説明

MOSFETのソースバルク電圧を用いた信号処理ASIC用の温度補償RC発振器

温度補償CMOS RC発振回路は、抵抗と温度相関バイアス電流とを用いてソースバルク電圧を変化させて、温度に対するMOSFETの閾値電圧の変動を安定させる。この温度層間バイアス電流はまた、抵抗を流れる。温度が上昇すると、バイアス電流も増え、MOSFETのソースバルク電圧を上昇させる。上昇したソースバルク電圧は、高い温度にてMOSFETの閾値電圧を安定させるのを補助する。この発振器には省電力ロジックも組み込まれており、低い電力消費で高い周波数が得られる。本発明では、得られる発振器が低出力設計となってしまう高利得オペアンプや高速比較器はなく、他のシステムとともにシングルチップに組み込むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はRC発振器に関し、特に、最小限のハードウェアと低電力消費の温度安定発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの用途の信号処理において精密なクロック生成器は非常に重要である。ある環境下でこのような生成器を用いるASIC(application specific integrated circuit)の運用は、温度変化にさらされる。このような環境の一例には、自動車への適用があり、その温度範囲は−50Cから150Cである。クロック周波数が不安定だと、内部回路、特にスイッチキャップ回路、ボーレイト生成器、およびハンドシェイク回路のパフォーマンスが減少する。
【0003】
安定した基準クロックを提供するために、多くの発振回路が研究されてきた。公知の一つは水晶発振器であり、その一例が例えば米国特許第6377130号に開示されている。しかしながら、水晶はシングルチップに集積できず、その利用はサイズによる制限があった。
【0004】
RC発振器が長いこと研究されている。従来のRC発振器は、低周波数で、トーン生成器、アラーム、またはフラッシュ指示器などの低精度用途に限られていた。また、これらの抵抗およびコンデンサの温度係数(TC)パラメータは、制御が難しい。
【0005】
他のRC回路は、正準型RC能動周波数発振器のように、発信周波数を安定させるのに例えば米国特許第5,870,345号に開示のようにオペアンプや、米国出願公開2005/0134393に開示のように比較器を必要とする。高利得のオペアンプや高速の比較器を構築するのは複雑で、ハードウェアが高価となり、電力を消費する。これは、特に用途の周波数がメガヘルツ帯に上がると顕著になる。また、オペアンプと比較器のオフセット電圧が温度依存であり、温度依存のクロック信号を供給する。このオフセットを修正するには、複雑な回路が必要となる。
【0006】
上述の不都合があるため、従来のアプローチでは高パフォーマンスのASCへ集積する安定した発信回路を提供できなかった。このため、新たなアプローチが必要となる。本発明はこのような要求に対処するものである。
【発明の概要】
【0007】
温度補償CMOS RC発信回路は、抵抗と温度相関バイアス電流を用いてソースバルク電圧を変化させて温度に対するMOSFET閾値電圧の変化を安定させる。MOSFETのソースは、抵抗を通してアースに接続される。この温度相関バイアス電流もこの抵抗を流れる。温度が上昇すると、バイアス電流も増大し、MOSFETのソースバルク電圧を上昇させる。上昇したソースバルク電圧は、高温におけるMOSFETの閾値電圧を安定させるのを補助する。この発振器には省電力ロジックも組み込まれており、低電力消費にて高周波数を達成する。本発明では、高利得オペアンプも高速比較器もなく、得られる発振器が低電力設計になるとともに、他のシステムとともにシングルチップに集積可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1A】図1Aは、典型的なRC発振器のブロック図である。
【図1B】図1Bは、図1の各ノードの波形を示す。
【図2】図2は、単純化した比較回路を用いる発振回路を示す。
【図3】図3は、NMOSのバルクが直接アースに接続されている場合の、NMOSのソースとバルク間に抵抗を挿入することによりソースバルク電圧を変化させる一方法を示す。
【図4A】図4Aは、基準電流Ibiasと基準電圧を生成可能なブロック図である。
【図4B】図4Bは、Ibe、Iptatおよびこれらの組み合わせIbiasの温度勾配を示す。
【図5】図5は、図4AのIbe生成器402の従来の実装を示す。
【図6】図6は、図4Aのブロックの従来の実装を示し、IptatとVbg生成器を含む。
【図7】図7は、図3の電流源の一実施例を示す。
【図8】図8は、本発明にかかる回路の実施例を示す。
【図9】図9は、図8の回路の運用時の波形を示す。
【図10】図10は、図8の回路の運用時の波形を示す。
【図11】図11は、図8の回路の運用時の波形を示す。
【図12】図12は、図8の回路の運用時の波形を示す。
【図13】図13は、図8の回路の運用時の波形を示す。
【図14】図14は、図8の回路の運用時の波形を示す。
【図15】図15は、省電力構成を有する本発明にかかる発振回路である。
【図16】図16は、図15の回路の運用時の波形を示す。
【図17】図17は、図15の回路の運用時の波形を示す。
【図18】図18は、図15の回路の運用時の波形を示す。
【図19】図19は、図15の回路の運用時の波形を示す。
【図20】図20は、図15の回路の運用時の波形を示す。
【図21】図21は、図15の回路の運用時の波形を示す。
【図22】図22は、本発明にかかる回路の代替実施例を示す。
【図23】図23は、最適サイズの図15の回路を示す。
【図24】図24は、PMOSのバルクが直接VDDに接続されている場合の、PMOSのソースとバルク間に抵抗を挿入することによりソースバルク電圧を変化させる別の方法を示す。
【図25】図25は、本発明にかかる図24の一実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明はRC発振器に関し、特に、最小限のハードウェアと低電力の温度安定発振器に関する。以下の説明は、当業者が本発明を作成し使用できるようにするために提示され、特許出願の内容として提供されるものであり、当業者には本書記載の基本概念および特徴が理解できるであろう。したがって、本発明は提示する実施例に限定されるものではなく、本書記載の原理および特徴に関する最も広い範囲で認容されるべきである。
【0010】
本発明は、非常に小さいハードウェアを用いたオンチップの発振器を記載する。適応する方法は、MOSFETの温度に対する閾値電圧の変化を解決するのに用いられ、これにより温度安定発振器が得られる。また、低電力消費で高いクロック周波数が得られる省電力スキームが含まれる。
【0011】
いくつかの信号処理チップでは、高度集積回路を製造するのにオンチップの発振器が好まれる。しかしながらいくつかのオンチップ発振器は、温度に対する周波数変動がある。この周波数変動は、スイッチキャップ回路などいくつかの内部回路のパフォーマンスを変化させる。また、これによりいくつかの通信信号でタイミングが予測不能となり、ボーレートが未決定となる。安定したクロックを発生させるには、発振器が比較器やオペアンプのような往々にして高価なブロックを必要とし、発振器がメガヘルツ帯で動作する必要がある場合にこれらは大きな領域や電力を消費する。本発明のシステムと方法は、温度に対する安定した周波数を示しつつ、低電力の発振器の経済性を記載する。
【0012】
図1Aは、通常のRC発振器のブロック図を示す。ブロック11は電流源、ブロック12は比較回路、ブロック13はNMOSデバイス204をon/offするリセット回路、デバイス203はコンデンサである。各ノードの波形は図1Bに与えられる。NMOS204が特定の時点でoffであり、ノード1の電圧がゼロとすると、電流源11はコンデンサ203を充電し、ノード1の電圧が線形に上昇する。NMOS204はoffステージに維持され、ノード1の電圧が基準電圧Vrefより高くなるまで、ノード2の「Out」における電圧が低いままとなる。この時点で比較回路12はロジックハイを生成する。この高ロジックがリセット回路13をトリガし、NMOS204をonにする。NMOS204がonとなったら、コンデンサ203が急速放電し、ノード1の電圧がVrefより遙か下に落ちる。ノード1がVref以下となったら、比較回路12が状態を変更し、リセット回路13がNMOS204をoffに再び切り替え、電流源11がコンデンサ203を再充電する。このプロセスが継続的に反復される。
【0013】
前述したように、図1Aの比較回路12は通常、専用のオペアンプまたは比較器として実装される。これらの種類の回路はハードウェアが高価で、消費電力が大きい。
【0014】
図2は、単純化した比較回路を用いた発振回路を示す。図1Aのブロック12に複雑な比較器やオペアンプ回路を用いる代わりに、図2の比較回路は、NMOSデバイス210と電流源14のみを用いて実装され、このためハードウェアが少なく電流消費が小さい。図1Aの基準電圧Vrefは、図2ではNMOS210の基準電圧である。
【0015】
この構造において、温度に対する変動が最大のパラメータはNMOS210の基準電圧である。これは温度に対する出力クロック周波数を直接的に変更する。NMOS210のソースとバルクがアースに直に接続されている場合、NMOS210の閾値電圧は温度が上昇すると減少し、NMOS210の切り替わりポイントが低い値となり、クロック信号が高周波数となる。温度が低い場合、NMOS210の閾値電圧が上昇し、切り替わりポイントが高くなる。これで電流源11がコンデンサ203を充電する時間が長くなり、クロック信号が低周波数となる。この温度による変動を解消し、電力消費を可能な限り低く抑えるには、図2のNMOSデバイス210の閾値電圧を温度に対して安定させるべきである。
【0016】
MOSFET閾値電圧の安定
MOSFETの閾値電圧は、以下の式で与えられるソースバルク電圧の平方根に比例することが知られている:
式1


ここで、VTH0はMOSFETの閾値電圧であり、VSB=0、Φはフェルミレベル、VSBはMOSFETのソースとバルクの間の電圧である。
【0017】
ソースバルク電圧を固定に維持し、MOSFETのソースとバルクの双方をアースに接続すると、式(1)の第2項は0に等しくなる。そして、閾値電圧VTH0は温度に反比例する。MOSFETのソースバルク電圧がゼロ以外の値に設計され、温度上昇とともに上がると、ある点まで閾値電圧は安定できる。これが本発明の主なアイデアである。
【0018】
図2のNMOS210の温度に対する閾値電圧の変化を打ち消すために、図3に、NMOS210のバルクが直接アースに接続されている場合の、NMOS210のソースとバルク間に抵抗211を挿入することによりソースバルク電圧を変化させる一方法を示す。さらなる1の電流源15が、抵抗211に補償電流を注入する。電流源15は正の温度係数の電流Icompを生成し、すなわち、電源15は高温で大きな電流とソースバルク電流VSBを生成する。
【0019】
式2

式(1)において、VTH0は温度に反比例する。Tは温度値として、VSBがTと比例するよう設計されている場合、温度に対するVTH0の変化に打ち勝つのに式(1)でTに比例する要素となり、故に温度に対するVTHの変化が安定する。図3の抵抗が温度係数の非常に小さいポリ抵抗で実装される場合、補償電流IcompはTに正比例するよう設計されるべきである。
【0020】
補償電流Icompを生成する前に、2つの仮定がなされる:第1に、ASICはそれ自身が温度に対して一次まで一定の(constant over temperature to the first order)基準バイアス電流(Ibias)を生成でき、第2の仮定は、ASICはそれ自身が、バンドギャップ回路が生成するVbgのように、温度に対して一次まで一定の基準電圧を生成できる。これら2つの仮定は、信号処理ASICに容易に当てはまる。図4(a)は、基準電流Ibiasと基準電圧を生成できるブロック図である。本図は、IptatおよびVbg生成器401、Ibe生成器402、発振器403、およびIbias生成器404を具える。Iptatは正の温度係数を有するPTAT電流である。IbeはVbe−基準電流であり、このため負の温度係数を有する。ブロックr1とr2は、それぞれIptatとIbeの重み(weight)である。図4Bは、Ibe、Iptatおよびこれらの組み合わせIbiasの温度勾配を示す。r1とr2を正しく選択すると、温度に対するIbiasの勾配はゼロに近くなる。
【0021】
図5は、図4AのIbe生成器402の実装を示す図である。PMOS501のソースがVDDに接続される。ゲートはPMOS502に接続される。PMOS502のソースはVDDに接続され、そのドレインが自身のゲートにダイオード接続されている。NMOS504のドレインは、自身のゲートとPMOS501のドレインの双方に接続される。NMOS504のゲートは、NMOS505のゲートに再度接続される。NMOS505のドレインは、PMOS502のドレインに接続される。NMOS505のソースは、抵抗507に接続される。
【0022】
抵抗507の他端は、アースに接続されている。NMOS504はPNPトランジスタ506のエミッタに接続され、PNPトランジスタ506のベースとコネクタターミナルは双方ともアースに接続される。PMOS501、PMOS502、NMOS504、NMOS505により構成されるフィードバック回路が、PNPトランジスタ506内の電流を抵抗507内と同じにする。
【0023】
NMOS504とNMOS505間のデバイスを合致させても、NMOS504のゲートソース電圧はNMOS505の電圧と等しく、したがって、Rが抵抗507の抵抗値、Iは抵抗507を流れる電流とした場合に、電流IはVbe/Rと等しく、抵抗507は標準的なCMOSプロセスにおけるポリ抵抗のような温度係数が非常に小さい材料で構成される。PMOS503のソースはVDDに接続され、そのゲートはPMOS502502とPMOS501のゲートに接続される。そのドレインは、電流IのミラーであるIbeの出力である。Vbeが負の温度係数を有するため、IとIbeも負の係数を有する。
【0024】
図6は、図4Aのブロック401の一実施例を示し、生成器IptatとVbgを具える。PMOS601のソースはVDDに接続され、そのゲートはPMOS602のゲートに接続される。PMOS602のソースはVDDに接続される。 PMOS601のドレインは、抵抗604に接続される。抵抗604の他端は抵抗607に接続される。抵抗607の他端はPNPトランジスタ608のエミッタに接続される。PNPトランジスタ608のベースとコネクタはともにアースに接続される。PMOS602のドレインは抵抗605に接続される。抵抗605の他端はPNPトランジスタ606のエミッタに接続される。
【0025】
PNPトランジスタ606のベースとコネクタターミナルはともにアースに接続される。ブロック609はオペアンプである。その正の入力は抵抗604と抵抗607の双方に接続される。609の譜の入力はPNPトランジスタ606のエミッタに接続される。オペアンプ609の出力は、PMOS601とPMOS602のゲートに接続される。ここで、PNPトランジスタ608のエミッタ領域はPNPトランジスタ606のn倍である。フィードバックループが、PNPトランジスタ608とPNPトランジスタ606を同じバイアス電流で動作するようにする。
【0026】
結果として、PNPトランジスタ608とPNPトランジスタ606のベースエミッタ電圧の差は抵抗607にわたって表れるはずであり、したがってIR607=VTIn(n)/R607であり、ここでIR607は抵抗607の電流であり、R607は抵抗607の抵抗値である。VTはターミナル電圧である。PMOS603のソースはVDDに接続され、そのゲートはPMOS601とPMOS602のゲートに接続される。PMOS603のドレインは、出力電流Iptatである。PMOS602のドレインはVbg出力である。
【0027】
beは負の勾配を有し、Iptatは正の勾配を有する。これらの2つの電流は足し合わされ、図4Bに示すようなバイアス電流Ibiasを生成する。Ibiasの温度勾配は、IbeとIptatの間のいかなる値もとりうる。図5のPMOS503と図6のPMOS603を注意深くサイズ構成することにより、Ibiasはゼロに近い一次温度係数とすることができる。
【0028】
上記2つの仮定により、続く図7は図3の電流源15の一実施例を示し、これはTに比例する補償電流Icompを生成する。
【0029】
図7のVbgは、図4Aに示す方法で生成される。電流源16は、ゼロに近い温度係数の図4Aに示すIbiasの比である。NMOS205のドレイン電流は、以下の式で制御される。

ここで、unは電子の移動度、COXはゲート酸化膜のキャパシタンス、WとLはMOSFETのそれぞれ幅と長さである。VGSはMOSFETのゲートとソースのターミナル間の電圧であり、VbgまたはVbgの一部と等しい。
【0030】
上述したように、図7の電圧Vbgは、温度に対するNMOS205の閾値電圧の変動に比較すれば一定である。したがって、温度が上昇すると、NMOS205の閾値電圧は下がり、Vbgが一定であるため、NMOS205のオーバードライブ電圧が同様に上昇する。上昇したNMOS205のオーバードライブ電圧はNMOS205のバイアス電流を上昇させ、電流源16の電流Iはある程度までは一定である。これは、高い温度にて上昇したバイアス電流の量が、PMOS207のIからくることを意味する。PMOS207の上昇したバイアス電流Iは、PMOS208の補償電流Icompにミラーされる。PMOS208内のIcompは図3の抵抗211に出され、このため図3の抵抗211を通ってNMOS210のソースバルク電圧が上昇する。上昇したソースバルク電圧は、NMOS210の閾値電圧の温度変化に対する減少を補償する。他方、温度が下がった場合、NMOS205のオーバードライブ電圧が減少し、NMOS205のバイアス電流と補償電流Icompも同様に減少する。これが図3のNMOS210のソースバルク電圧を下げ、最終的にNMOS210の閾値電圧を安定させる。NMOS205のドレイン電流IはTと比例するため、同じことがIcompでもある。
【0031】
本発明の実施例
図8は、本発明にかかる回路の一実施例を示す。図8において、PMOS201のソースはVDDに接続され、そのゲートは自身のドレインターミナルに接続される。PMOS201のドレインはバイアス電流Ibiasであり、これはIbeとIptatの組み合わせであって一次までは一定である。NMOS216のソースはアースに接続され、そのドレインとゲートは図5で生成されるIbeにダイオード接続される。NMOS217のゲートは、NMOS216のゲートに接続される。NMOS217のソースはアースに接続される。NMOS216と217はIbe電流をPMOS201へとミラーする。NMOS218のソースはアースに接続され、そのドレインとゲートは、図6で生成されるIptatにダイオード接続される。NMOS219のゲートは、NMOS218のゲートに接続される。NMOS218のゲート219のソースはアース接続される。NMOS218と219は、Iptat電流をPMOS201にミラーする。NMOS216、217、218、および219は、図4Aの電流加重回路404で構成されている。
【0032】
PMOS202のソースはVDDに接続され、そのゲートはPMOS201のゲートに接続され、これによりPMOS201とPMOS202は図3の電流源11を具える。PMOS202のドレイン電流はI1であり、理想的にはPMOS202のI1はPMOS201のIbiasのある割合である。PMOS202のドレインはコンデンサ203の一端に接続される。コンデンサ203の他端はアースに接続される。したがって、電流I1はコンデンサ203を充電する。PMOS206のソースはVDDに接続され、そのゲートはPMOS201のゲートに接続される。PMOS206のバイアス電流I4は、PMOS201の電流Ibiasのある割合である。PMOS201とPMOS206は、図7の電流源16の実施である。PMOS206のドレインはNMOS205のドレインに接続される。NMOS205のゲート電圧は、図6に示す回路から供給されるVbgまたはVbgの一部(fraction)である。
【0033】
NMOS205のソースはアースに接続され、そのドレインは再びPMOS207のドレインに接続される。PMOS207のソースはVDDに接続され、そのゲートは自身のドレインにダイオード接続される。PMOS207のゲートは再びPMOS208のゲートに接続される。PMOS208のソースはVDDに接続される。したがって、PMOS207とPMOS208は、電流ミラーを有する。PMOS201、PMOS202、およびPMOS205、PMOS206、PMOS207およびPMOS208は、図3の電流源15からなる。PMOS208のドレインは抵抗211の一端に接続される。211の他端はアースに接続される。PMOS208の電流はIcompであり、これが補償電流である。PMOS209のソースはVDDに接続され、そのゲートはPMOS201のゲートに接続される。したがって、PMOS209とPMOS201は、図3の別の電流源14からなる。PMOS209の電流I8は、PMOS201のIbiasに比例する。PMOS209のドレインは、NMOS210のドレインに接続される。
【0034】
PMOS210のゲートは、PMOS202のドレインに接続される。NMOS210のバルクはアース接続され、そのソースはPMOS208のドレインに接続される。デバイス212はインバータであり、その入力はNMOS210のドレインに接続される。インバータ212の出力は、インバータ213の入力に接続される。インバータ213の出力は、インバータ214の入力に接続される。インバータ214の出力はNMOS204のゲートに接続され、NMOS204のonとoffを切り替える。NMOS204のソースはアースに接続され、そのドレインはPMOS202のドレインに接続される。インバータ212、213、および214は、図3のリセット回路13からなる。
【0035】
デバイス215は、エッジトリガフリップフロップレジスタである。それは4つのターミナルがあり、CIk、D、Q、およびq(q:Qの上に−)である。215のターミナルCIkはインバータ213の出力に接続され、そのターミナルqは自身のターミナルDに接続される。215のターミナルQは、この設計の発振器の出力クロック信号である。NMOS204ドレインの電圧はVであり、PMOS209ドレインの電圧はVであり、インバータ212の出力の電圧はVであり、インバータ213出力の電圧はVであり、インバータ214の出力の電圧はVである。
【0036】
図9−14は、図8の回路の動作を示す波形である。図9に示すように時間0秒とすると、コンデンサ203には電荷がなく、Vは0Vに等しく、210はoffであり、図10に示すようにVはVDDと等しく、インバータ212の出力Vは図11に示すようにロジックローであり、インバータ213の出力Vは図12に示すようにロジックハイであり、インバータ214の出力Vは図13に示すようにロジックローであり、これがNMOS204をoffに維持する。この0秒時点の後、I1がコンデンサ203を充電し始め、I1は一次の一定のバイアス電流であるため、電圧Vは図9に示すように線形に上昇する。VがNMOS210の閾値電圧を超えた特定地点まで上がると、NMOS210がonに切り替わり、電圧Vが図10に示すように減少し始める。
【0037】
減少したVは、図12に示すように、インバータ212の出力Vをロジックハイに、インバータ213の出力Vをロジックローに、インバータ214の出力をロジックハイに変化させる。インバータ214のロジックハイ出力はNMOS204をonに切り替え、したがってコンデンサ203を放電させる。放電後、電圧Vはローとなり、これがNMOS210を再びoffに切り替え、電圧VはVDDと等しくなる。この変化はまた、NMOS214の出力をロジックゼロとし、NMOS204をoffに切り替える。NMOS204がoffに切り替わると、I1が再びコンデンサ203を充電し始める。このプロセスが繰り返される。最終的な発振器のクロックは、インバータ214の出力V、またはレジスタ215の出力「クロック」信号からとれる。
【0038】
省電力回路
図8の回路は、同じ環境でいくつかの不要な電力消費を含んでいる。第1に、図10に示すように信号Vの勾配は非常に緩く上昇下降し、これがインバータ212に必要以上に増幅モードで時間がかかることとなり、したがってインバータ212が余計に電力を消費し、これが好ましくない。第2に、V信号の下降勾配は非常に緩く、これによりインバータ213が多くの電力を消費する。第3に、Vは図13によると四角い波形を有し、VがロジックハイのときにNMOS204がonである。これは、Vがロジックハイのときにバイアス電流Iが直接アースに注入されることとなり、電力の浪費となる。
【0039】
低電力アプリケーションでは、NMOS210は、可能な限りスイッチに近くふるまい、onとoffで切り替わるべきである。信号Vの衝撃係数も、低電力消費のためには可能な限り低くあるべきである。
【0040】
図15は、本発明にかかる省電力構成を具える発振回路である。図15の回路は、図15において1つ追加のPMOS216があること以外は、図8のものと同様である。PMOS216のゲートはインバータ213の出力に接続され、そのソースはVDDに接続され、ドレインはPMOS209のドレインに接続される。NMOS210からインバータ212、213、およびPMOS216が、閉ループを構成する。
【0041】
NMOS210がonに切り替わる当初、NMOS210のドレイン電圧はまだVDDに近く、NMOS210が活動的な領域にある。しかしながら、NMOS210がonに切り替わると、VとVが減少し始め、これによりPMOS216がVでの電圧を、PMOS216がない場合よりもより長くロジックハイの近くに維持しようとし、ゲートインバータ212がアナログ入力の代わりにロジックハイ入力を得る。
【0042】
NMOS210が最終的にonに切り替わると、PMOS216はNMOS210にさらなる電流を出す。NMOS210によりダイナミックに電流をチャージすることにより、PMOS216を有さない設計と比較して、PMOS216が低Ibias電流でNMOS210をonにする時間を減少させる。NMOS210がonとなる時間が減少すると、最終的に信号Vの衝撃係数が減少する。
【0043】
したがって、PMOS216はここで2つの機能を有する:第1の機能は、低電力消費で高周波数の発振器を得ることであり、第2の機能はNMOS210がスイッチのようにふるまうことである。PMOS216は小さなダイナミック一時電流しか消費しない。図16−21は、V、V、V、V、Vの波形と、図15の回路が生成する出力クロック信号を示す。図17のVが図10より四角い波形を有するのが明らかであり、これはPMOS216がNMOS210をスイッチのようにふるまわせることを証明している。また低電力では、NMOS204のサイズは、コンデンサ203の充電時間と比べて放電時間を無視できるほどに十分に大きい。
【0044】
図22は、具体化の別の一方法を示す。本図では、抵抗211がなく、210のソースはアースに直に接続される。208および210のドレインは互いに接続される。このため、補償電流はドレイン210に直接送られる。図23は本発明の最適な実装例である。
【0045】
図23では、デバイス204と210がともに、NMOSトランジスタで実現されている。これらはまた、N型接合ゲート電界効果トランジスタ(JFET)、P型JFET、またはPMOSトランジスタで実現することもできる。図24は、デバイス204と210の双方のPMOSの実装を示す。図24において、PMOS204のソースはVDDに接続され、そのドレインはコンデンサ203のボトムプレートに接続されている。抵抗211の一端はVDDに接続され、この抵抗の他端はPMOS210のソースに接続される。PMOS210のドレインは電流源14に接続される。補償電流源15の一端はPMOS210のソースに接続され、電流源15の他端はアースに接続される。
【0046】
図25は、図24の詳細な実装を示す。図15のPMOS201は、図25のNMOSである。図15のデバイス207と208は、図25では除去されている。そして、補償電流は直接NMOS205のソースから生成される。図15の加重ノード404は、IbeとIptatの電流を直に接続することにより実現される。NMOS201と221の電流は、温度に対して一次まで一定のIbias電流である。なお、204と210はPMOSであり、216もまたPMOSである。もう一つのインバータ220が所望のロジックを維持すべく存在する。温度が上昇すると、NMOS205の閾値電圧が減少する。これはNMOS205のオーバードライブ電圧が上がることを意味し、NMOS205のドレイン電流の上昇が生じる。206の電流は一定である。したがって、NMOS205の増えた電流が抵抗211から補償電流として来る。抵抗211の増えた電流はPMOS210へのVSBのソースバルク電圧を上昇させ、PMOS210の閾値電圧を安定させる。
【0047】
本発明を実施例に基づいて説明したが、当業者はこれらの実施例の変形が可能であり、これらの変形例は本発明の意図および範囲内にあることを理解するであろう。さらに、当業者は添付のクレームの意図および範囲を逸脱することなく多くの変更例を実施することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発振回路において、
第1の電流源と、
前記第1の電流源に結合された比較回路であって、NMOSデバイスと、当該NMOSデバイスに結合された第2の電流源とを有する比較回路と、
前記電流源と前記NMOSデバイスのバルク間に結合された抵抗とを具え、
前記NMOSデバイスのバルクはアースに接続され、前記第2の電流源は前記抵抗に補償電流を注入することを特徴とする発振回路。
【請求項2】
請求項1の発振回路において、前記第2の電流源は、正の温度係数の補償電流を生成することを特徴とする発振回路。
【請求項3】
請求項1の発振回路において、温度に対して一次まで一定である基準バイアス電流が生成され、また温度に対して一次まで一定である基準電圧が生成されることを特徴とする発振回路。
【請求項4】
請求項1の発振回路において、前記基準電圧がバンドギャップ回路により供給され、前記基準電流が正の温度係数のPTAT電流と負の温度係数のIbe電流の足し合わせにより供給されることを特徴とする発振回路。
【請求項5】
請求項1の発振回路において、さらに、
出力に結合されたリセット回路と、
前記NMOSデバイスおよび前記リセット回路に結合された第2のNMOSデバイスとを具え、
前記リセット回路が前記第2のNMOS回路を制御することを特徴とする発振回路。
【請求項6】
請求項1の発振回路において、前記NMOSデバイスに結合されたPMOSデバイスを具え、前記PMOSデバイス、NMOSデバイス、および前記インバータが閉ループを構成し、前記PMOSデバイスが前記発振回路を低消費電力かつ高周波数で動作可能とし、前記PMOSデバイスが前記NMOSデバイスをスイッチのように動作させることを特徴とする発振回路。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公表番号】特表2013−504263(P2013−504263A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528064(P2012−528064)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/047735
【国際公開番号】WO2011/028946
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(512048929)エス3シー インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】S3C INC.
【Fターム(参考)】