説明

HER2アンタゴニストを用いた治療への感受性を回復させる組成物および方法

HER2アンタゴニストによる成長阻害に対し耐性を有する腫瘍細胞の成長阻害感受性を回復させる方法及び組成物。該方法は、HER2アンタゴニストに対する成長阻害感受性を活性化させるか、又は回復させるのに有効な量でPCDGFアンタゴニストを細胞に投与することを有する。本発明は、また、治療投薬計画、並びにHER2アンタゴニスト及びPCDGFアンタゴニストを含む治療組成物も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連する出願の相互参照)
本願は、2003年8月1日に出願した米国特許仮出願第60/491,536号と、2004年2月27日に出願した米国特許仮出願第60/547,791号の利益を主張するものであり、これらの内容を本明細書に参照により援用する。米国特許第6,720,159号、米国特許第6,309,826号、米国特許出願公開第2003/0099646号、米国特許出願公開第2003/0215445号、米国特許出願公開第2002/0025543号の内容を本明細書に参照により援用する。
【0002】
本明細書では、いくつかの出版物が引用されている。これらの出版物のすべての引用は以下に示されている。特に断りのない限り、これらの出版物の内容を本明細書に参照により援用する。
【背景技術】
【0003】
およそ25−30%の乳がん患者には、プロトオンコプロテインであり細胞膜表面受容体であるc-erbB2(ヒト上皮成長因子受容体2タンパク質)が過剰発現しており、c-erbB2はHER2/neuとしても知られている。c-erbB2オンコジーンの過剰発現は、患者の予後が悪いことや生存率が減少することと関連している。HER-2/neuプロトオンコジーンは20−30%の転移性の乳がんで過剰発現しており、このことは乳がんでの生存率の低下や再発の増加と相関している。HER-2/neuは子宮内膜がん、腎臓がん、胃がん、前立腺がんを含めた他のがんのタイプでも同様に過剰発現している。現在、これらの患者に対する治療の最も一般的な形態は、ヒト化モノクローナル抗体であるトラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標)としても知られている)の使用である。
【0004】
ハーセプチン(登録商標)は、細胞を用いたアッセイにおいてc-erbB2の細胞外ドメインに高い親和性(Kd=5nM)で選択的に結合する組み替えDNA由来のヒト化モノクローナル抗体である(非特許文献1、2参照)。ハーセプチン(登録商標)はHER2に結合するIgG1 kappa抗体であり、マウス抗体(4D5)の相補性決定領域と共にヒトのフレームワーク領域を含む。しかしながら、ハーセプチン(登録商標)又はその他のc-erbB2/HER2に対する抗体で治療した患者のうち、わずか25%しかこの治療に対し反応を示さない。c-erbB2/HER2抗体による治療に対する耐性を説明するために、いくつかのモデルが仮定されている。HER2アンタゴニストによる治療に対する感受性を回復させる組成物と方法が必要とされている。
【0005】
【非特許文献1】Science 1985;230:1132-9
【非特許文献2】Cancer Res 1993;53:4960-70
【発明の開示】
【0006】
本発明は、自己分泌成長因子であるPC細胞由来成長因子(“PCDGF”)がc-erbB2/HER2(“HER2”)アンタゴニストの抗腫瘍効果に対する耐性を与えるという発見にある程度基づいている。本発明の好ましい実施態様は、HER2アンタゴニストに対する成長阻害感受性を活性化させるか、又は回復させるのに有効な量のPCDGFアンタゴニストを投与することによって、HER2アンタゴニストの抗腫瘍効果に対する耐性を有する腫瘍細胞の成長阻害感受性を回復させる治療組成物と方法を対象にする。別の実施態様において、本発明は、PCDGFアンタゴニストを用いて腫瘍成長の再発を防ぐ方法を提供する。本発明の別の実施態様は、PCDGFアンタゴニストとHER2アンタゴニストとを腫瘍細胞の成長を阻害するのに有効な量で投与することを有する、腫瘍細胞の成長を阻害する治療組成物と方法を提供する。
【0007】
本発明は、HER2アンタゴニストとPCDGFアンタゴニストとを含む好ましい組成物も提供する。別の実施態様において、本発明は、HER2アンタゴニストと、PCDGFアンタゴニストと、医薬上許容される担体(例えば水、食塩水、リンガー溶液、デキストロース溶液、及びヒト血清)とを含む医薬組成物を提供する。
【0008】
本発明の更なる実施態様では、患者由来の細胞を含む生体試料を得ることと、生体試料中のPCDGFを検出することと、HER2アンタゴニストの抗腫瘍効果に対する耐性を示す前記サンプル中のPCDGFの量を決定することとを有する、患者が、HER2アンタゴニストの抗腫瘍効果に対する耐性を有するかどうか決定する方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(PC細胞由来増殖因子(PCDGF)とHER2)
PCDGFは88kDaの自己分泌型の増殖因子であり、配列番号1の塩基配列及び配列番号2の推定アミノ酸配列をそれぞれ有し、当研究室で特徴付けられ、多種多様のヒト及び動物のがん細胞(例えば、神経芽細胞腫、グリア芽腫、星状細胞腫、肉腫、及び前立腺、血液、脳脊髄液、肝臓、腎臓、乳房、頭頸部、咽頭、甲状腺、膵臓、胃、大腸、結腸直腸、子宮、子宮頸部、骨、骨髄、精巣、脳、神経組織、卵巣、皮膚、肺のがん)において過剰発現しており、それらのがん細胞の腫瘍形成を誘導していることが示されている。例えば、米国特許第6,309,826号参照されたい。該特許文献の内容を本明細書に参照により援用する。
【0010】
PCDGFは、HER2アンタゴニスト(たとえば、ハーセプチン(登録商標)、HER2 キナーゼ阻害剤。下記参照)のがん細胞への抗腫瘍効果に対する耐性を与える。米国特許第6,309,826号に記載されている通り、PCDGFの過剰発現は無秩序な細胞成長及び腫瘍形成の増加をもたらす。PCDGFの過剰発現の度合いは、細胞のがん化の度合いと相関している。PCDGFを過剰発現している細胞は、無秩序な細胞成長を持続するために外部からのシグナルを必要としない。インスリン及び/又はエストロゲンに対する応答性が喪失するなど、細胞成長の制御が失われると、悪性度が増大し、過度の無秩序な細胞成長が引き起こされる。それゆえ、PCDGFの腫瘍形成活性を阻害する方法及び組成物の開発は、がん治療における重大な関心事である。
【0011】
本発明の特定の実施態様では、HER2アンタゴニストへの成長阻害感受性を活性化させるか、又は回復させるのに有効な量のPCDGFアンタゴニストを、HER2アンタゴニストによる成長阻害に対する耐性を有するがん患者に投与することによって、該患者における成長阻害感受性を活性化させるか、又は回復させる方法を提供する。別の特定の実施態様において、本発明は、PCDGFアンタゴニストとHER2アンタゴニストとを、がん細胞の成長を阻害するのに有効な量で投与することによって、がん細胞の増殖を阻害する方法を提供する。また別の実施態様では、予防に有効な量のPCDGFアンタゴニストを投与することによって、腫瘍の再発を防ぐ方法を提供する。「予防に有効な量」という用語は、がんの成長の再発を防ぐか、又は遅らせることが可能なPCDGFアンタゴニスト又はHER2アンタゴニストの量を指す。
【0012】
「HER2アンタゴニスト」という用語は、HER2又はHER2の腫瘍形成の特性を保持するHER2のいずれの類似体もしくは誘導体に結合することができるか、あるいはこれらの活性を妨げるか、あるいは該活性を阻害することができるいずれの分子(例えば、タンパク質、抗体、ペプチド、低分子、核酸、アンチセンス、又はsiRNA)を指す(例えば、特に限定されないが、ハーセプチン(登録商標)、HER2キナーゼ阻害物質)。
【0013】
一実施態様において、HER2アンタゴニストには、HER2にターゲッティングすることができるか、又は選択的に結合することができ、例えば毒素もしくは他の化合物もしくは分子を送達して細胞を殺すか、又は細胞成長を阻害することができる分子がある。例えば、HER2抗体は、該抗体がHER2と結合した後にがん細胞に送達される毒素又は化学療法薬と結合することができる。HER2アンタゴニストには、HER2の活性を調整する分子の生物活性を調節する分子(例えばペプチド、低分子、アンチセンス分子、siRNA)もある。HER2アンタゴニストは、例えばADCC(抗体依存的な細胞の細胞毒性)を介して、免疫反応を強化する抗体であってもよい。
【0014】
HER2アンタゴニスト療法は、特に限定されないが転移性乳がんを含めたHER2を過剰発現する腫瘍を有する患者の治療に有用であり、該患者には、その腫瘍がHER2タンパク質を過剰発現しており、かつその転移性の疾病に対して1回以上の化学療法を受けている患者が含まれる。特に、ハーセプチン(登録商標)は、腫瘍がHER2タンパク質を過剰発現しおり、かつ転移性の疾病に対して化学療法を受けていない転移性の乳がんの患者の治療を目的とする、パクリタキセルと組み合わせた治療について認可されている。しかしながら、ハーセプチン(登録商標)又はHER2に対するその他の抗体による治療を受けた患者のうちわずか25〜50%しか、そのような治療に対し反応を示さない。本発明の発明者らは、PCDGFがHER2アンタゴニストの抗腫瘍効果に対する耐性を与えることを見出した。パラフィン包埋したヒト乳がん生検における免疫染色研究によって、c-erbB2ポジティブの(+3)浸潤性の乳管癌の40%で、PCDGFが強発現していることが示された(図4参照)。
【0015】
(PCDGFアンタゴニスト)
「PCDGFアンタゴニスト」という用語は、PCDGF又はPCDGFの特性を保持するPCDGFのいずれの類似体もしくは誘導体に選択的に結合することができるか、あるいは特に限定されないがPCDGFに曝された細胞にHER2アンタゴニストの耐性を与える能力を含めたPCDGF又は当該PCDGFのいずれの類似体もしくは誘導体の生物活性を妨げるか、あるいは該生物活性を阻害することができるいずれの分子(例えば、タンパク質、抗体、ペプチド、低分子、核酸、アンチセンス、又はsiRNA)を指す。一実地態様において、PCDGFアンタゴニストには、PCDGF受容体にターゲティングすることができるか、又は選択的に結合することができ、例えば毒素もしくはその他の化合物もしくは分子を送達して細胞を殺すか、又は細胞増殖を阻害することができるPCDGF受容体の抗体又は低分子のアンタゴニストがある。
【0016】
(抗体)
抗PCDGF抗体などのPCDGFアンタゴニストは、PCDGFに直接結合するか、またはPCDGFが標的細胞(例えば乳がん細胞)へ細胞増殖シグナルを伝達するのを抑制することによって、PCDGFの生物活性(例えば腫瘍形成活性)を妨げる。抗PCDGF抗体はPCDGFの活性部位もしくはその加工された形態(例えばPCDGF受容体結合部位)に結合し、PCDGFがその受容体に結合するのを妨げてもよい。別の方法として、抗PCDGF抗体はPCDGF上の活性部位以外の部位に結合し、活性部位の立体構造を変化させ、それによってPCDGFがその受容体に結合出来ないようにしてもよい。抗PCDGF抗体にはPCDGF中和抗体がある。「中和」抗体は、動物及びヒトにおいて、細胞増殖を活性化させるか、又は細胞の生存率を増加させるか、アポトーシスを阻害するか、又は腫瘍の成長を誘導するPCDGFの能力を含めたPCDGFの通常の生物活性を阻害するか、又はブロックする能力を有する。
【0017】
一実施態様において、抗PCDGF抗体もしくはその抗原結合フラグメントはヒトPCDGFのE19V(配列番号3)と定義されている19アミノ酸の領域に免疫特異的に結合する。別の実施態様においては、抗PCDGF抗体もしくはその抗原結合フラグメントはヒトPCDGFのA14R(配列番号4)と定義されている14アミノ酸の領域に結合する。本発明の他の好ましい組成物及び方法(例えばがん細胞の成長を阻害するなど)において、HER2アンタゴニスト治療および細胞毒を用いた治療への感受性を回復させるのに適した抗PCDGF抗体は、American Type Culture Collection (ATCC、10801 University Blvd.,Manasas,VA 20110-2209)に寄託されており、ハイブリドーマ細胞株から製造してもよい。該ハイブリドーマ細胞株としては、特に限定されないが、6B3ハイブリドーマ細胞株(ATCC受託番号PTA-5262)、6B2ハイブリドーマ細胞株(ATCC受託番号PTA-5261)、6C12ハイブリドーマ細胞株(ATCC受託番号PTA-5597)、5B4ハイブリドーマ細胞株(ATCC受託番号PTA-5260)、5G6ハイブリドーマ細胞株(ATCC 受託番号PTA-5595)、4D1ハイブリドーマ細胞株(ATCC受託番号PTA-5593)、3F8ハイブリドーマ細胞株(ATCC受託番号PTA-5591)、3F5ハイブリドーマ細胞株(ATCC受託番号 PTA-5259)、3F4ハイブリドーマ細胞株(ATCC受託番号PTA-5590)、3G2(ATCC 受託番号PTA-5592)、2A5ハイブリドーマ細胞株(ATCC受託番号PTA-5589)、 4F10(ATCC受託番号 )(抗E19Vモノクローナル抗体)が挙げられる。
【0018】
PCDGFアンタゴニストには、免疫特異的にPCDGF受容体に結合し、PCDGFのPCDGF受容体への結合をブロックする抗体もある。そのような抗PCDGF受容体抗体としては、特に限定されないが、6G8ハイブリドーマ細胞株(ATCC受託番号PTA-5263)及び5A8ハイブリドーマ細胞株(ATCC受託番号PTA-5594)を含めたハイブリドーマ細胞株から製造される抗体が挙げられる。
【0019】
本明細書で使用される抗体という用語は、PCDGFもしくはPCDGF受容体もしくはHER2に免疫特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントを指す。換言すれば、免疫特異的な抗体はその標的の抗原に特異的である(例えば、他の抗原に非特異的に結合しないか、又は他の抗原と結びつかない)。そのような抗体は、他の抗原と交差反応しないのが好ましい。これらの特異的な抗体には、特に限定されないが、ヒト及び非ヒトのポリクローナル抗体、ヒト及び非ヒトのモノクローナル抗体(mAbs)、キメラ抗体、抗イディオタイプ抗体(anti-IdAb)、中和抗体、非中和抗体、及びヒト化抗体、並びにそれらのフラグメントがある。
【0020】
ポリクローナル抗体は、抗原で免疫された動物の血清又はニワトリの卵由来の不均質な抗体分子の集団であり、当業者に既知のいずれの適した方法によっても得ることが出来る。「モノクローナル抗体」という用語は、いずれの原核生物、真核生物、もしくはファージのクローンも含めた単一のクローンから得られる抗体を指し、それが生産される方法を指すものではない。モノクローナル抗体(mAbs)を、当業者に既知であるハイブリドーマ、組み変え体、ファージディスプレイ法の使用、もしくはこれらを組み合わせたものの使用を含めたいずれの適した方法によって得てもよい。
【0021】
そのような抗体はIgG、IgM、IgE、IgA、IgD及びそれらのいずれのサブクラスも含めた如何なる免疫学上のクラスのものであってもよい。特定のエピトープを認識する抗体のフラグメントとしては、Fabフラグメント及びF(ab')2フラグメントが挙げられ、該フラグメントは、無傷の抗体のFcフラグメントを欠き、循環からより迅速に消失し、無傷の抗体より非特異的な組織の結合が少ないものであってもよい。そのようなフラグメントは、典型的には、パパイン(Fabフラグメントを生成する)及びペプシン(F(ab’)2フラグメントを生成する)などの酵素を用いて、タンパク質分解による切断によって製造される。抗体もしくはその抗原結合フラグメントは、抗体の合成に関する技術分野において既知であるいずれの方法によって、特に化学合成によって、又は好ましくは組み換え体発現技術によって製造することができる。
【0022】
上記のいずれの方法によって本発明の抗体分子を製造した後、該抗体分子を、免疫グロブリン分子の精製に関する技術分野において既知であるいずれの方法によって、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティー、特にプロテインAやプロテインGでの精製後、特異的な抗原に対するアフィニティーによって、ゲルろ過クロマトグラフィー)、遠心分離、溶解度の差、またはその他のいずれの標準のタンパク質精製技術によって精製してもよい。さらに、本発明の抗体もしくはそのフラグメントは、精製を容易にし、更なる生物活性などを与えることが本技術分野において既知である異種のポリペプチド配列と融合してもよい。
【0023】
(核酸干渉)
別の特定の実施態様では、PCDGFアンタゴニストは核酸分子であり、該核酸分子には、特に限定されないが、アンチセンスポリヌクレオチド、RNA干渉分子、リボザイム、3重へリックスポリヌクレオチドなどが含まれる。そのような化合物の核酸配列は、mRNAの転写開始に連結したPCDGF遺伝子のDNA及び/又はRNAの核酸配列に関連している。
【0024】
特定の実施態様において、核酸干渉においてPCDGFアンタゴニストとして用いられる核酸分子は、ヒトPCDGF(配列番号1)の核酸配列の、少なくとも10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、36、38又は40の隣接したヌクレオチドを含む。そのような干渉する核酸分子を、任意の適合した配列に対してターゲティングすることが出来る。一実施態様において、核酸分子はDNAである。別の実施態様において、核酸分子はRNAであり、該RNAは1本鎖もしくは2本鎖であってもよい。
【0025】
アンチセンスの技術は、遺伝子特異的な干渉を達成するためのプロトコールにおいて最もよく記載されているアプローチである。アンチセンス法において、所定の遺伝子のmRNAに相補的な1本鎖の核酸の科学量論的な量が細胞内に導入される。米国特許第6,506,559号を参照されたい。本文献の内容を本明細書に参照により援用する。
【0026】
一実施態様において、「アンチセンスオリゴヌクレオチド」という用語は、RNA配列のみならず、それをコードするDNA配列にも対応し、該DNA配列は、アンチセンスRNAが特異的である特定のmRNA分子と充分な相補性を有し、その結果、mRNAの翻訳が阻害されるようなアンチセンスRNAとmRNAとの間の分子のハイブリダイゼーションをもたらす。そのようなハイブリダイゼーションは生体内の条件で起こりうる。
【0027】
腫瘍細胞においてPCDGFのアンチセンスRNAもしくはDNAを恒常的に発現させると、内在的なPCDGF発現の発現が阻害され、アンチセンスのRNAもしくはDNAをトランスフェクションした細胞の腫瘍形成能が阻害される(米国特許第6,309,826号参照)。アンチセンス分子は、該アンチセンス分子がPCDGF遺伝子もしくはmRNAにハイブリダイズすることができ、かつスプライシング、転写及び/又は翻訳のレベルでPCDGF遺伝子の発現を阻害することができるように、PCDGF遺伝子に対して十分な相補性(約18−30のヌクレオチドの長さ)を有していなければならない。
【0028】
PCDGFのアンチセンス分子は、コード配列、3’もしくは5’の非翻訳領域、又は他のイントロン配列を含めた標的の核酸分子のいくつかの部分のいずれか、あるいはmRNAにハイブリダイズ可能であってもよい。
【0029】
アンチセンス分子を、ベクター(例えばレトロウイルスのベクターもしくはプラスミド)を介したトランスフォーメーションもしくはトランスフェクションによって細胞に送達してもよく、該ベクターには、アンチセンスRNAを細胞内で発現させる適切な調節配列に連結したアンチセンスRNAをコードしているDNAが挿入されている。これまで、アンチセンスの向きにPDGFのcDNA断片を含有する様々なアンチセンス発現ベクターの安定したトランスフェクションが行われている。リポソームを用いてアンチセンス分子の送達を達成することもできる。
【0030】
別の好ましい実施態様では、アンチセンスオリゴヌクレオチドを生体内での治療に用いる。少なくとも10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38又は40塩基長、好ましくは約15〜30の塩基長のサイズを有し、かつコード配列、3’もしくは5’非翻訳領域、又は他のイントロン配列を含む標的のPCDGF cDNAのいくつかの部分のいずれか、あるいはPCDGF のmRNAにハイブリダイズ出来る配列を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドが望ましい。標的配列は、最も強力なアンチセンス効果を有する配列から選択されることが望ましい。PCDGFのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、安定で、ヌクレアーゼに対して高い抵抗性を有し、毒性を生じない用量で病変組織に運ぶことを可能にする適切な薬物動態を有し、細胞膜を通り抜ける能力を有することが望ましい。
【0031】
特定の実施態様においては、RNA干渉(RNAi)分子を用いて、RNAiが方向付けられている核酸の発現を減少させるか、もしくは阻害する。RNAiとは、2本鎖RNA(dsRNA)もしくは低分子干渉RNA(siRNA)を用いて、関連した核酸配列を含む遺伝子発現を抑制することを指す。RNAiは、転写後遺伝子サイレンシング(又はPTGS)とも呼ばれる。細胞の細胞質中で通常見られるRNA分子は1本鎖mRNAのみであるので、細胞は、dsRNAを認識し、少なくとも10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38又は40塩基対、好ましくは約21−25塩基対を含有する断片(二重らせんの約2つのターンからなり、低分子干渉RNA又はsiRNAと呼ばれる)に切断する酵素を有する。断片のアンチセンス鎖はセンス鎖と充分に分かれており、それ故に内在性の細胞のmRNA分子に相補的なセンス配列とハイブリダイズする。このハイブリダイゼーションがmRNAを2本鎖領域で切断する引き金となり、このようにしてmRNAのポリペプチドに翻訳される能力が破壊される。したがって、特定の遺伝子に対応するdsRNAを導入すると、特定の組織で、及び/又は選択された時間に、該遺伝子の細胞自身の発現がノックアウトされる。このようにして、RNAiによって、配列特異的に標的のmRNAを分解することにより、ユビキタスなメカニズムを通じて、遺伝子の発現が制御される。Mcmanus et al., 2002, Nat Rev Genet 3:737-747を参照されたい。哺乳類細胞では、RNA干渉(RNAi)を、siRNAの21−23個のヌクレオチドの2重鎖によって引き起こすことができる。例えば、Lee et al., 2002, Nat Biotechnol 20:505-508、Paul et al., 2002, Nat Biotechnol. 20: 505-508、Miyagishi et al., 2002, Nat Biotechnol. 20:497-500、Paddison et al., 2002, Genes Dev. 16: 948-958を参照されたい。
【0032】
2本鎖(ds)RNAは、特に限定されないが、哺乳類、特にヒトを含めた多くの生物において遺伝子発現を妨げるのに用いることが出来る。例えば、dsRNAを、所定の核酸分子(すなわちPCDGF遺伝子もしくはmRNA)の機能の阻害RNA又はRNAiとして用いて、本発明の核酸分子のヌル変異体のものと同様の表現型を製造することが出来る(Wianny & Zernicka-Goetz, 2000, Nature Cell Biology 2: 70-75)。
【0033】
siRNAを、例えば化学合成または生体外での転写によって作製する多くの方法が開発されている。siRNAを作製した後、細胞内に直接導入して、RNA干渉を仲介することができる(例えば、Elbashir et al., 2001, Nature 411: 494-498、Song, E, et al. RNA interference targeting Fas protects mice from fulminant hepatitis. Nat Med. 2003; 9: 347-351、Lewis, DL, et al. Efficient delivery of siRNA for inhibition of gene expression in postnatal mice. Nat. Genet. 2002; 32: 107-108参照)。別の方法としては、siRNAをリポソームに包んで、細胞内への送達を容易にすることが出来る(例えば、Sorensen, DR, et al. Gene silencing by systemic delivery of synthetic siRNAs in adult mice. J Mol Biol. 2003; 327: 761-766参照)。
【0034】
一時的に及び安定的にトランスフェクションした哺乳動物の細胞内でsiRNAを絶えず発現させる多くの発現ベクターが開発されている(例えば、Brummelkamp et al., 2002, Science 296: 550-553、Sui et al., 2002, PNAS 99(6): 5515-5520、Paul et al., 2002, Nature Biotechnol. 20: 505-508参照)。これらのベクターのいくつかは、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)を発現するように設計されており、該shRNAは遺伝子特異的なサイレンシングを達成することが可能なsiRNA様分子に生体内で加工される。特定の実施態様においては、shRNAは、プロモーター、好ましくはU6プロモーターの制御下にあるプラスミドを含む(例えば、Paul, CP, et al. Effectve expression of small interfering RNA in human cells. Nat. Biotechnol. 2002; 20: 505-508参照)。別のタイプのsiRNA発現ベクターは、別個のpol IIIプロモーターの制御下にあるセンス及びアンチセンスのsiRNA鎖をコードする(例えば、Miyagishi and Taira, 2002, Nature Biotechnol. 20: 497-500参照)。このベクター由来のsiRNA鎖は、他のベクターのshRNAと同様に、3’チミジン終止シグナルを有する。shRNA遺伝子を、適切なベクター系、例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)もしくはレトロウイルスを介して送達することができる(例えば、Xia, H, et al. siRNA-mediated gene silencing in vitro and in vivo. Nat Biotechnol. 2002; 20: 1006-1010、Barton, GM, et al. Retroviral delivery of small interfering RNA into primary cells. Proc. Natl. Acad. Sci. U S A 2002; 99: 14943-14945参照)。両方のタイプの発現ベクターによるサイレンシングの効果は、siRNAを一時的にトランスフェクションすることによって誘導されるものに匹敵する。
【0035】
RNAは重合したリボヌクレオチドの1本もしくは複数の鎖を含んでいてもよい。該RNAは、リン酸−糖骨格もしくはヌクレオシドへの修飾を含んでいてもよい。たとえば、天然RNAのホスホジエステル結合を、少なくとも1つの窒素又は硫黄のヘテロ原子を含むように修飾してもよい。RNA構造への修飾を調整して、dsRNAによって生じるいくつかの生物内での全体的なパニック反応(general panic response)を回避しながら、特異的な遺伝子阻害を可能にしてもよい。同様に、塩基を、アデノシン・デアミナーゼの活性を阻害するように修飾してもよい。RNAを、酵素的に、又は部分的にもしくは総て有機合成することによって製造してもよく、修飾されたリボヌクレオチドのいずれも、生体外での酵素的合成もしくは有機合成によって導入することが出来る。
【0036】
2本鎖構造を、単独の自己相補的なRNA鎖もしくは2本の相補的なRNA鎖によって形成してもよい。RNAの2本鎖の形成を細胞の内側もしくは外側のいずれかで開始してもよい。RNAを、細胞当たり少なくとも1コピーを送達することを可能にする量で導入してもよい。2本鎖の物質の用量がより多いと(例えば、細胞当たり少なくとも5、10、100、500もしくは1000コピー)、より効果的な阻害がもたらされ、また用量がより少ないと、特定の用途に有用である。阻害は、RNAの二本鎖領域に相当する核酸配列が遺伝子阻害を目的としているという点で配列特異的である。RNA分子の長さは、少なくとも10、12、15、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30個のヌクレオチドの長さであってもよい。
【0037】
標的遺伝子の一部分と同一の核酸配列を含むRNAが阻害にとって望ましい。標的配列に関連した挿入、欠失及び点変異を有するRNAの配列も、阻害に有効であることが見出されている。したがって、配列の同一性は、本技術分野において既知である配列比較及びアラインメントアルゴリズム(例えば、Gribskov and Deveeux, Sequence Analysis primer, Stockton Press, 1991及び該文献に引用されている参考文献参照)によって、及び核酸配列間の差異の百分率を、例えば初期状態のパラメーターを用いたBESTFITソフトウェアプログラムにおいて実行されているスミス−ウォーターマンアルゴリズムで計算すること(例えば、ウィスコンシン大学遺伝子コンピュータ解析グループ)によって最適化してもよい。阻害RNAと標的遺伝子の部分との間には、90%以上もしくは100%に近い配列の同一性があることが望ましい。他方で、RNAの2本鎖領域を、標的遺伝子の転写産物の一部とハイブリダイズできる(例えば、400mM NaCl, 40mM PIPES, pH 6.4, 1mM EDTA, 50℃又は70℃で12-16時間ハイブリダイズし、その後洗浄する)核酸配列として機能的に定義してもよい。同一である核酸配列の長さは任意の適切な長さでよく、少なくとも10、25、50、100、200、300又は400塩基であるのが好ましい。
【0038】
一実施態様において、siRNAは、それぞれ以下のような配列:203のヌクレオチドの位置から始まるヒトPCDGFヌクレオチドの領域(図1A)を標的とする5’-AGGTTGATGCCCACTGCTCTG-3’(配列番号5);PCDGFの223の位置から始まるヒトPCDGF配列を標的とする5’-GAGCAGUGGGCAUCAACCUGG-3’(配列番号6);342のヌクレオチドから始まるヒトPCDGF配列を標的とする5’-AGATCAGGTAACAACTCCGTG-3’(配列番号7);1569のヌクレオチドから始まるヒトPCDGF配列を標的とする5’-GGACACTTCTGCCATGATAAC-3’(配列番号8)を有する一本鎖オリゴヌクレオチドから生成される。
【0039】
本発明を実施するために、RNAと標的遺伝子との間に100%の配列同一性は必要とされない。従って、RNA干渉は、遺伝子の変異、系統の多型、又は進化上の多様性により予想される配列のバリエーションを許容することができるという利点を有する。
【0040】
RNAを生体内又は生体内のいずれかにおいて合成してもよい。細胞の内在性RNAポリメラーゼが生体内での転写を仲介してもよく、またはクローン化されたRNAポリメラーゼを生体外もしくは生体内での転写に用いることができる。生体内で導入遺伝子から転写するために、又は発現コンストラクトから転写するために、制御領域(例えばプロモーター、エンハンサー、サイレンサー、スプライスドナー、スプライスアクセプター、ポリアデニル化)を、1本もしくは複数のRNA鎖を転写するために使用してもよい。器官、組織、細胞の種類における特異的な転写、環境条件(例えば、インフェクション、ストレス、温度、化学的なインデューサー)の刺激、及び/又は発生段階もしくは年齢における工学的な転写による阻害を標的としてもよい。RNA鎖をポリアデニル化してもよいし、ポリアデニル化しなくてもよい。また、RNA鎖は細胞の翻訳装置によってポリペプチドに翻訳できてもよいし、翻訳できなくてもよい。RNAを、手動の又は自動化された反応によって化学的にもしくは酵素的に合成してもよい。RNAを、細胞のRNAポリメラーゼもしくはバクテリオファージのRNAポリメラーゼ(例えばT3、T7、SP6)によって合成してもよい。発現コンストラクトの使用及び製造は、本技術分野において既知である(国際公開第97/32016号、米国特許第5,593,874号、米国特許第5,698,425号、米国特許第5,712,135号、米国特許第5,789,214号、米国特許第5,804,693号およびそれら文献に引用されている参考文献を参照)。化学的に又は生体外での酵素合成によって合成した場合、RNAを細胞内に導入する前に精製してもよい。例えば、RNAを、溶媒もしくは樹脂による抽出、沈殿法、電気泳動、クロマトグラフィー、又はこれらを組み合わせることによって、混合物から精製することが出来る。他方で、RNAを、サンプルの処理による喪失を避けるために、全く精製をしないか、もしくは最小限精製して使用してもよい。RNAを、貯蔵のために乾燥してもよいし、水溶液に溶解してもよい。溶液は、2本鎖のアニーリング及び/又は安定化を促進するために、バッファー又は塩を含んでいてもよい。RNAを、直接細胞に(すなわち細胞内に)導入するか、または空洞、組織内の間隙に、対象の循環内に細胞外に導入す
るか、又は経口で導入するか、又はRNAを含有する溶液内に細胞又は組織を浸すことによって導入してもよい。核酸を導入する物理的な方法、例えば細胞に直接注入する方法、もしくは対象に細胞外に注入する方法も用いてもよい。血管もしくは血管外の循環、血液系もしくはリンパ系、及び脳脊髄液がRNAを導入してもよい部位である。
【0041】
核酸を導入する物理的な方法には、RNAを含有する溶液の注入、RNAで覆われた粒子を用いたボンバードメント、RNAの溶液内に細胞もしくは組織を浸すこと、又はRNAの存在下での細胞膜のエレクトロポレーションがある。ウイルス粒子内にパッケージされるウイルスのコンストラクトによって、細胞への発現コンストラクトの効率的な導入と発現コンストラクトによってコードされているRNAの転写の両方が達成される。脂質を介した担体輸送、リン酸カルシウムなどの化学物質を介した輸送などの、本技術分野において既知である、細胞に核酸を導入する他の方法を用いてもよい。このようにして、RNAを、1種又は複数の以下の活動を行う成分と共に導入してもよく、該活動としては、細胞によるRNAの取り込みを増大させること、二本鎖のアニーリングを促進すること、アニーリングした鎖を安定化させること、または標的遺伝子の阻害を増大させることがある。
【0042】
(低分子)
PCDGFをアンタゴナイズする物質には、PCDGFの発現もしくはその生物活性を阻害するか、又はPCDGFの結合、シグナリングもしくは生物活性と競合する低分子(例えば、試薬、転写因子、他の因子もしくはホルモン)が含まれていてもよい。抗体、ペプチド、又はアンチセンスオリゴヌクレオチドのような他のPCDGFアンタゴニストと比較して、低分子はPCDGFアンタゴニストとして独特な利点を有している可能性がある。低分子であるPCDGFアンタゴニストは免疫原性がより少なく、より安定であり、より容易に細胞膜を通過し、経口投与に関してより容易で、合成及び修飾に関してより容易であり、その結果、費用対効果に優れている可能性がある。好ましい実施態様において、本発明は、(1)PCDGFの翻訳後修飾とその分泌を阻害する低分子、(2)PCDGFの細胞表面受容体への結合においてPCDGFと競合することによってPCDGFの活性をブロックする低分子、(3)PCDGFのシグナル伝達経路(例えばPCDGFが細胞表面上のその受容体に結合することによって誘導される生化学的相互作用)を阻害する低分子、又は(4)PCDGF受容体を妨げるか、もしくは阻害する低分子を提供する。低分子を、PCDGF上の特定の活性部位、PCDGFの細胞表面受容体、もしくはその他の分子と結合させるか、又は結び付かせる目的で合成してもよい。低分子を自然源から得ることができ、PCDGF、PCDGF細胞表面受容体、又はその他の分子と結合するか、かつ/又はそれらを阻害するように修飾できる。
【0043】
(医薬組成物及びキット)
本発明はまた、1種又は複数のHER2アンタゴニストと1種又は複数のPCDGFアンタゴニストとを含む医薬組成物を提供する。HER2アンタゴニスト及びPCDGFアンタゴニストの両方を与えられた患者は、PCDGFアンタゴニストがHER治療に対する耐性を有する患者のHER2アンタゴニストの感受性を活性化させるか、又は回復させることができるという点で、各アンタゴニストの抗腫瘍効果により恩恵を受ける。特定の実施態様において、HER2アンタゴニストはハーセプチン(登録商標)である。別の特定の実施態様においては、PCDGFアンタゴニストは抗体又はその抗原結合フラグメントである。また別の特定の実施態様においては、PCDGFアンタゴニストは核酸分子、低分子もしくはポリペプチドである。本発明の医薬組成物は、腫瘍細胞の成長を阻害するのみならず、対象における腫瘍の再発を防ぐという有用性を有し、当該対象に投与してもよい。
【0044】
様々な送達システムが既知であり、該送達システムを使用して、本発明の医薬組成物を投与することができ、該送達システムとしては、例えばリポソームでのカプセル化、微粒子、マイクロカプセル、変異体ウイルスを発現することが可能な組み換え細胞、受容体を介したエンドサイトーシスがある(例えば、Wu and Wu, 1987 J Biol. Chem., 262: 4429 4432参照)。導入の方法には、特に制限されないが、皮内、筋中、腹膜内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外及び経口の経路がある。化合物を、いかなる好都合な経路によって、例えば、輸液もしくは静脈内ボーラスによって、上皮もしくは粘膜皮膚の膜(lining)(例えば、口腔粘膜、直腸および腸の粘膜など)を介した吸収によって投与してもよく、その他の生物活性物質とともに投与してもよい。全身投与もしくは局所投与が可能である。好ましい実施態様においては、患部組織へ任意の適切な経路によって本発明の医薬組成物を導入することが望ましい。肺への投与も、例えば、吸入器又はネブライザーとエアロゾル化剤による製剤とを用いることによって、使用することができる。
【0045】
特定の実施態様においては、本発明の医薬組成物を、治療が必要な部分へ局所的に投与することが望ましく、これは、例えば、特に制限されないが、例えば外科手術後の創傷被覆材と併用した手術中の局所注入、局所使用によって、注射によって、カテーテルを使用して、座薬を使用して、又はシラスティック(sialastic)膜などの膜もしくは繊維を含めた多孔性、非多孔性又はゲル状の材料からなるインプラントを使用することによって達成可能である。一実施態様では、病変組織もしくは以前病変組織だった部分に直接注射することによって投与することができる。
【0046】
別の実施態様において、医薬組成物を、小胞、特にリポソームの状態で送達することが出来る(例えば、Langer,1990 Science 249: 1527-1533、Treat et al., in Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer, Lopez Berestein and Fidler(eds.), Liss, New York, pp. 353-365 (1989)、Lopez-Beresteinの同書のpp. 317-327;同書の全体を参照)。
【0047】
さらに別の実施態様では、医薬組成物を徐放システムで送達することができる。一実施態様においては、ポンプを使用してもよい(上記のLanger著のもの、Sefton, 1987 CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14: 201、Buchwald et al., 1980 Surgery 88:507およびSaudek et al., 1989 N Engl. J.Med. 321:574参照)。別の実施態様では、高分子材料を使用できる(Medical Applications of Controlled Release, Langer and Wise(eds.), CRC Pres., Boca Raton, Florida(1974)、Controllrd Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance, Smolen and Ball(eds.), Wiley, New York(1984)、Ranger and Peppas, 1983 J. Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23: 61; Levy et al., 1985 Science 228:190、During et al., 1989 Ann. Neurol.25:351; Howard et al., 1989, J.Neurosurg. 71:105参照)。また別の実施態様においては、徐放システムを組成物の標的、すなわち胸部組織の近傍に設置することができ、それによって、全身への用量の一部しか必要とされない(Goodson, in Medical Applications of Controlled release,上記, vol. 2, pp. 115-138 (1984)参照)。その他の徐放システムについては、Langerの総説に記載されている(1990, Science 249:1527-1533)。
【0048】
本発明の医薬組成物は、医薬上許容される担体を更に含む。特定の実施態様では、「医薬上許容される」という用語は、連邦政府もしくは州政府の規制当局によって承認されているか、又は動物及び特にヒトへの使用のために米国薬局方もしくは他の一般に認められている薬局方のリストに記載されていることを意味する。「担体」という用語は、希釈剤、アジュバント、賦形剤、又は医薬組成物が共に投与される媒体を指す。そのような医薬の担体は、水、並びにピーナッツ油、大豆油、ミネラルオイル、ごま油及びこれに類するものなどの石油、動物、植物又は合成由来のものを含めた油といった液体を殺菌したものであってもよい。水は、医薬組成物を静脈内投与する場合に好ましい担体である。食塩水、デキストロース水溶液、グリセロール溶液も液体担体、特に注入可能な溶液として用いることが出来る。適した医薬の賦形剤には、スターチ、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアリン酸塩、滑石、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール及びそれに類するものが含まれる。必要があれば、組成物は、湿潤剤、乳化剤、もしくはpH緩衝剤を少量含むことができる。これらの組成物は溶液、懸濁液、エマルジョン、錠剤、丸薬、カプセル、粉末、徐放性製剤、及びそれらに類するものの形をとることが出来る。組成物を、トリグリセリドなどの従来の結合剤及び担体を用いて、座薬として製剤することが出来る。経口製剤には、製薬等級のマンニトール、ラクトース、スターチ、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準の担体が含まれる。適切な医薬担体の例が、E. W. Martinの「Remington's Pharmaceutical Sciences」に記載されている。製剤は投与の様式に適合させるべきである。
【0049】
好ましい実施態様において、組成物を、ヒトへの静脈内投与に適合させた医薬組成物として通常の手法に従って製剤する。静脈内投与用の組成物は、主として殺菌した等張の緩衝水溶液の状態の溶液である。必要であれば、組成物は、可溶化剤及び注入部位の痛みを緩和するリグノカインなどの局部麻酔薬を含んでもよい。一般的に、成分を、例えば、活性物質の量を示すアンプル又は薬包などの密閉容器内に入れた乾燥した凍結乾燥粉末又は無水の濃縮物として剤型単位で別々に供給するか、又は共に混合する。組成物を輸液によって投与する場合、殺菌した製薬等級の水又は食塩水が入った輸液用の瓶で投与することができる。組成物を注射によって投与する場合、投与前に成分を混合してもよいように、注射用の滅菌水又は食塩水のアンプルを用意することができる。
【0050】
本発明の医薬組成物を、中性もしくは塩の形態として製剤することができる。医薬上許容される塩には、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などから得られるものといった遊離のアミノ基によって形成される塩、及びナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第2鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどから得られるものといった遊離のカルボキシル基によって形成される塩がある。
【0051】
特定の疾患又は状態の治療において有効である本発明の医薬組成物の量は、その疾患又は状態の性質次第であり、標準的な臨床法によって決定できる。それに加えて、生体外での検定を、最適な投与量の範囲を特定するのに役立つように任意選択的に用いることができる。製剤に使用する正確な用量は、投与の経路、及び病気又は疾患の重大性によっても左右され、実行者の判断及び個々の患者の状況に従って決定されるべきである。しかしながら、静脈内投与に適した投与量の範囲は、一般的に体重1kg当たり活性な化合物約20−500μgである。鼻腔内投与に適した投与量の範囲は一般的に体重1キログラム当たり約0.01−1mgである。有効な用量を、生体外での又は動物モデルの実験の系から得られた用量反応曲線から推定してもよい。座薬は、一般的に活性成分を0.5−10重量%含み、経口製剤は好ましくは10−95%の活性成分を含む。
【0052】
本発明は、本発明の医薬組成物の1種又は複数種類の成分を充填した1種又は複数種類の容器を含む医薬のパックもしくはキットも提供する。医薬品もしくは生物学製品の製造、使用又は販売を規制する政府機関によって定められる文書による通知がそのような容器と任意選択的に関連しており、該通知はヒトへの投与を目的とした製造、使用又は販売の政府機関による承認を示す。好ましい実施態様では、キットにはHER2アンタゴニスト又はその医薬上許容される塩と、PCDGFアンタゴニスト又はその医薬上許容される塩と共に、医薬上許容される担体が含まれている。特定の実施態様において、HER2アンタゴニストはハーセプチン(登録商標)である。別の特定の実施態様において、PCDGFアンタゴニストは抗体、核酸分子、低分子、もしくはポリペプチドである。好ましい実施態様において、本発明の医薬のキットは、剤型単位で本発明の医薬組成物の1種又は複数種の成分を含む。本発明の医薬キットは、更にアジュバント、抗ウイルス薬、抗生剤、鎮痛薬、抗炎症剤、もしくは他の医薬上許容される賦形剤を含んでもよい。
【0053】
(治療法)
本発明の好ましい実施態様は、PCDGFアンタゴニストをヒト患者にHER2アンタゴニストへの患者の成長阻害感受性を活性化させるか、又は回復させるのに有効な量で投与することによって、HER2アンタゴニストの抗腫瘍効果に対し抵抗性を有する腫瘍細胞の成長阻害感受性を活性化させるか、又は回復させる方法を対象とする。別の実施態様では、本発明は、PCDGFアンタゴニストとHER2アンタゴニストを腫瘍細胞の成長を阻害するのに有効な量で患者に投与することによって、腫瘍細胞の増殖を阻害する方法を提供する。また別の実施態様においては、本発明は、腫瘍成長の再発を予防するか、もしくは遅らせるのに有効な量でPCDGFアンタゴニストとHER2アンタゴニストとを患者に投与することによって、腫瘍成長の再発を防ぐ方法を提供する。PCDGFアンタゴニストは、特に制限されないが、神経芽細胞腫、グリア芽腫、星状細胞腫、肉腫、並びに前立腺、血液、肝臓、腎臓、乳房、頭頸部、咽頭、甲状腺、すい臓、胃、大腸、結腸直腸、子宮、子宮頸部、骨、骨髄、精巣、脳、神経組織、卵巣、皮膚、肺のがんを含めた、いずれの腫瘍もしくはがんのタイプの腫瘍形成及び成長を抑制することができる。
【0054】
さらに別の実施態様においては、対象の細胞(例えば腫瘍細胞)を体から除去し、該細胞にHER2アンタゴニスト及びPCDGFアンタゴニストをコードするポリヌクレオチドをトランスフェクションし、該細胞を腫瘍のある場所に注入する。HER2アンタゴニスト及びPCDGFアンタゴニストをコードするポリヌクレオチドの発現によって、腫瘍の場所にHER2アンタゴニスト及びPCDGFアンタゴニストを局在させる。対象の細胞(例えば腫瘍細胞)に、HER2アンタゴニスト及び/又はPCDGFアンタゴニストをコードする核酸を含むコンストラクトを体内で(例えば生体内原位置で)直接トランスフェクションすることもできる。核酸の発現によって、トランスフェクションした細胞内でHER2アンタゴニスト及び/又はPCDGFアンタゴニストが生産される。
【0055】
生体内で適用するために、PCDGFアンタゴニスト及びHER2アンタゴニストを対象に様々な投与経路及び剤型(上記の「医薬組成物及びキット」参照)によって提供することができる。対象、望ましくは、特に限定されないが、乳がんもしくはその他のHER2及び/又はPCDGFの発現量増加と関連した疾患を含めたがん状態に置かれたヒトの対象を、連続的にもしくは同時にHER2アンタゴニストとPCDGFアンタゴニストにより治療する。一実施態様では、HER2アンタゴニストとPCDGFアンタゴニストを同時に投与する。特定の実施態様では、HER2アンタゴニストとPCDGFアンタゴニストを共に投与する。別の特定の実施態様では、HER2アンタゴニストとPCDGFアンタゴニストを順次に投与し、望ましくはPCDGFのレベルを確認し、上昇している場合には最初にPCDGFアンタゴニストを投与する。
【0056】
PCDGFアンタゴニストによる治療は、HER2アンタゴニストによる治療の前に、もしくはそれに続いて、もしくは共に行うことができる。PCDGFアンタゴニストによる治療を、分から週までの範囲内の間隔で、HER2アンタゴニストによる治療の前に、又は後に行ってもよい。別の実施態様においては、HER2アンタゴニストとPCDGFアンタゴニストを、それぞれの作用物質の投与の時間の間に、長期間が経過しないようにする形で投与する。例えばそれぞれのアンタゴニストを患者に、もう一方のアンタゴニストの投与後数秒以内、数分以内、もしくは数時間以内に投与することができる。
【0057】
好ましい実施態様において、PCDGFアンタゴニストによる治療によって、c-erbB2のリン酸化を少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、もしくはそれ以上、好ましくは少なくとも50%減少させる。さらに好ましい実施態様においては、PCDGFアンタゴニストによる治療によって、細胞のHER2アンタゴニストの感受性を、少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも3倍上昇させる。
【0058】
本発明の別の実施態様においては、HER2アンタゴニストをPCDGFアンタゴニスト及び/又は化学療法(例えば、パクリタキセル、シスプラチン(CDDP)、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロレタミン、シクロホスファミド、カンプトセシン、イフォスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ブサルファン、ニトロスリア、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリコマイシン、マイトマイシン、エトプシド(VP16),タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマダーセ阻害剤(例えばアリミデックス(登録商標)又はアナストロゾール、フェマーラ(登録商標)、レトロゾール)、エストロゲン反応抑制剤(例えばファスロデックス(登録商標))、エストロゲン受容体結合物質、タキソール、ゲムシタビエン、ナベルビン、ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、トランスプラチナム、5−フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン及びメトトレキサート又は前述の物質のいずれの類似体もしくは誘導体もしくは変種)と組み合わせて、転移性の乳がんもしくは様々な組織のがん(例えば、神経芽細胞腫、グリア芽腫、星状細胞腫、肉腫、並びに前立腺、血液、肝臓、腎臓、乳房、頭頸部、咽頭、甲状腺、膵臓、胃、大腸、結腸直腸、子宮、子宮頸部、骨、骨髄、精巣、脳、神経組織、卵巣、皮膚、肺のがん)の治療に用いることができる。組み合わせた治療法は、診断の評価と関係なく行うことができる。
【0059】
本発明の好ましい形態では、乳がん患者(例えば、転移性の乳がんを有し、HER2を過剰発現している)に、例えばハーセプチンによるHER2アンタゴニスト治療を与える。患者においては、ある程度の腫瘍成長阻害が示され、その進行が減少しているが、HER2アンタゴニストによる治療に対して耐性になる。生検又は血清の標本抽出を行い、それによって患者のPCDGFのレベルが上昇していることが明らかになる。別の実施態様では、患者のPCDGFのレベルをHER2アンタゴニストによる治療の開始に先立って決定する。次に、患者を、PCDGFアンタゴニストのみ用いて、もしくはPCDGFアンタゴニストとHER2アンタゴニストとを同時に投与することによって治療して、HER2アンタゴニストによる治療に対する感受性を活性化させるか、又は回復させる。PCDGFアンタゴニストによる治療後、患者は再びHER2アンタゴニストによる治療に反応するようになる。患者のPCDGFのレベルをHER2治療の間中、定期的に、例えば週単位又は月単位で監視し、もし必要であれば、HER2に対する感受性を再び活性化させるか、又は回復させるためにPCDGFアンタゴニストを与える。別の方法として、患者はPCDGFアンタゴニストとHER2アンタゴニストの同時投与を受け続けることができる。
【0060】
以下で示されている有効な用量の範囲は、本発明を限定する意図のものではなく、単に用量の範囲を例示するに過ぎない。しかしながら、もっとも好ましい用量は、個々の対象に合わせて調整され、当業者によって理解され、決定可能である。それぞれの治療に必要な総用量を、複数回投与によって又は単回投与で投与してもよい。一実施態様において、HER2抗体とPCDGF抗体のそれぞれの有効な量は約0.01ng/ml〜約500μg/mlであり、好ましくは約10ng/mlから約100μg/mlである。別の実施態様では、抗体の有効な量が通常体重1kgあたり約0.01μg〜約100mgであり、好ましいのは体重1kgあたり約10μgから約50mgである。
【0061】
また別の実施態様では、HER2アンタゴニストとPCDGFアンタゴニストを別々に投与してもよく、一緒に、それぞれのみで、又は別の治療薬と一緒に投与してもよい。別の実施態様では、投与される各アンタゴニストの量は、PCDGFアンタゴニストとHER2アンタゴニストを患者に治療上有効な量(すなわち、患者の腫瘍の重量を削減するか、かつ/もしくは減少させる量、又はいずれのHER2アンタゴニストの抗腫瘍効果に対する感受性を回復させる量)、あるいは予防に有効な量(すなわち、腫瘍増殖の再発を防ぐか、もしくは遅らせる量)で投与する限り、体重1kgあたり通常約0.1〜10mg/kgの範囲内である。
【0062】
好ましい治療投薬計画には、約一週間から六ヶ月の間を含めて、一週間から数週間に渡って、有効な量のHER2アンタゴニストとPCDGFアンタゴニストを同時投与することが含まれる。別の実施態様においては、HER2アンタゴニストを、週毎に、静脈内投与で(i.v.)最初の用量は4mg/kg、その後は2mg/kgで、又は週毎に、最初の用量は8mg/kg、その後は4mg/kg i.v.で、与えることができる。PCDGFアンタゴニストによる治療は、例えば、週毎に、静脈内投与で(i.v.)最初の用量は4mg/kg、その後は2mg/kgで、又は週毎に、最初の用量は8mg/kg、その後は4mg/kg i.v.で、行うことができる。HER2アンタゴニスト、PCDGFアンタゴニスト及び/又は化学療法薬による治療に用いることができるがん治療のための投薬計画の更なる例が、以下の論文:Hamid, O., J Am Pharm Assoc, 2004 Jan-Feb44(1):52-8、Kubo et al., Anticancer Res.2003 Nov-Dec23(6a):4443-9、Slamon et al., N Engl J Med. 2001 344:783-792、Baselga et al., Cancer Res 1998;58:2825-2831、Jones, et al., Ann Oncol. 2003 Dec;14(12):1697-704に記載されている。
【0063】
本発明のプロトコールと組成物は、ヒトへの使用に先立って、まず生体外で、それから生体内で望ましい治療上又は予防上の活性について試験することが好ましい。
【0064】
例えば、特定の治療のプロトコールの実施が示されているかどうかを決定するために用いることができる生体外での検定には、患者の組織サンプルを培養液で培養し、プロトコールを施すか、またはその他の方法でプロトコールを実施し、当該プロトコールの組織サンプルへの影響を観察する生体外での細胞培養による検定が含まれる。抗PCDGF抗体及び抗PCDGF受容体抗体(まとめて「PCDGFアンタゴニスト抗体」)を、生体外及び生体内の両方で細胞に与えることができる。生体外での適用において、PCDGFアンタゴニスト抗体を、通常は細胞の培地のml当たり0.01ng〜約100mgの範囲の濃度で、好ましくは細胞の培地のml当たり約10ng〜約50mgの範囲の濃度で、細胞の培地に加えることができる。抗体を、単独でもしくは同様の疾患を対象とする他の薬剤と共に投与してもよい。
【0065】
細胞には、PCDGFアンタゴニストの抗体もしくはその抗原結合フラグメントをコードするDNAもしくはRNA、又はそのようなDNAもしくはRNAの配列を含むベクターをトランスフェクションすることもできる。トランスフェクションした細胞を誘導して、PCDGFアンタゴニスト抗体又は抗体フラグメントをいずれの適した手法(例えば誘導プロモーター及び複数のプラスミドのコピー)によっても製造することができる。
【0066】
一実施態様においては、腫瘍細胞の成長が減少すること、もしくは密着している細胞の生存率が上昇することは、治療薬が患者の状態を治療するのに有効であることを示している。他方、治療薬及び方法を、MCF-7細胞(タモキシフェン耐性ヒト乳がん細胞)及びO4細胞(PCDGFを過剰発現しているタモキシフェン耐性MCF-7細胞)などの樹立されている細胞株を用いてスクリーニングしてもよい。治療に使用される化合物を、ヒトで検定される前に、特に制限されないが、ラット、マウス、ニワトリ、ウシ、サル、ウサギ、ハムスターなどを含めた適切な動物モデル系において検定することができる。広く用いられている主な動物モデルは本技術分野において既知である。
【実施例】
【0067】
(PCDGFはHER2アンタゴニスト治療の抗腫瘍効果に対する耐性を与える)
(方法と材料)
(安定した形質移入体の準備)
c-erbB2過剰発現細胞のHER2アンタゴニスト耐性におけるPCDGFの役割を調べるために、MCF-7乳がん細胞にpcDNA3/erbB2発現ベクターをリン酸カルシウム法で安定的にトランスフェクションした(図2を参照)。c-erbB2を過剰発現しているクローン(erbB2.c1)を選別し、その後、該細胞を用いてpSecTag/PCDGF発現ベクターを安定的にトランスフェクションした。c-erbB2とPCDGFの両方を過剰発現しているクローンの中からD.c2クローンを選別し、さらに、erbB2のみを過剰発現している細胞と比較して、試験した(図5,6,7参照)。クローンをゼオシン及び/又はG418の存在下で樹立した。
【0068】
(細胞増殖検定)
細胞を8X10細胞/ウェルで、5%FBSを含むDMEF/F12にまいた。24時間インキュベートした後、細胞を洗浄し、様々な処理と共に新しいPFMEMを添加した。最初の24時間のインキュベーションの後3日ごとに、血球計算板を用いて細胞の数を数えた(図11,12参照)。図11,12に示すように、PCDGFを過剰発現すると、HER2/neuを過剰発現している細胞にHER2/neuアンタゴニストに対する耐性がもたらされる。
【0069】
(チミジン取り込み検定)
細胞を、細胞/ウェルで、24ウェルプレート内の5%ウシ胎仔血清(FBS)を含むDMEF/F12にまき、48時間インキュベートした。その後、細胞を洗浄し、新しいPEMEM(1%のチャコール処理した血清を有するもの又は該血清を有さないもの)を様々な処理と共に添加した。48時間後、1μCiの3H-チミジンを各ウェルに添加し、細胞を24時間インキュベートした。細胞の溶解物を用意し、3H-チミジンのレベルを液体シンチレーションカウンターによって測定した(図11参照)。図11に示すように、PCDGFを過剰発現すると、HER2/neuを過剰発現している細胞にHER2/neuアンタゴニストに対する耐性がもたらされる。
【0070】
(erbB2の活性化)
二十万(2X10)個の細胞を5%FBSを含むDMEF/F12にまき、48時間インキュベートした。細胞を洗浄し、新鮮なPFMEM(フェノールレッド不含のMEM)を添加し、さらに24時間培養した。、その後、様々な化合物を最大15分間細胞に添加した。細胞の溶解物をRIPAバッファーを用いて調製した。溶解物をSDS-PAGEを用いて分離し、PVDF膜に転写した。転写後、膜をブロッキングし、まず抗リン酸化erbB2抗体とインキュベートし、次に標識した2次抗体で標識した。陽性のバンドを増感化学発光染色(ECL)によって検出した(図6、7、8参照)。ヘレグリンを正のコントロールとして用いた。これらの結果は、PCDGFが、erbB2を過剰発現している細胞においてerbB2のリン酸化を促進していることを示しており、またPCDGFとerbB2が共通の単一のシグナル伝達経路を持つことを示唆している。
【0071】
(PCDGFのRT-PCR)
erbB2の安定した形質移入体におけるPCDGFの発現を逆転写(RT)-PCRによって測定した。簡潔にいうと、2X10個の細胞を適切な培地を入れた35mmディシュにまいた。48時間後、製造者のプロトコールに従ってTrizol(登録商標)(Invitrogen)を用いて全RNAを抽出した。逆転写にはSuperscript(登録商標) II(Invitrogen)を用いた。PCRを、[94℃、1分;62℃、45秒;72℃、2分]のサイクルを25サイクル行い、この後、最後の伸張を72℃で7分実施することによって行った。サンプルを、1%のアガロースゲル電気泳動にて分析した。
【0072】
(ウエスタンブロットによる分析)
一実施態様において、1mlあたり10万個(1X10)の細胞を適切な培地にまいた。48時間後、細胞を洗浄し、新鮮なPFMEMを加えた。24時間後、新鮮なPFMEMを指示される処理と共に加えた。細胞の溶解物を、細胞溶解緩衝液(50mM Tris, pH7.4; 4mM EDTA; 25mM KCl; 1mM NA3VO4; 10mM NaF; 1% Triton 100; 10μg/ml ロイペプチン; 10μg/ml ペプスタチン; 2μg/ml アプロチニン) を用いて回収した。全タンパク溶解物の40μgをPAGEのゲルにロードし、PVDF膜に転写した。免疫沈降のために、細胞溶解物に2μgの抗PCDGF抗体を加え、4℃で一晩インキュベートした。40μlのプロテインAセファロースを加え、4℃で4時間インキュベートした。セファロースビーズを冷PBSによって洗浄し、タンパク質用のサンプルバッファーを加えた。膜はPBS-T(+5%のミルク)を用いて室温で2時間ブロッキングした。膜を、1次抗体と4℃で一晩インキュベーションした。PBS-Tにより3回(5分間ずつ)洗浄後、膜を、対応する2次抗体と室温で2時間インキュベートした。膜を3回(15分ずつ)洗浄した。タンパク質を増感化学蛍光(EC)を用いて検出した。
【0073】
(ソフトアガーによる検定)
0.33%のアガロース中の1万個(1X10)の細胞をDMEM/F12(概して5%の血清を添加;SKBR3細胞に対しては10%の血清を用いた)の0.6%のアガロース上に重層した。コロニーを21日間培養し、次に0.005%のクリスタルバイオレットで染色した。コロニーを顕微鏡を用いて計数した。図12に示すように、PCDGFの過剰発現によって、erbB2を過剰発現している細胞にHER2/neuアンタゴニストに対する耐性がもたらされる。
【0074】
(結果)
添付した図面に示すように、二重過剰発現クローン(D.c2)(すなわち、PCDGFとerbB2の両方を過剰発現しているクローン)は、それらの生体外での増殖能力に関してHER2アンタゴニストに対して耐性を有していたが(図10,12)、erbB2.c1細胞はハーセプチン(登録商標)処理に対して感受性であった(図9)。これらのハーセプチン(登録商標)感受性のerbB2.c1細胞も、PCDGFで処理した時には成長の優位性を有していた(図6、7)。二重発現するD.c2細胞がerbB2.c1細胞よりもアンチエストロゲンICI 182,780に対しより強い抵抗性を有していることも示された(データは示していない)。我々の知見によって、PCDGFがc-erbB2を過剰発現する腫瘍にハーセプチン(登録商標)に対する抵抗性を与えることが明らかにされた。したがって、PCDGFの働きを妨害することは、HER2アンタゴニスト治療を受けている患者にとって有益である。
【0075】
(均等物)
当業者であれば、通常の試験を用いるだけで、本明細書に記載された本発明の特定の実施態様に均等なものの多くを理解し、解明することができる。そのような均等物は、特許請求の範囲に含まれる。本明細書における参考文献の引用又は記載は、そのような参考文献が本発明に対する先行技術であると認めたものとして解釈すべきでない。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1A】図1AはヒトPCDGFの核酸配列(配列番号1)を示す図である。
【図1B】図1Bは、ヒトPCDGFの推測されるアミノ酸配列(配列番号2)を示す図である
【図2】図2は、erbB2とヒトPCDGFの両方を発現するMCF-7細胞の安定した形質移入体(D.c2)の製造を示す概略図であり、コントロールとして細胞にpcDNA3ベクターのみをトランスフェクションしたものを同様に準備した。
【図3】図3A及び3Bは、ヒトPCDGFのE19Vと定義した19個のアミノ酸領域とA14Rと定義した14個のアミノ酸領域をそれぞれ示す図である。
【図4】図4は、パラフィン包理したヒト乳がん生検の病理研究について要約した図である。PCDGFとerbB2の染色を免疫染色によって観察した。erbB2も過剰発現している細胞においてPCDGFが過剰発現すると、細胞にHER-2アンタゴニストに対する耐性がもたらされる。最初の列(下へ)と最初の行(横へ)はErbB2とPCDGFのそれぞれの染色の強度を、3を強度の最も高いレベルとする0から3の段階で示す。列2にはそれぞれのグループにおいて試験されたケースの数が示されている。行3−4はErbB2とPCDGFにおけるそれぞれの染色レベルにおけるケースの分布を示している。例えば、ErbB2染色についてレベル2の強度を示す6ケースのうち、2ケースが0のPCDGF染色強度を有し、3ケースが、1のPCDGF染色強度を有し、1ケースが、2のPCDGF染色強度を有し、3のPCDGF染色強度を有するものはなかった。erbB2を過剰発現している腫瘍を有する25%の患者には、HER-2アンタゴニストによる治療に感受性があることが知られている。
【図5】図5は、erbB2とPCDGFの両方を過剰発現しているD.c2細胞のならし培地中のPCDGFのバンドを抗PCDGF抗体を用いて検出するウエスタンブロット分析の結果を示す図である。PCDGFのバンドを、ならし培地の免疫沈降(IP)とイムノブロット(IM)の両方によって検出した。ネガティブコントロール(すなわち、erbB2のみ発現するerbB2.c1クローン)においてバンドは検出されなかった。
【図6】図6は、違う量のPCDGF(レーン2:200ng/ml、レーン3:75ng/ml、レーン4:0ng 対照)で7分間刺激したerbB2.c1細胞内のerbB2のリン酸化を示すウエスタンブロット分析の結果を示す図である。リン酸化されたerbB2を抗リン酸化erbB2抗体によって検出した。ポジティブコントロール(レーン1)として、細胞を10ngのヘレグリンと共にインキュベートした。
【図7】図7は、erbB2を過剰発現していることが知られている他の乳がん細胞、BT474(当図に示した)とSKBR3(図13参照)においてPCDGFがerbB2のリン酸化を活性化させることを示すウエスタンブロット分析の結果を示す図である。PCDGFを、200ng/mlで添加し、ヘレグリンを10ng/mlで加えた。
【図8】図8は、BT474細胞におけるerbB2のPCDGFによる刺激の用量反応を示す図である。PCDGFを、300ng/ml、200ng/ml、75ng/ml、0ng/ml(対照)で細胞に添加し、7分間インキュベートし、リン酸化されたerbB2(P-erbB2)を、抗リン酸化erbB2抗体を用いるウエスタンブロットにより検出した。10ngのヘレグリンβ1をポジティブコントロールとして用いた。
【図9】図9は、単独で又は組み合わせて使用したハーセプチン(登録商標)、PCDGF、ヘレグリンに対してのerbB2.c1細胞の長期間に及ぶ成長曲線を示す図である。ハーセプチン(登録商標)によってerbB2を過剰発現している細胞の増殖が阻害される。ヘレグリン、PCDGFによって、細胞がHER2/neuアンタゴニストへの感受性を喪失する。
【図10】図10は、ハーセプチン及び0.5%のCSSを用いた場合、又は用いなかった場合のPCDGFとerbB2を過剰発現している細胞の成長曲線を示す図である。erbB2を過剰発現している細胞においてPCDGFが過剰発現している場合(例えばD.c2細胞)、HER2/neuアンタゴニストはもはや乳がん細胞の増殖を阻害しない。
【図11】図11は、erbB2を過剰発現している細胞においてPCDGFが過剰発現すると、HER2/neuアンタゴニストの抗増殖活性に対する耐性がもたらされることを示す図である。細胞増殖の指標であるチミジンの取り込みによって示されているように、HER2/neuアンタゴニストはerbB2とPCDGFの両方を発現している乳がん細胞の増殖はもはや阻害しない。
【図12】図12は、erbB2過剰発現細胞におけるソフトアガー(腫瘍形成)アッセイにおいて乳がん細胞のHER2/neuアンタゴニストによる阻害がPCDGFの過剰発現によって妨げられることも示すソフトアガーの検定の結果を示す図である。これらの結果は、PCDGFの過剰発現によって、erbB2過剰発現細胞にHER2/neuアンタゴニストの耐性がもたらされることを示す。Ev.c1は、pcDNA3のみをトランスフェクションしたMCF-7細胞である。HR.c1細胞は、ハーセプチン(登録商標)耐性細胞である。
【図13】図13は、PCDGFを過剰発現しているSKBR3細胞でのHER2/neuアンタゴニストの耐性を示す図である。SKBR3細胞は生来HER2を過剰発現している乳がん細胞である。SKBR3細胞に、pcDNA3の空ベクター(EV)もしくはpcDNA3でのPCDGFの発現ベクター(P.c6)のいずれかをトランスフェクションした。後者の場合PCDGFの過剰発現によって、細胞にHER2/neuアンタゴニストへの抵抗性がもたらされた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HER2アンタゴニストによる成長阻害に対し耐性を有する細胞の成長阻害への感受性を活性化させるか、又は回復させる方法であって、PCDGFアンタゴニストを、該細胞の成長阻害への感受性を活性化させるか、又は回復させるのに有効な量で該細胞に投与することを含む、該方法。
【請求項2】
前記細胞はHER2を過剰発現する請求項1記載の方法。
【請求項3】
HER2のアンタゴニストは抗HER2抗体、ヘレグリン、及びHER2キナーゼ阻害剤からなる群より選択される請求項1記載の方法。
【請求項4】
PCDGFアンタゴニストは抗体もしくは該抗体の抗原結合フラグメントである請求項1記載の方法。
【請求項5】
抗体はPCDGF中和抗体である請求項4記載の方法。
【請求項6】
抗体は、配列番号3のアミノ酸配列でコードされているタンパク質もしくはその断片又は配列番号4のアミノ酸配列でコードされているタンパク質もしくはその断片に免疫特異的に結合する請求項5記載の方法。
【請求項7】
抗体は、
6B3ハイブリドーマ細胞株(ATCC受託番号PTA-5262)、
6B2ハイブリドーマ細胞株(ATCC受託番号PTA-5261)、
6C12 ハイブリドーマ細胞株(ATCC受託番号PTA-5597)、
5B4ハイブリドーマ細胞株(ATCC受託番号PTA-5260)、
5G6ハイブリドーマ細胞株(ATCC 受託番号PTA-5595)、
4D1ハイブリドーマ細胞株(ATCC受託番号PTA-5593)、
3F8ハイブリドーマ細胞株(ATCC受託番号PTA-5591)、
3F5ハイブリドーマ細胞株(ATCC受託番号 PTA-5259)、
3F4ハイブリドーマ細胞株(ATCC受託番号PTA-5590)、
3G2(ATCC 受託番号PTA-5592)、
4F10(ATCC受託番号 )、
2A5ハイブリドーマ細胞株(ATCC受託番号PTA-5589)
からなる群より選択されるハイブリドーマ細胞株から生産される請求項4記載の方法。
【請求項8】
抗体は免疫特異的にPCDGF受容体に結合する請求項4記載の方法。
【請求項9】
抗体は、
6G8 ハイブリドーマ細胞株 (ATCC受託番号 PTA-5263)、
5A8 ハイブリドーマ細胞株 (ATCC 受託番号 PTA-5594)
からなる群より選択されるハイブリドーマ細胞株から生産される請求項8記載の方法。
【請求項10】
PCDGFアンタゴニストは核酸分子である請求項1記載の方法。
【請求項11】
核酸分子は、配列番号1の核酸配列もしくはその相補配列の少なくとも10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38又は40の隣接した核酸を含む請求項10記載の方法。
【請求項12】
核酸分子は、配列番号5、6、7、8からなる群より選択される核酸配列もしくは該核酸配列に相補的な配列を有する請求項10記載の方法。
【請求項13】
核酸分子はDNAである請求項10記載の方法。
【請求項14】
核酸分子はRNAである請求項10記載の方法。
【請求項15】
RNAは二本鎖である請求項14記載の方法。
【請求項16】
RNAはアンチセンスRNAもしくはsiRNAである請求項14記載の方法。
【請求項17】
HER2アンタゴニストによる成長阻害に対して耐性を有し、HER2過剰発現腫瘍を有する患者において、HER2アンタゴニストへの成長阻害感受性を活性化させるか、又は回復させる方法であって、PCDFGアンタゴニストを、患者の成長阻害感受性を活性化させるか、又は回復させるのに有効な量で患者に投与することを有する、該方法。
【請求項18】
腫瘍細胞の成長を阻害するのに有効な量のPCDGFアンタゴニストとHER2アンタゴニストとを患者に投与することを有する、腫瘍細胞の成長を阻害する方法。
【請求項19】
前記アンタゴニストを同時投与する請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記アンタゴニストを共に投与する請求項18記載の方法。
【請求項21】
前記アンタゴニストを連続的に投与する請求項18記載の方法。
【請求項22】
腫瘍成長の再発を防ぐか、もしくは遅らせるのに有効な量のPCDGFアンタゴニストとHER2アンタゴニストとを投与することを有する、腫瘍患者の腫瘍再発を防ぐか、もしくは遅らせる方法。
【請求項23】
前記アンタゴニストを同時投与する請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記アンタゴニストを共に投与する請求項22記載の方法。
【請求項25】
前記アンタゴニストを連続的に投与する請求項22記載の方法。
【請求項26】
医薬として有効な量のHER2アンタゴニストもしくはその医薬として許容される塩と、医薬として有効な量のPCDGFアンタゴニストもしくはその医薬として許容される塩とを含む医薬組成物。
【請求項27】
更に医薬として許容される担体を含む請求項26記載の医薬組成物。
【請求項28】
HER2アンタゴニストがハーセプチン(登録商標)である請求項26記載の医薬組成物。
【請求項29】
PCDGFアンタゴニストは抗体もしくはその抗原結合フラグメントである請求項26記載の医薬組成物。
【請求項30】
抗体はPCDGF中和抗体である請求項29記載の医薬組成物。
【請求項31】
抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を有するE19Vもしくはその断片又は配列番号4のアミノ酸配列を有するA14Rもしくはその断片に免疫特異的に結合する請求項30記載の医薬組成物。
【請求項32】
抗体は、
6B3ハイブリドーマ細胞株(ATCC受託番号PTA-5262)、
6B2ハイブリドーマ細胞株(ATCC受託番号PTA-5261)、
6C12 ハイブリドーマ細胞株(ATCC受託番号PTA-5597)、
5B4ハイブリドーマ細胞株(ATCC受託番号PTA-5260)、
5G6ハイブリドーマ細胞株(ATCC 受託番号PTA-5595)、
4D1ハイブリドーマ細胞株(ATCC受託番号PTA-5593)、
3F8ハイブリドーマ細胞株(ATCC受託番号PTA-5591)、
3F5ハイブリドーマ細胞株(ATCC受託番号 PTA-5259)、
3F4ハイブリドーマ細胞株(ATCC受託番号PTA-5590)、
3G2(ATCC 受託番号PTA-5592)、
4F10(ATCC受託番号 )、
2A5ハイブリドーマ細胞株(ATCC受託番号PTA-5589)
からなる群より選択されるハイブリドーマ細胞株から生産される請求項29記載の医薬組成物。
【請求項33】
抗体は免疫特異的にPCDGF受容体に結合する請求項29記載の医薬組成物。
【請求項34】
抗体は、
6G8 ハイブリドーマ細胞株 (ATCC受託番号 PTA-5263)、
5A8 ハイブリドーマ細胞株 (ATCC 受託番号 PTA-5594)
からなる群より選択されるハイブリドーマ細胞株から生産される請求項33記載の医薬組成物。
【請求項35】
PCDGFアンタゴニストは核酸分子である請求項26記載の医薬組成物。
【請求項36】
核酸分子は、配列番号1の核酸配列の少なくとも10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38又は40の隣接した核酸を含む請求項35記載の医薬組成物。
【請求項37】
核酸分子は、配列番号5、6、7、8からなる群より選択される核酸配列もしくは該核酸配列に相補的な配列を有する請求項35記載の医薬組成物。
【請求項38】
核酸分子はDNAである請求項35記載の医薬組成物。
【請求項39】
核酸分子はRNAである請求項35記載の医薬組成物。
【請求項40】
RNAは二本鎖である請求項39記載の医薬組成物。
【請求項41】
RNAはアンチセンスRNAもしくはsiRNAである請求項39記載の医薬組成物。
【請求項42】
(i)患者から生体試料を得ることと、
(ii) 該生体試料中のPCDGFを検出することと、
(iii)該試料中のPCDGF量を決定することとを有する、
HER2アンタゴニストによる成長阻害への腫瘍患者の感受性を決定する方法であって、
PCDGF量がHER2アンタゴニストの抗腫瘍効果に対する耐性を示す、該方法。
【請求項43】
PCDGFを、タンパク質、転写物、又は遺伝子として検出する請求項42記載の方法。
【請求項44】
PCDGFを、遺伝子増幅を測定することによって検出する請求項42記載の方法。
【請求項45】
生体試料は、細胞、組織、血液、血清、血しょう、乳頭吸引液、乳管洗浄液、唾液、尿及び便からなる群より選択される請求項42記載の方法。
【請求項46】
生体試料中のPCDGFを、PCDGFに選択的に結合する化合物を用いて検出する請求項42記載の方法。
【請求項47】
化合物はPCDGFに免疫特異的に結合する抗体もしくはその抗原結合フラグメントである請求項46記載の方法。
【請求項48】
抗体はPCDGF中和抗体である請求項47記載の方法。
【請求項49】
抗体は、配列番号3のアミノ酸配列でコードされているタンパク質もしくはその断片又は配列番号4のアミノ酸配列でコードされているタンパク質もしくはその断片に免疫特異的に結合する請求項48記載の方法。
【請求項50】
抗体は、
6B3ハイブリドーマ細胞株(ATCC受託番号PTA-5262)、
6B2ハイブリドーマ細胞株(ATCC受託番号PTA-5261)、
6C12 ハイブリドーマ細胞株(ATCC受託番号PTA-5597)、
5B4ハイブリドーマ細胞株(ATCC受託番号PTA-5260)、
5G6ハイブリドーマ細胞株(ATCC 受託番号PTA-5595)、
4D1ハイブリドーマ細胞株(ATCC受託番号PTA-5593)、
3F8ハイブリドーマ細胞株(ATCC受託番号PTA-5591)、
3F5ハイブリドーマ細胞株(ATCC受託番号 PTA-5259)、
3F4ハイブリドーマ細胞株(ATCC受託番号PTA-5590)、
3G2(ATCC 受託番号PTA-5592)、
2A5ハイブリドーマ細胞株(ATCC受託番号PTA-5589)
からなる群より選択されるハイブリドーマ細胞株から生産される請求項47記載の方法。
【請求項51】
化合物は核酸分子である請求項46記載の方法。
【請求項52】
核酸分子は、配列番号1の核酸配列もしくはその相補配列の少なくとも10、12、13、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38又は40の隣接した核酸を含む請求項51記載の方法。
【請求項53】
核酸分子は、配列番号5、6、7、8からなる群より選択される核酸配列もしくは該核酸配列に相補的な配列を有する請求項51記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2007−517763(P2007−517763A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522627(P2006−522627)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【国際出願番号】PCT/US2004/024593
【国際公開番号】WO2005/011590
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(505161220)エイアンドジー ファーマスーティカル インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】