説明

ICカード用アンテナコイル構成体およびその製造方法ならびにそれを備えたインレットシートおよびICカード

【課題】薄型で意匠性に優れたICカード、そのICカードを得るためのインレットシートおよびそのインレットシートを得るためのICカード用アンテナコイル構成体を提供することである。
【解決手段】ICカード用アンテナコイル構成体10は、樹脂を含む基材シート11と、基材シート11の表面の上に形成された接着層と、接着層を介して基材シート11に固着された金属箔を含むアンテナ回路パターン層13とを備え、接着層は、基材シート11側に配置された第1の接着層12aと、アンテナ回路パターン層13側に配置された第2の接着層12bとを含み、第2の接着層12bは、アンテナ回路パターン層13を覆うように基材シート11の上に形成されるカバーシート30と同系の有機化合物の樹脂を20質量%以上含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ICカード用アンテナコイル構成体、その製造方法およびそれを備えたインレットシートおよびICカードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ICカードは、テレフォンカード、クレジットカード、プリペイドカード、キャッシュカード、IDカード、カードキー、各種会員カード、図書券、診察券、定期券等に使用され始めている。これらの従来のICカードの基材シートとしては、汎用ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の樹脂フィルムが用いられてきた。この樹脂フィルムの両面に接着剤を介在して金属箔をドライラミネート法によって接着した後、その金属箔にエッチング処理を施すことにより、基材シートの表面上にアンテナ回路パターン層が形成されたICカード用アンテナコイル構成体が製造されている。
【0003】
ICカード用アンテナコイル構成体にICチップを搭載することにより、インレットシートを構成する。このインレットシートにカバーシートを接着剤で固着することによりICカードを構成する。
【0004】
たとえば、特開2000−242757号公報(特許文献1)には、アンテナコイルとICチップモジュール又はICベアチップとを継線した状態で内蔵するインレットシートの両面にカバーシートが積層された非接触ICカードの製造方法で、カバーシートの少なくとも一方を光硬化型の感圧接着剤によって積層することを特徴とする非接触ICカードの製造方法が開示されている。
【0005】
しかしながら、近年、ICカードの普及とともに、ICカードの薄型化の要求が益々高まり、インレットシートの薄型化と接着剤の排除が検討されている。
【0006】
たとえば、特開2004−46360号公報(特許文献2)には、インレットシートとカバーシートとを接着剤を介さずに固着することができる一つの構成として、塩化ビニル樹脂を含む基材と、この基材の表面の上に接着剤を介在して熱接着により形成された、金属箔を含む回路パターン層とを備えたICカード用アンテナコイル構成体が開示されている。
【0007】
また、特開2004−46362号公報(特許文献3)には、インレットシートとカバーシートとを接着剤を介さずに固着することができるもう一つの構成として、表面がアモルファスポリエチレンテレフタレートを含む基材と、この基材の表面の上に接触するように形成された、金属箔を含む回路パターン層とを備えたICカード用アンテナコイル構成体が開示されている。
【0008】
しかしながら、特開2004−46360号公報または特開2004−46362号公報に開示されたICカード用アンテナコイル構成体において、インレットシートの基材として使用されている塩化ビニル樹脂またはアモルファスポリエチレンテレフタレートは耐熱性に劣るため、エッチング、印刷(スクリーン印刷、オフセット印刷)または蒸着によりアンテナ回路構成体を形成する工程とICチップを実装する工程において制約を受ける、あるいは変形により平滑なインレットシートを得ることができないおそれがあった。
【0009】
さらに、ICカードの普及とともに、ICカードの意匠性による差別化も競われるようになり、インレットシートの両外面に異なる素材のカバーシートを使用することも要求され始めているが、従来のICカードでは構成材料が限定されている。
【0010】
たとえば、特公平5−29958号公報(特許文献4)には、カード状基材にICチツプを実装してなるICカードにおいて、カード状基材は、ICチツプの厚さとほぼ同一の厚さを有し、開口部にICチツプを収納した熱可塑性樹脂からなるコアシートと、コアシートと同一または同種の熱可塑性樹脂をバインダとし、コアシートの表裏面の少なくとも一方に形成されるとともに、ICチツプと接続された配線パターンおよび外部接続端子と、コアシートと同一または同種の熱可塑性樹脂からなり、コアシートの両面側にそれぞれ配置され、かつ少なくとも一方に外部接続端子を露出させるための開口部を有する一対のカバーシートとを少なくとも含むことを特徴とするICカードが開示されている。
【0011】
また、特開平8−138022号公報(特許文献5)には、ICパッケージと、このICパッケージが搭載されるコア基板と、このコア基板の両面に貼り合わされる意匠シートとを具備し、コア基板および意匠シートは、それぞれ同一の熱可塑性樹脂から構成されていることを特徴とする薄型複合ICカードが開示され、さらに、コア基板と意匠シートの間にそれぞれ形成されるシート状接着剤を具備し、シート状接着剤は、上記の熱可塑性樹脂を成分としていることを特徴とする薄型複合ICカードが開示されている。
【0012】
しかしながら、特公平5−29958号公報に開示されたICカードは、コアシート(インレットシート)と同一または同種の熱可塑性樹脂からなるカバーシートしか選択することができないので、意匠性に劣る。
【0013】
また、特開平8−138022号公報に開示されたICカードは、シート状接着剤の有無にかかわらず、コア基板(インレットシート)と同一の熱可塑性樹脂から構成されている意匠シート(カバーシート)しか選択することができず、意匠性に劣る。
【特許文献1】特開2000−242757号公報
【特許文献2】特開2004−46360号公報
【特許文献3】特開2004−46362号公報
【特許文献4】特公平5−29958号公報
【特許文献5】特開平8−138022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、この発明の目的は、上述の問題を解決することであり、薄型で意匠性に優れたICカード、そのICカードを得るためのインレットシートおよびそのインレットシートを得るためのICカード用アンテナコイル構成体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、従来技術の問題点を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の接着層を有するICカード用アンテナコイル構成体を使用することにより、上記の目的を達成できることを見出した。この知見に基づいて、この発明に従ったICカード用アンテナコイル構成体、その製造方法、それを備えたインレットシートおよびICカードは、次のような特徴を備えている。
【0016】
この発明に従ったICカード用アンテナコイル構成体は、樹脂を含む基材シートと、この基材シートの表面の上に形成された接着層と、この接着層を介して基材シートに固着された金属箔を含むアンテナ回路パターン層とを備え、接着層は、基材シート側に配置された第1の接着層と、アンテナ回路パターン層側に配置された第2の接着層とを含み、第2の接着層は、アンテナ回路パターン層を覆うように基材シートの上に形成されるカバーシートと同系の有機化合物の樹脂を20質量%以上含む。
【0017】
この発明のICカード用アンテナコイル構成体においては、基材シートとアンテナ回路パターン層(金属箔)とを固着する接着層のうち、アンテナ回路パターン層(金属箔)側に配置された第2の接着層が、カバーシートを構成する有機化合物の樹脂と同系の有機化合物の樹脂を20質量%含むので、その第2の接着層によって基材シートとカバーシートとの間も固着することができる。これにより、接着層の厚みを低減することができるので、ICカードの薄型化に寄与するICカード用アンテナコイル構成体を提供することができる。
【0018】
また、この発明のICカード用アンテナコイル構成体においては、基材シートとカバーシートを構成する材料を異ならせることができる。これにより、意匠性に優れたICカードを得るためのICカード用アンテナコイル構成体を提供することができる。
【0019】
この発明のICカード用アンテナコイル構成体において、第2の接着層は、エステル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂およびビニル系樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種を含むのが好ましい。
【0020】
また、この発明のICカード用アンテナコイル構成体において、基材シートは、延伸ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂およびポリエーテルサルホン樹脂からなる群より選ばれた1種を含むのが好ましい。
【0021】
さらに、この発明のICカード用アンテナコイル構成体において、回路パターン層は、基材シートの一方表面の上に形成された第1のアンテナ回路パターン層と、基材シートの一方表面と反対側の他方表面の上に形成された第2のアンテナ回路パターン層とを含むのが好ましい。
【0022】
この発明に従ったインレットシートは、上述した特徴の少なくともいずれかを有するICカード用アンテナコイル構成体と、このICカード用アンテナコイル構成体に搭載されたICチップとを備える。
【0023】
この発明のインレットシートはICカードの薄型化に寄与し、また意匠性に優れたICカードを得るためのインレットシートを提供することができる。
【0024】
この発明に従ったICカードは、上述のインレットシートと、インレットシートの少なくとも一方表面の上で基材シートの上に形成されたカバーシートとを備える。
【0025】
この発明のICカードにおいては、接着層の厚みを低減することができるのでIC[カードを薄型化することができ、基材シートとカバーシートを構成する材料を異ならせることができるので意匠性に優れたICカードを得ることができる。
【0026】
この発明に従ったICカード用アンテナコイル構成体の製造方法は、金属箔の表面の上に第2の接着層を形成する工程と、この第2の接着層の上に別の第1の接着層を介して基材シートを形成する工程と、パターンを有するレジストインク層を金属箔の上に印刷する工程と、このレジストインク層をマスクとして用いて金属箔の少なくとも一部をエッチングすることによって金属箔を含むアンテナ回路パターン層を形成する工程と、このアンテナ回路パターン層を形成した後、レジストインク層を除去する工程とを備え、第2の接着層は、アンテナ回路パターン層を覆うように基材シートの上に形成されるカバーシートと同系の有機化合物の樹脂を20質量%以上含む。
【発明の効果】
【0027】
以上のようにこの発明によれば、ICカードの薄型化に寄与し、また意匠性に優れたICカードを得るためのICカード用アンテナコイル構成体とインレットシートを提供することができる。また、接着層の厚みを低減することができるのでICカードを薄型化することができ、基材シートとカバーシートを構成する材料を異ならせることができるので意匠性に優れたICカードを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
(アンテナコイル構成体)
アンテナコイル構成体は、接着層を介して基材シートと金属箔とを固着させた後、金属箔をエッチング処理することによりアンテナ回路パターン層を形成したものである。
【0029】
図1はこの発明の1つの実施の形態に従ったICカード用アンテナコイル構成体の平面図、図2は図1のII−II線の方向から見たICカード用アンテナコイル構成体の部分断面図、図3は図1のII−II線の方向から見たICカードの部分断面図である。
【0030】
図1と図2に示すように、ICカード用アンテナコイル構成体10は、基材シート11と、基材シート11の両面上に形成された第1の接着層12aと、第1の接着層12a上に第2の接着層12bを介して、所定のパターンに従って形成された金属箔からなるアンテナ回路パターン層13とから構成されている。アンテナ回路パターン層13は、図1に示すように基材シート11の表面上に渦巻状のパターンで形成されている。このアンテナ回路パターン層13の端部にはICチップに配線を接続するための領域が形成され、その端部付近にはICチップを搭載するための領域13cが形成されている。図1において点線で示されるアンテナ回路パターン層は基材シート11の裏面に形成されたアンテナ回路パターン層を示しており、圧着部13aと13bのそれぞれで表裏のアンテナ回路パターン層が互いに電気的に導通するように接触している。この接触はクリンピング加工によって基材シートを部分的に破壊することにより達成されている。
【0031】
図3に示すように、ICカード1は、図2に示されたICカード用アンテナコイル構成体10に搭載されたICチップ20と、ICチップ20を被覆するようにICカード用アンテナコイル構成体10の上に形成されたカバーシート30とから構成されている。ICチップ20は、アンテナ回路パターン層13の端部に配線21によって接続されている。
【0032】
(金属箔)
上記の1つの実施の形態においてアンテナ回路パターン層13を構成する金属箔は、アルミニウム箔、銅箔、ステンレス鋼箔、チタン箔、錫箔等から選ばれた少なくとも1種を用いることができる。これらの金属箔の中でも経済性、信頼性の点からアルミニウム箔をアンテナ回路パターン層13の構成材料に用いるのが最も好ましい。ここで、アルミニウム箔とは、純アルミニウム箔に限定されるものではなく、アルミニウム合金箔も含む。
【0033】
金属箔は、厚みが6μm以上60μm以下で、純度が97.5質量%以上99.7質量%以下であるのが好ましく、より好ましくは厚みが15μm以上50μm以下、純度が98.0質量%以上99.5質量%以下である。
【0034】
金属箔の厚みが6μm未満の場合には、ピンホールが多く発生するとともに製造工程中に破断するおそれがある。一方、金属箔の厚みが60μmを超える場合には、アンテナ回路パターン層13を形成するためのエッチング処理に時間がかかるとともに、材料コストの上昇を招く。
【0035】
金属箔の純度が97.5質量%未満の場合には、金属箔に含まれる不純物が多くなり、アンテナ回路パターン層13の電気抵抗が高くなるとともに、耐食性が極端に悪くなり、わずかな水分でも腐食が進行する場合がある。一方、金属箔の純度が99.7質量%を超える場合には、金属箔の耐食性が過度に向上するため、エッチング処理に時間がかかる。
【0036】
具体的には、アンテナ回路パターン層13の材料としては、たとえばJIS(AA)の記号では1030、1N30、1050、1100、8021、8079等の純アルミニウム箔またはアルミニウム合金箔を採用することができる。
【0037】
この発明において金属箔としてアルミニウム箔を用いる場合の純度とは、鉄(Fe)、シリコン(Si)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)という主要な不純物元素の合計の質量%を100質量%から差し引いた値である。アルミニウム箔を用いる場合、鉄の含有量が0.2〜1.5質量%、シリコンの含有量が0.05〜1.0質量%、銅の含有量が0.3質量%以下であるのが好ましい。
【0038】
(基材シート)
基材シートは、アンテナ回路パターン層が形成される絶縁性のシートであり、この発明の1つの実施の形態において基材シート11を構成する樹脂としては、一般用ポリスチレン樹脂、耐衝撃用ポリスチレン樹脂、ポリエステル,ポリエチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、セルローストリアセテート,セルロールジアセテート等のセルロース系樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアクリル酸メチル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリル酸エチル樹脂、ポリエチルメタクリレート樹脂、酢酸ビニル樹脂等、従来から基材シートに使用される公知の樹脂が挙げられるが、特に、延伸ポリエチレンテレフタレートまたは延伸ポリエチレンナフタレート等の延伸ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂またはポリエーテルサルホン樹脂が好適に使用される。
【0039】
基材シートは、単体または複数樹脂の積層体または混合体のいずれでもよい。基材シートの厚みは、5μm以上130μm以下であるのが好ましく、より好ましくは20μm以上100μm以下である。基材シートの厚みが5μm未満では、接着層を介して金属箔に積層した積層体の剛性が不足するために各製造工程での作業性に問題が生じる。一方、厚みが130μmを超える場合には、後述するクリンピング処理を確実に行なうことができないおそれがある。
【0040】
基材シートの熱収縮率は、温度150℃で30分間保持したときに1.5%以下であるのが好ましい。この熱収縮率が1.5%を超える場合には、基材シートの上に形成されるアンテナ回路パターン層の寸法精度が劣化するという問題がある。
【0041】
上記の熱収縮率とは、線収縮率のことであり、次の式によって算出されるものである。
【0042】
熱収縮率(%)=(L−L)/L × 100
上記の式においてLは温度150℃で30分間保持した後の基材シートの長さ、Lは基材シートの元の長さである。
【0043】
なお、基材シートを予め加熱処理することにより、熱収縮率を0.3%以下にすることもでき、上記の目的で加熱処理した基材シートを使用してもよい。
【0044】
(第2の接着層)
アンテナ回路パターン層側に配置される第2の接着層は、アンテナ回路パターン層上に積層されるカバーシートと同系の樹脂を20質量%以上、好ましくは50質量%以上含む。接着層に含まれる、カバーシートと同系の樹脂が20質量%よりも少ないと、アンテナコイル構成体とカバーシートとの密着性が低下する。
【0045】
第2の接着層に含まれる樹脂は、カバーシートと同系の有機化合物の樹脂を20質量%以上含むものであれば特に限定されず、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、非結晶ポリエステル樹脂(PET−G)等のエステル系樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、アクリロニトリル−スチレン、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸メチル、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリル酸エチル、ポリエチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、塩化ビニル、酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂等が使用されるが、特に、エステル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂およびビニル系樹脂のうちの1種の樹脂、または、これらの樹脂の少なくとも1種を含む混合系樹脂が好適に使用される。
【0046】
なお、本発明において同系の有機化合物を含む樹脂とは、樹脂の分子構造の一部に、その系の有機化合物に共通する分子構造を持つ樹脂をいう。
【0047】
また、第2の接着層は、カバーシートと同系の有機化合物の樹脂を20質量%以上、好ましくは50質量%以上含むものであれば、残部がどのような樹脂を含んでいてもよい。特に、残部を構成する樹脂としては、熱接着性を有する熱可塑性樹脂が好適に使用される。
【0048】
第2の接着層の厚みは特に限定されないが、0.1〜3μm程度とすればよい。接着層の厚みが0.1μmより小さいと、アンテナコイル構成体とカバーシートとの密着性が低下するおそれがある。また、第2の接着層の厚みが3μmを超えると、電気的導通を得るためのクリンピング加工が困難になるおそれがある。
【0049】
第2の接着層は、あらかじめ金属箔上に形成される。第2の接着層の形成方法は、第2の接着層の厚みを上記範囲内に制御できる方法であれば特に限定されないが、一般に、コーティングにより形成される。コーティング工程は、通常、溶剤または水溶性溶媒で希釈された樹脂コーティング剤をグラビア塗布、ダイコート、シルク印刷方式により塗布し、熱風乾燥することにより行われる。
【0050】
(アンテナコイルの製造方法)
基材シートと第2の接着層を形成した金属箔とは、金属箔上の第2の接着層側と基材シートとを第1の接着層を介して積層される。すなわち、金属箔と基材シートとを固着する接着層は、基材シート側に配置された第1の接着層と、金属箔(後にアンテナ回路パターン層になる)側に配置された第2の接着層とから構成される。この発明のアンテナコイル構成体の製造方法では、金属箔側の第2の接着層上にコーティング、熱接着(ヒートラミネートまたはサーマルラミネートともいう)または溶融押出し接着(イクストルージョンラミネート)により、第1の接着層を塗布した後、第1の接着層上に同様にして基材シートを形成する。または、基材シート上にドライラミネーションにより第1の接着層を塗布した後、基材シート上に金属箔上の第2の接着層側を貼り合わせる。基材シートの両面にアンテナ回路パターン層を備えるアンテナコイル構成体を製造する場合は、上記の工程の後、さらに基材シート上に第1の接着層を介して第2の接着層が接するように、第2の接着層を形成した金属箔を積層すればよく、また、それぞれの金属箔上の第2の接着層上にコーティング、熱接着または溶融押出し接着により第1の接着層を形成した後、基材シートをそれぞれの金属箔上の第1の接着層の面で挟み込むように形成してもよく、または、基材シート上にドライラミネーションにより第1の接着層を形成した後、基材シート上の第1の接着層をそれぞれの金属箔上の第2の接着層の面で挟み込むように形成してもよい。
【0051】
第1の接着層は、カバーシートの材質にかかわらず、ウレタン系樹脂等の通常使用されている接着剤を使用して形成すればよい。
【0052】
コーティング工程は、通常、溶剤または水溶性溶媒で希釈された樹脂コーティング剤をグラビア塗布、ダイコート、シルク印刷方式により塗布し、熱風乾燥することにより行われる。ドライラミネーション工程は、通常、樹脂フィルムの表面に有機溶剤に溶解した接着剤を塗布し、熱風または加熱によって溶剤を蒸発させ乾燥状態にして、金属箔を重ね合わせて加熱圧着することにより行なわれる。熱接着工程は、通常、加熱ロールを用いて金属箔を加熱した状態で樹脂フィルムを貼り合わせることによって行なわれる。熱接着の温度は100〜160℃程度が好ましい。溶融押出し接着工程は、樹脂を加熱溶融させ、この樹脂を金属箔の上にダイにより押出すことによって行なわれる。
【0053】
次に、この発明のICカード用アンテナコイル構成体の製造方法の1つの実施の形態について説明する。図4〜図8はこの発明に従ったICカード用アンテナコイル構成体の製造工程を示す部分断面図である。なお、図4〜図8は、図1のII−II線の方向から見た部分断面を示している。
【0054】
図4に示すように、金属箔130のそれぞれの一方面にコーティング等によって第2の接着層12bを固着する。このようにして、金属箔130と第2の接着層12bとの積層体を準備する。
【0055】
次に、図5に示すように、基材シート11の片面または両面(この実施の形態では両面)に上記の金属箔130と第2の接着層12bとの積層体を、第1の接着層12aを介して積層する。
【0056】
さらに、図6に示すように、アンテナコイルの仕様に従った所定の渦巻状パターンを有するようにレジストインク層14を金属箔130の表面上に印刷する。印刷後、レジストインク層14の硬化処理を行なう。
【0057】
そして、図7に示すように、レジストインク層14をマスクとして用いて金属箔130をエッチングすることにより、アンテナ回路パターン層13を形成する。
【0058】
その後、図8に示すように、レジストインク層14を剥離する。
【0059】
最後に、アンテナ回路パターン層13の所定領域に凹凸のある金属板と金属突起を用いてクリンピング加工を施すことにより、図2に示すようにアンテナ回路パターン層の接触部または圧着部13aを形成する。このようにしてこの発明のICカード用アンテナコイル構成体10が完成する。
【0060】
この発明の製造方法において用いられるレジストインクは特に限定されないが、分子中に少なくとも1個のカルボキシル基を有するアクリルモノマーとアルカリ可溶性樹脂とを主成分とする紫外線硬化型レジストインクを用いるのが好ましい。このレジストインクは、グラビア印刷が可能であり、耐酸性を有し、かつアルカリによって容易に剥離除去することが可能であるので、連続大量生産に適している。このレジストインクを用いて金属箔に所定の回路パターンでグラビア印刷を施し、紫外線を照射して硬化させた後、または熱風乾燥により固定させた後、通常の方法に従って、たとえば塩化第2鉄水溶液等による金属箔の酸エッチング、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリによるレジストインク層の剥離除去を行なうことによって、アンテナ回路パターン層を形成することができる。
【0061】
分子中に少なくとも1個のカルボキシル基を有するアクリルモノマーとしては、たとえば、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロフタル酸、2−アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸等が挙げられ、これらのうち、単独のアクリルモノマー、またはいくつかのアクリルモノマーを混合したものを使用することができる。上記のアルカリ可溶性樹脂としては、たとえば、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ロジン−マレイン酸樹脂等が挙げられる。
【0062】
レジストインクには、上記の成分の他に、アルカリ剥離性を阻害しない程度に通常の単官能アクリルモノマー、多官能アクリルモノマー、プレポリマーを添加することができ、光重合開始剤、顔料、添加剤、溶剤等を適宜添加して作製することができる。光重合開始剤としては、ベンゾフェノンおよびその誘導体、ベンジル、ベンゾイン、およびそのアルキルエーテル、チオキサントンおよびその誘導体、ルシリンPTO、チバスペシャリティケミカルズ製イルガキュア、フラッテリ・ランベルティ製エサキュア等が挙げられる。顔料としては、パターンが見やすいように着色顔料を添加する他、シリカ、タルク、クレー、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の体質顔料を併用することができる。特にシリカは、紫外線硬化型レジストインクを付けたまま、金属箔を巻き取る場合には、ブロッキング防止に効果がある。添加剤としては、2−ターシャリーブチルハイドロキノン等の重合禁止剤、シリコン、フッ素化合物、アクリル重合物等の消泡剤、レベリング剤があり、必要に応じて適宜添加する。溶剤としては酢酸エチル、エタノール、変性アルコール、イソプロピルアルコール、トルエン、MEK等が挙げられ、これらの溶剤を単独、または混合して用いることができる。溶剤は、グラビア印刷の後、熱風乾燥等でレジストインク層から蒸発させることが好ましい。
【0063】
アンテナ回路パターン層を形成した後に、所定の位置に常温でクリンピング加工を施し、表側と裏側の金属箔の一部を電気的に接触させてアンテナコイルを形成することができる。ここで、クリンピング加工とは、たとえば、ドリル、ヤスリ、超音波等により樹脂フィルム基材を破壊し、アンテナ回路パターン層を形成する金属箔の一部同士を物理的に接触させることをいう。具体的には、凹凸のある金属板上に樹脂フィルム基材と金属箔とからなる積層体を接触させ、金属突起を押し当てることにより、樹脂フィルム基材が部分的に破壊し、金属箔の表面同士が接触可能となり、電気的導通を得ることができる。
【0064】
この発明に従ったICカード用アンテナコイル構成体の構成と製造方法について説明したが、ICカードとして製品化するには次のような工程がさらに行われる。
【0065】
(インレットシート)
図9は、図1のII−II線の方向から見たインレットシートの部分断面図である。
【0066】
図1と図2に示されるICカード用アンテナコイル構成体10において、図9に示すようにICチップ20をアンテナ回路パターン層13の領域13cに実装し、ICチップ20とアンテナ回路パターン層13の端部とに配線21を接続し、インレットシート100を製造する。また、ICチップがカバーシートに直接接触するのを防ぐ、またはICチップ部分を補強するために、ICチップ上に樹脂層および/または金属層等による保護層を設けてもよい。
【0067】
(カバーシート)
さらに、インレットシートの片面または両面(この実施の形態では両面)に、図3に示すようにカバーシート30を被覆して積層する。積層は、アンテナ回路パターン層13の間で露出している第2の接着層12bを利用して前述の熱接着によって行うことができる。このとき、必要な部位に、補助的にホットメルト剤を介在した熱接着を追加してもよい。
【0068】
ICカードの最外層となるカバーシート30としては、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、非結晶ポリエステル樹脂(PET−G)等のポリエステル系樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、アクリロニトリル−スチレン、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸メチル、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリル酸エチル、ポリエチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、塩化ビニル、酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂等が適用可能である。
【0069】
また、このカバーシート30は、意匠性を付加する目的で、公知の色顔料や体質顔料、アルミニウムフレーク等の金属顔料および公知の樹脂、ワニス、ビヒクル等を使用することができる。また、カバーシートの表面側に型付を施しておいてもよい。
【0070】
さらに、この発明のICカードには、印刷層、磁気記録層、磁気遮蔽層、オーバーコート層、蒸着層等の公知のICカードに採用されている構成要素を必要に応じて積層させることもできる。なお、上記のICチップ以外にも必要に応じて、コンデンサ、コイル、抵抗体、配線、各種メモリー、ダイオード等を設けてもよいことは言うまでもない。
【実施例】
【0071】
以下にこの発明の実施例と比較例について説明する。
【0072】
(実施例1)
両面に塩化ビニル製のカバーシートが配置される、ICカード用アンテナコイル構成体を次のようにして作製し、各特性を評価した。
【0073】
厚みが30μmと20μmのアルミニウム箔(JIS(AA) 1N30−O)のそれぞれ片面にビニル系コート剤として塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(関西ペイント(株)製、商品名SJ1299R)1g/mをグラビア塗布した後、熱風乾燥することにより、第2の接着層として、アルミニウム箔上に厚みが1μmの接着層を形成した。
【0074】
次に、厚みが38μmのポリエチレンテレフタレート樹脂を基材シートとして用いて、上記の接着層が形成された厚みが30μmのアルミニウム箔を基材シートの一方表面に、基材シートと接着層とが対向するように配置して、第1の接着層としてウレタン接着剤を用いて接着した。また、上記の接着層が形成された厚み20μmのアルミニウム箔を基材シートの他方表面に同様に接着して、積層体を作製した。
【0075】
この積層体の両面にレジストインクとして大日本インキ化学工業(株)製のダイキュア−RE−97(商品名)を5g/mの厚みで塗布することによって、図1に示すようなパターンのレジストインク層を連続的に印刷した。このレジストインク層をマスクとして用いて余分なアルミニウム箔を塩化第2鉄水溶液でエッチングすることによってアンテナ回路パターン層を形成した。
【0076】
その後、水酸化ナトリウム水溶液でレジストインク層を剥離した。形成されたアンテナ回路パターン層の所定の位置で積層体の一部に表裏の電気的導通を得るためのクリンピング加工を施すことにより、図2に示されるようなICカード用アンテナコイル構成体を作製した。
【0077】
このようにして得られたICカード用アンテナコイル構成体の熱変形性を評価した。この評価は、ICカード用アンテナコイル構成体を大気中にて温度100℃で5分間保持した後の変形の有無を目視で観察することにより行なった。
【0078】
得られたICカード用アンテナコイル構成体の両面上に、ホットメルト接着剤を介在させずに厚みが100μmの塩化ビニルシート(三菱樹脂(株)製、商品名C4636)を温度120℃、圧力3kg/cmで5分間、ホットプレスすることにより、カバーシートの接着性を評価した。この評価は、ICカード用アンテナコイル構成体とICカード用アンテナコイル構成体とのラミネート強度をT型剥離試験(JIS K6854 T型剥離に準拠、ただし幅は15mmとする)にしたがって測定することにより行なった。
【0079】
(実施例2)
両面に非結晶性ポリエステル樹脂(PET−G)製カバーシートが配置される、ICカード用アンテナコイル構成体を次のようにして作製し、各特性を評価した。
【0080】
アルミニウム箔上に接着層を形成するためにポリエステル系コート剤としてポリエステル樹脂(東洋モートン(株)製、商品名76H5)を使用したこと以外は、実施例1と同様の工程でICカード用アンテナコイル構成体を作製した。得られたICカード用アンテナコイル構成体の熱変形性を実施例1と同様にして評価した。
【0081】
また、実施例1と同様にして、得られたICカード用アンテナコイル構成体の両面上に、ホットメルト接着剤を介在させずに厚みが200μmのPET−Gシート(三菱樹脂(株)製、商品名ディアフィックス)をホットプレスすることにより、カバーシートの接着性を評価した。
【0082】
(実施例3)
両面に塩化ビニル製カバーシートが配置される、ICカード用アンテナコイル構成体を次のようにして作製し、各特性を評価した。
【0083】
アルミニウム箔上に接着層を形成するために、ビニル系コート剤として塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(関西ペイント(株)製、商品名SJ1299R)30質量%と、ポリエステル系コート剤としてポリエステル樹脂(東洋モートン(株)製、商品名76H5)70質量%とを混合したコート剤を使用したこと以外は、実施例1と同様の工程でICカード用アンテナコイル構成体を作製した。得られたICカード用アンテナコイル構成体の熱変形性を実施例1と同様にして評価した。
【0084】
また、実施例1と同様にして、得られたICカード用アンテナコイル構成体の両面上に、ホットメルト接着剤を介在させずに厚みが100μmの塩化ビニルシート(三菱樹脂(株)製、商品名C4636)をホットプレスすることにより、カバーシートの接着性を評価した。
【0085】
(実施例4)
両面にPET−G製カバーシートが配置される、ICカード用アンテナコイル構成体を次のようにして作製し、各特性を評価した。
【0086】
アルミニウム箔上に接着層を形成するために、ポリエステル系コート剤としてポリエステル樹脂(東洋モートン(株)製、商品名76H5)30質量%と、エチレン酢酸ビニル共重合体系樹脂(大日本インキ化学工業(株)製、商品名S−19)70質量%とを混合したコート剤を使用したこと以外は、実施例1と同様の工程でICカード用アンテナコイル構成体を作製した。得られたICカード用アンテナコイル構成体の熱変形性を実施例1と同様にして評価した。
【0087】
また、実施例1と同様にして、得られたICカード用アンテナコイル構成体の両面上に、ホットメルト接着剤を介在させずに厚みが200μmのPET−Gシート(三菱樹脂(株)製、商品名ディアフィックス)をホットプレスすることにより、カバーシートの接着性を評価した。
【0088】
(実施例5)
両面に塩化ビニル製カバーシートが配置される、ICカード用アンテナコイル構成体を次のようにして作製し、各特性を評価した。
【0089】
アルミニウム箔上に接着層を形成するために、ビニル系コート剤として塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(関西ペイント(株)製、商品名SJ1299R)70質量%と、ポリプロピレン樹脂30質量%とを混合したコート剤を使用したこと以外は、実施例1と同様の工程でICカード用アンテナコイル構成体を作製した。得られたICカード用アンテナコイル構成体の熱変形性を実施例1と同様にして評価した。
【0090】
また、実施例1と同様にして、得られたICカード用アンテナコイル構成体の両面上に、ホットメルト接着剤を介在させずに厚みが100μmの塩化ビニルシート(三菱樹脂(株)製、商品名C4636)をホットプレスすることにより、カバーシートの接着性を評価した。
【0091】
(比較例1)
両面に塩化ビニル製カバーシートが配置される、ICカード用アンテナコイル構成体を次のようにして作製し、各特性を評価した。
【0092】
アルミニウム箔上に接着層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様の工程でICカード用アンテナコイル構成体を作製した。得られたICカード用アンテナコイル構成体の熱変形性を実施例1と同様にして評価した。
【0093】
また、実施例1と同様にして、得られたICカード用アンテナコイル構成体の両面上に、ホットメルト接着剤を介在させずに厚みが100μmの塩化ビニルシート(三菱樹脂(株)製、商品名C4636)をホットプレスしたが、簡単に剥がせる程度であり、実用レベルで強固に接着することができなかった。
【0094】
(比較例2)
両面に塩化ビニル製カバーシートが配置される、ICカード用アンテナコイル構成体を次のようにして作製し、各特性を評価した。
【0095】
基材シートとして厚みが38μmのポリ塩化ビニル樹脂(PVC)フィルムの一方表面には厚みが30μm、他方表面には厚みが20μmのアルミニウム箔(JIS(AA) 1N30−O)を、熱接着温度160℃にて連続的にヒートラミネート法により接着して積層体を作製したこと以外は、実施例1と同様の工程でICカード用アンテナコイル構成体を作製した。得られたICカード用アンテナコイル構成体の熱変形性を実施例1と同様にして評価した。
【0096】
また、実施例1と同様にして、得られたICカード用アンテナコイル構成体の両面上に、ホットメルト接着剤を介在させずに厚みが100μmの塩化ビニルシート(三菱樹脂(株)製、商品名C4636)をホットプレスすることにより、カバーシートの接着性を評価した。
【0097】
(比較例3)
両面に非結晶性ポリエステル樹脂(PET−G)製カバーシートが配置される、ICカード用アンテナコイル構成体を次のようにして作製し、各特性を評価した。
【0098】
アルミニウム箔上に接着層を形成するために、ポリエステル系コート剤としてポリエステル樹脂(東洋モートン(株)製、商品名76H5)10質量%と、エポキシ系コート剤としてエポキシ樹脂(タナカケミカル(株)製、商品名No8800)90質量%とを混合したコート剤を使用したこと以外は、実施例1と同様の工程でICカード用アンテナコイル構成体を作製した。得られたICカード用アンテナコイル構成体の熱変形性を実施例1と同様にして評価した。
【0099】
また、実施例1と同様にして、得られたICカード用アンテナコイル構成体の両面上に、ホットメルト接着剤を介在させずに厚みが100μmのPET−Gシート(三菱樹脂(株)製、商品名ディアフィックス)をホットプレスすることにより、カバーシートの接着性を評価した。
【0100】
(比較例4)
両面に非結晶性ポリエステル樹脂(PET−G)製カバーシートが配置される、ICカード用アンテナコイル構成体を次のようにして作製し、各特性を評価した。
【0101】
アルミニウム箔上に接着層を形成するために、ビニル系コート剤として塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(関西ペイント(株)製、商品名SJ1299R)50質量%と、エポキシ系コート剤としてエポキシ樹脂(タナカケミカル(株)製、商品名No8800)50質量%とを混合したコート剤を使用したこと以外は、実施例1と同様の工程でICカード用アンテナコイル構成体を作製した。得られたICカード用アンテナコイル構成体の熱変形性を実施例1と同様にして評価した。
【0102】
また、実施例1と同様にして、得られたICカード用アンテナコイル構成体の両面上に、ホットメルト接着剤を介在させずに厚みが100μmのPET−Gシート(三菱樹脂(株)製、商品名ディアフィックス)をホットプレスすることにより、カバーシートの接着性を評価した。
【0103】
以上の評価結果を表1に示す。
【0104】
【表1】

【0105】
表1から、この発明に従った実施例1〜5の試料では、上記の評価試験条件下では、熱変形せず、カバーシートとの接着性も良好であったが、比較例1の試料ではカバーシートの接着ができず、比較例2の試料ではカバーシートとの接着強度が低く、熱変形し、比較例3〜4の試料ではカバーシートとの接着強度が低いことがわかる。
【0106】
以上に開示された実施の形態や実施例はすべての点で例示的に示されるものであり、制限的なものではないと考慮されるべきである。この発明の範囲は、以上の実施の形態や実施例ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正や変更を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】この発明の1つの実施の形態に従ったICカード用アンテナコイル構成体の平面図である。
【図2】図1のII−II線の方向から見たICカード用アンテナコイル構成体の部分断面図である。
【図3】図3は図1のII−II線の方向から見たICカードの部分断面図である。
【図4】この発明に従ったICカード用アンテナコイル構成体の第1の製造工程を示す部分断面図である。
【図5】この発明に従ったICカード用アンテナコイル構成体の第2の製造工程を示す部分断面図である。
【図6】この発明に従ったICカード用アンテナコイル構成体の第3の製造工程を示す部分断面図である。
【図7】この発明に従ったICカード用アンテナコイル構成体の第4の製造工程を示す部分断面図である。
【図8】この発明に従ったICカード用アンテナコイル構成体の第5の製造工程を示す部分断面図である。
【図9】図1のII−II線の方向から見たインレットシートの部分断面図である。
【符号の説明】
【0108】
1:ICカード、10:ICカード用アンテナコイル構成体、11:基材シート、12a:第1の接着層、12b:第2の接着層、13:アンテナ回路パターン層、14:レジストインク層、20:ICチップ、30:カバーシート、100:インレットシート、130:金属箔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を含む基材シートと、
前記基材シートの表面の上に形成された接着層と、
前記接着層を介して前記基材シートに固着された金属箔を含むアンテナ回路パターン層とを備え、
前記接着層は、前記基材シート側に配置された第1の接着層と、前記アンテナ回路パターン層側に配置された第2の接着層とを含み、
前記第2の接着層は、前記アンテナ回路パターン層を覆うように前記基材シートの上に形成されるカバーシートと同系の有機化合物の樹脂を20質量%以上含む、ICカード用アンテナコイル構成体。
【請求項2】
前記第2の接着層は、エステル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂およびビニル系樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種を含む、請求項1に記載のICカード用アンテナコイル構成体。
【請求項3】
前記基材シートは、延伸ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂およびポリエーテルサルホン樹脂からなる群より選ばれた1種を含む、請求項1または請求項2に記載のICカード用アンテナコイル構成体。
【請求項4】
前記回路パターン層は、前記基材シートの一方表面の上に形成された第1のアンテナ回路パターン層と、前記基材シートの一方表面と反対側の他方表面の上に形成された第2のアンテナ回路パターン層とを含む、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のICカード用アンテナコイル構成体。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のICカード用アンテナコイル構成体と、
前記ICカード用アンテナコイル構成体に搭載されたICチップとを備えた、インレットシート。
【請求項6】
請求項5に記載のインレットシートと、
前記インレットシートの少なくとも一方表面の上で前記基材シートの上に形成されたカバーシートとを備えた、ICカード。
【請求項7】
金属箔の表面の上に第2の接着層を形成する工程と、
前記第2の接着層の上に別の第1の接着層を介して基材シートを形成する工程と、
パターンを有するレジストインク層を前記金属箔の上に印刷する工程と、
前記レジストインク層をマスクとして用いて前記金属箔の少なくとも一部をエッチングすることによって前記金属箔を含むアンテナ回路パターン層を形成する工程と、
前記アンテナ回路パターン層を形成した後、前記レジストインク層を除去する工程とを備え、
前記第2の接着層は、前記アンテナ回路パターン層を覆うように前記基材シートの上に形成されるカバーシートと同系の有機化合物の樹脂を20質量%以上含む、ICカード用アンテナコイル構成体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−141125(P2007−141125A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−336855(P2005−336855)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(399054321)東洋アルミニウム株式会社 (179)
【Fターム(参考)】