説明

ICカード

【課題】 スイッチの誤動作を抑制できるICカードを提案する。
【解決手段】 カード本体1と、当該カード本体1に形成された入力手段13と、当該入力手段13の入力に応じて動作する機能部10、11、12と、を具備するICカードKであって、カード本体1の厚さ方向において、入力手段13の最上部とカード本体1の表面とは同じ高さ、又は入力手段13の最上部はカード本体1の表面よりも内側、に位置していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチ等の入力手段を有するICカードに関する。
【背景技術】
【0002】
ICカード(スマートカード)は、IC(集積回路)チップを搭載したカードであり、磁気ストライプカードと比較して、高情報容量化、セキュリティ性向上(偽変造、不正使用の防止)、複数のアプリケーションに対応可能、ホスト負荷軽減(オフライン処理が可能)等の特徴を有する。このため、クレジットカードやキャッシュカードの他、電子マネー、電子商取引、医療保健分野、鉄道・バスなどの交通分野やビルの入退出管理等への展開が盛んに行われ始めている。また、近年のICカードにおいては、利用者が、特定の情報を入力したり、各種アプリケーションを選択したりすることが可能なスイッチを備えたICカードが提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【特許文献1】特開2001−338273号公報
【特許文献2】特開2003−270676号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、ICカードは、利便性や携帯性に優れる利点を有しているものの、その反面、利用者の不注意により紛失しやすい。そのため、利用者は、利用時を除いて、ポケットやカードケースにICカードを収納して携帯するのが一般的である。
しかしながら、スイッチを備えたICカードにおいては、利用者が携帯している間に不用意に、又は予期しない何らかの接触によりスイッチが押されてしまい、誤動作するという問題があった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、スイッチの誤動作を抑制できるICカードを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、上記に基づいて以下の手段を有する本発明を想到した。
即ち、本発明のICカードは、カード本体と、当該カード本体に形成された入力手段と、当該入力手段の入力に応じて動作する機能部とを具備し、前記カード本体の厚さ方向において、前記入力手段の最上部と前記カード本体表面とは同じ高さ、又は前記入力手段の最上部は前記カード本体表面よりも内側、に位置していることを特徴としている。
このような構成においては、入力手段の最上部が、ICカードの表面と同一面、又はICカードの表面よりも凹んだ面に位置されたものとなる。これにより、カード本体の厚さ方向に向けて入力手段に押圧力が付与された場合のみに当該入力手段への入力が行われる。また、カード本体表面の斜め方向や略水平方向に向けて入力手段に押圧力が付与された場合では、厚さ方向への押圧力が働き難いため、入力手段への入力が行われにくくなる。従って、利用者が、自らの判断に基づいて、機能部を動作させる場合のみに、カード本体の厚さ方向に向けて入力手段を局所的に押し込むことで、機能部を動作させることができる。また、カード本体表面の斜め方向や略水平方向に向けて入力手段に押圧力が付与された場合では、機能部を非動作にすることができる。従って、利用者の判断に基づいて機能部を動作させる場合を除き、入力手段への誤入力を防止できるので、ICカードの誤動作を防止できる。
【0005】
また、本発明のICカードにおいては、前記カード本体は、前記入力手段及び前記機能部が形成された第1部材と、当該第1部材における前記入力手段が形成されている側に配置された第2部材と、が接合されていることを特徴としている。
このようにすれば、カード本体は第1部材と第2部材とからなる接合構造を有することとなるので、強度に優れたICカードを実現できる。
【0006】
また、本発明のICカードにおいては、前記第2部材は、前記入力手段及び前記機能部を被覆するカバー部を備え、前記第1部材の表面から前記機能部の最上部までの高さと、前記第1部材の表面から前記入力手段の最上部までの高さは、同じであることを特徴としている。
このようにすれば、第1部材に形成された前記入力手段と前記機能部とを共にカバー部によって保護できる。更に、第2部材を形成することによってカード本体の強度を向上できる。
また、入力手段がカバー部に被覆されることにより、ICカードの表面よりも内側に入力手段を備えることが可能となる。従って、カード本体の厚さ方向に向けて入力手段を局所的に押し込む場合のみにおいて、機能部を動作させることができる。また、カード本体表面の斜め方向や略水平方向に向けて入力手段に押圧力が付与された場合では、機能部を非動作にすることができる。従って、利用者の判断に基づいて機能部を動作させる場合を除き、入力手段への誤入力を防止できるので、ICカードの誤動作を防止できる。
【0007】
また、本発明のICカードにおいては、前記第2部材は、前記入力手段のみを被覆するカバー部と、前記機能部を露出する開口部とを備え、前記第1部材の表面から前記機能部の最上部までの高さよりも、前記第1部材の表面から前記入力手段の最上部までの高さが低いことを特徴としている。
このようにすれば、第1部材に形成された前記入力手段をカバー部によって保護できる。また、入力手段がカバー部に被覆されることにより、ICカードの表面よりも内側に入力手段を備えることが可能となる。従って、カード本体の厚さ方向に向けて入力手段を局所的に押し込む場合のみにおいて、機能部を動作させることができる。また、カード本体表面の斜め方向や略水平方向に向けて入力手段に押圧力が付与された場合では、機能部を非動作にすることができる。従って、利用者の判断に基づいて機能部を動作させる場合を除き、入力手段への誤入力を防止できるので、ICカードの誤動作を防止できる。
【0008】
また、開口部において機能部は露出状態となるので、当該機能部が外部接続端子である場合には、露出している外部接続端子を介して外部装置との接続を行うことができる。また、当該機能部が表示部である場合には、露出している表示部から画像を表示できる。
これに対し、機能部が表示部である場合で、かつ、表示部をカバー部が被覆している場合においては、当該カバー部を透過して表示された画像は、当該カバー部材料の屈折率によって、奥まった画像が表示されやすく、表示特性が低下してしまう。従って、本発明によれば、開口部を介して表示部を露出状態にすることで、カバー部によって覆われた場合と比較して、高コントラストでクリアな画像を表示できる。
【0009】
また、本発明のICカードにおいては、前記カード本体は、前記第2部材に対向配置された第3部材を具備し、前記第2部材と前記第3部材とによって前記第1部材が挟持されていることを特徴としている。
このように、第2部材及び第3部材によって第1部材が挟持されることにより、第1部材に形成された入力手段や機能部を保護できる。更に、頑強な接合構造を有するICカードを実現できる。
【0010】
また、本発明のICカードにおいては、前記機能部は、画像表示が可能な表示部であることを特徴としている。
このようにすれば、入力手段の入力に応じて表示部が画像を表示することができる。
ここで、表示部としては、電気泳動表示デバイスであることが好ましい。当該電気泳動表示デバイスは、画像の表示記憶性や表示メモリ性を有する表示素子である。従って、TFT等の駆動素子が所定時間の間に所定電圧を付与することで、その後に電圧を付加することなく、画像を保持することが可能となる。これにより、画像を表示するための消費電力を低減できるので、低消費電力を実現できると共に、表示メモリ性を有するICカードを実現できる。
【0011】
また、本発明のICカードにおいては、前記機能部は、外部装置と接続可能な外部接続端子であることを特徴としている。
このようにすれば、入力手段の入力に応じて、外部接続端子を介してICカードと外部装置との間で通信を行うことができる。
【0012】
また、本発明のICカードにおいては、前記機能部は、指紋情報を抽出する指紋センサであることを特徴としている。
このように、指紋センサを備えることによって、ICカードの利用者の個人認証を行うことができ、利用者を限定することができ、ICカードの悪用を防止することができる。従って、セキュリティ性を有するICカードを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明のICカードに係る実施形態について説明する。
本実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、本発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。なお、以下に示す各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材ごとに縮尺を異ならせてある。
【0014】
(ICカードの第1実施形態)
本発明のICカードの第1実施形態について図を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るICカードKを示す斜視図である。図2は、図1のA−A’断面を示す図であって、ICカードKの断面構造を説明するための断面拡大図である。図3は、ICカードKの断面拡大図であって、ICカードKの構造を詳述するための分解図である。
【0015】
図1に示すようにICカードKは、カード本体1と、指紋センサ(機能部)10と、電気泳動表示デバイス(機能部、表示部、以下EPDと称する。)11と、接続用IC端子(機能部)12と、メンブレンスイッチ(入力手段)13と、を備えている。また、図2及び図3に示すように、カード本体1は、その内部にポリマーバッテリ14及びICチップ15を備えている。また、カード本体1は、インレット(第1部材)1aと、前面板(第2部材)1bと、背面板(第3部材)1cとから構成され、前面板1b及び背面板1cによってインレット1aが狭持された構造となっている。
【0016】
ここで、インレット1aは、FPC(Flexible Print Circuit)20を基材とするものであり、前面板1bと対向する側に指紋センサ10、EPD11、外部接続端子12、及びメンブレンスイッチ13を備え、背面板1cと対向する側にポリマーバッテリ14及びICチップ15を備えている。FPC20は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド等の寸法安定性の優れたプラスチックフィルムからなる回路基板である。このようなプラスチックフィルムは、折り曲げ自在の特性、即ち、可撓性を有するフィルムであるため、立体的な配線や屈曲部への回路接続等を可能としている。また、FPC20の上面20aからEPD11の最上部11aまでの高さh1と、FPC20の上面20aからメンブレンスイッチ13の最上部13aまでの高さh2は、h1=h2の関係を有しており、即ち、同じ高さとなっている。
【0017】
また、前面板1bは、カバー部25と接合部26とからなる。カバー部25は、アクリル樹脂等の透明性かつ可撓性の樹脂材料であり、メンブレンスイッチ13とEPD11とを被覆している。また、カバー部25は、可撓性を有する程度の厚さを有している。例えば、メンブレンスイッチ13を利用者が押し込んだときに、当該メンブレンスイッチ13の直上のカバー部が充分に撓むようになっている。また、カバー部25は、EPD11の表示画像を透過させるものであるため、透明性に優れていることが好ましい。接合部26は、インレット1aや背面板1cと接合される部位である。また、接合部26の高さh3は、EPD11の高さh1と同じとなっており、インレット1aと前面板1bとが接合されてEPD11とカバー部25とが接触しても、接合部26とFPC20との間に隙間が生じないようになっている。
また、背面板1cは、可撓性を有する樹脂基材30に複数の凹凸部31、32、33が形成されたものである。当該凹凸部31、32、33の各々は、ポリマーバッテリ14、ICチップ15、及びFPC20の形状に対応して形成されたものであり、背面板1cとインレット1aとが貼り合わされた際に、各々が嵌合するようになっている。
そして、このようなインレット1a、前面板1b、及び背面板1cの相互間に接着剤が付与され、貼り合わされることによって、図2に示すICカードKが構成される。そして、このように接合されて構成されたカード本体1においては、その表面2よりもメンブレンスイッチ13の最上部13aが内側に位置することとなる。また、インレット1a、前面板1b、及び背面板1cからなる接合構造によって、ICカードKは強度に優れたものとなる。
【0018】
次に、図4〜図6を参照して、インレット1aに形成された指紋センサ10、EPD11について詳述する。
【0019】
(指紋センサ)
図4は指紋センサ10から入力された情報を処理する処理部40を説明するためのブロック図であり、図5は指紋センサ10の構成を示す模式図である。
図4に示すように、処理部40は、指紋センサ10に取り込まれた指紋パターンの特徴抽出を行うデータ処理部41と、特定の指紋パターンの特徴量等の各種情報を記憶するメモリ42と、データ処理部41により抽出された特徴量とメモリ42に記憶された特徴量とを比較する比較部43と、ICカードKの動作を制御する制御部44と、を備えている。このような処理部40における各処理は、ICチップ15によって行われる。
【0020】
また、図5に示すように、指紋センサ10は、静電容量型、すなわち凹凸を有する指紋と検出面10aとの間の距離に応じて変化する静電容量を測定して、指紋パターンを検出するようになっている。このような静電容量型の指紋センサ10は、光源が不要であるために薄型化することが容易であり、かつ表面保護層(パッシベーション膜)を適切に選択することによって、耐傷性を向上させることができるという特徴がある。
指紋センサ10は、剥離転写技術(後述)によってFPC20上に形成されたものである。このFPC20上には、所定の間隔を空けて互いに平行に形成された不図示の複数の走査線と、この走査線に対して直交するように所定の間隔を空けて互いに平行に形成された複数の信号線116とが設けられている。
【0021】
複数の走査線と複数の信号線116との交点のそれぞれに対応する位置には、トランジスタ等によって構成されるメンブレンスイッチング素子(検出回路)112が設けられている。これらの走査線、信号線116およびメンブレンスイッチング素子112によって、アクティブマトリクスアレイ113が構成されており、このアクティブマトリクスアレイ113の上には、検出電極111が各メンブレンスイッチング素子112に対応する位置にマトリックス状に設けられている。各検出電極111は、アクティブマトリクスアレイ113の全面を覆うように絶縁膜(パッシベーション膜)114にて覆われており、絶縁膜114は、ICカードKの利用者の指Fと接触可能になっている。
なお、アクティブマトリクスアレイ113としては、半導体基板上に形成されたMOSトランジスタアレイ、絶縁基板上に形成された薄膜トランジスタ(TFT)等を用いることができる。
【0022】
このような構成を有する指紋センサ10においては、指Fが検出面10aに接触すると、指Fとマトリックス状に配置された各検出電極111との間に、2次元的に分布する静電容量が発生する(図5のC1,C2,C3等)。この2次元的に分布した各静電容量の値をアクティブマトリクスアレイ113によって電気的に読み出すことにより、指Fの表面に形成された微細な凹凸形状のパターン(抽出指紋パターン)を検出することができる。静電容量方式を用いた指紋センサ10において、人体に帯電した静電気による放電破壊を回避するためには、検出前において、指Fに帯電した静電気を放電し、指Fの電位をメンブレンスイッチング素子112のグランド(基準電位)Gレベルと略同一の電位にしておくことが必須である。更に、各静電容量の値を安定して検出するためには、検出時において、指Fの電位を所定の電位に固定することが好ましい。このため、検出電極111とは異なる電極、すなわち人体に帯電した静電気を放電させる放電用電極120がICカードK上の任意の部位に設けられている。
なお、本実施形態においては、静電容量型の指紋センサ10を採用したが、他の指紋センサを採用してもよい。例えば、抵抗感知型、光電型、圧電型、及び静電容量型等を採用してもよい。その中でも静電容量型の指紋センサは、凹凸を有する指紋と、検出面との距離に応じて変化する静電容量を検出して指紋パターンを検出するものであるため、光源が不要となり、容易に薄型化が可能となるセンサであるため、特に好ましい。
このようにICカードKが指紋センサ11を備えることによって、ICカードKの利用者の個人認証を行うことができ、利用者を限定することができ、ICカードKの悪用を防止することができる。従って、セキュリティ性を有するICカードKを実現できる。
【0023】
(EPD)
図6は、EPD11の断面を示す断面図である。
当該EPD11は、電気泳動を利用した電気泳動表示デバイス(Electro Phoretic Display)である。
図6に示すように、EPD11は、可撓性を有するFPC20上に、電極フィルム211d、電気泳動表示層211c、電極フィルム211b及びこの表示部を保護する表面保護層211aが積層されている。なお、表面保護層211aは省略することも可能である。電極フィルム211bは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド等の寸法安定性の優れた透明なプラスチックフィルムに電極が形成されているものである。電極フィルム211dも同様な基材の電極が形成されてなるものであるが、必ずしも透明性は要求されない。なお、電極フィルム211bと電極フィルム211dとは、上下動通電極211fにより導通される。電極フィルム211bは、全面に同一の電位がかかる共通電極となり、一方、電極フィル211dにはアクティブマトリックス電極或いはセグメント電極等が形成されて駆動電極となる。
【0024】
電気泳動表示層211cを形成するマイクロカプセル211は、アラビアガム・ゼラチンの複合膜、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、尿素樹脂等をカプセル殻とし、カプセル殻の作製方法としては、界面重合法、in−situ重合法、相分離法、界面沈殿法、スプレードライング法、等の公知のマイクロカプセル化手法を採用することができる。内部には泳動粒子と分散媒が封入される。泳動粒子としては有機あるいは無機の粒子(高分子あるいはコロイド)が用いられる。たとえば、アニリンブラック、カーボンブラック等の黒色顔料、二酸化チタン、亜鉛華、三酸化アンチモン等の白色顔料、モノアゾ、ジイスアゾン、ポリアゾ等のアゾ系顔料、イソインドリノン、黄鉛、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、チタンイエロー、アンチモン等の黄色顔料、モノアゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料、キナクリドンレッド、クロムバーミリオン等の赤色顔料、フタロシアニンブルー、インダスレンブルー、アントラキノン系染料、紺青、群青、コバルトブルー等の青色顔料、フタロシアニングリーン等の緑色顔料等の1種又は2種以上を用いることができる。分散媒としては無色または染料により染色された水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール、メチルセルソルブ等のアルコール系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等の各種エステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ぺンタン、ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素、シクロへキサン、メチルシクロへキサン等の脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキシルベンゼン、ヘブチルベンゼン、オクチルベンゼン、ノニルベンゼン、デシルベンゼン、ウンデシルベンゼン、ドデシルベンゼン、トリデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン等の長鎖アルキル基を有するベンゼン類等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、カルボン酸塩又はその他の種々の油類等の単独又はこれらの混合物に界面活性剤等を配合したものを用いることができる。
【0025】
電気泳動は、電気泳動粒子は予め正または負に帯電させられており、また、分散媒と電気泳動粒子とは、互いに異なる着色がなされている。例えば白の粒子である酸化チタンを正電荷に、一方黒の粒子であるカーボンブラックを負電荷にした場合、二つの電極フィルム211b,211dに電界を印加して、電極フィルム211bが負極、電極フィルム211dが正極になると、正に帯電した白の粒子が電極フィルム211b側に引かれ、黒の粒子が電極フィルム211d側に引かれるので、電極フィルム211bを透明電極としておくことにより、電極フィルム211b側の上方から観察すると、その部分が白く見えるようになる。逆に、電極フィルム211bが正極、電極フィルム211dが負極になった場合には、正に帯電した白の粒子が電極フィルム211d側に引かれ、黒の粒子が電極フィルム211b側に引かれるので、電極フィルム211bの上方から観察するとその部分が黒く見える。
【0026】
EPD11は、上述したマイクロカプセル211を多数有しているので、電極フィルム211b,211dの各アドレス電極の電界を制御することで、所望の文字、数字、或いは記号を白と黒の画素で表示させることができる。
なお、マイクロカプセル211をアクティブマトリックス駆動法で駆動する場合は、電極フィルム211dは画素電極として画素毎に独立してパターニングされ、不図示の薄膜トランジスタ、信号電極、および走査電極を併設し、電極フィルム211bは光透過性基材上に一様に形成された透明な共通電極とする。この場合、電極フィルム211bを共通電極にすると全面同一電位になるので(例えば電位をゼロとする)、電極フィルム211d側の各アドレス電極の電界を制御(正または負の電位を与える)することで、上述した原理に基づき電極位置のマイクロカプセル211内の粒子を移動させ、所望の画像を表示させることができる。同様に、電極フィルム211dを共通電極とし、電極フィルム211b側の各アドレス電極の電界を制御することで、電極位置のマイクロカプセル211内の粒子を移動させることで所望の画像を表示させるようにしてもよい。
時分割駆動の場合は、電極フィルム211b、211dは互いに直交するライン状のITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)等の透明導電体からなる透明電極により構成され、両電極の交わる領域にマイクロカプセル211を配置する。
駆動方式は上述したものに限定されず、用途に応じて最適なものを選択すればよい。また、マイクロカプセル211の径は、種々のものを採用することが可能である。
【0027】
また、このようなEPD11は、画像の表示記憶性や表示メモリ性を有する表示素子であるため、TFT等の駆動素子が所定時間の間に所定電圧を付与することで、その後に電圧を付加することなく、画像を保持することが可能となる。これにより、画像を表示するための消費電力を低減できるので、低消費電力を実現できると共に、表示メモリ性を有するICカードKを実現できる。
【0028】
上記のような指紋センサ10及びEPD11においては、薄膜トランジスタを利用することにより指紋情報を静電容量として電気的に読み出したり、電気泳動表示層211cに電圧を付与したりしている。このような薄膜トランジスタは、SUFTLA(Surface Free Technology by Laser Ablation)(登録商標)等の剥離転写技術によりFPC20に形成されたものである。具体的には、耐熱性に優れ、透明性を有する、例えばガラス基板上に低温ポリシリコンTFTを予め形成し、その後、レーザー照射によって所定の薄膜トランジスタを剥離し、当該薄膜トランジスタをFPC20上に転写して形成するものである。このような技術を用いることにより、従来まではガラス基板のような硬くて耐熱性を有する基板のみにしか形成することができなかった薄膜トランジスタを、例えばガラス基板よりも耐熱性が劣るような、可撓性基板に転写形成することが可能となる。従って、柔軟性を有するFPC20等に容易に薄膜トランジスタを形成することが可能となり、指紋センサ10やEPD11を備えると共に可撓性を有するICカードKが実現可能となる。
【0029】
また、接続用IC端子12は、ICカードKと不図示の外部装置との間で情報の送受信を行う際に、外部装置に設けられた端子に接続されるものである。また、接続用IC端子12は、ICカードKの内部に設けられたICチップに接続されており、外部装置とICチップとの間で入出力信号を送受信するようになっている。
また、メンブレンスイッチ13は、上記のようにICカードKの表面と同一面、又は凹んだ部位に形成されたものである。また、ICカードKで利用可能なアプリケーションを選択、決定するものである。また、当該アプリケーションは、上記のEPD11に複数表示されるようになっている。また、EPD11に表示されたアプリケーションは、メンブレンスイッチ13を用いて選択、決定されるようになっている。また、メンブレンスイッチ13は、アプリケーションを選択、決定するだけでなく、ICカードKの電源のOFF状態(電源切の状態)から、ON状態(電源入の状態)に切り替えるための電源スイッチとしても機能するようになっている。
【0030】
また、ポリマーバッテリ14は、リチウムイオン・バッテリの電解質をポリマー(重合体)に改良した再充電可能な2次電池である。このようなリチウムポリマー・バッテリは、液体の電解質の代わりに導電性のポリマーを利用して、フィルムの層状にして両極を構成できるため、小型軽量化が可能で、屈曲に耐えられるという利点を有している。また、エネルギー密度は、同体積のリチウムイオン・バッテリの1.5倍程度であり、比較的高いことが知られている。また、当該リチウムポリマー・バッテリは、従来の2次電池として知られているNiCdバッテリ、NiMHバッテリ、リチウムイオン・バッテリように液体の電解質を利用しないので、バッテリのパッケージングや形状が制限されることがなく、軽量化が実現可能となる。
【0031】
また、ICチップ15は、CPU等の演算回路、ドライバ等の駆動回路、ROMやRAM等のメモリからなる記憶回路を備えている。このようなICチップ15は、上記の剥離転写技術によってFPC20に形成されたものであり、EPD11の表示動作の制御、指紋センサ10の制御、メンブレンスイッチ13からの入力信号の処理、接続用IC端子12を介して入出力される外部装置との通信等を行うものである。
【0032】
上述したように、本実施形態のICカードKにおいては、メンブレンスイッチ13の最上部13aがカード本体1表面よりも内側に位置している、換言すれば、最上部13aがICカードKの表面よりも凹んだ面に位置されているので、カード本体1の厚さ方向に向けてメンブレンスイッチ13に押圧力が付与された場合のみに当該メンブレンスイッチ13への入力を行うことができる。また、カード本体1表面の斜め方向や略水平方向に向けてメンブレンスイッチ13に押圧力が付与された場合では、厚さ方向への押圧力が働き難いため、メンブレンスイッチ13への入力が行われ難くすることができる。従って、利用者が、自らの判断に基づいて、EPD11を動作させる場合のみに、カード本体1の厚さ方向に向けてメンブレンスイッチ13を局所的に押し込むことで、EPD11を動作させることができる。また、カード本体1表面の斜め方向や略水平方向に向けてメンブレンスイッチ13に押圧力が付与された場合では、EPD11を非動作にすることができる。従って、利用者の判断に基づいてEPD11を動作させる場合を除き、メンブレンスイッチ13への誤入力を防止できるので、ICカードKの誤動作を防止できる。
【0033】
また、前面板1bは、メンブレンスイッチ13及びEPD11を被覆するカバー部を備えているので、当該メンブレンスイッチ13及びEPD11を保護できる。更に、前面板1bと背面板1cとによってインレット1aが挟持されているので、頑強な接合構造を有するICカードKを実現できる。
また、メンブレンスイッチ13がカバー部に被覆されることにより、ICカードKの表面よりも内側にメンブレンスイッチ13を備えることが可能となる。従って、カード本体1の厚さ方向に向けてメンブレンスイッチ13を局所的に押し込む場合のみにおいて、EPD11を動作させることができる。
【0034】
(ICカードの第2実施形態)
本発明のICカードの第2実施形態について図を参照して説明する。
本実施形態においては、上記の第1実施形態と同一構成には同一符号を付して説明を簡素化している。
図7及び図8は、本実施形態に係るICカードKの断面図斜視図である。本実施形態においては、図7は、図1のA−A’断面を示す図であって、ICカードKの断面構造を説明するための断面拡大図である。図8は、ICカードKの断面拡大図であって、ICカードKの構造を詳述するための分解図である。
【0035】
図8に示すように、インレット1aにおいては、FPC20の上面20aからEPD11の最上部11aまでの高さh1と、FPC20の上面20aからメンブレンスイッチ13の最上部13aまでの高さh2は、h1>h2の関係を有しており、EPD11の最上部11aよりもメンブレンスイッチ13の最上部13aが低くなっている。
また、前面板1bは、カバー部25に開口部3が形成されている。当該開口部3は、インレット1aと前面板1bとが接合された際に、EPD11が勘合されるようになっている。ここで、接合部26とカバー部25とを合わせた高さh4と、EPD11の高さh2とは同じ高さであり、EPD11が開口部3に勘合されるとカバー部25の上面25aとEPD11の上面11aとが同一の高さとなる。一方、メンブレンスイッチ13においては、カバー部25が被覆されるようになっている。また、メンブレンスイッチ13の高さh2は、接合部26の高さh3よりも低いか、或いは同じとなっており、インレット1aと前面板1bとが接合された際に、前面板1bによってメンブレンスイッチ13が押圧されないようになっている。このように接合されて構成されたカード本体1においては、その表面2よりもメンブレンスイッチ13の最上部13aが内側に位置することとなる。
【0036】
また、本実施形態においては、開口部25aからEPD11を露出させているが、接続用IC端子12や指紋センサ11においても、同様に開口部25aから露出させた構成となっている。これにより、ICカードKは、接続用IC端子12を介して外部装置との間で情報の送受信を行うことが可能となる。また、指紋センサ10から利用者の指紋パターンを抽出することが可能となる。
【0037】
上述したように、本実施形態のICカードKにおいては、カバー部25がメンブレンスイッチ13のみを被覆し、また、開口部25によってEPD11を露出していることから、メンブレンスイッチ13をカバー部25によって保護できる。また、メンブレンスイッチ13がカバー部25に被覆されるので、ICカードKの表面よりも内側にメンブレンスイッチ13を備えることが可能となる。従って、カード本体1の厚さ方向に向けてメンブレンスイッチ13を局所的に押し込む場合のみにおいて、EPD11を動作させることができる。また、カード本体1表面の斜め方向や略水平方向に向けてメンブレンスイッチ13に押圧力が付与された場合では、EPD11を非動作にすることができる。従って、利用者の判断に基づいてEPD11を動作させる場合を除き、メンブレンスイッチ13への誤入力を防止できるので、ICカードKの誤動作を防止できる。
【0038】
また、開口部においてEPD11は露出状態となるので、EPD11は、カバー部25を透過させずに画像を表示できる。ここで、カバー部25を透過した場合の画像は、カバー部25の材料の屈折率によって奥まった画像が表示されやすく表示特性が低下してしまうが、本実施形態ではEPD11が露出状態となっているので材料の屈折率に影響されることなく、高コントラストでクリアな画像を表示できる。また、特に、EPD11は、外光反射を利用して画像表示を行う表示方式であるため、表示特性を改善させるには透明部材を透過する光の経路長を短くすることが好ましい。従って、本実施形態のようにカバー部25を透過させずにEPD11が画像表示を行うことによって、EPD11の画像を鮮明に表示できる。
【0039】
なお、上記の実施形態のICカードKにおいては、表面2よりもメンブレンスイッチ13の最上部13aが内側に位置しているが、これに限定することなく、メンブレンスイッチ13の最上部とカード本体1の表面2とが同じ高さとなっていてもよい。この場合においても、カード本体1の厚さ方向に向けてメンブレンスイッチ13に押圧力が付与された場合のみに当該メンブレンスイッチ13への入力を行うことができる。また、カード本体1表面の斜め方向や略水平方向に向けてメンブレンスイッチ13に押圧力が付与された場合では、厚さ方向への押圧力が働き難いため、メンブレンスイッチ13への入力が行われ難くすることができる。従って、上記の実施形態と同様の効果が得られる。
【0040】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】第1実施形態のICカードを示す斜視図。
【図2】第1実施形態のICカードを示す断面拡大図。
【図3】第1実施形態のICカードを示す分解図。
【図4】指紋センサから入力された情報を処理する処理部を示すブロック図。
【図5】指紋センサの構成を示す模式図。
【図6】電気泳動表示デバイス(EPD)の断面を示す断面図。
【図7】第2実施形態のICカードを示す断面拡大図。
【図8】第2実施形態のICカードを示す分解図。
【符号の説明】
【0042】
1 カード本体、 1a インレット(第1部材)、 1b 前面板(第2部材)、 1c 背面板(第3部材)、 2 表面(カード本体表面)、 10 指紋センサ(機能部)、 11 EPD(機能部、表示部)、 11a 最上部(機能部の最上部)、 12 接続用IC端子(機能部)、 13 メンブレンスイッチ(入力手段)、 13a 最上部(入力手段の最上部)、 20a 上面(第1部材の表面)、 25 カバー部、 25a 開口部、 K ICカード


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード本体と、当該カード本体に形成された入力手段と、当該入力手段の入力に応じて動作する機能部と、を具備し、
前記カード本体の厚さ方向において、前記入力手段の最上部と前記カード本体表面とは同じ高さ、又は前記入力手段の最上部は前記カード本体表面よりも内側、に位置していることを特徴とするICカード。
【請求項2】
前記カード本体は、前記入力手段及び前記機能部が形成された第1部材と、当該第1部材における前記入力手段が形成されている側に配置された第2部材と、が接合されていることを特徴とする請求項1に記載のICカード。
【請求項3】
前記第2部材は、前記入力手段及び前記機能部を被覆するカバー部を備え、
前記第1部材の表面から前記機能部の最上部までの高さと、前記第1部材の表面から前記入力手段の最上部までの高さは、同じであることを特徴とする請求項2に記載のICカード。
【請求項4】
前記第2部材は、前記入力手段のみを被覆するカバー部と、前記機能部を露出する開口部とを備え、
前記第1部材の表面から前記機能部の最上部までの高さよりも、前記第1部材の表面から前記入力手段の最上部までの高さが低いことを特徴とする請求項2に記載のICカード。
【請求項5】
前記カード本体は、前記第2部材に対向配置された第3部材を具備し、
前記第2部材と前記第3部材とによって前記第1部材が挟持されていることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか一項に記載のICカード。
【請求項6】
前記機能部は、画像表示が可能な表示部であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のICカード。
【請求項7】
前記機能部は、外部装置と接続可能な外部接続端子であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のICカード。
【請求項8】
前記機能部は、指紋情報を抽出する指紋センサであることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のICカード。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−134145(P2006−134145A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−323661(P2004−323661)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】