説明

N−[フェニル(ピペリジン−2−イル)メチル]ベンズアミド誘導体、この調製方法およびこの治療法における使用

本発明は、一般式(I)を有する化合物に関する、式中、Rは水素原子またはアルキル、シクロアルキルアルキル、フェニルアルキル、アルケニル、アルキニル基を表し、Xは水素原子、またはハロゲン原子およびトリフルオロメチル、アルキルおよびアルコキシ基の中から選択される1またはそれ以上の置換基を表し、Rはナフタレニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、インダニル、インデニル、キノリニル、イソキノリル、キナゾリニル、キノキサリニル、フタラジニル、チエニル、フリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾフリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、ベンゾキサゾリル、ベンゾイソキサゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ジヒドロインドリル、ピロロピリジニル、フロピリジニル、チエノピリジニル、イミダゾピリジニル、オキサゾロピリジニル、チアゾロピリジニル、ピラゾロピリジニル、イソキサゾロピリジニル、イソチアゾロピリジニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル基の中から選択される基を表す。本発明はまた、前記化合物の治療における使用に関する。


【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明の化合物は、一般式(I)に対応する
【0002】
【化2】

式中、
は、水素原子、または1個またはそれ以上のフッ素原子で場合によって置換されていてもよい直鎖もしくは分岐(C−C)アルキル基、または(C−C)シクロアルキル基、または(C−C)シクロアルキル(C−C)アルキル基、または1個もしくは2個のメトキシ基で場合によって置換されていてもよいフェニル(C−C)アルキル基、または(C−C)アルケニル基、または(C−C)アルキニル基のいずれかを表し;
Xは、水素原子、またはハロゲン原子およびトリフルオロメチルおよび直鎖もしくは分岐(C−C)アルキルおよび(C−C)アルコキシ基から選択される1またはそれ以上の置換基を表し;
は、ハロゲン原子および(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ、チオ(C−C)アルキル、またはハロゲン原子およびトリフルオロメチル、(C−C)アルキルおよび(C−C)アルコキシ基から選択される1またはそれ以上の置換基で場合によって置換されていてもよいフェニル基から選択される1またはそれ以上の置換基で場合によって置換されていてもよい、ナフチル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリジル、トリアジニル、インダニル、インデニル、キノリル、イソキノリル、キナゾリル、キノキサリル、フタラジニル、チエニル、フリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾフリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、ベンゾキサゾリル、ベンゾイソキサゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ジヒドロインドリル、ピロロピリジル、フロピリジル、チエノピリジル、イミダゾピリジル、オキサゾロピリジル、チアゾロピリジル、ピラゾロピリジル、イソキサゾロピリジル、イソチアゾロピリジル、テトラヒドロキノリル、およびテトラヒドロイソキノリニル基から選択される基を表す。
【0003】
一般式(I)の化合物は、トレオラセミ化合物(1R、2R;1S、2S)の形態、または鏡像異性体(1R、2R)もしくは(1S、2S)の形態で存在しうる。これらは遊離塩基または酸付加塩の形態で存在しうる。
【0004】
本発明の化合物と類似の構造を持つ化合物は、アヘン剤受容体の作用機序による鎮痛剤、利尿剤、抗痙攣薬、麻酔薬、鎮静剤および脳保護薬として、特許US−5254569に記載されている。類似構造を持つこの他の化合物は、精神病性障害、神経疾患、胃症状、悪心および嘔吐の治療に有用な5−HTアンタゴニストとして特許出願EP−0499995に記載されている。
【0005】
好ましい本発明の化合物は、アヘン剤または5−HT受容体での活性を欠き、グリシン輸送体glyt1および/またはglyt2の特異的阻害物質として特定の活性を示す。
【0006】
が水素原子以外である一般式(I)の化合物は、以下のスキーム1によって示されるプロセスによって調製できる。
【0007】
およびXが前記で定義の通りである(Rは水素原子以外)一般式(II)のジアミンと、Yが活性化OH基または塩素原子を表し、Rが前記で定義の通りである一般式(III)の活性化酸または酸塩化物とのカップリングを、当業者に公知の方法を用いて実施する。
【0008】
【化3】

【0009】
一般式(II)のジアミンは、以下のスキーム2によって示される方法によって調製できる。
【0010】
【化4】

【0011】
式(IV)のワインレブアミドを、エーテル溶媒、例えばジエチルエーテル中、−30℃から室温の間で、Xが前記で定義の通りである一般式(V)のフェニルリチウム誘導体と反応させる。一般式(VI)のケトンが得られ、これをエーテル溶媒、例えばテトラヒドロフラン中、−78℃から室温の間で、還元剤、例えばK−Selectride(登録商標)またはL−Selectride(登録商標)(水素化トリ−s−ブチルホウ素カリウムまたはリチウム)を用いて還元し、一般式(VII)のトレオ配置のアルコールとする。次いで、一般式(VII)のカルバメートを、エーテル溶媒、例えばテトラヒドロフラン中、室温から還流温度の間で、混合水素化物、例えば水素化リチウムアルミニウムの作用によって還元し、一般式(VIII)のトレオN−メチルアミノアルコールとする。
【0012】
次いで、一般式(VIII)のトレオアルコールを、Rがメチル基を表す一般式(II)のトレオ中間体へ2段階で変換する:まずアルコール官能基を、塩素系溶剤、例えばジクロロメタン中、および塩基、例えばトリエチルアミンの存在下、0℃から室温で、塩化メタンスルホニルの作用によって、求電子性基、例えばメタンスルホン酸基へ変換し、次いで、この求電子性基を、アルコール、例えばエタノール中、密閉媒質、例えばオートクレーブ中、−50℃から室温の間で、−50℃の液化アンモニアと反応させる。
【0013】
また、一般式(VII)のカルバメートを、アルコール、例えばメタノール中で、強塩基、例えば水酸化カリウム水溶液を用いて脱保護すると、一般式(IX)のトレオアミノアルコールが得られ、続いて、塩基、例えば炭酸カリウムの存在下、極性溶媒、例えばN,N−ジメチルホルムアミド中、室温から100℃の間で、Rが前記で定義の通りであるが、水素原子以外であり、Zがハロゲン原子を表す、式RZのハロゲン化誘導体を用いて、N−アルキル化を実施する。このようにして得られた一般式(X)のアルコールを、次いで、一般式(VIII)のアルコールに関して記載されるように処理する。
【0014】
がメチル基を表し、Xが水素原子を表す場合には、以下のスキーム3によって示される、もう1つの方法の変法を使用できる。式(XI)のピリジンオキシムを、エーテル溶媒、例えば、ジエチルエーテル中、室温で、例えば、メチルトリフルオロメタンスルホネートの作用によって四級化する。次いで、このように得られた、式(XII)のピリジニウム塩を、触媒、例えば酸化白金の存在下、アルコールと酸性水溶液、例えばエタノールと1N 塩酸の混合物中、水素雰囲気下で水素付加に付す。Rがメチル基を表し、Xが水素原子を表す、一般式(II)のジアミンが、2種のジアステレオ異性体の9/1トレオ/エリトロ混合物の形態で得られる。これを、例えば、シュウ酸を用いて塩に変え、次いで、アルコールとエーテル溶媒、例えばメタノールとジエチルエーテルの混合物から、形成されるシュウ酸塩を再結晶化することで精製すると、純粋なトレオジアステレオ異性体(1R,2R;1S,2S)が得られる。
【0015】
【化5】

【0016】
が水素原子を表す一般式(II)の化合物は、スキーム2に従い、Rが場合によって置換されていてもよいフェニルメチル基を表す一般式(I)の化合物を用い、続いて、ピペリジン環の窒素を、例えば、酸化剤または三臭化ホウ素などのルイス酸を用いて、または水素添加分解によって、あるいは、アルケニル基、好ましくはアリル基によって、Pd複合体を用いて窒素を脱保護することでRが水素原子を表す一般式(I)の化合物が得られる。
【0017】
さらに、トレオジアステレオ異性体の(1R,2R)または(1S,2S)鏡像異性体に対応する一般式(I)のキラル化合物はまた、キラルカラムで高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によってラセミ化合物を分離することによって、またはキラル酸、例えば酒石酸、カンファースルホン酸、酒石酸ジベンゾイルもしくはN−アセチルロイシンを用いることで一般式(II)のラセミアミンを分割することによって、アルコール系の溶媒中で、ジアステレオ異性体の塩の分別再結晶および優先再結晶することによって、または、式(IV)のキラルワインレブアミドを用い、スキーム2に従い、エナンチオ選択的合成によって得ることができる。
【0018】
式(IV)のラセミまたはキラルワインレブアミド、およびまた一般式(VI)のケトンは、Eur.J.Med−Chem.、35、(2000)、979から988頁およびJ.Med−Chem.、41、(1998)、591から601頁に記載されたものと同様の方法に従って調製できる。Xが水素原子を表す一般式(V)のフェニルリチウム化合物は市販されている。この置換誘導体は、Tetrahedron Lett.、57、33、(1996)、5905から5908頁に記載された方法と同様の方法に従って調製できる。一般式(XI)のピリジンオキシムは、特許出願EP−0366006に記載されたものと同様の方法に従って調製できる。Xが水素原子を表す一般式(IX)のアミンは、特許US−2928835に記載された方法に従って、一連のキラルで調製できる。最後に、一般式(XIII)のアミンはChem.Pharm.Bull.、32、12、(1984)、4893から4906頁およびSynthesis、(1976)、593から595頁に記載されたものと同様の方法に従って調製できる。
【0019】
一般式(III)の酸および酸塩化物は、4−[2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1H−イミダゾール−2−カルボン酸を除いて市販されており、これは、特許出願EP−0365030および特許US−3336300に記載されたものと類似の条件下で調製できる。
【0020】
以下の実施例は、本発明のいくつかの化合物の調製を例示する。微量元素分析、IRおよびNMRスペクトルならびにキラルカラムでのHPLCにより構造を確認し、化合物のエナンチオマー純度を得る。
【0021】
実施例の表題中の括弧内に示した数字は、後で示す表の最初の列の数字に対応する。
【実施例1】
【0022】
(化合物4)
トレオ−2,5−ジクロロ−N−[(1−メチル−2−ピペリジル)(フェニル)−メチル]−3−チオフェンカルボキサミドヒドロクロリド1:1
【0023】
1.1. 2−(ベンジルオキシイミノフェニルメチル)−1−メチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート
17.4m1(120mmol)のメチルトリフルオロメタンスルホネートを、0℃で、200mlジエチルエーテル中、35g(120mmol)のフェニル(2−ピリジル)メタノンO−ベンジルオキシムの懸濁液に滴下し、この混合物を、室温で3時間撹拌する。形成された沈殿を、濾過によって回収し、減圧下で乾燥させる。
【0024】
49gの生成物が得られ、この生成物を、さらなる精製を行わずに以下の工程に用いる。
【0025】
1.2. トレオ−(1−メチルピペリジン−2−イル)フェニルメタンアミンエタンジオエート1:2
14.8g(31.89mmol)の2−(ベンジルオキシイミノフェニル−メチル)−1−メチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネートおよび0.74gの酸化白金を、パー(Parr)フラスコに入れた50mlのエタノールおよび50mlの1N塩酸に入れ、水素付加を5時間実施する。
【0026】
エタノールを減圧下で蒸発除去し、残渣をジクロロメタンで抽出し、水相を分離し、それにアンモニア水溶液を加え、混合物をジクロロメタンで抽出する。合わせた有機相を洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で蒸発除去した後、10%のエリトロジアステレオ異性体を含む6.7gの油状生成物が得られる。
【0027】
エタンジオエートは、これらの6.7gの基剤をメタノールに溶解することによって、最少量のメタノールに溶解した、2当量のエタン二酸の作用によって調製する。
【0028】
得られた塩を、メタノールとジエチルエーテルの混合物から再結晶化することによって精製する。
【0029】
4.7gの純粋なトレオジアステレオ異性体のエタンジオエートが最終的に単離される。
【0030】
融点:156から159℃
【0031】
1.3 トレオ−2,5−ジクロロ−N−(1−メチル−2−ピペリジル)(フェニル)メチル]チオフェン−3−カルボキサミドヒドロクロリド1:1
15mlのジクロロメタンに溶解した0.768g(4mmol)の2,5−ジクロロチオフェン−3−カルボン酸を、100mlの丸底フラスコに入れ、次いで、0.651m1(4.7mmol)のトリエチルアミンおよび0.447ml(4.7mmol)のエチルクロロホルメートを加え、反応混合物を、室温で2時間撹拌する。
【0032】
15mlのジクロロメタンに溶解した0.80g(3.9mmol)のトレオ−(1−メチル−2−ピペリジル)フェニルメタンアミンを加え、撹拌を室温で12時間継続する。
【0033】
この混合物を水で処理し、ジクロロメタンで数回抽出する。有機相を水、次いで1N水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で蒸発除去した後、残渣を、ジクロロメタンとメタノールの97/3から95/5混合物で溶出するシリカゲルでのカラムクロマトフラフィーによって精製する。
【0034】
0.6gの油状生成物が得られ、2−プロパノール中、0.1Nの塩酸溶液を添加することによってこの塩酸塩を調製する。
【0035】
溶媒を減圧下で蒸発除去した後、イソプロピルエーテルと2−プロパノールの混合物から白色固体が再結晶化により得られる。
【0036】
0.474gの塩酸塩が、白色固体の形態で最終的に単離される。
【0037】
融点:216から217℃。
【実施例2】
【0038】
(化合物5)
2,5−ジクロロ−N−[(S)−[(2S)−1−メチル−2−ピペリジル]−(フェニル)メチル]チオフェン−3−カルボキサミドヒドロクロリド1:1
【0039】
2.1. 1,1−ジメチルエチル(2S)−2−ベンゾイルピペリジン−1−カルボキシレート
11.8g(43.3mmol)の1,1−ジメチルエチル(2S)−2−(N−メトキシ−N−メチルカルバモイル)ピペリジン−1−カルボキシレートを、窒素雰囲気下、500mlの丸底フラスコに入れた100mlの無水ジエチルエーテルに入れ、この媒質を−23℃に冷却し、21.6ml(43.2mmol)の、シクロヘキサンとジエチルエーテルの70/30混合物中1.8Mフェニルリチウム溶液を滴下し、この混合物を、室温で3時間撹拌する。飽和塩化ナトリウム水溶液を用いて加水分解した後、水相を分離し、酢酸エチルで抽出する。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮し、残渣を、酢酸エチルとシクロヘキサンの混合物で溶出するシリカゲルでのカラムクロマトフラフィーによって精製する。
【0040】
4.55gの固体生成物が得られる。
【0041】
融点:123から125℃。
【0042】
[α]25=−25.4°(c=2.22;CHCl)ee=97.2%。
【0043】
2.2. 1,1−ジメチルエチル(1S)−2−[(2S)−ヒドロキシ(フェニル)−メチル]ピペリジン−1−カルボキシレート
4.68g(16.2mmol)の1,1−ジメチルエチル(2S)−2−ベンゾイル−ピペリジン−1−カルボキシレートを、窒素雰囲気下、500ml丸底フラスコに入れた170mlの無水テトラヒドロフランに入れ、この溶液を−78℃に冷却し、48.5ml(48.5mmol)の、テトラヒドロフランに溶解したL−Selectride(登録商標)(リチウムトリ−s−ブチルボロヒドリド)の1M溶液を滴下し、この混合物を室温で5時間撹拌する。
【0044】
得られた混合物を、冷条件下、34mlの水と34mlの過酸化水素35%水溶液を用いて徐々に加水分解し、この混合物を撹拌しながら2時間かけて室温に昇温させる。
【0045】
得られた混合物を水と酢酸エチルで希釈し、水相を分離し、酢酸エチルで抽出する。合わせた有機相を洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、蒸発させた後、残渣を、酢酸エチルとシクロヘキサンの混合物で溶出する、シリカゲルでのカラムクロマトフラフィーによって精製する。
【0046】
4.49gの淡黄色の油状物質が得られる。
【0047】
[α]25=+63.75°(c=0.8;CHCl)ee=97.8%。
【0048】
2.3. (1S)−[(2S)−(1−メチル−2−ピペリジル)]フェニルメタノール
2.96g(78.1mmol)の水素化リチウムアルミニウムを、窒素雰囲気下、200ml二口フラスコに入れた50mlの無水テトラヒドロフランに入れ、この混合物を還流し、35mlのテトラヒドロフランに溶解した、4.49g(15.4ml)1,1−ジメチルエチル(1S)−2−[(2S)−ヒドロキシ(フェニル)メチル]ピペリジン−1−カルボキシレートの溶液を加え、この混合物を還流で3.5時間維持する。
【0049】
この混合物を冷却し、0.1M酒石酸カリウムナトリウム溶液を用いて徐々に加水分解し、一晩撹拌する。得られた混合物を濾過し、沈殿をテトラヒドロフランですすぎ、次いで、濾液を減圧下で濃縮する。
【0050】
2.95gの無色の油状生成物が得られる。
【0051】
2.4. (1S)−[(2S)−(1−メチル−2−ピペリジル)]フェニル−メタンアミン
2.95g(14.4mmol)の(1S)−[(2S)−(1−メチル−2−ピペリジル)]フェニルメタノールおよび2ml(14.4mmol)のトリエチルアミンを、窒素雰囲気下、250ml丸底フラスコに入れた70mlの無水ジクロロメタンに入れ、この媒質を0℃に冷却し、1.1ml(14.4mmol)の塩化メタンスルホニルを加え、この混合物を2時間かけてゆっくりと室温に戻らせ、減圧下で濃縮する。
【0052】
マグネチックスターラーを備えたオートクレーブに液化アンモニアを入れ、−50℃に冷却し、無水エタノール30mlに溶解した、前記で調製したメタンスルホン酸塩溶液を加え、オートクレーブを閉じ、48時間攪拌する。
【0053】
この混合物を丸底フラスコへ移し、溶媒を減圧下で蒸発除去すると、アミンが油状生成物の形態で単離され、これをさらなる精製を行わずに以下の工程に用いる。
【0054】
2.5. 2,5−ジクロロ−N−[(1S)−[(2S)−1−メチル−2−ピペリジル](フェニル)メチル]チオフェン−3−カルボキサミドヒドロクロリド1:1
0.37g(1.88mmol)の2,5−ジクロロチオフェン−3−カルボン酸を、250ml丸底フラスコに入れた15mlのジクロロメタンに入れ、0.31ml(2.25mmol)のトリエチルアミンおよび0.21ml(2.25ml)のエチルクロロホルメートを逐次加え、この混合物を室温で1時間撹拌する。
【0055】
10mlのジクロロメタンに溶解した0.38g(1.88mmol)の(1S)−[(2S)−(1−メチル−2−ピペリジル)]フェニルメタンアミンを加え、室温で12時間撹拌を継続する。
【0056】
この混合物を水で処理し、ジクロロメタンで数回抽出し、有機相を合わせ、1Nの水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、濾液を減圧下で濃縮する。
【0057】
粗残渣を、0.1%アンモニア水を含有する、ジクロロメタンとメタノールの98/2混合物で溶出するシリカゲルでのカラムクロマトフラフィーによって精製する。0.368gの油状生成物が得られ、2−プロパノール中、0.1Nの塩化水素溶液を加えることによって、この塩酸塩を調製する。
【0058】
溶媒を減圧下で蒸発除去した後、2−プロパノールとイソプロピルエーテルの混合物から固体を再結晶化させる。
【0059】
0.36gの塩酸塩が、淡黄色の固体として最終的に単離される。
【0060】
融点:134から136℃。
【0061】
[α]25=+45.6°(c=0.99);CHOH。
【実施例3】
【0062】
(化合物18)
トレオ−4−[2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−N−[(1−メチル−2−ピペリジル)(フェニル)メチル]−1H−イミダゾール−2−カルボキサミドヒドロクロリド1:1
10mlのジクロロメタンに溶解した、0.1g(0.344mmol)の4−(2−クロロ−3−(トリフルオロ−メチル)フェニル]−1H−イミダゾール−2−カルボン酸、0.066g(0.344mmol)の1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド、および0.047g(0.344mmol)の1−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾールを、50mlの丸底フラスコに入れ、この混合物を室温で5分間撹拌する。
【0063】
0.072g(0.344mmol)のトレオ−(1−メチル−2−ピペリジル)フェニルメタンアミン(実施例1.2に従って調製した)を、数mlのジクロロメタンに加え、6時間撹拌を継続する。
【0064】
この混合物を水で処理し、ジクロロメタンで数回抽出し、有機相を水、次いで1Nの水酸化ナトリウム水溶液、次いで、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、溶媒を減圧下で蒸発除去する。残渣を、ジクロロメタンとメタノールの混合物で溶出するシリカゲルでのカラムクロマトフラフィーによって精製する。
【0065】
91mgの生成物が得られ、2−プロパノール中、0.1Nの塩化水素の溶液を加えることによって、この塩酸塩を調製する。溶媒を減圧下で一部分蒸発除去すると、再結晶化後に、104mgの白色固体の化合物が得られる。
【0066】
融点:188から195℃。
【0067】
以下の表は、本発明のいくつかの化合物の化学構造および物理的特性を示す。
【0068】
「塩」の欄の「−」は、塩基型の化合物を意味し、「HCl」は塩酸塩を意味する。
【0069】
化合物5の施光性は[α]25=+45.6°(c=0.99);CHOH。
【0070】
【表1】



【0071】
本発明の化合物を一連の薬理学的試験に付し、これによって治療上有効な物質としてのこれらの価値が実証された。
【0072】
天然のヒト輸送体glyt1を発現するSK−N−MC細胞におけるグリシン輸送の研究
天然のヒト輸送体glyt1を発現するSK−N−MC細胞(ヒト神経上皮細胞)における[14C]グリシンの取り込みを、試験化合物の存在下または不在下で取り込まれた放射能を測定することにより調べる。細胞を、0.02%フィブロネクチンで前処理したプレートで48時間単層として培養する。実験の当日、培地を除去し、細胞をKrebs−HEPESバッファー([4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジン]エタンスルホン酸)pH7.4で洗浄する。バッファー(対照バッチ)または種々の濃度の試験化合物のいずれかの存在下または10mMグリシン(非特異的取り込みの測定)の存在下、37℃で10分間のプレインキュベーションの後、次いで、10μMの[14C]グリシン(比放射能112mCi/mmol)を加える。インキュベーションを37℃で10分間継続し、pH7.4 Krebs−HEPESバッファーで2回洗浄して反応をクエンチする。次いで、液体シンチラント100μlを添加し、1時間攪拌した後、細胞によって取り込まれた放射能を推定する。計数はMicrobeta Tri−Lux(商標)カウンターで実施する。化合物の有効性は、対照バッチと10mMのグリシンを入れたバッチによって取り込まれた放射能の差によって定まるグリシンの特異的取り込みを50%減少させる化合物の濃度であるIC50によって決定する。
【0073】
この試験での本発明の化合物のIC50は、約0.01から10μMである。
【0074】
マウス脊髄ホモジネートにおけるグリシン輸送の研究
輸送体glyt2による[14C]グリシンの取り込みを、マウス脊髄ホモジネートにおいて試験化合物の存在下または不在下で取り込まれる放射能を測定することにより調べる。
【0075】
動物(実験当日の体重20から25gの雄OF1 Iffa Credoマウス)を安楽死させた後、各動物の脊髄を迅速に採取し、計量し、氷上で保存する。サンプルを25ml/組織1gの割合のpH7.4 Krebs−HEPESバッファー([4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸)中でホモジナイズする。
【0076】
50μlのホモジネートを、pH7.4 Krebs−HEPESバッファーと種々の濃度の試験化合物の存在下、または非特異的取り込みを測定するためグリシン10mMの存在下、25℃で10分間プレインキュベートする。次いで、[14C]グリシン(比放射能=112mCi/mmol)を25℃で10分かけて添加して最終濃度を10μMとする。真空濾過により反応をクエンチし、放射能を、Microbeta Tri−lux(商標)カウンターで計数することによって固体シンチレーションにより推定する。化合物の有効性は、対照バッチと10mMのグリシンを入れたバッチによって取り込まれた放射能の差によって定まるグリシンの特異的取り込みを50%減少させることが可能な濃度であるIC50によって決定する。
【0077】
この試験での本発明の化合物のIC50は、約0.1から10μMである。
【0078】
これらの結果から、本発明の化合物は、認知症、精神病、詳しくは、統合失調症(欠損型および生産型)および神経抑制薬により誘発される急性または慢性錐体外路症状に関連する行動障害を治療するため、多様な形態の不安神経症、パニック発作、恐怖症、強迫性障害を治療するため、心因性鬱病をはじめとする、多様な形態の鬱病を治療するため、アルコール中毒もしくはアルコールを断つことに起因する障害、性行動障害、摂食障害を治療するため、また偏頭痛を治療するために使用できるということが示唆される。
【0079】
さらに、本発明の化合物は、リウマチおよび急性の脊髄症状における有痛性筋拘縮を治療するため、髄質性または大脳性の痙性拘縮を治療するため、軽度から中程度の急性および亜急性疼痛の対症療法のため、激痛および/または慢性疼痛、神経性疼痛および難治性疼痛を治療するため、パーキンソン病および神経変性が原因のまたは神経抑制薬によって誘発されるパーキンソン病様症状を治療するため、原発性部分癲癇および続発性全般癲癇の単純症状または複合症状、混合型およびこの他の癲癇症候群を別の抗癲癇薬治療に加えて、または単独療法において治療するため、睡眠時無呼吸の治療のため、ならびに神経保護のために使用できる。
【0080】
この結果、塩基または医薬的に許容される塩もしくは溶媒和物の形態で、および必要に応じて適した賦形剤を含む混合物としての本発明の少なくとも1種の化合物の有効用量を含む薬剤組成物も本発明の主題である。
【0081】
このような賦形剤は、製薬形態および所望の投与様式に従って選択する。
【0082】
従って、本発明の薬剤組成物は、経口、舌下、皮下、筋肉内、静脈内、局所、気管内、鼻腔内、経皮、直腸または眼内投与を対象とできる。
【0083】
単位投与形は、例えば、錠剤、ゲルカプセル剤、顆粒剤、散剤、経口または注射用溶液または懸濁液、経皮パッチまたは坐剤であり得る。局所投与にはポマード、ローション剤および点眼剤を想定してもよい。
【0084】
前記単位形は、剤形に従い、体重1kgあたり0.01から20mgの有効成分の毎日投与を可能にするよう投与される。
【0085】
錠剤を調製するには、微粉化または非微粉化有効成分に、希釈剤、例えばラクトース、微晶質セルロースまたはデンプン、および製剤アジュバント、例えば結合剤(ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)、流動促進剤、例えばシリカ、および滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、トリベヘン酸グリセリルまたはフマル酸ステアリルナトリウムからなり得る製薬用ビヒクルを加える。湿潤剤または界面活性剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムもまた加えることができる。
【0086】
調製技術としては、直接打錠、乾燥造粒、湿潤造粒またはホットメルティングがあり得る。
【0087】
錠剤は、単味、糖衣、例えば、スクロースでコートしたもの、または種々のポリマーもしくはこの他の適した物質でコートしたものであり得る。これらは、ポリマーマトリックスまたはコーティングに用いられる特定のポリマーによって、有効成分の迅速な放出、遅延放出または持続放出を可能にするよう設計できる。
【0088】
ゲルカプセル剤を調製するには、有効成分を乾燥製薬用ビヒクルと混合するか(単純混合、乾燥もしくは湿潤造粒、またはホットメルティング)、液体または半固体製薬用ビヒクルと混合する。
【0089】
ゲルカプセル剤は、迅速な活性、持続活性または遅延活性を有するよう(例えば、腸溶型のために)、フィルムコーティングされているか、されていない、ハードまたはソフトであり得る。
【0090】
シロップまたはエリキシルの形態、または投与用にドロップの形態の組成物には、有効成分を甘味料、好ましくは、カロリーゼロの甘味料、防腐剤としてのメチルパラベンまたはプロピルパラベン、矯味剤および色素とともに含めることができる。
【0091】
水和剤および顆粒には、有効成分を、分散剤または湿潤剤、またはポリビニルピロリドンなどの分散剤との、ならびにまた甘味料および矯味増強剤との混合物として含めることができる。
【0092】
直腸投与には、直腸温度で融解する結合剤、例えばココアバターまたはポリエチレングリコールを用いて調製した坐剤を用いる。
【0093】
非経口投与には、製薬上適合する分散剤および/または湿潤剤、例えばプロピレングリコールまたはブチレングリコールを含有する、水性懸濁液、等張生理食塩水または注射用滅菌溶液を用いる。
【0094】
有効成分はまた、場合によっては1種またはそれ以上の支持体または添加剤で、またはポリマーマトリックスで、もしくはシクロデキストリンで(経皮パッチ、持続放出型)、マイクロカプセルの形態に製剤できる。
【0095】
本発明の局所組成物は、皮膚と適合する媒質を含んでなる。これらは特に、クリームまたはゲル、マイクロエマルションまたはエアゾールの外観を有する、水性、アルコール性または水性−アルコール性溶液、ゲル、油中水または水中油エマルションの形態、または、イオン性および/または非イオン性脂質を含有する小胞性分散物の形態であり得る。これらの剤形は、考慮中の当技術分野の従来法にしたがって調製する。
【0096】
最後に、本発明の薬剤組成物には、一般式(I)の化合物とともに、前記で示した障害および疾病の治療において有用であり得る、この他の有効成分を含めることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)に対応する化合物
【化1】

(式中、
は、水素原子、または1個またはそれ以上のフッ素原子で場合によって置換されていてもよい直鎖もしくは分岐(C−C)アルキル基、または(C−C)シクロアルキル基、または(C−C)シクロアルキル(C−C)アルキル基、または1個もしくは2個のメトキシ基で場合によって置換されていてもよいフェニル(C−C)アルキル基、または(C−C)アルケニル基、または(C−C)アルキニル基のいずれかを表し;
Xは、水素原子、またはハロゲン原子およびトリフルオロメチルおよび直鎖もしくは分岐(C−C)アルキルおよび(C−C)アルコキシ基から選択される1またはそれ以上の置換基を表し;
は、ハロゲン原子および(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ、チオ(C−C)アルキル、またはハロゲン原子およびトリフルオロメチル、(C−C)アルキルおよび(C−C)アルコキシ基から選択される1またはそれ以上の置換基で場合によって置換されていてもよいフェニル基から選択される1またはそれ以上の置換基で場合によって置換されていてもよい、ナフチル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリジル、トリアジニル、インダニル、インデニル、キノリル、イソキノリル、キナゾリル、キノキサリル、フタラジニル、チエニル、フリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾフリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ジヒドロインドリル、ピロロピリジル、フロピリジル、チエノピリジル、イミダゾピリジル、オキサゾロピリジル、チアゾロピリジル、ピラゾロピリジル、イソオキサゾロピリジル、イソチアゾロピリジル、テトラヒドロキノリル、およびテトラヒドロイソキノリニル基から選択される基を表す)
であって、遊離塩基または酸付加塩の形態の化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物からなることを特徴とする、医薬。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物を、賦形剤と組合せて含むことを特徴とする、薬剤組成物。
【請求項4】
認知症、精神病に関連する行動障害、多様な形の不安神経症、パニック発作、恐怖症、強迫性障害、多様な形の鬱病、アルコール中毒もしくはアルコールを断つことに起因する障害、性行動障害、摂食障害および偏頭痛を治療するための医薬を製造するための、請求項1に記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項5】
拘縮、疼痛、パーキンソン病およびパーキンソン病様症状、癲癇、混合型およびこの他の癲癇症候群を別の抗癲癇薬治療に加えてまたは単独療法で、ならびに睡眠時無呼吸を治療するための、また神経保護のための医薬を製造するための、請求項1に記載の式(I)の化合物の使用。

【公表番号】特表2007−508358(P2007−508358A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534797(P2006−534797)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【国際出願番号】PCT/FR2004/002640
【国際公開番号】WO2005/037792
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(504456798)サノフイ−アベンテイス (433)
【Fターム(参考)】