説明

NOx浄化装置

【課題】十分に高度なNOx浄化性能を有し、低温条件下においてもNOxを十分に浄化することが可能なNOx浄化装置を提供すること。
【解決手段】複合酸化物担体並びに該複合酸化物担体に担持された酸化触媒12と、第一金属酸化物担体及び該第一金属酸化物担体に担持されたロジウム触媒13と、第二金属酸化物担体、該第二金属酸化物担体に担持されたアルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1種のNOx吸蔵材並びに該第二金属酸化物担体に担持された貴金属を含有するNOx吸蔵還元型触媒14と、固体酸性を有する第三金属酸化物担体及び該第三金属酸化物担体に担持された遷移金属を含有するNH吸着型脱硝触媒15と、を備え、且つ、前記排ガスが流通するガス流路の上流側から下流側に向かって酸化触媒12、ロジウム触媒13、NOx吸蔵還元型触媒14、NH吸着型脱硝触媒15の順に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NOx浄化装置に関し、より詳しくは、内燃機関から排出される排ガスに含まれるNOxを浄化するためのNOx浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中の窒素酸化物(NOx)を浄化するために、NOx吸蔵還元型触媒を用いる方法が利用されている。このようなNO吸蔵還元型触媒を用いたNOxの浄化は、その触媒中にNOxを一旦吸蔵した後、還元剤を供給して吸蔵したNOxをNに還元することにより行われる。そして、このような還元剤としては、炭化水素(HC)、水素(H)、一酸化炭素(CO)等が用いられており、HCよりもHやCOの方が低温での還元効果が高いことが知られている。しかしながら、ディーゼルエンジンのような内燃機関から排出される排ガスを浄化する場合、その排ガスが酸素を過剰に含みHやCOを殆ど含まないため、還元剤として軽油が多用されているのが現状である。また、ディーゼルエンジンのような内燃機関から排出される排ガスは、酸素濃度が高く、しかもその排ガス温度が国内及び欧州走行モードでも200℃〜350℃とかなり低い。従って、ディーゼルエンジンのような内燃機関から排出されるNOxをNOx吸蔵還元型触媒のみを利用して十分に浄化することは困難であった。そのため、NOxを効率的に浄化することを目的としてNOx吸蔵還元型触媒と他の触媒とを組み合わせた種々のNOx浄化装置が研究されてきた。
【0003】
例えば、特表2003−530982号公報(特許文献1)においては、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、シリカ/アルミナゼオライト及びこれらの混合物等の担体上に白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、コバルト、ニッケルが備えた酸化触媒と、ニッケル、ロジウム及び/又は白金を含む担持型触媒(改質触媒)と、ゼオライト、Cu及び/又はセリウム交換ゼオライト等の金属交換ゼオライト、白金、ロジウム及び/又はイリジウム触媒からなる群から選択されるNOx浄化触媒とからなるNOx浄化装置が開示されている。また、特表2006−506581号公報(特許文献2)においては、パラジウム、白金、ロジウム、銅、コバルト、鉄、ニッケル、イリジウム、クロム及びモリブデンからなる群から選択される触媒成分がアルミニウム酸化物、ケイ素酸化物、ジルコニウム酸化物、チタン酸化物、セリウム酸化物等からなる担体に堆積させた酸化触媒と、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金が、多孔性ジルコニウム酸化物等の多孔性酸化物に支持された改質触媒とを備え且つ前記酸化触媒が上流側に配置された第1の触媒ゾーン、並びに、アルミナ等の酸化物支持体に白金、パラジウム、ロジウム及びイリジウム等の活性触媒成分が担持されたNOx浄化触媒を備え且つ第1の触媒ゾーンの下流側に位置する第2の触媒ゾーンを備えたNOx浄化装置が開示されている。しかしながら、特許文献1〜2に記載のようなNOx浄化装置においては、低温条件下におけるNOx浄化性能が未だ十分なものではなかった。
【0004】
また、WO2005/44426号パンフレット(特許文献3)においては、(a)セリア又は(b)酸化プラセオジム又は(c)セリウム、ジルコニウム、プラセオジム、ネオジム、テルビウム、サマリウム、ガドリニウム及びランタンから選ばれる少なくとも2つの元素の酸化物の混合物及び/又は複合酸化物からなる触媒成分(A)、(d)白金、ロジウム、パラジウム及びこれらの酸化物から選ばれる少なくとも1種からなる貴金属触媒成分と(e)担体とからなる触媒成分(B)、(f)固体酸と(g)バナジウム、タングステン、モリブデン、銅、鉄、コバルト、ニッケル及びマンガンから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を担持させた固体酸とから選ばれる少なくとも1種からなる触媒成分(C)とからなる触媒が開示されている。更に、特許文献3においては、かかるNOx浄化用触媒を後段触媒とし、NOx貯蔵−還元触媒を前段触媒として組み合わせて用いることができると記載されている。しかしながら、特許文献3に記載のようなNOx浄化用触媒は、NOx貯蔵−還元触媒と組み合わせたとしても還元剤として軽油を用いてNOxを十分に還元することができなかった。
【0005】
一方、酸化触媒としては、特開2002−219361号公報(特許文献4)において、TiOにおけるTiの一部にTa及びNbの少なくとも一種を配位させた構造体M・TiO(MはTa及びNbの少なくとも一種)と、微粉末状の酸性質酸化物とからなる担体に貴金属を担持してなる触媒が開示されている。しかしながら、特許文献4に記載のような酸化触媒は軽油を酸化できるが、この触媒のみでは改質反応には至らない。
【特許文献1】特表2003−530982号公報
【特許文献2】特表2006−506581号公報
【特許文献2】WO2005/44426号パンフレット
【特許文献4】特開2002−219361号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、十分に高度なNOx浄化性能を有し、低温条件下においてもNOxを十分に浄化することが可能なNOx浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、内燃機関から排出される排ガスに含まれるNOxを浄化するためのNOx浄化装置において、チタン酸化物中のチタンの一部がタンタル及びニオブからなる群から選択される少なくとも1種の金属に置換された複合酸化物担体並びに該複合酸化物担体に担持された白金、パラジウム及びイリジウムの中から選択される少なくとも1種の触媒成分を含有する酸化触媒と、第一金属酸化物担体及び該第一金属酸化物担体に担持されたロジウムを含有するロジウム触媒と、第二金属酸化物担体、該第二金属酸化物担体に担持されたアルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1種のNOx吸蔵材並びに該第二金属酸化物担体に担持された貴金属を含有するNOx吸蔵還元型触媒と、固体酸性を有する第三金属酸化物担体及び該第三金属酸化物担体に担持された遷移金属を含有するNH吸着型脱硝触媒とを備え、且つ、前記酸化触媒、前記ロジウム触媒、前記NOx吸蔵還元型触媒及び前記NH吸着型脱硝触媒を、前記排ガスが流通するガス流路の上流側から下流側に向かって前記酸化触媒、前記ロジウム触媒、前記NOx吸蔵還元型触媒、前記NH吸着型脱硝触媒の順に配置することにより、十分に高度なNOx浄化性能を有し、低温条件下においてもNOxを十分に浄化することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明のNOx浄化装置は、内燃機関から排出される排ガスに含まれるNOxを浄化するためのNOx浄化装置であって、
チタン酸化物中のチタンの一部がタンタル及びニオブからなる群から選択される少なくとも1種の金属に置換された複合酸化物担体並びに該複合酸化物担体に担持された白金、パラジウム及びイリジウムの中から選択される少なくとも1種の触媒成分を含有する酸化触媒と、
第一金属酸化物担体及び該第一金属酸化物担体に担持されたロジウムを含有するロジウム触媒と、
第二金属酸化物担体、該第二金属酸化物担体に担持されたアルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1種のNOx吸蔵材並びに該第二金属酸化物担体に担持された貴金属を含有するNOx吸蔵還元型触媒と、
固体酸性を有する第三金属酸化物担体及び該第三金属酸化物担体に担持された遷移金属を含有するNH吸着型脱硝触媒と、
を備え、且つ、
前記酸化触媒、前記ロジウム触媒、前記NOx吸蔵還元型触媒及び前記NH吸着型脱硝触媒が、前記排ガスが流通するガス流路の上流側から下流側に向かって前記酸化触媒、前記ロジウム触媒、前記NOx吸蔵還元型触媒、前記NH吸着型脱硝触媒の順に配置されていることを特徴とするものである。
【0009】
上記本発明のNOx浄化装置においては、前記第一金属酸化物担体が、ジルコニウム酸化物、セリウム酸化物及びマグネシウム酸化物の中から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0010】
また、上記本発明のNOx浄化装置においては、前記複合酸化物担体中のチタン酸化物に対するタンタル及びニオブからなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物の含有比率が0.5〜20モル%であることが好ましい。
【0011】
さらに、上記本発明のNOx浄化装置においては、前記第二金属酸化物担体が、ジルコニウム酸化物、セリウム酸化物及びアルミニウム酸化物の中から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0012】
また、上記本発明のNOx浄化装置においては、前記貴金属が白金及びパラジウムの中から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0013】
また、上記本発明のNOx浄化装置においては、前記第三金属酸化物担体がゼオライトであることが好ましい。
【0014】
さらに、上記本発明のNOx浄化装置においては、前記遷移金属が、鉄、銅、ニッケル及びコバルトの中から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0015】
また、上記本発明のNOx浄化装置においては、前記ガス流路の前記酸化触媒よりも上流域において排ガス中に軽油を供給する軽油供給手段を更に備えることが好ましい。また、上記本発明のNOx浄化装置においては、前記軽油供給手段とともに、前記排ガス中の軽油と酸素との比(空燃比)がストイキ又はリッチ状態となるように、前記軽油供給手段から供給される軽油の供給量を制御する制御手段を更に備えることがより好ましい。
【0016】
なお、本発明のNOx浄化装置によって、低温条件下においてもNOxを十分に浄化することが可能となる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、先ず、本発明のNOx浄化装置においては、前述のように、前記酸化触媒、前記ロジウム触媒、前記NOx吸蔵還元型触媒及び前記NH吸着型脱硝触媒が、前記排ガスが流通するガス流路の上流側から下流側に向かって前記酸化触媒、前記ロジウム触媒、前記NOx吸蔵還元型触媒、前記NH吸着型脱硝触媒の順に配置されている。このような酸化触媒の担体は、チタン酸化物(TiO)中のTiの一部がタンタル(Ta)及びニオブ(Nb)のうちの少なくとも1種の金属に置換された複合酸化物担体である。このような複合酸化物担体は、TiO中のTiの一部が、Ta及びNbのうちの少なくとも1種の電子価が5価の金属に置換されたものであり、TiO中のTiの一部にTa及びNbのうちの少なくとも1種が配位した構造となる。そのため、前記複合酸化物担体中においては、不安定な3価のTiが存在し、結晶格子内に酸素欠陥や電子の不足が生じる。そして、このような複合酸化物担体に、白金、パラジウム及びイリジウムの中から選択される少なくとも1種の触媒成分を担持させると、前記触媒成分の金属から電子が引き抜かれ易く、比較的低温のスライトリーン雰囲気下においても、前記触媒成分が活性の高い価数0のメタル状態となり易い。そのため、本発明にかかる酸化触媒は、低温においても十分に高い酸化活性を示し、リーン雰囲気下においても十分に高い酸化活性を有するとともに、200℃付近の低温域から軽油の燃焼を開始させることが可能であり、更には、かかる燃焼により排ガス中の酸素濃度の低減を図ることも可能とする。
【0017】
また、前記酸化触媒よりもガス流路の下流側に配置される前記Rh触媒は、第一金属酸化物担体と、その第一金属酸化物担体に担持されたRhとを含有するものであり、いわゆる水蒸気改質反応、COシフト反応等によりHを生成させることが可能な触媒である。なお、第一金属酸化物担体に担持する成分をRh以外の他の金属、例えばニッケル(Ni)やコバルト(Co)等とした場合には、Ni及びCoは酸化状態が安定なため、酸化雰囲気下で間欠的にリッチ雰囲気を形成しても改質反応が殆ど進行しない。これは、安定したNi及びCoの酸化物の還元速度が遅いため、間欠的にリッチ雰囲気を形成させるような短時間の条件では、酸化状態のNi及びCoがメタル状になり難いことに起因する。これに対して、前記第一金属酸化物担体に担持させる成分としてRhを利用した場合は、酸化雰囲気下でもメタル状のRhを多く形成でき、さらに、間欠的にリッチ雰囲気を形成することにより、殆どのRhを高活性なメタル状にできることから、活性を損なうことなく300℃付近の低温条件下でも軽油から効率よくH及びCOを生成できる。特に、前記第一金属酸化物担体として、塩基性を有する金属酸化物(例えば、本発明において好適なジルコニウム酸化物(ZrO)、セリウム酸化物(CeO)、マグネシウム酸化物(MgO)等)を用いた場合には、リーン雰囲気下においてRhが酸化状態となることをより十分に抑制できるため、Rhを高活性なメタル状態に十分に保つことができ、軽油成分(HC)からH及びCOをより効率よく生成できる。そして、本発明においては、前記酸化触媒をガス流路の上流側に配置し、前記Rh触媒を前記酸化触媒よりも下流側に配置することで、先ず、排ガスが上流側の酸化触媒に接触し、低温域にある排ガス中の軽油を燃焼させる。そして、このような軽油の燃焼により、排ガス中の酸素を低減され、下流側に配置されたRh触媒に低濃度酸素の排ガスを供給することが可能となるばかりか、排ガスの温度を上昇させることが可能となる。なお、通常、ディーゼル車の排ガス温度は300℃に満たない場合が多いが、本発明においては、上述のような軽油の燃焼により、排ガス温度をRh触媒の反応温度以上(約300℃以上)にすることが可能となる。このように、前記酸化触媒によって、Rh触媒に接触させる排ガスの酸素濃度を十分に低減させつつ排ガス温度をRh触媒の反応温度域まで効率よく上昇させることが可能となるため、下流側のRh触媒によってHCの水蒸気改質反応やCOシフト反応を効率よく引き起こすことが可能となる。したがって、本発明のNOx浄化装置においては、前記酸化触媒及びRh触媒の下流側に流通する排ガスにH及びCOを効率よく添加することが可能となる。
【0018】
また、前記NOx吸蔵還元型触媒は、第二金属酸化物担体と、前記第二金属酸化物担体に担持されたアルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1種のNOx吸蔵材と、前記第二金属酸化物担体に担持された貴金属とを含有する。このようなNOx吸蔵還元型触媒においては、酸化雰囲気下、排ガス中のNOx(NO及びNO)が貴金属上で酸化された後に周囲に存在するアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属と反応し、硝酸塩として吸蔵される。そして、吸蔵されたNOxは、還元雰囲気下においてNに還元されて放出される。本発明においては、排ガスの温度条件が比較的低温の場合においても、上述のようにNOx吸蔵還元型触媒の上流側に配置された前記酸化触媒及び前記Rh触媒によって軽油の酸化及び改質反応が進行するため、前記酸化触媒及び前記Rh触媒よりも下流側のNOx吸蔵還元型触媒に十分な還元ガス(H及びCO)を供給することが可能となる。そのため、本発明においては、NOx吸蔵還元型触媒中に吸蔵されたNOxは比較的低温から効率よく還元される。また、このようなNOx吸蔵還元型触媒によりNOxを還元する際には、NOxの一部がH(還元ガス)によりNHとなる。
【0019】
また、前記NH吸着型脱硝触媒は、固体酸性を有する第三金属酸化物担体と、前記第三金属酸化物担体に担持された遷移金属とを含有する。このようなNH吸着型脱硝触媒は、NHの吸着性に優れ、還元雰囲気下において比較的低温でもNOxを十分に浄化できるものである。そのため、上流側の前記NOx吸蔵還元型触媒により生成されたNHは、前記NH吸着型脱硝触媒に吸着される。また、上流側の前記NOx吸蔵還元型触媒に接触した後の排ガス中にNOxが残留している場合や還元剤である軽油を添加した際にNまで還元できずに放出されたNOxがある場合に、そのNOxを前記NH吸着型脱硝触媒により効率よく浄化することができる。そのため、本発明においては、前記酸化触媒、前記ロジウム触媒、前記NOx吸蔵還元型触媒、前記NH吸着型脱硝触媒を備え、各触媒を上流側から下流側に向かって前記酸化触媒、前記ロジウム触媒、前記NOx吸蔵還元型触媒、前記NH吸着型脱硝触媒の順に配置することによって、低温条件下においてもNOxを十分に浄化することが可能となるものと本発明者らは推察する。
【0020】
なお、一般に、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属が担持されている触媒においては、酸化雰囲気下において、NOx以外に排ガス中のSOxも吸蔵してしまう。このようなSOxは、NOxが吸蔵される部位と同じ部位に吸蔵されるため、触媒がSOxを吸蔵した場合には、NOxの吸蔵能が低下することとなる。そのため、SOxにより被毒された触媒には、NOx浄化活性の低下を防止するために再生処理(硫黄被毒再生処理)を施す必要がある。このような硫黄被毒再生処理は、一般に、NOx還元と同様のメカニズムにより行うことが可能である。このような硫黄被毒再生処理に際して還元剤として軽油を用いた場合には、触媒上で軽油の反応(燃焼)が生じて触媒自体の温度が800℃程度にまで上昇し、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属が蒸散するかあるいは担体の金属酸化物と固相反応を起こすとともに担持された貴金属が粗大化するため、触媒のNOx吸蔵性能が激減してしまう。そのため、低温で硫黄被毒再生処理を施して十分なNOx浄化性能を維持するためには、還元剤としてH及びCOを用いることが有効である。本発明においては、上述のように、NOx吸蔵還元型触媒の上流側に前記酸化触媒及び前記Rh触媒が配置されているため、これらの下流側にあるNOx吸蔵還元型触媒に対して効率よくH及びCOを供給できる。また、本発明においては、NOx吸蔵還元型触媒の上流に前記酸化触媒及び前記Rh触媒が配置されており、NOx吸蔵還元型触媒の上流側で軽油が改質されるため、NOx吸蔵還元型触媒上での軽油と酸素との反応が抑制されることから、NOx吸蔵還元型触媒自体の発熱を少なくして、硫黄被毒再生処理を施しつつ熱による触媒劣化を十分に抑制できるものと推察される。このように、本発明のNOx浄化装置においては、NOx浄化とともに硫黄被毒再生処理を比較的低温で行うことが可能であり、十分に高いNOx浄化性能を有しつつ、NOx浄化性能を十分に維持することができるものと本発明者らは推察する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、十分に高度なNOx浄化性能を有し、低温条件下においてもNOxを十分に浄化することが可能なNOx浄化装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0023】
本発明のNOx浄化装置は、内燃機関から排出される排ガスに含まれるNOxを浄化するためのNOx浄化装置であって、
チタン酸化物中のチタンの一部がタンタル及びニオブからなる群から選択される少なくとも1種の金属に置換された複合酸化物担体並びに該複合酸化物担体に担持された白金、パラジウム及びイリジウムの中から選択される少なくとも1種の触媒成分を含有する酸化触媒と、
第一金属酸化物担体及び該第一金属酸化物担体に担持されたロジウムを含有するロジウム触媒と、
第二金属酸化物担体、該第二金属酸化物担体に担持されたアルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1種のNOx吸蔵材並びに該第二金属酸化物担体に担持された貴金属を含有するNOx吸蔵還元型触媒と、
固体酸性を有する第三金属酸化物担体及び該第三金属酸化物担体に担持された遷移金属を含有するNH吸着型脱硝触媒と、
を備え、且つ、
前記酸化触媒、前記ロジウム触媒、前記NOx吸蔵還元型触媒及び前記NH吸着型脱硝触媒が、前記排ガスが流通するガス流路の上流側から下流側に向かって前記酸化触媒、前記ロジウム触媒、前記NOx吸蔵還元型触媒、前記NH吸着型脱硝触媒の順に配置されていることを特徴とするものである。
【0024】
以下、図面を参照しながら本発明のNOx浄化装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0025】
図1に、内燃機関に接続された本発明のNOx浄化装置の好適な一実施形態の模式図を示す。このようなNOx浄化装置は、基本的には、内燃機関10に接続された排ガス管11と、排ガス管11内のガス流路の上流側に配置された酸化触媒12と、ガス流路の酸化触媒12よりも下流側に配置されたロジウム触媒13と、ガス流路のロジウム触媒13よりも下流側に配置されたNOx吸蔵還元型触媒14と、ガス流路のNOx吸蔵還元型触媒14よりも下流側に配置されたNH吸着型脱硝触媒15とを備えるものである。そして、本実施形態のNOx浄化装置においては、ガス流路の酸化触媒12の上流側に軽油供給手段16が接続されており、かかる軽油供給手段16は制御手段17に電気的に接続されている。
【0026】
このような内燃機関10としては特に制限されず、公知の内燃機関を適宜用いることができ、軽油を燃料として用いる内燃機関が好ましい。なお、本発明においては、スライトリーン状態にある低温の排ガス中の軽油を十分に改質することが可能であることから、内燃機関10としては、自動車のディーゼルエンジンであることが好ましい。なお、このような内燃機関10が自動車のエンジンである場合においては、車速やエンジンの回転数等を検出するための検出手段を更に備えていてもよく、このような検出手段としては通常の検出手段を適宜用いることができる。
【0027】
また、酸化触媒12は、チタン酸化物(TiO)中のチタンの一部がタンタル(Ta)及びニオブ(Nb)からなる群から選択される少なくとも1種の金属に置換された複合酸化物担体と、前記複合酸化物担体に担持された白金(Pt)、パラジウム(Pd)及びイリジウム(Ir)の中から選択される少なくとも1種の触媒成分とを含有する触媒である。このような酸化触媒12は排ガス管11内のガス流路において、ロジウム触媒13、NOx吸蔵還元型触媒14及びNH吸着型脱硝触媒15よりも上流側に配置される。このような酸化触媒12は、比較的低温の排ガス中の軽油に対しても十分に高い酸化活性を示すため、排ガス温度が200℃程度である低温条件下においても排ガス中の軽油の燃焼を開始させることができる。そのため、このような酸化触媒12によれば、軽油の種類にもよるが国内の市販軽油の場合には200〜220℃程度の低温条件下においても十分に燃焼させることが可能であり、排ガス中の酸素濃度を十分に低減させることができるとともに、排ガスの温度を上昇させて排ガス温度をロジウム触媒13の反応温度域に上げることができる。
【0028】
また、前記複合酸化物担体は、チタン酸化物中のチタンの一部がTa及びNbからなる群から選択される少なくとも1種の金属に置換されたものである。このような複合酸化物担体は、組成式:M・TiO(式中、MはTa及びNbのうちの少なくとも1種示す)により表され、TiO中のTiの一部にTa及びNbのうちの少なくとも1種が配位した構造を有する。このような複合酸化物を用いることで、スライトリーン雰囲気下においても白金等の前記触媒成分が十分にメタル状に還元され、酸素が過剰な条件下においても触媒の酸化活性を十分なものとすることができる。
【0029】
また、このような複合酸化物担体においては、チタン酸化物に対するタンタル及びニオブからなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物の含有比率が、0.5〜20モル%(より好ましくは1〜10モル%)の範囲であることが好ましい。このようなTa及びNbからなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物の含有比率が前記下限未満では、白金等を担持した際に白金等をメタル状に還元することが困難となり、酸化活性が低下する傾向にある。他方、前記含有比率が前記上限を超えると、タンタル及び/又はニオブをチタンと十分に置換することができず、タンタル酸化物又はニオブ酸化物が担体中で単独で存在し易くなり、酸化活性が低下する傾向にある。また、このような複合酸化物担体において、Tiの一部に置換する金属としては、より高い触媒活性が得られるという観点から、タンタルがより好ましい。また、前記複合酸化物担体の形状としては特に制限されないが、粉末状のものが好ましい。
【0030】
また、このような複合酸化物担体を製造する方法としては、特に制限されず、チタン酸化物中のチタンの一部がTa及びNbからなる群から選択される少なくとも1種の金属に置換された複合酸化物を製造できる方法であればよく、例えば、Ta及び/又はNbのうちの少なくとも一種のアルコキシドと、Tiのアルコキシドとをアルコール中に溶解し、加水分解によって沈殿物を得た後、得られた沈殿物を焼成して、複合酸化物担体を得る方法を採用することができる。なお、上記沈殿物を析出させる方法としては、Ta及びNbのうちの少なくとも一種の酸塩(例えば、オルトチタン酸テトラエチル等)と、Tiのアルコキシドとをアルコール中に溶解し、加水分解によって沈殿物を析出させる方法や、Ta及びNbのうちの少なくとも一種の酸塩と、Tiの酸塩とを溶解した水溶液をアルカリ性とすることで沈殿物を析出させる方法を採用してもよい。
【0031】
また、酸化触媒12においては、前記複合酸化物担体に、白金(Pt)、パラジウム(Pd)及びイリジウム(Ir)の中から選択される少なくとも1種の触媒成分が担持されている。前記触媒成分として白金(Pt)、パラジウム(Pd)及びイリジウム(Ir)を用いることで、200℃程度の排ガス中の軽油を燃焼開始させることが可能となり、低温条件下においても十分な酸化活性を得ることができる。また、このような触媒成分としては、多種類のHC種が混合されている軽油のようなHC種に対して、より高度の酸化活性が得られるという観点から、Ptを用いることが特に好ましい。
【0032】
また、このような触媒成分の担持量としては特に制限されないが、前記複合酸化物担体100質量部に対して0.05〜10質量部であることが好ましく、0.5〜5質量部であることがより好ましい。このような触媒成分の担持量が前記下限未満では、十分な触媒活性が得られなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、白金(Pt)等の前記触媒成分が粗大化して存在するため、触媒として十分な機能を発揮できなくなる傾向にある。また、このような触媒成分を前記複合酸化物担体に担持させる方法としては、特に制限されず、前記複合酸化物担体に前記触媒成分を担持することが可能な公知の方法を適宜採用でき、例えば、前記触媒成分の金属塩を含有する水溶液を前記複合酸化物担体に含浸させた後に乾燥し、焼成する方法を採用してもよい。
【0033】
さらに、酸化触媒12の形態としては特に制限されず、ハニカム形状のモノリス触媒、ペレット形状のペレット触媒等の形態とすることができる。ここで用いることが可能な基材も特に制限されず、パティキュレートフィルタ基材(DPF基材)、モノリス状基材、ペレット状基材、プレート状基材等が好適に採用することができる。また、このような基材の材質も特に制限されないが、コーディエライト、炭化ケイ素、ムライト等のセラミックスからなる基材や、クロム及びアルミニウムを含むステンレススチール等の金属からなる基材を好適に採用することができる。なお、このような形態の酸化触媒12の製造方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、複合酸化物担体を前記基材にウォッシュコートした後、触媒成分を担持する方法等を採用することができる。
【0034】
また、このような基材に酸化触媒12を担持する場合には、前記複合酸化物担体を基材1Lあたり30〜300g担持することが好ましく、50〜200g担持することが好ましい。前記複合酸化物担体の担持量が前記下限未満では、酸化触媒12により軽油を十分に酸化させることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、DPFモノリス基材等の基材のガス通過孔が閉塞されるため、ガス流路抵抗が大きくなり、細孔内における触媒層へのガスの拡散が低下し、触媒とガスとの反応率が低下する傾向にある。さらに、このような基材に酸化触媒12を担持する場合には、前記触媒成分を基材1Lあたり0.1〜20g担持することが好ましく、1〜10g担持することが好ましい。
【0035】
ロジウム触媒13は、第一金属酸化物担体と、前記第一金属酸化物担体に担持されたロジウムとを含有する触媒である。このようなロジウム触媒13は、排ガス管11内のガス流路において、酸化触媒12よりも下流側に配置される。このようなロジウム触媒13によれば、300℃程度の温度の排ガスであっても、水蒸気改質反応、COシフト反応を起こすことができ、比較的低温の排ガス中の軽油からH及びCOを効率よく生成することができる。
【0036】
このような第一金属酸化物担体としては、ロジウム(Rh)をより高分散で担持することができるとともに、担持したRhの酸化をより十分に防止できることから、塩基性の金属酸化物からなる担体が好ましく、ジルコニウム酸化物(ZrO)、セリウム酸化物(CeO)及びマグネシウム酸化物(MgO)の中から選択される少なくとも1種を含有する金属酸化物担体を用いることがより好ましい。このようなZrO、CeO及びMgOの中から選択される少なくとも1種を含有する第一金属酸化物担体は、ZrO、CeO又はMgOの単体からなるものであってもよく、ZrO、CeO及びMgOのうちの2種以上の複合酸化物や固溶体であってもよい。
【0037】
また、このような第一金属酸化物担体の中でも、より低温域の排ガスに対しても水素改質反応やCOシフト反応を起こすことができるという観点から、ZrO、CeO、MgO、ZrO−CeO、ZrO−MgOを用いることが更に好ましく、ZrOが特に好ましい。また、前記第一金属酸化物担体の形状としては特に制限されないが、粉末状のものが好ましい。さらに、このような第一金属酸化物担体としては、一種を単独で或いは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
また、前記第一金属酸化物担体としては、多孔性のものを用いることが好ましい。このような第一金属酸化物担体の細孔の平均直径としては、特に制限されないが、100nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましく、5nm以下であることが特に好ましい。このような非常に微細な細孔を有している第一金属酸化物担体は、各種基材に対する付着性が十分に高く、基材にコートした場合の耐久安定性がより確実に向上する傾向にある。
【0039】
また、ロジウム触媒13においては、前記第一金属酸化物担体にロジウム(Rh)が担持されている。かかるロジウム触媒13の担持成分がRh以外では、酸化雰囲気の排ガスを間欠的にリッチ雰囲気とした場合に触媒の活性が十分に得られない。例えば、このような担持成分をNiやCoとした触媒は、酸素が欠乏したリッチ雰囲気下に長時間晒した場合に改質反応を進行させることができるが、リーン雰囲気下において間欠的にリッチ雰囲気を形成させた場合には、NiやCoは酸化状態が安定なものであるため殆ど改質反応が進行しない。一方、このような担持成分をロジウムとした場合には、酸化雰囲気下においてもロジウムの状態は高活性なメタル状態に保たれ易く、十分な触媒活性を示すことができる。
【0040】
また、ロジウム触媒13において、前記第一金属酸化物担体に担持されるRhの担持量としては特に制限されないが、前記担体100質量部に対して0.05〜10質量部であることが好ましく、0.1〜3質量部であることがより好ましい。このような触媒成分の担持量が前記下限未満では、十分な触媒活性が得られなくなり、改質反応が十分に進行しない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、触媒のコストが高くなるとともに触媒の活性が低下する傾向にある。また、このような触媒成分を前記第一金属酸化物担体に担持させる方法としては、特に制限されず、前記第一金属酸化物担体にRhを担持することが可能な公知の方法を適宜採用でき、例えば、Rhの塩を含有する水溶液を前記第一金属酸化物担体に含浸させた後に乾燥し、焼成する方法を採用してもよい。
【0041】
さらに、ロジウム触媒13の形態も特に制限されず、ハニカム形状のモノリス触媒、ペレット形状のペレット触媒等の形態とすることができる。ここで用いられる基材も特に制限されず、パティキュレートフィルタ基材(DPF基材)、モノリス状基材、ペレット状基材、プレート状基材等が好適に採用することができる。また、このような基材の材質も特に制限されないが、コーディエライト、炭化ケイ素、ムライト等のセラミックスからなる基材や、クロム及びアルミニウムを含むステンレススチール等の金属からなる基材を好適に採用することができる。なお、このような形態のロジウム触媒13の製造方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、金属酸化物担体を前記基材にウォッシュコートした後、ロジウムを担持する方法等を採用してもよい。
【0042】
また、このような基材にロジウム触媒13を担持する場合には、前記第一金属酸化物担体を基材1Lあたり30〜300g担持することが好ましく、50〜200g担持することが好ましい。前記第一金属酸化物担体の担持量が前記下限未満では、十分な触媒活性が得られなくなり、改質反応が十分に進行しない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、基材の細孔を閉塞するため、ガス流路抵抗が大きくなり、前記細孔内における触媒層へのガスの拡散が低下し、触媒での反応性が低下する傾向にある。さらに、このような基材にロジウム触媒13を担持する場合には、前記ロジウムを基材1Lあたり0.1〜20g担持することが好ましく、0.5〜5g担持することが好ましい。
【0043】
また、NOx吸蔵還元型触媒14は、第二金属酸化物担体、前記第二金属酸化物担体に担持されたアルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1種のNOx吸蔵材並びに該第二金属酸化物担体に担持された貴金属を含有する触媒である。このようなNOx吸蔵還元型触媒14は、排ガス管11内のガス流路において、ロジウム触媒13よりも下流側に配置される。
【0044】
このような第二金属酸化物担体としては、NOx吸蔵還元型触媒の担体に用いることが可能な金属酸化物からなる担体であればよく特に限定されず、例えば、チタニア、アルミナ、シリカ、ジルコニア、セリア、ジルコニア−チタニア固溶体、シリカ−アルミナ固溶体等の金属酸化物が挙げられる。また、このような第二金属酸化物担体としては、十分な耐熱性を有するとともに、アルカリ金属及びアルカリ土類金属と反応し難いという観点から、ジルコニウム酸化物、セリウム酸化物及びアルミニウム酸化物の中から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。また、このような第二金属酸化物担体の中でも、NOxをアルカリ金属及びアルカリ土類金属にスピルオーバする反応を促進し易いという観点から、ジルコニア、セリア、セリア−ジルコニア固溶体が更に好ましい。
【0045】
また、このような第二金属酸化物担体の形状は特に制限されないが、粉末状であることが好ましい。さらに、このような第二金属酸化物担体としては、一種を単独で或いは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
また、前記第二金属酸化物担体に担持されるNO吸蔵材は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1種である。このようなアルカリ金属元素としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、セシウム(Cs)等が挙げられる。また、このようなアルカリ土類金属元素としては、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)等が挙げられる。このようなアルカリ金属は高温域におけるNO吸蔵能が高い。他方、アルカリ土類金属は低温域におけるNO吸蔵能が高い。そのため、両者を併用して用いてもよい。また、アルカリ金属とアルカリ土類金属とを併用する場合においては、K及びBaを併用することが特に好ましい。
【0047】
また、このようなNO吸蔵材の担持量としては特に制限されないが、第二金属酸化物担体を後述する基材に担持する場合に、前記担体をコートした基材1Lあたりに対して5モル以下であることが好ましく、0.1〜1モルであることがより好ましい。このようなNO吸蔵材の担持量が前記下限未満では十分なNOx吸蔵性能が得られなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、これらの元素により細孔の閉塞や貴金属の被覆が発生してNO浄化性能が低下する傾向にある。
【0048】
また、NO吸蔵材としてアルカリ金属とアルカリ土類金属とを併用する場合においては、担持するアルカリ金属とアルカリ土類金属との比率がモル比(アルカリ金属:アルカリ土類金属)で0.1:0.9〜0.3:0.6であることが好ましい。前記アルカリ金属のモル比が前記下限未満では高温域におけるNO吸蔵能が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、低温域においてNOと酸素との反応性が低下する傾向にある。また、NOx吸蔵材を担持させる方法としては特に制限されず、例えば、NOx吸蔵材として好適に用いられる上述の元素の塩(例えば、炭酸塩、硝酸塩、クエン酸塩、カルボン酸塩、ジカルボン酸塩、硫酸塩)や錯体を含有する水溶液を前記担体に接触させた後に乾燥し、更に焼成する方法を採用することができる。
【0049】
さらに、前記第二金属酸化物担体に担持される貴金属としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)が挙げられ、NOの酸化活性が高いという観点からPt及びPdが好ましい。このような貴金属の担持量としては特に制限されないが、第二金属酸化物担体を後述する基材に担持する場合に、前記担体をコートした基材1Lあたりに対して0.05〜10gであることが好ましく、0.5〜5gであることがより好ましい。このような貴金属の担持量が前記下限未満では十分なNOx浄化性能が得られなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、貴金属の触媒酸化活性が低下する傾向にある。なお、このような貴金属は1種を単独であるいは2種以上を併用して用いてもよい。また、貴金属を担持する方法としては特に制限されず、例えば、貴金属の塩(例えば、ジニトロジアミン塩)や錯体(例えば、テトラアンミン錯体)を含有する水溶液を前記塩基性酸化物担体に接触させた後に乾燥し、更に焼成する方法を採用することができる。
【0050】
また、NOx吸蔵還元型触媒14の形態も特に制限されず、各種基材に担持してもよい。ここで用いられる基材も特に制限されず、パティキュレートフィルタ基材(DPF基材)、モノリス状基材、ペレット状基材、プレート状基材等が好適に採用することができる。また、このような基材の材質も特に制限されないが、コーディエライト、炭化ケイ素、ムライト等のセラミックスからなる基材や、クロム及びアルミニウムを含むステンレススチール等の金属からなる基材を好適に採用することができる。なお、このような形態のNOx吸蔵還元型触媒14の製造方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、第二金属酸化物担体を前記基材にウォッシュコートした後、貴金属を担持し、さらにNOx吸蔵材を担持する方法等を採用してもよい。
【0051】
このような基材にNOx吸蔵還元型触媒14を担持する場合には、第二金属酸化物担体を基材1Lあたり50〜300g担持することが好ましく、100〜250g担持することが好ましい。前記第二金属酸化物担体の担持量が前記下限未満では、十分な触媒活性が得られなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、基材の細孔を閉塞するため、ガス流路抵抗が大きくなり、前記細孔内における触媒層へのガスの拡散が低下し、触媒での反応性が低下する傾向にある。
【0052】
また、NH吸着型脱硝触媒15は、固体酸性を有する第三金属酸化物担体及び該第三金属酸化物担体に担持された遷移金属を含有する触媒である。このようなNH吸着型脱硝触媒15は、排ガス管11内のガス流路において、NOx吸蔵還元型触媒14よりも下流側に配置される。
【0053】
このような第三金属酸化物担体としては、固体酸性を有する金属酸化物からなる担体であればよい。ここにいう「固体酸性を有する金属酸化物」とは、ブレンステッド酸性(プロトンを放つ)あるいはルイス酸性(電子対を受け取る)を有する金属酸化物をいう。このような固体酸性を有する金属酸化物としては、例えば、ゼオライト、シリカ・アルミナ、シリカ・チタニア、シリカ・マグネシア、ゼオライト型無機物としてのSAPO(シリコアルミノフォスフェート)等が挙げられ、中でもゼオライトが好ましい。なお、ゼオライトは、一般式:M・(Al・(SiO(式中:Mは水素又はアルカリ金属等を示す。)で示される特異な細孔構造を有する鉱物の総称である。
【0054】
また、このような一般式で表されるゼオライトとしては、耐熱性の観点から、シリカの含有割合がアルミナの含有割合よりも多いものが好ましく、シリカ/アルミナ比(前記一般式中のxとyの比:y/x)が10〜1000程度のものがより好ましい。シリカ/アルミナ比が前記下限未満では、耐熱性が十分なものとならない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、固体酸性が十分なものとならず、酸強度が弱くなるため、アンモニア吸着能が低下する傾向にある。このようなシリカ/アルミナ比(y/x)が10〜1000程度のゼオライトとしては、ゼオライトβ,ZSM−5等のペンタシル型ゼオライト、モルデナイト、エリオナイト/オフレタイト等が挙げられる。
【0055】
また、前記第三金属酸化物担体に担持された遷移金属としては特に制限されないが、アンモニアの分解性能の観点からは、鉄、銅、ニッケル、コバルト、バナジウム及びタングステンのうちの少なくとも1種を用いることが好ましく、鉄、銅、ニッケル及びコバルトのうちの少なくとも1種を用いることがより好ましい。
【0056】
このような遷移金属の担持量としては特に制限されないが、前記第三金属酸化物担体100質量部に対して0.1〜15質量部であることが好ましく、1〜10質量部であることがより好ましい。このような遷移金属の担持量が前記下限未満では、十分な触媒活性が得られなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、担持した遷移金属が単独の酸化物として存在し、活性を損なう傾向にある。また、このような遷移金属を前記第三金属酸化物担体に担持させる方法としては、特に制限されず、前記第三金属酸化物担体に前記遷移金属を担持することが可能な公知の方法を適宜採用でき、例えば、遷移金属の塩(硝酸塩や硫酸塩等の酸塩やアンミン錯塩等)を含有する水溶液を前記第三金属酸化物担体に浸漬してイオン交換を行うことにより、前記第三金属酸化物担体に前記遷移金属を担持する方法を採用してもよい。
【0057】
また、前記遷移金属としては、低温域におけるNOx浄化性能をより向上させるという観点からは、貴金属以外の遷移金属と、貴金属とを組み合わせて用いることが好ましい。このような貴金属を担持することで排ガス中に含まれるNOxをより効率よく浄化することが可能となる。また、このような貴金属の担持量としては、前記第三金属酸化物担体100質量部に対して0.05〜20質量部であることが好ましく、0.5〜10質量部であることがより好ましい。前記下限未満では、十分にNOx浄化性能を向上させることが困難と成る傾向にあり、他方、前記上限を超えると、効果が飽和し、経済性が低下する傾向にある。
【0058】
さらに、NH吸着型脱硝触媒15の形態も特に制限されず、ハニカム形状のモノリス触媒、ペレット形状のペレット触媒等の形態とすることができる。ここで用いられる基材も特に制限されず、パティキュレートフィルタ基材(DPF基材)、モノリス状基材、ペレット状基材、プレート状基材等が好適に採用することができる。また、このような基材の材質も特に制限されないが、コーディエライト、炭化ケイ素、ムライト等のセラミックスからなる基材や、クロム及びアルミニウムを含むステンレススチール等の金属からなる基材を好適に採用することができる。なお、このような形態のNH吸着型脱硝触媒15の製造方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、基材にウォッシュコート等によってNH吸着型脱硝触媒を担持する方法等を採用してもよい。
【0059】
また、このような基材にNH吸着型脱硝触媒15を担持する場合には、前記第三金属酸化物担体を基材1Lあたり50〜300g担持することが好ましく、75〜200g担持することが好ましい。前記第三金属酸化物担体の担持量が前記下限未満では、十分な触媒活性が得られなくなり、改質反応が十分に進行しない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、基材の細孔を閉塞するため、ガス流路抵抗が大きくなり、前記細孔内における触媒層へのガスの拡散が低下し、触媒での反応性が低下する傾向にある。
【0060】
軽油供給手段16は、排ガス中に軽油を供給することができるものであればよく、特に制限されず、スプレーノズル等により軽油を噴霧して排ガス中に軽油を供給する装置等の公知の軽油供給手段を適宜用いることができる。また、このような軽油供給手段16は、前記酸化触媒よりもガス流路の上流側に接続される。このような軽油供給手段16を酸化触媒12よりも上流側に接続することで、前記ガス流路の前記酸化触媒よりも上流域において排ガス中に軽油を供給することが可能となり、酸化触媒12に供給する前の排ガスの空燃比をリーン状態からリッチ状態にすることが可能となる。そして、このようにして軽油供給手段16を用いて排ガス中に軽油を供給することで、ロジウム触媒13に供給される排ガスの酸素濃度をより低減させることが可能となるため、より高い軽油改質効果を得ることが可能となる。
【0061】
また、制御手段17は、軽油供給手段16と電気的に接続されており、これにより軽油の供給量を制御することが可能な装置である。このような制御手段17としては、例えば、内燃機関がディーゼルエンジンである場合にはエンジンコントロールユニット(ECU)等が挙げられる。このようなECUは、マイクロプロセッサ及びその動作に必要なROM、RAM等の周辺装置を組み合わせたコンピュータとして構成されたものである。
【0062】
このような制御手段17としては、前記排ガス中の軽油と酸素との比(空燃比)がリッチ状態となるように、前記軽油供給手段から供給される軽油の供給量を制御できる制御手段が好ましい。このような制御手段17を用いることで、より効率よく、軽油を改質することが可能となるとともに、硫黄被毒から触媒を十分に再生させることも可能となる。なお、ここにいう「リッチ状態」とは、排ガス中の軽油と酸素の当量比(軽油/酸素)が1を超えるような状態をいう。また、このような制御手段17においては、前述のような制御をするために、排ガスの空燃比の状態を判断することが可能なものが好ましい。また、このような排ガスの空燃比を判断する方法としては、例えば、排ガス中の酸素濃度を測定できる空燃比センサー等を用いて測定し、このデータに基づいて判断する方法を採用してもよく、また、エンジン回転数、アクセル開度、スロットル開度、トルク、吸気流量、燃料噴射量等のデータと排ガスの空燃比との関係のマップを予め作成しておき、そのマップに基づいて、エンジン回転数等が特定の値となった場合に空燃比がリーン、ストイキ又はリッチ状態となったものと判定する方法を採用してもよい。
【0063】
このようなNOx浄化装置を用いてNOxの浄化する場合、内燃機関10から排出された排ガスを排ガス供給管11内のガス流路に流通させると、先ず、排ガスが酸化触媒12に接触する。このようにして排ガスが酸化触媒12に接触すると、排ガス中の軽油を比較的低温の条件下においても十分に燃焼させることができ、排ガス中の酸素濃度を十分に低減させることができる。次に、このようにして酸素濃度が低減された排ガスは、酸化触媒12よりもガス流路の下流側に配置されたロジウム触媒13に接触する。このようにして、ロジウム触媒13に酸素濃度が低減された排ガスが接触すると、ロジウム触媒13により効率よく水蒸気改質反応やCOシフト反応が進行し、水素と一酸化炭素が十分に生成される。そのため、ロジウム触媒13よりも下流側に流通する排ガス中に水素と一酸化炭素を供給することができる。このようにして水素と一酸化炭素が供給された排ガスは、ロジウム触媒13よりも下流側に配置されたNOx吸蔵還元型触媒14に接触する。そして、このようにして水素と一酸化炭素が供給された排ガスをNOx吸蔵還元型触媒14に接触させることで、通常運転域でNOxを吸蔵したNOx吸蔵還元型触媒のNOxをNに還元できるため、再度通常運転中の排ガス中のNOxを浄化できる。また、このようにしてNOxが浄化された排ガスは、NOx吸蔵還元型触媒14よりもガス流路の下流側に配置されたNH吸着型脱硝触媒15に接触する。このようなNH吸着型脱硝触媒15においては、上流側のNOx吸蔵還元型触媒14がNOxを浄化する際に発生したNHを吸着できるため、排ガス中に残留しているNOx及びNOx吸蔵還元型触媒からNにまで還元されずに放出されたNOxを十分に浄化することも可能である。そのため、本発明においては、排ガス中のNOxを十分に浄化することが可能である。
【0064】
また、このようにしてNOxを浄化する際においては、軽油供給手段16及び制御手段17を用いて、酸化触媒12に接触する前の排ガス中に軽油を供給することが好ましい。また、軽油供給手段16及び制御手段17を用いて、酸化触媒12に接触する前の排ガス中に軽油を供給する場合には、前記排ガス中の軽油と酸素との比(空燃比)がリッチ状態となるように軽油の供給量を制御することが好ましい。このようにして、排ガス中に軽油を供給した後、酸化触媒12によって軽油の燃焼させることで、改質触媒であるロジウム触媒13に接触する排ガスをより効率よく低酸素濃度のガスとすることができる傾向にあり、これによって、更に効率よく水素と一酸化炭素を生成することが可能となる。
【0065】
また、軽油供給手段16及び制御手段17を用いて酸化触媒12に接触する前の排ガス中に軽油を供給する場合に、軽油を多量且つ長時間供給し続けると、NOx吸蔵還元型触媒14に接触する排ガス中に軽油が多量に残存し、軽油の酸化反応によって触媒14自体が発熱して触媒14が高熱下に晒され、貴金属の凝集、担体とNOx吸蔵材との固相反応、担持成分の蒸散等が生じ、触媒活性が低下してしまう傾向にある。そのため、軽油供給手段16及び制御手段17を用いて酸化触媒12に接触する前の排ガス中に軽油を供給する場合には、短い時間間隔で間欠的に軽油を供給することが好ましい。このような軽油の供給方法としては、例えば、軽油を5ミリ秒〜0.5秒程度供給した後に軽油の供給を50ミリ秒〜5秒程度止める工程を繰り返し、その繰り返す工程を10秒〜60秒に操作する間欠的な軽油の供給方法等が挙げられる。
【0066】
以上、本発明のNOx浄化装置の好適な実施形態について説明したが、本発明のNOx浄化装置は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明のNOx浄化装置においては、酸化触媒12とロジウム触媒13とNOx吸蔵還元型触媒14とNH吸着型脱硝触媒15とを備え且つ酸化触媒12、ロジウム触媒13、NOx吸蔵還元型触媒14及び前記NH吸着型脱硝触媒15が、排ガスが流通するガス流路の上流側から下流側に向かって酸化触媒12、ロジウム触媒13、NOx吸蔵還元型触媒14、NH吸着型脱硝触媒15の順に配置されていればよく、他の構成は特に制限されない。また、図1に示す実施形態においては、酸化触媒12及びロジウム触媒13、又は、NOx吸蔵還元型触媒14及びNH吸着型脱硝触媒15がそれぞれ密接した状態で配置されたものとなっているが、本発明のNOx浄化装置においては、各触媒をそれぞれ離れて配置していてもよく、全触媒を密接した状態で配置してもよい。
【実施例】
【0067】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0068】
(実施例1)
酸化触媒、ロジウム触媒、NOx吸蔵還元型触媒及びNH吸着型脱硝触媒を備え且つ前記酸化触媒、前記ロジウム触媒、前記NOx吸蔵還元型触媒及び前記NH吸着型脱硝触媒が、前記排ガスが流通するガス流路の上流側から下流側に向かって前記酸化触媒、前記ロジウム触媒、前記NOx吸蔵還元型触媒、前記NH吸着型脱硝触媒の順に配置されたNOx浄化装置を製造した。各触媒の製造方法及びNOx浄化装置の製造方法を以下に示す。
【0069】
〈酸化触媒〉
先ず、オルトチタン酸テトラエチルとタンタルペンタエトキシドとを用い、得られる複合酸化物担体中のTi酸化物に対するTa酸化物の含有比率([Ta]/{[Ti]+[Ta]})が3モル%となるように、オルトチタン酸テトラエチルとタンタルペンタエトキシドとをそれぞれ秤量した。次に、秤量したオルトチタン酸テトラエチルをエチルアルコールで希釈した後、秤量したタンタルペンタエトキシドを加えて反応溶液を得た。次いで、前記反応溶液を均一に混合した後、攪拌下でイオン交換水を滴下し、加水分解によりTa及びTiの酸化物の沈殿物を析出せしめた。その後、ロータリーエバポレータにより前記反応溶液からアルコール及び水を取り除き、Ta及びTiの酸化物からなる微粉末酸化物を得た。そして、前記微粉末酸化物を大気中で800℃、3時間焼成して、TiO中の一部のTiがTaに置換された複合酸化物担体(Taの含有量:担体中のTiの総量に対して3モル%)を得た。次に、前記複合酸化物担体をコーディエライト製のハニカム基材(約800cc:直径130mm、長さ60mm)に、担持量が基材1Lに対して150gとなるようにしてウォッシュコートし、前記基材に前記複合酸化物担体を担持して触媒前駆体を得た。次に、Pt(触媒成分)の担持量がハニカム基材1L当たり5gになるようにして、前記触媒前駆体に対してPt溶液(田中貴金属製)を含浸担持し、乾燥させた後、500℃の温度条件で3時間焼成して、酸化触媒を得た。
【0070】
〈ロジウム触媒〉
先ず、第一金属酸化物担体としてZrO(和光純薬社製の試薬品)を用い、ZrOをコーディエライト製のハニカム基材(約1330cc:直径130mm、長さ100mm)に担持量が基材1Lに対して150gとなるようにしてウォッシュコートしてジルコニア担持基材を得た。次に、Rhの担持量がハニカム基材1L当たり2gになるようにして、前記ジルコニア担持基材に対してRh溶液(田中貴金属製)を含浸担持し、乾燥させた後、500℃の温度条件で3時間焼成して、ロジウム触媒を得た。
【0071】
〈NOx吸蔵還元型触媒〉
先ず、第二金属酸化物担体としてCeO(和光純薬社製の試薬品)40gと、ZrO(和光純薬社製の試薬品)60gと、Al(住友アルミナ社製の商品名「γ−アルミナ」)200gとの混合粉末を用い、前記第二金属酸化物担体をコーディエライト製のハニカム基材(約2000cc:直径130mm、長さ150mm)に担持量が基材1Lに対して150gとなるようにしてウォッシュコートして第二金属酸化物担体担持基材を得た。次に、Ptの担持量がハニカム基材1L当たり3gになるようにして、前記第二金属酸化物担体担持基材に対してPt溶液(田中貴金属製)を含浸担持し、乾燥させた後、500℃の温度条件で焼成した。その後、Ba、Li及びKの担持量がハニカム基材1L当たりそれぞれ0.1mol(Ba)、0.2mol(Li)、0.05mol(K)になるようにして、Ba、Li及びKの酢酸溶液を含浸担持し、乾燥させた後、500℃の温度条件で3時間焼成してNOx吸蔵還元型触媒を得た。
【0072】
〈NH吸着型脱硝触媒〉
先ず、Si/Al比が27のゼオライト(ZSM−5:東ソー社製)を硝酸鉄水溶液(鉄5質量%含有)に浸漬し、イオン交換させることにより、前記ゼオライトに鉄を担持し、NH吸着型脱硝触媒を得た。なお、イオン交換量は、100質量部のZSM−5に対して鉄の担持量が5質量部となるように調整した。次に、得られたNH吸着型脱硝触媒をコーディエライト製のハニカム基材(約1000cc:直径130mm、長さ75mm)に対して、担持量がハニカム基材1Lあたり150g/Lとなるヨウにしてウォッシュコートし、ハニカム基材に担持された形態のNH吸着型脱硝触媒を得た。
【0073】
〈NOx浄化装置〉
ステンレス製の触媒ケース(直径13.5cm、長さ7.5cm)内の上流側に酸化触媒を設置し、前記酸化触媒の下流側にロジウム触媒を設置し、前記ロジウム触媒の下流側にNOx吸蔵還元型触媒を設置し、前記NOx吸蔵還元型触媒の下流側にNH吸着型脱硝触媒を設置してNOx浄化装置を得た。次に、コモンレール式の排気量が2Lの直噴ディーゼルエンジンに接続された排ガス供給管(直径2インチ)に対して、排ガス供給管のガス流路の上流側に酸化触媒が配置されるように前記触媒ケースを設置した。なお、前記排ガス供給管の前記酸化触媒の上流側に、スプレーノズルにより噴霧する形態で排ガス供給管内に軽油を供給することが可能な軽油供給手段(エアーアシストタイプの噴霧スプレー)を接続した。
【0074】
(比較例1)
前記酸化触媒及び前記ロジウム触媒を用いなかった以外は実施例1と同様にしてNOx浄化装置を製造した。
【0075】
(比較例2)
前記ロジウム触媒を用いなかった以外は実施例1と同様にしてNOx浄化装置を製造した。
【0076】
(比較例3)
前記酸化触媒を用いなかった以外は実施例1と同様にしてNOx浄化装置を製造した。
【0077】
[実施例1及び比較例1〜3で得られたNOx浄化装置の性能の評価]
<評価試験1>
先ず、コモンレール式の排気量が2Lの直噴ディーゼルエンジンを回転数1700rpm(一定)の運転条件で運転し、エンジントルクの変動により排ガス温度を270℃に制御しながら、排ガス供給管に排ガスを供給し、実施例1及び比較例1〜3で得られたNOx浄化装置にそれぞれ排ガスを供給した。また、このようなエンジンの運転に併せて、軽油供給手段を用いて、前記排ガス供給管内の酸化触媒の上流側の排ガスに対して軽油を供給した。このような軽油の供給工程は、軽油を噴霧時間50m秒、休止時間50m秒のインターバルで10回添加し、19秒間休止する工程とし、更に、酸素の影響を考慮して軽油供給手段(エアーアシストタイプの噴霧スプレー)から軽油を噴霧する際にエアーの代わりにNを使用した。また、軽油の噴霧は排ガス中の酸素と軽油の当量比が2となるようにした。そして、このようなエンジンの運転及び軽油の供給工程を繰り返して排ガス中のNOx排出濃度変化が一定となった時点で、前述の軽油の添加を終了した。この時の触媒に接触する前後の排ガス中に含まれている成分を自動車排気ガス分析装置(堀場製作所製の商品名「MEXA」)によりそれぞれ分析し、触媒に接触する前後の排ガス中のNOxの含有量をそれぞれ求め、これに基づいてNOx浄化率を求めた。結果を表1に示す。
【0078】
<評価試験2>
トルクを変動させて排ガスの温度を310℃とした以外は、評価試験1と同様にして、実施例1及び比較例1〜3で得られたNOx浄化装置のNOx浄化率を測定した。結果を表1に示す。
【0079】
<評価試験3>
トルクを変動させて排ガスの温度を340℃とした以外は、評価試験1と同様にして、実施例1及び比較例1〜3で得られたNOx浄化装置のNOx浄化率を測定した。結果を表1に示す。
【0080】
<評価試験4〜6>
実施例1で得られたNOx浄化装置を用い、軽油の供給工程において排ガス中の酸素と軽油の当量比が1.2となるようにした以外は評価試験1〜3とそれぞれ同様の試験を行い、実施例1で得られたNOx浄化装置のNOx浄化率を測定した。結果を表1に示す。
【0081】
【表1】

【0082】
表1に示した結果から明らかなように、本発明のNOx浄化装置を用いた場合(実施例1)においては、低温条件下においてもNOxを十分に浄化できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0083】
以上説明したように、本発明によれば、十分に高度なNOx浄化性能を有し、低温条件下においてもNOxを十分に浄化することが可能なNOx浄化装置を提供することが可能となる。このような本発明のNOx浄化装置は、ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中のNOxを浄化する装置として特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】内燃機関に接続された本発明のNOx浄化装置の好適な一実施形態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0085】
10…内燃機関、11…排ガス供給管、12…酸化触媒、13…ロジウム触媒、14…NOx吸蔵還元型触媒、15…NH吸着型脱硝触媒、16…軽油供給手段、17…制御手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出される排ガスに含まれるNOxを浄化するためのNOx浄化装置であって、
チタン酸化物中のチタンの一部がタンタル及びニオブからなる群から選択される少なくとも1種の金属に置換された複合酸化物担体並びに該複合酸化物担体に担持された白金、パラジウム及びイリジウムの中から選択される少なくとも1種の触媒成分を含有する酸化触媒と、
第一金属酸化物担体及び該第一金属酸化物担体に担持されたロジウムを含有するロジウム触媒と、
第二金属酸化物担体、該第二金属酸化物担体に担持されたアルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1種のNOx吸蔵材並びに該第二金属酸化物担体に担持された貴金属を含有するNOx吸蔵還元型触媒と、
固体酸性を有する第三金属酸化物担体及び該第三金属酸化物担体に担持された遷移金属を含有するNH吸着型脱硝触媒と、
を備え、且つ、
前記酸化触媒、前記ロジウム触媒、前記NOx吸蔵還元型触媒及び前記NH吸着型脱硝触媒が、前記排ガスが流通するガス流路の上流側から下流側に向かって前記酸化触媒、前記ロジウム触媒、前記NOx吸蔵還元型触媒、前記NH吸着型脱硝触媒の順に配置されていることを特徴とするNOx浄化装置。
【請求項2】
前記第一金属酸化物担体が、ジルコニウム酸化物、セリウム酸化物及びマグネシウム酸化物の中から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1に記載のNOx浄化装置。
【請求項3】
前記複合酸化物担体中のチタン酸化物に対するタンタル及びニオブからなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物の含有比率が0.5〜20モル%であることを特徴とする請求項1又は2に記載のNOx浄化装置。
【請求項4】
前記第二金属酸化物担体が、ジルコニウム酸化物、セリウム酸化物及びアルミニウム酸化物の中から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のNOx浄化装置。
【請求項5】
前記貴金属が白金及びパラジウムの中から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載のNOx浄化装置。
【請求項6】
前記第三金属酸化物担体がゼオライトであることを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載のNOx浄化装置。
【請求項7】
前記遷移金属が、鉄、銅、ニッケル及びコバルトの中から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載のNOx浄化装置。
【請求項8】
前記ガス流路の前記酸化触媒よりも上流域において排ガス中に軽油を供給する軽油供給手段を更に備えることを特徴とする請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載のNOx浄化装置。
【請求項9】
前記排ガス中の軽油と酸素との比(空燃比)がストイキ又はリッチ状態となるように、前記軽油供給手段から供給される軽油の供給量を制御する制御手段を更に備えることを特徴とする請求項8に記載のNOx浄化装置。

【図1】
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【公開番号】特開2009−191823(P2009−191823A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−36384(P2008−36384)
【出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】