説明

MGLUR5モジュレーターII

本発明は、式(I)の新規化合物、その製造方法、その治療における使用及び新規化合物を含む医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規化合物、治療におけるその使用及び前記の新規化合物を含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
グルタミン酸は、哺乳動物の中枢神経系(CNS)における主要な興奮性神経伝達物質である。グルタミン酸は、細胞表面の受容体に結合し、これによりそれを活性化することで中枢神経系のニューロンにおいてその効果を生じる。これらの受容体は、受容体タンパク質の構造的特徴、受容体が細胞にシグナルを伝達する手段、及び薬理学的プロファイルに基づいて、2つの主な種類、イオンチャネル型及び代謝調節型のグルタミン酸受容体に分けられている。
【0003】
代謝調節型グルタミン酸受容体(mGluR)は、グルタミン酸の結合後に種々の細胞内セカンドメッセンジャー系を活性化するGタンパク質共役受容体である。哺乳動物の無損傷のニューロンにおいてmGluRを活性化すると、以下の1つ又はそれ以上の応答が誘発される:ホスホリパーゼCの活性化;ホスホイノシチド(PI)の加水分解における増大;細胞内カルシウム放出;ホスホリパーゼDの活性化;アデニルシクラーゼの活性化又は阻害;環状アデノシン一リン酸(cAMP)の形成における増加又は減少;グアニリルシクラーゼの活性化;環状グアノシン一リン酸(cGMP)の形成における増加;ホスホリパーゼA2の活性化;アラキドン酸放出における増加;並びに電位及びリガンド依存性イオンチャネルの活性における増加又は減少。Schoepp et al., Trends Pharmacol. Sci. 14: 13 (1993), Schoepp, Neurochem. Int. 24: 439 (1994), Pin et al., Neuropharmacology 34:1 (1995), Bordi and Ugolini, Prog. Neurobiol. 59:55 (1999)。
【0004】
分子クローニングでは、mGluR1〜mGluR8と称する8つの明確なmGluRサブタイプが特定されている。Nakanishi, Neuron 13:1031 (1994), Pin et al., Neuropharmacology 34:1 (1995), Knopfel et al., J. Med. Chem. 38:1417 (1995).さらなる受容体の多様性は、ある種のmGluRサブタイプの選択的スプライスド・フォーム(alternatively spliced forms)の発現を経て生じる。Pin et al., PNAS 89:10331 (1992), Minakami et al., BBRC 199:1136 (1994), Joly et al., J. Neurosci. 15:3970 (1995)。
【0005】
代謝調節型グルタミン酸受容体サブタイプは、アミノ酸配列相同性、受容体によって利用されるセカンドメッセンジャー系、及びその薬理学的特性に基づいて、3つのグループ、グループI、グループII及びグループIIIのmGluRにさらに分けることができる。グループIのmGluRには、mGluR1、mGluR5及びそれらの選択的スプライスド・バリアント(alternatively spliced variants)が含まれる。これらの受容体にアゴニストが結合すると、ホスホリパーゼCの活性化及びその後の細胞内カルシウムの動員を生じる。
【0006】
神経学的、精神医学的及び疼痛障害
グループI mGluRの生理学的役割を解明する試みは、この受容体の活性化がニューロンの興奮を誘発することを示唆している。種々の研究は、海馬、大脳皮質、小脳及び視床だけでなく他のCNS領域においても、グループI mGluRアゴニストがニューロンに適用されるとシナプス後興奮を生じうることを示している。この励起がシナプス後mGluRの直接活性化のためであることは、証拠により示されているが、また、シナプス前mGluRの活性化が生じて、神経伝達物質放出が高まることが示唆されている。Baskys, Trends Pharmacol. Sci. 15: 92 (1992), Schoepp, Neurochem. Int. 24: 439 (1994), Pin et al., Neuropharmacology 34:1(1995), Watkins et al., Trends Pharmacol. Sci. 15: 33 (1994)。
【0007】
代謝調節型グルタミン酸受容体は、哺乳動物のCNSにおける多くの正常なプロセスに関与している。mGluRの活性化は、海馬長期増強の誘発及び小脳性の長期的なうつ病に必要であることが示されている。Bashir et al., Nature 363:347 (1993), Bortolotto et al., Nature 368:740 (1994), Aiba et al., Cell 79:365 (1994), Aiba et al., Cell 79:377 (1994).また、侵害受容及び痛覚脱失におけるmGluR活性化の役割も示されているMeller et al., Neuroreport 4: 879 (1993), Bordi and Ugolini, Brain Res. 871: 223 (1999)。さらに、mGluR活性化は、シナプス伝達、ニューロンの発達、アポトーシスのニューロン死、シナプス可塑性、空間学習、嗅覚の記憶、心臓活動の中枢制御、覚醒、運動調節及び前庭眼球反射の制御を含む種々の他の正常なプロセスにおいて調節的な役割を果たすことが示唆されている。Nakanishi, Neuron 13: 1031 (1994), Pin et al., Neuropharmacology 34:1, Knopfel et al., J. Med. Chem. 38:1417 (1995)。
【0008】
さらに、グループI代謝調節型グルタミン酸受容体及び特にmGluR5は、種々の病態生理学的プロセス及びCNSに影響を及ぼす障害において役割を果たすことが示唆されている。これらには、脳卒中、頭部外傷、酸素欠乏性及び虚血性損傷、低血糖、てんかん、神経変性障害、例えばアルツハイマー病、並びに疼痛が含まれる。Schoepp et al., Trends Pharmacol. Sci. 14: 13 (1993), Cunningham et al., Life Sci. 54: 135 (1994), Hollman et al., Ann. Rev. Neurosci. 17:31 (1994), Pin et al., Neuropharmacology 34:1 (1995), Knopfel et al., J. Med. Chem. 38:1417 (1995), Spooren et al., Trends Pharmacol. Sci. 22: 331 (2001), Gasparini et al. Curr. Opin. Pharmacol. 2:43 (2002), Neugebauer Pain 98:1 (2002).これらの状態の病理の多くは、過剰のグルタミン酸に誘発されたCNSニューロンの興奮のためであると考えられる。グループI mGluRは、シナプス後機構及び高められたシナプス前グルタミン酸放出を経て、グルタミン酸が介在するニューロンの興奮を高めると考えられるため、それらの活性化がおそらく病理の原因である。従って、グループI mGluR受容体の選択的アンタゴニストは、具体的には神経保護剤、鎮痛剤又は抗痙攣剤として治療上有益でありうる。
【0009】
一般に代謝調節型グルタミン酸受容体、そして特にグループIの神経生理学役割の解明における最近の進歩により、これらの受容体は、急性及び慢性の神経学的及び精神障害並びに慢性及び急性の疼痛障害の治療における将来有望な薬物ターゲットとして確立されている。
【0010】
胃腸障害
下部食道括約筋(LES)は、断続的に弛緩する傾向がある。その結果、このようなときに一時的に機械的関門(mechanical barrier)が失われて胃からの流動物が食道に移ることがあり、イベントを以下、「逆流」と称する。
【0011】
胃食道逆流性疾患(GERD)は、最も一般的な上部消化管疾患である。現在の薬物療法は、胃酸分泌を減少させる又は食道中の酸を中和することを目的としている。逆流の裏にある主な機構は、低緊張の下部食道括約筋によると考えられている。しかしながら、例えばHolloway & Dent (1990) Gastroenterol. Clin. N. Amer. 19, pp. 517-535は、ほとんどの逆流エピソードが、一過性下部食道括約筋弛緩(TLESR)、すなわち、嚥下によって誘発されるのではなく弛緩中に生じることを示している。また、GERDの患者では、胃酸分泌は、通常、正常であることがわかっている。
【0012】
本発明の新規化合物は、一過性下部食道括約筋弛緩(TLESR)の阻害、及び従って胃食道逆流性障害(GERD)の治療に有用であると考えられる。
【0013】
ある種の化合物が、ヒトの心再分極において望ましくない効果を生じうることはよく知られており、これは心電図(ECG)においてQT間隔の延長として観察される。極端な状況では、この薬剤に誘発されたQT間隔の延長は、トルサード・ド・ポワント(TdP; Vandenberg et al. hERG K+ channels: friend and foe. Trends Pharmacol Sci 2001; 22: 240-246)と称する一種の心不整脈に至り、最終的に心室細動及び突然死に至ることがある。この症候群における第一次イベント(primary event)は、これらの化合物による遅延整流カリウム電流(IKr)の速い成分の阻害である。化合物は、ヒト・エーテル・ア・ゴー・ゴー・関連遺伝子(human ether-a-go-go-related gene)(hERG)をコードする、この電流サブユニットを担持するチャネルタンパク質の開口形成アルファサブユニット(aperture-forming alpha sub-units)に結合する。
【0014】
IKrは心臓の活動電位の再分極において重要な役割を果たすため、その阻害は、再分極を遅らせ、そしてこれはQT間隔の延長として現れる。QT間隔の延長は、それ自体で安全性に対する懸念とはならないが、心血管副作用の危険性を有し、そして少ないパーセンテージの人々においてTdP及び変性から心室細動に至ることがある。
【0015】
一般に、本発明の化合物は、hERGをコードするカリウムチャネルに対して低い活性を有する。これに関して、hERGに対する低いインビトロ活性は、低いインビボ活性を示す。
【0016】
また、薬物の有効性を高めるには薬物が良好な代謝安定性を有することが望ましい。ヒトミクロソームの代謝に対するインビトロ安定性は、代謝に対するインビボ安定性を示す。
【0017】
mGluRサブタイプ、特にグループI受容体サブタイプ、最も具体的にはmGluR5について選択性を示す、新しい強力なmGluRアゴニスト及びアンタゴニストは、それらの生理学的及び病態生理学的に重要であるため、必要とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、代謝調節型グルタミン酸受容体(mGluR)、特にmGluR5受容体で活性を示す化合物を提供することである。特に、本発明の化合物は、主に末梢に作用し、すなわち、血液脳関門を通過する限られた能力を有する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、式Iの化合物:
【化1】

(式中、
1は、メチル、ハロゲン又はシアノであり;
2は、水素又はフルオロであり;
3は、水素、フルオロ又はC1−C3アルキルであり;
4は、C1−C3アルキル又はシクロプロピルであり;
Xは、
【化2】

であり;
そして、Zは、
【化3】

であり;
ここにおいて、R5は、水素、C1−C3アルキル、C1−C3ハロアルキル、C1−C3アルコキシ;C1−C3ハロアルコキシ又はハロゲンであり;
6は、水素、C1−C3アルキル、C1−C3ハロアルキル、C1−C3アルコキシ;C1−C3ハロアルコキシ又はハロゲンであり;
7は、C1−C3アルキル、C1−C3ハロアルキル、C1−C3アルコキシ;C1−C3ハロアルコキシ又はハロゲンであり;
8は、水素、C1−C3アルキル、C1−C3ハロアルキル、C1−C3アルコキシ;C1−C3ハロアルコキシ又はハロゲンであり;
9は、水素、フルオロ又はC1−C3アルキルである)
並びにその医薬上許容しうる塩、水和物、アイソフォーム、互変異性体及び/又は鏡像異性体に関する。
【0020】
一実施態様において、R1はハロゲン又はシアノである。
さらなる実施態様において、R1はクロロである。さらなる実施態様において、R1はシアノである。
さらなる実施態様において、R2は水素である。
さらなる実施態様において、R3は水素又はフルオロである。
さらなる実施態様において、R4はC1−C2アルキルである。
さらなる実施態様において、R4はメチルである。
さらなる実施態様において、R5は水素、C1−C2アルキル又はC1−C2アルコキシである。
さらなる実施態様において、R6は水素、C1−C2アルキル又はC1−C2アルコキシである。
さらなる実施態様において、R7はC1−C2アルキル又はC1−C2アルコキシである。
さらなる実施態様において、R8は水素、C1−C2アルキル又はC1−C2アルコキシである。
さらなる実施態様において、R9は水素又はフルオロである。
【0021】
別の実施態様は、活性成分として治療上有効量の式Iの化合物を1つ又はそれ以上の医薬上許容しうる賦形剤、添加剤及び/又は不活性担体と共に含む医薬組成物である。
【0022】
以下、更に詳細に記載された別の実施態様は、治療において、mGluR5が介在する障害の治療において、mGluR5が介在する障害を治療する薬剤の製造において使用するための式Iの化合物に関する。
【0023】
さらに他の実施態様は、治療上有効量の式Iの化合物を哺乳動物に投与することを含む、mGluR5が介在する障害の治療方法に関する。
【0024】
別の実施態様において、前記受容体を含む細胞を有効量の式Iの化合物で治療することを含む、mGluR5受容体の活性化を阻害する方法が提供される。
【0025】
本発明の化合物は、治療、特に神経学的、精神医学的、疼痛及び胃腸障害の治療に有用である。
【0026】
また、本発明のある種の化合物は、非溶媒和形態と同様に溶媒和形態、例えば水和形態で存在することができることは、当業者に理解される。本発明は、式Iの化合物の全てのこのような溶媒和形態を包含することが更に理解される。
【0027】
また、式Iの化合物の塩は、本発明の範囲内にある。一般に、本発明の化合物の医薬上許容しうる塩は、当分野でよく知られている標準方法を使用して、例えば、十分に塩基性の化合物、例えばアルキルアミンを適切な酸、例えばHCl、酢酸又はメタンスルホン酸と反応させて生理学上許容しうるアニオンとの塩を生じることによって得られる。また、カルボン酸又はフェノールのような適切な酸性プロトンを有する本発明の化合物を、水性媒体中で1当量のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属水酸化物若しくはアルコキシド(例えばエトキシド又はメトキシド)、又は適切に塩基性の有機アミン(例えばコリン又はメグルミン)で処理し、続いて慣用の精製技術によって対応するアルカリ金属(例えばナトリウム、カリウム又はリチウム)又はアルカリ土類金属(例えばカルシウム)塩を製造することもできる。さらに、第四級アンモニウム塩は、アルキル化剤を、例えば中性アミンに添加することによって製造することができる。
【0028】
本発明の一実施態様において、式Iの化合物は、その医薬上許容しうる塩又は溶媒和物、特に酸付加塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、酢酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、酒石酸、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩又はp−トルエンスルホン酸塩に変換することができる。
【0029】
式Iの定義に使用される一般的な用語は、以下の意味を有する:
本明細書に使用されるハロゲンは、塩素、フッ素、臭素又はヨウ素から選ばれる。
【0030】
1−C3アルキルは、1〜3個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル又はイソプロピルである。
【0031】
1−C3アルコキシは、1〜3個の炭素原子を有するアルコキシ基、例えばメトキシ、エトキシ、イソプロポキシ又はn−プロポキシである。
【0032】
1−C3ハロアルコキシは、少なくとも1個の炭素原子がハロゲン原子によって置換された1〜3個の炭素原子を有するアルコキシ基、例えばメトキシ、エトキシ又はn−プロポキシである。
【0033】
全ての化学名は、ISIS drawを通してアクセスしたAutoNomとして知られているソフトウェアを使用して作成した。
【0034】
上の式Iにおいて、Xは、2つの可能な配向性のいずれかで存在することができる。
【0035】
医薬組成物
本発明の化合物は、式Iの化合物、又はその医薬上許容しうる塩若しくは溶媒和物を医薬上許容しうる担体又は添加剤と共に含む慣用の医薬組成物に処方することができる。医薬上許容しうる担体は、固体又は液体のいずれかであることができる。固形製剤には、散剤、錠剤、分散性顆粒剤、カプセル剤、カシェ剤及び坐剤が含まれるが、これらに制限されるわけではない。
【0036】
固形担体は、賦形剤、着香剤、可溶化剤、滑沢剤、懸濁化剤、結合剤又は錠剤崩壊剤としても作用しうる1つ又はそれ以上の物質であることができる。固形担体は、封入材料であることもできる。
【0037】
散剤では、担体は微粉砕された固形物であり、これは微粉砕された本発明の化合物又は活性成分との混合物中にある。錠剤では、活性成分を、適切な比率で必要な結合性を有する担体と混合し、そして所望の形状及びサイズに成形する。
【0038】
坐剤組成物を製造するには、低融点ワックス、例えば脂肪酸グリセリドとカカオ脂との混合物を最初に融解し、そして例えば撹拌によって活性成分をその中に分散させる。次いで、溶融した均一な混合物を、都合のよいサイズの金型に注ぎ、そして冷却して凝固させる。
【0039】
適切な担体には、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ラクトース、砂糖、ペクチン、デキストリン、デンプン、トラガント、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、カカオ脂、などが含まれるが、これらに制限されるわけではない。
【0040】
また、組成物なる用語は、カプセルを供給する担体として封入材料を用いた活性成分の製剤を含むことを意図し、その中で、活性成分は、(他の担体と共に又はなしで)担体によって囲まれており、そのため担体は活性成分と会合している。同様に、カシェ剤が含まれる。
【0041】
錠剤、散剤、カシェ剤及びカプセル剤は、経口投与に適した固形剤形として使用することができる。
【0042】
液状組成物には、液剤、懸濁剤及び乳剤が含まれる。例えば活性化合物の滅菌水又は水プロピレングリコール溶液は、非経口投与に適した液体製剤であることができる。液体組成物は、ポリエチレングリコール水溶液中に溶液で処方することもできる。
【0043】
経口投与のための水性液剤は、水中に活性成分を溶解し、そして所望により、適切な着色剤、着香剤、安定剤及び増粘剤を加えることによって製造することができる。経口使用のための水性懸濁剤は、微粉砕された活性成分を粘稠材料、例えば天然合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、及び医薬製剤分野で知られている他の懸濁化剤と共に水中で分散することによって製造することができる。経口使用を意図する典型的な組成物は、1つ又はそれ以上の着色剤、甘味剤、着香剤及び/又は保存剤を含むことができる。
【0044】
投薬様式に応じて、医薬組成物は、本発明の化合物約0.05%w(質量%)〜約99%wを含む、又は約0.10%w〜50%wを含み、全ての質量パーセントは、組成物の全質量に基づく。
【0045】
本発明を実施するための治療上有効量は、個々の患者の年齢、体重及び反応を含む、知られている基準を使用して当業者が決定することができ、そして治療又は予防する疾患の枠の中で解釈される。
【0046】
医学的な使用
本発明の化合物は、mGluR5の興奮性活性化と関連する状態の治療及びmGluR5の興奮性活性化によって生じるニューロン損傷を阻害するのに有用である。化合物は、ヒトを含む哺乳動物においてmGluR5の阻害作用をもたらすために使用することができる。
【0047】
mGluR5を含むグループIのmGluR受容体は、中枢神経系及び末梢神経系並びに他の組織において高度に発現される。従って、本発明の化合物は、mGluR5が介在する障害、例えば急性及び慢性の神経学的及び精神医学的障害、胃腸障害並びに慢性及び急性の疼痛障害の治療に十分に適していることが期待される。
【0048】
本発明は、治療に使用するための上に定義された式Iの化合物に関する。
【0049】
本発明は、mGluR5が介在する障害の治療に使用するための上に定義された式Iの化合物に関する。
【0050】
本発明は、アルツハイマー病老年認知症、AIDS−誘発性認知症、パーキンソン病、筋萎縮側索硬化症、ハンチントン舞踏病、片頭痛、てんかん、統合失調症、うつ病、不安、急性不安、眼科的障害、例えば網膜症、糖尿病性網膜症、緑内障、神経性聴覚障害(auditory neuropathic disorders)、例えば耳鳴、化学療法誘発性神経障害、ヘルペス後神経痛及び三叉神経痛、耐性、依存性、脆弱X、自閉症、精神遅滞、統合失調症及びダウン症候群の治療に使用するための上に定義された式Iの化合物に関する。
【0051】
本発明は、片頭痛、炎症性疼痛、神経因性疼痛障害、例えば糖尿病性神経障害、関節炎及びリウマチ様疾患、腰痛、術後痛並びに癌、アンギナ、腎又は胆石仙痛、月経、片頭痛及び痛風を含む種々の状態に関連する疼痛の治療に使用するための上に定義された式Iの化合物に関する。
【0052】
本発明は、脳卒中、頭部外傷、酸素欠乏性及び虚血性損傷、低血糖、心臓血管疾患並びにてんかんの治療に使用するための上に定義された式Iの化合物に関する。
【0053】
また、本発明は、mGluRグループI受容体が介在する障害及び上記のいずれかの障害を治療する薬剤の製造における上に定義された式Iの化合物の使用に関する。
【0054】
本発明の一実施態様は、胃腸障害の治療における式Iの化合物の使用に関する。
【0055】
本発明の別の実施態様は、一過性下部食道括約筋弛緩の阻害、GERDの治療、胃食道逆流の予防、吐出の治療、喘息の治療、喉頭炎の治療、肺疾患の治療、成長障害の管理、過敏性腸疾患(IBS)の治療及び機能性消化不良(FD)を治療する薬剤を製造するための式Iの化合物の使用に関する。
【0056】
本発明の別の実施態様は、過活動膀胱又は尿失禁を治療するための式Iの化合物の使用に関する。
【0057】
用語「TLESR」、一過性下部食道括約筋弛緩は、本明細書において、Mittal, R.K., Holloway, R.H., Penagini, R., Blackshaw, L.A., Dent, J., 1995; Transient lower esophageal sphincter relaxation. Gastroenterology 109, pp. 601-610に従って定義される。
【0058】
用語「逆流」は、本明細書において、胃からの流動物が食道に入ることができるものとして定義され、このようなときに機械的関門が一時的に失われている。
【0059】
用語「GERD」、胃食道逆流性疾患は、本明細書においてvan Heerwarden, M.A., Smout A.J.P.M., 2000; Diagnosis of reflux disease. Bailliere's Clin. Gastroenterol. 14, pp. 759-774に従って定義される。
【0060】
上の式Iの化合物は、肥満又は過体重(例えば体重減少の促進及び体重減少の維持)、体重増加の予防又は逆転(例えば、リバウンド、投薬によって誘発された又は禁煙後の)、食欲及び/又は満腹の調整のため、摂食障害(例えば過食症、食欲不振、過食症及び強迫)及び渇望(薬物、タバコ、アルコール、すべての食欲をそそる主要栄養素又は非必須の食料品)の治療又は予防に有用である。
【0061】
また、本発明は、上に定義された式Iの化合物の有効量を患者に投与することを含む、mGluR5が介在する障害及び上記のいずれかの障害にかかっている又は危険にさらされている患者における、mGluR5が介在する障害及び上記のいずれかの障害の治療方法を提供する。
【0062】
特定の障害の治療的な又は予防的な治療に必要な用量は、治療されるホスト、投与経路及び治療する疾病のひどさに応じて必然的に変化する。
【0063】
本明細書に関して、用語「治療(therapy)」及び「治療(treatment)」は、特に逆の表示がなければ、予防(prevention)又は予防(prophylaxis)を含む。従って、用語「治療的な(therapeutic)」及び「治療的に(therapeutically)」は、それに応じて解釈すべきである。
【0064】
本明細書において、特に明記しない限り、用語「アンタゴニスト」及び「阻害剤」は、いずれかの手段によって、リガンドによる応答を生じる伝達経路を部分的に又は完全に阻止する化合物を意味するものとする。
【0065】
用語「障害」は、特に明記しない限り、代謝調節型グルタミン酸受容体活性に関連するすべての状態及び疾患を意味する。
【0066】
本発明の一実施態様は、式Iの化合物及び酸分泌阻害剤の組み合わせである。本発明の「組み合わせ」は、「固定の組み合わせ(fix combination)」又は「パーツの組み合わせキット(kit of parts combination)」として存在することができる。「固定の組み合わせ」は、(i)少なくとも1つの酸分泌阻害剤;及び(ii)少なくとも1つの式Iの化合物が1つの単位中に存在する組み合わせとして定義される。「パーツの組み合わせキット」は、(i)少なくとも1つの酸分泌阻害剤;及び(ii)少なくとも1つの式Iの化合物が複数の単位中に存在する組み合わせとして定義される。「パーツの組み合わせキット」の成分は、同時に、順次に、又は別々に投与することができる。本発明に従って使用される酸分泌阻害剤対式Iの化合物のモル比は、1:100から100:1まで、例えば1:50から50:1まで又は1:20から20:1まで、又は1:10から10:1までの範囲内にある。2つの薬物は、同じ比率で別々に投与することができる。酸分泌阻害剤の例は、H2遮断剤、例えばシメチジン、ラニチジン;の他にプロトンポンプ阻害剤、例えばピリジニルメチルスルフィニルベンゾイミダゾール、例えばオメプラゾール、エソメプラゾール、ランソプラゾール、パントプラゾール、ラベプラゾール又は関連物質、例えばレミノプラゾールである。
【0067】
非医学的な使用
式Iの化合物と同様にこのような化合物の塩及び水和物は、治療医薬品におけるそれらの使用に加えて、新しい治療剤の調査の一部として、ネコ、イヌ、ウサギ、サル、ラット及びマウスのような実験動物においてmGluRに関連する活性の阻害剤の効果を評価するためのインビトロ及びインビボ試験系の開発及び標準化における薬理学的手段として有用である。
【0068】
製造方法
本発明の別の態様は、式Iの化合物又はその塩若しくは水和物の製造方法を提供する。本発明の化合物の製造方法は、本明細書に記載されている。
【0069】
このような方法の以下の説明を通して、必要に応じて、有機合成分野の当業者によって容易に理解されるやり方で、種々の反応体及び中間体に適切な保護基が加えられ、続いてそこから除去されることを理解すべきである。このような保護基を使用するための慣用の手法及び適切な保護基の例は、例えば“Protective Groups in Organic Synthesis”, T.W. Green, P.G.M. Wuts, Wiley-Interscience, New York, (1999)に記載されている。また、化学操作により基又は置換基を別の基又は置換基に変換することは、最終生成物に向かう合成経路上のすべての中間体又は最終生成物で実施することができ、その際、可能なタイプの変換は、その段階で分子に担持された他の官能基の、変換に使用される条件又は試薬に対する固有の不適合性によってのみ制限されることを理解すべきである。このような固有の不適合性、並びに適切な順序で適当な変換及び合成工程を実施することによってそれらを回避するやり方は、有機合成分野の当業者に容易に理解される。変換の例を下に記載し、そして記載された変換は、変換が例示された一般的な基又は置換基のみに制限されないことを理解すべきである。他の適切な変換における参照及び説明は、“Comprehensive Organic Transformations - A Guide to Functional Group Preparations” R. C. Larock, VHC Publishers, Inc. (1989)に記載されている。他の適切な反応の参照及び説明は、有機化学のテキスト、例えば、“Advanced Organic Chemistry”, March, 4th ed. McGraw Hill (1992)又は“Organic Synthesis”, Smith, McGraw Hill, (1994)に記載されている。中間体及び最終生成物の精製技術には、例えば、カラム又は回転プレート上の順相及び逆相クロマトグラフィ、再結晶、蒸留及び液−液又は固−液抽出が含まれ、そしてそれらは当業者に容易に理解される。置換基及び基の定義は、異なって定義される場合を除き、式I中の通りである。用語「室温」及び「周囲温度」は、特に明記しない限り、16℃と25℃との間の温度を意味するものとする。
【0070】
用語「還流」は、特に明記しない限り、使用した溶媒に関して、明記された溶媒の沸点又はそれより上の温度を意味するものとする。
【0071】
略語
atm 気圧
aq. 水性
BINAP 2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1'−ビナフチル
Boc tert−ブトキシカルボニル
CDI N,N'−カルボニルジイミダゾール
DCC N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド
DCM ジクロロメタン
DBU ジアザ(1,3)ビシクロ[5.4.0]ウンデカン
DEA N,N−ジイソプロピルエチルアミン
DIBAL−H ジイソブチルアルミニウムヒドリド
DIC N,N'−ジイソプロピルカルボジイミド
DMAP N,N−ジメチル−4−アミノピリジン
DMF ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
DPPF ジフェニルホスフィノフェロセン
EA 酢酸エチル
EDCI N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−N'−エチルカルボ ジイミド塩酸塩
EDC 1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
Et2O ジエチルエーテル
EtOAc 酢酸エチル
EtOH エタノール
EtI ヨードエタン
エチル エチル
Fmoc 9−フルオレニルメチルオキシカルボニル
h 時間
HetAr ヘテロアリール
HOBt N−ヒドロキシベンゾトリアゾール
HBTU O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N',N'−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
HPLC 高速液体クロマトグラフィ
LAH 水素化アルミニウムリチウム
LCMS HPLC質量スペクトル
MCPBA m−クロロ安息香酸
MeCN アセトニトリル
MeOH メタノール
min 分
MeI ヨードメタン
MeMgCl メチルマグネシウムクロリド
Me メチル
n−BuLi 1−ブチルリチウム
NaOAc 酢酸ナトリウム
NMR 核磁気共鳴
NMP N−メチルピロリジノン
nBuLi 1−ブチルリチウム
o.n. 一夜
RT、rt、r.t. 室温
TEA トリエチルアミン
THF テトラヒドロフラン
nBu 直鎖ブチル
OM メシレート又はメタンスルホナートエステル
OT トシレート、トルエンスルホナート又は4−メチルベンゼンスルホナートエステル
MTBE メチル、tertブチルエーテル
PCC クロロクロム酸ピリジニウム
PPTS ピリジニウムp−トルエンスルホナート
TBAF テトラブチルアンモニウムフルオリド
pTsOH p−トルエンスルホン酸
SPE 固相抽出(通常、ミニクロマトグラフィのためのシリカゲルを含む)
sat. 飽和
【0072】
中間体の製造
以下の合成経路で得られる中間体は、式Iの化合物のさらなる製造に有用である。他の出発物質は、商業的に入手可能であるか又は文献に記載された方法を経て製造することができる。下に記載された合成経路は、使用することができる製造の非限定的な例である。当業者は、他の経路が使用できることを理解している。
【0073】
イソオキサゾールの合成
【化4】

【0074】
式VIのアルデヒドは、イソオキサゾールの製造に使用することができる。当分野でよく知られている方法を使用して、式IIの商業的に入手可能な酸誘導体[式中、N−G1(G1は、保護基である)]を、N−保護して式IIIの化合物(式中、G1は保護基、例えばBoc又はFmocである)を得ることができる。式IIIの化合物中の酸性部分は、式IVのアルキルエステル、例えばメチル又はエチルエステルに変換することができ、これは、溶媒、例えばトルエン中、低い温度、例えば−78℃で穏和な還元剤、例えばDIBAL−Hを使用して式VIのアルデヒドに変換することができる。より高い温度又はより強い還元剤により、式Vの第一級アルコールが、独占的に又は式VIのアルデヒドとの混合物として形成されうる。他の官能基、例えば式Vの化合物中の第一級アルコール、式VIIの化合物中のニトリル及び式VIIIの化合物中のWeinrebアミド部分は、当分野で確立された手法を用いて、式VIのアルデヒドに変換することができる。さらに、式IIの酸は、当分野で知られている方法によって、例えば酸を第一級アミドに転換し、続いて脱水してニトリルにすることによって式VIIのニトリルに転換することができる。
【0075】
式VIのアルデヒドは、溶媒、例えばピリジン中、0℃と室温との間の温度で、ヒドロキシルアミンを用いて処理することによって式IXのオキシムに転換することができる。式Xのイソオキサゾールは、N−クロロスクシンイミド(NCS)のような試薬を用いて式IXのオキシムを塩素化し、続いて適切にR−置換されたアセチレン誘導体[ここで、Rはアリール、置換されたアリール又はマスキング基(masking group)(例えば、アルキルスタナン)であることができる]を用いて1,3−双極子環付加することによって製造することができる (Steven, R. V. et al. J. Am. Chem. Soc. 1986, 108, 1039)。続いて、標準的な方法によってイソオキサゾール中間体Xを脱保護してXIを得ることができる。
【0076】
【化5】

【0077】
式Xのイソオキサゾール(式中、Rはマスキング基である)は、このようにして製造することができ、そしてマスキング基は、クロスカップリング反応によって所望のR基に変換される。例えば、トリアルキルスタニルアセチレンを使用すると、トリアルキルスタニルイソオキサゾールが生成され、これは、例えばStille型クロスカップリングのような反応を受けてカップリングによりアリール置換基が導入されて適当なハロゲン化アリールとなりうる。
【0078】
[1,2,4]−オキサジアゾールの合成
【化6】

【0079】
式IIIのカルボン酸は、酸性部分を活性化することによって式XIIの対応する3−R置換された[1,2,4]オキサジアゾールの製造に使用することができ、適切なR−置換されたヒドロキシアミジンを添加するとエステルが形成され、続いて環化するとオキサジアゾールXIIIになる。[Tetrahedron Lett., 2001, 42, 1495-98, Tetrahedron Lett., 2001, 42, 1441-43, 及び Bioorg. Med. Chem. Lett. 1999, 9, 1869-74参照]。酸は、THFのような適切な溶媒中、トリエチルアミンのような塩基の存在下でクロロギ酸アルキル、例えばイソブチルクロロホルメートを用いて混合無水物として活性化することができる。別法として、適切な溶媒、例えばDMF、DCM、THF又はMeCN中、−20から100℃までの温度で、共同試薬(co-reagents)、例えばHOBt又はDMAPの存在を用いて又はなしでEDCI、DCC、DIC又はHBTUのような試薬を使用して酸をその場で活性化することを含む、酸を活性化する他の周知の方法を使用することができる。環化は、溶媒、例えばピリジン又はDMF中、マイクロ波照射下で加熱するか、又は触媒、例えばTBAFを使用することによって実施することができる。R−置換されたヒドロキシアミジンは、エタノール又はメタノールなどのような溶媒中、室温と100℃との間の温度で、塩基、例えばNaOH、NaHCO3又はNa2CO3の存在下で、塩酸ヒドロキシルアミンを添加して遊離ヒドロキシルアミンを生成することによってニトリルから入手可能である。
【0080】
【化7】

【0081】
式XIIbの5−R置換された[1,2,4]オキサジアゾールは、[1,2,4]−オキサジアゾールに付いた置換基を効果的に入れ替えることによって式VIIのニトリルから製造することができる。式VIIのニトリルを、上に記載したようにヒドロキシルアミンと反応させて中間体ヒドロキシルアミンを得、そして式IIIの化合物から式XIIの化合物への転換について上記した方法を用い、R基を含むアシル化剤を使用して式XIIbの[1,2,4]オキサジアゾールに転換することができる。
【0082】
テトラゾールの合成
【化8】

【0083】
式VIIのニトリルは、溶媒、例えばDMF、水又はトルエン中、慣用の加熱又はマイクロ波照射によって50〜200℃の温度で、好ましくは触媒、例えばジブチルチンオキシド又はZnBr2を用いて、アジド、例えばNaN3、LiN3、トリアルキリルチンアジド又はトリメチルシラジドで処理することによって、式XVIIIの対応するテトラゾールの製造に使用することができる[J. Org. Chem. 2001, 7945-7950; J. Org. Chem. 2000, 7984-7989 又はJ. Org. Chem. 1993, 4139-4141参照]。
【0084】
5−置換されたテトラゾールのN2−アリール化は、種々のカップリングパートナーを用いて文献に報告されている。式XVIIIの化合物(式中、Rはアリール基である)は、遷移金属が介在するアリール化剤として、例えば式XVのボロン酸[B(OH)2部分を有する]、又は式XVIIの対応するヨードニウム塩[I+−Ar部分を有する]、又は対応するトリアリールビスマスジアセテート[Bi(OAc)2Ar2部分を有する]を用いて製造することができる[Tetrahedron Lett. 2002, 6221-6223; Tetrahedron Lett. 1998, 2941-2944; Tetrahedron Lett. 1999, 2747-2748参照]。ボロン酸では、化学量論量の酢酸Cu(II)及びピリジンを、溶媒、例えばジクロロメタン、DMF、ジオキサン又はTHF中、室温から100℃の温度で使用する。ヨードニウム塩では、触媒量のPd(II)−化合物、例えばPd(OAc)2若しくはPd(0)錯体、例えばPd(DBA)2を、又は触媒量のCu(II)−カルボキシレート、例えばCu(II)−フェニルシクロプロピルカルボキシレート、及び二座配位子、例えばBINAP又はDPPFと共に、溶媒、例えばt−BuOH中、50〜100℃の温度で使用する。トリアリールビスマスジアセテートでは、触媒量の酢酸第二銅を、適切な溶媒、例えばTHF中、N,N,N',N'−テトラメチルグアニジンの存在下で40〜60℃の温度で加熱して使用することができる。式XVIのヨードニウム塩は、例えばそれぞれのボロン酸から、ジクロロメタンなど中で、超原子価ヨウ素置換された芳香族、例えばヒドロキシル(トシルオキシ)ヨードベンゼン又はPhI(OAc)2x 2TfOHで処理することによって得ることができる[Tetrahedron Lett. 2000, 5393-5396参照]。トリアリールビスマスジアセテートは、適切な溶媒、例えば還流THF中で三塩化ビスマスを用いてアリールマグネシウムブロミドから、トリアリールビスムタンを得、次いで、酸化剤、例えば酢酸中の過ホウ酸ナトリウムを用いて、これを酸化して二酢酸塩にして製造することができる[Synth. Commun. 1996, 4569-75]。
【0085】
アミノ−トリアゾールの合成
【化9】

【0086】
式XI、XIII、XVIII及びXIXの脱保護されたアミンを、一連のチオ尿素形成、メチル化及びトリアゾール形成にかけて式Iの化合物(式中、R1及び/又はR2は、式Iに定義された通りである)を得ることができる。式XXのチオ尿素は、溶媒、例えばメタノール、エタノールなど中、RNH2の存在下、室温と100℃との間の温度で、例えばイソチオシアナートR4SCN(スキーム6に示されたMeNCS)、又は1,1−チオカルボニル−ジイミダゾールを用いて確立された方法から入手可能であり、そして典型的に60℃で実施される。チオ尿素中間体のアルキル化は、溶媒、例えばDMF、アセトン、CH2Cl2中、室温又は高められた温度で、アルキル化剤、例えばヨードメタン(スキーム6に示された)又はヨードエタンを用いて実施して、式XXIのイソチオ尿素を得ることができる。ヨードアルカンを使用するとき、生成物は、ヨウ化水素酸塩として単離することができる[Synth.Commun. 1998, 28, 741-746参照]。式XXIの化合物は、アシルヒドラジン又はヒドラジン、続いてアシル化剤と反応させて中間体を形成することができ、これを適切な溶媒、例えばピリジン又はDMF中、0〜150℃で加熱して環化すると式Iの3−アミノトリアゾールとなる。
【0087】
実施例
ここで、本発明を、以下の非限定的な実施例によって説明する。
【0088】
一般的な方法
全ての出発物質は商業的に入手可能であるか又は以前の文献に記載されている。
1H及び13C NMRスペクトルは、Bruker 300、Bruker DPX400又はVarian +400分光計のいずれかで、1H NMRについては、それぞれ300、400及び400MHzで運転し、特に明記しない限り、溶媒として重水素化クロロホルム中で、対照基準としてTMS又は残留溶媒シグナルを用いて記録した。全ての報告された化学シフトは、デルタ−スケール上のppmであり、そして記録に示したようなシグナルの微細な分裂である(s:一重線、br s:ブロードな一重線、d:二重線、t:三重線、q:四重線、m:多重線)。
【0089】
ライン液体クロマトグラフィ分離、続いて質量スペクトル検出における分析を、Alliance 2795(LC)及びZQ一体型四重極質量分析器からなるWatersLCMSで記録した。質量分析器は、陽及び/又は陰イオンモードで運転するエレクトロスプレーイオン源を備えていた。イオンスプレー電圧は、±3kVであり、そして質量分析器は、走査時間0.8秒でm/z 100−700で走査した。カラム、X-Terra MS、Waters、C8、2.1×50mm、3.5mmに、10mM酢酸アンモニウム(水性)中、又は0.1%TFA(水性)中、5%から100%アセトニトリルの直線勾配を適用した。 分取逆相クロマトグラフィは、カラムとしてXTerra MS C8、19×300mm、7mmを用いてダイオードアレー検出器付きのGilson自動分取HPLC上で運転した。クロマトロンによる精製は、TC Research 7924Tクロマトロンを用いて、1、2又は4mmのコーティング層を有する、回転しているシリカゲル/セッコウ(Merck、硫酸カルシウム入り60 PF−254)コーティングガラス板上で実施した。また、生成物の精製は、シリカを充填したガラスカラム中のフラッシュクロマトグラフィによって行った。マイクロ波加熱は、2450MHzで連続照射をもたらすSmith Synthesizerシングルモードのマイクロ波空洞中で実施した(Personal Chemistry AB, Uppsala, Sweden)。
【0090】
実施例1.1:(R)−ピペリジン−1,2−ジカルボン酸1−tert−ブチルエステル2−メチルエステル
【化10】

DMF(60mL)中の(R)−ピペリジン−1,2−ジカルボン酸1−tert−ブチルエステル(5.1g,22.2mmol)に、K2CO3(12.3g,88.8mmol)及びMeI(1.7mL,26.6mmol)を加えた。室温で一夜撹拌した後、反応混合物を酢酸エチルで希釈した。有機層を水(6回)及びブラインで洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、そして濃縮して表題生成物(5.4g,99%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3):δ 4.82 (m, 1H), 3.99 (m, 1H), 3.75 (s, 3H), 2.95 (m, 1H), 2.21 (m, 1H), 2.45 (m, 14H)
【0091】
同様のやり方で、以下の化合物を合成した:
【表1】

【0092】
実施例2.1:(R)−2−ホルミル−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル
【化11】

−78℃でトルエン(50mL)中の実施例1.1(5.4g,22.1mmol)の表題化合物にトルエン中の1.5M DIBAL(33.8mL,50.7mmol)を40分かけて滴加した。次いで、メタノール(120mL)を、−78℃で10分かけて滴加した。反応混合物を氷浴へ移動し、ここで10質量%クエン酸(500mL)を加え、次いで混合物をさらに1時間撹拌した。生成した混合物を酢酸エチル(2回)で抽出した後、有機層を水及びブラインで洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。無色の油(3.0g,64%)として表題生成物を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3):δ9.61 (s, 1H), 4.60 (m, 1H), 4.96 (m, 1H), 2.91 (m, 1H), 2.19 (m, 1H), 1.49 (m, 14H)
【0093】
同様のやり方で、以下の化合物を合成した:
【表2】

【0094】
実施例3.1:(R)−2−(ヒドロキシイミノメチル)−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル
【化12】

氷浴中のMeOH/H2O(30mL/30mL)中の実施例2.1の表題化合物(3.0g,14.1mmol)にNa2CO3(895mg,8.4mmol)及びヒドロキシルアミン塩酸塩(1.2g,16.9mmol)を加えた。30分間撹拌した後、反応混合物を室温に暖まるのにまかせ、そしてさらに4時間撹拌した。反応混合物を半分の体積に濃縮し、それから、酢酸エチル(2回)で抽出して飽和ブラインで洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、そして濃縮して無色の油(3.1g,97%)として表題生成物を得た。
【0095】
同様のやり方で、以下の化合物を合成した:
【表3】

【0096】
実施例4.1:tert−ブチル(2R)−2−[クロロ(ヒドロキシイミノ)メチル]ピペリジン−1−カルボキシレート
【化13】

40℃でDMF(30mL)中の実施例3.1(3.1g,13.7mmol)の表題化合物にN−クロロスクシンイミド(2.0g,15.1mmol)を3つに分けて加えた。1時間撹拌した後、反応混合物を酢酸エチルで希釈し、それから、有機層を水(3回)及びブラインで洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、そして濃縮して表題生成物(3.1g,85%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3):δ 8.79 (bs, 1H), 4.31 (m, 1H), 3.99 (m, 1H), 2.90 (m, 1H), 2.28 (m, 1H), 1.59 (m, 14H).
【0097】
同様のやり方で、以下の化合物を合成した:
【表4】

【0098】
実施例5.1:(R)−2−[5−(3−シアノ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル
【化14】

0℃でDCM(10mL)中の実施例4.1の表題化合物(500mg,1.9mmol)及び3−エチニルベンゾニトリル(532mg,4.2mmol)に、Et3N(0.530mL,3.8mmol)を加えた。30分後、反応混合物を室温に暖まるのにまかせ、そしてさらに3日撹拌した。反応混合物を濃縮し、それから酢酸エチルで希釈した。有機物を水(3回)及びブラインで洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。残留物を、ヘキサンからヘキサン中20%酢酸エチルで溶出するフラッシュカラムクロマトグラフィにより精製して黄色の油として表題生成物を得た(194mg,29%)。
1H NMR (300 MHz, CDCl3):δ8.04 (m, 1H), 8.00 (m, 1H), 7.74 (m, 1H), 7.63 (t, 1H), 6.44 (s, 1H), 5.54 (m, 1H), 4.11 (m, 1H), 2.81 (m, 1H), 2.29 (m, 1H), 1.66 (m, 5H), 1.51 (s, 9H).
【0099】
同様のやり方で、以下の化合物を合成した:
【表5】

【0100】
実施例5.4:2−[3−(3−クロロ−フェニル)−[1,2,4]オキサジアゾール−5−イル]−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル
1,2,4オキサジアゾール−ピペリジン中間体の一般的な合成手法
【化15】

DMF(5mL)中の(R)−N−Boc−ピペリジン−2−カルボン酸(0.81g,3.5mmol)、EDCI(745mg,3.9mmol)、HOBt(0.52g,3.9mmol)及び3−クロロ−N'−ヒドロキシベンゼンカルボキシイミドアミド(0.66g,3.9mmol)の溶液を、室温(RT)で一夜撹拌した。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、水(2×30mL)及びブライン(30mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、それから真空で濃縮した。次いで、アミドキシム共役中間体をDMF中に溶かし、そして127℃に加熱した。〜2時間後、TLCにより反応が完了したと判断した。次いで、混合物を室温に冷却し、そして酢酸エチル100mL中に抽出し、水(3×20mL)及びブライン(20mL)で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、そして真空下で濃縮し、表題化合物918mg(収率72%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3):δ 8.10 (d, 1H), 7.98 (dd, 1H), 7.50 (m, 2H), 5.70 (s br, 1H), 4.12 (m, 1H), 3.01 (m, 1H), 2.38 (m, 1H), 2.06 (m, 1H), 1.58-1.72 (m, 4H), 1.52 (s, 9H)
【0101】
実施例6.1
3−((R)−3−ピペリジン−2−イル−イソオキサゾール−5−イル)−ベンゾニトリル
【化16】

0℃でDCM(2.1mL)中の実施例5.1の表題化合物(194mg,0.56mmol)にTFA(1.1mL)を加えた。1時間後、反応混合物を室温に暖まるのにまかせ、そしてさらに1時間撹拌した。反応混合物を飽和NaHCO3で希釈し、それからDCMで抽出した。有機層を無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、そして濃縮して表題生成物(119mg,86%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3):δ8.04 (s, 1H), 7.99 (d, 1H), 7.71 (d, 1H), 7.62 (t, 1H), 6.67 (s, 1H), 3.96 (d, 1H), 3.20 (m, 1H), 2.85 (t, 1H), 1.91 (m, 2H), 1.62 (m, 5H)
【0102】
同様のやり方で、以下の化合物を合成した:
【表6】

【0103】
以下の化合物は、WO 2005/080386の実施例73の手法に従って合成した。
【0104】
実施例7.1:(R)−2−[5−(3−シアノ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−ピペリジン−1−カルボチオ酸メチルアミド
【化17】

室温でCHCl3(3mL)中の実施例6.1の表題化合物(119mg,0.47mmol)にCH3NCS(0.037mL,0.54mmol)を加え、それから一夜撹拌した。反応混合物を濃縮し、そして残留物を50%ジエチルエーテル/ヘキサンで磨砕し、濾過し、そして乾燥させて表題生成物(153mg,定量的)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3):δ8.05 (s, 1H), 8.00 (d, 1H), 7.73 (d, 1H), 7.61 (t, 1H), 6.88 (m, 1H), 6.60 (s, 1H), 5.92 (m, 1H), 4.00 (m, 1H), 3.20 (m, 4H), 2.38 (m, 1H), 2.04 (m, 1H), 1.79 (m, 2H), 1.59 (m, 2H).
【0105】
同様のやり方で、以下の化合物を合成した:
【表7】

【0106】
【表8】

【0107】
実施例8.1:(R)−2−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−N−メチル−ピペリジン−1−カルボキシミドチオ酸メチルエステル
【化18】

室温でTHF(2mL)中の実施例7.3の表題化合物(153mg,0.47mmol)にナトリウムtert−ブトキシド(45mg,0.47mmol)及びCH3I(0.044mL,0.70mmol)を加えた。反応混合物を1時間撹拌した後、反応混合物を水で希釈し、それから酢酸エチルで抽出した。有機層を水及びブラインで洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、そして濃縮して薄黄色の固形物として表題生成物を得た(150mg,94%)。
1H NMR (300 MHz, CDCl3):δ8.04 (s, 1H), 8.00 (d, 1H), 7.92 (d, 1H), 7.60 (t, 1H), 6.51 (s, 1H), 5.46 (m, 1H), 3.86 (m, 1H), 3.27 (s, 3H), 3.04 (m, 1H), 2.36 (m, 4H), 1.96 (m, 1H), 1.76 (m, 2H), 1.66 (m, 2H).
【0108】
同様のやり方で、以下の化合物を合成した:
【表9】

【0109】
実施例9.1:2−(2H−テトラゾール−5−イル)−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル
【化19】

2−シアノ−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(2.1g,10mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(7.5mL)中のアジ化ナトリウム(0.715g,11mmol)及び塩化アンモニウム(0.588g,11mmol)と混合した。反応混合物を100℃で一夜加熱した。反応混合物を室温に冷却し、そして水で希釈した。酢酸エチルを用いて生成物を抽出した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、そして真空で濃縮した。黄色の粗油を酢酸エチルで摩砕した後、表題生成物として白色の固形物を得た(1.23g,48.6%)。
1H NMR (300 MHz, CDCl3):δ5.63 (br, 1H), 4.02 (m, 1H), 2.76 (td, 1H), 2.43 (m, 1H), 1.96 (m, 2H), 1.8 (m, 2H), 1.55 (m, 2H), 1.49 (s, 9H).
【0110】
同様のやり方で、以下の化合物を合成した:
【表10】

【0111】
実施例10.1:(R)−2−[2−(3−ブロモ−フェニル)−2H−テトラゾール−5−イル]−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル
【化20】

(R)−2−(2H−テトラゾール−5−イル)−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(1.025g,4.046mmol)をtert−BuOH(25mL)に溶解した。アルゴンを10分間バブリングし、そしてt−BuOH(25mL)中の実施例13.2の表題化合物(2.34g,4.45mmol)、ナトリウムtert−ブトキシド(428mg,4.45mmol)、BINAP(99.6mg,0.16mmol)、Pd2(DBA)3(36.6mg,0.04mmol)、2−フェニルプロパンカルボン酸銅(30.8mg,0.08mmol)を90℃で12時間撹拌した。反応混合物をシリカゲル上で濃縮し、そして酢酸エチル:ヘキサン=10%:90%を用いるカラムクロマトグラフィによって精製して黄色の油として表題生成物を得た(1.11g,67%)。
1H NMR (300 MHz, CDCl3):δ8.30 (s, 1H), 8.08 (d, 1H), 7.63 (d, 1H), 7.43 (t, 1H), 5.74 (br, 1H), 4.13 (br, 1H), 3.03 (br, 1H), 2.44 (br, 1H), 2.06 (m, 1H), 1.68 (m, 2H), 1.55 (m, 2H), 1.53 (s, 9H).
【0112】
同様のやり方で、以下の化合物を合成した:
【表11】

【0113】
実施例11.1:(R)−2−[2−(3−シアノ−フェニル)−2H−テトラゾール−5−イル]−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル
【化21】

実施例10.1の表題化合物(340mg,0.832mmol)、dppf(69.3mg,0.125mmol)、シアン化亜鉛(146.7mg,1.25mmol)、Pd2(dba)3(38mg,0.0416mmol)、酢酸亜鉛(10.5mg,0.066mmol)及びZn粉末(4.31mg,0.066mmol)をDMF(10mL)及び水(0.5mL)中、90℃で3時間撹拌した。反応混合物を酢酸エチルと水との間で分配した。有機抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、そして濃縮し、そして酢酸エチル:ヘキサン=20%:80%を用いるカラムクロマトグラフィによって精製して表題生成物を得た(272mg,92%)。
1H NMR (300 MHz, CDCl3):δ8.41 (m, 2H), 7.77 (m, 2H), 5.74 (br, 1H), 4.1 (br, 1H), 3.01 (br, 1H), 2.4 (br, 1H), 1.98 (m, 1H), 1.69 (m, 2H), 1.54 (m, 2H), 1.51 (s, 9H).
【0114】
同様のやり方で、以下の化合物を合成した:
【表12】

【0115】
実施例12.1:m−クロロフェニルヨウ素二酢酸塩
【化22】

1−クロロ−3−ヨードベンゼン(5.0g,21mmol)を30℃で撹拌した。過酢酸(40%,8.35mL,50.3mmol)を溶液に滴加し、そして反応液を12時間撹拌した。形成された白色固形物を濾過し、10%酢酸で1回、そしてヘキサンで3回洗浄し、そして真空で乾燥させて白色固形物として表題生成物(27.5g,92%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3):δ(ppm) 8.10 (s, 1H), 7.99 (d, 1H), 7.57 (d, 1H), 7.46 (t, 1H), 2.04 (s, 6H).
【0116】
同様のやり方で、以下の化合物を合成した:
【表13】

【0117】
実施例13.1:ビス(3−クロロフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート
【化23】

三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート(16.51g,116.3mmol)を−5℃でDCM(170mL)中の3−クロロフェニルボロン酸(17.37g,111.0mmol)に撹拌しながらゆっくりと加えた。15分後、DCM(150mL)中の実施例12.1(37.71g,105.8mmol)の表題化合物をゆっくりと加えた。反応液を0℃で1時間撹拌し、そしてテトラフルオロホウ酸ナトリウム(水300mL中225g)を加え、そして1時間撹拌した。有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、そして濃縮し、そしてエーテルで磨砕して薄茶色の固形物として表題生成物(31.6g,68%)を得た。
1H NMR (300 MHz, (CD3)2SO):δ(ppm) 8.50 (s, 2H), 8.26 (dd, 2H), 7.74 (dd, 2H), 7.60 (t, 2H).
【0118】
同様のやり方で、以下の化合物を合成した:
【表14】

【0119】
実施例14:3−トリメチルシラニルエチニル−ベンゾニトリル
【化24】

トリエチルアミン(120mL)中の3−ヨード−ベンゾニトリル(10.0g,43.7mmol)、トリメチルシランアセチレン(5.57g,56.8mmol)、パラジウムテトラキストリフェニルホスフィン(2.02g(1.75mmol)、及びヨウ化銅(1.0g,5.24mmol)を12時間撹拌した。反応液を濃縮し、そしてカラムクロマトグラフィによって精製して褐色の油として表題生成物(9.35g,定量的収率)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3):δ(ppm) 7.76 (t, 1H), 7.71 (dd, 1H), 7.63 (dd, 1H), 7.28 (t, 1H), 0.26 (s, 9H).
【0120】
実施例15:3−エチニルベンゾニトリル
【化25】

実施例14(9.35g,47.0mmol)の表題化合物及び炭酸カリウム(32.0g,235.0mmol)をMeOH(120mL)中、室温で15分間撹拌した。反応液を水とヘキサンとの間で分配した。有機抽出物を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。反応混合物をカラムクロマトグラフィで精製して白色固形物として表題生成物を得た(1.45g,56%)。
1H NMR (300 MHz, CDCl3):δ(ppm) 3.21 (s, 1H), 7.49 (t, 1H), 7.65 (dd, 1H), 7.71 (dd, 1H), 7.78 (t, 1H).
【0121】
実施例16.1:2−クロロ−6−メトキシ−イソニコチン酸メチルエステル
【化26】

DMF(220mL)中の2−クロロ−6−メトキシ−イソニコチン酸(16g,85.3mmol)にK2CO3(47g,341mmol)及びMeI(6.37mL,102.3mmol)を加えた。一夜撹拌した後、反応混合物を濾過し、それから濃縮した。残留物を酢酸エチル中に溶解し、水(3回)及びブラインで洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。ヘキサン中10−30%酢酸エチルで溶出するフラッシュカラムクロマトグラフィにより精製して表題生成物を得た(15g,87%)。
1H NMR (300 MHz, CDCl3):δ7.45 (s, 1H), 7.23 (s, 1H), 3.98 (s, 3H), 3.95 (s, 3H).
【0122】
同様のやり方で、以下の化合物を合成した:
【表15】

【0123】
実施例17.1:2−メトキシ−イソニコチン酸メチルエステル
【化27】

実施例16.1の表題化合物(15g,75mmol)をエタノール(350mL)中でPd/C(7.4g,82mmol)と混合した。反応混合物をフラッシュし、そして水素を充填し、それから室温で一夜撹拌した。Celite(R)パッドを通して反応混合物を濾過し、そして真空で濃縮した。残留物をジクロロメタン中に溶解し、そして水及びブラインで2回洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、そして真空で濃縮して生成物として薄黄色の油を得た(9.5g,75%)。
1H NMR (300 MHz, CDCl3):δ8.29 (d, 1H), 7.41 (d, 1H), 7.32 (s, 1H), 3.98 (s, 3H), 3.95 (s, 3H).
【0124】
同様のやり方で、以下の化合物を合成した:
【表16】

【0125】
実施例18.1:2−メトキシ−イソニコチン酸ヒドラジド
【化28】

エタノール(100mL)中の実施例17.1の表題化合物(9.51mg,56.9mmol)にヒドラジン水和物(3.45mL,71.2mmol)を加え、それから78℃で一夜加熱した。反応混合物を冷却し、そして真空で濃縮した。残留物を酢酸エチルで磨砕し、濾過し、そして乾燥させて白色固形物として表題生成物を得た(6.69mg,70.3%)。
1H NMR (300 MHz, (CD3)2SO):δ10.04 (br, 1H), 8.27 (d, 1H), 7.32 (d, 1H), 7.15 (s, 1H), 4.62 (br, 2H), 3.88 (s, 3H).
【0126】
同様のやり方で、以下の化合物を合成した:
【表17】

【0127】
実施例19.1:3−(5{(R)−1−[5−(2−メトキシ−ピリジン−4−イル)−4−メチル−4H−[1,2,4]トリアゾール−3−イル]−ピペリジン−2−イル}−テトラゾール−2−イル)−ベンゾニトリル
【化29】

実施例18.1の表題化合物(122mg,0.73mmol)及び実施例8.3の表題化合物(100mg,0.29mmol)をイソプロパノール(5mL)中で混合し、混合物を95℃で一夜加熱した。反応混合物を室温に冷却し、そして真空で濃縮した。残留物を酢酸エチル(20mL)で希釈し、そして水(20mL)を加えた。有機相を分離し、ブライン(4回,25mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、そして真空で濃縮した。酢酸エチル:ヘキサン=60%:40%、次いでメタノール:ヘキサン:酢酸エチル=5%:15%:80%を用いてシリカゲル上で粗残留物を精製して黄色の油として表題生成物を得た(86mg,67%)。
1H NMR (300 MHz, CDCl3):δ8.36 (m, 2H), 8.27 (d, 1H), 7.75 (d, 1H), 7.67 (t, 1H), 7.22 (d, 1H), 6.99 (s, 1H), 5.13 (m, 1H), 3.95 (s, 3H), 3.72 (s, 3H), 3.52 (m, 1H), 3.28 (m, 1H), 2.29 (m, 1H), 2.14 (m, 1H), 1.92 (m, 4H).
【0128】
同様のやり方で、以下の化合物を合成した:
【表18】

【0129】
【表19】

【0130】
【表20】

【0131】
【表21】

【0132】
実施例20:以下の化合物は、キラルHPLCを用いてラセミ化合物の分離から得た。
Chiralpak AD 250×20mm,粒子サイズ10μmを用いたキラル分離。
移動相MeCN:TEA100/0.1,流量18mL/分,検出260nm,温度40℃。
【0133】
同様のやり方で、以下の化合物を単離した:
【表22】

【0134】
生物学的評価
mGluR5Dを発現する細胞系におけるmGluR5拮抗作用の機能性評価
本発明の化合物の性質は、薬理活性用の標準アッセイを用いて分析することができる。グルタミン酸受容体アッセイの例は、例えばAramori et al., Neuron 8:757 (1992), Tanabe et al., Neuron 8:169 (1992), Miller et al., J. Neuroscience 15: 6103 (1995), Balazs, et al., J. Neurochemistry 69:151 (1997)に記載されたように当分野でよく知られている。これらの刊行物に記載された方法論は、参照により本明細書に組み込まれる。都合のよいことに、本発明の化合物は、mGluR5を発現する細胞における細胞内カルシウム[Ca2+]iの動員を測定するアッセイ(FLIPR)、又はリン酸イノシトール代謝回転を測定する別のアッセイ(IP3)によって研究することができる。
【0135】
FLIPRアッセイ
WO97/05252に記載されたようなヒトmGluR5dを発現する細胞を、黒色の側面を有するコラーゲンコーティングされた透明な底面の96ウェルプレート上でウェル当たり100,000細胞の密度で播種し、そして播種の24時間後に実験を行った。全てのアッセイは、127mM NaCl、5mM KCl、2mM MgCl2、0.7mM NaH2PO4、2mM CaCl2、0.422mg/mL NaHCO3、2.4mg/mL HEPES、1.8mg/mL グルコース及び1mg/mL BSA画分IV(pH7.4)を含む緩衝液中で行った。96ウェルプレート中の細胞培養液を、0.01%プルロニック酸(登録商標の非イオン性活性剤ポリオール−CAS番号9003−11−6)中、蛍光カルシウム指示薬フルオ−3(Molecular Probes, Eugene, Oregon)のアセトキシメチルエステル型4μMを含む上記の緩衝液中で60分間装填した。装填期間の後、フルオ−3緩衝液を除去し、そして新たなアッセイ緩衝液で置き換えた。FLIPR実験は、励起及び放射波長、それぞれ488nm及び562nmでレーザー設定0.800W及びCCDカメラシャッター速度0.4秒を用いて行った。各実験は、細胞プレートの各ウェル中にある緩衝液160μlで開始した。アンタゴニストプレートから40μl添加した後、アゴニストプレートから50μL添加した。アンタゴニスト及びアゴニストの添加は、90秒の間隔を離した。蛍光シグナルは、1秒間隔で50回、続いてそれぞれ2つを添加した直後に5秒間隔で3試料のサンプルをとった。サンプリング期間内でのアゴニストに対する応答のピーク高さとより低いバックグラウンド蛍光との間の差分として応答を測定した。線形最小2乗適合プログラムを用いてIC50測定を行った。
【0136】
IP3アッセイ
mGluR5dのさらなる機能性アッセイは、WO97/05252に記載されており、そしてホスファチジルイノシトール代謝回転に基づいている。受容体活性化は、ホスホリパーゼC活性を刺激し、そしてイノシトール1,4,5三リン酸(IP3)の形成を高める。ヒトmGluR5dを安定に発現するGHEKを1μCi/ウェル[3H]ミオ−イノシトールを含む培地中、40×104細胞/ウェルで24ウェルポリ−L−リジンコーティングされたプレート上へ播種した。細胞を一夜(16時間)インキュベートし、次いで3回洗浄し、そして1単位/mlのグルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ及び2mMピルビン酸を補足したHEPES緩衝食塩水(146mM NaCl、4.2mM KCl、0.5mM MgCl2、0.1%グルコース、20mM HEPES、pH7.4)中、37℃で1時間インキュベートした。細胞をHEPES緩衝食塩水中で1回洗浄し、そして10mM LiClを含むHEPES緩衝食塩水中で10分間プレインキュベートした。化合物を、二つ組(in duplicate)で、37℃で15分間インキュベートし、次いでグルタミン酸(80μM)又はDHPG(30μM)を加え、そしてさらに30分間インキュベートした。氷上で過塩素酸(5%)0.5mLを添加して反応を終了し、4℃で少なくとも30分間インキュベートした。試料を15mLポリプロピレン管中に集め、そしてイオン交換樹脂(Dowex AG1−X8ホルメート形態、200−400メッシュ、BIORAD)カラムを用いてリン酸イノシトールを分離した。リン酸イノシトールの分離は、最初にグリセロフォスファチジルイノシトールを30mMギ酸アンモニウム8mLで溶出することによって行った。次に、全リン酸イノシトールを、700mMギ酸アンモニウム/100mMギ酸8mLで溶出し、そしてシンチレーションバイアル中に集めた。次いで、この溶出液をシンチラント8mLと混合し、そして[3H]イノシトール取込みをシンチレーションカウントによって測定した。二つ組試料からdpmのカウントをプロットし、そして線形最小2乗適合プログラムを用いてIC50測定値を得た。
【0137】
略語
BSA ウシ血清アルブミン
CCD 電荷結合素子
CRC 濃度反応曲線
DHPG 3,5−ジヒドロキシフェニルグリシン
DPM 毎分崩壊数
EDTA エチレンジアミン四酢酸
FLIPR 蛍光定量的イメージングプレート読取装置
GHEK GLASTを含むヒト胎生腎
GLAST グルタミン酸/アスパラギン酸トランスポーター
HEPES 4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(緩衝液)
IP3 イノシトール三リン酸
【0138】
一般に、上のアッセイにおいて、10000nM未満のIC50値を有する化合物は、活性であった。本発明の1つの態様において、IC50値は、1000nM未満である。本発明のさらなる態様において、IC50値は、100nM未満である。
【0139】
ラットにおける脳対血漿比率の測定
脳対血漿比率は、雌のSprague Dawleyラットで評価した。化合物を水又は別の適当なビヒクル中に溶解した。脳対血漿比率を測定する際、化合物を皮下若しくは静脈内ボーラス注射、又は静脈内注入、又は経口投与として投与した。投与後の所定の時点で、心臓穿刺により血液試料を採取した。心臓を切開することによってラットを殺し、そして脳を直ちに保持した。血液細胞から血漿を分離するために、血液試料をヘパリン添加した管中に集め、そして30分以内に遠心分離した。血漿を96ウェルプレートへ移し、そして分析まで−20℃で保存した。脳を半分に分割し、そして各半分を予め風袋を量った(pre-tarred)管中に置き、そして分析まで−20℃で保存した。分析前に、脳試料を解凍し、蒸留水の3mL/g脳組織を管に加えた。試料が均一になるまで、脳試料を氷浴中で超音波処理した。脳及び血漿試料の両方をアセトニトリルで沈殿させた。遠心分離した後、上清を0.2%ギ酸で希釈した。分析は、迅速勾配溶出及びMSMS検出による短路逆相HPLCカラム上で、エレクトロスプレーイオン化及び選択反応検出(SRM)取得(Selected Reaction Monitoring acquisition)を備えた三連四重極機器を用いて実施した。液−液抽出は、試料洗浄の代替手段として使用することができる。適切な緩衝液を添加した後、振盪により、試料を有機溶媒に抽出する。有機層のアリコートを新しいバイアルへ移し、そして窒素流れ下で蒸発させて乾燥状態にした。残留物を再構成した後、試料はHPLCカラム上へ注入する準備ができた。
【0140】
一般に、本発明の化合物は、ラットでの血漿中の薬物/脳内の薬物の比率が<0.5で外延が制約される。一実施態様において、比率は、0.15未満である。
【0141】
インビトロ安定性の測定
ラット肝ミクロソームは、Sprague-Dawleyラット肝試料から調製した。ヒト肝ミクロソームは、ヒト肝試料から調製したか又はBD Gentestから入手した。pH7.4で0.1mol/Lリン酸カリウム緩衝液中、補因子、NADPH(1.0mmol/l)の存在下、全ミクロソームタンパク質濃度0.5mg/mlで化合物を37℃でインキュベートした。化合物の初濃度は、1.0μmol/Lであった。分析のため、インキュベーションの開始後、5つの時点0、7、15、20及び30分で試料を採取した。アセトニトリル3.5倍体積を加えることによって、集めた試料中の酵素活性を直ちに停止した。集めた試料のそれぞれの中に残っている化合物の濃度をLC−MSによって測定した。mGluR5阻害剤の排出速度定数(k)は、インキュベーション時間(分)に対するIn[mGluR5阻害剤]のプロットの勾配として算出した。次いで、排出速度定数を用いてmGluR5阻害剤の半減期(T 1/2)を算出し、続いてこれを用いて肝ミクロソーム中mGluR5阻害剤の固有クリアランス(CLint)を:
CLint.=(ln2 x インキュベーション体積)/(T 1/2 x タンパク質濃度)=μl/分/mg
として算出した。
【0142】
TLESRに対して活性な化合物についてのスクリーニング
パブロフスリング中に立つ訓練をした両性別の成体ラブラドルレトリーバーを使用した。粘膜から皮膚への食道フィステル形成を行い、そしてすべての実験を行う前にイヌを完全に回復させた。
【0143】
運動性測定
要約すると、水を自由に供給して約17時間絶食した後、マルチルーメンスリーブ/サイドホールアッセンブリー(multi lumen sleeve/ sidehole assembly)(Dentsleeve, Adelaide, South Australia)を、食道フィステル形成術によって導入して、胃の下部食道括約筋(LES)及び食道内圧を測定した。低コンプライアンスの圧力計注入ポンプ(Dentsleeve, Adelaide, South Australia)を用いてアッセンブリーに水を灌流させた。空気を灌流させた管を経口方向に通過させて嚥下を測定し、そしてLESより3cm上でアンチモン電極によりpHをモニターした。全てのシグナルを増幅し、そしてパソコン上、10Hzで入手した。
【0144】
空腹時の胃/LES第三相運動活動性がないベースライン測定が得られたときに、プラセボ(0.9%NaCl)又は試験化合物を、前脚静脈中の静脈内に投与した(i.v.、0.5mL/kg)。静脈内投与の10分後、栄養食(10%ペプトン、5%D−グルコース、5%イントラリピド、pH3.0)をアセンブリー中央のルーメンを通して100mL/分で最終体積30mL/kgまで胃に注入した。栄養食の注入に続いて、胃内圧力10±1mmHgが得られるまで500mL/分の速度で空気注入した。次いで、さらに空気注入するため又は胃から空気のガス抜きをするため、注入ポンプを用いて実験中は圧力をこのレベルで維持した。栄養分の注入開始から空気通気の終わりまでの実験時間は、45分間であった。手法は、TLESRを誘発する信頼できる手段として有効であった。
【0145】
TLESRは、>1mmHg/秒の速度で下部食道括約筋圧力(胃内圧力に関して)における低下として定義される。弛緩が嚥下に誘発されたと分類される場合、弛緩発生の≦2秒前に、咽頭シグナルが生じることはないはずである。LESと胃との間の圧力差は、2mmHg未満でなければならず、そして完全弛緩の持続時間は1秒より長くなければならない。
【0146】
試料の結果を以下の表に示した:
【表23】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

(式中、
1は、メチル、ハロゲン又はシアノであり;
2は、水素又はフルオロであり;
3は、水素、フルオロ又はC1−C3アルキルであり;
4は、C1−C3アルキル又はシクロプロピルであり;
Xは、
【化2】

であり;
そして、Zは、
【化3】

であり;
ここにおいて、
5は、水素、C1−C3アルキル、C1−C3ハロアルキル、C1−C3アルコキシ;C1−C3ハロアルコキシ又はハロゲンであり;
6は、水素、C1−C3アルキル、C1−C3ハロアルキル、C1−C3アルコキシ;C1−C3ハロアルコキシ又はハロゲンであり;
7は、C1−C3アルキル、C1−C3ハロアルキル、C1−C3アルコキシ;C1−C3ハロアルコキシ又はハロゲンであり;
8は、水素、C1−C3アルキル、C1−C3ハロアルキル、C1−C3アルコキシ;C1−C3ハロアルコキシ又はハロゲンであり;
9は、水素、フルオロ又はC1−C3アルキルである)
の化合物並びにその医薬上許容しうる塩、水和物、アイソフォーム、互変異性体及び/又は鏡像異性体。
【請求項2】
1はハロゲン又はシアノである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
1はクロロである、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
1はシアノである、請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
2は水素である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
3は水素又はフルオロである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
4はC1−C2アルキルである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
4はメチルである、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
5は水素、C1−C2アルキル又はC1−C2アルコキシである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
6は水素、C1−C2アルキル又はC1−C2アルコキシである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
7はC1−C2アルキル又はC1−C2アルコキシである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
8は水素、C1−C2アルキル又はC1−C2アルコキシである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
9は、水素又はフルオロである、請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
3−(5−{(R)−1−[5−(2−メトキシ−ピリジン−4−イル)−4−メチル−4H−[1,2,4]トリアゾール−3−イル]−ピペリジン−2−イル}−テトラゾール−2−イル)−ベンゾニトリル;
4−(5−{2−[3−(3−クロロ−フェニル)−[1,2,4]オキサジアゾール−5−イル]−ピペリジン−1−イル}−4−メチル−4H−[1,2,4]トリアゾール−3−イル)−2−メチル−ピリジン;
3−(5−{2−[3−(3−クロロ−フェニル)−[1,2,4]オキサジアゾール−5−イル]−ピペリジン−1−イル}−4−メチル−4H−[1,2,4]トリアゾール−3−イル)−ピリジン;
4−(5−{2−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−ピペリジン−1−イル}−4−メチル−4H−[1,2,4]トリアゾール−3−イル)−2−メチル−ピリジン;
3−(5−{2−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−ピペリジン−1−イル}−4−メチル−4H−[1,2,4]トリアゾール−3−イル)−ピリジン;
4−(5−{2−[2−(3−クロロ−フェニル)−2H−テトラゾール−5−イル]−ピペリジン−1−イル}−4−メチル−4H−[1,2,4]トリアゾール−3−イル)−2−メトキシ−ピリジン;
4−(5−{2−[2−(3−クロロ−フェニル)−2H−テトラゾール−5−イル]−ピペリジン−1−イル}−4−メチル−4H−[1,2,4]トリアゾール−3−イル)−2−メチル−ピリジン;
3−(5−{2−[2−(3−クロロ−フェニル)−2H−テトラゾール−5−イル]−ピペリジン−1−イル}−4−メチル−4H−[1,2,4]トリアゾール−3−イル)−ピリジン;
3−{5−[1−(4−メチル−5−ピリジン−3−イル−4H−[1,2,4]トリアゾール−3−イル)−ピペリジン−2−イル]−テトラゾール−2−イル}−ベンゾニトリル;
3−(5−{(R)−1−[4−メチル−5−(2−メチル−ピリジン−4−イル)−4H−[1,2,4]トリアゾール−3−イル]−ピペリジン−2−イル}−テトラゾール−2−イル)−ベンゾニトリル;
3−(5−{1−[5−(2−メトキシ−ピリジン−4−イル)−4−メチル−4H−[1,2,4]トリアゾール−3−イル]−ピペリジン−2−イル}−テトラゾール−2−イル)−ベンゾニトリル;
3−(5−{(R)−2−[2−(3−クロロ−フェニル)−2H−テトラゾール−5−イル]−ピペリジン−1−イル}−4−メチル−4H−[1,2,4]トリアゾール−3−イル)−ピリジン;及び
3−(5−{(S)−2−[2−(3−クロロ−フェニル)−2H−テトラゾール−5−イル]−ピペリジン−1−イル}−4−メチル−4H−[1,2,4]トリアゾール−3−イル)−ピリジン
から選ばれる化合物、並びにその医薬上許容しうる塩、水和物、アイソフォーム、互変異性体及び/又は鏡像異性体。
【請求項15】
治療に使用するための請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
活性成分として請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物を、薬理学上及び医薬上許容しうる担体と共に含む医薬組成物。
【請求項17】
一過性下部食道括約筋弛緩を阻害する薬剤を製造するための、請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物又はその医薬上許容しうる塩若しくは光学異性体の使用。
【請求項18】
胃食道逆流性疾患を治療又は予防する薬剤を製造するための、請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物又はその医薬上許容しうる塩若しくは光学異性体の使用。
【請求項19】
疼痛を治療又は予防する薬剤を製造するための、請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物又はその医薬上許容しうる塩若しくは光学異性体の使用。
【請求項20】
不安を治療又は予防する薬剤を製造するための、請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物又はその医薬上許容しうる塩若しくは光学異性体の使用。
【請求項21】
過敏性腸症候群(IBS)を治療又は予防する薬剤を製造するための請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物又はその医薬上許容しうる塩若しくは光学異性体の使用。
【請求項22】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物の有効量をこのような阻害を必要とする被験者に投与することによる、一過性下部食道括約筋弛緩を阻害する方法。
【請求項23】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物の有効量をこのような治療又は予防を必要とする被験者に投与することによる、胃食道逆流性疾患を治療又は予防する方法。
【請求項24】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物の有効量をこのような治療又は予防を必要とする被験者に投与することによる、疼痛を治療又は予防する方法。
【請求項25】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物の有効量をこのような治療又は予防を必要とする被験者に投与することによる、不安を治療又は予防する方法。
【請求項26】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物の有効量をこのような治療又は予防を必要とする被験者に投与することによる、過敏性腸症候群(IBS)を治療又は予防する方法。
【請求項27】
(i)請求項1〜14のいずれか1項に記載の少なくとも1つの化合物、及び
(ii)少なくとも1つの酸分泌阻害剤
を含む組み合わせ。
【請求項28】
酸分泌阻害剤は、シメチジン、ラニチジン、オメプラゾール、エソメプラゾール、ランソプラゾール、パントプラゾール、ラベプラゾール又はレミノプラゾールから選ばれる、請求項27による組み合わせ。
【請求項29】
(R)−2−[5−(3−シアノ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−ピペリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル;
3−((R)−3−ピペリジン−2−イル−イソオキサゾール−5−イル)−ベンゾニトリル;
(R)−2−[2−(3−ブロモ−フェニル)−2H−テトラゾール−5−イル]−ピペリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル;
2−[2−(3−ブロモ−フェニル)−2H−テトラゾール−5−イル]−ピペリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル;
(R)−2−[2−(3−シアノ−フェニル)−2H−テトラゾール−5−イル]−ピペリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル;
2−[2−(3−シアノ−フェニル)−2H−テトラゾール−5−イル]−ピペリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル;
2−[5−(3−シアノ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−ピペリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル;
(R)−2−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−ピペリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル;
3−(3−ピペリジン−2−イル−イソオキサゾール−5−イル)−ベンゾニトリル;
3−((R)−3−ピペリジン−2−イル−イソオキサゾール−5−イル)−ベンゾニトリル;
3−((R)−5−ピペリジン−2−イル−テトラゾール−2−イル)−ベンゾニトリル;
3−(5−ピペリジン−2−イル−2H−テトラゾール−2−イル)ベンゾニトリル;
(R)−2−[5−(3−シアノ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−ピペリジン−1−カルボチオ酸メチルアミド;
2−[5−(3−シアノ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−ピペリジン−1−カルボチオ酸メチルアミド;
(R)−2−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−ピペリジン−1−カルボチオ酸メチルアミド;
(R)−2−[2−(3−シアノ−フェニル)−2H−テトラゾール−5−イル]−ピペリジン−1−カルボチオ酸メチルアミド;
2−[2−(3−シアノ−フェニル)−2H−テトラゾール−5−イル]−ピペリジン−1−カルボチオ酸メチルアミド;
(R)−2−[5−(3−クロロ−フェニル)−イソオキサゾール−3−イル]−N−メチル−ピペリジン−1−カルボキシミドチオ酸メチルエステル;
(R)−2−[2−(3−シアノ−フェニル)−2H−テトラゾール−5−イル]−N−メチル−ピペリジン−1−カルボキシミドチオ酸メチルエステル;
2−[2−(3−シアノ−フェニル)−2H−テトラゾール−5−イル]−N−メチル−ピペリジン−1−カルボキシミドチオ酸メチルエステル;
(R)−2−(ヒドロキシイミノ−メチル)−ピペリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル;
tert−ブチル(2R)−2−[クロロ(ヒドロキシイミノ)メチル]ピペリジン−1−カルボキシレート;
tert−ブチル2−[クロロ(ヒドロキシイミノ)メチル]ピペリジン−1−カルボキシレート;
2−[3−(3−クロロ−フェニル)−[1,2,4]オキサジアゾール−5−イル]−ピペリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル;
2−[3−(3−クロロフェニル)−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル]ピペリジン;
2−[3−(3−クロロフェニル)−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル]−N−メチルピペリジン−1−カルボチオアミド;
メチル 2−[3−(3−クロロフェニル)−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル]−N−メチルピペリジン−1−カルビミドチオエート;
(R)−2−[2−(3−シアノ−フェニル)−2H−テトラゾール−5−イル]−ピペリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル;
2−[2−(3−シアノ−フェニル)−2H−テトラゾール−5−イル]−ピペリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル;及び
(R)−2−(2H−テトラゾール−5−イル)−ピペリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル
から選ばれる化合物。

【公表番号】特表2009−536210(P2009−536210A)
【公表日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−509954(P2009−509954)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【国際出願番号】PCT/US2007/067368
【国際公開番号】WO2007/130821
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(391008951)アストラゼネカ・アクチエボラーグ (625)
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
【Fターム(参考)】