説明

MMP−13阻害剤として有用な縮合ヘテロアリールジアミド化合物

MMP−13の阻害剤である、本明細書に記載の式(I)で示される化合物及び組成物が開示される。同じく、式(I)で示される化合物の使用方法及び製造方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
出願データ
本出願は、2008年10月15日出願米国特許仮出願第61/105,455号の恩典を主張する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
1.技術分野
本発明は、MMP−13メタロプロテアーゼ阻害化合物に関する。
【0003】
2.背景情報
マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)は、亜鉛依存性エンドペプチダーゼである。MMPは、細胞外マトリックスタンパク質を分解するように機能し、そして細胞表面受容体、成長因子、細胞接着分子、サイトカイン及びケモカイン、ならびに他のMMP及び無関係なプロテアーゼの切断に関与している。MMPはまた、増殖、移動(接着/分散)、分化、血管新生、アポトーシス及び宿主防御のような細胞プロセスに主要な役割を果すと考えられている(Hu J et al. Nat Rev Drug Discov. 2007 6:480-498; Ramnath N and Creaven PJ Curr Oncol Rep. 2004 6:96-102)。したがって、MMPは、関節リウマチ、変形性関節症、骨粗鬆症、歯周炎、アテローム性動脈硬化、うっ血性心不全、多発性硬化症及び腫瘍転移を含む治療疾患の標的である。
【0004】
哺乳類のMMPファミリーは20以上のメンバーを含み、共通の構造的特質:プロペプチドドメイン、触媒ドメイン及びC−末端ヘモペキシン様ドメイン(MMP−7及びMMP−26を除く)を共有する。健康及び疾患におけるMMPの機能は、多数の方法で調節されている。MMPは、不活性プロタンパク質として分泌され、これは、プロペプチドドメインが細胞外プロテイナーゼにより切断されるか、又はタンパク質−タンパク質相互作用により不安定化される時に活性化される。MMPの活性はまた、MMPの触媒部位に結合する組織メタロプロテアーゼ阻害因子(TIMP)によって調節される。MMPの産生はまた、時間的に制限されかつ空間的に閉鎖されている特異的シグナルによる転写レベルで調節される(Parks WC et al 2004, Nat Rev Immunol. 2004 4:617-629)。
【0005】
MMP−1(コラゲナーゼ1)、MMP−8(コラゲナーゼ2)、MMP−13(コラゲナーゼ3)及び最近ではMMP−14を含むマトリックスメタロプロテアーゼファミリーのコラゲナーゼのサブセットは、I型、II型、III型、V型及びX型コラーゲンの初期切断を触媒する(Parks WC et al 2004, Nat Rev Immunol. 2004 4:617-629)。MMP−13は、I型及びIII型よりもII型コラーゲンをより効率的に切断し、そして線維型コラーゲンに加えて細胞外マトリックスタンパク質を切断する能力がある(Leeman MF et al 2003 Crit. Rev. Biochem. Mol. Biol. 37: 149-166)。MMP−13は、RA及び変形性関節症(OA)に関連する、関節軟骨分解及び進行性関節損傷に関係するII型コラーゲン分解の最も強力な触媒である。II型コラーゲン(関節軟骨の90〜95%)の場合、三重らせん体は、位置G775/L776で、MMP−1及びMMP−8によるよりもMMP−13によるほうが少なくとも10倍の速さで切断される(Billinghurst,R.C. et al.1997 J Clin Invest 99, 1534-1545)。MMP−13による位置G775/L776でのII型コラーゲン三重らせん体の切断は、分子の初期アンフォールディングを引き起こし、分子はMMPファミリーの更なるメンバーによる触媒的分解の影響を受けやすくなる。関節リウマチ(RA)及び変形性関節症(OA)の病態に関連する滑膜線維芽細胞及び軟骨細胞におけるMMP−13の発現誘導と相まって、II型コラーゲン分解に対するMMP−13の優位な触媒効率は、MMP−13が、RA及びOAに関連する軟骨体退化の関与段階を触媒する原因であるということと一致している(Mitchell,P.G. et al. 1996 J Clin Invest 97, 761-768; Moore,B.A. et al, 2000 Biochim. Biophys. Acta 1502, 307-318)。
【0006】
更に、マウスの膝軟骨細胞及び滑膜細胞におけるMMP−13の一過性アデノウイルス発現は、炎症細胞の動員及び炎症性サイトカインmRNAのアップレギュレーションを含む一過性の関節炎病状を誘発する(oronen, K. et al. 2004. Ann Rheum. Dis 63, 656-664)。軟骨組織にヒトMMP−13の構成的活性型を有する遺伝子導入マウスは、II型コラーゲンの増大した切断を示し、そして顕著な軟骨組織分解及び滑膜の過形成を有する骨関節炎様表現型に至る(Neuhold,L.A. et al 2001 J Clin Invest 107, 35-44)。これらインビボ検証試験はRA及びOAの病理発生におけるMMP−13の役割を更に支持する。
【0007】
発明の概要
本発明の化合物は、MMP−13の阻害剤であることが見出された。
【0008】
したがって、MMP−13の阻害剤である、本明細書に下記の式(I)の化合物及び組成物を提供することが、本発明の目的である。
【0009】
MMP−13の阻害剤である、式(I)の化合物を使用する方法及び製造する方法を提供することが、本発明の更なる目的である。
【0010】
発明の詳細な記載
最も広範囲な一般的実施態様において、式(I):
【0011】
【化1】


[式中、
は、場合により、ヒドロキシル、C−Cアルコキシ、アリール及びヘテロアリールより選択される1〜2個の置換基で置換されている、C−Cアルキルであり;
は、C−Cアルキル、カルボサイクル、ヘテロサイクル又はヘテロアリール(各々、場合により、アミノ、ヒドロキシル及びC−Cアルコキシより選択される1〜2個の置換基で独立に置換されている)であり;
は、結合、−(CH、−C(O)−、O、NH又は−S(O)−であり;
は、水素、C−Cアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル又はヘテロアリール(各々、場合により、C−Cアルキル、アシル、ハロゲン、ヒドロキシル、オキソ及びC−Cアルコキシより選択される1〜3個の置換基で独立に置換されている)であり;
Wは、N、O又はCHであり、ここで、CHは、場合により、ハロゲン、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ又は−C(O)−NHで置換されており、ここで、該窒素原子は、場合により、C−Cアルキル基で一置換又は二置換されおり;
Xは、N又はCHであり;
Arは、フラニル、チアゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、ピロリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピリダジニル及びキノリニルより選択される、ヘテロアリール環であり;
各m、nは、0〜2であり;
ここで、各R〜Rは、場合により、部分的又は完全にハロゲン化されている]で示される化合物、又はその薬学的に許容しうる塩が提供される。
【0012】
別の実施態様において、すぐ上に記載されている実施態様の式(I)の化合物が提供され、ここで、
は、場合により、ヒドロキシル及びC−Cアルコキシより選択される1〜2個の置換基で置換されている、C−Cアルキルであり;
は、C−Cアルキル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、テトラヒドロピラニル、ピペリジニル又はピペラジニル(各々、場合により、アミノ、ヒドロキシル及びC−Cアルコキシより選択される1〜2個の置換基で独立に置換されている)であり;
は、結合、CH、O、NH、−C(O)−、−S(O)−又は−SO−であり;
は、水素、C−Cアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、モルホリニル、チオモルホリニル、1,1−ジオキソ−1λ−チオモルホリニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピラゾリル、イミダゾリル、ピロリル、ピロリジニル又はピリジニル(各々、場合により、C−Cアルキル、アシル、ハロゲン、ヒドロキシル、オキソ及びC−Cアルコキシより選択される1〜3個の置換基で独立に置換されている)であり;
Wは、N、O又はCHであり;
Xは、N又はCHであり;
Arは、フラニル、チアゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、ピロリル、ピリジニル、ピリミジニル及びピリダジニルより選択される、ヘテロアリール環である。
【0013】
別の実施態様において、すぐ上に記載されている実施態様の式(I)の化合物が提供され、ここで、
は、C−Cアルキルであり;
は、C−Cアルキル又はシクロヘキシルであり;
は、CH又は−C(O)−であり;
は、水素、モルホリニル、チオモルホリニル、1,1−ジオキソ−1λ−チオモルホリニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピラゾリル又はピリジニル(各々、場合により、1〜3個の置換基C−Cアルキルで独立に置換されている)であり;
Wは、N又はCHであり;
Arは、フラニルである。
【0014】
別の実施態様において、すぐ上に記載されている実施態様の式(I)の化合物が提供され、ここで、
は、メチルであり;
は、イソプロピル又はシクロヘキシルであり;
は、CH又は−C(O)−であり;
は、水素、モルホリニル又はピリジニル(各々、場合により、1〜3個のメチル基で置換されている)である。
【0015】
別の実施態様において、第1の包括的実施態様の式(I)の化合物が提供され、ここで、
Xは、CHである。
【0016】
別の実施態様において、第1の包括的実施態様の式(I)の化合物が提供され、ここで、
Xは、Nである。
【0017】
別の実施態様において、本発明は、一般スキーム、実施例及び当技術分野で公知の方法を考慮して調製することができる表1の化合物を提供する。
【0018】
【表1】






又はその薬学的に許容しうる塩。
【0019】
下記は、好ましいMMP−13阻害剤である:
【0020】
【表2】

【0021】
本出願の本明細書に先に開示されている全ての化合物において、命名法が構造と矛盾している場合は、その化合物は構造により定義されると理解すべきである。
【0022】
本発明は、活性物質としての本発明の化合物又はその薬学的に許容しうる誘導体1つ以上を、場合により、従来の賦形剤及び/又は担体と共に含む医薬製剤にも関する。
【0023】
本発明の化合物は、同位体標識形態も包含する。本発明の組合わせの活性剤の同位体標識形態は、前記活性剤の原子1個以上が、通常は自然界に見出される前記原子の原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を有する原子により既に置換されているという事実を別にすれば、前記活性剤と同一である。市販品として容易に入手でき、且つ十分に確立した手順により本発明の組合わせの活性剤に組込むことができる同位体の例としては、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素及び塩素の同位体、例えば、それぞれH、H、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、及び36Clが挙げられる。上述の同位体及び/もしくは他の原子の他の同位体を1個以上含む、本発明の組合わせの活性剤、そのプロドラッグ、又は薬学的に許容しうる塩のいずれかは、本発明の範囲内であると意図される。
【0024】
本発明は、ラセミ体、ラセミ混合物、単一の鏡像異性体、ジアステレオマー混合物、及び個々のジアステレオマーとして生じうる、不斉炭素原子を1個以上含む先に記載の任意の化合物の使用を包含する。異性体は、鏡像異性体及びジアステレオマーであると定義するものとする。これらの化合物のかかる異性体形態の全てが、本発明に明確に含まれる。各不斉炭素は、RもしくはS配置、又はその組合せの配置であってもよい。
【0025】
本発明の化合物の幾つかは、1つ以上の互変異性体形態で存在することができる。本発明は、かかる互変異性体の全てを用いる方法を包含する。
【0026】
本明細書で用いられる用語は全て、特記のない限り、当該技術分野で公知の通常の意味で理解されよう。例えば、「C1ー4アルコキシ」は、末端酸素を含むC1ー4アルキル、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシである。構造的に可能で、特記のない限り、アルキル、アルケニル及びアルキニル基は全て、分岐状又は非分岐状であると理解されよう。他のより具体的な定義は、以下のとおりである。
【0027】
カルボサイクルは、炭素原子を3〜12個含む炭化水素環を包含する。これらのカルボサイクルは、芳香族又は非芳香族環系のいずれであってもよい。非芳香族環系は、一価又は多価不飽和であってもよい。好ましいカルボサイクルとしては、非限定的に、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプタニル、シクロヘプテニル、フェニル、インダニル、インデニル、ベンゾシクロブタニル、ジヒドロナフチル、テトラヒドロナフチル、ナフチル、デカヒドロナフチル、ベンゾシクロヘプタニル及びベンゾシクロヘプテニルが挙げられる。シクロアルキルに関する特定の用語、例えば、シクロブタニル及びシクロブチルは、互換可能に用いられるものとする。
【0028】
「ヘテロサイクル」という用語は、飽和又は不飽和のいずれであってもよい、安定した非芳香族4員〜8員(しかし、好ましくは5又は6員)単環式又は非芳香族8員〜11員二環式もしくはスピロ環式複素環基を指す。各ヘテロサイクルは、炭素原子と、窒素、酸素及び硫黄から選択されるヘテロ原子1個以上、好ましくは1〜4個とからなる。ヘテロサイクルは、その環の任意の原子により結合されていてもよく、それにより安定した構造が生成される。
【0029】
用語「ヘテロアリール」は、N、O及びSのようなヘテロ原子を1〜4個含む芳香族5員〜8員単環又は8員〜11員二環を意味すると理解されよう。
【0030】
特記のない限り、ヘテロサイクル及びヘテロアリールには、非限定的に、例えば、アゼチジニル、フラニル、ピラニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、テトラヒドロピラニル、ジオキサニル、テトラヒドロフラニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、ピラゾリル、テトラゾリル、ピロリル、ピロリジニル、ピロリジノン、イミダゾリル、チエニル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、チオモルホリニル、1,1−ジオキソ−1λ−チオモルホリニル、モルホリニル、ピリジニル、ピリジノン、1−オキシ−ピリジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、ベンゾフラニル、ベンゾピラニル及びベンゾジオキソリルが挙げられる。
【0031】
本明細書で使用する「ヘテロ原子」という用語は、炭素以外の原子、例えば、O、N、S及びPを意味すると理解されよう。
【0032】
全てのアルキル基又は炭素鎖において、炭素原子1個以上が、場合により、ヘテロ原子:O、S又はNで置換されていることができ、Nが置換されていない場合には、それはNHであると理解され、そしてヘテロ原子が分岐状又は非分岐状炭素鎖内の末端炭素原子又は内部炭素原子のいずれかを置換していることも理解されよう。かかる基は、本明細書の先に記載されたとおり、オキソのような基で置換されていて、例えば非限定的に、アルコキシカルボニル、アシル、アミド及びチオキソのような定義に至ることができる。
【0033】
本明細書で使用する「アリール」という用語は、本明細書で定義された芳香族カルボサイクル又はヘテロアリールを意味すると理解されよう。特記のない限り、各アリール又はヘテロアリールは、部分的又は完全に水素化されているその誘導体を包含する。例えば、キノリニルは、デカヒドロキノリニル及びテトラヒドロキノリニルを包含してもよく、ナフチルは、その水素化誘導体、例えば、テトラヒドロナフチルを包含してもよい。本明細書に記載されているアリール及びヘテロアリール化合物の、他の部分的又は完全に水素化されている誘導体は、当業者に明白であろう。
【0034】
本明細書で使用する「窒素」及び「硫黄」という用語は、窒素及び硫黄の任意の酸化形態、ならびに任意の塩基性窒素の第四級化形態を包含する。例えば、−S−C1ー6アルキル基の場合、特記のない限り、これは、−S(O)−C1ー6アルキル及び−S(O)−C1ー6アルキルを包含すると理解されよう。
【0035】
「アルキル」という用語は、炭素原子を1〜10個含む飽和脂肪族基、又は炭素原子を2〜12個含む一価もしくは多価不飽和脂肪族炭化水素基を指す。一価又多価不飽和脂肪族炭化水素基は、それぞれ、少なくとも1個の二重又は三重結合を含む。「アルキル」は、分岐状又は非分枝状アルキル基の両方を指す。接頭辞「アルク」又は「アルキル」を用いる任意の組合せ用語が、先の「アルキル」の定義による類似体を指すことを理解しなければならない。例えば、「アルコキシ」、「アルキルチオ」のような用語は、酸素又は硫黄原子を介して第二の基に結合したアルキル基を指す。「アルカノイル」(又はアシル)は、カルボニル基(C=O)に結合したアルキル基を指す。
【0036】
本明細書で使用される「ハロゲン」という用語は、臭素、塩素、フッ素又はヨウ素を意味し、好ましくはフッ素を意味すると理解されよう。「ハロゲン化されている」、「部分的又は完全にハロゲン化されている」、「部分的又は完全にフッ素化されている」、「ハロゲン原子1個以上で置換されている」という定義は、例えば、1個以上の炭素原子上にあるモノ−、ジ−又はトリ−ハロ誘導体を包含する。アルキルの場合、非限定的例は、−CHCHF、−CFなどであろう。
【0037】
本明細書に記載されている各アルキル(又は接頭辞「アルク」もしくは「アルキル」を用いた任意の用語)、カルボサイクル、ヘテロサイクルもしくはヘテロアリール、又はその類似体は、場合により、部分的又は完全にハロゲン化されていると理解されよう。
【0038】
本発明の化合物は、当業者に理解されるとおり、「化学的に安定している」と意図されるもののみである。例えば、「ダングリング価(dangling valency)」又は「カルバニオン」を有する化合物は、本明細書に開示された本発明の方法により意図される化合物ではない。
【0039】
本発明は、式(I)の化合物の薬学的に許容しうる誘導体を包含する。「薬学的に許容しうる誘導体」は、患者に投与すると、本発明に有用な化合物又はその薬理学的に活性な代謝産物もしくは薬理学的に活性な残基を提供できる(直接的又は間接的に)、任意の薬学的に許容しうる塩もしくはエステル、又は任意の他の化合物を指す。薬理学的に活性な代謝産物は、酵素的に又は化学的に代謝されうる本発明の任意の化合物を意味すると理解されよう。これには、例えば、本発明の化合物のヒドロキシル化又は酸化誘導体を包含する。
【0040】
薬学的に許容しうる塩は、薬学的に許容しうる無機及び有機酸及び塩基から誘導されたものを包含する。適切な酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン−p−硫酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン−2−硫酸及びベンゼンスルホン酸が挙げられる。それ自体は薬学的に許容しえない他の酸、例えば、シュウ酸を、該化合物及びその薬学的に許容しうる酸付加塩を得る際の中間体として有用な塩の製造に用いてもよい。適切な塩基から誘導される塩としては、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)、アンモニウム及びN−(C1−アルキル)4+塩が挙げられる。
【0041】
加えて、本発明の化合物のプロドラッグの使用は、本発明の範囲内である。プロドラッグは、簡単な化学変換により修飾されて、本発明の化合物を生成するそれらの化合物を包含する。簡単な化学変換としては、加水分解、酸化及び還元が挙げられる。詳細には、プロドラッグを患者に投与すると、プロドラッグが、本明細書の先に開示された化合物に変換され、それにより所望の薬理学的効果を付与しえる。
【0042】
式(I)の化合物は、以下に記載される一般的合成方法を用いて製造してもよく、それも本発明の一部を構成する。
【0043】
一般的合成方法
本発明は、式(I)の化合物の製造方法も提供する。全てのスキームにおいて、特記のない限り、以下の式中のR、R、R、R、Ar、W及びXは、本明細書の先に記された本発明の式(I)中のR、R、R、R、Ar、W及びXの意味を有するであろう。
【0044】
最適な反応条件及び反応時間は、使用される特定の反応物に応じて変化させることができる。特記のない限り、溶媒、温度、圧力、及び他の反応条件は、当業者であれば容易に選択することができる。具体的な手順は、合成例の項に提供される。典型的には、反応の進行は、所望であれば、薄層クロマトグラフィー(TLC)によりモニターすることができ、そして中間体及び生成物は、シリカゲルクロマトグラフィー及び/又は再結晶により精製することができる。本発明の化合物の製造に使用される適切に置換された出発物質及び中間体は、市販されているか、又は当業者には文献で知られている方法により容易に製造されるかのいずれかであり、そして以下の合成例に例示される。
【0045】
式(I)の化合物は、スキーム1〜4に概説される方法により合成することができる。
【0046】
【化2】

【0047】
スキーム1に概説されるように、式(II)のブロモ酸と式(III)のアミンとの標準的反応条件下での反応は、式(IV)のブロモアミドを与える。式(IV)の中間体と式(V)[式中、PGは、BOCのような保護基である]のボロン酸との、鈴木カップリング反応条件下、適切な溶媒中、適切な塩基及び触媒の存在下での反応は、式(I)の化合物を与える。
【0048】
式(I)の化合物は、スキーム2に概説される方法により調製することもできる。
【0049】
【化3】

【0050】
スキーム2に示すように、式(IV)の中間体と式(VI)のボロン酸との、鈴木カップリング反応条件下、適切な溶媒中、適切な塩基及び触媒の存在下での反応は、式(VII)のニトロ化合物を与える。中間体のニトロ基の、ラネーニッケルのような触媒を使用する標準水素化条件下での還元は、式(VIII)のジアミンを与える。式(VIII)の中間体と式(IX)のアルデヒドとの、適切な溶媒中、適切な温度で、重亜硫酸ナトリウムのような試薬の存在下での反応は、式(I)の化合物を与える。
【0051】
式(I)の化合物は、スキーム3に概説される方法により調製することもできる。
【0052】
【化4】

【0053】
式(X)[式中、PGは、BOCのような保護基である]のハライドと式(XI)のボロン酸との、標準的鈴木カップリング反応条件下での反応は、対応する結合生成物を与える。この結合生成物の、適切な溶媒中、適切な試薬での酸化は、式(XII)の対応する酸を与える。式(XII)の酸と式(III)のアミンとの、標準カップリング反応条件下での反応は、式(I)の化合物を与える。
【0054】
式(I)の化合物は、スキーム4に概説される方法により調製することもできる。
【0055】
【化5】

【0056】
式(XIII)のジアミノ化合物と式(XIV)の酸との、適切な溶媒中、適切な温度での反応は、式(XV)の化合物を与える。式(XV)のブロモ中間体は、標準条件下で、対応するボロン酸に変換して、式(V)の中間体ボロン酸を与え、それをスキーム1に示される方法を使用して、式(I)の化合物に変換することができる。
【0057】
当該分野において公知であり、かつ以下の実施例に図解される方法による、式(I)の最初の生成物の更なる修飾を利用して、本発明の更なる化合物を調製することができる。
【0058】
実施例:
実施例1: 5−(1H−インドール−6−イル)−フラン−2−カルボン酸((S)−シクロヘキシル−メチルカルバモイル−メチル)−アミド
【0059】
【化6】

【0060】
5−ブロモ−フラン−2−カルボン酸((S)−シクロヘキシル−メチルカルバモイル−メチル)−アミド
5−ブロモ−フラン−2−カルボン酸(2.0g、10.4mmol)を、DMF(25mL)に溶解し、次にO−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムへキサフルオロホスファート(HATU)(4.3g、11.5mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)(5.8mL、31mmol)及び(S)−2−アミノ−2−シクロヘキシル−N−メチル−アセトアミド塩酸塩(2.97g、10.4mmol)を加えた。反応物を室温で一晩撹拌した。16時間後、反応物を水でクエンチし、生成物を酢酸エチルで抽出した。EtOAc層を濾過し、固体を減圧下で乾燥させて、ベージュ色の固体を得た。2.8g、78% LC/MS ESI m/z (M+H)+=343.3
【0061】
5−ブロモ−フラン−2−カルボン酸((S)−2−メチル−1−メチルカルバモイル−プロピル)−アミド LC/MS ESI m/z (M+H)+=303.28を、同じ方法で調製した。
【0062】
【化7】

【0063】
5−(1H−インドール−6−イル)−フラン−2−カルボン酸((S)−シクロヘキシル−メチルカルバモイル−メチル)−アミド
圧力バイアル中にて、5−ブロモ−フラン−2−カルボン酸((S)−シクロヘキシル−メチルカルバモイル−メチル)−アミド(190mg、0.55mmol)、インドール−6−ボロン酸(106mg、0.66mmol)、及びビス(ジ−tert−ブチル(4−ジメチルアミノフェニル)ホスフィン)ジクロロパラジウム(II)(39mg、0.05mmol)を、DMF(3mL)に溶解した。2M 炭酸ナトリウム溶液(3.0mL)を加え、得られた溶液を5分間の間にアルゴンで脱気した。容器を100℃にて20分間マイクロ波で加熱した。冷却してすぐに、得られた混合物をEtOAc/HOで希釈し、水相をEtOAcで抽出した。合わせた有機抽出物をブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させ、溶媒を蒸発させた。残留物を、逆相(HPLC)を使用して精製した。137mg、65% LC/MS ESI m/z (M+H)+=380.5。
【0064】
実施例2: 5−[2−(2,5−ジメチル−2H−ピラゾール−3−イル)−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル]−フラン−2−カルボン酸((S)−シクロヘキシル−メチルカルバモイル−メチル)−アミド
【0065】
【化8】

【0066】
工程1:
5−ブロモ−フラン−2−カルボン酸((S)−シクロヘキシル−メチルカルバモイル−メチル)−アミド(0.50g、1.46mmol)、4−アミノ−3−ニトロフェニルボロン酸ピナコールエステル(0.54g、2.04mmol)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.17g、0.15mmol)を、DME(50mL)に溶解した。2M 炭酸ナトリウム溶液(2.9mL、5.83mmol)を加え、得られた溶液を5分間の間にアルゴンで脱気した。溶液をアルゴン下で4時間加熱還流した(100℃)。冷却してすぐに、得られた混合物をEtOAc/HOで希釈し、水相をEtOAcで抽出した。黄色の生成物が有機層から沈殿し、濾別した。生成物をEtOAcで洗浄し、真空下で乾燥させた。493mg、85% LC/MS ESI m/z (M+H)+=401.42。
【0067】
工程2:
エタノール(25mL)中の5−(4−アミノ−3−ニトロ−フェニル)−フラン−2−カルボン酸((S)−シクロヘキシル−メチルカルバモイル−メチル)−アミド(493mg、1.23mmol)の溶液に、ラネーニッケル(50mg、スラリー水溶液)を加えた。混合物を水素雰囲気下で16時間撹拌した。混合物を、セライトを通して濾過し、溶媒を蒸発させた。生成物を冷MeOHで洗浄して、白色の固体を得た。308mg、68%、LC/MS ESI m/z (M+H)+=371.36。
【0068】
工程3:
5−(3,4−ジアミノ−フェニル)−フラン−2−カルボン酸((S)−シクロヘキシル−メチルカルバモイル−メチル)−アミド(25mg、67mmol)、1,3−ジメチル−1H−ピラゾール−4−カルボアルデヒド(9.2mg、74mmol)、及び重亜硫酸ナトリウム(7.73mg、74mmol)を、DMF(1mL)に溶解し、混合物を130℃で12時間加熱した。混合物を濾過し、逆相(HPLC)で精製した。生成物をベージュ色の固体として得た。4.2mg、13%、LC/MS ESI m/z (M+H)+=476.54。
【0069】
実施例3: 5−(2−ピリジン−4−イルメチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−フラン−2−カルボン酸((S)−シクロヘキシル−メチルカルバモイル−メチル)−アミド
【0070】
【化9】

【0071】
工程1:
4−ブロモ−ベンゼン−1,2−ジアミン(0.50g、2.67mmol)及びピリジン−4−イル−酢酸(0.46g、2.67mmol)を、ポリリン酸(5mL)に懸濁した。混合物を185℃で2時間加熱した。室温に冷ました後、混合物を水で希釈し、続いて濃アンモニア(pH=10)を加えた。混合物をEtOAcで抽出し、有機層をブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させた。溶媒を除去した後、生成物を赤色の油状物として得た。512mg、67%。
【0072】
工程2:
アセトニトリル(20mL)中の5−ブロモ−2−ピリジン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール(512mg、1.78mmol)の溶液に、4−ジメチルアミノピリジン(22mg、0.178mmol)を、続いてBoc無水物(465mg、2.113mmol)を加えた。混合物を室温で12時間撹拌した。EtOAcでの希釈の後、混合物を水で抽出した。有機層をブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。670mg、97%。
【0073】
工程3:
圧力バイアルに、5−ブロモ−2−ピリジン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(100mg、0.26mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(72mg、0.28mmol)、KOAc(99mg、1.01mmol)、及び[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)とジクロロメタンとの錯体(1:1)(PdCl(dppf)*CHCl)(8.2mg、0.01mmol)を入れた。窒素でフラッシュした後、DME(2mL)を加え、反応物を100℃で2時間撹拌した。混合物を室温に冷ました後、5−ブロモ−フラン−2−カルボン酸((S)−シクロヘキシル−メチルカルバモイル−メチル)−アミド(88mg、0.26mmol)、PdCl(dppf)*CHCl(8.2mg、0.01mmol)、及び2M NaCO溶液(0.84mL、1.68mmol)を加えた。混合物を110℃で8時間撹拌した。水を加え、混合物をEtOAcで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させた。溶媒の除去の後、残留物を逆相(HPLC)により精製した。生成物を淡黄色の固体として得た。19mg、15%、LC/MS ESI m/z (M+H)+=472.46
【0074】
下記化合物をこの手順に従って調製した(市販されている5−ブロモ−ベンゾイミダゾール又は6−ブロモインドールの場合、工程2から):
5−(3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−フラン−2−カルボン酸((S)−シクロヘキシル−メチルカルバモイル−メチル)−アミド LC/MS ESI m/z (M+H)+=381.39
5−(2−アミノ−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−フラン−2−カルボン酸 ((S)−シクロヘキシル−メチルカルバモイル−メチル)−アミド LC/MS ESI m/z (M+H)+=396.40
5−(2−ピリジン−3−イルメチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−フラン−2−カルボン酸((S)−シクロヘキシル−メチルカルバモイル−メチル)−アミド LC/MS ESI m/z (M+H)+=472.46
5−(2−モルホリン−4−イルメチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−フラン−2−カルボン酸((S)−シクロヘキシル−メチルカルバモイル−メチル)−アミド LC/MS ESI m/z (M+H)+=481.57
5−[2−(2−オキソ−ピロリジン−1−イルメチル)−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル]−フラン−2−カルボン酸((S)−シクロヘキシル−メチルカルバモイル−メチル)−アミド LC/MS ESI m/z (M+H)+=479.56
【0075】
実施例4: 5−(2−アセチルアミノ−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−フラン−2−カルボン酸((S)−シクロヘキシル−メチルカルバモイル−メチル)−アミド
【0076】
【化10】

【0077】
無水ピリジン(1mL)中の5−(2−アミノ−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−フラン−2−カルボン酸((S)−シクロヘキシル−メチルカルバモイル−メチル)−アミド(10mg、0.025mmol)の溶液に、無水酢酸を加えた。混合物を100℃で2時間加熱した。室温に冷ました後、混合物を逆相(HPLC)により精製した。4.6mg、42%、LC/MS ESI m/z (M+H)+=438.47。
【0078】
実施例5: 5−[2−(モルホリン−4−カルボニル)−1H−インドール−6−イル]−フラン−2−カルボン酸((S)−シクロヘキシル−メチルカルバモイル−メチル)−アミド
【0079】
【化11】

【0080】
6−{5−[((S)−シクロヘキシル−メチルカルバモイル−メチル)−カルバモイル]−フラン−2−イル}−1H−インドール−2−カルボン酸(20mg、0.047mmol)の溶液に、HATU(10mg、0.052mmol)、DIEA(0.026mL、0.142mmol)、及びモルホリン(4.5mg、0.052mmol)を続いて加えた。反応物を室温で2時間撹拌し、逆相(HPLC)により直接精製した。7.0mg、30%、LC/MS ESI m/z (M+H)+=493.43。
【0081】
下記化合物をこの手順に従って調製した:
6−{5−[((S)−シクロヘキシル−メチルカルバモイル−メチル)−カルバモイル]−フラン−2−イル}−1H−インドール−2−カルボン酸メチルアミド LC/MS ESI m/z (M+H)+=437.38
6−{5−[((S)−シクロヘキシル−メチルカルバモイル−メチル)−カルバモイル]−フラン−2−イル}−1H−インドール−2−カルボン酸ジメチルアミド LC/MS ESI m/z (M+H)+=451.40
5−[2−(2,6−ジメチル−モルホリン−4−カルボニル)−1H−インドール−6−イル]−フラン−2−カルボン酸((S)−2−メチル−1−メチルカルバモイル−プロピル)−アミド LC/MS ESI m/z (M+H)+=481.47
5−[2−(モルホリン−4−カルボニル)−1H−インドール−6−イル]−フラン−2−カルボン酸((S)−2−メチル−1−メチルカルバモイル−プロピル)−アミド LC/MS ESI m/z (M+H)+=453.43
5−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−カルボニル)−1H−インドール−6−イル]−フラン−2−カルボン酸((S)−2−メチル−1−メチルカルバモイル−プロピル)−アミド LC/MS ESI m/z (M+H)+=466.51
5−[2−(1,1−ジオキソ−λ−1−チオモルフィン−4−カルボニル)−1H−インドール−6−イル]−フラン−2−カルボン酸((S)−2−メチル−1−メチルカルバモイル−プロピル)−アミド LC/MS ESI m/z (M+H)+=501.42
【0082】
実施例6: 5−(1H−ピロロ[3,2−c]ピリジン−6−イル)−フラン−2−カルボン酸((S)−シクロヘキシル−メチルカルバモイル−メチル)−アミド
【0083】
【化12】

【0084】
工程1:
6−ブロモ−ピロロ[3,2−c]ピリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(0.75g、2.53mmol)、2−フルアルデヒド 4−ボロン酸(1.06g、7.59mmol)、及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.29g、0.25mmol)を、DME(13mL)に溶解した。2M 炭酸ナトリウム溶液(3.2mL、6.32mmol)を加え、得られた溶液を5分間の間に、アルゴンで脱気した。溶液を、アルゴン下、一晩加熱還流した(94℃)。得られた混合物をEtOAc/HOで希釈し、水相をEtOAcで抽出した。合わせた有機抽出物をブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させ、溶媒を蒸発させた。残留物を、逆相(HPLC)を使用して精製した。162mg、21%
【0085】
工程2:
ジオキサン(5mL)中の6−(5−ホルミル−フラン−2−イル)−ピロロ[3,2−c]ピリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(162mg、0.52mmol)の溶液に、水(5mL)中のリン酸ナトリウム(一塩基、279mg、2.02mmol)を、続いてスルファミン酸(76mg、0.78mmol)を加えた。反応混合物を0℃に冷却した後、水(5mL)中の亜塩素酸ナトリウム(117mg、80%、1.04mmol)を0℃で10分間かけて加えた。氷浴を取り外し、溶液を30分間撹拌した。亜硫酸ナトリウム(117mg、0.93mmol)を加え、30分間撹拌した。反応混合物を2N HCl(pH=4)で酸性化し、EtOAc(2×25mL)で抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させ、溶媒を蒸発させた。生成物を、暗黄色−褐色を帯びた固体、164mg、96%として得た。
【0086】
工程3:
6−(5−カルボキシ−フラン−2−イル)−ピロロ[3,2−c]ピリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(164mg、0.50mmol)を、DMF(5mL)に溶解し、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート(TBTU)(955mg、2.50mmol)、DIEA(0.55mL、3.00mmol)、及びアミノ酸(284mg、1.00mmol)を加えた。反応物に蓋をかぶせ、室温で撹拌した。5時間後、反応物を水でクエンチし、EtOAcで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させ、溶媒を蒸発させた。粗物質を逆相(HPLC)で精製した。生成物を白色の固体16mg、8%として得た。LC/MS ESI m/z (M+H)+=381.70.
【0087】
生物学的特性の評価
式(I)の化合物の生物学的特性は、当該技術分野で認知されている他のアッセイに加えて下記のアッセイを使用して評価することができる。
【0088】
EnzoLyte(登録商標)520 Generic MMP Assay Kit(AnaSpec Inc.)は、MMP−1、2、3、7、8、9、13、及び14を含む幾つかのMMPの活性を検出することができる。このキットは、5-FAM/QXL(登録商標)520蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)ペプチドをMMP基質として使用する。インタクトFRETペプチドにおいて、5-FAMの蛍光は、QXL(登録商標)520によりクエンチされる。MMPによって2個の別々のフラグメントに切断されるとすぐに、5-FAMの蛍光は回復され、そして励起/発光波長=490nm/520nmでモニターすることができる。アッセイは、便利な96−穴又は384−穴マイクロプレートフォーマットで実施される。
【0089】
好ましい化合物は、500nM未満のIC50を有する。
【0090】
治療用途
上記のアッセイにより実証することができるように、本発明の化合物は、MMP−13を阻害するのに有用である。したがって、式(1)の化合物は、関節リウマチ、変形性関節症、骨粗鬆症、歯周炎、アテローム性動脈硬化、うっ血性心不全、多発性硬化症及び腫瘍転移を含む疾患の処置に有用である。それらは、薬剤として患者に、特に本明細書に前述のように医薬組成物の形態で使用することができる。前述のように、MMP−13は、増殖、遊走(接着/分散)、分化、血管新生、アポトーシス及び宿主防御のような細胞外基質分解及び細胞プロセスに主要な役割を果すと考えられており、したがって式(1)の化合物はまた、下記疾患の処置において有用である:
接触性皮膚炎、骨吸収疾患、再潅流障害、喘息、ギラン・バレー(Guillain-Barre)症候群、クローン病、潰瘍性大腸炎、乾癬、移植片対宿主病、全身性エリテマトーデス及びインスリン依存性糖尿病、毒素性ショック症候群、アルツハイマー病、糖尿病、炎症性腸疾患、急性及び慢性疼痛、ならびに炎症及び心血管疾患の症状、脳卒中、心筋梗塞、血栓溶解療法そのもの又はその後の処置、熱傷、成人呼吸促迫症候群(ARDS)、外傷に続発する多臓器損傷、急性糸球体腎炎、急性炎症性要素を伴った皮膚疾患、急性化膿性髄膜炎又は他の中枢神経障害、血液透析関連症候群,白血球フェレーシス、顆粒球輸血関連症候群、及び壊死性腸炎,経皮的冠動脈形成術後の再狭窄を含む合併症、外傷性関節炎、敗血症、慢性閉塞性肺疾患及びうっ血性心不全。
【0091】
「背景技術」において開示しているように、本発明の化合物は、腫瘍転移を処置するために有用であろう。これらの疾患には、非限定的に、乳癌、気道癌、脳癌、生殖器癌、消化管癌、尿路癌、眼癌、肝癌、皮膚癌、頭頚部癌、甲状腺癌、副甲状腺癌のような固形腫瘍及びそれらの遠隔転移が挙げられる。それらの障害にはまた、リンパ腫、肉腫、及び白血病が挙げられる。
【0092】
乳癌の例には、非限定的に、浸潤性腺管癌、浸潤性小葉癌、腺管上皮内癌、及び非浸潤性小葉癌が挙げられる。
【0093】
気道癌の例には、非限定的に、小細胞肺癌及び非小細胞肺癌、ならびに気管支腺腫及び胸膜肺芽腫及び中皮腫が挙げられる。
【0094】
脳癌の例には、非限定的に、脳幹神経膠腫、視神経膠腫及び視床下部膠腫、小脳星細胞腫及び大脳星細胞腫、髄芽腫、上衣腫、ならびに下垂体腫瘍、神経外胚葉性腫瘍及び松果体腫瘍が挙げられる。
【0095】
末梢神経系腫瘍の例には、非限定的に、神経芽細胞腫、神経節芽細胞腫、及び末梢神経鞘腫瘍が挙げられる。
【0096】
内分泌及び外分泌系の腫瘍の例には、非限定的に、甲状腺癌、副腎皮質癌、褐色細胞腫、及びカルチノイド腫瘍が挙げられる。
【0097】
男性生殖器の腫瘍には、非限定的に、前立腺癌及び精巣癌が挙げられる。
【0098】
女性生殖器の腫瘍には、非限定的に、子宮内膜癌、子宮頸癌、卵巣癌、腟癌、及び外陰癌、ならびに子宮肉腫が挙げられる。
【0099】
消化管の腫瘍には、非限定的に、肛門癌、結腸癌、結腸直腸癌、食道癌、胆嚢癌(gallblader)、胃癌、膵癌、直腸癌、小腸癌、及び唾液腺癌が挙げられる。
【0100】
尿路の腫瘍には、非限定的に、膀胱癌、陰茎癌、腎癌、腎盂癌、尿管癌、及び尿道癌が挙げられる。
【0101】
眼癌には、非限定的に、眼球内黒色腫及び網膜芽細胞腫が挙げられる。
【0102】
肝癌の例には、非限定的に、肝細胞癌(線維層板型変種を伴う又は伴わない肝細胞腫)、肝芽腫、胆管細胞癌(肝内胆管癌)、及び肝細胞癌・胆管細胞癌混合型が挙げられる。
【0103】
皮膚癌には、非限定的に、扁平上皮癌、カポジ肉腫、悪性黒色腫、メルケル細胞皮膚癌、及び非黒色腫皮膚癌が挙げられる。
【0104】
頭頸部癌には、非限定的に、喉頭/下咽頭/上咽頭/中咽頭癌、ならびに口唇癌及び口腔癌が挙げられる。
【0105】
リンパ腫には、非限定的に、AIDS関連リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、及び中枢神経系のリンパ腫が挙げられる。
【0106】
肉腫には、非限定的に、軟部組織肉腫、骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性線維性組織球腫、リンパ肉腫、血管肉腫、及び横紋筋肉腫が挙げられる。白血病には、非限定的に、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病,慢性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病及びヘアリーセル白血病が挙げられる。
【0107】
形質細胞異常増殖症には、非限定的に、多発性骨髄腫、及びワルデンシュトレームマクログロブリン血症が挙げられる。
【0108】
これらの化合物は、ヒトの処置に有用である他に、ホ乳類、げっ歯類などを含むペット、珍しい動物及び家畜の獣医的処置にも有用である。
【0109】
上記疾患及び病状の処置では、治療上有効な用量は、一般に、本発明の化合物の投与あたり約0.01mg〜約100mg/kg体重、好ましくは投与あたり約0.1mg〜約20mg/kg体重の範囲内である。例えば、70kgのヒトへの投与では、投与量範囲は、本発明の化合物の投与あたり約0.7mg〜約7000mg、好ましくは投与あたり約7.0mg〜約1400mgである。最適な投与レベル及び様式を決定するには、ある程度の日常的用量最適化が必要となる場合がある。活性成分を、1日に1〜6回投与してもよい。
【0110】
一般的投与及び医薬組成物
本発明の化合物は、医薬として使用される場合、典型的には医薬組成物の形態で投与される。かかる組成物は、医薬の技術分野で周知の手順を用いて製造することができ、そして本発明の化合物を少なくとも1つ含む。本発明の化合物は、単独で、又は佐剤(本発明の化合物の安定性を向上させ、特定の実施態様ではそれらを含む医薬組成物の投与を促進し、高度の解離又は分散、高度の阻害活性を提供し、補助的療法を提供するなどのもの)と組み合わせて投与してもよい。本発明の化合物は、単独で用いても又は本発明の他の活性物質と併用して、場合により他の薬理学的活性物質と併用してもよい。一般に本発明の化合物は、治療的又は薬学的有効な量で投与されるが、診断又は他の目的でより少量で投与してもよい。
【0111】
純粋な形態又は適切な医薬組成物での本発明の化合物の投与を、医薬組成物の許容された投与様式のいずれかを用いて実施することができる。つまり投与は、例えば、経口、口腔(例えば、舌下)、経鼻、非経口、局所、経皮、経膣、又は経直腸で、固体、半固体、凍結乾燥粉末、又は液体投与形態、例えば、錠剤、坐剤、ピル剤、軟カプセル剤及び硬ゼラチンカプセル剤、粉末、液剤、懸濁液、又はエアロゾルなどの形態で、好ましくは精密な投与量の簡便な投与に適した単位投与形態で行ってもよい。医薬組成物は、一般に、従来の医薬担体又は賦形剤及び、活性剤としての本発明の化合物とを含み、加えて、他の薬剤、医薬品、担体、佐剤、希釈剤、溶媒、又はそれらの混合物を含んでいてもよい。かかる薬学的に許容しうる賦形剤、担体、又は添加剤、及び様々な様式又は投与のための医薬組成物を製造する方法は、当業者に周知である。
【0112】
当業者に予測されるとおり、特定の医薬製剤中で使用される本発明の化合物の形態は、処方が有効となるのに必要である適切な物理的性質(例えば、水溶性)を有するもの(例えば、塩)が選択される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化13】


[式中、
は、場合により、ヒドロキシル、C−Cアルコキシ、アリール及びヘテロアリールより選択される1〜2個の置換基で置換されている、C−Cアルキルであり;
は、C−Cアルキル、カルボサイクル、ヘテロサイクル又はヘテロアリール(各々、場合により、アミノ、ヒドロキシル及びC−Cアルコキシより選択される1〜2個の置換基で独立に置換されている)であり;
は、結合、−(CH、−C(O)−、O、NH又は−S(O)−であり;
は、水素、C−Cアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル又はヘテロアリール(各々、場合により、C−Cアルキル、アシル、ハロゲン、ヒドロキシル、オキソ及びC−Cアルコキシより選択される1〜3個の置換基で独立に置換されている)であり;
Wは、N、O又はCHであり、ここで、CHは、場合により、ハロゲン、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ又は−C(O)−NHで置換されており、ここで、該窒素原子は、場合により、C−Cアルキル基で一置換又は二置換されおり;
Xは、N又はCHであり;
Arは、フラニル、チアゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、ピロリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピリダジニル及びキノリニルより選択される、ヘテロアリール環であり;
各m、nは、0〜2であり;
ここで、各R〜Rは、場合により、部分的又は完全にハロゲン化されている]で示される化合物、又はその薬学的に許容しうる塩。
【請求項2】
が、場合により、ヒドロキシル及びC−Cアルコキシより選択される1〜2個の置換基で置換されている、C−Cアルキルであり;
が、C−Cアルキル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、テトラヒドロピラニル、ピペリジニル又はピペラジニル(各々、場合により、アミノ、ヒドロキシル及びC−Cアルコキシより選択される1〜2個の置換基で独立に置換されている)であり;
が、結合、CH、O、NH、−C(O)−、−S(O)−又は−SO−であり;
が、水素、C−Cアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、モルホリニル、チオモルホリニル、1,1−ジオキソ−1λ−チオモルホリニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピラゾリル、イミダゾリル、ピロリル、ピロリジニル又はピリジニル(各々、場合により、C−Cアルキル、アシル、ハロゲン、ヒドロキシル、オキソ及びC−Cアルコキシより選択される1〜3個の置換基で独立に置換されている)であり;
Wが、N、O又はCHであり;
Xが、N又はCHであり;
Arが、フラニル、チアゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、ピロリル、ピリジニル、ピリミジニル及びピリダジニルより選択される、ヘテロアリール環である、
請求項1記載の化合物。
【請求項3】
が、C−Cアルキルであり;
が、C−Cアルキル又はシクロヘキシルであり;
が、CH又は−C(O)−であり;
が、水素、モルホリニル、チオモルホリニル、1,1−ジオキソ−1λ−チオモルホリニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピラゾリル又はピリジニル(各々、場合により、1〜3個の置換基C−Cアルキルで独立に置換されている)であり;
Wが、N又はCHであり;
Arが、フラニルである、
請求項2記載の化合物。
【請求項4】
が、メチルであり;
が、イソプロピル又はシクロヘキシルであり;
が、CH又は−C(O)−であり;
が、水素、モルホリニル又はピリジニル(各々、場合により、1〜3個のメチル基で置換されている)である、
請求項3記載の化合物。
【請求項5】
Xが、CHである、請求項1〜4のいずれか一項記載の化合物。
【請求項6】
Xが、Nである、請求項1〜4のいずれか一項記載の化合物。
【請求項7】
下記:
【表3】






より選択される化合物、又はその薬学的に許容しうる塩。
【請求項8】
治療有効量の請求項1〜7のいずれか一項記載の化合物ならびに1つ以上の薬学的に許容しうる担体及び/又は佐剤を含む、医薬組成物。
【請求項9】
関節リウマチ、変形性関節症、骨粗鬆症、歯周炎、アテローム性動脈硬化、うっ血性心不全、多発性硬化症及び腫瘍転移より選択される疾患を処置する方法であって、治療有効量の請求項1〜7のいずれか一項記載の化合物を投与することを含む、方法。

【公表番号】特表2012−505892(P2012−505892A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532177(P2011−532177)
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/060439
【国際公開番号】WO2010/045190
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】