説明

III族窒化物複合基板

【課題】支持基板とIII族窒化物層との接合強度が高いIII族窒化物複合基板を提供する。
【解決手段】III族窒化物複合基板1は、サファイア等からなる支持基板10と、支持基板10上に形成されている酸化物膜20と、酸化物膜20上に形成されているIII族窒化物層30aと、を含む。ここで、酸化物膜20は、TiO2膜およびSrTiO3膜からなる群から選ばれるいずれかの膜とすることができ、NbおよびLaからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を不純物として添加することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持基板とIII族窒化物層とを含み、酸化物膜とIII族窒化物層との接合強度が高いIII族窒化物複合基板に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスに好適に用いられるAlxInyGa1-x-yN基板(0≦x、0≦y、x+y≦1)などのIII族窒化物基板は、製造コストが高い。このため、かかるIII族窒化物基板が用いられている半導体デバイスの製造コストが高くなる。
【0003】
そこで、半導体デバイスに用いる基板として、高価な厚いIII族窒化物基板に替えて、薄いIII族窒化物層を支持基板に形成した比較的安価なIII族窒化物複合基板が提案されている。たとえば、特開2006−210660号公報(特許文献1)は、シリコン基板などに、GaN、AlNなどの窒化物半導体膜を形成した半導体基板の製造方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−210660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特開2006−210660号公報(特許文献1)に開示されている半導体基板は、支持基板であるシリコン基板などにIII族窒化物層を直接重ね合わせて接合しているため、接合強度が弱いという問題点があった。
【0006】
そこで、本発明は、支持基板とIII族窒化物層との接合強度が高いIII族窒化物複合基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、支持基板と、支持基板上に形成されている酸化物膜と、酸化物膜上に形成されているIII族窒化物層と、を含むIII族窒化物複合基板である。
【0008】
本発明にかかるIII族窒化物複合基板において、酸化物膜は、TiO2膜およびSrTiO3膜からなる群から選ばれるいずれかの膜とすることができる。また、酸化物膜に不純物を添加することができる。ここで、不純物は、NbおよびLaからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含むことができる。また、支持基板は、III族窒化物支持基板とすることができる。また、支持基板は、サファイア支持基板とすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、支持基板とIII族窒化物層との接合強度が高いIII族窒化物複合基板が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明にかかるIII族窒化物複合基板の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明にかかるIII族窒化物複合基板を製造する方法の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[III族窒化物複合基板]
図1を参照して、本発明の一実施形態であるIII族窒化物複合基板1は、支持基板10と、支持基板10上に形成されている酸化物膜20と、酸化物膜20上に形成されているIII族窒化物層30aと、を含む。本実施形態のIII族窒化物複合基板1は、酸化物膜20を介在させて支持基板10とIII族窒化物層30aとが接合されているため、支持基板10とIII族窒化物層30aとの接合強度が極めて高い。
【0012】
(支持基板)
支持基板10は、その上に酸化物膜20を形成することができるものであれば特に制限はなく、サファイア支持基板、Si支持基板、SiC支持基板、III族窒化物支持基板などが好適に挙げられる。ここで、III族窒化物複合基板において支持基板とIII族窒化物層との間の熱膨張係数の差を低減する観点から、III族窒化物支持基板が好ましい。III族窒化物支持基板は、単結晶体であっても、非配向性多結晶体(たとえば焼結体)、配向性多結晶体などの多結晶体であっても、非結晶体であってもよいが、製造コストの低減の観点から、多結晶体、非結晶体であることが好ましい。また、III族窒化物複合基板の光透過性を向上させる観点から、サファイア支持基板が好ましい。
【0013】
また、支持基板10の厚さは、酸化物膜20およびIII族窒化物層30aを支持できる厚さであれば特に制限はないが、取り扱い易い観点から300μm以上が好ましく、材料コストを低減する観点から1000μm以下が好ましい。
【0014】
(酸化物膜)
酸化物膜20は、その上にIII族窒化物層30aを形成することができ、支持基板10上に形成することができ、支持基板10とIII族窒化物層30aとの接合強度が高いものであれば特に制限はなく、TiO2膜、SrTiO3膜、Ga23膜、Al23膜などが好適に挙げられる。III族窒化物層からの光の透過性を高める観点から、屈折率が高い酸化物膜、たとえばTiO2膜(屈折率が約2.8)およびSrTiO3膜(屈折率が約2.4)からなる群から選ばれるいずれかの膜であることが好ましい。
【0015】
また、導電性を付与する観点から、酸化物膜20は、不純物が添加されていることが好ましい。ここで、導電性を高めるとともに、支持基板10とIII族窒化物層30aとの接合強度を高める観点から、不純物は、たとえばNbおよびLaからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含むことが好ましい。また、不純物は、不純物の添加による導電性および接合強度を高める効果が高い観点から、Sb、Mo、Fe、Al、Sn、Pt、I、B、Nなどのうちのいずれかを含んでいてもよい。酸化物膜20に含まれる不純物の濃度は、特に制限はないが、導電性を高める観点から0.01質量%以上が好ましく、透光性を高める観点から1質量%以下が好ましい。
【0016】
また、酸化物膜20の厚さは、支持基板10とIII族窒化物層30aとの接合強度を高める厚さであれば特に制限はないが、接合強度を高める観点から50nm以上が好ましく、成膜コストを低減する観点から1000nm以下が好ましい。
【0017】
(III族窒化物層)
III族窒化物層30aとは、AlxInyGa1-x-yN(0≦x、0≦y、x+y≦1)などのIII族窒化物で形成されている層をいう。III族窒化物層30aは、その上に結晶性の高いエピタキシャル層を成長させる観点から、単結晶体であることが好ましい。
【0018】
III族窒化物層30aの厚さは、その上に結晶性の高いエピタキシャル層を成長させることができる厚さであれば特に制限はないが、III族窒化物層30aを割れることなく形成する観点から100nm以上が好ましく、III族窒化物層30aの厚さの精度を高めるとともにイオン注入による結晶性の低下を抑制する観点から1000μm以下が好ましい。
【0019】
[III族窒化物複合基板の製造方法]
図2を参照して、本実施形態のIII族窒化物複合基板1を製造する方法は、特に制限はないが、たとえば、支持基板10を準備して、その支持基板10上に酸化物膜20を形成する工程(図2(A))と、支持基板10上の酸化物膜20上にIII族窒化物層30aを形成することによりIII族窒化物複合基板を得る工程(図2(B)〜(D))と、を含む。かかる製造方法により、支持基板10とIII族窒化物層30aとの接合強度が高いIII族窒化物複合基板が効率よく得られる。
【0020】
図2(A)を参照して、支持基板10を準備して、その支持基板10上に酸化物膜20を形成する工程は、支持基板10を準備するサブ工程と、支持基板10上に酸化物膜20を形成するサブ工程と、を含むことができる。
【0021】
支持基板10を準備するサブ工程において、支持基板10は、その材質および形状に適した一般的な方法で準備することができる。たとえば、III族窒化物支持基板は、HVPE(ハイドライド気相成長)法、昇華法などの気相法、フラックス法、高窒素圧溶液法などの液相法により得られたIII族窒化物結晶体を、所定の形状に加工することにより準備することができる。また、サファイア支持基板は、サファイア結晶体を所定の形状に加工することにより準備することができる。
【0022】
支持基板10上に酸化物膜20を形成するサブ工程において、支持基板10上に、酸化物膜20を形成する方法は、その酸化物膜20の形成に適している限り特に制限はなく、スパッタ法、パルスレーザ堆積法、分子線エピタキシ法、電子線蒸着法、化学気相成長法などの一般的な方法を用いることができる。
【0023】
図2(B)〜(D)を参照して、支持基板10上の酸化物膜20上にIII族窒化物層30aを形成することによりIII族窒化物複合基板1を得る工程は、III族窒化物基板30にその主表面30nから一定の深さの領域にイオンIを注入するサブ工程(図2(B))、支持基板10上の酸化物膜20上にIII族窒化物基板30のイオン注入領域30i(イオンが注入された領域をいう。以下同じ。)側の主表面30nを貼り合わせるサブ工程(図2(C))、III族窒化物基板30を、そのイオン注入領域30iで、III族窒化物層30aと残りのIII族窒化物基板30bとに分離して、支持基板10上の酸化物膜20上にIII族窒化物層30aを形成するサブ工程(図2(D))と、を含むことができる。
【0024】
図2(B)に示すIII族窒化物基板30にその主表面30nから一定の深さの領域にイオンIを注入するサブ工程において、イオンを注入する深さは、特に制限はないが、100nm以上1000μm以下が好ましい。イオンを注入する深さが、100nmより小さいとIII族窒化物基板30をそのイオン注入領域30iで分離することにより形成されるIII族窒化物層30aが割れやすくなり、1000μmより大きいとイオンの分布が広くなり分離する深さを調節することが難しくなるためIII族窒化物層30aの厚さを調節することが難しくなる。また、注入するイオンの種類は、特に制限はないが、形成するIII族窒化物層の結晶性の低下を抑制する観点から、質量が小さいイオンが好ましく、たとえば、水素イオン、ヘリウムイオンなどが好ましい。こうして形成されたイオン注入領域30iは、注入されたイオンにより脆化する。
【0025】
図2(C)に示す支持基板10上の酸化物膜20上にIII族窒化物基板30のイオン注入領域30i側の主表面30nを貼り合わせるサブ工程において、その貼り合わせ方法は、特に制限はないが、貼り合わせ後高温雰囲気下においても接合強度を保持できる観点から、貼り合わせる面の表面を洗浄して直接貼り合わせた後600℃〜1200℃程度に昇温して接合することによる直接接合法、プラズマやイオンなどで貼り合わせ面を活性化させ室温(たとえば25℃)〜400℃程度の低温で接合することによる表面活性化法などが好ましい。
【0026】
図2(D)に示すIII族窒化物基板30を、そのイオン注入領域30iで、III族窒化物層30aと残りのIII族窒化物基板30bとに分離して、支持基板10上の酸化物膜20上にIII族窒化物層30aを形成するサブ工程において、III族窒化物基板30をそのイオン注入領域30iで分離する方法は、III族窒化物基板30のイオン注入領域30iに何らかのエネルギーを与える方法であれば特に制限はなく、イオン注入領域30iに、応力を加える方法、熱を加える方法、光を照射する方法、および超音波を印加する方法の少なくともいずれかの方法を用いることができる。かかるイオン注入領域30iは、注入されたイオンにより脆化しているため、上記エネルギーを受けることにより、III族窒化物基板30は、支持基板10上の酸化物膜20上に貼りあわされたIII族窒化物層30aと、残りのIII族窒化物基板30bと、に容易に分離される。
【0027】
上記のようにして、支持基板10上の酸化物膜20上にIII族窒化物層30aを形成することにより、支持基板10と、支持基板10上に形成されている酸化物膜20と、酸化物膜20上に形成されているIII族窒化物層30aと、を含むIII族窒化物複合基板1が得られる。
【0028】
上記のIII族窒化物複合基板の製造方法においては、イオン注入法を用いてIII族窒化物層30aを形成する場合を説明したが、支持基板上の酸化物膜に、イオンを注入していないIII族窒化物基板を貼り合わせた後、III族窒化物結晶体をその貼り合わせた主表面から所定の深さの面で分離することにより、III族窒化物層を形成することもできる。この場合、III族窒化物基板を分離する方法として、特に制限はなく、ワイヤーソー、内周刃、外周刃などを用いた切断などの方法を用いることができる。
【実施例】
【0029】
(実施例A1〜A10)
1.支持基板の準備
図2(A)を参照して、HVPE法により成長させたGaN結晶体(図示せず)から直径が50mmで厚さが500μmの10枚の基板を切り出して、それらの主表面を研磨して、10枚のGaN支持基板(支持基板10)を準備した。
【0030】
2.支持基板上への酸化物膜の形成
図2(A)を参照して、スパッタ法により、10枚のGaN支持基板(支持基板10)上に厚さ300nmの10種類のTiO2膜(酸化物膜20)をそれぞれ成長させた。ここで、10種類のTiO2膜とは、不純物が添加されなかったTiO2膜(実施例A1)、0.01質量%のNbが添加されたTiO2膜(実施例A2)、0.01質量%のLaが添加されたTiO2膜(実施例A3)、0.01質量%のNbおよび0.01質量%のLaが添加されたTiO2膜(実施例A4)、0.1質量%のNbが添加されたTiO2膜(実施例A5)、0.1質量%のLaが添加されたTiO2膜(実施例A6)、0.1質量%のNbおよび0.1質量%のLaが添加されたTiO2膜(実施例A7)、1質量%のNbが添加されたTiO2膜(実施例A8)、1質量%のLaが添加されたTiO2膜(実施例A9)、ならびに1質量%のNbおよび1質量%のLaが添加されたTiO2膜(実施例A10)であった。結果を表1にまとめた。
【0031】
3.酸化物膜上へのIII族窒化物層の形成
図2(B)を参照して、HVPE法により成長させたGaN結晶体(図示せず)から直径が50mmで厚さが500μmの10枚の基板を切り出して、そそれらの主表面を研磨して、10枚のGaN基板(III族窒化物基板30)を準備し、それぞれの基板の主表面30nから300nmの深さに水素イオンを注入した。
【0032】
図2(C)を参照して、10枚のGaN支持基板(支持基板10)上のTiO2膜(酸化物膜20)の主表面と、10枚のGaN基板(III族窒化物基板30)のイオン注入側の主表面30nとを、それぞれアルゴンプラズマにより清浄化させた後接合圧力8MPaで貼り合わせた。
【0033】
図2(D)を参照して、10枚の貼り合わせた基板を、300℃で2時間熱処理することにより、貼り合わせた基板の接合強度を高めるとともに、GaN基板(III族窒化物基板)をそのイオン注入領域30iで分離することにより、TiO2膜(酸化物膜20)上に厚さが300nmのGaN層(III族窒化物層30a)を形成して、GaN支持基板(支持基板10)、TiO2膜(酸化物膜20)およびGaN層(III族窒化物層30a)がこの順に形成された10枚のIII族窒化物複合基板1が得られた。
【0034】
4.支持基板とIII族窒化物層との接合強度の測定
得られた10枚のIII族窒化物複合基板1の各々から、主表面の大きさが12mm×12mmのサンプルを5個作製し、各サンプルのGaN支持基板(支持基板10)およびGaN層(III族窒化物層30a)を測定治具にエポキシ接着剤により固定した。25℃の雰囲気温度下、0.1mm/secの引張速度で、サンプルが破断するときのGaN支持基板(支持基板10)−TiO2膜(酸化物膜20)−GaN層(III族窒化物層30a)間の接合強度を測定した。いずれのサンプルについても、TiO2膜(酸化物膜20)とGaN層(III族窒化物層30a)との接合界面で破断した。かかる接合強度は、1枚のIII族窒化物複合基板について5個のサンプルの接合強度の平均値を測定し、後述する比較例R1(TiO2膜(酸化物膜20)を介在させずに、GaN支持基板(支持基板10)とGaN層(III族窒化物層30a)とを直接貼り合わせた例)における5個のサンプルの接合強度の平均値(比較例R1における接合強度の平均値を1とする)に対する相対接合強度として表わした。結果を表1にまとめた。
【0035】
(比較例R1)
1.支持基板の準備
実施例A1と同様にして、1枚のGaN支持基板(支持基板)を準備した。
【0036】
2.支持基板上へのIII族窒化物層の形成
実施例A1と同様にして、1枚のGaN基板(III族窒化物基板)を準備し、それぞれの基板の主表面30nから300nmの深さに水素イオンを注入した。
【0037】
次いで、GaN支持基板(支持基板)の主表面と、GaN基板(III族窒化物基板)のイオン注入側の主表面とを、アルゴンプラズマにより清浄化させた後接合強度8MPaで貼り合わせた。
【0038】
次いで、貼り合わせた基板を、300℃で2時間熱処理することにより、貼り合わせた基板の接合強度を高めるとともに、GaN基板(III族窒化物基板)をそのイオン注入領域で分離することにより、GaN支持基板(III族窒化物支持基板)上に厚さが300nmのGaN層(III族窒化物層)が直接形成されたIII族窒化物複合基板が得られた。
【0039】
3.支持基板とIII族窒化物層との接合強度の測定
実施例A1と同様にして、得られたIII族窒化物複合基板の支持基板とIII族窒化物層との接合強度を測定した。サンプルは、いずれもGaN支持基板(支持基板)とGaN層(III族窒化物層)との接合界面で破断した。結果を表1および2にまとめた。
【0040】
【表1】

【0041】
表1を参照して、TiO2膜(酸化物膜)を介在させてGaN支持基板(支持基板)とGaN層(III族窒化物層)とが接合されたIII族窒化物複合基板(実施例A1〜A10)は、TiO2膜(酸化物膜)を介在させずにGaN支持基板(支持基板)とGaN層(III族窒化物層)とが直接接合されたIII族窒化物複合基板(比較例R1)に比べて、大きな接合強度を有していた。また、不純物としてNbおよびLaの少なくとも1種の元素が添加されたTiO2膜(酸化物膜)を有するIII族窒化物複合基板(実施例A2〜A10)は、不純物が添加されなかったTiO2膜(酸化物膜)を有するIII族窒化物複合基板(実施例A1)に比べて、大きな接合強度を有していた。
【0042】
(実施例B1〜B10)
1.支持基板の準備
実施例A1〜A10と同様にして、10枚のGaN支持基板(支持基板)を準備した。
【0043】
2.支持基板上への酸化物膜の形成
スパッタ法により、10枚のGaN支持基板(支持基板)上に厚さ300nmの10種類のSrTiO3膜(酸化物膜)をそれぞれ成長させた。ここで、10種類のSrTiO3膜とは、不純物が添加されなかったSrTiO3膜(実施例B1)、0.01質量%のNbが添加されたSrTiO3膜(実施例B2)、0.01質量%のLaが添加されたSrTiO3膜(実施例B3)、0.01質量%のNbおよび0.01質量%のLaが添加されたSrTiO3膜(実施例B4)、0.1質量%のNbが添加されたSrTiO3膜(実施例B5)、0.1質量%のLaが添加されたSrTiO3膜(実施例B6)、0.1質量%のNbおよび0.1質量%のLaが添加されたSrTiO3膜(実施例B7)、1質量%のNbが添加されたSrTiO3膜(実施例B8)、1質量%のLaが添加されたSrTiO3膜(実施例B9)、ならびに1質量%のNbおよび1質量%のLaが添加されたSrTiO3膜(実施例B10)であった。結果を表2にまとめた。
【0044】
3.酸化物膜上へのIII族窒化物層の形成
実施例A1〜A10と同様にして、10枚のそれぞれのGaN支持基板(支持基板)上のSrTiO3膜(酸化物膜)上に厚さが300nmのGaN層(III族窒化物層)を形成して、GaN支持基板(支持基板)、SrTiO3膜(酸化物膜)およびGaN層(III族窒化物層)がこの順に形成された10枚のIII族窒化物複合基板を作製した。
【0045】
4.支持基板とIII族窒化物層との接合強度の測定
得られた10枚のIII族窒化物複合基板について、実施例A1〜A10と同様にして、サンプルが破断するときのGaN支持基板(支持基板)−SrTiO3膜(酸化物膜)−GaN層(III族窒化物層)間の接合強度を測定した。いずれのサンプルについても、SrTiO3膜(酸化物膜)とGaN層(III族窒化物層)との接合界面で破断した。かかる接合強度は、1枚のIII族窒化物複合基板について5個のサンプルの接合強度の平均値を測定し、比較例R1(SrTiO3膜(酸化物膜)を介在させずに、GaN支持基板(支持基板)とGaN層(III族窒化物層)とを直接貼り合わせた例)における5個のサンプルの接合強度の平均値(比較例R1における接合強度の平均値を1とする)に対する相対接合強度として表わした。結果を表2にまとめた。
【0046】
【表2】

【0047】
表2を参照して、SrTiO3膜(酸化物膜)を介在させてGaN支持基板(支持基板)とGaN層(III族窒化物層)とが接合されたIII族窒化物複合基板(実施例B1〜B10)は、SrTiO3膜(酸化物膜)を介在させずにGaN支持基板(支持基板)とGaN層(III族窒化物層)とが直接接合されたIII族窒化物複合基板(比較例R1)に比べて、大きな接合強度を有していた。また、不純物としてNbおよびLaの少なくとも1種の元素が添加されたSrTiO3膜(酸化物膜)を有するIII族窒化物複合基板(実施例B2〜B10)は、不純物が添加されなかったSrTiO3膜(酸化物膜)を有するIII族窒化物複合基板(実施例B1)に比べて、大きな接合強度を有していた。
【0048】
(実施例C1〜C10)
1.支持基板の準備
直径が50mmで厚さが500μmで主表面が研磨された10枚のサファイア基板を準備した。
【0049】
2.支持基板上への酸化物膜の形成
スパッタ法により、10枚のサファイア支持基板(支持基板)上に厚さ300nmの10種類のTiO2膜(酸化物膜)をそれぞれ成長させた。ここで、10種類のTiO2膜とは、不純物が添加されなかったTiO2膜(実施例C1)、0.01質量%のNbが添加されたTiO2膜(実施例C2)、0.01質量%のLaが添加されたTiO2膜(実施例C3)、0.01質量%のNbおよび0.01質量%のLaが添加されたTiO2膜(実施例C4)、0.1質量%のNbが添加されたTiO2膜(実施例C5)、0.1質量%のLaが添加されたTiO2膜(実施例C6)、0.1質量%のNbおよび0.1質量%のLaが添加されたTiO2膜(実施例C7)、1質量%のNbが添加されたTiO2膜(実施例C8)、1質量%のLaが添加されたTiO2膜(実施例C9)、ならびに1質量%のNbおよび1質量%のLaが添加されたTiO2膜(実施例C10)であった。結果を表3にまとめた。
【0050】
3.酸化物膜上へのIII族窒化物層の形成
実施例A1〜A10と同様にして、10枚のそれぞれのGaN支持基板(支持基板)上のTiO2膜(酸化物膜)上に厚さが300nmのGaN層(III族窒化物層)を形成して、サファイア支持基板(支持基板)、TiO2膜(酸化物膜)およびGaN層(III族窒化物層)がこの順に形成された10枚のIII族窒化物複合基板を作製した。
【0051】
4.支持基板とIII族窒化物層との接合強度の測定
得られた10枚のIII族窒化物複合基板について、実施例A1〜A10と同様にして、サンプルが破断するときのサファイア支持基板(支持基板)−TiO2膜(酸化物膜)−GaN層(III族窒化物層)間の接合強度を測定した。いずれのサンプルについても、TiO2膜(酸化物膜)とGaN層(III族窒化物層)との接合界面で破断した。かかる接合強度は、1枚のIII族窒化物複合基板について5個のサンプルの接合強度の平均値を測定し、後述する比較例R2(TiO2膜(酸化物膜)を介在させずに、サファイア支持基板(支持基板)とGaN層(III族窒化物層)とを直接貼り合わせた例)における5個のサンプルの接合強度の平均値(比較例R2における接合強度の平均値を1とする)に対する相対接合強度として表わした。結果を表3にまとめた。
【0052】
(比較例R2)
1.支持基板の準備
実施例C1と同様にして、1枚のサファイア支持基板(支持基板)を準備した。
【0053】
2.支持基板上へのIII族窒化物層の形成
実施例A1と同様にして、1枚のGaN基板(III族窒化物基板)を準備し、それぞれの基板の主表面30nから300nmの深さに水素イオンを注入した。
【0054】
次いで、サファイア支持基板(支持基板)の主表面と、GaN基板(III族窒化物基板)のイオン注入側の主表面とを、アルゴンプラズマにより清浄化させた後接合圧力8MPaで貼り合わせた。
【0055】
次いで、貼り合わせた基板を、300℃で2時間熱処理することにより、貼り合わせた基板の接合強度を高めるとともに、GaN基板(III族窒化物基板)をそのイオン注入領域で分離することにより、サファイア支持基板(支持基板)上に厚さが300nmのGaN層(III族窒化物層)が直接形成されたIII族窒化物複合基板が得られた。
【0056】
3.支持基板とIII族窒化物層との接合強度の測定
実施例A1と同様にして、得られたIII族窒化物複合基板の支持基板とIII族窒化物層との接合強度を測定した。サンプルは、いずれもサファイア支持基板(支持基板)とGaN層(III族窒化物層)との接合界面で破断した。結果を表3および4にまとめた。
【0057】
【表3】

【0058】
表3を参照して、TiO2膜(酸化物膜)を介在させてサファイア支持基板(支持基板)とGaN層(III族窒化物層)とが接合されたIII族窒化物複合基板(実施例C1〜C10)は、TiO2膜(酸化物膜)を介在させずにサファイア支持基板(支持基板)とGaN層(III族窒化物層)とが直接接合されたIII族窒化物複合基板(比較例R2)に比べて、大きな接合強度を有していた。また、不純物としてNbおよびLaの少なくとも1種の元素が添加されたTiO2膜(酸化物膜)を有するIII族窒化物複合基板(実施例C2〜C10)は、不純物が添加されなかったTiO2膜(酸化物膜)を有するIII族窒化物複合基板(実施例C1)に比べて、大きな接合強度を有していた。
【0059】
(実施例D1〜D10)
1.支持基板の準備
実施例C1〜C10と同様にして、10枚のサファイア支持基板(支持基板)を準備した。
【0060】
2.支持基板上への酸化物膜の形成
スパッタ法により、10枚のサファイア支持基板(支持基板)上に厚さ300nmの10種類のSrTiO3膜(酸化物膜)をそれぞれ成長させた。ここで、10種類のSrTiO3膜とは、不純物が添加されなかったSrTiO3膜(実施例D1)、0.01質量%のNbが添加されたSrTiO3膜(実施例D2)、0.01質量%のLaが添加されたSrTiO3膜(実施例D3)、0.01質量%のNbおよび0.01質量%のLaが添加されたSrTiO3膜(実施例D4)、0.1質量%のNbが添加されたSrTiO3膜(実施例D5)、0.1質量%のLaが添加されたSrTiO3膜(実施例D6)、0.1質量%のNbおよび0.1質量%のLaが添加されたSrTiO3膜(実施例D7)、1質量%のNbが添加されたSrTiO3膜(実施例D8)、1質量%のLaが添加されたSrTiO3膜(実施例D9)、ならびに1質量%のNbおよび1質量%のLaが添加されたSrTiO3膜(実施例D10)であった。結果を表4にまとめた。
【0061】
3.酸化物膜上へのIII族窒化物層の形成
実施例A1〜A10と同様にして、10枚のそれぞれのサファイア支持基板(支持基板)上のSrTiO3膜(酸化物膜)上に厚さが300nmのGaN層(III族窒化物層)を形成して、GaN支持基板(支持基板)、SrTiO3膜(酸化物膜)およびGaN層(III族窒化物層)がこの順に形成された10枚のIII族窒化物複合基板を作製した。
【0062】
4.支持基板とIII族窒化物層との接合強度の測定
得られた10枚のIII族窒化物複合基板について、実施例A1〜A10と同様にして、サンプルが破断するときのサファイア支持基板(支持基板)−SrTiO3膜(酸化物膜)−GaN層(III族窒化物層)間の接合強度を測定した。いずれのサンプルについても、SrTiO3膜(酸化物膜)とGaN層(III族窒化物層)との接合界面で破断した。かかる接合強度は、1枚のIII族窒化物複合基板について5個のサンプルの接合強度の平均値を測定し、比較例R2(SrTiO3膜(酸化物膜)を介在させずに、サファイア支持基板(支持基板)とGaN層(III族窒化物層)とを直接貼り合わせた例)における5個のサンプルの接合強度の平均値(比較例R2における接合強度の平均値を1とする)に対する相対接合強度として表わした。結果を表4にまとめた。
【0063】
【表4】

【0064】
表4を参照して、SrTiO3膜(酸化物膜)を介在させてサファイア支持基板(支持基板)とGaN層(III族窒化物層)とが接合されたIII族窒化物複合基板(実施例D1〜D10)は、SrTiO3膜(酸化物膜)を介在させずにサファイア支持基板(支持基板)とGaN層(III族窒化物層)とが直接接合されたIII族窒化物複合基板(比較例R2)に比べて、大きな接合強度を有していた。また、不純物としてNbおよびLaの少なくとも1種の元素が添加されたSrTiO3膜(酸化物膜)を有するIII族窒化物複合基板(実施例D2〜D10)は、不純物が添加されなかったSrTiO3膜(酸化物膜)を有するIII族窒化物複合基板(実施例D1)に比べて、大きな接合強度を有していた。
【0065】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0066】
1 III族窒化物複合基板、10 支持基板、20 酸化物膜、30 III族窒化物基板、30a III族窒化物層、30b 残りのIII族窒化物基板、30i イオン注入領域、30n 主表面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と、前記支持基板上に形成されている酸化物膜と、前記酸化物膜上に形成されているIII族窒化物層と、を含むIII族窒化物複合基板。
【請求項2】
前記酸化物膜は、TiO2膜およびSrTiO3膜からなる群から選ばれるいずれかの膜である請求項1に記載のIII族窒化物複合基板。
【請求項3】
前記酸化物膜は、不純物が添加されている請求項1または請求項2に記載のIII族窒化物複合基板。
【請求項4】
前記不純物は、NbおよびLaからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含む請求項3に記載のIII族窒化物複合基板。
【請求項5】
前記支持基板は、III族窒化物支持基板である請求項1から請求項4のいずれかに記載のIII族窒化物複合基板。
【請求項6】
前記支持基板は、サファイア支持基板である請求項1から請求項4のいずれかに記載のIII族窒化物複合基板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−116741(P2012−116741A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210704(P2011−210704)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】