HMG−CoA還元酵素阻害剤及びビタミンB6関連化合物を含む組成物を用いる併用療法
本発明は、HMG−CoA還元酵素阻害剤及びビタミンB6関連化合物を含む医薬組成物、並びに心血管疾患及びその他の疾患に罹患するリスクを低減するための当該医薬組成物の使用方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、HMG−CoA還元酵素阻害剤を用いる併用療法及びそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
2000年の米国心臓協会(American Heart Association)によると、死因の39.4%は、心血管性の疾患によるものであった。心疾患及び間接的には卒中を発現するリスクは、血中コレステロール値が上昇するにつれて着実に増大する。高い血中コレステロールレベルは、糖尿病発現のリスク増大も伴う。望ましい血中レベルは、200mg/dL未満である。境界許容レベルは、200〜239mg/dLの範囲であり、240mg/dL又はそれ以上になるとリスクが高くなる。約102,300,000人のアメリカ人が、高コレステロール値を有しているとされている。
【0003】
高コレステロール血症は、内在性及び外在性の血管作用薬に対して応答する、種々の血管の応答性に影響を及ぼすことが知られている。特に興味深いのは、例えば、5−ヒドロキシトリプタミン及びノルアドレナリンのような血管収縮薬に対する応答が増加し、また例えば、アセチルコリン及び窒素酸化物のような血管拡張薬に対する反応性が低下することである。動脈硬化の発現共にこれが、高血圧、卒中、再狭窄、遅発性静脈グラフト不全及び冠動脈疾患といった多数の心血管関連疾患の進行に重要な役割を果たしているのである。
【0004】
現在、高コレステロール血症は、例えば主に、スタチン、胆汁酸塩捕捉剤、フィブラート又はナイアシン等の脂質低下薬で治療されている。スタチンは、恐らく利用可能な脂質低下薬のなかで最も有効なものであるが、例えば、プロテアーゼ阻害剤(例えば、ノルビル(norvir))、アセトアミノフェン、シクロスポリン、ミベフラジル、アゾール系殺菌薬、マクロライド系抗生物質及びワルファリン等のその他の薬物と組み合わせてスタチンを用いるのは、薬物間で有害な反応を起こすため制限されている。最も顕著な有害反応としては、肝臓での薬物の代謝を担う肝シトクロムP450酵素を阻害することが挙げられる。
【0005】
対照的に、ビタミンB6(これも脂質低下特性を有する)は、有意な副作用を伴わず、耐性が高い薬物である(Brattstromらの「血漿ピリドキサール−5’−リン酸濃度が低下している80歳男性において、ピロキシジン(pyroxidine)は、コレステロール及び低比重リポ蛋白を減少させ、抗トロンビンIIIの活性を増大させる」Scand J Clin Lab Invest, 1990, 50:873)。幾つかのビタミンB6誘導体も脂質低下特性を有する。例えば、米国特許第6,066,659号には、高脂血症及びアテローム性動脈硬化症の治療のためのビタミンB6(ピリドキシン)、ピリドキサール及びピリドキサミン誘導体の使用についての教示があり、ドイツ国特許第2461742号C2には、高脂血症を治療するためのピリドキサール、ピリドキソール(pyridoxol)、及びピリドキサミン−5’−リン酸エステルの使用についての教示がある。ピリドキサール−5’−リン酸グルタミン酸マグネシウムを補給することによっても、脂質レベルが低下することが知られている(Khayyalらの「実験的高コレステロール血症における血管反応性に対するピリドキサール−5’−リン酸グルタミン酸マグネシウムの効果」Drugs Exp Clin Res. 1998, 24: 29-40)。
【0006】
脂質低下特性に加え、ビタミンB6及びその代謝産物、例えばピリドキサール−5’−リン酸、は、心血管性の疾患又は関連疾患、例えば心筋虚血及び虚血性再灌流障害、心筋梗塞、心肥大症、高血圧、うっ血性心不全、心筋梗塞後の心不全、アテローム性動脈硬化症を含む血管疾患、並びに凝血カスケードが活性化されている血栓及びプロトロンビンの状態に起因する疾患の治療に有用である。
【0007】
ホモシステインレベルを減少させる目的でビタミンB6を含有させる、ビタミンB6(ピロキシジン)を任意にコレステロール低下薬と併用するといった教示が先行技術により開示されている。例えば、米国特許第6,576,256号には、レニン・アンジオテンシン系の阻害剤、アスピリン及び場合によりビタミンB6(ピリドキシン)をHMG−CoA還元酵素阻害剤と併用することにより、心血管性のリスクが高い患者を治療する方法が開示されている。米国特許出願第20030049314号には、HMG−CoA還元酵素阻害剤、ACE阻害剤、アスピリン及び場合によりビタミンB6の組合せを含む、心血管性のリスクが高い患者を治療するための製剤が開示されている。米国特許出願第20030068399号には、HMG−CoA還元酵素阻害剤、レニン・アンジオテンシン系の阻害剤、アスピリン及び場合によりビタミンB6の組合せを含む、心血管性のリスクが高い患者を治療するための経口投与可能な医薬剤形が開示されている。しかし、脂質低下薬としてのビタミンB6関連化合物とHMG−CoA還元酵素阻害剤を組み合わせて用いる併用療法は未だ存在しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
スタチンを他の薬物と併用することによる治療上の相乗効果の可能性は、肝毒性のために限られたものとなっている。有害な薬物反応を誘発せず、薬物誘発性の肝毒性に侵される恐れのある人々に適した、心血管性の疾患及び糖尿病のような高コレステロール血症及び関連疾患を治療する、また、それらを予防するための併用療法は未だ存在しない。従って、スタチンに関する現行療法に於ける限界を克服する新規な医薬組成物及び治療方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要約)
本発明は、(a)HMG−CoA還元酵素阻害剤、(b)ビタミンB6関連化合物、及び(c)薬学的に許容される担体、を含む医薬組成物を提供する。
【0010】
本発明の一態様において、HMG−CoA還元酵素阻害剤は、プラバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、シンバスタチン、ロスバスタチン(rosuvastatin)、ベロスタチン(velostatin)、フルインドスタチン(fluindostatin)、及びこれらの混合物から成る群より選択される。
【0011】
本発明の他の態様において、ビタミンB6関連化合物は、ピリドキサール、ピリドキサール−5’−リン酸、ピリドキサミン、ピリドキサールの3−アシル化類似体、ピリドキサール−4,5−アミナールの3−アシル化類似体、リン酸ピリドキシン類似体、及びこれらの混合物から成る群より選択される。
【0012】
本発明は、(a)HMG−CoA還元酵素阻害剤、(b)ビタミンB6関連化合物、及び(c)薬学的に許容される担体、を含んでなる医薬組成物の治療有効用量を投与することを含む、心血管性の疾患に罹患する恐れのある患者を治療するための方法も提供する。
【0013】
一態様に於いて、本発明の方法は心血管性の疾患に罹患するリスクを有する患者を治療するためのものである。他の態様に於いては、本発明の方法は肝毒性に侵される恐れのある患者を治療するためのものである。
【0014】
心血管性の疾患は、うっ血性心不全、心筋虚血、不整脈、心筋梗塞、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、冠動脈疾患、高血圧症(高血圧)、アテローム性動脈硬化症(動脈の閉塞)、動脈瘤、末梢血管疾患(PAD)、血栓性静脈炎(静脈の炎症)、心内膜の疾患、心筋の疾患、心臓炎、うっ血性心疾患、心内膜炎、虚血性心疾患、心臓弁膜症(心臓の血管の単数又は複数の弁膜の機能不全)、動脈硬化症(動脈の硬化)、急性冠症候群(ACS)、深部静脈血栓症(DVT)、川崎病、再狭窄、遅発性静脈グラフト不全及び心臓移植から成る群より選択することができる。
【0015】
本発明は、(a)HMG−CoA還元酵素阻害剤、(b)ビタミンB6関連化合物、及び(c)薬学的に許容される担体、を含む医薬組成物の治療有効用量を投与することを含む、糖尿病に罹患する恐れのある患者を治療するための方法も提供する。
【0016】
本発明は、(a)HMG−CoA還元酵素阻害剤、(b)ビタミンB6関連化合物、及び(c)薬学的に許容される担体、を含む医薬組成物の治療有効用量を投与することを含む、アルツハイマー病に罹患する恐れのある患者を治療するための方法も提供する。
【0017】
本発明は、(a)HMG−CoA還元酵素阻害剤、(b)ビタミンB6関連化合物、及び(c)薬学的に許容される担体、を含む医薬組成物の治療有効用量を投与することを含む、骨粗しょう症に罹患する恐れのある患者を治療するための方法も提供する。
【0018】
HMG−CoA還元酵素阻害剤の用量は、1日当たり0.1mg〜1000mgである。1日当たりの用量を、10mgとすることが可能である。
【0019】
ビタミンB6関連化合物の用量は、1日当たり0.1〜50mg/kgである。1日当たりのビタミンB6関連化合物の用量を、1から15mg/kgとすることが可能である。
【0020】
本発明は、ピリドキサール−5’−リン酸、ピリドキサールの3−アシル化類似体、ピリドキサール−4,5−アミナールの3−アシル化類似体、リン酸ピリドキシン類似体、及びこれらの混合物から成る群より選択されるビタミンB6関連化合物の治療有効量を投与することを含む、患者において高コレステロール血症を治療又は予防する方法をさらに提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(発明の詳細な説明)
低比重リポ蛋白(LDL)レベルの上昇と心血管性の疾患が発現するリスクとの因果関係は、十分に確立されている。LDLレベルの上昇が低下すれば、一過性の虚血性発作及び間接的には卒中を含む心血管事象の発症率、並びに死亡率が低下することが示された。最近では、LDLレベルの上昇は、糖尿病発現のリスク増大と関連づけられている。本発明者らは、スタチン及び特定のビタミンB6関連化合物の併用が、肝毒性の発生を実質的に伴わず相乗的に心血管性の疾患及び糖尿病のリスクを軽減することを見出した。
【0022】
スタチンは、非常に有効な脂質低下薬である。しかし、スタチンの使用は、薬物間相互作用及び肝毒性をはじめとする多くの問題を伴う。本発明者らは、P5P(ピリドキサール−5’−リン酸)などのビタミンB6関連化合物が、それ自体、脂質レベルの改善にも有効であり、スタチン療法に伴う問題の改善にも有効であることを見出した。
【0023】
本発明者らは、スタチンとビタミンB6関連化合物の併用が、有害な薬物間相互作用を伴わずに相乗的に脂質を低下させることを見出した。スタチンを他の薬物と併用すると肝CYP−450を阻害する薬物間相互作用が生じる。この種の酵素は主として肝臓における薬物の代謝に関与するものである。P5P及び関連化合物は、多数の酵素の補酵素であることから、これらの肝酵素を阻害せず、従って、スタチンの代謝に伴う負の作用を増幅させない。
【0024】
本発明者らは更に、ビタミンB6関連化合物の併用投与が、スタチンが誘発する肝毒性の軽減を助長することを見出した。例えば、スタチン療法中には、肝毒性の可能性があることを示す、アラニントランスフェラーゼマーカーの増加が観察された。一方、P5P及び関連化合物は、肝臓中のアラニントランスフェラーゼレベルを上昇させず、それ故、それら自体、肝毒性を起こすものではない。そして、スタチンと併用すると、P5P及び関連化合物は、スタチン治療に一般に伴う肝毒性の発症及び重篤度の悪化を防ぎ、効果的な治療をもたらす。
【0025】
P5P及び関連化合物の併用投与は、肝毒性に加え、手術の結果を向上させ、また、PCI(経皮的冠動脈形成術)後の心筋障害の発症及び重症度を低下させる。
【0026】
さらに、本発明の医薬組成物は、心血管性の疾患及び糖尿病のリスクを軽減する。本発明の医薬組成物は、アルツハイマー病及び骨粗しょう症のリスクを軽減するためにも使用することができる。
【0027】
アルカリホスファターゼに関して言えば、P5P及び関連化合物が、当該化合物の天然基質になっている。アルカリホスファターゼは骨の鉱質形成に関与し、P5Pとアルカリホスファターゼとの関連性は、特に、低ホスファターゼ血症の研究に関する文献に記載されている。血清中アルカリホスファターゼの低いレベル及び一連の骨格奇形は、低ホスファターゼ血症の特徴である。P5Pのレベルを上昇させると当該疾患は改善される。一方で、アルカリホスファターゼを含む骨代謝回転マーカーの血漿レベルは、対照の患者に較べてスタチン治療を施した患者のほうが低いレベルであったという研究結果が示された。従って、スタチン及びビタミンB6関連化合物の併用は、骨代謝回転を効果的に調節する。
【0028】
分泌型ホスホリパーゼA2(PLA2)に関して言えば、スタチンは、脂質低下特性に加えてPLA2レベルを低下させることが示された(Wiklundらの「血漿中の炎症性マーカーに対するシンバスタチン及びアトルバスタチンの効果」(J. Intern Med., 2002, 251: 338-347))。PLA2は、冠動脈性心疾患の強力な単独のリスクファクターであるとされており(Camejoらの「血管疾患におけるホスホリパーゼA2」(Circ Res. 2001, 89: 298-304 at 298))、また、炎症バイオマーカーであるとも考えられている。PLA2は、リポ蛋白及び細胞膜中に存在するグリセロアシルリン脂質中のsn−2エステル結合を触媒作用で加水分解して、非エステル型脂肪酸及びリゾリン脂質を形成する。
【0029】
PLA2は、心血管性の疾患リスクを増大させる幾つかのプロセスにおいて一定の役割を果たす。PLA2は、リポ蛋白の循環を改変し、心血管性の疾患のリスク増大に関連するLDL粒子の形成を誘導する(Camejoら、2001、p.298)。動脈壁において、PLA2は、基質に結合したリポ蛋白の凝集及び融合を誘導し、そして、さらに基質プロテオグリカンに対するそれらの結合強度を増大させる。PLA2は、血管収縮及び血小板粘着を促進するトロンボキサンにシクロオキシゲナーゼによって変換されるアラキドン酸を、触媒作用により細胞膜から放出させる。アラキドン酸は、シクロオキシゲナーゼによって、炎症、更に心血管性の疾患リスクファクターを媒介するプロスタグランジンに変換される。プロスタグランジン及びその他の炎症媒介因子は、コレステロール恒常性及び凝固をはじめとする多数のプロセスに影響を及ぼす。
【0030】
P5P、ビタミンB6代謝産物は、PLA2活性化によるアラキドン酸放出、の抑制に関係している(Krinshnamurthi及びKakkarの「ヒト血小板凝集、密顆粒放出及びトロンボキサンB2生成に対するピリドキサール−5’−リン酸(PALP)の効果−シッフ塩基形成の役割」(Thromb Haemost. 1982, 48: 136))。従って、スタチンとビタミンB6関連化合物の併用は、PLA2レベルを有益に調節する。
【0031】
ビタミンB6関連化合物を、コレステロール及びPLA2を低下させるための活性物質としてスタチンと併用したのは、本発明者らが初めてである。本発明者らは、ビタミンB6関連化合物の脂質低下特性及びPLA2阻害特性が、ビタミンB6及び以前に開示された他のビタミンB6誘導体のものより有意に優れていることを見出した(米国特許第6,066,659号及びドイツ国特許第2461742号C2を参照されたい)。P5Pは、ピロキシジンと比較してインビボで40倍高い効能がある。本発明者らは、スタチン及びビタミンB6関連化合物の心血管保護効果が、それらを併用で投与したとき、相乗されることも見出した。さらに、本発明者らは、スタチン及びビタミンB6関連化合物を併用投与した場合に有害な反応を起こさないことを見出した。ビタミンB6関連化合物は、肝CYP酵素を阻害せず、肝トランスアミナーゼを増加させない。
【0032】
これらの発見に鑑みて、本発明は、心血管性の疾患及び糖尿病のリスクを減少させるための医薬組成物及びそれらの使用を提供する。本発明の医薬組成物は、心血管性の疾患のリスクを低減させるのに、現在利用可能な併用療法に較べてより効果的である。本発明の医薬組成物は、リポ蛋白、ホモシステイン、血管収縮、血小板凝集及び炎症をはじめとする多数のリスクファクターを改善する。さらに、本発明の医薬組成物は、肝毒性を誘導しない。本発明の医薬組成物は、HMG−CoA還元酵素阻害剤、ビタミンB6関連化合物又はその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される担体を含んで成る。
【0033】
使用可能なHMG−CoA還元酵素阻害剤の例には、プラバスタチン(Pravachol(登録商標))、ロバスタチン(Mevacor(登録商標))、フルバスタチン(Lescol(登録商標))、アトルバスタチン(Lipitor(登録商標))、シンバスタチン(Zocor(登録商標))、ロスバスタチン(Crestor(登録商標))、ベロスタチン、及びフルインドスタチンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、HMG−CoA還元酵素阻害剤は、シンバスタチンである。「HMG−CoA還元酵素阻害剤」という用語は、HMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物の薬学的に許容される塩、エステル及びラクトン形態すべてを含むものとする。
【0034】
使用可能なビタミンB6関連化合物の例には、ピリドキサール−5’−リン酸(P5P)、ピリドキサール、及びピリドキサミンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。同様に使用することができる他のビタミンB6関連化合物には、米国特許第6,585,414号及び米国特許出願第2003114424号に開示されているような、ピリドキサールの3−アシル化類似体、ピリドキサール−4,5−アミナールの3−アシル化類似体、及びリン酸ピリドキシン誘導体が挙げられる。前記特許は、両方とも参照して、本明細書に取り込む。好ましくは、ビタミンB6関連化合物はP5Pである。
【0035】
ピリドキサールの3−アシル化類似体は、
【化016】
[式中、
R1は、アルキル又はアルケニル(この場合のアルキルは、窒素、酸素又は硫黄が割り込んでいてもよく、及び非置換又はその末端炭素がヒドロキシ、アルコキシ、アルカノイルオキシ、アルコキシアルカノイル、アルコキシカルボニルで置換されていてもよい)であるか、
R1は、ジアルキルカルバモイルオキシ、アルコキシ、ジアルキルアミノ、アルカノイルオキシ、アルカノイルオキシアリール、アルコキシアルカノイル、アルコキシカルボニル又はジアルキルカルバモイルオキシであるか、又は
R1は、アリール、アリールオキシ、アリールチオ又はアラルキル(この場合のアリールは、アルキル、アルコキシ、アミノ、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ又はアルカノイルオキシにより置換されていてもよい)である]
を含む。
【0036】
ピリドキサール−4,5−アミナールの3−アシル化類似体は、
【化017】
[式中、
R1は、アルキル又はアルケニル(この場合のアルキルは、窒素、酸素又は硫黄が割り込んでいてもよく、及び非置換又はその末端炭素がヒドロキシ、アルコキシ、アルカノイルオキシ、アルコキシアルカノイル、アルコキシカルボニルで置換されていてもよい)であるか、
R1は、ジアルキルカルバモイルオキシ、アルコキシ、ジアルキルアミノ、アルカノイルオキシ、アルカノイルオキシアリール、アルコキシアルカノイル、アルコキシカルボニル又はジアルキルカルバモイルオキシであるか、又は
R1は、アリール、アリールオキシ、アリールチオ又はアラルキル(この場合のアリールは、アルキル、アルコキシ、アミノ、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ又はアルカノイルオキシにより置換されていてもよい)であり、
R2は、第二級アミノ基である]
を含む。
【0037】
リン酸ピリドキシン類似体は、
【化018】
[式中、
R1は、水素又はアルキルであり、
R2は、−CHO、−CH2OH、−CH3又は−CO2R6(この場合のR6は、水素、アルキル、アリールである)であるか、又は
R2は、−CH2−O−アルキル(この場合のアルキルは、R1の代わりに3位の酸素に共有結合している)であり、
R3は、水素であり、R4は、ヒドロキシ、ハロ、アルコキシ、アルカノイルオキシ、アルキルアミノ又はアリールアミノであるか、又は
R3及びR4は、ハロであり、及び
R5は、水素、アルキル、アリール、アラルキル又は−CO2R7(この場合のR7は、水素、アルキル、アリール又はアラルキルである)である]、
【0038】
【化019】
[式中、
R1は、水素又はアルキルであり、
R2は、−CHO、−CH2OH、−CH3、−CO2R5(この場合のR5は、水素、アルキル、アリールである)であるか、又は
R2は、−CH2−O−アルキル(この場合のアルキルは、R1の代わりに3位の酸素に共有結合している)であり、
R3は、水素、アルキル、アリール又はアラルキルであり、
R4は、水素、アルキル、アリール、アラルキル又は−CO2R6(この場合のR6は、水素、アルキル、アリール又はアラルキルである)であり、
nは、1から6である]、及び
【0039】
【化020】
[式中、
R1は、水素又はアルキルであり、
R2は、−CHO、−CH2OH、−CH3又は−CO2R8(この場合のR8は、水素、アルキル、アリールである)であるか、又は
R2は、−CH2−O−アルキル(この場合のアルキルは、R1の代わりに3位の酸素に共有結合している)であり、
R3は、水素であり、R4は、ヒドロキシ、ハロ、アルコキシ又はアルカノイルオキシであるか、又は
R3及びR4は一緒になって、=Oを形成していてもよく、
R5及びR6は、水素であるか、又は
R5及びR6は、ハロであり、
R7は、水素、アルキル、アリール、アラルキル又は−CO2R8(この場合のR8は、水素、アルキル、アリール又はアラルキルである)である]
を含む。
【0040】
本発明は、特定の剤形、担体等に限定されず、変化し得るものと理解されたい。本明細書で用いる専門用語は、単に特定の態様を説明するためのものであり、何ら本発明を限定するものでないことも理解されたい。
【0041】
本明細書に記載する化合物のいくつかは、1つ又はそれ以上の不斉中心を含有するが、これは、エナンチオマー、ジアステレオマー、及び(R)−又は(S)−のような絶対立体化学の表現で定義することができる他の立体異性体を生じさせるものである。本発明は、ジアステレオマー及びエナンチオマーとして可能なもの並びにそれらのラセミ体及び光学的に純粋な形態すべてを包含するものとする。光学的に活性な(R)−及び(S)−異性体は、キラル出発原料(synthons)若しくはキラル試薬を使用して調製することができ、又は従来どおりの技法を使用して分割することができる。本明細書に記載する化合物が、オレフィン性二重結合又は他の幾何学的に対称な中心を含有する場合、特に定めがない限り、それらの化合物は、(E)−幾何異性体と(A)−幾何異性体の両方を含むことを意味する。同様に、すべての互変異性形を含むことを意味する。
【0042】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において用いる単数形「a」、「an」及び「the」は、その文脈に於いてはっきりと限定されていない限り、複数の指示対象を包含する。従って、例えば、「活性物質(an active agent)」又は「薬理活性物質(an pharmacologically active agent)」というのは、単一の活性物質及び2つ又はそれ以上の異なる活性物質の組合せを包含し、「担体(a carrier)」というのは、単一の担体及び2つ又はそれ以上の担体の混合物などを包含する。
【0043】
本明細書に於いて、「薬学的に許容される担体」又は「薬学的に許容される塩」等の「薬学的に許容される」とは、生物学的かどうかに如何に関わらず望ましくない物質ではないもの、即ち、望ましくない生物学的作用を一切生じることなく、またそれを含んでいる組成物のその他の何れの成分とも有害に相互作用することなく、患者に投与する医薬組成物に組み込むことができる物質を意味する。
【0044】
本明細書で用いる「担体」又は「媒体」は、薬物投与に適した薬学的に許容される従来の担体材料を指し、また、非毒性で、医薬組成物又は薬物送達系の他の成分と有害に相互作用しない、当該技術分野公知の如何なるものをも包含する。
【0045】
薬物又は薬理活性物質の「有効」量又は「治療有効量」とは、非毒性であるが、望ましい効果を提供する薬物又は薬剤の充分な量を意味する。本発明の併用療法に於いて、併用剤の一成分の「有効量」とは、当該併用剤のその他の成分と併用した場合に望ましい効能を提供するのに効果的である当該化合物の量である。「有効」である量は、年齢及び個人の全身の健康状態並びに特定の活性物質(単数又は複数)等により、患者ごとに異なる。従って、常に正確な「有効量」を特定することができるとは限らないが、当業者であれば通常の実験法により、個々患者に対しての適切な「有効」量を決定することができる。
【0046】
本明細書で用いる「心血管性の疾患のを軽減する」及び「心血管性の疾患リスクの軽減」という用語は、心血管性の事象の発症率上昇に関連する潜在的な原因又はバイオマーカーの低減又は排除を意味する。
【0047】
本明細書で用いる「心血管性の疾患」とは、心臓の血管に関するあらゆる疾患を意味する。心血管性の疾患の例には、うっ血性心不全、心筋虚血、不整脈、心筋梗塞、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、冠動脈疾患、高血圧症(高血圧)、アテローム性動脈硬化症(動脈の閉塞)、動脈瘤、末梢血管疾患(PAD)、血栓性静脈炎(静脈の炎症)、心内膜の疾患、心筋の疾患、心臓炎、うっ血性心疾患、心内膜炎、虚血性心疾患、心臓弁膜症(心臓の血管の単数又は複数の弁膜の機能不全)、動脈硬化症(動脈の硬化)、急性冠症候群(ACS)、高コレステロール、深部静脈血栓症(DVT)、川崎病、再狭窄、遅発性静脈グラフト不全及び心臓移植が挙げられる。
【0048】
本明細書で用いる「糖尿病のリスクを軽減する」及び「糖尿病リスクの軽減」という用語は、インスリン抵抗性、前糖尿病及び糖尿病の発症率上昇に関連する潜在的な原因又はバイオマーカーの低減又は排除を意味する。
【0049】
本明細書で用いる「ビタミンB6関連化合物」は、ビタミンB6前駆体、代謝産物、誘導体又は類似体の何れをも意味するが、(1)ビタミンB6(ピロキシジン)、(2)ドイツ国特許第2461742号C2に開示されているピリドキサール、ピリドキソール及びピリドキサミンの5’−リン酸エステル、並びに(3)米国特許第6,066,659号に開示されているピリドキシン、ピリドキサール及びピリドキサミン誘導体は、明確に除外される。
【0050】
本明細書で用いる「肝毒性」は、薬物誘発性の肝損傷を包含する。
【0051】
本発明の医薬組成物は自体公知の手法で、例えば従来の混合、溶解、顆粒化、糖衣錠化、粉末化、乳化、カプセル化、封入又は凍結乾燥プロセスにより、製造することができる。
【0052】
従って、本発明に基づいて使用する医薬組成物は、活性化合物を薬学的に使用可能な製剤にするのを促進する賦形剤及び助剤を含む1つ又はそれ以上の生理学的に許容される担体を使用して、従来の手法で製剤化することができる。適切な剤形は、選択される投与経路に依存する。
【0053】
注射用に、本発明の薬剤は、水溶液、好ましくは、例えばハンクス溶液、リンガー溶液又は生理食塩緩衝液等の生理的に適合する緩衝液に製剤化することができる。
【0054】
経口投与用には、活性化合物を当該技術分野で周知の薬学的に許容される担体と組み合わせることにより容易に製剤化することができる。このような担体により、本発明の化合物は、治療を受ける患者が経口摂取するための錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー及び懸濁液等に製剤化できる。経口使用のための医薬製剤は、固体賦形剤により得ることができ、必要により、適した助剤を添加し、得られた混合物を場合によっては粉砕し、その顆粒混合物を処理して錠剤又は糖衣錠のコアを得ることができる。適した賦形剤は、特に、充填剤、例えば糖(ラクトース、スクロース、マンニトール又はソルビトールを含む)又はセルロース製剤(例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び/又はポリビニルピロリドン)である。架橋ポリビニルピロリドン、寒天又はアルギン酸若しくはアルギン酸ナトリウムのような塩等の崩壊剤を必要に応じて添加してもよい。
【0055】
好ましくは、本発明の医薬組成物は、経口投与される。好ましい経口剤形は、各活性物質の治療有効単位用量を含有し、この場合の単位用量は、1日1回の経口投与に適する。何れの活性物質の治療有効単位用量も、当業者及び本明細書の開示から明らかである多数の因子に依存する。特に、これらの因子としては、投与される化合物の素性、剤形、投与経路、患者の性別、年齢及び体重、そして治療する症状の重篤度、並びに胃腸管、肝胆道系及び腎系を冒している併存疾患の存在が挙げられる。投薬量及び毒性の判定方法は当該技術分野で周知のものであり、一般には先ず動物で試験し、動物で有意な毒性が観察されなければ、人間に対して行うものである。投薬量の適切さは、LDLレベル、HDLレベル、総コレステロールレベル、トリグリセリドレベル及びホモシステインレベルをモニターすることにより評価することができる。少なくとも2〜4週間の治療後、投与した量でLDLリポ蛋白及びホモシステインレベルが正常又は許容可能レベルに低下しない場合には、用量を増やすことができる。
【0056】
HMG−CoA還元酵素阻害剤についての治療有効単位用量は、1日当たり0.1mg〜1000mgである。特定のHMG−CoA還元酵素阻害剤に適した投薬範囲は、当該技術分野公知である。一般的には、その単位用量は、1日当たり5、10、20、40及び80mgである。用いられるHMG−CoA還元酵素阻害剤が、シンバスタチンの場合、好ましい単位用量は、1日当たり10mgである。他のHMG−CoA還元酵素阻害剤についての好ましい単位用量は、1日当たり20mgである。
【0057】
ビタミンB6関連化合物についての好ましい治療上有効な単位用量は、1日当たり体重1kgにつき0.1〜50mgである。さらに好ましくは、単位用量は、1日当たり体重1kgにつき1〜15mgである。
【0058】
本発明は、ビタミンB6関連化合物の治療有効用量を投与することを含む、患者において高コレステロール血症を治療又は予防する方法もまた提供し、この場合のビタミンB6関連化合物は、ピリドキサール−5’−リン酸、ピリドキサールの3−アシル化類似体、ピリドキサール−4,5−アミナールの3−アシル化類似体、リン酸ピリドキシン類似体又はこれらの混合物である。
【0059】
例示的な態様に基づいて本発明を説明してきたが、本発明はこれらの態様の細部にわたって限定されるものではなく、当業者であれば様々な改変及び変更を行うことができるものと理解されたい。このような改変及び変更の全ては、添付の特許請求の範囲に包含されるものである。
【実施例1】
【0060】
CYP活性に対するP5Pの効果
肝シトクロム酵素の活性に対するP5Pの阻害効果をインビトロで試験した。CYP阻害アッセイでは、バキュロウイルス発現ベクターを使用して対応するヒトCYPのcDNAから発現させた個々のCYPサブタイプ(CYP1A2、CYP2A6、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、CYP2E1又はCYP3A4)を各々が発現している昆虫細胞から調製したミクロソーム(Supersomes(登録商標)(Gentest Corp., Woburn, MA))を使用した。これらのミクロソームには、補足的なcDNA発現ヒト還元酵素及び/又はシトクロムb5(Gentest Corp.)も組み込んだ。これは、これらの酵素が、CYPの活性を刺激して、1回の反応に必要な酵素の量を減少させることができるからである。これらのアッセイでは、それらのミクロソームを特異的CYP基質とともにインキュベートした後、蛍光代謝産物の形成を蛍光検出によりモニターした。2つのCYP基質(7−ベンジルオキシ−4−トリフルオロメチルクマリン(BFC)及び7−ベンジルオキシクマリン(BQ))をCYP3A4について試験した。これは、この酵素が複合的な阻害動態を示すことは証明されていたためである。反応(0.2mL)は、96ウエルマイクロタイタプレートを用いて、NADPH再生系[NADP+、グルコース−6−リン酸(G6P)、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PDH)]及びMgCl2の存在下、37℃で行った。各酵素についてのピリドキサール−5’−リン酸による代謝産物形成の阻害を、ピリドキサール−5’−リン酸が存在しない状態(0μM)及び0.0169〜37.0μM存在する状態で試験した。酵素選択的阻害剤も、陽性対照として各アッセイにおいて8通りの濃度で試験した。測定は全て2回実施した。CYP2C19及びCYP3A4を除くすべてのCYPサブタイプアッセイについて使用した試薬溶液は、MBDIにより調製した。CYP2C19及びCYP3A4については、Gentest Corp.から購入した完全試薬キット(CYP2C19/CEC:Cat.No.HTS−4000、Lot NO.1;CYP3A4/BFC:Cat.No.HTS−1000、Lot No.1)を使用して、アッセイを実施した。
【0061】
すべての酵素についてのアッセイは、以下の手法で行った:
NADPH再生系、適切な緩衝液及び媒体、阻害剤(陽性対照)溶液又は試験化合物(ピリドキサール5’−リン酸)溶液を96ウエルマイクロタイタプレートに分注した。8通りの濃度の阻害剤及び試験化合物を、連続3倍希釈により試験した。後者の混合物を0.1mL/ウエル含むマイクロタイタープレートをインキュベーター内で37℃に予熱した。緩衝液、ミクロソーム及び基質の溶液を別に調製し、voltexで混合して、タンパク質を分散させた。予熱したNADPH再生系、緩衝液及び阻害剤溶液を含むマイクロタイタープレートのウエルに、ミクロソーム/基質溶液(0.1mL)を添加することにより、反応を開始させた。指定された時間インキュベーションした後、0.075mLのSTOP溶液(下記参照)を添加することにより、反応を停止させた。ブランク(バックグラウンドノイズ)試料も、ミクロソーム/基質混合物をNADPH再生系に添加する前に、停止のためのSTOP溶液を添加して、アッセイした。形成された代謝産物の量を、各代謝産物を測定するために最適化された励起及び発光フィルタを用いた蛍光プレートリーダーで蛍光を検出することにより定量した。
【0062】
CYP阻害アッセイを実施する前に、上記のアッセイで測定された代謝産物の蛍光に対するピリドキサール−5’−リン酸の効果を評価した。代謝産物の蛍光は、ピリドキサール−5’−リン酸が存在しない状態(0μM)及び0.457〜1000μM存在する状態で測定(各濃度に付き2回)した。測定された濃度及び代謝産物は、1μMの3−シアノ−7−ヒドロキシクマリン(CHC)、2.5μMの7−ヒドロキシクマリン(7−HC)、2.5μMの7−ヒドロキシ−4−トリフルオロメチルクマリン(HFC)、0.1μMのフルオレセイン、10μMの3−[2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル]−7−ヒドロキシ−4−メチルクマリン(AHMC)及び10μMのキノリノールであった。使用された代謝産物の濃度は、CYP阻害アッセイにおいて形成された代謝産物の予想最高濃度(すなわち、阻害剤が存在しない状態で基質をそのCYPサブタイプとともにインキュベートして測定した代謝産物の濃度)に基づくものであった。CHCは、CYP1A2及びCYP2C19アッセイにおいて測定された蛍光代謝産物である。7−HCは、CYP2A6アッセイにおいて測定された蛍光代謝産物であり、HFCは、CYP2B6、CYP2C9、CYP2E1及びCYP3A4(基質としてBFC)アッセイにおいて測定された蛍光代謝産物であり、並びにフルオレセインは、CYP2C8アッセイにおいて測定された代謝産物である。AHMCは、CYP2D6において測定された代謝産物であり、キノリノールは、CYP3A4(基質としてBQ)アッセイにおいて測定されたものである。
【0063】
ピリドキサール−5’−リン酸溶液:ピリドキサール−5’−リン酸・一水和物(P5P、Lot No.00001448)は、粉末として供給された。すべてのピリドキサール−5’−リン酸溶液の濃度は、0.9019の力価(potency factor)について補正した無水分子量(247.15g/mol)に基づくものである。
【0064】
代謝産物の蛍光に対するピリドキサール−5’−リン酸の効果を判定するために、50mMの濃度のピリドキサール−5’−リン酸の原液を、蒸留水中で新たに調製した。ピリドキサール−5’−リン酸は水溶液の場合、酸性を示すので、そのpHを1NのNaOHでpH7.0に調整した。ピリドキサール−5’−リン酸の溶液をマイクロタイタプレートのウエルに添加した。50倍希釈で1000μMから始め、次いで、333、111、37.0、12.3、4.12、1.37及び0.457μMまで連続3倍希釈した。
【0065】
CYPサブタイプ阻害アッセイ用に、50mMの濃度のピリドキサール−5’−リン酸の原液を蒸留水で新たに調製した(1NのNaOHでpH7.0に調整した)。このピリドキサール−5’−リン酸の溶液を、蒸留水で111μMに希釈し、次いで37.0μMから順に12.4、4.12、1.37、0.457、0.152、0.0508及び0.0169μMまで連続3倍希釈してマイクロタイタプレートのウエルに添加した。
【0066】
データ分析
各化合物の存在下及び非存在下(媒体対照)で蛍光シグナルを2回測定した平均を計算し、バックグランドノイズについて補正した。阻害率は、化合物の存在下及び非存在下で補正された蛍光シグナルの差を化合物の非存在下に補正された蛍光シグナルで割り、100%を掛けることにより計算した。形成された代謝産物を50%阻害(IC50)した、阻害剤又はピリドキサール−5’−リン酸の濃度を(必要に応じて)GraphPad Prismソフトウエア(Version 3.00, GraphPad Software Inc., San Diego, CA)を使用して、阻害(%):対数濃度データの非線形回帰分析(S字形の用量応答曲線)により計算した。
【0067】
結果
CYP阻害剤アッセイにおいて測定された様々な代謝産物の蛍光に於けるピリドキサール−5’−リン酸の効果を判定した。図1に示されるように、ピリドキサール−5’−リン酸は、これらのアッセイにおいて測定した6つの代謝産物うちの5つ(CHC、7−HC、7−HFC、AHMC及びキノリノール)の蛍光を、37μMより高い濃度で有意に消失(低減)させた。フルオレセイン(CYP2C8酵素によるジベンジルフルオレセインの代謝後に測定された代謝産物)の蛍光の値は、ピリドキサール−5’−リン酸(1000μM以下)による影響を受けなかった。CYP触媒活性に対するピリドキサール−5’−リン酸の阻害効果を、0.0169〜37μMの濃度範囲で試験した。
【0068】
公知の阻害剤及びピリドキサール−5’−リン酸とCYPサブタイプ(CYP1A2、CYP2A6、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、CYP2E1及びCYP3A4)の各々とのインキュベーションの結果を、図2〜図11にグラフで示す。様々なCYP阻害剤について観測されたIC50値は、(CYP1A2、CYP2A6、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9、CYP2D6及びCYP2E1についての)アッセイの検証に際して本発明者らの研究室で以前に得た値に類似しており、(CYP2C19及びCYP3A4アッセイキットについては)供給業者が測定した値に類似している(表1)。これらのデータは、いずれのアッセイにおいても酵素活性が損なわれなかったことを示している。
【0069】
【表1】
【0070】
試験した濃度範囲(0.0169〜37.0μM)に於いて、ピリドキサール−5’−リン酸は、7つのCYP酵素:CYP1A2、CYP2A6、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9、CYP2D6及びCYP2E1の触媒活性を阻害しなかった(それぞれ、図2、3、4、5、6、8及び9)。しかし、ピリドキサール−5’−リン酸は、CYP2C19及びCYP3A4酵素サブタイプの代謝活性を阻害した(図7、10及び11)。ピリドキサール−5’−リン酸の効能は、CYP2C19及びCYP3A4酵素サブタイプについては比較的類似していた(IC50値はそれぞれ、約33μM及び約37μM)。ピリドキサール−5’−リン酸は、基質がBFCであるCYP3A4酵素が介在する代謝を、基質BQに於ける代謝(IC50>37μM)よりわずかに大きく(IC50≒37μM)に阻害するようである(それぞれ、図10及び11)。ピリドキサール−5’−リン酸及び公知の阻害剤についてのIC50値の概要を図12に示す。
【0071】
結論
化合物ピリドキサール−5’−リン酸は、試験した濃度範囲(0.0169〜37.0μM)にわたって、7つのCYPサブタイプ:CYP1A2、CYP2A6、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9、CYP2D6及びCYP2E1の触媒活性を選択的には阻害しなかった。従って、臨床的に適切な薬物相互作用が、ピリドキサール−5’−リン酸とこれらの酵素の基質の間に生じることは期待できない。ピリドキサール−5’−リン酸は、試験した9つのヒトCYPサブタイプのうちの2つ(CYP2C19及びCYP3A4)の触媒活性を、比較的高い濃度(CYP2C19についてはIC50=33μM、そしてCYP3A4については、>37μM)で、選択的に阻害した。しかし、インビトロでのこれら2つのCYPサブタイプについてのピリドキサール−5’−リン酸の比較的低い阻害能をからすると、重大な薬物相互作用が発生する可能性はありそうもない。
【実施例2】
【0072】
P5Pとスタチンの併用療法は、冠動脈インターベンション後の心筋虚血性障害を減少させる
方法−試験概要
4つの施設で経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた60人の患者を2:1の二重盲検方式で無作為に割り付けて、P5P又はプラシーボで治療した。組み入れ基準の要件は、先ず、単一血管病変(複数を含む)に対するPCIの非緊急性が確認され、虚血性合併症(Califf RM、Abdelmeguid AE、Kuntz RE、Popma JI、Davidson CJ、Cohen EA、Kleiman NS、Mahaffey KW、Topol EJ、Pepine CJらの「血管再生術後の筋壊死(J Am Coll Cardiol 1998; 31: 241-251)」及びESPRIT研究者らの「計画冠動脈ステント移植におけるエプチフィバチドの新規投与計画:無作為化、プラシーボ対照試験(Lancet 2000; 356: 2037-2044)」)のリスクが高いことが決定的である以下の臨床特性:急性冠動脈症候群(PCI後48時間以内の胸痛)、最近のAMI(≦7日間)、心外膜血流減少、血管造影性血栓、(心臓の)駆出率≦30%又は静脈グラフト病変、のうち1つ以上が特定されることである。
【0073】
PCI処置又は標準的な併用療法に対するあらゆる一般的な(薬の)禁忌に加えて、PCI直前のクレアチンキナーゼ(CK−MB)の正常上限を超えた上昇、心房細動若しくは左脚(左束枝)ブロックの心電図に於ける徴候、又は臨床的に有意な検査所見上の異常に関連した徴候(トランスアミナーゼ、ビリルビン若しくはアルカリホスファターゼの値が正常な上限値の1.5倍より高い、又は血清クレアチニンが1.8mg/dLより高い)を、組み入れ除外の主な基準とした。高いトロポニン測定値を有する患者は、血管再生前の漸減値の証拠書類提出とともに、予定されたPCI実施の24時間前にピークトロポニン値を報告することを条件に、この試験への参加が許された。インフォームドコンセントをしたうえで、P5P治療のために無作為に割り付けた患者に腸溶コーティングされたP5Pを、例えばPCI実施の4時間以上前に10mg/kgの経口用量で投与し、その後、1回に付き5mg/kgの経口用量を1日に2回、14日間投与した。中止した治療についてのコンプライアンス及び理由を全ての患者について記録した。
【0074】
試験のエンドポイント及びその定義
この試験の第一の目的は、リスクの高い人工冠動脈形成術(PCI)において心臓保護薬としてP5Pを用いる治療の実施可能性を評価することであった。梗塞サイズの第一のエンドポイントは、PCI開始直前に開始し、ベースラインにて、6時間毎に24時間経時的にCK−MB酵素を測定して、台形則(Press WH, Teukolsky SA, Vetterling WT, Flannery BP. Numerical Recipes. Cambridge, UK: Cambridge University Press, 1994: 127-133.)により評価した。12リード式心電図の連続モニタリング(Northeast Monitoring, Boston, Massachusetts)を用いて、PCI後24時間以内の心筋虚血の発症を第二のエンドポイントとして評価した。処置周辺時の虚血の徴候を、PCI間の60分で100μV以上のSTセグメント低下が1分以上継続し、1分以上発作を起こさないものと定義した。曲線STセグメント偏差の曲線下面積は、造影剤注入の初回から最後までの間で測定した。すべての心臓マーカー及びSTセグメントのモニタリングデータは、治療割り当てを知らされていないコア研究所(University of Maryland School of Medicine, Baltimore, Maryland; Duke Ischemia Monitoring Laboratory, Durham, North Carolina)にて分析された。
【0075】
予め指定されていた第二のエンドポイントの追加として、複合的及び個別の30日間の死亡率、致命的でない梗塞、新規の若しくは悪化する心不全、又は主要な有害虚血性事象が存在しないことははっきりしているが、臨床上の安全性とは別の再発性虚血;心筋梗塞における血栓溶解(Thrombolysis In Myocardial Infarction(TIMI))の重大な出血;及び肝機能又は凝固試験の異常;を含む。急性心筋梗塞(AMI)は、正常上限(正常上限 7ng/mL)の3倍以上のCK−MB上昇及び/又は正常上限(正常上限 0.1ng/mL)の1.5倍以上のトロポニンTレベルと定義された。以前のトロポニン(又はCKMB)値が、正常上限より高かった場合、値は、AMIの定義に見合う正常上限の2倍以上(CK−MBについては3倍以上)であることに加えて、ベースライン測定値の50%より高いことが要求される。通常の化学的処理、完全血球算定、及び凝固アッセイを、無作為割り付け後7日目及び30日目にベースラインで実施した。処置周辺時のピークCK−MB、及びPCI後24時間以内のトロポニンレベルのベースラインからの最大差異も検討した。
【0076】
データ収集及び統計的分析
1用量以上の試験薬を摂取し、PCIを受けた患者を、第一及び第二効能並びに安全性のエンドポイントのすべてについて分析した。1用量以上の試験薬を摂取したが、PCIを受けなかった患者は、第1効能及びSTセグメントモニタリング分析からは除外したが、安全性分析には組み入れた。統計的検定は、0.05のレベルでの両側検定であり、包括解析の原理を用いた。ウィルコクソン(Wilcoxon)の順位和検定を用いて、すべての連続変数を分析した。カテゴリー変数は、ピアソンのカイ2乗検定を利用したSTセグメントモニタリングデータを除き、フィッシャーの直接確立検定を用いて比較した。統計的分析は、SAS version 8.2(SAS Institute, Cary, North Carolina)を用いて行った。
【0077】
結果
高リスクPCIにおけるP5Pの試験に登録した60人の患者のうち、すべての患者がP5P又はプラシーボでの治療を受けたが、4人の患者(P5P 3人、プラシーボ 1人)は、予定の血管再生を受けなかった。心臓酵素データの収集に不備があったため、さらに3人の患者を曲線下の面積の分析から除外した。結果として、60人中53人の患者を第1効能並びに30日間の臨床試験及び/又は安全性分析にそれぞれ組み入れた。
【0078】
確立した心血管性の疾患、血管再生の既往症及び心血管リスクファクターが存在する点では、P5P又はプラシーボ治療に無作為に割り付けられた患者と、急性冠動脈症候群に罹患している患者を対象とした大規模な同時試験における患者集団の代表とでは似通っていた(表2)。全体的に見て、集団の平均年齢は、58歳であり、患者の81.7%が、男性であり、21.7%が、以前にPCI及び/又はバイパス手術を受けていた。P5Pでの治療を受けた患者に於いては、血管再生についての指標である最近のAMIの発症はより一般的なものになっていたが、各グループでほぼ同数の患者が急性冠動脈症候群に罹患しており、全患者のほぼ半数はPCI以前に高いトロポニンレベルを有していた。
【0079】
対照群の患者に心外膜血流減少の発症率が高いことを除けば、ベースライン血管造影及び処置特性も治療グループ間で似通っていた(表3)。P5P又はプラシーボの投与は、それぞれPCIの平均6.1時間前及び8.4時間前に実施した。ステント移植は、プラシーボ及びP5P治療グループのそれぞれ100%及び97.3%に実施した。1件の静脈グラフトインターベンションだけは、遠位塞栓防護を用いて実施した。両グループにおいて右冠動脈を最も一般的に治療したが、プラシーボで治療した数人の患者には、伏在静脈グラフトの血管再生を施した(表4)。血管造影の処置に関わる合併症(例えば、重大な切開、突然の血管閉鎖)は、稀であった(表3)。
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
【0082】
処置周辺時のCK−MB曲線下の面積の中央値(median)に従って測定した処置周辺時の梗塞サイズの第1のエンドポイントは、32.9ng/mLから18.6ng/mLに減少した(p=0.038)。これは、CK−MBの分布のシフトに反映している(表4及び図12)。同様に、処置周辺時のCK−MBの最高レベルは、P5Pを摂取した患者では有意に低下した。カテゴリー分類により、致命的ではないAMIの30日間の発症率は、グループ間で差はなかった(P5Pで12.8%対プラシーボで10.0%、p=1.0)。死亡はなく、30日間の複合的有害事象が起こる率(死亡、致命的ではないAMI、新たな及び/又は悪化しつつある心不全、又は再発性虚血)は、ほぼ同じであった(P5Pで17.9%対プラシーボで15.0%、p=1.0)。
【0083】
心電図STモニタリングデータは、PCIを受け、治療を受けた患者の94.6%について利用可能であった(表4)。PCI後の虚血は、両グループの患者の約15%に発症した。P5Pで治療した方がPCI後に虚血が起こる率が低くなることが観察された(14.7%対17.6%、p=0.78)が、心電図での継続的なモニタリングでは虚血パラメータには有意な差がなかった(表4)。
【0084】
【表4】
【0085】
P5Pでの治療に関連した安全上の問題は全く確認されなかった。重大な出血の発生(2.8% P5P対10.5% プラシーボ、p=0.27)及び血液製剤注入の必要性(2.5% P5P対10.0% プラシーボ、p=0.26)は稀であり、両グループ間に有意な差はなかった。7日目及び30日目における所定の化学処理及び凝固試験での異常性には明確な差はなかった。しかし、両グループに於いて、患者の約1/4が、2週間分の処方を完了する前に薬物療法を中止した(30.8% P5P対25.0% プラシーボ、p=0.77)。P5Pは摂取していたがPCIを受けなかった患者(3人の患者、7.5%)についての早期中止の最も一般的な原因は、胃腸での耐性がないことと、その後の非特異性の骨格筋痛であった。
【0086】
この試験に参加した60人の患者のうち28人の患者は、P5P治療に加えてスタチンでの補助治療を受けた。表5に示すように、処置周辺時のCK−MBの最高レベルは、プラシーボ及びスタチンでの治療を受けた患者と比較してP5Pとスタチンの併用治療を受けた患者の方が低下した。
【0087】
【表5】
【0088】
(結論)
処置周辺時の虚血性合併症のリスクが高い患者に於いてスタチンでの治療は、PCI後の結果はあまり芳しいものではなかった。P5Pでの治療は心筋障害を減少させ、PCI後に放出されるCK−MB総量の減少にも反映された。P5P療法は、処置周辺時のCK−MBピークの上昇を有意に低下させ、CK−MB分布より低いレベルへと有意にシフトした(図13)。
【実施例3】
【0089】
P5Pとスタチンの併用療法は、高血圧の糖尿病患者において血圧を低下させ、脂質レベルを改善する
概要
この試験は、糖尿病も併発している患者に於いて、軽度から中等度の高血圧症及び高脂血症の治療のため、14週間、非盲検で強制的に、用量漸増で、1日1回、250mg〜750mgの用量でP5Pを投与し、その効能及び安全性を試験するものであった。
【0090】
患者の定義
組み入れ基準のすべてを満たし、いずれの除外基準にも該当しない患者が登録の資格を有するもので、主な組み入れ基準は高血圧症及び糖尿病であった。選考に際して、患者はすべて、無併発性で安定な軽度から中等度の高血圧症(仰臥位の拡張期血圧SUDBP:≧90及び≦114mmHg)を呈しているか、その既往症がなければならないが、この疾患の治療薬の使用又は不使用には顧慮しない。加えて、4週間のプラシーボ導入期間終了時に単盲検治療の資格を得るには、患者は平均SUDBPが90mmHg以上、114mmHg以下でなければならない。この試験への組み入れの資格を得るためには、高血圧患者は、選考及び治療両方のための訪問初日に、管理下であっても非管理下であってもよいが、糖尿病(1又は2型)であり、その既往症(24ヶ月より長い)を有していなければならない。糖尿病及び高血圧に罹患している以外は、患者は、彼らの年齢に相応の良好な健康状態でなければならない。既往症及び身体検査は、年齢に応じた正常範囲内でなければならず、万一異常であれば、治験担当医師の臨床的に有意でないとの見解を要する。臨床試験(示差的な、プロトロンビン及び部分トロンボプラスチン時間、血小板算定及び尿検査でのCBC、並びに血液化学検査パネル)は、正常であるか、異常な場合には臨床的に有意でないとの見解を要する。患者は、正常なECGを示すか、又は異常な場合には臨床的に有意でない有意でないとの見解を要する。
【0091】
除外基準には、出血及び/又は浸出及び/又は眼底検査での鬱血乳頭により証明されるような、現に加速的な又は悪性の高血圧症であるか又は既往症(過去12ヶ月)があることが、挙げられる。ACE阻害剤で治療した際に顔面、唇、舌、声門又は喉頭の血管性浮腫の既往症を有する患者は除外した。選考時に114mmHgより高い拡張期BP、及び/又は200mmHgより高い収縮期BPを有した患者は除外した。プラシーボ導入期間終了時に同様の測定値を有した患者は、この試験のその後の参加を中止させた。プラシーボ導入期間中、徐脈(<45bpm)の徴候又は100bpmより高い安静時心拍数を有した患者はこの試験の次の段階に進ませず、その後の参加を中止させた。
【0092】
除外基準には、うっ血性心不全、心臓性ショック、非管理下の不整脈、急性心筋炎若しくは心膜炎、有意な弁膜性若しくはうっ血性心疾患及び不安定狭心症のような、MI又は脳血管発作及び臨床的に有意な心臓の病状、に現に罹っている又は既往症(過去6ヶ月)があること;房室ブロック(第2度/第3度)若しくは洞不全症候群、又は早期興奮症候群と関連する心房性細動若しくは粗動に現に罹っている/既往症を含む他のあらゆる伝導欠損若しくは異常である、に現に罹っていること又は証拠があること;臨床的に有意な胃腸疾患、腎不全(血清クレアチニン:>115μmol/L)、肝臓病、又は電解質バランス(血清カリウム:<3.5又は>5.3mmol/L、血清ナトリウム:<136又は>145mmol/L)であること;気管支喘息又は慢性閉塞性肺疾患に現に罹っていること;又は、治験責任医師の見解で患者の参加がこの試験の妨げとなる、又は結果の変数を混乱させる、あらゆる臨床的に有意な随伴疾患に現に罹っていること、が挙げられる。
【0093】
患者の参加がこの試験の妨げとなる、又は結果の変数を混乱させる、あらゆる臨床的に有意な随伴疾患に罹っている患者を除外した。患者は、このプロトコルの開始前の12ヶ月間にアルコール乱用又は不法薬物使用の経歴を有していてはならない。患者は、末期疾患に罹患していてはならない。患者は、上腕囲が41cm以下で、妊婦や授乳している女性ではなく、また出産適齢期の女性の場合は、適切に避妊する必要がある。この試験の前30日以内に治験化合物での治療を受けていた患者は除外する。
【0094】
以下の薬物の使用は、除外の理由となる(各々、この試験のプラシーボ導入期の前に薬物の使用は安全に中止しなければならず、このプロトコルが完了するまで差し控えなければならない):すべての利尿薬及び抗高血圧薬(β遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、血管拡張薬、ACE阻害剤を含む)、MAO阻害剤、すべての抗不整脈薬、ジギタリス、主要な精神安定薬、抗うつ薬、シメチジン、コルチコステロイド、及び抗腫瘍薬、が挙げられる。患者には、インフォームドコンセントを要する。さらなる除外基準は、Product Prescribing Information for Vitamin B6(PDR, 57, 2003; 590, 926, 1894, 3221, 3237)に挙げられているあらゆる(薬の)禁忌である。
【0095】
治療スケジュール
表6は、クリニックでの試験用治療スケジュールを示すものである。実質的には、患者は全員、活性治療薬での治験を開始するのに適任となるように、規定の4週間でプラシーボ導入を完了する。その後、患者のうち適任者は、250mg/日のP5Pで治療を開始する。次の2週間、用量依存的な副作用を制限するのを条件として、1日1回ベースで当該用量を経口投与し、次いでP5Pの用量を500mg/日まで徐々に増やしていく。再度、500mg/日の用量レベルで2週間治療した後、用量依存的な副作用を制限するのを条件として、すべての患者に於いてP5Pのの用量を750mg/日まで徐々に増やし、次の2週間は、用量依存的な副作用を制限するのを条件とすることなく当該用量を維持した。その後、この試験の最終の4週間は、すべての患者をプラシーボ薬で治療した。いずれの患者の総試験期間も、12回のクリニック訪問を含む、14週間であった。この試験の開始前に抗脂質薬物療法を行っていた患者は、この試験を通して彼らの抗脂質投薬計画を継続した。
【0096】
【表6】
【0097】
試験及び測定値
以下の試験によって、試験参加者全員は定期的に評価された:
【0098】
第一効能評価
・仰臥位拡張期血圧(SUDBP)を、特定の間隔をあけて測定する、
・トリグリセリド、総コレステロール、LDLコレステロール、及びHDLレベルを、特定の間隔をあけて測定する。
【0099】
第二効能評価
・仰臥位拡張期血圧(SUDBP)を、特定の間隔をあけて測定する、
・立位収縮期及び拡張期血圧(STSBP/STDBP)を、即時型及び遅延型で特定の間隔をあけて測定する。
【0100】
安全性評価
・身体検査(完全型及び簡易型)、
・研究室に於ける評価:CBC、全ビリルビン、クレアチニン、SGOT、SGPT、アルカリホスファターゼ、BUN、血清グルコース、全タンパク質、電解質(ナトリウム、カリウム及び塩化物を含む)、血液脂質、葉酸、及び血清ホモシステインレベルを含む血液化学反応、並びに尿検査
・12リード式ECG(心電図)(解説付き)
・有害事象(訪問時ごとに記録)
・併用薬物(訪問時ごとに記録)
【0101】
効能評価
一般に、以下の薬効評価を実施する:
・仰臥位収縮期血圧(SUSBP)
・仰臥位拡張期血圧(SUDBP)
・立位(即時型)収縮期血圧(STiSBP)
・立位(即時型)拡張期血圧(STiDBP)
・立位(遅延型、2分)収縮期血圧(STdSBP)
・立位(遅延型、2分)拡張期血圧(STdDBP)
・トリグリセリドレベル
・総コレステロールレベル
・LDLコレステロールレベル
・HDLコレステロールレベル
【0102】
薬剤投与計画
全ての患者は、1日1回、朝食の1時間前に薬物治療を受ける。投薬時ごとに、以下の投薬レベルを考慮して処方された数の錠剤を水とともに経口摂取することとなる:
【0103】
<試験薬> <薬剤投与計画>
プラシーボ導入(PLACEBO LEAD-IN)
プラシーボ錠剤1錠(朝) : 250mgのP5Pのためのプラシーボ、1日1回
活性成分(ACTIVE)
P5Pの250mg錠剤1錠: 250mgのP5P、1日1回(朝)
P5Pの250mg錠剤2錠: 500mgのP5P、1日1回(朝)
P5Pの250mg錠剤3錠: 750mgのP5P、1日1回(朝)
プラシーボ終了(PLACEBO LEAD-OUT)
プラシーボ錠剤(朝) : 250mgのP5Pのためのプラシーボ、1日1回
【0104】
試験薬の第一用量は、診療所職員の監督下で投与する。以前に抗脂質療法を受けていた患者は、この試験を通して変わることなく彼らの抗脂質投薬計画を継続した。
【0105】
治療継続期間
適任と認められた後、患者は各々、計14週間にわたってプラシーボ又は活性治療薬の投与を受ける。
【0106】
結果
表7に示すように、P5Pとスタチンの併用治療の患者は、14週の試験の終了時に脂質プロファイルが改善されていた。平均して、P5Pとスタチンの併用療法によりトリグリセリドレベル及び総コレステロールが低下した。1人を除くすべての患者において、P5P−スタチン療法により、LDLレベルが低下し、HDLレベルが上昇し、LDL:HDL比が改善された。
【0107】
【表7】
【0108】
参照値
トリグリセリド: <150mg/dL 正常
総コレステロール: <200mg/dL 正常
LDLコレステロール: <130mg/dL 正常
HDLコレステロール: >又は=40mg/dL 正常
コレステロール:HDL コレステロール比:<4.4 正常
平均して、P5P及びスタチンを摂取した高血圧患者は、この試験の終了時に収縮期及び拡張期血圧も低下していた。
【実施例4】
【0109】
P5P−シンバスタチン治療は、高コレステロール血症のウサギの脂質プロファイルを改善する
この試験では、ウサギ高コレステロール血症モデルにおいて、P5P単独及びシンバスタチンとの併用で、潜在的抗アテローム生成効果を判定する。この試験では、アテローム動脈硬化性病変形成、脂質プロファイル(総コレステロール、LDL、HDL、トリグリセリド及び酸化LDL)、ホモシステインレベル、及び様々な炎症マーカー(CRP、IL−1β、IL−6、IFN−γ及びTNF−α)に対する、P5P及びシンバスタチンのそれぞれ単独並びにそれらの併用での効果を比較する。
【0110】
動物
2.0〜3.0kgの雄ニュージーランド白ウサギ
動物の餌
標準コレステロール食は、Federated Co−operative Limited(Saskatchewan)製のCo−op Complete Rabbit Feedである。2%コレステロール食は、Purina Mills(USA)製のTest Diet 0009459 MRab/2% Chol 3/16である。
ウサギに標準コレステロール食及び2%コレステロール食を適宜給餌する。すべての動物が、血液試料採取後にチモシーキューブを摂取する。
【0111】
試験設計
この試験の開始前、ウサギを以下のグループのうちの1つに無作為に割り付ける(グループ当たり、n=9):
グループ1: 標準コレステロール食(標準)
グループ2: 高コレステロール食(対照)
グループ3: 高コレステロール食 + P5P 10mg/kg/日
グループ4: 高コレステロール食 + シンバスタチン 5mg/kg/日
グループ5: 高コレステロール食 + P5P 10mg/kg/日 + シンバスタチン 5mg/kg/日
【0112】
合計8週間にわたって正常コレステロール食又は高コレステロール食をウサギに給餌する。正常コレステロールのウサギは、経鼻胃チューブにより、1日1回、1mLのエタノール及び5mLのRO水で処置する。高コレステロールの動物は、経鼻胃チューブにより、1日1回、P5P(10mg/kg)、シンバスタチン(5mg/kg)、又はP5Pとシンバスタチンの併用薬(P5P 10mg/kg;シンバスタチン 5mg/kg)のいずれかで処置する。P5Pは、溶液のpHが約7になるように5mLの0.05NのNaOH液に溶解する。シンバスタチンは、1mLの無水エタノールに溶解する。
【0113】
(表7)
【0114】
0、2、4及び6週目にウサギの耳周辺の静脈から5mLの血液を採取する。採血の前に、それらの動物を1mg/kgのアセプロマジンで鎮静させる。採血後、血清を分離する。血清をアリコート(500μL)して、様々な脂質(総コレステロール、LDL、HDL、トリグリセリル、酸化LDL)及びサイトカイン(CRP、IL−1β、IL−6、IFN−γ及びTNF−α)のアッセイに使用するまで−80℃で冷凍しておく。
【0115】
8週間後、動物を麻酔処理し、10mLの血液を採取する。それらの動物を安楽死させ、心臓及び胸部大動脈を採取する。それらの心臓及び大動脈を液体窒素又はエタノール・ドライアイス浴で冷凍し、分析するまで−80℃で保管する。
【0116】
時系列
【0117】
試験物質
P5P(ピリドキサール−5’−リン酸・一水和物)は、Sigma(P82870)から購入する。シンバスタチンは、ACIC Fine Chemicals Inc.から入手する。2つの試験化合物バイアルを、毎日各動物に提供する。第1バイアル(小)は、1mLの無水エタノールで希釈する。第2バイアルは、5mLのRO水又は5mLの0.05NのNaOH液のいずれかで希釈する。各バイアルについての希釈剤をそのバイアルにはっきりと記す。試験溶液は、毎日動物に投与する直前に新たに調製する。P5P原液は、低照明条件下、4℃の冷蔵庫内で保管する。シンバスタチンは、製品推奨基準に従って保管する。個々の試験バイアルを低照明条件下、4℃の冷蔵庫内で保管する。
【0118】
(試験物質(複数を含む)の用量、投与経路及び継続期間)
ウサギを合計8週間にわたり1日1回、薬物を経口投与する。バイアル1(小;1mL)の内容物を最初に動物に与え、その後、バイアル2(大;5mL)の内容物を与える。試験化合物を投与した後に、5mLのRO水を追加で与える。
【0119】
結果
P5P及びHMG−CoA還元酵素阻害剤での治療は、結果として、LDL及びトリグリセリドレベルを低下させ、HDLレベルを上昇させ、ホモシステインレベルを低下させ、一般に、心血管の健康状態をより良い状態にする。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】図1は、各CYP阻害アッセイに於いてピリドキサール−5’−リン酸濃度の関数として測定した代謝産物(CHC、7−HC、HFC、フルオレセイン、AHMC及びキノリノール)の蛍光の減少を図示する線グラフ1(a)から1(f)である。
【図2】図2は、CYP1A2の触媒活性(CHCへのCECの代謝)の阻害を、それぞれフラフィリン(Furafylline)及びP5Pの濃度関数として図示する線グラフ2(a)及び2(b)である。
【図3】図3は、CYP2A6の触媒活性(7−HCへのクマリンの代謝)の阻害を、それぞれトラニルシプロミン及びP5P濃度の関数として図示する線グラフ3(a)及び3(b)である。
【図4】図4は、CYP2B6の触媒活性(HFCへのEFCの代謝)の阻害を、それぞれトラニルシプロミン及びP5P濃度の関数として図示する線グラフ4(a)及び4(b)である。
【図5】図5は、CYP2C8の触媒活性(フルオレセインへのDBFの代謝)の阻害を、それぞれケルセチン及びP5P濃度の関数として図示する線グラフ5(a)及び5(b)である。
【図6】図6は、CYP2C9の触媒活性(HFCへのMFCの代謝)の阻害を、それぞれスルファフェナゾール及びP5P濃度の関数として図示する線グラフ6(a)及び6(b)である。
【図7】図7は、CYP2C19の触媒活性(CHCへのCECの代謝)の阻害を、それぞれトラニルシプロミン及びP5P濃度の関数として図示する線グラフ7(a)及び7(b)である。
【図8】図8は、CYP2D6の触媒活性(AHMCへのAMMCの代謝)の阻害を、それぞれキニジン及びP5P濃度の関数として図示する線グラフ8(a)及び8(b)である。
【図9】図9は、CYP2E1の触媒活性(HFCへのMFCの代謝)の阻害を、それぞれジエチルジチオカルバミン酸(DDTC)及びP5P濃度の関数として図示する線グラフ9(a)及び9(b)である。
【図10】図10は、CYP3A4の触媒活性(HFCへのBFCの代謝)の阻害を、それぞれケトコナゾール及びP5P濃度の関数として図示する線グラフ10(a)及び10(b)である。
【図11】図11は、CYP3A4の触媒活性(キノリノールへのBQの代謝)の阻害を、それぞれケトコナゾール及びP5P濃度の関数として図示する線グラフ11(a)及び11(b)である。
【図12】図12は、P5P(A)及びプラシーボ(B)で治療した患者についての対数−正規分布に当てはめた曲線下面積CK−MB値を図示する線グラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、HMG−CoA還元酵素阻害剤を用いる併用療法及びそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
2000年の米国心臓協会(American Heart Association)によると、死因の39.4%は、心血管性の疾患によるものであった。心疾患及び間接的には卒中を発現するリスクは、血中コレステロール値が上昇するにつれて着実に増大する。高い血中コレステロールレベルは、糖尿病発現のリスク増大も伴う。望ましい血中レベルは、200mg/dL未満である。境界許容レベルは、200〜239mg/dLの範囲であり、240mg/dL又はそれ以上になるとリスクが高くなる。約102,300,000人のアメリカ人が、高コレステロール値を有しているとされている。
【0003】
高コレステロール血症は、内在性及び外在性の血管作用薬に対して応答する、種々の血管の応答性に影響を及ぼすことが知られている。特に興味深いのは、例えば、5−ヒドロキシトリプタミン及びノルアドレナリンのような血管収縮薬に対する応答が増加し、また例えば、アセチルコリン及び窒素酸化物のような血管拡張薬に対する反応性が低下することである。動脈硬化の発現共にこれが、高血圧、卒中、再狭窄、遅発性静脈グラフト不全及び冠動脈疾患といった多数の心血管関連疾患の進行に重要な役割を果たしているのである。
【0004】
現在、高コレステロール血症は、例えば主に、スタチン、胆汁酸塩捕捉剤、フィブラート又はナイアシン等の脂質低下薬で治療されている。スタチンは、恐らく利用可能な脂質低下薬のなかで最も有効なものであるが、例えば、プロテアーゼ阻害剤(例えば、ノルビル(norvir))、アセトアミノフェン、シクロスポリン、ミベフラジル、アゾール系殺菌薬、マクロライド系抗生物質及びワルファリン等のその他の薬物と組み合わせてスタチンを用いるのは、薬物間で有害な反応を起こすため制限されている。最も顕著な有害反応としては、肝臓での薬物の代謝を担う肝シトクロムP450酵素を阻害することが挙げられる。
【0005】
対照的に、ビタミンB6(これも脂質低下特性を有する)は、有意な副作用を伴わず、耐性が高い薬物である(Brattstromらの「血漿ピリドキサール−5’−リン酸濃度が低下している80歳男性において、ピロキシジン(pyroxidine)は、コレステロール及び低比重リポ蛋白を減少させ、抗トロンビンIIIの活性を増大させる」Scand J Clin Lab Invest, 1990, 50:873)。幾つかのビタミンB6誘導体も脂質低下特性を有する。例えば、米国特許第6,066,659号には、高脂血症及びアテローム性動脈硬化症の治療のためのビタミンB6(ピリドキシン)、ピリドキサール及びピリドキサミン誘導体の使用についての教示があり、ドイツ国特許第2461742号C2には、高脂血症を治療するためのピリドキサール、ピリドキソール(pyridoxol)、及びピリドキサミン−5’−リン酸エステルの使用についての教示がある。ピリドキサール−5’−リン酸グルタミン酸マグネシウムを補給することによっても、脂質レベルが低下することが知られている(Khayyalらの「実験的高コレステロール血症における血管反応性に対するピリドキサール−5’−リン酸グルタミン酸マグネシウムの効果」Drugs Exp Clin Res. 1998, 24: 29-40)。
【0006】
脂質低下特性に加え、ビタミンB6及びその代謝産物、例えばピリドキサール−5’−リン酸、は、心血管性の疾患又は関連疾患、例えば心筋虚血及び虚血性再灌流障害、心筋梗塞、心肥大症、高血圧、うっ血性心不全、心筋梗塞後の心不全、アテローム性動脈硬化症を含む血管疾患、並びに凝血カスケードが活性化されている血栓及びプロトロンビンの状態に起因する疾患の治療に有用である。
【0007】
ホモシステインレベルを減少させる目的でビタミンB6を含有させる、ビタミンB6(ピロキシジン)を任意にコレステロール低下薬と併用するといった教示が先行技術により開示されている。例えば、米国特許第6,576,256号には、レニン・アンジオテンシン系の阻害剤、アスピリン及び場合によりビタミンB6(ピリドキシン)をHMG−CoA還元酵素阻害剤と併用することにより、心血管性のリスクが高い患者を治療する方法が開示されている。米国特許出願第20030049314号には、HMG−CoA還元酵素阻害剤、ACE阻害剤、アスピリン及び場合によりビタミンB6の組合せを含む、心血管性のリスクが高い患者を治療するための製剤が開示されている。米国特許出願第20030068399号には、HMG−CoA還元酵素阻害剤、レニン・アンジオテンシン系の阻害剤、アスピリン及び場合によりビタミンB6の組合せを含む、心血管性のリスクが高い患者を治療するための経口投与可能な医薬剤形が開示されている。しかし、脂質低下薬としてのビタミンB6関連化合物とHMG−CoA還元酵素阻害剤を組み合わせて用いる併用療法は未だ存在しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
スタチンを他の薬物と併用することによる治療上の相乗効果の可能性は、肝毒性のために限られたものとなっている。有害な薬物反応を誘発せず、薬物誘発性の肝毒性に侵される恐れのある人々に適した、心血管性の疾患及び糖尿病のような高コレステロール血症及び関連疾患を治療する、また、それらを予防するための併用療法は未だ存在しない。従って、スタチンに関する現行療法に於ける限界を克服する新規な医薬組成物及び治療方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要約)
本発明は、(a)HMG−CoA還元酵素阻害剤、(b)ビタミンB6関連化合物、及び(c)薬学的に許容される担体、を含む医薬組成物を提供する。
【0010】
本発明の一態様において、HMG−CoA還元酵素阻害剤は、プラバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、シンバスタチン、ロスバスタチン(rosuvastatin)、ベロスタチン(velostatin)、フルインドスタチン(fluindostatin)、及びこれらの混合物から成る群より選択される。
【0011】
本発明の他の態様において、ビタミンB6関連化合物は、ピリドキサール、ピリドキサール−5’−リン酸、ピリドキサミン、ピリドキサールの3−アシル化類似体、ピリドキサール−4,5−アミナールの3−アシル化類似体、リン酸ピリドキシン類似体、及びこれらの混合物から成る群より選択される。
【0012】
本発明は、(a)HMG−CoA還元酵素阻害剤、(b)ビタミンB6関連化合物、及び(c)薬学的に許容される担体、を含んでなる医薬組成物の治療有効用量を投与することを含む、心血管性の疾患に罹患する恐れのある患者を治療するための方法も提供する。
【0013】
一態様に於いて、本発明の方法は心血管性の疾患に罹患するリスクを有する患者を治療するためのものである。他の態様に於いては、本発明の方法は肝毒性に侵される恐れのある患者を治療するためのものである。
【0014】
心血管性の疾患は、うっ血性心不全、心筋虚血、不整脈、心筋梗塞、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、冠動脈疾患、高血圧症(高血圧)、アテローム性動脈硬化症(動脈の閉塞)、動脈瘤、末梢血管疾患(PAD)、血栓性静脈炎(静脈の炎症)、心内膜の疾患、心筋の疾患、心臓炎、うっ血性心疾患、心内膜炎、虚血性心疾患、心臓弁膜症(心臓の血管の単数又は複数の弁膜の機能不全)、動脈硬化症(動脈の硬化)、急性冠症候群(ACS)、深部静脈血栓症(DVT)、川崎病、再狭窄、遅発性静脈グラフト不全及び心臓移植から成る群より選択することができる。
【0015】
本発明は、(a)HMG−CoA還元酵素阻害剤、(b)ビタミンB6関連化合物、及び(c)薬学的に許容される担体、を含む医薬組成物の治療有効用量を投与することを含む、糖尿病に罹患する恐れのある患者を治療するための方法も提供する。
【0016】
本発明は、(a)HMG−CoA還元酵素阻害剤、(b)ビタミンB6関連化合物、及び(c)薬学的に許容される担体、を含む医薬組成物の治療有効用量を投与することを含む、アルツハイマー病に罹患する恐れのある患者を治療するための方法も提供する。
【0017】
本発明は、(a)HMG−CoA還元酵素阻害剤、(b)ビタミンB6関連化合物、及び(c)薬学的に許容される担体、を含む医薬組成物の治療有効用量を投与することを含む、骨粗しょう症に罹患する恐れのある患者を治療するための方法も提供する。
【0018】
HMG−CoA還元酵素阻害剤の用量は、1日当たり0.1mg〜1000mgである。1日当たりの用量を、10mgとすることが可能である。
【0019】
ビタミンB6関連化合物の用量は、1日当たり0.1〜50mg/kgである。1日当たりのビタミンB6関連化合物の用量を、1から15mg/kgとすることが可能である。
【0020】
本発明は、ピリドキサール−5’−リン酸、ピリドキサールの3−アシル化類似体、ピリドキサール−4,5−アミナールの3−アシル化類似体、リン酸ピリドキシン類似体、及びこれらの混合物から成る群より選択されるビタミンB6関連化合物の治療有効量を投与することを含む、患者において高コレステロール血症を治療又は予防する方法をさらに提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(発明の詳細な説明)
低比重リポ蛋白(LDL)レベルの上昇と心血管性の疾患が発現するリスクとの因果関係は、十分に確立されている。LDLレベルの上昇が低下すれば、一過性の虚血性発作及び間接的には卒中を含む心血管事象の発症率、並びに死亡率が低下することが示された。最近では、LDLレベルの上昇は、糖尿病発現のリスク増大と関連づけられている。本発明者らは、スタチン及び特定のビタミンB6関連化合物の併用が、肝毒性の発生を実質的に伴わず相乗的に心血管性の疾患及び糖尿病のリスクを軽減することを見出した。
【0022】
スタチンは、非常に有効な脂質低下薬である。しかし、スタチンの使用は、薬物間相互作用及び肝毒性をはじめとする多くの問題を伴う。本発明者らは、P5P(ピリドキサール−5’−リン酸)などのビタミンB6関連化合物が、それ自体、脂質レベルの改善にも有効であり、スタチン療法に伴う問題の改善にも有効であることを見出した。
【0023】
本発明者らは、スタチンとビタミンB6関連化合物の併用が、有害な薬物間相互作用を伴わずに相乗的に脂質を低下させることを見出した。スタチンを他の薬物と併用すると肝CYP−450を阻害する薬物間相互作用が生じる。この種の酵素は主として肝臓における薬物の代謝に関与するものである。P5P及び関連化合物は、多数の酵素の補酵素であることから、これらの肝酵素を阻害せず、従って、スタチンの代謝に伴う負の作用を増幅させない。
【0024】
本発明者らは更に、ビタミンB6関連化合物の併用投与が、スタチンが誘発する肝毒性の軽減を助長することを見出した。例えば、スタチン療法中には、肝毒性の可能性があることを示す、アラニントランスフェラーゼマーカーの増加が観察された。一方、P5P及び関連化合物は、肝臓中のアラニントランスフェラーゼレベルを上昇させず、それ故、それら自体、肝毒性を起こすものではない。そして、スタチンと併用すると、P5P及び関連化合物は、スタチン治療に一般に伴う肝毒性の発症及び重篤度の悪化を防ぎ、効果的な治療をもたらす。
【0025】
P5P及び関連化合物の併用投与は、肝毒性に加え、手術の結果を向上させ、また、PCI(経皮的冠動脈形成術)後の心筋障害の発症及び重症度を低下させる。
【0026】
さらに、本発明の医薬組成物は、心血管性の疾患及び糖尿病のリスクを軽減する。本発明の医薬組成物は、アルツハイマー病及び骨粗しょう症のリスクを軽減するためにも使用することができる。
【0027】
アルカリホスファターゼに関して言えば、P5P及び関連化合物が、当該化合物の天然基質になっている。アルカリホスファターゼは骨の鉱質形成に関与し、P5Pとアルカリホスファターゼとの関連性は、特に、低ホスファターゼ血症の研究に関する文献に記載されている。血清中アルカリホスファターゼの低いレベル及び一連の骨格奇形は、低ホスファターゼ血症の特徴である。P5Pのレベルを上昇させると当該疾患は改善される。一方で、アルカリホスファターゼを含む骨代謝回転マーカーの血漿レベルは、対照の患者に較べてスタチン治療を施した患者のほうが低いレベルであったという研究結果が示された。従って、スタチン及びビタミンB6関連化合物の併用は、骨代謝回転を効果的に調節する。
【0028】
分泌型ホスホリパーゼA2(PLA2)に関して言えば、スタチンは、脂質低下特性に加えてPLA2レベルを低下させることが示された(Wiklundらの「血漿中の炎症性マーカーに対するシンバスタチン及びアトルバスタチンの効果」(J. Intern Med., 2002, 251: 338-347))。PLA2は、冠動脈性心疾患の強力な単独のリスクファクターであるとされており(Camejoらの「血管疾患におけるホスホリパーゼA2」(Circ Res. 2001, 89: 298-304 at 298))、また、炎症バイオマーカーであるとも考えられている。PLA2は、リポ蛋白及び細胞膜中に存在するグリセロアシルリン脂質中のsn−2エステル結合を触媒作用で加水分解して、非エステル型脂肪酸及びリゾリン脂質を形成する。
【0029】
PLA2は、心血管性の疾患リスクを増大させる幾つかのプロセスにおいて一定の役割を果たす。PLA2は、リポ蛋白の循環を改変し、心血管性の疾患のリスク増大に関連するLDL粒子の形成を誘導する(Camejoら、2001、p.298)。動脈壁において、PLA2は、基質に結合したリポ蛋白の凝集及び融合を誘導し、そして、さらに基質プロテオグリカンに対するそれらの結合強度を増大させる。PLA2は、血管収縮及び血小板粘着を促進するトロンボキサンにシクロオキシゲナーゼによって変換されるアラキドン酸を、触媒作用により細胞膜から放出させる。アラキドン酸は、シクロオキシゲナーゼによって、炎症、更に心血管性の疾患リスクファクターを媒介するプロスタグランジンに変換される。プロスタグランジン及びその他の炎症媒介因子は、コレステロール恒常性及び凝固をはじめとする多数のプロセスに影響を及ぼす。
【0030】
P5P、ビタミンB6代謝産物は、PLA2活性化によるアラキドン酸放出、の抑制に関係している(Krinshnamurthi及びKakkarの「ヒト血小板凝集、密顆粒放出及びトロンボキサンB2生成に対するピリドキサール−5’−リン酸(PALP)の効果−シッフ塩基形成の役割」(Thromb Haemost. 1982, 48: 136))。従って、スタチンとビタミンB6関連化合物の併用は、PLA2レベルを有益に調節する。
【0031】
ビタミンB6関連化合物を、コレステロール及びPLA2を低下させるための活性物質としてスタチンと併用したのは、本発明者らが初めてである。本発明者らは、ビタミンB6関連化合物の脂質低下特性及びPLA2阻害特性が、ビタミンB6及び以前に開示された他のビタミンB6誘導体のものより有意に優れていることを見出した(米国特許第6,066,659号及びドイツ国特許第2461742号C2を参照されたい)。P5Pは、ピロキシジンと比較してインビボで40倍高い効能がある。本発明者らは、スタチン及びビタミンB6関連化合物の心血管保護効果が、それらを併用で投与したとき、相乗されることも見出した。さらに、本発明者らは、スタチン及びビタミンB6関連化合物を併用投与した場合に有害な反応を起こさないことを見出した。ビタミンB6関連化合物は、肝CYP酵素を阻害せず、肝トランスアミナーゼを増加させない。
【0032】
これらの発見に鑑みて、本発明は、心血管性の疾患及び糖尿病のリスクを減少させるための医薬組成物及びそれらの使用を提供する。本発明の医薬組成物は、心血管性の疾患のリスクを低減させるのに、現在利用可能な併用療法に較べてより効果的である。本発明の医薬組成物は、リポ蛋白、ホモシステイン、血管収縮、血小板凝集及び炎症をはじめとする多数のリスクファクターを改善する。さらに、本発明の医薬組成物は、肝毒性を誘導しない。本発明の医薬組成物は、HMG−CoA還元酵素阻害剤、ビタミンB6関連化合物又はその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される担体を含んで成る。
【0033】
使用可能なHMG−CoA還元酵素阻害剤の例には、プラバスタチン(Pravachol(登録商標))、ロバスタチン(Mevacor(登録商標))、フルバスタチン(Lescol(登録商標))、アトルバスタチン(Lipitor(登録商標))、シンバスタチン(Zocor(登録商標))、ロスバスタチン(Crestor(登録商標))、ベロスタチン、及びフルインドスタチンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、HMG−CoA還元酵素阻害剤は、シンバスタチンである。「HMG−CoA還元酵素阻害剤」という用語は、HMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物の薬学的に許容される塩、エステル及びラクトン形態すべてを含むものとする。
【0034】
使用可能なビタミンB6関連化合物の例には、ピリドキサール−5’−リン酸(P5P)、ピリドキサール、及びピリドキサミンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。同様に使用することができる他のビタミンB6関連化合物には、米国特許第6,585,414号及び米国特許出願第2003114424号に開示されているような、ピリドキサールの3−アシル化類似体、ピリドキサール−4,5−アミナールの3−アシル化類似体、及びリン酸ピリドキシン誘導体が挙げられる。前記特許は、両方とも参照して、本明細書に取り込む。好ましくは、ビタミンB6関連化合物はP5Pである。
【0035】
ピリドキサールの3−アシル化類似体は、
【化016】
[式中、
R1は、アルキル又はアルケニル(この場合のアルキルは、窒素、酸素又は硫黄が割り込んでいてもよく、及び非置換又はその末端炭素がヒドロキシ、アルコキシ、アルカノイルオキシ、アルコキシアルカノイル、アルコキシカルボニルで置換されていてもよい)であるか、
R1は、ジアルキルカルバモイルオキシ、アルコキシ、ジアルキルアミノ、アルカノイルオキシ、アルカノイルオキシアリール、アルコキシアルカノイル、アルコキシカルボニル又はジアルキルカルバモイルオキシであるか、又は
R1は、アリール、アリールオキシ、アリールチオ又はアラルキル(この場合のアリールは、アルキル、アルコキシ、アミノ、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ又はアルカノイルオキシにより置換されていてもよい)である]
を含む。
【0036】
ピリドキサール−4,5−アミナールの3−アシル化類似体は、
【化017】
[式中、
R1は、アルキル又はアルケニル(この場合のアルキルは、窒素、酸素又は硫黄が割り込んでいてもよく、及び非置換又はその末端炭素がヒドロキシ、アルコキシ、アルカノイルオキシ、アルコキシアルカノイル、アルコキシカルボニルで置換されていてもよい)であるか、
R1は、ジアルキルカルバモイルオキシ、アルコキシ、ジアルキルアミノ、アルカノイルオキシ、アルカノイルオキシアリール、アルコキシアルカノイル、アルコキシカルボニル又はジアルキルカルバモイルオキシであるか、又は
R1は、アリール、アリールオキシ、アリールチオ又はアラルキル(この場合のアリールは、アルキル、アルコキシ、アミノ、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ又はアルカノイルオキシにより置換されていてもよい)であり、
R2は、第二級アミノ基である]
を含む。
【0037】
リン酸ピリドキシン類似体は、
【化018】
[式中、
R1は、水素又はアルキルであり、
R2は、−CHO、−CH2OH、−CH3又は−CO2R6(この場合のR6は、水素、アルキル、アリールである)であるか、又は
R2は、−CH2−O−アルキル(この場合のアルキルは、R1の代わりに3位の酸素に共有結合している)であり、
R3は、水素であり、R4は、ヒドロキシ、ハロ、アルコキシ、アルカノイルオキシ、アルキルアミノ又はアリールアミノであるか、又は
R3及びR4は、ハロであり、及び
R5は、水素、アルキル、アリール、アラルキル又は−CO2R7(この場合のR7は、水素、アルキル、アリール又はアラルキルである)である]、
【0038】
【化019】
[式中、
R1は、水素又はアルキルであり、
R2は、−CHO、−CH2OH、−CH3、−CO2R5(この場合のR5は、水素、アルキル、アリールである)であるか、又は
R2は、−CH2−O−アルキル(この場合のアルキルは、R1の代わりに3位の酸素に共有結合している)であり、
R3は、水素、アルキル、アリール又はアラルキルであり、
R4は、水素、アルキル、アリール、アラルキル又は−CO2R6(この場合のR6は、水素、アルキル、アリール又はアラルキルである)であり、
nは、1から6である]、及び
【0039】
【化020】
[式中、
R1は、水素又はアルキルであり、
R2は、−CHO、−CH2OH、−CH3又は−CO2R8(この場合のR8は、水素、アルキル、アリールである)であるか、又は
R2は、−CH2−O−アルキル(この場合のアルキルは、R1の代わりに3位の酸素に共有結合している)であり、
R3は、水素であり、R4は、ヒドロキシ、ハロ、アルコキシ又はアルカノイルオキシであるか、又は
R3及びR4は一緒になって、=Oを形成していてもよく、
R5及びR6は、水素であるか、又は
R5及びR6は、ハロであり、
R7は、水素、アルキル、アリール、アラルキル又は−CO2R8(この場合のR8は、水素、アルキル、アリール又はアラルキルである)である]
を含む。
【0040】
本発明は、特定の剤形、担体等に限定されず、変化し得るものと理解されたい。本明細書で用いる専門用語は、単に特定の態様を説明するためのものであり、何ら本発明を限定するものでないことも理解されたい。
【0041】
本明細書に記載する化合物のいくつかは、1つ又はそれ以上の不斉中心を含有するが、これは、エナンチオマー、ジアステレオマー、及び(R)−又は(S)−のような絶対立体化学の表現で定義することができる他の立体異性体を生じさせるものである。本発明は、ジアステレオマー及びエナンチオマーとして可能なもの並びにそれらのラセミ体及び光学的に純粋な形態すべてを包含するものとする。光学的に活性な(R)−及び(S)−異性体は、キラル出発原料(synthons)若しくはキラル試薬を使用して調製することができ、又は従来どおりの技法を使用して分割することができる。本明細書に記載する化合物が、オレフィン性二重結合又は他の幾何学的に対称な中心を含有する場合、特に定めがない限り、それらの化合物は、(E)−幾何異性体と(A)−幾何異性体の両方を含むことを意味する。同様に、すべての互変異性形を含むことを意味する。
【0042】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において用いる単数形「a」、「an」及び「the」は、その文脈に於いてはっきりと限定されていない限り、複数の指示対象を包含する。従って、例えば、「活性物質(an active agent)」又は「薬理活性物質(an pharmacologically active agent)」というのは、単一の活性物質及び2つ又はそれ以上の異なる活性物質の組合せを包含し、「担体(a carrier)」というのは、単一の担体及び2つ又はそれ以上の担体の混合物などを包含する。
【0043】
本明細書に於いて、「薬学的に許容される担体」又は「薬学的に許容される塩」等の「薬学的に許容される」とは、生物学的かどうかに如何に関わらず望ましくない物質ではないもの、即ち、望ましくない生物学的作用を一切生じることなく、またそれを含んでいる組成物のその他の何れの成分とも有害に相互作用することなく、患者に投与する医薬組成物に組み込むことができる物質を意味する。
【0044】
本明細書で用いる「担体」又は「媒体」は、薬物投与に適した薬学的に許容される従来の担体材料を指し、また、非毒性で、医薬組成物又は薬物送達系の他の成分と有害に相互作用しない、当該技術分野公知の如何なるものをも包含する。
【0045】
薬物又は薬理活性物質の「有効」量又は「治療有効量」とは、非毒性であるが、望ましい効果を提供する薬物又は薬剤の充分な量を意味する。本発明の併用療法に於いて、併用剤の一成分の「有効量」とは、当該併用剤のその他の成分と併用した場合に望ましい効能を提供するのに効果的である当該化合物の量である。「有効」である量は、年齢及び個人の全身の健康状態並びに特定の活性物質(単数又は複数)等により、患者ごとに異なる。従って、常に正確な「有効量」を特定することができるとは限らないが、当業者であれば通常の実験法により、個々患者に対しての適切な「有効」量を決定することができる。
【0046】
本明細書で用いる「心血管性の疾患のを軽減する」及び「心血管性の疾患リスクの軽減」という用語は、心血管性の事象の発症率上昇に関連する潜在的な原因又はバイオマーカーの低減又は排除を意味する。
【0047】
本明細書で用いる「心血管性の疾患」とは、心臓の血管に関するあらゆる疾患を意味する。心血管性の疾患の例には、うっ血性心不全、心筋虚血、不整脈、心筋梗塞、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、冠動脈疾患、高血圧症(高血圧)、アテローム性動脈硬化症(動脈の閉塞)、動脈瘤、末梢血管疾患(PAD)、血栓性静脈炎(静脈の炎症)、心内膜の疾患、心筋の疾患、心臓炎、うっ血性心疾患、心内膜炎、虚血性心疾患、心臓弁膜症(心臓の血管の単数又は複数の弁膜の機能不全)、動脈硬化症(動脈の硬化)、急性冠症候群(ACS)、高コレステロール、深部静脈血栓症(DVT)、川崎病、再狭窄、遅発性静脈グラフト不全及び心臓移植が挙げられる。
【0048】
本明細書で用いる「糖尿病のリスクを軽減する」及び「糖尿病リスクの軽減」という用語は、インスリン抵抗性、前糖尿病及び糖尿病の発症率上昇に関連する潜在的な原因又はバイオマーカーの低減又は排除を意味する。
【0049】
本明細書で用いる「ビタミンB6関連化合物」は、ビタミンB6前駆体、代謝産物、誘導体又は類似体の何れをも意味するが、(1)ビタミンB6(ピロキシジン)、(2)ドイツ国特許第2461742号C2に開示されているピリドキサール、ピリドキソール及びピリドキサミンの5’−リン酸エステル、並びに(3)米国特許第6,066,659号に開示されているピリドキシン、ピリドキサール及びピリドキサミン誘導体は、明確に除外される。
【0050】
本明細書で用いる「肝毒性」は、薬物誘発性の肝損傷を包含する。
【0051】
本発明の医薬組成物は自体公知の手法で、例えば従来の混合、溶解、顆粒化、糖衣錠化、粉末化、乳化、カプセル化、封入又は凍結乾燥プロセスにより、製造することができる。
【0052】
従って、本発明に基づいて使用する医薬組成物は、活性化合物を薬学的に使用可能な製剤にするのを促進する賦形剤及び助剤を含む1つ又はそれ以上の生理学的に許容される担体を使用して、従来の手法で製剤化することができる。適切な剤形は、選択される投与経路に依存する。
【0053】
注射用に、本発明の薬剤は、水溶液、好ましくは、例えばハンクス溶液、リンガー溶液又は生理食塩緩衝液等の生理的に適合する緩衝液に製剤化することができる。
【0054】
経口投与用には、活性化合物を当該技術分野で周知の薬学的に許容される担体と組み合わせることにより容易に製剤化することができる。このような担体により、本発明の化合物は、治療を受ける患者が経口摂取するための錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー及び懸濁液等に製剤化できる。経口使用のための医薬製剤は、固体賦形剤により得ることができ、必要により、適した助剤を添加し、得られた混合物を場合によっては粉砕し、その顆粒混合物を処理して錠剤又は糖衣錠のコアを得ることができる。適した賦形剤は、特に、充填剤、例えば糖(ラクトース、スクロース、マンニトール又はソルビトールを含む)又はセルロース製剤(例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び/又はポリビニルピロリドン)である。架橋ポリビニルピロリドン、寒天又はアルギン酸若しくはアルギン酸ナトリウムのような塩等の崩壊剤を必要に応じて添加してもよい。
【0055】
好ましくは、本発明の医薬組成物は、経口投与される。好ましい経口剤形は、各活性物質の治療有効単位用量を含有し、この場合の単位用量は、1日1回の経口投与に適する。何れの活性物質の治療有効単位用量も、当業者及び本明細書の開示から明らかである多数の因子に依存する。特に、これらの因子としては、投与される化合物の素性、剤形、投与経路、患者の性別、年齢及び体重、そして治療する症状の重篤度、並びに胃腸管、肝胆道系及び腎系を冒している併存疾患の存在が挙げられる。投薬量及び毒性の判定方法は当該技術分野で周知のものであり、一般には先ず動物で試験し、動物で有意な毒性が観察されなければ、人間に対して行うものである。投薬量の適切さは、LDLレベル、HDLレベル、総コレステロールレベル、トリグリセリドレベル及びホモシステインレベルをモニターすることにより評価することができる。少なくとも2〜4週間の治療後、投与した量でLDLリポ蛋白及びホモシステインレベルが正常又は許容可能レベルに低下しない場合には、用量を増やすことができる。
【0056】
HMG−CoA還元酵素阻害剤についての治療有効単位用量は、1日当たり0.1mg〜1000mgである。特定のHMG−CoA還元酵素阻害剤に適した投薬範囲は、当該技術分野公知である。一般的には、その単位用量は、1日当たり5、10、20、40及び80mgである。用いられるHMG−CoA還元酵素阻害剤が、シンバスタチンの場合、好ましい単位用量は、1日当たり10mgである。他のHMG−CoA還元酵素阻害剤についての好ましい単位用量は、1日当たり20mgである。
【0057】
ビタミンB6関連化合物についての好ましい治療上有効な単位用量は、1日当たり体重1kgにつき0.1〜50mgである。さらに好ましくは、単位用量は、1日当たり体重1kgにつき1〜15mgである。
【0058】
本発明は、ビタミンB6関連化合物の治療有効用量を投与することを含む、患者において高コレステロール血症を治療又は予防する方法もまた提供し、この場合のビタミンB6関連化合物は、ピリドキサール−5’−リン酸、ピリドキサールの3−アシル化類似体、ピリドキサール−4,5−アミナールの3−アシル化類似体、リン酸ピリドキシン類似体又はこれらの混合物である。
【0059】
例示的な態様に基づいて本発明を説明してきたが、本発明はこれらの態様の細部にわたって限定されるものではなく、当業者であれば様々な改変及び変更を行うことができるものと理解されたい。このような改変及び変更の全ては、添付の特許請求の範囲に包含されるものである。
【実施例1】
【0060】
CYP活性に対するP5Pの効果
肝シトクロム酵素の活性に対するP5Pの阻害効果をインビトロで試験した。CYP阻害アッセイでは、バキュロウイルス発現ベクターを使用して対応するヒトCYPのcDNAから発現させた個々のCYPサブタイプ(CYP1A2、CYP2A6、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、CYP2E1又はCYP3A4)を各々が発現している昆虫細胞から調製したミクロソーム(Supersomes(登録商標)(Gentest Corp., Woburn, MA))を使用した。これらのミクロソームには、補足的なcDNA発現ヒト還元酵素及び/又はシトクロムb5(Gentest Corp.)も組み込んだ。これは、これらの酵素が、CYPの活性を刺激して、1回の反応に必要な酵素の量を減少させることができるからである。これらのアッセイでは、それらのミクロソームを特異的CYP基質とともにインキュベートした後、蛍光代謝産物の形成を蛍光検出によりモニターした。2つのCYP基質(7−ベンジルオキシ−4−トリフルオロメチルクマリン(BFC)及び7−ベンジルオキシクマリン(BQ))をCYP3A4について試験した。これは、この酵素が複合的な阻害動態を示すことは証明されていたためである。反応(0.2mL)は、96ウエルマイクロタイタプレートを用いて、NADPH再生系[NADP+、グルコース−6−リン酸(G6P)、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PDH)]及びMgCl2の存在下、37℃で行った。各酵素についてのピリドキサール−5’−リン酸による代謝産物形成の阻害を、ピリドキサール−5’−リン酸が存在しない状態(0μM)及び0.0169〜37.0μM存在する状態で試験した。酵素選択的阻害剤も、陽性対照として各アッセイにおいて8通りの濃度で試験した。測定は全て2回実施した。CYP2C19及びCYP3A4を除くすべてのCYPサブタイプアッセイについて使用した試薬溶液は、MBDIにより調製した。CYP2C19及びCYP3A4については、Gentest Corp.から購入した完全試薬キット(CYP2C19/CEC:Cat.No.HTS−4000、Lot NO.1;CYP3A4/BFC:Cat.No.HTS−1000、Lot No.1)を使用して、アッセイを実施した。
【0061】
すべての酵素についてのアッセイは、以下の手法で行った:
NADPH再生系、適切な緩衝液及び媒体、阻害剤(陽性対照)溶液又は試験化合物(ピリドキサール5’−リン酸)溶液を96ウエルマイクロタイタプレートに分注した。8通りの濃度の阻害剤及び試験化合物を、連続3倍希釈により試験した。後者の混合物を0.1mL/ウエル含むマイクロタイタープレートをインキュベーター内で37℃に予熱した。緩衝液、ミクロソーム及び基質の溶液を別に調製し、voltexで混合して、タンパク質を分散させた。予熱したNADPH再生系、緩衝液及び阻害剤溶液を含むマイクロタイタープレートのウエルに、ミクロソーム/基質溶液(0.1mL)を添加することにより、反応を開始させた。指定された時間インキュベーションした後、0.075mLのSTOP溶液(下記参照)を添加することにより、反応を停止させた。ブランク(バックグラウンドノイズ)試料も、ミクロソーム/基質混合物をNADPH再生系に添加する前に、停止のためのSTOP溶液を添加して、アッセイした。形成された代謝産物の量を、各代謝産物を測定するために最適化された励起及び発光フィルタを用いた蛍光プレートリーダーで蛍光を検出することにより定量した。
【0062】
CYP阻害アッセイを実施する前に、上記のアッセイで測定された代謝産物の蛍光に対するピリドキサール−5’−リン酸の効果を評価した。代謝産物の蛍光は、ピリドキサール−5’−リン酸が存在しない状態(0μM)及び0.457〜1000μM存在する状態で測定(各濃度に付き2回)した。測定された濃度及び代謝産物は、1μMの3−シアノ−7−ヒドロキシクマリン(CHC)、2.5μMの7−ヒドロキシクマリン(7−HC)、2.5μMの7−ヒドロキシ−4−トリフルオロメチルクマリン(HFC)、0.1μMのフルオレセイン、10μMの3−[2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル]−7−ヒドロキシ−4−メチルクマリン(AHMC)及び10μMのキノリノールであった。使用された代謝産物の濃度は、CYP阻害アッセイにおいて形成された代謝産物の予想最高濃度(すなわち、阻害剤が存在しない状態で基質をそのCYPサブタイプとともにインキュベートして測定した代謝産物の濃度)に基づくものであった。CHCは、CYP1A2及びCYP2C19アッセイにおいて測定された蛍光代謝産物である。7−HCは、CYP2A6アッセイにおいて測定された蛍光代謝産物であり、HFCは、CYP2B6、CYP2C9、CYP2E1及びCYP3A4(基質としてBFC)アッセイにおいて測定された蛍光代謝産物であり、並びにフルオレセインは、CYP2C8アッセイにおいて測定された代謝産物である。AHMCは、CYP2D6において測定された代謝産物であり、キノリノールは、CYP3A4(基質としてBQ)アッセイにおいて測定されたものである。
【0063】
ピリドキサール−5’−リン酸溶液:ピリドキサール−5’−リン酸・一水和物(P5P、Lot No.00001448)は、粉末として供給された。すべてのピリドキサール−5’−リン酸溶液の濃度は、0.9019の力価(potency factor)について補正した無水分子量(247.15g/mol)に基づくものである。
【0064】
代謝産物の蛍光に対するピリドキサール−5’−リン酸の効果を判定するために、50mMの濃度のピリドキサール−5’−リン酸の原液を、蒸留水中で新たに調製した。ピリドキサール−5’−リン酸は水溶液の場合、酸性を示すので、そのpHを1NのNaOHでpH7.0に調整した。ピリドキサール−5’−リン酸の溶液をマイクロタイタプレートのウエルに添加した。50倍希釈で1000μMから始め、次いで、333、111、37.0、12.3、4.12、1.37及び0.457μMまで連続3倍希釈した。
【0065】
CYPサブタイプ阻害アッセイ用に、50mMの濃度のピリドキサール−5’−リン酸の原液を蒸留水で新たに調製した(1NのNaOHでpH7.0に調整した)。このピリドキサール−5’−リン酸の溶液を、蒸留水で111μMに希釈し、次いで37.0μMから順に12.4、4.12、1.37、0.457、0.152、0.0508及び0.0169μMまで連続3倍希釈してマイクロタイタプレートのウエルに添加した。
【0066】
データ分析
各化合物の存在下及び非存在下(媒体対照)で蛍光シグナルを2回測定した平均を計算し、バックグランドノイズについて補正した。阻害率は、化合物の存在下及び非存在下で補正された蛍光シグナルの差を化合物の非存在下に補正された蛍光シグナルで割り、100%を掛けることにより計算した。形成された代謝産物を50%阻害(IC50)した、阻害剤又はピリドキサール−5’−リン酸の濃度を(必要に応じて)GraphPad Prismソフトウエア(Version 3.00, GraphPad Software Inc., San Diego, CA)を使用して、阻害(%):対数濃度データの非線形回帰分析(S字形の用量応答曲線)により計算した。
【0067】
結果
CYP阻害剤アッセイにおいて測定された様々な代謝産物の蛍光に於けるピリドキサール−5’−リン酸の効果を判定した。図1に示されるように、ピリドキサール−5’−リン酸は、これらのアッセイにおいて測定した6つの代謝産物うちの5つ(CHC、7−HC、7−HFC、AHMC及びキノリノール)の蛍光を、37μMより高い濃度で有意に消失(低減)させた。フルオレセイン(CYP2C8酵素によるジベンジルフルオレセインの代謝後に測定された代謝産物)の蛍光の値は、ピリドキサール−5’−リン酸(1000μM以下)による影響を受けなかった。CYP触媒活性に対するピリドキサール−5’−リン酸の阻害効果を、0.0169〜37μMの濃度範囲で試験した。
【0068】
公知の阻害剤及びピリドキサール−5’−リン酸とCYPサブタイプ(CYP1A2、CYP2A6、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、CYP2E1及びCYP3A4)の各々とのインキュベーションの結果を、図2〜図11にグラフで示す。様々なCYP阻害剤について観測されたIC50値は、(CYP1A2、CYP2A6、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9、CYP2D6及びCYP2E1についての)アッセイの検証に際して本発明者らの研究室で以前に得た値に類似しており、(CYP2C19及びCYP3A4アッセイキットについては)供給業者が測定した値に類似している(表1)。これらのデータは、いずれのアッセイにおいても酵素活性が損なわれなかったことを示している。
【0069】
【表1】
【0070】
試験した濃度範囲(0.0169〜37.0μM)に於いて、ピリドキサール−5’−リン酸は、7つのCYP酵素:CYP1A2、CYP2A6、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9、CYP2D6及びCYP2E1の触媒活性を阻害しなかった(それぞれ、図2、3、4、5、6、8及び9)。しかし、ピリドキサール−5’−リン酸は、CYP2C19及びCYP3A4酵素サブタイプの代謝活性を阻害した(図7、10及び11)。ピリドキサール−5’−リン酸の効能は、CYP2C19及びCYP3A4酵素サブタイプについては比較的類似していた(IC50値はそれぞれ、約33μM及び約37μM)。ピリドキサール−5’−リン酸は、基質がBFCであるCYP3A4酵素が介在する代謝を、基質BQに於ける代謝(IC50>37μM)よりわずかに大きく(IC50≒37μM)に阻害するようである(それぞれ、図10及び11)。ピリドキサール−5’−リン酸及び公知の阻害剤についてのIC50値の概要を図12に示す。
【0071】
結論
化合物ピリドキサール−5’−リン酸は、試験した濃度範囲(0.0169〜37.0μM)にわたって、7つのCYPサブタイプ:CYP1A2、CYP2A6、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9、CYP2D6及びCYP2E1の触媒活性を選択的には阻害しなかった。従って、臨床的に適切な薬物相互作用が、ピリドキサール−5’−リン酸とこれらの酵素の基質の間に生じることは期待できない。ピリドキサール−5’−リン酸は、試験した9つのヒトCYPサブタイプのうちの2つ(CYP2C19及びCYP3A4)の触媒活性を、比較的高い濃度(CYP2C19についてはIC50=33μM、そしてCYP3A4については、>37μM)で、選択的に阻害した。しかし、インビトロでのこれら2つのCYPサブタイプについてのピリドキサール−5’−リン酸の比較的低い阻害能をからすると、重大な薬物相互作用が発生する可能性はありそうもない。
【実施例2】
【0072】
P5Pとスタチンの併用療法は、冠動脈インターベンション後の心筋虚血性障害を減少させる
方法−試験概要
4つの施設で経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた60人の患者を2:1の二重盲検方式で無作為に割り付けて、P5P又はプラシーボで治療した。組み入れ基準の要件は、先ず、単一血管病変(複数を含む)に対するPCIの非緊急性が確認され、虚血性合併症(Califf RM、Abdelmeguid AE、Kuntz RE、Popma JI、Davidson CJ、Cohen EA、Kleiman NS、Mahaffey KW、Topol EJ、Pepine CJらの「血管再生術後の筋壊死(J Am Coll Cardiol 1998; 31: 241-251)」及びESPRIT研究者らの「計画冠動脈ステント移植におけるエプチフィバチドの新規投与計画:無作為化、プラシーボ対照試験(Lancet 2000; 356: 2037-2044)」)のリスクが高いことが決定的である以下の臨床特性:急性冠動脈症候群(PCI後48時間以内の胸痛)、最近のAMI(≦7日間)、心外膜血流減少、血管造影性血栓、(心臓の)駆出率≦30%又は静脈グラフト病変、のうち1つ以上が特定されることである。
【0073】
PCI処置又は標準的な併用療法に対するあらゆる一般的な(薬の)禁忌に加えて、PCI直前のクレアチンキナーゼ(CK−MB)の正常上限を超えた上昇、心房細動若しくは左脚(左束枝)ブロックの心電図に於ける徴候、又は臨床的に有意な検査所見上の異常に関連した徴候(トランスアミナーゼ、ビリルビン若しくはアルカリホスファターゼの値が正常な上限値の1.5倍より高い、又は血清クレアチニンが1.8mg/dLより高い)を、組み入れ除外の主な基準とした。高いトロポニン測定値を有する患者は、血管再生前の漸減値の証拠書類提出とともに、予定されたPCI実施の24時間前にピークトロポニン値を報告することを条件に、この試験への参加が許された。インフォームドコンセントをしたうえで、P5P治療のために無作為に割り付けた患者に腸溶コーティングされたP5Pを、例えばPCI実施の4時間以上前に10mg/kgの経口用量で投与し、その後、1回に付き5mg/kgの経口用量を1日に2回、14日間投与した。中止した治療についてのコンプライアンス及び理由を全ての患者について記録した。
【0074】
試験のエンドポイント及びその定義
この試験の第一の目的は、リスクの高い人工冠動脈形成術(PCI)において心臓保護薬としてP5Pを用いる治療の実施可能性を評価することであった。梗塞サイズの第一のエンドポイントは、PCI開始直前に開始し、ベースラインにて、6時間毎に24時間経時的にCK−MB酵素を測定して、台形則(Press WH, Teukolsky SA, Vetterling WT, Flannery BP. Numerical Recipes. Cambridge, UK: Cambridge University Press, 1994: 127-133.)により評価した。12リード式心電図の連続モニタリング(Northeast Monitoring, Boston, Massachusetts)を用いて、PCI後24時間以内の心筋虚血の発症を第二のエンドポイントとして評価した。処置周辺時の虚血の徴候を、PCI間の60分で100μV以上のSTセグメント低下が1分以上継続し、1分以上発作を起こさないものと定義した。曲線STセグメント偏差の曲線下面積は、造影剤注入の初回から最後までの間で測定した。すべての心臓マーカー及びSTセグメントのモニタリングデータは、治療割り当てを知らされていないコア研究所(University of Maryland School of Medicine, Baltimore, Maryland; Duke Ischemia Monitoring Laboratory, Durham, North Carolina)にて分析された。
【0075】
予め指定されていた第二のエンドポイントの追加として、複合的及び個別の30日間の死亡率、致命的でない梗塞、新規の若しくは悪化する心不全、又は主要な有害虚血性事象が存在しないことははっきりしているが、臨床上の安全性とは別の再発性虚血;心筋梗塞における血栓溶解(Thrombolysis In Myocardial Infarction(TIMI))の重大な出血;及び肝機能又は凝固試験の異常;を含む。急性心筋梗塞(AMI)は、正常上限(正常上限 7ng/mL)の3倍以上のCK−MB上昇及び/又は正常上限(正常上限 0.1ng/mL)の1.5倍以上のトロポニンTレベルと定義された。以前のトロポニン(又はCKMB)値が、正常上限より高かった場合、値は、AMIの定義に見合う正常上限の2倍以上(CK−MBについては3倍以上)であることに加えて、ベースライン測定値の50%より高いことが要求される。通常の化学的処理、完全血球算定、及び凝固アッセイを、無作為割り付け後7日目及び30日目にベースラインで実施した。処置周辺時のピークCK−MB、及びPCI後24時間以内のトロポニンレベルのベースラインからの最大差異も検討した。
【0076】
データ収集及び統計的分析
1用量以上の試験薬を摂取し、PCIを受けた患者を、第一及び第二効能並びに安全性のエンドポイントのすべてについて分析した。1用量以上の試験薬を摂取したが、PCIを受けなかった患者は、第1効能及びSTセグメントモニタリング分析からは除外したが、安全性分析には組み入れた。統計的検定は、0.05のレベルでの両側検定であり、包括解析の原理を用いた。ウィルコクソン(Wilcoxon)の順位和検定を用いて、すべての連続変数を分析した。カテゴリー変数は、ピアソンのカイ2乗検定を利用したSTセグメントモニタリングデータを除き、フィッシャーの直接確立検定を用いて比較した。統計的分析は、SAS version 8.2(SAS Institute, Cary, North Carolina)を用いて行った。
【0077】
結果
高リスクPCIにおけるP5Pの試験に登録した60人の患者のうち、すべての患者がP5P又はプラシーボでの治療を受けたが、4人の患者(P5P 3人、プラシーボ 1人)は、予定の血管再生を受けなかった。心臓酵素データの収集に不備があったため、さらに3人の患者を曲線下の面積の分析から除外した。結果として、60人中53人の患者を第1効能並びに30日間の臨床試験及び/又は安全性分析にそれぞれ組み入れた。
【0078】
確立した心血管性の疾患、血管再生の既往症及び心血管リスクファクターが存在する点では、P5P又はプラシーボ治療に無作為に割り付けられた患者と、急性冠動脈症候群に罹患している患者を対象とした大規模な同時試験における患者集団の代表とでは似通っていた(表2)。全体的に見て、集団の平均年齢は、58歳であり、患者の81.7%が、男性であり、21.7%が、以前にPCI及び/又はバイパス手術を受けていた。P5Pでの治療を受けた患者に於いては、血管再生についての指標である最近のAMIの発症はより一般的なものになっていたが、各グループでほぼ同数の患者が急性冠動脈症候群に罹患しており、全患者のほぼ半数はPCI以前に高いトロポニンレベルを有していた。
【0079】
対照群の患者に心外膜血流減少の発症率が高いことを除けば、ベースライン血管造影及び処置特性も治療グループ間で似通っていた(表3)。P5P又はプラシーボの投与は、それぞれPCIの平均6.1時間前及び8.4時間前に実施した。ステント移植は、プラシーボ及びP5P治療グループのそれぞれ100%及び97.3%に実施した。1件の静脈グラフトインターベンションだけは、遠位塞栓防護を用いて実施した。両グループにおいて右冠動脈を最も一般的に治療したが、プラシーボで治療した数人の患者には、伏在静脈グラフトの血管再生を施した(表4)。血管造影の処置に関わる合併症(例えば、重大な切開、突然の血管閉鎖)は、稀であった(表3)。
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
【0082】
処置周辺時のCK−MB曲線下の面積の中央値(median)に従って測定した処置周辺時の梗塞サイズの第1のエンドポイントは、32.9ng/mLから18.6ng/mLに減少した(p=0.038)。これは、CK−MBの分布のシフトに反映している(表4及び図12)。同様に、処置周辺時のCK−MBの最高レベルは、P5Pを摂取した患者では有意に低下した。カテゴリー分類により、致命的ではないAMIの30日間の発症率は、グループ間で差はなかった(P5Pで12.8%対プラシーボで10.0%、p=1.0)。死亡はなく、30日間の複合的有害事象が起こる率(死亡、致命的ではないAMI、新たな及び/又は悪化しつつある心不全、又は再発性虚血)は、ほぼ同じであった(P5Pで17.9%対プラシーボで15.0%、p=1.0)。
【0083】
心電図STモニタリングデータは、PCIを受け、治療を受けた患者の94.6%について利用可能であった(表4)。PCI後の虚血は、両グループの患者の約15%に発症した。P5Pで治療した方がPCI後に虚血が起こる率が低くなることが観察された(14.7%対17.6%、p=0.78)が、心電図での継続的なモニタリングでは虚血パラメータには有意な差がなかった(表4)。
【0084】
【表4】
【0085】
P5Pでの治療に関連した安全上の問題は全く確認されなかった。重大な出血の発生(2.8% P5P対10.5% プラシーボ、p=0.27)及び血液製剤注入の必要性(2.5% P5P対10.0% プラシーボ、p=0.26)は稀であり、両グループ間に有意な差はなかった。7日目及び30日目における所定の化学処理及び凝固試験での異常性には明確な差はなかった。しかし、両グループに於いて、患者の約1/4が、2週間分の処方を完了する前に薬物療法を中止した(30.8% P5P対25.0% プラシーボ、p=0.77)。P5Pは摂取していたがPCIを受けなかった患者(3人の患者、7.5%)についての早期中止の最も一般的な原因は、胃腸での耐性がないことと、その後の非特異性の骨格筋痛であった。
【0086】
この試験に参加した60人の患者のうち28人の患者は、P5P治療に加えてスタチンでの補助治療を受けた。表5に示すように、処置周辺時のCK−MBの最高レベルは、プラシーボ及びスタチンでの治療を受けた患者と比較してP5Pとスタチンの併用治療を受けた患者の方が低下した。
【0087】
【表5】
【0088】
(結論)
処置周辺時の虚血性合併症のリスクが高い患者に於いてスタチンでの治療は、PCI後の結果はあまり芳しいものではなかった。P5Pでの治療は心筋障害を減少させ、PCI後に放出されるCK−MB総量の減少にも反映された。P5P療法は、処置周辺時のCK−MBピークの上昇を有意に低下させ、CK−MB分布より低いレベルへと有意にシフトした(図13)。
【実施例3】
【0089】
P5Pとスタチンの併用療法は、高血圧の糖尿病患者において血圧を低下させ、脂質レベルを改善する
概要
この試験は、糖尿病も併発している患者に於いて、軽度から中等度の高血圧症及び高脂血症の治療のため、14週間、非盲検で強制的に、用量漸増で、1日1回、250mg〜750mgの用量でP5Pを投与し、その効能及び安全性を試験するものであった。
【0090】
患者の定義
組み入れ基準のすべてを満たし、いずれの除外基準にも該当しない患者が登録の資格を有するもので、主な組み入れ基準は高血圧症及び糖尿病であった。選考に際して、患者はすべて、無併発性で安定な軽度から中等度の高血圧症(仰臥位の拡張期血圧SUDBP:≧90及び≦114mmHg)を呈しているか、その既往症がなければならないが、この疾患の治療薬の使用又は不使用には顧慮しない。加えて、4週間のプラシーボ導入期間終了時に単盲検治療の資格を得るには、患者は平均SUDBPが90mmHg以上、114mmHg以下でなければならない。この試験への組み入れの資格を得るためには、高血圧患者は、選考及び治療両方のための訪問初日に、管理下であっても非管理下であってもよいが、糖尿病(1又は2型)であり、その既往症(24ヶ月より長い)を有していなければならない。糖尿病及び高血圧に罹患している以外は、患者は、彼らの年齢に相応の良好な健康状態でなければならない。既往症及び身体検査は、年齢に応じた正常範囲内でなければならず、万一異常であれば、治験担当医師の臨床的に有意でないとの見解を要する。臨床試験(示差的な、プロトロンビン及び部分トロンボプラスチン時間、血小板算定及び尿検査でのCBC、並びに血液化学検査パネル)は、正常であるか、異常な場合には臨床的に有意でないとの見解を要する。患者は、正常なECGを示すか、又は異常な場合には臨床的に有意でない有意でないとの見解を要する。
【0091】
除外基準には、出血及び/又は浸出及び/又は眼底検査での鬱血乳頭により証明されるような、現に加速的な又は悪性の高血圧症であるか又は既往症(過去12ヶ月)があることが、挙げられる。ACE阻害剤で治療した際に顔面、唇、舌、声門又は喉頭の血管性浮腫の既往症を有する患者は除外した。選考時に114mmHgより高い拡張期BP、及び/又は200mmHgより高い収縮期BPを有した患者は除外した。プラシーボ導入期間終了時に同様の測定値を有した患者は、この試験のその後の参加を中止させた。プラシーボ導入期間中、徐脈(<45bpm)の徴候又は100bpmより高い安静時心拍数を有した患者はこの試験の次の段階に進ませず、その後の参加を中止させた。
【0092】
除外基準には、うっ血性心不全、心臓性ショック、非管理下の不整脈、急性心筋炎若しくは心膜炎、有意な弁膜性若しくはうっ血性心疾患及び不安定狭心症のような、MI又は脳血管発作及び臨床的に有意な心臓の病状、に現に罹っている又は既往症(過去6ヶ月)があること;房室ブロック(第2度/第3度)若しくは洞不全症候群、又は早期興奮症候群と関連する心房性細動若しくは粗動に現に罹っている/既往症を含む他のあらゆる伝導欠損若しくは異常である、に現に罹っていること又は証拠があること;臨床的に有意な胃腸疾患、腎不全(血清クレアチニン:>115μmol/L)、肝臓病、又は電解質バランス(血清カリウム:<3.5又は>5.3mmol/L、血清ナトリウム:<136又は>145mmol/L)であること;気管支喘息又は慢性閉塞性肺疾患に現に罹っていること;又は、治験責任医師の見解で患者の参加がこの試験の妨げとなる、又は結果の変数を混乱させる、あらゆる臨床的に有意な随伴疾患に現に罹っていること、が挙げられる。
【0093】
患者の参加がこの試験の妨げとなる、又は結果の変数を混乱させる、あらゆる臨床的に有意な随伴疾患に罹っている患者を除外した。患者は、このプロトコルの開始前の12ヶ月間にアルコール乱用又は不法薬物使用の経歴を有していてはならない。患者は、末期疾患に罹患していてはならない。患者は、上腕囲が41cm以下で、妊婦や授乳している女性ではなく、また出産適齢期の女性の場合は、適切に避妊する必要がある。この試験の前30日以内に治験化合物での治療を受けていた患者は除外する。
【0094】
以下の薬物の使用は、除外の理由となる(各々、この試験のプラシーボ導入期の前に薬物の使用は安全に中止しなければならず、このプロトコルが完了するまで差し控えなければならない):すべての利尿薬及び抗高血圧薬(β遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、血管拡張薬、ACE阻害剤を含む)、MAO阻害剤、すべての抗不整脈薬、ジギタリス、主要な精神安定薬、抗うつ薬、シメチジン、コルチコステロイド、及び抗腫瘍薬、が挙げられる。患者には、インフォームドコンセントを要する。さらなる除外基準は、Product Prescribing Information for Vitamin B6(PDR, 57, 2003; 590, 926, 1894, 3221, 3237)に挙げられているあらゆる(薬の)禁忌である。
【0095】
治療スケジュール
表6は、クリニックでの試験用治療スケジュールを示すものである。実質的には、患者は全員、活性治療薬での治験を開始するのに適任となるように、規定の4週間でプラシーボ導入を完了する。その後、患者のうち適任者は、250mg/日のP5Pで治療を開始する。次の2週間、用量依存的な副作用を制限するのを条件として、1日1回ベースで当該用量を経口投与し、次いでP5Pの用量を500mg/日まで徐々に増やしていく。再度、500mg/日の用量レベルで2週間治療した後、用量依存的な副作用を制限するのを条件として、すべての患者に於いてP5Pのの用量を750mg/日まで徐々に増やし、次の2週間は、用量依存的な副作用を制限するのを条件とすることなく当該用量を維持した。その後、この試験の最終の4週間は、すべての患者をプラシーボ薬で治療した。いずれの患者の総試験期間も、12回のクリニック訪問を含む、14週間であった。この試験の開始前に抗脂質薬物療法を行っていた患者は、この試験を通して彼らの抗脂質投薬計画を継続した。
【0096】
【表6】
【0097】
試験及び測定値
以下の試験によって、試験参加者全員は定期的に評価された:
【0098】
第一効能評価
・仰臥位拡張期血圧(SUDBP)を、特定の間隔をあけて測定する、
・トリグリセリド、総コレステロール、LDLコレステロール、及びHDLレベルを、特定の間隔をあけて測定する。
【0099】
第二効能評価
・仰臥位拡張期血圧(SUDBP)を、特定の間隔をあけて測定する、
・立位収縮期及び拡張期血圧(STSBP/STDBP)を、即時型及び遅延型で特定の間隔をあけて測定する。
【0100】
安全性評価
・身体検査(完全型及び簡易型)、
・研究室に於ける評価:CBC、全ビリルビン、クレアチニン、SGOT、SGPT、アルカリホスファターゼ、BUN、血清グルコース、全タンパク質、電解質(ナトリウム、カリウム及び塩化物を含む)、血液脂質、葉酸、及び血清ホモシステインレベルを含む血液化学反応、並びに尿検査
・12リード式ECG(心電図)(解説付き)
・有害事象(訪問時ごとに記録)
・併用薬物(訪問時ごとに記録)
【0101】
効能評価
一般に、以下の薬効評価を実施する:
・仰臥位収縮期血圧(SUSBP)
・仰臥位拡張期血圧(SUDBP)
・立位(即時型)収縮期血圧(STiSBP)
・立位(即時型)拡張期血圧(STiDBP)
・立位(遅延型、2分)収縮期血圧(STdSBP)
・立位(遅延型、2分)拡張期血圧(STdDBP)
・トリグリセリドレベル
・総コレステロールレベル
・LDLコレステロールレベル
・HDLコレステロールレベル
【0102】
薬剤投与計画
全ての患者は、1日1回、朝食の1時間前に薬物治療を受ける。投薬時ごとに、以下の投薬レベルを考慮して処方された数の錠剤を水とともに経口摂取することとなる:
【0103】
<試験薬> <薬剤投与計画>
プラシーボ導入(PLACEBO LEAD-IN)
プラシーボ錠剤1錠(朝) : 250mgのP5Pのためのプラシーボ、1日1回
活性成分(ACTIVE)
P5Pの250mg錠剤1錠: 250mgのP5P、1日1回(朝)
P5Pの250mg錠剤2錠: 500mgのP5P、1日1回(朝)
P5Pの250mg錠剤3錠: 750mgのP5P、1日1回(朝)
プラシーボ終了(PLACEBO LEAD-OUT)
プラシーボ錠剤(朝) : 250mgのP5Pのためのプラシーボ、1日1回
【0104】
試験薬の第一用量は、診療所職員の監督下で投与する。以前に抗脂質療法を受けていた患者は、この試験を通して変わることなく彼らの抗脂質投薬計画を継続した。
【0105】
治療継続期間
適任と認められた後、患者は各々、計14週間にわたってプラシーボ又は活性治療薬の投与を受ける。
【0106】
結果
表7に示すように、P5Pとスタチンの併用治療の患者は、14週の試験の終了時に脂質プロファイルが改善されていた。平均して、P5Pとスタチンの併用療法によりトリグリセリドレベル及び総コレステロールが低下した。1人を除くすべての患者において、P5P−スタチン療法により、LDLレベルが低下し、HDLレベルが上昇し、LDL:HDL比が改善された。
【0107】
【表7】
【0108】
参照値
トリグリセリド: <150mg/dL 正常
総コレステロール: <200mg/dL 正常
LDLコレステロール: <130mg/dL 正常
HDLコレステロール: >又は=40mg/dL 正常
コレステロール:HDL コレステロール比:<4.4 正常
平均して、P5P及びスタチンを摂取した高血圧患者は、この試験の終了時に収縮期及び拡張期血圧も低下していた。
【実施例4】
【0109】
P5P−シンバスタチン治療は、高コレステロール血症のウサギの脂質プロファイルを改善する
この試験では、ウサギ高コレステロール血症モデルにおいて、P5P単独及びシンバスタチンとの併用で、潜在的抗アテローム生成効果を判定する。この試験では、アテローム動脈硬化性病変形成、脂質プロファイル(総コレステロール、LDL、HDL、トリグリセリド及び酸化LDL)、ホモシステインレベル、及び様々な炎症マーカー(CRP、IL−1β、IL−6、IFN−γ及びTNF−α)に対する、P5P及びシンバスタチンのそれぞれ単独並びにそれらの併用での効果を比較する。
【0110】
動物
2.0〜3.0kgの雄ニュージーランド白ウサギ
動物の餌
標準コレステロール食は、Federated Co−operative Limited(Saskatchewan)製のCo−op Complete Rabbit Feedである。2%コレステロール食は、Purina Mills(USA)製のTest Diet 0009459 MRab/2% Chol 3/16である。
ウサギに標準コレステロール食及び2%コレステロール食を適宜給餌する。すべての動物が、血液試料採取後にチモシーキューブを摂取する。
【0111】
試験設計
この試験の開始前、ウサギを以下のグループのうちの1つに無作為に割り付ける(グループ当たり、n=9):
グループ1: 標準コレステロール食(標準)
グループ2: 高コレステロール食(対照)
グループ3: 高コレステロール食 + P5P 10mg/kg/日
グループ4: 高コレステロール食 + シンバスタチン 5mg/kg/日
グループ5: 高コレステロール食 + P5P 10mg/kg/日 + シンバスタチン 5mg/kg/日
【0112】
合計8週間にわたって正常コレステロール食又は高コレステロール食をウサギに給餌する。正常コレステロールのウサギは、経鼻胃チューブにより、1日1回、1mLのエタノール及び5mLのRO水で処置する。高コレステロールの動物は、経鼻胃チューブにより、1日1回、P5P(10mg/kg)、シンバスタチン(5mg/kg)、又はP5Pとシンバスタチンの併用薬(P5P 10mg/kg;シンバスタチン 5mg/kg)のいずれかで処置する。P5Pは、溶液のpHが約7になるように5mLの0.05NのNaOH液に溶解する。シンバスタチンは、1mLの無水エタノールに溶解する。
【0113】
(表7)
【0114】
0、2、4及び6週目にウサギの耳周辺の静脈から5mLの血液を採取する。採血の前に、それらの動物を1mg/kgのアセプロマジンで鎮静させる。採血後、血清を分離する。血清をアリコート(500μL)して、様々な脂質(総コレステロール、LDL、HDL、トリグリセリル、酸化LDL)及びサイトカイン(CRP、IL−1β、IL−6、IFN−γ及びTNF−α)のアッセイに使用するまで−80℃で冷凍しておく。
【0115】
8週間後、動物を麻酔処理し、10mLの血液を採取する。それらの動物を安楽死させ、心臓及び胸部大動脈を採取する。それらの心臓及び大動脈を液体窒素又はエタノール・ドライアイス浴で冷凍し、分析するまで−80℃で保管する。
【0116】
時系列
【0117】
試験物質
P5P(ピリドキサール−5’−リン酸・一水和物)は、Sigma(P82870)から購入する。シンバスタチンは、ACIC Fine Chemicals Inc.から入手する。2つの試験化合物バイアルを、毎日各動物に提供する。第1バイアル(小)は、1mLの無水エタノールで希釈する。第2バイアルは、5mLのRO水又は5mLの0.05NのNaOH液のいずれかで希釈する。各バイアルについての希釈剤をそのバイアルにはっきりと記す。試験溶液は、毎日動物に投与する直前に新たに調製する。P5P原液は、低照明条件下、4℃の冷蔵庫内で保管する。シンバスタチンは、製品推奨基準に従って保管する。個々の試験バイアルを低照明条件下、4℃の冷蔵庫内で保管する。
【0118】
(試験物質(複数を含む)の用量、投与経路及び継続期間)
ウサギを合計8週間にわたり1日1回、薬物を経口投与する。バイアル1(小;1mL)の内容物を最初に動物に与え、その後、バイアル2(大;5mL)の内容物を与える。試験化合物を投与した後に、5mLのRO水を追加で与える。
【0119】
結果
P5P及びHMG−CoA還元酵素阻害剤での治療は、結果として、LDL及びトリグリセリドレベルを低下させ、HDLレベルを上昇させ、ホモシステインレベルを低下させ、一般に、心血管の健康状態をより良い状態にする。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】図1は、各CYP阻害アッセイに於いてピリドキサール−5’−リン酸濃度の関数として測定した代謝産物(CHC、7−HC、HFC、フルオレセイン、AHMC及びキノリノール)の蛍光の減少を図示する線グラフ1(a)から1(f)である。
【図2】図2は、CYP1A2の触媒活性(CHCへのCECの代謝)の阻害を、それぞれフラフィリン(Furafylline)及びP5Pの濃度関数として図示する線グラフ2(a)及び2(b)である。
【図3】図3は、CYP2A6の触媒活性(7−HCへのクマリンの代謝)の阻害を、それぞれトラニルシプロミン及びP5P濃度の関数として図示する線グラフ3(a)及び3(b)である。
【図4】図4は、CYP2B6の触媒活性(HFCへのEFCの代謝)の阻害を、それぞれトラニルシプロミン及びP5P濃度の関数として図示する線グラフ4(a)及び4(b)である。
【図5】図5は、CYP2C8の触媒活性(フルオレセインへのDBFの代謝)の阻害を、それぞれケルセチン及びP5P濃度の関数として図示する線グラフ5(a)及び5(b)である。
【図6】図6は、CYP2C9の触媒活性(HFCへのMFCの代謝)の阻害を、それぞれスルファフェナゾール及びP5P濃度の関数として図示する線グラフ6(a)及び6(b)である。
【図7】図7は、CYP2C19の触媒活性(CHCへのCECの代謝)の阻害を、それぞれトラニルシプロミン及びP5P濃度の関数として図示する線グラフ7(a)及び7(b)である。
【図8】図8は、CYP2D6の触媒活性(AHMCへのAMMCの代謝)の阻害を、それぞれキニジン及びP5P濃度の関数として図示する線グラフ8(a)及び8(b)である。
【図9】図9は、CYP2E1の触媒活性(HFCへのMFCの代謝)の阻害を、それぞれジエチルジチオカルバミン酸(DDTC)及びP5P濃度の関数として図示する線グラフ9(a)及び9(b)である。
【図10】図10は、CYP3A4の触媒活性(HFCへのBFCの代謝)の阻害を、それぞれケトコナゾール及びP5P濃度の関数として図示する線グラフ10(a)及び10(b)である。
【図11】図11は、CYP3A4の触媒活性(キノリノールへのBQの代謝)の阻害を、それぞれケトコナゾール及びP5P濃度の関数として図示する線グラフ11(a)及び11(b)である。
【図12】図12は、P5P(A)及びプラシーボ(B)で治療した患者についての対数−正規分布に当てはめた曲線下面積CK−MB値を図示する線グラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)HMG−CoA還元酵素阻害剤、(b)ビタミンB6関連化合物、及び(c)薬学的に許容される担体、を含んでなる医薬組成物。
【請求項2】
HMG−CoA還元酵素阻害剤が、プラバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、シンバスタチン、ロスバスタチン、ベロスタチン、フルインドスタチン、及びこれらの混合物から成る群より選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
ビタミンB6関連化合物が、ピリドキサール、ピリドキサール−5’−リン酸、ピリドキサミン、ピリドキサールの3−アシル化類似体、ピリドキサール−4,5−アミナールの3−アシル化類似体、リン酸ピリドキシン類似体、及びこれらの混合物から成る群より選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
ビタミンB6関連化合物が、ピリドキサール−5’−リン酸である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
ピリドキサールの3−アシル化類似体が、
【化001】
[式中、
R1は、アルキル又はアルケニル(この場合のアルキルは、窒素、酸素又は硫黄が割り込んでいてもよく、及び非置換又はその末端炭素がヒドロキシ、アルコキシ、アルカノイルオキシ、アルコキシアルカノイル、アルコキシカルボニルで置換されていてもよい)であるか、
R1は、ジアルキルカルバモイルオキシ、アルコキシ、ジアルキルアミノ、アルカノイルオキシ、アルカノイルオキシアリール、アルコキシアルカノイル、アルコキシカルボニル、又はジアルキルカルバモイルオキシであるか、又は
R1は、アリール、アリールオキシ、アリールチオ又はアラルキル(この場合のアリールは、アルキル、アルコキシ、アミノ、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ又はアルカノイルオキシにより置換されていてもよい)である]
で表される、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項6】
ピリドキサール−4,5−アミナールの3−アシル化類似体が、
【化002】
[式中、
R1は、アルキル又はアルケニル(この場合のアルキルは、窒素、酸素又は硫黄が割り込んでいてもよく、及び非置換又はその末端炭素がヒドロキシ、アルコキシ、アルカノイルオキシ、アルコキシアルカノイル、アルコキシカルボニルで置換されていてもよい)であるか、
R1は、ジアルキルカルバモイルオキシ、アルコキシ、ジアルキルアミノ、アルカノイルオキシ、アルカノイルオキシアリール、アルコキシアルカノイル、アルコキシカルボニル又はジアルキルカルバモイルオキシであるか、又は
R1は、アリール、アリールオキシ、アリールチオ又はアラルキル(この場合のアリールは、アルキル、アルコキシ、アミノ、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ又はアルカノイルオキシにより置換されていてもよい)であり、
R2は、第二級アミノ基である]
で表される、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項7】
リン酸ピリドキシン類似体が、
【化003】
[式中、
R1は、水素又はアルキルであり、
R2は、−CHO、−CH2OH、−CH3又は−CO2R6(この場合のR6は、水素、アルキル、アリールである)であるか、又は
R2は、−CH2−O−アルキル(この場合のアルキルは、R1の代わりに3位の酸素に共有結合している)であり、
R3は、水素であり、R4は、ヒドロキシ、ハロ、アルコキシ、アルカノイルオキシ、アルキルアミノ又はアリールアミノであるか、又は
R3及びR4は、ハロであり、及び
R5は、水素、アルキル、アリール、アラルキル又は−CO2R7(この場合のR7は、水素、アルキル、アリール又はアラルキルである)である]、
【化004】
[式中、
R1は、水素又はアルキルであり、
R2は、−CHO、−CH2OH、−CH3又は−CO2R5(この場合のR5は、水素、アルキル、アリールである)であるか、又は
R2は、−CH2−O−アルキル(この場合のアルキルは、R1の代わりに3位の酸素に共有結合している)であり、
R3は、水素、アルキル、アリール又はアラルキルであり、
R4は、水素、アルキル、アリール、アラルキル又は−CO2R6(この場合のR6は、水素、アルキル、アリール又はアラルキルである)であり、
nは、1から6である]、及び
【化005】
[式中、
R1は、水素又はアルキルであり、
R2は、−CHO、−CH2OH、−CH3又は−CO2R8(この場合のR8は、水素、アルキル、アリールである)であるか、又は
R2は、−CH2−O−アルキル(この場合のアルキルは、R1の代わりに3位の酸素に共有結合している)であり、
R3は、水素であり、R4は、ヒドロキシ、ハロ、アルコキシ又はアルカノイルオキシであるか、又は
R3及びR4は一緒になって、=Oを形成していてもよく、
R5及びR6は、水素であるか、又は
R5及びR6は、ハロであり、
R7は、水素、アルキル、アリール、アラルキル又は−CO2R8(この場合のR8は、水素、アルキル、アリール又はアラルキルである)である]
で表される群より選択される、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項に記載の医薬組成物の治療有効用量を投与することを含む、心血管性の疾患に罹患する恐れのある患者を治療する方法。
【請求項9】
患者が肝毒性に侵される恐れがある、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
心血管性の疾患が、うっ血性心不全、心筋虚血、不整脈、心筋梗塞、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、冠動脈疾患、高血圧症(高血圧)、アテローム性動脈硬化症(動脈の閉塞)、動脈瘤、末梢血管疾患(PAD)、血栓性静脈炎(静脈の炎症)、心内膜の疾患、心筋の疾患、心臓炎、うっ血性心疾患、心内膜炎、虚血性心疾患、心臓弁膜症(心臓の血管の単数又は複数の弁膜の機能不全)、動脈硬化症(動脈の硬化)、急性冠症候群(ACS)、深部静脈血栓症(DVT)、川崎病、高コレステロール、再狭窄、遅発性静脈グラフト不全及び心臓移植から成る群より選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
HMG−CoA還元酵素阻害剤の用量が、1日当たり0.1mg〜1000mgである、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
HMG−CoA還元酵素阻害剤の用量が、1日当たり10mgである、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
HMG−CoA還元酵素阻害剤の用量が、1日当たり20mgである、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
ビタミンB6関連化合物の用量が、1日当たり0.1〜50mg/kgである、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
ビタミンB6関連化合物の用量が、1日当たり1〜15mg/kgである、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
請求項1〜8の何れか一項に記載の医薬組成物の治療有効用量を投与することを含む、糖尿病に罹患する恐れのある患者を治療する方法。
【請求項17】
請求項1〜7の何れか一項に記載の医薬組成物の治療有効用量を投与することを含む、アルツハイマー病に罹患する恐れのある患者を治療する方法。
【請求項18】
請求項1〜7の何れか一項に記載の医薬組成物の治療有効用量を投与することを含む、骨粗しょう症に罹患する恐れのある患者を治療する方法。
【請求項19】
ピリドキサール−5’−リン酸、ピリドキサールの3−アシル化類似体、ピリドキサール−4,5−アミナールの3−アシル化類似体、リン酸ピリドキシン類似体及びこれらの混合物から成る群より選択される、ビタミンB6関連化合物の治療有効用量を投与することを含む、患者の高コレステロール血症を治療又は予防する方法。
【請求項20】
ビタミンB6関連化合物が、ピリドキサール−5’−リン酸である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ピリドキサールの3−アシル化類似体が、
【化006】
[式中、
R1は、アルキル又はアルケニル(この場合のアルキルは、窒素、酸素又は硫黄が割り込んでいてもよく、及び非置換又はその末端炭素がヒドロキシ、アルコキシ、アルカノイルオキシ、アルコキシアルカノイル、アルコキシカルボニルで置換されていてもよい)であるか、
R1は、ジアルキルカルバモイルオキシ、アルコキシ、ジアルキルアミノ、アルカノイルオキシ、アルカノイルオキシアリール、アルコキシアルカノイル、アルコキシカルボニル又はジアルキルカルバモイルオキシであるか、又は
R1は、アリール、アリールオキシ、アリールチオ又はアラルキル(この場合のアリールは、アルキル、アルコキシ、アミノ、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ又はアルカノイルオキシにより置換されていてもよい)である]
で表される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
ピリドキサール−4,5−アミナールの3−アシル化類似体が、
【化007】
[式中、
R1は、アルキル又はアルケニル(この場合のアルキルは、窒素、酸素又は硫黄が割り込んでいてもよく、及び非置換又はその末端炭素がヒドロキシ、アルコキシ、アルカノイルオキシ、アルコキシアルカノイル、アルコキシカルボニルで置換されていてもよい)であるか、
R1は、ジアルキルカルバモイルオキシ、アルコキシ、ジアルキルアミノ、アルカノイルオキシ、アルカノイルオキシアリール、アルコキシアルカノイル、アルコキシカルボニル又はジアルキルカルバモイルオキシであるか、又は
R1は、アリール、アリールオキシ、アリールチオ又はアラルキル(この場合のアリールは、アルキル、アルコキシ、アミノ、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ又はアルカノイルオキシにより置換されていてもよい)であり、
R2は、第二級アミノ基である]
で表される、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項23】
リン酸ピリドキシン類似体が、
【化008】
[式中、
R1は、水素又はアルキルであり、
R2は、−CHO、−CH2OH、−CH3又は−CO2R6(この場合のR6は、水素、アルキル、アリールである)であるか、又は
R2は、−CH2−O−アルキル(この場合のアルキルは、R1の代わりに3位の酸素に共有結合している)であり、
R3は、水素であり、R4は、ヒドロキシ、ハロ、アルコキシ、アルカノイルオキシ、アルキルアミノ又はアリールアミノであるか、又は
R3及びR4は、ハロであり、及び
R5は、水素、アルキル、アリール、アラルキル又は−CO2R7(この場合のR7は、水素、アルキル、アリール又はアラルキルである)である]、
【化009】
[式中、
R1は、水素又はアルキルであり、
R2は、−CHO、−CH2OH、−CH3又は−CO2R5(この場合のR5は、水素、アルキル、アリールである)であるか、又は
R2は、−CH2−O−アルキル(この場合のアルキルは、R1の代わりに3位の酸素に共有結合している)であり、
R3は、水素、アルキル、アリール、アラルキルであり、
R4は、水素、アルキル、アリール、アラルキル又は−CO2R6(この場合のR6は、水素、アルキル、アリール又はアラルキルである)であり、
nは、1から6である]、及び
【化010】
[式中、
R1は、水素又はアルキルであり、
R2は、−CHO、−CH2OH、−CH3又は−CO2R8(この場合のR8は、水素、アルキル、アリールである)であるか、又は
R2は、−CH2−O−アルキル(この場合のアルキルは、R1の代わりに3位の酸素に共有結合している)であり、
R3は、水素であり、R4は、ヒドロキシ、ハロ、アルコキシ又はアルカノイルオキシであるか、又は
R3及びR4は一緒になって、=Oを形成していてもよく、
R5及びR6は、水素であるか、又は
R5及びR6は、ハロであり、
R7は、水素、アルキル、アリール、アラルキル又は−CO2R8(この場合のR8は、水素、アルキル、アリール又はアラルキルである)である]
で表される群より選択される、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項24】
ビタミンB6関連化合物の治療有効量及び薬学的に許容される担体を投与することを含む、HMG−CoA還元酵素阻害剤の投与を受けている、心血管性の疾患に罹患する恐れのある患者を治療する方法。
【請求項25】
HMG−CoA還元酵素阻害剤が、プラバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、シンバスタチン、ロスバスタチン、ベロスタチン、フルインドスタチン、及びこれらの混合物から成る群より選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
ビタミンB6関連化合物が、ピリドキサール、ピリドキサール−5’−リン酸、ピリドキサミン、ピリドキサールの3−アシル化類似体、ピリドキサール−4,5−アミナールの3−アシル化類似体、リン酸ピリドキシン類似体、及びこれらの混合物から成る群より選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
ビタミンB6関連化合物が、ピリドキサール−5’−リン酸である、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
ピリドキサールの3−アシル化類似体が、
【化011】
[式中、
R1は、アルキル又はアルケニル(この場合のアルキルは、窒素、酸素又は硫黄が割り込んでいてもよく、及び非置換又はその末端炭素がヒドロキシ、アルコキシ、アルカノイルオキシ、アルコキシアルカノイル、アルコキシカルボニルで置換されていてもよい)であるか、
R1は、ジアルキルカルバモイルオキシ、アルコキシ、ジアルキルアミノ、アルカノイルオキシ、アルカノイルオキシアリール、アルコキシアルカノイル、アルコキシカルボニル又はジアルキルカルバモイルオキシであるか、又は
R1は、アリール、アリールオキシ、アリールチオ又はアラルキル(この場合のアリールは、アルキル、アルコキシ、アミノ、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ又はアルカノイルオキシにより置換されていてもよい)である]
で表される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
ピリドキサール−4,5−アミナールの3−アシル化類似体が、
【化012】
[式中、
R1は、アルキル又はアルケニル(この場合のアルキルは、窒素、酸素又は硫黄が割り込んでいてもよく、及び非置換又はその末端炭素がヒドロキシ、アルコキシ、アルカノイルオキシ、アルコキシアルカノイル、アルコキシカルボニルで置換されていてもよい)であるか、
R1は、ジアルキルカルバモイルオキシ、アルコキシ、ジアルキルアミノ、アルカノイルオキシ、アルカノイルオキシアリール、アルコキシアルカノイル、アルコキシカルボニル又はジアルキルカルバモイルオキシであるか、又は
R1は、アリール、アリールオキシ、アリールチオ又はアラルキル(この場合のアリールは、アルキル、アルコキシ、アミノ、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ又はアルカノイルオキシにより置換されていてもよい)であり、
R2は、第二級アミノ基である]
で表される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
リン酸ピリドキシン類似体が、
【化013】
[式中、
R1は、水素又はアルキルであり、
R2は、−CHO、−CH2OH、−CH3又は−CO2R6(この場合のR6は、水素、アルキル、アリールである)であるか、又は
R2は、−CH2−O−アルキル(この場合のアルキルは、R1の代わりに3位の酸素に共有結合している)であり、
R3は、水素であり、R4は、ヒドロキシ、ハロ、アルコキシ、アルカノイルオキシ、アルキルアミノ又はアリールアミノであるか、又は
R3及びR4は、ハロであり、及び
R5は、水素、アルキル、アリール、アラルキル又は−CO2R7(この場合のR7は、水素、アルキル、アリール又はアラルキルである)である]、
【化014】
[式中、
R1は、水素又はアルキルであり、
R2は、−CHO、−CH2OH、−CH3又は−CO2R5(この場合のR5は、水素、アルキル、アリールである)であるか、又は
R2は、−CH2−O−アルキル(この場合のアルキルは、R1の代わりに3位の酸素に共有結合している)であり、
R3は、水素、アルキル、アリール、アラルキルであり、
R4は、水素、アルキル、アリール、アラルキル又は−CO2R6(この場合のR6は、水素、アルキル、アリール又はアラルキルである)であり、
nは、1から6である]、及び
【化015】
(c)
[式中、
R1は、水素又はアルキルであり、
R2は、−CHO、−CH2OH、−CH3又は−CO2R8(この場合のR8は、水素、アルキル、アリールである)であるか、又は
R2は、−CH2−O−アルキル(この場合のアルキルは、R1の代わりに3位の酸素に共有結合している)であり、
R3は、水素であり、R4は、ヒドロキシ、ハロ、アルコキシ又はアルカノイルオキシであるか、又は
R3及びR4は一緒になって、=Oを形成していてもよく、
R5及びR6は、水素であるか、又は
R5及びR6は、ハロであり、
R7は、水素、アルキル、アリール、アラルキル又は−CO2R8(この場合のR8は、水素、アルキル、アリール又はアラルキルである)である]
で表される群より選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
患者が肝毒性に侵される恐れがある、請求項24〜30の何れか一項に記載の方法。
【請求項32】
心血管性の疾患が、うっ血性心不全、心筋虚血、不整脈、心筋梗塞、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、冠動脈疾患、高血圧症(高血圧)、アテローム性動脈硬化症(動脈の閉塞)、動脈瘤、末梢血管疾患(PAD)、血栓性静脈炎(静脈の炎症)、心内膜の疾患、心筋の疾患、心臓炎、うっ血性心疾患、心内膜炎、虚血性心疾患、心臓弁膜症(心臓の血管の単数又は複数の弁膜の機能不全)、動脈硬化症(動脈の硬化)、急性冠症候群(ACS)、深部静脈血栓症(DVT)、川崎病、高コレステロール、再狭窄、遅発性静脈グラフト不全及び心臓移植から成る群より選択される、請求項24〜31の何れか一項に記載の方法。
【請求項33】
HMG−CoA還元酵素阻害剤の用量が、1日当たり0.1mg〜1000mgである、請求項24〜32の何れか一項に記載の方法。
【請求項34】
HMG−CoA還元酵素阻害剤の用量が、1日当たり10mgである、請求項24〜32の何れか一項に記載の方法。
【請求項35】
HMG−CoA還元酵素阻害剤の用量が、1日当たり20mgである、請求項24〜32の何れか一項に記載の方法。
【請求項36】
ビタミンB6関連化合物の用量が、1日当たり0.1〜50mg/kgである、請求項24〜32の何れか一項に記載の方法。
【請求項37】
ビタミンB6関連化合物の用量が、1日当たり1〜15mg/kgである、請求項24〜32の何れか一項に記載の方法。
【請求項1】
(a)HMG−CoA還元酵素阻害剤、(b)ビタミンB6関連化合物、及び(c)薬学的に許容される担体、を含んでなる医薬組成物。
【請求項2】
HMG−CoA還元酵素阻害剤が、プラバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、シンバスタチン、ロスバスタチン、ベロスタチン、フルインドスタチン、及びこれらの混合物から成る群より選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
ビタミンB6関連化合物が、ピリドキサール、ピリドキサール−5’−リン酸、ピリドキサミン、ピリドキサールの3−アシル化類似体、ピリドキサール−4,5−アミナールの3−アシル化類似体、リン酸ピリドキシン類似体、及びこれらの混合物から成る群より選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
ビタミンB6関連化合物が、ピリドキサール−5’−リン酸である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
ピリドキサールの3−アシル化類似体が、
【化001】
[式中、
R1は、アルキル又はアルケニル(この場合のアルキルは、窒素、酸素又は硫黄が割り込んでいてもよく、及び非置換又はその末端炭素がヒドロキシ、アルコキシ、アルカノイルオキシ、アルコキシアルカノイル、アルコキシカルボニルで置換されていてもよい)であるか、
R1は、ジアルキルカルバモイルオキシ、アルコキシ、ジアルキルアミノ、アルカノイルオキシ、アルカノイルオキシアリール、アルコキシアルカノイル、アルコキシカルボニル、又はジアルキルカルバモイルオキシであるか、又は
R1は、アリール、アリールオキシ、アリールチオ又はアラルキル(この場合のアリールは、アルキル、アルコキシ、アミノ、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ又はアルカノイルオキシにより置換されていてもよい)である]
で表される、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項6】
ピリドキサール−4,5−アミナールの3−アシル化類似体が、
【化002】
[式中、
R1は、アルキル又はアルケニル(この場合のアルキルは、窒素、酸素又は硫黄が割り込んでいてもよく、及び非置換又はその末端炭素がヒドロキシ、アルコキシ、アルカノイルオキシ、アルコキシアルカノイル、アルコキシカルボニルで置換されていてもよい)であるか、
R1は、ジアルキルカルバモイルオキシ、アルコキシ、ジアルキルアミノ、アルカノイルオキシ、アルカノイルオキシアリール、アルコキシアルカノイル、アルコキシカルボニル又はジアルキルカルバモイルオキシであるか、又は
R1は、アリール、アリールオキシ、アリールチオ又はアラルキル(この場合のアリールは、アルキル、アルコキシ、アミノ、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ又はアルカノイルオキシにより置換されていてもよい)であり、
R2は、第二級アミノ基である]
で表される、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項7】
リン酸ピリドキシン類似体が、
【化003】
[式中、
R1は、水素又はアルキルであり、
R2は、−CHO、−CH2OH、−CH3又は−CO2R6(この場合のR6は、水素、アルキル、アリールである)であるか、又は
R2は、−CH2−O−アルキル(この場合のアルキルは、R1の代わりに3位の酸素に共有結合している)であり、
R3は、水素であり、R4は、ヒドロキシ、ハロ、アルコキシ、アルカノイルオキシ、アルキルアミノ又はアリールアミノであるか、又は
R3及びR4は、ハロであり、及び
R5は、水素、アルキル、アリール、アラルキル又は−CO2R7(この場合のR7は、水素、アルキル、アリール又はアラルキルである)である]、
【化004】
[式中、
R1は、水素又はアルキルであり、
R2は、−CHO、−CH2OH、−CH3又は−CO2R5(この場合のR5は、水素、アルキル、アリールである)であるか、又は
R2は、−CH2−O−アルキル(この場合のアルキルは、R1の代わりに3位の酸素に共有結合している)であり、
R3は、水素、アルキル、アリール又はアラルキルであり、
R4は、水素、アルキル、アリール、アラルキル又は−CO2R6(この場合のR6は、水素、アルキル、アリール又はアラルキルである)であり、
nは、1から6である]、及び
【化005】
[式中、
R1は、水素又はアルキルであり、
R2は、−CHO、−CH2OH、−CH3又は−CO2R8(この場合のR8は、水素、アルキル、アリールである)であるか、又は
R2は、−CH2−O−アルキル(この場合のアルキルは、R1の代わりに3位の酸素に共有結合している)であり、
R3は、水素であり、R4は、ヒドロキシ、ハロ、アルコキシ又はアルカノイルオキシであるか、又は
R3及びR4は一緒になって、=Oを形成していてもよく、
R5及びR6は、水素であるか、又は
R5及びR6は、ハロであり、
R7は、水素、アルキル、アリール、アラルキル又は−CO2R8(この場合のR8は、水素、アルキル、アリール又はアラルキルである)である]
で表される群より選択される、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項に記載の医薬組成物の治療有効用量を投与することを含む、心血管性の疾患に罹患する恐れのある患者を治療する方法。
【請求項9】
患者が肝毒性に侵される恐れがある、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
心血管性の疾患が、うっ血性心不全、心筋虚血、不整脈、心筋梗塞、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、冠動脈疾患、高血圧症(高血圧)、アテローム性動脈硬化症(動脈の閉塞)、動脈瘤、末梢血管疾患(PAD)、血栓性静脈炎(静脈の炎症)、心内膜の疾患、心筋の疾患、心臓炎、うっ血性心疾患、心内膜炎、虚血性心疾患、心臓弁膜症(心臓の血管の単数又は複数の弁膜の機能不全)、動脈硬化症(動脈の硬化)、急性冠症候群(ACS)、深部静脈血栓症(DVT)、川崎病、高コレステロール、再狭窄、遅発性静脈グラフト不全及び心臓移植から成る群より選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
HMG−CoA還元酵素阻害剤の用量が、1日当たり0.1mg〜1000mgである、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
HMG−CoA還元酵素阻害剤の用量が、1日当たり10mgである、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
HMG−CoA還元酵素阻害剤の用量が、1日当たり20mgである、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
ビタミンB6関連化合物の用量が、1日当たり0.1〜50mg/kgである、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
ビタミンB6関連化合物の用量が、1日当たり1〜15mg/kgである、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
請求項1〜8の何れか一項に記載の医薬組成物の治療有効用量を投与することを含む、糖尿病に罹患する恐れのある患者を治療する方法。
【請求項17】
請求項1〜7の何れか一項に記載の医薬組成物の治療有効用量を投与することを含む、アルツハイマー病に罹患する恐れのある患者を治療する方法。
【請求項18】
請求項1〜7の何れか一項に記載の医薬組成物の治療有効用量を投与することを含む、骨粗しょう症に罹患する恐れのある患者を治療する方法。
【請求項19】
ピリドキサール−5’−リン酸、ピリドキサールの3−アシル化類似体、ピリドキサール−4,5−アミナールの3−アシル化類似体、リン酸ピリドキシン類似体及びこれらの混合物から成る群より選択される、ビタミンB6関連化合物の治療有効用量を投与することを含む、患者の高コレステロール血症を治療又は予防する方法。
【請求項20】
ビタミンB6関連化合物が、ピリドキサール−5’−リン酸である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ピリドキサールの3−アシル化類似体が、
【化006】
[式中、
R1は、アルキル又はアルケニル(この場合のアルキルは、窒素、酸素又は硫黄が割り込んでいてもよく、及び非置換又はその末端炭素がヒドロキシ、アルコキシ、アルカノイルオキシ、アルコキシアルカノイル、アルコキシカルボニルで置換されていてもよい)であるか、
R1は、ジアルキルカルバモイルオキシ、アルコキシ、ジアルキルアミノ、アルカノイルオキシ、アルカノイルオキシアリール、アルコキシアルカノイル、アルコキシカルボニル又はジアルキルカルバモイルオキシであるか、又は
R1は、アリール、アリールオキシ、アリールチオ又はアラルキル(この場合のアリールは、アルキル、アルコキシ、アミノ、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ又はアルカノイルオキシにより置換されていてもよい)である]
で表される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
ピリドキサール−4,5−アミナールの3−アシル化類似体が、
【化007】
[式中、
R1は、アルキル又はアルケニル(この場合のアルキルは、窒素、酸素又は硫黄が割り込んでいてもよく、及び非置換又はその末端炭素がヒドロキシ、アルコキシ、アルカノイルオキシ、アルコキシアルカノイル、アルコキシカルボニルで置換されていてもよい)であるか、
R1は、ジアルキルカルバモイルオキシ、アルコキシ、ジアルキルアミノ、アルカノイルオキシ、アルカノイルオキシアリール、アルコキシアルカノイル、アルコキシカルボニル又はジアルキルカルバモイルオキシであるか、又は
R1は、アリール、アリールオキシ、アリールチオ又はアラルキル(この場合のアリールは、アルキル、アルコキシ、アミノ、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ又はアルカノイルオキシにより置換されていてもよい)であり、
R2は、第二級アミノ基である]
で表される、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項23】
リン酸ピリドキシン類似体が、
【化008】
[式中、
R1は、水素又はアルキルであり、
R2は、−CHO、−CH2OH、−CH3又は−CO2R6(この場合のR6は、水素、アルキル、アリールである)であるか、又は
R2は、−CH2−O−アルキル(この場合のアルキルは、R1の代わりに3位の酸素に共有結合している)であり、
R3は、水素であり、R4は、ヒドロキシ、ハロ、アルコキシ、アルカノイルオキシ、アルキルアミノ又はアリールアミノであるか、又は
R3及びR4は、ハロであり、及び
R5は、水素、アルキル、アリール、アラルキル又は−CO2R7(この場合のR7は、水素、アルキル、アリール又はアラルキルである)である]、
【化009】
[式中、
R1は、水素又はアルキルであり、
R2は、−CHO、−CH2OH、−CH3又は−CO2R5(この場合のR5は、水素、アルキル、アリールである)であるか、又は
R2は、−CH2−O−アルキル(この場合のアルキルは、R1の代わりに3位の酸素に共有結合している)であり、
R3は、水素、アルキル、アリール、アラルキルであり、
R4は、水素、アルキル、アリール、アラルキル又は−CO2R6(この場合のR6は、水素、アルキル、アリール又はアラルキルである)であり、
nは、1から6である]、及び
【化010】
[式中、
R1は、水素又はアルキルであり、
R2は、−CHO、−CH2OH、−CH3又は−CO2R8(この場合のR8は、水素、アルキル、アリールである)であるか、又は
R2は、−CH2−O−アルキル(この場合のアルキルは、R1の代わりに3位の酸素に共有結合している)であり、
R3は、水素であり、R4は、ヒドロキシ、ハロ、アルコキシ又はアルカノイルオキシであるか、又は
R3及びR4は一緒になって、=Oを形成していてもよく、
R5及びR6は、水素であるか、又は
R5及びR6は、ハロであり、
R7は、水素、アルキル、アリール、アラルキル又は−CO2R8(この場合のR8は、水素、アルキル、アリール又はアラルキルである)である]
で表される群より選択される、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項24】
ビタミンB6関連化合物の治療有効量及び薬学的に許容される担体を投与することを含む、HMG−CoA還元酵素阻害剤の投与を受けている、心血管性の疾患に罹患する恐れのある患者を治療する方法。
【請求項25】
HMG−CoA還元酵素阻害剤が、プラバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、シンバスタチン、ロスバスタチン、ベロスタチン、フルインドスタチン、及びこれらの混合物から成る群より選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
ビタミンB6関連化合物が、ピリドキサール、ピリドキサール−5’−リン酸、ピリドキサミン、ピリドキサールの3−アシル化類似体、ピリドキサール−4,5−アミナールの3−アシル化類似体、リン酸ピリドキシン類似体、及びこれらの混合物から成る群より選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
ビタミンB6関連化合物が、ピリドキサール−5’−リン酸である、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
ピリドキサールの3−アシル化類似体が、
【化011】
[式中、
R1は、アルキル又はアルケニル(この場合のアルキルは、窒素、酸素又は硫黄が割り込んでいてもよく、及び非置換又はその末端炭素がヒドロキシ、アルコキシ、アルカノイルオキシ、アルコキシアルカノイル、アルコキシカルボニルで置換されていてもよい)であるか、
R1は、ジアルキルカルバモイルオキシ、アルコキシ、ジアルキルアミノ、アルカノイルオキシ、アルカノイルオキシアリール、アルコキシアルカノイル、アルコキシカルボニル又はジアルキルカルバモイルオキシであるか、又は
R1は、アリール、アリールオキシ、アリールチオ又はアラルキル(この場合のアリールは、アルキル、アルコキシ、アミノ、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ又はアルカノイルオキシにより置換されていてもよい)である]
で表される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
ピリドキサール−4,5−アミナールの3−アシル化類似体が、
【化012】
[式中、
R1は、アルキル又はアルケニル(この場合のアルキルは、窒素、酸素又は硫黄が割り込んでいてもよく、及び非置換又はその末端炭素がヒドロキシ、アルコキシ、アルカノイルオキシ、アルコキシアルカノイル、アルコキシカルボニルで置換されていてもよい)であるか、
R1は、ジアルキルカルバモイルオキシ、アルコキシ、ジアルキルアミノ、アルカノイルオキシ、アルカノイルオキシアリール、アルコキシアルカノイル、アルコキシカルボニル又はジアルキルカルバモイルオキシであるか、又は
R1は、アリール、アリールオキシ、アリールチオ又はアラルキル(この場合のアリールは、アルキル、アルコキシ、アミノ、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ又はアルカノイルオキシにより置換されていてもよい)であり、
R2は、第二級アミノ基である]
で表される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
リン酸ピリドキシン類似体が、
【化013】
[式中、
R1は、水素又はアルキルであり、
R2は、−CHO、−CH2OH、−CH3又は−CO2R6(この場合のR6は、水素、アルキル、アリールである)であるか、又は
R2は、−CH2−O−アルキル(この場合のアルキルは、R1の代わりに3位の酸素に共有結合している)であり、
R3は、水素であり、R4は、ヒドロキシ、ハロ、アルコキシ、アルカノイルオキシ、アルキルアミノ又はアリールアミノであるか、又は
R3及びR4は、ハロであり、及び
R5は、水素、アルキル、アリール、アラルキル又は−CO2R7(この場合のR7は、水素、アルキル、アリール又はアラルキルである)である]、
【化014】
[式中、
R1は、水素又はアルキルであり、
R2は、−CHO、−CH2OH、−CH3又は−CO2R5(この場合のR5は、水素、アルキル、アリールである)であるか、又は
R2は、−CH2−O−アルキル(この場合のアルキルは、R1の代わりに3位の酸素に共有結合している)であり、
R3は、水素、アルキル、アリール、アラルキルであり、
R4は、水素、アルキル、アリール、アラルキル又は−CO2R6(この場合のR6は、水素、アルキル、アリール又はアラルキルである)であり、
nは、1から6である]、及び
【化015】
(c)
[式中、
R1は、水素又はアルキルであり、
R2は、−CHO、−CH2OH、−CH3又は−CO2R8(この場合のR8は、水素、アルキル、アリールである)であるか、又は
R2は、−CH2−O−アルキル(この場合のアルキルは、R1の代わりに3位の酸素に共有結合している)であり、
R3は、水素であり、R4は、ヒドロキシ、ハロ、アルコキシ又はアルカノイルオキシであるか、又は
R3及びR4は一緒になって、=Oを形成していてもよく、
R5及びR6は、水素であるか、又は
R5及びR6は、ハロであり、
R7は、水素、アルキル、アリール、アラルキル又は−CO2R8(この場合のR8は、水素、アルキル、アリール又はアラルキルである)である]
で表される群より選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
患者が肝毒性に侵される恐れがある、請求項24〜30の何れか一項に記載の方法。
【請求項32】
心血管性の疾患が、うっ血性心不全、心筋虚血、不整脈、心筋梗塞、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、冠動脈疾患、高血圧症(高血圧)、アテローム性動脈硬化症(動脈の閉塞)、動脈瘤、末梢血管疾患(PAD)、血栓性静脈炎(静脈の炎症)、心内膜の疾患、心筋の疾患、心臓炎、うっ血性心疾患、心内膜炎、虚血性心疾患、心臓弁膜症(心臓の血管の単数又は複数の弁膜の機能不全)、動脈硬化症(動脈の硬化)、急性冠症候群(ACS)、深部静脈血栓症(DVT)、川崎病、高コレステロール、再狭窄、遅発性静脈グラフト不全及び心臓移植から成る群より選択される、請求項24〜31の何れか一項に記載の方法。
【請求項33】
HMG−CoA還元酵素阻害剤の用量が、1日当たり0.1mg〜1000mgである、請求項24〜32の何れか一項に記載の方法。
【請求項34】
HMG−CoA還元酵素阻害剤の用量が、1日当たり10mgである、請求項24〜32の何れか一項に記載の方法。
【請求項35】
HMG−CoA還元酵素阻害剤の用量が、1日当たり20mgである、請求項24〜32の何れか一項に記載の方法。
【請求項36】
ビタミンB6関連化合物の用量が、1日当たり0.1〜50mg/kgである、請求項24〜32の何れか一項に記載の方法。
【請求項37】
ビタミンB6関連化合物の用量が、1日当たり1〜15mg/kgである、請求項24〜32の何れか一項に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2007−515435(P2007−515435A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−545873(P2006−545873)
【出願日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【国際出願番号】PCT/CA2004/002196
【国際公開番号】WO2005/060975
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(506214943)メディキュア インターナショナル インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【国際出願番号】PCT/CA2004/002196
【国際公開番号】WO2005/060975
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(506214943)メディキュア インターナショナル インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】
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