23は、リンパ球由来細胞で発現され、免疫欠損ウィルスのコレセプターとして作用することが示され続け、免疫プロセス、疾患又は疾病に役立つことができる。ChemR23発現パターンは、骨及び軟骨もを含んでいて、このレセプターが疾患、疾病、又はこれらの組織に影響を与えるプロセス(例えば骨折治癒)に役立つことができることを示している。大人の副甲状腺における発現は、ホスホカリック(phosphocalic)代謝に可能な重要性を提案する。
【0169】
リンパ球系列細胞におけるその発現のために、ChemR23は、ウィルス感染に対する人体の応答、又はHIVタイプI及びIIを含む種々のウィルス若しくはバクテリアによって誘導される病気に関係する。ChemR23の発現パターンと、GPCRによって一般に仲介される疾患に関連する情報は、細胞移動障害;癌;腫瘍の発達と腫瘍転移;炎症プロセス及び腫瘍性プロセス;損傷と骨治癒と調節成長機能の機能不全;糖尿病;肥満;食欲不振;大食病;急性心不全;低血圧;高血圧;尿閉;骨粗鬆症;狭心症;心筋梗塞;レステノシス(restenosis);アテローム硬化病;過剰な平滑筋細胞増殖によって特徴づけられる病気;動脈瘤;平滑筋細胞の喪失又は平滑筋細胞増殖の低下によって特徴付けられる病気;脳卒中;虚血;潰瘍;アレルギー;前立腺肥大症;片頭痛;嘔吐;恐怖や精神分裂症、そううつ、鬱病、譫妄、痴呆及び種々の精神遅滞を含む精神性及び神経学的疾患;消耗疾患;アルツハイマー病やパーキンソン病のような神経退化症;ハンチントン病又はジルトゥラトゥーレット症候群及び他の関連病に、ChemR23が関連していることを提案する。
【0170】
ChemR23とTIG2の相互作用は、ChemR23シグナリングが関係する疾患、疾病又はプロセスの診断又はモニターのための分析の基礎として用いられることができる。ChemR23関連疾患又は疾病検出のための分析はいくつかの異なる形式を有する。第1の形式は、組織サンプル中でのChemR23及び/又はTIG2ポリペプチド、遺伝子若しくはmRNAの量を測定することにより行われる。この形式には、ポリペプチドの何れか一方又は双方をコードするmRNA量を測定する分析が適している。第2の形式は、レセプター又はリガンドの定性分析により行われる。例えば、ChemR23又はTIG2のいずれか一方又は双方を形成する突然変異体(mutant)若しくは変異体(variant)又は双方を個体が発現するかどうかを決める分析を利用する。第3の形式は、ChemR23ポリペプチドの1以上の活性を測定する分析を利用することができる。
【0171】
従って、本発明は、前記疾患又は疾病が、癌、腫瘍の転移、炎症疾患、自己免疫疾患、受け継がれた又は獲得した免疫欠損、骨粗鬆症、骨治癒、骨組織移植、移植片拒絶反応、乾癬、湿疹、皮膚の炎症性感染及び栄養疾患、ウィルス感染、バクテリア感染、寄生虫感染、女性の不育症、並びに卵巣癌及び子宮癌からなるなる群より選ばれるChemR23関連疾患又はChemR23関連疾病である本発明の1つの方法に関する。あるいは、本発明は、前記疾患又は疾病が、骨粗鬆症、骨治癒、骨組織移植、移植片拒絶反応、乾癬、湿疹、皮膚の炎症性感染及び栄養疾患、ウィルス感染、バクテリア感染、寄生虫感染、女性の不育症、並びに卵巣癌及び子宮癌からなるなる群より選ばれるChemR23関連疾患又はChemR23関連疾病である本発明の1つの方法に関する。
【0172】
本発明によれば、前記TIG2ポリペプチドは、配列ID NO:8によって表されるポリペプチドに対して少なくとも31%以上のアイデンティティ、45%,55%,65%,75%,85%,95%またはほぼ100%のようなアイデンティティを有するポリペプチドであって、前記TIG2ポリペプチドが、前記ポリペプチドは配列ID NO:2を有するChemR23ポリペプチドに対して特異的に結合し、該ChemR23ポリペプチドのシグナリング活性を活性化する。あるいは、前記TIG2ポリペプチドは、配列ID NO:8の全長ポリペプチドの断片であってもよく、この断片は、配列ID NO:8の全長TIG2ポリペプチドのシグナリング活性化のレベルと結合活性の少なくとも50%を保持している。本発明によれば、前記TIG2ポリペプチドは、配列ID NO:8に関して、1以上の付加、挿入、欠失、又は置換を含んでいてもよい。前記TIG2ポリペプチドは、配列ID NO:46又は配列ID NO:48乃至58によって表される末端切断型TIG2ポリペプチドであってもよく、前記TIG2ポリペプチドは、TIG2融合タンパク質を形成する付加的配列を含んでいてもよく、該付加的配列は、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質、アルカリフォスファターゼ、チオレドキシン、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ヒスチジンタグ(例えば6X又はより大きなHis)、又はエピトープタグ(例えばMycタグ、FLAGタグ)配列からなる群より選ばれることができる。
【0173】
A.ChemR23又はTIG2の量を測定する分析
サンプル中のChemR23レベル及びTIG2レベルを測定し、標準と比べて、サンプル中でのレセプター又はリガンドのレベルが異常かどうか、ChemR23シグナリングの調節不良が起こり得るかどうかを決める。例えば、ポリペプチドに対しては特異的抗体を用いる免疫組織化学により、ポリペプチドレベルを測定する。ChemR23活性によって特徴づけられる疾患又は疾病の疑いある個体から単離されたサンプルをChemR23又はTIG2の抗体と接触させて、その抗体への結合を当該分野で公知の方法により測定する(例えば、二次抗体に結合された酵素の活性測定によって測定する)。
【0174】
ChemR23及び/又はTIG2ポリペプチドレベルの測定についてのもうひとつのアプローチは、影響された組織由来の細胞のフローサイトメトリーを用いる方法である。フローサイトメトリーは、ChemR23又はTIG2に特異的抗体の蛍光標識を利用したもので、当該分野でよく知られている。他のアプローチでは、放射性免疫分析又はELIZAがある。これらの各方法は、いずれも当該分野でよく知られている。
【0175】
検出された結合量は、健全な個体由来の同じ組織のサンプル、又はあまり影響されていない個体の影響された部位由来のサンプルにおける結合と比較する。その標準に対して10%以上増加していれば、ChemR23調節不良によって特徴づけられる疾患又は疾病の徴候である。
【0176】
ChemR23及びTIG2発現は、ある組織サンプルにおけるポリペプチドのいずれか一方又は双方をコードするmRNA量を決定することによっても測定できる。mRNAは、定量又は半定量PCRによって定量されることができる。「量的」増幅の方法は、当業者によく知られていて、ChemR23及びTIG2の双方の増幅のためのプライマー配列が、本明細書に開示されている。定量的PCRの共通の方法は、同じプライマーを用いて、コントロール配列の周知量を一斉に共同増幅(co-amplify)する工程に関連している。これは、PCR反応を計測するのに用いられることができる内部標準を提供する。定量PCRの詳細なプロトコルは、PCRプロトコルである「方法と応用のガイド」Innisら,アカデミックプレス社,ニューヨーク,(1990年)に提示されている(これは、参考のために本明細書に組み入れられる)。健全な個体由来の組織様サンプル又は影響された個体内で影響されていない位置由来の組織サンプル内で発現される量に対して、サンプル内でのChemR23又はTIG2をコードするmRNA量が10%以上増大すると、ChemR23シグナリングの調節不良によって特徴づけられる疾患又は疾病の徴候であると考えられる。
【0177】
B.定性分析
ChemR23ポリペプチド又はそれをコードするmRNAが野生型であるのか否かを評価する分析は、インビトロでの疾病又は疾患の検出に用いることができる。ChemR23又はTIG2調節不良によって特徴づけられる疾患又は疾病の診断支援におけるこの方式は、あるサンプルから単離されたRNAをTIG2及び/又はChemR23のPCR増幅のための鋳型として用いる。この増幅配列は、ついで、標準方法を用いて直接的に配列決定され、又は最初にベクター内でクローン化され、続いて配列決定される。野生型ChemR23又はTIG2配列に対して1以上のコードされたアミノ酸を変化させる配列内での相違は、ChemR23シグナリングの調節不良による疾患又は疾病の徴候であり得る。コード配列における変化がサンプル内で同定されるとき、変異レセプター又はリガンドを発現させて、該変異レセプター又はリガンの活性を野生型ChemR23又はTIG2の活性と比較することは、有用である。他の有益な点は、このアプローチが構造的に活性で特徴のないヌル突然変異体(null mutant)などの新規突然変異体を提供できることである。
【0178】
標準的配列決定方法に加えて、例えば、野生型と変種配列とを区別する分子標識のハイブリダイゼーションを用いて、増幅された配列について、特異的突然変異が存在するかどうかを分析することができる。1ヌクレオチド程度の小さな変化に基づいて区別するハイブリダイゼーション分析は、その分野でよく知られている。あるいは、多数の「ミニ配列決定」(minisequencing)分析のいずれかを行うことができ、例えば、米国特許5888819号、6004744号、及び6013431号(これらは参考に組み入れられる)で説明される分析も含まれる。これらの分析及び当該分野での他の既知の分析は、与えられたサンプル内で、既知の多様性を伴う核酸の存在を決定することができる。
【0179】
所望により、アレー又はマイクロアレーに基づく方法が、ChemR23又はTIG2配列における発現又は変異の存在の分析に用いてもよい。ミニ配列決定のためのアレーベースの方法及び核酸発現の定量のためのアレーベースの方法が、当該分野ではよく知られている。
【0180】
C.機能分析
ChemR23シグナリングの調節不良によって特徴づけられる疾患又は疾病の診断支援は、機能分析を用いて行うことができる。組織サンプルから調製された細胞膜又は細胞抽出物は、ここで説明されるように、ChemR23活性の分析で用いられる(例えば、リガンド結合分析、GTP結合分析、GTPase分析、アデニレートシクラーゼ分析、cAMP分析、リン脂質分解、ジアシルグリセロール又はイノシトール三リン酸分析、PKC活性化分析、又はキナーゼ分析)。検出された活性を、健全個体又は影響された個体上での影響されない部位から取得した標準サンプルにおける活性と比較する。二者択一として、サンプル又はサンプルの抽出物として、ChemR23を発現する細胞を用いることができ、続いて、標準サンプルに対するChemR23シグナリング活性を測定する。これらの分析のいずれかで測定される活性が、標準の活性に対して10%以上の差異があると、ChemR23シグナリングの調節不良によって特徴づけられる疾患又は疾病の徴候と考えられる。
【0181】
本発明の細胞内でのChemR23活性のモジュレーション
ChemR23のリガンドとしてのTIG2の発見は、細胞内でのChemR23ポリペプチドの活性のモジュレート方法を提供する。ChemR23活性は、その細胞に、ChemR23ポリペプチド機能モジュレート物質を送達することによって、細胞内でモジュレートされる。このモジュレーションは、付加的モジュレート物質の同定のための分析の一部として、培養細胞又はヒトを含む動物などの中で行われる。前記物質には、ここで説明されるスクリーニング方法を用いて同定された付加的モジュレータと同様に、ここで定義されるTIG2ポリペプチドが含まれる。
【0182】
ある物質では、その物質を培地に添加するだけで細胞に送達されることができる。送達量は、その物質のアイデンティティ及びそれが送達される目的に伴って変わる。例えば、ChemR23活性のアンタゴニストを同定する培養分析において、半極大的に(half-maximally)レセプターを活性化するTIG2ポリペプチドの量を好ましくは添加する(例えば、約EC50)、好ましくはレセプター飽和に要求される投与量を超えない量を添加する。この投与量は、TIG2ポリペプチド量を滴定することによって決められ、TIG2のさらなる添加がChemR23活性上に付加的影響を与えない量で、そのポイントを決める。
【0183】
ChemR23活性のモジュレータは、疾患又は疾病の治療のために動物に投与され、投与量は、好ましい出力に基づいて、当業者によって調節される。1つ以上の測定可能な異変の様子(例えば腫瘍細胞の成長、炎症細胞の蓄積)が治療前の様相に対して少なくとも10%変化させられるとき、継続的治療が行われる。
【0184】
本発明に有用な候補モジュレーター
候補化合物は、合成又は天然化合物の大きなライブラリーからスクリーニングされた。多くの手段が、現在のところ、ランダムに用いられ、化合物に基づく糖類、ペプチド、脂質、炭水化物及び核酸の合成に向けられる。合成化合物ライブラリーは、例えば、メイブリッジケミカル社(Trevillet,コーンウォール,イギリス)、コムゲネックス(ニュージャジー州プリンストン)、ブランドン・アソシエーツ(ニューハンプシャ州メリマック)、及びミクロソース(コネチカット州ニューミルフォード)などの多くの会社から商業上入手できる。希少な化学的ライブラリーは、アルドリッチ(ウィスコンシン州ミルウォーキィ)から入手できる。有機低分子のコンビナトリアルライブラリーは入手可能で、調製されることができる。あるいは、バクテリア、菌類、植物及び動物抽出物の形での天然化合物ライブラリーは、例えば、パンラボラトリー(ワシントン州ボスウェル)又はミコサーチ(ノースカロナイナ州)から入手でき、あるいはその分野でよく知られた方法によって容易く製造可能である。さらに、天然及び合成で製造されたライブラリー及び化合物は、従来の化学的、物理的、生化学的手段を通じて容易くモデファイされる。
【0185】
本明細書において先に述べたように、候補化合物は、既知のポリペプチドの変体(例えばTIG2,抗体)又は核酸ライブラリーでコードされる核酸(例えばアプタマー)でもあり得る。ライブラリーでトランスフェクトされた細胞(例えばバクテリア、酵母又は酵母より高度な真核細胞)は、抽出物から成長され、調製される。そして、その抽出物は、ChemR23結合分析又はChemR23活性の機能的分析に適用される。
【0186】
本発明に有用な抗体
本発明は、ChemR23及びTIG2に対する抗体を提供する。抗体は、当該分野で既知の標準プロトコルを用いて作られることができる(例えば、Harlow及びLaneによる抗体:「マニュアル化された実験」を参照(コールドスプリング・ハーバープレス社1988年))。マウス、ハムスター又はウサギなどのほ乳類は、ペプチドの免疫原の形で免疫性を与えることができる(例えば、ChemR23又はTIG2ポリペプチド又は抗体応答を引出すことができる抗原フラグメント又は上記で説明されたような融合タンパク質)。抗体を生じさせる免疫源は、ポリペプチド(例えば単離された組換えポリペプチド又は合成ペプチド)をアジュバントと混合することによって調製される。あるいはChemR23又はTIG2ポリペプチド又はペプチドが、融合タンパク質として作られて、より大きな免疫原タンパク質となる。ポリペプチドは、鍵穴笠貝ヘモシアニンのようなより大きな他の免疫原のタンパク質に共有結合されることができる。あるいは、ChemR23若しくはTIG2又はこれらのタンパク質の断片をコードするプラスミド若しくはウィルスベクターが、ポリペプチドを発現するのに用いられ、Costagliolaら,2000年,J.Clin.Invest. 105:803-811(これは参照としてここに組み入れられる)で説明されているような動物の中で免疫応答を生じさせる。抗体を生じさせるために、典型的には、ウサギ、ヒツジ、マウスのような実験動物の皮膚内、皮下又は筋肉内に、免疫原が投与される。上記で述べた抗体に加えて、一本鎖抗体のような一般的に設計された抗体誘導体も作ることができる。
【0187】
免疫の発達は、プラズマ又は血清における抗体力価の検出によってモニタされることができる。標準ELISA、フローサイトメトリー又は他の免疫分析は、抗原としての免疫原と共に用いられて、抗体のレベルを査定する。抗体調製は、単に、免疫化された動物由来の血清であり得るし、または望ましくはポリクローナル抗体が、例えば、固定化された免疫原を用いたアフィニティクロマトグラフィによって血清から単離される。
【0188】
モノクローナル抗体生産のために、抗体生産脾球(splenocytes)が免疫化された動物から採取され、ハイブリドーマ細胞を生成するミエローマ細胞のような不死化細胞とともに標準の体細胞融合処理によって融合されることができる。そのような技術は、当該分野でよく知られている。そのような技術には、例えば、ハイブリドーマ技術(最初はKohler及びMilstein(1975年)Nature,256:495-497によって開発された)、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbarら(1983年)Immunology Today,4:72)及びヒトモノクローナル抗体を生産するEBV−ハイブリドーマ技術(Coleら(1985年)モノクローナル抗体と癌治療,Alan・R.Liss,Inc.pp.77-96)を含む。TIG2又はChemR23ペプチド又はポリペプチドと特異的に反応する抗体産生のために、ハイブリドーマのような細胞を含む培地から単離されたモノクローナル抗体の産生のために、ハイブリドーマ細胞が免疫化学的にスクリーニングされることができる。
【0189】
本発明に有用なトランスジェニック動物
ChemR23若しくはTIG2を発現するトランスジェニック動物又はその変異体(variant)は、ChemR23の活性をモジュレートする薬剤又は物質の研究と同様に、ChemR23を通じたシグナリングの研究に有用である。トランスジェニック動物は、少なくとも1つの外来遺伝子(トランス遺伝子とよぶ)を含む非ヒト動物であり、トランス遺伝子は、その遺伝的物質の一部分である。トランス遺伝子は、動物の子孫に伝達され得るように動物の生殖系列の中に含まれることが好ましい。動物の遺伝的物質の中にトランス遺伝子を導入するのに、多くの技術が用いることができ、このような技術としては、受精卵の前核(pronuclei)の中へのトランス遺伝子のマイクロインジェクションや、胚性幹細胞のマニピュレーション(WagnerとHoppeによる米国特許No.4873191;PalmiterとBrinster,1986年,Ann.Rev.Genet.,20:465-499;1987年8月7日に発行されたフランス特許出願2593827、これらは全て参考として本明細書に組み入れられる)が挙げられるが、これらに限定されない。トランスジェニック動物は、これらのすべての細胞の中にトランス遺伝子を運び、遺伝的にモザイクとなる。
【0190】
従来のトランス遺伝学の方法によれば、正常又はモデファイされた遺伝子の付加的コピーが、接合体の雄の前核(pronucleus)の中へ注入され、レシピエントマウスのゲノムDNAの中へ統合されるようになる。トランス遺伝子は、設立されたトランス遺伝学的株の中へ、メンデルの法則の中で伝えられる。トランス遺伝子は、構造に関して発現されることができ、組織特異的になることができ、テトラサイクリンなどの外因性薬剤に感応することもできる。1つのトランス遺伝子を発現するトランスジェニック動物は、これらの子孫が双方のトランス遺伝子を運んで発現するように、第2のトランス遺伝子を発現する第2のトランスジェニック動物に交差されることができる。
【0191】
ノックアウト動物
ChemR23若しくはTIG2又はこれらの変異体のいずれかをコードする染色体配列の中でのホモ接合欠失を有する動物は、レセプター及びリガンドの機能の研究に用いられることができる。特別な興味は、TIG2ノックアウトが識別できる表現型を有しているかどうかである。この表現型は、TIG2がChemR23に結合する唯一のリガンドか否か、それがファミリーのメンバーであるかどうかということを指し示すことができる。さらに特別の興味は、特異的な生理学上及び/又は病理学的プロセスにおけるChemR23/TIG2の同定である。
【0192】
i.標準的ノックアウト動物
ノックアウト動物は、相同的組換えで遺伝子欠失を作り出す方法によって製造される。この技術は、胚から誘導される胚性幹細胞(ES細胞)の発達に基づき、培養の中で保持されて宿主の胚盤胞の中に誘導されるとき、動物の中の各組織の発達に参加できる可能性を有する。ノックアウト動物は、ES細胞に特異的な標的遺伝子との相同的組換えを行うことによって製造され、これにより、ヌル対立遺伝子を生産する。ノックアウト動物を生産する技術がよく説明されている(例えば、Huszarら、1997年,Cell,88:131;及びOhki-Hamazakiら,1997年,Nature,390:165,を参照。これらはいずれも参考のために、本明細書に組み入れられる)。当業者は、ChemR23及びTIG2の配列を用いて、ホモ接合のChemR23又はTIG2ノックアウト動物(例えばマウス)を生産し(当該分野で知られており、本明細書に開示されている)、遺伝子標的構成成分をつくることができる。
【0193】
ii.組織特異的ノックアウト
標的とされた相同的組換え方法は、バクテリオファージP1部位特異的リコンビナーゼCreに基づく部位特異的組換えのためのシステムの発展によって改良されてきた。バクテリオファージP1由来のCre−loxP部位特異的DNAリコンビナーゼが、明らかにされた組織又は発展的段階で限定される遺伝子ノックアウトを作り出すために、トランスジェニックマウス分析の中で用いられることができる。局所的に限定された遺伝的欠損は、グローバル遺伝子ノックアウトとは反対に、表現型が特定細胞/組織に寄与ことができるという利益を有する(Marth,1996年,Clin.Invest.97:1999年)。Cre−loxP系において、ひとつのトランスジェニックマウス株は、loxP部位が興味ある遺伝子の1つ以上のエクソンの横に配置されるように、設計される。このための「Floxed gene」と称されるホモ接合体は、細胞/組織タイプの転写プロモーターのコントロール下、Cre遺伝子を発現する第2のトランスジェニック動物と交差される。そして、Creタンパク質は、loxP認識配列間のDNAを切開し、効果的に、標的遺伝子の機能を除去する(Sauer,1998年,Methods,14:381)。この方法のインビボの実施例が今ではたくさんある。例えば、ほ乳類の組織特異的遺伝子の誘導可能な不活性化などが挙げられる(Wagnerら,1999年,Nucleic Acids Res.,25.4323)。従って、当業者は、組織特異的ノックアウト動物を生み出すことができ、その組織特異的ノックアウト動物の中で、ChemR23又はTIG2を選択された組織又は細胞タイプの中でホモ接合的に排除する。
【0194】
本発明に有用なキット
本発明は、ChemR23シグナリングの調節不良に特徴付けられる疾患又は疾病の診断支援に有用なキットとともに、ChemR23活性のモジュレーターのスクリーニングに有用なキットを提供する。本発明のキットには、単離されたChemR23ポリペプチド(メンブレン又は細胞に関連するChemR23ポリペプチド、例えば単離された膜、ChemR23を発現する細胞、又はSPRチップ上を含む)及び単離されたTIG2ポリペプチドが含まれる。キットは、ChemR23特異的抗体及び/又はTIG2特異的抗体も含む。あるいは、又はさらに、キットは、ChemR23ポリペプチドを発現するように形質転換された細胞及び/又はTIG2ポリペプチドを発現するように形質転換された細胞を含む。さらなる態様において、本発明のキットは、ChemR23ポリペプチド及び/又はTIG2ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むことができる。さらなる態様では、本発明のキットは、下記に説明されるようなChemR23又はTIG2の増幅に有用な特異的プライマーを含んでもよい。本発明のキットは全て、上記構成要素、又はこれらの組合わせ及びこれらをパッケージする材料を含む。キットは、また使用の指示書を含んでもよい。
【0195】
本発明のキットによれば、TIG2ポリペプチドは、配列ID NO:8で表されるポリペプチドに対して少なくとも31%アイデンティティ又はこれより高いアイデンティティ、45%、55%、65%、75%、85%、95%またはほぼ100%というようなアイデンティティを有するポリペプチドであり得る。そして、このポリペプチドは、配列ID NO:2の配列を有するChemR23ポリペプチドに特異的に結合するとともに、該ChemR23のシグナリング活性を活性化する。あるいは前記TIG2ポリペプチドは、配列ID NO:8の全長ポリペプチドの断片でもあり得る。ここで、この断片は、結合活性の少なくとも50%を保持し、配列ID NO:8の全長TIG2ポリペプチドのシグナリング活性化のレベルを保持する。本発明によれば、前記TIG2ポリペプチドは、配列ID NO:8に対して、1以上の付加、挿入、欠失又は置換を含む。前記TIG2ポリペプチドは、配列ID NO:46又は配列ID NO:48乃至58のいずれかで表される末端切断型TIG2ポリペプチドであり得る。前記TIG2ポリペプチドは、TIG2融合タンパク質を形成する付加的配列を含み得る。ここで、前記付加的配列は、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)配列、マルトース結合タンパク質配列、アルカリフォスファターゼ配列、チオレドキシン配列、緑色蛍光タンパク質(GFP)配列、ヒスチジンタグ(例えば6X又はより大きなHis)配列、又はエピトープタグ(例えばMycタグ、FLAGタグ)配列からなる群より選ばれることができる。
【実施例】
【0196】
下記実施例において、特に言及しなければ、全ての化学物質はシグマ社から入手し、細胞培地は、ギブコBRLから得、そのペプチドは、Bachemから入手した。
【0197】
実施例1:ヒトChemR23レセプターのクローニング
ヒトChemR23は、Samsonら(1998年)によって説明されるようにしてクローン化した(配列ID NO1及びNO2)。1セットの工程の1実施例として、本発明に有用な他のChemR23ポリペプチドをクローン化するのに用いることができる。その方法はここで説明される。ChemR23配列をクローン化するために、古典的クローン化処理が、ヒトゲノムDNA上で行われた。HOP102で指定される1つのクローンは、退化オリゴヌクレオチドを用いることによって、ヒトゲノムDNAから増幅された。HOP102は、fMLPと45〜50%アイデンティティを共有していて、C5aレセプターと幾分かやや低い類似物はケモカインレセプターファミリーと共有している。この部分的クローンは、ヒトゲノムライブラリーをスクリーニングするプローブとして用いられ、3つの重複するラムダクローンが単離された。このクローンの制限マップは、確立されていて、1.7kb XbaIフラグメントは、pBS SK+(Stratagene)の中でサブクローン化されていて、双方のストランド上で配列化されている。この配列は、100%アイデンティティを伴ってHOP102プローブ全体を含んでいることが見出された。この新規な遺伝子は、ChemR23と名付けられた(ジーンバンク承認No.Y14838)。
【0198】
ChemR23のコード配列の増幅は、1.1kbの断片で行われた。この断片は、pCDNA3(インビトロジェン社)ベクターの中へサブクローン化され、双方のストランド上で配列化されている。
【0199】
実施例2:ChemR23の天然リガンドの精製とTIG2の同定
卵巣癌患者から得た約1リットルのヒトの腹水流体が、プレ濾過され、ついで0.45μmのMillexフィルター及び0.22μmのMillexフィルター(ミリポア社)を通じて、連続的に濾過した。
【0200】
工程1では、腹水は、5%CHCN/0.1%TFAを用いて予め平衡化されたC18逆相カラム(10mm×100mmPOROS20R2ビーズ、アプライド・バイオシステムズ社)の上に、直接、流速20ml/分、室温でロードされた。そして、0.1%TFA中で、CHCN5〜95%の勾配で、6%/分の傾きで適用された。5ミリリットルの画分が集められて、20μlの各画分を取り置き、ChemR23を発現するCHO細胞内で〔Ca2+〕トランジエントを分析した。
【0201】
工程2では、活性画分(25%CHCNと40%CHCNの間で溶出されている約10画分)がプールされ、pH5に調節され、20μmのMillexフィルター(ミリポア社)を通じて濾過され、pH4.8の酢酸バッファーの中で3倍に希釈されて、次いで、pH4.8の酢酸バッファーを用いて4℃で予め平衡化されたカチオン交換HPLCカラムに適用された(Polycat9.6mm×250mm、Vydac)。pH4.8の酢酸バッファー中で0〜1M勾配のNaClが、流速4ml/分で10%/分を用いて適用された。1ミリリットル画分が集められ、10kDaカットオフ膜(ウルトラフリー、ミリポア社)上で脱塩された後、各画分から25μlアリコットが〔Ca2+〕分析のために用いられた。
【0202】
工程3では、活性画分(約700mMのNaClで溶出)がプールされ、約10mMのNaCl濃度にまで、10kDaカットオフのウルトラフリー膜上で脱塩された。別のカチオン交換HPLCランからの溶出物がプールされ、pH4.8の酢酸バッファーを用いて4℃で予め平衡化された第2のカチオン交換HPLCカラム(Polycat2.1mm×250mm、Vydac社)上に、ロードされた。pH4.8の酢酸バッファー中で0〜1M勾配のNaClが、流速1ml/分で2%/分の傾きで適用された。0.5ミリリットル画分が集められ、各画分からの20μlアリコットが、10kDaカットオフのウルトラフリー膜上で脱塩された後、細胞内カルシウム分析のために用いられた。
【0203】
工程4では、活性画分がプールされ、HO/0.1%HPOを用いて8倍希釈され、予め5%CHCN/0.1%HPOを用いて平衡化された分析用C18逆相カラム(4.6mm×250mm、Vydac)上に、流速1ml/分、室温で、ロードされた。0.1%HPO中で5〜95%勾配のCHCNが、CHCNの25%と40%の間で、0.3%/分勾配で適用された。単一の紫外線吸収ピーク(214nm)が手動で集められ、各画分容量の約5%を生物学的活性について分析された。
【0204】
工程5では、活性ピーク(約28%CHCN)が、HO/0.1%TFAで6倍に希釈され、予め5%CHCN/0.1%TFAを用いて平衡化された第2のC18逆相カラム(1mm×50mm、Vydac)上に、流速0.1ml/分で、室温で、ロードされた。0.1%TFA中で5〜95%勾配のCHCNが、CHCNの30%と45%の間で、0.3%/分勾配で適用された。最終ピークが40%CHCNで手動で集められ、質量分析により解析された。卵巣癌腹水流体の800mlは、50fmolのTIG2を生じた。
【0205】
活性画分は、スピードvac内で、完全に乾燥され、pH8.7で0.1MのTris10μl内で再懸濁された。95℃で15分間サンプルを加熱した後、そのサンプルは、37℃、250ngの修飾トリプシン(Promega)の存在下で、一昼夜培養された。ついで、消化されたサンプルは、固相抽出により、C18ZipTip(ミリポア社)の上で、精製された。溶出サンプル(70%CHCN/0.1%TFA中で1.。5μl)は、120mg/mlのジヒドロキシ−安息香酸マトリクスの存在下で、MALDIターゲット上に適用され、MALDI−Q−TOFプロトタイプ(マイクロマス)の上で解析された。直接的モノ同位体マスフィンガープリンティングが、7トリプシンペプチド、すなわち配列回復38.7%を伴う63アミノ酸を同定することを許した。
【0206】
表1:モノ同位体マスフィンガープリンティングで発見されたペプチド配列
アステリスク(*)でされる2つのペプチドは、MS/MSフラグメンテーションによってミクロ配列決定された。ペプチドの位置は、TIG2アミノ酸配列(配列ID No:5)と比較して決められる。
【0207】
【表1】

【0208】
実施例3:ヒトTIG2のクローニングと組換体の発現
TIG2配列(図6、ジーンバンク承認No.Q99969)をクローン化するために、ポリメラーゼ鎖反応(PCR)が、腎臓cDNA(クローンテックラボラトリー)上で行われた。プライマーは、ヒトTIG2配列に基づいて合成され、以下のようになる。
【0209】
【化1】

【0210】
供給者によって説明されている条件下で、下記サイクルを用いて、Qiagenタグポリメラーゼを用いて増幅された。94℃で3分、94℃で1分を35サイクル、58℃で90セット、及び72℃で90セット、続いて、72℃で10分間最終培養を行った。この増幅の結果、TIG2遺伝子の全体をコードする配列を含む500bpのフラグメントができた。この断片は、DNA配列分析のために、ベクターpCDNA3(インビトロジェン社)の中へサブクローン化された。
【0211】
maxiprep(Quiagen社)DNAは、10cmプレート上で、大きなT抗原(293T)を発現するHEK293細胞とFugene6を用いて、0cmプレート上で、一過性トランスフェクションの中で用いられた。同時に、トランスフェクションが、同じ細胞系の中で、発現ベクターだけ(モックトランスフェクトされた)を用いて、行われた。トランスフェクション24時間後、培地は、9mlのDMEM−F12,1%BSA、及び3mlの上澄み液によって置換され、24時間毎に3日間集められた(トランスフェクション後48時間、72時間、96時間)。CHO細胞は、同じプラスミドを用いてトランスフェクションされ、トランスフェクトされた細胞はG418とともに選択された。ならし培地の活性は、エクオリン分析を用いて、ChemR23発現細胞上で立証された。
【0212】
実施例4:酵母内での組換え体のTIG2発現
ヒトとマウスのTIG2をコードする配列は、下記プライマーを用いるPCRによって増幅される(2つの異なるプライマーがヒトTIG2の5’端の増幅に用いられ、このタンパク質のシグナルペプチドの異なる予知を考慮する)。
【0213】
【化2】

【0214】
TIG2配列はクローン化され、配列決定した後、pPIC9Kの中に挿入された。pPIC9Kは、発現されたタンパクの分泌を管理するシグナルを含んでいるマルチコピーPichia発現プラスミド(インビトロジェン社)である。形質転換に続いて、Pichia pastoris細胞は、G418抗生物質を用いて、選択される。選択後、20クローンが、これらの発現のために分析され、最も高い発現を伴うクローンは、振とうフラスコ内で大規模発現で増幅される。培地が集められ、遠心分離され、TIG2開始精製のために用いられるものから誘導されるプロトコルを用いて、部分的精製に用いられた(上記参照)。
【0215】
実施例5:分泌されたアルカリフォスファターゼ(SEAP)を用いて融合されたキメラTIG2組換え体の発現
マウスとヒトTIG2コードする配列が、PCRによって増幅され、クローン化され、配列決定された。PCRと配列決定プライマーは下記の通りである。
【0216】
【化3】

【0217】
クローン化されたTIG2配列は、次にほ乳類の二重シストロン性(bicistronic)発現ベクター、pEFINの中へサブクローン化されて、そのカルボキシ末端でTIG2を用いた融合タンパクを取得し、アルカリフォスファターゼを分泌して、6つのヒスチジン残基(His6)を用いてタグ付けした。COS−7,大きなT抗原(293T)を発現するHEK−293及びCHO−K1細胞を含むほ乳類細胞は、Fugene6TMを用いたこのプラスミドでトランスフェクトされて、10%ウシ胎児血清、100IU/mlペニシリン,100μg/mlストレプトマイシン及び2.5μg/ml、ファンギゾン(アンフォテリシンB)を含む完全HamのF12培地(栄養混合物Ham’s F12(ライフテクノロジー社)で、3−4日間培養される。TIG2−SEAP−His6を含む上澄み液が、遠心分離後集められて、濾過され(0.45μm)、20mMHepes(pH7.4)と0.02%アジ化ナトリウムを添加した後、4℃で保存された。
【0218】
TIG2融合タンパクのアフィニティ精製ワンステップのために、上澄み液が1mlのHisbond樹脂(Qiagen社)に適用される。洗浄後、結合されたTIG2−SEAP−His6が、イミダゾールの勾配を用いて溶出される。単離されたTIG2−SEAP−His6の濃度がサンドイッチタイプの酵素結合免疫吸収分析により決定される。要するに、マイクロタイタープレートが、抗−胎盤アルカリホスファターゼ抗体を用いて塗布される。1mg/mlの子ウシ血清アルブミン(BSA)を用いてホスフェートバッファー生理食塩水中でブロックした後、そのサンプルは、滴定されて、室温で1時間培養される。洗浄後、プレートは、ビオチン化されたウサギの抗−胎盤アルカリホスファターゼ抗体とともに培養され、室温で1時間1:500で希釈され、再度洗浄されて、30分間、ペルオキシダーゼを結合したストレプトアビジン(streptavidin)とともに培養される。洗浄後、結合されたペルオキシダーゼが、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジンと反応する。この反応は、1N硫酸の添加によって停止され、450nmで吸収が測定される。アルカリフォスファターゼ活性は、化学発光分析によって、Great EscapeTM検出キット(クロンテック社)を用いて決定される。精製された胎盤アルカリフォスファターゼが用いられて、標準曲線を作成する。この酵素活性は、相対光ユニット/秒として表現される。
【0219】
実施例6:ChemR23の機能分析
ChemR23発現クローンは、共同発現するミトコンドリアのアポエクオリンとGα16に、CHO−K1細胞をトランスフェクションすることによって入手され、ノザーンブロッティングによる希釈と選択を限定する。ポジティブクローンは、上記で調製されたヒト子宮癌腹水抽出物を用いるスクリーニングのために用いられる。ミトコンドリアのエクオリンの細胞内Ca2+遊離の発光に基づく機能分析(Stableら,1997年,Anal.Biochem.252:115-126;ここでは参考に組み入れられる)が、説明のために行われた(Detheuxら,2000年,J.Exp.Med.,192 1501-1508;ここでは参考のために組み入れられる)。要するに、細胞は、5mMのEDTAを含むPBSの中のプレートから集められ、ペレット化され、DMEM−F12培地中の5×1016細胞/mlで再懸濁される。細胞は、次いで、5μMセレンテラジンH(モレキュラープローブス)とともに、4時間室温で培養される。細胞は、次いで、DMEM−F12培地内で洗浄され、0.5×10細胞/mlの濃度で再懸濁される。次に、細胞は、テストアゴニストペプチド又は組織抽出物を含むプレートと混合され、光放出が、マイクロルマット(Microlumat)ルミノメータ(パーキン・エルマー社)を用いて、30秒間記録された。結果は、相対光ユニット(RLU)として表わされる。
【0220】
実施例7:TIG2組変え体によるChemR23を発現する細胞の活性化
ほ乳類TIG2発現ベクターシステム(pCDNA−TIG2)又はpcDNA3単独でトランスフェクトされたCOSー7、CHO−K1及び293T細胞のならし培地が、集められ、ChemR23を発現するCHO細胞上で、エクオリン分析のために用いた。結果を図12に示す。ならし培地の上澄みの増大量は、ChemR23を発現するアポエクオリンシステム細胞内での発光の増大となった。
【0221】
実施例8:ChemR23に特異的抗体の産生
ChemR23に向けられる抗体は、マウスの中でChemR23をコードするプラスミドの繰り返し注入により産生される。第2の注入後、血清が集められ、抗体の力価と特異性について、ChemR23のcDNAでトランスフェクトされたCHO−K1細胞と、関連しないGPCRのcDNAのcDNAを用いてトランスフェクトされたCHO−K1細胞とを用いて、フローサイトメトリーによって評価された。いくつかの血清は陽性で、免疫組織化学及びヒトプライマリー細胞のフローサイトメトリー分析を含む他の関連する応用に用いられる。
【0222】
モノクローナル抗体は、不死化のパートナーとして、NSOマウスミエローマ細胞系を用いた標準ハイブリドーマ技術によって、免疫マウスから取得される。上澄み液は、抗血清を評価するために用いられるテストを用いて、抗ChemR23抗体活性のためにテストされる。陽性ウエルからの細胞は増殖され、凍結され、その上澄み液が集められた。
【0223】
図13は、ChemR23に対して起る抗体を特徴付ける実験結果を示している。組換えChemR23CHO細胞2/3とモックトランスフェクトされたCHO細胞(ネガティブコントロール)1/3からなる組換え細胞の混合物は、抗ChemR23 5C1H2モノクローナル抗体(太線)を発現する細胞の上澄み液又は未知の抗体活性を有する細胞からの上澄み液(薄線、グレー塗りつぶし)のいずれかと反応させる。FITC標識された抗マウスIgで染色した後、これらの調製物は、フローサイトメトリーで分析された。結果は、与えられた蛍光(FL−H軸)を発現する細胞数(イベント軸)のヒストグラムとして、表示される。細胞の双方のタイプの相対集団によって立証されるように、5C1H2モノクローナルは、ネガティブコントロール細胞からの細胞のChemR23組換え体亜集団を区別することができる。分析のバックグラウンド蛍光は、第2の染色(グレー塗りつぶし)によって与えられる。
【0224】
実施例9:結合置換分析
置換実験のために、ChemR23−CHO−K1細胞(25000細胞/チューブ)が、250μlの結合バッファー(50mMHepes(pH7.4);1mMのCaCl;0.5%子ウシ血清アルブミン(BSA)脂肪酸フリー;5mMのMgCl)において、標識付けされていないTIG2の濃度が増大する存在下で、1nMのSEAP−HIS6又はTIG2−SEAP−HIS6とともに、27℃で90分間培養される。飽和実験のために、ChemR23−CHO−K1細胞(25000細胞/チューブ)が、1μMの非標識TIG2の存在又は不在下で、TIG2−SEAP−HIS6の濃度増大を伴って、27℃で90分間培養される。培養後、細胞は5回洗浄され、10mMTris塩酸(pH8.0)50μl、1%トリトンX100中で溶解させる。サンプルは、65℃で10分間加熱され、細胞のホスファターゼを不活性化した。溶解物が遠心分離によって集められ、25μlの溶解物中のアルカリホスファターゼ活性が上記化学発光により決められる。
【0225】
実施例10:TIG2とChemR23の組織分布
半定量RT−PCRが、種々のヒト組織由来のpolyA+RNAと全RNA(クローンテックとアンビオン)上で、hTIG2とChemR23に対する遺伝子特異的プライマーを用いて、行われた。要するに、血液細胞由来の全RNAがRneasy・Mini・キット(Qiagen)を用いて調製された。hTIG2プライマーは、フォワード(5’−GCAGACAAGCTGCCGGA−3’;配列ID NO:37)、TaqManプローブ(5’−AACCCGAGTGCAAAGTCAGGCCC−3’;配列ID NO:38)、リバース(5’−AGTTTGATGCAGGCCAGGC−3’;配列ID NO:39)である。hChemR23プライマーは、フォワード(5’−GTCCCAGAACCAACCGCAG−3’;配列ID NO:40)、TaqManプローブ(5’−TTCGCCTGGCTTACATGGCCTGC−3’;配列ID NO:41)、リバース(5’−AAGAAAGCCAGGACCCAGATG−3’;配列ID NO:42)である。プライマーとしてはハウスキーピング遺伝子GAPDHフォワード(5’−GAAGGTGAAGGTCGGAGTC−3’;配列ID NO:43)、TaqManプローブ(5’−AGCTCTCCCGCCGGCCTCTG−3’;配列ID NO:44)、リバース(5’−GAAGATGGTGATGGGATTTC−3’;配列ID NO:45)に設計されたプライマーが用いられて、参考mRNAプロファイルを製造した。様々な組織内でのhTIG2とChemR23の分布は、それぞれ図15及び図16に示される。hTIG2又はChemR23の発現レベルは、GAPDH参考mRNA発現に対するhTIG2又はChemR23の比として表される。
【0226】
実施例11:ChemR23に対するリガンドとしての末端切断型ヒトTIG2ポリペプチドの同定
末端切断型ヒトTIG2ポリペプチドは、卵巣癌患者のヒト腫瘍の腹水流体から単離された。前記単離に用いられた処理は、ペプチド配列決定後ポリペプチドが配列ID NO:46によって表されることを明らかにされたという事実を除いて、本特許出願明細書の実施例2に開示されている。
【0227】
前記末端切断ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、実施例3で開示された方法に従って単離された。酵母及びほ乳類細胞中での末端切断TIG2の組換え体発現は、実施例4及び5で開示されているように行われた。
【0228】
配列ID NO:8及び配列ID NO:46で表される双方のTIG2ポリペプチドが、ChemR23のリガンドであることを、機能分析は明らかにした。前記分析のために後に続けられる方法は、実施例6に開示されている。
【0229】
図14は、CHO細胞で発現されるChemR23に対する末端切断型hTIG2ペプチド(配列ID NO:46)の濃度応答曲線を示している。この分析は、あとのパラグラフで説明されるように実行される。図に示す通り、末端切断型hTIG2分子は、4.27nMのEC50で、ChemR23を活性化する。結果は、相対光ユニット(RLU)として示される。類似の活性研究、結合置換分析、及び抗体産生は、実施例7,8,9で開示されるように全長TIG2ポリペプチドのために行われるように末端切断型TIG2ペプチドで行われている。
【0230】
末端切断TIG2ポリペプチドの組織分布は、これが全長TIG2ポリペプチドの分布から離れているかどうかを決定するために研究されている。このような研究は、全長型に対する末端切断型の特異的機能を明らかにする。
【産業上の利用可能性】
【0231】
ChemR23関連及び/又はTIG2関連の疾患若しくは疾病をインビトロで検出することにより、これらの診断に役立つ情報を医療現場に提供することができる。
【図1−1】

【図1−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ChemR23シグナリング活性の調節不良による疾患又は疾病のインビトロでの検出方法であって、
(a)組織サンプルに存在するChemR23ポリペプチドを、配列ID NO:46で示される末端切断型TIG2ポリペプチド又は該末端切断型TIG2ポリペプチドの少なくとも50%の結合活性及びシグナリング活性化レベルを保持する前記末端切断型TIG2に付加、挿入、欠失又は置換したTIG2ポリペプチドと接触させる工程;
(b)前記TIG2ポリペプチドの前記組織サンプルに対する結合を検出する工程;及び
(c)(b)工程で検出された結合を標準と比較し、当該標準に対する結合における差異があればChemR23の調節不良による疾患又は疾病が検出されたとする工程を含み、
前記疾患又は疾病は、癌、腫瘍転移、炎症疾患、自己免疫疾患、受け継がれた又は獲得した免疫欠損、骨粗鬆症、骨治癒、骨組織移植、移植片拒絶反応、乾癬、湿疹、皮膚の炎症性感染及び栄養疾患、ウィルス感染、バクテリア感染、寄生虫感染、女性の不育症、並びに卵巣癌及び子宮癌からなる群より選ばれる検出方法。
【請求項2】
ChemR23シグナリング活性の調節不良による疾患又は疾病のインビトロでの検出方法であって、
(a)組織サンプルに存在するChemR23ポリペプチドを、配列ID NO:46で示される末端切断型TIG2ポリペプチド又は該末端切断型TIG2ポリペプチドの少なくとも50%の結合活性及びシグナリング活性化レベルを保持する前記末端切断型TIG2に付加、挿入、欠失又は置換したTIG2ポリペプチドと接触させる工程;及び
(b)前記TIG2ポリペプチドの前記組織サンプルに対する結合を検出する工程;
(c)(b)工程で検出された結合を標準と比較し、シグナリング活性において当該標準に対して10%以上の差異があればChemR23の調節不良による疾患又は疾病が検出されたとする工程を含み、
前記疾患又は疾病は、癌、腫瘍転移、炎症疾患、自己免疫疾患、受け継がれた又は獲得した免疫欠損、骨粗鬆症、骨治癒、骨組織移植、移植片拒絶反応、乾癬、湿疹、皮膚の炎症性感染及び栄養疾患、ウィルス感染、バクテリア感染、寄生虫感染、女性の不育症、並びに卵巣癌及び子宮癌からなる群より選ばれる検出方法。
【請求項3】
TIG2活性の調節不良による疾患又は疾病のインビトロでの検出方法であって、
(a)組織サンプルに存在するTIG2ポリペプチドを、ChemR23ポリペプチドを発現している細胞又は当該細胞から調製された膜と接触させる工程;
(b)前記TIG2ポリペプチドと前記ChemR23ポリペプチドとの結合を検出する工程;及び
(c)(b)工程で検出された結合を標準と比較し、当該標準に対して結合に差異があればTIG2活性の調節不良による疾患又は疾病が検出されたとする工程を含み、
前記疾患又は疾病は、癌、腫瘍転移、炎症疾患、自己免疫疾患、受け継がれた又は獲得した免疫欠損、骨粗鬆症、骨治癒、骨組織移植、移植片拒絶反応、乾癬、湿疹、皮膚の炎症性感染及び栄養疾患、ウィルス感染、バクテリア感染、寄生虫感染、女性の不育症、並びに卵巣癌及び子宮癌からなる群より選ばれる検出方法。
【請求項4】
TIG2活性の調節不良による疾患又は疾病のインビトロでの検出方法であって、
(a)組織サンプルに存在するTIG2ポリペプチドを、ChemR23ポリペプチドを発現している細胞又は当該細胞から調製された膜と接触させる工程;
(b)前記ChemR23のシグナリング活性を検出する工程;及び
(c)(b)工程で検出された結合を標準と比較し、シグナリング活性において前記標準に対して10%以上の差異があればTIG2活性の調節不良による疾患又は疾病が検出されたとする工程を含み、
前記疾患又は疾病は、癌、腫瘍転移、炎症疾患、自己免疫疾患、受け継がれた又は獲得した免疫欠損、骨粗鬆症、骨治癒、骨組織移植、移植片拒絶反応、乾癬、湿疹、皮膚の炎症性感染及び栄養疾患、ウィルス感染、バクテリア感染、寄生虫感染、女性の不育症、並びに卵巣癌及び子宮癌からなる群より選ばれる検出方法。
【請求項5】
TIG2活性の調節不良による疾患又は疾病のインビトロでの検出方法であって、
(a)組織サンプルを、TIG2ポリペプチドに特異的な抗体と接触させる工程;
(b)前記抗体と前記組織サンプルとの結合を検出する工程;及び
(c)(b)工程で検出された結合を標準と比較し、抗体の結合において前記標準に対して差異があればTIG2活性の調節不良による疾患又は疾病が検出されたとする工程を含み、
前記疾患又は疾病は、癌、腫瘍転移、炎症疾患、自己免疫疾患、受け継がれた又は獲得した免疫欠損、骨粗鬆症、骨治癒、骨組織移植、移植片拒絶反応、乾癬、湿疹、皮膚の炎症性感染及び栄養疾患、ウィルス感染、バクテリア感染、寄生虫感染、女性の不育症、並びに卵巣癌及び子宮癌からなる群より選ばれる検出方法。
【請求項6】
ChemR23活性の調節不良による疾患又は疾病のインビトロでの検出方法であって、
(a)組織サンプルを、ChemR23ポリペプチドに特異的な抗体と接触させる工程;
(b)前記組織サンプルに対する前記抗体の結合を検出する工程;及び
(c)(b)工程で検出された結合を標準と比較し、当該標準に対して抗体の結合に差異があればChemR23活性の調節不良による疾患又は疾病が検出されたとする工程を含み、
前記疾患又は疾病は、癌、腫瘍転移、炎症疾患、自己免疫疾患、受け継がれた又は獲得した免疫欠損、骨粗鬆症、骨治癒、骨組織移植、移植片拒絶反応、乾癬、湿疹、皮膚の炎症性感染及び栄養疾患、ウィルス感染、バクテリア感染、寄生虫感染、女性の不育症、並びに卵巣癌及び子宮癌からなる群より選ばれる検出方法。
【請求項7】
ChemR23シグナリングル活性及び/又はTIG2活性の調節不良による疾患又は疾病を、インビトロで検出する方法であって、
(a)組織サンプルを、ChemR23ポリペプチドに特異的な抗体及びTIG2ポリペプチドに特異的な抗体と接触させる工程;
(b)前記組織サンプルに対する前記各抗体の結合を検出する工程;及び
(c)(b)工程で検出された結合を標準と比較し、当該標準に対していずれか一方若しくは双方の抗体の結合に差異があればChemR23シグナリング活性及び/又はTIG2活性の調節不良による疾患又は疾病が検出されたとする工程を含み、
前記疾患又は疾病は、癌、腫瘍転移、炎症疾患、自己免疫疾患、受け継がれた又は獲得した免疫欠損、骨粗鬆症、骨治癒、骨組織移植、移植片拒絶反応、乾癬、湿疹、皮膚の炎症性感染及び栄養疾患、ウィルス感染、バクテリア感染、寄生虫感染、女性の不育症、並びに卵巣癌及び子宮癌からなる群より選ばれる検出方法。
【請求項8】
前記TIG2抗体は、配列ID NO:46で示される末端切断型TIG2ポリペプチドに特異的抗体である請求項5または7に記載の方法。
【請求項9】
前記TIG2抗体は、配列ID NO:8で示される全長TIG2ポリペプチドに特異的抗体である請求項5または7に記載の方法。
【請求項10】
ChemR23シグナリング活性及び/又はTIG2活性の調節不良による疾患又は疾病のインビトロでの検出方法であって、
(a)組織サンプルから核酸を単離する工程;
(b)前記核酸を鋳型として用いて、TIG2ポリヌクレオチド及びChemR23ポリヌクレオチドを増幅する工程;及び
(c)(b)工程で得られた増幅TIG2ポリヌクレオチド及びChemR23ポリヌクレオチドの量を標準と比較し、
増幅したTIG2ポリヌクレオチド及び/又はChemR23ポリヌクレオチドの前記量について当該標準に対して差異があれば、ChemR23シグナリング活性及び/又はTIG2活性の調節不良による疾患又は疾病が検出されたとする工程を含み、
前記疾患又は疾病は、癌、腫瘍転移、炎症疾患、自己免疫疾患、受け継がれた又は獲得した免疫欠損、骨粗鬆症、骨治癒、骨組織移植、移植片拒絶反応、乾癬、湿疹、皮膚の炎症性感染及び栄養疾患、ウィルス感染、バクテリア感染、寄生虫感染、女性の不育症、並びに卵巣癌及び子宮癌からなる群より選ばれる検出方法。
【請求項11】
ChemR23のシグナリング活性及び/又はTIG2活性の調節不良による疾患又は疾病のインビトロでの検出方法であって、
(a)組織サンプルから核酸を単離する工程;
(b)前記核酸を鋳型として用いて、TIG2ポリヌクレオチド及びChemR23ポリヌクレオチドを増幅する工程;及び
(c)(b)工程で得られた増幅TIG2ポリヌクレオチド及びChemR23ポリヌクレオチドの配列を標準と比較し、
配列において前記標準と異なっていれば、ChemR23シグナリング活性及び/又はTIG2活性の調節不良による疾患又は疾病が検出されたとする工程を含み、
前記疾患又は疾病は、癌、腫瘍転移、炎症疾患、自己免疫疾患、受け継がれた又は獲得した免疫欠損、骨粗鬆症、骨治癒、骨組織移植、移植片拒絶反応、乾癬、湿疹、皮膚の炎症性感染及び栄養疾患、ウィルス感染、バクテリア感染、寄生虫感染、女性の不育症、並びに卵巣癌及び子宮癌からなる群より選ばれる検出方法。
【請求項12】
前記標準は、ChemR23のシグナリング活性及び/又はTIG2活性の調節不良による疾患又は疾病に罹患していない個体から取得されたサンプルを含んでいる請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記標準は、ChemR23又は末端切断型TIG2ポリペプチドを発現している組み換え細胞を含んでいる請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記標準は、配列ID NO:46で示される単離された末端切断型TIG2ポリペプチド又は当該末端切断型TIG2ポリペプチドの付加、挿入、欠失又は置換であって、前記末端切断型TIG2ポリペプチドの少なくとも50%の結合活性及びシグナリング活性化レベルを保持しているTIG2ポリペプチドを含んでいる請求項3又は4に記載の方法。
【請求項15】
前記配列の比較工程はミニ配列決定を含んでいる請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記標準は、配列ID NO:7である請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記標準は、配列ID NO:1である請求項11に記載の方法。
【請求項18】
請求項10に記載の量比較工程は、マイクロアレイ上で行われる請求項10に記載の方法。
【請求項19】
前記配列の比較工程は、マイクロアレイ上で行われる請求項11に記載の方法。
【請求項20】
ChemR23シグナリングの調節不良による疾患又は疾病の検出用キットであって、
ChemR23ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドでトランスフォームされた細胞;配列ID NO:46で示される末端切断型TIG2ポリペプチド又は当該末端切断型TIG2ポリペプチドの付加、挿入、欠失若しくは置換したもので、前記末端切断型TIG2ポリペプチドの少なくとも50%の結合活性及びシグナリング活性化レベルを保持しているTIG2ポリペプチド;及びこれらをパッケージングする物質を含み、
前記疾患又は疾病は、癌、腫瘍転移、炎症疾患、自己免疫疾患、受け継がれた又は獲得した免疫欠損、骨粗鬆症、骨治癒、骨組織移植、移植片拒絶反応、乾癬、湿疹、皮膚の炎症性感染及び栄養疾患、ウィルス感染、バクテリア感染、寄生虫感染、女性の不育症、並びに卵巣癌及び子宮癌からなる群より選ばれるキット。
【請求項21】
配列ID NO:46で示される末端切断型TIG2ポリペプチド又は当該末端切断型TIG2ポリペプチドの付加、挿入、欠失若しくは置換したもので、前記末端切断型TIG2ポリペプチドの少なくとも50%の結合活性及びシグナリング活性化レベルを保持しているTIG2ポリペプチドを用いて薬剤を調製する方法。
【請求項22】
配列ID NO:46で示される末端切断型TIG2ポリペプチド又は当該末端切断型TIG2ポリペプチドの付加、挿入、欠失若しくは置換したもので、前記末端切断型TIG2ポリペプチドの少なくとも50%の結合活性及びシグナリング活性化レベルを保持しているTIG2ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを用いて薬剤を調製する方法。
【請求項23】
配列ID NO:46で示される末端切断型TIG2ポリペプチド又は当該末端切断型TIG2ポリペプチドの付加、挿入、欠失若しくは置換したもので、前記末端切断型TIG2ポリペプチドの少なくとも50%の結合活性及びシグナリング活性化のレベルを保持しているTIG2ポリペプチドを用いることを特徴とする検出用キットの製造方法。
【請求項24】
配列ID NO:46で示される末端切断型TIG2ポリペプチド又は当該末端切断型TIG2ポリペプチドの付加、挿入、欠失若しくは置換したもので、前記末端切断型TIG2ポリペプチドの少なくとも50%の結合活性及びシグナリング活性化レベルを保持しているTIG2ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを用いることを特徴とするキットの製造方法。
【請求項25】
前記キットは、ChemR23シグナリング活性の調節不良による疾患又は疾病の検出用であって、前記疾患又は疾病は、癌、腫瘍転移、炎症疾患、自己免疫疾患、受け継がれた又は獲得した免疫欠損、骨粗鬆症、骨治癒、骨組織移植、移植片拒絶反応、乾癬、湿疹、皮膚の炎症性感染及び栄養疾患、ウィルス感染、バクテリア感染、寄生虫感染、女性の不育症、並びに卵巣癌及び子宮癌からなる群より選ばれる請求項23又は24に記載の製造方法。
【請求項26】
前記薬剤はChemR23関連疾患若しくは疾病の治療薬であって、
前記疾患又は疾病は、癌、腫瘍転移、炎症疾患、自己免疫疾患、受け継がれた又は獲得した免疫欠損、骨粗鬆症、骨治癒、骨組織移植、移植片拒絶反応、乾癬、湿疹、皮膚の炎症性感染及び栄養疾患、ウィルス感染、バクテリア感染、寄生虫感染、女性の不育症、並びに卵巣癌及び子宮癌からなるなる群より選ばれる請求項21または22の製造方法。
【請求項27】
配列ID NO:46で示される末端切断型TIG2ポリペプチド又は当該末端切断型TIG2ポリペプチドの付加、挿入、欠失若しくは置換したもので、前記末端切断型TIG2ポリペプチドの少なくとも50%の結合活性及びシグナリング活性化レベルを保持しているTIG2ポリペプチドを用いることを特徴とする抗体の製造方法。
【請求項28】
配列ID NO:46で示される末端切断型TIG2ポリペプチド又は当該末端切断型TIG2ポリペプチドの付加、挿入、欠失若しくは置換したもので、前記末端切断型TIG2ポリペプチドの少なくとも50%の結合活性及びシグナリング活性化レベルを保持しているTIG2ポリペプチドに対する抗体。
【請求項29】
癌、腫瘍転移、炎症疾患、自己免疫疾患、受け継がれた又は獲得した免疫欠損、骨粗鬆症、骨治癒、骨組織移植、移植片拒絶反応、乾癬、湿疹、皮膚の炎症性感染及び栄養疾患、ウィルス感染、バクテリア感染、寄生虫感染、女性の不育症、並びに卵巣癌及び子宮癌からなるなる群より選ばれるChemR23関連疾患若しくは疾病の治療用抗体であって、
配列ID NO:46で示される末端切断型TIG2ポリペプチド又は当該末端切断型TIG2ポリペプチドの付加、挿入、欠失若しくは置換したもので、前記末端切断型TIG2ポリペプチドの少なくとも50%の結合活性及びシグナリング活性化レベルを保持しているTIG2ポリペプチドに特異的な抗体。
【請求項30】
前記抗体はモノクローナル抗体である請求項28又は29に記載の抗体。
【請求項31】
前記抗体はヒト抗体である請求項29〜30のいずれかに記載の抗体。
【請求項32】
前記抗体はヒト化されたものである請求項28又は29に記載の抗体。
【請求項33】
前記抗体はキメラ抗体である請求項28又は29に記載の抗体。
【請求項34】
前記抗体は一本鎖抗体である請求項28又は29に記載の抗体。
【請求項35】
前記抗体は、TIG2ポリペプチドの活性をモジュレートするものである請求項28又は29に記載の抗体。
【請求項36】
癌、腫瘍転移、炎症疾患、自己免疫疾患、受け継がれた又は獲得した免疫欠損、骨粗鬆症、骨治癒、骨組織移植、移植片拒絶反応、乾癬、湿疹、皮膚の炎症性感染及び栄養疾患、ウィルス感染、バクテリア感染、寄生虫感染、女性の不育症、並びに卵巣癌及び子宮癌からなるなる群より選ばれる、ChemR23関連疾患若しくは疾病の治療薬の製造方法において、
配列ID NO:46で示される末端切断型TIG2ポリペプチド又は当該末端切断型TIG2ポリペプチドの付加、挿入、欠失若しくは置換したもので、前記末端切断型TIG2ポリペプチドの少なくとも50%の結合活性及びシグナリング活性化レベルを保持しているTIG2ポリペプチドに結合する抗体を用いることを特徴とする方法。
【請求項37】
前記抗体はモノクローナル抗体である請求項36の方法。
【請求項38】
前記抗体はヒト抗体である請求項36又は37の方法。
【請求項39】
前記抗体はヒト化されたものである請求項36の方法。
【請求項40】
前記抗体はキメラ抗体である請求項36の方法。
【請求項41】
前記抗体は一本鎖である請求項36の方法。
【請求項42】
前記抗体は、TIG2ポリペプチドの活性をモジュレートするものである請求項36の方法。
【請求項43】
単離されたChemR23ポリペプチド及び/又は単離されたTIG2ポリペプチドを含む組成物の製造方法であって、
配列ID NO:46で示される末端切断型TIG2ポリペプチド又は当該末端切断型TIG2ポリペプチドの付加、挿入、欠失若しくは置換したもので、前記末端切断型TIG2ポリペプチドの少なくとも50%の結合活性及びシグナリング活性化レベルを保持しているTIG2ポリペプチドを用いることを特徴とする方法。
【請求項44】
配列ID NO:46で示される単離された末端切断型TIG2ポリペプチド又は当該末端切断型TIG2ポリペプチドの付加、挿入、欠失若しくは置換したもので、前記末端切断型TIG2ポリペプチドの少なくとも50%の結合活性及びシグナリング活性化レベルを保持しているTIG2ポリペプチドを含む組成物。
【請求項45】
前記TIG2ポリペプチドは、TIG2融合タンパクを形成する付加配列を含む請求項1〜44のいずれかに記載の方法、キット、抗体又は組成物。
【請求項46】
前記付加的配列は、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)配列、マルトース結合タンパク質配列、アルカリフォスファターゼ配列、チオレドキシン配列、緑色蛍光タンパク質(GFP)配列、ヒスチジンタグ(例えば6X又はより大きなHis)配列、又はエピトープタグ(例えばMycタグ、FLAGタグ)配列からなる群より選ばれる請求項45に記載の方法、キット、抗体、又は組成物。
【請求項47】
前記ポリヌクレオチドは、
配列ID NO:46で示される末端切断型TIG2ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;当該末端切断型TIG2ポリペプチドの付加、挿入、欠失若しくは置換したもので、前記末端切断型TIG2ポリペプチドの少なくとも50%の結合活性及びシグナリング活性化レベルを保持しているTIG2ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;及び配列ID NO:7で示されるポリヌクレオチドからなる群より選ばれる請求項10−13、15−19、22、24又は25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
癌、腫瘍転移、炎症疾患、自己免疫疾患、受け継がれた又は獲得した免疫欠損、骨粗鬆症、骨治癒、骨組織移植、移植片拒絶反応、乾癬、湿疹、皮膚の炎症性感染及び栄養疾患、ウィルス感染、バクテリア感染、寄生虫感染、女性の不育症、並びに卵巣癌及び子宮癌からなるなる群より選ばれる、ChemR23関連疾患若しくは疾病治療用の、NO:46で示される末端切断型TIG2ポリペプチド又は当該末端切断型TIG2ポリペプチドの付加、挿入、欠失若しくは置換したもので、前記末端切断型TIG2ポリペプチドの少なくとも50%の結合活性及びシグナリング活性化レベルを保持しているTIG2ポリペプチド。

【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18−1】
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【図18−2】
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【図18−3】
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【図18−4】
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【公開番号】特開2009−148278(P2009−148278A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32254(P2009−32254)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【分割の表示】特願2003−512713(P2003−512713)の分割
【原出願日】平成14年7月9日(2002.7.9)
【出願人】(502156641)ユーロスクリーン・ソシエテ・アノニム (5)
【氏名又は名称原語表記】Euroscreen S.A.
【Fターム(参考)】