説明

LEDチップ実装用基板、LEDパッケージ、金型、及び、LEDチップ実装用基板の製造方法

【課題】LEDチップ実装領域をコイニングにより形成することで、樹脂フラッシュを効果的に防ぎ、抜き孔の絶縁性を確実に確保したLEDチップ実装用基板を提供する。
【解決手段】複数のLEDチップを実装可能に構成されたLEDチップ実装用基板であって、LEDチップの第1の電極に電気的接続するためのダイパッド、及び、LEDチップの第2の電極に電気的接続するためのリードを備えたリードフレームと、ダイパッドとリードとの間の抜き孔に充填された樹脂とを有し、リードフレームは、LEDチップを実装するために樹脂で覆われずに露出したLEDチップ実装領域を備え、LEDチップ実装領域は、樹脂を抜き孔に充填する際に、金型を用いてリードフレームをクランプし、リードフレームの表面から所定の深さだけ潰すことにより形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のLEDチップを実装可能なLEDチップ実装用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、所定の波長の光を発するLEDチップを備えたLEDパッケージがある。このようなLEDパッケージは、リードフレームを樹脂封止してLEDチップ実装用基板を形成し、また、このLEDチップ実装用基板の上に複数のLEDチップを実装して封止し、最終的にはこの基板を切断して個片化することにより製造される。
【0003】
特許文献1には、リードフレームと第1の金型との間にフィルム材を介在させた状態で、第1の金型と第2の金型とを用いてリードフレームをクランプし、樹脂を注入する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−244143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されているようにリードフレームと第1の金型との間にフィルム材を介在させてクランプすると、樹脂封止の際にフィルム材がリードフレームの実装領域中の抜き孔に進入し、その抜き孔に樹脂を完全に充填させることができず、リードフレームの実装領域において抜き孔で段差ができてしまう場合がある。これに対して、フィルムを用いずに樹脂封止したときには、第1の金型と第2の金型との間からリードフレームの実装領域に樹脂が浸入するおそれがある(樹脂フラッシュ)。このような場合、電極間(抜き孔)の絶縁が不完全となり、また、LEDチップの電気的接触が不完全となることがあり、高品質なLEDチップ実装用基板を製造することが困難となる。
【0006】
そこで本発明は、LEDチップ実装領域をコイニングにより形成することで樹脂フラッシュを効果的に防ぎ、抜き孔の絶縁性を確実に確保したLEDチップ実装用基板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面としてのLEDチップ実装用基板は、複数のLEDチップを実装可能に構成されたLEDチップ実装用基板であって、前記LEDチップの第1の電極に電気的接続するためのダイパッド、及び、該LEDチップの第2の電極に電気的接続するためのリードを備えたリードフレームと、前記ダイパッドと前記リードとの間の抜き孔に充填された樹脂と、を有し、前記リードフレームは、前記LEDチップを実装するために前記樹脂で覆われずに露出したLEDチップ実装領域を備え、前記LEDチップ実装領域は、前記樹脂を前記抜き孔に充填する際に、金型を用いて前記リードフレームをクランプし、該リードフレームの表面から所定の深さだけ潰すことにより形成されている。
【0008】
本発明の他の側面としてのLEDパッケージは、第1の電極と第2の電極との間に順バイアスを印加することにより光を放出するLEDチップと、前記LEDチップを実装し、該LEDチップの前記第1の電極に電気的接続されたダイパッド、及び、該LEDチップの前記第2の電極に電気的接続されたリードを備えたリードフレームと、前記ダイパッドと前記リードとの間の抜き孔に充填された樹脂と、前記LEDチップを封止する透光性樹脂とを有し、前記リードフレームは、前記LEDチップを実装するために前記樹脂で覆われずに露出したLEDチップ実装領域を備え、前記LEDチップ実装領域は、前記樹脂を前記抜き孔に充填する際に、金型を用いて前記リードフレームをクランプし、該リードフレームの表面から所定の深さだけ潰すことにより形成されている。
【0009】
本発明の他の側面としての金型は、LEDチップ実装用基板の金型であって、ダイパッド及びリードを備えたリードフレームを上面側から押さえる上金型と、前記リードフレームを下面側から押さえる下金型とを有し、前記上金型は、パーティング面から所定量だけ突出したキャビティピンを備え、前記金型は、前記リードフレームを樹脂封止する際に、前記上金型及び前記下金型で該リードフレームをクランプすることにより、該リードフレームの表面から所定の深さだけ潰してLEDチップ実装領域を形成するように構成されている
本発明の他の側面としてのLEDチップ実装用基板の製造方法は
複数のLEDチップを実装可能に構成されたLEDチップ実装用基板の製造方法であって、前記LEDチップの第1の電極に電気的接続するためのダイパッド、及び、該LEDチップの第2の電極に電気的接続するためのリードを備えたリードフレームを形成し、上金型と下金型を用いて前記リードフレームをクランプし、該リードフレームの表面から所定の深さだけ潰すことによりLEDチップ実装領域を形成し、前記リードフレームの前記ダイパッドと前記リードとの間の抜き孔に樹脂を充填する。
【0010】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施例において説明される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、LEDチップ実装領域をコイニングにより形成することで、樹脂フラッシュを効果的に防ぎ、抜き孔の絶縁性を確実に確保したLEDチップ実装用基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1におけるリードフレームの一部を示す平面図である。
【図2】実施例1における金型の概略断面図であり、(A)リードフレームのクランプ前、(B)リードフレームのクランプ後における状態である。
【図3】実施例1における金型を構成する上金型の平面図である。
【図4】実施例1における金型の拡大断面図であり、(A)図2(A)の一部を拡大した図、(B)図2(B)の一部を拡大した図である。
【図5】実施例1における金型を用いて樹脂を充填している様子であり、(A)リードフレームをクランプして樹脂を充填している状態、(B)樹脂を充填した後に上金型を離型した状態である。
【図6】実施例1において、樹脂封止後のリードフレーム(LEDチップ実装用基板)の平面図である。
【図7】実施例1における樹脂封止後のリードフレーム(LEDチップ実装用基板)を示す拡大断面図である。
【図8】実施例1におけるLEDチップ実装用基板を製造した後(樹脂封止後)の工程を示す図である。
【図9】実施例2において、(A)リードフレーム、及び、(B)LEDチップ実装用基板の平面図である。
【図10】実施例2における金型の概略断面図であり、(A)樹脂封止前、(B)樹脂封止後の状態である。
【図11】実施例2におけるLEDチップ実装用基板の概略構成図であり、(A)LEDチップ実装用基板の全体側面図、(B)全体断面図、(C)拡大断面図である。
【図12】実施例3における金型の概略断面図であり、(A)リードフレームのクランプ前、(B)リードフレームのクランプ後における状態である。
【図13】実施例3のおけるLEDチップ実装用基板の概略構成図であり、(A)平面図、(B)断面図である。
【図14】実施例4における金型の概略断面図であり、(A)樹脂封止前、(B)樹脂封止後の状態である。
【図15】実施例4における樹脂封止後のリードフレーム(LEDチップ実装用基板)を示す拡大図であり、(A)、(B)断面図、(C)側面図である。
【図16】実施例5におけるキャビティピンの先端の構成図であり、(A)その先端の側面図、(B)平面図である。
【図17】実施例5における樹脂封止の説明図であり、図17(A)はクランプ前の状態、図17(B)はクランプ後で樹脂封止前の状態、17(C)は樹脂封止後の状態である。
【図18】実施例5におけるLEDチップ実装用基板の拡大図であり、図18(A)は平面図を示し、図18(B)は断面図を示す。
【図19】実施例6におけるキャビティピンの先端の構成図であり、(A)その先端の側面図、(B)平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【実施例1】
【0014】
まず、図1〜図8を参照して、本発明の実施例1について説明する。本実施例のリードフレームは、複数のLEDチップを実装可能なLEDチップ実装用基板及び最終製品であるLEDパッケージを製造するために用いられるリードフレーム10である。図1は、リードフレーム10の一部を示す平面図である。リードフレーム10は、例えば、銅系フレーム材の表面に、ニッケル、パラジウム、銀、又は金などで構成されるメッキ層(例えばNi−Agメッキ)を形成して構成される。リードフレーム10の板厚は、例えば0.5mmであり、板厚0.2mmや0.3mm程度のリードフレームを用いてもよい。リードフレーム10の上には複数のLEDチップが実装され、樹脂封止後にリードフレーム10をダイシング(切断)することにより、複数のLEDパッケージが完成する。
【0015】
リードフレーム10は、後述のLEDチップの第1の電極(アノード電極)に電気的接続されるように構成されたダイパッド12(ベース側リードフレーム)を備える。またリードフレーム10は、LEDチップの第1の電極とは異なる第2の電極(カソード電極)に電気的接続されるように構成されたリード13(端子側リードフレーム)を備える。LEDチップは、ダイパッド12の上に実装される。ダイパッド12及びリード13の周囲(ダイパッド12とリード13との間)には抜き孔16が設けられており、ダイパッド12とリード13は互いに分離されている。ダイパッド12とリード13によりパッド部14が構成される。なお、本実施例はこれに限定されるものではなく、上述の構成とは逆に、LEDチップのカソード電極をダイパッド12に接続し、アノード電極をリード13に接続するように構成してもよい。図1に示されるように、本実施例のリードフレーム10は、複数のパッド部14(単位要素)から構成されており、図1に示されるリードフレーム10の範囲において、縦5個及び横3個の合計15個のLEDパッケージが製造される。なお、一般的なリードフレームでは、同図における横方向に10以上の列が構成されて、50個〜100個以上の個数(取り個数)のLEDパッケージがリードフレーム毎に製造される。
【0016】
次に、本実施例におけるリードフレーム10を樹脂封止する際に用いられる金型について説明する。図2は、本実施例における金型の概略断面図であり、図2(A)はリードフレームのクランプ前における状態を示し、図2(B)はリードフレームのクランプ後における状態を示している。また図5は、金型を用いて樹脂を充填している様子であり、図5(A)はリードフレームをクランプして樹脂を充填している状態を示し、図5(B)は樹脂を充填した後にリードフレームから上金型を離型した状態を示している。なお、これらの図において、一点鎖線を挟んだ左側には同様の構成が配置されることにより、一度の成形で2枚のリードフレーム10が樹脂封止される。
【0017】
図2(A)、(B)に示されるように、本実施例において、金型は上金型50と下金型60を備えて構成される。上金型50は、上型インサート51を備え、上型インサート51には複数のキャビティピン52(中空ピン)が挿入されている。上金型50は、更にセンターインサート53を備えており、上記の上型インサート51、キャビティピン52、及び、センターインサート53は、チェイス54により保持されている。このような構成により、上金型50は、リードフレーム10に充填する樹脂の形状を決定する。
【0018】
上型インサート51には、各々のキャビティピン52を取り囲むようにキャビティ57が形成されている。キャビティ57は、トランスファモールドによりリードフレーム10が樹脂封止される際に樹脂が充填され、後述のLEDチップからの光を反射させるリフレクタを形成する。また、上型インサート51には、隣接するキャビティ57同士を連通するスルーゲート58が形成されている。センターインサート53には、カル55a及びランナ55bが形成されると共に、上型インサート51に形成されたランナ55b、及び、ゲート56に連通されている。また、上型インサート51において、センターインサート53から最も離れた位置にあるキャビティ57に連通するように、エアベント59が形成されている。上金型50は、樹脂封止時において、パッド部14(ダイパッド12及びリード13)とキャビティ57とが重なるようにリードフレーム10を上面側から押さえ付ける。
【0019】
図3は、本実施例における金型を構成する上金型の平面図であり、図3中のII−II断面が図2に相当する。また図3中には、上金型との対応位置において、リードフレーム10が点線で描かれている。図3に示されるように、上金型50には、キャビティ57、スルーゲート58、カル55a、ランナ55b、ゲート56、及び、エアベント59が、それぞれの形状及び大きさを備えた凹形状に形成されている。上金型50において、外形が矩形状に形成されたキャビティ57の中央部で下金型60に向けて突出するように挿入されたキャビティピン52は、リードフレーム10のパッド部14をクランプするクランプ面(後述のLEDチップ実装領域18)となる。このクランプ面により、図5(B)に示されるように、リードフレーム10におけるLEDチップ実装領域はクランプされる。
【0020】
図4(A)、(B)は、それぞれ、図2(A)、(B)の一部を拡大した図である。図4(A)に示されるように、キャビティピン52は、その先端が上型インサート51のパーティング面を基準として距離dだけ突出するように設定されている。具体的には、板厚が0.5mmのリードフレーム10に対して、距離dとして例えば10〜30μm(板厚の2〜6%)の範囲の値が設定される。更に好ましくは、距離dは15〜25μm(板厚の3〜5%)の範囲の値に設定される。複数のキャビティピン52は、上型インサート51に挿入され、個別に距離dが設定される。このように、複数のキャビティピン52が上型インサート51に対して距離dだけ突出しているため、上型インサート51のパーティング面と下金型60とを用いてリードフレーム10をクランプしたときには、キャビティピン52と下型インサート61により挟まれるダイパッド12上の部位(LEDチップ実装領域)は、距離dだけ凹む(図4(B)参照。)。このように、LEDチップ実装領域は、コイニングにより所定の深さだけ潰されて形成される。
【0021】
キャビティピン52は、例えば鉄やステンレス系の材料から構成される。また、キャビティピン52の先端は鏡面加工が施されており、キャビティピン52の先端の面粗さ(面粗度)は、上金型50の他の部位と比較して異なる(細かい)。このため、リードフレーム10をクランプすると、面粗さの細かいキャビティピン52によりダイパッド12に凹み(LEDチップ実装領域)が形成されるため、その凹みの面粗さは、リードフレーム10の他の領域における面粗さよりも細かくなる(平坦度が向上する)。また、微細な凹凸を潰すことにより、後述するフラッシュ防止の効果を向上させることができる。
【0022】
下金型60は、下型インサート61を備え、リードフレーム10は平面状の下型インサート61の上に配置される。下金型60は、樹脂封止時において、リードフレーム10を下面側から押さえ付ける。
【0023】
このように本実施例の金型は、上金型50と下金型60とを主体として構成されている。樹脂封止時(樹脂モールド時)には、上金型50と下金型60とでリードフレーム10をクランプし(挟み)、複数のキャビティ57及び複数の抜き孔16の内部に樹脂71(リフレクタ用の樹脂)を充填する。
【0024】
70は、熱硬化性樹脂等をタブレット(円柱)状に成形した樹脂タブレットである。樹脂封止時には、図2(B)に示されるように、下金型60のポットインサート62に挿入されたポット63を予熱し、その中に樹脂タブレット70を投入して溶融させる。そして、トランスファ機構(不図示)によってポット63に沿って上下に摺動可能に構成されたプランジャ64を上動させて溶融した樹脂71を圧送することにより、図5(A)に示されるように、上金型50と下金型60との間が樹脂71で充填される。なお、樹脂タブレット70に代えて液状の熱硬化性樹脂をディスペンサ(不図示)で供給することもできる。また、粒状、顆粒状やゲル状の樹脂を用いることもできる。
【0025】
プランジャ64によって樹脂71が圧送されることにより、溶融した樹脂71は、カル55a、ランナ55b、及び、ゲート56を介して、抜き孔16及びキャビティ57へ供給される。具体的には、各々のキャビティ57及び抜き孔16は、スルーゲート58を介して連通しているため、キャビティ57に連通した抜き孔16にも樹脂71が供給される。このため、樹脂71は、ゲート56に近い抜き孔16及びキャビティ57から、ゲート56から離れた(遠い)抜き孔16及びキャビティ57に向けて順次供給されていく。このようにして、樹脂タブレット70が溶融して樹脂71となり、上金型50と下金型60で形成された空間に注入される。この結果、図5(A)に示されるように、上金型50と下金型60の間の空間(具体的には、キャビティ57及び抜き孔16)は、樹脂71により充填された状態となる。
【0026】
樹脂71の充填後、樹脂71を硬化させるために所定時間だけ待機し、図5(B)に示されるように上金型50及び下金型60の型閉状態を開放する。次いで、樹脂モールドされたLEDチップ実装用基板が搬出された後に金型のパーティング面等をクリーニングし、1回の樹脂モールド工程が終了する。
【0027】
上記工程を経ると、本実施例のLEDチップ実装用基板が形成される。図6は、樹脂が充填された後のリードフレーム(LEDチップ実装用基板)の平面図である。なお、図6における150として図示した破線は、最終製品である一つのLEDパッケージ(発光デバイス)を示す。
【0028】
樹脂71は、一次成形樹脂であり、例えば、フィラーとしてのシリカと白色着色剤としての酸化チタン等を含有したエポキシ又はシリコーン樹脂である。前述のように、樹脂71は、トランスファ成形により樹脂を流し込んで硬化させることにより、リードフレーム10上に一体的に上パッケージが形成される。なお、LEDチップを実装するため、樹脂71で覆われずに露出している。このように、本実施例におけるLEDチップ実装用基板は、樹脂71で一括して成形された、複数行及び複数列のマトリックス構造を有する。
【0029】
また、樹脂71は、後述のLEDチップから発せられた光を上方に反射させるリフレクタ72を形成する。また、樹脂71は、LEDパッケージの強度を向上させるという機能も有する。樹脂71は、LEDチップが搭載されることになるリードフレーム10上の所定の領域(LEDチップ実装領域18)には形成されない。この領域は、一次成形後において、リードフレーム10の表面が露出した領域である。
【0030】
図7は、本実施例における樹脂封止後のリードフレーム(LED実装用基板)を示す拡大断面図である。図7(A)、(B)は、それぞれ異なる方向から見た場合の断面を示している。
【0031】
図7(A)、(B)に示されるように、リードフレーム10の上面側において、キャビティ57内で硬化した樹脂71(71a)は、LEDチップ実装領域18の外周にリフレクタ72を構成する。LEDチップ実装領域18は、前述のように距離dだけ突出したキャビティピン52を用いてクランプすることで、元のリードフレーム10の表面から距離d(d>d)だけ凹んでいる。このように、LEDチップ実装領域18のコイニングによる凹み量(距離d)がキャビティピン52の突出量(距離d)よりも小さい。パーティング面から突出したキャビティピン52によってコイニングされた際のリードフレーム10の凹みは、塑性変形と弾性変形の両方を含んで形成される。このうち、弾性変形による凹みは、金型を離型する際に元に戻るため、最終的にLEDチップ実装領域18に形成される凹み量(距離d)は、キャビティピン52の突出量(距離d)よりも小さくなる。具体的には、距離dは、板厚が0.5mmのリードフレーム10を用いた場合、例えば、上述のようなキャビティピン52の突出量の設定を採用することにより、2〜10μm(板厚の0.4〜2.0%)になるように設定される。更に好ましくは、距離dが3〜5μm(板厚の0.6〜1.0%)になるように設定される。
【0032】
発明者が鋭意研究を重ねた結果、このような数値に設定することによって、リードフレーム10の素材自体やメッキの厚みに起因する微小な凹凸やキャビティピン52それぞれの長さのばらつきといった偏差を確実に吸収して、均一なコイニングを可能とすることができ、リードフレーム10の全てのパッド部14におけるフラッシュを防止できることが判明した。また、この樹脂封止時には、キャビティ57外周等から樹脂71が流れ出ない程度にリードフレーム10をクランプしなければならない。このため、パッド部14におけるフラッシュを防止しながらキャビティ57外周からの樹脂流出を防止するには、LEDチップ実装領域18に形成される凹み量を、少なくとも上述の範囲に設定する必要がある。なお、パッド部14におけるコイニング量とキャビティ57外周等におけるクランプ力とを共に増大させることで上述の課題は解消できるが、より大きなプレスの能力が必要となり、取り個数を多くすることができない。これに対して、LEDチップ実装領域18に形成される凹み量を上述した範囲とするように成形することで、フラッシュを防止して高品位に成形すると共に取り個数も増やすことができるため、高品質かつ安価なLEDチップ実装用基板を提供することができる。
【0033】
また、図7(B)に示されるように、樹脂71(71b)は、LEDチップの一対の電極間(アノード電極−カソード電極)を絶縁するために設けられた抜き孔16(換言すれば、ダイパッド12とリード13との間)にも充填される。この場合、リリースフィルムを用いずに成形したことにより、抜き孔16に樹脂を完全に充填することができる。これにより、各電極間を確実に絶縁すると共に、LEDチップ実装領域18を平滑に成形して光学特性を良好に維持することが可能となる。以上のように、LEDチップ実装領域18は、樹脂71を抜き孔16に充填する際に、金型を用いてリードフレーム10をクランプし、リードフレーム10の表面から所定の深さ(距離d)だけ潰しこんで凹ませることにより形成される。
【0034】
図8は、本実施例におけるLEDチップ実装用基板を製造した後(樹脂封止後)の工程を示す図である。図8(A)〜(C)は、それぞれ、LEDチップ実装用基板の一個片の断面を示す。LEDチップ実装用基板を製造した後、図8(A)に示されるように、LEDチップ80がLEDチップ実装領域18のダイパッド12の上に実装される。LEDチップ80は、アノード電極(正極)及びカソード電極(負極) の一対の電極を備え、これらの電極の間に順バイアスの所定電圧を印加することにより光を放出する素子である。前述のように、リードフレーム10は、ダイパッド12(アノード電極)とリード13(カソード電極)とに分離されており、各電極に電気的に接続される。LEDチップ80と各電極との間は、金ワイヤなどのボンディングワイヤ(不図示)で接続される。
【0035】
図8(A)に示されるように、樹脂71(71a)により形成されているリフレクタ72は、LEDチップ実装領域18(LEDチップ80)を取り囲むように、リードフレーム10の上に環状に成形されている。また、リフレクタ72は、リードフレーム10から離れるほど(上側に行くほど)その内径が大きくなるすり鉢形状となっている。リフレクタ72は、このような形状を有することにより、LEDチップ80から発せられた光を上方に効率よく反射させることが可能である。
【0036】
続いて、図8(B)に示されるように、LEDチップ80を封止するように二次成形樹脂としての透明樹脂91を充填する。透明樹脂91としては、透光性を有するシリコーン樹脂(透光性樹脂)が好適に用いられる。シリコーン樹脂は、LEDチップ80の発光波長が青色光等の短波長である場合や、LEDチップ80が高輝度LEDであり多量の熱を発生する場合に、その光や熱による変色や劣化に対する耐久性に優れている。ただし、本実施例の透明樹脂91はシリコーン樹脂に限定されるものではなく、例えば、変性シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、オキセタン樹脂等を用いてもよい。
【0037】
透明樹脂91は、例えば、金型(不図示)を用いてLEDチップ実装用基板を両面からクランプし、トランスファ成形により樹脂を流し込んで硬化させることにより、LEDチップ実装領域18の上に一体的に形成される。ただし、本実施例はこれに限定されるものではなく、ポッティングや圧縮成形などの他の方法を用いて透明樹脂91を形成してもよい。
【0038】
続いて、図8(C)に示されるように、ダイシング工程によりLEDチップ実装用基板を切断して、最終製品としてのLEDパッケージに個片化する。リードフレーム10のうち樹脂71で覆われずに露出している部位は、アノード、カソードの各外部端子を構成する。なお、LEDチップ実装用基板を切断してから透明樹脂91を形成することもできる。
【実施例2】
【0039】
次に、図9〜図11を参照して、本発明の実施例2におけるリードフレーム及びLEDチップ実装用基板について説明する。図9は、本実施例におけるリードフレーム(図9(A))及びLEDチップ実装用基板(図9(B))の平面図である。
【0040】
図9(A)に示されるように、本実施例のリードフレーム10aには複数の抜き孔16aが設けられている。また、その複数の抜き孔16aにより、ダイパッド12aとリード13aとからなるパッド部14aが形成されている。図9(B)に示されるように、一次成形樹脂としての樹脂71がトランスファモールドにより、パッド部14aを形成する抜き孔16aを一括して封止する矩形状のパッケージが形成されている。樹脂71は、LEDチップ実装領域18aの周囲を取り囲むようにリフレクタ72aを形成する。このように本実施例では、リードフレーム10aにおける全てのLEDチップ実装領域18aのリフレクタ72aを一体的に樹脂71で形成したマップタイプのLEDチップ実装用基板が製造される点で、マトリックスタイプのLEDチップ実装用基板が製造される実施例1とは異なる。
【0041】
続いて、図10を参照して、本実施例における金型について説明する。図10は、マップタイプの金型の概略断面図であり、図9(A)中のX−X面に相当する断面である。また図10は、リードフレーム10aを上金型50aと下金型60とでクランプした状態を示し、図10(A)は樹脂封止前、図10(B)は樹脂封止後の状態をそれぞれ示している。
【0042】
図10(A)に示されるように、上金型50aは、矩形状のキャビティ57a内において、パッド部14aと同じ間隔で設けられて突出する複数の凸部52aが立設された上型インサート51aを備えている。上型インサート51aは、他の上型インサート51b、51cに保持されている。凸部52aは、実施例1のキャビティピン52と同様に、その先端部が上金型50aのパーティング面(具体的には、上型インサート51bの下面)から所定量だけ突出している。このため、凸部52aの先端によりリードフレーム10aに対してコイニングを行いながら、樹脂71がキャビティ57aの内部に充填される。上型インサート51bは、上型インサート51a及び上型インサート51cを挿入可能な矩形状の挿入孔を備えて構成され、上型インサート51aと共にキャビティ57aを構成する。この上型インサート51bは、樹脂封止する際には下金型60と共にリードフレーム10aをクランプする。上型インサート51cは、単純な長方形のブロック状に形成されて、上型インサート51b内の挿入孔内において上型インサート51aの背面(上面)に配置される。この上型インサート51cは、その厚みを変更することで凸部52aの突出量を調整するために設けられている。これにより、単純に凸部52aの突出量を増減させてコイニング量を調整するだけでなく、型内の温度や圧力などの各種のパラメータに応じて加圧均一に行うようにすることもできる。例えば、凸部52aの突出量を傾斜させて、所定の辺側(例えばポット側)を大きくコイニングすることもできる。また、加圧用バネ(図示せず)やサポートピラー(図示せず)の配置荷重分布などに応じて厚みを部分的に凹凸させることで、均一な加圧をすることもできる。
【0043】
なお、上型インサート51cは単純な形状であるため、上型インサート51aやその他の部材を加工するより容易であり好ましい。このように、上型インサート51bのパーティング面を基準として凸部52aを上述した距離dだけ突出するように設定されて、上述の実施例と同様の効果を奏することができる。下金型60は実施例1と同様に、リードフレーム10aを載置可能となるようにリードフレーム10aの載置領域が平面となっているものが用いられる。
【0044】
次に、図11を参照して、本実施例におけるLEDチップ実装用基板について説明する。図11は、LEDチップ実装用基板の概略構成図であり、図11(A)〜(C)はそれぞれ、LEDチップ実装用基板の全体側面図、全体断面図、及び、拡大断面図である。
【0045】
図11(A)に示されるように、本実施例のLEDチップ実装用基板はマップタイプのLEDチップ実装用基板であるため、リードフレーム10aの上面が一体的に樹脂71で覆われている。また、図11(B)、(C)に示されるように、LEDチップ実装領域18aの周囲は樹脂71(71a)で形成されたリフレクタ72aで囲まれている。また、LEDチップ実装領域18aにおける抜き孔16aの内部は、樹脂71(71b)で充填されている。図11(C)に示されるように、リードフレーム10aの元の表面位置と、コイニングにより形成されたLEDチップ実装領域18aの表面位置との間には、実施例1と同様に、距離dの差異が生じている。これにより、本実施例のようなマップタイプの封止形態においても、パッド部14aにおけるフラッシュを防止することができる。次いで、上述の実施例と同様に、LEDチップ実装用基板の製造後の工程を行う。この場合、ダイシング工程において図9(B)の破線に示すようなラインに沿って切断することで、LEDパッケージが完成する。このようなマップタイプのLEDパッケージの製造方法によれば、取り個数を多くすると共に廃棄する樹脂も少なくすることができるため、LEDパッケージを安価に製造することができる。
【0046】
なお、複数のパッド部14aの複数(例えば2つ)のキャビティ57a内に分けてリードフレーム10a上に複数の封止領域を形成する構成を採用することもできる。また、マップタイプのLEDパッケージの製造方法においても、実施例1と同様に、キャビティピン52を有する上金型50を用いることができる。この場合、キャビティを形成する矩形状の凹部に複数のパッド部14aと同様な配置の挿入孔を設け、これにキャビティピン52を挿入した構成とすることができる。
【実施例3】
【0047】
次に、図12及び図13を参照して、本発明の実施例3におけるリードフレーム及びLEDチップ実装用基板について説明する。図12は、本実施例における金型の概略断面図であり、図12(A)はリードフレームのクランプ前の状態を示し、図12(B)はリードフレームのクランプ後の状態を示す。
【0048】
本実施例では、実施例1と同様のリードフレーム10が用いられる。また本実施例では、フラットタイプの金型が用いられる。図12(A)に示されるように、上金型50bは、実施例1と同様に複数のキャビティピン52を備え、これらのキャビティピン52は上型インサート51bに挿入されて保持されている。上型インサート51bには、樹脂で充填されることになるキャビティ(凹部)が設けられていない。このように、本実施例の上型インサート51bの先端は平面状であり、キャビティ57及びスルーゲート58が形成されている実施例1の上型インサート51とは異なる。
【0049】
キャビティピン52は、実施例1と同様に、その先端部は上金型50bのパーティング面から所定量だけ突出している。このため、キャビティピン52の先端によりリードフレーム10に対してコイニングを行いながら、樹脂71が抜き孔16の内部に充填される(図12(B))。なお、下金型60は実施例1と同じものが用いられる。
【0050】
図13は、本実施例のおけるLEDチップ実装用基板の構成図であり、図13(A)は平面図を示し、図13(B)は断面図を示す。図13(A)、(B)に示されるように、キャビティピン52によりコイニングされて潰し込まれた部位はLEDチップ実装領域18aとなる。リードフレーム10の抜き孔16には樹脂71(71b)が充填されている。ただし上記実施例とは異なり、樹脂で形成されたリフレクタは存在せず、LEDチップ実装用基板は平面状となっているため、薄型のパッケージを形成することができる。
【0051】
また、キャビティピン52の外周の位置に段差が形成されており、LEDチップ80を封止する工程において、LEDチップ80が実装される部分の周囲に透明樹脂91を留めることができるため好ましい。例えば、上下金型でLEDチップ実装用基板をクランプしてLEDチップ80とワイヤを封止するような場合には、この段差によって樹脂漏れが確実に防止される。また、ポッティングによってLEDチップ80とワイヤを封止するような場合には、この段差によって広がりがせき止められるため低粘度の樹脂を用いても、ポッティングされた樹脂が不必要に広がることを防止することができる。
【実施例4】
【0052】
次に、図14及び図15を参照して、本発明の実施例4におけるリードフレーム及びLEDチップ実装用基板について説明する。図14は、本実施例における金型の概略断面図であり、図14は、リードフレーム10を上金型50と下金型500とでクランプした状態を示し、図14(A)は樹脂封止前、図14(B)は樹脂封止後の状態をそれぞれ示している。
【0053】
図14(A)に示されるように、上金型50は、実施例1と同様に、複数のキャビティ57及びスルーゲート58を備えた上型インサート51を備え、複数のキャビティピン52が上型インサート51に挿入されて保持されている。キャビティピン52の先端は、上金型50のパーティング面から所定量だけ突出している。このため、キャビティピン52の先端によりリードフレーム10の上面に対してコイニングを行いながら、実施例1と同様に、樹脂71が複数のキャビティ57、スルーゲート58、及び、抜き孔16の内部に充填される(図14(B))。
【0054】
また本実施例では、下金型として、上金型50と基本的に同一な構造を有する下金型500が用いられる。図14(A)、(B)に示されるように、下金型500は、複数のキャビティ570及びスルーゲート580を備えた下型インサート510を備え、複数のキャビティピン520が下型インサート510に挿入されて保持されている。キャビティピン520の先端は、下金型500のパーティング面から所定量だけ突出している。このため、キャビティピン520の先端によりリードフレーム10の下面に対してコイニングを行いながら、樹脂71が複数のキャビティ570、スルーゲート580、及び、抜き孔16の内部に充填される。これにより、リードフレーム10の上下に上パッケージと下パッケージとが形成される。
【0055】
図15は、本実施例における樹脂封止後のリードフレーム(LEDチップ実装用基板)を示す拡大図であり、図15(A)、(B)は断面図を示し、図15(C)は側面図を示す。図15(A)、(B)は、それぞれ異なる方向から見た場合の断面図である。また、図15(C)は、図15(B)と同一方向から見た場合の側面図である。
【0056】
図15(A)、(B)に示されるように、リードフレーム10の上面側において、キャビティ57内で硬化した樹脂71aは、LEDチップ実装領域18の外周にリフレクタ72を形成する。LEDチップ実装領域18は、上金型50のパーティング面から所定の距離だけ突出したキャビティピン52を用いてクランプすることでLEDチップ実装領域18がコイニングされ、元のリードフレーム10の表面(上面)から距離dだけ凹んでいる。同様に、リードフレーム10の下面側において、キャビティ570内で硬化した樹脂710aは、LEDチップ実装領域180の外周にパッケージ凹部720を形成する。LEDチップ実装領域180は、下金型500のパーティング面から所定の距離だけ突出したキャビティピン520を用いてクランプすることで、LEDチップ実装領域180がコイニングされ、元のリードフレーム10の表面(下面)から距離dだけ凹んでいる。
【0057】
図15(A)〜(C)に示されるように、本実施例によれば、リードフレームの上面及び下面の両面にパッケージが形成されたLEDチップ実装用基板を製造することができる。ダイシング後に、リードフレーム10のアウターリードを下パッケージの表面の高さまで折り曲げて外部基板に実装可能とすることできる。なお、本実施例では両面にパッケージが形成されているがこれに限定されるものではない。例えば、リードフレームの下面に対してはコイニングのみを行い、パッケージを形成しないようにしてもよい。
【0058】
パッケージ凹部720には、接続端子としてのバンプや放熱部材を設けたり、ツェナーダイオードのような保護素子を実装したりすることもできる。なお、パッケージ凹部720にもLEDチップ80を設けて両面が発光するパッケージとすることもできる。この場合、サイドビューパッケージとして用いることができる。
【実施例5】
【0059】
次に、図16〜図18を参照して、本発明の実施例5について説明する。図16は、本実施例におけるキャビティピン52bの先端の構成図であり、図16(A)はその側面を示し、図16(B)はその端面(平面)を示す。なお、図16(B)中の点線は、リードフレームの上に実装されたLEDチップ(半導体チップ)を示している。図16(A)、(B)に示されるように、本実施例におけるキャビティピン52bは、先端面の外周に形成された突出部52baと、抜き孔16(ダイパッドとリードとの間)の上に位置する部位に形成された突出部52bbとを備える。
【0060】
図17は、本実施例のキャビティピン52bを用いた場合における樹脂封止の説明図である。図17(A)はクランプ前の状態、図17(B)はクランプ後で樹脂封止前の状態、図17(C)は樹脂封止後の状態を示す。図17(A)〜(C)に示されるように、キャビティピン52bの突出部52ba、52bbは、上金型のパーティング面51dから距離dだけ突出している。このため、クランプしたときには、リードフレーム10のLEDチップ実装領域の周囲は突出部52baで潰され、また、リードフレーム10における抜き孔16の端部は突出部52bbで潰される。一方、図17(B)、(C)に示されるように、キャビティピン52bの先端の突出部52ba、52bbで形成されるダイパッド側の凹部52bcとリード側の凹部52bdは、キャビティピン52bの突出部52ba、52bbが上金型のパーティング面51dからの突出距離(距離d)よりも大きい距離d(深さ)で形成されている。すなわち、キャビティピン52bの凹部52bc、52bdの深さ(距離d)は、距離dよりも大きい。このため、クランプ時においてリードフレーム10とは接触しない。このように樹脂71がパッド部に侵入するおそれのあるキャビティピン52bの外周、及び、ダイパッドとリードとの間が突出部52ba、52bbで強くクランプされる。この状態で樹脂封止を行うことで、フラッシュが確実に防止される。
【0061】
図18は、本実施例におけるLEDチップ実装用基板の拡大図であり、図18(A)は平面図を示し、図18(B)は断面図を示す。図18(A)、(B)に示されるように、本実施例のLEDチップ実装用基板には、キャビティピン52bの突出部52baにより形成された凹部19a、及び、キャビティピン52bの突出部52bbにより形成された凹部19bが形成されている。LEDチップ実装領域18aにおいて、凹部19a、19b以外の表面は潰されていない。
【0062】
このように、本実施例によれば、突出部52ba、52bbで潰される面が小さいため、小さな力でリードフレーム10を潰すことができる。また、LEDチップ実装領域18aの大部分は潰されない(面形状は変化しない)ため、リードフレーム10の表面におけるメッキの面性状を変化させることなく利用することが可能となる。このような構成でも、樹脂フラッシュを効果的に防ぐことができ、また、抜き孔16における絶縁性を確実に確保することが可能となる。
【0063】
なお、実施例2の上型インサート51aに立設された凸部52aの先端面の形状を、キャビティピン52bの形状と同様に構成することもできる。
【実施例6】
【0064】
次に、図19を参照して、本発明の実施例6におけるキャビティピンついて説明する。図19は、本実施例におけるキャビティピン52cの先端の構成図であり、図19(A)はその側面を示し、図19(B)はその端面(平面)を示す。図19(A)、(B)に示されるように、本実施例におけるキャビティピン52cは、先端面の外周及び抜き孔(ダイパッドとリードとの間)の上に位置する部位に一体的に形成された突出部52caを備える。先の実施例におけるダイパッド側の凹部52bcと同じ位置に凹部が形成されている。 本実施例でも、実施例5と同様に、突出部52caで潰される面が小さいため、小さな力でリードフレームを潰すことができる。また、LEDチップ実装領域の大部分は潰されない(面形状は変化しない)ため、リードフレームの表面におけるメッキの面性状を変化させることなく利用することが可能となる。このような構成でも、樹脂フラッシュを効果的に防ぐことができ、また、抜き孔における絶縁性を確実に確保することが可能となる。
【0065】
なお本実施例では、図19(A)、(B)に示されるように、突出部52caを先端の右側に形成したが、これに限定されるものではない。先端面の外周及び抜き孔の端部を押さえ付けることができるものであれば、これとは反対に、突出部を先端の左側に形成してもよい。リード側の凹部52bdと同じ位置のみに凹部を形成することもできる。
【0066】
上記各実施例によれば、LEDチップ実装領域をコイニングにより形成することで樹脂フラッシュを効果的に防ぎ、抜き孔の絶縁性を確実に確保したLEDチップ実装用基板及びその製造方法を提供することができる。また、このようなLEDチップ実装用基板から製造される、最終製品としてのLEDパッケージを提供することができる。更に、LEDチップ実装用基板を製造するための金型を提供することができる。
【0067】
以上、本発明の実施例について具体的に説明した。ただし、本発明は上記実施例として記載された事項に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲内で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0068】
10 リードフレーム
12 ダイパッド
13 リード
16 抜き孔
18 LEDチップ実装領域
51 上型インサート
52 キャビティピン
61 下型インサート
71 樹脂
80 LEDチップ
91 透明樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のLEDチップを実装可能に構成されたLEDチップ実装用基板であって、
前記LEDチップの第1の電極に電気的接続するためのダイパッド、及び、該LEDチップの第2の電極に電気的接続するためのリードを備えたリードフレームと、
前記ダイパッドと前記リードとの間の抜き孔に充填された樹脂と、を有し、
前記リードフレームは、前記LEDチップを実装するために前記樹脂で覆われずに露出したLEDチップ実装領域を備え、
前記LEDチップ実装領域は、前記樹脂を前記抜き孔に充填する際に、金型を用いて前記リードフレームをクランプし、該リードフレームの表面から所定の深さだけ潰すことにより形成されている、ことを特徴とするLEDチップ実装用基板。
【請求項2】
前記LEDチップ実装領域の面粗さは、前記リードフレームの他の領域における面粗さよりも細かいことを特徴とする請求項1に記載のLEDチップ実装用基板。
【請求項3】
前記所定の深さは、前記リードフレームの板厚の0.4〜2.0%の範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載のLEDチップ実装用基板。
【請求項4】
前記所定の深さは、前記リードフレームの板厚の0.6〜1.0%の範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載のLEDチップ実装用基板。
【請求項5】
前記LEDチップ実装用基板はマトリックスタイプ又はマップタイプであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のLEDチップ実装用基板。
【請求項6】
第1の電極と第2の電極との間に順バイアスを印加することにより光を放出するLEDチップと、
前記LEDチップを実装するLEDチップ実装領域を備え、かつ、該LEDチップの前記第1の電極に電気的接続されたダイパッド、及び、該LEDチップの前記第2の電極に電気的接続されたリードを備えたリードフレームと、
前記ダイパッドと前記リードとの間の抜き孔に充填された樹脂と、
前記LEDチップを封止する透光性樹脂と、を有し、
前記LEDチップ実装領域は、前記樹脂を前記抜き孔に充填する際に、金型を用いて前記リードフレームをクランプし、該リードフレームの表面から所定の深さだけ潰すことにより形成されている、ことを特徴とするLEDパッケージ。
【請求項7】
LEDチップ実装用基板の金型であって、
ダイパッド及びリードを備えたリードフレームを上面側から押さえる上金型と、
前記リードフレームを下面側から押さえる下金型と、を有し、
前記上金型は、パーティング面から所定量だけ突出したキャビティピンを備え、
前記金型は、前記リードフレームを樹脂封止する際に、前記上金型及び前記下金型で該リードフレームをクランプすることにより、該リードフレームの表面から所定の深さだけ潰してLEDチップ実装領域を形成するように構成されている、ことを特徴とする金型。
【請求項8】
複数のLEDチップを実装可能に構成されたLEDチップ実装用基板の製造方法であって、
前記LEDチップの第1の電極に電気的接続するためのダイパッド、及び、該LEDチップの第2の電極に電気的接続するためのリードを備えたリードフレームを形成し、
上金型と下金型を用いて前記リードフレームをクランプし、該リードフレームの表面から所定の深さだけ潰すことによりLEDチップ実装領域を形成し、
前記リードフレームの前記ダイパッドと前記リードとの間の抜き孔に樹脂を充填する、ことを特徴とするLEDチップ実装用基板の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2012−114303(P2012−114303A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263050(P2010−263050)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000144821)アピックヤマダ株式会社 (194)
【Fターム(参考)】