説明

GPUを使用したアイトラッキング

【課題】視覚ディスプレイを見ている眼球のアイトラッキングを改善する。
【解決手段】表示信号により制御可能な視覚ディスプレイを見ている眼球の注視ポイントを決定する方法であって、視覚ディスプレイにスクリーンパターンを生成するために、グラフィックスカードを使用して表示信号を生成することと、スクリーンパターンの角膜−強膜反射を含む眼球の画像を符号化する信号を受信することと、スクリーンパターンの角膜−強膜の反射のジオメトリの一部に基づいて、眼球の注視ポイントを決定することと、を具備し、注視ポイントを決定することは、並列プロセッサとしてグラフィックスカードを利用することを含む。さらに、ビューアの注視ポイントを決定するように構成された注視トラッキングシステム及びパーソナルコンピュータシステムが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示される本発明は、一般的に、コンピュータシステムを使用したアイトラッキング(注視ポイント又は注視角度の決定)に関する。特に、本発明は、ポータブル式又は固定式のパーソナルコンピュータシステムの一部を構成している視覚ディスプレイを見ている眼球の注視ポイントを決定するためのデータ入力、データ出力及びデータ処理の効率的な実行、又は携帯電話のような、イメージング及びコンピューティング能力を備えた通信デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
眼球の動きをモニタリング又はトラッキングして、人間の注視ポイントを検出することは、さまざまな状況で使用されることができる。アイトラッキングデータは、人間の行動や意識を分析する際に重要な情報源になり得る。アイトラッキングデータは、人間が見ている対象物を評価するためと、それぞれの人間を評価するためとの両方のために使用されることができる。注視ポイントの検出の多様な用途は、ソフトウェア及びさまざまなタイプのインターフェースの使いやすさに関する研究、ウェブページ、宣伝及び広告の評価、シミュレータ環境でパイロットを教育するための、及びセキュリティ上重大な役割の監視人員を訓練するための手段の準備、並びに、心理学、行動科学及び人間の知覚におけるリサーチを含んでいる。近年高まっている関心を惹き付けている分野は、宣伝及び他の販売経路(マーケティングチャンネル)の評価である。
【0003】
また、アイトラッキング技術は、相互作用のためにも使用されることができる。ユーザは、ただコンピュータを見ることによって、コンピュータを制御することができる。アイコントロールは、単独の相互作用技術として適用されるか、キーボード、マウス、物理的なボタン及び音声と組み合わせられることができる。アイコントロールは、身体障害者のための通信デバイスに、並びにさまざまな産業用及び医療用アプリケーションに使用される。
【0004】
アイトラッキングシステムは、利用されるアプリケーションの範囲を広げているが、このようなアイトラッキングシステムは、まだ、ウェブカメラが行うような、新しいラップトップ及びデスクトップの標準装備に属するのに十分なほどの順応性がない。数百万ピクセルの解像度を有するほとんどの標準タイプのウェブカメラは、アイトラッキングの目的のために十分な光学品質を提供するであろう。もし必要であれば、可能であれば分離可能なユニットとして、表示スクリーン(本出願人の同時継続中の欧州特許出願EP09157104及びEP09157106参照、これらの全体の内容は、参照によってここに含まれる))の周辺か後ろに、補足的な照明器を設けることは簡単である。しかし、アイトラッキングの計算上の複雑さは、パーソナルコンピュータ上でリアルタイムで実行されたとき、いくつかのアイトラッキングの実行が、中央処理装置(CPU)の入力/出力能力、記憶資源及びデータ処理能力の大部分を占有するので、このような能力を含むことをコンピュータベンダに思いとどまらせるのに十分であり得る。このような占有は、コンピュータの他の機能にとって不利益であり、特に、このような占有は、他の処理の実行を遅くし、他の処理の待ち時間を長くする可能性がある。従って、アイトラッキングの改善されたコンピュータの実行の必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願09/157104
【特許文献2】欧州特許出願09/157106
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、視覚ディスプレイを見ている眼球の注視トラッキングの、改善され、より効率的なコンピュータの実行を提供することである。本発明の他の目的は、利用可能な実行と比較して、同じコンピュータ上で実行される同時の処理をより妨げない実行を提供することである。
【0007】
本発明のさらなる目的は、送信、記憶及び処理資源が効率的に使用される注視トラッキングシステムを提供することである。
【0008】
また、他の目的は、コンピュータ上で実行される他のタスクを妨げることなく、パーソナルコンピュータシステム(例えば、デスクトップ又はラップトップコンピュータ、ノートブック、ネットブック、スマートフォン、携帯情報端末、モバイルカメラ、及びグラフィックスカード又は専用グラフィックスプロセッシング装備を有する他のデバイス)に一体化されることができる注視トラッキングシステムを提供することである。さらなる目的は、リアルタイム動作に適した注視トラッキングシステムを提供することである。
【0009】
これら目的の少なくとも1つが、独立請求項に規定されるような、方法、コンピュータ読み込み可能な媒体、注視トラッキングシステム及びパーソナルコンピュータシステムによって達成される。また、従属請求項は、本発明のいくつかの実施の形態を規定している。
【0010】
本出願の背景では、「ジオメトリ(geometry)」(例えば、角膜−強膜反射のジオメトリ)との用語は、そのサイズ、位置及び形状を参照しており、従って、スクリーンパターンが反射を受ける配置の変化の全体を参照している。CPUは、デフォルトのデータ処理資源であり、また、ユニバーサルシリアルバス(USB)は、イメージングデバイスのデフォルトのインターフェースである。さらに、グラフィックスカード(ビデオカード、ビデオアダプタ、ビデオボード、ビデオコントローラ、ディスプレイアダプタ及びグラフィックスアクセレータとしても知られている)は、コンピュータのディスプレイに送信されるビデオ信号を生成する集積回路である。このカードは、通常、コンピュータのマザーボードに配置されるか、分離回路基板であるが、ときどき、コンピュータのディスプレイユニットに組み込まれる。これは、デジタルアナログモジュールと、表示データを記憶するメモリチップと、を有する。グラフィックスカードは、FireGL(商標)、FirePro(商標)、Flipper(商標)、GeForce(商標)、Hollywood(商標)、MobilityFireGL(商標)、Nvidia(商標)、Quadro(商標)、Radeon(商標)、Rage(商標)、RealitySynthesizer(商標)、Tesla(商標)、Xenos(商標)及びXGPU(商標)のような、さまざまな商標の下で製造され、販売されている。
【0011】
本発明の第1の態様では、表示信号により制御可能な視覚ディスプレイを見ている眼球の注視ポイントを決定する方法であって、
前記視覚ディスプレイにスクリーンパターンを生成するために、グラフィックスカードを使用して表示信号を生成することと、
前記スクリーンパターンの角膜−強膜反射を含む眼球の画像を符号化する信号を受信することと、
前記スクリーンパターンの前記角膜−強膜反射のジオメトリに部分的に基づいて、前記眼球の注視ポイントを決定することと、を具備し、
前記注視ポイントを決定することは、並列プロセッサとして前記グラフィックスカードを利用することを含む方法を提供する。
【0012】
上述の方法は、アイトラッキングに含まれる所定のデータ処理タスクと、入力/出力データの所定のフローと、の少なくとも一方の割り当てを含む。特に、以下で特定される処理タスクは、CPUから、グラフィックスカードに、より正確には、グラフィックスカード内のグラフィックスプロセッシングユニット(GPU)に、再配置される。これは、CPUをオフロードし、他の処理により使用するための資源を解放する。さらに、GPUが所定の処理タスクに関してCPUよりもよく機能すれば、このようなタスクの再配置は、コンピュータシステムの全体の性能を改良する。これは、一般的に、並列コンピューティング装備によって果される影響を受けやすい行列演算、画像処理、圧縮及び解凍、並びに他のアルゴリズムにあてはまる。GPUが、一般的に、卓越した演算性能及び高い記憶帯域幅によって特徴付けられることは、既知である。より正確には、これらのパイプラインのアーキテクチャは、比較的長い待ち時間を犠牲にして、高スループットを達成する。しかし、このような待ち時間は、人間視覚システムが動作し、アイトラッキングの背景中の困難を引き起こさないミリ秒の時間スケールよりも小さな大きさである。より一般的な観点から見て、CPUをオフロードするのに適したさらなるデバイス、特に、いわゆる物理モジュール又は物理カードがある。その主要な使用用途は、自然法則に従ってシステムをシミュレーションすることに関する重い計算を助けることである。従って、本発明のいくつかの実施の形態は、適切な適用の後に、グラフィックスカードと同じ役割の物理カードを含むことができる。
【0013】
さらに、本発明によれば、トラッキングされる眼球の画像を符号化する信号が、グラフィックスカードで受信される。かくして、多くの予備処理工程が、グラフィックスカードによって果されることができるので、CPUに達するデータ量は、無関係な画像のセグメントを取り除いたり、画像データを予め処理したり、画像特徴の座標を抽出したりすることなどによって、かなり減少されることができる。さらに、画像信号が、グラフィックスカードで受信されて、このグラフィックスカードにより画像信号が処理され、入力データフローのパスを短くし、USBインターフェース、内部バス及びグラフィックスポートによって、又は接続されたマザーボードデバイスの他のいくつかのチェーンによって、送信される。入力データフローのこのような効率的なルーティングは、本発明の他の効果を構成している。
【0014】
本発明の第2の態様では、上述の方法を実行するためのコンピュータプログラムプロダクトが提供される。本発明の第3並びに第4の態様では、このような注視トラッキングシステムが一体化された注視トラッキングシステム及びパーソナルコンピュータシステム(この用語は、上に示されるようにして理解される)が提供される。注視トラッキングシステムは、視覚ディスプレイと、カメラと、グラフィックスカードと、注視ポイントを決定するモジュールと、を有する。ここで、システム内の資源を割り当てる権限を有するソフトウェアモジュールであることができる前記注視ポイントを決定するモジュールは、システムを上に述べられた方法に従って機能させるように動作可能である。本発明の第5の態様は、視覚ディスプレイを見ている眼球の注視トラッキングに関連する所定のタスクを実行するためのグラフィックスカードの使用に関する。
【0015】
本発明の一実施の形態では、グラフィックスカードは、スクリーンパターンの角膜−強膜反射での少なくとも1つの画像特徴を抽出する。そして、このグラフィックスカードは、グラフィックスカード自体によって視覚ディスプレイに与えられる表示信号からスクリーンパターンの前記少なくとも1つの画像特徴の対応する位置を推定する。角膜への反射の前後の画像特徴の座標が、眼球の位置を決定するために使用される。代わりの形態として、表示信号は、始点として得られることができ、また、変形、モニタリングなどを考慮したスクリーンパターンの領域が、反射に対して検索されることができる。いくつかの実施例では、眼球の向きもまた、これらの座標から推定される。
【0016】
他の実施の形態では、眼球は、眼球の角膜−強膜の表面での、輝いた(glint)、小さな、特徴的な光の反射を発生させるために、不可視光線を放射するように構成された少なくとも1つの基準照明器によって照射される。眼球の画像から推定される閃光(glint)の位置は、眼球の注視ポイントを決定するために使用される。赤外線(IR)及び近赤外線(NIR)範囲中の波長は、閃光を発生させるのに適している。明るい瞳孔(bright-pupil)及び暗い瞳孔(dark-pupil)の眼球の画像をそれぞれ生成するための、同軸又は非同軸の照明器が、適切であると考えられるように適用されることができる。前記基準照明器は、視覚ディスプレイと一体的であるか、着脱可能な方式で視覚ディスプレイ上に配置されることができる。効果的には、前記基準照明器は、視覚ディスプレイにこれらを取り付けるためのフック、クリップ、吸引カップ又は同様の手段を有するフィッティングに設けられた発光ダイオード(LED)である。代わりの形態として、前記基準照明器は、EP09157106に記述されるように、ディスプレイスクリーンの後ろに設けられ、中に提供される適切な部分的なアパーチャとアライメント(整列)されることができる。
【0017】
さらなる実施の形態では、眼球の画像は、視覚ディスプレイと同期されるイメージングデバイスを使用して受信される。視覚ディスプレイが、リアルタイムで、すなわち、0、つまり時間遅れなく画像をプロットすることによって、表示信号に応答するならば、この表示信号は、イメージングデバイスへのトリガとして使用されることができる。代わりの形態として、専用のトリガ信号が、両方のデバイスに与えられることができる。同期は、エイリアシングに関連するアーティファクトが、アップロードされるのに従って同じ周波数で表示画像をサンプリングすることによって回避されることができるので、画像品質に有益である。このようなアーティファクトの中には、(平均)画像強度の時間振動及び光の安定又は変動パターン及び暗い水平ストライプがある。特に、イメージングデバイスと視覚ディスプレイとの間の同期は、特徴的な基準パターンを規則的なスクリーンパターンと組み合わせるために使用されることができる。効果的には、人間のビューアによって知覚される規則的なスクリーンパターンは、サイクルの最も大きな部分を占有し、一方、基準パターンは、人間の眼球に見えない短いタイムスロットで表示される。基準パターンは、容易に抽出されることができるか、反射によって与えられた幾何学的な変化の測定を容易にするように考えられることができる画像特徴を含むことができる。特に、基準パターンは、視覚ディスプレイによって、又は基準照明器によって放射される、NIR光線のような不可視光線を含むことができる。
【0018】
代わりの実施の形態では、イメージングデバイスは、代わって、少なくとも1つの基準照明器と同期される。従って、第1のオプションとして、(1つ又は複数の)基準照明器による照明は、明確なタイムスロットで与えられることができ、かくして、基準照明器のエネルギの経済的な動作を可能にする。また、第2のオプションとして、高度のコントラストは、基準照明器による照明ありで、及びなしで、それぞれの眼球の画像を減じることにより達成されることができる。
【0019】
他の代わりの実施の形態では、イメージングデバイス、視覚ディスプレイ及び少なくとも1つの基準照明器は、全て同期される。特徴的な基準画面パターンの組合せと同様に、上述されるように、視覚ディスプレイ及び(1つ又は複数の)基準照明器は、全体のエネルギの消費を減らして、それぞれの眼球の画像、スクリーンの反射で1つ及び基準照明器の反射で1つを交互に得るようにして動作されることができる。
【0020】
複数の実施の形態が明確に補足的でない限り、このセクションで述べられた複数の実施の形態からの特徴部分は、不自由なく組み合わせられることができる。同様に、複数の特徴部分が異なる請求項に列挙されるという事実は、これらを組み合わせることによる効果を排除するものではない。
【0021】
本発明のいくつかの実施の形態が、添付図面を参照して以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、一例として示されるコンピュータのマザーボードと、このマザーボードに接続されたグラフィックスカードとの概略図である。
【図2】図2は、ビューアの眼球の角膜に反射され、そして、イメージングデバイスによって記録される画像特徴を含むスクリーンパターンを発生させる視覚ディスプレイの概略図である。
【図3】図3は、複数のスクリーンパターン及び対応する角膜反射を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
代表的なパーソナルコンピュータのマザーボードの構造が、図1を参照して説明される。コンピュータのチップセット、すなわちコアロジックは、ノースブリッジ101、すなわち(一体化)メモリコントローラと、サウスブリッジ102、すなわち入力/出力コントローラハブと、により構成されている。これらノースブリッジ101及びサウスブリッジ102は、内部バス150によって通信可能に接続されている。サウスブリッジ102は、ノースブリッジ101よりも遅いデータ転送速度を有するデバイスのインターフェースとして、一般的に使用される。従って、この例では、サウスブリッジ102は、基本入力/出力システム(BIOS)130、統合駆動エレクトロニクス(IDE)バス131、インダストリ標準アーキテクチャ(ISA)バス132、旧製品との互換性を提供するための他のレガシーインターフェース133、周辺コンポーネント相互接続(PCI)バス134及びUSBインターフェース135に接続されている。一般的に高速デバイスを処理するノースブリッジ101は、フロントサイドバス152によってCPU110に、及びメモリバス153によってランダムアクセスメモリユニット120に接続されている。従って、例えば、CPUに対して意図され、USBインターフェース135で受信されたデータストリームは、内部バス150及びフロントサイドバス152によってCPU110に伝送される。
【0024】
図1には、さらに、一般的に光速グラフィックスポート(AGP)又はPCIエクスプレス(PCIe)バスを使用するような、グラフィックスポート151によってノースブリッジチップ101に接続されたグラフィックスカード140が示されている。グラフィックスカード140のコアコンポーネントは、GPUである。マザーボードのインターフェース142は、グラフィックスポート151に接続されている。ビデオのBIOS144、ビデオのメモリ145、及び、アナログ視覚ディスプレイがグラフィックスカード140によって駆動されることになっているならば、ランダムアクセスメモリのデジタルアナログコンバータ146が、グラフィックスカード140の一部を構成している。グラフィックスカード140は、自然法則に従ってプロセスをシミュレーションするための物理モジュールのような、メディアプロセッサを有することができる。外部インターフェース143は、視覚ディスプレイ及び他の可能なデバイスがグラフィックスカード140に接続されることを可能にする。
【0025】
図2は、注視トラッキング測定の光学状況を示す図である。視覚ディスプレイ210は、画像特徴212を含むスクリーンパターンを生成する。特徴212は、ビューアの眼球220の角膜222か強膜224に角膜反射226として画像化される。そして、好ましくはデジタルカメラかウェブカメラであるイメージングデバイス230が、画像点234に角膜反射226を光学的に描写する。単純化されたモデルでは、図面に示されるように、カメラ230による画像化は、(後方の)節点232及び画像面236によって決定される。図面を明瞭にするために、画像特徴212a、212b及び212dからの光線のみが示されている。図面は、スケールを合わせられていない。現実的な状況では、400mmの視距離のところで、17インチのスクリーンが、高さ約4mmであるスクリーンの虚像を生じる。
【0026】
像点234の位置から、眼球220の位置が計算されることができる。眼球220の画像に瞳孔の中心の位置を見つけることによって、注視方向は、瞳孔の中心の角膜反射の理論(例えば、生体医用工学のIEEEの紀要のvol.53、no.6のE.D.GuestrinとM.Eizenmannとによる論文(2006年6月)であり、この内容は参照としてここに含まれる)を使用して決定されることができる。代わりの形態として、計算がより洗練された非球面の角膜モデル(それによると、人間の角膜は回転対称ではない)に基づく場合、対の像点234及び画像特徴212の十分な数が抽出されることができれば、注視方向を見つけることが可能である(EP09157106参照)。この幾何学的なマッピンク方法に加えて、注視角度を見つけるための有用なアプローチは、統計モデル及び学習アルゴリズム、特に、ニューラルネットワーク、サポートベクトルマシン(SVM)方法及びビオラジョーンズアルゴリズムを含む。
【0027】
視覚ディスプレイの明度が、イメージングデバイス230が十分な画像品質を備えたスクリーンパターンの反射を記録することを可能にする限り、いかなる種類の視覚ディスプレイ210も使用されることができる。既に述べられたように、視覚ディスプレイ210には、そのスクリーン面の後ろに、又は周辺に、可能であれば、不可視波長範囲の光を放射する基準照明器(reference illuminator)が設けられることができる。
【0028】
イメージングデバイス230に関して、一体化されたデバイスと分離可能なデバイスとの両方が使用されることができる。デバイスの感受波長範囲は、ディスプレイ210が補足的な基準照明器を装備しているかどうかに従って適用される。好ましくは、入力データフローの効率的なルーティングを達成するために、イメージングデバイス230は、視覚ディスプレイ210にも接続されるグラフィックスカード140の外部インターフェース143に直接接続される。代わって、イメージングデバイス230は、USB(バージョン2.0か3.0)ポート、IEEE1394インターフェース(FireWire)又はカメラリンクインターフェースによって接続される。
【0029】
ラップトップパーソナルコンピュータに一体化されたアイトラッキングシステムの好ましい一実施の形態が説明される。既に述べられたように、アイトラッキングのアプリケーションに注意深く合わせた後、標準視覚ディスプレイ210及びイメージングデバイス230を使用することができる。好ましい実施の形態では、イメージングデバイス230は、コンピュータの視覚ディスプレイ上に配置されたカメラである。このカメラの感度は、NIRの範囲に広がっており、また、NIRの光源(図示されない)は、カメラと同軸に設けられており、この結果、明るい瞳孔の眼球の画像が提供されることができる。このカメラは、これら3つのデバイスにGPUの(可能であれば増幅された)クロック周波数を転送することによってのように、視覚ディスプレイとNIR光源とを同期させる。視覚ディスプレイ210は、60Hzの再生速度で動作するが、全ての30のサイクルが、特徴的な基準パターン(distinctive reference pattern)を表示し、カメラを使用して、眼球の画像を得るために使用される。網膜は、1/60秒よりも長い積分時間を少なくとも有するので、少なくとも通常の屋内での照明の条件では、基準パターンは、ビューアによって知覚されない。しかし、カメラの積分時間は、1つのサイクルを超過しないことが重要である。実際には、パラメータ値のこの選択は、毎秒2つの眼球の画像のサンプリングに備える。このサンプリング速度は、可能であれば、スクリーンの画像が明滅する危険を冒すこととなるが、増加されることができる。より速いイメージングデバイス及びより高い再生速度のディスプレイは、このような問題を緩和することができる。
【0030】
基準パターンは、容易に抽出可能な画像特徴のいかなるハイコントラストの配置であってもよい。例えば、図3を参照して、規則的なスクリーンパターン310から開始して、(数ミリメートルの線幅を有する)明るいフレーム321は、完全なスクリーンパターンの内側部分322を残して、スクリーン320の周囲で覆われることができる。瞳孔390及び虹彩391全体にわたって角膜に現われる、覆われたスクリーンパターンの反射330では、反射された明るいフレーム331は、スクリーンの反射された内側部分332よりも検出するのがより簡単である。代わりの形態として、垂直なグリッド340及び水平なラインが、特徴的な制御点を与える交差点を有し、グリッドの反射350で容易に検索されることができる。グリッド340は、画像、及び、従って、角膜−強膜の表面390、391、392の位置及び向きの局所的な変化に関する追加情報を与える。
【0031】
他の形態として、標準的な薄膜トランジスタカラー液晶ディスプレイであることができる視覚ディスプレイ360は、複数の発光ダイオード(LED)362が配列された部分361によって囲まれている。好ましくは、これらLED362は、NIRを放射するように構成されており、また、可視波長範囲中の光をではなく、NIRを透過させるプレートによって覆われている。従って、これらLED362は、ディスプレイ360のビューアから隠されている。上に述べられるようなカメラで同期して動作されることができるLED362は、角膜−強膜の表面390、391、392にそれぞれの反射372を生じさせる。
【0032】
好ましい実施の形態では、カメラは、外部インターフェース143で画像信号を受信するグラフィックスカード140に直接接続される。画像信号は、CPUへ直接転送されないが、GPU141によって予め処理される。
【0033】
第1の前処理工程として、カメラコンピュータリンク中の帯域幅を節約するために圧縮されたフォーマットで与えられた画像信号は、GPU141の内蔵のルーチンを使用して解凍される。
【0034】
第2の前処理工程は、減法に関し、明るい瞳孔の画像化でのみ有効にされる。さらなる処理に使用される画像は、アクティブな同軸のNIR発光源で得られた、明るい瞳孔の眼球の画像及び光源をオフにして近くで得られた暗い瞳孔の眼球の画像から得られる。コントラストを増加させるために、暗い瞳孔画像は、NIRの寄与を、特に、瞳孔による網膜反射を導き出すように、明るい瞳孔画像から、ピクセルに関して減算される。グラフィックスカード140が完全な画像を記憶するのに十分なメモリを有するので、グラフィックスカード140で画像減法のタスクを実行することは好ましい。
【0035】
第3の前処理工程では、角膜−強膜反射での画像特徴は、グラフィックスカード140によって視覚ディスプレイに与えられる表示信号に従って、抽出されて、スクリーンパターンの対応する座標と対になる。(湾曲した角膜の表面での反射は、スクリーンパターンを激しく変形し得るので、動作のこの順序は、スクリーンパターンから特徴を抽出して、反射におけるこれら特徴を検索することが好ましい。)画像特徴の抽出は、ソーベルフィルタのようなエッジ検出フィルタ及び接続コンポーネント、又はキャニーフィルタ、又は分類アルゴリズムのような統計的方法、特に、GPU141によって実行されるのに十分適した、並列処理可能な特徴を有するエントロピーベースの画像区分化アルゴリズムを使用することができる。被写体認識は、M.Sonka、V.Hlavac及びR.Boyleによる画像処理分析及びマシンビジョンの第7章(Brook/Cole出版社(1999))の教示に従って実行されることができる。さらに、抽出は、(ソーベル)微分、適切なたたみ込み演算又は相関演算の調整ステップ、又はヒストグラムベースの明るさ補正を調整することによって実行されることができる。これらは、全て高度に並列処理可能な演算である。明るい瞳孔画像では、瞳孔の中心座標は、同様に検索される。基準照明器が設けられていれば、これらの角膜−強膜の閃光は、後のものと同様に、この工程で画像特徴と類似しているようにして、データ処理に含むことができることが注目される。
【0036】
画像特徴のペアの座標及びそれらの反射は、注視方向、すなわち、眼球の視軸の実際位置の計算のために使用される。計算は、さらに瞳孔の中心座標を考慮に入れることができる。幾何学的なマッピング方法に関連した計算上のタスクは、GuestrinとEizenmanによるワークのセクションIIに概説され、スカラーと行列との両方に対する演算を含む。角膜位置及び角膜向きの評価は、特に、重複決定システムで、一次方程式のシステムを解くことを含む。
【0037】
ハードウェアモジュールであることができるが、好ましくは、CPU110によって実行されるソフトウェアプログラムである注視ポイント決定モジュール111は、アイトラッキングのデータ処理及び記憶タスクを割り当てて、入力/出力データフローを伝送するように、コンピュータのオペレーティングシステムによって権限を与えられている。概して、使用される実際のGPUに適するようにされるべきであるときどきのスカラー演算は、CPU110によってより効率的に処理され、また、行列計算及び他の数値線形代数演算も、GPU141によって最適に実行される。これは、しばしば、反復処理を回避することができる。いくつかの利用可能なGPUが、正方形か、所定の次元を有する行列に対して最適に実行されることが注目され、そして、行列が、ゼロでデータ入力を当てることによって、所望の形式を与えることができることが注目される。GPUの線形代数ルーチンの可能な実行に関して、J.クルーガー及びR.ウェスターマンの「数値のアルゴリズムのGPUの実行のための線形代数演算」、ACM紀要グラフ、vol.22、no.3(2003年7月)及びN.Galoppoらの「LU−GPU:グラフィックスハードウェア上の密な線形系を解くための効率的なアルゴリズム」ACM/IEEEスパーコンピュータ会議のプロシーディング、2005年11月が参照され、これらの両方の内容が参照としてここに含まれている。
【0038】
代わりの形態として、角膜の位置及び向きが、GPU141での内蔵の光線トレーシングルーチンを使用して見つけられる。実際には、画像特徴212と、角膜222に対する反射によって通過するイメージングデバイス230の画像面236に対応する点とを接続する光線を必要とすることによって、いったん十分な数の画像特徴212が知られていれば、後者の位置及び向きが十分に規定される。角膜を見つけることは、画像特徴と反射とが所望の許容範囲内で互いに一致するまで、位置及び向きのパラメータが、その中で連続的に取り出される反復処理として起こることができる。多くの利用可能なGPUが、非常に速くコンピュータに組み込まれた(ハードワイヤード)、又はコンピュータに接続される(ソフトワイヤード)の光線トレーシングルーチンを与える。これは、有限回において高精度を達成することができることを示唆する。
【0039】
注視角度を計算する他のアプローチに関して、ストリームプログラミングのような並列コンピューティングに適した形式で計算を表現することは好ましい。一例として、ビオラジョーンズアルゴリズムの並列化は、O.Mateo Lozano及びK.Otsukaの、GPUが本拠の流れ処理、音響、スピーチ及び信号処理の国際会議2008の、GPUに基づいたストリーム処理によるビデオの多重面の同時かつ高速3Dトラッキングに記載されている。
【0040】
眼球の視軸は、瞳孔の位置及び向きから推定され、可能であれば、瞳孔の中心位置によって補われる。また、注視ポイントは、視軸及び表示スクリーン面の交差点である。
【0041】
好ましい実施の形態によるアイトラッキングシステムの定常状態の動作では、最後のいくつかのパラグラフで説明された手順が、各眼球の画像に対して繰り返されるか、ストリーミング方式でさらに実行される。アイトラッキングシステムの特徴は、CPU110が比較的小さな部分の計算を実行するということであり、さらに、アイトラッキング処理のみが、ノースブリッジ101を経由して、グラフィックスカード140とCPU110との間のデータフローへの寄与を制限する。
【0042】
本発明は、図面及び上述の説明に図示され及び説明されてきたが、このような図示及び説明は、図示、例示を目的とするものであり、限定的ではなく、本発明は、開示された実施の形態に限定されるものではない。例えば、本発明の実施の形態は、さらに、画像コントラストを増加させるために、又は、発光源を使用して同軸及び非同軸で同時の画像化を可能にするために、2つのイメージングデバイスを有することができる。イメージングデバイスのところに波長フィルタを設けることによって、異なる波長範囲で反射する角膜−強膜反射は、効率的に分離されることができる。同様に、注視トラッキング計算の処理タスクは、特定用途のこれらのデバイスの特性に依存してここに示されたとは異なるやり方で、CPUとグラフィックスカードとの間に振り分けられることができる。
【0043】
開示された実施の形態への他の変形は、図面、開示及び添付の特許請求の範囲に関する検討から、ここに規定される本発明の実行において、当業者によって理解され、有効にされることができる。特許請求の範囲において、「有する(具備する、含む)」との用語は、他の要素や工程を排除するものではなく、「1つの」という不定冠詞も、複数であることを排除するものではない。シングルプロセッサ又は他のユニットは、特許請求の範囲で受けられるいくつかのアイテムの機能を果すことができる。所定の手段が相互に異なる従属請求項に列挙されるという単なる事実は、これら手段の組合せが、効果的に使用されることができないということを示すものではない。コンピュータプログラムは、他のハードウェアの一部と一緒に、又はその一部として供給された光学記憶媒体又は固体(ソリッドステイト)媒体のような適切な媒体に記憶されてもよいし配信されてもよく、また、インターネット、他の有線通信システム又は無線通信システムによってのように、他の形式で配信されることができる。また、特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきでない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示信号により制御可能な視覚ディスプレイを見ている眼球の注視ポイントを決定する方法であって、
前記視覚ディスプレイにスクリーンパターンを生成するために、グラフィックスカードを使用して表示信号を生成することと、
前記スクリーンパターンの角膜−強膜反射を含む眼球の画像を符号化する信号を受信することと、
前記スクリーンパターンの前記角膜−強膜反射のジオメトリの一部に基づいて、前記眼球の注視ポイントを決定することと、を具備し、
前記注視ポイントを決定することは、並列プロセッサとして前記グラフィックスカードを利用することを含む方法。
【請求項2】
前記グラフィックスカードは、前記スクリーンパターンの角膜−強膜反射を含む前記眼球の画像を符号化する信号を、イメージングデバイスから直接受信する請求項1の方法。
【請求項3】
前記注視ポイントを決定することは、
前記グラフィックスカードを使用して、前記スクリーンパターンの前記角膜−強膜反射の少なくとも1つのイメージ特徴を抽出することと、
前記グラフィックスカードを使用して、前記スクリーンパターン中の前記少なくとも1つの画像特徴を検索するために、前記少なくとも1つの画像特徴と、前記表示信号とを比較することと、を含む請求項1又は2の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの基準照明器からの不可視光で前記眼球を照射することをさらに具備し、
前記眼球の画像は、さらに、前記少なくとも1つの基準照明器によって発生される閃光を有し、
前記注視ポイントを決定することは、さらに、前記閃光の位置に基づく請求項1ないし3のいずれか1の方法。
【請求項5】
前記眼球の画像は、前記視覚ディスプレイと前記基準照明器との少なくとも一方と同期されるイメージングデバイスから受信される請求項1ないし4のいずれか1の方法。
【請求項6】
前記スクリーンパターンを特徴的な基準パターンと繰り返し組み合わせることをさらに具備する請求項5の方法。
【請求項7】
前記画像を受信することは、圧縮画像フォーマットを解凍することを含む請求項1ないし6のいずれか1の方法。
【請求項8】
汎用コンピュータで実行するとき、請求項1の方法を行うコンピュータ読み込み可能な媒体。
【請求項9】
表示信号により制御可能な視覚ディスプレイ(210)と、
前記視覚ディスプレイのビューアの顔を画像化するように構成されたイメージングデバイス(230)と、
前記視覚ディスプレイにスクリーンパターン(310;320;340)を生成させるために、表示信号を生成するように構成されたグラフィックスカード(140)と、を具備する注視トラッキングシステムにおいて、
前記スクリーンパターンの角膜−強膜反射を含むビューアの眼球の画像を使用して、前記スクリーンパターンの角膜−強膜反射(330;350)のジオメトリに部分的に基づいて、前記ビューアの注視ポイントを決定するために、並列プロセッサとして前記グラフィックスカードを使用するように構成された注視ポイント決定モジュール(111)を具備し、
前記画像は、前記イメージングデバイスから受信される注視トラッキングシステム。
【請求項10】
前記注視ポイント決定モジュールは、前記グラフィックスカードが、前記スクリーンパターンの前記角膜−強膜反射を含む前記ビューアの眼球の画像を、前記イメージングデバイスから直接受信するように動作される請求項9の注視トラッキングシステム。
【請求項11】
前記グラフィックスカードは、さらに、
前記スクリーンパターンの前記角膜−強膜反射で前記画像特徴を抽出して、
前記スクリーンパターン中の前記画像特徴を検索するために、前記画像特徴を前記表示信号と比較するように構成されている請求項10の注視トラッキングシステム。
【請求項12】
各々が、ビューアの眼球に閃光(372)を生成するために、不可視光を放射するように構成された少なくとも1つの基準照明器(362)をさらに具備し、
前記注視トラッキングシステムは、前記閃光の位置に基づいて、前記ビューアの眼球の注視ポイントを決定するように構成されている請求項9ないし11のいずれか1の注視トラッキングシステム。
【請求項13】
前記少なくとも1つの基準照明器は、着脱可能である請求項12の注視トラッキングシステム。
【請求項14】
前記イメージングデバイスは、前記視覚ディスプレイと基準照明器との少なくとも一方と同期される請求項9ないし13のいずれか1の注視トラッキングシステム。
【請求項15】
前記グラフィックスカードは、特徴的な基準パターン(340)に従って前記スクリーンパターンを繰り返し組み合わせるように構成されている請求項14の注視トラッキングシステム。
【請求項16】
請求項9ないし15のいずれか1の注視トラッキングシステムを具備するパーソナルコンピュータシステム。
【請求項17】
コンピュータシステムにおいて、視覚ディスプレイ(210)を見ている眼球(220)の注視ポイントを決定するための、グラフィックスカード(140)の使用であって、少なくとも、
前記視覚ディスプレイにスクリーンパターン(310;320;340)を生成させるように、前記視覚ディスプレイに表示信号を与えることと、
前記スクリーンパターンの角膜−強膜反射を含む前記眼球の画像を受信することと、
前記スクリーンパターンの前記角膜−強膜反射のジオメトリに部分的に基づいて、前記眼球の注視ポイントを決定することを助けることと、のタスクを実行すること。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−81807(P2011−81807A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−228022(P2010−228022)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(508227271)トビー テクノロジー アーベー (2)
【Fターム(参考)】